以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(本発明の「液体吐出ヘッド」)、2つの搬送ローラ4、ノズルキャップ5、吸引ポンプ6、廃液タンク7、切換装置8、ワイパ9等を備えている。
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11によって支持され、ガイドレール11に沿って走査方向に往復移動する。なお、以下では、図1に示すように走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。また、「走査方向の右側」及び「走査方向の左側」を、それぞれ、単に「右側」及び「左側」とすることがある。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、その下面であるノズル面3a(図2参照)に形成された複数のノズル15からインクを吐出させる。複数のノズル15は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列16を形成しており、ノズル面3aには、4つのノズル列16が、走査方向に配列されている。複数のノズル15からは、右側のノズル列16を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。すなわち、本実施の形態では、最も右側のノズル列16を形成する、ブラックのインクを吐出するノズル15が本発明に係る第1ノズル及びブラックノズルに相当する。また、左側3列のノズル列16を形成する、カラー(イエロー、シアン、マゼンタ)のインクを吐出するノズル15が、本発明に係る第2ノズル及びカラーノズルに相当する。
2つの搬送ローラ4は、走査方向を軸方向とするローラであり、キャリッジ2の搬送方向の上流側及び下流側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
ノズルキャップ5は、図1、図2に示すように、キャリッジ2がほぼ最大限右側に移動した状態で、ノズル面3aと対向するように配置されている。ノズルキャップ5は、2つのインク受け部5a、5b(本発明の「液体受け部」)を有している。インク受け部5a(本発明の「ブラックインク受け部」)は、上面が開口しており、ノズルキャップ5とノズル面3aとが対向している状態で、最も右側のノズル列16を形成するブラックのインクを吐出する複数のノズル15と対向している。インク受け部5b(本発明の「カラーインク受け部」)は、上面が開口しているとともにインク受け部5aと隔てられ、ノズルキャップ5とノズル面3aとが対向している状態で、左側の3つのノズル列16を形成するカラー(イエロー、シアン、マゼンタ)のインクを吐出する複数のノズル15と対向している。
また、ノズルキャップ5は、昇降機構21(本発明の「移動手段」)によって昇降可能となっている。そして、ノズルキャップ5は、図2(a)に示すように、ノズル面3aとが対向している状態で、昇降機構21によって上昇されると、ノズル面3aに密着する。これにより、複数のノズル15が、ノズルキャップ5に覆われる(本発明の「キャッピング位置」に位置する)。このとき、ノズル面3aの最も右側のノズル列16が配置された部分によってインク受け部5aの上面の開口が塞がれ、ノズル面3aの左側3列のノズル列16が配置された部分によって、インク受け部5bの上面の開口が塞がれる。また、ノズルキャップ5は、図2(b)に示すように、昇降機構21によって降下されると、ノズル面3aから離れる(本発明の「アンキャッピング位置」に位置する)。すなわち、昇降機構21は、ノズルキャップ5を昇降させることにより、ノズルキャップ5を、ノズル面3aを覆うキャッピング位置と、ノズル面3aから離れたアンキャッピング位置との間で移動させる。なお、図2(a)、(b)では、ノズルキャップ5を図1のA−A線断面で図示している。
ここで、昇降機構21は、例えば、モータやシリンダなどの駆動源を有し、独立して昇降可能なものである。あるいは、昇降機構21は、駆動源を持たず、キャリッジ2がノズルキャップ5に近づいたときにキャリッジ2に押されることで上昇し、キャリッジ2がノズルキャップ5から離れたときにキャリッジ2に押されなくなって降下する(上昇前の位置に戻る)ものであってもよい。
