JP6142870B2 - 有機光電変換素子およびこれを用いた太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、有機光電変換素子およびこれを用いた太陽電池に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の削減が切に望まれている。また、近い将来、石油、石炭、および天然ガス等の化石燃料が枯渇することが予想されており、これらに替わる地球に優しいエネルギー資源の確保が急務となっている。そこで、太陽光、風力、地熱、原子力等利用した発電技術の開発が盛んに行われているが、なかでも太陽光発電は、安全性の高さから特に注目されている。
太陽光発電では、光起電力効果を利用した光電変換素子を用いて、光エネルギーを直接電力に変換する。光電変換素子は、一般的に、一対の電極の間に光電変換層(光吸収層)が挟持されてなる構造を有し、当該光電変換層において光エネルギーが電気エネルギーに変換される。光電変換素子は、光電変換層に用いられる材料や、素子の形態により、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いたシリコン系光電変換素子、GaAsやCIGS(銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる半導体)等の化合物半導体を用いた化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)等が提案・実用化されている。
しかしながら、これらの太陽電池を用いた場合の発電コストは、依然として化石燃料を用いて発電・送電する場合のコストと比較して高く、これが太陽光発電の普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、屋根等に設置する場合に補強工事が必要であり、これらも発電コストを高騰させる一因であった。
太陽光発電における発電コストを低減させるための技術として、透明電極と対電極との間に、電子供与性有機化合物(p型有機半導体)と電子受容性有機化合物(n型有機半導体)との混合物を光電変換層として含むバルクへテロジャンクション型の光電変換素子が提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
バルクへテロジャンクション型有機光電変換素子は、軽量で柔軟性に富むことから、様々な製品への応用が期待されている。また、構造が比較的単純であり、p型有機半導体およびn型有機半導体を塗布することによって光電変換層を形成できることから、大量生産に好適であり、コストダウンによる太陽電池の早期普及にも寄与するものと考えられる。より具体的には、バルクへテロジャンクション型有機光電変換素子において、電極(陽極および陰極)等を構成する金属層や金属酸化物層は蒸着法等により形成されうるが、これら以外の層は塗布プロセスを用いて形成することができる。したがって、バルクへテロジャンクション型光電変換素子の製造は高速でかつ安価に行うことが可能であると期待され、上述した発電コストの課題を解決できる可能性があると考えられる。さらに、バルクへテロジャンクション型有機光電変換素子は、従来のシリコン系光電変換素子、化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子等の製造とは異なり、160℃よりも高温の製造プロセスを必須としないため、安価でかつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
しかしながら、有機光電変換素子は、他のタイプの光電変換素子と比較して、光電変換効率や、熱や光に対する耐久性が十分とはいえない。
バルクヘテロジャンクション型有機光電変換素子の光電変換効率を向上させることを目的として、十分な光吸収量を得るため、発電層の膜厚を厚くする方法が考えられる。しかし、発電層の膜厚を厚くすると、発電層で発生したホールまたは電子といったキャリアが、電極や電荷輸送層に到達する前に発電層内で再結合してしまうため、キャリアを回収しにくくなる。したがって、発電層の膜厚を厚くすることができず、素子性能としては短絡電流密度(JSC)とフィルファクター(FF)において発電層の膜厚に対するトレードオフが存在する。
上記の問題に対する対策として、基板に接続したナノピラー表面に自己吸着した単分子層を有し、活性層が単分子層上に形成されている構成(例えば、特許文献1)や、分子量200以上の共役化合物がアスペクト比1.5以上の金属粒子に吸着されている複合体(例えば、特許文献2)を利用した電荷取出し構造を用いる技術が提案されている。
また、一方で、バルクヘテロジャンクション型有機光電変換素子において、熱や光に対する耐久性が十分に得られない理由として、例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機発光ダイオード(OLED)といった一般的な有機エレクトロニクスデバイスと同様に、光電変換素子が酸素や水分の影響を受けやすいという問題点を有していることが挙げられる。したがって、素子に酸素や水分が侵入すると、素子が劣化し、素子寿命が短くなってしまうため、バリアフィルムやガラス板等といったバリア部材を用いることにより、これらの侵入を防ぐことが必要となる。
しかしながら、バリア部材で封止した場合であっても、素子中には、製造中に混入し、そのまま残存した微量の水分や酸素、バリア部材を透過してしまう微量の水分や酸素等が不可避的に存在する。一般的に、電子取出し側の陰極やホールブロック層としては、仕事関数の小さい(浅い)材料種が選択されるため、このように微量の水分や酸素の存在下で連続した光照射を行った場合、水分や酸素の影響により、短絡電流密度(JSC)やフィルファクター(FF)の減衰が起き、素子の寿命が著しく短くなってしてしまうことが問題となっていた。
上記の問題に対する対策として、例えば、ホールブロック層(以下、「電子輸送層」とも称する)として、水分や酸素に安定な酸化チタンからなる層を用いることで、光照射による安定性を改良する技術(例えば、特許文献3)や、ホールブロック層にガラス転移温度が80℃以上の材料を用いることで素子の寿命を改善する試みが提案されている(例えば、特許文献4)。
米国特許出願公開第2011/108102号明細書 特開2010−261102号公報 米国特許出願公開第2011/056547号明細書 特開2011−176305号公報
A.Heeger et al.,Nature Mat.,vol.6(2007),p497
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記文献に記載された技術を以てしても、十分な光電変換効率と耐久性とを両立することは難しいことが判明した。すなわち、上記特許文献1や特許文献2に開示された技術では、素子を構成する層に含まれるナノピラーやナノ粒子の表面を被覆する材料が嵩高い構造であるため、ナノピラーやナノ粒子の表面において、材料が十分被覆できない領域が存在する。その結果、当該領域から発生するリーク電流のために、十分なフィルファクターが得られず、素子の光電変換効率が低下することが分かった。また、ナノピラーやナノ粒子を用いた上記構成を有する光電変換素子は、熱や光に対する耐久性が不十分であるという問題がある。連続的な光照射によって上記構成を備えた光電変換素子を駆動させた場合、光電変換層の材料と、ナノピラーやナノ粒子を構成する材料および電極との界面で大きな準位のミスマッチが発生する。その結果、界面近傍に電荷が溜まり、真空準位のシフトによって準位ミスマッチを助長し、短絡電流密度(JSC)の減衰が起き、素子の寿命が著しく短くなってしまうことが分かった。この準位のミスマッチは、上記特許文献1〜4に記載された技術を以てしても光電変換素子の耐久性においては不十分であった。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、光電変換効率に優れ、かつ十分な耐久性を発揮することができる有機光電変換素子およびこれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。
本発明者らが、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、以下の構成によって上記目的が達成されることを見出し、本発明の開示に至った。
すなわち、第1の電極と、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層と、正孔輸送層と、第2の電極と、をこの順に有する有機光電変換素子であって、前記第1の電極は、紫外光電子分光法で測定した仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体と、双極子モーメントを有し、前記ナノ構造体の表面に吸着した表面修飾分子と、を含み、前記第1の電極の仕事関数は、前記ナノ構造体の仕事関数よりも0.2eV以上小さく、かつ前記正孔輸送層の仕事関数よりも0.7eV以上小さい、有機光電変換素子である。
本発明の一実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明の他の実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明のさらに他の実施形態に係る、タンデム型の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明の一実施形態に係る、有機光電変換素子の第1の電極の部分拡大図である。 本発明のさらに他の実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明のさらに他の一実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明のさらに他の一実施形態に係る、タンデム型の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 ナノ構造体が銀(Ag)である場合に、表面被覆分子を被覆させた場合の、表面被覆分子の双極子モーメントと、Agの仕事関数との関係を示した模式図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書中、「仕事関数」とは、物質の表面から1個の電子を真空準位まで取り出すのに必要な最小のエネルギーと定義され、一般的には仕事関数の大きい(深い)材料は酸化されにくく、仕事関数の小さい(浅い)材料は酸化されやすいという性質を有する。また、本明細書中、仕事関数の測定方法は、紫外線光電子スペクトル分光装置(UPS法)により測定されるものとする。
また、「双極子モーメント」とは、負電荷から正電荷へ向かうベクトルと、電荷の大きさの積を示す。具体的には、密度汎関数(DFT)法による計算からそのベクトルおよび大きさを求めることができる。本発明書中では、吸着する金属種として銀(Ag)原子1個と結合した状態の双極子モーメントを求めた。計算プログラムはGaussian03を用い、基底関数に有機部はB3LYP/6−31G、金属部にB3LYP/SDDを用いて計算した。
さらに、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」であることを意味する。さらに、
「透明」とは、380〜800nmの可視光に対して80%以上の透過率を示すことを意味する。
本発明は、第1の電極と、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層と、正孔輸送層と、第2の電極と、をこの順に有する有機光電変換素子であって、前記第1の電極は、紫外光電子分光法で測定した仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体と、双極子モーメントを有し、前記ナノ構造体の表面に吸着した表面修飾分子と、を含み、前記第1の電極の仕事関数は、前記ナノ構造体の仕事関数よりも0.2eV以上小さく、かつ前記正孔輸送層の仕事関数よりも0.7eV以上小さい、有機光電変換素子である。
換言すると、本発明は、前記第1の電極は、紫外光電子分光法で測定した仕事関数が4.3eVよりも深い準位を有するナノ構造体と、双極子モーメントを有し、前記ナノ構造体の表面に吸着した表面修飾分子と、を含み、前記第1の電極の仕事関数は、前記ナノ構造体の仕事関数よりも0.2eV以上浅い準位であり、かつ前記正孔輸送層の仕事関数よりも0.7eV以上浅い準位である、有機光電変換素子である。
このように、第1の電極において、双極子モーメントを有する表面修飾分子がナノ構造体に吸着された構成をとることにより、光電変換効率に優れ、連続的な光照射によって光電変換素子を駆動させた場合の耐久性が向上した光電変換素子を得ることができる。そのメカニズムは明確ではないが、本発明者らは以下のように推測している。なお、本発明は、下記推測に限定されるものではない。
すなわち、上記構成により、ナノ構造体を有する電極と発電層との界面に準位のミスマッチが起きないように制御することが重要であると考えられる。
一般的に、上記のような準位のミスマッチを低減するためには、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらと同属の金属、および塩化物、フッ化物などといった、仕事関数の小さい(浅い)金属種(具体的には、カルシム、リチウム、セシウム、またはこれらを含む化合物)が電極材料やホールブロック材料として用いられる。しかしながら、仕事関数の小さい金属種は、水分や酸素に対して不安定であるため、水や酸素の影響を受けやすくなり、その結果、素子の寿命、すなわち耐久性を向上させることができない。これに対し、本発明では、第1の電極を構成する材料として、安定性に優れる電極部材、すなわち、仕事関数が大きい材料を芯材とするナノ構造体を用い、さらにこのナノ構造体に双極子モーメントを持つ表面修飾分子によって仕事関数の大きいナノ構造体を被覆することにより、電極と有機物界面の真空準位シフトにより見かけの仕事関数をシフトさせ、小さい仕事関数を得ることができ、結果として小さい仕事関数側の電極を水や酸素に対して安定な構成にすることができる。
なお、本発明においては、水や酸素に対し、ナノ構造体の安定性を保持するために、仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体を用いる。仕事関数が4.3eV以下であると、水や酸素に対する電極の安定性が十分でなく、好ましくない。
加えて、光照射によって安定に駆動させるためには、界面の準位ミスマッチが、連続駆動中においても変動しないことが必要である。そのために、本発明においては、表面修飾分子の被覆によって、第1の電極の仕事関数が、ナノ構造体の仕事関数と比較して、少なくとも0.2eV以上小さくなる方向に制御されている。
また、有機光電変換素子において原理的に十分な開放電圧(Voc)を得るためには、正孔輸送層の仕事関数と第1の電極、すなわち陰極の仕事関数との間に十分な電位差を有する必要があり、本発明においては、少なくとも0.7eV以上の電位差を有している。当該電位差が0.7eVよりも小さいと、実用的な開放電圧(Voc)を得ることができず、好ましくない。
一般的には、両電極(または両電荷輸送層)の電位差以上のVocは得ることができず、「発電層のp−n界面で形成される電位差(一般的には、p型半導体のHOMO−n型半導体のLUMOの差と言われる)−0.3eV≧開放電圧(Voc)」という関係が経験則的に得られている(例えば、Adv. Mater. 2006, 18, 789-794を参照)。ことから、最大限エネルギーに変換するためにも、正孔輸送層側の仕事関数と第1の電極側の仕事関数との間に十分な電位差を有する必要がある。
さらには、内蔵電界強度(E)は、電位差(V)に比例すると共に、膜厚(d)に反比例するため、電極間の電位差を広げることで、発電層内部のキャリア密度が略均一の場合、膜厚依存性を低減し変換効率を向上させるためにも両極の電位差を広げるメリットが得られる。
以下、添付した図面を参照しながら本発明の有機光電変換素子を説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
<有機光電変換素子の構成>
以下、本発明の有機光電変換素子の構成について、図1〜3を参照して説明するが、主に正孔が流れる電極を「陽極」と称し、主に電子が流れる電極を「陰極」と称する。
[一実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る、有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。具体的には、図1の有機光電変換素子10は、基板25上に、第1の電極としての陰極11、電子輸送層27、光電変換層14、正孔輸送層26、および第2の電極としての陽極12がこの順に積層されてなる構成を有する。なお、後述するように、表面修飾分子が十分なホールブロック作用を有する場合は、電子輸送層27は設けられていなくてもよい。
図1に示す有機光電変換素子10の作動時において、光は基板25側から照射される。本実施形態に備えられる陰極11の構成は、以下で詳述するが、照射された光が光電変換層14へと届きやすくするため、透明性が高いものであると好ましい。基板25側から照射された光は、透明な陰極11、電子輸送層27を経て光電変換層14へと届く。
図1において、基板25を経て陰極11から入射された光は、光電変換層14における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は内部電界、例えば、陽極12と陰極11との仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極11との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
なお、正孔輸送層26は、正孔の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した正孔を効率よく陽極12へと輸送する機能を担っている。一方、電子輸送層27は、電子の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した電子を効率よく陰極11へと輸送する機能を担っている。
[他の実施形態]
図2は、本発明の他の一実施形態に係る有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図2の有機光電変換素子20は、図1の有機光電変換素子10と比較して、陽極12と陰極11とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。すなわち、図2の有機光電変換素子20は、基板25上に、陽極12、正孔輸送層26、光電変換層14、電子輸送層27、および陰極11がこの順に積層されてなる構成を有している。このような構成を有することにより、光電変換層14のpn接合界面で生成される電子は電子輸送層27を経て陰極11へと輸送され、正孔は正孔輸送層26を経て陽極12へと輸送される。
[さらに他の実施形態]
図3は、本発明のさらに他の一実施形態に係る、タンデム型(多接合型)の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図3の有機光電変換素子30は、図2の有機光電変換素子20と比較して、光電変換層14に代えて、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bと、これら2つの光電変換層14a,14bの間に介在する電荷再結合層38との積層体が配置されている点が異なる。図3に示すタンデム型の有機光電変換素子30では、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bに、それぞれ吸収波長の異なる光電変換材料(p型有機半導体およびn型有機半導体)を用いることにより、より広い波長域の光を効率よく電気に変換することが可能となる。
以下、本発明に係る有機光電変換素子の各構成要素について詳細に説明する。
<第1の電極>
以下、本発明の第1の電極である陰極11の構成について、図4(a)(b)を参照して説明する。
本発明の第1の電極は、仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体2と、双極子モーメントを有し、ナノ構造体2の表面に吸着した表面修飾分子3と、を含んでいる。なお、図4(a)(b)において、便宜上、表面修飾分子3が膜のような態様を図示しているが、以下で詳述するように、表面修飾分子3はそれぞれの分子が個々にナノ構造体2に吸着している。一般的な概念としては分子自己吸着膜(SAM膜)を形成している。
また、第1の電極は、主としてナノ構造体2(または2’)と表面修飾分子3とから構成されうるが、他の構成として、これら以外にも、ITO(インジウムスズ酸化物)、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)等の透明導電性材料からなる薄膜、すなわち、補助電極としての透明導電膜1を予め形成し、透明導電膜1上にナノ構造体2(または2’)を形成する構成としてもよい。
また、表面修飾分子3は、ホールブロック作用を有し、電子輸送層としても機能しうる。
さらに、本発明の第1の電極は、上記の各要素を備えるだけでなく、下記で詳述するナノ構造体の仕事関数よりも0.2eV以上小さく、かつ正孔輸送層の仕事関数よりも0.7eV以上小さい。すなわち、第1の電極とナノ構造体との仕事関数の差は、0.2eV以上であり、第1の電極と正孔輸送層との仕事関数の差は、0.7eV以上である。
[ナノ構造体]
本明細書中、第1の電極に含まれる「ナノ構造体」とは、その表面に形成される凹凸による最大高低差(Rpv)が、長さの単位としてナノメートル(nm)を用いて表示されるものであり、その最大高低差(Rpv)の範囲としては、50〜1000nmであると好ましく、70〜200nmであるとさらに好ましく、90〜150nmであると特に好ましい。なお、本明細書中、最大高低差(Rpv)は、JIS B 0601:2001に従って測定されるものである。
