以下に、本発明の実施形態に係る苗移植機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能且つ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
[実施形態]
本発明の実施形態に係る苗移植機1を、図1から図7に基いて説明する。図1は、実施形態に係る苗移植機を表す側面図である。図2は、実施形態に係る苗移植機を表す上面図である。図3は、実施形態に係る苗移植機を表す正面図である。図4は、実施形態に係る苗移植機の整地装置昇降機構などを示す側面図である。図5は、実施形態に係る苗移植機の整地装置などの概要を示す平面図である。図6は、実施形態に係る苗移植機の苗植付部が植付位置まで下降された状態で整地装置が最下方に位置付けられた状態を示す側面図である。図7は、実施形態に係る苗移植機の苗植付部が非作業位置まで上昇された状態で整地装置が最上方に位置付けられた状態を示す側面図である。
実施形態に係る苗移植機1は、走行しながら圃場に苗を植え付けるものである。なお、以下では、苗移植機1の前進方向を前方側(図1および図2の左側)とし、苗移植機1の後退方向を後方側(図1および図2の右側)とし、苗移植機1の前後方向に直交する直交方向を左右方向とし、苗移植機1の前後方向に直交する鉛直方向を上下方向としている。
図1および図2に示すように、苗移植機1は、走行車体2と、走行車体2の後部(後方側)に装着された苗植付装置3と、動力伝達機構4と、整地装置5と、整地装置昇降機構6(図4に示す)と、制御装置(図示せず)などを備えている。
走行車体2は、左右一対の前輪12a,12aおよび左右一対の後輪(走行輪)12b,12bからなる4つの車輪12を有し、該4つの車輪12を駆動輪とする4輪駆動車となっている。走行車体2は、メインフレーム10と、メインフレーム10に搭載されたエンジン11などを有している。この苗移植機1において、エンジン11の駆動力は、走行車体2を前進又は後退させるために使用されるだけでなく、苗植付装置3を駆動させるためにも使用される。
エンジン11は、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関であって、出力軸から駆動力を出力する。出力軸は、走行車体2の左側方から突出している。エンジン11は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ20よりも上方に突出させた状態で配置されている。このとき、エンジン11の出力軸は、フロアステップ20の床面よりも下方に位置している。
ここで、フロアステップ20は、走行車体2の前部(前方側)とエンジン11の後部(後方側)との間に渡って設けられており、メインフレーム10上に取り付けられている。また、フロアステップ20の後方には、後輪12b,12bのフェンダを兼ねたリアステップ21が設けられている。このリアステップ21は、後方に向うに従って上方に向う方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン11の左右それぞれの側方に配置されている。
エンジン11は、これらのフロアステップ20とリアステップ21とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン11を覆うエンジンカバー14が配設されている。即ち、エンジンカバー14は、フロアステップ20とリアステップ21とから上方に突出した状態で、エンジン11を覆っている。
また、走行車体2には、エンジンカバー14の上部に操縦席22が設置されている。即ち、操縦席22は、走行車体2の前部に設けられている。また、操縦席22の下方には、走行車体2のピッチ角を検出可能な傾斜角センサ(図示せず)が設けられている。また、走行車体2には、操縦席22の前方で、且つ、走行車体2の前部には、フロントカバー23が配設されている。このフロントカバー23は、フロアステップ20の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ20の前方側を左右に分断している。