また、インク受け部5a、5bの搬送方向の下流側の端部には、それぞれ、吸引口26a、26b(本発明の「第1接続口」)が形成されている。吸引口26a、26bは、それぞれ、チューブ22a、22bを介して吸引ポンプ6と接続されている。吸引ポンプ6は、チューブポンプなどであり、チューブ22a、22bと反対側において、廃液タンク7と接続されている。また、インク受け部5a、5bの搬送方向の上流側の端部には、それぞれ、大気連通口27a、27b(本発明の「第2接続口」)が形成されている。大気連通口27a、27bは、それぞれ、チューブ23a、23b(本発明の「大気連通流路」)を介して大気に連通している。
切換装置8は、チューブ22aを介したインク受け部5aと吸引ポンプ6との接続とその遮断、チューブ22bを介したインク受け部5bと吸引ポンプ6との接続とその遮断、チューブ23aを介したインク受け部5aと大気との連通とその遮断、及び、チューブ23bを介したインク受け部5bと大気との連通とその遮断を、個別に切り換える。
ワイパ9は、図1、図3に示すように、ノズルキャップ5の左側に配置されている。ワイパ9は、ワイパ本体31と保持部32とを備えている。ワイパ本体31は、ゴム材料などからなる板状の部材であり、その面方向が搬送方向及び上下方向(図1の紙面垂直方向)と平行となるように配置されている。保持部32は、ワイパ本体31の下端部を保持している。また、ワイパ9は、昇降機構24によって昇降可能となっている。そして、昇降機構24によりワイパ9を上昇させた状態では、図3(a)に示すように、ワイパ本体31の上端部がノズル面3aよりも若干上方に位置する。また、昇降機構24によりワイパ9を降下させた状態では、図3(b)に示すように、ワイパ本体31の上端部がノズル面3aよりも下方に位置している。
次に、プリンタ1の動作を制御する制御装置50について説明する。図4に示すように、制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)54などからなり、これらが協働して、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、搬送ローラ4、昇降機構21、24、吸引ポンプ6などの動作を制御する。なお、図2では、CPU51を1つだけ図示しているが、制御装置50がCPU51を1つだけ備え、この1つのCPU51が処理を一括して行うようになっていてもよいし、制御装置50が複数のCPU51を備え、これら複数のCPU51が処理を分担して行うようになっていてもよい。また、図2では、ASIC54を1つだけ図示しているが、制御装置50がASIC54を1つだけ備え、この1つのASIC54が処理を一括して行うようになっていてもよいし、制御装置50が複数のASIC54を備え、これら複数のASIC54が処理を分担して行うようになっていてもよい。
次に、プリンタ1の動作について説明する。プリンタ1では、制御装置50の制御により、記録用紙Pに記録を行わせるための記録処理、インクジェットヘッド3をメンテナンスするためのメンテナンス処理等を行わせることができるようになっている。
記録処理及びメンテナンス処理について詳細について説明する。ただし、以下では、便宜上、先にメンテナンス処理について説明し、その後、記録処理について説明する。
メンテナンス処理は、定期的に、あるいは、ユーザがプリンタ1の図示しない操作パネルを操作して指示したとき等に実行される。メンテナンス処理は、図5に示すフローに沿って行われる。図5に示すように、メンテナンス処理では、まず、パージ処理を実行する(ステップS101)。なお、以下では、「ステップS101」を単に「S101」とするなど、「ステップ」を省略する。
パージ処理では、図6に示すように、まず、ノズル面3aがノズルキャップ5と対向する位置までキャリッジ2を移動させるとともに、昇降機構21によりノズルキャップ5をキャッピング位置まで上昇させることによって、ノズルキャップ5にノズル面3aを覆わせる。すなわち、ノズルキャップ5にノズル面3aをキャッピングさせる(S201)。また、切換装置8にインク受け部5aと大気との連通を遮断させる(S202)。また、切換装置8に、インク受け部5aと吸引ポンプ6とを接続させるとともに、インク受け部5bと吸引ポンプ6との接続を遮断させる(S203)。なお、S201〜S203の処理はどのような順序で行ってもよいし、並行して行ってもよい。
