JP5415939B2 - 超長鎖のイヌリン - Google Patents

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Description

本発明は、特に長鎖のイヌリンおよびチョウセンアザミの根(antichoke roots)からのその調製、食品(foodstuffs)および化粧品におけるその使用および特に長鎖のイヌリンを含む食品および化粧品製剤に関する。
少ない脂肪およびより多くの天然の原料を含有する食品に対する要求は、最近の数十年間で顕著に増加した。炭水化物またはタンパク質に基づく製品などの脂肪の代替物または脂肪酸の糖ポリエステルなどの合成脂肪代替物として多くの物質が提唱された。しかしながら、これらは、常に、低い熱安定性、不満足な口腔感(mouth feel)または人々もしくは環境に対する望まれない効果などの欠点を有する。
イヌリンが食品に使用するのに適当であることは長い間知られている。イヌリンは、ヒトのために利用可能な低いエネルギー値を有し、したがって脂肪代替物としてのイヌリンの使用は、最終製品の発熱量の大きな減少を確実にする。更に、イヌリンは食品におけるプレバイオティック添加剤(prebiotic addition)および増量剤(bulking agent)として使用される。
イヌリンは、フルクタングループに属する多糖である。それは、フルクトース分子のβ−2−1−結合鎖からなりそしてこの鎖は還元端部にα−D−グルコース単位を有することがある。イヌリンは、例えば、チコリの根、キクイモ(Jerusalem artichoke)およびダリア塊茎などの種々の植物に経済的に回収可能な量で存在する。種々のイヌリンの平均鎖長およびそれらの物理化学的性質は植物種により異なる。
食品部門において今日まで使用されてきたイヌリンは、例えば、水性ペースト形態における粘度、熱安定性および酸に対する安定性、乳化性および水結合能力などの加工性において完全に満足できるものではない。
更に改良された発酵性およびより大きなプレバイオティック効果を有するイヌリンに対する要求がある。
更なる問題は、植物組織からの熱水によるイヌリンの抽出に関して、抽出物がポリマー粗イヌリンの外に、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類、スクロースなどの二糖類およびフルクトオリゴ糖(DP3−10)も含有することである。これらの副生物(単糖および二糖、フルクトオリゴ糖(DP3−10)は、イヌリンの更なる加工を妨害することがある。例えば、単糖および二糖はダイエット食品の製造においては望まれない。単糖および二糖およびフルクトオリゴ糖(DP3−10)の甘味は、食品製品部門におけるある用途を妨害する。フルクトオリゴ糖(DP3−10)は、それらの吸湿性および粘着性の故に、加工期間中および貯蔵期間中食品製品における粗イヌリンの使用を大いに妨害する。例えば化学的誘導体化による粗イヌリンの更なる加工期間中、単糖および二糖およびフルクトオリゴ糖(DP3−10)は、高価な方法によってのみ精製されうるかまたは全然精製できない生成物の不明確な混合物をもたらすことがある。更に、高い割合の還元糖は、アミノ化合物の存在下の熱加工において、望まれない褐変反応、異臭の形成およびアクリルアミドの生成(メイラード反応)がありうるという欠点を有する。
本発明は、上記した問題を解決することが可能なイヌリンを提供するという目的に基づいている。
その意図は、特に、化粧品および食品工業の用途のための有利な加工性を達成することである。その例は、有利な粘度挙動、高い熱安定性および酸に対する安定性、良好な乳化性および高い水結合能力である。
本発明により取り組まれる1つの問題は、食品用途に対する改良された発酵性および改良されたプレバイオティック効果を有するイヌリンを更に提供することである。
最後に、粗イヌリンと比較して、単糖および二糖およびフルクトオリゴ糖(DP3−10)のより少ない含有率を有するイヌリンを提供することは、望ましいことであった。
前記問題は、特許請求の範囲に記載の態様の提供により解決される。
本発明は、65と81との間、好ましくは65と79との間、更に好ましくは66と78との間、極めて特定的に更に好ましくは66と76との間、なお一層好ましくは66と74との間、最も好ましくは66と73との間の平均重合度DPを有するイヌリンに関する。
これに関連してかつ本発明に関連して、「との間の」という用語は、それぞれ指示された数値の限界も含むことを意図する。
「イヌリン」という用語は、本発明に関連して、フルクトース分子のβ−2−1−結合鎖からなるポリフルクタンを意味することを意図する。この鎖は、好ましくはその端部に還元性α−D−グルコース単位を有する。
本発明に関連して、平均重合度DP(平均DP重量)は、重量平均分子質量Mとモノマーの分子質量Mの商を意味する。重量平均分子質量Mwは、
Figure 0005415939

(式中、Niは分子質量Miを有する分子の数である)
から生じる。
「平均重合度DP」は、好ましくは、後記する「光散乱および屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLS system)」の方法により本発明に関連して測定される。
本発明のイヌリンは、先行技術に記載のイヌリンと比較して、熱処理または酸処理に対する格別に高い安定性を示すクリームに加工することができ、それによりそれらは例えば、特定の工業的用途または化粧品および/または食品製品工業の用途により高度に適しているという驚くべき利点を示す。更に、本発明のイヌリンを含むクリームは、せん断力に対する意外に高い安定性を示す。したがって、本発明のイヌリンは、慣用のイヌリンと比較して、強いせん断力が作用する工業的プロセスにおいてより良好に加工されうるという更なる利点を示す。
本発明のイヌリンは、食品用途に有利な、特に有利な粘度特性および高いゲル強度および非常に低い溶解度について更に注目されうる。
更に、本発明のイヌリンは、口内において優れた感覚特性を有する食品における脂肪代替物として驚くべき良好な性質を示す。
本発明のイヌリンは、これまでに使用された製品と比較して、後部大腸の疾患の予防に有利なより遅い発酵も示す。より遅い発酵は、腸内のガス、特に水素の形成の減少を伴う。
本発明のイヌリンは、更に、これまでに使用された製品と比較して、より大きいプレバイオティック効果を有する。特に、本発明のイヌリンは、望まれないおよび/または病原性バクテリアの同時的減少を伴う有利な方式でビフィズス菌(bifidobacteria)の発生を刺激する。したがって、本発明のイヌリンは、特に後部大腸における腸不全および疾患の予防および処置のための食品および/または医薬に使用するのに適している。
最後に、本発明のイヌリンは、種々の食品に対して、例えば粘度増加、乳化性、水結合能力およびくず形成などの有利な使用特性も与える。本発明のイヌリンは、驚くべきことに、パン菓子類製品に対して改良されたベーキング特性を与えそしてパン生地収率を増加させる。本発明のイヌリンは更にフレーバー改変および泡安定化のための有効な手段である。
更なる態様において、本発明のイヌリンは、3%未満、好ましくは1.5%未満、特に好ましくは0.7%未満、極めて特に好ましくは0.3%未満の3〜10のDPを有するフルクトオリゴ糖(オリゴフルクタン)の含有率を有する。
更なる態様において、本発明のイヌリンは、2%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.5%未満、極めて特に好ましくは0.2%未満、最も好ましくは0.1%未満のグルコース含有率を有する。
更なる態様において、本発明のイヌリンは、2.5%未満、好ましくは1.5%未満、特に好ましくは1.0%未満、極めて特に好ましくは0.3%未満、最も好ましくは0.15%未満のフルクトース含有率を有する。
更なる態様において、本発明のイヌリンは、2%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.5%未満、極めて特に好ましくは0.3%未満、最も好ましくは0.1%未満のスクロース含有率を有する。
食品用途に特に有利な本発明のイヌリンの態様においては、単糖および二糖の含有率は0.5%より少ない。
すべての百分率は、特記しない限り、イヌリンおよび更なる物質の総乾燥重量を基準とした重量%である。「更なる物質」は、イヌリンとは異なる乾燥混合物中のすべての物質である。
フルクトース、グルコースおよびスクロース含有率は、下記した光学的酵素法により本発明に関連して測定される(一般的方法:「糖決定」)。
前記態様を含むことができる更なる態様において、本発明のイヌリンは、10500g/モルと13150g/モルとの間、好ましくは10500g/モルと12800g/モルとの間、特に好ましくは10650g/モルと12650g/モルとの間、なお一層好ましくは10650g/モルと12350g/モルとの間、最も好ましくは10650g/モルと12000g/モルとの間の重量平均分子質量Mを有する。
重量平均分子質量Mは、好ましくは、後記した光散乱と屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLS system)の方法により本発明に関連して測定される。
前記の態様を含むことができる更なる態様において、本発明のイヌリンは、54と75の間、好ましくは54と72の間、なお一層好ましくは57と71の間、特に好ましくは60と71の間のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された平均重合度DPn(GPC)、を有する。
「平均重合度DP」は、好ましくは、後記した光散乱と屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLS system)の方法により本発明に関連して測定される。
本発明に関連して、用語「平均重合度DP」(平均DP数)は、数平均分子質量Mと結合したモノマーの分子質量M(無水フルクトース=162g/モル)の商を意味する。数平均分子質量Mは、
Figure 0005415939

(式中、Niは分子質量Miを有する分子の数である)
から得られる。
前記態様を含むことができる更なる態様においては、本発明のイヌリンは、650〜48000、更に好ましくは970〜40000g/モル、なお一層好ましくは1300g/モル〜34000g/モル、最も好ましくは4000〜26,800g/モルの範囲の分子量分布を有する。
前記の態様を含むことができるなお更なる態様において、本発明のイヌリンは、すべてのイヌリン分子の総質量を基準として25〜40%が<10000g/モルの分子量を有するイヌリン分子の総質量およびすべてのイヌリン分子の総質量を基準として5〜20%が>20000g/モルの分子を有するイヌリン分子の総質量を示す。すべてのイヌリン分子の総質量を基準として<10000g/モルの分子量を有するイヌリン分子の総質量が30〜36%でありそしてすべてのイヌリン分子の総質量を基準として>20000g/モルの分子量を有するイヌリン分子の総質量が9〜15%であることはなお更に好ましい。
分子量分布は、好ましくは、後記した光散乱と屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLS system)の方法により本発明に関連して測定される。
特に有利な性質を有する本発明のイヌリンの1つの態様においては、分岐度は0.5〜2.0モル%、更に好ましくは0.7〜2.0モル%、なお更に好ましくは0.9〜2.0モル%、最も好ましくは1.1〜2.0モル%である。分岐度は、ランダムに分布した分子量を有する本発明のイヌリンのサンプルにおいて測定されたすべてのイヌリンモノマーの総数に基づいてフルクトースモノマーの6位置における追加の分岐点(以後「2−1,6−」とも略記される)を有するβ−2−1−結合フルクトースモノマーの百分率数として本明細書で定義される。その位置6において、ポリフルクトース鎖内の「2−1,6−」フルクトースモノマーは、少なくとも2つのβ−2−1−結合フルクトースモノマーからなる他のポリフルクトース鎖または単一フルクトースモノマーに結合される。用語「分岐点」は、少なくとも2つのβ−2−1−結合フルクトースモノマーからなる他のポリフルクトース鎖または単一フルクトースモノマーが結合されるポリフルクトース鎖内の、フルクトースモノマーの位置を示す。分岐度は、標準メチル化分析の方法または替わりにメチル化後の還元分解の方法により測定される。両方法とも実施例で詳細に説明される。
その性質において特に有利なそして前記の態様を含むことができる本発明のイヌリンの態様は、重量平均重合度と数平均重合度の商DPw/DPnにより表わされる特に狭い分子量分布を有する。この量は、多分散性インデックス(polydispersity index)とも呼ばれる。好ましい態様においては、商DPw/DPnは1.25未満であり、更に好ましい態様では1.20未満であり、なお更に好ましい態様では1.15未満であり、最も好ましい態様では1.10未満である。この関連においてDPwおよびDPnの値は、後記した光散乱と屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLS system)の方法により測定される。転換計算のためのモノマーの分子量は162g/モルに等しくセットされる。
本発明は、更に、水にイヌリンを分散させ、得られる分散液を均質になるまでせん断し、このようにして得られた生成物を4〜15℃で12〜24時間貯蔵し、そして室温の状態にした後、攪拌して均質なペーストを得ることにより得ることができる本発明のイヌリンの水性ペーストに関する。好ましいペーストは、水と、ペーストの全重量を基準として1〜40重量%、更に好ましくは1〜35重量%、なお更に好ましくは1〜30重量%、その上更に好ましくは2〜25重量%、なお一層更に好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは10〜20重量%のイヌリンを含む。用語「ペースト」は、本発明に従えば、結晶性および/または無定形イヌリンの懸濁液と同等である。したがって、用語「水性ペースト」は、水性相中の結晶性および/または無定形イヌリンの懸濁液と理解されるべきである。水性相は、塩、他の炭水化物、タンパク質、アミノ酸などの溶解されたもしくは懸濁された物質を場合により更に含むことができる水をベースとする。有利な態様では、ペースト中のイヌリンは噴霧乾燥したイヌリン、即ち、ペーストを形成する前に噴霧乾燥されたイヌリンである。
