[概要]
実施形態の概要を説明する。
各実施形態の擬似力覚発生装置は、基部と、基部に固定された第1から第nの加速度発生装置とを有する(ただし、nは3以上の整数)。第1から第nの加速度発生装置に含まれた第iの加速度発生装置(ただし、i=1,・・・,n)は、それぞれ第iの直線方向に擬似的な力覚を提示可能である。ただし、上述の第iの直線方向(ただし、i=1,・・・,n)は、同一平面上にn個以上の辺を持つ仮想的な多角形に含まれた互いに異なる第1から第nの辺のうち、第iの辺に沿った直線方向である。言い換えると、第1から第nの加速度発生装置は、それぞれ上記の仮想的な多角形に含まれた互いに異なる第1から第nの辺に沿った直線方向に擬似的な力覚を提示可能である。なお、「辺αに沿った直線方向」とは、辺αに沿った直線上の何れかの向きを意味する。また、「辺αに沿った直線」の例は、辺αを通る直線、辺αに並行する直線、辺αと平行または略平行な直線などである。「辺αに沿った直線」は、辺αを通っていてもよいし、通っていなくてもよい。また、各第iの加速度発生装置は、例えば、上述の仮想的な多角形の各第iの辺に沿って配置される。各第iの辺が各第iの加速度発生装置を通る配置であることが望ましいが、各第iの直線方向が第iの辺に沿った直線方向となるのであれば、何れか第iの辺がiの加速度発生装置を通らなくてもよい。上記の仮想的な多角形は、例えば、凸多角形である。また、ユーザは、各実施形態の擬似力覚発生装置の重心位置もしくは重心位置の近傍部分を把持するものとする。また、擬似力覚発生装置の基部が地面と水平になるように把持すると、最も明確に力覚を知覚することができる。ただし、擬似力覚発生装置の基部と地面とが完全に水平でなくても、水平に近い状態(略水平)であれば十分に効果を得ることができる。
このように擬似力覚発生装置を構成し、(1)第1から第nの加速度発生装置のうち、何れの加速度発生装置または加速度発生装置の組み合わせを駆動させるかと、(2)駆動させた加速度発生装置の各々に何れの向きの擬似的な力覚を提示させるか(上述の辺に沿った異なる2方向の直線方向のうち何れの向きに擬似的な力覚を提示させるか)とを制御することで、2自由度の擬似的な並進力覚および1自由度の擬似的な回転力覚を提示できる。なお、「並進力覚」とは、並進運動する物体の進行方向の力覚(すなわち、直線方向の力覚)を意味し、「回転力覚」とは、回転運動する物体の回転方向の力覚を意味する。なお、「疑似的な力覚」とは、実際には物体(擬似力覚発生装置)が並進運動や回転運動をしていないにも関わらず、あたかも並進や回転方向へ動きそうな力が働いているような知覚が生成されることをいう。
擬似力覚発生装置が擬似的な並進力覚を含む力覚を提示するためには、第1から第nの加速度発生装置が提示する擬似的な力覚の提示方向の合成(合成方向)が、上記の仮想的な多角形が位置する平面(同一平面)に沿った直線成分を含む方向となるように制御できればよい。例えば、何れか1個の加速度発生装置のみが直線方向に擬似的な力覚を提示すれば、その方向への並進力覚を含む力覚を提示でき、複数個の加速度発生装置が互いに異なる直線方向に擬似的な力覚を提示すれば、それらの合成方向への並進力覚を含む力覚を提示できる。ここで、n≧3であり、第1から第nの加速度発生装置は、上記の仮想的な多角形に含まれる互いに異なる辺に沿った直線方向に擬似的な力覚を提示できる。そのため、全体として2自由度の並進力覚を提示できる。なお、擬似的な力覚の提示方向の合成(合成方向)とは、擬似的な力覚の「大きさ」と提示方向の「方向」とを持ったベクトルの合成ベクトルを意味する。擬似的な力覚の「大きさ」は人間が知覚する力覚の大きさであるが、その大きさは加速度発生装置の構造(例えば、重量、重心、固有周波数など)や動作(例えば、駆動周波数、反転比など)によって定義可能である。
擬似力覚発生装置が擬似的な回転力覚を含む力覚を提示するためには以下のようにすればよい。上述の仮想的な多角形が、第1から第mの頂点を持ち(ただし、m≧n)、第1から第mの頂点のうち第{((j−1) mod m)+1}の頂点と第{(j mod m)+1}の頂点とがそれぞれ隣り合っているとする(ただし、j=1,・・・,m)。言い換えると、何れかの回転方向に沿った順序で、仮想的な多角形の各頂点を「第1の頂点」「第2の頂点」・・・「第mの頂点」と呼ぶことにする。なお、α mod βは、αをβで割った余り(剰余)を表す。このとき、第1から第nの加速度発生装置のうち、少なくとも、第kの加速度発生装置が第{((k−1) mod m)+1}の頂点から第{(k mod m)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示可能であり、第pの加速度発生装置が第{((p−1) mod m)+1}の頂点から第{(p mod m)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示可能であるとする(ただし、k≠pかつk,p∈{1,・・・,n})。これらの力覚の提示方向は或る回転に沿った接線方向の成分を含み、少なくとも、第kの加速度発生装置および第pの加速度発生装置がこれらの力覚を提示することにより、擬似力覚発生装置全体として1自由度の回転力覚を含む力覚を提示できる。
例えば、仮想的な多角形が三角形である場合(m=3)、その第1から第3の頂点のうち、第1の頂点と第2の頂点とが隣り合い、第2の頂点と第3の頂点とが隣り合い、第3の頂点と第1の頂点とが隣り合っている。このとき、少なくとも、第1の加速度発生装置が第1の頂点から第2の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示し、第2の加速度発生装置が第2の頂点から第3の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示する。これにより、第1の頂点から第2の頂点へ向かう成分を持つ方向および第2の頂点から第3の頂点へ向かう成分を持つ方向を接線方向として持つ擬似的な回転力覚を含む力覚を提示できる。
特に、第{((k−1) mod m)+1}の頂点と第{(k mod m)+1}の頂点と通る直線上、および、第{((p−1) mod m)+1}の頂点と第{(p mod m)+1}の頂点とを通る直線上に擬似力覚発生装置の重心が存在しない場合、並進成分の少ない回転力覚を提示できる。ただし、第{((k−1) mod m)+1}の頂点と第{(k mod m)+1}の頂点と通る直線上、または、第{((p−1) mod m)+1}の頂点と第{(p mod m)+1}の頂点とを通る直線上、の何れか一方のみに擬似力覚発生装置の重心が存在していても、擬似的な回転力覚を含む力覚を提示することは可能である。なぜなら、第kの加速度発生装置または第pの加速度発生装置の何れかは、作用線が擬似力覚発生装置の重心からずれた並進力覚を提示できるからである。