このフロントカバー23の内部には、図示しない制御装置、操作パネル等の操作装置、ステアリング機構等が配設されている。また、フロントカバー23の上部には、各種操作レバー等や計器類、ハンドル24が配設されている。このハンドル24は、作業者が回転操作することにより、前輪12a,12aをステアリング操舵する操舵部材として設けられており、フロントカバー23内のステアリング機構等を介して前輪12a,12aをステアリング操舵(転舵)させることが可能になっている。
また、フロントカバー23の上部に設けられた各種操作レバーとしては、走行車体2の前後進、停止及び移動速度を切り替える走行操作レバー(図示せず)が配設されている。また、フロントカバー23の上部に設けられた各種操作レバーとしては、走行車体2が路上を走行する「路上走行モード」と、走行車体2が走行しながら圃場に苗を植え付ける「作業走行モード」等とを切替える副変速操作レバー(図示せず)が配設されている。また、フロントカバー23の上部に設けられた各種操作レバーとしては、苗植付装置3が圃場に植え付ける苗の間隔(走行車体2の進行方向における苗の植付間隔)を変更する株間変更ダイヤル(図示せず)が配設されている。実施形態では、株間変更ダイヤルは、苗の株間(植付間隔)を、坪当たりの株数を37株とする状態と、42株とする状態と、47株とする状態と、50株とする状態と、60株とする状態と、70株とする状態と、80株とする状態と、90株とする状態とのいずれかに変更する。
また、フロアステップ20におけるフロントカバー23の左右それぞれの側方には、補給用の苗を載せておく予備苗枠7a,7bを備えている。予備苗枠7a,7bは、それぞれ、苗植付部30に補充するための補給用の苗を載せておく予備苗載台100を複数備えている。フロントカバー23の右側の予備苗枠7aは、複数の予備苗載台100が前後方向に並ぶ展開形態と複数の予備苗載台100が上下方向に並ぶ積層形態とに亘って可動する可動式の予備苗枠である。フロントカバー23の左側の予備苗枠7bは、複数の予備苗載台100が上下方向に並ぶ形態から可動することのない固定式の予備苗枠である。
走行車体2の操縦席22の後方に施肥装置26(図1に示す)が設けられている。即ち、施肥装置26は、走行車体2の後部に設けられている。施肥装置26は、肥料ホッパ27に貯留されている粒状の肥料を植付作業中に一定量ずつ圃場に供給する。
苗植付装置3は、走行車体2の後部に昇降自在に装着され、且つ苗を圃場に植え付ける苗植付部30と、苗植付部30を走行車体2に対して昇降させる苗植付部昇降機構31とを備えている。苗植付部昇降機構31は、昇降リンク機構32を有しており、苗植付部30は、この昇降リンク機構32を介して走行車体2に取り付けられている。昇降リンク機構32は、走行車体2の後部と苗植付部30とを連結し、上下方向に間隔をあけて設けられた一対のリンク部材32a,32bを備えており、これらのリンク部材32a,32bが、メインフレーム10の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム33に回動自在に連結され、各リンク部材32a,32bの他端側が苗植付部30に回転自在に連結されることにより、苗植付部30を昇降可能に走行車体2に連結している。
また、苗植付部昇降機構31は、エンジン11の駆動力により発生する油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ34を有しており、油圧昇降シリンダ34の伸縮動作によって、昇降リンク機構32が苗植付部30を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構31は、その昇降動作によって、苗植付部30を所定高さの非作業位置(図7に示す)まで上昇させたり、苗の植付位置(図6に示す)まで下降させたりすることが可能になっている。
苗植付部30は、苗の植付範囲を複数の区画あるいは複数の列で、苗を圃場に植え付けることができる。実施形態に係る苗移植機1は、苗を4つの区画で植え付ける、いわゆる4条植のものである。苗植付部30は、昇降リンク機構32により昇降自在に設けられた植付フレーム35(図4に示す)と、植付機構36と、苗載せ台37と、フロート38とを備えている。
