JP6479709B2 - 制御信号推定装置、擬似力覚発生装置、制御信号推定方法、およびプログラム - Google Patents

制御信号推定装置、擬似力覚発生装置、制御信号推定方法、およびプログラム Download PDF

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本発明は、擬似力覚を利用者に知覚させる技術に関する。
時間非対称な矩形波の制御信号に基づいてリニアアクチュエータを制御し、牽引力錯覚などの擬似力覚を知覚させる擬似力覚発生装置が提案されている(例えば、非特許文献1等参照)。
雨宮智浩,高椋慎也,伊藤翔,五味裕章,"指でつまむと引っ張られる感覚を生み出す装置「ぶるなび3」",2014年,NTT技術ジャーナル,Vol.26,No.9,pp.23−26.
同じ矩形波の制御信号を用いても擬似力覚発生装置の構成や持ち方により、知覚される擬似力覚は大きく異なる。しかし、従来の擬似力覚発生装置では、擬似力覚を知覚させるために必要な制御信号の設計方法が限られており、それぞれの擬似力覚発生装置の構成や持ち方に適した制御信号を設定することが困難であった。
本発明の課題は、所望の擬似力覚を知覚させる目標応答波形パターンを得るための目標制御信号を推定することである。
本発明では、制御信号波形に応じた周期的な非対称運動を行う運動部材と、非対称運動によって生じた力が与えられる把持部と、を有する擬似力覚発生装置の力学特性モデル、および、把持部に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と制御信号波形との関係を表す制御対象の逆ダイナミクスモデルに、目標となる把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する目標応答波形パターンを適用し、非対称運動を制御するための目標制御信号波形を得る。
上述のように本発明では、所望の擬似力覚を知覚させる目標応答波形パターンを得るための目標制御信号を推定できる。
図1は実施形態の構成を説明するためのブロック図である。 図2Aおよび図2Bは実施形態の擬似力覚発生装置を例示するための概念図である。 図3Aは擬似力覚発生装置を指で把持する様子を例示した概念図であり、図3Bは、擬似力覚発生装置の力学特性モデル、皮膚の力学特性モデル、および制御信号波形と電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルを説明するための概念図である。 図4Aは従来の矩形波の制御信号(制御電圧)を例示した図である。図4Bは、図4Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置がそれの把持部に接触した皮膚に与える力の波形を例示した図である。図4Cは、図4Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置の把持部の位置の波形を例示した図である。 図5Aは実施形態の制御信号(制御電圧)を例示した図である。図5Bは、図5Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置がそれの把持部に接触した皮膚に与える力の波形を例示した図である。図5Cは、図5Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置の把持部の位置の波形を例示した図である。 図6Aは従来の矩形波の制御信号(制御電圧)を例示した図である。図6Bは、図6Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置がそれの把持部に接触した皮膚に与える力の波形を例示した図である。図6Cは、図6Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置の把持部の位置の波形を例示した図である。 図7Aは実施形態の制御信号(制御電圧)を例示した図である。図7Bは、図7Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置がそれの把持部に接触した皮膚に与える力の波形を例示した図である。図7Cは、図7Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置の把持部の位置の波形を例示した図である。 図8Aおよび図8Bは実施形態の擬似力覚発生装置を例示するための概念図である。 図9は実施形態の擬似力覚発生装置を例示するための概念図である。 図10は、擬似力覚発生装置の力学特性モデル、および皮膚の力学特性モデルを説明するための概念図である。 図11は制御信号波形に対する応答波形を推定する実施形態の波形推定装置を例示したブロック図である。 図12は実施形態の構成を説明するためのブロック図である。 図13Aは実施形態の制御信号(制御電圧)を例示した図である図13Bは、図13Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置がそれの把持部に接触した皮膚に与える力の波形を例示した図である。図13Cは、図13Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置の把持部の位置の波形を例示した図である。 図14Aは実施形態の制御信号(制御電圧)を例示した図である。図14Bは、図14Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置がそれの把持部に接触した皮膚に与える力の波形を例示した図である。図14Cは、図14Aの制御信号に基づいて駆動した擬似力覚発生装置の把持部の位置の波形を例示した図である。 図15A〜図15Dは実施形態の擬似力覚発生装置の構成を例示した概念図である。図15Bは実施形態の擬似力覚発生装置の概略平面図であり、図15Aは図15Bの15A−15A概略断面図であり、図15Cは図15Bの概略右側面図であり、図15Dは実施形態の擬似力覚発生装置の使用状態を説明するための概念図である。 図16Aおよび図16Bは実施形態の振動子を例示するための概念図である。 図17Aおよび図17Bは実施形態の擬似力覚発生装置の構成を例示した概念図である。図15Aは実施形態の擬似力覚発生装置の概略平面図であり、図17Bは図17Aの概略右側面図である。図17Cは擬似力覚発生装置の変形例を示した概略断面図である。 図18A〜図18Dは実施形態の擬似力覚発生装置の構成を例示した概念図である。図18Aは実施形態の擬似力覚発生装置の概略平面図であり、図18Bは図18Aの概略右側面図であり、図18Cおよび図8Dは図18Aの概略正面図である。 図19A〜図19Cは実施形態の擬似力覚発生装置の構成を例示した概念図である。図19Aは実施形態の擬似力覚発生装置の概略平面図であり、図19Bは図19Aの概略右側面図であり、図19Cは図19Aの概略底面図である。 図20A〜図20Cは実施形態の擬似力覚発生装置の構成を例示した概念図である。図20Aは実施形態の擬似力覚発生装置の概略平面図であり、図20Bは図20Aの概略右側面図であり、図20Cは図20Aの概略底面図である。 図21A〜図21Cは実施形態の擬似力覚発生装置の構成を例示した概念図である。図21Aは実施形態の擬似力覚発生装置の概略平面図であり、図21Bは図21Aの概略右側面図であり、図21Cは図21Aの概略正面図である。 図22Aおよび図22Bは実施形態の振動子を例示するための概念図である。 図23Aおよび図23Bは実施形態の構成を例示した概念図である。 図24は実施形態の構成を例示した概念図である。 図25A〜図25Cは変形例の動作を説明するための概念図である。 図26A〜図26Cは従来の擬似力覚発生装置の特性を例示したデータである。図26Aは擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示し、図26Bは擬似力覚発生装置から皮膚に与える力[N]の時系列データを例示し、図26Cは擬似力覚発生装置の位置[m]の時系列データを例示する。図26A〜図26Cの横軸は時間[sec]を表す。 図27A〜図27Cは実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示したデータである。図27Aは擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示し、図27Bは擬似力覚発生装置から皮膚に与える力[N]の時系列データを例示し、図27Cは擬似力覚発生装置の位置[m]の時系列データを例示する。図27A〜図27Cの横軸は時間[sec]を表す。 図28A〜図28Cは、非対称な矩形波形パターンの制御電圧で駆動させた実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示したデータである。図28Aは擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示し、図28Bは擬似力覚発生装置から皮膚に与える力[N]の時系列データを例示し、図28Cは擬似力覚発生装置の位置[m]の時系列データを例示する。図28A〜図28Cの横軸は時間[sec]を表す。 図29A〜図29Cは、非対称な矩形波形パターンを目標応答波形パターンとして最適化された制御電圧で駆動させた実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示したデータである。図29Aは擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示し、図29Bは擬似力覚発生装置から皮膚に与える力[N]の時系列データを例示し、図29Cは擬似力覚発生装置の位置[m]の時系列データを例示する。図29A〜図29Cの横軸は時間[sec]を表す。 図30A〜図30Cは、非対称な矩形波形パターンの制御電圧で駆動させた実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示したデータである。図30Aは擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示し、図30Bは擬似力覚発生装置から皮膚に与える力[N]の時系列データを例示し、図30Cは擬似力覚発生装置の位置[m]の時系列データを例示する。図30A〜図30Cの横軸は時間[sec]を表す。 図31A〜図31Cは、非対称な矩形波形パターンを目標応答波形パターンとして最適化された制御電圧で駆動させた実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示したデータである。図31Aは擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示し、図31Bは擬似力覚発生装置から皮膚に与える力[N]の時系列データを例示し、図31Cは擬似力覚発生装置の位置[m]の時系列データを例示する。図31A〜図31Cの横軸は時間[sec]を表す。 図32Aおよび図32Bは、駆動制御信号の入力波形が正である期間T1と、負である期間T2と、擬似力覚発生装置から皮膚に加わる力の非対称性(正負極大力の差)[N]との関係の一例をステムプロットした図である。ただし、図32Aは非対称な矩形波形パターンの制御電圧で駆動させた実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示しており、図32Bは非対称な矩形波形パターンを目標応答波形パターンとして最適化された制御電圧で駆動させた実施形態の擬似力覚発生装置の特性を例示している。 図33Aおよび図33Bは、擬似力覚発生装置の制御電圧[V]の時系列データを例示した図である。 図34は擬似力覚発生装置の変形例を説明するためのブロック図である。 図35は擬似力覚発生装置の変形例を説明するためのブロック図である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
[概要]
まず概要を説明する。
実施形態では、「制御信号波形」に応じた周期的な「非対称運動」を行う「運動部材」と、非対称運動によって生じた力が与えられる「把持部」と、を有する「擬似力覚発生装置」の力学特性モデル、および、「把持部」に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力(例えば、応力)の少なくとも何れかに対応する波形」と「制御信号波形」との関係を表す「制御対象の逆ダイナミクスモデル(例えば、皮膚に与える力に対応する波形が与えられると制御信号に応じた駆動信号を供給する「電気回路」の入力側電圧を求めるモデル)」に、目標となる「把持部」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する「目標応答波形パターン」を適用し、「非対称運動」を制御するための「目標制御信号波形」を得る。「制御対象の逆ダイナミクスモデル」は少なくとも「擬似力覚発生装置の力学特性モデル」および「皮膚の力学特性モデル」の両方を考慮したモデルである。そのため、様々な「擬似力覚発生装置」の構成および持ち方で所望の「目標応答波形パターン」を実現するために必要な「目標制御信号波形」を容易に得ることができる。これにより、「擬似力覚発生装置」の構成やその持ち方にかかわらず、所望の「目標応答波形パターン」を実現できる。また「制御対象の逆ダイナミクスモデル」を事前に求めておくことができるため、入力された所望の「目標応答波形パターン」に対してリアルタイムに「目標制御信号波形」を得ることができる。なお「モデル」とは複数の値の関係を表す数式を意味する。また「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れか」は、これらの何れか一つであってもよいし、これらの何れか複数であってもよい。「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形」は、「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れか」の時間波形であってもよいし、その関数値の時間波形であってもよい。「制御信号波形」は、制御信号に応じた波形を意味する。例えば、「制御信号波形」は、制御信号そのものであってもよいし、制御信号に応じた駆動信号を供給する「電気回路」の入力側電圧であってもよいし、出力側電圧(駆動電圧)であってもよいし、入力電流であってもよいし、出力電流(駆動電流)であってもよい。「目標制御信号波形」は、目的の制御信号に応じた波形を意味する。「目標制御信号波形」の例は、電圧の時間波形や電流の時間波形などである。なお、ある物理量の時間波形とは、各時間での物理量からなる波形を意味する。
「制御対象の逆ダイナミクスモデル」は、「擬似力覚発生装置の力学特性モデル」および「皮膚の力学特性モデル」に基づいて得られるモデルであってもよいし、「擬似力覚発生装置の力学特性モデル」、「皮膚の力学特性モデル」、および制御信号波形と「擬似力覚発生装置」に駆動信号を供給する電気回路の出力との関係を表す「電気回路特性モデル」に基づいて得られるモデルであってもよい。後者のように「電気回路特性モデル」を考慮することで、「擬似力覚発生装置」に駆動信号を供給する電気回路の構成に応じて適切な「目標制御信号波形」を得ることができ、様々な「擬似力覚発生装置」の構成および持ち方ならびに「電気回路」で所望の「目標応答波形パターン」を実現するために必要な「目標制御信号波形」を容易に得ることができる。「制御対象の逆ダイナミクスモデル」の例は、「制御信号波形」に対し、「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形」を得る数式モデルの逆関数(逆写像)あるいは近似逆関数である。なお「制御対象の逆ダイナミクスモデル」によって表される「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形」は、「目標応答波形パターン」に対応する波形と同種である。例えば、「制御対象の逆ダイナミクスモデル」が「把持部の位置」と「制御信号波形」との関係を表す場合、「目標応答波形パターン」に対応する波形は「把持部の位置」を表す波形(各時間での位置を表す波形)である。例えば、「制御対象の逆ダイナミクスモデル」が「把持部の速度」と「制御信号波形」との関係を表す場合、「目標応答波形パターン」に対応する波形は「把持部の速度」を表す波形(各時間での速度を表す波形)である。例えば、「制御対象の逆ダイナミクスモデル」が「皮膚に与える力」と「制御信号波形」との関係を表す場合、「目標応答波形パターン」に対応する波形は「皮膚に与える力」を表す波形(各時間での皮膚に与える力を表す波形)である。
例えば「擬似力覚発生装置」は、「把持部」と、「把持部」に対する相対位置が固定された「支持部」と、「支持部」に支持された「弾性体」と、「弾性体」に支持され、「支持部」に対して周期的な非対称運動を行う「運動部材」と、制御信号波形(例えば、前述の「電気回路」の出力電流または出力側電圧)に応じた力を「運動部材」に与えるコイルとを有する。この場合の「擬似力覚発生装置の力学系モデル」の例は、「コイル」によって「運動部材」および「把持部」に与えられる力と、「把持部」に対応する位置,速度,および加速度と、「運動部材」に対応する位置,速度,および加速度と、の関係をモデル化した数式である。「皮膚の力学系モデル」の例は、「把持部」に対応する位置および速度と、皮膚に与える力との関係をモデル化した数式である。