また、提示する回転方向に沿って、少なくとも2個の加速度発生装置が順次力覚を提示していくことで、瞬時に必要な電流を抑えつつ継続的な回転力覚を提示できる。この場合には、k<pとし、第kの加速度発生装置が第{((k−1)modm)+1}の頂点から第{(kmodm)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚の提示(制御1)を開始した後に、第pの加速度発生装置が第{(p−1 mod m)+1}の頂点から第{(pmodm)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚の提示(制御2)を開始する。このような処理には様々なバリエーションがある。以下にこのような処理を例示する。
(処理1)制御1を開始した後に制御2を開始し、その後に制御1,2を停止する。
(処理2)制御1を開始した後に制御2を開始し、その後に制御1を停止し、制御1を停止した後に制御2を停止する。
(処理3)制御1を開始した後に制御1を停止し、制御1を停止した後に制御2を開始し、制御2を停止する。
(処理4)処理1、処理2、または処理3を、所定の条件を満たすまで繰り返す。所定の条件の例は、所定の回数繰り返されたことや、所定の時間が経過したことなどである。
また、提示する回転方向に沿って、少なくとも3個の加速度発生装置が順次力覚を提示していくことで、瞬時に必要な電流を抑えつつ継続的な回転力覚をより明確に提示できる。すなわち、さらに第1から第nの加速度発生装置のうち第qの加速度発生装置が、第{(q−1modm)+1}の頂点から第{(qmodm)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示可能とする(ただし、k<p<qかつk,p,q∈{1,・・・,n})。そして、制御1を開始した後に制御2を開始し、制御2を開始した後に、第qの加速度発生装置が第{(q−1modm)+1}の頂点から第{(qmodm)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚の提示(制御3)を開始する。このような処理には様々なバリエーションがある。以下にこのような処理を例示する。
(処理11)制御1を開始した後に制御2を開始し、制御2を開始した後に制御3を開始し、その後に制御1,2,3を停止する。
(処理12)制御1を開始した後に制御2を開始し、制御2を開始した後に制御3を開始し、その後に制御1を停止し、制御1を停止した後に制御2を停止し、制御2を停止した後に制御3を停止する。
(処理13)制御1を開始した後に制御1を停止し、制御1を停止した後に制御2を開始し、制御2を停止した後に制御3を開始し、その後制御3を停止する。
(処理14)処理11、処理12、または処理13を、所定の条件を満たすまで繰り返す。
(処理15)制御{((r−1) mod 3)+1}を開始した後に制御{(r mod 3)+1}を開始し、その後に制御{{(r−1) mod 3}+1}を停止し、その後に制御{{(r+2) mod 3}+1}を開始し、その後に制御{(r mod 3)+1}を停止し、制御{(r mod 3)+1}を停止した後に制御{((r−1) mod 3)+1}を開始する、各rについての制御ループを、r=1,・・・,Rについて繰り返す(ただしRは正の整数)。
また、すべての第iの加速度発生装置(ただし、i=1,・・・,n)が第{((k−1) mod m)+1}の頂点から第{(k mod m)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示可能であれば、強い回転力覚を含む力覚を提示することが可能となる。特に、同時にすべての第iの加速度発生装置(ただし、i=1,・・・,n)が、第{((k−1) mod m)+1}の頂点から第{(k mod m)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向に擬似的な力覚を提示すれば、より強い回転力覚を含む力覚を提示できる。
また、加速度発生装置は、例えば、周期運動を行って擬似的な並進力覚を提示する。この場合、第1から第nの加速度発生装置のうち複数個の加速度発生装置が、周期および位相が互いに同一な周期運動を行って擬似的な力覚を提示してもよい。例えば、回転力覚を含む力覚を提示する際に、そのために駆動するすべての加速度発生装置が周期および位相が互いに同一な周期運動を行って擬似的な力覚を提示すれば、瞬間的に強い回転力覚を提示することができる。また、並進力覚を含む力覚を提示するときにも、そのために駆動するすべての加速度発生装置が周期および位相が互いに同一な周期運動を行って擬似的な力覚を提示すれば、瞬間的に強い並進力覚を提示することができる。
また、上述した仮想的な多角形が同一平面上にn個の辺を持つ多角形(n−角形)である場合(すなわち、m=n)、第1から第nの加速度発生装置によってこの多角形の全ての辺に沿った直線方向に並進力覚をそれぞれ提示できる。これにより、提示する並進力覚の方向を綿密に制御できたり、並進成分の少ない回転力覚を提示できたりする。
擬似力覚発生装置の重心(または擬似力覚発生装置を含む装置の重心)を含む平面が上述の仮想的な多角形のすべての辺を含み、この仮想的な多角形の各第iの辺(ただし、i=1,・・・,n)が各第iの加速度発生装置を通り、各第iの直線方向(ただし、i=1,・・・,n)がこの仮想的な多角形の各第iの辺を含む場合には、この重心を含む仮想的な平面に対する仰俯角成分の並進力覚や回転力覚の提示を抑制でき、この仮想的な平面に沿った並進力覚および回転力覚を正確に提示できる。また、擬似力覚発生装置の重心がこの仮想的な多角形の内側の領域(この多角形を断面とする仮想的な多角筒の内側の領域)に存在する場合には、この仮想的な多角形の内側の領域に回転中心を持つ擬似的な回転力覚を提示できる。
