JP6149558B2 - 車両用シート - Google Patents
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Description
これに対し、従来の車両用シートでは、サイドサポート部の幅方向外側部分が比較的硬くなっているため、乗員の腕等が接触してもサイドサポート部が変形しにくかった。これにより、ストレッチ時の腕や両肩を後方に引く動作が邪魔され、十分なストレッチ動作を行いにくいという問題があった。
なお、肩部のストレッチ動作を阻害しないために、シートバック部の硬度を低減し、乗員の押圧力で容易に変形可能とすることが考えられる。しかしながら、この場合では、着座した乗員の身体を十分に支持することができず、特に横方向のGが作用した場合等に乗員が不安定になってしまうおそれがあった。
そして、前記メインサポート部は、車両上下方向の中央部に中央支持部を設定し、前記中央支持部の上方位置に前記シートクッション部に着座した乗員の肩甲骨の肩甲棘及び下角を支持する領域である第1支持部を設定している。また、前記サイドサポート部は、前記中央支持部の側方位置に前記乗員の胸郭側面部を支持する領域である第2支持部を設定し、前記第2支持部の上方位置に前記乗員の上腕部に接触する領域である第3支持部を設定している。さらに、前記第1支持部及び前記第2支持部の反発係数を、前記中央支持部と同等もしくはそれよりも高い値に設定し、前記第3支持部の硬度を、前記中央支持部よりも低い値に設定する。
また、サイドサポート部に設定した第2支持部の硬度を、メインサポート部の中央支持部と同等もしくはそれよりも高い値に設定する。ここで、第2支持部は、メインサポート部の車両上下方向の中央部に設定された中央支持部の側方位置に設定されているので、シートクッション部に着座した乗員の側部(体側部分)を支持することができる。このため、乗員に横方向のGが作用しても、乗員を安定的に支持することができ、いわゆる横Gホールド性能を確保することができる。
一方、サイドサポート部に設定した第3支持部の硬度を、メインサポート部の中央支持部よりも低い値に設定する。ここで、第3支持部は、サイドサポート部に設定された第2支持部の上方位置に設定されているので、シートクッション部に着座した乗員の上腕部に接触する。このため、シートクッション部に着座した状態で、乗員が肩部のストレッチ動作を行っても、第3支持部を容易に変形することができ、ストレッチ動作を阻害することはない。これにより、腕や肩を身体後方に引く動作を行いやすくして、肩部のストレッチ動作を行いやすくすることができる。
この結果、シートクッション部に着座した乗員の姿勢保持性や横Gホールド性を確保しつつ、肩部のストレッチ動作を行いやすくすることができる。
まず、構成を説明する。
実施例1における車両用シートの構成を、[車両用シートの全体構成]、[シートバック部の詳細構成]に分けて説明する。
図1は、実施例1の車両用シートを示す全体斜視図である。以下、図1に基づき、実施例1の車両用シートの全体構成を説明する。
また、前記シートバック部20は、骨格部材であるシートフレームと、可撓性を有するシートパッドと、表皮材と、有している。そして、シートフレームの周囲にシートパッドを取り付け、表皮材で覆うことで形成される。なお、このシートバック部20の上部には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト12が設けられている。
図2は、実施例1のシートバック部を示す正面図である。図3は、実施例1のシートバック部と乗員の骨格の位置関係を示す説明図である。以下、図2及び図3に基づき、実施例1のシートバック部の詳細構成について説明する。
ここで、「乗員の身体中央部分」とは、乗員の背骨を中心とする胴部分、いわゆる背中や腰である。また、「身体中央部分の左右両側」とは、乗員のわき腹付近、肩、腕等である。
前記中央支持部21Aは、車両上下方向の中央部であって、着座した乗員30の重心31(図3参照)付近を支持する領域に設定される。
前記第1支持部21Bは、メインサポート部21に設定した中央支持部21Aの車両上方位置であって、着座した乗員30の肩甲骨32の肩甲棘32a及び下角32bを支持する領域に設定される。ここで、第1支持部21Bの車幅方向最少寸法W1は、250mmとする。
前記第2支持部22Aは、メインサポート部21に設定された中央支持部21Aの側方位置であって、着座した乗員30の第7胸椎から第9胸椎付近の胸郭側面部33aを支持する領域に設定される。
なお、「胸椎」とは、脊椎(いわゆる背骨)の中ほどの骨を指し、「第7胸椎」は上から7番目の胸椎であり、「第9胸椎」は上から9番目の胸椎である。また、「胸郭」とは、胸部の骨格であり、胸椎と一対の肋骨、胸骨によって囲まれる部分である。さらに、この第2支持部22Aは、左右のサイドサポート部22,22のそれぞれに設けられるが、左右の第2支持部22A,22Aの最大間隔W2は360mmに設定される。