次に、吸引ポンプ6を回転速度V0で駆動する(S204)。すると、インク受け部5a、チューブ22a、23a内の気圧が低下し、図7(a)に示すように、複数のノズル15からインクジェットヘッド3内のブラックインクが排出される。排出されたブラックインクは、廃液タンク7に貯留される。そして、所定時間が経過するまで(S205:NO)吸引ポンプ6の駆動を継続し、所定時間が経過したときに(S205:YES)吸引ポンプ6を停止させ(S206)、図5のフローに戻る。
ここで、S204のように吸引ポンプ6を駆動してインクジェットヘッド3内のブラックインクを排出させると、インク受け部5a及びチューブ23aにインクが溜まる。一方で、S206で吸引ポンプ6を停止させると、吸引ポンプ6からインク受け部5aに向かって空気が流れることで、負圧となっていたインク受け部5a、チューブ22a、23a内の気圧が徐々に上昇して大気圧に近づく。これにより、図7(b)に示すように、インク受け部5aに溜まったブラックインクの一部がインク受け部5aからチューブ23a内に流れ込み、チューブ23aに溜まるブラックインクの量が増える。
なお、ここでは、パージ処理によりインクジェットヘッド3内のブラックインクを排出させる場合について説明したが、インクジェットヘッド3内のカラーインクを排出させることも可能である。インクジェットヘッド3内のカラーインクを排出させる場合には、S202において、切換装置8に、インク受け部5bと大気との連通を遮断させる。また、S203において、切換装置8に、インク受け部5bと吸引ポンプ6とを接続させるとともに、インク受け部5aと吸引ポンプ6との接続を遮断させる。
S101のパージ処理では、インクジェットヘッド3内のブラックインクを排出させた後、インクジェットヘッド3内のカラーインクを排出させる。あるいは、インクジェットヘッド3内のブラックインク及びカラーインクのいずれか一方のみを排出させる。
パージ処理が完了した後には、続けてアンキャッピング空吸引処理を実行する(S102)。アンキャッピング空吸引処理では、図8に示すように、まず、ノズルキャップ5をアンキャッピング位置に配置させる(S301)。また、切換装置8に、インク受け部5aと大気との連通を遮断させる(S302)。また、切換装置8に、インク受け部5aと吸引ポンプ6とを接続させるとともに、インク受け部5bと吸引ポンプ6との接続を遮断させる(S303)。
なお、S206の後、S302までに、インク受け部5aと大気とを連通させていなければ、S302では、インク受け部5aと大気との連通が遮断された状態を維持するだけである。また、S206の後S303までに、インク受け部5aと吸引ポンプ6との接続を遮断させておらず、インク受け部5bと吸引ポンプ6とを接続させていなければ、S303では、インク受け部5aと吸引ポンプ6とが接続され、インク受け部5bと吸引ポンプ6との接続が遮断された状態を維持するだけである。
次に、吸引ポンプ6を回転速度V1で駆動する(S304)。これにより、インク受け部5aに溜まったインクが、チューブ22aを介して排出される。ここで、回転速度V1は比較的速い速度である。このとき、ノズルキャップ5がアンキャッピング位置に配置し、インク受け部5aの上面が開口しているため、この開口から十分に空気が取り込まれることにより、インク受け部5aに溜まったインクを効率よく排出させることができる。さらに、このとき、ノズルキャップ5がアンキャッピング位置に配置しており、ノズル15がノズルキャップ5に覆われていないため、吸引ポンプ6を速い回転速度V1で駆動して、吸引ポンプ6の吸引力を大きくしても、ノズル15内のインクのメニスカスが破壊されることはない。また、このとき、インク受け部5aと大気との連通が遮断されているため、チューブ23aに溜まったインクは排出されずにチューブ23aに残ったままとなる。
ここで、S302では、インク受け部5aと大気とを連通させてもよい。この場合でも、上述の通り、インク受け部5aに流れ込む空気の大部分は、インク受け部5aの上面の開口から流れ込み、チューブ23aからはほとんど流れ込まない。したがって、チューブ23aに溜まったインクは排出されずにチューブ23aに残ったままとなる。
そして、所定時間が経過するまで(S305:NO)吸引ポンプ6の駆動を継続し、所定時間が経過したときに(S305:YES)吸引ポンプ6を停止させ(S306)、図5のフローに戻る。