植付フレーム35は、昇降リンク機構32の一対のリンク部材32a,32bの後端が取り付けられている。苗載せ台37は、植付フレーム35に重ねられるなどして設けられ、植付フレーム35などを介して走行車体2の後部に苗植付部昇降機構31により昇降自在に配置されている。苗載せ台37は、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面37aを有しており、それぞれの苗載せ面37aに土付きのマット状苗を積載することが可能になっている。これにより、苗載せ台37に積載した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
植付機構36は、苗載せ台37の下方に配置され、且つ苗載せ台37に積載された苗を圃場に植え付ける。この植付機構36は、2条毎に一つずつ配設されており、2条分の複数の植込杆36cを備えている。本実施形態では、植付機構36は、合計二つ設けられ、各植付機構36は、1条につき植込杆36cを二つ備えている。また、植付機構36は、植付フレーム35の下端部に取り付けられ、且つ左右方向に直線状に延びた整地支持フレーム39(図4及び図5に示す)と、整地支持フレーム39から後方に延びた伝動ケース36aと、中央部を中心に伝動ケース36aに回転自在に設けられた二つの回転支持部36bと、それぞれの回転支持部36bの両端部に回転自在に設けられ、且つ苗載せ台37に積載された苗を圃場に植え付ける植込杆36cとを備えている。
整地支持フレーム39は、図5に示すように、整地装置5の走行車体2の左右方向の幅と等しく形成されている。なお、本発明では、整地支持フレーム39は、整地装置5と走行車体2の左右方向の幅よりも若干長く形成されてもよい。
フロート38は、走行車体2の移動と共に、圃場上を滑走して整地するものである。フロート38は、図5に示すように、走行車体2の左右方向における苗植付部30の中央に設けられた一つのセンターフロート38aと、該センターフロート38aの左右両側にそれぞれ設けられたサイドフロート38b,38bとの3枚で構成されている。なお、本実施形態では、センターフロート38a及び左右のサイドフロート38b,38b(以下、各フロート38a,38b,38c)は、左右方向に間隔を空けて並べられている。
また、各フロート38a,38b,38bは、圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられている。苗植付装置3は、センターフロート38aの上下動を検知する迎角制御センサ(図示しない)を設けている。苗植付装置3は、植付作業時にはセンターフロート38aの前部の上下動が迎角制御センサにより検知され、その検知結果に応じて制御装置により油圧昇降シリンダ34を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部30を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
動力伝達機構4は、主変速機としての油圧式無段変速機15と、この油圧式無段変速機15にエンジン11からの駆動力を伝えるベルト式動力伝達機構16と、植付伝動機構(図示せず)とを有している。先ず、油圧式無段変速機15について説明する。
油圧式無段変速機15は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機として構成されている。油圧式無段変速機15は、エンジン11からの駆動力で駆動する油圧ポンプと、油圧ポンプによって発生させた油圧により機械的な力(回転力)を出力する油圧モータとを有している。なお、油圧ポンプによって発生させた油圧は、油圧モータを作動させるだけでなく、苗植付部昇降機構31の油圧昇降シリンダ34を作動させるために用いられる。また、油圧式無段変速機15は、エンジン11の駆動力が入力される油圧ポンプの入力軸に対して傾斜可能な図示しない斜板と、走行車体2の目標とする走行速度に応じて斜板の傾斜角を変更させるサーボモータとを有している。斜板は、油圧ポンプの入力軸に対して傾斜させることで、油圧ポンプから油圧モータへ向けて供給される作動油の流量を可変させる。