回転力覚を明確に提示するためには、上述した仮想的な多角形の内側の領域に第1から第nの擬似力覚発生装置の重心がくるようにし、第1から第nの加速度発生装置からなる配置構成を回転対称とする(第1から第nの加速度発生装置が回転対称に配置されている)ことが望ましい。特に、第1から第nの加速度発生装置からなる配置構成が、この重心を通る軸について回転対称であることがより望ましい。加速度発生装置のなす仮想的な多角形の内側の領域に擬似力覚発生装置の重心がくるように設計する方法としては、例えば、加速度発生装置のなす仮想的な多角形が基部の外周に内接するようにすることが考えられる。
[詳細]
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。以下ではn=m=3の場合を例にとって説明する。
<構成>
図1、図2A〜図2Cに例示するように、本形態の擬似力覚発生装置1は、基部11と、基部11に固定された第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3と、を有する。基部11は、板面11aを有する剛体または弾性体である。基部11は剛体から構成されることが望ましいが、厳密な意味での剛体でなくとも、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3で生じた加速度を伝達可能な材質であればよい。例えば、ABS樹脂等の合成樹脂、銅等の金属、ガラス、木材、ゴム等によって基部11を構成することができる。また、単一の材料によって基部11が構成されている必要はなく、例えば、絶縁層と導電層とを含む電子回路基板の一部を基部11として用いてもよい。その他、携帯電話やスマートフォン等の電子機器の筺体の一部を基部11として用いてもよい。基部11の板面11a側には台座部11b−1〜11b−3が設けられており、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3は、台座部11b−1〜11b−3を介して基部11の板面11a側に固定されている。この例の第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3は略円柱形状であり、それぞれの長手方向に沿って擬似的な並進力覚を提示する。また、この例の第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3は、それぞれ、長手方向に沿った異なる2方向のうち何れの向きに擬似的な力覚を提示するかも制御可能である。
図2A〜図2Cに例示するように、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3は、それぞれ、仮想的な多角形(三角形V1V2V3)が含む互いに異なる第1から第3の辺S1〜S3に沿って配置されている。この多角形(三角形V1V2V3)は、板面11aに沿った(例えば、板面11aと平行または略平行の)同一平面上に3個の頂点V1〜V3および3個の辺S1〜S3を持つ。本形態では、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3の長手方向がそれぞれ辺S1〜S3に沿って配置される。これにより、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3は、それぞれ、第1から第3の辺S1〜S3に沿った直線方向に擬似的な力覚を提示可能となっている。
また、図2Aの例では、擬似力覚発生装置1の重心CGを含む平面が三角形V1V2V3のすべての辺S1〜S3を含み、各第iの加速度発生装置12−i(ただし、i=1,2,3)の力覚提示方向がそれぞれ三角形V1V2V3の各辺Siを含む。この例では、頂点V{((i−1) mod 3)+1}と頂点V{(imod 3)+1}と通る直線上に重心CGが存在しない。重心CGは三角形V1V2V3の内側に存在する。また、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3からなる配置構成が、重心CGを通る軸について回転対称となっている。このような配置構成により、各第iの加速度発生装置は、それぞれ仮想的な三角形V1V2V3の第iの辺Siに沿った第iの直線方向に擬似的な力覚を提示可能となっている(ただし、i=1,2,3)。また、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3の長手方向の軸は、それぞれ辺S1〜S3を通るように配置されることが望ましいが、必ずしも、それぞれ辺S1〜S3を通る必要はない。また、図1、図2A〜図2Cでは円盤状の基部11を例示しているが、基部11の形状はこれに限定されず、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3が、それぞれ、第1から第3の辺S1〜S3に沿った直線方向に擬似的な力覚を提示可能であれば、どのような形状であってもよい。
<機能構成>
図3に例示するように、本形態の擬似力覚発生装置1は、力覚指定部101によって制御される制御部102に電気的に接続される。力覚指定部101および制御部102は、例えば、CPU(central processing unit)等のプロセッサ(ハードウェア・プロセッサ)やRAM(random-access memory)等のメモリ等を備える汎用または専用のコンピュータに、所定のプログラムが読み込まれて構成される装置である。力覚指定部101および制御部102を構成する一部またはすべての処理部がCPU以外の電子回路(circuitry)によって構成されていてもよい。なお、CPUも電子回路(circuitry)の一種である。
<加速度発生装置の例示>
第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3には、例えば、非特許文献1に開示された装置を用いてもよいし、参考文献1(特許第4551448号公報)に開示された装置を用いてもよいし、その他の加速度発生装置を用いてもよい。以下に、その他の加速度発生装置の例を示す。
図4Aおよび図4Bは、加速度発生装置12−i(ただし、i=1,2,3)の一例を例示した概念図であり、その長手方向の断面を例示している。図4Aおよび図4Bに例示するように、この例の加速度発生装置12−iは、例えば、支持部121−i、ばね122−i,123−i、コイル124−i、永久磁石125−i、およびケース126−iを有している。ケース126−iおよび支持部121−iは、ともに円筒の両方の開放端を閉じた形状からなる中空の部材である。ただし、支持部121−iは、ケース126−iよりも小さく、ケース126−iの内部に収容可能な大きさである。ケース126−iおよび支持部121−iは、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂から構成される。ばね122−i,123−iは、例えば、金属等から構成されるつるまきばねや板ばね等である。ばね122−i,123−iのばね定数は同一であることが望ましいが、互いに相違していてもよい。永久磁石125−iは、例えば、円柱形状の永久磁石であり、長手方向の一方の端部125a−i側がN極であり、他方の端部125b−i側がS極である。コイル124−iは、例えば、一つながりのエナメル線であり、第1巻き部124a−iと第2巻き部124b−iとを有する。