なお、ここでは、インク受け部5aに溜まったブラックのインクを排出させる場合(本発明の「ブラック用アンキャッピング空吸引処理」)について説明したが、インク受け部5bに溜まったカラーのインクを排出させること(本発明の「カラー用アンキャッピング空吸引処理」)も可能である。インク受け部5bに溜まったインクジェットヘッド3内のカラーのインクを排出させる場合には、S302において、切換手段8により、インク受け部5bと大気との連通を遮断させる。また、S303において、切換装置8に、インク受け部5bと吸引ポンプ6と接続させるとともに、インク受け部5aと吸引ポンプ6との接続を遮断させる。
S101のパージ処理で、インクジェットヘッド3内のブラックインク及びカラーインクの両方を排出させた場合には、S102のアンキャッピング空吸引処理において、インク受け部5aに溜まったブラックインクを排出させた後に、インク受け部5bに溜まったカラーインクを排出させる。一方、S101のパージ処理で、インクジェットヘッド3内のブラックインク及びカラーインクのうち、いずれか片方のインクのみを排出させた場合には、S102のアンキャッピング空吸引処理において、インク受け部5a、5bのうち、上記片方のインクに対応するインク受け部のみからインクを排出させる。
S102のアンキャッピング空吸引処理が完了した後には、続けてワイピング処理を実行する(S103)。ワイピング処理では、図10に示すように、昇降機構24によりワイパ9を上昇させた状態で、キャリッジ2を、ワイパ9と上下方向に重なる範囲を含む所定範囲で走査方向に移動させる。これにより、ワイパ本体31の上端がノズル面3aに接触した状態で、キャリッジ2が走査方向に移動し、ノズル面3aに付着したインクが拭き取られる。
ワイピング処理が完了した後には、続けてフラッシング処理を実行する(S104)。フラッシング処理では、図11に示すように、ノズルキャップ5をキャッピング位置に配置させた状態で、ノズル15からインクを吐出させる。S103のワイピング処理では、ノズル面3aに付着したインクが、別の色のインクを吐出するノズル15内に流れ込み、当該ノズル15内でインクの混色が生じることがある。S104のフラッシング処理では、ノズル15からインクを吐出させることで、ノズル15内の混色したインクを排出させる。
さらに、ワイピング処理により、ノズル面3aに付着したある色のインクが、別の色のカラーインクを吐出するノズル15に流れ込んだ場合には、ブラックインクを吐出するノズル15に流れ込んだ場合よりも、上述したようなインクの混色は顕著なものとなる。そこで、S104のフラッシング処理では、カラーインクの吐出量が、ブラックインクの吐出量よりも多くなっている。すなわち、フラッシング処理におけるカラーインクの吐出量が所定量以上であり、ブラックインクの吐出量が所定量よりも少なくなっている。なお、本実施の形態では、フラッシング処理のうち、ノズル15からブラックインクを吐出する処理が、本発明に係る第1フラッシング処理に相当し、ノズル15からカラーインクを吐出する処理が、本発明に係る第2フラッシング処理に相当する。
S104のフラッシング処理が完了した後には、キャッピング空吸引処理によって、インク受け部5aに溜まったブラックインクを排出させる(S105)。S105のキャッピング空吸引処理では、図12に示すように、まず、ノズルキャップ5をキャッピング位置に配置させ(S401)、切換装置8によりインク受け部5aと大気とを連通させ(S402)、インク受け部5aと吸引ポンプ6とを接続させる(S403)。
なお、ノズルキャップ5がキャッピング位置に位置した状態でフラッシング処理を実行し、その後S401までに、ノズルキャップ5をアンキャッピング位置に移動させていなければ、S401では、ノズルキャップ5をキャッピング位置に配置した状態を維持するだけである。また、S306の後、ワイピング時やフラッシング時等、S402までに、切換装置8にインク受け部5aと待機との連通を遮断させていなければ、S402では、インク受け部5aと大気とが連通された状態を維持するだけである。また、S306の後S403までに、インク受け部5aと吸引ポンプ6との接続を遮断させておらず、インク受け部5bと吸引ポンプ6とを接続させていなければ、S403では、インク受け部5aと吸引ポンプ6とが接続され、インク受け部5bと吸引ポンプ6との接続が遮断された状態を維持するだけである。
