[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る電子部品の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る電子部品の斜視図である。図2は、本実施の形態に係る電子部品の積層体の設計上の構造を示す断面図である。
本実施の形態に係る積層型電子部品(以下、単に電子部品と記す。)1は、例えば携帯電話機、無線LAN通信機器等の無線通信機器に用いられるものである。電子部品1は、例えば、フィルタ、バランまたは方向性結合器の機能を有していてもよい。電子部品1は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含む積層体10を備えている。積層体10は、外面として、上面10Aと底面10Bと4つの側面10C〜10Fとを有する直方体形状をなしている。4つの側面10C〜10Fは、上面10Aと底面10Bを連結している。上面10Aと底面10Bは互いに反対側を向き、側面10C,10Dも互いに反対側を向き、側面10E,10Fも互いに反対側を向いている。側面10C〜10Fは、上面10Aおよび底面10Bに対して垂直になっている。積層体10において、上面10Aおよび底面10Bに垂直な方向が、複数の誘電体層の積層方向である。図1および図2では、複数の誘電体層の積層方向を、記号Tを付した矢印で示している。
本実施の形態では、積層体10は、底面10B側から順に配置された6つの誘電体層21,22,23,24,25,26と、誘電体層26の上に配置された1つ以上の誘電体層とを含んでいる。以下の説明では、任意の誘電体層に関しては、符号20を付して表す。
複数の誘電体層20のうちの1つは、複数の誘電体層20の中で複数の誘電体層20の積層方向Tの端に位置する最外層である。本実施の形態では、積層体10において最も底面側10Bに位置する誘電体層21が上記最外層に対応する。誘電体層21(最外層)は、積層体10の外側に向いた第1の面21aと、第1の面21aとは反対側の第2の面21bとを有している。第1の面21aは、積層体10の底面10Bの一部を構成する。
複数の導体層には、内部導体層と外部導体層が含まれている。内部導体層は、積層体10の内部において隣接する2つの誘電体層20の間に配置された導体層である。本実施の形態では、積層体10は、誘電体層24と誘電体層25の間において誘電体層24の上に配置された3つの内部導体層31,32,33と、誘電体層25と誘電体層26の間において誘電体層25の上に配置された3つの内部導体層34,35,36とを含んでいる。内部導体層31,32,33は、積層体10の側面10Cから側面10Dに向かう方向にこの順に並んでいる。内部導体層34,35,36は、積層体10の側面10Cから側面10Dに向かう方向にこの順に並んでいる。内部導体層31〜36は、例えば、キャパシタやインダクタを構成する導体層として用いられる。
外部導体層は、最外層に接し且つ積層体10の外部に露出した導体層である。本実施の形態では、積層体10は、誘電体層21(最外層)に接し且つ積層体10の外部に露出した4つの外部導体層41,42,43,44を含んでいる。外部導体層41〜44は、それぞれ、誘電体層21の第1の面21aと同じ方向に向いた第3の面と、誘電体層21の第2の面21bと同じ方向に向いた第4の面とを有している。外部導体層41〜44のそれぞれの第3の面は、積層体10の底面10Bの一部を構成する。外部導体層41〜44の平面形状は、例えば矩形である。外部導体層41〜44は、例えば、端子として用いられる。
誘電体層21(最外層)は、それぞれ、4つの外部導体層41,42,43,44の少なくとも一部を収容する4つの収容部211,212,213,214を有している。収容部211〜214の各々は、誘電体層21を貫通する孔でもよいし、誘電体層21の第1の面21aで開口し誘電体層21を貫通しない凹部でもよい。以下、主に、収容部211〜214の各々が、誘電体層21を貫通する孔である場合について説明する。収容部211,212は、積層体10の底面10Bと側面10Eとの間の稜線の近傍に配置され、積層体10の側面10Cから側面10Dに向かう方向にこの順に並んでいる。収容部213,214は、積層体10の底面10Bと側面10Fとの間の稜線の近傍に配置され、積層体10の側面10Cから側面10Dに向かう方向にこの順に並んでいる。