上記したペーストは、水性系における成分として使用されうる。好ましい水性系は、水性ベースの食品および化粧品であり、その際用語「食品」は、本明細書の説明の他の所で定義される。好ましい食品の例も本明細書の説明の他の所で列挙される。食品および化粧品において、本発明に従うペーストは、構造付与成分(structure imparting component)、増粘剤、テキスチャー化剤(texturizing agent)、安定性増強剤または粘度上昇剤(viscosity-building agent)として使用することができ、これに関連してペーストは、1つ以上の上記した機能を達成することができる。食品において、本発明に従うペーストは、脂肪代替物、油代替物、プレバイオティック剤および/またはダイエット繊維成分として使用することもでき、この関連においてペーストは上記した機能の1つ以上を達成することができる。最も好ましい使用は、油または脂肪代替物としての使用である。本発明に従うペーストが成分として使用される最も好ましい食品は、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、クリーム、生クリーム、カード、バター、乳、特に脱脂乳、バターミルク、酸味のあるミルク、ケフィール、チーズ、例えばクリームチーズ、ソフトチーズ、スライスチーズ、ハードチーズ、ホエー、乳粉、乳ベースの飲料である。
本発明のイヌリンは酸に対する驚くべき高い安定性を示す。特に、本発明のイヌリンの水性ペーストは、酸に対する高い安定性を示す。同様に、本発明の水性イヌリンペーストのせん断安定性は、市販の製品と比較して、格別である。
本発明のイヌリンは、驚くべき高いゲル強度により他の市販のイヌリンから区別される。イヌリンが90℃で溶解され、次いで室温(23℃)で24時間の期間貯蔵されるとき、水中の本発明のイヌリン1〜35%(重量/重量)、更に好ましくは1〜30%(重量/重量)、なお更に好ましくは2〜25%(重量/重量)、なお一層好ましくは2〜20%(重量/重量)、最も好ましくは約20%(重量/重量)の濃度で、4〜100N、更に有利には10〜100N、なお更に有利には20〜100N、最も有利には40〜100Nのゲル強度が達成される。前記した高いゲル強度は、噴霧乾燥され次いでゲル形成のために使用される本発明のイヌリンにより特によく達成されうる。このようにして得られたゲルは、好ましくは粒子の性質を示す(粒子ゲル)。ゲル強度を決定するための測定方法は、実施例の節に詳細に説明される(水中で加熱した後イヌリンによる構造形成)。
本発明は、更なる局面においては、
a)チョウセンアザミの根を粉砕し、
b)粉砕した根を水で処理することにより抽出物を得、
c)得られた抽出物から着色成分を除去し、
d)抽出物からイヌリンを沈殿させ、
e)イヌリンを少なくとも1回再沈澱させる、
イヌリンを得るための方法に関する。
この方法は、本発明の前記したイヌリンを得るために特に適当であるが、それに限定されない。
チョウセンアザミは、出発物質として使用されるが、この方法は特定の品種に限定されない。粉砕の前に、例えば、高圧クリーナーにより水で激しく洗浄することにより、任意の付着性汚染物を根から除去することが有利に行われる。低温凍結された状態で根を洗浄して根材料の質量の損失を最小にすることが有利に可能である。
必要ならば、根は、例えばチョッピングにより最初に粗く粉砕される。更なる粉砕のためにシュレッダー(shredder)が好ましい。得られた製品は、繊維性チップの形態にある粉砕された根材料である。
この方法の最も有利な態様においては、下記の特性を有するチョウセンアザミの根が使用される:乾燥塊およびイヌリンの形成に関する熟した根(ripe roots)。熟成度は、イヌリン含有率対乾燥物質含有率の比およびフルクトース含有率対イヌリン含有率の比から確立されうる。イヌリン含有率は、根の乾燥物質の全重量を基準として、好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは40〜65重量%、なお更に好ましくは50〜60重量%の範囲にありそしてフルクトース/イヌリン比は、好ましくは3〜24重量%、さらに好ましくは3〜12重量%、最も好ましくは6重量%より低い範囲にある。清浄化されたチョウセンアザミ根の乾燥物質含有率は、清浄化された根の全重量を基準として、好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは30〜40重量%、更に好ましくは30〜35重量%である。
チョウセンアザミの根が、本発明の方法においてそれらを使用する前に貯蔵されなければならない場合には、根は、微生物汚染、腐敗または酵素分解によるイヌリンの分子量の減少を防止するために保存されるべきである。根を保存するための好ましい方法は、貯蔵のための粉砕された根の凍結乾燥または熱風乾燥である。
粉砕の後に、粉砕された根材料は、水で好ましくは60〜95℃の温度で、最も好ましくは80〜95℃の温度で抽出される。抽出は好ましくは中性〜僅かにアルカリ性pH範囲で行われる。pH7〜9で少なくとも60℃の温度は、この場合に酵素による加水分解および酸性加水分解が抑制されるので有利である。水中の粉砕された根材料の濃度は、抽出混合物の全重量を基準として新鮮な根の重量として測定して、好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは20〜30重量%である。
好ましくは、使用したシュレッディングされた材料の乾燥物質と抽出媒体としての水との比が、抽出物の重量基準として、抽出物中の乾燥物質含有率が8〜12重量%およびイヌリン含有率が6重量%より高い、好ましくは6〜8重量%と確立される。水対根の重量比などの抽出条件の対応して適当な選択は、根に存在するイヌリンの80〜90重量%を抽出物中に移行させることができる。上記した条件は、抽出物の重量を基準として5重量%という低い濃度ですら高分子量イヌリンが抽出物から結晶化するという観察に基づいて、有利な結晶化および抽出物からのイヌリンの高い収率を達成するのに適当である。
抽出装置に対する特別の制限はなく、植物材料のための慣用の抽出技術が適用されうる。本発明に従えば、攪拌機を有するジャケット加熱式抽出器で抽出を行うのが最も好ましい。他の高度に好ましい態様においては、加熱可能な醸造ろ過槽(lauter tun)が攪拌式抽出機として使用される。したがって、根からのイヌリンの抽出は、下記するとおり消費済みチップからのろ過による抽出物の分離と組み合わされる。根/水混合物の平衡化の後の抽出時間は、好ましくは30分〜4時間、好ましくは1〜2時間である。この時間の後、抽出物は、例えばポンプで取り出すことまたはストレーナーで濾しとることまたはろ過により、消費済みチップから分離される。
消費済みチップからの抽出物の分離の後に、適当ならば、繊維状物質および植物フラグメントは抽出物中に懸濁した物質として残ることができる。もし存在するならば、これらの懸濁した物質は、同様に抽出物から除去される。したがって、本方法のこの変法において、本方法の工程b)の後、工程c)の前に、主として繊維からなる懸濁した物質を抽出物から除去する工程が続く。懸濁した物質の許容されうる量および除去が行われるべきであるかどうかは、場合に応じて当業者により決定されるであろう。懸濁した物質の除去は、遠心またはろ過などの慣用の分離技術により行うことができる。スラッジ除去分離機は特に適当であることが証明された。適当な細かさを有するスクリーンまたはフィルターを使用することもできる。
高度に好ましい態様においては、懸濁した物質は、フィルター物質として消費済みチップを使用することによりろ別することができる。この態様では、消費済みチップは、醸造ろ過槽のように、底部に篩を備えた抽出容器の底部に沈殿させられる。篩は、好ましくはスリット篩である。沈殿した消費済みチップは、抽出物がそれを通って流れるろ過床として使用される。この技術を使用することにより、抽出物を更に精製もしくは増白する前にまたはイヌリンを結晶化する前に、更なるろ過工程を使用することなく、懸濁した物質の殆ど定量的除去が可能である。
抽出物は、着色成分およびコロイド状に懸濁した着色物質の含有率により着色される。着色成分は、中でも、タンニンおよびフラバノイドからなり、そして通常黄色もしくは褐色がかった黄色および/または暗褐色がかった色を抽出物に与える。このような抽出物から直接得られうるイヌリンは、無彩色に関する所望の要求と合致しない。したがって、前記方法の工程c)において抽出物から着色成分を除去することが必要である。植物抽出物から着色成分を除去するための本発明の方法の工程c)は、一般に、植物抽出物の脱色、清澄化または「増白」とも呼ばれる。これらの用語は、本発明に関しては、均等である。
増白は、本発明に従って、石灰を加え、次いで炭酸ガス飽和(CO添加)により行うことができる。石灰添加の方法は、先行技術から知られておりそして例えばサトウダイコンからスクロースを得る際に使用される。別の増白方法においては、妨害成分はイオン交換体を使用して除去される。
前記方法の特に有利な態様においては、着色成分は、
i)植物抽出物にマグネシウムイオン(Mg2+)を混合し、
ii)植物抽出物に少なくとも1つのアルカリ成分を混合し、
iii)沈澱を形成し、そして
iv)形成された沈澱を植物抽出物から除去する、
ことにより工程c)において除去される。
この特に好ましい変法における工程i)〜iv)は、方法の工程c)のサブ工程である。
この方法の変法は、驚くべきことに、石灰増白方法と比較して抽出物のより有効な脱色を可能とする。更に、使用した佐剤、マグネシウム塩およびアルカリは安価である。したがって、この方法は、イオン交換体の使用より安価である。この方法の工程を行うための装置および時間に関する費用も特に低い。最後に、このタイプの増白は、同時に抽出物から濁度の原因物質も除去する。
マグネシウムイオン(Mg2+)を、本発明に従って水性植物抽出物に混合する。マグネシウム塩の水性溶液を植物抽出物に加えることは工程i)の変法において可能である。更なるより好ましい変法においては、マグネシウム塩は植物抽出物に固体形態で直接加えられそしてその中に溶解される。
マグネシウム塩が加えられるならば、それは、その高い溶解度積により、水に非常に容易に可溶性の塩である。特に適当なマグネシウム塩は、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、低級脂肪酸のマグネシウム塩、例えば、酢酸マグネシウム、およびプロピオン酸マグネシウム、およびそれらの混合物から選ばれる。
ii)におけるアルカリ成分は、本発明に従えば、水酸化物イオン(OH-)を含むかまたは植物抽出物と一緒にした後抽出物中に水酸化物イオンを形成する成分を意味する。アルカリ成分は、液体、固体または気体であることができる。液体アルカリ成分が好ましくは使用される。
前記方法の工程i)およびii)に記載のマグネシウムイオンおよびアルカリ成分を添加すると、沈澱反応により沈澱が形成される。工程i)およびii)は、この方法の状況では、特にもしマグネシウムイオンの溶液が工程i)で使用されそしてアルカリ液が工程ii)で使用されるならば、原則的に同時に行われうる。しかしながら、方法の工程i)を最初に、次いで工程ii)を行うことが好ましい。
マグネシウムイオンとアルカリ成分の両方を抽出物中にできる限り均質に分布させて、抽出物における沈澱反応もできる限り均質でかつ定量的であるようにすることは、方法の工程C)のために有利である。したがつて、アルカリ成分として水性アルカリ液、例えば植物抽出物中に急速にかつ均質に混合されうるアルカリ溶液またはアルカリ懸濁液を使用することが好ましい。アルカリ溶液または懸濁液は、本発明に従って、水酸化物イオン(OH)を含むかまたは植物抽出物と一緒にした後それらを形成する。
非常に好ましい変法においては、マグネシウム塩は、工程i)において最初に抽出物中に均質に溶解される。次いで工程ii)において、水性アルカリ溶液または懸濁液が添加される。
1つの態様においては、アルカリ成分は、アルカリ金属またはアルカリ土金属水酸化物の水性溶液または懸濁液である。水酸化物は、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土金属の水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウムから選ばれる。
極めて特に好ましい変法においては、アルカリ成分は、水酸化カルシウムの懸濁液である。水酸化カルシウムを使用することの利点は、特に少量の遠心分離物が工程iii)で得られるということである。更に、水酸化マグネシウムと硫酸カルシウムの同時の沈殿は、沈殿のより大きい沈降速度およびより大きい圧縮度を達成する。沈澱は特に少ないゼラチン状稠度を有する。したがって沈澱におけるイヌリンの結合はこのプロセス変異形において特に低いままである。
使用されうる更なるアルカリ成分は、好ましくは水性溶液中のアンモニアである。原則的にガス状アンモニアを使用することは排除されないが、これは水性溶液の使用よりも好ましさは少ない。
更なる態様においては、アルカリ成分は、エチレンジアミンおよびトリエタノールアミンなどの有機塩基の水性溶液または懸濁液である。
アルカリ金属酢酸塩およびアルカリ土金属酢酸塩、特に酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウムなどの弱い有機酸の塩を使用することもできる。
水酸化マグネシウムは沈殿として形成される。水性抽出物の着色成分は、本発明に従って沈澱中に残り、かくして液相から分離される。実質的に脱色された抽出物が得られる。使用されたMg2+イオンおよびアルカリ成分の量、したがって形成されて沈澱の量は、とりわけ、脱色がいかに定量的であるかを決定する。反応体の量の最適化は、当業者の力量の範囲内にある。硫酸マグネシウムの場合に、好ましい濃度は、水性抽出物の0.5〜3重量%、更に好ましくは0.5〜2重量%の範囲内にある。
上記したとおり工程c)の好ましい変法においては、水酸化物イオン対マグネシウムイオンのモル比OH:Mg2+は、好ましくは2.2:1〜1.8:1である。この比が正確に化学量論的であること、即ち、OH:Mg2+=2:1であることが最も好ましい。かくしてアルカリ成分の量は、水酸化物イオンの適切な量がマグネシウムイオンに対して存在するように選ばれるべきである。