次に、吸引ポンプ6を回転速度V2(<V1)で駆動する(S404)。これにより、S102のアンキャッピング空吸引処理において、チューブ23a内に残したインクが、インク受け部5aに流れ込み、インク受け部5aに溜まったインクが、チューブ23aからインク受け部5aに流れ込んだインクとともに排出される。
フラッシング処理においてインク受け部5aに排出されるブラックインクの量は、パージ処理においてインク受け部5aに排出されるインクの量よりも少ない。そのため、本実施の形態とは異なり、S103のアンキャッピング空吸引処理の段階で、チューブ23aに溜まったインクがインク受け部5aに溜まったインクとともに排出されるとすると、S106のキャッピング空吸引処理において、チューブ23aからインク受け部5aにインクが流れ込むことがない。その結果、チューブ22aがインク受け部5a内の空気とつながり、インク受け部5aのインクを排出することができない虞がある。
これに対して、本実施の形態では、パージ後空吸引処理において、チューブ23aにインクを残しておき、キャッピング空吸引処理において、チューブ23aのインクをインク受け部5aに流れ込ませ、インク受け部5aに溜まったインクを、チューブ23aからインク受け部5aに流れ込んだインクとともに排出させている。したがって、チューブ23aからインクが流れ込む分、インク受け部5a内のインクの量が増加し、吸引口26aがインク受け部5a内の空気とつながりにくくなる。これにより、インク受け部5aに溜まったインクを確実に排出させることができる。
また、キャッピング空吸引処理では、ノズル面3aがノズルキャップ5に覆われた状態で吸引ポンプ6が駆動されるが、キャッピング空吸引処理における吸引ポンプ6の回転速度V2を、アンキャッピング空吸引処理における吸引ポンプ6の回転速度V1よりも遅くすることにより、ノズル15内のインクのメニスカスが破壊されるのが防止される。
そして、所定時間が経過するまで(S405:NO)吸引ポンプ6の駆動を継続し、所定時間が経過したときに(S405:YES)吸引ポンプ6を停止させ(S406)、図3のフローに戻る。
なお、メンテナンス動作では、キャッピング空吸引処理では、インク受け部5aに溜まったブラックのインクを排出させるが、キャッピング空吸引処理でインク受け部5bに溜まったカラーのインクを排出させることも可能である。インク受け部5bに溜まったインクジェットヘッド3内のカラーのインクを排出させる場合には、S402において、切換手段8に、インク受け部5bと大気とを連通させる。また、S403において、切換装置8に、インク受け部5bと吸引ポンプ6と接続させるとともに、インク受け部5bと吸引ポンプ6との接続を遮断させる。
次に、上述したのと同様のアンキャッピング空吸引処理によって、インク受け部5bに溜まったカラーインクを排出させ(S106)、アンキャッピング空吸引処理の完了によってメンテナンス処理が終了する。
ここで、アンキャッピング空吸引処理における吸引ポンプ6の回転速度V1は、キャッピング空吸引処理における吸引ポンプ6の回転速度V2よりも速い。そのため、アンキャッピング空吸引処理を実行すれば、キャッピング空吸引処理を実行するよりも短時間でインク受け部5a、5bに溜まったインクを排出させることができる。
一方、キャッピング空吸引処理では、インク受け部5a、5bの開口がノズル面3aによって塞がれており、インク受け部5a、5bの上記開口から空気が導入されることがないため、吸引口26a、26bが空気とつながりにくい。これに対して、アンキャッピング空吸引処理では、インク受け部5a、5bの開口がノズル面3aによって塞がれておらず、インク受け部5a、5bの上記開口から空気が導入されるため、吸引口26a、26bが空気とつながりやすい。
そして、本実施の形態では、フラッシング処理では、カラーインクの吐出量が、ブラックインクの吐出量よりも多くなっている。そこで、本実施の形態では、フラッシング処理によってインク受け部5aに排出されたブラックインクを、キャッピング空吸引処理によって排出させている。これにより、吸引口26aが空気とつながりにくく、インク受け部5aに溜まったブラックインクを確実に排出させることができる。また、フラッシング処理によってインク受け部5bに排出されたカラーインクをアンキャッピング空吸引処理によって排出させている。これにより、インク受け部5bに溜まったカラーインクを短時間で排出させることができる。