外部導体層41の少なくとも一部は、収容部211に収容されている。外部導体層41の厚みは、収容部211の深さ以上である。外部導体層41の厚みが収容部211の深さと等しい場合には、外部導体層41の全体が収容部211に収容される。外部導体層41の厚みが収容部211の深さより大きい場合には、外部導体層41の一部が収容部211に収容され、外部導体層41の残り部分は誘電体層21の第1の面21aから突出する。図2に示した積層体10の設計上の構造では、外部導体層41の第4の面は、誘電体層21の第2の面21bと同一平面上に配置されている。
上記の外部導体層41と収容部211の関係と同様に、外部導体層42の少なくとも一部は収容部212に収容され、外部導体層43の少なくとも一部は収容部213に収容され、外部導体層44の少なくとも一部は収容部214に収容されている。
積層体10は、更に、積層体10の内部に位置する1つ以上のスルーホールを含んでいてもよい。本実施の形態では、積層体10は、少なくとも2つのスルーホール51,52を含んでいる。スルーホール51,52は、誘電体層22〜24を貫通している。スルーホール51,52は、いずれも、本発明における「特定のスルーホール」に対応する。すなわち、スルーホール51は、複数の誘電体層20の積層方向Tから見たときに、外部導体層41と重なり合うように、積層体10の内部に位置する。また、スルーホール52は、複数の誘電体層20の積層方向Tから見たときに、外部導体層42と重なり合うように、積層体10の内部に位置する。本実施の形態では、スルーホール51,52は、それぞれ、外部導体層41,42に接続されている。
内部導体層31,33は、いずれも、本発明における「特定の内部導体層」に対応する。すなわち、内部導体層31は、複数の誘電体層20の積層方向Tから見たときに、外部導体層41と重なり合うように、積層体10の内部に位置し、且つ特定のスルーホール51に接続されている。また、内部導体層33は、複数の誘電体層20の積層方向Tから見たときに、外部導体層42と重なり合うように、積層体10の内部に位置し、且つ特定のスルーホール52に接続されている。
次に、図3ないし図11を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の製造方法について説明する。この製造方法では、複数の誘電体層20の材料をセラミックとして、積層体10を低温同時焼成法によって作製する。また、この製造方法では、複数の積層体10を同時に作製する。
図3は、本実施の形態に係る電子部品1の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態に係る電子部品1の製造方法では、まず、複数の誘電体層20に対応する複数の焼成前のセラミックシート120を作製する(ステップS101)。複数の焼成前のセラミックシート120は、例えば、図4に示したように、リールに巻かれた焼成前のセラミックシートを、所定の長さで切断することによって作製される。1つの焼成前のセラミックシート120は、それぞれ後に同種の誘電体層20となる複数の誘電体層予定部20Pを含んでいる。図4において、点線は、後に焼成前のセラミックシート120が切断される位置を示している。図4において、点線で囲まれた複数の部分の各々が、誘電体層予定部20Pである。複数の誘電体層予定部20Pは、縦方向と横方向にそれぞれ複数個並ぶように、複数列に配列されている。
複数の焼成前のセラミックシート120のうちの1つは、誘電体層21(最外層)を形成するために用いられる最外層用セラミックシート121である。なお、最外層用セラミックシート121は、後で説明する図6に示されている。最外層用セラミックシート121は、それぞれ後に誘電体層21となる複数の誘電体層予定部21Pを含んでいる。
図5は、次の工程を示す。この工程では、スルーホールが形成される誘電体層20を形成するために用いられる焼成前のセラミックシート120に、複数のスルーホール用の孔を形成する(図3のステップS102)。スルーホール用の孔の形成は、例えば、レーザ加工や金型を用いた打抜き加工を用いて行うことができる。