ナノ構造体2(または2’)は、長径が数〜数十nmスケールである微小構造体2a(または2a’)の集合体であり、この微小構造体2a(または2a’)としては、例えば、ナノワイヤー2a(ナノファイバー)、ナノ粒子2a’、ナノロッド、ナノピラー、ナノベルト、ナノリボン、ナノポーラス構造体などを好ましく用いることができる。中でも、第1の電極を塗布法により製膜する際、製膜プロセスが簡便であるため、ナノワイヤー2a、ナノ粒子2a’を用いると好ましい。さらに、これらの微小構造体は、界面抵抗があることから、可能な限り界面を小さくする目的で、ナノワイヤー2aを用いると特に好適である。
ナノ構造体の厚さとしては、有機光電変換素子の電極として機能しうる導電性を確保するため、最大厚さが50〜1000nm程度であると好ましい。
ナノ構造体の材料としては、金属、金属酸化物、金属窒化物等の無機物、有機物ポリマー等が挙げられるが、導電性を有する材料であると特に好適である。導電性を有する材料としては、例えば、金属でコーティングした有機物、金属でコーティングした無機物、導電性金属酸化物、金属等が挙げられる。ナノ構造体に十分な導電性を付与するため、特に、金属によってナノ構造体を形成すると好ましい。
ナノ構造体に十分な導電性を付与するため、本発明のナノ構造体を形成する金属は、白金(Pt:6.3eV)、金(Au:5.1eV)、銀(Ag:4.3eV)、銅(Cu:4.7eV)、鉄(Fe:4.5eV)、錫(Sn:4.4eV)、コバルト(Co:5.0eV)、クロム(Cr:4.5eV)、ニッケル(Ni:5.0eV)、モリブデン(Mo:4.4eV)、タングステン(W:4.5eV)、亜鉛(Zn:4.3eV)、タンタル(Ta:4.25eV)、インジウム(In)、テルル(Te)、レニウム(Re)、ゲルマニウム(Ge)等から選択される1種、またはこれらの中の複数種を組み合わせて用いることができる。なお、括弧内の数値は各金属の仕事関数を示すが、上述した金属種の仕事関数は一般的な文献値(参考値)であり、製膜方法やプロセス、本願の凹凸構造(ナノ構造体)を形成する過程によって変化することがある。本発明においては、第1の電極の導電性と安定性が両立でき、ナノ構造体の仕事関数が4.3eVよりも大きければよく、必ずしも上述の括弧内に記載した文献値と正確に一致するわけではない。また、このような場合、公知の方法により表面をクリーニングすることが好ましい。例えば、プラズマエッチング法やスパッタリングによるクリーニング、エキシマランプやレーザーなどによるアブレーション法などを好ましく用いることができる。
上記金属の中でも、白金、金、銀といった貴金属、および銅、鉄、錫、コバルト、クロム、ニッケル、モリブデン、タングステン、亜鉛からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、これらの中でも、特に、仕事関数が4.3eV以上の白金、金、銀、銅、コバルト、クロム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、モリブデン、タングステン、亜鉛が好ましい。これらの中でも、仕事関数が大きく、酸化に対して特に安定な金属である、金、銀、銅、タングステンおよび亜鉛からなる群から選択される少なくとも一種を含むと好ましい。導電性、および後述する表面修飾分子の吸着性の観点から、少なくとも銀を含むことがより好ましい。また、導電性と安定性(ナノ構造体の硫化や酸化耐性、およびマグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含んでいてもよい。
(ナノワイヤー)
本発明において、ナノ構造体を形成するために用いられる微小構造体としてのナノワイヤーは、その長さが直径(太さ)に比べて十分に長い形状を持つものである。ナノワイヤーの形状としては中空チューブ状、ワイヤ状、ファイバー状のもの等が挙げられる。
本発明に係るナノワイヤーは、有機膜内においてナノワイヤーが互いに接触し合うことにより3次元的なキャリアパスネットワークを形成し電極に対して補助的に機能すると考えられる。従って、ナノワイヤーが長い方が導電ネットワーク形成に有利であるため好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤーとしては、1本の金属ナノワイヤーで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには4〜500μmが好ましく、特に5〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
一方で、ナノワイヤーが長くなるとナノワイヤーが絡み合って凝集体を生じ、光学特性を劣化させる場合がある。導電ネットワーク形成や凝集体生成には、ナノファイバーの剛性や直径等も影響するため、使用するナノファイバーに応じて最適な平均アスペクト比(アスペクト比=長さ/直径)のものを使用することが好ましい。大凡の目安として、平均アスペクト比は、3〜50,000、より好ましくは5〜10,000、さらに好ましくは10〜1,000、特に好ましくは100〜500であるものが好ましい。
ナノワイヤーの平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、ナノワイヤーの平均直径として5〜300nmが好ましく、10〜200nmであることがより好ましく、20〜150nmであるとさらに好ましく、30〜100nmであると特に好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。なお、上記ナノワイヤーの長さおよび直径は、高倍率のTEM観察により計測したものとし、より具体的には、TEM観察により500本のナノワイヤーを測定した平均値を採用するものとする。
ナノワイヤーの材料としては、上記の無機物および有機物が挙げられるが、特に、導電性を有していると好ましい。本発明に係る導電性を有するナノワイヤーとは、例えば、金属でコーティングした有機ナノファイバーや無機ナノファイバー、導電性金属酸化物ナノファイバー、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
〔金属ナノワイヤー〕
上記で説明したナノ構造体を構成する微小構造体の中でも、特に金属ナノワイヤーを用いてナノ構造体を形成すると好ましい。
一般に、金属ナノワイヤーとは、金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤーとは、原子スケールからnmスケールの直径を有する線状構造体を意味する。
本発明に係る金属ナノワイヤーの材料は、上述の金属種を1種または複数を組み合わせて用いてもよく、このとき、銀、亜鉛(酸化物)を用いると好ましい。さらに、2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよく、金属ナノワイヤー全体が合金として同一の金属組成を有していてもよい。
本発明において金属ナノワイヤーの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。特に、Adv.Mater.,2002,14,833〜837およびChem.Mater.,2002,14,4736〜4745で報告された銀ナノワイヤーの製造方法は、水系で簡便に銀ナノワイヤーを製造することができる。銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤーとして特に好ましく用いることができる。
(ナノピラー)
ナノ構造体を形成するために用いられる微小構造体としてのナノピラーは、そのピラー径(直径)と高さの比がナノワイヤーとは若干異なるが、基本的には上記のナノワイヤーと同等の材料からなり、同等の構成をとる。なお、アスペクト比(アスペクト比=高さ/直径)は、上記のナノワイヤーと同様の範囲内であると好適である。 (ナノ粒子)
ナノ構造体を形成するために用いられる微小構造体としてのナノ粒子は、その粒子径が5〜500nmの範囲であると好ましい。ここで、「粒子径」とは、ナノ粒子が球状である場合はその直径を意味し、ナノ粒子が球状ではない場合は長径を意味する。ナノ粒子の粒子径は、高倍率のTEM観察により計測したものとし、より具体的には、TEM観察により500個の粒子を測定した平均値を採用するものとする。
ナノ粒子の材料としては、上記の無機物および有機物が挙げられるが、特に、導電性を有していると好ましい。本発明に係る導電性を有するナノ粒子とは、例えば、金属でコーティングした有機ナノ粒子や無機ナノ粒子、導電性金属酸化物からなるナノ粒子、金属ナノ粒子等が挙げられる。ナノ構造体に十分な導電性を付与するために、ナノ粒子を形成する金属は、上述の金属種から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、特に金、銀を用いると好ましい。
このようなナノ粒子、特に金属ナノ粒子の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号、特開平11−80647号、特開2000−239853号などに示されたコロイド法、特開2001−254185号、特開2001−53028号、特開2001−35814号、特開2001−35255号、特開2000−124157号、特開2000−123634号などに記載されたガス中蒸発法によるものである。
[表面修飾分子]
本発明において、第1の電極は、双極子モーメントを有する表面修飾分子がナノ構造体に吸着した構成を有している。表面修飾分子はナノ構造体を被覆するため、ナノ構造体に対して吸着性を有する吸着基を分子の末端に有する。吸着基の例としては、チオール基(−SH)、メチルチオ基(−SCH)、メルカプトチオ基(−S−SH)、メチルメルカプトチオ基、ジチオカルバメート基(−N−CS)、キサンタート基(−O−CS2)、チオカルボニル基(>C=S)、チオカルボキシル基(−C(O)SH)、アセチルチオ基(−SC(O)CH)、ジチオカルボキシル基、スルフィド基(−S−)、ジスルフィド基(−S−S−)、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基(−SOOH)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホノ基(−P(O)(OH))、燐酸基(−POH)が挙げられる。
上述のように、ナノ構造体が十分な導電性を有することが好ましいことから、ナノ構造体の材料は金属であると好適である。したがって、前記吸着基の中でも、金属表面に対する吸着性および熱安定性が高いチオール基、ジチオカルバメート基、キサンタート基、スルフィド基、ジスルフィド基が好ましく、チオール基、ジチオカルバメート基がより好ましい。表面修飾分子は上記吸着基を単独または複数有していてもよく、あるいは異なる種類を組み合わせて有していてもよい。なお、本明細書中、「吸着」とは、ファンデルワールス力による物理吸着、または、共有結合、イオン結合、配意結合、水素結合等による化学吸着を意味するものであるが、ナノ構造体に対して表面修飾分子が強固に吸着する化学吸着が好ましい。
例えば、金属ナノワイヤーなどからなる金属ナノ構造体に表面修飾分子を吸着させる場合、チオール基、メチルチオ基、メルカプトチオ基、メチルメルカプトチオ基、ジチオカルバメート基、アセチルチオ基などの吸着基を末端に有している化合物を用いて、スルフィド結合により金属ナノ構造体の表面に吸着させる。あるいは、ジスルフィド結合を介して結合する分子の二量体あるいは多量体から金属ナノ構造体に吸着させても良い。
表面修飾分子をナノ構造体に吸着することによって、物性を変化させることができる。かような物性の変化として、見かけ上の仕事関数の変化が挙げられる。かような物性を変化させる表面修飾分子の例としては、例えば、分子内に双極子モーメントを誘起させるように、ナノ構造体に対して吸着性を有する吸着基に、窒素原子、炭素原子または硫黄原子を介して結合する置換基を有する表面修飾分子が挙げられる。一般に、表面修飾分子が吸着したナノ構造体の仕事関数の変化量は、表面修飾分子が吸着する密度および表面修飾分子の双極子モーメントの大きさに比例する。したがって、適当な仕事関数を有するナノ構造体を構成するため、表面修飾分子が双極子モーメントを有することが好ましい。表面修飾分子の双極子モーメントは適宜選択できるが、本発明においては水分や酸素の影響を低減したナノ構造体からなる電極を形成させるために、+1.0〜+20Dであると好ましく、+1.5〜+10Dであるとより好ましく、+3.0〜10.0Dであると特に好ましい。ここで本発明における双極子モーメントとは、表面修飾分子に吸着基を介し銀(Ag)原子1個に吸着した分子構造について、密度汎関数(DFT)法により算出した双極子モーメントを指す。
かように、分子内に双極子モーメントを有する表面修飾分子をナノ構造体に吸着させることによって、真空準位が高くなり、本来は仕事関数が大きいナノ構造体であっても、見かけ上小さな仕事関数を得ることができ、第1の電極および第2の電極との間に十分な開放電圧(Voc)を得ることができるため、酸化等に耐性のある金属種を電極に使用可能となるため好ましい。この際、表面修飾分子を吸着させるナノ構造体としては、上記ナノ構造体の欄で記載したいずれを用いてもよいが、金属からなる金属ナノ構造体、特に、金属ナノワイヤーまたは金属ナノ粒子からなる金属ナノ構造体を用いることが好ましい。
また、表面修飾分子は、上記の双極子モーメントが得られれば特に限定されず、電子供与性基、電子吸引性基を適当に導入した分子を用いることができる。中でも吸着基に結合した電子供与性基を有することが好ましい。すなわち、表面修飾分子は、ナノ構造体を形成する吸着する吸着基と、該吸着基に結合した電子供与性置換基と、を有することが特に好ましい。本明細書中、「電子供与性基」とは、ハメットの置換基定数σpが負の値を取る置換基のことを指す。電子供与性基は、好適には表面修飾分子の吸着基に結合する。吸着基に結合した電子供与性基を有することにより、表面修飾分子の双極子モーメントの大きさおよび方向を適切に制御することが容易になる。なお、電子供与性基は、必ずしも吸着基に直接結合している必要はなく、置換または非置換の脂肪族基や芳香族基を介していてもよい。
電子供与性基の例としては、ヒドロキシル基(又はその塩)、メルカプト基(又はその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、σpが負の値を取るヘテロ環基又はこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基が挙げられる。表面修飾分子は上記電子供与性基を単独または複数有していてもよく、あるいは異なる種類を組み合わせて有していてもよい。
表面修飾分子としては、欧州特許出願公開第2278636号公報に開示されているようなジチオカルバメート化合物、アルキルジチオカルバメート化合物、フェニルジチオカルバメート化合物、ジフェニルジチオカルバメート化合物などの誘導体を用いることができる。
具体的には表面修飾分子としては、以下が挙げられる。
上記式(A)〜(Q)において、nは0〜3の整数であり、XはNまたはCHを表し、好ましくはNであり、X’はそれぞれ独立して−N=または−CH=を表し、好ましくは−N=であり、X”は−NR−、−CR−を表し、好ましくは−NR−であり、Rは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、またはベンジル基を表す。Yは−N=、−CH=、または−C(CH)=を表し、Zは=N−、=CH−、または=C(CH)−を表し、EA’は−OC(O)−、−CO(O)−、−C(O)−、および−SO−を表し、ED’は−NR’−、−N(R’)C(O)−、−O−、または−S−を表し、R’は、水素原子、メチル基、エチル基、またはベンジル基を表す。また、上記式(A)〜(Q)において、EAは電子受容性基を表し、EDは電子供与性基を表し、同一化合物内に同じ符号が2以上存在する場合、各符号は同一のものを表しても異なるものを表してもよい。
EAで表わされる電子受容性基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、−CF、−CCOOCF、−SOCF、−COCF、−CHO、−COOCH、−SOCH、−SONH、−COCH、−CNまたは−NOが挙げられる。EDで表わされる電子供与性基としては、−CH、−NH、−NHCH、−N(CH、−OHまたは−OCHが挙げられる。EAまたはEDの置換位置は、特に限定されないが、EDの場合p位であることが好ましく、EAの場合o位であることが好ましい。
また、上記式(K)において、R”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、および炭素原子数1〜20の置換または非置換のアリール基を表すが、双方が水素原子を表すことはない。
上記ジチオカルバメート化合物によって、ナノ構造体とは下記のような構造を形成する。
Mはナノ構造体表面の金属原子を示す。
なお、ジチオカルバメート基を介して金属ナノ構造体の表面に吸着させる方法は、J. AM. CHEM. SOC. 2005, 127, 7328-7329記載の方法を参考に処理することができる。具体的には、前駆体となる一級または二級アミンと二硫化炭素とを金属ナノ構造体に接触させることにより吸着させることができる。前駆体は二級アミンであることがより好ましい。すなわち、下記の反応式(1)で示される反応により生じるジチオカルバミン酸(RNCS )を、金属ナノ構造体の存在下で発生させることにより、ジチオカルバメート基を介して表面吸着分子を吸着させることができる。
上記反応式(1)において、Rは特に限定されないが、例えば、水素原子、置換または非置換の脂肪族基や芳香族基から選択される。また、上記反応式(1)においてRNHで示される二級アミン類としては、ピペラジン、ピペリジン、ジアルキルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン類などを好ましく用いることができる。
上記式(A)〜(Q)の中でも、好ましい表面修飾分子の具体例としては、下記の構造の化合物が挙げられる。なお、本明細書中、化合物を下記番号で表す。たとえば、下記構造1の化合物を「化合物1」と称するが、下記では、各化合物が金属に吸着した構造を示している。また、化合物の右側に記載した数値は、当該化合物の双極子モーメントの大きさを示す。たとえば、化合物1の場合、双極子モーメントは1.45Dである。
本発明の表面修飾分子にナノ構造体と吸着しうる置換基を導入する方法は、公知の合成手法を適用できる。例えば、芳香環末端にSH基を置換する方法としては、J.Org.Chem.;EN;60;7;1995;2082−2091.、J.Amer.Chem.Soc.;EN;116;26;1994;11985−11989.、Synthesis;EN;9;1983;751−755.、J.Chem.Soc.PerkinTrans.1;EN;1987;187−194.を参照することができる。また、銀と吸着する硫黄原子を末端に有し、アルキレン基を介してπ電子系を有する化合物における「アルキレン末端SH」の作り方には、J.Amer.Chem.Soc.;70;1948;2439.(イソチオ尿素の還元)、Chem.Ber.;GE;93;1960;2604−2612.(末端ハロゲン化アルキルにチオ尿素を作用させた反応)、TetrahedronLett.;EN;35;12;1994;1837−1840.(末端のC=C二重結合にトリフェニルシランチオールを作用させたラジカル反応により二重結合に付加)を参照することができる。
本発明に使用される他の表面修飾分子として、ポリ(3−アルキルチオフェン)類を用いてもよい。より具体的には、下記一般式(1)で表される末端チオフェン単位の5位に吸着基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)と一般式(2)で表される末端チオフェン単位の2位に吸着基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)が挙げられる。
上記一般式(1)および(2)中、Rは置換基又は非置換基の炭素数4〜15のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R’は水素原子又は任意の置換基を表す。R’’は、水素原子、メチル基、アセチル基、メルカプト基、またはメチルメルカプト基を表す。Xは、2価の連結基を表す。mは0又は1を表し、nは、2〜500の整数を表す。
一般式(1)又は(2)において、Rで表される炭素数4〜15のアルキル基またはアルコキシアルキル基は、炭素数6〜10のアルキル基またはアルコキシアルキル基が好ましい。
R’で表される置換基は、置換又は非置換のアルキル基等を挙げることができ、好ましくは、メチル基ある。
Xは、好ましくは、アルキレン基またはアリーレン基、さらに好ましくは、メチレン基、エチレンまたはプロピレンを表す。
mは0または1が好ましい。nは100〜500が好ましく、150〜300が最も好ましい。)
さらにまた、本発明の別の好ましい表面修飾分子として、特開2001−253883号公報、特開2008−16834号公報などに開示されたポルフィリン誘導体が挙げられる。本発明において、ナノ構造体に結合したポルフィリンを得るためには、上述の方法でナノ構造体への吸着基を有するポルフィリン単量体を合成する方法を用いることができる。
上記の表面修飾分子を用いてナノ構造体を修飾する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。一例としては、上記の表面修飾分子の溶液中に、ナノ構造体を形成した基板を浸漬させることにより表面修飾分子をナノ構造体に吸着させることができる。この際、表面修飾分子の添加量は、効果を奏する限り特に限定されないが、金属ナノ構造体100質量%に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。
[第1の電極の作製方法]
本発明のナノ構造体を有する第1の電極を形成する手段は、本発明の効果が得られるものであれば公知のいかなる方法であってよいが、以下に、作製方法の好ましい例を説明する。
(方法I−I:ナノ構造体を形成後、表面修飾分子を吸着させる方法)
第1の電極を作製する際、まず、基板(または予め作製した電子輸送層や光電変換層)上にナノ構造体を形成し、その後、表面修飾分子の溶液にナノ構造体を浸漬させることにより、表面修飾分子が吸着したナノ構造体を含む第1の電極を形成することができる。なお、表面修飾分子の溶液に浸漬させた後、溶媒のみで洗浄して乾燥させる工程をさらに行ってもよい。
