JP2014094485A - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】顔料沈降に起因する記録画像の劣化を抑制することができるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】インクタンクに、複数の流路孔を備えた攪拌パイプを備え、本体動作の休止経過時間と、インクタンク内インク残量と、に基づいて、インクタンクからのインクの供給とインクタンクへのインク戻しによって攪拌を行う。
【選択図】図4

Description

本発明は、記録ヘッドから記録材に対してインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録装置に関する。
記録装置等の記録方式のうち、インクタンクに貯留されたインクを吐出口(ノズル)から吐出させて記録媒体上に記録を行うインクジェット記録方式は、低騒音のノンインパクト記録方式で高密度かつ高速の記録が可能であるため近年では広く採用されている。インクジェット記録装置に使用されるインクとしては、一般に不溶性あるいは難溶性の色材を含む染料系や顔料系の水性インクが用いられる。この水性インクを使用した場合、経時的にインク中の色材が凝集、沈降し、濃インクが生成される。そのため、インクタンクに収容されているインクの上層部と下層部とでは顔料濃度差を生じ、結果として記録濃度に差異を生じさせ、著しく記録品位が低下してしまうという問題があった。そこで、色材沈降を解消するために、従来のインクジェット記録装置には、インクタンク内のインクを攪拌する攪拌手段を設けたものがある。
以下、従来の攪拌手段を設けたインクジェット記録装置について説明をする。インクを貯めるインクタンクからチューブを経由して記録ヘッドにインクを供給し、インクタンクに連通すると共に大気に連通するサブタンクを有するインクジェット記録装置において、ヘッドをキャップして減圧し、その後キャップの大気開放弁を開放する。そして、大気開放弁を開放したことにより一気にインクタンク内のインクの一部をサブタンクに流入させる動作を繰り返すことで、インクタンクとサブタンク間でインクを循環させることで攪拌を行うといった手段が提案されている(特許文献1)。
また、記録ヘッドにインクを供給するインク供給管と大気に連通した大気連通管とをインクタンクの底部に設け、インク供給口を通じて、インクタンクから記録ヘッドにインクが供給されると、その分の体積の空気が大気連通管からインクタンク内に入ってくる。その際に生じる気泡がインクタンク内のインクに対流を発生させ、インクを撹拌させることにより、顔料の沈降を解消し、濃度むらを防止させている(特許文献2)。
また、インクタンクの底にタンク内のインクを外部へ供給するためのインク供給口とタンク内に大気を導入する大気導入口を備え、さらにインクタンク上部にタンク内の空気を排気するための空気排出口を備える。そして、空気排出口よりインクタンク内の空気を排気することにより、大気導入口から大気が気泡となってインクタンク内を上昇し、インクタンク内に気泡を導入することでインクに対流を発生させ攪拌させ、濃度ムラを防止させている(特許文献3)。
特許文献4の構成では、インクジェット記録ヘッドとインクタンクとを中継する流路途中にダイヤフラムポンプを設け、インクタンク底部にインクジェット記録ヘッドへインクを供給するインク供給口とインクタンク内に大気を導入する大気導入口を備えている。この構成により、所定時間経過後に、流路内に貯まった泡を除去する為に、ノズルを吸引回復して大気連通口からタンク内にエアを導入して攪拌し、且つインクタンク内のインクをダイヤフラムポンプに流し込み、押し引き動作で攪拌させ濃度ムラを防止している。
特開2005−238779号公報 特開2002−307710号公報 特開2007−160861号公報 特開2008−229958号公報
しかし、特許文献1に記載の発明のように、記録ヘッドのノズルから吸引減圧でインクタンク内のインクをサブタンク内に流し込む方法の場合、記録ヘッドに供給されるインク量分の体積の気泡がインクタンク内のインクに対流を発生させインクを撹拌させる。この場合、インクまたは気泡の量は、記録や回復処理で消費するインク量で決定してしまい、顔料の沈降度合いに応じた対流を発生させることが出来ない。