図6は、次の工程を示す。この工程では、最外層用セラミックシート121に、後に収容部となる初期収容部を形成する(図3のステップS103)。初期収容部は、誘電体層予定部21P毎に形成される。本実施の形態では、1つの誘電体層予定部21Pに、それぞれ後に収容部211,212,213,214となる初期収容部211P,212P,213P,214Pが形成される。図6には、初期収容部211P〜214Pが最外層用セラミックシート121を貫通している例を示している。初期収容部211P〜214Pの形成は、例えば、レーザ加工や金型を用いた打抜き加工を用いて行うことができる。なお、ステップS102とステップS103の順序は、逆でもよい。
図7は、次の工程を示す。この工程では、最外層用セラミックシート121を除く複数の焼成前のセラミックシート120に、スクリーン印刷等によって、後に焼成されて内部導体層となる焼成前内部導体層30Pを形成する(図3のステップS104)。焼成前のセラミックシート120に形成される焼成前内部導体層30Pのパターンは、その焼成前のセラミックシート120が、どの誘電体層20を形成するために用いられるものかに応じて異なる。例えば、誘電体層24を形成するために用いられる焼成前のセラミックシート120に形成される焼成前内部導体層30Pは、内部導体層31〜33に対応したパターンを有している。また、誘電体層25を形成するために用いられる焼成前のセラミックシート120に形成される焼成前内部導体層30Pは、内部導体層34〜36に対応したパターンを有している。また、焼成前のセラミックシート120が、ステップS102において形成したスルーホール用の孔を有する場合には、ステップS104において、そのスルーホール用の孔内に、後に焼成されてスルーホールを構成する導体部となる焼成前スルーホール用導体部を形成する。
図8は、次の工程を示す。この工程では、複数の焼成前のセラミックシート120を、複数の誘電体層20の積層の順序に対応させて積層して、初期焼成前積層体100Pを形成する(図3のステップS105)。初期焼成前積層体100Pは、必要に応じて焼成前内部導体層30Pや焼成前スルーホール用導体部が形成された複数の焼成前のセラミックシート120を含んでいる。複数の焼成前のセラミックシート120のうちの1つである最外層用セラミックシート121は、複数の焼成前のセラミックシート120の中で複数の焼成前のセラミックシート120の積層方向の端に位置する。
図9は、次の工程を示す。この工程では、初期焼成前積層体100Pに対して、後に焼成されて外部導体層となる焼成前外部導体層を形成する(図3のステップS106)。焼成前外部導体層は、焼成前外部導体層の少なくとも一部が初期収容部に収容されるように形成される。図9には、それぞれ後に焼成されて外部導体層41,42,43,44となる焼成前外部導体層41P,42P,43P,44Pの一部が初期収容部211P,212P,213P,214Pに収容され、焼成前外部導体層41P,42P,43P,44Pの残りの部分が誘電体層予定部21Pの表面(最外層用セラミックシート121の表面)から突出するように形成された例を示している。この工程で形成される焼成前外部導体層41P,42P,43P,44Pの厚みは、例えば、初期収容部211P,212P,213P,214Pの深さの1.7〜2.7倍である。焼成前外部導体層41P〜44Pが形成されることにより、焼成前積層体100が完成する。
焼成前積層体100は、後に焼成されて積層体10となる積層体予定部10Pを含んでいる。本実施の形態では、焼成前積層体100は、焼成前積層体100における複数の焼成前のセラミックシート120の積層方向に直交する方向に配列された複数の積層体予定部10Pを含んでいる。焼成前積層体100は、後に、複数の積層体予定部10Pが互いに分離されるように図9に示した点線の位置で切断される。
図10は、次の工程を示す。この工程では、焼成前積層体100に対して、複数の焼成前のセラミックシート120の積層方向に圧力を加えて、焼成前積層体100の構成要素を一体化する(図3のステップS107)。なお、ステップS106とステップS107の順序は、逆でもよい。
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、複数の積層体予定部10Pが切り出されるように、焼成前積層体100を切断する(図3のステップS108)。次に、積層体予定部10Pが積層体10になるように、積層体予定部10Pを低温同時焼成工程によって焼成する(図3のステップS109)。これにより、複数の誘電体層予定部20Pは複数の誘電体層20となり、焼成前内部導体層30Pは内部導体層31〜36となり、焼成前外部導体層41P〜44Pは外部導体層41〜44となり、焼成前スルーホール用導体部はスルーホールを構成する導体部となり、積層体10が完成する。なお、ステップS108とステップS109の順序は、逆でもよい。すなわち、焼成前積層体100を切断せずに焼成し、その後、複数の積層体10が切り出されるように、焼成された積層体を切断してもよい。