永久磁石125−iは支持部121−iの内部に収容され、そこで長手方向にスライド可能に支持されている。このような支持機構の詳細は図示しないが、例えば、支持部121−iの内壁面に長手方向に沿ったまっすぐなレールが設けられ、永久磁石125−iの側面にこのレールをスライド可能に支持するレール支持部が設けられている。支持部121−iの長手方向の一端側の内壁面121a−iには、ばね122−iの一端が固定され、ばね122−iの他端は永久磁石125−iの端部125a−iに固定されている。また、支持部121−iの長手方向の他端側の内壁面121b−iには、ばね123−iの一端が固定され、ばね123−iの他端は永久磁石125−iの端部125b−iに固定されている。
支持部121−iの外周側にはコイル124−iが巻きつけられている。ただし、永久磁石125−iの端部125a−i側(N極側)では、第1巻き部124a−iがA1方向に巻きつけられており、端部125b−i側(S極側)では、第2巻き部124b−iがA1方向(奥から手前に向けた方向)と反対向きのB1方向(手前から奥に向けた方向)に巻き付けられている。すなわち、永久磁石125−iの端部125a−i側(N極側)からみた場合、第1巻き部124a−iは時計回りに巻き付けられており、第2巻き部124b−iは反時計回りに巻き付けられている。また、永久磁石125−iが停止し、ばね122−i,123−iからの弾性力が釣り合った状態において、永久磁石125−iの端部125a−i側(N極側)が第1巻き部124a−iの領域に配置され、端部125b−i側(S極側)が第2巻き部124b−iの領域に配置されることが望ましい。
以上のように配置構成された支持部121−i、ばね122−i,123−i、コイル124−i、および永久磁石125−iが、ケース126−i内に収容され、支持部121−iがケース126−iの内部に固定されている。ただし、ケース126−iの長手方向は、支持部121−iの長手方向および永久磁石125−iの長手方向と一致する。
コイル124−iにA1方向(B1方向)に電流を流すと、フレミングの左手の法則で説明されるローレンツ力の反作用により、永久磁石125−iにC1方向(永久磁石125−iのN極からS極に向かう方向:右方向)の力が加えられる(図4A)。逆に、コイル124−iにA2方向(B2方向)に電流を流すと、永久磁石125−iにC2方向(永久磁石125−iのS極からN極に向かう方向:左方向)の力が加えられる(図4B)。ただし、A2方向はA1方向の反対方向である。これらの動作により、永久磁石125−iおよびばね122−i,123−iからなる系に運動エネルギーが与えられる。それにより、ケース126−iを基準とする永久磁石125−iの位置および加速度を変化させることができる。
ここで、コイル124−iに所定の方向に電流を流す期間(時間)とそれ以外の期間とを周期的に繰り返す。その際、所定の方向に電流を流す期間とそれ以外の期間との比(反転比)を何れか一方の期間に偏らせることにより、所望の方向に擬似的な力覚を提示できる。以下、図5Aから図5Dを用いてこの制御を例示する。ただし、図5Aから図5Dの縦軸はコイル124−iに流す電流値(電流指令値)[A]を表し、横軸は時間[msec]を表す。A1方向(B1方向)の電流値を正で表現し、A2方向(B2方向)の電流値を負で表現している。
図5Aおよび図5Bは、A1方向(B1方向)の電流(X)を流す期間(時間)t1とA2方向(B2方向)の電流(−X)を流す期間t2とを周期的に繰り返す例である。この場合、A1方向(B1方向)の電流を流す期間t1とA2方向(B2方向)の電流を流す期間t2との比(反転比t1:t2)に応じ、図4Aおよび図4Bの左方向または右方向に擬似的な力覚を提示できる。すなわち、図4Aおよび図4Bの左方向に擬似的な力覚を提示する場合には、t1>t2となる反転比の周期的な電流をコイル124−iに流す(図5A)。例えば、反転比t1:t2=18msec:7msecの周期的な電流(40Hzの周波数の電流)をコイル124−iに流す。逆に、右方向に擬似的な力覚を提示する場合には、t1<t2となる反転比の周期的な電流をコイル124−iに流す(図5B)。例えば、反転比t1:t2=7msec:18msecの周期的な電流(40Hzの周波数の電流)をコイル124−iに流す。
図5Cおよび図5Dは、A2方向(B2方向)の電流(−X)を流す期間t2と電流を流さない期間t1とを周期的に繰り返すか、A1方向(B1方向)の電流(X)を流す期間(時間)t1と流さない期間t2とを周期的に繰り返す例である。ただし、期間t1と期間t2との反転比t1:t2が何れかの期間に偏っている。すなわち、左方向に擬似的な力覚を提示する場合には、A2方向(B2方向)の電流(−X)を流す期間t1と電流を流さない期間t2とを周期的に繰り返す電流をコイル124−iに流す。この電流の反転比t1:t2は期間t1に偏っており、t1>t2である(図5C)。例えば、反転比t1:t2=18msec:7msecの電流をコイル124−iに流す。逆に、右方向に擬似的な力覚を提示する場合には、A1方向(B1方向)の電流(X)を流す期間(時間)t1と流さない期間t2とを周期的に繰り返す電流をコイル124−iに流す。この電流の反転比t1:t2は期間t2に偏っており、t1<t2である(図5D)。例えば、反転比t1:t2=7msec:18msecの電流をコイル124−iに流す。
なお、説明の便宜上、図5Aから図5Dに図示した電流値(電流指令値)は矩形波であった。しかしながら、所定の方向に電流を流す期間とそれ以外の期間とを周期的に繰り返す電流であって、所定の方向に電流を流す期間とそれ以外の期間とのデューティー比が何れか一方の期間に偏っているのであれば、どのような波形の電流であってもよい。例えば、立ち上がりや立ち下がりが鈍った電流であってもよいし、リップルを含む電流であってもよい。また、所定の方向に電流を流す期間とその逆の方向に電流を流す期間とを周期的に繰り返す電流であって、所定の方向の電流の振幅値またはその平均値と、その逆の方向の電流の振幅値またはその平均値とが互いに相違していてもよい。