斜板の傾斜角を変更させるサーボモータは、制御装置に接続されており、制御装置は、走行車体2の目標とする走行速度に応じて、サーボモータにより斜板の傾斜角を変更している。具体的に、走行車体2を停止させる停止位置の場合、制御装置は、サーボモータにより斜板を中立状態とする。ここで、斜板の中立状態とは、斜板と入力軸とがなす角度が90°となる状態である。そして、制御装置は、サーボモータにより斜板を中立状態とすると、油圧ポンプは、油圧モータへ向けて供給する作動油の流量をゼロとする。
一方で、走行車体2を前進させる前進位置の場合、制御装置は、サーボモータにより斜板の傾斜角が正側に大きくなるように変更させる。すると、油圧ポンプは、油圧モータの出力軸が正回転するように、油圧モータへ向けて供給する作動油の流量を多くする。他方で、走行車体2を後退させる後退位置の場合、制御装置は、サーボモータにより斜板の傾斜角が負側に大きくなるように変更させる。すると、油圧ポンプは、油圧モータの出力軸が逆回転するように、油圧モータへ向けて供給する作動油の流量を多くする。なお、油圧モータは、供給される作動油の流量が多ければ多いほど、出力軸の回転数が大きくなる。
このため、油圧式無段変速機15は、エンジン11の駆動力を、走行車体2が前進方向に駆動する駆動力として出力したり、走行車体2を停止させる制動力として出力したり、走行車体2が後退方向に駆動する駆動力として出力可能となっている。
再び、図1を参照するが、この油圧式無段変速機15は、エンジン11よりも前方で且つフロアステップ20の床面よりも下方に配置される。実施形態では、走行車体2の上面から見て、エンジン11の前方に油圧式無段変速機15を配置している。また、油圧式無段変速機15は、エンジン11の出力軸が走行車体2の左側方から突出しているため、走行車体2の左側に寄せて配置され、その入力軸が走行車体2の左側方から突出している。
ベルト式動力伝達機構16は、エンジン11で発生した駆動力を、ベルト16aを介して油圧式無段変速機15に伝達する。
さらに、動力伝達機構4は、エンジン11からの駆動力がベルト式動力伝達機構16と油圧式無段変速機15とを介して伝達されるミッションケース(図示せず)などを有している。ミッションケースは、メインフレーム10の前部に取り付けられている。ミッションケースは、ベルト式動力伝達機構16と油圧式無段変速機15とを介して伝達されたエンジン11からの駆動力を、当該ミッションケース内の副変速機で変速して、前輪12a,12aと後輪12b,12bへの走行用動力と、苗植付装置3への植付用動力などに分けて出力する。
このうち、走行用動力は、走行車体2に設けられた後輪12bに駆動力を供給するドライブシャフト17及び左右の後輪ギヤケース29を介して後輪12bに伝達される。また、走行用動力は、図示しない前輪用デフ装置に伝達された後、左右の前輪ファイナルケース28を介して前輪12aに伝達される。
なお、左右の前輪ファイナルケース28は、ミッションケースの左右それぞれの側方に配設されており、左右一対の前輪12aは、前輪側車軸を介して左右の前輪ファイナルケース28に連結されている。また、この前輪ファイナルケース28は、ハンドル24の回転操作に応じて駆動し、前輪12aをステアリング操舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース29には、後輪側車軸を介して後輪12bが連結されている。
また、植付用動力は、走行車体2の後部に設けた植付伝動機構の植付クラッチ(図示せず)に伝達され、この植付クラッチの係合時に苗植付部30へ伝達される。
植付伝動機構は、エンジン11からの駆動力を苗植付装置3へ植付用動力として伝達するものである。植付伝動機構は、各植付機構36の回転支持部36bを伝動ケース36aに対して回転させるとともに、回転支持部36bの両端部で植込杆36cを回転させる。また、動力伝達機構4は、エンジン11からの駆動力を整地装置5へ整地用動力として伝達するものである。