記録処理は、図14に示すフローに沿って行われる。図14に示すように、記録処理では、まず、記録動作を開始する(S501)。記録動作とは、搬送ローラ4に記録用紙Pを搬送方向に搬送させつつ、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクを吐出させることによって、記録用紙Pへの記録を行う動作のことである。そして、画像の記録が完了しておらず(S502:NO)、且つ、所定時間が経過するまでの間は(S503:NO)、記録動作を継続する。
そして、所定時間が経過したときに(S503:YES)、記録動作を中断し(S504)、続けてフラッシング処理を実行する(S505)。これにより、使用頻度が低いノズル15等において増粘したインクを排出させることができる。ただし、S505のフラッシング処理では、各ノズル15の使用頻度によらず、全てのブラックインクを吐出するノズル15、及び、全てのカラーインクを吐出するノズル15からインクを吐出させる。これにより、制御装置50のRAM53などに、各ノズル15の使用頻度などを記憶しておく必要がなく、制御装置50のメモリ容量の増大を抑えることができる。
フラッシング処理の後には、合計排出量を取得する(S506)。合計排出量とは、最後にアンキャッピング空吸引処理が実行されてから現在までに、フラッシング処理によって排出されたインクの量の合計した量のことである。また、本実施の形態では、ブラックのインクの合計排出量と、カラーのインクの合計排出量とを個別に取得する。
合計排出量の取得についてより詳細に説明すると、制御装置50は、最後にアンキャッピング空吸引処理が実行されてから現在までに実行されたブラックインクを吐出するフラッシング処理の回数、及び、カラーインクを吐出するフラッシング処理の回数を、個別にRAM53などに記憶している。一方、1回のフラッシング処理におけるブラックインク及びカラーインクの排出量は、それぞれ、予め決まっている。そして、S506では、制御装置50のRAMなどに記憶された上記フラッシング処理の回数から、合計排出量を取得する。
そして、取得した合計排出量が、所定の閾値以上の場合には(S507:YES)、アンキャッピング空吸引処理を実行してから(S508)、記録動作を再開して(S509)、S102に戻る。一方、取得した合計排出量が、所定の閾値よりも少ない場合には(S507:NO)、そのまま記録動作を再開して(S509)、S502に戻る。
S507の判定についてより詳細に説明すると、S507ではブラックインクの合計排出量が閾値M1(本発明の「第1閾値」)以上であるか否かを判定し、カラーインクの合計排出量が閾値M2(>M1)(本発明の「第2閾値」)以上であるか否かを判定する。S508では、ブラックインクの合計排出量が閾値M1以上である場合に、アンキャッピング処理(本発明の「ブラック用アンキャッピング空吸引処理」)によって、インク受け部5aに溜まったブラックインクを排出させ、カラーインクの合計排出量が閾値M2以上である場合に、アンキャッピング処理(本発明の「カラー用アンキャッピング空吸引処理」)によって、インク受け部5bに溜まったカラーインクを排出させる。
そして、記録が完了するまで(S502:NO)、以上に説明したようなS503〜S509の動作を繰り返し、記録が完了したときに(S502:YES)、記録動作を停止させて(S510)、記録処理を終了する。そして、記録処理の終了後、キャッピング空吸引処理を実行する(S511)。S511のキャッピング空吸引処理では、インク受け部5aに溜まったブラックインクを排出させ、続けて、インク受け部5bに溜まったカラーインクを排出させる。
ここで、本実施の形態では、記録処理の途中でフラッシング処理が行われる。そのため、本実施の形態とは異なり、記録処理の途中でアンキャッピング空吸引処理が実行されないとすると、フラッシング処理において排出されてインク受け部5a、5bに溜まったインクがインク受け部5a、5b内で固化してしまう虞がある。インク受け部5a、5bでインクが固化すると、ノズルキャップ5でノズル面3aを覆ったときに、固化したインクがノズル面3aに接触してノズル面3aを傷つけるなどの問題が発生する虞がある。
