JP6141636B2 - 基板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、及び磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

基板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、及び磁気ディスクの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、基板の製造方法に関する。特に基板の鏡面研磨に関するものであり、対象となる基板は、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスク用基板の他、フォトマスク基板、半導体基板、ディスプレイ用基板などが含まれる。
近年、半導体、ディスプレイ、磁気記録媒体などの高精度化は目覚しく、その中でも例えば、高度情報社会を支える情報の記録装置の一つである磁気ディスク装置(HDD)に用いられる磁気記録媒体(磁気ディスク)には記録密度の更なる向上と低ノイズが要求されている。その要求を満たすため、磁気記録媒体の製造工程においては、極めて高い清浄性と平滑性が求められる。
コンピューター等の情報処理装置の外部記憶装置として、磁気ディスク装置(ハードディスクドライブ)が多く用いられている。この磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体は、一般に、非磁性基板上に、非磁性金属下地層、強磁性合金からなる薄膜磁性層、保護層、潤滑層が順次設けられて構成されている。
非磁性基板は、通常、アルミニウム合金、もしくはガラス材料からなるディスク状基材上に、無電解メッキ法でNiP層が形成され、その表面に鏡面加工が施され、極めて平滑性の高い表面を有するものや、ガラス基板、その他のセラミクスなどが用いられる。
磁気ディスク用の基板として従来はアルミ基板が用いられてきた。しかし、最近では、高記録密度化の追求に呼応して、アルミ基板と比べて磁気ヘッドと磁気ディスクとの間隔をより狭くすることが可能なガラス基板の占める比率が次第に高くなってきている。また、ガラス基板表面は磁気ヘッドの浮上高さを極力下げることができるように、高精度に研磨して高記録密度化を実現している。近年、HDDの更なる大記録容量化、低価格化の要求は増すばかりであり、これを実現するためには、磁気ディスク用ガラス基板においても更なる高品質化、低コスト化が必要になってきている。
上述したように高記録密度化にとって必要な低フライングハイト(浮上量)化のために磁気ディスク表面の高い平滑性は必要不可欠である。磁気ディスク表面の高い平滑性を得るためには、結局、高い平滑性の基板表面が求められるため、高精度にガラス基板表面を研磨する必要がある。
ところで、基板表面の研磨は、ウレタンなどを素材とする研磨パッドで基板を挟み込んで、その間に研磨砥粒を含むスラリーを供給して行われる。研磨砥粒は研磨パッドと基板の間に介在し、研磨パッドに弱く把持され、基板に接触し、基板表面層を除去(研磨)し、研磨パッドから脱離し、排出される。基板の表面粗さ(仕上げ面粗さ)は研磨砥粒の大きさで制御される。その後、基板表面に付着している砥粒を除去するために、ブラシ洗浄などの洗浄工程が行われる。しかしながら、近年、砥粒は粒径が数十nmにまで微小化しており、砥粒を除去し、表面を清浄にすることは大きな課題となっている。
そこでこの課題を解決するために、研磨後にケイフッ酸処理する方法(特許文献1)や、加工圧力を下げて、砥粒を含まないリンス工程を加える方法(特許文献2)なども提案されている。
特開2003−36522号公報 特開2006−95676号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されているケイフッ酸などで基板表面を処理すると、表面が荒れてしまう弊害があり、製造コストの上昇をも招く。また、上記特許文献2に開示されている研磨後に純水などの砥粒を含まないリンス液を供給すると、定常状態になるまでの間はスラリーの砥粒濃度が急激に変化し不安定な状態になる。例えば、研磨後に砥粒を含まないリンス液に切り替えた場合、研磨定盤上において高い砥粒濃度の部分と砥粒を含まない部分との両方が混在して生じてしまい、砥粒濃度にムラが発生し、研磨品質や品質バラツキの悪化など、研磨安定性が低下することが考えられる。なお、研磨液とリンス液とに含まれる物質が異なる場合も同様の問題が生じる。