整地装置5は、苗植付装置3の苗植付部30の下方でかつ整地支持フレーム39よりも前方に設けられて、圃場を均すものである。整地装置5は、整地支持フレーム39に支持されている。整地支持フレーム39は、図11に示すように、センターフロート38a及びサイドフロート38bの前方に設けている。
整地装置5は、整地支持フレーム39と同様に、走行車体2の左右方向に直線状に延びている。整地装置5は、図5に示すように、走行車体2の左右方向に直線状に延び、且つ軸心回りに回転自在な整地ロータ50と、走行車体2の左右方向の中央部に設けられ、且つ走行車体2のエンジン11からの駆動力が伝達される伝動ロッド52とを備えている。整地ロータ50は、エンジン11からの出力によって回転される。
整地装置昇降機構6は、整地装置5を走行車体2に支持し、整地装置5を昇降するものである。整地装置昇降機構6は、図5に示すように、一対の支持プレート60と、一対の支持プレート60間に設けられた整地回動アーム61と、整地昇降機構62と、連動昇降機構65とを備える。
支持プレート60及び整地回動アーム61は、一端が整地支持フレーム39に回転自在に連結され、他端が整地装置5の整地ロータ50に回転自在に連結されて、整地装置5を後方から支持するものである。支持プレート60は、苗植付部30に整地装置5の左右両端を支持するものである。支持プレート60の一端は、整地支持フレーム39の左右両端に回転自在に連結されている。即ち、支持プレート60は、整地支持フレーム39の左右両端に取り付けられている。支持プレート60は、苗移植機1の側方からみて、整地支持フレーム39から整地装置5に向かって延びている。支持プレート60の他端は、整地ロータ50の左右両端に回転自在に連結されている。こうして、支持プレート60は、整地装置5の整地ロータ50の左右両端と整地支持フレーム39の左右両端とを連結している。
整地回動アーム61は、本実施形態では、一つ設けられている。整地回動アーム61の他端は、整地ロータ50の左右方向の中央と一方の支持プレート60との間に回転自在に連結されている。整地回動アーム61は、走行車体2の左右方向の中央よりも左右方向の一方側としての左側に設けられている。
整地昇降機構62は、作業者の操作により整地装置5の整地ロータ50の整地高さを調整するものである。整地昇降機構62は、図4に示すように、整地装置5の整地高さを変更するための整地高さレバー63と、吊下げアーム66とを備えている。
整地高さレバー63は、苗植付装置3の苗植付部30の植付フレーム35に固定された調整用目盛部材64などに後端部を中心として回転自在に取り付けられている。整地高さレバー63は、作業者により把持されて回転される。整地高さレバー63は、操縦席22の後方で、且つ、図5に示すように、走行車体2の左右方向の中央よりも左右方向の一方側としての左側に設けられている。なお、調整用目盛部材64は、作業者に整地装置5の整地ロータ50の整地高さを示すものである。
吊下げアーム66は、棒状に形成され、一端が整地高さレバー63の中央部にスライド自在に取り付けられ、他端が整地回動アーム61の中央部に回転自在に取り付けられている。吊下げアーム66は、苗植付装置3の苗植付部30の植付フレーム35から整地回動アーム61を介して整地装置5を吊り下げる。
整地昇降機構62は、整地高さレバー63が後端部を中心として回転させることで、吊下げアーム66を昇降させ、整地回動アーム61を介して整地装置5を昇降させる。整地昇降機構62は、苗植付部昇降機構31とは独立しており、整地装置5のみを苗植付部30に対して相対的に昇降させる。例えば、苗植付部昇降機構31が苗植付部30を植付位置に位置付けると、整地高さレバー63は、前端部が図4に示す一点鎖線で示す位置まで上昇されると、整地装置5の整地ロータ50を図4に示す一点鎖線で示す位置まで上昇させる。整地高さレバー63は、前端部が図4に示す二点鎖線で示す位置まで下降されると、整地装置5の整地ロータ50を図4に示す二点鎖線で示す位置まで下降させる。
連動昇降機構65は、苗植付部昇降機構31の苗植付部30の昇降動作に連動させて、整地装置5の整地ロータ50を昇降させるものである。即ち、連動昇降機構65は、苗植付部30が上昇されると、整地装置5の整地ロータ50を上昇させ、苗植付部30が下降されると、整地装置5の整地ロータ50を下降させるものである。