ナノ構造体を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、分子線エピタキシー法等のドライプロセス、スピンコート法、ディップ法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)等のウェットプロセスによって上述の微小構造体を集積させる方法が挙げられる。製膜の容易さの観点や、ダイコータ等の装置を用いてロール・ツー・ロールで生産可能なことから、ウェットプロセスを用いると好ましい。
ウェットプロセスを用いる場合、溶液中に微小構造体を分散させる必要があり、その濃度は特に限定されないが、希薄溶液の場合にはナノ構造体の形成が不十分となるため、少なくとも0.01質量%以上であると好ましい。好ましくは、0.1〜50質量%、さらに好ましくは、0.3〜5質量%の範囲である。また、用いる溶媒としては、上述の微小構造体を均一に分散できるような溶媒であれば特に限定されないが、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類、水、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒を用いることができる。また、これらの溶媒中で微小構造体を均一に分散させるために、超音波処理を行ってもよい。
上記にしたがって形成したナノ構造体を浸漬させる表面修飾分子の溶液は、適当な表面修飾分子(または表面修飾分子の前駆体)を適当な溶媒に溶解させることにより調製する。使用される溶媒の種類は特に限定されるものではないが、上記の表面修飾分子が溶解するものであれば非極性溶媒でも極性溶媒でもよい。例えば、n−へキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メタノール、エタノール、エトキシエタノール、2−プロパノール、水等が挙げられる。このとき、ナノ構造体に十分な量の表面修飾分子を吸着させるため、少なくとも10〜500mMであると好ましい。
その後の洗浄に用いる溶媒は、溶液に使用したものと同じでも異なってもよく、適宜選択することができる。
塗布法により第1の電極を形成する場合、塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布および乾燥時の温度変動による材料のムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃、さらに好ましくは50〜80℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
なお、基板上に第1の電極を形成する構成、すなわち、一実施形態である有機光電変換素子10の構成を採用する場合、基板上に予め補助電極としてのITO等の透明導電膜を形成してもよいし、ITO表面と発電層の半導体材料との間で不要な短絡を避けるために、ブロック層(好ましくはホールブロック層)を適宜設けてもよい。さらには、ナノ構造体が表面処理中に基板から剥離しないように下地層を設けてもよく、この下地層がホールブロック性を有していてもよい。
(方法I−II:第1の電極と同時に光電変換層も同時に形成する方法)
上記の方法I−Iでは、ナノ構造体を形成した後、表面修飾分子の溶液を浸漬させる方法を説明したが、この表面修飾分子の溶液に、さらに、以下で詳述する光電変換層を構成する材料もまた分散させておいてもよい。このとき用いられる溶媒としては、表面修飾分子を溶解させることができると共に、光電変換層を構成する材料を十分に分散可能な溶媒が用いられる。
(方法II−I:ナノ構造体と表面修飾分子の混合溶液を塗布する方法)
上記の方法I−Iでは、ナノ構造体を形成する微小構造体の溶液と、表面修飾分子の溶液を別途調製し、ナノ構造体を予め形成した後に表面修飾分子を吸着させる方法を説明したが、これらを両方含む混合溶液を調製して第1の電極を形成してもよい。微小構造体と表面修飾分子を同じ溶液中に分散させることにより、溶液中で微小構造体に対して表面修飾分子が吸着する。このとき用いられる溶媒としては、微小構造体を分散させることができると共に、表面修飾分子を十分に溶解可能な溶媒が用いられる。
なお、有機光電変換素子を、陰極側から順に形成する場合、すなわち、一実施形態である有機光電変換素子10を作製する場合、微小構造体と表面修飾分子の混合溶媒を塗布する前に、電子輸送層(ホールブロック層とも言う)を形成しておくと好適である。
(方法II−II:第1の電極と同時に光電変換層も同時に形成する方法)
上記の方法II−Iでは、微小構造体と表面修飾分子を含む混合溶液を塗布することにより第1の電極を形成する方法を説明したが、この混合溶液に、さらに、以下で詳述する光電変換層を構成する材料もまた分散させておいてもよい。このとき用いられる溶媒としては、微小構造体および表面修飾分子を十分に分散させることができると共に、光電変換層を構成する材料を十分に分散可能な溶媒が用いられる。
<第2の電極>
本発明の有機光電変換素子は、上述の第1の電極と対向する電極である第2の電極を必須としている。陰極である第1の電極と対向して形成される第2の電極は、陽極として機能するものである。
第2の電極に使用される材料は、光電変換素子が駆動する限りにおいては特に制限はなく、本技術分野で使用されうる電極材料を適宜採用することができる。なかでも、第2の電極は第1の電極と比較して相対的に仕事関数が大きい材料から構成されることが好ましく、逆に第1の電極は、上述の通り、表面修飾分子を含むことにより、相対的に見かけ上の仕事関数が小さい構成をとる。なお、電荷輸送層(正孔輸送層または電子輸送層)が存在する場合は、上記以外の形態であっても十分に光電変換素子として機能する。
また、第2の電極を構成する材料の微視的な形状も特に制限はなく、ナノワイヤー、ナノ粒子、薄膜等の形状で使用されうる。さらに、互いに異なる材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成してもよい。
なお、第1の電極および第2の電極のシート抵抗は、特に制限はないが、数百Ω/□以下が好ましく、50Ω/□以下がより好ましく、15Ω/□以下がさらに好ましい。なお、第1の電極および第2の電極のシート抵抗の下限は、特に制限されないが、通常、0.01Ω/□以上、好ましくは0.1Ω/□以上であれば本発明の効果を得ることができる。ここで、第1の電極および第2の電極のシート抵抗は、同じであってもあるいは異なってもよい。また、第2の電極の膜厚も特に制限はなく、材料によって異なるが、通常、10〜1000nmであり、好ましくは100〜200nmであり、光の透過率または抵抗の観点から当業者により適宜設定されうる。ここで、第1の電極および第2の電極の膜厚は、同じであってもあるいは異なってもよい。
[一実施形態]
図1に示す有機光電変換素子10では、光が入射する基板25側、すなわち基板25の表面上に第1の電極である陰極11が形成され、反対側、すなわち、基板25から最も遠い位置に第2の電極である陽極12が形成されている。したがって、図1に示す陰極11は、上述の通り、陽極12と比較して相対的に見かけ上の仕事関数が小さく、透明性の高い構成を採る。一方、陽極12は、陰極11と比較して相対的に仕事関数が大きく、通常、透光性の低い電極材料から構成されることが好ましい。
図1の有機光電変換素子10において、第2の電極に使用される電極材料としては、例えば、金、白金、銀、ニッケル、モリブデン、タングステン、および銅等の金属;インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、SnO、ZnO等の透明な導電性金属酸化物;金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が挙げられる。また、第2の電極の電極材料として、導電性高分子を用いてもよい。第2の電極に使用されうる導電性高分子としては、例えば、PEDOT:PSS、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。
また、これらの材料の中でも、特に金属を用いることにより、第1の電極側から入射し、光電変換層で吸収されずに透過した光を、第2の電極で反射させて光電変換に再利用することができ、光電変換効率を向上させることが可能である。
[他の実施形態]
図2および図3の有機光電変換素子20,30では、第2の電極である陽極12は、基板25の表面上に接するように形成されている。したがって、光の入射側に第2の電極が形成される図2および図3の場合、第2の電極は透光性を備える必要があることから、透明電極が作製される。なお、透光性を有する電極を「透明電極」と呼び、透光性の低い電極を「対電極」と呼び分ける場合もある。図2および図3の形態の場合、通常、第2の電極は透光性のある透明電極であり、第1の電極は透光性が低い対電極である。
上述の図2および図3に示す有機光電変換素子20,30において、第2の電極は、第1の電極と比較して相対的に仕事関数が大きく、透明な電極材料から構成されることが好ましい。
このように、図2および図3に示す有機光電変換素子20,30において、透明電極である第2の電極に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、白金等の金属;インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、SnO、ZnO等の透明な導電性金属酸化物;金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が挙げられる。また、第2の電極の電極材料として、導電性高分子を用いてもよい。第2の電極に使用されうる導電性高分子としては、例えば、PEDOT:PSS、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。
(補助電極)
第1の電極および/または第2の電極を形成する際、補助電極を作製してもよい。補助電極の材料として、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、またはこれらの合金(たとえば、アルミニウム合金)、銀化合物などの金属化合物、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、SnO、ZnO等の透明な導電性金属酸化物等を用いて、補助電極(グリッド電極、バスライン電極とも称される)を作製してもよい。補助電極を作製した後、上記の例示した導電性高分子の膜を設けることで、透明電極とすることができる。このように補助電極を設けることにより、素子を大面積化した場合に起こる曲線因子(FF)の低減を抑えることができる。
補助電極の形状は特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状もしくはメッシュ状、またはランダムな網目状である。導電部がストライプ状またはメッシュ状の補助電極を形成する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法が利用できる。例えば、基板全面に金属層を形成し、公知のフォトリソグラフィ法によって形成できる。具体的には、基板上に全面に、蒸着、スパッタ、めっき等の1もしくは2以上の物理的または化学的形成手法を用いて導電体層を形成する方法や、金属箔を接着剤で基板に積層した後、公知のフォトリソグラフィ法を用いてエッチングする方法等により、所望のストライプ状またはメッシュ状に加工できる。別の方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット方式等の各種印刷法により所望の形状に印刷する方法や、めっき可能な触媒インクを同様な各種印刷法で所望の形状に塗布した後、めっき処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。こうした方法の中でも、金属微粒子を含有するインクを各種印刷法により所望の形状に印刷する方法は簡便な工程で製造できることから製造時にリークの原因となるような異物の巻き込みを低減でき、また、必要個所にしかインクを使用しないので液のロスが少ないことから最も好ましい。
また、補助電極を有する場合のシート抵抗は、0.001〜20Ω/□であることが好ましく、さらに0.01〜10Ω/□であると好ましく、0.5〜8Ω/□であると特に好ましい。この場合、シート抵抗は補助電極の形状(線幅、高さ、ピッチ、形状)によって決まり、補助電極よりも抵抗の高い材料を使用する場合であっても窓部の抵抗影響はほとんど受けない。
<正孔輸送層>
本形態の有機光電変換素子は、正孔輸送層を必須に含む。正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有し、かつ電子を輸送する能力が著しく小さい(例えば、正孔の移動度の10分の1以下)という性質を有する。正孔輸送層は、光電変換層と陽極との間に設けられ、正孔を陽極へと輸送しつつ、電子の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。よって、本明細書では、正孔注入層、電子ブロック層等も正孔輸送層の概念に含む。
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができ、例えば導電性高分子や、低分子有機半導体、金属酸化物などを好ましく用いることができる。
本発明で好ましく用いられる導電性高分子は、特に限定されないが、π共役系高分子とポリアニオンとを有してなることが好ましい。こうした高分子は、π共役系高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
本発明に用いることができるπ共役系高分子としては、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。さらにはポリエチレンジオキシチオフェン類であることが好ましい。
本発明で好ましく用いられるポリアニオンは特に限定されないが、アニオン性基として、スルホ基を有することがより好ましい。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、化合物内にフッ素(F)を有するポリアニオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
こうした導電性ポリマーは公知な材料や市販の材料も好ましく利用できる。例えば、一例を挙げると、ヘレウス社製、商品名Clevios(登録商標)−P等のPEDOT:PSS、欧州特許第1546237号、特開2009−132897号公報等に記載のフッ素系ポリアニオン類(ナフィオン(登録商標)等)含有、または特開2006−225658号公報のようなフッ素系ポリアニオン添加構成、欧州特許第1647566号等に記載のポリチエノチオフェン類、特開2010−206146号に記載のスルホン化ポリチオフェン類、ポリアニリンおよびそのドープ材料、国際公開第2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物等、Aldrich社からPEDOT−PASS483095、560598として、Nagase Chemtex社からDenatron(登録商標)シリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECON(登録商標)シリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
また、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等もまた、用いられうる。
また、これら以外にも、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物等が使用可能であり、これらのうちでは、芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。なお、場合によっては、p型−Si、p型−SiC、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン等の無機化合物を用いて正孔輸送層を形成してもよい。
さらに上記化合物に含まれる構造単位を高分子鎖に導入した、あるいは、上記化合物を高分子の主鎖とした高分子材料を正孔輸送材料として用いることもできる。また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような、p型有機半導体化合物からなる正孔輸送材料を用いることもできる。さらに、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送材料を用いることもできる。一例を挙げると、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、Appl.Phys.Let.,98,073311(2011)等に記載された材料、および構成が挙げられる。
さらに、有機半導体材料としては、8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン誘導体、ポリフルオレン誘導体などがある。このうち、8−キノリノール誘導体の金属錯体としては、特に制限されないが、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体などが挙げられる。また、フタロシアニン誘導体としては、特に制限されないが、例えば、フタロシアニンの中心金属がCu、Sn、Si、Zn、Alなどを含むもの。また、これら中心金属に共有結合または配位結合した側鎖構造を有するもの。例えば、フタロシアニンクロロアルミニウムや、フタロシアニンアルキルシラン、また、メタルフリーおよびメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基、ハロゲン基等で置換されているものなどが挙げられる。ポリフルオレン誘導体としては、特に制限されないが、例えば、APPLIED PHYSICS LETTERS 96, 063303 2010に記載のポリジオクチルフルオレン−ブチルフェニルジフェニルアミン(通称TFB)、国際公開第2002/028983号パンフレットのFig.4aやFig.4bに記載のフルオレン誘導体などが挙げられる。
なお、これらの正孔輸送材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用またはドープしてもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて正孔輸送層を構成することも可能である。
このような導電性高分子や有機半導体化合物からなる正孔輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは5nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
正孔輸送層の導電率は、一般的に高い方が好ましいが、高くなりすぎると電子が移動するのを阻止する能力が低下し、整流性が低くなりうる。したがって、正孔輸送層の導電率は、10−5〜1S/cmであることが好ましく、10−4〜10−2S/cmであることがより好ましい。
本発明で好ましく用いることができる正孔輸送層として、主に金属酸化物を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは正孔輸送層の構成材料の合計量100質量%に占める金属酸化物の割合が50質量%以上であることを意味する。ただし、金属酸化物層の構成材料の合計量100質量%に占める金属材料の割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
金属酸化物層に用いられる金属酸化物(一部、非金属材料を含む)としては、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、トリウム(Tr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)あるいは、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までのいわゆる希土類元素などの酸化物が挙げられる。なかでも、正孔輸送能に優れるという観点からは、三酸化モリブデン(MoO)、酸化ニッケル(NiO)、三酸化タングステン(WO)、五酸化二バナジウム(V)等の金属酸化物等を好ましく用いることができ、三酸化モリブデン、三酸化タングクテン、五酸化二バナジウムが特に好ましい。これらの無機酸化物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用または上述した導電性高分子や有機半導体材料にドープして用いてもよい。
金属酸化物からなる正孔輸送層の厚さは、特に制限はないが、光電変換効率と耐久性の観点から、好ましくは3〜20nm程度が好ましく、5〜15nm程度がさらに好ましい。
正孔輸送層は一般的な製膜方法を用いて形成でき、例えば、真空蒸着法、加熱真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、レーザービーム蒸着法、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセス、塗布法、メッキ法、電界形成法などのウェットプロセスなどを用いることができる。また、塗布法の中でも、印刷技術を用いた直接パターニング法、例えば、インクジェット印刷法などを好ましく用いることができる。
また、本発明で用いることができる正孔輸送層材料は、ホールを輸送するエネルギー準位(主には仕事関数やHOMO準位と一致)が、4.8eV〜6.5eVの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5.0eV〜6.0eV、最も好ましくは5.2eV〜5.7eVである。4.8eVより大きければ素子の開放電圧(Voc)が十分得られ、6.5eV以下であれば、素子の安定性においても十分と言える。
<光電変換層>
[n型有機半導体およびp型有機半導体]