「目標応答波形パターン」は、例えば「第1の時間区間」では、向きが所定方向(第1の方向)であって絶対値が第1の閾値以上である力を表し、「第1の時間区間」と異なる「第2の時間区間」では、向きが所定方向の反対方向(第2の方向)であって絶対値が第1の閾値以内(例えば、第1の閾値未満)である力を表す。「第1の時間区間」は「第2の時間区間」よりも短い。すなわち、「第1の時間区間」での力の波形と「第2の時間区間」での力または加速度の波形とが非対称である。このような「目標応答波形パターン」により、明確な擬似力覚を呈示できる。ここで、「第1の閾値」は人が知覚できる大きさの力の下限値の絶対値であることが望ましい(なお、知覚できる力の大きさには個人差があるため、一般的な下限値を予め求めておき、その値を用いることとしても良い)。「第2の時間区間」での力は「第1の閾値」以内の「第1の閾値」近傍であることが望ましい。「第1の時間区間」での力の絶対値の最大値が「第2の時間区間」での力の絶対値の最大値よりも大きくてもよいし、例えば「第1の時間区間」での力の絶対値の極大値が「第2の時間区間」での力の絶対値の極大値よりも大きくてもよい。特に「目標応答波形パターン」が周期的であり、その1周期が「第1の時間区間」とその「第1の時間区間」に続く「第2の時間区間」とからなることが望ましい。言い換えると、「目標応答波形パターン」の1周期が「第1の時間区間」および「第2の時間区間」の2つの時間区間のみからなることが望ましい。1周期に含まれる「第1の時間区間」は連続した時間区間である。同様に1周期に含まれる「第2の時間区間」は連続した時間区間である。これにより、より明確な擬似力覚を呈示できる。より好ましくは、「目標応答波形パターン」が非対称な矩形波形パターン(時間非対称方形波)または非対称な略矩形波形パターンであることが望ましい。これにより、さらに明確な擬似力覚を呈示できる。なお「擬似力覚」とは、実際には物体(擬似力覚発生装置)が一方向への持続的並進運動をしていないにも関わらず、あたかも並進方向へ動きそうな力が働いているように感じる知覚をいう。なお、擬似力覚の原理については、非特許文献1や参考文献1「特許第4551448号公報」などに開示されている。すなわち、ある質量をもった物体の並進運動を考える。この並進運動は、擬似力覚を提示したい方向へ大きな加速度で短時間で移動し、逆の方向へは小さな加速度で長時間で移動する、偏加速度(非対称な加速度)をもった周期運動であるものとする。この場合、この物体を含む系を把持している利用者は、この提示方向への擬似力覚を知覚する。これは、人間の知覚特性を利用したものであり、把持動作に関わる固有感覚と触覚によって発生する現象である。なお、擬似力覚を提示するにあたって、ある質量をもった物体の運動パターンは“非対称な加速度”に限定されるものではなく、皮膚に与える力が非対称な力のパターンであるような動きであれば良い。さらに、第1の時間区間用の第1の閾値(人が知覚できる大きさの下限値か、それよりも大きな力を示す値)と、第2の時間区間用の第2の閾値(人が知覚できる力の大きさの下限値か、それよりも小さな力を示す値)を個別に設定することとしても良い。
上述の「目標制御信号波形」を制御信号波形として「擬似力覚発生装置」を駆動し、その「運動部材」がその制御信号波形(目標制御信号波形)に応じた周期的な「非対称運動」を行うことで、その「把持部」の位置、速度、加速度、ならびに「把持部」に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する「目標応答波形パターン」またはその近似応答波形パターンを実現できる。その結果、「把持部」に接触した皮膚に、明確な擬似力覚を知覚させることができる。例えば、「擬似力覚発生装置」が「把持部」と、「把持部」に対する相対位置が固定された「支持部」と、「支持部」に支持された「弾性体」と、「弾性体」に支持され、「支持部」に対して周期的な「非対称運動」を行う「運動部材」と、制御信号波形に応じた力を「運動部材」に与えるコイルとを有し、「非対称運動」に基づいた「力」が把持部に接触した皮膚に与えられる。この「力」の波形は周期的であり、「力」の波形の1周期が「第1の時間区間」と「第1の時間区間」に続く「第2の時間区間」とからなる。「第1の時間区間」での「力」の向きが「第1の方向」であり、「第2の時間区間」での「力」の向きが「第1の方向」と反対方向の「第2の方向」であり、「第1の時間区間」での力の波形と「第2の時間区間」での力の波形とが非対称である。これにより「把持部」に接触した皮膚に、明確な擬似力覚を知覚させることができる。
上述した「擬似力覚発生装置の力学特性モデル」、および、「皮膚の力学特性モデル」、を含む複数のモデルに基づいて得られる、「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形」と「制御信号波形」との関係を表す「制御対象の順ダイナミクスモデル」に、「制御信号波形」として「目標制御信号波形」を適用してもよい。これにより、「目標制御信号波形」で「運動部材」の非対称運動を制御した場合における、「把持部」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を推定できる。「制御対象の順ダイナミクスモデル」の例は、「制御信号波形」に対し、「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形」を得る数式モデルである。「制御対象の順ダイナミクスモデル」は、「擬似力覚発生装置の力学特性モデル」および「皮膚の力学特性モデル」に基づいて得られるモデルであってもよいし、「擬似力覚発生装置の力学特性モデル」、「皮膚の力学特性モデル」、および制御信号波形と前述の「電気回路」の出力との関係を表す「電気回路特性モデル」に基づいて得られるモデルであってもよい。
上述の「制御対象の順ダイナミクスモデル」に「制御信号波形」として「試行信号波形」を適用して得られる、把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する「推定波形」と、目標となる把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する「目標応答波形パターン」との「誤差」に基づいて「試行信号波形」を調整し、非対称運動を制御するための「目標制御信号波形」を得てもよい。すなわち、このような調整後の「試行信号波形」を「目標制御信号波形」としてもよい。「誤差」が最小になるように「試行信号波形」を調整してもよいし、「誤差」が小さくなるように「試行信号波形」を調整してもよい。この方法でも様々な「擬似力覚発生装置」の構成および持ち方で所望の「目標応答波形パターン」を実現するために必要な「目標制御信号波形」を容易に得ることができる。その結果、「擬似力覚発生装置」の構成やその持ち方にかかわらず、所望の「目標応答波形パターン」を実現できる。また、「把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形」と「制御信号波形」の関係が非線形である場合、「制御対象の順ダイナミクスモデル」から「制御対象の逆ダイナミクスモデル」を得ることは困難な場合がある。一方、「推定波形」と「目標応答波形パターン」との誤差が最小になるように調整して「目標制御信号波形」を求める方法では、上述の関係が非線形であったとしても、その非線形特性をも反映させ、この非線形特性を考慮した「目標制御信号波形」を得ることができる。
「制御対象の逆ダイナミクスモデル」または「制御対象の順ダイナミクスモデル」でモデル化された「擬似力覚発生装置」と、「制御対象の逆ダイナミクスモデル」または「制御対象の順ダイナミクスモデル」が用いられて「目標制御信号波形」が生成される「擬似力覚発生装置」とは同一であってもよいし(すなわち、制御対象の実機である擬似力覚発生装置の力学特性のパラメータを用いて「制御対象の逆ダイナミクスモデル」または「制御対象の順ダイナミクスモデル」が得られてもよいし)、同一でなくてもよい(実機以外の擬似力覚発生装置の力学特性のパラメータを用いてこれらのモデルが得られてもよい)。前者の場合には所望の「目標応答波形パターン」に対してより正確な「目標制御信号波形」を得ることができる。後者の場合には、モデル化された「擬似力覚発生装置」と同一または類似する構成を持つ「擬似力覚発生装置」の「目標制御信号波形」を求めるために利用でき、「目標制御信号波形」の汎用性が高い。すなわち、得られた「目標制御信号波形」を、「制御対象の逆ダイナミクスモデル」または「制御対象の順ダイナミクスモデル」のパラメータを得た「擬似力覚発生装置」以外の「擬似力覚発生装置」に対して適用できる。
上述のように得られる「目標制御信号波形」を用い、「第1の皮膚」に直接的または間接的に支持される「ベース機構」と、当該「ベース機構」に対して「目標制御信号波形」に応じた周期的な非対称運動を行い、直接的または間接的に接触した「第2の皮膚」に非対称運動に基づく力を与える「接触機構」と、を有する「擬似力覚発生装置」を駆動させてもよい。ただし、「接触機構」の質量は「ベース機構」の質量よりも小さい、または、「接触機構」の質量が「ベース機構」の質量と「ベース機構」に取り付けられる機構の質量との合計よりも小さい。このような構成では、「擬似力覚発生装置」全体の質量が大きい場合でも、「ベース機構」または「ベース機構」とそれに取り付けられる機構に対して、「接触機構」の質量は小さいため、「接触機構」から皮膚に十分な大きさの力が伝達される。これにより、「接触機構」の非対称運動のストロークが従来方式の「擬似力覚発生装置」のリニアアクチュエータと同じであっても、より明確に力覚を呈示できる。あるいは、「接触機構」の非対称運動のストロークが従来よりも小さくても、従来方式と同程度の力覚を呈示できる。すなわち、このような構成では、従来よりも効率的に力覚を呈示できる。好ましくは、「接触機構」の質量が、零よりも大きく、「ベース機構」の質量の三分の一以下であることが望ましい。これにより、より効率的に力覚を呈示できる。
このような構成の「目標制御信号波形」は、「第2ベース機構」と、「第2ベース機構」に対して制御信号波形に応じた周期的な「第2非対称運動」を行う「第2接触機構」と、を有する「第2擬似力覚発生装置」の力学特性モデル、および、「第2接触機構」に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、「第2接触機構」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と制御信号波形との関係を表す制御対象の逆ダイナミクスモデルに、目標となる「第2接触機構」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する「目標応答波形パターン」を適用して得られる波形である。好ましくは、「制御対象の逆ダイナミクスモデル」は、「第2擬似力覚発生装置」の力学特性モデル、皮膚の力学特性モデル、および制御信号波形と「第2擬似力覚発生装置」に駆動信号を供給する電気回路の出力との関係を表す「電気回路特性モデル」に基づいて得られるものであることが望ましい。あるいは「目標制御信号波形」が、「第2ベース機構」と、「第2ベース機構」に対して制御信号波形に応じた周期的な「第2非対称運動」を行う「第2接触機構」と、を有する「第2擬似力覚発生装置」の力学特性モデル、および、「第2接触機構」に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、「第2接触機構」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と制御信号波形との関係を表す制御対象の順ダイナミクスモデルに、制御信号波形として試行信号波形を適用して得られる、「第2接触機構」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する推定波形と、目標となる「第2接触機構」の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する「目標応答波形パターン」との誤差に基づいて試行信号波形を調整して得られる波形であってもよい。好ましくは、「制御対象の順ダイナミクスモデル」は、「第2擬似力覚発生装置」の力学特性モデル、皮膚の力学特性モデル、および制御信号波形と「第2擬似力覚発生装置」に駆動信号を供給する電気回路の出力との関係を表す「電気回路特性モデル」に基づいて得られるものであることが望ましい。「第2擬似力覚発生装置」は、例えば「目標制御信号波形」によって駆動される「擬似力覚発生装置」そのものであり、「第2ベース機構」が「ベース機構」、「第2接触機構」が「接触機構」、「第2非対称運動」が「非対称運動」であってもよいし、その他の「擬似力覚発生装置」であってもよい。「第2ベース機構」が「ベース機構」でなくとも、「第2ベース機構」の質量と「ベース機構」の質量の差が、「ベース機構」もしくは「第2ベース機構」の質量の1割程度以下であれば良い。また、「第2接触機構」が「接触機構」でなくとも、「第2接触機構」の質量と「接触機構」の質量の差が、「接触機構」もしくは「第2接触機構」の質量の1割程度以下であれば良い。
「周期的な非対称運動」は「接触機構」から皮膚に与えた力によって擬似的な力覚を知覚させるための振動であり、「所定方向」の振動の時系列波形と当該「所定方向」と反対方向の振動の時系列波形とが非対称な振動を意味する。「周期的な非対称運動」の例は、非対称振動である。「周期的な非対称運動」の例は、「非対称振動」である。「非対称振動」は、例えば、「ベース機構」に対する「接触機構」の「所定方向」の「物理量」の時系列波形と当該「ベース機構」に対する「接触機構」の「所定方向」と反対方向の「物理量」の時系列波形とが非対称となるような「接触機構」の振動である。「物理量」の例は、「ベース機構」に対する「接触機構」の加速度、速度、もしくは位置、「接触機構」が「ベース機構」に与える力、「接触機構」から皮膚に与えられる力、または「接触部」の加速度、速度、もしくは位置などである。
「ベース機構」が「第1の皮膚」に直接的または間接的に支持され、「接触機構」が直接的または間接的に接触した「第2の皮膚」に非対称運動に基づく力を与える構成の場合、「非対称運動」が「目標制御信号波形」および「バイアス成分」に応じた「非対称振動」であってもよい。この「バイアス成分」は、「非対称振動」の振動中心を制御する成分であり、例えば「非対称振動」による擬似的な力覚の呈示方向に振動中心を移動させる成分である。
「第1の皮膚」と「第2の皮膚」とは同一の対象(人間を含む動物)のものであることが好ましいが、「第1の皮膚」と「第2の皮膚」とが異なる対象のものであってもよい。「βに直接的または間接的に支持されるα」とは、βに直接支持されたα、または介在物を介してβに支持されたαを意味する。「αがβに支持されている」とは、αの運動の一部または全部がβによって制限されていることであり、例えば、αの運動の自由度の一部または全部がβによって制限されていることである。αがβに固定されている場合のみならず、αがβに対して相対的に移動または回転可能であったとしても、αの何らかの動きがβによって制限されている場合には「αがβに支持されている」と言える。「直接的または間接的に接触したβ」とは、介在物を介さずに接触したβであってもよいし、介在物を介して接触したβであってもよい。この介在物は、剛体、弾性体、塑性体、流体、またはそれらの少なくとも一部の特性を併せ持ったものであってもよいが、「接触部」からの力を皮膚に伝達可能なものである必要がある。
その他、「目標制御信号波形」とは異なる制御信号波形に基づいて「接触機構」を駆動させてもよい。すなわち、「第1の皮膚」に直接的または間接的に支持される「ベース機構」と、当該「ベース機構」に対して擬似力覚を知覚させるための周期的な非対称運動を行い、直接的または間接的に接触した「第2の皮膚」に非対称運動に基づく力を与える「接触機構」と、を有する「擬似力覚発生装置」であってもよい。ただし、「接触機構」の質量は「ベース機構」の質量よりも小さい。
[第1実施形態]
以下、図面を用いて第1実施形態を説明する。
<構成>
図1に例示するように、本形態のシステムは目標応答波形パターンから目標制御信号波形を得る制御信号推定装置11、擬似力覚を呈示する擬似力覚発生装置12、および制御信号推定装置11で得られた目標制御信号波形から擬似力覚発生装置12(アクチュエータ)の駆動信号を得る電気回路13を有する。制御信号推定装置11は、記憶部111、入力部112、およびモデル適用部113を有する。
<制御信号推定装置11>
制御信号推定装置11は、例えば、CPU(central processing unit)等のプロセッサ(ハードウェア・プロセッサ)およびRAM(random-access memory)・ROM(read-only memory)等のメモリ等を備える汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。このコンピュータは1個のプロセッサやメモリを備えていてもよいし、複数個のプロセッサやメモリを備えていてもよい。このプログラムはコンピュータにインストールされてもよいし、予めROM等に記録されていてもよい。また、CPUのようにプログラムが読み込まれることで機能構成を実現する電子回路(circuitry)ではなく、プログラムを用いることなく処理機能を実現する電子回路を用いて一部またはすべての処理部が構成されてもよい。また、1個の装置を構成する電子回路が複数のCPUを含んでいてもよい。
<電気回路13>
電気回路13は、例えばハイパスフィルタ等の特性を持った回路である。
<擬似力覚発生装置12>
擬似力覚発生装置12は、例えば、支持部121、ばね122,123(弾性体)、コイル124、永久磁石である運動部材125、および把持部126(ケース)を有する。本形態の把持部126および支持部121は、ともに筒(例えば、円筒や多角筒)の両方の開放端を閉じた形状からなる中空の部材である。ただし、支持部121は、把持部126よりも小さく、把持部126の内部に収容可能な大きさである。把持部126および支持部121は、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂から構成される。ばね122,123は、例えば、金属等から構成されるつるまきばねや板ばね等である。ばね122,123の弾性係数(ばね定数)は同一であることが望ましいが、互いに相違していてもよい。運動部材125は、例えば、円柱形状の永久磁石であり、長手方向の一方の端部125a側がN極であり、他方の端部125b側がS極である。コイル124は、例えば、一つながりのエナメル線であり、第1巻き部124aと第2巻き部124bとを有する。
運動部材125は支持部121の内部に収容され、そこで長手方向にスライド可能に支持されている。このような支持機構の詳細は図示しないが、例えば、支持部121の内壁面に長手方向に沿ったまっすぐなレールが設けられ、運動部材125の側面にこのレールをスライド可能に支持するレール支持部が設けられている。支持部121の長手方向の一端側の内壁面121aには、ばね122の一端が固定され(すなわち、支持部121にばね122の一端が支持され)、ばね122の他端は運動部材125の端部125aに固定されている(すなわち、運動部材125の端部125aがばね122の他端に支持されている)。また、支持部121の長手方向の他端側の内壁面121bには、ばね123の一端が固定され(すなわち、支持部121にばね123の一端が支持され)、ばね123の他端は運動部材125の端部125bに固定されている(すなわち、運動部材125の端部125bがばね123の他端に支持されている)。
支持部121の外周側にはコイル124が巻きつけられている。ただし、運動部材125の端部125a側(N極側)では、第1巻き部124aがA方向(奥から手前に向けた方向)に巻きつけられており、端部125b側(S極側)では、第2巻き部124bがA方向と反対向きのB方向(手前から奥に向けた方向)に巻き付けられている。すなわち、運動部材125の端部125a側(N極側)からみた場合、第1巻き部124aは時計回りに巻き付けられており、第2巻き部124bは反時計回りに巻き付けられている。また、運動部材125が停止し、ばね122,123からの弾性力が釣り合った状態において、運動部材125の端部125a側(N極側)が第1巻き部124aの領域に配置され、端部125b側(S極側)が第2巻き部124bの領域に配置されることが望ましい。