また、基板に作用する砥粒の濃度が急激に変化すると、表面粗さが変化するとともに、研磨パッドに含まれている研磨くずや凝集したスラリーが直接基板に接触することにより、スクラッチを誘発してしまう。また、定常状態にするためには長時間のリンスが必要となる。
本発明はこのような従来の課題を解決すべくなされたものであって、その目的は、簡便な方法で、清浄度の高い、欠陥の少ない、基板表面品質への要求が現行よりもさらに厳しいものとなっている次世代用の磁気ディスク用基板として好ましく使用することが可能な高品質の基板を低コストで製造できる基板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、およびそれによって得られる基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決する手段として、研磨工程(処理)の後に、加工圧力、スラリーの砥粒濃度、スラリー供給量をそれぞれ最適にしたリンス工程(処理)を行うことが最適であることを見い出した。
研磨加工時に用いられる砥粒濃度のスラリーに基板が研磨加工後も基板表面に接触した状態にしておくと、時間の経過とともに、砥粒は除去されづらくなる。特にガラス基板に対してコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーで研磨する場合、同じ成分(SiO2)を含むため付着力が強くなりやすく、除去しづらい。そのため、迅速に基板表面の砥粒濃度を下げる必要がある。しかし、砥粒にはコロガリ作用による潤滑作用もあることから、急激な砥粒の減少は研磨パッドと基板との間の摩擦を増加させてスクラッチといった欠陥を招きやすい。そこで、研磨加工後、研磨パッドと基板の間に介在する砥粒濃度を制御して潤滑作用を持たせつつ砥粒濃度を減少させることにより、清浄性と低欠陥を両立できることを見い出した。すなわち、研磨工程時に基板表面に付着して残留した砥粒を、スクラッチ等の欠陥を増加させずに迅速に除去することができる。適当量の砥粒の存在は、供給スラリーの砥粒濃度と加工圧力、及びスラリー供給量によって制御されるとの知見を得た。なお、本発明において、研磨定盤に配備された上記研磨パッドと基板の間に供給されるスラリーの供給量は、定盤へのスラリー供給量によって設定され、具体的には、研磨定盤の単位面積あたりに供給されるスラリー流量(研磨定盤へのスラリー供給総量を研磨定盤の面積で割った値)とする。以下、研磨定盤の単位面積あたりに供給されるスラリー流量を単に「定盤へのスラリー供給量」と記載する。
すなわち、研磨工程(処理)の後に実施するリンス工程(処理)における、スラリーの砥粒濃度、加工圧力、定盤へのスラリー供給量をそれぞれ最適に調節することにより、基板表面の清浄性と低欠陥を両立することが可能になる。
本発明は、以上の解明事実を基に更に鋭意検討の結果完成したものであり、以下の構成を有する。
(構成1)
研磨砥粒を含むスラリーと、一対の研磨パッドが配備された定盤とを用いて、前記スラリーを前記研磨パッドと基板の間へ供給しつつ、前記一対の研磨パッドで前記基板の主表面を挟んで研磨する研磨処理と、該研磨処理の後に実施され、加工圧力が2kPa〜6kPa、且つ、スラリー中の砥粒濃度が0(零)超、5重量%以下、且つ、定盤の単位面積当りに供給されるスラリー流量が0.25ml/分/cm〜5ml/分/cmで、基板の主表面を処理するリンス処理を含むことを特徴とする基板の製造方法。
(構成2)
前記リンス処理時の加工圧力は、前記研磨処理時の加工圧力の60%以下であることを特徴とする構成1に記載の基板の製造方法。
(構成3)
前記研磨砥粒としてコロイダルシリカを用い、前記リンス処理後の基板主表面粗さがRaで0.2nm以下となるように前記研磨処理および前記リンス処理を行うことを特徴とする構成1又は2に記載の基板の製造方法。
(構成4)
前記基板の製造方法は、さらに基板の化学強化処理を含み、該化学強化処理後に前記研磨処理と前記リンス処理を行うことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成5)
