JP6146733B2 - コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法 - Google Patents

コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6146733B2
JP6146733B2 JP2013032525A JP2013032525A JP6146733B2 JP 6146733 B2 JP6146733 B2 JP 6146733B2 JP 2013032525 A JP2013032525 A JP 2013032525A JP 2013032525 A JP2013032525 A JP 2013032525A JP 6146733 B2 JP6146733 B2 JP 6146733B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
chondroitin sulfate
oligosaccharide
mpa
temperature
raw material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013032525A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013199639A (ja
Inventor
松嶋 景一郎
景一郎 松嶋
晴雄 浦
晴雄 浦
樹志 鎌田
樹志 鎌田
宜之 宮本
宜之 宮本
菅原 一幸
一幸 菅原
山田 修平
修平 山田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hokkaido University NUC
Hokkaido Research Organization
Original Assignee
Hokkaido University NUC
Hokkaido Research Organization
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hokkaido University NUC, Hokkaido Research Organization filed Critical Hokkaido University NUC
Priority to JP2013032525A priority Critical patent/JP6146733B2/ja
Publication of JP2013199639A publication Critical patent/JP2013199639A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6146733B2 publication Critical patent/JP6146733B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
  • Cosmetics (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Description

本発明は、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法に関し、詳細には、硫酸基および/またはアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法であって、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程を有する前記方法、ならびにその方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる、食品、化粧品および/または医薬品組成物に関する。
コンドロイチン硫酸は、ウロン酸とN−アセチル−D−ガラクトサミンとの二糖繰り返し構造からなる長い糖鎖に硫酸基が結合した構造を持つグリコサミノグリカンの一種である。コンドロイチン硫酸の構造は、硫酸基の位置や数、あるいはウロン酸がグルクロン酸であるかイズロン酸であるかにより分類され、グルクロン酸と4位に硫酸基を一つ有するN−アセチル−D−ガラクトサミンとが結合したグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン4−硫酸構造や、グルクロン酸と6位に硫酸基を一つ有するN−アセチル−D−ガラクトサミンとが結合したグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造など、多様な構造がある。
コンドロイチン硫酸は、生体内では、細胞増殖因子や細胞外マトリックス成分と相互作用し、細胞接着、移動、増殖、分化、形態形成といった様々な細胞活動を制御しており、特に、軟骨ではクッション作用に重要な役割を果たしていることが知られている。これらのことから、コンドロイチン硫酸は角膜表層の保護、腰痛、関節痛、関節炎、神経痛の治療を目的とした薬品の成分として用いられているほか、健康食品や化粧品にも配合されている。このように産業上利用されるコンドロイチン硫酸は、その多くがサメやエイなどの動物から抽出されたものであり、長い糖鎖の高分子であるが、低分子なものほど扱いやすいことから、低分子化されたコンドロイチン硫酸が求められている。
従来、コンドロイチン硫酸を低分子化する方法としては、塩酸などの酸により加水分解する方法(非特許文献1)や、コンドロイチナーゼABCやコンドロイチナーゼACII、精巣ヒアルロニダーゼ、コンドロイチン硫酸分解酵素(特許文献1)などの酵素により脱離分解あるいは加水分解する方法、pH2.5〜12.0のコンドロイチン硫酸水溶液を100〜160℃未満の水熱条件下に5〜20分未満保つ方法(特許文献2)を挙げることができる。
特開平9−168384号公報 特開2010−77256号公報
Cifonelli、Carbohydrate Res.、第2巻、第150−161頁、1966年
しかしながら、非特許文献1に記載の酸により加水分解する方法では、コンドロイチン硫酸のグリコシド結合が非特異的に分解されることから、得られるコンドロイチン硫酸の分解物は、偶数糖や奇数糖が入り混じったものとなる。また、この方法では、硫酸基が脱離し易いことから、得られるコンドロイチン硫酸の分解物は、硫酸基が脱離したものが多くなる。すなわち、酸により加水分解する方法では、硫酸基やアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を選択的に製造することができない。また、コンドロイチナーゼABCやコンドロイチナーゼACIIは、コンドロイチン硫酸のN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を脱離反応により分解する酵素であるから、加水分解物であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができず、精巣ヒアルロニダーゼはグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を分解する活性が低いことから、この構造を主として有するコンドロイチン硫酸を原料とする場合は、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を効率的に製造することができない。
また、特許文献1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素も、コンドロイチン硫酸が有する構造により分解活性が大きく変化してしまう。さらに、酵素により加水分解する方法は、一般に、酵素が高価であることから、工業的に大量のコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができない。さらに、特許文献2に記載のpH2.5〜12.0のコンドロイチン硫酸水溶液を100〜160℃未満の水熱条件下に5〜20分未満保つ方法では、硫酸基を有するコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができるものの、均質なコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができるとはいえない。
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであって、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法を提供することを目的とし、詳細には、コンドロイチン硫酸が有する構造にかかわらず、特に、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を主として有するコンドロイチン硫酸を原料とする場合でも、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を安価に工業的に製造することができる方法であって、硫酸基やアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であって加水分解物である、均質なコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができる方法およびその方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる、食品や化粧品、医薬品組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、温度が175℃以上220℃以下でありかつ圧力が5MPa以上25MPa以下の条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を主として有するコンドロイチン硫酸を原料とする場合でも、硫酸基やアセチルアミノ基の脱離を抑えて、コンドロイチン硫酸のN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を選択的に加水分解し、さらには硫酸基やアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができること、およびその製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖が摂取しても安全であり、胃液への溶解性や消化性に優れる(易溶性を有する)ことを見出し、下記の各発明を完成した。
(1)硫酸基および/またはアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法であって、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程を有する前記方法。
(2)温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程が、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させて前記コンドロイチン硫酸のN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を選択的に加水分解する工程である、(1)に記載の方法。
(3)温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程が、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを4.4秒間以上35.2秒間以下反応させる工程である、(1)に記載の方法。