また特許文献1の発明では、吸引動作を利用するため無駄な廃液がでてしまい、より大きな攪拌力を得ようとすると、さらに無駄な廃液が発生してしまう。また、記録ヘッドのノズル内にエアが入り込み、ノズルのメニスカスを壊してしまうため、メニスカス復帰が困難になる可能性がある。さらにサブタンクを設ける必要があり、装置の大型化およびコストUPといった課題もあった。
また、特許文献2に記載の発明では、そもそも記録動作や吸引回復動作等のインクを消費する動作の中においてのみ顔料の沈降を防止・改善できるが、インクジェット記録装置が休止状態のときは撹拌動作が出来ない。これを解決するために、記録・回復処理の必要が無くとも定期的にそういった動作を行えば顔料の沈降を防止・改善できるが、破棄されるインクが無駄になり、有効な方法ではない。さらに、記録ヘッドに供給されるインク量分の体積の気泡がインクタンク内のインクに対流を発生させ、インクを撹拌させるが、気泡の量は記録や回復処理で消費するインク量で決定してしまい、顔料の沈降度合いに応じた対流を発生させることが出来ない。
また、特許文献3に記載の発明では、攪拌時に廃液を発生させない方式であるが、インクタンク内にエアを導入してインクタンク内のインクを攪拌するために、エア導入用のポンプを必要とする。そのため、装置が大型化しコストUPする。また、沈降度合いに応じた対流を発生させることができないため、常に最悪条件下を想定し、インク残量が少量であっても満タン時を想定した十分攪拌効果がある攪拌動作を時間を掛けて行わなければならなく時間ロスが発生していた。
また、特許文献4に記載の発明では、インクジェット記録ヘッドとインクタンクとを中継する流路内に貯まる溶存ガスに起因する気泡を除去する回復を1ヶ月程度間隔に実施するタイミングで同時に攪拌を行う。そのため、インクタンク内の沈降度合いに応じた対流を発生させることができず、常に最悪条件下を想定し、インク残量が少量であっても満タン時を想定した十分攪拌効果のある攪拌動作を時間を掛けて行うため時間ロスが発生していた。また、攪拌用ポンプやインクタンク内に大気を導入するための大気連通室を設ける必要があり、装置が大型化しコストUPするといった課題があった。
よって本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、顔料沈降に起因する記録画像の劣化を抑制することができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
そのため本発明のインクジェット記録装置は、インクタンク内に貯留されたインクを記録ヘッドから吐出して記録を行う記録手段と、所定の経過時間を計測する時間計測手段と、前記インクタンク内のインク残量を測定するインク残量測定手段と、を備えたインクジェット記録装置において、前記時間計測手段によって計測した時間を基に前記インクジェット記録装置の休止時間を算出する休止時間算出手段と、該休止時間算出手段が算出した休止時間と前記インク残量測定手段が測定した前記インクタンク内のインク残量に応じて、前記インクタンク内のインクの攪拌種類を決定する攪拌種類決定手段を備え、該攪拌種類決定手段は、前記休止時間が長いほど、また、前記インク残量が多いほど、前記インクタンク内の広範囲に攪拌の影響が及ぶ攪拌種類を決定することを特徴とする。
本発明によればインクジェット記録装置は、時間計測手段によって計測した時間を基に休止時間を算出する休止時間算出手段と、休止時間とインクタンク内のインク残量に応じて、インクタンク内のインクの攪拌種類を決定する攪拌種類決定手段を備える。そして、攪拌種類決定手段は、休止時間が長いほど、また、インク残量が多いほど、インクタンク内の広範囲に攪拌の影響が及ぶ攪拌種類を決定する。これによって、顔料沈降に起因する記録画像の劣化を抑制することができるインクジェット記録装置を実現することができる。