前記研磨処理におけるスラリー中の砥粒濃度は、少なくとも前記リンス処理時よりも高く、40重量%以下であることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成6)
前記基板は、磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成7)
前記磁気ディスク用ガラス基板は、化学強化可能なアモルファスのアルミノシリケートガラスからなることを特徴とする構成6に記載の基板の製造方法。
(構成8)
前記基板は、NiPメッキ基板であることを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の基板の製造方法。
(構成9)
一対の研磨パッドが配備された定盤を備えた研磨装置を用い、研磨砥粒を含むスラリーを前記研磨パッドとガラス基板の間へ供給しつつ、前記一対の研磨パッドで前記ガラス基板の主表面を挟んで研磨する研磨処理と、該研磨処理の後に、前記研磨装置を用い、前記研磨処理時のスラリーよりも低い濃度の研磨砥粒を含むスラリーを前記研磨パッドと前記ガラス基板の間へ供給しつつ、前記一対の研磨パッドで前記ガラス基板の主表面を挟んで摺動することによって前記ガラス基板の主表面に付着した前記研磨砥粒を除去するリンス処理を有し、前記リンス処理における加工圧力は、前記研磨処理における加工圧力の60%以下であり、前記リンス処理時のスラリーにおける研磨砥粒の濃度は、前記研磨処理時のスラリーにおける研磨砥粒の濃度の半分以下であることを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成10)
前記リンス処理時における定盤の単位面積当りのスラリー供給量は、前記研磨処理時における定盤の単位面積当りのスラリー供給量の5倍以上であることを特徴とする構成9に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
(構成11)
構成1乃至8のいずれかに記載の製造方法によって得られた基板上、もしくは構成9又は10に記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
本発明によれば、簡便な方法で、清浄度の高い、欠陥の少ない高品質の基板を低コストで製造することが可能である。本発明によって得られる基板は、特に基板表面品質への要求が現行よりもさらに厳しいものとなっている次世代用の磁気ディスク用ガラス基板として好適に使用することが可能である。また、本発明によって得られるガラス基板を利用し、DFH機能を搭載した極低浮上量の設計の磁気ヘッドと組み合わせた場合においても長期に安定した動作が可能な信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
両面研磨装置の概略構成を示す縦断面図である。 本発明のリンス工程において定盤へのスラリー供給量と加工圧力を可変したときの砥粒濃度比とパーティクル数との関係を示す図である。 本発明のリンス工程において定盤へのスラリー供給量と加工圧力を可変したときの砥粒濃度比とスクラッチ発生率との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
本発明が適用される基板には、アルミにNiPメッキを施したアルミ基板や、アモルファスあるいは結晶化したガラス基板、アルミナなどのセラミクス基板、シリコン基板などがあるが、特に限定されるわけではない。ここでは代表例としてガラス基板について説明する。
磁気ディスク用ガラス基板は、通常、粗研削工程(粗ラッピング工程)、形状加工工程、精研削工程(精ラッピング工程)、端面研磨工程、主表面研磨工程(第1研磨工程、第2研磨工程)、化学強化工程、等を経て製造される。
この磁気ディスク用ガラス基板の製造は、まず、溶融ガラスからダイレクトプレスにより円盤状のガラス基板(ガラスディスク)を成型する。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板(ガラスディスク)を得てもよい。次に、この成型したガラス基板(ガラスディスク)に寸法精度及び形状精度を向上させるための研削(ラッピング)を行う。この研削工程は、通常両面ラッピング装置を用い、ダイヤモンド等の硬質砥粒を用いてガラス基板主表面の研削を行う。こうしてガラス基板主表面を研削することにより、所定の板厚、平坦度に加工するとともに、所定の表面粗さを得る。なお、この工程は、炭化ケイ素、アルミナなどの遊離砥粒をスラリーとするラッピングにより行ってもよい。その際の仕上げ面粗さは、加工に用いる砥粒の大きさで決まる。加工速度及び後工程での研磨の負担を考えると、平均砥粒粒径1〜10μm程度の砥粒を使用してRa0.1μm〜0.5μm程度が一般的である。