方法の工程i)およびii)におけるマグネシウム塩の溶解およびアルカリ成分の混合は、できる限り速く溶解および均質化を達成するため、したがって速い反応を達成するために、好ましくは攪拌を伴って行われる。しかしながら、混合技術に関して特別な更なる制限はない。かくして、本方法は、例えば、当業者になじみ深い他の混合技術によって行うこともできる。
本方法を促進するために、工程i)は、好ましくは60〜80℃の温度で行われる。アルカリ成分の添加後の反応時間は、一般に約1〜15分、平均して約10分である。
除去工程iv)は、好ましくは沈降またはろ過により行われる。沈降は、遠心、好ましくはディスク遠心、特にスラッジ除去遠心により速くなされうる。しかしながら、当業者が熟知している他の分離技術を使用することもできる。これらはお互いに組み合わせて、例えば、増白された抽出物の遠心スラッジ除去とその後の例えばプレートフィルターによるスラッジ除去された抽出物のろ過を組み合わせて行うこともできる。
本発明の方法の工程c)の全体は、必要ならば、1回より多く行うこともできる。サブ工程i)〜iv)を伴う工程c)の前記した好ましい変異形が使用されるならば、個々のサブ工程i)〜iv)を1回より多く行うことも可能である。
工程c)の後、イヌリンを工程d)において抽出物から沈澱させる。沈澱は、例えばエタノール、メタノールまたはイソプロパノールなどのアルコールを加えることにより行うことができる。この場合に、添加されたアルコールの量または液相の調節された極性に依存して、最初に高い分子量のイヌリン画分が沈殿し、それにより加えたアルコールの量を介して、抽出物中に存在するイヌリンをいかに定量的に沈殿させるかおよびどの分子量の画分が主として得られるかに影響を与えることが可能である。アルコールの他に、水と混和性の他の無極性有機液体を使用することも可能である。
この目的で、この方法の工程の特に有利な態様においては、アルコール、特にエタノールおよびイソプロパノールの使用を制限するために、調製された抽出物を、好ましくは最初の容積の1/4〜1/5に最初に濃縮する。濃縮は、蒸発および膜濾過および両方法の組み合わせにより行うことができる。この場合に、イヌリンの沈殿を避けるために、濃縮物を濃縮期間中高温に、好ましくは60〜95℃に保つように注意しなければならない。膜ろ過の利点はそれと関連した、イヌリンを伴う低分子量物質の減少である。濃縮物からのイヌリンのその後の沈澱は、アルコール濃度を増加させ、それによりイヌリンを例えば重量平均重合度(DPw)により特徴付けられる分子サイズ範囲に従って分別することを選択することにより管理されうる。沈澱条件の選択に依存して、本発明に従うDPwを有する画分が得られる。所望の純度に依存して。
アルコールによる沈殿によるよりも、抽出物を冷却することによりイヌリンを得るのがより好ましい。好ましい条件は、抽出物を2〜10℃、更に好ましくは2〜8℃の温度に冷却しそして6〜140時間、好ましくは6〜48時間の期間この温度に保ち、その期間イヌリンが沈殿するような条件である。冷却速度および温度ならびに冷却の期間は、抽出物からのイヌリンの沈澱および分子量分布の広さ、したがって同時に量に影響を与える。より長い期間およびより低い温度の選択は、より低分子量のイヌリンの沈殿およびより広い分子量分布をもたらし、したがって沈澱した画分のより低い平均分子量をもたらす。沈殿したイヌリンは、例えば、遠心、デカンテーシヨン、ろ過などの慣用の分離技術により液相から分離される。
好ましい態様においては、イヌリンは、上記した方法の抽出工程b)の後および工程c)の前に、初めて結晶化される。このような結晶化は、好ましくは、前記したとおりに行われる。工程c)の前の結晶化は、抽出物の直接の増白と比較して高分子量イヌリンの収率を増加させ、そして増白剤、即ち、マグネシウム化合物およびアルカリ成分の使用を節約する。イヌリンの最初の結晶化の後、抽出物を増白することが有利である。何故ならば、この場合にイヌリン結晶に結合した着色成分のみが除去されなければならないからであり、これは増白スラッジに結合した同様により少ない量のイヌリンをもたらすからである。
最初の沈殿および沈殿したイヌリンの除去の後、まだ溶解しているいかなるイヌリン画分も得るために、抽出物の新たな冷却およびアルコールの添加を行うことができる。反復に関する決定は、植物からイヌリンがいかに定量的に得られるべきであるかおよび最終製品においてどの分子量分布が所望されるか、に従って場合に応じてなされる。
抽出物中のイヌリンの濃度は、根のイヌリン含有率および抽出物中の粉砕された根の濃度に実質的に依存し、そして抽出物を冷却することによりイヌリンの沈殿に対する効果を有する更なる変数である。したがって、沈殿の濃度に対する依存は、最初の沈澱の後に例えば蒸発により液相を濃縮するために、所望されるならば低分子量画分も沈澱させるために、利用されうる。
最後の方法工程e)において、沈殿したイヌリンを再沈澱させる。「再沈殿」は、本発明の状況においては、先の方法工程から生じる固体イヌリンを再溶解し、次いで再び溶液から沈澱させおよび/または結晶化させることを意味する。したがって、方法工程e)は:イヌリンを再び溶解しそして沈澱させおよび/または結晶化させ、この工程を少なくとも1回行う、と言い表すことができる。結晶化は、主として結晶性構造が得られるという点で沈殿とは異なる。
イヌリンは、好ましくは熱の作用下にそして好ましくは水中に溶解される。70〜100℃、特に90〜100℃の温度を有する水が特に適当である。
工程e)における沈殿は、前記したとおりアルコール性沈澱により行うことができる。しかしながら、イヌリンは好ましくは、6〜140時間、好ましくは6〜48時間にわたり2〜10℃、更に好ましくは2〜8℃に溶液を冷却することにより得られる。
工程e)において溶解されたイヌリンの沈殿は、液相にまだ残っているイヌリンを得るために反復することができる。反復に関する決定は、植物からイヌリンがいかにして定量的に得られるべきであるかおよび最終産物においてどの分子量分布が所望されるか、に従って場合に応じてなされるべきである。沈澱を簡単にするために液相を濃縮することができる。
再沈殿の後に、得られるイヌリン固体を、例えば、遠心、デカンテーション、ろ過などの慣用の分離技術により液相から分離させる。
得られるイヌリン産物の分子質量分布および純度に影響を与えるために、方法工程e)を1回より多く行うことができる。分子量の平均および重合度の平均は再沈澱工程e)を反復すると、より高い値にシフトすることが明らかになった。したがって、特許請求の範囲内の本発明のイヌリンの種々の分子量の平均/重合度を定めることが可能である。
微細粒子不純物がまだ存在するならば、1つ以上のろ過工程をこのプロセスに挿入するのが有利である。存在する任意の微細粒子不純物はろ過において除去される。ろ過器の微細度は不純物の粒度に依存して当業者により選ばれる。
ろ過工程は、抽出物を得た後この方法においてどこにでも挿入されうる。例えば、工程b)において抽出物を得た直後のろ過工程は有利である。ろ過工程は、前記したとおりの懸濁した物質の除去から区別されるべきである。何故ならば、ろ過により除去された粒子は、主として繊維からなる懸濁した物質よりも微細であるからである。更なる好ましい態様においては、ろ過工程は工程d)の前に行われる。
ろ過工程は、好ましくは、方法工程e)について説明した再沈殿と組み合わされる。これは、工程e)について前記したとおりイヌリンが溶解され、次いで溶液がろ過されることを伴う。ろ過の後、イヌリンはろ過された溶液から沈澱または結晶化される。沈澱または結晶化の後に生じる固体イヌリンは、例えば、遠心、デカンテーションおよびろ過などの慣用の分離技術により液相から分離されうる。
ある場合には、得られるイヌリンは、ろ過により除去できない物質により着色されることがある。このような場合に、活性炭による処理により着色不純物を除去することが好ましい。1つの態様では、活性炭を、水に懸濁させそして80℃より高い、好ましくは90℃より高い温度でイヌリン溶液に加える。20重量%イヌリン溶液の場合に、活性炭の量は、好ましくはイヌリン溶液の重量を基準として、1〜10重量%、好ましくは2〜6重量%、さらに好ましくは2〜3重量%の範囲にある。着色不純物の吸着の後、活性炭を遠心および/またはろ過により除去する。活性炭懸濁液は、活性炭スラッジの遠心分離により予備清澄化され得、次いで二段階ろ過、例えば、ケイソウ土プレコートろ過器およびシートろ過器の組み合わせにより清澄化される。イヌリン溶液からの活性炭の分離期間中、溶液中にイヌリンを保つために、温度は80℃より高く、好ましくは90℃より高く維持することは重要である。活性炭の除去の後、イヌリンを沈澱または結晶化させることができそして上記したとおり液相から分離することができる。
液相からの分離後に、最終生成物を水または水/アルコール混合物で再び洗浄することができる。2〜10℃の温度で冷水による洗浄が好ましい。この目的で、イヌリン沈澱を水中にスラリー化し、次いでイヌリンを再び沈降させる。
得られるイヌリンは、好ましくは更なる最後の方法工程において乾燥される。乾燥は、凍結乾燥、噴霧乾燥またはドラム乾燥により行うことができる。
好ましい態様においては、本発明のイヌリンは、噴霧乾燥された形態にある。適当な噴霧乾燥パラメーターは、実施例に記載される。噴霧乾燥プロセスの場合に、沈澱または結晶化させたイヌリンは、再び懸濁させるか(約80℃より低い水中に)または溶解させなければならない(約80℃より高い水中に)ことは自明である。あるいは、上記した最後の沈澱または結晶化工程は、省くことができ、そして方法からの懸濁したまたは溶解したイヌリンを直接噴霧乾燥することができる。本発明の噴霧乾燥されたイヌリンを液体調製された食品製品に加えることにより、粘度を特に有効に増加させることか可能である。同等な量の本発明のイヌリンを加えると、他の方法で乾燥したイヌリン(例えば凍結乾燥)と比較して、粘度のより大きい増加が噴霧乾燥されたイヌリンで達成される。
なお更なる好ましい態様においては、本発明のイヌリンは、噴霧造粒形態にある。噴霧造粒イヌリンは、既知の方法、例えば造粒種として先に噴霧乾燥された物質を導入しそして更なるイヌリンを噴霧乾燥することにより得られる。例えば10〜100μmの粒度を有するイヌリンが最初の装填(charge)として役立つことができる。適当な噴霧乾燥造粒条件は、例えば水70%およびイヌリン30%のフィード(feed)組成および90℃のフィード温度である。
本発明のイヌリンは、極めて特に好ましくは、50〜350μm、更に好ましくは80〜300μm、なお更に好ましくは100〜250μm、最も好ましくは100〜200μmの平均粒径を有する。したがって、このようなイヌリンは本発明の更なる局面である。
平均粒径は、乾燥サンプルの篩分析および光散乱の両方により決定されうる。しかしながら、好ましい方法は、篩分析であり、それにより本発明のイヌリンは、篩分析により決定して、好ましくは50〜350μm、更に好ましくは80〜300μm、なお更に好ましくは100〜250μm、最も好ましくは100〜200μmの平均粒径を有する。
1つの態様においては、説明した粒径を有する本発明のイヌリンは、噴霧乾燥法または噴霧造粒法により得られる。したがって、前記した粒度を有する噴霧乾燥または噴霧造粒されたイヌリンは本発明の更なる局面である。
平均粒径が乾燥後にまだ好ましい範囲の外にある場合には、乾燥したイヌリンの好ましい平均粒径を篩分別により調節することが可能である。適当な篩の選択は平均的な当業者の力量の範囲内にある。
本発明のイヌリン粒子は、好ましくは、45%未満、更に好ましくは40%未満、なお更に好ましくは35%未満の結晶性画分を有する。更なる好ましい態様においては、20%未満、なお更に好ましくは10%未満である。最も好ましい態様においては、結晶化度は1%未満である。公認の結晶化度は、Ruland-Vonkの方法により決定される(W. Ruland, Acta Cryst., 14, 1180 (1961); C.G. Vonk, J. Appl. Cryst. 6, 148(1973)。結晶化度を決定するための方法は、実施例に詳細に記載されている。低い結晶化度は、イヌリンに対して、ある食品用途に有利なより良好な溶解特性を与える。
なお更なる局面においては、本発明は、本発明の前記したイヌリンおよび1種以上の食用になる成分または薬学的に許容される成分を含む組成物にも関する。典型的な組成物は、ヒトおよび動物用の食品、飲料、機能的食品、医薬および医薬組成物(予防組成物および治療組成物を含む)およびそれらの中間体を含む。
機能的食品は、本発明の状況においては、従来の栄養素とは別に、健康促進効果を有することができる成分を含む食品を意味する(Institute of Medicine of the National Academy of Sciences, USA, 1994の定義)。
前記食用になる成分または薬学的に許容される成分は、好ましくは、糖(例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、マルトース、イソマルトース、ポリデキストロース)、ポリオール(例えばソルビトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルト、マンニトール、キシリトール)、マルトデキストリン、甘味料、水素化グルコースシロップ、ヒトおよび動物食品への添加物、ヒトおよび動物食品のための中間体、ヒトおよび動物食品製品、食用になる液体、飲料、生物学的利用可能なミネラルの源、薬学的に許容される担体、薬学的および治療的活性な物質、医薬組成物および医薬からなる群より選ばれる。
本発明の特に好ましい組成物は、食用になるもしくは薬学的に許容される生物学的利用可能なミネラルの源、特にカルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または鉄の源、例えば酪農製品ならびにカルシウム、マグネシウムおよび鉄の塩および錯体の存在下に本発明のイヌリンを含む。
上記したとおり、本発明の目的は、食品に使用するための特に有利な性質を有するイヌリンを提供することであった。その際用語食品製品および食品は本発明に従えば同等である。したがって、更なる局面においては、本発明は、前記したイヌリンを含む食品および栄養補助食品にも関する。用語食品は、本発明に従えば、ヒトおよび動物食品または動物飼料用の食品を含む。栄養補助食品は、ヒト用および動物用の栄養補助食品を含む。