連動昇降機構65は、図4及び図5に示すように、苗植付部30の昇降に連動して整地装置5の整地ロータ50を昇降させる連動ロッド67と、整地装置5の整地ロータ50と連動ロッド67とを連結する整地リンクアーム68と、一対のリンク部材32a,32bに設けられた円柱状の支点ピン69a,69bとを備える。
整地リンクアーム68は、図5に示すように、伝動ロッド52の走行車体2の左右両側にそれぞれ配置されて、一対設けられている。一対の整地リンクアーム68は、一対の支持プレート60の左右方向の間に配置されて、一対の支持プレート60よりも左右方向の中央に配置されている。整地リンクアーム68は、一端が整地装置5の整地ロータ50の左右方向の中央部に取り付けられている。整地リンクアーム68は、苗移植機1の側方からみて、他端が整地装置5の整地ロータ50から前方に向かうにしたがって徐々に上方に向かう方向に延びている。
連動ロッド67は、一つのみ設けられ、一対の整地リンクアーム68のうちの走行車体2の左右方向の一方側としての左側に設けられた一方の整地リンクアーム68のみに連結されている。連動ロッド67は、直線状に延びた帯板状に形成され、支点ピン69a,69bを内側に配置する長孔67aが形成されている。長孔67aの長手方向は、連動ロッド67の長手方向と平行である。連動ロッド67は、長孔67a内に支点ピン69a,69bを配置することで、一対のリンク部材32a,32bに上下方向に移動自在に取り付けられる。また、連動ロッド67は、下端部が一方の整地リンクアーム68の他端に回転自在に連結されている。
連動昇降機構65は、前述した構成の連動ロッド67及び整地リンクアーム68などを備えることで、苗植付部昇降機構31の苗植付部30の昇降動作に連動させて、整地装置5の整地ロータ50を昇降させる。この際、苗植付部昇降機構31が苗植付部30を植付位置まで下降させた際に、整地装置5の整地ロータ50が下方に向けて回転されると、図6に示すように、上側のリンク部材32aに設けられた支点ピン69aが長孔67aの上部に接触する。そして、上側のリンク部材32aに設けられた支点ピン69aが長孔67aの上部に接触した状態よりも、整地装置5の整地ロータ50が下降することが規制される。
また、苗植付部昇降機構31が苗植付部30を所定高さの非作業位置まで上昇させた際に、整地装置5の整地ロータ50が上方に向けて回転されると、図7に示すように、下側のリンク部材32bに設けられた支点ピン69bが長孔67aの下部に接触する。下側のリンク部材32bに設けられた支点ピン69bが長孔67aの下部に接触した状態では、整地装置5の整地ロータ50が、昇降リンク機構32のリンク部材32a,32bなどと間隔をあける。そして、下側のリンク部材32bに設けられた支点ピン69bが長孔67aの下部に接触した状態よりも、整地装置5の整地ロータ50が上昇することが規制される。整地装置5の整地ロータ50が下側のリンク部材32bなどに接触することが規制される。
また、走行車体2の操縦席22の後方には、図5に示すように、整地高さレバー63に加えて、植付深さレバー71と、苗取量レバー72と、アゼクラッチ73とが設けられている。植付深さレバー71は、苗植付部30の植付深さを変更するためのものである。苗取量レバー72は、苗植付部30の苗取量を変更するためのものである。植付深さレバー71と、苗取量レバー72と、整地高さレバー63は、図5に示すように、走行車体2の平面視において、走行車体2の左右方向の中央よりも左右方向の連動ロッド67を設けた一方側としての左側に設けられている。アゼクラッチ73は、アゼクラッチレバー73aが操作されることで、整地装置5の整地ロータ50へエンジン11からの駆動力を伝達させたり切断するものである。アゼクラッチ73は、図5に示すように、走行車体2の平面視において、走行車体2の左右方向の中央よりも左右方向の連動ロッド67が設けられていない他方側としての右側に設けられている。