前記第3支持部22Bは、サイドサポート部22に設定した第2支持部22Aの車両上方位置であって、着座した乗員30の上腕部34に接触する領域に設定される。
さらにここでは、第2支持部22Aと第3支持部22Bとの境界が、車両下方に向かうにつれて次第に車幅方向外側に傾斜している。
また、前記第2支持部22Aの反発係数(硬度)は、メインサポート部21に設定された中央支持部21Aや第1支持部21Bの反発係数や、サイドサポート部22に設定された第3支持部22Bの反発係数よりも高くなる値に設定されている。
そして、前記第3支持部22Bの反発係数(硬度)は、メインサポート部21に設定された中央支持部21Aや第1支持部21Bの反発係数や、サイドサポート部22に設定された第2支持部22Aの反発係数よりも低くなる値に設定されている。
第3支持部22B<中央支持部21A<第1支持部21B<第2支持部22A…(1)
なお、各支持部21A,21B,22A,22Bの反発係数を異ならせるため、各支持部21A,21B,22A,22Bごとに異なる反発係数の材質からなるシートパッドを用いている。また、各支持部21A,21B,22A,22B間には、ここでは中央支持部21Aと同じ反発係数に設定した境界領域を設けている。
まず、「肩部のストレッチ動作」について説明し、続いて、実施例1の車両用シートに作用を、「肩ストレッチ許容作用」、「身体支持作用」に分けて説明する。
図4は、肩部のストレッチ動作を示す説明図である。以下、図4に基づき、肩部のストレッチ動作について説明する。
ここで、この肩部のストレッチ動作を行うと、肩は頭頂部を中心に身体後方に向かって回動し、腕は肩を中心に車両下方に向かって回動する。これにより肩の付け根にある左右の肩甲骨が互いに寄る。
図5は、実施例1の車両用シートに着座して肩部のストレッチを行った状態を示す作用説明図である。以下、図5に基づいて、実施例1の肩ストレッチ許容作用を説明する。
この結果、腕や肩を身体後方に動かす肩甲骨周りのストレッチが行いやすくなり、肩部筋肉の疲労回復に効果がある姿勢を取りやすくなって、肩部ストレッチ動作を十分に行うことができる。
図6は、実施例1の車両用シートに着座した乗員に、横Gが作用したときの横Gホールド性を示す作用説明図である。以下、図6及び図3に基づき、実施例1の身体支持作用を説明する。
特に、肩甲骨32周囲による押圧力は、シートクッション部10に近い腰部等による押圧力に比べて大きくなる。しかし、この肩甲骨32を支持する第1支持部21Bの反発係数が、中央支持部21Aよりも硬くなっているので、押圧力が大きくても安定的に支持することができる。すなわち、この車両用シート1に着座した乗員30の姿勢保持性を確保することができる。
このとき、この第2支持部22Aが最も反発係数の高い領域になっているため、この第2支持部22Aに胸部側面35が接触しても、容易に変形することはない。
これにより、この第2支持部22Aによって乗員30の胸部側面35、つまり第7胸椎から第9胸椎付近の胸郭側面部33aが支持され、いわゆる横Gホールド性を確保することができる。
すなわち、横Gによって乗員30が車幅方向に移動したときには、乗員30に接触する第2支持部22Aには、乗員30の力以上の押圧力が作用する。一方、着座した乗員30の背後を支持する第1支持部21Bには、乗員30による押圧力が作用し、それ以上の力がかかりにくい。そのため、第1支持部21Bの反発係数を第2支持部22Aより低い値に設定しても、姿勢保持性が損なわれることはない。
実施例1の車両用シートにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
前記シートバック部20は、車幅方向中央部のメインサポート部21と、前記メインサポート部21の左右両側に設けられると共に前記メインサポート部21よりも車両前方に突出した一対のサイドサポート部22,22と、を有し、
前記メインサポート部21は、車両上下方向の中央部に中央支持部21Aを設定し、前記中央支持部21Aの上方位置に第1支持部21Bを設定し、
前記サイドサポート部22は、前記中央支持部21Aの側方位置に第2支持部22Aを設定し、前記第2支持部22Aの上方位置に第3支持部22Bを設定し、
前記第1支持部21B及び前記第2支持部22Aの硬度を、前記中央支持部21Aよりも高い値に設定し、
前記第3支持部22Bの硬度を、前記中央支持部21Aよりも低い値に設定する構成とした。
これにより、シートクッション部10に着座した乗員の姿勢保持性や横Gホールド性を確保しつつ、肩部のストレッチ動作を行いやすくすることができる。