表面は摺りガラス状態でクラックなどの加工変質層は厚く存在する。従って、この後、この加工変質層を除去し鏡面化するための研磨加工を行う。遊離砥粒による研磨加工は砥粒の大きさによって仕上げ面粗さが決まり、加工速度も影響を受ける。すなわち、大きな砥粒で加工すれば加工速度は大きいが、仕上げ面粗さも大きく、小さな砥粒で研磨すると加工速度は小さいが仕上げ面粗さも小さくできる。また、砥粒材質によっても異なり、酸化セリウムは加工速度も大きいが仕上げ面粗さも大きく、コロイダルシリカの場合、加工速度は酸化セリウムより小さいが仕上げ面粗さは小さくできる。しかし、これら以外にもダイヤモンドなども用いることができ、砥粒材質は限定されることではない。
ラッピング後の研磨には、鏡面化及び加工変質層除去のためには、数ミクロンの除去が必要であることから、酸化セリウムスラリーなどの加工速度の大きなスラリーによる第1研磨を行い、その後、仕上げ面粗さを小さくするためのコロイダルシリカなどのスラリーを用いて第2研磨を行う工法が用いられている。研磨は両面研磨機を用い、上下定盤に研磨パッドを貼ってその間に所定のスラリーを流して行う。第1研磨の場合、スラリーは、0.5μmの粒径を持つ酸化セリウム砥粒などが用いられる。研磨パッドは硬質のウレタンなどが用いられる。加工圧力は、50gf/cm〜150gf/cmであり、好ましくは80〜120gf/cm程度である。こうして研磨された基板表面はRa=0.4〜1nm程度である。
第2研磨工程には、コロイダルシリカを主体としたスラリーが用いられ、コロイダルシリカの平均粒径は0.005〜0.5μm程度のものが用いられる。しかし、コロイダルシリカに限定されるわけではなく、ダイヤモンドや酸化ジルコニアなどを用いてもよい。
さらにこの後所定の基板表面粗さに調整するための第3研磨工程を有する場合もある。
研磨加工に用いられるスラリー(研磨液)は、基本的には研磨材と溶媒である水の組合せであり、さらにスラリーのpHを調整するためのpH調整剤や、その他の添加剤が必要に応じて含有されている。
シリカ砥粒等を含むスラリーを組成するには、純水、例えばRO水を用いてスラリーとすればよい。ここでRO水とは、RO(逆浸透圧膜)処理された純水のことである。RO処理及びDI処理(脱イオン処理)されたRO−DI水を用いると特に好ましい。RO水或いはRO−DI水は不純物、例えばアルカリ金属の含有量が極めて少ない上に、イオン含有量も少ないからである。
本発明において、前記研磨工程におけるスラリーの砥粒濃度は特に制約される必要はないが、3重量%以上40重量%以下であることが好ましく、更には2重量%以上20重量%以下であることが好適である。
所定の仕上げ面粗さは媒体仕様により様々であるが、Ra=0.01〜1nm程度が必要とされている。通常は第2研磨工程時に所定の仕上げ面粗さに応じてスラリーを選択する。つまり、Raが0.2nmの仕様であるならば平均粒子半径が30nm程度のコロイダルシリカを用い、さらに粗い場合はより大きな粒径の砥粒を含むスラリーを使用する。分散性や再付着防止の点からスラリーを酸性又はアルカリ性に調整してもよい。なお、平均粒径30nm以下のコロイダルシリカを研磨砥粒として用いて、主表面の粗さ(Ra)を0.2nm以下とすると、DFH機能を搭載した極低浮上量の設計の磁気ヘッドと組み合わせた場合においても長期に安定した動作が可能な信頼性の高い磁気ディスクを得ることができるので特に好ましい。
なお、本発明において、上記平均粒径とは、光散乱法により測定された粒度分布における粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径(以下、「累積平均粒子径(50%径)」と呼ぶ。)を言う。本発明において、累積平均粒子径(50%径)は、具体的には、粒子径・粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)を用いて測定して得られる値である。