インクジェット記録装置の流路構成の一例を示した模式図である。 図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。 (a)から(d)は、時間経過と共に顔料の沈降特性を示した図である。 (a)、(b)は、インクタンクを示した図である。 インクタンク放置期間と記録濃度差との関係を示すグラフである。 噴流巻上げ高さとポンプ稼働時間との関係を示したグラフである。 動作休止時間とインク残量に応じた攪拌種類を示した表である。 本実施形態における攪拌動作の処理を示したフローチャートである。 本実施形態における攪拌動作の処理を示したフローチャートである。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態であるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)の全体構成について説明する。図1(a)は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の流路構成の一例を示す模式図である。インクジェット記録装置の流路は、廃液タンク3、チューブポンプ4(以下、単にポンプともいう)、バッファタンク5、記録ヘッド1、気液分離室6、回復手段、インクタンク2とから構成されている。このインクジェット記録装置には、ブラックインク用記録ヘッド、シアンインク用記録ヘッド、マゼンタインク用記録ヘッド、イエローインク用記録ヘッドの4つの記録ヘッドが備えられている。図1(a)、上記の記録ヘッドのうちの1つの記録ヘッド1に関して、インクの供給や、この記録ヘッドの記録性能(機能)を回復させるインク供給装置を示すが、他の記録ヘッドについても同じ構成のインク供給装置が備えられている。記録ヘッド1は、複数の吐出口を有し、電気エネルギを熱エネルギに変換する電気熱変体(ヒータ)を備え、その電気熱変体によって印加される熱エネルギにより、インクに生じる膜沸騰を利用して複数の吐出口からインクを吐出する。各吐出口から吐出されるインクは、インクタンクより供給チューブ8を通じて記録ヘッド1に供給され、画像データに応じて吐出される。なお、インク流路途中に設けられたチューブポンプ4は、ピストンポンプなどでもよい。
記録ヘッド1は、インクを貯留する液室9と、その液室9と連通部を介して接続された空気室10と、液室9にインクの供給を行い連通部と反対の側にある供給口11を備える。さらに記録ヘッド1は、液室9の上部に設けられた供給口側から連通部側に向かって上昇していくガイド面と、連通部に対して空気室10を介した位置に設けられ外部と接続される空気流路口12とを備えている。供給口11は、インクタンク2と流路接続されており、空気流路口12はバッファタンク5、ポンプ4、廃液タンク3へと流路接続されており、また空気流路口12とバッファタンク5の流路内にはインク供給弁13が配置されている。また、記録ヘッド1の液室内には、液室内のインク量を一定に保つために、液面上限値と液面下限値を検出可能な液面検知センサ14が設置されている。インクタンク2と記録ヘッド1との流路途中には、気液分離室6が配置され、流路内に入ってしまった空気はこの気液分離室6で分離され、バッファタンク5へ排出されることで流路内に貯まらないようになされている。
ここで、記録ヘッド1へのインク供給方法を説明する。先ず、泡抜き弁15と回復弁16とを閉じ、インク供給弁13を開放し、ポンプ4を正回転させる。これによってインクタンク内のインクを、流路上の気液分離室6を通って記録ヘッド1の供給口11から供給する。そして、液面検知センサ14の上限センサが液面を検知したところでポンプ4を止め、インク供給弁13を閉じてインク供給を終える。記録ヘッド1には、インクを供給するインクタンク2が連結されており、そのインクタンク2は記録装置本体に着脱自在になっている。またインクタンク2は、顔料粒子や磁性粒子などを含んだ顔料インクを収容する液体室17を有しており、液体室17と記録ヘッド1とのインク連通路8とを接続可能なインク供給口19が側面の底部に設けられている。また、インクタンク2の側面には、電気的に書き換えも可能なメモリ装置(ROM回路)である半導体記憶手段が設けられている。また、半導体記憶手段へのアクセスのための電気接点も側面に設けられている。
インクタンク2を設置する記録装置本体には、インクタンク2の側面に配置された半導体記憶手段へアクセスするための電気接点と接続し、半導体記憶手段のデータを読み取るための接続端子が配置されている。このインクタンク2の側面に配置された半導体記憶手段は、記録装置本体から情報を読み書き可能な半導体記憶素子(ROM)である。その半導体記憶素子は、インクタンク製造日に関する情報と、初期インク量、本体装着日情報と、インク保管量(初期注入量)と、インク残量と、記録装置本体の動作休止開始時間を記憶する情報記憶部を内蔵している。ここで、インクタンク製造日に関する情報とは、インクタンク2にインクを注入し組み立てた製造日の情報である。本体装着日情報とは、インクタンク2が初めて記録装置本体に装着された際に1度だけ書き込まれる本体装着日である。インク残量とは、インク保管量から適時記録ヘッド1が消費した消費インク量(吐出動作や回復動作で消費したインク量)を差し引いたインク量であり、ドットカウント方式により消費量を算出している。動作休止開始時間とは、攪拌動作の終了後の時間、または、インクタンク内のインクが移動を伴う動作を実施後の時間を記憶することである。