(4)コンドロイチン硫酸オリゴ糖が、ゲル濾過高速液体クロマトグラフィーによって測定された分子量の平均値が131000以下であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖である、(1)に記載の方法。
(5)コンドロイチン硫酸がグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を有するコンドロイチン硫酸である、(1)から(4)のいずれかに記載の方法。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる、食品、化粧品および/または医薬品組成物。
本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法によれば、さまざまな構造を有するコンドロイチン硫酸を原料としてコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができ、例えば、精巣ヒアルロニダーゼによっては効率的に分解できないグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を主として有するコンドロイチン硫酸を原料とする場合でもコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができる。
また、コンドロイチン硫酸のN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を選択的に加水分解することができるため、二糖を構成単位とする偶数糖であって加水分解物である、均質なコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができる。
さらに、コンドロイチン硫酸の硫酸基やアセチルアミノ基の脱離を抑えることができるため、コンドロイチン硫酸の構造を保ったコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができる。
さらにまた、高価な酵素を用いず、安価な水を用いる方法であることから、安価にコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができる。
また、一般的に長時間を要する酵素反応でなく、高温高圧の水を用いてコンドロイチン硫酸を分解することから、迅速かつ大量にコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができる。
次に、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、均質であるため試薬として利用することができる。
また、加水分解物であることから還元末端を有しており、還元末端を利用した標識や誘導体化が可能である。
さらに、低分子化されて水への溶解性がよく、産業上や研究開発上の利用にあたって取り扱いが容易である。
また、摂取しても安全であり、胃液に容易に溶解し、消化され易く、生体への吸収性がよいため、食品や化粧品、医薬品組成物として利用することができる。
さらに、硫酸基やアセチルアミノ基を有していてコンドロイチン硫酸の構造を保っているため、高分子であるコンドロイチン硫酸と同様に、生体における関節組織などの構成成分の供給源として利用することができ、かつ高分子であるコンドロイチン硫酸よりも吸収性に優れた供給源として利用することができる。
さらに、本発明に係る製造方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖は溶解性、消化性および吸収性がよいため、食品や化粧品、医薬品組成物、関節組織などの構成成分の供給源として利用するにあたり、少量でも高い効果を得ることができる。これにより、製品におけるコンドロイチン硫酸オリゴ糖の含有量を減らすことや、一回あたりの使用量あるいは使用回数を減らすことができるため、経済的・身体的負担の軽減につながり、コストパフォーマンスの高いコンドロイチン硫酸オリゴ糖含有製品を実現することができる。
温度および圧力の変化に伴う水の状態を示す図である。 コンドロイチン硫酸オリゴ糖の実験製造装置の概要を示す図である。 温度が150℃〜200℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて生成した反応生成物の分子量の平均値を示す図である。 温度が175℃〜200℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて生成した反応生成物の分子量の平均値を示す図である。 温度が175℃〜250℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを4.4秒間または8.8秒間反応させて得たサンプルa〜jのウロン酸濃度を示す図である。 温度が175℃〜200℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて得たサンプルa〜fに含まれるオリゴ糖を示す図である。 温度が198℃〜220℃、圧力が5MPa〜25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを4.4秒間〜35.2秒間反応させて得たサンプルi〜nに含まれるオリゴ糖を示す図である。 温度が175℃〜220℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを4.4秒間または8.8秒間反応させて得たサンプルa〜f、iおよびjの二糖組成の含有比を示す図である。 温度が190℃〜210℃、圧力が25MPaの条件下で水と市販のサメ軟骨由来コンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて得たサンプルo〜qに含まれるオリゴ糖、ウロン酸濃度および二糖組成の含有比を示す図である。 サンプルoのコンドロイチナーゼABC消化物およびコンドロイチナーゼACII消化物に含まれるオリゴ糖を示す図である。 不飽和結合を有する二糖ならびにサンプルpおよびqの波長200nm〜260nmの範囲における吸収スペクトルを示す図である。 温度が210℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて生成した反応生成物について、0.5%、1.0%および2.0%の木質原料水蒸気賦活活性炭による吸着処理を行ったものと行っていないもの(コントロール)とに含まれるオリゴ糖を示す図である。 温度が217℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて生成した反応生成物から製造した粉末と粉末化していない反応生成物(コントロール)とに含まれるオリゴ糖を示す図である。 温度が217℃、圧力が25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを8.8秒間反応させて生成した反応生成物から製造した粉末の粒度分布および外部形態を示す図である。 機能評価サンプルおよびコントロールをそれぞれ投入した人工胃液の固形分濃度を示す図である。 人工胃液により消化された機能評価サンプルおよびコントロールに含まれる物質の分子量の比率を示す図である。 機能評価サンプルおよびコントロールを含有する生理食塩水中で振盪した反転腸管の内液および外液におけるウロン酸濃度を示す図(下図)、ならびに内液におけるウロン酸濃度の平均値をグラフに表した図(上図)である。下図中、NDは検出限界以下(Not detected;10μg未満)を、−は未測定を、それぞれ示す。 機能評価サンプルを含有する生理食塩水中で振盪した反転腸管の内液および外液に含まれるオリゴ糖を示す図である。中段右図中の囲みは、溶出時間23〜52分におけるクロマトグラムを10倍に拡大した図である。 コントロールを含有する生理食塩水中で振盪した反転腸管の内液および外液に含まれるオリゴ糖を示す図である。
以下、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法およびその方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる、食品や化粧品、医薬品組成物について詳細に説明する。本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法は、硫酸基および/またはアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法である。
本発明において、「硫酸基を有する二糖」あるいは「硫酸基を有する偶数糖」とは、硫酸基が付加された二糖や偶数糖をいう。硫酸基は、グルクロン酸あるいはイズロン酸およびN−アセチル−D−ガラクトサミンのいずれに付加されていてもよく、いずれにも付加されていてもよい。また、硫酸基の付加された位置や個数も特に限定されない。硫酸基の付加される位置としては、例えば、グルクロン酸の2位や3位、イズロン酸の2位、N−アセチル−D−ガラクトサミンの4位や6位を挙げることができる。
本発明において、「アセチルアミノ基を有する二糖」あるいは「アセチルアミノ基を有する偶数糖」とは、アセチルアミノ基が付加された二糖や偶数糖をいう。アセチルアミノ基の付加される位置や個数は特に限定されないが、通常、N−アセチル−D−ガラクトサミンの2位に付加される。
本発明における「二糖を構成単位とする偶数糖」は、二糖以上の偶数糖を意味し、例えば、二糖、四糖、六糖、八糖、十糖、十二糖、二十四糖、四十八糖などを挙げることができる。
本発明における「コンドロイチン硫酸オリゴ糖」の糖の個数は、単糖よりも多く、コンドロイチン硫酸よりも少ない数であればよい。また、「コンドロイチン硫酸オリゴ糖」の分子量も、コンドロイチン硫酸よりも小さい限り特に限定されないが、ゲル濾過高速液体クロマトグラフィーによって測定された分子量の平均値が135000以下であることが好ましく、133500以下であることがより好ましく、132000以下であることがさらに好ましく、131500以下であることがよりさらに好ましく、131000以下であることがもっとも好ましい。ここで、ゲル濾過高速液体クロマトグラフィーによって測定された分子量の平均値とは、コンドロイチン硫酸オリゴ糖をゲル濾過高速液体クロマトグラフィーに供して得られたクロマトグラムにおける最大ピークの溶出時間を校正曲線(検量線)に当て嵌めることにより決定された分子量をいう。
本発明における「コンドロイチン硫酸」は、どのような生物に由来するものでもよい。コンドロイチン硫酸が由来する生物としては、例えば、エイやサメ、ウシ、クジラ、ウサギ、ヒツジ、カブトガニ、ブタ、イカなどの動物を挙げることができる。
本発明におけるコンドロイチン硫酸が有する構造としては、例えば、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン4−硫酸構造(いわゆるコンドロイチン硫酸A構造)や、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造(いわゆるコンドロイチン硫酸C構造)、グルクロン酸2−硫酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造(いわゆるコンドロイチン硫酸D構造)、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン4,6−硫酸構造(いわゆるコンドロイチン硫酸E構造)、上記の構造において、グルクロン酸がエピマー化してイズロン酸である構造(いわゆるコンドロイチン硫酸B構造)を挙げることができる。