上記研磨工程に用いる研磨装置としては、例えば図1に示すような両面研磨装置が挙げられる。図1は、ガラス基板の鏡面研磨工程に用いることができる遊星歯車方式の両面研磨装置の概略構成を示す縦断面図である。図1に示す両面研磨装置は、太陽歯車4と、その外方に同心円状に配置される内歯歯車5と、太陽歯車4及び内歯歯車5に噛み合い、太陽歯車4や内歯歯車5の回転に応じて公転及び自転するキャリア6と、このキャリア6に保持された被研磨加工物(ガラス基板)7を挟持可能な研磨パッド2がそれぞれ貼着された上定盤3及び下定盤1と、上定盤3と下定盤1との間にスラリーを供給するスラリー溜め8とを備えている。スラリー供給バルブ11及び純水供給バルブ12の開閉により、研磨剤を含むスラリー9と純水10が混合されて上記スラリー溜め8に貯留されている。
このような両面研磨装置によって、研磨加工時には、キャリア6に保持された被研磨加工物、即ちガラス基板7を上定盤3及び下定盤1とで挟持するとともに、上下定盤3,1の研磨パッド2とガラス基板7との間にスラリー溜め8からスラリーを供給しながら、太陽歯車4や内歯歯車5の回転に応じてキャリア6が公転及び自転しながら、ガラス基板7の上下両面が研磨加工される。
特に仕上げ鏡面研磨用の研磨パッドとしては、軟質ポリッシャの研磨パッド(スウェードパッド)であることが好ましい。研磨パッドの硬度はアスカーC硬度で、60以上80以下とすることが好適である。研磨パッドのガラス基板との当接面は、発泡ポアが開口した発泡樹脂、取り分け発泡ポリウレタンとすることが好ましい。このようにして研磨を行うと、ガラス基板の表面を平滑な鏡面状に研磨することができる。
また、発泡ポアの平均開口径を15μm以下とすると、主表面の平均粗さ(Ra)を低く(例えば0.2nm以下)維持しつつ、微小うねりを低減(0.15nm以下)することができるので特に好ましい。ただし、発泡ポア径が小さくなるにつれて、パッドと基板の間の摩擦は大きくなる傾向にあるため、基板にスクラッチが入り易くなる。このため、本発明のように研磨処理後に砥粒濃度を少なくしてリンス処理を行うような場合は、研磨砥粒濃度の精密な制御が得に重要である。
ここで、発泡ポアの平均開口径は、顕微鏡を用いてパッド表面を撮影し、ランダムに100個選んだポアの径を測定して平均して得た値である。また、微小うねりは、形状波長60〜160μmにおける平均粗さ(Ra)であり、ポリテック社製ThoT(model M4224)を用いて、基板中心より半径15mmから30mmの間の主表面を測定することにより評価できる。
本発明は、前記の通り、上記研磨処理の後に、加工圧力が2kPa〜6kPa、且つ、スラリーの砥粒濃度が0(零)超、5重量%以下、且つ、定盤の単位面積当りに供給されるスラリー流量が0.25ml/分/cm〜5ml/分/cmで、基板の主表面を処理するリンス処理を行うことを特徴としている。
簡便な方法で、清浄度の高い、欠陥の少ない、基板表面品質への要求が現行よりもさらに厳しいものとなっている次世代用の磁気ディスク用基板として好ましく使用することが可能な高品質の基板を低コストで製造できる基板の製造方法、およびそれによって得られる基板を利用した磁気ディスクの製造方法を提供することである。
前にも説明したように、研磨加工時に用いられる砥粒濃度のスラリーに基板が研磨加工後も接触した状態にしておくと砥粒は除去されづらくなるため、研磨加工後は迅速に砥粒濃度を下げる必要があるが、砥粒にはコロガリ作用による潤滑作用もあることから、急激な砥粒の減少は研磨パッドと基板との間の摩擦を増加させてスクラッチといった欠陥を招きやすい。本発明では、研磨加工後、供給スラリーの砥粒濃度、加工圧力、及び定盤へのスラリー供給量をそれぞれ最適に調節し、これによって研磨パッドと基板の間に介在する砥粒濃度を制御して潤滑作用を持たせつつ砥粒濃度を減少させるリンス工程(処理)を実施することにより、基板表面の清浄性と低欠陥を両立することが可能になる。
本発明におけるリンス工程は、上記研磨加工工程の後に続けて行うことが好適である。研磨加工工程が段階的に行われる場合には、その最終研磨工程(例えば上記第2研磨工程)の後に続けて行うことが好適である。この場合、研磨工程とリンス工程を同じ研磨機を用いて連続して行うと、より迅速に砥粒を除去できるため好ましい。遊星歯車方式で基板の両面を同時に研磨する研磨機を用いて、一度(1バッチ)に100枚以上の基板を研磨する場合、発熱量が多くなるため、砥粒と基板の付着力がより増大しやすい。このような場合に本発明は特に効果的である。