以上説明したように、本実施の形態に係る電子部品1の製造方法は、複数の焼成前のセラミックシート120と複数の焼成前導体層を積層して、後に焼成されて積層体10となる積層体予定部10Pを含む焼成前積層体100を作製する工程と、積層体予定部10Pが積層体10になるように、焼成前積層体100のうちの少なくとも積層体予定部10Pを焼成する工程とを備えている。複数の焼成前のセラミックシート120のうちの1つは、最外層(誘電体層21)を形成するために用いられる最外層用セラミックシート121である。最外層用セラミックシート121は、後に収容部211〜214となる初期収容部211P〜214Pを有している。複数の焼成前導体層には、後に焼成されて内部導体層となる焼成前内部導体層30Pと、後に焼成されて外部導体層41〜44となる焼成前外部導体層41P〜44Pが含まれている。焼成前積層体100を作製する工程において、焼成前外部導体層41P〜44Pは、焼成前外部導体層41P〜44Pの少なくとも一部が初期収容部211P〜214Pに収容されるように形成される。
本実施の形態では、焼成前積層体100を作製する工程は、複数の焼成前のセラミックシート120と、焼成前外部導体層41P〜44P以外の焼成前導体層を積層して初期焼成前積層体100Pを作製する工程と、初期焼成前積層体100Pに対して、焼成前外部導体層41P〜44Pを形成して、焼成前積層体100を完成させる工程とを含んでいる。
次に、比較例の電子部品と比較しながら、本実施の形態に係る電子部品1およびその製造方法の効果について説明する。始めに、比較例の電子部品の構成について説明する。比較例の電子部品は、本実施の形態に係る電子部品1の積層体10の代わりに積層体310を備えている。この積層体310では、誘電体層21(最外層)は、収容部211〜214を有しておらず、外部導体層41〜44は、誘電体層21の第1の面21aの上に配置されている。また、スルーホール51,52は、それぞれ、誘電体層21を貫通して外部導体層41,42に接続されている。積層体310のその他の構成は、積層体10と同じである。
以下、比較例の電子部品の問題点について説明する。外部導体層41〜44は、積層体310の外部に露出していることから、薄くすると剥がれやすくなる。そのため、外部導体層41〜44は、比較的厚くする必要がある。比較例の電子部品の積層体310を作製する際には、後に焼成されて外部導体層41〜44となる焼成前外部導体層41P〜44Pは、初期収容部211P〜214Pを有さない最外層用セラミックシート121の表面上に、比較的厚く形成される。その結果、最外層用セラミックシート121の表面と焼成前外部導体層41P〜44Pの表面(最外層用セラミックシート121の表面と同じ方向に向いた面)との間に、比較的大きな段差が形成される。この状態で、図10に示した焼成前積層体100に圧力を加える工程(ステップS107)を実行すると、焼成前外部導体層41P〜44Pが、焼成前積層体100の内部に向けて押圧され、その結果、複数の焼成前のセラミックシート120や焼成前内部導体層30Pや焼成前のスルーホール(スルーホール用の孔および焼成前スルーホール用導体部)が変位したり変形したりする。すると、実際に作製された積層体310の構造が、図2に示した設計上の積層体10の構造と比べて変化する。
図12は、上述のように作製された比較例の電子部品の積層体310における外部導体層41の近傍の部分を示す断面図である。図12に示したように、誘電体層21の第1の面21aの上に配置された外部導体層41が、積層体310の内部に向けて押し込まれることにより、積層体310のうち、外部導体層41の近傍の部分が変形する。特に、外部導体層41の近傍の誘電体層21〜26やスルーホール51や内部導体層31は大きく変位したり変形したりしている。
ここで、複数の誘電体層20の積層方向Tについての、誘電体層21(最外層)の第2の面21bの最大の高低差を記号hで表し、外部導体層41の厚みの最大値を記号tで表す。比較例の電子部品の積層体310では、高低差hは、外部導体層41の厚みの最大値tに近く、厚みの最大値tの1/2よりも大きくなる。