記録ヘッド1の吐出状態を良好な状態に維持するための回復手段は、バッファタンク減圧方式を採用している。この回復手段は、記録ヘッド1の吐出口が形成されている吐出口形成面に接合可能なキャップ21と、これに連通して吐出口形成面に吸引力を作用させインクを強制的に排出させるポンプ4等とから成る。この回復処理の際は、記録ヘッド1の各吐出口からインクを強制的に排出させることによって、記録ヘッド1のインクの吐出状態を良好な状態に回復させる。回復処理の手順としては、先ず、記録ヘッド1をキャップ21に接合し、回復弁16と泡抜き弁15とインク供給弁13、大気開放弁22を閉じた状態で、ポンプ4を駆動させる。これによってバッファタンク5内を負圧にし、一定量の負圧を得たところで回復弁16を開放することで記録ヘッド1のノズルに負圧をかけてインクタンク2からノズル開口までのインクを吸引する。その後、クリーニング処理としてキャップ21内のインクを排出する為、記録ヘッド1をキャップ21から引き離し、キャップ21内のインクを、ポンプ4を逆転させて廃液タンク3に回収させる。回復弁16の開放時間によってインク吸引量の調整を行っている。
以下、記録装置の各部を駆動させるための制御系について説明する。
図2は、本実施形態の記録装置の電気的な系統を示すブロック図である。ホストPC7から送信された記録データやコマンドは、インターフェイスコントローラを介してCPU200に受信される。CPU200は、記録装置の記録データの受信、記録動作、記録紙のハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU200では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの成分のイメージデータを各ヘッドで描画するデータを割り当てる。記録前の動作処理では、出力ポート、モータ駆動部を介してキャッピングモータとヘッドアップダウンモータを駆動し、各記録ヘッド1K(ブラック)、1C(シアン)、1M(マゼンタ)、1Y(イエロー)をキャッピング機構から離して記録位置に移動させる。続いて、出力ポート、モータ駆動部を介して記録紙を繰り出すモータ、低速度で記録紙を搬送する搬送モータ等を駆動して記録紙を記録位置に搬送する。一定速度で搬送される記録紙に、インクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサで記録紙の先端位置を検出する。その後、記録紙の搬送に同期して、CPU200はイメージメモリ201から対応する記録ヘッド1の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各記録ヘッド1K、1C、1M、1Yに記録ヘッド制御回路経由して転送する。CPU200の動作はプログラムROM202に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM202には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM203を使用する。各記録ヘッド1K、1C、1M、1Yのクリーニングや回復動作時に、CPU200は、出力ポート、モータ駆動部を介してポンプモータを駆動し、インクの吸引等の制御を行う。