一方で、本実施の形態とは異なり、フラッシング処理が実行されるたびにアンキャッピング空吸引処理が実行されるとすると、1回のフラッシング処理によって、インク受け部5a、5bに排出されるインクの量は僅かなものであるため、アンキャッピング空吸引処理において吸引ポンプ6を駆動したときに、インク受け部5a、5bの吸引口26a、26bが大気とつながってしまい、インク受け部5a、5bに溜まったインクを排出することができない虞がある。
そこで、本実施の形態では、記録処理の途中において、合計排出量が閾値以上となったときに、記録動作を中断させ、アンキャッピング空吸引処理によって、インク受け部5a、5bに溜まったインクを排出させている。これにより、インク受け部5a、5bに溜まったインクがインク受け部5a、5b内で固化してしまうのを防止することができる。さらに、インク受け部5a、5bにある程度の量のインクが溜まった時点で、インク受け部5a、5bからインクが排出されるため、アンキャッピング空吸引処理を行ったときに、吸引口26a、26bが空気とつながりにくく、インク受け部5a、5bに溜まったインクを確実に排出させることができる。
また、アンキャッピング空吸引処理は、ノズルキャップ5でノズル面3aを覆わず、吸引ポンプ6の回転速度も速いため、キャッピング空吸引処理よりも、処理にかかる時間が短い。したがって、記録処理の途中においては、アンキャッピング空吸引処理によってインク受け部5a、5bからインクを排出させることで、記録処理が中断される時間を短くすることができる。
一方、キャッピング空吸引処理では、インク受け部5a、5bの開口がノズル面3aによって塞がれているため、インク受け部5a、5bの上記開口から空気が導入されることがなく、吸引口26a、26bが空気とつながりにくい。これにより、記録動作が完了した後には、キャッピング空吸引処理によって、インク受け部5a、5bに溜まったインクを確実に排出することができる。
さらに、本実施の形態のようなプリンタには、ブラックインクとして顔料インクが用いられ、カラーインクとして染料インクが用いられることがある。このような場合には、インク受け部5aに溜まったブラックインクは、インク受け部5bに溜まったカラーインクよりも固化しやすい。そこで、本実施の形態では、閾値M1を閾値M2よりも小さくしている。これにより、フラッシング処理によってインク受け部5aにブラックインクが排出されてから、アンキャッピング処理によってブラックインクがインク受け部5aから排出されるまでの時間が短くなり、フラッシング処理によってインク受け部5aに排出されたブラックインクを、固化する前にインク受け部5aから排出させることができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
上述の実施の形態では、閾値M1が閾値M2よりも小さくなっていたが、これには限られない。ブラックインクとカラーインクの特性の違い、ブラックインクを吐出させるノズル15とカラーインクを吐出させるノズル15の数との比率、インク受け部5aと5bの大きさの違いなどに応じて、閾値M1が閾値M2よりも大きくなっていてもよい。さらには、ブラックインクとカラーインクに対して別々に閾値M1、M2を設定することにも限られない。ブラックインクとカラーインクに対して共通の閾値を設定してもよい。
また、上述の実施の形態では、ブラックインクの合計排出量が閾値M1以上となったときに、アンキャッピング空吸引処理によってインク受け部5aに溜まったブラックインクを排出させ、カラーインクの合計排出量が閾値M2以上となったときに、アンキャッピング空吸引処理によってインク受け部5bに溜まったカラーインクを排出させたが、これには限られない。例えば、ブラックインクの合計排出量が閾値M1以上となったとき、及び、カラーインクの合計排出量が閾値M2以上となったときに、アンキャッピング空吸引処理により、インク受け部5aに溜まったブラックインクを排出させ、続けて、インク受け部5bに溜まったカラーインクを排出させてもよい。ただし、この場合には、記録処理の途中のアンキャッピング空吸引処理にかかる時間が長くなってしまい、記録処理を中断してから再開するまでの時間が長くなる。