また、生産性及びコストの観点からも、リンス工程は直前の研磨工程と同一の研磨機を用いて、連続して実施することが好ましい。異なる研磨機を用いて実施する場合、リンス工程を開始するために定盤を下ろすときに基板表面にダメージを与えて品質を低下させる恐れがある。
なお、研磨工程からリンス工程への移行は、基板を遊星歯車運動させつつ、研磨パッドによる基板表面への加圧摺動状態を維持しながら行うことが好ましい。これは、基板表面への研磨砥粒の付着時間が長いほど付着力が増して、後で除去しづらくなるためである。この移行期に装置を停止したり、研磨が実施されない程度まで加工圧力を低下させると(加工圧力が殆どかからない)、基板表面に付着した砥粒の動きが止まり、基板表面へ固着し始めてしまう。よって、常に砥粒を動かしつつ基板表面の砥粒濃度を低下させるようにするとより好ましい。
また、この移行期に、加工圧力(定盤圧力)を下げることが好適である。例えばリンス工程において、研磨加工時の加工圧力が高いまま砥粒濃度を下げるとスクラッチが入り易くなるからである。従って、リンス液の供給は、上記の加工圧力を下げる等のリンス工程の条件が整ってから開始することが好ましい。
以下に、具体的な実験例を挙げて説明する。
本発明の研磨工程として、例えば以下の条件で研磨を行う。但し、あくまでも一例であって、以下の研磨条件に限定する趣旨ではない。
なお、基板としては、アルミノシリケートガラス基板(外径65mm、内径20mm、板厚0.8mm)を使用した。
<研磨条件>
・研磨装置:スピードファム社製 両面9B研磨機
・研磨パッド:発泡ウレタン研磨用パッド
・スラリー:日産化学社製 コロイダルシリカ 平均粒径80nm 濃度10重量%
・定盤へのスラリー供給量:0.05ml/分/cm
・加工圧力:9.8kPa
・研磨時間:4分
上記研磨の後、同じ研磨装置を用いて、加工圧力以外の研磨条件を維持しつつ、加工圧力を徐々に低下させて、リンス工程時の加工圧力へ変更した。そして以下に説明する条件で本発明のリンス工程を1分間行い、その後研磨装置から基板を取り出して、さらにブラシ洗浄、薬液洗浄、水洗、マランゴニー乾燥を行った。
こうして得られた基板表面の清浄度は表面検査装置によるパーティクルの個数で評価し、スクラッチも同じく表面検査装置によって評価した。スクラッチは、深さ5nm、幅100nm以上の欠陥を検出する条件とした。表面検査装置はOSA(KLA-Tencor社)を使用し、各1000枚ずつ測定した。
なおここで、リンス工程のスラリーの砥粒濃度を上記研磨工程のスラリーの砥粒濃度に対する比(濃度比)として、(リンス工程のスラリーの砥粒濃度)/(研磨工程のスラリーの砥粒濃度(10重量%))で表し、0(零)〜1までの間で可変し、リンス工程での定盤へのスラリー供給量を研磨加工工程での定盤へのスラリー供給量に対して1〜20倍まで可変し、加工圧力を5kPaと9.8kPaの2段階で可変した。所定の加工圧力及び所定の定盤へのスラリー供給量での、リンス工程の砥粒濃度(上記濃度比)とパーティクル及びスクラッチ発生率の関係を図2および図3に示す。なお、図2において、横軸のプロットは、濃度比が、0、0.01、0.05、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0であり、図3において、横軸プロットは、濃度比が、0、0.01、0.05、0.1、0.5である。
図2の結果から、上記の濃度比が0.5以下(つまりリンス工程でのスラリーの砥粒濃度が5重量%以下)であることが好ましく、0.25以下とするとより好ましい。つまり、リンス工程でのスラリー中の研磨砥粒の濃度は、研磨工程でのスラリー中の研磨砥粒の濃度の半分以下であることが好ましい。
また、加工圧力については、5kPa以下とすることが好ましい。なお、リンス工程の加工圧力を変化させて実験を行ったところ、研磨工程の加工圧力の60%以下の場合は上記5kPaと同様の結果が得られたが、60%より大きくするとパーティクル数が増加した。一方、リンス工程の加工圧力を、研磨工程の加工圧力の5%とすると上記5kPaよりも改善が見られたが、5%より小さくするとむしろ悪化した。