図3(a)から(d)は、時間経過と共に顔料の沈降特性を示した図であり、(a)は、記録濃度の変化を示したグラフであり、(b)から(d)は、インクタンク内の顔料の様子を示した図である。以下、インクタンク2の液体室17に収容された顔料シアンインクの顔料成分が経時とともに沈降する様子を説明する。製造直後のインクタンク2の液体室17(図1参照)内の顔料インクは、図3(b)のようにインクタンクの上部においても底部においてもほぼ同一のインク濃度となっている。図3(c)は保管(休止)状態が2ヶ月経ったインクタンク内のインクの状態である。製造後所定の向きで保管される状況や、本体に装着された状態で動作休止状態が継続するような動作休止時間が長期に渡ると、重力による顔料の沈降の影響によってインクタンク内で顔料の濃度が異なる部分が生じる。沈降物が溜まったインクタンク内の液体室17底部においては、インク濃度は高くなり、液体室17上部においてインク濃度は低くなる。従って、動作休止時間が所定時間以上経過した場合、液体室17の底部のインクは極めて高いインク濃度であり、高粘度インクとなっている。記録ヘッド1へインクを供給するためのインク供給口19は、インクタンク2の底部にあるため、インク濃度の高いインクから記録ヘッド1へと供給される。そのため、濃度の高いインクが記録に使用され、高濃度の記録物となったり、最悪の場合、インク滴を吐出することができず、不吐出となり記録品位を劣化させることとなる。
そこで、本実施形態のインクジェット記録装置に搭載可能なインクタンクでは、流路内に供給されたインクをポンプによって再度インクタンク2に戻し、インクを戻す際に生じる流れによりインクタンク内のインクを攪拌する。また、インク戻しに使用可能な本体流路内のインク量が少量であっても、インクタンク2に戻したインクを本体流路に再び戻す動作を行い、インクの供給と逆戻しを繰り返すことで、少ないインク量でも十分な攪拌を行うことができる。このように、ポンプの正転/逆転駆動によってインクの供給/逆戻しを行ってインクタンク内のインクを攪拌する。
図4(a)、(b)は、本実施形態のインクジェット記録装置におけるインクタンク2を示した図である。インクタンク2は、戻しインクをより効果的に攪拌することが可能な攪拌構造をもつインクタンクである。タンク側面には、本体と接続が可能な半導体記憶手段(ROM)と、上部にはインクタンク内部に大気を導入する大気連通口23と、底部側面にはインクタンク内に貯留するインクを記録ヘッド1へ供給するインク供給口19とが配置されている。インク供給口19の内部には、攪拌パイプ24を備え、攪拌パイプ24内の供給流路の開閉を行う揺動式の球状の蓋部材25が備えられている。これらを備えることで、記録ヘッド1へインクを供給する際には、インク供給口19からのインクの流出に伴い蓋部材25が押し上げられることで流路26を開放し、低抵抗の状態でインクを供給することができる。また攪拌時には、インクを逆流させて蓋部材25が低抵抗の流路26を塞ぐことで、インクは攪拌パイプ24に流れ込み、断面積の小さい流路孔27をインクが流れてインクがインクタンク内に戻る。その際、流路孔27は断面積が小さいため、流路孔27を通過するインクの流速は速くなる。このように、インクタンク内に速い流速のインクの流れを生じさせることによって、インクタンク内のインクを攪拌することができる。このように本実施形態におけるインクタンク2は、供給、攪拌の両方を効率的に行うことができる構造となっている。また流路孔27は、インクタンク内を十分攪拌が行えるように複数カ所に配置されている。
このようにインクを逆流させて攪拌することで、インクタンク内のインクは循環され、インク濃度を均一な状態に保つことができる。しかし、インクタンク内のインク残量が少ない場合は、攪拌を頻繁に行わなくてもよい。インク残量が少量の時に満タン時と同じ攪拌を行うと不必要な攪拌を行うこととなり無駄に時間が掛かる。そのため、インクタンク内のインク残量に合わせた攪拌を行うことで効率的に攪拌を行うことが望ましい。従って、インク残量が多い時にはインク戻し量を多くし、またインク残量が少ない場合はインク戻し量を少なくすることで、効率的に攪拌を行うことができる。
図5は、インクタンク放置期間と記録濃度差との関係を示すグラフである。一般的には記録濃度差が基準値から0.1ずれると視覚的に異色として認識されるため、記録濃度差を基準値から0.1以内、つまり色差ΔEにして3以下に抑えることが望まれている。記録濃度変化の一番早いシアンインクにおいて、1.8ヶ月程度放置すると記録濃度差が基準値から0.1以上となることがわかる。従って動作休止を開始してから1.8ヶ月目直前に、攪拌を行うことで記録濃度変化を抑えることが可能だが、顔料沈降が進んでしまっているため、十分な攪拌をするにはそれなりの時間を要する。そこで、動作休止時間を計測(休止時間算出)し、記録濃度が変化するまでの期間の半分の放置期間である0.9ヶ月目で攪拌を行えば、およそ半分程度のインク逆戻しによる攪拌動作を行うことで十分な攪拌効果を得ることが可能である。また、0.45ヶ月目(約14日)に攪拌を行うことで約1/4程度のインク戻しで十分な攪拌効果を得ることができるため、顔料沈降開始の初期段階から少量のインク戻しによる攪拌を行うことで、効率的に顔料の沈降を抑えることができる。