特に好ましい食品は、酪農製品、ヨーグルト、アイスクリーム、乳をベースとするソフトアイス、乳をベースとする付合せ、プディング、ミルクセーキ、エッグカスタード、チーズ、栄養バー(nutrition bar)、エネルギーバー、朝食バー、菓子、パン菓子類製品、クラッカー、クッキー、ビスケット、シリアルチップ(cereal chips)、スナック製品、アイスティー、フルーツジュースから作られたソフトアイス、ダイエットドリンク、フイニッシュドドリンク(finished drinks)、スポーツドリンク、スタミナドリンク、栄養補助食品用の粉末状ドリンク混合物、幼児および赤ちゃん食品、カルシウム補充オレンジジュース、パン、クロワッサン、朝食用シリアル、ヌードル、スプレツド(spread)、無糖ビスケットおよびチョコレート、カルシウムチュー(calcium chews)、食肉製品、マヨネーズ、サラダドレッシング、ナッツバター、低温凍結食品(deep-frozen meals)、ソース、スープおよび即席食品(ready-to-serve meals)から選ばれる。本発明のイヌリンを含む食品は、最も好ましくは酪農製品、特にヨーグルトである。本発明のイヌリンは、酪農製品、特にヨーグルトの安定性、テキスチャー(texture)、ボディー(body)および口腔感覚(mouth feel)に対する特に良好な効果を示し、攪拌発酵ヨーグルトまたはポット(pot)発酵ヨーグルトまたはヨーグルドドリンクが可能である。
本発明に従う他の有用な酪農製品は、クリーム、生クリーム、カードバター(curd butter)、乳、特に脱脂乳、バターミルク、サワーミルク、ケフィール、チーズ、例えばクリームチーズ、ソフトチーズ、スライスチーズ、ハードチーズ、ホエー、粉ミルク、乳ベースのドリンクである。
食料、特に酪農製品、特にヨーグルトにおけるイヌリンの好ましいレベルは、食品、酪農製品またはヨーグルのすべての成分の全重量を基準として、0.2〜5重量%、好ましくは0.5〜4.5重量%の乾燥イヌリンである。
本発明の1つの態様においては、食品は、例えば、朝食用シリアルなどの押出法により製造された食品である。
更なる局面においては、本発明は、前記したイヌリンを含む化粧品に関する。化粧品は、特に好ましくは、クリーム、特に皮膚および顔クリームの形態を採る。
更なる局面においては、本発明は、食品、機能的食品および化粧品における添加物として前記したイヌリンの使用にも関する。この使用は、特に上記したすべての特定の食品および化粧品にも関する。
なお更なる局面においては、本発明は、医薬組成物または医薬の製造のための本発明のイヌリンの使用に関する。
本発明のイヌリンは、ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物の大腸、特に大腸の遠位領域におけるバクテリアフローラの組成を改変または調節するのに役立つ食品、機能的食品、医薬組成物または医薬において有利に使用されうる。
ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物の大腸、特に大腸の遠位領域におけるイヌリンの発酵パターンを改変または調節するのに役立つ食品、機能的食品、医薬組成物または医薬において本発明のイヌリンを使用することが同様に可能である。
本発明のイヌリンの更なる好ましい使用は、食品における脂肪もしくは油代替物としておよび/またはダイエット繊維としての使用であり、その際用語「食品」は、少なくともすべての上記した食品、特にすべての上記した酪農製品を包含する。感覚特性、特に口腔感覚は、慣用のイヌリンと比較して優れていることは有利である。したがって、本発明のイヌリンは、食品における感覚特性の増強剤として、特に口腔感覚増強剤として使用することもできる。
本発明のイヌリンの更なる使用は、特に食品および化粧品における、テキスチャー化剤、安定性増強剤、粘度増加剤としての使用である。用語「食品」は、少なくともすべての上記した食品、特にすべての上記した酪農製品を包含する。
最後に、本発明のイヌリンは、下記の有利な効果:繊維質食品効果(roughage effect)、腸機能の調節、プレバイオティック効果および/またはビフィドゲニシティー(bifidogenicity)、ミネラル、例えば、カルシウム、マグネシウムおよび鉄の増加した吸収、骨ミネラル密度の増加、骨ミネラル含有率の増加、最大骨質量の増加、骨構造の向上、骨ミネラル密度の損失の減少、骨構造の損失の減少、脂質代謝の調節、免疫系の刺激、癌の予防および癌のリスクの減少、大腸癌の予防および大腸癌のリスクの減少および乳癌の予防、を有する食品、機能的食品、医薬組成物または医薬において使用されうる。
本発明を実施例により下記に説明する。これらの実施例は一般的な発明の概念を制限することを意図しない。
実施例
一般的方法
フルクタン決定
1.1 エキソイヌリナーゼによる加水分解によるフルクタン決定
イヌリン50.0±5.0mgを正確に重量測定して1mlの目盛り付きフラスコに入れることにより、測定されるべきイヌリン溶液を調製した。ddHO700μlを加えて溶解させた。次いでサンプルを振とうさせて、サンプル物質を容器の基部からできる限り分離させ、次いで殆ど沸騰している水浴(〜99℃)に8分間入れる。インキュベーションの間、メモリ付きフラスコを30秒毎に振とうさせる。インキュベーションの後、サンプルを室温に冷却させ、次いでddHOにより1mlマークまで補う。サンプル溶液は、5.0±0.5%のイヌリン濃度を有する。
消化の前の糖決定のために、200μlを取り出しそして−20℃で凍結させる。糖測定前に、このサンプルを室温で解凍し、加熱ブロックにおいて95℃で5分間1400rpmで振とうさせることにより混合し、溶解させ、4000rpmで2分間遠心する。加水分解のために、約5%強度のイヌリン溶液50μlを、50μlの1Mクエン酸ナトリウムpH4.6、25μlのエキソイヌリナーゼ(Magazyme International Ireland Ltd, Wicklow, Ireland, 商品番号 E-EXO1, 2.5U/μl)および375μlのddHOからなる消化混合物に入れる。消化を混合しそして4000rpmで1分間遠心する。次いで消化を加熱ブロックで40℃にて4時間インキュベーションする。すべての消化したサンプルを−20℃で凍結する。糖測定の前に、これらのサンプルを室温で解凍し、混合しそして4000rpmで2分間遠心する。フルクトース測定のために、ddHO90μlに消化10μlを加えることにより1:10希釈物を調製する。
消化において放出されたフルクトースおよびグルコースを決定するために、グルコースとフルクトースの光度測定を「糖決定(グルコース、フルクトース、スクロース」の下に記載されたとおりにすべてのサンプルにおいて行う。グルコースおよびフルクトースの外に、消化の前にサンプル中のスクロースも決定される。
希釈されていない5%強度イヌリン溶液を消化の前に糖測定のために使用する。この溶液10μlを測定バッファー200μlに加える。消化されたサンプル中のグルコース測定のために、希釈されていないサンプル10μlを測定バッファー200μlに加える。消化されたサンプル中のフルクトース測定のために、1:10に希釈されたサンプル10μlを測定バッファー200μlに加える。
計算は、糖決定におけると同じく、NADPのNADPHへの変換について6.231ミリモル−1*cm−1のモル吸光係数に基づいている。消化の前に存在するグルコースおよびフルクトースの濃度は、消化したサンプル中のグルコースおよびフルクトース濃度から差し引かれる。同様に消化前のサンプル中に存在する加水分解されたスクロースから放出されるグルコースおよびフルクトースは差し引かれる。
次いでイヌリンの消化期間中形成されたフルクトースおよびグルコースの濃度が得られる。フルクタン含有率は、グルコースおよびフルクトース含有率の加算により、そして測定された遊離ヘキ源のフルクタン中の結合したヘキ源への転換について係数162/180の包含により得られる。
2.糖決定(グルコース、フルクトースおよびスクロース)
グルコース、フルクトースおよびスクロース含有率は、NADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)のNADPH(還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)への転換による酵素アッセイにおける光度測定法により決定された。ニコチンアミド環の芳香族性は還元において失われ、かくして吸収スペクトルは変化する。吸収スペクトルのこの変化は、光度測定法により検出されうる。
グルコースおよびフルクトースは、酵素ヘキソキナーゼおよびアデノシン三リン酸によってグルコース6−リン酸およびフルクトース6−リン酸に転換される。次いでグルコース6−リン酸は酵素グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼにより6−ホスホグルコネートに酸化される。NADPは、この反応でNADPHに還元され、そして形成されたNADPHの量は光度測定法により測定される。形成されたNADPH対抽出物中に存在するグルコースの比は1:1であり、それによりグルコース含有率は、ランベルト.ベールの法則に従ってNADPHのモル吸光係数(6.231ミリモル−1cm−1)を使用してNADPH含有率から計算されうる。
グルコース6−リン酸の酸化が完了した後、溶液中に同様に生成されるフルクトース6−リン酸は、酵素ホスホグルコイソメラーゼによりグルコース6−リン酸に転換され、これは6−ホスホグルコネートに酸化される。フルクトースと形成されたNADPHの量の比も1:1である。フルクトース含有率は、グルコースについて前記したとおり、形成されたNADPHの量から計算される。
次いで、抽出物中に存在するスクロースを酵素スクラーゼ(Megazymeからの)によりグルコースとフルクトースに開裂される。放出されたグルコースおよびフルクトース分子は、次いでNADP依存性反応における上記した酵素により6−ホスホグルコネートに転換される。1分子のスクロースの6−ホスホグルコネートへの転換において2分子のNADPHが形成される。形成されたNADPHの量は、同様に光度測定法により測定され、そしてスクロース含有率は、NADPHのモル吸光計数を使用してそれから計算される。
「エキソイヌリナーゼによる加水分解によるフルクタン決定」の下に記載された5%強度イヌリン溶液を、糖測定のために使用する。この溶液10μlを測定バッファー200μlに加える。測定は、SPECTRAmax光度計(Molecular Devices)を使用してマイクロタイタープレートにおいて二重決定(duplicate determination)として行われる。使用されるすべての酵素溶液は、50mMイミダゾールHClpH6.9、2.5mM MgCl、1mM ATPおよび0.4mM NADPからなる測定バッファー中に構成される。NADPのNADPHへの転換は340nmの波長で追跡される。
グルコース決定は、ヘキソキナーゼ(酵母からの、0.3U/μl)およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(酵母からの、0.14U/μl)の混合物2μlを添加することにより行われる。グルコースの転換が完了した後、ホスホグルコースイソメラーゼ(酵母からの、0.14U/μl)2μlを加えてフルクトースを決定する。フルクトースが完全に転換されると、スクラーゼ(Megazimeからの、0.2U/μl)2μlを加えて存在するスクロースを開裂させる。グルコース、フルクトースおよびスクロースの計算を記載されたとおりに行う。
3.分子量分布の解析
3.1 光散乱および屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RI−MALLSシステム)
イヌリン/フルクタンを0.5%(重量/容積)の濃度で超純水に溶解する。溶液を95℃で30分間加熱する。下記の装置:Allianceクロマトグラフィーシステム(Waters corporation, Milford, Massachusetts, USA)、λ=658nmおよび14.4〜163.3°の角度の範囲に16個の検出器を有するDAWN−EOS光散乱検出器(Wyatt Technology, Santa Barbara,USA)、K5フローセル、を使用してポリマーを分析する。ポリマーを、プレカラムおよび分離範囲300〜10、5×10〜2×10および10〜10を有する3つのカラム(SUPREMA-Gel, PSS Polymer Standards Service GmbH, Mainz, Germany)で分別する。溶液100μlを注入する。30℃の温度および0.8ml/分の流速で溶離剤として0.05NaNOにより分別を行う。Astra V5.1.8.0プログラム(Wyatt Technology, Santa Barbara,USAからの)を使用してサンプルの分子量分布を分析する。
3.2 屈折率検出を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC−RIシステム)
熱振とう機において95℃で10分間穏かに振とうさせることにより、イヌリンを1%(重量/容積)の濃度で溶離剤(DMSO+90mM NaNO)に溶解する。短い冷却の後に、イヌリン溶液を溶離剤(イヌリン溶液100μl+溶離剤900μl)で0.1%に希釈し、そして直ちに60℃でオートサンプラーに入れる。下記の装置:Dionex P580ポンプ、Dionex AS50 オートサンプラー、Dionex オートサンプラー、Dionex モデル585カラムオーブン(Dionex GmbH, Idstein, Germany)、Shodex RI-71検出器(Shodex/Shoko Co. LTD, Tokyo, Japan)を使用してポリマーを分析する。システムは、Chromeleonソフトウエア(Dionex GmbH, Idstein, Germany)によりコントロールされる。ポリマーを、PSS GRAM、10μ、プレカラムおよびPSS GRAM3000、10μおよびPSS GRAM100、10μ分離カラム(PSS Polymer Standards Service GmbH, Mainz, Germany)で分別する。0.1%イヌリン溶液50μlを分析のために注入する。分別は、60℃の温度および0.7ml/分の流速で溶離剤DMSO+90mM NaNOによりカラムオーブンにおいて行う。分子質量を決定するために、システムを、下記のデキストラン標準(製品No.31430、Fluka Riedel-deHaen, Seelze, Germany):デキストランT1(Mw1270)、T5(Mw5220)、T12(Mw11600)、T25 Mw23800)、T50(Mw48600)、T80(Mw809000、T150(Mw147600)、T270(Mw273000)、T410(Mw409800)、T670(667800)、により較正する。PSS WinGPCcompact V.6.20プログラム(PSS, Mainz, Germany)を使用して、サンプルの分子量分布を解析する。