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。これらの光電変換材料に光が吸収されると、励起子が発生し、これがpn接合界面において、正孔と電子とに電荷分離される。
本形態の光電変換層に使用されるp型有機半導体は、ドナー性(電子供与性)の有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このような化合物のうち縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第2008/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、Adv.Mater.,vol.19,(2007)p2295に記載のポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)、APPLPHYSLETT,98,(2011)p043301に記載のチアゾロチアゾール共重合体、Macromolecules 2009,42,p1610−1618に記載のビニル基置換ポリヘキシルチオフェン(P3HNT)、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、後述のn型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
また、バルクへテロジャンクション層上にさらに溶液プロセスで電子輸送層や正孔ブロック層を形成する際には、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に積層することができるが、通常溶解性のよい材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
一方、本形態の光電変換層に使用されるn型有機半導体も、アクセプター性(電子受容性)の有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このような化合物としては、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、オクタアザポルフィリン等、上記p型有機半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等が挙げられる。
このうち、p型有機半導体と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができるという観点から、フラーレンもしくはカーボンナノチューブまたはこれらの誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基等によって置換されたフラーレン誘導体が挙げられる。
特に、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBMまたはPC60BM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、[6,6]−フェニルC71−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PC71BM)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報に記載のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報に記載のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書に記載の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基により溶解性が向上されてなるフラーレン誘導体を用いることが好ましい。なお、本形態において、n型有機半導体は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
本形態の光電変換層における、p型有機半導体およびn型有機半導体の接合形態は、バルクへテロ接合である(即ち、光電変換層は、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層である)。ここで、「バルクヘテロジャンクション」とは、p型有機半導体とn型有機半導体との混合物を塗布することにより形成され、この単一の層中において、p型有機半導体のドメインとn型有機半導体のドメインとがミクロ相分離構造をとっている。したがって、バルクヘテロジャンクションでは、平面へテロ接合と比較して、pn接合界面が層全体にわたって数多く存在することになる。よって、光吸収により生成した励起子の多くがpn接合界面に到達できることになり、電荷分離に至る効率を高めることができる。このような理由から、本形態の光電変換層における、p型有機半導体とn型有機半導体との接合は、バルクヘテロジャンクションであることが好ましい。
また、バルクヘテロジャンクション層は、通常の、p型有機半導体材料とn型有機半導体層が混合されてなる単一の層(i層)からなる場合の他に、当該i層がp型有機半導体からなるp層およびn型有機半導体からなるn層により挟持されてなる3層構造(p−i−n構造)を有する場合がある。このようなp−i−n構造は、正孔および電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
本発明において、光電変換層に含まれるp型有機半導体とn型有機半導体との混合比は、質量比で2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくは4:6〜6:4の範囲である。また、光電変換層の厚さ(乾燥膜厚)は、特に制限はないが、好ましくは〜1,000nmであり、より好ましくは100〜600nmである。
<電子輸送層>
本発明の有機光電変換素子は、必要に応じて電子輸送層を含みうる。なお、第1の電極に含まれる表面修飾分子が十分なホールブロック作用を有する場合は、必ずしも電子輸送層を別途形成する必要はない。
電子輸送層とは、カソードと光電変換層との間に位置して、光電変換層と電極との間で電子の授受をより効率的にすることができる層のことである。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有し、かつ正孔を輸送する能力が著しく小さいという性質を有する。電子輸送層は、光電変換層と陰極との間に設けられ、電子を陰極へと輸送しつつ、正孔の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。よって、本明細書では、電子注入層、正孔ブロック層、励起子ブロック層等も電子輸送層の概念に含む。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。また、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置換した金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。上述の正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体や、n型の伝導性を有する無機酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛等)も電子輸送材料として用いることができる。
電極に双極子材料を結合させることで界面双極子を形成し、電荷の取り出しを向上させる材料種、例えば国際公開第2008/134492号パンフレットに記載の3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP−TMOS)などを電子輸送層の材料として挙げることができる。
また、電子輸送層として、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることができる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
具体例としては、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物やその誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体等を用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体等を好ましく用いることができる。
電子輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは5nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、さらに50nm以下であると好ましい。
<電荷再結合層;中間電極>
図3で示すような、2以上の光電変換層を有するタンデム型(多接合型)の有機光電変換素子において、光電変換層間には、電荷再結合層(中間電極)が形成される。
電荷再結合層(中間電極)に用いられる材料は、導電性および透光性を併せ持つ材料であれば、特に制限はなく、上述の電極材料として例示した、ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の金属、およびカーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤー等の炭素材料、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子等が用いられうる。これらの材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電荷再結合層を構成することも可能である。なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると電荷再結合層(中間電極)1層分を形成する工程を省くことができ好ましい。
電荷再結合層の導電率は、高い変換効率を得る観点から、高いことが好ましく、具体的には、5〜50,000S/cmであることが好ましく、100〜10,000S/cmであることがより好ましい。また、電荷再結合層の厚さは、特に制限はないが、1〜1000nmであることが好ましく、5〜50nmであることが好ましい。厚さが1nm以上とすることにより、膜面を平滑化することができる。一方、厚さが1000nm以下とすることにより、短絡電流密度Jsc(mA/cm)の低下を軽減することができる。
<基板>
本発明の有機光電変換素子は、必要に応じて基板を含みうる。基板は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。なかでも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
また、酸素および水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
<その他の層>
本発明の有機光電変換素子の構成としては、上記の各部材(各層)の他に、光電変換効率の向上や、素子の寿命の向上を目的として、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。
中間層の例としては、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層、平滑化層等が挙げられる。また、上層に偏在した金属酸化物微粒子をより安定にするため等にシランカップリング剤等の層を設けてもよい。さらに本発明の光電変換層に隣接して金属酸化物の層を積層してもよい。
また、本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等が挙げられる。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
<有機光電変換素子の製造方法>
上述の本形態の有機光電変換素子の製造方法は特に制限はなく、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することができる。以下、図1に示す有機光電変換素子の製造方法を例に挙げて、本形態の有機光電変換素子の好ましい製造方法を説明する。ただし、当該製造方法における各工程は、図1の有機光電変換素子のみならず、図2に示す有機光電変換素子や、図3に示すようなタンデム型の製造に適用可能である。
本形態の有機光電変換素子の製造方法は、第1の電極である陰極を形成する工程と、前記陰極の上に、p型有機半導体材料およびn型有機半導体材料を含む光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の上に、第2の電極である陽極を形成する工程とを含む。以下、本形態の有機光電変換素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
本形態(図1の一実施形態)の製造方法では、まず、陰極を形成する。なお、陰極を形成する工程の前に、必要に応じて、透明導電膜等により補助電極を形成する工程を行ってもよい。陰極を形成する方法としては、上述の[第1の電極の作製方法]の欄で方法I−I〜II−IIとして記載した方法を挙げることができるが、特に制限はない。ナノ構造体に双極子モーメントを有する表面修飾分子が吸着した構成を有する第1の電極を形成することができるものであれば、いかなる方法でも用いられうる。
上記方法により陰極を形成した後、必要に応じて、この陰極上に、電子輸送層を形成してもよい。電子輸送層を形成する手段としては、蒸着法等のドライプロセス、溶液塗布法等のウェットプロセスのいずれであってもよいが、製膜の容易さの観点から、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて電子輸送層を形成する場合には、上述した電子輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、ラングミュア−ブロジェット法(LB法)法等の通常の方法を用いることができる。これらのなかでも、容易に製膜できることから、スピンコート法、ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。
なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
また、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜180℃であり、より好ましくは50〜160℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜180℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
次に、上記で形成した陰極または電子輸送層上に、p型有機半導体およびn型有機半導体を含む光電変換層を形成する。光電変換層を形成するための具体的な手法について特に制限はないが、好ましくは、p型有機半導体およびn型有機半導体をそれぞれ、または一括して、適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法(具体的な形態については、上述した通りである)を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。その後、残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層の正孔と電子(キャリア)の移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。このようにして、p型有機半導体およびn型有機半導体が一様に混合され、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子とすることができる。
一方、p型有機半導体とn型有機半導体の混合比の異なる複数層からなる光電変換層(例えば、p−i−n構造)を形成する場合には、一の層を塗布後に、当該層を不溶化(顔料化)し、その後、他の層を塗布することにより形成することが可能である。
なお、ポリアルキレンイミンを含む光電変換層を形成する場合、例えば、p型有機半導体および/またはn型有機半導体とポリアルキレンイミンと適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を調製し、これを塗布、乾燥すればよい。
当該光電変換層を形成する工程は、酸素や水分に曝さないようにするために窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分によりp型有機半導体が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
次に、光電変換層上に、正孔輸送層を形成する。正孔輸送層は、蒸着法または溶液塗布法、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)を用いて形成される。なお、当該正孔輸送層を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分により正孔輸送層が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
その後、上記で形成した正孔輸送層上に、第2の電極としての陽極を形成する。陽極を形成するための手段についても特に制限はなく、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)が用いられる。なお、当該陽極を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。
さらに、上述した各種の層以外の層が含まれる場合には、これらの層を形成するための工程を、溶液塗布法や蒸着法等を用いることで適宜追加して行うことができる。
<パターニング>
上記電極(陰極・陽極)、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層等は、必要に応じてパターニングされうる。パターニングの方法は特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、バルクへテロジャンクション型の光電変換層や正孔輸送層・電子輸送層等で使用される可溶性の材料をパターニングする場合には、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、製膜後に炭酸レーザー等を用いてアブレーションする方法、スクライバで直接削り取る方法等でパターニングしてもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。一方、電極等で使用される不溶性の材料の場合は、真空蒸着法や真空スパッタ法、プラズマCVD法、電極材料の微粒子を分散させたインキを用いたスクリーン印刷法やグラビア印刷法、インクジェット法等の各種印刷方法、蒸着膜に対しエッチング又はリフトオフする等の公知の方法を用いることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
<封止>
また、本形態の有機光電変換素子は、環境中の酸素、水分等による劣化を防止するために、必要に応じて封止されうる。封止の方法は特に制限はなく、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等で用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウムまたはガラス等でできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;ならびに(5)これらを複合的用いて積層する方法等が挙げられる。
さらに、本形態の有機光電変換素子は、エネルギー変換効率と素子寿命向上の観点から、素子全体を2枚のバリア付き基板で封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター、酸素ゲッター等を同封した構成であることがより好ましい。
<有機光電変換素子の用途>
本発明の他の形態によれば、上述の実施形態に係る有機光電変換素子や、上記製造方法により得られる有機光電変換素子を有する太陽電池が提供される。本形態の有機光電変換素子は、優れた光電変換効率、耐久性を有するため、これを発電素子とする太陽電池に好適に使用されうる。
また、本発明のさらに他の形態によれば、上述した有機光電変換素子がアレイ状に配列されてなる光センサアレイが提供される。すなわち、本形態の有機光電変換素子は、その光電変換機能を利用して、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する光センサアレイとして利用することもできる。
<有機光電変換素子(特に光電変換層)の他の製造方法>
本願では、有機光電変換素子の特に光電変換層を製造する好ましい方法として、無機物からなるナノ構造体を用いる方法をも提供する。具体的には、当該製造方法は、有機光電変換素子の光電変換層の形成において、2つの光電変換層形成用溶液を用い、かつ、少なくとも一の光電変換層形成用溶液が無機物からなるナノ構造体を含むことを特徴とする。かような製造方法によって得られた光電変換層は、無機物からなるナノ構造体を含む。このように光電変換層内に無機物のナノ構造体を含むことで、光電変換層内のキャリアの移動度を飛躍的に向上させることができ、光電変換層内で発生した電荷が再結合することなく、電荷を電極から効率よく取り出すことが可能となる。光の吸収効率を高めようと膜厚を厚くした場合には、特に電荷の再結合の増加によるキャリアの失活に伴うRshの悪化(FFの低下)とJscの低下が顕著である。これに対し、本発明によれば、ナノ構造体の添加による電荷の輸送性の向上により、特に膜厚を厚膜化した時にFFの低下が抑制され、光吸収量の増大によるJscの向上の効果も得られ、素子性能が向上する。
さらに、2つの光電変換層形成用溶液を用いることで、ナノ構造体を含む層を電荷が輸送される電極に偏析するように製膜することができる。これにより、ナノ構造体添加の効果をより向上させることができる。また、電子と正孔それぞれの輸送性を高めるナノ構造体をそれぞれの電極に偏在するように製膜を行うこともでき、より選択的な電荷の取り出しが可能となる。