また、図4Aおよび図4Bに例示した加速度発生装置12−iの変形例として、永久磁石125−iの端部125a−i側(N極側)または端部125b−i側(S極側)のみにコイル124−iが巻き付けられていてもよい。例えば、図6Aおよび図6Bのように、支持部121−iの外周側の端部125b−i側(S極側)のみにコイル124−iが巻き付けられていてもよい。このような場合の制御およびそれによって提示される擬似的な力覚の方向は、図4Aおよび図4Bに例示した加速度発生装置12−iと同じである。
あるいは、図7に例示するように、図4Aおよび図4Bに例示した加速度発生装置12−iのコイル124−iに代えて、支持部121−iの外周側の端部125a−i側(N極側)にA1方向に巻きつけられた第1巻き部124a’−i側のコイルと、支持部121−iの外周側の端部125b−i側(S極側)にB1方向(A1方向と反対向き)に巻き付けられた第2巻き部124b’−i側のコイルとが別々のものが用いられてもよい。すなわち、第1巻き部124a’−i側のコイルと第2巻き部124b’−i側のコイルとが電気的に接続されておらず、互いに異なる電気信号を与えることができる構成であってもよい。
図7の例の場合、第1巻き部124a’−i側のコイルのみにA1方向の逆向きのA2方向の電流(−X)を流す期間t1と電流を流さない期間t2とを周期的に繰り返すか、第2巻き部124b’−i側のコイルのみにB1方向の電流(X)を流す期間(時間)t1と流さない期間t2とを周期的に繰り返す。ただし、期間t1と期間t2との反転比t1:t2が何れか一方の期間に偏っている。すなわち、図7の左方向に擬似的な力覚を提示する場合には、第1巻き部124a’−i側のコイルのみにA2方向の電流(−X)を流す期間t2と電流を流さない期間t1とを周期的に繰り返す電流を流すが、この電流の反転比t1:t2は期間t1に偏っており、t1>t2である(図5C)。例えば、反転比t1:t2=18msec:7msecの電流を流す。逆に、右方向に擬似的な力覚を提示する場合には、第2巻き部124b’−i側のコイルのみにB1方向の電流(X)を流す期間(時間)t1と流さない期間t2とを周期的に繰り返す電流を流すが、この電流の反転比t1:t2は期間t2に偏っており、t1<t2である(図5D)。例えば、反転比t1:t2=7msec:18msecの電流を流す。
<例示した加速度発生装置が擬似的な力覚を提示できる理由>
ある質量をもった物体の並進運動を考える。この並進運動は、擬似力覚を提示したい方向へ大きな加速度で短時間で移動し、逆の方向へは小さな加速度で長時間で移動する、偏加速度をもった周期運動であるものとする。この場合、この物体を含む系を把持しているユーザは、この提示方向への擬似力覚を知覚する。これは、人間の知覚特性を利用したものであり、把持動作に関わる固有感覚と触覚によって発生する現象である(例えば、参考文献1参照)。上述のように、所定の方向に電流を流す期間とそれ以外の期間との反転比を何れかの期間に偏らせた電流をコイルに流すことにより、永久磁石125−iに偏加速度を与えることができ、それによって所望の方向へ擬似的な力覚を提示することができる。
図8Aおよび図8Bは、A1方向(B1方向)の電流を流す期間(時間)t1とA2方向(B2方向)の電流を流す期間t2とを反転比t1:t2=18msec:7msecで繰り返す40Hzの周波数の電流を、図4Aおよび図4Bに例示した加速度発生装置12−iのコイル124−iに流した場合における、ケース126−iを手で把持した場合の外界を基準としたケース126−iの位置変化および加速度変化をそれぞれ例示している。一方、図8Cおよび図8Dは、A1方向(B1方向)の電流を流す期間(時間)t1とA2方向(B2方向)の電流を流す期間t2とを反転比t1:t2=7msec:18msecで繰り返す40Hzの周波数の電流を、コイル124−iに流した場合における、ケース126−iを手で把持した場合の外界を基準とした場合のケース126−iの位置変化および加速度変化をそれぞれ例示している。なお、図8Aから図8Dの横軸は時間[Sec]を表し、図8Aおよび図8Cの縦軸は外界を基準とした場合のケース126−iの位置変化[mm]を表し、図8Bおよび図8Dの縦軸は外界を基準とした場合のケース126−iの加速度[m/s2]を表す。図4Aおよび図4Bの左方向が図8Aから図8Dの縦軸の正方向であり、右方向が負方向である。図8Bに例示するように、反転比t1:t2=18msec:7msecの電流を流した場合、t1の始まりの時点(t2からt1に切り替わる時点)で、図4Aおよび図4Bの永久磁石125−iが左に動いている状態から急激に右方向へ動かす力が働くため、その反作用でケース126−iに左方向へ大きな加速度が生ずる。一方、t2の始まる時点(t1からt2に切り替わる時点)では、t1の間に移動して静止している永久磁石125−iが左方向に動くため、その反作用で生ずるケース126−iへの右方向の加速度はt1の開始時点より大きさが小さい。その結果、ケース126−iの加速度に左右差が生じ、左方向へ擬似的な力覚が提示される。逆に、図8Dに例示するように、反転比t1:t2=7msec:18msecの電流を流した場合、図4Aおよび図4Bの右方向へはケース126−iに大きな加速度が生じ、左方向へは小さな加速度が生ずる。その結果、右方向へ擬似的な力覚が提示される。
<知覚される擬似的な力覚の強さと周波数との関係>
80Hzまたは80Hz付近の周波数成分は、動物(人を含む)の皮膚・筋・腱の受容器の中で、方向や加速度の知覚に寄与する受容器の神経活動を最も活発化させる周波数である。そのため、80Hzまたはその付近の周波数成分を持つ加速度が与えられた人(動物)は強い力覚や動きを知覚する。図9に図8Bに示した加速度のFFT周波数解析結果を示す。図9で、横軸は周波数、縦軸は、その周波数での加速度のパワーを示す。基本周波数の40Hzに加え、80Hz付近で加速度に大きなパワーが含まれていることが示されている。加速度がこの周波数付近の成分をもつことと、加速度の非対称性(偏加速度)により、強い疑似的な力覚を提示できる。