4.水含有率の決定
AQUA40.00Karl−Fischer滴定装置(analytikjena AGからの)を使用して水含有率を決定する。Hydranal-Coulomat AG(Riedel-deHaen, 商品番号 34836)を陽極液として使用する。使用された参照物質は、15.61〜15.71%の水分含有率を有する二塩基性酒石酸ナトリウム二水塩(Riedel-deHaen, 商品番号 32323)である。サンプル10〜20mgを、重量を量って5mlサンプルびん(N20-5DIN, Machery-Nagel, 商品番号 70204.36)に入れ、びんをひだ付きキャップ(N20 TS/oA, Machery-Nagel, 商品番号 702815) で閉じ、そしてKarl−Fischer滴定装置を使用してサンプルの水含有率を決定する。
5.分岐度の決定
イヌリンを最初に過メチル化しそしてメチル化の完全性をATR−IR分光法によりチェックする(装置及び条件については下記参照)。次いでサンプルを、酸性加水分解により(標準メチル化分析)または替わりに還元分解により、それらのモノマー構築ブロックに分解し、そして部分的にメチル化されたアルディトールアセテートおよび無水アルディトールアセテートのガスクロマトグラフィー(装置及び条件については下記参照)およびガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS、装置及び条件については下記参照)により相対的モル組成を決定した。
ATR−IR
装置: Bruker Tensor27
技術: Diamond ATR

GC:
装置: Carlo Erba HRGC5160 Mega Series
カラム: 保持ギャップ(1.5m)を有するChrompack CPSil8CB(25m)
ID:0.25mm FD=0.25μm
キャリアーガス: He(80kPa)
検出器: FID
インジェクター: カラム上
積分器: Merck Hitachi D-2500 Chromato-Integrator
温度プログラム: 60℃(1分等温)、170℃まで10℃/分、230℃まで3℃/分、
290℃まで20℃/分(20分等温)

GC−MS
GC:
装置: Agilent 6890 GC
カラム: HP-5, 30m
キャリアーガス: He
インジェクター: Split 5:1
温度プログラム: 60℃(1分等温)、170℃まで10℃/分、230℃まで3℃/分、
290℃まで20℃/分(20分等温)
MS:
装置: JEOL GCmate II 二重収束扇形フィールド分光計
モード: EI, 70eV
評価: AMDIS32, Wsearch32
5.1 過メチル化(permethylation)
Ciucanu and Kerek/Ciucanu,I. & kerek, F.(1984) A simple and rapid method for the permethylation of carbohydrates. Carbohydr. Res. 131, 209-217.に従って)
サンプル約50mgをジメチルスルホキシド2.5mlに溶解する。3当量/OHの微細に粉砕された水酸化ナトリウムおよび3当量/OHのヨウ化メチルを加えそして室温で24時間攪拌する。次いで試薬の各々の量の半分を再び加える。次いでサンプルを蒸留水に対して4日間透析し(透析膜、Spectra/Por MWCO 3500, Spectrum Laboratories,Rancho Dominguez, CA, USA)そして凍結乾燥する。メチル化の完全度をATR−IR分光法によりチェックする。範囲3300〜3400cm−1のOH伸縮振動は、過メチル化があるならば、消失したであろう。
5.2 標準メチル化分析
加水分解
過メチル化イヌリン約2mgを1ml容積のバイアル中で0.5Mトリフルオロ酢酸0.9mlと混合しそして、90℃で1時間攪拌することにより加水分解する。溶液を冷却した後、それを窒素流内で蒸発乾固させる。トリフルオロ酢酸残留物をトルエンとの共蒸留(codistilation)により除去する。
還元
加水分解されたサンプルを2M NH中の0.5M NaBD溶液500μlと混合しそして60℃で1時間加熱する。冷却後、数滴の氷酢酸を加えることにより、過剰の水素化ホウ素ナトリウムを分解する。得られるホウ酸塩を15%強度のメタノール性酢酸との共蒸留により除去する。
アセチル化
還元から得られる部分的にメチル化された糖アルコールを無水酢酸200μlおよびピリジン50μlと混合し、そして90℃で2時間アセチル化する。溶液を冷却し、次いで更なるガス形成が観察されなくなるまで、飽和重炭酸水素ナトリウムを加える。次いでそれを各回15mlのジクロロメタンで4回抽出する。一緒にした有機相を、各回15mlの飽和NaHCO溶液で2回、20mlの冷0.1M HClで1回そして25mlの蒸留水で1回洗浄する。次いで溶液を、塩化カルシウム上で乾燥しそして真空中で濃縮し、そしてGC測定のためにジクロロメタン中に取り込む。
5.3 還元分解
過メチル化サンプルをスクリューキャップガラスバイアル中のジクロロメタン500μlに溶解し、6当量/トリエチルシラン上のグリコシド結合およびTMSトリフラート4当量と混合し、そして室温で2時間攪拌する。無水酢酸20μlの添加後、室温で2時間攪拌を続ける。次いで飽和水性NaHCO溶液を加えることにより反応を停止させ、そして攪拌を1時間続ける。ジクロロメタンによる抽出および飽和水性NaHCO溶液および蒸留水による一緒にした有機相のその後の洗浄により仕上げ処理を行う。溶液を塩化カルシウム上で最後に乾燥し、窒素の流れの中で濃縮しそしてGC測定のためにジクロロメタン中に取り込む。
5.4 定性および定量分析
分解生成物を、オンカラム注入および炎イオン化検出器(FID)によるガスクロマトグラフィーにより定量的に分析する。ピーク面積を、それらの有効炭素応答に従って補正する。ピークは、その質量スペクトル(GC−MS)および既知の比較サンプルの保持時間に基づいて帰属された。
6.イヌリンの示差走査熱量測定法
15%強度(重量/容積)イヌリン溶液40mlを、50ml目盛付きポリプロピレンチューブ(30.0×115mm、Greinerから、注文番号 227261)中に調製した。これは、二回蒸留水にそれぞれの粉末を加えそして振とうさせることによりなされた。次いで、すべての調製された懸濁液を水浴(95℃)に入れそして数回振とうさせることにより溶解させる。20分後、すべての懸濁液が完全に溶解したことが視覚により証明される。次いで調製した溶液を2つの50mlの目盛付きポリプロピレンチューブ(Greinerからの30.0×115mm、注文番号 227261)に等分で分け、そして直ちに液体窒素中に低温凍結させる。次いで凍結した溶液を2日間凍結乾燥し(水含有率約10%)そして乳鉢において粉砕する。
サンプルの水含有率を、自動式Karl-Fischer 滴定装置(一般的方法4参照)を使用して決定する。
DSC測定のために、イヌリン乾燥物質約10mgを重量測定してステンレス鋼製ルツボ(容積50μl)に入れ、正確な重量を確かめ、そして蒸留水30μlを加える。次いでルツボを気密シールする。参照として空のステンレス鋼製ルツボを使用する。サンプルを10℃/分の加熱速度で、10℃から160℃までオートサンプラーを有するDSC装置(Perkin Elmer; Diamond)で加熱する。データ解析を、PYRIS7.0ソフトウエアプログラム(Perkin Elmer, 63110 Rodgau- Jeugesheim, Germany)により行う。これはT(開始)および自由エンタルピーdHの決定を伴っていた。
7.粘度の決定
種々の濃度(重量/蒸留水の容積)の水性イヌリン溶液を、98℃で振とうすることにより調製し、そして透明な溶液を13分を超えない溶解時間の後直ちに測定した。測定は、CP4°/40mmコーンプレート(cone-plate)システムで等温(90℃)粘度測定法方式を使用してBOHLIN Gemini Advanced Rheometer(Malvern Institutes; Herrenberg, Germany)で行われた。測定のすき間を、特別軽パラフィン油の層で覆った。10秒の緩和時間で60秒間の10s−1のせん断速度を前せん断(preshearing)のために使用した。せん断は、せん断速度モートにおいて対数ステップで測定された。初期せん断速度は20s−1であり、最終せん断速度は、10sの積分時間で20sの保持時間で増加する傾きにおいて30s−1であった。データは、20s−1〜30s−1の範囲の平均値に基づいておりそしてデータ点につき3つの独立した測定値の平均である。「外れ値」として特定されたすべての測定値は、平均値には含めない。「外れ値」の定義は、いわゆる「四分位数」により行った。これは、範囲基準
−k(Q−Q≦外れ値なし≦Q−k(Q−Q
の外側にあるすべての測定値として特定されている外れ値を伴っていた(SACHS,Lothar: Angewandte Statistik, 10th edition, Springer-Verlag Berlin(2002), pp.364 et seq)。QおよびQはここではそれぞれ25%四分位数および75%四分位数であり、そしてQは測定されたデータの中位数(50%四分位数)である。1.5の値が係数kのために使用された。
8.ゲル強度および粘弾性挙動の決定
水(蒸留された)中のイヌリンの17重量%懸濁液70gを、Haake Rotovisco VT 550粘度計のMV測定カップに入れた。次いでパドル攪拌器を挿入しそして予備加熱された(90℃、加熱ジャケット)装置に取り付けた。次いで128rpmで15分間攪拌しながら混合物を加熱した。
15分後、混合物を、基部と、アクリルシートの2つの円筒形リング(各々20mm高さ、30mm直径)を含む壁からなる容器に90℃で移した。該2つの円筒形リングは、それらの一方が他方の上に配置されそして接着テープ(19mm幅)により互いに固定されていた。混合物を、上部縁の約5mm下のレベルまで気泡なしで容器に導入した。次いで容器をアルミニウムホイルで気密にカバーしそして一夜室温(23℃)で放置した。
約20時間室温(23℃)で貯蔵した後、TA XT2テキスチャー解析機を使用してゲル強度を測定した。滑らかな乾燥していない表面でゲル強度の測定を可能とするために、容器の2つの円筒形リングを相互に保持している接着テープを最初に除去した。次いでゲルを上記リングの間で安全かみそりの刃で分割し、それによりゲルの下部が滑らかな表面を示した。
ゲルへと浸透している(1mm)レベルドーム(level dome)(直径24.5mm)によりTA TX2テキスチャー解析機でゲル強度を測定した。テキスチャー解析機における設定は下記のとおりであった:
測定原理: 圧力の方向における力
前進速度: 2mm/s
試験速度: 2mm/s
トリガー値(Trugger value): 0.01N
後退速度: 2mm/s
移動: 1mm
ニュートンで表したドームの1回の浸透による最大値を示す。
実施例1
チョウセンアザミの根からのイヌリンの特徴付け
チョウセンアザミ植物の栽培
Madrigal品種のチョウセンアザミ植物をスペイン、バレンシアの付近で成長させた。種を2005年4月に播き、そして植物を2005年8月/9月に収穫した。粘着性土壌を含まない地上部分から根を分離し、そして乾燥した。次いで、根を、スペインからドイツへ冷却なしで輸送した。次いで根を、イヌリンが抽出されるまで−20℃で貯蔵した。
2.チョウセンアザミの根からのイヌリン調製
約4〜5ヵ月齢のMadrigal品種のチョウセンアザミからの根を使用して、イヌリンを調製する。根60kgを、高圧クリーナー(Kaercher, Winnenden, type HD 700)により低温凍結段階で洗浄することにより根に付着する土壌成分をなくし、次いでそれらを更にシュレッダー(Gloria Universal garden shredder natura 2800L)でチップに加工する。チップを70〜90℃に余熱された水を含有するゲート攪拌器を有するジャケット加熱式抽出器に入れる。加えられた水の全量は、180kgである。抽出物のpHを、NaOHを加えることにより9.0に調節する。抽出器のジャケットによる80〜85℃にチップマッシュ(chip mash)を急速に加熱した後、チップからイヌリン(フルクタン)を抽出するために、マッシュを80〜85℃で約60分間攪拌する。この時間の後、粗抽出物をポンプで取り出すことによりチップから分離する。
総計0.7gのMg(OH)/100mlの抽出物を形成することにより2段階方法で粗抽出物を脱色する。第1段階で、MgSO 7HO3400g(0.5gのMg(OH)/100mlの抽出物と同等)を暗褐色抽出物170Lに10分間かけて攪拌しながら溶解させる。次いで96%強度Ca(OH)1015gを水3L中の懸濁液として加えそして10分間攪拌する。9.4のpHをセツトアツプする。全体の沈殿混合物をプレート分離器(GEA, Westfalia type SC 6-06-076)中で120分かけて定量的に清澄化する。脱色した抽出溶液は、淡黄色を有しそして濁度を引き起こす物質を含まない。スラッジ画分が除去されるにつれて、粘稠なペーストの形態にある固相が得られる。このようにして得られそしてMgSO 7HO(0.2g Mg(OH)/100mlの抽出物と同等)および水1.5L中の懸濁液としての96%強度Ca(OH)410gと共に150Lを構成する抽出溶液に対して全体の脱色工程を反復した。全体の沈澱混合物を30分間かけてプレート分離器において定量的に清澄化する。9.4のpHを有する脱色された抽出溶液は、透明であり、淡黄色を有しそして濁度を引き起こす物質を含まない。粘稠なペーストの形態にある7lの遠心分離物が、スラッジ画分として再び得られる。
このようにして増白された抽出物から、48時間にわたり4℃の温度で冷却することにより固体イヌリンが得られる。イヌリンは、プレート分離器を使用して遠心沈着によりスラッジ様沈降物として得られる。