図5は、本製造方法の一実施形態に係る有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図5の有機光電変換素子10’は、後述する図6の有機光電変換素子20’と比較して、陰極(第1の電極)11と陽極(第2の電極)12とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。すなわち、図5の有機光電変換素子10’は、基板25上に、陰極(第1の電極)11、電子輸送層27、第2の光電変換層14b、第1の光電変換層14a、正孔輸送層26、および陽極(第2の電極)12がこの順に積層されてなる構成を有している。このような構成を有することにより、基板25の側から光が入射すると、光電変換層14のpn接合界面で生成される電子は電子輸送層27を経て陰極11へと輸送され、正孔は正孔輸送層26を経て陽極12へと輸送される。また、第1の光電変換層14aは第1の光電変換層形成用溶液によって形成され、第2の光電変換層14bは第2の光電変換層形成用溶液によって形成される。第1の光電変換層14aないし第2の光電変換層14bのうち少なくとも一層は光電変換層内にナノ構造体を含有している。なお、図5では、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bとを、界面が形成された2つの層として記載したが、第1の光電変換層形成用溶液および第2の光電変換層形成用溶液とで製膜した場合に、2つの層の界面が明確に現れず、光電変換層14が一層からなる場合もあるが、本願はかような形態も包含する。
図6は、本製造方法の他の実施形態に係る有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。具体的には、図6の有機光電変換素子20’は、基板25上に、陽極(第2の電極)12、正孔輸送層26、第1の光電変換層14a、第2の光電変換層14b、電子輸送層27、および陰極(第1の電極)11がこの順に積層されてなる構成を有する。すなわち、上述した図5の有機光電変換素子10’と比較して、陽極(第2の電極)12と陰極(第1の電極)11とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bにより光電変換層14が構成される。第1の光電変換層は陽極(第2の電極)12側に配置され、第2の光電変換層は陰極(第1の電極)11側に配置される。また、第1の光電変換層14aは第1の光電変換層形成用溶液によって形成され、第2の光電変換層14は第2の光電変換層形成用溶液によって形成される。第1の光電変換層14aないし第2の光電変換層14bのうち少なくとも一層は光電変換層内にナノ構造体を含有している。なお、図6では、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bとを、界面が形成された2つの層として記載したが、第1の光電変換層形成用溶液および第2の光電変換層形成用溶液とで製膜した場合に、2つの層の界面が明確に現れず、光電変換層14が一層からなる場合もあるが、本願はかような形態も包含する。
図6に示す有機光電変換素子10の作動時において、光は基板25側から照射される。本実施形態において、陽極12は、照射された光が光電変換層14へと届くようにするため、透明な電極材料(例えば、ITO)で構成される。基板25側から照射された光は、透明な陽極12、正孔輸送層26を経て光電変換層14へと届く。
図1において、基板25を経て陽極12から入射された光は、光電変換層14における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は内部電界、例えば、陽極12と陰極11との仕事関数が異なる場合では陽極12と陰極11との電位差によって、電子および正孔はそれぞれそれぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。この際、陽極(第2の電極)12側の第1の光電変換層14aが、電子供与性および正孔の輸送性に優れる(正孔移動度の高い)ナノ構造体を含む、または、陰極(第1の電極)11側の第2の光電変換層14bが、電子受容性および電子の輸送性に優れる(電子の移動度が高い)ナノ構造体を含むことが好ましい。かような形態では、電子は電子受容性および電子の輸送性に優れる(電子の移動度が高い)ナノ構造体間を通り、また正孔は電子供与性および正孔の輸送性に優れる(正孔移動度の高い)ナノ構造体間を通り、それぞれ異なる電極へ効率よく運ぶことができる。
なお、正孔輸送層26は、正孔の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成し、ナノ構造体で輸送された正孔をより効率よく陽極12へと輸送する機能を担っている。一方、電子輸送層27は、電子の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成し、ナノ構造体で輸送された電子を効率よく陰極11へと輸送する機能を担っている。
図7は、本発明の他の一実施形態に係る、タンデム型(多接合型)の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図7の有機光電変換素子30’は第1のセルと第2のセルとが中間層38において並列接続ないし直列接続している構成であり、図6の有機光電変換素子20’の光電変換層14に代えて、第1のセルには光電変換層36a、第2のセルには光電変換層36bを含む構成となっている。この時中間層38は第1のセルと第2のセルとを並列接続する場合は電荷取り出し電極となり、直列接続する場合は電荷再結合電極となる。本実施形態では、光電変換層36aは第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bからなる。そして、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bの少なくとも一層は、光電変換層内にナノ構造体を含有している。なお、図7でも、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bとを、界面が形成された2つの層として記載したが、第1の光電変換層形成用溶液および第2の光電変換層形成用溶液とで製膜した場合に、2つの層の界面が明確に現れず、光電変換層36aが一層からなる場合もあるが、本願はかような形態も包含する。
図7に示すタンデム型の有機光電変換素子30’では、第1のセルの光電変換層36aおよび第2のセルの光電変換層36bに、それぞれ吸収波長の異なる光電変換材料(p型有機半導体およびn型有機半導体)を用いることにより、より広い波長域の光を効率よく電気に変換することが可能となる。
〔有機光電変換素子の製造方法〕
本発明に関わる有機光電変換素子の製造方法は、p型有機半導体材料とn型有機半導体材料とを含有する光電変換層を第1の電極および第2の電極の間に有する有機光電変換素子の製造方法であって、第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液とを用いて前記光電変換層を形成する工程を含み、前記第1の光電変換層形成用溶液および前記第2の光電変換層形成用溶液の少なくとも一方が無機物からなるナノ構造体を含むことを特徴とする、有機光電変換素子の製造方法である。少なくとも1層にナノ構造体を含む2層の光電変換層を塗布することで、ナノ構造体が上下どちらかの電極の方向に偏在している光電変換層を形成することができる。上述したように、かように2つの光電変換層形成用溶液を用いた場合であっても、界面が明確とならずに1層から形成される光電変換層が得られることもある。
本発明の製造方法は、好適には、(1)透明基板上に電極を形成する工程、(2)第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液とを用いて光電変換層を形成する工程、(3)前記光電変換層の上に、電極を形成する工程とを含む。必要に応じて、正孔輸送層を形成する工程、および/または電子輸送層を形成する工程を含む。
図5に示す有機光電変換素子の製造方法を例に挙げて、以下、有機光電変換素子の製造方法の好ましい実施形態を説明する。ただし、当該製造方法における各工程は、図5の有機光電変換素子のみならず、図6に示す有機光電変換素子や、図7に示すようなタンデム型の製造に適用可能である。
図5に示す有機光電変換素子の製造方法の一実施形態は、(1)透明基板上に陰極(第1の電極)を形成する工程、(2)第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液とを用いて光電変換層を形成する工程、(3)前記光電変換層の上に、陽極(第2の電極)を形成する工程とを含む。以下、本形態の有機光電変換素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
(1)陰極を形成する工程
まず、基板を準備し、該基板上に陰極を形成する。基板については後述する。
陰極を形成する方法は、特に制限はないが、操作の容易性や、ダイコータ等の装置を用いてロール・ツー・ロールで生産可能なことから、基板の上に、陰極の構成材料を含む液体を塗布し、乾燥させる方法であることが好ましい。またこれ以外にも、市販の薄膜状の電極材料をそのまま使用しても構わない。
上記で陰極を形成した後、必要に応じて、この陰極上に、電子輸送層を形成してもよい。電子輸送層を形成する手段としては、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて電子輸送層を形成する場合には、上述した電子輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、なお、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜150℃であり、より好ましくは50〜120℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜150℃程度の温度で、5〜60分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
(2)第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液とを用いて前記バルクヘテロジャンクション型光電変換層を形成する工程
続いて、上記で形成した陰極または電子輸送層上に、p型有機半導体およびn型有機半導体を含む光電変換層を形成する。この際、本発明においては、2種類(第1の光電変換層形成用溶液および第2の光電変換層形成用溶液)の光電変換層溶液を用いる。
そして、前記第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液の少なくとも一方、好ましくは双方が無機物からなるナノ構造体を含む。
本実施形態では、第2の光電変換層形成用溶液を上記で形成した陰極または電子輸送層上に塗布した後、第1の光電変換層形成用溶液を塗布する。
第1の光電変換層形成溶液は、陽極側に形成されるため、電子供与性および正孔の輸送性に優れる(正孔移動度の高い)ナノ構造体を含むと、第2の電極(陽極)への正孔の移動がスムーズに行われるため、好ましい。また、第2の光電変換層形成溶液は、陰極側に形成されるため、電子受容性および電子の輸送性に優れる(電子の移動度が高い)ナノ構造体を含むと、第1の電極(陰極)への電子の移動がスムーズに行われるため、好ましい。第1の光電変換層形成溶液および第2の光電変換形成用溶液の双方がナノ構造体を含む場合は、第1の光電変換層形成溶液に含まれるナノ構造体は、第2の光電変換形成用溶液に含まれるナノ構造体よりも電子輸送的であることが好ましい。なお、ここでいうナノ構造体には表面で被覆されたナノ構造体も含む。
すなわち、ナノ構造体を第1、第2の光電変換層形成用溶液のどちらに含有させるかは、ナノ構造体の電荷輸送特性を考慮して行われる。ナノ構造体の電荷輸送特性は、一般的には、各キャリアの移動度を指標として考慮する。光電変換層内に含まれるナノ構造体が半導体特性を有する場合は、n型半導体特性のものは電子の移動度が高く、p型半導体特性のものはホールの移動度が高いことが一般的である。ナノ構造体が金属のようないわゆる導体の特性を有するものの場合は、電子とホールのどちらに対しても輸送性が高いが、その場合は光電変換層を構成するp型半導体のHOMO準位またはn型半導体材料のLUMO準位とのマッチングによって決定される。すなわちWF(仕事関数)が深い金属のナノ構造体はp型半導体のHOMO準位とのマッチングに優れることからホール輸送性として働くことが一般的である。ただし、本発明に開示しているようにWFが深いナノ構造体であっても双極子材料等による表面処理によりn型のLUMO準位とのマッチするように表面準位を調整した場合は電子の輸送性に優れるようになるので電子輸送性となる。
第一の光電変換層形成用溶液は、金属からなるナノ構造体、炭素からなるナノ構造体、または表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体の少なくとも一を含むことが好ましい。この際の表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体は、正孔輸送性を有するものであることが好ましい。より好ましくは、第一の光電変換層形成用溶液は、金属からなるナノ構造体を含む。金属からなるナノ構造体は、導体であるが、仕事関数を考慮すると、正孔輸送性が強いため、第1の光電変換層形成用溶液に含むことが好ましいと考えられる。
また、第2の光電変換層形成用溶液は、金属酸化物ナノ構造体、または表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体の少なくとも一を含むことが好ましい。この際の表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体は、電子輸送性を有するものであることが好ましい。
さらには、好ましい実施形態としては、第1または第2の光電変換層形成溶液のいずれか一方が、表面修飾分子が吸着してなるナノ構造体を含む。表面修飾分子が吸着してなるナノ構造体は、表面修飾分子により、電荷特性を向上させることができるため、好ましい。
さらに他の好ましい実施形態としては、第1の光電変換層形成用溶液が金属からなるナノ構造体を含み、第2の光電変換層形成用溶液が、金属からなる酸化物ナノ構造体、または表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体を含む。かような形態により、電荷の移動が効率よく行われ、光電変換層を膜厚化した場合にも光電変換効率が非常によい。より好ましい形態としては、第1の光電変換層形成用溶液が金属からなるナノ構造体を含み、第2の光電変換層形成用溶液が、表面修飾分子が被覆してなる金属からなるナノ構造体を含む。
ナノ構造体の詳細については、後述する。
塗布方法は特に限定されるものではないが、溶液塗布法であることが好ましい。溶液塗布法を用いて光電変換層を形成する場合には、p型有機半導体およびn型有機半導体、場合によってはナノ構造体をそれぞれ、または一括して、適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて陰極上または電子輸送層上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、上記(1)の欄で述べたものが挙げられる。
第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液とを重層塗布する方式としては、逐次塗布でもよいし同時塗布でもよいが、同時塗布で光電変換層を形成することが好ましい。同時塗布とは、異なる層を構成する複数の塗布液を、塗布工程の段階から同時に塗布装置に供給することで形成させる方法を意味する。したがって、複数回にわけて逐次に湿式塗布する逐次重層塗布方法とは異なる。好適には、ブレードコーティング法にて、2層以上を同時に塗布し乾燥を行うことにより一層のp型半導体、n型半導体およびナノ構造体を含む光電変換層を形成することができる。光電変換層を同時塗布した場合、逐次塗布よりも光電変換効率が向上するため好ましい。これは、上層の溶媒により下層のフラーレンが選択的に溶解し、2層目を積層し乾燥させる過程でフラーレンのドメインが大きくなり、性能が低下することを抑制することができるためであると考えられる。
第1および第2の光電変換層形成用溶液に用いられる溶媒としては、p型半導体材料及びn型半導体材料の両方を溶解可能な溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラリン等の芳香族系溶媒、及びクロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒が好ましい。また、Nature Mat.,vol.6(2007),p497にあるような、p型材料の結晶性を高めるような貧溶媒(オクタンジチオール、ジヨードオクタン等)をさらに0.1〜5質量%添加してもよい。
第1および第2の光電変換層形成用溶液におけるp型半導体材料及びn型半導体材料の合計濃度は、所望の膜厚及び製膜方法によって異なるが、スピンコート法及びブレードコート法においては約1〜4質量%とすることが好ましく、より好ましくは1.5〜3質量%である。また、ナノ構造体の第一および第二の光電変換層形成用溶液における濃度は、p型半導体材料及びn型半導体材料の合計100質量%に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
第1および第2の光電変換層形成用溶液の塗布厚さは、適宜設定されるが、好ましくは、乾燥膜厚で、第1の光電変換層:第2の光電変換層=1:0.5〜5となるように塗布することができる。
上記第1および第2の光電変換層形成用溶液の塗布後には乾燥を行うが、乾燥の工程に関しては先に述べた方法を適宜用いることができる。残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすためには加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層の正孔と電子(キャリア)の移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。乾燥の過程で乾燥までの時間が長くなると、ナノ構造体を上部電極側に偏在させたい場合に光電変換層が乾燥する前にナノ構造体が拡散する可能性があり好ましくない。光電変換層の乾燥時間としては、1秒〜10分が好ましく、1秒から5分がより好ましい。このようにしてバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子とすることができる。
当該光電変換層を形成する工程は、酸素や水分に曝さないようにするために窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うこともできる。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分によりp型有機半導体が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができるため、適宜用いることができる。
(3)前記光電変換層の上に、陽極を形成する工程
次に、上記で形成した光電変換層上に、陽極を形成する。陽極を形成するための手段についても特に制限はなく、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)が用いられる。なお、光電変換層と陽極との間に正孔輸送層を設ける場合には、蒸着法または溶液塗布法、好ましくは溶液塗布法を用いて、正孔輸送層が形成される。なお、当該正孔輸送層を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分により光電変換層が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
さらに、上述した各種の層以外の層が含まれる場合には、これらの層を形成するための工程を、溶液塗布法や蒸着法などを用いることで適宜追加して行うことができる。
上記電極(陰極・陽極)、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層等は、必要に応じてパターニングされうる。パターニングの方法は特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、バルクへテロジャンクション型の光電変換層や正孔輸送層・電子輸送層等で使用される可溶性の材料をパターニングする場合には、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、製膜後に炭酸レーザー等を用いてアブレーションする方法、スクライバで直接削り取る方法等でパターニングしてもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。一方、電極等で使用される不溶性の材料の場合は、真空蒸着法や真空スパッタ法、プラズマCVD法、電極材料の微粒子を分散させたインキを用いたスクリーン印刷法やグラビア印刷法、インクジェット法等の各種印刷方法、蒸着膜に対しエッチング又はリフトオフする等の公知の方法を用いることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
また、本形態の有機光電変換素子は、環境中の酸素、水分等による劣化を防止するために、必要に応じて封止されうる。封止の方法は特に制限はなく、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等で用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウムまたはガラス等でできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;ならびに(5)これらを複合的用いて積層する方法等が挙げられる。
また、有機光電変換素子の製造においては、環境中の酸素、水分などによる劣化を防止するために、必要に応じて封止工程を含む。