本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法は、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程を有する。
水は、図1に示すように、いわゆる超臨界水、亜臨界水と呼ばれる高温高圧状態において、密度は液体に近く、粘度は気体に近く、熱伝導率と拡散係数は気体と液体との中間的性質を示し、化学反応の進行に特異な影響を与える。本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法は、これらの特性を有する亜臨界水を利用してコンドロイチン硫酸を分解することによりコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法である。すなわち、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法における、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程は、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの亜臨界水を用いてコンドロイチン硫酸を分解する工程である。
本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法では、コンドロイチン硫酸のイズロン酸の1位とN−アセチル−D−ガラクトサミンの3位との間の結合、グルクロン酸の1位とN−アセチル−D−ガラクトサミンの3位との間の結合(グルクロニド結合)およびグルクロン酸の4位とN−アセチル−D−ガラクトサミンの1位との間の結合(N−アセチル−D−ガラクトサミニド結合)の少なくともいずれかを分解するが、特にN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を好適に分解する。
本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法において、コンドロイチン硫酸を分解する態様は、脱離分解および加水分解のいずれでもよいが、加水分解であることが好ましい。
本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法において、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる時間は特に限定されないが、3.5秒間以上38.0秒間以下が好ましく、3.8秒間以上37.0秒間以下がより好ましく、4.0秒間以上36.0秒間以下がさらに好ましく、4.2秒間以上35.5秒間以下がよりさらに好ましく、4.4秒間以上35.2秒間以下がもっとも好ましい。
温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる方法としては、例えば、圧力および温度のセンサーを備えた圧力鍋やオートクレーブ装置などに水とコンドロイチン硫酸とを入れて加熱加圧して反応させる方法を挙げることができるほか、後述する実施例で示すように、細い配管で形成された微小空間からなる反応部に、水とコンドロイチン硫酸を溶解させたコンドロイチン硫酸溶液とを送液して、反応させる方法を挙げることができる。この方法では、所定の温度より高温まで加熱した水と常温のコンドロイチン硫酸溶液とを反応部入り口で急速に混合して、反応部において所定の温度および圧力となるようにして反応させることができ、その後、配管ごと冷却して急速に反応を停止させることができるため、精密な反応温度、反応圧力および反応時間の制御が可能である。なお、この場合の微小空間の体積は、水およびコンドロイチン硫酸溶液の流量、コンドロイチン硫酸溶液と混合する前の水の温度、コンドロイチン硫酸溶液の濃度、反応温度、反応圧力、反応時間、冷却水の温度などにより適宜設定することができるが、550mm以上193000mm以下が好ましく、560mm以上192000mm以下がより好ましく、570mm以上191500mm以下がさらに好ましく、580mm以上191200mm以下がよりさらに好ましく、590mm以上191000mm以下がもっとも好ましい。
なお、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法には、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法の特徴を損なわない限り、他の工程を有してもよく、例えば、コンドロイチン硫酸の抽出工程や精製工程、プロテアーゼ処理工程、洗浄工程、攪拌工程、乾燥工程、冷却工程、コンドロイチン硫酸オリゴ糖の精製工程、透析工程、濃縮工程、粉末化工程などを有してもよい。
次に、本発明は、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる、食品や化粧品、医薬品組成物を提供する。本発明に係る食品として、具体的には、例えば、緑茶、ウーロン茶や紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、発酵乳飲料、粉末飲料、ココア飲料、精製水などの飲料やバター、ジャム、カスタードクリーム、マーガリンなどのスプレッド類、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレットなどの菓子、ドレッシング、ソース、味噌、醤油、マヨネーズ、たれ類などの調味料、パン類、米飯類、麺類、パスタ、ヨーグルト、チーズなどの乳製品、スープ、味噌汁、ふりかけ、豆腐、牛乳、冷凍食品、総菜、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、サプリメント、錠剤、チュアブル錠、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤、流動食、インスタント食品、レトルト食品などを挙げることができる。また、本発明に係る食品には、人用の食品のみならず、家畜、競走馬などの飼料、ペットフードなども包含する。飼料は、対象が動物である以外は食品とほぼ等しいことから、本明細書における食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
本発明に係る食品は、定法に従って製造することができ、食品や飼料の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、アミノ酸、各種油脂、種々の添加剤(例えば、呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、界面活性剤、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、色素、フレーバー)などを適宜配合して、製造することができる。また、通常食されている食品に本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を配合することにより、本発明に係る食品を製造することもできる。本発明に係る食品において、コンドロイチン硫酸オリゴ糖の含有量は、食品の形態により異なるが、乾燥質量を基準として、通常は、0.001〜99重量%、0.01〜80重量%、1〜80重量%などとすることができる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。
また、本発明に係る化粧品として、具体的には、例えば、口紅、日焼け止め化粧料、ファンデーション、おしろい、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、化粧水、美容液、ローション、エッセンス、乳液、クリーム、パック、シート、マスク、フレグランス化粧品、UVケア化粧品、防臭化粧品、オーラルケア化粧品、洗顔料、皮膚洗浄料、ゲル剤、ジェル剤、美肌剤、ボディシャンプーなどの洗浄料、シャンプー、リンスなどの毛髪化粧料、ヘアートリートメント、養毛剤、浴用剤、軟膏、医薬部外品、あぶら取り紙などを挙げることができる。
本発明に係る化粧品は、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖のほかに、所望の剤型に応じて従来公知の賦形剤や香料、油脂類、界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子、増粘剤、顔料などの粉末成分、紫外線防御剤、保湿剤、酸化防止剤、pH調節剤、洗浄剤、乾燥剤、乳化剤などを適宜配合して、定法に従って製造することができる。本発明に係る化粧料組成物におけるコンドロイチン硫酸オリゴ糖の含有量は、特に限定されず、例えば、乾燥質量を基準として、0.0001〜80重量%、0.001〜60重量%、0.01〜50重量%などとすることができる。
また、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる医薬品組成物を調製する場合の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤などの経口剤、吸入剤、坐剤などの経腸製剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、コーティング剤、懸濁剤、塗布剤、噴霧剤、貼付剤、点滴剤、注射剤などを挙げることができる。
本発明に係る医薬組成物は、有効成分であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖に、慣用される添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料などを剤型に応じて配合し、定法に従って製剤化することができる。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。本発明に係る医薬組成物におけるコンドロイチン硫酸オリゴ糖の含有量は、その剤型により異なるが、乾燥質量を基準として、例えば、0.001〜90重量%、0.01〜85重量%、0.1〜80重量%などとすることができる。
以下、本発明に係るコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法およびその方法により製造されたコンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる、食品、化粧品および/または医薬品組成物について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<分析方法>
本実施例においては、以下の分析方法を用いた。
(1)固形分濃度の測定
固形分濃度(Brix濃度)は、Brix計MASTER−10Pα(アタゴ社)を用いて、添付の使用書に従って測定した。
(2)分子量の平均値の測定
分子量が404000、212000、112000、47300、22800および11800である分子量標準試料(STANDARD P−82;プルラン;昭和電工社)を、下記の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、各分子量標準試料の溶出時間を測定し、測定結果に基づいて校正曲線を作成した。次に、サンプルを、ポアサイズ0.22μmのシリンジフィルタMillex(Millipore社)を用いて濾過して濾液を回収した。20μLの濾液を同条件でHPLCに供して、クロマトグラムを得た。クロマトグラムにおける最大ピークの溶出時間を校正曲線に当てはめることにより、分子量を決定し、これをサンプルの分子量の平均値とした。
HPLCの条件