以上のように配置構成された支持部121、ばね122,123、コイル124、および運動部材125が、把持部126内に収容され、支持部121が把持部126の内部に固定されている。すなわち、把持部126の支持部121に対する相対位置が固定されている。ただし、把持部126の長手方向は、支持部121の長手方向および運動部材125の長手方向と一致する。
コイル124は、流された電流に応じた力を運動部材125に与え、これにより、運動部材125は、支持部121に対して周期的な非対称運動(支持部121を基準とした軸方向に非対称性をもった周期的な並進往復運動)を行う。すなわち、コイル124にA方向(B方向)に電流を流すと、フレミングの左手の法則で説明されるローレンツ力の反作用により、運動部材125にC方向(運動部材125のN極からS極に向かう方向:右方向)の力が加えられる(図2A)。逆に、コイル124にA方向(B方向)に電流を流すと、運動部材125にC方向(運動部材125のS極からN極に向かう方向:左方向)の力が加えられる(図2B)。ただし、A方向はA方向の反対方向である。これらの動作により、運動部材125およびばね122,123からなる系に運動エネルギーが与えられる。それにより、把持部126を基準とする運動部材125の位置および加速度(支持部121を基準とした軸方向の位置および加速度)を変化させることができる。
<前処理>
本形態の前処理では制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが設定され、記憶部111に格納される。本形態の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcは、擬似力覚発生装置12の把持部126の位置、速度、加速度、ならびに把持部126に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形に対し、運動部材125を駆動させるための制御信号の波形(制御信号波形)に基づく波形を得るための数式モデルである。本形態の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcは、擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMd、および把持部126に接触する皮膚の力学特性モデルMsに基づいて得られる。
図3Aに例示するように、本形態の擬似力覚発生装置12の把持部126の外側が利用者の指100で把持された状態を想定する。なお、図3Aでは把持部126の側面側(擬似力覚発生装置12の側面の外側)が把持された状態を例示しているが、把持部126の端面側(擬似力覚発生装置12の長手方向の端面の外側)が把持されている状態を想定してもよい。
図3Bに例示するように、この状態を擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMdおよび把持部126に接触する(把持する)指100の皮膚の力学特性モデルMsで表現する。この例の擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMdは、それぞれの質量がm,mの質点M,M、それらを接続する弾性係数kのばね、粘性係数(減衰係数)bのダンパ、および駆動電圧Voutに応じて質点M,Mに働く周期的なローレンツ力fからなる力学系の特性を表す。図2Aおよび図2Bに例示した構成の場合、ローレンツ力fはf=iBLと表記できる。ただし、i[A]はコイル124に流される電流であり、Bはコイル124による磁束密度であり、L[m]は支持部121を長手方向に貫く磁束方向と垂直なコイル124の長さである。基準原点Oに対する質点Mの位置をxと表現し、基準原点Oに対する質点Mの位置をxと表現する。ただし、基準原点O,Oは指100の重心に対する相対位置が固定された点である。また、x,xの何れも指100の重心から図3Aにおける右方向を正とし、指100の重心から図3Aにおける左方向を負とする。ここでは、指の重心は外界に対して動いていないものとする。x,xの時間微分値、すなわち速度を

と表記する。ただし、記載表記の制約上、本明細書ではこれらをx ,x と表記する場合もある。図3Bに例示する皮膚の力学特性モデルMsは、質点Mと指100の重心との間の弾性係数kのばねおよび粘性係数bのダンパからなる力学系の特性を表す。ここで把持部126に接触する指100の皮膚に与える力(例えば、応力)をfsと表現する。
擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMdおよび皮膚の力学特性モデルMsの数式表現は例えば以下のようになる。
≪力学特性モデルMdの例≫

力学特性モデルMdの力学系パラメータm,m,k,bは、擬似力覚発生装置12の設計値あるいは計測値から得られてもよいし、システム同定などの方法で得られてもよい。
≪力学特性モデルMsの例≫
fs=k・x+b・x (2)
力学特性モデルMsの力学系パラメータk,bは、システム同定などの方法で得られてもよいし、典型的な値とされてもよい。
《制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの例》
上記の式(1)(2)の未知の時系列パラメータはf,x,x ,x,x ,fsであるが、上記の式(1)(2)を用いてx,x ,x,x ,を消去することにより、fとfsとの関係式fs=F(f)が得られる。ここで図2Aおよび図2Bの例ではf=iBLと表記できる。BおよびLは擬似力覚発生装置12の設計値やシステム同定などの方法で得られる。fs=F(iBL)=F(i)より、関係式
fs=F(i) (3A)
が得られる。この関係式(3A)の逆関数または近似逆関数である
=Inv(fs) (3B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
コイル124の抵抗値をRとし、コイル124に与えられる電圧をVoutとするとi=Vout/Rとなるため、fs=F(Vout/R)=F(Vout)となる。この関係式
fs=F(Vout)(4A)
の逆関数または近似逆関数である
Vout=Inv(fs) (4B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
上記の式(1)(2)から、iに対して把持部126に接触する指100の皮膚に与える加速度x・・ を得る関係式
・・ =F(i) (5A)
を計算し、この関係式(5A)の逆関数または近似逆関数である
=Inv(x・・ ) (5B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
上記の式(1)(2)から、Voutに対して加速度x・・ を得る関係式
・・ =FRm(Vout) (6A)
を計算し、この関係式(6A)の逆関数または近似逆関数であるVout=InvRm(x・・ ) (6B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
式(1)と式(2)から、fに対してx を得る関係式
=F’(f) (7A)
を計算し、この関係式(7A)の逆関数または近似逆関数である
=Inv(x ) (7B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
式(1)と式(2)とi=Vout/Rから、Voutに対してx を得る関係式
=F’x・R(Vout) (8A)
を計算し、この関係式(8A)の逆関数または近似逆関数である
Vout=Invx・R(x ) (8B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
式(1)と式(2)から、fに対してxを得る関係式
=F(f) (9A)
を計算し、この関係式(9A)の逆関数または近似逆関数であるi=Inv(x) (9B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
式(1)と式(2)から、Voutに対してxを得る関係式
=F(Vout) (10A)
を計算し、この関係式(10A)の逆関数または近似逆関数である
Vout=Inv(x) (10B)
を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
<目標制御信号波形の推定処理>
本形態の目標制御信号波形の推定処理では、目標応答波形パターンが入力部112に入力される。目標応答波形パターンは、目標となる把持部126の位置、速度、加速度、ならびに指100の皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する。いずれの物理量の時間波形パターン(各時間での物理量からなる波形パターン)を目標応答波形パターンとするかは制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの構成に依存する。すなわち、制御対象の逆ダイナミクスモデルMcは目標応答波形パターンから目標制御信号波形を得るモデルであり、入力部112に入力される目標応答波形パターンはこの制御対象の逆ダイナミクスモデルMcに対応した時間波形パターンとなる。例えば、式(3B)または式(4B)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には力fsの時間波形パターンを目標応答波形パターンとする。式(5B)または式(6B)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には加速度x・・ の時間波形パターンを目標応答波形パターンとする。式(7B)または式(8B)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には速度x の時間波形パターンを目標応答波形パターンとする。式(9B)または式(10B)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には位置xの時間波形パターンを目標応答波形パターンとする。また目標応答波形パターンは、擬似力覚発生装置12の運動部材125を周期的に非対称運動させるための制御信号のパターンである。例えば、目標応答波形パターンは、第1の時間区間T1では、向きが所定方向であって絶対値が第1の閾値以上である力を表し、第1の時間区間T1と異なる第2の時間区間T2では、向きが所定方向の反対方向であって絶対値が第2の閾値以内である力を表す周期的な波形パターンである。第1の時間区間T1は第2の時間区間T2よりも短い(T1<T2)。例えば、この周期の1周期はT1およびT2からなる。好ましくは、目標応答波形パターンが矩形波形パターンまたは略矩形波形パターンであることが望ましい。
目標応答波形パターンはモデル適用部113に送られる。モデル適用部113は、記憶部111から読み出した制御対象の逆ダイナミクスモデルMcに目標応答波形パターンを適用し、目標制御信号波形を得て出力する。すなわち、モデル適用部113は、制御対象の逆ダイナミクスモデルMcに目標応答波形パターンの各時間の物理量を代入し、それに対応する関数値を得、その関数値の時間波形を出力する。例えば、式(3B)(5B)(9B)の場合には、iの時間波形が目標制御信号波形であり、式(4B)(6B)(8B)(10B)の場合には、Voutの時間波形が目標制御信号波形である。
得られた目標制御信号波形に応じた制御信号(制御電圧または制御電流)は電気回路13に与えられる。電気回路13はそれに応じた駆動信号を擬似力覚発生装置12に送る。擬似力覚発生装置12はこれに基づいて駆動し、把持部126を把持する指100に対して擬似力覚を呈示する。
<本形態の特徴>
本形態では、擬似力覚の呈示のための目標応答波形パターンから擬似力覚発生装置12の制御のための目標制御信号波形を推定できる。これにより、擬似力覚発生装置12の構成や持ち方が変わった場合でも、それぞれに応じて適切な目標制御信号波形を推定できる。また、逆関数または近似逆関数によって事前に制御対象の逆ダイナミクスモデルMcを求めることが可能であるため、目標応答波形パターンからリアルタイムに目標制御信号波形を推定できる。
また、目標応答波形パターンを近似的に実現するために必要となる、アンプに必要な特性および擬似力覚発生装置12に必要な特性が分かり、それらの設計に生かすこともできる。アンプの特性および擬似力覚発生装置12の特性が規定されている場合には、所望の擬似力覚を生成するのに効果的な刺激が実現できる範囲が分かる。モデル化誤差が予想される場合、どの程度の出力誤差を生み出すかをシミュレーションすることが可能であり、擬似力覚発生装置12の力学系の設計に有用である。
なお、力学特性モデルMd,Msは、目標制御信号波形に基づいて制御される擬似力覚発生装置12の把持部126(すなわち、実機の把持部)が把持された状態をモデル化したものであってもよいし、擬似力覚発生装置12と同一または類似する他の装置の把持部が把持された状態をモデル化したものであってもよい。前者の場合には、より正確な目標制御信号波形を推定できる。
[第2実施形態]
第2実施形態は第1実施形態の変形例であり、制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが、擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMd、皮膚の力学特性モデルMs、および制御信号波形と電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルMeに基づく点が相違する。以下では第1実施形態との相違点を中心に説明し、既に説明した事項については同じ参照番号を用いて説明を簡略化する。
<構成>
図1に例示するように、本形態のシステムは目標応答波形パターンから目標制御信号波形を得る制御信号推定装置21、擬似力覚発生装置12、および電気回路13を有する。制御信号推定装置21は、記憶部211、入力部112、およびモデル適用部213を有する。制御信号推定装置21は、例えば前述した汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。
<前処理>
本形態の前処理では制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが設定され、記憶部211に格納される。本形態の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcは、擬似力覚発生装置12の把持部126の位置、速度、加速度、ならびに把持部126に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と、運動部材125を駆動させるための制御信号の波形(制御信号波形)との関係を表す数式モデルである。本形態の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcは、擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMd、把持部126に接触する皮膚の力学特性モデルMs、および制御信号波形と擬似力覚発生装置12に駆動信号を供給する電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルMeに基づいて得られる。
図3Aに例示するように、本形態の擬似力覚発生装置12の把持部126の外側が利用者の指100で把持された状態を想定する。制御電圧Vinが伝達関数H(S)の電気回路の入力とされ、伝達関数H(S)の出力が駆動電圧Voutとなり、駆動電圧Voutに基づいて擬似力覚発生装置12が駆動する。ただし、Sはラプラス変換の変数を表す。
図3Bに例示するように、この状態を第1実施形態で説明した力学特性モデルMdおよび力学特性モデルMs、ならびに制御信号波形(例えば、電気回路の入力側電圧または入力電流)と電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルMeで表現する。この様にモデル化すると、Vinが与えられると、m1、m2に加わる力とfsが求められるような順ダイナミクスモデルを構築することができる。電気回路の出力は、例えば、運動部材125を駆動するための駆動信号(駆動電圧または駆動電流)の波形である。
《電気回路特性モデルMeの例》
制御電圧Vinと駆動電圧Voutには以下の関係が成り立つ。
Vout=H(S)・Vin (11)
ただし、H(S)=S・T/(1+S・T)であり、Sはラプラス変換の変数であり、Tはフィルタの時定数である。これらの特性は設計値から得られてもよいし、システム同定などの方法で得られてもよい。
《制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの例》
前述の式(1)(2)および上述の式(11)に基づいた関係式を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとする。例えば、前述の式(3B)〜(10B)の何れかと式(11)とに基づいた関係式を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとする。例えば、式(4B)と式(11)からVout=Inv(fs)=H(S)・Vinが成り立つ。そのため、以下の関係式を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとできる。
Vin=H−1(S)・Inv(fs) (12)
あるいは、式(6B)と式(11)から得られる以下の関係式を制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとしてもよい。
Vin=H−1(S)・Inv(x・・ ) (13)
あるいは、例えばVoutが±1で飽和する特性を示すこととし、Voutに代えて以下のVout’を用いた制御対象の逆ダイナミクスモデルMcであってもよい。
<目標制御信号波形の推定処理>
本形態の目標制御信号波形の推定処理では、目標応答波形パターンが入力部112に入力される。例えば、式(12)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には力fsの時間波形パターンを目標応答波形パターンとする。例えば、式(13)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には加速度x・・ の時間波形パターンを目標応答波形パターンとする。