図6は、各流量毎のインクを戻した際の噴流巻上げ高さとポンプ稼働時間との関係を示したグラフである。これは、噴流孔27の径が0.5mmの時の流量(cc/sec)別の噴流巻上げ高さを測定したものであり、流量が多いほど巻き上げ高さも短時間で所定高さまで到達することを表している。インクタンク内のインク残量が満タン時の噴流孔位置からインク液面までの高さを30mmとすると、流量0.59cc/secの場合は、38secで噴流が巻き上がり、液面高さ20mmとすると24secで噴流が巻き上がる。また、液面高さ10mmとすると10secで噴流が巻き上がることとなり、液面まで噴流が巻き上がるため攪拌に十分な効果がある(インクタンク内の広範囲に攪拌の影響が及ぶ)といえる。例えば、ポンプ稼動時間として38secを攪拌(大)、24secを攪拌(中)、10secを攪拌(小)として、インク残量に応じて攪拌力(大)(中)(小)を使い分けることで、無駄な時間を掛けずに効率的に攪拌することが可能である。
図7は、図5のインクタンク放置期間と記録濃度差の変化と、図6の各流量毎のポンプ稼働時間と噴流巻上げ高さを踏まえて、動作休止時間とインクタンク内のインク残量に応じた攪拌種類を示した表である。動作休止時間が30日以上経過した場合で、インク残量が50%以上の場合は攪拌(大)とし、インク残量が25%以上50%未満の場合は攪拌(中)とし、インク残量が25%未満の場合は攪拌(小)とした。
また、動作休止時間が14日以上30日未満の場合で、インク残量が50%以上の場合は攪拌(中)とし、インク残量が25%以上50%未満の場合は攪拌(小)とし、インク残量が25%未満の場合は攪拌(小)とした。本実施形態では、流量を大中小の3段階(2段階以上)に分けたが、これに限定するものではなく、段階を少なくして2段階であっても、逆に多くして3段階以上であってもよい。また、攪拌段階をインク残量値が50%、25%としたが、沈降速度の異なるインク種により攪拌を行うインク残量値が異なることは言うまでもない。
図1(b)、図1(c)および図4を用いて本実施形態における攪拌動作を説明する。図1(b)のように、泡抜き弁15と回復弁16、大気開放弁22を閉じ、インク供給弁13を開放後にポンプ4を駆動して矢印α方向の圧力を生じさせる。これによって、バッファタンク5を経由して記録ヘッド1の液室9のインクを押し下げることでインクタンク2へインクの逆戻しを行う。戻されるインク量は、記録ヘッド1の液室内にある液面検知センサ14の上限値から下限値が検知するまでとする。逆戻しによって押し戻されたインクは、インクタンク2の供給口19からタンク内部に流出し、攪拌パイプ24内の供給流路の開閉を行う蓋部材25が低抵抗の流路26を塞ぐ。これによって、攪拌パイプ24の断面積の小さい流路孔27から液室9にインクが流れ出し、高い流速のインク流でインクタンク内のインクを攪拌する。また、図1(c)のようにポンプ4を逆回転駆動させて、インクタンク内に戻したインクを記録ヘッド1へ、液面検知センサ14の上限値が検知するまで戻す。なお、上述してきた流量や動作休止時間に応じた攪拌動作に必要なポンプ稼働時間は、本体構成は基より、インクタンク構成や沈降が伴う液体の種類によって変化する。
図8、図9は、本実施形態における攪拌動作の処理を示したフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って本実施形態の攪拌動作を説明する。ステップS01で、インクジェット記録装置にインクタンク2がセットされると、ステップS02で、インクタンク2に装着されている半導体記憶手段であるROMにアクセスして、インクタンク製造日、本体装着日、動作休止開始時間を読み込む。その後、ステップS03で、そのインクタンク2が初めての装着であるか否かを確認する。初めての装着であれば、ステップS05に移行して装着日をROMに書き込む。ステップS03で初めての装着でなければ、後述するステップS04に移行する。ステップS05の後、ステップS06でインクタンク製造日から30日以上が経過しているかどうかを判断して、経過している場合は、ステップS07に移行して、攪拌(大)を実施する。ステップS06で製造から30日以上経過していない場合は、ステップS08に移行して攪拌(中)を実施する。ステップS07、ステップS08で攪拌を実施した後は、ステップS09で、ROMに動作休止開始時間を記録して終了となる。なお、動作休止開始時間は、攪拌終了後のみならず、記録動作終了後や回復動作終了後等のインクタンク2からインクが移動する動作終了後にROMに書き込まれてもよい。