封止の方法は特に制限はなく、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子などで用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウムまたはガラスなどでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどのガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコールなど)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;ならびに(5)これらを複合的用いて積層する方法などが挙げられる。
さらに、エネルギー変換効率と素子寿命向上の観点から、素子全体を2枚のバリア付き基板で封止してもよく、好ましくは、水分ゲッター、酸素ゲッター等を同封した構成であることがより好ましい。
以下、上記製造方法における有機光電変換素子、および該製造方法によって得られる有機光電変換素子で用いられるナノ構造体について詳細に説明する。なお、その他の構成要素(電極、正孔輸送層、電子輸送層など)の構成材料については、上述した形態が同様に用いられうることから、ここでは詳細な説明を省略する。
〔ナノ構造体〕
本発明では、光電変換層がp型半導体およびn型半導体を含むバルクヘテロジャンクション型の場合に、p型半導体およびn型半導体とは別途、さらにナノ構造体を含む。このナノ構造体は、第1の電極に含まれるものとして上述した「紫外光電子分光法で測定した仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体」であってもよいし、それ以外のナノ構造体であってもよいが、「紫外光電子分光法で測定した仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体」であることが好ましい。
ナノ構造体としては、例えば、ナノ粒子(ナノロッド、ナノピラー等)、ナノファイバー(ナノワイヤー)、ナノポーラスを好ましく用いることができる。ここでナノ構造体とは、透過型電子顕微鏡(TEM)にて計測した一次粒子の平均粒径がナノオーダー(1,000nm未満、好ましくは、1〜900nm)である物質を指す。平均粒径は、100個の構造体の粒径平均とする。粒径は、球形状、ナノワイヤの場合は、直径を指し、棒状の場合は短径を指す。中でも、製膜プロセスが簡便であるため、ナノ粒子、ナノワイヤーなどを用いることがより好ましい。
ナノ構造体を構成する材料としては、特に限定されず、金属、金属窒化物、金属酸化物、炭素などが挙げられる。特に、本発明で用いるナノ構造体としては、金属からなるナノ構造体(以下、金属ナノ構造体とも称する)、金属酸化物からなるナノ構造体(以下、金属酸化物ナノ構造体とも称する)、またはおける炭素からなるナノ構造体(以下、炭素ナノ構造体とも称する)であることが好ましい。
金属または金属酸化物としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、チタン、タンタル、インジウム、コバルト、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン,タングステン、亜鉛、等の金属、これらの合金、またはこれらの金属酸化物が挙げられる。特に電荷の輸送性に優れる観点から、白金、金、銀、銅、コバルト、ニッケル、モリブデン、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズが好ましい。
上述したように、第一の光電変換層形成用溶液に含まれるナノ構造体の好適な形態としては、金属が挙げられる。電荷の輸送性に優れることから、金属としては、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)が好ましく、金(Au)、銀(Ag)、または銅(Cu)を含むことが好ましい。また、第二の光電変換層形成用溶液に含まれるナノ構造体の好適な形態としては、金属酸化物が挙げられ、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズであることが好ましい。
ナノ粒子としては、金属、無機酸化物、無機窒化物等の微粒子が挙げられる。ナノ粒子の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法があげられるが、粒径の制御と溶液への分散が容易という観点から好ましくは液相合成法である。
ナノ粒子の好ましい粒径は10〜200nm、さらに好ましくは30〜100nmである。粒径が10nm以上の方が光電変換層内でナノ粒子同士が接することから、より電荷の輸送性が向上するものと推定している。また、粒径が200nm以下の方が光電変換層内にナノ粒子が被覆された状態になり、リークなどの性能低下が抑制されることからより好ましい。
ナノワイヤー(以下、「導電性繊維」とも呼ぶ)とは、導電性を有し、かつその長さが直径(太さ)に比べて十分に長い形状を持ち金属元素を主要な構成要素とする線状構造体のことをいう。ここで、ナノワイヤーとは、nmスケールの直径を有する線状構造体を意味する。光電変換層内においてナノワイヤーが互いに接触し合うことにより3次元的なキャリアパスネットワークを形成され、その内部を電荷が輸送され電極まで到達することで、電荷の輸送性が向上するものと推定している。従って、ナノワイヤーが長い方が導電ネットワーク形成に有利であるため好ましい。一方で、ナノワイヤーが長くなるとナノワイヤーが絡み合って凝集体を生じ、光学特性を劣化させる場合がある。導電ネットワーク形成や凝集体生成には、ナノワイヤーの剛性や直径等も影響するため、使用するナノワイヤーに応じて最適な平均アスペクト比(アスペクト=長さ/直径)のものを使用することが好ましい。ナノワイヤーとしては、1つの金属ナノワイヤーで長い導電パスを形成させ、また凝集を抑制させるという観点から、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に、3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。ナノワイヤーの平均直径として1〜300nmが好ましく、10〜300nmがより好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。平均アスペクト比は、10〜10,000であるものが好ましい。
形状としては中空チューブ状、ワイヤー状、ファイバー状のもの等があり、例えば、金属でコーティングした無機ナノファイバー、導電性金属酸化物ナノファイバー、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ等がある。本発明においては、透明性の観点から太さが100nm以下のナノワイヤーであることが好ましい。また、併せて導電性も満足するため、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブがより好ましく、光電変換効率が向上することから金属ナノワイヤーがさらに好ましい。
金属ナノワイヤーの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)及び鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から金(Au)、銀(Ag)、または銅(Cu)を含むことがより好ましく、少なくとも銀を含むことがさらに好ましい。また、導電性と安定性(金属ナノワイヤーの硫化や酸化耐性、及びマグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むこともできる。本発明に係る金属ナノワイヤーが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよく、金属ナノワイヤー全体が同一の金属組成を有していてもよい。
本発明においてナノワイヤーの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、光電変換層溶液中により分散させるための表面置換基の変性等も適宜行うことができる。
[表面修飾分子]
本発明においては、ナノ構造体を表面修飾分子が被覆してもよい。表面修飾分子はナノ構造体を被覆するため、ナノ構造体に対して吸着性を有する吸着基を分子の末端に有する。吸着基の例としては、チオール基(−SH)、メチルチオ基(−SCH)、メルカプトチオ基(−S−SH)、メチルメルカプトチオ基、ジチオカルバメート基(−CS)、チオカルボニル基(>C=S)、チオカルボキシル基(−C(O)SH)、アセチルチオ基(−SC(O)CH)、ジチオカルボキシル基、スルフィド基(−S−)、ジスルフィド基(−S−S−)、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基(−SOOH)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホノ基(−P(O)(OH))、燐酸基(−POH)が挙げられる。これらの中でも、金属表面に対する吸着性および熱安定性が高いチオール基、ジカルバメート基、スルフィド基が好ましい。表面修飾分子は上記吸着基を単独または複数有していてもよく、あるいは異なる種類を組み合わせて有していてもよい。なお、本明細書中、「吸着」とは、ファンデルワールス力による物理吸着、または、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等による化学吸着を意味するものであるが、ナノ構造体に対して表面修飾分子が強固に吸着する化学吸着が好ましい。
例えば、銀ナノワイヤーなどの金属ナノ構造体に表面修飾分子を吸着させる場合、チオール基、メチルチオ基、メルカプトチオ基、メチルメルカプトチオ基、ジチオカーバメート基、アセチルチオ基などの吸着基を末端に有している化合物を用いて、スルフィド結合により金属ナノ構造体の表面に吸着させる。あるいは、ジスルフィド結合を介して結合する分子の二量体あるいは多量体から金属ナノ構造体に吸着させても良い。
表面修飾分子によって、ナノ構造体の物性を変化させることもできる。物性の変化としては、電荷の輸送性の変化が挙げられる。かような物性を変化させる表面修飾分子の例としては、例えば、分子内に双極子モーメントを誘起させるように、ナノ構造体に対して吸着性を有する吸着基に、窒素原子、炭素原子または硫黄原子を介して結合する置換基を有する表面修飾分子が挙げられる。かように、分子内に双極子モーメントを有する表面修飾分子をナノ構造体に吸着させることによって、ナノ構造体の真空準位が変わり、光電変換層中の半導体との接続が向上し、フィルファクターが向上するため好ましい。ナノ構造体とp型半導体との接続を良くしようとする場合、電子吸引性基(電子受容性基)を有する双極子材料を被覆させ、n型半導体との接続を良くしようとする場合、電子供与性基を有する双極子材料を被覆させることが好ましい。その場合の双極子モーメントの+−は逆となる。
一般に、表面修飾分子が吸着したナノ構造体の真空準位は、表面修飾分子が吸着する密度および表面修飾分子の双極子モーメントの大きさに比例する。したがって、適当な真空準位を有するナノ構造体を構成するため、表面修飾分子が双極子モーメントを有することが好ましい。双極子モーメントは絶対値で0.5〜10であると好ましく、特に1〜6であると好ましい。
「双極子モーメント」とは、負電荷から正電荷へ向かうベクトルと、電荷の大きさの積を示す。具体的には、密度汎関数(DFT)法による計算からそのベクトルおよび大きさを求めることができる。本発明書中では、吸着する金属種として銀(Ag)原子1個と結合した状態の双極子モーメントを求めた。計算プログラムはGaussian03を用い、基底関数に有機部はB3LYP/6−31G*、金属部にB3LYP/SDDを用いて計算した。
表面被覆分子の双極子モーメントと、仕事関数とは相関する。図8は、実施例で用いた表面修飾分子と、仕事関数との相関を示した図である。現状のヘテロジャンクション型の光電変換層のLUMOは約4.1eVであるため、電極としては4.1eVと同じか小さい値であることが好ましい。双極子モーメントが3.0D以上の分子はAgに被覆させた場合に仕事関数が4.1eVよりも浅くなる。したがって、光電変換層の電子輸送性を向上させることができるため、かような表面被覆分子が被覆されたナノ構造体(例えば、実施例での化合物gで被覆されたナノ構造体)は、陰極側の第2の光電変換層形成用溶液に含ませることが好ましい。一方、双極子モーメントが3.0D未満の分子は、光電変換層の正孔輸送性を向上させることができるため、かような表面被覆分子が被覆されたナノ構造体(例えば、実施例での化合物eで被覆されたナノ構造体)は、第1の光電変換層形成用溶液に含ませることがよい。
表面修飾分子を吸着させるナノ構造体としては、上記ナノ構造体の欄で記載したいずれを用いてもよいが、金属からなる金属ナノ構造体を用いることが好ましい。
上述したように、n型半導体との接続を良くしようとする場合、表面修飾分子は電子供与性基を有することが好ましい。本明細書中、「電子供与性基」とは、ハメットの置換基定数σpが負の値を取る置換基のことを指す。
電子供与性基は、好適には表面修飾分子の吸着基に結合する。吸着基に結合した電子供与性基を有することにより、表面修飾分子の双極子モーメントの大きさおよび方向を適切に制御することが容易になる。なお、電子供与性基は、必ずしも吸着基に直接結合している必要はなく、置換または非置換の脂肪族基や芳香族基を介していてもよい。
電子供与性基の例としては、炭素原子数1〜20、好ましくは炭素原子数1〜12のアルキル基、ヒドロキシル基(又はその塩)、メルカプト基(又はその塩)、炭素原子数1〜20、好ましくは炭素原子数1〜12のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、炭素原子数1〜20、好ましくは炭素原子数1〜12のアルキルアミノ基(例えば、−NHCH、−N(CH)アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、σpが負の値を取るヘテロ環基又はこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基が挙げられる。表面修飾分子は上記電子供与基を単独または複数有していてもよく、あるいは異なる種類を組み合わせて有していてもよい。
また、上述したように、p型半導体との接続を良くしようとする場合、表面修飾分子は電子受容性基を有することが好ましい。本明細書中、「電子受容性基」とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取る置換基のことを指す。電子受容性基としては、フェニル基、トリアジン基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、−CF、−CCOOCF、−SOCF、−COCF、−CHO、−COOCH、−SOCH、−SONH、−COCH、−CNまたは−NOが挙げられる。
表面修飾分子としては、欧州特許出願公開第2278636号公報に開示されているようなジチオカルバメート化合物、下記式(I)で表わされる化合物などを用いることができる。
具体的には表面修飾分子としては、以下が挙げられる。
上記式(A)〜(G)において、nは0〜3の整数であり、XはNまたはCHを表し、好ましくはNであり、YはN、CH、またはC(CH)を表し、ZはN、CH、またはC(CH)を表し、X’はそれぞれ独立してNまたはCHを表し、EA’はOCO、CO(O)、C(O)、およびSOを表し、ED’はNR’(この際、R’は、水素原子、メチル基、エチル基、またはベンジル基を表す。)、O、またはSを表す。また、上記式(A)〜(G)および(I)において、EAは電子受容性基を表し、EDは電子供与性基を表す。式(A)〜(G)において、同一化合物内に同じ符号が2以上存在する場合、各符号は同一のものを表しても異なるものを表してもよい。
EAで表わされる電子受容性基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、−CF、−CCOOCF、−SOCF、−COCF、−CHO、−COOCH、−SOCH、−SONH、−COCH、−CNまたは−NOが挙げられる。EDで表わされる電子供与性基としては、−NH、−NHCH、−N(CH、−OHまたは−OCHが挙げられる。EAまたはEDの置換位置は、特に限定されないが、p位であることが好ましい。
また、上記式(H)において、R”は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表すが、双方が水素原子を表すことはない。
具体的には、下記化合物a〜lが挙げられる。
上記ジチオカルバメート化合物は、ナノ構造体との間で下記のような構造を形成する。
上記式において、Mはナノ構造体を示す。
ジチオカルバメート基を介して金属ナノ構造体の表面に吸着させる場合は、前駆体となるアミンと二硫化炭素とを金属ナノ構造体に接触させることにより吸着させてもよい。すなわち、下記の反応式(1)で示される反応により生じるジチオカルバミン酸(RNCS )を、金属ナノ構造体の存在下で発生させることにより、ジチオカルバメート基を介して表面吸着分子を吸着させることができる。
上記反応式(1)において、Rは特に限定されないが、例えば、水素原子、置換または非置換の脂肪族基や芳香族基から選択される。
表面修飾分子を用いてナノ構造体を修飾する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。一例としては、ポリビニルアルコールなどを用いてナノ構造体を表面保護した後、表面修飾分子を該表面保護ナノ構造体に添加し、遠心分離により得られた沈殿物を水に再懸濁することによって得られる。この際、表面修飾分子の添加量は、効果を奏する限り特に限定されないが、金属ナノ構造体100質量%に対して、0.01〜1質量%であることが好ましい。
他の表面修飾分子として、特開2010−251592号公報に開示されているようなポリ(3−アルキルチオフェン)類を用いてもよい。より具体的には、下記一般式(1)で表される末端チオフェン単位の5位に吸着基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)と一般式(2)で表される末端チオフェン単位の2位に吸着基を有するポリ(3−アルキルチオフェン)が挙げられる。
一般式(1)または(2)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数4〜15のアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R′は水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rは、水素原子、メチル基、アセチル基、メルカプト基、またはメチルメルカプト基を表す。Xは、2価の連結基を表す。mは0又は1を表し、nは、2〜500の整数を表す。
一般式(1)または(2)において、Rで表される、炭素数4〜15のアルキル基またはアルコキシアルキル基は、炭素数6〜10のアルキル基またはアルコキシアルキル基が好ましい。
R′で表される置換基としては、好ましくは、メチル基である。
Xは、好ましくは、アルキレン基またはアリーレン基、さらに好ましくは、メチレン基、エチレンまたはプロピレンを表す。
mは0または1が好ましい。nは100〜500が好ましく、150〜300が最も好ましい。
上記ポリ(3−アルキルチオフェン)類をナノ構造体にナノ結合体と吸着し得る吸着基を導入する方法は公知の合成手法を適用できる。例えば、芳香環末端にSH基を出す方法としては、J.Org.Chem.;EN;60;7;1995;2082−2091.、J.Amer.Chem.Soc.;EN;116;26;1994;11985−11989.、Synthesis;EN;9;1983;751−755.、J.Chem.Soc.PerkinTrans.1;EN;1987;187−194.を参照することができる。末端SでAg接続して、アルキレン基をはさんでπ電子系というパターンにおける「アルキレン末端SH」の作り方には、J.Amer.Chem.Soc.;70;1948;2439.(イソチオ尿素の還元)、Chem.Ber.;GE;93;1960;2604−2612.(末端ハロゲン化アルキルにチオ尿素を作用させた反応)、TetrahedronLett.;EN;35;12;1994;1837−1840.(末端のC=C二重結合にトリフェニルシランチオールを作用させたラジカル反応により二重結合に付加)を参照することができる。
他の表面修飾分子としては、特開2001−253883号公報、特開2008−16834号公報などに開示されたポルフィリン誘導体が挙げられる。ナノ構造体に結合したポルフィリンを得るためには、前述の方法でナノ構造体への吸着基を有するポルフィリン単量体を合成する方法を用いることができる。
なお、本製造方法における好ましい実施形態によれば、以下のような特徴が規定される。
光電変換層の形成は、第1の光電変換層形成用溶液と第2の光電変換層形成用溶液とを同時に塗布製膜することによって行われることが好ましい。
ナノ構造体は、金属、金属酸化物、または炭素からなるナノ構造体であることが好ましい。
第1の光電変換層形成用溶液は、金属からなるナノ構造体、炭素からなるナノ構造体、または表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体の少なくとも一を含み、および/あるいは、第2の光電変換層形成用溶液が、金属酸化物ナノ構造体、または表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体の少なくとも一を含むものであることが好ましい。この際、第1の光電変換層形成用溶液が、金属からなるナノ構造体を含むものであることがより好ましい。また、当該金属は、Au、AgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
第1または第2の光電変換層形成用溶液のいずれか一方が、表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体を含むことが好ましい。