図10に知覚明瞭性の実験結果を示す。実験では、図4Aおよび図4Bに例示した加速度発生装置12−i(17mm×17mm×33mmのABS樹脂製の直方体型のケース126−iに各部が収容されている)を用いた。27〜49歳の右利き7名の実験協力者が実験に参加した。実験協力者は右手の親指と人差し指で加速度発生装置12−iをつまみ、加速度発生装置12−iが1秒ごとに力覚の提示方向を切り替え、3秒間継続して力覚を提示した。実験協力者は方向の切り替わりを含め、明瞭に力の方向とその変化を感じたときに「1」、それ以外のときに「0」を回答した。実験参加者に反応に関するフィードバックは与えられなかった。図4Aおよび図4Bの左方向に擬似的な力覚を提示する場合には、A1方向(B1方向)の電流(X)を流す期間t1と逆の電流(−X)を流す期間t2とを周期的に繰り返す電流をコイル124−iに流した。逆に、右方向に擬似的な力覚を提示する場合には、A2方向(B2方向)の電流(−X)を流す期間(時間)t1と逆の電流を流す期間t2とを周期的に繰り返す電流をコイル124−iに流した。また、
t1:1,3,5,7,9,12,15[ms]
t2:12,18,23,33,43[ms]
からなる組み合わせのうち、t1<t2となる組み合わせからなる、計33条件の反転比t1:t2について実験を行った。すべての条件でアンプのゲインは同一とした。図10の横軸は電流の周波数(1/(t1+t2))を表し、縦軸は分数表記した反転比(t2/t1)を表し、●(塗りつぶされた○)は正解率100%、○は正解率75%以上100%未満、△は正解率50%以上75%未満、×は正解率50%未満であったことを示す。なお、「正解」とは、実際に提示された力覚の方向とその変化と実験協力者の回答とが一致したことを表す。図10から40Hzまたはその近傍の周期の電流を用いることで強い方向性をもつ力覚を提示できることが分かる。
<擬似力覚発生装置の動作>
次に、擬似力覚発生装置1の動作を説明する。
図3に例示した力覚指定部101には、どのような力覚を提示するのかを指定するための情報(指定情報)が入力される。指定情報の例は、並進力覚であるか回転力覚であるかを特定する情報、力覚の提示方向を特定する情報、力覚の強さを特定する情報などである。力覚指定部101は、入力された指定情報が特定する力覚を提示させるための制御信号を制御部102に送る。制御部102は、入力された制御信号に応じ、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3に入力する電流を生成して出力する。第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3は、入力された電流に応じた動作を行い、これにより、指定情報によって特定された力覚を提示する。各加速度発生装置が力覚を提示するための制御は既に例示したため、以下では擬似力覚発生装置1が指定情報によって指定される力覚を提示するために各加速度発生装置が提示すべき力覚を例示する。
図11Aに例示するように、時計回り(G1方向)の回転力覚を提示するためには、各第iの加速度発生装置12−i(ただし、i=1,2,3)が頂点V{((i−1) mod 3)+1}から第V{(i mod 3)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、頂点V{((i−1) mod 3)+1}から第V{(i mod 3)+1}の頂点へ向かう方向)に擬似的な力覚を提示すればよい。すなわち、第1,2,3の加速度発生装置12−1,12−2,12−3が、それぞれ、頂点V1から頂点V2、頂点V2から頂点V3、頂点V3から頂点V1へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向D1,E1,F1)に擬似的な力覚を提示すればよい。特に、第1〜3の加速度発生装置12−1〜12−3が、周期および位相が互いに同一な周期運動を行って擬似的な力覚を提示する場合には、瞬間的により強い回転力覚を提示できる。なお、反時計回り(G1の反対方向)の回転力覚を提示するためには、第1,2,3の加速度発生装置12−1,12−2,12−3が、それぞれD1,E1,F1の逆向きの力覚を提示すればよい。
図11Bに例示するように、第2の加速度発生装置12−2から頂点V1へ向かう方向H1の並進力覚を提示するためには、第1の加速度発生装置12−1が頂点V2から頂点V3に向かう成分を持つ方向(例えば、頂点V2から頂点V3に向かう方向D2)に擬似的な力覚を提示し、第3の加速度発生装置12−3が頂点V3から頂点V1に向かう成分を持つ方向(例えば、頂点V3から頂点V1に向かう方向F1)に擬似的な力覚を提示し、第2の加速度発生装置12−2が力覚を提示しなければよい。特に、第1,3の加速度発生装置12−1,12−3が、周期および位相が互いに同一な周期運動を行って擬似的な力覚を提示する場合には、瞬間的により強い並進力覚を提示できる。
図11Cに例示するように、第3の加速度発生装置12−3から頂点V3から頂点V2へ向かう方向J1の並進力覚を含む力覚を提示するためには、第2の加速度発生装置12−2が頂点V3から頂点V2へ向かう成分を持つ方向(例えば、頂点V2から頂点V3に向かう方向E2)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しなければよい。
また、図12A〜図12Cのように時計回り(G1方向)の回転力覚を提示することもできる。すなわち、第1の加速度発生装置12−1が頂点V1から第V2の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向D1)への擬似的な力覚の提示を開始し(図12A)、それを停止してから、第2の加速度発生装置12−2が頂点V2から第V3の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向E1)への擬似的な力覚の提示を開始し(図12B)、それを停止してから、第3の加速度発生装置12−3が頂点V3から第V1の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向F1)への擬似的な力覚の提示を開始し(図12C)、それを停止してもよい。これにより、継続的な回転力覚を提示できる。これらの制御を繰り返し行ってもよい。これより、より長い時間継続する回転力覚を提示できる。