目標応答波形パターンはモデル適用部113に送られる。モデル適用部113は、記憶部111から読み出した制御対象の逆ダイナミクスモデルMcに目標応答波形パターンを適用し、目標制御信号波形を得て出力する。式(12)および(13)の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの場合には、Vinの時間波形が目標制御信号波形である。
得られた目標制御信号波形に応じた制御信号(制御電圧または制御電流)を電気回路13に与え、電気回路13はそれに応じた駆動信号を擬似力覚発生装置12に送る。擬似力覚発生装置12はこれに基づいて駆動し、把持部126を把持する指100に対して擬似力覚を呈示する。
<実験結果>
非特許文献1の従来手法と本形態との比較実験結果を例示する。
《実験結果1:[T1,T2]=[2,10]msec》
図4A〜図4Cは従来手法による実験結果を表す。図4Aに示すように、従来手法では擬似力覚発生装置12の制御電圧[V]を[T1,T2]=[2,10]msecの略矩形波とした。すなわち、2[msec]の時間区間T1と10[msec]の時間区間とが交互に繰り返され、時間区間T1での制御電圧Vinを正とし、時間区間T2での制御電圧Vinを負とした。時間区間T1での制御電圧Vinの絶対値は、時間区間T2での制御電圧Vinの絶対値よりも大きい。図4Bはこのように制御された擬似力覚発生装置12がその把持部126に接触する指100の皮膚に与える力[N]の波形を表し、図4Cは把持部12の位置[m]の波形を表す。
図5A〜図5Cは本形態による実験結果を表す。この実験では図5Bの破線で表示した目標応答波形パターンに制御対象の逆ダイナミクスモデルMcを適用し、図5Aの制御電圧波形(制御信号波形)を得た。この目標応答波形パターン(図5B)は、把持部126に接触する指100の皮膚に与える力[N]の時間波形である。この目標応答波形パターンは、2[msec]の時間区間T1とそれに続く10[msec]の時間区間T2とを繰り返す周期的なパターンであり、その1周期には時間区間T1と時間区間T2が1ずつ含まれ、1周期は時間区間T1および時間区間T2からなる12[msec]である。この目標応答波形パターンは略矩形波形パターンであり、時間区間T1では、向きが第1の方向(正)であって絶対値が閾値Th1以上である力を表し、時間区間T2では、第1の方向の反対方向(第2の方向:負)であって絶対値が閾値Th2(Th2<Th1)以内の力を表す。時間区間T1での波形パターンと時間区間T2での波形パターンとは非対称(時間区間T1での力の時間波形と時間区間T2での力の時間波形とが非対称)である。これは第1の方向に擬似力覚(牽引力等)を呈示するためのものである。この目標応答波形パターンに応じた制御電圧(図5A)によって制御された擬似力覚発生装置12がその把持部126に接触する指100の皮膚に与える力[N]の応答波形を図5Bの実線で示す。図5Bより、目標応答波形パターンに近似する応答波形が得られていることが分かる。図5Cはこの際の把持部12の位置[m]の波形を表す。
《実験結果2:[T1,T2]=[3,16]msec》
図6A〜図6Cは従来手法による実験結果を表し、図7A〜図7Cは本形態による実験結果を表す。比較実験結果1と異なり、[T1,T2]=[3,16]msecとした。その他の条件は比較実験結果1と同じである。
図4Bと図5B、図4Cと図5C、図6Bと図7B、図6Cと図7Cを比較すると、本形態の手法では従来手法に比べ、皮膚に与え力および把持部126の位置ともにノイズとなる波形の微細振動が少なく、一方で正方向の極大値と負方向との極大値との差が大きく、非対称性が大きいことが分かる。これにより、本形態では従来手法よりも明確な力覚を提示できることが分かる。
<本形態の特徴>
本形態でも、擬似力覚の呈示のための目標応答波形パターンから擬似力覚発生装置12の制御のための目標制御信号波形を推定できる。これにより、擬似力覚発生装置12の構成や持ち方が変わった場合でも、それぞれに応じて適切な目標制御信号波形を推定できる。また、逆関数または近似逆関数によって事前に制御対象の逆ダイナミクスモデルMcを求めることが可能であるため、目標応答波形パターンからリアルタイムに目標制御信号波形を推定できる。さらに電気回路特性モデルMeを考慮して制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが得られるため、電気回路13の特性が変わった場合でも、それぞれに応じて適切な目標制御信号波形を推定できる。
なお、力学特性モデルMd,Msは、目標制御信号波形に基づいて制御される擬似力覚発生装置12の把持部126(すなわち、実機の把持部)が把持された状態をモデル化したものであってもよいし、擬似力覚発生装置12と同一または類似する他の装置の把持部が把持された状態をモデル化したものであってもよい。同様に、電気回路特性モデルMeは目標制御信号波形の制御信号が与えられる電気回路13(すなわち、実機)をモデル化したものであってもよいし、電気回路13と同一または類似する他の電気回路をモデル化したものであってもよい。いずれも、前者の場合には、より正確な目標制御信号波形を推定できる。
[第1,2実施形態の変形例1]
擬似力覚発生装置12(図2Aおよび図2B)の変形例として、運動部材125の端部125a側(N極側)または端部125b側(S極側)のみにコイル124が巻き付けられていてもよい。例えば、図8Aおよび図8Bの擬似力覚発生装置12’のように、支持部121の外周側の端部125b側(S極側)のみにコイル124が巻き付けられていてもよい。擬似力覚発生装置12’のその他の構成は擬似力覚発生装置12と同じである。擬似力覚発生装置12’の擬似力覚発生装置12と共通する部位には、擬似力覚発生装置12と同じ参照符号を用いている。
[第1,2実施形態の変形例2]
あるいは、図9の擬似力覚発生装置12”のように、擬似力覚発生装置12(図2Aおよび図2B)のコイル124に代えて、支持部121の外周側の端部125a側(N極側)にA方向に巻きつけられた第1巻き部124a’側のコイルと、支持部121の外周側の端部125b側(S極側)にB方向(A方向と反対向き)に巻き付けられた第2巻き部124b’側のコイルとが独立したものが用いられてもよい。すなわち、第1巻き部124a’側のコイルと第2巻き部124b’側のコイルとが電気的に接続されておらず、互いに異なる電気信号を与えることができる構成であってもよい。擬似力覚発生装置12”のその他の構成は擬似力覚発生装置12と同じである。擬似力覚発生装置12”の擬似力覚発生装置12と共通する部位には、擬似力覚発生装置12と同じ参照符号を用いている。
[第1,2実施形態の変形例3]
擬似力覚発生装置が複数の運動部材を備えていてもよい。例えば、2個以上の運動部材を備えている擬似力覚発生装置の力学特性モデルMdおよびその把持部に接触する指の皮膚の力学特性モデルMsは図10のようになる。
この例の力学特性モデルMdは、質量がmの質点M、それぞれの質量がm(ただし、j=2,…,j_maxであり、j_maxは3以上の整数)の質点M、質点Mと質点Mとを接続する弾性係数kのばねおよび粘性係数bのダンパ、駆動電圧Voutに応じて質点Mと質点Mに働く周期的なローレンツ力fからなる力学系の特性を表す。基準原点Oに対する質点Mの位置をxと表現する。基準原点Oに対する質点Mの位置をxと表現する。ただし、基準原点Oは指の重心に対する相対位置が固定された点である。また、xは擬似力覚発生装置の把持部に接触する指の重心から図3Aにおける右方向を正とし、その逆方向を負とする。xの時間微分値、すなわち速度を

と表記する。記載表記の制約上、本明細書ではこれをx と表記する場合もある。x の時間微分値、すなわち加速度を

と表記する。本明細書ではこれをx・・ と表記する場合もある。
この例の皮膚の力学特性モデルMsは、質点Mと把持部に接触する指の重心との間の弾性係数kのばねおよび粘性係数bのダンパからなる力学系の特性を表す。ここで把持部に接触する指の皮膚に与える力をfsと表現する。
質点M,Mの運動が1軸方向の運動に拘束されているとすると、以下の運動方程式が成り立つ。

ただし、fは質点Mに指の皮膚から与えられる力を表す。これらの式(14)〜(17)を用いて制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが設定されてもよい。
[第1,2実施形態の変形例4]
擬似力覚発生装置12を把持する力の強さが変わると皮膚の力学特性モデルが変化するため、制御対象の逆ダイナミクスモデルMcも変化する。この様な変化に対応するため、たとえば、擬似力覚発生装置12の把持部126に、皮膚に与える力[N]を計測するセンサを設置し、ある時刻にセンサで検出した力と、検出時刻に対応する目標応答波形パターンでの力との誤差の絶対値が所定の閾値以上の場合、制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが適切でないと判定して、皮膚の力学特性モデルMsのパラメータを所定の方法で変更して制御対象の逆ダイナミクスモデルMcを再計算することとしても良い。
制御対象の逆ダイナミクスモデルMcが適切でないと判定する処理はこれに限定されず、センサで検出した力の時系列データとデータが取得された時刻に対応する目標応答波形パターンでの力との誤差の二乗和が所定の閾値以上の場合に制御対象の逆ダイナミクスモデルMcを再計算する等の他方法を用いることとしても良い。
皮膚の力学特性モデルMsのパラメータを変更する方法については、たとえば、指100で擬似力覚発生装置12を把持する際の指100への力の入れ具合に応じて、指100の皮膚の力学特性モデルMsを構成するばねの弾性係数k1やダンパの粘性係数b1の組み合わせを複数記憶部に記憶しておき、誤差に応じて指100の皮膚の力学特性モデルMsの弾性係数k1、粘性係数b1の値を変更することとしても良い。たとえば、擬似力覚発生装置12を把持する力の強さの昇順、あるいは降順に弾性係数k1、粘性係数b1の組み合わせを記憶部に複数記憶しておき、ある時刻にセンサで検出した力が検出時刻に対応する目標応答波形での力よりも小さいか、大きいかに応じて、現在の制御対象の逆ダイナミクスモデルMcで利用中の弾性係数k1、粘性係数b1の組み合わせの上もしくは下の1つ隣の組み合わせを選択することとしても良い。
なお、擬似力覚発生装置12が力センサではなく加速度センサを内蔵することとし、目標応答波形パターンから推定される擬似力覚発生装置12に発生する加速度の推定値と加速度センサで計測した加速度との誤差を用いて制御対象の逆ダイナミクスモデルMcの再計算の要否を判定することとしても良い。
[第3実施形態]
本形態では、上述の実施形態とは逆に、制御対象の順ダイナミクスモデルに制御信号波形を適用し、その応答波形を推定する。
<構成>
図11に例示するように、本形態の波形推定装置31は、記憶部311、入力部312、モデル適用部313、および出力部314を有する。波形推定装置31は、例えば前述した汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。
<前処理>
本形態の前処理では制御対象の順ダイナミクスモデルMpが設定され、記憶部311に格納される。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、前述した運動部材125を駆動させるための制御信号の波形(制御信号波形)に対し、擬似力覚発生装置12の把持部126の位置、速度、加速度、ならびに把持部126に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を得るための数式モデルである。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMd、および把持部126に接触する皮膚の力学特性モデルMsに基づいて得られる。力学特性モデルMdや力学特性モデルMsの例は前述の通りである。制御対象の順ダイナミクスモデルMpの逆関数または近似逆関数が前述した制御対象の逆ダイナミクスモデルMcとなる。制御対象の順ダイナミクスモデルMpの例は前述した関係式(3A)〜(10A)である。
<応答波形の推定処理>
本形態の応答波形の推定処理では、制御信号波形が入力部312に入力される。制御信号波形は、前述した運動部材125を駆動させるための制御信号波形である。制御信号波形は、運動部材125の制御に必要な物理量の時間波形(各時間での物理量からなる波形)である。制御信号波形は、例えば、正値の波形と負値の波形とが非対称な周期的な波形である(例えば、図4A,図5A,図6A,図7A)。また、いずれの物理量の時間波形を制御信号波形とするかは制御対象の順ダイナミクスモデルMpの構成に依存する。すなわち、制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、制御信号波形から応答波形を得るモデルであり、入力部112に入力される制御信号波形はこの制御対象の順ダイナミクスモデルMpに対応した時間波形となる。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(3A)の場合、電流iの時間波形を制御信号波形とする。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(4A)の場合、電圧Voutの時間波形を制御信号波形とする。
制御信号波形はモデル適用部313に送られる。モデル適用部313は、記憶部111から読み出した制御対象の順ダイナミクスモデルMpに制御信号波形を適用し、制御信号波形で擬似力覚発生装置12の非対称運動を制御した場合における、把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を推定する。すなわち、モデル適用部313は、制御対象の順ダイナミクスモデルMpに制御信号波形の各時間の物理量を代入し、それに対応する関数値を得、その関数値の時間波形を「応答波形」として出力する。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(3A)の場合、モデル適用部313は、制御信号波形の各時間の電流iから各時間のfs=F(i)を計算して応答波形として出力する。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(4A)の場合、モデル適用部313は、制御信号波形の各時間の電圧Voutから各時間のfs=F(Vout)を計算して応答波形として出力する。得られた応答波形は出力部314に送られ、出力部314はこの応答波形を出力する。
<本形態の特徴>
本形態により、制御信号波形および擬似力覚発生装置12の構成や持ち方に応じた応答波形を推定できる。
[第4実施形態]
第4実施形態は第3実施形態の変形例であり、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが、擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMd、皮膚の力学特性モデルMs、および制御信号波形と電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルMeに基づく点が相違する。
<構成>
図11に例示するように、本形態の波形推定装置41は、記憶部411、入力部312、モデル適用部413、および出力部314を有する。波形推定装置41は、例えば前述した汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。
本形態の前処理では制御対象の順ダイナミクスモデルMpが設定され、記憶部411に格納される。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、前述した運動部材125を駆動させるための制御信号の波形(制御信号波形)に対し、擬似力覚発生装置12の把持部126の位置、速度、加速度、ならびに把持部126に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を得るための数式モデルである。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、前述した力学特性モデルMd、力学特性モデルMs、および電気回路特性モデルMeに基づいて得られる。例えば、関係式(3A)〜(10A)の何れかと式(11)とに基づいた関係式を制御対象の順ダイナミクスモデルMpとする。例えば、関係式(4A)と式(11)とに基づいた関係式
fs=F(H(S)・Vin)=FRH(Vin) (18)
を制御対象の順ダイナミクスモデルMpとしてもよい。あるいは、関係式(5A)と式(11)とi=Vout/Rに基づいた関係式
・・ =F(H(S)・Vin/R)=FmRH(Vin) (19)
を制御対象の順ダイナミクスモデルMpとしてもよい。
<応答波形の推定処理>
本形態の応答波形の推定処理では、制御信号波形が入力部312に入力される。制御信号波形は、前述した運動部材125を駆動させるための制御信号波形である。前述のように、いずれの物理量の時間波形を制御信号波形とするかは制御対象の順ダイナミクスモデルMpの構成に依存する。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(18)の場合、電圧Vinの時間波形を制御信号波形とする。
制御信号波形はモデル適用部413に送られる。モデル適用部413は、記憶部111から読み出した制御対象の順ダイナミクスモデルMpに制御信号波形を適用し、制御信号波形で擬似力覚発生装置12の非対称運動を制御した場合における、把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を推定する。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(18)の場合、モデル適用部313は、制御信号波形の各時間の電圧Vinから各時間のfs=FRH(Vin)を計算して応答波形として出力する。
<本形態の特徴>
本形態により、制御信号波形、擬似力覚発生装置12の構成や持ち方、および電気回路13に応じた応答波形を推定できる。
[第5実施形態]
制御対象の順ダイナミクスモデルMpに制御信号波形として試行信号波形を適用して得られる、把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する推定波形と、入力された目標応答波形パターンとの誤差に基づいて(例えば、最急降下法などを用いて誤差が最小になるように)試行信号波形を調整し、擬似力覚発生装置12の非対称運動を制御するための目標制御信号波形を得てもよい。
<構成>