沈降物を、熱水にイヌリンを溶解させることにより増白された抽出物中に存在すると同じ濃度で引き続いて2回更に精製しそして2℃で48時間貯蔵により沈殿を繰り返す。第2の沈澱後に得られたイヌリン沈降物を凍結乾燥させる。
図1は抽出の進行の略図を示す。
抽出プロセス期間中、個々の抽出および精製工程の後、屈折率検出およびデキストラン標準による較正を伴うゲル浸透クロマトグラフィー(GPC-RI system, Method 3.2 in "General Methods")によりポリマー分布を解析した。図2から明らかなとおり、熱水抽出後の抽出物(B)のポリマー分布は、洗浄された根(A)におけるポリマー分布に匹敵する。図2は、洗浄されたチョウセンアザミ根(A)およびイヌリンの熱水抽出後の抽出物(B)におけるポリマー分布のGPC−RI解析を示す。
イヌリンの低温(4℃)沈澱後のポリマー分布の解析は、高分子量イヌリン画分(C)は低分子量画分(D)から分離されたことを示す(図3)。図3は、イヌリンの熱水抽出後の抽出物における(B)、4℃でのイヌリン沈澱後の沈降物における(C)、および沈殿後のイヌリンの遠心後に得られた上部ラン(upper run)における(D)、ポリマー分布のGPC−RI解析を示す。
高分子量イヌリンの更なる濃縮および低分子量物質、特に単糖および二糖の減少は、高分子量イヌリン画分の再沈殿により達成される(図4)。図4:4℃で沈殿させたイヌリンにおけるポリマー分布(C)、再沈澱後の沈降物におけるポリマー分布(F)および再沈澱後の透明な相におけるポリマー分布(E)のGPC−RI解析。
3.調製されたイヌリンの純度の決定
2節で得られた調製されたチョウセンアザミイヌリンの純度は、凍結乾燥された物質のフルクタンおよび水含有率を決定することにより決定された。チョウセンアザミイヌリンについて決定された水含有率は1.7%(方法「水含有率の決定」参照)であった。
フルクタン含有率は、イヌリンを酵素エキソイヌリナーゼで加水分解することにより決定された(方法「エキソイヌリナーゼによる加水分解によるフルクタン決定」参照)。乾燥物質(DM)に基づく純度は、フルクタン含有率および水含有率から見出された。純度=フルクタン含有率×100/(100−水含有率)。
表1から明らかなとおり、調製されたチョウセンアザミイヌリンの平均純度は乾燥物質(DM)の97%である。
Figure 0005415939
4.GPC−RI−MALLSによる分子量決定
2節で得られた精製されたチョウセンアザミイヌリンおよびRaftiline HPの購入された参照サンプル(Oraftiからの、バッチ:HPBNH4DNH4)およびダリア塊茎からのイヌリン(Sigmaからの、商品番号I−3754、バッチ:75H7065)から0.5%(重量/容積)水性溶液を調製しそしてイヌリンの分子質量分布をゲル浸透クロマトグラフィー(方法3.1)により決定した。この分布は、図5に示されそして分子質量(無水フルクトース=162g/モル)およびそれから計算された平均鎖長を表2に要約した。
GPC−RI−MALLS sytemを使用した分子量分布の分析は、チョウセンアザミイヌリンについて、12088g/モルの重量平均分子質量Mwおよび11500g/モルの数平均分子質量Mnをもたらした。これは、DPwについて75の平均鎖長およびDPnについて71の平均鎖長に相当する。精製されたチョウセンアザミイヌリンの鎖長は、Raftiline HPのこれら(DPw=33、DPn=29)およびダリアイヌリンのこれら(DPw=39、DPn=33)より平均して明らかに長い。これは、チョウセンアザミイヌリンについての明らかにより大きい最小および最大分子質量にも反映される。
Figure 0005415939
5.グルコース、フルクトースおよびスクロース決定の結果
2節で得られたチョウセンアザミイヌリンにおけるグルコース、フルクトースおよびスクロースの割合は、方法3(「糖決定」)に記載のとおり5%強度イヌリン溶液における糖の光度測定による決定により決定された。
表3から明らかなとおり、生成されたチョウセンアザミイヌリンにおけるグルコースおよびスクロース含有率は、イヌリン粉末の0.1%未満であり、フルクトース含有率はイヌリン粉末の0.12%である。
Figure 0005415939
6.分岐度
6.1 標準メチル化解析
75のDPwおよび71のDPnおよび1256〜31631g/モルの広がりを有する本発明のイヌリンサンプルにおいて分岐度を測定した。使用した比較例は、Raftiline HP(Oraftiからの、バッチHPBNO3DNO3およびHPBNH4DNH4)およびダリア塊茎からのイヌリン(Sigmaからの、商品番号I−3754、バッチ:022K7045または75H7065)およびキクイモの根(Sigma、商品番号I−2880バッチ111H7045および88F7220)であり、分岐度はメチル化分析によって決定された(一般的方法、5.1参照)。
2−1−結合フルクタンの加水分解、還元およびアセチル化は、1,2,5−トリ−O−アセチル−3,4,6−トリ−O−メチル−D−マンニトールおよび−ソルビトールをもたらす。末端フルクトシル基は、2,5−ジ−O−アセチル−1,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−マンニトールおよび−ソルビトールをもたらす。末端グルコピラノシル単位は、1,5−ジ−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチル−D−ソルビトールをもたらす。位置6で追加的に分岐した構築ブロックは、対応する1,2,5,6−テトラ−O−アセチル−3,4−ジ−O−メチルアルジトールを与える。
2−1結合を示す生成物の外に、すべてのフルクタンサンプルにおいて末端フルクトースおよびグルコース構築ブロックからの生成物を検出することが可能であった。クロマトグラムは更に2−1結合したフルクトースからの窒素流中でのTFAの除去により形成されるジフルクトースジ無水物(DFDA、約3モル%)を示した。
質量スペクトルから、すべてのサンプルにおいて2−1,6結合から得られる生成物を同定することが更に可能であった。1,3−および1,4−アセチル化化合物も同定され、これらはそれぞれ位置3および4において分岐を生じるであろうが、不完全なメチル化からも誘導されうる。1,3−および1,4−アセチル化生成物の非特異的発生は、サブメチル化のインディケーターである。6位置が位置3および4と同じ程度にサブメチル化により影響を受けると仮定すれば、非特異的割合(1,3−Acおよび1,4−Ac化合物の平均)は、2−1,6−分岐したフルクトース単位の割合から差し引かれる。表4はそれから得られる結果を示す。
Figure 0005415939
メチル化解析の評価は、チョウセンアザミイヌリンについて1.1モル%の分岐度を示した。したがって、このイヌリンの分岐度は、チコリ(RaftilineHP)、ダリアおよびキクイモからの参照サンプルのイヌリンにおける分岐度より明らかに高い。
実施例2
チョウセンアザミ根からのイヌリンの性質
すべての下記の研究は、実施例1に前記しそして表1〜4に詳細に前記した本発明のチョウセンアザミイヌリンに関する。比較用Ratiline HPおよびダリアイヌリンは、同様に実施例1に詳説したこれらである。
イヌリンの示差走査熱量
イヌリンの示差走査熱量測定法の研究(技法については方法参照)は、融解挙動に関して種々の物質(下表5参照)間で明らかな差を示した。両イヌリンサンプルは、融解のエンタルピーに関して大きく異なっていた。これは、チョウセンアザミイヌリンでは29J/gより高くそしてRaftiline HPでは22.8J/gにすぎなかった。T開始(To)の差は幾分より小さかったが、チョウセンアザミイヌリンの初期融解温度は40.4℃であり、これは比較用のチコリイヌリンの場合より2.5℃高かった。チョウセンアザミイヌリンのこの増加した熱安定性は、食品製品分野でのある熱プロセスにおいて相当な利点でありうる。何故ならば、チョウセンアザミイヌリンは、チコリイヌリンよりも高温に対して明らかに低い感受性を持つからである。
Figure 0005415939
2.粘度
Figure 0005415939
上記表から明らかなとおり、両イヌリンは、24%(重量/容積)までの濃度で90℃で非常に低い粘度を示した(水=1mPas)。本発明のイヌリンは26%(重量/容積)および特に28%の濃度で粘性となったが、これに対してRaftiline HPは、その粘度において28%(重量/容積)まで水に非常に類似している。
3.凍結乾燥後の粒度
実施例1からの凍結乾燥されたサンプルをナイフミル (Grindomix GM200, Retsch Technologie GmbH, Haan, Germany) で粉砕し、そして粒度を篩分析(Fritschからの振動篩機「Analysette 3」、周波数2.0、篩助剤:8瑪瑙ボール(10mm Φ/篩、篩時間1〜2分、ローディング量約50g)により決定した。結果を下表7に示す。篩分析により平均粒径を126μmとして決定することが可能であった。
Figure 0005415939
4.噴霧乾燥、粒度
DPw=81を有するイヌリンを実施例1に記載の通りに調製した。中間凍結乾燥後に、それを再溶解し、次いでGlatt GPCG3.1流動床噴霧乾燥ユニットで噴霧乾燥した。この目的で、凍結乾燥したイヌリンを水に導入し、85〜90℃に加熱しそして溶解した。加熱した溶液を、変化する出口空気温度で噴霧乾燥し、そしてプロセス特性および生成物特性を観察した。入り口温度を120℃で一定に保った。フィードは80%水および20%イヌリンからなり、フィード温度は85〜90℃でありそして出口空気温度は80℃であった。
粒度分布を上記した篩分析により決定した。噴霧乾燥したサンプル篩分析の結果は、下表8に示す。噴霧乾燥した生成物の平均粒度を、篩分析の粒度分布から<60μmであることを決定した。
Figure 0005415939
5.結晶化度
粉末形態のイヌリンサンプルを、2つのPETカバーフイルム間で2mm厚さのサンプルキャリアー(標準)において更なる前処理なしに調製した。X線測定を単色(Ge(111)モノクロメーター)Cu−Kα放射を使用して対称透過においてBruker−AXSからのD5000二円回折計(D5000 two-circle diffractometer)により行った。記録は、3〜29°(ステップ幅=Δ2θ=0.1°)および29.5〜104(ステップ幅Δ2θ=0.5)の2θ角度範囲、ステップ/Δ2θ:60秒、において30mAおよび40kVで行われた。
Ruland-Vonk法(WAXS7,http://edocs.tuberlin.de/diss/2003/rihm_rainer.pdf,pp. 19et seq.に記載されたFraunhofer Instituts fur angewandte Polymerforscung, Potsdam(DE)により開発された)に基づくソフトウエアを使用して、結晶化度x、微結晶サイズD(hkl)および微結晶の格子の乱れの目安である無秩序パラメーター(disorder parameter)kを散乱プロットから見出した。サンプル2の散乱プロット(下記参照)を、無定形バックグラウンドファイルとして使用した。フルクトースを化学的基準(chemical basis)として使用し、1.65g/cm3の密度で計算した。微結晶サイズD(hkl)を、2θ=8°および12°での最初の2つの主干渉におけるScherrerの式によるX線反射の半値幅から決定した。
77〜82のDPWを有する凍結乾燥されたイヌリンおよびDPw81を有するドラム乾燥されたイヌリンのサンプルを測定した。得られた結果を下表9に示す。
Figure 0005415939
6.水中で加熱した後のイヌリンの構造形成
水中のイヌリンの20%強度懸濁液15ml部分は、各々攪拌されそして磁性攪拌バーを備えたアルミニウムビーカー(Winopa Forschungsbedarf GmbHからのRVA-3dビーカー;容積約70ml、直径38mm)において構成され、そして最後にカバーされた。多重熱攪拌器(H+P Labortechnik AGからのVARIOMAG Multitherm 15)を使用して攪拌しながら懸濁液を加熱した。温度は、この場合に、加熱ブロック上の蒸留水を有するカバーされた参照ビーカー中に立てたPT100プローブ(VARIOMAG Multitherm15のための付属品)を使用することによりコントロールされた。多重熱攪拌器を予熱し、それにより参照サンプルの温度を90℃で安定にした。加熱されるべき懸濁液を多重熱攪拌器上に置きそして90℃で8分間攪拌した。次いでサンプルを多重熱攪拌器から取り出し、室温で24時間貯蔵した。次いで得られるゲルの強度をTA−TX2テキスチャー解析機(Stable Micro Systems)を使用して測定した。この測定は、測定システムとして12mmの直径を有するSMSP/0.5 R076浸透プランジャー(Stable Micro Systems)を使用して行った。下記のパラメーターを5kg測定セルによるTA測定のために適用した:
● オプション:圧力の方向における力を測定する
● 単一試験
● パラメーター:前進速度2.00mm/s
● 試験速度0.50mm/s
● 後退速度0.50mm/s
● 移動(浸透の深さ)3mm
トリガー力2g
水中の熱処理後の種々のイヌリンの構造形成挙動を調べた。チコリからのイヌリン(Raftiline HP(登録商標)およびBeneo HPX(登録商標)はこれらの条件下にゲル様構造を形成しないことがこれから明らかになった(表10)。これと対照的に、DPw=77〜81またはDPw=75を有するチョウセンアザミからのイヌリンは、非常に強い構造を形成する。驚くべきことに、DPw=81を有する噴霧乾燥されたイヌリンが使用されたサンプルも、フルクタンを凍結乾燥した比較用サンプル(DPw=77〜81またはDPw=75)よりも相当強いゲルを形成した。これは、15%(重量/重量)にすぎない使用したイヌリンの濃度で見出されたゲル強度が20%の凍結乾燥した比較用サンプルによるゲル強度と同様なレベルであるということから特に明らかである。
Figure 0005415939
7.プレバイオティックな性質
本発明に従うイヌリンのプレバイオティック効果を、3段階発酵システム(腸モデル)におけるin vivoモデルの研究で調べた。発酵システムにコロニー形成するバクテリアのタイプおよびそれらの代謝活性(短鎖脂肪酸の形成)を確かめた。