また、図13A〜図13Cのように時計回り(G1方向)の回転力覚を提示することもできる。すなわち、第1,2の加速度発生装置12−1,12−2が頂点V1から第V2の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向D1)および頂点V2から第V3の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向E1)を開始し(図13A)、第1の加速度発生装置12−1を停止してから、第3の加速度発生装置12−3が頂点V3から第V1の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向F1)への擬似的な力覚の提示を開始し(図13B)、第2の加速度発生装置12−2を停止してから、第1の加速度発生装置12−1が頂点V1から第V2の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向D1)への擬似的な力覚の提示を開始してもよい。これにより、連続的な強い回転力覚を提示できる。これらの制御を繰り返し行ってもよい。これより、より長い時間継続する回転力覚を提示できる。
また、図14A〜図14Cのように時計回り(G1方向)の回転力覚を提示することもできる。すなわち、第1の加速度発生装置12−1が頂点V1から第V2の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向D1)への擬似的な力覚の提示を開始し(図14A)、それを停止することなく、第2の加速度発生装置12−2が頂点V2から第V3の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向E1)への擬似的な力覚の提示を開始し(図14B)、それを停止することなく、第3の加速度発生装置12−3が頂点V3から第V1の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向F1)への擬似的な力覚の提示を開始(図14C)してもよい。これにより、連続的に強さを増す回転力覚を提示できる。これらの制御を繰り返し行ってもよい。これより、より長い時間継続する回転力覚を提示できる。
また、反時計回り(G1の反対方向)の回転力覚を提示する際に、第1,2,3の加速度発生装置12−1,12−2,12−3が、図12A〜図12Cの逆向きの順序で逆向きの力感を提示していってもよい。図13A〜図13Cおよび図14A〜図14Cについても同様である。
[変形例1]
次にn=m=4の例を示す。図15A等に例示するように、この変形例の擬似力覚発生装置2は、基部11と、基部11に固定された第1から第4の加速度発生装置22−1〜22−4と、を有する。基部11は前述した通りであり、各第iの加速度発生装置22−iは、第iの加速度発生装置12−iと同じである。ただし、第1から第4の加速度発生装置22−1〜22−4は、それぞれ、板面11aに沿った(例えば、板面11aと平行または略平行の)同一平面上に4個の頂点W1〜W4および4個の辺T1〜T4を持つ仮想的な多角形(四角形W1W2W3W4)の互いに異なる第1から第4の辺T1〜T4に沿って配置されている。この例では、第1から第4の加速度発生装置22−1〜22−4の長手方向がそれぞれ辺T1〜T4に沿って配置される。これにより、加速度発生装置22−1〜22−4は、それぞれ、第1から第4の辺T1〜T4に沿った直線方向に擬似的な力覚を提示可能となっている。
図15Aに例示するように、時計回り(O1方向)の回転力覚を提示するためには、各第iの加速度発生装置22−i(ただし、i=1,2,3,4)が頂点V{((i−1) mod 4)+1}から第V{(i mod 4)+1}の頂点へ向かう成分を持つ方向(例えば、頂点V{((i−1) mod 4)+1}から第V{(i mod 4)+1}の頂点へ向かう方向)に擬似的な力覚を提示すればよい。すなわち、第1,2,3,4の加速度発生装置22−1,22−2,22−3,22−4が、それぞれ、頂点W1から頂点W2、頂点W2から頂点W3、頂点W3から頂点W4、頂点W4から頂点W1へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向K1,L1,M1,N1)に擬似的な力覚を提示すればよい。反時計回り(O1の反対方向)の回転力覚を提示するためには、これらの逆向きの力覚を提示すればよい。
図15Bに例示するように、第1の加速度発生装置22−1から第3の加速度発生装置22−3へ向かう方向P1の並進力覚を提示するためには、第1の加速度発生装置22−1が頂点W1から頂点W2に向かう成分を持つ方向(例えば、頂点W1から頂点W2に向かう方向K1)に擬似的な力覚を提示し、第3の加速度発生装置22−3が頂点W4から頂点W3に向かう成分を持つ方向(例えば、頂点W4から頂点W3に向かう方向M2)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しなければよい。
図15Cに例示するように、頂点W2から頂点W4に向かう方向Q1の並進力覚を提示するためには、第1の加速度発生装置22−1が頂点W2から頂点W1に向かう成分を持つ方向(例えば、頂点W2から頂点W1に向かう方向K2)に擬似的な力覚を提示し、第2の加速度発生装置22−2が頂点W2から頂点W3に向かう成分を持つ方向(例えば、方向L1)に擬似的な力覚を提示し、第3の加速度発生装置22−3が頂点W3から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、方向M1)に擬似的な力覚を提示し、第4の加速度発生装置22−4が頂点W1から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、頂点W1から頂点W4に向かう方向N2)に擬似的な力覚を提示すればよい。
また、図16Aまたは図16Bのように、一部の加速度発生装置のみによって回転力覚を提示してもよい。すなわち、図16Aに例示するように、第2の加速度発生装置22−2が頂点W2から頂点W3に向かう成分を持つ方向(例えば、方向L1)に擬似的な力覚を提示し、第4の加速度発生装置22−4が頂点W4から頂点W1に向かう成分を持つ方向(例えば、方向N1)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しないことで、時計回り(O1方向)の回転力覚を提示してもよい。同様に、図16Bに例示するように、第1の加速度発生装置22−1が頂点W1から頂点W2に向かう成分を持つ方向(例えば、方向K1)に擬似的な力覚を提示し、第3の加速度発生装置22−3が頂点W3から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、方向M1)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しないことで、時計回り(O1方向)の回転力覚を提示してもよい。また、強い回転力覚を提示するためには図15Aのように制御し、弱い回転力覚を提示するためには図16Aまたは図16Bのように制御してもよい。また、図16Aの制御と図16Bの制御とを交互に繰り返してもよい。反時計回り(O1の反対方向)の回転力覚を提示するためには、これらの逆向きの力覚を提示すればよい。