HPLCシステム:Class VPシステム(島津製作所社)
カラム:SB−804MHQ(昭和電工社)またはKS−804(昭和電工社)
ガードカラム:SB−G(昭和電工社)またはKS−G(昭和電工社)
溶媒:0.2mol/L 塩化ナトリウム(NaCl)水溶液
流速:0.7mL/分
カラム温度:70℃
検出器:示差屈折率(RI)検出器
紫外線(UV)検出器(波長280nm)
(3)オリゴ糖の確認
サンプル5μLに2−aminobenzamideを添加して、サンプルに含まれる糖の還元末端を蛍光標識した。続いて、下記の条件によりゲル濾過HPLCを行って蛍光強度を測定することにより、溶出画分に含まれる糖を検出した。なお、あらかじめ、オリゴ糖マーカーについて同条件によりHPLCを行って十二糖、十糖、八糖、六糖、四糖および二糖の溶出時間を特定し、サンプルの結果において矢印ならびに数字(12、10、8、6、4および2)で示した。
ゲル濾過HPLCの条件
カラム:Superdex peptideカラム
溶媒:0.2mol/L 炭酸アンモニウム(NHCO)水溶液
流速:0.4mL/分
検出器:蛍光検出器(励起波長330nm、蛍光波長420nm)
(4)ウロン酸濃度の測定
定法に従いカルバゾール反応を行うことによりサンプルに含まれるウロン酸濃度を測定した。測定したウロン酸濃度を3倍した値はおよそのグリコサミノグリカン濃度と考えられることから、原料のウロン酸濃度と反応生成物のウロン酸濃度とを比較することにより、原料に含まれるコンドロイチン硫酸から得られたコンドロイチン硫酸オリゴ糖の割合(コンドロイチン硫酸オリゴ糖の収率)の指標とした。
(5)二糖組成分析
サンプルの濃度を100μg/mLに調製してサンプル液とした。続いて、サンプル液10μL、コンドロイチナーゼABC(CSaseABC;5mU/μL;生化学工業社)4μL、CSaseバッファー(250mmol/L CHCOONa水溶液、pH6.0)2μLおよび水4μLを混合した後、37℃で30分間インキュベートすることにより、サンプルに含まれる多糖を二糖まで完全に消化した。その後、下記の条件により陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを得た。また、あらかじめ、下記に示す種類の二糖の標準品について同条件により陰イオン交換クロマトグラフィーを行って溶出時間を特定した。サンプルについて得られたクロマトグラムにおいて、標準品で特定した溶出時間をもとに各ピークが表す二糖の種類を特定し、各ピークの面積比から、サンプルにおける二糖組成の含有比を百分率で算出した。
陰イオン交換クロマトグラフィーの条件
カラム:PA−03陰イオン交換カラム
溶媒:NaHHPO水溶液
流速:1mL/分
検出器:UV検出器(波長232nm)
勾配:16mmol/L(0分)〜538mmol/L(60分)
二糖の種類
ΔHexA−GalNAc(以下「Δ0S」とする。)
ΔHexA−GalNAc(6S)(以下「Δ6S」とする。)
ΔHexA−GalNAc(4S)(以下「Δ4S」とする。)
ΔHexA(2S)−GalNAc(6S)(以下「ΔdiSD」とする。)
ΔHexA−GalNAc(4S,6S)(以下「ΔdiSE」とする。)
[式中、ΔHexAは不飽和ウロン酸を、GalNAcはN−アセチル−D−ガラクトサミンをそれぞれ示す。また、2S、4Sおよび6SはGalNAcまたはΔHexAの2位、4位および6位に硫酸基が結合していることをそれぞれ示す。]
<実施例1>実験室レベルでのコンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
(1)原料の調製
[1−1]エイ非精製原料の調製
特開2003−268004号公報に記載の方法により、エイの軟骨からコンドロイチン硫酸を含有する原料を調製した。具体的には、斜軸ニーダーにエイの軟骨を入れ、プロテアーゼを0.1%(w/w)となるよう添加した後、55℃にて2時間プロテアーゼ処理した。続いて、圧搾機構を備えた加圧型ろ過装置フィルタープレス(ろ過面積:5.6m、ろ過容積:72L)を用いて、濾過助剤として平均粒子径12.8μmの珪藻土(ラジオライト100#;昭和化学工業社)をボディフィードで添加しながら濾過し、濾液を回収して、これをエイ非精製原料とした。濾過助剤の添加量は10%(w/w)とした。エイ非精製原料の固形分濃度を分析方法(1)に記載の方法により測定したところ、およそ9.3%であった。また、エイ非精製原料の分子量の平均値を、分析方法(2)に記載の方法においてカラムにKS−804を用いて測定したところ、およそ490000であった。
[1−2]エイ精製原料の調製
本実施例1(1)[1−1]のエイ非精製原料について、分画分子量13000の限外濾過膜を備えた濾過装置(旭化成社)を用いて、連続濾過を行って内液を回収し、これを、エイ精製原料とした。エイ精製原料の分子量の平均値を、分析方法(2)に記載の方法においてカラムにSB−804MHQを用いて測定したところ、およそ223000であった。
(2)コンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
蒸留水を収容する水容器、高圧ポンプA(PU−2086;日本分光社)、ヒーター、センサーA、原料を収容する原料容器、高圧ポンプB(NP−KX−550;日本精密科学社)、混合T字管、内腔径0.5mmのステンレス316製配管(内腔の空間体積1000mm以下)からなる反応部、センサーB、センサーC、ウォーターバス、センサーD、背圧弁(ER3000S;TESCOM社)および反応生成物を収容する生成物容器を備える装置を作成し、実験製造装置とした。実験製造装置の概要を図2に示す。なお、水容器、原料容器および生成物容器はすべてステンレス製配管でつながれた構造とした。
原料に蒸留水を添加することにより、固形分濃度を調製した。これを実験製造装置に供して、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を含む反応生成物を得た。具体的には、脱気した蒸留水を水容器に入れ、高圧ポンプAにより連続的に送液してヒーターで加熱した。また、本実施例1(1)[1−1]のエイ非精製原料を原料容器に入れ、高圧ポンプBにより連続的に送液した。加熱された蒸留水と常温のエイ非精製原料とは、反応部入口の混合T字管で混合され、所定の温度および圧力の条件下で水とエイ非精製原料に含まれるコンドロイチン硫酸とを反応させることができた。なお、反応部の入り口温度をセンサーB、出口温度をセンサーCおよび圧力はセンサーDにより確認した。続いて、ステンレス製配管をウォーターバスで直接冷却することにより、反応を速やかに終了させた。その後、背圧弁によりステンレス製配管内の圧力を下げて、反応生成物を生成物容器に収容した。なお、蒸留水の流量はエイ非精製原料の流量の3倍以上とし、エイ非精製原料の固形分濃度は2%とした。また、反応条件は、反応部の温度が150℃〜200℃、反応部の圧力が25MPa、反応時間が8.8秒間とした。
反応生成物の分子量の平均値を、分析方法(2)に記載の方法においてカラムにKS−804を用いて測定した結果を図3に示す。図3に示すように、分子量の平均値は、反応部の温度が150℃では425000、175℃では131000、180℃では93000、185℃では66000、190℃では49000、200℃では31000であった。すなわち、反応部の温度が175℃〜200℃では、コンドロイチン硫酸を含有するエイ非精製原料を十分に低分子化することができることが明らかになった。これらの結果から、175℃以上の温度条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
(3)高濃度の原料または精製された原料を用いた場合の製造
原料として固形分濃度が2%および10%の本実施例1(1)[1−1]のエイ非精製原料ならびに固形分濃度が2%の本実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料を用いて、本実施例1(2)に記載の方法により反応生成物を得た。ただし、反応条件は、反応部の温度が175℃〜200℃、反応部の圧力が25MPa、反応時間が8.8秒間とした。反応生成物の分子量の平均値を、分析方法(2)に記載の方法においてカラムにSB−804MHQを用いて測定した結果を図4に示す。図4に示すように、原料の固形分濃度が2%および10%のいずれの場合も、コンドロイチン硫酸を含有する原料を十分に低分子化することができることが明らかになった。また、原料としてエイ非精製原料およびエイ精製原料のいずれを用いた場合も、コンドロイチン硫酸を含有する原料を十分に低分子化することができることが明らかになった。これらの結果から、原料の濃度および精製の有無にかかわらず、高温高圧の条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
<実施例2>工場レベルでのコンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
(1)オリゴ糖製造装置の作成
実施例1(2)の実験製造装置と同様の装置を工場レベルで作成し、これをオリゴ糖製造装置とした。なお、水容器に接続した高圧ポンプAとして、ミルフロー制御容量ポンプ M150 パルスレスC24−Z3(日機装社)を、ヒーターとして、電気ヒーターを、原料容器に接続した高圧ポンプBとして、ミルフロー制御容量ポンプ M150 パルスレスC23−X1(日機装社)を、背圧弁としてHigh Pressure/Back Pressure 26−1762−66−314(TESCOM社)を、それぞれ用いた。また、反応部は、ステンレス316製配管(内腔の空間体積46800mm〜191000mm)からなるものとした。
(2)コンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
本実施例2(1)のオリゴ糖製造装置および原料として実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料を用いて、実施例1(2)に記載の方法により反応生成物を得た。
<実施例3>オリゴ糖の確認、ウロン酸濃度の測定および二糖組成分析
実験室レベルで製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖a〜h、工場レベルで製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖i〜nについて、分析方法(3)〜(5)に記載の方法によりオリゴ糖の確認、ウロン酸濃度の測定および二糖組成分析を行った。サンプルa〜nの原料の固形分濃度および反応条件は、表1のとおりである。なお、ウロン酸濃度の測定および二糖組成分析は、原料についても行った。ウロン酸濃度の測定結果を図5に、オリゴ糖の確認を行った結果を図6および図7に、二糖組成分析の結果を図8にそれぞれ示す。
[2−1]温度条件の検討
図5に示すように、原料のウロン酸濃度に対する各サンプルのウロン酸濃度は、a〜f、iおよびjではいずれも比較的高い値であったのに対して、gおよびhでは極端に低い値であった。すなわち、コンドロイチン硫酸オリゴ糖の収率は、反応部の温度が225℃および250℃では極端に低いのに対し、175℃〜220℃では比較的高いことが明らかになった。これらの結果から、温度が220℃以下の条件下で、水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、コドロイチン硫酸オリゴ糖を高収率で製造することができることが示された。