ステップS03からステップS04に移行した場合、ステップS10でROM内に記憶されている動作休止開始時間と、動作を休止していた動作休止時間と、インク残量の値に基づき、攪拌種類判断制御部により攪拌種類を決定(攪拌種類決定)する。その後、ステップS11で、動作休止時間が14日以上30日未満かを判断して、動作休止時間が14日以上30日未満である場合には、ステップS12で、インク残量に応じて攪拌(中)または攪拌(小)を行うよう指示する。ステップS11で動作休止時間が14日以上30日未満でない場合には、ステップS14で動作休止時間が30日以上かを判断して、30日以上経過している場合には、ステップS15でインク残量に応じて攪拌(大)、攪拌(中)または攪拌(小)を実施する。ステップS14で、動作休止時間が30日以上経過していない場合には、ステップS11に戻って、再度動作休止時間が14日以上30日未満かを確認する。なお、例えば動作休止時間が10日であった場合には、休止時間が14日以上になるまでステップS11とステップS14とを繰り返す。ステップS12、ステップS15でそれぞれ攪拌を実施した後は、ステップS13で、攪拌終了後に動作休止開始時間をリセットする。また、攪拌を動作させるタイミングは、電源OFF時が好ましいが、電源ON時(記録装置の電源ON/OFF時)や回復処理後または流路内の溶存ガスを排出する為に行うタイマー回復時に合わせて行ってもよい。
なお、本発明は本実施形態のような本体動作の休止経過時間を計測する計測手段と、インクタンク内インク残量測定手段と、休止時間とインク残量とによって得られた結果に基づいて攪拌する制御であればよい。つまり、本実施形態のような計測手段とインク残量測定手段と、休止時間とインク残量とに基づいて制御する構成であれば、特許文献1から3の大気導入方式や特許文献4記載のダイヤフラムポンプを設置した攪拌方式にも本発明は適用可能である。また、インク残量は、ドットカウント方式で説明をおこなったが、IRセンサによるプリズム検知方式または電極検知方式であってもよい。
このように、インクタンクに、複数の流路孔を備えた攪拌パイプを備え、本体動作の休止経過時間と、インクタンク内インク残量と、に基づいて、インクタンクからのインクの供給とインクタンクへのインク戻しによって、インクタンク内のインクの攪拌を行う。これによって、顔料沈降に起因する記録画像の劣化を抑制することができるインクジェット記録装置を実現することができた。
1 記録ヘッド
2 インクタンク
4 ポンプ
5 バッファタンク
9 液室
10 空気室
14 液面検知センサ
17 液体室
19 インク供給口
24 攪拌パイプ
25 蓋部材
26 流路
27 流路孔

Claims (13)

  1. インクタンク内に貯留されたインクを記録ヘッドから吐出して記録を行う記録手段と、所定の経過時間を計測する時間計測手段と、前記インクタンク内のインク残量を測定するインク残量測定手段と、を備えたインクジェット記録装置において、
    前記時間計測手段によって計測した時間を基に前記インクジェット記録装置の休止時間を算出する休止時間算出手段と、該休止時間算出手段が算出した休止時間と前記インク残量測定手段が測定した前記インクタンク内のインク残量に応じて、前記インクタンク内のインクの攪拌種類を決定する攪拌種類決定手段を備え、
    該攪拌種類決定手段は、前記休止時間が長いほど、また、前記インク残量が多いほど、前記インクタンク内の広範囲に攪拌の影響が及ぶ攪拌種類を決定することを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記インクタンクから前記記録ヘッドへ前記インクを供給する供給手段と、該供給手段によって前記記録ヘッドに供給された前記インクを前記インクタンクに戻す逆戻し手段と、を備え、