また、図17Aおよび図17Bのように、図15Bおよび図15Cよりも少ない加速度発生装置で力覚を提示し、図15Bおよび図15Cよりも弱い並進力覚を提示してもよい。すなわち、図17Aに例示するように、第3の加速度発生装置22−3が頂点W4から頂点W3に向かう成分を持つ方向(例えば、方向M2)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しないことでP1方向の弱い並進力覚を提示してもよい。また、図17Bに例示するように、第3の加速度発生装置22−3が頂点W3から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、方向M1)に擬似的な力覚を提示し、第4の加速度発生装置22−4が頂点W1から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、方向N2)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しないことでQ1方向の弱い並進力覚を提示してもよい。また、強い並進力覚を提示するためには図15Bおよび図15Cのように制御し、弱い並進力覚を提示するためには図17Aおよび図17Bのように制御してもよい。
これらの変形例でも、複数の加速度発生装置が同時に擬似的な力覚を提示する場合に、周期および位相が互いに同一な周期運動を行うことで、瞬間的により強い力覚を提示できる。また、回転力覚を提示する際に各加速度発生装置が順次覚を提示していくことで、継続的な回転力覚を提示することもできる。
[変形例2]
次にm=4かつn=3の例を示す。図18A等に例示するように、この変形例の擬似力覚発生装置3は、基部11と、基部11に固定された加速度発生装置22−1,22−3,22−4と、を有する。加速度発生装置22−1,22−3,22−4は、それぞれ、板面11aに沿った四角形W1W2W3W4の辺T1,T3,T4に沿って配置されている。これにより、加速度発生装置22−1,22−3,22−4は、それぞれ、辺T1,T3,T4に沿った直線方向に擬似的な力覚を提示可能となっている。
図18Aに例示するように、時計回り(O1方向)の回転力覚を提示するためには、加速度発生装置22−1,22−3が、それぞれ、頂点W1から頂点W2、頂点W3から頂点W4へ向かう成分を持つ方向(例えば、方向K1,M1)に擬似的な力覚を提示すればよい。反時計回り(O1の反対方向)の回転力覚を提示するためには、これらの逆向きの力覚を提示すればよい。
図18Bに例示するように、方向P1の並進力覚を提示するためには、加速度発生装置22−1が頂点W1から頂点W2に向かう成分を持つ方向(例えば、方向K1)に擬似的な力覚を提示し、加速度発生装置22−3が頂点W4から頂点W3に向かう成分を持つ方向(例えば、方向M2)に擬似的な力覚を提示し、その他の加速度発生装置が力覚を提示しなければよい。
図18Cに例示するように、方向Q1の並進力覚を提示するためには、加速度発生装置22−3が頂点W3から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、方向M1)に擬似的な力覚を提示し、第4の加速度発生装置22−4が頂点W1から頂点W4に向かう成分を持つ方向(例えば、方向N2)に擬似的な力覚を提示すればよい。
[その他]
力覚指定部101や制御部102の構成をコンピュータによって実現する場合、その機能の処理内容はプログラムによって記述される。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上述した仮想的な多角形の何れかの辺に沿った直線方向の擬似的な力覚を提示可能な加速度発生装置が複数個存在し、そのうちで駆動させる加速度発生装置の個数を制御することで、この直線方向成分の力覚の強さを制御してもよい。また、上述の実施形態では、制御部102が入力された制御信号に応じ、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3に入力する電流を制御する例を示した。しかしながら、制御部102が入力された制御信号に応じ、第1から第3の加速度発生装置12−1〜12−3に印加する電圧を制御してもよい。また、図2Aでは、擬似力覚発生装置1の重心CGを含む仮想的な平面(基部11と平行な平面)が三角形V1V2V3のすべての辺S1〜S3を含み、各第iの加速度発生装置12−i(ただし、i=1,2,3)の力覚提示方向がそれぞれ三角形V1V2V3の各辺Siを含み、頂点V{((i−1) mod 3)+1}と頂点V{(imod 3)+1}と通る直線上に重心CGが存在しない例を示した。しかしながら、擬似力覚発生装置1の重心CGを含む仮想的な平面が三角形V1V2V3の何れかの辺S1〜S3を含まなくてもよい。また、何れかの第iの加速度発生装置12−i(ただし、i=1,2,3)の力覚提示方向が三角形V1V2V3の辺を含まなくてもよい。また、何れかの頂点V{((i−1) mod 3)+1}と頂点V{(imod 3)+1}とを通る直線上に重心CGが存在していてもよい。例えば、頂点V2と頂点V3とを通る直線上に重心CGが存在し、頂点V1と頂点V2とを通る直線上および頂点V3と頂点V1とを通る直線上に重心CGが存在しなくてもよい。この場合、3個の加速度発生装置12−1〜12−3のうち、少なくとも2個が頂点V{((i−1) mod 3)+1}から頂点V{(imod 3)+1}へ向かう方向に並進力覚を提示すれば、そのうち少なくとも1個の加速度発生装置は重心CGからずれた方向に並進力覚(作用線が重心CGからずれた並進力覚)を提示することになる。そのため、全体として回転力覚成分を含む力覚を提示することができる。一方、この場合に、1個の加速度発生装置12−2のみが頂点V2と頂点V3とを通る辺S2に沿った並進力覚(例えば、頂点V2と頂点V3とを通る直線が作用線となる並進力覚)を提示すれば(図11C)、回転力覚成分の小さな並進力覚を提示できる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。