また、図6および図7に示すように、a〜fおよびi〜nではいずれも、十二糖、十糖、八糖、六糖、四糖および二糖を示す溶出位置に主なピークが検出された。すなわち、反応部の温度が175℃〜220℃では、コンドロイチン硫酸を含有する原料から、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖が生成したことが明らかになった。これらの結果から、温度が175℃以上220℃以下の条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
また、図8に示すように、a〜f、iおよびjではいずれも、Δ0S、Δ6S、Δ4SおよびΔdiSDが検出され、それらの含有比は原料におけるものと比較してほとんど変わらなかった。すなわち、反応部の温度が175℃〜220℃では、生成したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、原料であるコンドロイチン硫酸と同程度に硫酸基やアセチルアミノ基を有していることが明らかになった。また、原料のコンドロイチン硫酸には、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造(Δ6Sに相当する二糖)が主として含まれているほか、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン4−硫酸構造(Δ4Sに相当する二糖)およびグルクロン酸2硫酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造(ΔdiSDに相当する二糖)が含まれていたと考えられるが、いずれの構造を有するコンドロイチン硫酸も分解することができたことが明らかになった。これらの結果から、温度が175℃以上220℃以下の条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、硫酸基やアセチルアミノ基を有するコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができること、およびグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を有するコンドロイチン硫酸を原料とする場合でもコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
[2−2]圧力条件の検討
図6および図7に示すように、反応部の圧力が25MPa(a〜f、iおよびj)、5MPa(k)ならびに10MPa(l〜n)のいずれの場合においても、コンドロイチン硫酸を含有する原料から、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖が生成したことから、圧力が5MPa以上25MPa以下の条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させることにより、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
[2−3]反応時間の検討
図5に示すように、反応時間が4.4秒間(iおよびj)ならびに8.8秒間(a〜f)のいずれの場合においても、コンドロイチン硫酸オリゴ糖の収率は高かった。また、図6および図7に示すように、反応時間が4.4秒間(iおよびj)、8.8秒間(a〜f)ならびに35.2秒間(k)のいずれ場合においても、コンドロイチン硫酸を含有する原料から二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖が生成した。さらに、図8に示すように、反応時間が4.4秒間(iおよびj)ならびに8.8秒間(a〜f)のいずれの場合においても、生成したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、原料であるコンドロイチン硫酸と同程度に硫酸基やアセチルアミノ基を有していた。これらの結果から、水とコンドロイチン硫酸とを4.4秒間以上35.2秒間以下反応させることにより、硫酸基やアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
<実施例4>市販のコンドロイチン硫酸を用いたコンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
(1)コンドロイチン硫酸オリゴ糖の製造
実施例1(2)のオリゴ糖製造装置、および原料としてグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を主として有する市販のサメ軟骨由来コンドロイチン硫酸を用いて、実施例1(2)に記載の方法により反応生成物を得て、サンプルo、pおよびqとした。ただし、原料の固形分濃度は2%とし、反応条件は、反応部の温度がoについては190℃、pについては200℃、qについては210℃、反応部の圧力が25MPa、反応時間が8.8秒間とした。
(2)オリゴ糖の確認、ウロン酸濃度の測定および二糖組成分析
本実施例4(1)のo、pおよびqについて、分析方法(3)〜(5)に記載の方法によりオリゴ糖の確認、ウロン酸濃度の測定および二糖組成分析を行った。なお、ウロン酸濃度の測定および二糖組成分析は、原料についても行った。その結果を図9に示す。図9左図に示すように、oでは比較的長鎖の、pおよびqでは比較的短鎖の二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖が生成したことが確認された。また、図9右図に示すように、o、pおよびqのいずれにおいても、コンドロイチン硫酸オリゴ糖の収率は高いこと、生成したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、原料であるコンドロイチン硫酸と同程度に硫酸基やアセチルアミノ基を有していること、ならびに原料のコンドロイチン硫酸には、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造(Δ6Sに相当する二糖)が主として含まれているほか、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン4−硫酸構造(Δ4Sに相当する二糖)、グルクロン酸2硫酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造(ΔdiSDに相当する二糖)およびグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン4,6−硫酸構造(ΔdiSEに相当する二糖)が含まれていたと考えられるが、いずれの構造を有するコンドロイチン硫酸も分解することができたことが確認された。これらの結果から、原料として、エイの軟骨のみならず、グルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を有する市販のコンドロイチン硫酸を用いた場合でも、実施例1(2)に記載の方法により、硫酸基やアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
(3)分解箇所についての検討
本実施例4(1)のoに2−aminobenzamideを添加して、oに含まれる糖の還元末端を蛍光標識した。続いて、分析方法(5)に記載の方法に準じて、コンドロイチナーゼによる消化を行った後、陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、クロマトグラムを得た。ただし、コンドロイチナーゼとして、CSaseABCまたはコンドロイチナーゼACII(CSaseACII)を用い、検出器には蛍光検出器を用いた。また、あらかじめ、下記に示す種類の二糖の標準品について同条件により陰イオン交換クロマトグラフィーを行って溶出時間を特定しておいた。なお、CSaseABCおよびCSaseACIIは、短鎖には作用し難く、長鎖には作用し易い性質を有するため、本実験には、本実施例4(2)で比較的長鎖のコンドロイチン硫酸オリゴ糖が生成したことが確認されたoをサンプルとして用いた。その結果を図10に示す。
ΔHexA−GalNAc(6S)
ΔHexA−GalNAc(6S)−GlcA
ΔHexA−GalNAc(6S)−GlcA−GalNAc(6S)
[式中、ΔHexAは不飽和ウロン酸を、GalNAcはN−アセチル−D−ガラクトサミンを、GlcAはグルクロン酸をそれぞれ示す。また、4Sおよび6SはGalNAcの4位および6位に硫酸基が結合していることをそれぞれ示す。]
図10に示すように、CSaseABCにより消化した場合は、四糖であるΔHexA−GalNAc(6S)−GlcA−GalNAc(6S)を示す溶出位置にピークが見られ、CSaseACIIにより消化した場合は、二糖であるΔHexA−GalNAc(6S)を示す溶出位置にピークが見られた。CSaseABCおよびCSaseACIIは、いずれもN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を脱離分解する酵素であることから、サンプルにおいて三種類のグリコシド結合のうち、コンドロイチン硫酸のイズロン酸の1位とN−アセチル−D−ガラクトサミンの3位との間の結合、あるいはグルクロン酸の1位とN−アセチル−D−ガラクトサミンの3位との間の結合(グルクロニド結合)が分解されている場合は、これらの酵素を用いて消化した場合に、三糖が生じるはずである。しかしながら、この三糖を示すピークは、oでは確認されなかったことから、N−アセチル−D−ガラクトサミニド結合が選択的に分解されたことが明らかになった。すなわち、実施例1(2)に記載の方法により、コンドロイチン硫酸のN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を選択的に分解して、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造することができることが示された。
(4)分解の態様についての検討
本実施例4(1)のpおよびq、ならびにコントロールとして不飽和結合を有する二糖であるΔHexA−GalNAc(6S)の標準品について、濃度をそれぞれ0.5mg/mL、0.05mg/mLおよび0.05mg/mLに調製した後、吸光度計を用いて波長200nm〜260nmの範囲における吸収スペクトルを測定した。その結果を図11に示す。図11に示すように、コントロールでは波長232nm付近において吸光度のピークがみられたのに対し、pおよびqでは波長232nm付近における吸収度のピークはみられなかった。すなわち、pおよびqに含まれるコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、不飽和結合を有さないことが明らかになった。これらの結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、コンドロイチン硫酸が脱離分解ではなく加水分解により分解されて生成したものであることが示された。
<実施例5>コンドロイチン硫酸オリゴ糖の精製および粉末の製造
(1)活性炭吸着による精製