なお、図示しないが、比較例の電子部品の積層体310では、外部導体層41と同様に、誘電体層21の第1の面21aの上に配置された外部導体層42〜44が積層体10の内部に向けて押し込まれることにより、積層体310のうち、外部導体層42〜44の近傍の部分が変形する。特に、外部導体層42が押し込まれることにより、外部導体層42の近傍の誘電体層21〜26やスルーホール52や内部導体層33は大きく変位したり変形したりする。このように、設計上の積層体10の構造と比べて、内部導体層31,33,34,36やスルーホール51,52が大きく変位または変形すると、設計上の特性と比べて、電子部品の特性が変化するおそれがある。
図12には、外部導体層42〜44を示していないが、比較例の電子部品の積層体310では、誘電体層21(最外層)の第2の面21bの最大の高低差hは、外部導体層41〜44の厚みの最大値の1/2よりも大きくなる。
これに対し、本実施の形態では、積層体10において、外部導体層41〜44の少なくとも一部は、誘電体層21(最外層)の収容部211〜214に収容され、焼成前外部導体層41P〜44Pの少なくとも一部は、それぞれ、最外層用セラミックシート121の初期収容部211P〜214Pに収容される。そのため、本実施の形態によれば、比較例の電子部品の積層体310に比べて、最外層用セラミックシート121の表面と焼成前外部導体層41P〜44Pの表面との間の段差を小さくすることができる。本実施の形態では、焼成前外部導体層41P〜44Pを形成した後に、図10に示した焼成前積層体100に圧力を加える工程(ステップS107)を実行しても、積層体310を作製する場合に比べて、複数の焼成前のセラミックシート120、焼成前内部導体層30Pおよび焼成前のスルーホールの変位または変形を抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、外部導体層41〜44に起因して、設計上の積層体10と比べて実際に作製された積層体10の構造が大きく変化することを防止することができる。
図13は、本実施の形態に係る電子部品1の積層体10における外部導体層41の近傍の部分を示す断面図である。図13に示したように、本実施の形態では、外部導体層41に起因して、積層体10のうち、外部導体層41の近傍の部分はほとんど変形しない。特に、本実施の形態によれば、比較例の電子部品の積層体310に比べて、誘電体層21〜26、スルーホール51および内部導体層31の変位または変形を抑制することができる。本実施の形態では、複数の誘電体層20の積層方向Tについての、誘電体層21(最外層)の第2の面21bの最大の高低差hは、0に近く、外部導体層41の厚みの最大値tの1/2以下である。
なお、図示しないが、本実施の形態では、外部導体層41と同様に、外部導体層42〜44に起因して、積層体10のうち、外部導体層42〜44の近傍の部分もほとんど変形しない。特に、本実施の形態によれば、比較例の電子部品に比べて、外部導体層42に起因する、誘電体層21〜26、スルーホール52および内部導体層32の変位または変形を抑制することができる。このように、本実施の形態によれば、内部導体層31,33,34,36やスルーホール51,52の変位または変形を抑制することができることから、設計上の特性と比べて、電子部品1の特性が変化することを防止することができる。
図13には外部導体層42〜44を示していないが、誘電体層21(最外層)の第2の面21bの最大の高低差hは、外部導体層41〜44の厚みの最大値の1/2以下である。これは、収容部211〜214の各々が、誘電体層21を貫通する孔である場合と、誘電体層21の第1の面21aで開口し誘電体層21を貫通しない凹部である場合の両方に当てはまる。
外部導体層41〜44を有する任意の積層体が、本実施の形態における積層体10を作製する方法によって作製されたものであるか、比較例における積層体310を作製する方法によって作製されたものであるかは、誘電体層21(最外層)の第2の面21bの最大の高低差hが外部導体層41〜44の厚みの最大値の1/2以下であるか否かによって判別することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る電子部品1について説明する。始めに、図14および図15を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の構成について説明する。図14は、本実施の形態に係る電子部品1の斜視図である。図15は、本実施の形態に係る電子部品1の積層体10の設計上の構造を示す断面図である。