第1の光電変換層形成用溶液が金属からなるナノ構造体を含み、第2の光電変換層形成用溶液が、金属からなる酸化物ナノ構造体、または表面修飾分子が被覆してなるナノ構造体を含むことも好ましい。この際、第2の光電変換層形成用溶液は、表面修飾分子が被覆してなる金属からなるナノ構造体を含むものであることがより好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<p型半導体材料(KP115)の調製>
p型半導体材料として、チアゾロチアゾール共重合体(KP115)を、APPLPHYSLETT,98,(2011)p043301に記載の方法にしたがって合成した。なお、下記KP115の数平均分子量は43000であった。
<表面修飾分子の調製>
以下の実施例および比較例で用いた化合物およびその前駆体は、公知の合成方法にしたがって合成したもの、または市販のものを用いた。
<有機光電変換素子の作製>
[比較例1−1]有機光電変換素子SC−101の作製
ガラス基板上に、インジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積させたもの(シート抵抗:10Ω/□)を、フォトリソグラフィ技術と塩酸を用いた湿式エッチングとを用いて20mm幅にパターニングし、補助電極(透明電極)を形成した。パターン形成した補助電極を、界面活性剤と超純水の混合液を用いて超音波洗浄した後、さらに超純水を用いて超音波洗浄し、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。 次に、電子輸送層としての機能を備えた第1の電極に相当する層を形成するため、上記補助電極(透明電極)が形成された基板上に、ZnO前駆体溶液を透明電極上にスピンコート(回転速度4000rpm、回転時間180秒間)し、所定のパターンに拭き取った。そして、これを空気中で250℃10分間加熱処理することにより膜厚約40nmのZnO膜からなる層を形成した。JIS B 0601:2001に従って測定されたZnO膜の表面のRpvは、20nmであった。
なお、上記ZnO前駆体溶液は、次の方法(ゾルゲル法)により調製した。0.5Mの酢酸亜鉛・2水和物(Sigma−Aldrich社製)と、0.5Mのエタノールアミン(東京化成工業社製)を含む2−メトキシエタノールに溶解し前駆体溶液とした。
なお、得られたZnO膜の仕事関数をUPS法(ヴァキュームジェネレーターズ社製ESCALab200RおよびUPS−1)により測定したところ、4.48eVであった。
以降、基板をグローブボックス中(露点<−80℃、酸素<1ppm)に入れ、窒素雰囲気下にて製膜を行った。
光電変換層を形成するため、o−ジクロロベンゼンに、上記で合成したKP115と、PC60BM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)と1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させた溶液Aを調製した。これを乾燥膜厚が約250nmになるよう上記電子輸送層上にブレードコーターを用いて製膜し、光電変換層を形成した。
その後、正孔輸送層を形成するため、導電性高分子およびポリアニオンからなるPEDOT:PSS(Clevios(登録商標)P4083、ヘレウス社製)分散液(固形分約3質量%)に対し、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ポリナス(登録商標)PS−1,東ソー有機化学株式会社製)0.1wt%、イソプロパノール20wt%を含む溶液Bを調製した。得られた溶液Bを0.45μmのPVDFフィルタでろ過し、上記光電変換層上に、乾燥膜厚が約100nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し乾燥させた。所定のサイズに拭き取った後、さらに120℃で10分間加熱処理し正孔輸送層を製膜した。
なお、正孔輸送層の仕事関数を、上記ZnO膜の仕事関数と同様にしてUPS法により測定したところ、5.1eVであった。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、Agメタルを蒸着速度0.5〜1.0nm/秒で、100nm積層することで、第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動させ、封止用キャビティグラスとエポキシ系UV硬化樹脂(ナガセケムテック社製、半導体封止用エポキシ樹脂)を用いて封止を行い、受光部が約5mm×20mmサイズの有機光電変換素子SC−101を完成させた。
なお、第1の電極および正孔輸送層を構成する材料についてそれぞれ単膜を作製し、上記の仕事関数の測定方法と同様にして仕事関数を測定した。また、以下の実施例および比較例の有機光電変換素子について、第1の電極(比較例においては、第1の電極に相当する層)の仕事関数、第1の電極(比較例においては、第1の電極に相当する層)に表面修飾分子が含有されている場合は、表面修飾分子の吸着による仕事関数のシフト量(表面修飾分子が吸着していないナノ構造体の仕事関数と比較して、仕事関数がどれだけ小さくなったか)、および第1電極(比較例においては、第1の電極に相当する層)と正孔輸送層との仕事関数の差について、結果を下記表1に示す。また、表1には、JIS B 0601:2001に従って測定された第1の電極(比較例においては、第1の電極に相当する層)の表面における最大高低差(Rpv)の値も併せて示す。
[比較例1−2]有機光電変換素子SC−102の作製
比較例1−1と同様に準備したZnOからなる層を形成した基板上に、以下に示すCBD法(ケミカルバスデポジション法)によりZnOナノピラーを形成し、第1の電極に相当する層を形成した。
0.02Mの硫酸亜鉛・7水和物と、0.6Mの塩化アンモニウムを含む水溶液に、0.01NのNaOH水溶液を滴下しpH=12に調整した液を準備した。続けて、準備した液を60℃に保ち、上記作製したZnO層を形成した基板を浸漬し12時間処理した。形成したZnOのナノピラーをSEMで観察したところ、ピラー径は10〜20nm、ピラー高さは80nm程度であった。また、Rpvは120nmであった。
上述のようにして得られたZnOナノピラーを有する構造を備えたこと以外は、比較例1のSC−101と同様にして各層を形成し、有機光電変換素子SC−102を得た。
なお、前述の方法と同様にして測定したZnOナノピラーからなるナノ構造体の仕事関数は4.45eVであった。
[実施例1−1]有機光電変換素子SC−103の作製
有機光電変換素子SC−102の作製において、ZnOナノピラーを形成した後、さらに表面修飾分子としてp−メトキシ安息香酸(化合物101、双極子モーメント:+3.25D)を被覆させ、第1の電極を形成したこと以外は、SC−102と同様にして有機光電変換素子SC−103を得た。
なお、表面修飾分子は、p−メトキシ安息香酸(化合物101)をメタノール(溶媒)に溶解させて濃度50mMとし、予め形成したZnO層に対して2時間浸漬させることにより吸着させた。吸着させた後、メタノールで洗浄し、ドライエアーで乾燥させた。さらに120℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。
[比較例1−3]有機光電変換素子SC−104の作製
有機光電変換素子SC−101の作製において、第1の電極に相当する層をITOおよびZnO層で形成した代わりに、ITO膜上にさらにAg膜を積層させて第1の電極に相当する層としたこと以外は、SC−101と同様にして有機光電変換素子SC−104を得た。より具体的には、基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、Agメタルを蒸着速度0.1〜0.5nm/秒で、4nm積層することで、第1の電極に相当する層を形成した。なお、Ag膜の仕事関数を前述の方法で測定したところ、4.48eVであった。
[比較例1−4]有機光電変換素子SC−105の作製
有機光電変換素子SC−104の作製において、第1の電極に相当する層をITOおよびAgのみで形成した代わりに、さらに表面修飾分子(上記化合物13;双極子モーメント:+3.85D)を被覆させたこと以外は、SC−104と同様にして有機光電変換素子SC−105を得た。
なお、表面修飾分子は、化合物13の前駆体(ピペリジン誘導体)および二硫化炭素をエタノールに溶解させ、前駆体濃度を50mM、二硫化炭素濃度を50mMとし、予め形成したAg膜を備えた基板を60分間浸漬させることにより、上記化合物13を吸着させた。
[比較例1−5]有機光電変換素子SC−106の作製
有機光電変換素子SC−104の作製において、第1の電極に相当する層を形成するため、ITO膜上にAg膜を積層させた後、さらにAg粒子を堆積させてAg粒子からなるナノ構造体を作製して第1の電極としたこと以外は、SC−104と同様にして有機光電変換素子SC−106を得た。
なお、Ag粒子は、British Biocell International社から購入したEMSC60(Agコロイド、60nm径)を用いた。限外濾過膜を用いてAg粒子を濃縮処理した後、水・エタノール混合液に分散させてAg粒子分散液(Ag粒子含有量0.4質量%)を調製し、Ag粒子の目付け量が50mg/mとなるようにアプリケータを用いてガラス基板に塗布し、窒素下、120℃で10分乾燥して、厚みが80nmのAg粒子からなる層を形成し、第1の電極を作製した。
[実施例1−2]有機光電変換素子SC−107の作製
有機光電変換素子SC−106の作製において、第1の電極としてITOおよびAg粒子からなるナノ構造体を形成した代わりに、さらに表面修飾分子(上記化合物13)を被覆させたこと以外は、SC−106と同様にして有機光電変換素子SC−107を得た。
なお、表面修飾分子は、SC−105と同様にしてAg粒子からなるナノ構造体に吸着させた。
[比較例1−6]有機光電変換素子SC−108の作製
有機光電変換素子SC−106の作製において、Ag粒子からなるナノ構造体を作製して第1の電極に相当する層とした代わりに、Au粒子を用いて第1の電極に相当する層を形成したこと以外は、SC−106と同様にして有機光電変換素子SC−108を得た。
なお、Au粒子は、British Biocell International社から購入したEMGC60(Auコロイド、60nm径)を用いた。限外濾過膜を用いて銀粒子を濃縮処理した後、水・エタノール混合液に分散させてAu粒子分散液(Au粒子含有量0.8質量%)を調製し、Au粒子の目付け量が100mg/mとなるようにアプリケータを用いてガラス基板に塗布し、窒素下、120℃で10分乾燥して、厚みが80nmのAuからなる層を形成し、第1の電極を作製した。
[実施例1−3]有機光電変換素子SC−109の作製
有機光電変換素子SC−108の作製において、第1の電極をAu粒子からなるナノ構造体のみで形成した代わりに、さらに表面修飾分子(上記化合物13)を被覆させたこと以外は、SC−108と同様にして有機光電変換素子SC−109を得た。
なお、表面修飾分子は、SC−105と同様にしてAu粒子からなるナノ構造体に吸着させた。
[比較例1−7]有機光電変換素子SC−110の作製
有機光電変換素子SC−106の作製において、ITO膜上にAg膜を積層させた後、さらにAgナノワイヤーを堆積させて、Agナノワイヤーからなるナノ構造体を作製して第1の電極に相当する層としたこと以外は、SC−106と同様にして有機光電変換素子SC−110を得た。
なお、Agナノワイヤーは、以下の手順にしたがって堆積させた。
(分散液1の作製)
Agナノワイヤーは、Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、平均直径75nm、平均長さ10μmのAgナノワイヤーを作製し、限外濾過膜を用いてAgナノワイヤーを濾別かつ水洗処理した後、エタノール中に再分散してAgナノワイヤー分散液(Agナノワイヤー含有量5質量%)を調製した。
ITO堆積フィルム基板を界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
ITO堆積フィルム基板上に、分散液1をAgナノワイヤーの目付け量が80mg/mとなるようにアプリケータを用いて塗布し乾燥させて、第1の電極を作製した。
[比較例1−8]有機光電変換素子SC−111の作製
有機光電変換素子SC−110の作製において、第1の電極に相当する層をITO、Ag膜およびAgナノワイヤーからなるナノ構造体のみで形成した代わりに、さらに表面修飾分子(1−ブタンチオール;双極子モーメント:+2.05D)を被覆させたこと以外は、SC−110と同様にして有機光電変換素子SC−111を得た。
なお、表面修飾分子は、1−ブタンチオールをメタノール(溶媒)に溶解させて濃度50mMとし、上記で形成したAgナノ構造体に対して60分間浸漬させることにより吸着させた。
[比較例1−9]有機光電変換素子SC−112の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子を化合物4(双極子モーメント:−2.89D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−112を得た。
なお、表面修飾分子は、SC−105と同様にしてAgナノワイヤーからなるナノ構造体に吸着させた。また、表1中の仕事関数シフト量が負の値であるのは、表面修飾分子を吸着させることによって、第1の電極に相当する層の仕事関数が大きくなったことを示す(SC−110との比較による)。
[比較例1−10]有機光電変換素子SC−114の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子を化合物2(双極子モーメント:+1.91D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−114を得た。
[実施例1−4]有機光電変換素子SC−115の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子を化合物19(双極子モーメント:+3.30D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−115を得た。
[実施例1−5]有機光電変換素子SC−116の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子を化合物13(双極子モーメント:+3.85D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−116を得た。
[実施例1−6]有機光電変換素子SC−117の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子を化合物21(双極子モーメント:+6.39D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−117を得た。
[実施例1−7]有機光電変換素子SC−118の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子を化合物55(双極子モーメント:+3.06D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−118を得た。
[実施例1−8]有機光電変換素子SC−119の作製
有機光電変換素子SC−111の作製において、表面修飾分子をp−メトキシベンゼンチオール(化合物102、双極子モーメント:+3.05D)に変更した以外は、SC−111と同様にして有機光電変換素子SC−119を得た。
<変換効率の評価>
上記実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−10で作製した光電変換素子について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1cmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc[mA/cm]、開放電圧Voc[V]及び曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部についてそれぞれ測定し、平均値を求めた。また、求めた短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、及び曲線因子FFから式(1)に従って、光電変換効率η(%)を求めた。ここで、光電変換効率η(%)の数字が大きい程、エネルギー変換効率(光電変換効率)が良好であることを示す。
[評価]
各実施例および比較例の光変換効率ηについて、上記で作製した比較例1−1(SC−101)の光電変換効率ηを100としたときの相対値を表1に示す。
<光熱安定性の評価>
上記で作製した光電変換素子を85℃のホットプレート上に置き、2波長タイプの白色LED(東芝製小型SMD)を光源に用い、上記光電変換効率の評価において測定された短絡電流密度Jscとほぼ同じ値(約1Sun)になるようLEDの光量を調整し、1000時間光照射した。光照射後の短絡電流密度Jscを、上記光電変換効率の評価における測定方法に従って測定し、初期Jscに対する光照射後のJscの割合[%]を求めた。実施例および比較例の結果を表1に示す。
[評価]
◎:初期Jscに対する光照射後のJscの割合が90%以上
○:初期Jscに対する光照射後のJscの割合が80%以上90%未満
△:初期Jscに対する光照射後のJscの割合が70%以上80%未満
×:初期Jscに対する光照射後のJscの割合が70%未満
実施例の有機光電変換素子は、いずれも仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体に、双極子モーメントを有する表面修飾分子を吸着させたものである。そして、上記表1から明らかなように、この構成により、第1の仕事関数が、ナノ構造体と比較して仕事関数が0.2eV以上小さく、且つ正孔輸送層の仕事関数よりも0.7eV以上小さくなるようにシフトさせた第1の電極を備えた光電変換素子は、光電変換効率が高く、光照射によるJscの低下が少なく安定な素子が得られていることがわかる。さらに、表面修飾分子として電子供与性の置換基が吸着基に結合した化合物を用いると、第1の電極の仕事関数を特に大きくシフトさせることができ、電極間において実用的な電位差を達成することができる。
逆に、ナノ構造体を有する一方で、表面修飾分子を有さない第1電極を備えた有機光電変換素子(比較例1−5、1−6および1−7)や、第1の電極の仕事関数を適当な大きさにシフトできない表面吸着分子を含有する第1電極を備えた有機光電変換素子(比較例1−8)は、変換効率および光安定性のいずれも向上させることができないことが示された。
<順層型有機光電変換素子の作製>
[比較例2−1]有機光電変換素子SC−201の作製
特許第4188389号公報に記載の有機光電変換素子を以下のように作製した。
(透明電極の形成)
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗12Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第1の電極を形成した。パターン形成した第一の電極(陽極)を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
(正孔輸送層の形成)
次いで、正孔輸送層として、導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標)P VP AI 4083、ヘレオス株式会社製、導電率1×10−3S/cm)を3.0質量%で含むイソプロパノール溶液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるように、基板を65℃に調温したブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、120℃の温風で20秒間加熱処理して、正孔輸送層を上記第1の電極上に製膜した。
(光電変換層の形成)
続けて、o−ジクロロベンゼンに、MET−PPV(メトキシフェニレンビニレン)とCN−PPV(ポリ(シアノフェニレン−ビニレン))(「CN−PPV」)とを7:3(質量比)、3:7(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させ、それぞれ溶液A(第一の光電変換層形成用溶液)、溶液B(第二の光電変換層形成用溶液)を調製した。これをインクジェット法により溶液Aを乾燥膜厚が50nmになるように製膜した後、溶液Bを乾燥膜厚が50nmになるように製膜し、合計の膜厚が100nmになるように光電変換層を形成した。
形成した光電変換層は所定のパターンに拭き取りによるパターニングを行った。
(バッファー層および第二の電極の形成)
次に、上記光電変換層までを製膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。そして、10mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、蒸着速度で0.05nm/秒でLiF0.6nm、ついで蒸着速度2nm/秒でAlを、それぞれ、100nm蒸着してバッファー層および第二の電極(陰極)を形成した。
(有機光電変換素子の封止)
得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、2枚の3M製Ultra Barrier Solar Film UBL−9L(水蒸気透過率<5×10−4g/m/d)の間に挟みこみ、UV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後、大気下に取り出し、受光部が約10×10mmサイズで、光電変換層の膜厚が100nmの有機光電変換素子SC−201を作製した。
また、光電変換層の形成において、第一の光電変換層形成用溶液および第二の光電変換層形成用溶液をそれぞれ150nmずつ製膜することにより、合計膜厚が300nmになるように光電変換層を形成したこと以外は上記と同様の方法により、光電変換層の膜厚が300nmの有機光電変換素子SC−201を作製した。
[比較例2−2]有機光電変換素子SC−202の作製
正孔輸送層の形成まではSC−201と同様に行った。