図12に例示するように、本形態のシステムは目標応答波形パターンから目標制御信号波形を得る制御信号推定装置51、擬似力覚発生装置12、および電気回路13を有する。制御信号推定装置51は、記憶部311、入力部112、モデル適用部313、試行信号更新部514、および誤差計算部515を有する。制御信号推定装置51は、例えば前述した汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。
<前処理>
第3実施形態で説明したように制御対象の順ダイナミクスモデルMpが設定され、記憶部311に格納される。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、運動部材125を駆動させるための制御信号波形に対し、擬似力覚発生装置12の把持部126の位置、速度、加速度、ならびに把持部126に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を得るための数式モデルである。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、力学特性モデルMd,Msに基づく。
<目標制御信号波形の推定処理>
本形態の目標制御信号波形の推定処理では、目標応答波形パターンTA(t)が入力部112に入力される。tは時刻を表す。目標応答波形パターンTA(t)は、目標となる把持部126の位置、速度、加速度、ならびに指100の皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する。いずれの物理量の時間波形パターンを目標応答波形パターンTA(t)とするかは制御対象の順ダイナミクスモデルMpの構成に依存する。すなわち、制御対象の順ダイナミクスモデルMpは制御信号波形から応答波形を得るモデルであり、入力部112に入力される目標応答波形パターンTA(t)はこの制御対象の順ダイナミクスモデルMpの応答波形に対応したものである。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(3A)の場合、目標となる力fsの時間波形を目標応答波形パターンTA(t)とする。目標応答波形パターンTA(t)は誤差計算部515に送られる(ステップS51)。
試行信号更新部514は、制御対象の順ダイナミクスモデルMpの制御信号波形とする試行信号波形TR(t)を設定する。試行信号波形TR(t)の初期値は予め定められており、例えばTR(t)=0とする。試行信号波形TR(t)はモデル適用部313に送られる(ステップS52)。
モデル適用部313は、送られた試行信号波形TR(t)を制御信号波形として制御対象の順ダイナミクスモデルMpに適用し、把持部の位置、速度、加速度、ならびに皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する推定波形W(t)を得る。例えば、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが関係式(3A)の場合、W(t)=F(TR(t))を計算する。推定波形W(t)は誤差計算部515に送られる(ステップS53)。
誤差計算部515は、目標応答波形パターンTA(t)と推定波形W(t)との誤差δ(t)に基づき、所定の終了条件を満たしているかを判定する。終了条件の例は、全ての時間tの誤差δ(t)が閾値以下であること、所定の時間区間(例えば1周期)での誤差δ(t)の二乗和が閾値以下であること、試行信号波形TR(t)の更新に応じた誤差δ(t)または二乗和の変化量が閾値以下であることなどである。ここで所定の終了条件を満たしていると判定された場合、誤差計算部515は、試行信号更新部514に終了条件を満たした旨の情報を送る。一方、所定の終了条件を満たしていないと判定された場合、誤差計算部515は、試行信号更新部514に終了条件を満たしていない旨の情報を送る(ステップS54)。
試行信号更新部514に終了条件を満たしていない旨の情報が送られた場合、試行信号更新部514は、新たな試行信号波形TR(t)を設定して(例えば、誤差δ(t)が小さくなるように)モデル適用部313に送る(ステップS55)。この場合には、ステップS53およびS54が再び実行される。一方、試行信号更新部514に終了条件を満たした旨の情報が送られた場合、試行信号更新部514は、最新の試行信号波形TR(t)を目標制御信号波形として出力する(ステップS56)。
得られた目標制御信号波形に応じた制御信号(制御電圧または制御電流)は電気回路13に与えられる。電気回路13はそれに応じた駆動信号を擬似力覚発生装置12に送る。擬似力覚発生装置12はこれに基づいて駆動し、把持部126を把持する指100に対して擬似力覚を呈示する。
<本形態の特徴>
本形態では、擬似力覚の呈示のための目標応答波形パターンから擬似力覚発生装置12の制御のための目標制御信号波形を推定できる。これにより、擬似力覚発生装置12の構成や持ち方が変わった場合でも、それぞれに応じて適切な目標制御信号波形を推定できる。また、逆関数または近似逆関数によって制御対象の逆ダイナミクスモデルを求める場合と異なり、制御対象の順ダイナミクスモデルが非線形であったとしても、精度よく目標制御信号波形を推定できる。
なお、力学特性モデルMd,Msは、目標制御信号波形に基づいて制御される擬似力覚発生装置12の把持部126(すなわち、実機の把持部)が把持された状態をモデル化したものであってもよいし、擬似力覚発生装置12と同一または類似する他の装置の把持部が把持された状態をモデル化したものであってもよい。前者の場合には、より正確な目標制御信号波形を推定できる。
[第6実施形態]
第6実施形態は第5実施形態の変形例であり、制御対象の順ダイナミクスモデルMpが、擬似力覚発生装置12の力学特性モデルMd、皮膚の力学特性モデルMs、および制御信号波形と電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルMeに基づく点が相違する。
図12に例示するように、本形態のシステムは制御信号推定装置61、擬似力覚発生装置12、および電気回路13を有する。制御信号推定装置61は、記憶部411、入力部112、モデル適用部413、試行信号更新部514、および誤差計算部515を有する。制御信号推定装置61は、例えば前述した汎用または専用のコンピュータが所定のプログラムを実行することで構成される装置である。
<前処理>
第4実施形態で説明したように制御対象の順ダイナミクスモデルMpが設定され、記憶部311に格納される。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、運動部材125を駆動させるための制御信号波形に対し、擬似力覚発生装置12の把持部126の位置、速度、加速度、ならびに把持部126に接触する皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する応答波形を得るための数式モデルである。本形態の制御対象の順ダイナミクスモデルMpは、力学特性モデルMd,Msおよび電気回路特性モデルMeに基づく。
<目標制御信号波形の推定処理>
力学特性モデルMd,Msおよび電気回路特性モデルMeに基づく制御対象の順ダイナミクスモデルMpを用いる以外、第5実施形態の目標制御信号波形の推定処理と同じである。
<実験結果>
本形態の比較実験結果を例示する。
《実験結果2:[T1,T2]=[2,10]msec》
図13A〜図13Cは本形態による実験結果を表す。この実験では図13Bの破線で表示した目標応答波形パターンを用い、図13Aの制御信号波形を得た。この目標応答波形パターン(図13B)は、把持部126に接触する指100の皮膚に与える力[N]の時間波形である。この目標応答波形パターンは、2[msec]の時間区間T1とそれに続く10[msec]の時間区間T2とを繰り返す周期的なパターンであり、その1周期には時間区間T1と時間区間T2が1ずつ含まれ、1周期は時間区間T1および時間区間T2からなる12[msec]である。この目標応答波形パターン(図13A)によって制御された擬似力覚発生装置12がその把持部126に接触する指100の皮膚に与える力[N]の応答波形を図13Bの実線で示す。図13Bより、目標応答波形パターンに近似する応答波形が得られていることが分かる。図13Cはこの際の把持部12の位置[m]の波形を表す。
《実験結果3:[T1,T2]=[3,16]msec》
図14A〜図14Cは本形態による実験結果を表す。実験結果4と異なり、[T1,T2]=[3,16]msecとした。その他の条件は比較実験結果1と同じである。
図4Bと図13B、図4Cと図13C、図6Bと図14B、図6Cと図14Cを比較すると、本形態の手法では従来手法に比べ、皮膚に与え力および把持部126の位置ともにノイズとなる波形の微細振動が少なく、一方で正方向の極大値と負方向との極大値との差が大きく、非対称性が大きいことが分かる。これにより、本形態では従来手法よりも明確な力覚を提示できることが分かる。
<本形態の特徴>
本形態でも、擬似力覚の呈示のための目標応答波形パターンから擬似力覚発生装置12の制御のための目標制御信号波形を推定できる。これにより、擬似力覚発生装置12の構成や持ち方が変わった場合でも、それぞれに応じて適切な目標制御信号波形を推定できる。また、逆関数または近似逆関数によって制御対象の逆ダイナミクスモデルを求める場合と異なり、制御対象の順ダイナミクスモデルが非線形(例えば、電気回路の出力が飽和する場合)であったとしても、その非線形特性をも反映させ、精度よく目標制御信号波形を推定できる。
なお、力学特性モデルMd,Msは、目標制御信号波形に基づいて制御される擬似力覚発生装置12の把持部126(すなわち、実機の把持部)が把持された状態をモデル化したものであってもよいし、擬似力覚発生装置12と同一または類似する他の装置の把持部が把持された状態をモデル化したものであってもよい。同様に、電気回路特性モデルMeは目標制御信号波形の制御信号が与えられる電気回路13(すなわち、実機)をモデル化したものであってもよいし、電気回路13と同一または類似する他の電気回路をモデル化したものであってもよい。いずれも、前者の場合には、より正確な目標制御信号波形を推定できる。
[第5,6実施形態の変形例]
第5,6実施形態の変形例として、擬似力覚発生装置12に代えて第1,2実施形態の変形例1,2で例示した擬似力覚発生装置12’,12”が用いられてもよい。第1,2実施形態の変形例3で例示したように、擬似力覚発生装置が複数の運動部材を備えていてもよい。
[第7実施形態]
第1〜6実施形態の何れかまたはその変形例の目標制御信号波形を用い、第1の皮膚に直接的または間接的に支持されるベース機構と、ベース機構に対して目標制御信号波形に応じた周期的な非対称運動を行い、直接的または間接的に接触した第2の皮膚に非対称運動に基づく力を与える接触機構とを有する擬似力覚発生装置を駆動させてもよい。ただし、この接触機構の質量はベース機構の質量よりも小さい。
<構成>
図15A〜図15Dに例示するように、本形態の擬似力覚発生装置1000は、基部1001、支持部1026−1および支持部1026−1に対する非対称振動(周期的な非対称運動)を行う運動部材1025−1を含む振動子1020−1、ならびに接触部1003−1を有する。本形態の運動部材1025−1は、前述の電気回路13から出力された駆動信号に基づいて、支持部1026−1に支持された状態で、D−1軸に沿った非対称振動を行う。基部1001は手200の皮膚201(第1の皮膚)に直接的または間接的に支持され、接触部1003−1は直接的または間接的に接触した手200の皮膚202(第2の皮膚)に非対称振動に基づく力を与える。この非対称振動は擬似的な力覚を知覚させるための振動である。
本形態では、基部1001および支持部1026−1を含む機構(例えば、基部1001および支持部1026−1からなる機構)が「ベース機構」に相当する。接触部1003−1および運動部材1025−1を含む機構(例えば、接触部1003−1、運動部材1025−1、およびそれらを連結する部材からなる機構)が「接触機構」に相当する。「接触機構」の質量mは「ベース機構」の質量mよりも小さい。例えば、接触部1003−1、運動部材1025−1、およびそれらを連結する部材を含む機構の質量の合計が、基部1001および支持部1026−1の質量の合計よりも小さい。好ましくは、「接触機構」の質量は、零よりも大きく「ベース機構」の質量の三分の一以下である。例えば、接触部1003−1、運動部材1025−1、およびそれらを連結する部材を含む機構の質量の合計は、基部1001および支持部1026−1の質量の合計の三分の一以下である。このような構成では、系全体の質量m+mが大きい場合でも、「接触機構」の質量mは小さいため、接触部1003−1から皮膚202に十分な大きさの力が伝達される。結果として、同じストロークおよび出力を持つ振動子1020−iで、皮膚202に従来方式よりも大きな変形を与えることができる。また、運動部材1025−iと支持部1026−iとの相対変位を小さくできるため、ストロークのより小さな振動子1020−iを用いることができる。このような機構を用いて振動子1020−iを非対称振動させることにより、効率的に牽引感覚などの擬似的な力覚を知覚させることができる。
<基部1001>
図15A〜図15Dに例示するように、本形態の基部1001は板状の部材であり、その上面1001b側には振動子1020−1が配置される凹部1001d−1が設けられている。基部1001はどのようなものであってもよい。基部1001の例は、スマートフォン端末装置、タブレット端末装置、電子書籍リーダー装置、携帯電話端末装置、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯型ゲーム機などの移動体端末装置である。コントローラーその他の電子機器が基部1001であってもよいし、電子機器以外の部材が基部1001であってもよい。基部1001が携帯電話端末装置などの移動体端末装置とその他の部材とを含んでもよい。
<振動子1020−1>
振動子1020−1の支持部1026−1が凹部1001d−1の底面1001e−1に取り付けられている。なお「αがβに取り付けられている」とは、αがβに固定されていること、αがβに接続されていること、αがβに着脱可能に保持されていること、または、αが「遊び(余裕)」または「ガタ」を持った状態でβに保持されていること、の何れかを意味する。また「αがβに取り付けられている」とは、αがβに直接取り付けられていることのみならず、αが介在物を介して間接的にβに取り付けられていることも含む概念である。「βにαが取り付けられている」も同義である。これによって振動子1020−1は基部1001に支持され、振動子1020−1は凹部1001d−1の内部に配置されている。振動子1020−1の運動部材1025−1は、支持部1026−1に支持された状態で、D−1軸に沿って支持部1026−1に対する非対称振動を行うことが可能である。本形態のD−1軸は基部1001の短手方向に沿った軸であり、運動部材1025−1は、基部1001の短手方向に非対称振動する。以下、振動子1020−1の具体的な構成を例示する。
図16Aおよび図16Bに例示するように、振動子1020−i(iは正整数)は、例えば、ケース1027−iおよびガイド1021−iを含む支持部1026−i、ばね1022−i,1023−i(弾性体)、コイル1024−i、永久磁石である運動部材1025−i、および連結部1029c−i,1029d−i,1029a−i,1029b−iを有するリニアアクチュエータである。本形態のケース1027−iおよびガイド1021−iは、ともに筒(例えば、円筒や多角筒)の両方の開放端の一部を閉じた形状からなる中空の部材である。ただし、ガイド1021−iは、ケース1027−iよりも小さく、ケース1027−iの内部に収容可能な大きさである。ケース1027−i、ガイド1021−i、および連結部1029a−i,1029b−i,1029c−i,1029d−iは、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂から構成される。ばね1022−i,1023−iは、例えば、金属等から構成されるつるまきばねや板ばね等である。ばね1022−i,1023−iの弾性係数(ばね定数)は同一であることが望ましいが、互いに相違していてもよい。運動部材1025−iは、例えば、円柱形状の永久磁石であり、長手方向の一方の端部1025a−i側がN極であり、他方の端部1025b−i側がS極である。コイル1024−iは、例えば、一つながりのエナメル線であり、第1巻き部1024a−iと第2巻き部1024b−iとを有する。
運動部材1025−iはガイド1021−iの内部に収容され、そこで長手方向にスライド可能に支持されている。このような支持機構の詳細は図示しないが、例えば、ガイド1021−iの内壁面に長手方向に沿ったまっすぐなレールが設けられ、運動部材1025−iの側面にこのレールをスライド可能に支持するレール支持部が設けられている。ガイド1021−iの長手方向の一端側の内壁面1021a−iには、ばね1022−iの一端が固定され(すなわち、ガイド1021−iにばね1022−iの一端が支持され)、ばね1022−iの他端は運動部材1025−iの端部1025a−iに固定されている(すなわち、運動部材1025−iの端部1025a−iがばね1022−iの他端に支持されている)。また、ガイド1021−iの長手方向の他端側の内壁面1021b−iには、ばね1023−iの一端が固定され(すなわち、ガイド1021−iにばね1023−iの一端が支持され)、ばね1023−iの他端は運動部材1025−iの端部1025b−iに固定されている(すなわち、運動部材1025−iの端部1025b−iがばね1023−iの他端に支持されている)。
ガイド1021−iの外周側にはコイル1024−iが巻きつけられている。ただし、運動部材1025−iの端部1025a−i側(N極側)では、第1巻き部1024a−iがA方向(奥から手前に向けた方向)に巻きつけられており、端部1025b−i側(S極側)では、第2巻き部1024b−iがA方向と反対向きのB方向(手前から奥に向けた方向)に巻き付けられている。すなわち、運動部材1025−iの端部1025a−i側(N極側)からみた場合、第1巻き部1024a−iは時計回りに巻き付けられており、第2巻き部1024b−iは反時計回りに巻き付けられている。また、運動部材1025−iが停止し、ばね1022−i,1023−iからの弾性力が釣り合った状態において、運動部材1025−iの端部1025a−i側(N極側)が第1巻き部1024a−iの領域に配置され、端部1025b−i側(S極側)が第2巻き部1024b−iの領域に配置されることが望ましい。
以上のように配置構成されたガイド1021−i、ばね1022−i,1023−i、コイル1024−i、および運動部材1025−iが、ケース1027−i内に収容され、ガイド1021−iがケース1027−iの内部に固定されている。すなわち、ケース1027−iのガイド1021−iに対する相対位置が固定されている。ただし、ケース1027−iの長手方向は、ガイド1021−iの長手方向および運動部材1025−iの長手方向と一致する。