実施例2(1)のオリゴ糖製造装置および原料として実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料を用いて、実施例1(2)に記載の方法により反応生成物を得た。ただし、原料の固形分濃度は3%、反応条件は、反応部の温度が213℃、反応部の圧力が25MPa、反応時間が8.8秒間とした。得られた反応生成物について、平均細孔径 2.70nmの木質原料水蒸気賦活活性炭を、総量に対して0.5%(w/w)、1.0%(w/w)および2.0%(w/w)となるよう添加し、5℃で12時間吸着処理を行った。その後、木質原料水蒸気賦活活性炭を除いて、適量を採取し、分析方法(3)に記載の方法によりオリゴ糖の確認を行った。また、コントロールとして、吸着処理を行っていない反応生成物を適量採取して、同様にオリゴ糖の確認を行った。その結果を図12に示す。図12に示すように、木質原料水蒸気賦活活性炭による吸着処理を行った場合は、コントロールと比較して、溶出時間50分〜60分にみられる過分解物のピークが小さくなった。この結果から、木質原料水蒸気賦活活性炭による吸着処理により不純物を除去し、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を精製できることが明らかになった。
(2)粉末の製造
実施例2(1)のオリゴ糖製造装置および原料として実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料を用いて、実施例1(2)に記載の方法により反応生成物を得た。ただし、原料の固形分濃度を3%、反応条件は、反応部の温度が217℃、反応部の圧力が25MPa、反応時間が8.8秒間とした。得られた反応物について、スプレードライヤーを用いて、乾燥室出口温度90℃、乾燥室入口温度180℃、微粒化用ディスクの回転数12000rpmの条件下で粉末化した。得られた粉末を水に溶解し、分析方法(3)に記載の方法によりオリゴ糖の確認を行った。コントロールとして、得られた反応生成物について、同様にオリゴ糖の確認を行った。その結果を図13に示す。また、レーザー回折・散乱粒度分測定装置MICROTARAC HRA(日機装社)を用いて粉末の粒度分布を測定し、走査型電子顕微鏡を用いて粉末の外部形態を観察した。その結果を図14に示す。
図13に示すように、粉末において、コントロールと同様に、十二糖、十糖、八糖、六糖、四糖および二糖を示す溶出位置に主なピークが検出された。この結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、粉末化しても、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖の構造を維持できることが確認された。また、図14に示すように、粒径が6〜400μm、その平均粒径(個数基準体積平均径)がおよそ50μmである、球形の粉末が得られたことが確認された。
<実施例6>コンドロイチン硫酸オリゴ糖の機能評価
(1)機能評価サンプルの調製
実施例2(1)のオリゴ糖製造装置および原料として実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料を用いて、実施例1(2)に記載の方法により反応生成物を得て、これを機能評価サンプルとした。ただし、原料の固形分濃度は3%、反応条件は、反応部の温度が217℃、反応部の圧力が25MPa、反応時間が8.8秒間とした。
(2)安全性評価
[2−1]急性経口毒性試験
本実施例6(1)の機能評価サンプルについて、急性経口毒性試験(限度試験)を日本食品分析センターに委託して行った。具体的には、雌マウスを試験群と対照群とに分け、試験群には体重1kg当たり2000mgの機能評価サンプルを、対照群には注射用水をそれぞれ1回投与した後、14日間飼育して観察した。その結果、観察期間中に異常および死亡例は認められなかった。この結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、摂取しても安全であることが示された。
[2−2]重金属および菌数分析
本実施例6(1)の機能評価サンプルについて、重金属および菌数分析を日本食品分析センターに委託して行った。その方法および結果を表2に示す。なお、耐熱性芽胞菌数は10分間の煮沸による加熱処理を行った後に生菌数を測定した結果である。表2に示すように、重金属および菌数はいずれも検出限界以下もしくは無加熱摂取冷凍食品の規格基準値以下であった。この結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、食品として安全であることが確認された。
(3)溶解性の評価
超純水500mLに塩化ナトリウム2.0gおよび濃塩酸7.0mLを溶解し、全量を1Lに調製して、これを人工胃液とした。人工胃液のpHを測定したところ、pH1.2であった。次に、人工胃液200mLをビーカーにとり、300回転/分でスターラーにより攪拌しながらウォーターバスを用いて37℃に保った。ここに、本実施例6(1)の機能評価サンプルおよびコントロールとして実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料をそれぞれ2.0gずつ投入した。投入後、機能評価サンプルについては1、3、5および7分経過毎に、コントロールについては1、3、5、7、9、15、20、30、45および55分経過毎に、それぞれ1mLずつサンプリングし、ポアサイズ0.22μmのシリンジフィルタで濾過した後、分析方法(1)に記載の方法により固形分濃度を測定した。その結果を図15に示す。
図15に示すように、機能評価サンプルでは、1、3、5および7分経過後の固形分濃度はいずれも1.5%であった。目視による観察では、機能評価サンプルは人工胃液に投入後、ダマ状にはならずに速やかに分散し、完全溶解が観察されたのは1分後であった(図示しない)。これに対し、コントロールでは、1および3分後の固形分濃度は0.6%であり、3分後から45分後まで時間の経過とともに固形分濃度が上昇した。目視による観察では、コントロールは人工胃液に投入後、ダマ状になって溶解の進行は遅く、完全溶解が観察されたのは55分後であった(図示しない)。これらの結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、コンドロイチン硫酸と比較して、胃液に速やかに溶解することが明らかになった。
(4)消化性の評価
本実施例6(3)に記載の方法により、人工胃液を調製した。人工胃液100mLをビーカーにとり、300回転/分でスターラーにより攪拌しながらウォーターバスを用いて37℃に保った。ここに、本実施例6(1)の機能評価サンプルおよびコントロールとして実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料をそれぞれ1.0gずつ投入した後、1時間インキュベートすることにより人工胃液による消化を行い、胃液消化物とした。続いて、分画分子量が30000、10000、5000および1000の遠心式濾過膜に胃液消化物を500μLずつ入れて、5500回転/分で30分間遠心分離を行い、濾過液を回収した。濾過液について、分析方法(2)に記載の条件下でHPLCを行い、得られたクロマトグラムにおける、各ピークの面積を算出した。算出結果に基づいて、機能評価サンプルおよびコントロールのそれぞれの胃液消化物に含まれる物質の分子量の比率を百分率で算出してグラフに表した。その結果を図16に示す。
図16に示すように、胃液消化物に含まれる物質の分子量は、コントロールではすべて30000以上であったのに対し、機能評価サンプルでは、30000以上は40%弱であり、10000〜30000および5000〜10000がそれぞれおよそ25%、3000〜5000および3000以下がそれぞれおよそ5%であった。すなわち、機能評価サンプルは、コントロールと比較して、胃液による低分子化を受けやすいことが明らかになった。これらの結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、コンドロイチン硫酸と比較して、胃液により速やかに消化されることが示された。
(5)吸収性の評価
[5−1]内液および外液の回収
本実施例6(1)の機能評価サンプルおよびコントロールとして実施例1(1)[1−2]のエイ精製原料を生理食塩水に20mg/mLとなるよう溶解し、pHを7.4に調整して試験溶液とした。雄のSD系統ラット(7週齢)を18時間絶食させた後、ソムノペンチルを64.8mg/kg投与することにより麻酔した。開腹して空腸を摘出し、8cmの長さにカットした。これを生理食塩水を用いて洗浄した後、ステンレス棒を用いて腸の上方から腸管を裏返して反転腸管とした。反転腸管の一端を縫合糸で結紮した後、37℃の生理食塩水1.0mLを入れたシリンジ付きポリエチレンチューブを他端に装着して縫合糸で結紮し、シリンジ内の生理食塩水を反転腸管内に注入した。この反転腸管を37℃の試験溶液10mLを入れた試験管に入れ、試験管内に混合ガス(95%O、5%CO)を吹き込みながら、30〜60分間、穏やかに振盪した。その後、シリンジの内筒を引いて反転腸管の内液を1mL回収した。また、同時に、反転腸管の外液1mLを回収した。
[5−2]ウロン酸濃度の測定
本実施例6(5)[5−1]の振盪時間0、30および60分間の時点で回収した内液および外液について、分析方法(4)に記載の方法によりウロン酸濃度を測定した。機能評価サンプルおよびコントロールのそれぞれ3検体(検体1〜3とする)について同様に測定した。その結果を図17下図に示す。また、内液の平均値を求めてグラフに表した。その結果を図17上図に示す。
図17に示すように、機能評価サンプルでは、内液のウロン酸濃度の平均値は、振盪時間30分で約82μg/mL、振盪時間60分で約381μg/mLであり、時間経過とともに顕著に上昇した。これに対して、コントロールでは、内液のウロン酸濃度は、振盪時間30分および60分のいずれの時点においても検出限界以下であった。すなわち、機能評価サンプルは、コントロールと比較して、腸管から多量に吸収されることが明らかになった。これらの結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造したコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、生体への吸収性が高いことが示された。
[5−3]オリゴ糖の確認
本実施例6(5)[5−1]の振盪時間0、30および60分間の時点で回収した内液および外液について、分析方法(3)に記載の方法によりオリゴ糖の確認を行った。機能評価サンプルの結果を図18に、コントロールの結果を図19に、それぞれ示す。
図18に示すように、機能評価サンプルの外液では、振盪時間0分、30分および60分のいずれにおいても十二糖、十糖、八糖、六糖、四糖および二糖を示す溶出位置に主なピークが検出された。そして、機能評価サンプルの内液では、振盪時間30分および60分において十糖、八糖、六糖、四糖および二糖を示す溶出位置に主なピークが検出され、各ピークの蛍光強度は60分の方が30分と比較して大きかった。これに対して、図19に示すように、コントロールの外液では、振盪時間0分、30分および60分のいずれにおいても高分子を示す素通りの溶出位置(V)に主なピークが検出された。そして、コントロールの内液では、振盪時間0分、30分および60分のいずれにおいてもピークはほとんど検出されなかった。
すなわち、コントロールに含まれる高分子のコンドロイチン硫酸は腸管にほとんど吸収されなかったのに対して、機能評価サンプルに含まれる、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、時間経過に伴って多量に腸管に吸収されたことが明らかになった。また、機能評価サンプルに含まれる、十糖以下のコンドロイチン硫酸オリゴ糖の吸収性が特に高いことが明らかになった。これらの結果から、実施例1(2)に記載の方法により製造した、二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖は、生体への吸収性が高いことが示された。