本実施の形態に係る電子部品1の構成は、以下の点で第1の実施の形態と異なっている。本実施の形態に係る電子部品1では、内部導体層31,33、外部導体層41〜44およびスルーホール51,52が設けられていない。また、本実施の形態における積層体10は、底面側10Bから順に配置された6つの誘電体層21〜26と、上面10A側から順に配置された3つの誘電体層29,28,27と、誘電体層26と誘電体層27との間に配置された1つ以上の誘電体層20とを含んでいる。本実施の形態では、積層体10において最も上面10A側に位置する誘電体層29が、本発明における「最外層」に対応する。誘電体層29(最外層)は、積層体10の外側に向いた第1の面29aと、第1の面29aとは反対側の第2の面29bとを有している。第1の面29aは、積層体10の上面10Aの一部を構成する。
また、本実施の形態では、積層体10は、誘電体層29(最外層)に接し且つ積層体10の外部に露出した2つの外部導体層45,46を含んでいる。外部導体層45,46は、それぞれ、誘電体層29の第1の面29aと同じ方向に向いた第3の面と、誘電体層29の第2の面29bと同じ方向に向いた第4の面とを有している。外部導体層45,46のそれぞれの第3の面は、積層体10の上面10Aの一部を構成する。外部導体層45の平面形状は、例えば矩形である。外部導体層46の平面形状は、例えば数字(図14に示した例では「4」)状の形状である。外部導体層45,46は、例えば、ロット識別用のマークとして用いられる。
誘電体層29(最外層)は、それぞれ、2つの外部導体層45,46の少なくとも一部を収容する2つの収容部291,292を有している。収容部291,292の各々は、誘電体層29を貫通する孔でもよいし、誘電体層29の第1の面29aで開口し誘電体層29を貫通しない凹部でもよい。以下、主に、収容部291,292の各々が、誘電体層29を貫通する孔である場合について説明する。収容部291,292は、積層体10の側面10Cから側面10Dに向かう方向にこの順に並んでいる。
外部導体層45の少なくとも一部は、収容部291に収容されている。外部導体層45の厚みは、収容部291の深さ以上である。外部導体層45の厚みが収容部291の深さと等しい場合には、外部導体層45の全体が収容部291に収容される。外部導体層45の厚みが収容部291の深さより大きい場合には、外部導体層45の一部が収容部291に収容され、外部導体層45の残り部分は誘電体層29の第1の面29aから突出する。積層体10の設計上の構造では、外部導体層45の第4の面は、誘電体層29の第2の面29bと同一平面上に配置されている。
上記の外部導体層45と収容部291の関係と同様に、外部導体層46の少なくとも一部は収容部292に収容されている。
積層体10は、更に、積層体10の内部において誘電体層27と誘電体層28の間に配置された内部導体層37を含んでいる。内部導体層37は、本発明における「特定の内部導体層」に対応する。すなわち、内部導体層37は、複数の誘電体層20の積層方向Tから見たときに、外部導体層45と重なり合うように、積層体10の内部に位置する。また、内部導体層37は、複数の誘電体層20のうちの、誘電体層29(最外層)に接する誘電体層28に接している。誘電体層28は、本発明における「特定の誘電体層」に対応する。図15に示した例では、内部導体層37は、誘電体層28の誘電体層29とは反対側の面に接している。しかし、収容部291が誘電体層29を貫通しない凹部の場合には、内部導体層37は、誘電体層28の誘電体層29側の面に接していてもよい。内部導体層37は、例えば、キャパシタやインダクタを構成する導体層として用いられる。
積層体10は、更に、外部導体層61,62を含んでいる。外部導体層61,62は、誘電体層21の第1の面21aの上に配置されている。外部導体層61,62は、積層体10の側面10Cから側面10Dに向かう方向にこの順に並んでいる。外部導体層61,62は、例えば、端子として用いられる。