ケース1027−iおよびガイド1021−iの内壁面1021a−i側には貫通孔1028a−iが設けられており、内壁面1021b−i側には貫通孔1028b−iが設けられている。貫通孔1028a−iには棒状の連結部1029a−iが挿入されており、貫通孔1028b−iには棒状の連結部1029b−iが挿入されている。連結部1029a−iの一端側は運動部材1025−iの端部1025a−i側に接触し、連結部1029a−iの他端側はケース1027−iの外部に配置された連結部1029c−iの一端側に支持されている。連結部1029b−iの一端側は運動部材1025−iの端部1025b−i側に接触し、連結部1029b−iの他端側はケース1027−iの外部に配置された連結部1029d−iの一端側に支持されている。連結部1029a−iの一端側は運動部材1025−iの端部1025a−i側に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。連結部1029b−iの一端側は運動部材1025−iの端部1025b−i側に接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。例えば、運動部材1025−iの端部1025a−i,1025b−iが連結部1029a−iの一端側と連結部1029d−iの一端側とで挟み込まれていてもよい。ただし、運動部材1025−iの運動に伴って連結部1029c−i,1029d−i,1029a−i,1029b−iが移動する必要がある。すなわち、連結部1029a−i,1029b−i,1029c−i,1029d−iは、運動部材1025−iとともに移動しなければならない。その他、連結部1029a−iの一端側が運動部材1025−iの端部1025a−i側と一体であってもよいし、連結部1029b−iの一端側が運動部材1025−iの端部1025b−i側と一体であってもよい。
コイル1024−iは、流された電流に応じた力を運動部材1025−iに与え、これにより、運動部材1025−iは、ガイド1021−iに対して周期的な非対称運動(ガイド1021−iを基準とした軸方向に非対称性をもった周期的な並進往復運動)を行う。すなわち、コイル1024−iにA方向(B方向)に電流を流すと、フレミングの左手の法則で説明されるローレンツ力の反作用により、運動部材1025−iにC方向(運動部材1025−iのN極からS極に向かう方向:右方向)の力が加えられる(図16A)。逆に、コイル1024−iにA方向(B方向)に電流を流すと、運動部材1025−iにC方向(運動部材1025−iのS極からN極に向かう方向:左方向)の力が加えられる(図16B)。ただし、A方向はA方向の反対方向である。これらの動作により、運動部材1025−iおよびばね1022−i,1023−iからなる系に運動エネルギーが与えられる。それにより、ケース1027−iを基準とする運動部材1025−iの位置および加速度(ガイド1021−iを基準とした軸方向の位置および加速度)を変化させ、それに伴って連結部1029c−i,1029d−i,1029a−i,1029b−iの位置および加速度も変化させることができる。すなわち運動部材1025−iは、与えられた駆動信号(駆動電圧Voutまたは駆動電流)に基づいて、支持部1026−iに支持された状態で、D−i軸に沿って支持部1026−iに対する非対称振動を行い、それと共に連結部1029c−i,1029d−i,1029a−i,1029b−iもD−i軸に沿って非対称振動を行う。
なお、振動子1020−iの構成は図16Aおよび図16Bのものに限定されない。例えば、運動部材1025−iの端部1025a−i側にコイル1024−iの第1巻き部1024a−iがA方向に巻きつけられおり、端部1025b−i側にコイル1024−iが巻き付けられていない構成であってもよい。逆に、端部1025b−i側にコイル1024−iの第2巻き部1024b−iがB方向に巻き付けられており、運動部材1025−iの端部1025a−i側にコイル1024−iが巻き付けられていない構成であってもよい。あるいは、第1巻き部1024a−iと第2巻き部1024b−iとが互いに別のコイルであってもよい。すなわち、第1巻き部1024a−iと第2巻き部1024b−iとが電気的に接続されておらず、互いに異なる電気信号が与えられる構成であってもよい。
<接触部1003−1>
振動子1020−1の運動部材1025−1には接触部1003−1が取り付けられ、これによって接触部1003−1が振動子1020−1によって支持される。すなわち、接触部1003−1は、運動部材1025−iに取り付けられており、かつ、支持部1026−1に対して振動可能とされている。図15A〜図15Dに例示するように、本形態の接触部1003−1は、平面形状(板面1003a−1,1003b−1の形状)が略矩形(例えば、長方形や正方形)の板状部材である。板面1003a−1,1003b−1の大きさは、基部1001の凹部1001d−1の開口部の領域よりも小さい。すなわち、接触部1003−1の板面1003a−1の領域は、基部1001の上面1001bの領域よりも狭い。接触部1003−1は、運動部材1025−iの非対称振動に基づく振動を伝導可能な硬さを持ち、かつ、できるだけ軽量な材質で構成されることが望ましい。このような材質としては、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂を例示できる。
接触部1003−1は、その板面1003a−1,1003b−1が上面1001bと略平行となるように、凹部1001d−1の開口部側に配置されている。「略平行」の例は平行である。板面1003a−1は、基部1001の外方に向けられており、上面1001bと略同一面上に配置されている。板面1003b−1は凹部1001d−1の底面1001e−1側に向けられており、当該板面1003b−1には連結部1029c−i,1029d−iの他端側が取り付けられている。すなわち、振動子1020−1の運動部材1025−1が、前述の連結部1029c−i,1029d−i,1029a−i,1029b−iを介して接触部1003−1に取り付けられている。これによって、接触部1003−1および連結部1029c−i,1029d−i,1029a−i,1029b−iが、基部1001および支持部1026−1に支持されている。接触部1003−1と凹部1001d−1の内壁面1001f−1との間には間隙があり、これらは互いに接触していない。あるいは、レールなどにより、接触部1003−1が振動子1020−1の運動方向と略直交方向には支持されていてもよい(すなわち、レールなどにより、接触部1003−1が振動子1020−1の運動方向と略直交方向に移動しないように支持されていてもよい)。これにより、接触部1003−1は、基部1001、および支持部1026−iに対し、基部1001の上面1001bに沿った方向に振動可能となっている。すなわち、接触部1003−1は、基部1001、および支持部1026−iに対し、基部1001の上面1001bと略平行に、振動子1020−1の振動方向に振動可能となっている。
<系の質量>
前述のように、本形態の「ベース機構」は基部1001および支持部1026−1を含む機構であり、例えば、基部1001および支持部1026−1からなる機構である。「ベース機構」が、さらに、ばね1022−i,1023−i、およびコイル1024−iの少なくとも何れかを含んでもよい。また「接触機構」は接触部1003−1および運動部材1025−1を含む機構であり、例えば、接触部1003−1、運動部材1025−1、および連結部1029a−i,1029b−i,1029c−i,1029d−iからなる機構である。「接触機構」の質量mは「ベース機構」の質量mよりも小さい。これによって効率的に擬似的な力覚を呈示できる。好ましくは、「接触機構」の質量mが、零よりも大きく、「ベース機構」の質量mの質量の三分の一以下である。言い換えると、0<m/m≦1/3である。これにより、より効率的に擬似的な力覚を呈示できる。
<動作>
図15Dに例示するように、擬似力覚発生装置1000の利用時には、基部1001の底面1001c側が手200の掌や親指を除く指などの皮膚201で保持(把持)され、接触部1003−1に手200の親指などの皮膚202が接触する。基部1001は皮膚201に直接接触していてもよいし、介在物を介して保持されていてもよい。同様に、接触部1003−1も皮膚202に直接接触していてもよいし、介在物を介して接触していてもよい。ただし、接触部1003−1の振動に基づく力が皮膚202に伝導されなければならない。
前述と同様、第1〜6実施形態の何れかまたはその変形例の目標制御信号波形に応じた制御信号(制御電圧または制御電流)が電気回路13に与えられる。電気回路13はそれに応じた駆動信号(駆動電圧Voutまたは駆動電流)を擬似力覚発生装置1000の振動子1020−1に送る。ただし本形態の擬似力覚発生装置1000の力学特性モデルMdでは、「接触機構」が質点Mに相当し、「ベース機構」が質点Mに相当する。x,xの何れも手200の重心から図15Dにおける右方向を正とし、手200の重心から図15Dにおける左方向を負とする。本形態の力学特性モデルMsは皮膚202の力学特性モデルである。なお、「接触機構」の質量mに比べて「ベース機構」の質量mは大きい。そのため、振動子1020−1の駆動に伴って皮膚201に加えられる力の大きさは、皮膚202に加えられる力の大きさよりも小さい。本形態では皮膚201の力学特性モデルを省略している。
この駆動信号により、運動部材1025−1に所望の方向(図16Aおよび図16B:C方向またはC方向)の加速度を与える向きの電流をコイル1024−1に流す期間T1と、それ以外の期間T2と、が周期的に繰り返される。その際、所定の方向に電流を流す期間(時間)とそれ以外の期間(時間)との比(反転比)を何れか一方の期間に偏らせる。言い換えると、1つの周期に占める期間T1の割合が当該周期に占める期間T2の割合と異なる周期的な電流をコイル1024−1に流す。これにより、運動部材1025−1が支持部1026−1に対してD−1軸に沿って非対称振動する。運動部材1025−1による非対称振動は、連結部1029a−1,1029b−1,1029c−1,1029d−1を介して接触部1003−1に伝えられ、接触部1003−1は皮膚202に当該非対称振動に基づく力を与える。これにより、D−1軸に沿った何れかの向きに擬似的な並進力覚を呈示できる。
なお、望ましくは、接触部1003−1が皮膚202に与える力の応答波形(時系列波形パターン)は、時間区間τ1(第1の時間区間)では、向きが所定方向DIR1であって絶対値が閾値TH1(第1の閾値)以上である力を表し、時間区間τ2(第1の時間区間と異なる第2の時間区間)では、向きが所定方向の反対方向DIR2であって絶対値が閾値TH2(TH2<TH1)以内である力を表す。ただし、τ1<τ2であり、時間区間τ1と時間区間τ2とは周期的に繰り返される。このような応答波形を実現する目標応答波形パターンは、第1の時間区間T1では、向きが所定方向であって絶対値が第1の閾値以上である力を表し、第1の時間区間T1と異なる第2の時間区間T2では、向きが所定方向の反対方向であって絶対値が第2の閾値以内である力を表す周期的な波形パターンである。ただし、第1の時間区間T1は第2の時間区間T2よりも短い。これによって、より明確に擬似的な力覚を知覚させることができる。より望ましくは、当該力の波形パターンが矩形パターンまたは矩形パターンに近似するパターンであることが望ましい。
[第7実施形態の変形例1]
第7実施形態ではD−1軸は基部1001の短手方向に沿った軸であったが、図17Aおよび図17Bに例示するように、基部1001の長手方向に沿った軸をD−1軸としてもよい。
[第7実施形態の変形例2]
第7実施形態では、振動子1020−1の支持部1026−1が基部1001の凹部1001d−1の底面1001e−1に取り付けられ、振動子1020−1の運動部材1025−1に接触部1003−1が取り付けられていた。しかし、図17Cに例示するように、振動子1020−1の運動部材1025−1が連結部を介して基部1001の凹部1001d−1の底面1001e−1に取り付けられ、振動子1020−1の支持部1026−1に接触部1003−1が取り付けられていてもよい。この場合、「ベース機構」は基部1001および運動部材1025−1を含む機構であり、例えば、基部1001、運動部材1025−1、およびそれらの連結部1029a−1,1029b−1,1029c−1,1029d−1からなる機構である。また、この場合の「接触機構」は接触部1003−1および支持部1026−1を含む機構であり、例えば、接触部1003−1および支持部1026−1からなる機構である。「接触機構」が、さらに、ばね1022−i,1023−i、およびコイル1024−iの少なくとも何れかを含んでもよい。「接触機構」の質量mは「ベース機構」の質量mよりも小さい。これによって効率的に擬似的な力覚を呈示できる。好ましくは、「接触機構」の質量mが、零よりも大きく、「ベース機構」の質量mの質量の三分の一以下である。
[第7実施形態の変形例3]
擬似力覚発生装置1000が基部1001を含まなくてもよい。例えば、振動子1020−1および接触部1003−1を含む機構と基部1001とが別々に流通し、利用時に第7実施形態の変形例1または2のように、基部1001に振動子1020−1および接触部1003−1が取り付けられてもよい。
第7実施形態のように取り付けられる場合(図15A)、「ベース機構」は支持部1026−1を含む機構であり、例えば、支持部1026−1からなる機構である。「ベース機構」が、さらに、ばね1022−i,1023−i、およびコイル1024−iの少なくとも何れかを含んでもよい。また「接触機構」は接触部1003−1および運動部材1025−1を含む機構であり、例えば、接触部1003−1、運動部材1025−1、および連結部1029a−i,1029b−i,1029c−i,1029d−iからなる機構である。「接触機構」の質量mは、「ベース機構」の質量と「ベース機構」に取り付けられる機構である基部1001の質量との合計mよりも小さい。この場合の力学特性モデルMdでは、「接触機構」が質点Mに相当し、「ベース機構」と基部1001とが質点Mに相当する。
第7実施形態の変形例2のように取り付けられる場合(図17C)、「ベース機構」は運動部材1025−1を含む機構であり、例えば、運動部材1025−1、およびそれらの連結部1029a−1,1029b−1,1029c−1,1029d−1からなる機構である。この場合の「接触機構」は接触部1003−1および支持部1026−1を含む機構であり、例えば、接触部1003−1および支持部1026−1からなる機構である。「接触機構」が、さらに、ばね1022−i,1023−i、およびコイル1024−iの少なくとも何れかを含んでもよい。「接触機構」の質量mは、「ベース機構」の質量と「ベース機構」に取り付けられる機構である基部1001の質量との合計mよりも小さい。この場合の力学特性モデルMdでは、「接触機構」が質点Mに相当し、「ベース機構」と基部1001とが質点Mに相当する。
これらの場合も、好ましくは、0<m/m≦1/3である。
[第8実施形態]
第8実施形態は第7実施形態の変形例であり、擬似力覚発生装置が複数個の接触機構を有する。
図18A〜図18Dに例示するように、本形態の擬似力覚発生装置1100は、基部1101、支持部1026−iおよび支持部1026−iに対する非対称振動(周期的な非対称運動)を行う運動部材1025−iを含む振動子1020−i、ならびに接触部1003−iを有する(ただし、i=1,2)。第7実施形態との相違点は、基部1101の上面1101b側に接触部1003−1が配置されているだけではなく、基部1101の下面1101c側にも接触部1003−2が配置されている点である。各接触部1003−iは振動子1020−iを介して基部1101に取り付けられており、振動子1020−iの駆動によって接触部1003−iが基部1101に対して非対称振動する。第7実施形態のように、支持部1026−iが基部1101に取り付けられており、振動子1020−iが接触部1003−iに取り付けられていてもよいし、第7実施形態の変形例2のように、振動子1020−iが基部1101に取り付けられており、支持部1026−iが接触部1003−iに取り付けられていてもよい。ただし、本形態のD−1軸とD−2軸は共に基部1101の短手方向に沿った軸であり、互いに略平行である。接触部1003−1は上面1101bと略平行に配置され、接触部1003−2は下面1101cと略平行に配置されている。この例の接触部1003−1と接触部1003−2は、基部1101の上面1101bと下面1101cとの中間面に対して略面対称に配置されている。すなわち、接触部1003−1と接触部1003−2との間に振動子1020−1,1020−2が配置されている。
擬似力覚発生装置1100の使用時には、基部1101、および接触部1003−1,1003−2が利用者の皮膚に接触する。図18Cに例示するように、接触部1003−1,1003−2を同一方向E−1,E−2に擬似的な力覚を呈示するように非対称振動させた場合、利用者はその方向に並進力覚を知覚する。一方、図18Cに例示するように、接触部1003−1,1003−2を互いに反対方向E−1,E−2に擬似的な力覚を呈示するように非対称振動させた場合、利用者はE−11方向に回転するような擬似的な力覚を知覚する。
[第8実施形態の変形例1]
図19A〜図19Cに例示する擬似力覚発生装置1200のように、D−1軸とD−2軸とが互いに略直交していてもよい。「略直交」の例は直交である。この擬似力覚発生装置1200は、基部1201、支持部1026−iおよび支持部1026−iに対する非対称振動(周期的な非対称運動)を行う運動部材1025−iを含む振動子1020−i、ならびに接触部1003−iを有する(ただし、i=1,2)。基部1201の上面1201b側には接触部1003−1が配置されており、基部1201の下面1201c側には接触部1003−2が配置されている。各接触部1003−iは振動子1020−iを介して基部1201に取り付けられており、振動子1020−iの駆動によって接触部1003−iが基部1201に対して非対称振動する。D−1軸は基部1201の短手方向に沿った軸であり、D−2軸は基部1201の長手方向に沿った軸であり、互いに略直交する。接触部1003−1は上面1201bと略平行に配置され、接触部1003−2は下面1201cと略平行に配置されている。この例では、接触部1003−1と接触部1003−2とは互いにずれた位置に配置されている。すなわち、上面1201bと下面1201cとの中間に位置するこれらと略平行な中間面に対して、接触部1003−1と面対称となる領域に、接触部1003−2は存在していない。擬似力覚発生装置1200の使用時には、基部1201、および接触部1003−1,1003−2が利用者の皮膚に接触する。擬似力覚発生装置1200の振動子1020−1,1020−2を駆動することで、利用者は接触部1003−1,1003−2の非対称振動に基づく擬似的な力覚を知覚する。