制御装置は、苗移植機1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置は、例えば、油圧式無段変速機15を制御する変速制御、苗植付部昇降機構31による苗植付部30の昇降制御、エンジン11を制御するエンジン制御等を実行している。特に、制御装置は、アゼクラッチ73が整地装置5の整地ロータ50への駆動力の伝達を切断している際には、傾斜角センサが走行車体2の前上がりのピッチ角を検出したときの苗植付部30を上昇させる油圧昇降シリンダ34の油圧の制御を、傾斜角センサが走行車体2の前下がりのピッチ角を検出したときの苗植付部30を下降させる油圧昇降シリンダ34の油圧の制御よりも制御時間を延長する。こうすることで、例えば、圃場の隅、即ち枕地の近くでの植付深さの調整を容易に行うことができ、作業能率の向上、植付精度の向上を図ることができる。
また、制御装置は、苗移植機1に圃場の硬さを入力する感度ダイヤルなどが設けられている場合に、感度ダイヤルにより圃場の軟らかいことが入力されている場合よりも、感度ダイヤルにより圃場の硬いことが入力されている場合では、苗植付部30の昇降速度が遅くなるように、油圧昇降シリンダ34の油圧の制御を行ってもよい。この場合、特に、硬い圃場での植付精度が向上し、走行中の振動などを低減することができる。
また、制御装置は、アゼクラッチ73が整地装置5の整地ロータ50へ駆動力を伝達している場合では、駆動力の伝達を切断している場合よりも、苗植付部30即ち整地装置5の整地ロータ50の昇降速度が遅くなるように、油圧昇降シリンダ34の油圧の制御を行ってもよい。この場合、整地装置5の整地ロータ50により共雑物が持ち上げることを抑制することができる。
また、制御装置は、アゼクラッチ73が整地装置5の整地ロータ50へ駆動力を伝達している場合では、苗植付部30を上昇させる油圧昇降シリンダ34の油圧の制御を、苗植付部30を下降させる油圧昇降シリンダ34の油圧の制御よりも鈍感にしてもよい。この場合、整地装置5の整地ロータ50から共雑物を落とすことができ、植付深さを安定させることができる。
また、制御装置は、方向転換よりも少ないステリング角度でハンドル24が操作されていると、苗植付部30を上昇させる油圧昇降シリンダ34の油圧の制御を、苗植付部30を下降させる油圧昇降シリンダ34の油圧の制御よりも鈍感にしてもよい。この場合、なだらかに湾曲した圃場の隅に沿って走行しながら苗を植え付ける際に、整地ロータ50やフロート38a,38bで圃場の表面を確実に均すことができ、植付深さを安定させることができる。
前述した苗移植機1は、圃場に苗を植え付ける際には、作業者の各種操作レバーの操作により苗植付装置3が苗の植付位置まで下降される。また、苗移植機1は、作業者の整地高さレバー63の操作により整地装置5が適切な高さに位置付けられる。そして、苗移植機1は、圃場内を走行しながら整地装置5の整地ロータ50が回転することで圃場の表面を均す。そして、苗移植機1は、苗植付部30の回転支持部36bが中央部を中心として回転しながら回転支持部36bの両端部で植込杆36cが回転して、苗を圃場に植え付ける。苗移植機1は、圃場での方向転換時などの旋回時には、ハンドル24を操作すると制御装置が油圧昇降シリンダ34を制御して、苗植付部30及び整地装置5の整地ロータ50を上昇させて、圃場の表面から離間させる。
以上のように、本実施形態の苗移植機1の構成によれば、整地装置5の整地ロータ50の左右両端を支持プレート60で支持し、整地装置5の整地ロータ50と連動ロッド67とを整地リンクアーム68を介して連結して、整地装置5の整地ロータ50を合計三箇所以上で支持している。このために、苗植付部30を上昇させても、整地装置5の整地ロータ50が下方に垂れ下がることを抑制できる。
また、苗移植機1によれば、整地装置5の整地ロータ50と連動ロッド67とを整地リンクアーム68を介して連結しているので、苗植付部30の昇降動作に連動して、整地装置5の整地ロータ50が昇降するので、旋回時などに整地装置5の整地ロータ50を十分に圃場の表面から離すことができ、整地装置5の整地ロータ50が圃場の特に隅を荒らすことを抑制できる。したがって、苗移植機1は、整地装置5の整地ロータ50が圃場の表面を荒らすことを抑制することができる。