    前記インクタンク内の攪拌は、前記逆戻し手段によって前記インクを前記インクタンクに戻す動作によって行われることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記記録ヘッドは、前記インクを貯留する液室と、該液室の上部に設けられた空気室と、前記液室内のインク量を検知する液面検知センサと、前記液室にインクの供給を行う供給口と、前記供給口側から前記空気室に向かって上昇していくガイド面と、前記空気室に設けられ、記録ヘッドの外部と接続される空気流路口とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記液面検知センサは、前記記録ヘッドの前記液室内に貯留するインクの液面上限値と液面下限値を検知するセンサであることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記逆戻し手段は、チューブポンプまたはピストンポンプを備えており、正転/逆転駆動することにより、前記インクタンクのインクを前記記録ヘッドへ供給あるいは前記インクタンクへ前記インクまたは空気を戻すことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記供給手段は、前記液面検知センサにより検出される液面下限値から液面上限値まで前記インクを供給し、前記逆戻し手段は、前記液面検知センサにより検出される液面上限値から液面下限値までのインクを前記インクタンクへ逆戻しすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記インクタンクは半導体記憶手段を備え、該半導体記憶手段は、情報記憶部と、情報を読み書きに使用され、外部と接続する端子と、を備え、前記情報記憶部には、初期インク量と、インクタンク製造日と、装着日と、インク残量と、動作休止開始時間と、を記憶することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記休止時間算出手段は、前記半導体記憶手段に記憶された前記動作休止開始時間と、前記時間計測手段が計測した動作を休止していた時間と、を基に休止時間を算出し、前記インクタンク内の攪拌の終了後に前記動作休止開始時間をリセットすることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記インク残量測定手段は、初期インク量から前記記録ヘッドが吐出や回復で消費する消費インク量を引いたインクタンク内に残るインク残量を算出し、前記半導体記憶手段に記録することを特徴とする請求項7または8に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記攪拌種類決定手段は、前記休止時間算出手段が算出した休止していた時間と、前記インクタンク内のインク残量に応じて攪拌種類を決定し、攪拌を実行するタイミングを指示するものであり、前記攪拌種類とは、前記インクタンク内のインク残量が多いほどインク逆戻し量を多く、インク残量が少ないほどインク逆戻し量を少なくすることとし、また、動作休止時間が長いほどインク逆戻し量を多く、動作休止時間が短いほどインク逆戻し量を少なくすることとするインク逆戻し量を少なくとも2段階以上を持つことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記インクタンクから前記記録ヘッドにインクを供給するインク流路途中に、前記逆戻し手段のチューブポンプまたはピストンポンプが設けられており、該ポンプの作用によって攪拌を実施することを特徴とする請求項5ないし10のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  12. 前記攪拌を実行するタイミングは、前記インクジェット記録装置の電源ON/OFF時または前記記録ヘッドの機能を回復する各種の回復処理後であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  13. 前記インクは、顔料粒子や磁性粒子などの沈降物を含む液体であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
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