Claims (8)

  1. 硫酸基および/またはアセチルアミノ基を有する二糖を構成単位とする偶数糖であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法であって、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程を有する前記方法。
  2. 温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程が、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させて前記コンドロイチン硫酸のN−アセチル−D−ガラクトサミニド結合を選択的に加水分解する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25Mpaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを反応させる工程が、温度Tが175℃≦T≦220℃でありかつ圧力Pが5MPa≦P≦25MPaの条件下で水とコンドロイチン硫酸とを4.4秒間以上35.2秒間以下反応させる工程である、請求項1に記載の方法。
  4. コンドロイチン硫酸オリゴ糖が、ゲル濾過高速液体クロマトグラフィーによって測定された分子量の平均値が131000以下であるコンドロイチン硫酸オリゴ糖である、請求項1に記載の方法。
  5. コンドロイチン硫酸がグルクロン酸−N−アセチル−D−ガラクトサミン6−硫酸構造を有するコンドロイチン硫酸である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法によりコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する工程を有する、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる食品の製造方法。
  7. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法によりコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する工程を有する、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる化粧品の製造方法。
  8. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法によりコンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する工程を有する、コンドロイチン硫酸オリゴ糖を含んでなる医薬品組成物の製造方法。
JP2013032525A 2012-02-21 2013-02-21 コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法 Active JP6146733B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013032525A JP6146733B2 (ja) 2012-02-21 2013-02-21 コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012035546 2012-02-21
JP2012035546 2012-02-21
JP2013032525A JP6146733B2 (ja) 2012-02-21 2013-02-21 コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013199639A JP2013199639A (ja) 2013-10-03
JP6146733B2 true JP6146733B2 (ja) 2017-06-14