また、苗移植機1によれば、整地装置5の整地ロータ50の左右両端を支持プレート60で支持し、整地装置5の整地ロータ50と連動ロッド67とを整地リンクアーム68を介して連結しているので、簡便な構造により、垂れ下がることなく整地装置5の整地ロータ50を支持することができる。よって、苗移植機1は、部品点数を抑制でき、部品同士の繋ぎ合わせる箇所を抑制でき、強度を向上することができる。
また、苗移植機1によれば、連動ロッド67の上下方向の移動を長孔67aと支点ピン69a,69bとで規制するので、苗植付部30の植付位置では、整地装置5の整地ロータ50が下降しすぎて圃場内に潜り込むことを抑制できる。このために、苗移植機1は、圃場の表面を荒らすことを抑制でき、圃場の表面が平坦になり、苗の植付深さが安定する。
また、苗移植機1によれば、苗植付部30の上昇時に整地装置5の整地ロータ50が上昇しすぎて、整地ロータ50が下側のリンク部材32bに接触し、下側のリンク部材32bや整地装置5の整地ロータ50自体を破損させることを抑制でき、耐久性が向上するとともに、変形による機能の低下を抑制できる。
また、苗移植機1によれば、連動ロッド67を一対の整地リンクアーム68のうちの一方のみに連結することで、部品点数の削減を図ることができる。また、苗移植機1は、一つの連動ロッド67によって、整地装置5の整地ロータ50が昇降されることとなり、整地装置5の整地ロータ50に複数の方向や強さが異なる力が作用することがないので、整地装置5の整地ロータ50の変形を抑制することができる。
また、苗移植機1によれば、植付深さレバー71、苗取量レバー72、整地高さレバー63を左右方向の連動ロッド67を設けた側に配置しているので、植付作業前に作業者が同じ位置で作業条件の設定を行うことができる。
また、本発明では、図8に示すように、苗移植機1は、整地装置5の整地ロータ50を上方に付勢する弾性部材としてのスプリング101を備えてもよい。なお、図8は、実施形態の変形例に係る苗移植機の連動ロッドの断面図である。図8において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
図8に示された例では、長孔67aが、支点ピン69aを通す孔67bと、支点ピン69bを通す孔67cとで構成されている。スプリング101の上端部は、支点ピン69aに取り付けられ、スプリング101の下端部は、連動ロッド67の孔67cよりも下側の下端部に取り付けられている。スプリング101は、連動ロッド67を支点ピン69aに近付く方向に付勢することで、連動ロッド67、整地リンクアーム68を介して、整地装置5の整地ロータ5を上方に付勢する。
図8に示された苗移植機1によれば、整地装置5の整地ロータ50を上方に付勢するスプリング101を設けているので、このために、苗移植機1は、整地装置5の整地ロータ50が圃場内に潜り込んで圃場の表面を荒らすことを抑制でき、圃場の表面を平坦に保つことができて、苗の植付深さが安定する。また、整地高さレバー63を弱い力で操作しても、整地装置5の整地ロータ50を容易に上昇させることができる。なお、本発明では、スプリング101の取り付け箇所を適宜変更してもよい。例えば、スプリング101の下端部を整地リンクアーム68に取り付けてもよく、整地ロータ50に取り付けてもよい。要するに本発明では、スプリング101は、整地装置5の整地ロータ50を上方に付勢できる箇所に取り付ければよい。
また、本発明では、図9に示すように、予備苗枠7a,7bに加えて、予備の苗載せ台102を備えてもよい。なお、図9は、実施形態の他の変形例に係る苗移植機の苗載せ台などを示す側面図である。図9において、実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
図9に示された予備の苗載せ台102は、補給用の苗を載せておくものであり、リンク機構103により苗載せ台37上に苗載せ台37と平行に支持されている。予備の苗載せ台102は、リンク機構103により苗載せ台37に近付いたり離れたりする。図9に示された苗移植機1によれば、予備苗枠7a,7bに加えて、予備の苗載せ台102を備えているので、より広大な圃場への苗の植付作業を効率的に行うことができる。
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。