[第8実施形態の変形例2]
図20A〜図20Cに例示した擬似力覚発生装置1300のように、上面1201bと下面1201cとの中間に位置するこれらと略平行な中間面に対して、接触部1003−1と面対称となる領域に接触部1003−2が存在していてもよい。このような擬似力覚発生装置1300の使用時には、基部1201、および接触部1003−1,1003−2が利用者の皮膚に接触する。擬似力覚発生装置1200の振動子1020−iを駆動することで、擬似力覚発生装置1300の振動子1020−1,1020−2を駆動することで、利用者は接触部1003−1,1003−2の非対称振動に基づく擬似的な力覚を知覚する。
[第8実施形態の変形例3]
図21A〜図21Cに例示する擬似力覚発生装置1400は、基部1401、振動子1020−i、ならびに接触部1003−iを有する(ただし、i=1,2)。基部1401の内部には、振動子1020−2の支持部1026−2または運動部材1025−2の何れか一方側が取り付けられており、その他方側には接触部1003−2に取り付けられている。接触部1003−2には、振動子1020−1の支持部1026−1または運動部材1025−1の何れか一方側が取り付けられており、その他方側には接触部1003−1に取り付けられている。振動子1020−1は、その運動部材1025−1が基部1401の短手方向に沿ったD−1軸に沿って非対称振動可能なように取り付けられており、振動子1020−2は、その運動部材1025−2が基部1401の長手方向に沿ったD−2軸に沿って非対称振動可能なように取り付けられている。すなわち、振動子1020−1,1020−2はD−1軸とD−2軸とが互いに略直交するように取り付けられている。例えば、図22Aおよび図22Bに例示するように、振動子1020−2の支持部1026−2が基部1401の内部に固定されており、振動子1020−2の運動部材1025−2が連結部1029a−2,1029b−2,1029c−2,1029d−2を介して接触部1003−2に取り付けられている。接触部1003−2には、振動子1020−1の支持部1026−1が取り付けられており、振動子1020−1の運動部材1025−1が連結部1029a−1,1029b−1,1029c−1,1029d−1を介して接触部1003−1に取り付けられている。接触部1003−1,1003−2は、基部1401の上面1401bおよび下面1401cと略平行であり、接触部1003−1は上面1401bと略同一平面上に配置されている。
擬似力覚発生装置1400の使用時には、基部1401および接触部1003−1が利用者の皮膚に接触する。振動子1020−1のみを駆動させた場合には、D−1軸に沿った何れかの方向に擬似的な力覚を呈示でき、振動子1020−2のみを駆動させた場合には、D−2軸に沿った何れかの方向に擬似的な力覚を呈示できる。振動子1020−1および振動子1020−2の両方を駆動させた場合には、D−1軸とD−2軸とからなる平面上の任意の方向に擬似的な力覚を呈示できる。
[第9実施形態]
図23Aおよび図23Bに例示するように、本形態の擬似力覚発生装置1500は、振動子1020−1、板状の接触部1503および帯状(バンド状)の接触部1504を有する。接触部1503は合成樹脂等から構成され、接触部1504は合成樹脂や皮などから構成される。振動子1020−1の運動部材1025−1は連結部1029a−1,1029b−1,1029c−1,1029d−1を介して接触部1503の板面1503cに取り付けられている。さらに振動子1020−1の支持部1026−1には接触部1504に取り付けられている。図23Aおよび図23Bの例では、支持部1026−1に対し、D−1軸と略直交する向きに、帯状の接触部1504が取り付けられている。すなわち、接触部1504は、D−1軸と略直交する向きに支持部1026−1に取り付けられている。図23Bに例示するように、擬似力覚発生装置1500は、例えば、接触部1503,1504が利用者の腕1510の皮膚に接触するように装着される。
この構成の場合、「ベース機構」は支持部1026−1および接触部1504を含む機構であり、例えば、支持部1026−1および接触部1504からなる機構である。「ベース機構」が、さらに、ばね1022−i,1023−i、およびコイル1024−iの少なくとも何れかを含んでもよい。また「接触機構」は接触部1503および運動部材1025−1を含む機構であり、例えば、接触部1503−1、運動部材1025−1、および連結部1029a−i,1029b−i,1029c−i,1029d−iからなる機構である。「接触機構」の質量mは「ベース機構」の質量mよりも小さい。好ましくは、0<m/m≦1/3である。この場合の力学特性モデルMdでは、「接触機構」が質点Mに相当し、「ベース機構」が質点Mに相当する。これにより、腕1510が伸びる方向に沿った何れかの向きに擬似的な力覚を呈示できる。
[第9実施形態の変形例1]
図24に例示する擬似力覚発生装置1600のように、支持部1026−1に合成樹脂や皮などから構成される帯状部材1604が取り付けられ、さらに帯状部材1604に対し、D−1軸に沿った向きに、帯状の接触部1504が環状に取り付けられていいてもよい。すなわち、接触部1504が、D−1軸に沿った方向に支持部1026−1に取り付けられている。この構成の場合、「ベース機構」は、支持部1026−1、帯状部材1604、および接触部1504を含む機構であり、例えば、支持部1026−1、帯状部材1604、および接触部1504からなる機構である。「ベース機構」が、さらに、ばね1022−i,1023−i、およびコイル1024−iの少なくとも何れかを含んでもよい。また「接触機構」は接触部1503および運動部材1025−1を含む機構であり、例えば、接触部1503−1、運動部材1025−1、および連結部1029a−i,1029b−i,1029c−i,1029d−iからなる機構である。「接触機構」の質量mは「ベース機構」の質量mよりも小さい。この構成では、腕1510を横切る何れかの向きに擬似的な力覚を呈示できる。
[第10実施形態]
接触機構およびベース機構の両方が皮膚に接触する構成(例えば、第7〜9実施形態およびそれらの変形例)の場合、接触機構が目標制御信号波形およびバイアス成分に応じた非対称振動を行ってもよい。ただし、バイアス成分は非対称振動の振動中心を制御する成分である。すなわち、接触機構の非対称振動の振動中心の位置を制御可能としてもよい。例えば、バイアス成分によって非対称振動による擬似的な力覚を呈示する方向に振動中心を移動させてもよい。これにより、擬似的な力覚をより明確に知覚させることができる。
例えば、図25Aに例示するように、目標制御信号波形のみに応じて振動子1020−iを駆動させた場合(バイアス成分が零の場合)における、接触部1003−iのD−i軸に沿った非対称振動の振動中心をΦとする。ここで、図25Bに例示するようにG1方向に擬似的な力覚を呈示する場合には、接触部1003−iの非対称振動の振動中心が振動中心ΦよりもG1方向に移動したΦとなるようにバイアス成分を調整する。例えば、目標制御信号波形が正の場合に接触部1003−iにG1方向の力が与えられるのであれば、目標制御信号波形と正のバイアス成分とを加算した波形に応じた制御信号を電気回路13に与え、それに応じた駆動信号を振動子1020−iに与える。逆に図25Cに例示するようにG2方向に擬似的な力覚を呈示する場合には、接触部1003−iの非対称振動の振動中心が振動中心ΦよりもG2方向に移動したΦとなるようにバイアス成分を調整する。例えば、目標制御信号波形が負の場合に接触部1003−iにG2方向の力が与えられるのであれば、目標制御信号波形から正のバイアス成分を減算した波形に応じた制御信号を電気回路13に与え、それに応じた駆動信号を振動子1020−iに与える。なお、接触部1003−iの非対称振動の振動中心をG1方向に移動させるためのバイアス成分の大きさと、当該振動中心をG2方向に移動させるためのバイアス成分の大きさは、互いに同一であってもよいし、同一でなくてもよい。また、過去の擬似的な力覚の呈示方向の履歴に応じて、当該振動中心をG1方向に移動させるためのバイアス成分の大きさ、または、当該振動中心をG2方向に移動させるためのバイアス成分の大きさを変化させてもよい。なお、図25Bおよび図25Cでの例では、G1方向とG2方向が拮抗する方向にあるため、ある時刻におけるバイアスはG1方向、G2方向のいずれか一方となる。
[シミュレーション結果]
比較シミュレーション結果を示す。
<擬似力覚発生装置12と擬似力覚発生装置1000との比較>
図26A〜図26Cおよび図27A〜図27Cを用い、時間非対称矩形波の制御電圧で制御した場合の比較シミュレーション結果を示す。ただし、この時間非対称矩形波は、正である期間T1および負である期間T2が[T1,T2]=[6,12][ms]のものである。図26A〜図26Cは、スマートフォンケース等の接触部が取り付けられたスマートフォン端末装置等の本体に、擬似力覚発生装置12(図3A)を内蔵した場合のシミュレーション結果を表し、図27A〜図27Cは擬似力覚発生装置1000(図15A)でのシミュレーション結果を表す。図26Aおよび図27Aは、擬似力覚発生装置12のおよび擬似力覚発生装置1000の制御電圧を表す。縦軸は制御電圧の電圧値[V]を表し、横軸は時間[sec]を表す。図26Bおよび図27Bは、図26Aおよび図27Aの制御電圧で駆動させたときの、擬似力覚発生装置12が内蔵された本体に取り付けられた接触部および擬似力覚発生装置1000の接触部1003−1から皮膚に与えられる力を表す。縦軸は皮膚に与えられる力[N]を表し、横軸は時間[sec]を表す。図26Cおよび図27Cは、図26Aおよび図27Aの制御電圧で駆動させたときの、擬似力覚発生装置12が内蔵された本体に取り付けられた接触部および擬似力覚発生装置1000の接触部1003−1の位置(振動波形)を表す。縦軸は接触部の位置[m]を表し、横軸は時間[sec]を表す。ただし、図26A〜図26Cでは、質量145gの本体(例えば、スマートフォン端末装置)、質量10gの接触部(例えば、スマートフォンケース)、質量10gの支持部(例えば、アクチュエータケース)からなる系の質量をm=155gとし、質量5gの運動部材(例えば、アクチュエータ可動子)からなる系の質量をm=5gとした。一方、図27A〜図27Cでは、質量5gの接触部1003−1および質量5gの運動部材1025−i(例えば、アクチュエータ可動子)からなる系の質量をm=10gとし、質量10gの支持部1026−i(例えば、アクチュエータケース)および質量135gの基部1001(例えば、スマートフォン端末装置)からなる系の質量をm=145gとした。これらの図から分かるように、擬似力覚発生装置1000は、接触部が取り付けられた本体に擬似力覚発生装置12を内蔵した構成に比べて質量mに対して質量mを大きくでき、接触部の振動の非対称性および皮膚に与えられる力の非対称性をともに大きくできる。その結果、本形態の構成では従来よりも明確に擬似的な力覚を呈示できる。
<時間非対称矩形波の制御電圧と目標制御信号波形の制御電圧との比較1>
図28A〜図28Cに擬似力覚発生装置1000を時間非対称矩形波の制御電圧で制御した場合のシミュレーション結果を示し、図29A〜図29Cに擬似力覚発生装置1000を目標制御信号波形の制御電圧で制御した場合の比較シミュレーション結果を示す。ただし、時間非対称矩形波および目標制御信号波形は、いずれも正である期間T1および負である期間T2が[T1,T2]=[3,16][ms]のものである。擬似力覚発生装置1000の構成は図27A〜図27Cの構成と同じである。図28Aおよび図29Aは、擬似力覚発生装置1000の制御電圧を表す。縦軸は制御電圧の電圧値[V]を表し、横軸は時間[sec]を表す。図28Bおよび図29Bは、図28Aおよび図29Aの制御電圧で駆動させたときの、擬似力覚発生装置1000の接触部1003−1から皮膚に与えられる力を表す。縦軸は皮膚に与えられる力[N]を表し、横軸は時間[sec]を表す。ただし、図29Bの破線は目標応答波形パターンを表し、実線は応答波形を表す。図28Cおよび図29Cは、図28Aおよび図29Aの制御電圧で駆動させたときの、擬似力覚発生装置1000の接触部1003−1の位置を表す。縦軸は接触部の位置[m]を表し、横軸は時間[sec]を表す。これらの図から分かるように、目標制御信号波形の制御電圧で制御した場合、時間非対称矩形波の制御電圧で制御した場合に比べ、皮膚に与え力および接触部1003−1の位置ともにノイズとなる波形の微細振動が少なく、一方で正方向の極大値と負方向との極大値との差が大きく、非対称性が大きい。これより、目標制御信号波形の制御電圧で制御することで、よりも明確な力覚を提示できることが分かる。
<時間非対称矩形波の制御電圧と目標制御信号波形の制御電圧との比較2>
図30A〜図30Cに擬似力覚発生装置1000を時間非対称矩形波の制御電圧で制御した場合のシミュレーション結果を示し、図31A〜図31Cに擬似力覚発生装置1000を目標制御信号波形の制御電圧で制御した場合の比較シミュレーション結果を示す。ただし、時間非対称矩形波および目標制御信号波形は、いずれも正である期間T1および負である期間T2が[T1,T2]=[6,12][ms]のものである。その他の条件は<時間非対称矩形波の制御電圧と目標制御信号波形の制御電圧との比較1>のものと同じである。これらの図からも、目標制御信号波形の制御電圧で制御することで、よりも明確な力覚を提示できることが分かる。
<時間非対称矩形波の制御電圧と目標制御信号波形の制御電圧との比較3>
図32Aは、擬似力覚発生装置1000を[T1,T2][ms]の時間非対称矩形波の制御電圧で制御した場合に、接触部1003−1から皮膚に与えられる力の非対称性の一例をステムプロットした図である。図32Bは、擬似力覚発生装置1000を[T1,T2][ms]の目標制御信号波形の制御電圧で制御した場合に、接触部1003−1から皮膚に与えられる力の非対称性の一例をステムプロットした図である。各図の底面の二軸が期間T1およびT2をそれぞれ表し、縦軸が皮膚に与えられる力の非対称性である正負極大力の差(より正確には、正方向の極大値と、負方向の極小値の和。すなわち、正方向の極大値の絶対値から、負方向の極小値の絶対値を引いたもの。)[N]を表している。その他の条件は<時間非対称矩形波の制御電圧と目標制御信号波形の制御電圧との比較1>のものと同じである。これらの図より、目標制御信号波形の制御電圧で制御することで、時間非対称矩形波の制御電圧で制御する場合に比べ、接触部1003−1から皮膚に与えられる力の非対称性が大きくなることが分かる。さらに、目標制御信号波形の制御電圧で制御することで、[T1,T2]の変化に対してもロバストな傾向を持つことが分かる。
[その他の変形例等]
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。例えば、擬似力覚発生装置の構成は前述したものには限定されず、周期的な非対称運動によって擬似力覚を発生するその他の擬似力覚発生装置であってもよい。把持部の構成も前述のものには限定されない。すなわち、把持部が擬似力覚発生装置のケースそのものである必要はなく、擬似力覚発生装置に機械的に固定された把持部などであってもよい。また、擬似力覚発生装置は前記実施形態またはその変形例のものに限定されず、例えば、擬似力覚発生装置内に設置された加速度センサによる加速度計測結果が所定の閾値以下の期間が所定の長さ以上の場合には擬似力覚発生装置が把持されていないと判定して、異なるモードで動作する様な機能を追加で有することとしても良い。この様な機能を追加すると、たとえば、把持されていない時には擬似力覚提示を停止しても良いし、さらには、第1、2実施形態の第4の変形例も行わないこととしても良い。把持されていない場合に処理を停止することにより、把持していないのに装置が動作することによる落下、破損のリスクや電池消耗を低減できる。
式(14)〜(17)の運動方程式はj_max=2の場合にも一般化できる。また、力学特性モデルMdおよび皮膚の力学特性モデルMsの数式表現を以下のようにしてもよい。
「周期的な非対称運動」の例は非対称振動である。また、各実施形態およびその変形における「皮膚」を「粘膜」に置換した形態であってもよい。
各実施形態において、「試行信号波形」や「目標制御信号波形」の例として、電圧の時間波形や電流の時間波形などを例示したが、「試行信号波形」や「目標制御信号波形」はこれらに限定されない。例えば、その波形はいくつかのパラメータで定義づけられた不連続な関数で表される波形であってもよい。
不連続な関数で表される波形の例を図33Aおよび図33Bに示す。図33Aは、波形を合計7つのパラメータで定義づけた例である。この波形は、時間区間の長さを示すTA〜TD、電圧または電流の値(電圧値または電流値)を示すAM1とAM2、時間区間TDでの電圧または電流の値を表す一次関数の傾きを示すdAM(ただし、この一次関数は時間変数の関数であり、時間区間TDの直前の時間区間の終了時に対する関数値が、当該終了時での電圧または電流の値である)の、合計7個のパラメータで表現されている。図33Bは、TCの時間区間の長さが0の場合の例である。
例えば、1周期(図33AではTで表される、TAの開始時刻からTDの終了時刻までの時間区間)の中に以下の特徴を有する「試行信号波形」や「目標制御信号波形」は、擬似力覚の提示に有効な波形と考えられる。
≪特徴1≫運動部材1025−iをある方向に加速させるために電圧もしくは電流の値または電流の方向を急激に変化させた「加速期間」の後に、変化後の値を持続させる時間区間である「持続期間」(例えば、図33AのTB)がある。
≪特徴2≫「持続期間」の後(より望ましくは、直後)に、運動部材1025−iを急激に減速させる時間区間である「減速期間」(例えば、図33AのTC)がある。例えば、「持続期間」と「減速期間」で電圧値の符号(正負)を反転させ、かつ、「減速期間」での電圧値ができるだけ大きくなるように変化させると、急激に運動部材1025−iを減速させる効果が期待できる。電流の場合には、「持続期間」と「減速期間」で電流の流れる方向を逆方向とし、かつ、「減速期間」での電流量ができるだけ大きくなるように変化させると、急激に運動部材1025−iを減速させる効果が期待できる。
≪特徴3≫「減速期間」の後(より望ましくは、直後)に、運動部材1025−iの位置を「加速期間」で加速する前の位置に戻すために、運動部材1025−iに与える加速度(または力)を「加速期間」での加速方向の逆方向に緩やかに変化させる「復帰期間」(図33AのTD)がある。例えば、「復帰期間」において、電圧の値を一次関数に従い変化させてもよい。ただし、図33Bのように「特徴2」を有さない波形であっても擬似力覚の提示に有効な波形となる場合もある。