次に、本実施の形態に係る電子部品1の製造方法について簡単に説明する。本実施の形態では、誘電体層29(最外層)を形成するために用いられる最外層用セラミックシートが作製される。この最外層用セラミックシートは、それぞれ後に誘電体層29となる複数の誘電体層予定部を含んでいる。本実施の形態では、最外層用セラミックシートに初期収容部を形成する工程(図3のステップS103)において、1つの誘電体層予定部に、それぞれ後に収容部291,292となる2つの初期収容部を形成する。また、本実施の形態では、初期焼成前積層体100Pに対して焼成前外部導体層を形成する工程(図3のステップS106)において、後に焼成されて外部導体層45,46となる2つの焼成前外部導体層が、2つの焼成前外部導体層の少なくとも一部がそれぞれ上記2つの初期収容部に収容されるように形成される。
なお、外部導体層61,62を形成する方法としては、初期焼成前積層体100Pに対して、後に焼成されて外部導体層61,62となる焼成前外部導体を形成する方法がある。外部導体層61,62を形成する他の方法としては、積層体予定部10Pを焼成した後に、例えば、スパッタ法等を用いて誘電体層21の第1の面21aに金属の薄膜を形成する方法や、金属の薄膜を導電接着剤によって誘電体層21の第1の面21aの上に接着する方法がある。
次に、図16を参照して、本実施の形態に係る電子部品1およびその製造方法の効果について説明する。図16は、本実施の形態に係る電子部品1の積層体10における外部導体層45の近傍の部分を示す断面図である。本実施の形態に係る電子部品1では、積層体10において、外部導体層45,46の少なくとも一部は、誘電体層29(最外層)の収容部291,292に収容されている。本実施の形態に係る電子部品1の製造方法では、後に焼成されて外部導体層45,46となる2つの焼成前外部導体層の少なくとも一部は、最外層用セラミックシートの2つの初期収容部に収容される。これにより、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、最外層用セラミックシートの表面と上記2つの焼成前外部導体層の表面との間の段差を小さくして、複数の焼成前のセラミックシート120、焼成前内部導体層30Pおよび焼成前のスルーホールの変位または変形を抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、外部導体層45,46に起因して、設計上の積層体10と比べて実際に作製された積層体10の構造が大きく変化することを防止することができる。本実施の形態では、図16に示したように、複数の誘電体層20の積層方向Tについての、誘電体層29(最外層)の第2の面29bの最大の高低差hは、外部導体層45の厚みの最大値tの1/2以下である。
また、本実施の形態では、特に、特定の内部導体層37は、複数の誘電体層20のうちの、誘電体層29(最外層)に接する特定の誘電体層28に接している。もし、誘電体層29に収容部291,292が形成されておらず、外部導体層45,46が誘電体層29の第1の面29aの上に配置されている場合には、第1の実施の形態で説明した比較例の電子部品の積層体310と同様に、誘電体層28,29が大きく変形し、その結果、特定の内部導体層37の変位または変形も大きくなる。これに対し、本実施の形態では、図16に示したように、外部導体層45に起因して、積層体10のうち、外部導体層45の近傍の部分はほとんど変形しない。これにより、本実施の形態によれば、上記の場合に比べて、誘電体層28,29および特定の内部導体層37の変位または変形を抑制することができる。その結果、本実施の形態によれば、設計上の特性と比べて、電子部品1の特性が変化することを防止することができる。
図16には外部導体層46を示していないが、誘電体層29(最外層)の第2の面29bの最大の高低差hは、外部導体層45,46の厚みの最大値の1/2以下である。これは、収容部291,292の各々が、誘電体層29を貫通する孔である場合と、誘電体層29の第1の面29aで開口し誘電体層29を貫通しない凹部である場合の両方に当てはまる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、外部導体層、内部導体層およびスルーホールの形状および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
また、本発明の電子部品は、積層体の他に、積層体の1つ以上の側面に配置された1つ以上の導体層や、積層体に搭載された素子等を備えていてもよい。