(光電変換層の形成)
p型半導体材料として、Adv.Mater.,vol.19,(2007),p2295を参考にしてポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)を合成した。
o−ジクロロベンゼンに、上記で合成したPCDTBTとPC60BMを7:3(質量比)、3:7(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させ、それぞれ溶液C(第一の光電変換層形成用溶液)、溶液D(第二の光電変換層形成用溶液)を調製した。
80℃に設定したコーターの上にブレードを二つ連続しておき、下層に製膜される側(進行方向に対し手前側)のブレードには溶液C、上層に製膜される側(進行方向に対し後ろ側)のブレードには溶液Dをセットし、塗布スピード10mm/sの速さで塗布製膜を行い、乾燥膜厚100nmの光電変換層を形成した。
以降はSC−201と同様にしてバッファー層および第二の電極を形成し、封止を行って、光電変換層の膜厚が100nmの有機光電変換素子SC−202を作製した。
また、光電変換層の形成において、溶液CおよびDの塗布スピードを40mm/sに変更し、乾燥膜厚が300nmの光電変換層を形成したこと以外は上記と同様の方法により、光電変換層の膜厚が300nmの有機光電変換素子SC−202を作製した。
[比較例2−3]有機光電変換素子SC−203の作製
正孔輸送層の形成まではSC−201と同様に行った。
(光電変換層の形成)
Angew,Chem,Int,Ed.(2011),50,5519−5523を参考にしてPVP保護Auナノ粒子を調製した。得られたAuナノ粒子は切頂8面体構造で、粒径は70nm±10nmであった。
o−ジクロロベンゼンに、上記比較例2で合成したPCDTBTと、PC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に先に調製したAuナノ粒子を5質量%添加し10分間超音波分散させて調製した溶液Eを調製した。
コーターの上にブレードをおき、塗布スピード20mm/sの速さで溶液Eの塗布製膜を行い、乾燥膜厚100nmの光電変換層を形成した。
以降はSC−201と同様にしてバッファー層および第二の電極を形成し、封止を行って、光電変換層の膜厚が100nmの有機光電変換素子SC−203を作製した。
また、光電変換層の形成において、溶液Eの塗布スピードを60mm/sに変更し、乾燥膜厚が300nmの光電変換層を形成したこと以外は上記と同様の方法により、光電変換層の膜厚が300nmの有機光電変換素子SC−203を作製した。
[実施例2−1]有機光電変換素子SC−204の作製
ブレード法により、第一の光電変換層形成用溶液を塗布した後、第二の光電変換層形成用溶液を逐次塗布により塗布したこと以外は、SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−204をそれぞれ作製した。
光電変換層を形成する際には、下層側(第一の光電変換層)には、上記比較例2−2で合成したPCDTBTと、PC60BMとを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に比較例2−3で調製したAuナノ粒子を溶液100質量%に対して5質量%添加し10分間超音波分散させて調製した溶液E(第一の光電変換層形成用溶液)を、上層側(第二の光電変換層)には溶液PCDTBTと、PC60BMを5:5(質量比)とで一昼夜撹拌し調製した溶液G(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−2]有機光電変換素子SC−205の作製
CARBON.(2012)40−46を参考にしてオクタデシルアミンで表面を変性させたカーボンナノチューブ(ODA−CNT)を調製した。得られたODA−CNTは平均直径が2nm、平均長さはおよそ55μmであった。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−205をそれぞれ作製した。
光電変換層を形成する際には、下層側(第一の光電変換層)には、o−ジクロロベンゼンに、上記比較例2−2で合成したPCDTBTとPC60BMとを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に先に調製したODA−CNTを溶液100質量%に対して0.2質量%添加し10分間超音波分散させて調製した溶液F(第一の光電変換層形成用溶液)を、上層側(第二の光電変換層)にはPCDTBTと、PC60BMとを5:5(質量比)で一昼夜撹拌し調製した溶液G(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−3]有機光電変換素子SC−206の作製
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−206をそれぞれ作製した。
光電変換層を形成する際には、下層側には溶液G(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には、o−ジクロロベンゼンに上記比較例2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液にトルエン分散のTiOナノ粒子(シーアイ化成社製、平均粒径50nm)を溶液100質量%に対して5質量%添加し、10分間超音波分散させて調製した溶液H(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−4]有機光電変換素子SC−207の作製
Chem,Mater.(2002),14,4736−4745を参考にしてPVP保護Agナノワイヤー(AgNW)を調製した。得られたAgNWの平均直径は30〜40nm、平均長さはおよそ50μmであった。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−207をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には、o−ジクロロベンゼンに上記比較例2−2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に先の調製したAgNWを溶液100質量%に対して20質量%添加し、10分間超音波分散させて調製した溶液I(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液G(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−5]有機光電変換素子SC−208の作製
Angew,Chem,Int,Ed.(2011),50,5519−5523を参考にしてPVP保護Auナノ粒子を調製した。得られたAuナノ粒子は切頂8面体構造で、粒径は70nm±10nmであった。
上記で調製したPVP保護Auナノ粒子に対し、10当量の化合物gを添加し10分間撹拌した後、5000rpm20分間遠心分離を行うことにより得られた沈殿物を超純水に再分散させ、化合物g被覆Auナノ粒子を得た。
o−ジクロロベンゼンに上記比較例2−2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に化合物g被覆Auナノ粒子を溶液100質量%に対して5質量%添加し、10分間超音波分散させて溶液Jを調製した。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−108をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液G(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液J(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−6]有機光電変換素子SC−209の作製
実施例2−4で調製したPVP保護AgNWに対し、10当量の化合物jを添加し10分間撹拌した後、5000rpm20分間遠心分離を行うことにより得られた沈殿物を超純水に再分散させ、化合物j被覆AgNWを得た。
o−ジクロロベンゼンに上記比較例2−2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に化合物j被覆AgNWを溶液100質量%に対して0.2質量%添加し、10分間超音波分散させて溶液Kを調製した。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−209をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液G(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液K(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−7]有機光電変換素子SC−210の作製
実施例2−5で調製したPVP保護Auナノ粒子に対し、10当量の化合物eを添加し10分間撹拌した後、5000rpm20分間遠心分離を行うことにより得られた沈殿物を超純水に再分散させ、化合物e被覆Auナノ粒子を得た。
o−ジクロロベンゼンに上記比較例2−2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に化合物e被覆Auナノ粒子を溶液100質量%に対して5質量%添加し、10分間超音波分散させて溶液Lを調製した。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−210をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液L(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液G(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−8]有機光電変換素子SC−211の作製
o−ジクロロベンゼンに上記比較例2−2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液にトルエン分散のZnOナノ粒子(シーアイ化成社製、平均粒径60nm)を溶液100質量%に対して5質量%添加し、10分間超音波分散させて溶液Mを調製した。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−211をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液E(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液M(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−9]有機光電変換素子SC−212の作製
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−212をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液E(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液H(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−10]有機光電変換素子SC−213の作製
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−213をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液I(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液J(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−11]有機光電変換素子SC−214の作製
実施例2−5で調製したPVP保護Auナノ粒子に対し、10当量の化合物kを添加し10分間撹拌した後、5000rpm20分間遠心分離を行うことにより得られた沈殿物を超純水に再分散させ、化合物k被覆Auナノ粒子を得た。
o−ジクロロベンゼンに上記比較例2で合成したPCDTBTとPC60BMを5:5(質量比)で一昼夜撹拌した溶液に化合物k被覆Auナノ粒子を溶液100質量%に対して5質量%添加し、10分間超音波分散させて溶液Nを調製した。
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−214をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液E(第一の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液N(第二の光電変換層形成用溶液)を使用した。
<変換効率の評価>
上記実施例2−1〜2−11および比較例2−1〜2−3で作製した光電変換素子について、上記と同様の手法により、短絡電流密度Jsc[mA/cm]、開放電圧Voc[V]及び曲線因子(フィルファクター)FFを測定し、平均値を求めた。また、求めた短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、及び曲線因子FFから上記式(1)に従って、光電変換効率η(%)を求めた。
上記実施例および比較例の層構成および結果を表2および表3に示す。
表中、PCEはPower Conversion Efficiencyの略であり、光電変換効率を指す。
<逆層型有機光電変換素子の作製>
[比較例2−4]有機光電変換素子SC−301の作製
(透明電極の形成)
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗12Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第二の電極(陰極)を形成した。パターン形成した第二の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
(電子輸送層の形成)
この第二の電極上に、Aldrich社製3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランの0.05質量%メトキシエタノール溶液を、乾燥膜厚が約5nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、ホットプレート上で120℃1分間の加熱処理をして、電子輸送層を製膜した。
(光電変換層の形成)
80℃に設定したコーターの上にブレードを二つ連続しておき、下層に製膜される側のブレードには溶液D(第二の光電変換層形成用溶液)、上層に製膜される側のブレードには溶液C(第一の光電変換層形成用溶液)をセットし、塗布スピード10mm/sの速さで塗布製膜を行い、乾燥膜厚100nmの光電変換層を形成した。
(正孔輸送層の形成)
光電変換層の乾燥完了後、再び大気下に取り出し、次いで正孔輸送層として、導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標)P VP AI 4083、ヘレオス株式会社製、導電率1×10−3S/cm)を等量のイソプロパノールで希釈した液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、90℃の温風で20秒間加熱処理して、有機物からなる正孔輸送層(有機材料層)を形成した。
次に、10mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.5nm/秒でAgメタルを200nm積層して、第一の電極(陽極)を形成した。得られた積層体を窒素チャンバーに移動し、住友3M社製のUBF−9L(水蒸気透過率5.0×10−4g/m/d)の間に挟みこみ、UV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、受光部が約10×10mmサイズの有機光電変換素子SC−301を得た。
また、光電変換層の形成において、第一の光電変換層形成用溶液および第二の光電変換層形成用溶液をそれぞれ150nmずつ製膜することにより、合計膜厚が300nmになるように光電変換層を形成したこと以外は上記と同様の方法により、光電変換層の膜厚が300nmの有機光電変換素子SC−301を作製した。
[比較例2−5]有機光電変換素子SC−302の作製
電子輸送層の形成まではSC−301と同様にした。
(光電変換層の形成)
コーターの上にスキージをおき、塗布スピード20mm/sの速さで溶液Eの塗布製膜を行い、乾燥膜厚100nmの光電変換層を形成した。
以降はSC−201と同様にして正孔輸送層および第二の電極を形成し、封止を行って、光電変換層の膜厚が100nmの有機光電変換素子SC−302を作製した。
また、光電変換層の形成において、溶液Eの塗布スピードを60mm/sに変更し、乾燥膜厚が300nmの光電変換層を形成したこと以外は上記と同様の方法により、光電変換層の膜厚が300nmの有機光電変換素子SC−302を作製した。
[実施例2−12]有機光電変換素子SC−303の作製
SC−301と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−303をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液G(第二の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液E(第一の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−13]有機光電変換素子SC−304の作製
SC−301と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−304をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液K(第二の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液G(第一の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−14]有機光電変換素子SC−305の作製
SC−301と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−305をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液G(第二の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液L(第一の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−15]有機光電変換素子SC−306の作製
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−306をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液J(第二の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液I(第一の光電変換層形成用溶液)を使用した。
[実施例2−16]有機光電変換素子SC−307の作製
SC−202と同様の方法で、光電変換層の乾燥膜厚が100nmと300nmのSC−307をそれぞれ作製した。光電変換層を形成する際には、下層側には溶液N(第二の光電変換層形成用溶液)、上層側には溶液E(第一の光電変換層形成用溶液)を使用した。
上記実施例および比較例の層構成および変換効率の評価結果を表4および表5に示す。
以上の結果より、実施例の有機光電変換素子は、FFおよびJscが高く、光電変換効率に優れた有機光電変換素子であった。また、有機光電変換層を膜厚化した場合にもFFの低下が少なく、またJscが向上するため、光電変換効率に優れた有機光電変換素子となった。また、層構成によらず、光電変換効率の高い光電変換素子であった。
10、20、30 有機光電変換素子、
1 透明導電膜、
2,2’ ナノ構造体、
2a 微小構造体(ナノワイヤー)、
2a’ 微小構造体(ナノ粒子)、
3 表面修飾分子、
11 陰極(第1の電極)、
12 陽極(第2の電極)、
14 光電変換層、
14a 第1の光電変換層、
14b 第2の光電変換層、
25 基板、
26 正孔輸送層、
27 電子輸送層、
38 電荷再結合層(中間層)。

Claims (6)

  1. 第1の電極と、バルクヘテロジャンクション型の光電変換層と、正孔輸送層と、第2の電極と、をこの順に有する有機光電変換素子であって、
    前記第1の電極は、紫外光電子分光法で測定した仕事関数が4.3eVよりも大きいナノ構造体と、双極子モーメントを有し、前記ナノ構造体の表面に吸着した表面修飾分子と、を含み、
    前記第1の電極の仕事関数は、前記ナノ構造体の仕事関数よりも0.2eV以上小さく、かつ前記正孔輸送層の仕事関数よりも0.7eV以上小さく、前記表面修飾分子は−CS 基を有する、有機光電変換素子。
  2. 前記ナノ構造体は、金属ナノワイヤーまたは金属ナノ粒子からなる、請求項1に記載の有機光電変換素子。
  3. 前記ナノ構造体を形成する金属は、Au、Ag、Cu、WおよびZnからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の有機光電変換素子。
  4. 前記表面修飾分子は、前記ナノ構造体を形成する金属に吸着する吸着基と、該吸着基に結合した電子供与性置換基と、を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  5. 前記表面修飾分子の双極子モーメントは、+3.0D〜+10.0Dである、請求項1〜のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有する、太陽電池。
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