また、「試行信号波形」や「目標制御信号波形」が、離散時刻(例えば、所定のサンプリング時刻)ごとに予め定められた値を取る離散データであってもよい。
図34に例示するように、前述の制御信号推定装置11(または21)に含まれた各部と目標制御信号単純化部516とを有する制御信号推定装置11’(または21’)が用いられてもよい。目標制御信号単純化部516は、モデル適用部113(または213)で逆ダイナミクスモデルMcに目標応答波形パターンを適用して得られた波形(「逆ダイナミクス波形」と呼ぶ)を入力とし、当該逆ダイナミクス波形を単純化した波形を目標制御信号波形として出力する。
例えば、目標制御信号単純化部516は、モデル適用部113(または213)から逆ダイナミクス波形を受け取り、これをパラメータ群(例えば、図33AのTA〜TD、AM1、AM2、dAMの7つのパラメータ)で定義づけられる波形パターン(例えば、図33A)によって表現した目標制御信号波形を得、その波形パターンを表す情報および/またはそれに対応するパラメータ群を出力する。電気回路13は、波形パターンを表す情報および/またはそれに対応するパラメータ群によって特定される目標制御信号波形に応じて上述の各実施形態で説明した通りに動作する。ここで、パラメータ群のデータ量および当該パラメータ群によって定義づけられる波形パターンのデータ量は、逆ダイナミクス波形のデータ量よりも小さい。これにより、目標制御信号波形を特定するための情報を記憶しておく場合の記憶容量や、この情報を送信する場合の通信容量を削減できる。
例えば、目標制御信号単純化部516は、逆ダイナミクス波形と、所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンと、の誤差が最少となるような波形パターンのパラメータ群の値を最少二乗法により求め、このような波形パターンを目標制御信号波形としてもよい。例えば、目標制御信号単純化部516は、各時刻の逆ダイナミクス波形と、上記のパラメータ群で定義づけられる波形パターンと、の誤差(例えば、所定の時間区間での誤差の二乗和)が最少となるようなパラメータ群の値を最少二乗法により求めてもよい。
所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンの種別が複数グループ存在してもよい。例えば、図33AのTA〜TD、AM1、AM2、dAMの7つのパラメータからなるパラメータ群で定義づけられる波形パターンのグループと、これらと異なる種別のパラメータ群(例えば、前述の特徴2を備えないパラメータ群)で定義づけられる波形パターンのグループとが存在していてもよい。この場合、目標制御信号単純化部516は、それぞれのグループのパラメータ群で定義づけられる波形パターンのうち、逆ダイナミクス波形に最も近いものを選択し、選択した波形パターンを目標制御信号波形としてもよい。例えば、目標制御信号単純化部516は、それぞれのグループのパラメータ群で定義づけられる波形パターンのうち、逆ダイナミクス波形との誤差が最少となる波形パターンを目標制御信号波形として選択し、その波形パターンを表す情報とそれを定義づけるパラメータ群の値を「目標制御信号波形」の情報として出力してもよい。
なお、図34に例示するように、制御信号推定装置11’(または21’)がさらにサンプリング部517を備えていてもよい。このサンプリング部517は、目標制御信号単純化部516で選択された波形パターンを入力とし、この波形パターンの値を所定のサンプリング時刻ごとにサンプリングすることで波形の情報(たとえば、サンプリング時刻ごとの波形の値のリスト)を作成し、作成した波形の情報を「目標制御信号波形」として出力することとしてもよい。
図35に例示するように、前述の制御信号推定装置51(または61)に含まれた各部と目標制御信号単純化部516’とを有する制御信号推定装置51’(または61’)が用いられてもよい。目標制御信号単純化部516’は、試行信号更新部514で終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)(試行信号波形を調整して得られる調整済み試行信号波形)を入力とし、当該試行信号波形TR(t)を単純化した波形を目標制御信号波形として出力する。
例えば、目標制御信号単純化部516’は、試行信号更新部514から終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)を受け取り、これをパラメータ群(例えば、図33AのTA〜TD、AM1、AM2、dAMの7つのパラメータ)で定義づけられる波形パターン(例えば、図33A)によって表現した目標制御信号波形を得、その波形パターンを表す情報および/またはそれに対応するパラメータ群を出力する。電気回路13は、波形パターンを表す情報および/またはそれに対応するパラメータ群によって特定される目標制御信号波形に応じて上述の各実施形態で説明した通りに動作する。ここで、パラメータ群のデータ量および当該パラメータ群によって定義づけられる波形パターンのデータ量は、終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)のデータ量よりも小さい。これにより、目標制御信号波形を特定するための情報を記憶しておく場合の記憶容量や、この情報を送信する場合の通信容量を削減できる。
例えば、目標制御信号単純化部516’は、終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)と、所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンと、の誤差が最少となるような波形パターンのパラメータ群の値を最少二乗法により求め、このような波形パターンを目標制御信号波形としてもよい。例えば、目標制御信号単純化部516’は、各時刻tで終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)と、上記のパラメータ群で定義づけられる波形パターンと、の誤差(例えば、所定の時間区間での誤差の二乗和)が最少となるようなパラメータ群の値を最少二乗法により求めてもよい。
所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンの種別が複数グループ存在してもよい。例えば、図33AのTA〜TD、AM1、AM2、dAMの7つのパラメータからなるパラメータ群で定義づけられる波形パターンのグループと、これらと異なる種別のパラメータ群(例えば、前述の特徴2を備えないパラメータ群)で定義づけられる波形パターンのグループとが存在していてもよい。この場合、目標制御信号単純化部516’は、それぞれのグループのパラメータ群で定義づけられる波形パターンのうち、終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)に最も近いものを選択し、選択した波形パターンを目標制御信号波形としてもよい。例えば、目標制御信号単純化部516’は、それぞれのグループのパラメータ群で定義づけられる波形パターンのうち、終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)との誤差が最少となる波形パターンを目標制御信号波形として選択し、その波形パターンを表す情報とそれを定義づけるパラメータ群の値を「目標制御信号波形」の情報として出力してもよい。
目標制御信号単純化部516’が、試行信号更新部514で終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)を単純化して目標制御信号波形を得るのではなく、前述の制御信号推定装置51(または61)の試行信号更新部514が、直接、パラメータ群で定義づけられる波形パターンからなる試行信号波形TR(t)を目標制御信号波形として出力してもよい。すなわち、パラメータ群で定義づけられる波形パターンを試行信号波形TR(t)として前述のステップS52〜S56の処理が行われ、終了条件を満たした最新の試行信号波形TR(t)が目標制御信号波形として出力されてもよい。この際も、所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンの種別が複数グループ存在してもよい。
なお、図35に例示するように、制御信号推定装置51’(または61’)がさらにサンプリング部517を備えていてもよい。このサンプリング部517は、目標制御信号単純化部516’で選択された波形パターンを入力とし、この波形パターンの値を所定のサンプリング時刻ごとにサンプリングすることで波形の情報(たとえば、サンプリング時刻ごとの波形の値のリスト)を作成し、作成した波形の情報を「目標制御信号波形」として出力することとしてもよい。
上述の制御信号推定装置や波形推定装置をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体の例は、非一時的な(non-transitory)記録媒体である。このような記録媒体の例は、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等である。
このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD−ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。
上記実施形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させて制御信号推定装置や波形推定装置の処理機能が実現されたが、これらの処理機能の少なくとも一部がハードウェアで実現されてもよい。
11,21,11’,21’,51,61,51’,61’ 制御信号推定装置
12,12’,12” 擬似力覚発生装置
31,41 波形推定装置

Claims (15)

  1. 目標制御信号波形を制御信号波形とし、前記制御信号波形に応じた周期的な非対称運動を行う運動部材と、前記非対称運動によって生じた力が与えられる把持部と、を有する擬似力覚発生装置を駆動し、前記運動部材が前記非対称運動を行うことで、前記把持部に直接的または間接的に接触した皮膚に擬似力覚を知覚させる前記目標制御信号波形を得る制御信号推定装置であって、
    前記擬似力覚発生装置の力学特性モデル、および、前記把持部に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、前記把持部の位置、速度、加速度、ならびに前記皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と前記制御信号波形との関係を表す制御対象の逆ダイナミクスモデルに、前記擬似力覚を知覚させるための目標となる前記把持部の位置、速度、加速度、ならびに前記皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する目標応答波形パターンを適用し、前記非対称運動を制御するための前記目標制御信号波形を得る制御信号推定装置。
  2. 請求項1の制御信号推定装置であって、
    前記制御対象の逆ダイナミクスモデルは、前記擬似力覚発生装置の力学特性モデル、前記皮膚の力学特性モデル、および前記制御信号波形と前記擬似力覚発生装置に駆動信号を供給する電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルに基づいて得られる、制御信号推定装置。
  3. 請求項1または2の制御信号推定装置であって、
    前記擬似力覚発生装置は、
    前記把持部と、
    前記把持部に対する相対位置が固定された支持部と、
    前記支持部に支持された弾性体と、
    前記弾性体に支持され、前記支持部に対して周期的な非対称運動を行う前記運動部材と、
    前記制御信号波形に応じた力を前記運動部材に与えるコイルと、を有し、
    前記擬似力覚発生装置の力学系モデルは、
    前記コイルによって前記運動部材に与えられる力と、前記把持部に対応する位置および速度と、前記運動部材に対応する位置および速度と、の関係をモデル化したものであり、
    前記皮膚の力学系モデルは、
    前記把持部に対応する位置および速度と、前記皮膚に与える力との関係をモデル化したものである、制御信号推定装置。
  4. 請求項1から3の何れかの制御信号推定装置であって、
    前記目標応答波形パターンは、
    第1の時間区間では、向きが所定方向であって絶対値が第1の閾値以上である力または加速度を表し、
    前記第1の時間区間と異なる第2の時間区間では、向きが前記所定方向の反対方向であって絶対値が前記第1の閾値以内または前記第1の閾値よりも小さな第2の閾値以内である力または加速度を表し、
    前記第1の時間区間が前記第2の時間区間よりも短い、制御信号推定装置。
  5. 請求項1から4の何れかの制御信号推定装置であって、
    前記逆ダイナミクスモデルに前記目標応答波形パターンを適用して得られた逆ダイナミクス波形を、所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンによって表現した前記目標制御信号波形を得る、制御信号推定装置。
  6. 請求項1から5の何れかの制御信号推定装置で得られる目標制御信号波形に応じた周期的な非対称運動を行う運動部材と、
    前記非対称運動によって生じた力が与えられる把持部と、
    を有する擬似力覚発生装置。
  7. 対象者に直接的または間接的に支持される第1ベース機構と、
    前記第1ベース機構に対して目標制御信号波形に応じた周期的な第1非対称運動を行う第1運動部材と前記第1非対称運動によって生じた力が与えられる第1把持部と、を含み、前記第1運動部材が前記第1非対称運動を行うことで、前記第1把持部に直接的または間接的に接触した第1の皮膚に前記第1非対称運動に基づく力を与えて第1擬似力覚を知覚させ第1接触機構と、を有し、
    前記第1接触機構の質量が前記第1ベース機構の質量よりも小さい、または、前記第1接触機構の質量が前記第1ベース機構の質量と前記第1ベース機構に取り付けられる機構の質量との合計よりも小さく、
    前記目標制御信号波形は、
    人に直接的または間接的に支持される第2ベース機構と、前記第2ベース機構に対して制御信号波形に応じた周期的な第2非対称運動を行う第2運動部材と、前記第2非対称運動によって生じた力が与えられる第2把持部と、を含み、前記第2運動部材が前記第2非対称運動を行うことで、前記第2把持部に前記人の第2の皮膚に前記第2非対称運動に基づく力を与えて第2擬似力覚を知覚させる第2接触機構と、を有するモデル化用擬似力覚発生装置の力学特性モデル、および、前記第2接触機構に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、前記第2接触機構の位置、速度、加速度、ならびに前記第2の皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と前記制御信号波形との関係を表す制御対象の逆ダイナミクスモデルに、前記第2擬似力覚を知覚させるための目標となる前記第2接触機構の位置、速度、加速度、ならびに前記第2の皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する目標応答波形パターンを適用して得られる波形である、擬似力覚発生装置。
  8. 請求項の擬似力覚発生装置であって、
    前記制御対象の逆ダイナミクスモデルは、前記モデル化用擬似力覚発生装置の力学特性モデル、前記皮膚の力学特性モデル、および前記制御信号波形と前記モデル化用擬似力覚発生装置に駆動信号を供給する電気回路の出力との関係を表す電気回路特性モデルに基づいて得られる、擬似力覚発生装置。
  9. 請求項またはの擬似力覚発生装置であって、
    前記目標応答波形パターンは、
    第1の時間区間では、向きが所定方向であって絶対値が第1の閾値以上である力または加速度を表し、
    前記第1の時間区間と異なる第2の時間区間では、向きが前記所定方向の反対方向であって絶対値が前記第1の閾値以内または前記第1の閾値よりも小さな第2の閾値以内である力または加速度を表し、
    前記第1の時間区間が前記第2の時間区間よりも短い、擬似力覚発生装置。
  10. 請求項からの何れかの擬似力覚発生装置であって、
    前記第1接触機構の質量が、零よりも大きく、前記第1ベース機構の質量の三分の一以下である、擬似力覚発生装置。
  11. 請求項から10の何れかの擬似力覚発生装置であって、
    前記第1非対称運動は、前記目標制御信号波形およびバイアス成分に応じた非対称振動であり、
    前記バイアス成分は、前記非対称振動の振動中心を制御する成分である、擬似力覚発生装置。
  12. 請求項11の擬似力覚発生装置であって、
    前記バイアス成分は、前記非対称振動による擬似的な力覚の呈示方向に前記振動中心を移動させる成分である、擬似力覚発生装置。
  13. 請求項から12のいずれかの擬似力覚発生装置であって、
    前記目標制御信号波形は、
    前記逆ダイナミクスモデルに前記目標応答波形パターンを適用して得られた逆ダイナミクス波形を、所定のパラメータ群で定義づけられる波形パターンによって表現した波形である、擬似力覚発生装置。
  14. 目標制御信号波形を制御信号波形とし、前記制御信号波形に応じた周期的な非対称運動を行う運動部材と、前記非対称運動によって生じた力が与えられる把持部と、を有する擬似力覚発生装置を駆動し、前記運動部材が前記非対称運動を行うことで、前記把持部に直接的または間接的に接触した皮膚に擬似力覚を知覚させる前記目標制御信号波形を得る制御信号推定方法であって、
    前記擬似力覚発生装置の力学特性モデル、および、前記把持部に接触する皮膚の力学特性モデル、を含む複数のモデルに基づいて得られる、前記把持部の位置、速度、加速度、ならびに前記皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する波形と前記制御信号波形との関係を表す制御対象の逆ダイナミクスモデルに、前記擬似力覚を知覚させるための目標となる前記把持部の位置、速度、加速度、ならびに前記皮膚に与える力の少なくとも何れかに対応する目標応答波形パターンを適用し、前記非対称運動を制御するための前記目標制御信号波形を得る制御信号推定方法。
  15. 請求項1から5の何れかの制御信号推定装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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