さらには、合計排出量が閾値以上となったときにアンキャッピング空吸引処理を実行することにも限られない。記録処理の途中に行う1回のフラッシング処理におけるインクの排出量がある程度多い場合等には、記録処理の途中にフラッシング処理を実行した後、常にアンキャッピング空吸引処理を実行するようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、S105のキャッピング空吸引処理によってインク受け部5a内のブラックインクを排出させ、S106のアンキャッピング空吸引処理によってインク受け部5b内のカラーインクを排出させたが、これには限られない。
例えば、インクジェットヘッド3がブラックの染料インク(本発明の「第1液体」)とブラックの顔料インク(本発明の「第2液体」)とを吐出するノズル15を備え、S104のフラッシング処理により、染料インクがインク受け部5aに吐出され、顔料インクがインク受け部5bに吐出される場合において、ノズル15内のインクの増粘防止の観点からS104のフラッシング処理において、顔料インクの吐出量を、染料インクの吐出量よりも多くする場合において、S105キャッピング空吸引処理によってインク受け部5aに溜まった染料インクを排出させ、S106のアンキャッピング空吸引処理によってインク受け部5bに溜まった顔料インクを排出させてもよい。
また、メンテナンス処理毎に、S104のフラッシング処理におけるノズル15からのインクの吐出量が変わるような場合において、S104のフラッシング処理における各ノズル15からのインクの吐出量が所定量よりも少ないときには、キャッピング空吸引処理によってインク受け部5a、5bに溜まったインクを排出させ、S104のフラッシング処理におけるノズル15からのインクの吐出量が所定量以上のときには、アンキャッピング空吸引処理によってインク受け部5a、5bに溜まったインクを排出させてもよい。
さらには、S104のフラッシング処理におけるインクの吐出量によらず、常にキャッピング空吸引処理によってインク受け部5a、5bに溜まったインクを排出させてもよい。例えば、上述の実施の形態において、S104のフラッシング処理で吐出されるカラーインクの量は、パージ処理によって排出されるインクの量に比べれば少ない。したがって、S104のフラッシング処理によってインク受け部5a、5bに溜まったインクを、常にキャッピング空吸引処理によって排出させるようにすれば、吸引口26a、26bが空気とつながりにくく、インク受け部5a、5bに溜まったインクを確実に排出させることができる。
また、上述の実施の形態では、アンキャッピング空吸引処理とキャッピング空吸引処理とで、吸引ポンプ6の回転速度を異ならせたが、これには限られない。例えば、アンキャッピング空吸引処理及びキャッピング空吸引処理のいずれにおいても吸引ポンプ6の回転速度をV2とするなど、アンキャッピング空吸引処理とキャッピング空吸引処理とで、吸引ポンプ6の回転速度を同じとしてもよい。
また、上述の実施の形態では、メンテナンス処理において、S101のパージ処理及びS102のアンキャッピング空吸引処理を実行した後、続けて、S103のワイピング処理を挟んで、S104のフラッシング処理、S106のキャッピング空吸引処理及びS108のアンキャッピング空吸引処理を実行したが、これには限られない。例えば、ノズル15におけるインクの増粘度等に応じて、S101のパージ処理及びS102のアンキャッピング空吸引処理を実行するメンテナンス処理と、S104のフラッシング処理、S105のキャッピング空吸引処理及びS106のアンキャッピング空吸引処理を実行するメンテナンス処理とが選択的に実行されるようになっていてもよい。
また、上述の実施の形態では、フラッシング処理において、ノズルキャップ5をキャッピング位置に位置させた状態で、ノズル15からインクを吐出させたが、これには限られない。例えば、フラッシング処理において、ノズルキャップ5を、ノズル面3aと対向し、且つ、ノズル面3aから離れた位置に配置させた状態で、ノズル15からインクを吐出させてもよい。
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって記録用紙に記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出するインクジェットプリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。