Family

ID=49520109

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013032525A Active JP6146733B2 (ja) 2012-02-21 2013-02-21 コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6146733B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022162913A1 (ja) * 2021-01-29 2022-08-04 丸共バイオフーズ株式会社 コンドロイチン硫酸の産生促進剤、アグリカンの発現促進剤およびii型コラーゲンの発現促進剤
WO2023171648A1 (ja) * 2022-03-08 2023-09-14 丸共水産株式会社 血圧低下剤および血圧低下用食品組成物

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003268004A (ja) * 2002-03-14 2003-09-25 Marukyo Suisan Kk エイ軟骨由来コンドロイチン硫酸とその製造方法
JP2004250592A (ja) * 2003-02-20 2004-09-09 Seikagaku Kogyo Co Ltd 紫外線照射による低分子化グリコサミノグリカンの製造方法
JP5344783B2 (ja) * 2005-06-06 2013-11-20 独立行政法人科学技術振興機構 サメ軟骨のコンドロイチン硫酸由来の硫酸化八糖
WO2008059869A1 (fr) * 2006-11-16 2008-05-22 National University Corporation Chiba University Procédé de dégradation d'un polysaccharide
JP5548979B2 (ja) * 2009-09-25 2014-07-16 国立大学法人弘前大学 ヒアルロニダーゼ阻害剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013199639A (ja) 2013-10-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Pirsa et al. Hydrocolloids: Structure, preparation method, and application in food industry
TWI391138B (zh) 含有纖維寡糖之組合物
JP5415939B2 (ja) 超長鎖のイヌリン
JP5654731B2 (ja) 藍草抽出物粉末とその製造方法及びその藍草抽出物粉末の用途
JP5496654B2 (ja) 超長鎖イヌリン
TWI235660B (en) Drugs against articular failure
TWI392496B (zh) 具有治療、預防或改善糖尿病或糖尿病併發症之效果的組成物及含其之飲料
JP2008118988A (ja) 耐熱性ゲル化剤
KR20080002848A (ko) 저분자 히알루론산 및/또는 이의 염, 및 그 제조 방법, 및그것을 함유하는 화장료 및 식품 조성물
JP2008106178A (ja) 水溶性高分子乾燥組成物
JPH0678367B2 (ja) 食物繊維、その製造法及びその食物繊維を含有する生理活性剤
JP2007082415A (ja) ゲル化剤
JP2009051877A (ja) 新規なヒアルロン酸および/またはその塩、ならびにこれを用いた食品組成物および経口医薬品組成物、ならびに該ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する経口用皮膚改善剤または経口用皮膚含水量増加剤
KR20160106076A (ko) 히알루론산 및/또는 그 염 및 그 제조 방법, 그리고, 그 히알루론산 및/또는 그 염을 포함하는 식품, 화장료, 및 의약품
CN109890395A (zh) 用于预防、缓解或治疗关节炎或骨质疏松症的含有新琼寡糖的组合物
JP2007217661A (ja) 水溶性キシラン含有多糖類の製造方法、及びその用途
JP4712746B2 (ja) 酸性飲料
Mudgil Partially hydrolyzed guar gum: preparation and properties
JP6146733B2 (ja) コンドロイチン硫酸オリゴ糖を製造する方法
JP5723919B2 (ja) 新規なヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法、ならびに該ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する食品組成物、経口用皮膚改善剤または経口用皮膚含水量増加剤の製造方法
JP4764380B2 (ja) 発酵乳
JP2009221112A (ja) 免疫機能調節組成物
JP4960591B2 (ja) マンノオリゴ糖類を含有する抗アレルゲン組成物
JP2009107957A (ja) 保水用組成物
Hafezi Hydrocolloids: structure, preparation method, and application in food and pharmaceutical industries

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160226

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160410

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170118

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170313

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170426

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170509

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6146733

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250