これにより、(1)の効果に加え、着座した乗員の横Gホールド性の向上を図ることができる。
前記第2支持部22Aは、前記乗員30の胸郭側面部33aを支持する領域に設定し、
前記第3支持部22Bは、前記乗員30の上腕部34に接触する領域に設定する構成とした。
これにより、(1)又は(2)の効果に加え、着座した乗員30の適切な部位を支持することができると共に、肩部のストレッチ動作を行う際に、サイドサポート部22が邪魔にならないようにすることができる。
実施例2は、シートパッドにスリットを設けることで支持部ごとに硬度を異ならせた例である。
そして、メインサポート部41には、車両上下方向の中央部に中央支持部41Aが設定され、この中央支持部41Aの上方位置に第1支持部41Bが設定されている。
また、サイドサポート部42には、中央支持部41Aの側方位置に第2支持部42Aが設定され、第2支持部42Aの上方位置に第3支持部42Bが設定されている。
そして、第3支持部42Bの反発係数(硬度)は、メインサポート部41に設定された中央支持部41Aや第1支持部41Bの反発係数や、サイドサポート部42に設定された第2支持部42Aの反発係数よりも低くなる値に設定されている。
第3支持部42B<中央支持部41A=第1支持部41B<第2支持部42A…(2)
ここで、中央支持部41A及び第1支持部41Bには、同じ大きさの比較的小さい第1スリットS1が設けられている。一方、第3支持部42Bには、第1スリットS1よりも幅及び長さが大きい第2スリットS2が設けられている。
これにより、中央支持部41A及び第1支持部41Bにおける単位面積当たりのスリット面積よりも、第3支持部42Bにおける単位面積当たりのスリット面積の方が大きくなる。ここで、「スリット面積」とは、第1スリットS1又は第2スリットS2によって生じた開口面積である。
実施例3は、シートフレームを増加することで支持部ごとに硬度を異ならせた例である。
そして、メインサポート部51には、車両上下方向の中央部に中央支持部51Aが設定され、この中央支持部51Aの上方位置に第1支持部51Bが設定されている。
また、サイドサポート部52には、中央支持部51Aの側方位置に第2支持部52Aが設定され、第2支持部52Aの上方位置に第3支持部52Bが設定されている。
そして、第3支持部52Bの硬度は、メインサポート部51に設定された中央支持部51Aや第1支持部51Bの硬度や、サイドサポート部52に設定された第2支持部52Aの硬度よりも低くなる値に設定されている。
第3支持部52B<中央支持部51A=第1支持部51B<第2支持部52A…(3)
また、第3支持部52Bにおけるシートパッド(図示せず)の硬度を低くする。
しかしながら、これに限らない。中央支持部21Aと第1支持部21Bと第2支持部22Aの硬度を同等の値に設定し、第3支持部22Bの硬度のみを低い値に設定してもよい。この場合では、乗員の上腕部が接触する第3支持部22Bの硬度だけを異ならせればよいので、車両用シート1を形成しやすくすることができる。
10 シートクッション部
12 ヘッドレスト
20 シートバック部
21 メインサポート部
21A 中央支持部
21B 第1支持部
22 サイドサポート部
22A 第2支持部
22B 第3支持部
30 乗員
31 重心
32 肩甲骨
32a 肩甲棘
32b 下角
33a 胸郭側面部
34 上腕部
Claims (2)
- 乗員が着座するシートクッション部と、前記シートクッション部の後側に起立して前記乗員を支えるシートバック部と、を備えた車両用シートにおいて、
前記シートバック部は、車幅方向中央部のメインサポート部と、前記メインサポート部の左右両側に設けられると共に前記メインサポート部よりも車両前方に突出した一対のサイドサポート部と、を有し、
前記メインサポート部は、車両上下方向の中央部に中央支持部を設定し、前記中央支持部の上方位置に前記シートクッション部に着座した乗員の肩甲骨の肩甲棘及び下角を支持する領域である第1支持部を設定し、
前記サイドサポート部は、前記中央支持部の側方位置に前記乗員の胸郭側面部を支持する領域である第2支持部を設定し、前記第2支持部の上方位置に前記乗員の上腕部に接触する領域である第3支持部を設定し、
前記第1支持部及び前記第2支持部の硬度を、前記中央支持部と同等もしくはそれよりも高い値に設定し、
前記第3支持部の硬度を、前記中央支持部よりも低い値に設定する
ことを特徴とする車両用シート。 - 請求項1に記載された車両用シートにおいて、
前記第2支持部の硬度を、前記第1支持部と同等もしくはそれよりも高い値に設定する
ことを特徴とする車両用シート。
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