1.材料および方法
a)連続3段階培養システム:
Pereira et al. (2003) Appl Environ Microbiol 69(8), 4743-4752 及び Probert et al. (2004) Appl Environ Microbiol 70, 4505-4511により以前に記載された連続3段階培養システムをこの研究で使用した。腸モデルは、直列に配列された0.28、0.30および0.30リットルの作動容積を有する3つの培養容器V1、V2およびV3からなっていた。各容器は、磁性攪拌器を備えており、温度は水浴によって37℃に保たれ、そして個々の容器のpHはElectrolab pHコントローラーによりコントロールされた。全体のシステム(培地貯蔵器を含む)を、液体に無菌の酸素不含有窒素を通すことにより嫌気性条件下に操作した。3つの容器のpHを、適当な量の0.5M HCl−NaOHを加えることにより5.5(V1)、6.2(V2)および6.8(V3)に調節した。容器1は、前方大腸の微生物条件をまねた。それは相対的に栄養素に富んでおり、より中性のpHおよび比較的少ない基質を有する容器3よりは相対的により酸性のpHを有しそしてより短い滞留時間を有していた。容器3は大腸の後方部をまねた。容器2は大腸の中心の横断部(横行結腸)をモデルとした。
酸素を含まない窒素を無菌の培養培地に連続的に吹き込み、そしてそれを、順次にV2およびV3に通じているV1に蠕動ポンプにより導入した。培養培地は、蒸留水中の下記の成分(g/L):ジャガイモデンプン、5.0;ペクチン(ミカン属)、2.0;カゼイン(ナトリウム塩)、3.0;Raftiline LS(Orafti, Tienen; BE)、1.0;キシラン(エンバク外皮)、2.0;アラビノガラクタン(Fulka)、2.0;グアーゴム、1.0;ムチン(ブタ胃タイプIII)、4.0;トリプトン(Oxoid)、5.0;ペプトン水(Oxoid)、5.0;酵母エキス(Oxoid)、4.5;胆汁酸塩No.3(Oxoid)、0.4;L−システインHCl、0.8;NaHCO(Fisher Scientific)、1.5;ヘミン、0.05;NaCl(Fisher Scientific)4.5;KCL(Fischer Scientific)、4.5;CaC1x6HO(BDH)、0.15;KHPO(BDH)、0.5;FeSOx7HO(BDH)、0.005;MgSOx7HO(Fischer Scientific)、1.25、からなっていた。更に、Tween80(BDH)1.0mlおよびビタミンK10μlを加えた。レサズリン(resazurin)の0.025%濃度(重量/容積)の溶液4mlを、嫌気性状態のインディケーターとして成長培地に加えた。培地を121℃で15分間オートクレーブ処理しそして窒素雰囲気下に冷却した。特記しない限り、すべての化学品はSigma Chemical Co., UKから購入した。
糞便物質の採集および調製
各容器の残りの容積を、試験の前の3か月間何らの抗生物質も摂取していない30歳の年齢の男性からの新たに調製された糞便懸濁液で埋め合わせた。20%(重量/重量)の新たな糞便懸濁液を予め還元されたリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で調製しそして消化装置(胃)において2分間正常な速度で消化させた。大きな食品残留物をフィルターサツクを通して除去した。次いで得られる懸濁液100mlを使用して3つの発酵容器の各々に接種した。システムを最初に48時間にわたり培養培地を使用してバッチ培養物として操作した。48時間のバッチ培養発酵の後、腸液の組成をまねた複合成長培地を蠕動ポンプによりV1に、次いでV2およびV3に導入した。滞留時間(R)は、各容器について希釈率の逆数(reciprocal dilution rate)として計算された。滞留時間は、27.1時間に設定され、そしてシステムを最初の48時間の平衡期間後12日間操作して定常状態を確実にした。全体の滞留時間は、各発酵器の個々の滞留時間Rの総計であった。
サンプリング
第1サンプル(5ml)(0日)を24時間発酵の後採取した。定常状態に達する(10〜12日後)まで発酵を続けた(SS1)。この段階で、培養液体のサンプルをバクテリアおよび短鎖のその後の解析のために各容器から取り出し、そしてSS1のインディケーターとして使用した。SS1が達成された後、試験基質を、更なる10〜12日の期間各日に容器1に入れた。更なる定常状態(SS2)に達するまで発酵を続けそして再びその後の解析のために各容器の培養液体からサンプルを採取した。
FISH解析による糞便サンプルおよび腸モデルからのサンプル中のバクテリアの計数:発酵システムの個々の容器からのサンプルを下記のとおり処理した。サンプル調製:サンプル(375μl)をバッチ培養物から取り出し、ろ過された4%(重量/容積)パラホルムアルデヒド溶液(pH7.2)1125μlに加え、混合しそして4℃で一夜貯蔵して細胞を固定した。固定された細胞を13000rpmで5分間遠心しそしてろ過されたリン酸緩衝化生理食塩水中で2回洗浄しそしてPBS150μl中に再懸濁させた。エタノール(150μl)を加えそしてサンプルを混合し、そして使用されるまで−20℃で貯蔵したが、3か月より長くは貯蔵しなかった。
ハイブリダイゼーション:
固定された細胞(16μl)を、予熱され(オーブン)ろ過されたハイブリダイゼーションバッファー(Xにおいて予熱された(30mM Tris-HCl、1.36M NaCl、pH7.2、0.1%容積/容積 ドデシル硫酸ナトリウム、SDS))264μlに加え、そして混合した。混合物を9:1(容積/容積)の比で適当なCy3−標識されたプローブ(50ng/μl)に加え、混合しそして適当な温度で一夜ハイブリダイゼーションオーブンに入れた。
洗浄およびろ過
ハイブリダイゼーションされたサンプル(視野当たり30〜150個の細胞を達成するのに適当なアリクォート)を予熱され、ろ過されたハイブリダイゼーションバッファー(20mM Tris-HCl、0.9M NaCl、pH7.2)5mlに、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、500ng/μl)20μlと共に加え、そして適当なハイブリダイゼーション温度で30分間放置した。混合物を0.2μmのポアーサイズを有する黒色メンブランフィルター上に置いた(GTBP 01300、Millipore Corp.)。Slowfade-Ligt Antifade(Molecular probes Europe, leiden,NL)をフィルター上に置いて、蛍光の褪色を阻止しそして支持体を最大3日間4℃で暗所に貯蔵した。
支持体につき最小15の視野をNikon Microphot EPI 蛍光顕微鏡(1000倍倍率)で検査した。DM510フィルター(550nm)を使用してハイブリダイゼーションされた細胞を計数し、そしてDM400抽出フィルターをDAPI染色された細胞について使用した。
下記式を使用して各サンプル中の細胞の濃度C(細胞/ml)を計算した:
C=N×15.56×14873.74×(1000/g)
N:視野につき計数された細胞の平均数
q:使用したハイブリダイゼーション混合物の容積
14873.74:倍率定数
15.56:なされたすべての希釈に対する係数
以前にデザインされそして正当性を立証された蛍光染料Cy3で標識された属特異的16S rRNAを標的にしたオリゴヌクレオチドプローブを使用して重要なグループのバクテリアを計数した。使用したプローブは、ビフィズス菌に対して特異的なBif164(Langedijk (1995), Appl Environ Microbiol 61, 3069-3075)、バクテロイドに対して特異的なBac303(Manz et al. (1996) Microbiology 142, 1097-1106)、Clostridium histolyticum サブグループに対して特異的なHIS150、およびClostridium coccoides-Eubacterium rectaleグループに対して特異的なErec482(Franks et al. (1998) Appl Environ Microbiol 64, 3336-3345)、Lactobacillus/Enterococcusに対して特異的なLab158(Harmsen et al.(1999) Microb Ecol Health Dis 11, 3-12)、Atopobium clusterに対して特異的なAto291であった。核酸染料4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)を全細胞計数のために使用した(表11)。
Figure 0005415939
短鎖脂肪酸の分析
腸モデルの種々の容器から採取されたサンプル中の短鎖脂肪酸(SCFA)を、Pereira et al. (2003) Appl Environ Microbiol (2003) 69(8), 4743-4752に記載のとおりに分析した。サンプルを遠心して(60000g、10分)バクテリアおよび固形分を除去し、次いで0.2μmのポアーサイズを有するポリスルホンHPLCフィルターを通してろ過した。次いで各ろ過した上清200μlを内部標準として3.7mM 2−エチル酪酸を含有したアセトニトリル800μlで希釈した(1:4)。融解シリカを充填した毛細管カラム(Permabond FFAP, Macherey Nagel, DE)(25m×0.32mm、フイルム厚さ0.25μm)を備えたHP5890シリーズIIGCシステムを使用するガスクロマトグラフィーにより脂肪酸を決定した。ヘリウムを、2.42ml/分の容積流でキャリアーガスとして使用した。カラム温度は140℃でありそしてインジェクターおよび検出器温度は240℃であった。サンプルの注入の5分後、カラム温度を20°/分のステップで240℃に増加させそしてシステムを更に5分間運転した。HP3365 series II ChemStation Apg-top Software, Version A0.03.34を使用してガス組成を分析した。下記の酸を、各々0.5〜40mMの範囲の濃度で外部標準として使用した:酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−バレリアン酸、イソバレリアン酸(Fluka)、イソ酪酸およびn−カプロン酸。特記しない限り、すべての酸は、Sigmaから購入しそして99%より高い純度であった。SCFA濃度を、内部標準較正を使用して計算しそしてmM/リットルで表した。
結果
下記のイヌリンを上記腸モデルにおいて使用した:
本発明のイヌリン:DPw=77〜81
比較サンプル:Raftiline HP(登録商標)(Orafti)、DPw=33
第2定常状態(SS2)と第1定常状態(SS1)との比較を行いそしてデータをスチューデントのt検定により解析した。
図5は、本発明のイヌリンによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。図6および図7は、容器2(V)および3(V3)について対応する比較を示す。
図8は、比較サンプルによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。図9および図10は、容器2(V)および3(V3)について対応する比較を示す。
腸モデルへの本発明のイヌリンの添加後、ビフィドゲン応答(bifidogenic response)を観察した。増加のレベルは、ビフィズス菌ではすべてのこれらの容器において有意でありそして容器2において乳酸菌(Lactobacillae)では有意であった(P<0.05)。クロストリジウム(Clostridia)レベルは変わらなかった。比較サンプルでは、容器1でビフィズス菌の増加であることか観察されたが、これは有意ではなかった。容器3における乳酸菌の集団は、有意により高かったが(P<0.05)、クロストリジウムの集団では変化は観察されなかった。BacteroidesおよびClostridium coccoides-E. rectaleグループは、容器2において有意により低かった(P<0.05)。
図11は、本発明のイヌリンによる処理後の、定常状態1(ベースライン)(SS1)と定常状態2(SS2)との、すべての容器中の短鎖脂肪酸(SCFA)の濃度の比較を示す。個々の脂肪酸は、各容器および定常状態(例えば、V1−SS1)について胆汁ダイアグラム(bile diagram)として各場合にプロットされる。左から右へ:酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソバレリアン酸、n−バレリアン酸、カプロン酸。
図12は、比較サンプルによる処理後の、定常状態1(ベースライン)(SS1)と定常状態(SS2)間の、すべての容器中の短鎖脂肪酸(SCFA)の濃度の比較を示す。
腸モデルにおける本発明のイヌリンの添加は、容器3(v3)においてブチレートおよびプロピオネート濃度の有意な増加をもたらした(P<0.05)。ブチレート濃度は、他の容器においては有意に増加しなかった。腸モデルにおける比較サンプルの添加は、すべての容器においてアセテート、プロピオネートおよびブチレートの濃度の増加をもたらしたが、これは容器2(v2)でのみ有意であった。
in vivo試験は、本発明のイヌリンが強い潜在力のあるプレバイオテッイクであることを示す。何故ならば、ビフィズス菌の数および乳酸菌の数は3つのすべての容器で増加したからである。これは、すべての容器におけるブチレート濃度の増加および容器3におけるブチレートおよびプロピオネートの有意な増加を伴った。容器3におけるブチレートおよびプロピオネートの増加は、本発明のイヌリンが大腸の後方部においてプレバイオティック効果を示すことを強く示す。これは、腸癌の大多数が大腸の遠位部位/直腸において生じる故に有利である。
8.ヨーグルトの製造
方法
ヨーグルトを700gバッチで調製した。乳を、全組成物を基準として11.0〜14.0重量%の範囲の無脂乳固形分(MSNF)の種々の異なる含有率に標準化した。イヌリンの量(本発明のイヌリンおよびOrftiからの比較用イヌリンBeneo HP(登録商標))を0.0〜4.5重量%に調節した。ヨーグルト処方を表12に列挙する。本発明のイヌリン(以後VLCIと略記される非常に長い鎖のイヌリン)は、実施例1/表2からのイヌリンに相当しそして75の平均重合度DPwを有しており、比較用サンプルBeneo HP(登録商標)は34のDPwを有していた。すべての百分率は、特記しない限り、全組成物を基準とした重量%に関する。
乾燥成分を一緒に混合して、イヌリンおよび無脂粉乳の分散を促進し次いで適度のせん断をかけながら乳に加えてヨーグルトベースを形成した。標準化されたベースを4℃で3時間維持し、それにより無脂粉乳を完全に溶解することができた。各バッチを80℃で30分間殺菌し、44℃に急冷し、そしてYo−Flex88(Chr. Hansen Inc.からのStreptococcus thermophilusおよびLactobacillus delbrueckii)を3.6g/lの濃度で接種した。ポットで発酵させたヨーグルト(カスタード型ヨーグルト)では、接種されたベースをインキュベーションの前に最終パックに注いだ。攪拌したヨーグルトを大きなタンク中でインキュベーションした。ベース混合物を、それらがpH4.5に達するまで(最初のpH約6.8)44℃で4〜6時間インキュベーションした。ヨーグルトがpH4.5に達すると、カスタード型ヨーグルトサンプルを4℃に冷却しそしてその温度で48時間維持して、最大粘度に達した。攪拌したサンプルを35℃に冷却し、低せん断で混合し、プラスチックポットにパッケージングし、4℃に冷却しそしてその温度に48時間維持して、最大粘度に達した。粘度を、ヘリオパスアダプター(heliopath adapter)を有するブルックフィールド粘度計で測定した。
Figure 0005415939
結果
図13は、ヨーグルト粘度に対するイヌリンおよび乳固形分の効果を示す。本発明のイヌリン(VLCI)は、無脂ヨーグルトにおける有意な粘度を発生し、4.5%VLCIで到達した粘度レベルは、イヌリンなしの1.5%脂肪を有するヨーグルトの粘度レベルの2倍も高い。図13の右手の曲線は、約13.5%乳固形分を有するヨーグルト中のVLCI含有率が1.5%から4.5%に上昇するとき、粘度の劇的な変化を示す。それとの比較して、Beneo HP(登録商標)の含有率の変化は、乳固形分の含有率が1%変化したときですら、粘度に対するわずかな影響しか与えなかった。図13の曲線の上部左は、3.5%VLCIを含有するヨーグルトにおける乳固形分の増加の効果を示す。一般に、VLCIの1%の増加は、無脂ヨーグルトの粘度を約30%増加させたが、これに対してBeneo HP(登録商標)は、粘度に対してはるかに少ない効果を示した。乳固形分の含有率に依存して、1.5%脂肪を有する比較用ヨーグルトの粘度レベルを発生するのに必要なVLCIの量は1.5〜3.5%であった。1.5%脂肪を有する比較用ヨーグルトの粘度レベルを達成するのに、少なくとも3.5%のBeneo HP(登録商標)が必要であった。
更なる試験において、2.5%VLCIおよび4.5%Beneo HP(登録商標)を無脂ヨーグルトにおいて混合した。1.5%脂肪を有する減少した脂肪のヨーグルトを比較として使用した。VLCIを有するサンプルは、下表に示されたとおり、Beneo HP(登録商標)および1.5%脂肪を有する2つの比較用サンプルより高い粘度を有していた。
Figure 0005415939
VLCIはBeneo HP(登録商標)よりも無脂ヨーグルトのテキスチャーを変化させるのに明白により有効である。何故ならば、より低い含有率でより高い粘度が達成されたからである。これは、良好なバルキング効果(bulking effect)を達成するのに必要なイヌリン含有率を維持しながら、ヨーグルトにおいてより経済的にイヌリンを使用する可能性を開く。上記実験において、ポーション(portion)につき3gのイヌリンの最小量がバルキング効果のために必要量として維持された。
表14は、ポット発酵ヨーグルト(カスタード型)に関する更なる試験を示す。製造は、前記したとおりに行った。本発明の噴霧乾燥イヌリンは、凍結乾燥したイヌリンおよびドラム乾燥したイヌリンと比較して、特に強い粘度増加効果を有することは明らかである。本発明の2.5%噴霧乾燥イヌリンまたはドラム乾燥イヌリンは、比較サンプルからの4.5%イヌリンよりも大きな粘度の増加を依然として引き起こす。
表15は、攪拌しなかったポット発酵ヨーグルト(カスタード)および攪拌したヨーグルトに関する試験を示す。サンプルA〜Dは正常に発酵された。各サンプルの1つのポーションを、ヨーグルトがまだ温かい間に(37〜40℃)穏やかなせん断により混合した。攪拌した調製物および攪拌しなかった調製物(カスタード)を48時間後に各サンプルの粘度を分析した。サンプルE〜Iを再び正常に発酵させたが、攪拌した画分E〜Gは上記のとおり温かい状態で混合し、そしてスクロースを混合プロセス期間中に加えた。サンプルHおよびIを温度が10℃に下がった後混合して、イヌリン粘度およびヨーグルト粘度に対する温度効果を調べた。
本発明の噴霧乾燥したイヌリンの添加(試験C)は、攪拌した調製物およびカスタード調製物の粘度を増加させ、全脂肪ヨーグルトの粘度(試験D)が達成された。第2シリーズ(試験E〜I)において、粘度は、Beneo HP(登録商標)の添加により、本発明のイヌリンの添加後とほぼ同じであったが、試験Fからの生成物は粒状でありそして平滑さは低かった。更なる観察は、すべての実験において、本発明のイヌリンを添加した実施例を除いて、発酵容器の底部に変性されたホエータンパク質の5mmの層が形成されたことであった。これは、本発明のイヌリンがヨーグルト安定性に対して有利な効果を有することを示している。
Figure 0005415939
Figure 0005415939
抽出の進行の略図を示す。 洗浄されたチョウセンアザミ根(A)およびイヌリンの熱水抽出後の抽出物(B)におけるポリマー分布のGPC−RI解析を示す。 イヌリンの熱水抽出後の抽出物における(B)、4℃でのイヌリン沈澱後の沈降物における(C)、および沈殿後のイヌリンの遠心後に得られた上部ラン(upper run)における(D)、ポリマー分布のGPC−RI解析を示す。 4℃で沈殿させたイヌリンにおけるポリマー分布(C)、再沈澱後の沈降物におけるポリマー分布(F)および再沈澱後の透明な相におけるポリマー分布(E)のGPC−RI解析。 本発明のイヌリンによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。 本発明のイヌリンによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。図6および図7は、容器2(V)および3(V3)について対応する比較を示す。 本発明のイヌリンによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。図6および図7は、容器2(V)および3(V3)について対応する比較を示す。 比較サンプルによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。 比較サンプルによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。図9および図10は、容器2(V)および3(V3)について対応する比較を示す。 比較サンプルによる処理後の、定常状態1(SS1)と定常状態2(SS2)の、容器1(V1)中のバクテリア集団の比較を示す。図9および図10は、容器2(V)および3(V3)について対応する比較を示す。 本発明のイヌリンによる処理後の、定常状態1(ベースライン)(SS1)と定常状態2(SS2)の、すべての容器中の短鎖脂肪酸(SCFA)の濃度の比較を示す。個々の脂肪酸は、各容器および定常状態(例えば、V1−SS1)について胆汁ダイアグラム(bile diagram)として各場合にプロットされる。左から右へ:酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソバレリアン酸、n−バレリアン酸、カプロン酸。 比較サンプルによる処理後の、定常状態1(ベースライン)(SS1)と定常状態(SS2)の、すべての容器中の短鎖脂肪酸(SCFA)の濃度の比較を示す。 ヨーグルト粘度に対するイヌリンおよび乳固形分の効果を示す。

Claims (32)

  1. GPC−RI−MALLSによって測定された65と81との間の平均重合度DPwを有するイヌリンであって、イヌリンが噴霧乾燥されていることを特徴とする、イヌリン
  2. 65と79との間の平均重合度DPwを有する、請求項1に記載のイヌリン。
  3. すべてのイヌリンモノマーを基準として0.5と2.0モル%との間の2−1,6結合フルクトースモノマーの分岐度を有する請求項1または2に記載のイヌリン。
  4. 商DPw/DPnが1.25未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイヌリン。
  5. 商DPw/DPnが1.20未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイヌリン。
  6. 商DPw/DPnが1.15未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイヌリン。
  7. グルコース含有が全乾燥重量を基準として2重量%未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のイヌリン。
  8. グルコース含有が全乾燥重量を基準として1重量%未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のイヌリン。
  9. フルクトース含有が全乾燥重量を基準として2.5重量%未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のイヌリン。
  10. フルクトース含有が全乾燥重量を基準として1.5重量%未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のイヌリン。
  11. 100〜250μmの平均直径を有する粒子の形態にある、請求項1〜10のいずれか1項に記載のイヌリン。
  12. a)チョウセンアザミの根を粉砕し、
    b)粉砕した根を水で処理することにより抽出物を得、
    c)得られた抽出物から着色成分を除去し、
    d)抽出物からイヌリンを沈殿させ、
    e)イヌリンを少なくとも1回再沈澱させる、
    ことを含む、GPC−RI−MALLSによって測定された65と81との間の平均重合度DPwを有するイヌリンを得るための方法。
  13. 追加のろ過工程を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 工程c)において、
    i)植物抽出物にマグネシウムイオン(Mg2+)を混合し、
    ii)植物抽出物に少なくとも1つのアルカリ成分を混合し、
    iii)沈澱を形成し、そして
    iv)形成された沈澱を植物抽出物から除去する、
    ことにより着色成分を除去する、請求項12または13に記載の方法。
  15. マグネシウム塩を工程i)において混合する、請求項14に記載の方法。
  16. マグネシウム塩が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムおよびプロピオン酸マグネシウムから選ばれる、請求項15に記載の方法。
  17. 工程i)を60〜80℃の温度で行う、請求項1416のいずれか1項に記載の方法。
  18. アルカリ成分の量は、OH-:Mg2+モル比設定が2.2:1〜1.8:1となるように選ばれる、請求項1417のいずれか1項に記載の方法。
  19. アルカリ成分は、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土金属水酸化物の水性溶液または懸濁液である、請求項1418のいずれか1項に記載の方法。
  20. アルカリ成分が、水酸化カルシウムの懸濁液である、請求項1419のいずれか1項に記載の方法。
  21. 請求項1〜11のいずれかに記載のイヌリンを含む食品。
  22. 酪農製品、ヨーグルト、アイスクリーム、乳をベースとするソフトアイス、乳をベースとする付合せ、プディング、ミルクセーキ、エッグカスタード、チーズ、栄養バー、エネルギーバー、朝食バー、菓子、パン菓子類製品、クラッカー、クッキー、ビスケット、シリアルチップ、スナック製品、アイスティー、フルーツジュースから作られたソフトアイス、ダイエットドリンク、フィニッシュドドリンク、スポーツドリンク、スタミナドリンク、栄養補助食品用の粉末状ドリンク混合物、幼児および赤ちゃん食品、カルシウム補充オレンジジュース、パン、クロワッサン、朝食用シリアル、ヌードル、スプレッド、無糖ビスケットおよびチョコレート、カルシウムチュー、食肉製品、マヨネーズ、サラダドレッシング、ナッツバター、低温凍結食品、ソース、スープおよび即席食品から選ばれる、請求項21に記載の食品。
  23. 押出製品である、請求項21または22に記載の食品。
  24. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のイヌリンを含む栄養補助食品。
  25. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のイヌリンを含む化粧品。
  26. 食品への添加物としての請求項1〜11のいずれか1項に記載のイヌリンの使用。
  27. プレバイオティックな性質を有する添加物、テキスチャー化剤、安定性増強剤、粘度増加剤および/またはダイエット繊維としての請求項26に記載のイヌリンの使用。
  28. 食品における脂肪または油代替物としての請求項1〜11のいずれか1項に記載のイヌリンの使用。
  29. 化粧品における添加物としての請求項1〜11のいずれか1項に記載のイヌリンの使用。
  30. テキスチャー化剤、安定性増強剤および/または粘度増加剤としての請求項29に記載のイヌリンの使用。
  31. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のイヌリンの水性ペースト。
  32. 食品または化粧品における、構造付与成分、脂肪代替物、油代替物、テキスチャー化剤、安定性増強剤および/または粘度増加剤としての請求項31に記載の水性ペーストの使用。
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