すなわち、リンス処理時の加工圧力は、研磨処理時の加工圧力の60%以下とすることが好適である。リンス処理時の加工圧力が、研磨処理時の加工圧力の60%より大きくなると、研磨砥粒のそれぞれにかかる圧力が大きくなり(研磨砥粒の数が少ないため)、スクラッチが発生しやすくなる。なお、リンス処理時の加工圧力が、研磨処理時の加工圧力の5%未満となると、押し付けが不足して基板表面をパッドが滑って砥粒を摺動除去できなくなる恐れがあるので、5%以上とするとよい。
また、リンス工程における定盤へのスラリー供給量については、研磨工程の5倍以上とすると好ましく、20倍以上とするとより好ましいことがわかる。
そして、濃度比が0.5以下(つまりリンス工程でのスラリーの砥粒濃度が5重量%以下)で、且つ加工圧力を5kPa以上とし、定盤へのスラリー供給量を5倍(0.25ml/分/cm)又は20倍(1ml/分/cm)に上げるとパーティクルが著しく減少することが分かる。
また、図3の結果から、濃度比0.01以上で効果が見られ(一部の条件下で)、濃度比0.05以上では、スラリー供給量と加工圧力にかかわらず効果があることがわかる。但し、濃度比を下げすぎて、リンス工程でのスラリーの砥粒濃度が0(零)に限りなく近い状態になると、スクラッチが増加することが分かる。
従って、リンス工程でのスラリー中の砥粒濃度の範囲は、0(零)超、5重量%以下であり、好ましくは0.1〜5重量%であり、更に好ましくは0.5〜2.5重量%である。また、上記濃度比は、0.01〜0.5であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.25である。
このようなリンス工程の加工条件と発生パーティクル数及びスクラッチ発生率の関係から、リンス工程でのスラリーの砥粒濃度を適正領域にし、且つ加工圧力を2〜6kPaと軽くし、且つリンス工程での定盤へのスラリー供給量を研磨加工工程での定盤へのスラリー供給量に対して1〜100倍(0.25ml/分/cm〜5ml/分/cm)まで増加することにより、清浄な表面で、かつ欠陥の少ない基板を得ることができる。なお、リンス工程での定盤へのスラリー供給量が研磨加工工程での定盤へのスラリー供給量に対して100倍(5ml/分/cm)を超えると、加工圧力が低い場合は特に、定盤の荷重が不安定となって加工が安定しない恐れがある。
なお、本実験データはスラリーの平均砥粒粒径が80nmの場合であるが、他の粒径においても同様な傾向を示す。また、研磨加工工程の後、同じ研磨装置を用いてリンス工程を行う場合、供給されるスラリーの砥粒濃度が本発明の範囲に低下して定常状態に落ち着くまで若干の時間を要するので、その若干の時間内は、本発明の範囲よりも高めの砥粒濃度のスラリーが供給されることになるが、本発明の作用効果に影響はない。
以上のように、研磨加工工程の後、本発明のリンス工程を行うことにより清浄な表面で、且つ欠陥の少ない基板を作製することができる。
なお、リンス工程の後、さらに通常行う洗浄工程として薬液浸漬やスクラブなどの洗浄を施してもよい。
本発明においては、ガラス基板を構成するガラス(の硝種)は、アモルファスのアルミノシリケートガラスとすることが好ましい。このようなガラス基板は表面を鏡面研磨することにより平滑な鏡面に仕上げることができ、また加工後の強度が良好である。このようなアルミノシリケートガラスとしては、SiO2が58重量%以上75重量%以下、Al23が5重量%以上23重量%以下、Li2Oが3重量%以上10重量%以下、Na2Oが4重量%以上13重量%以下を主成分として含有するアルミノシリケートガラス(ただし、リン酸化物を含まないアルミノシリケートガラス)を用いることができる。さらに、例えば、SiO2 を62重量%以上75重量%以下、Al23を5重量%以上15重量%以下、Li2 Oを4重量%以上10重量%以下、Na2 Oを4重量%以上12重量%以下、ZrO2を5.5重量%以上15重量%以下、主成分として含有するとともに、Na2O/ZrO2 の重量比が0.5以上2.0以下、Al23 /ZrO2 の重量比が0.4以上2.5以下であるリン酸化物を含まないアモルファスのアルミノシリケートガラスとすることができる。なお、CaOやMgOといったアルカリ土類金属酸化物を含まないガラスであることが望ましい。このようなガラスとしては、例えばHOYA株式会社製のN5ガラス(商品名)を挙げることができる。
また、次世代基板の特性として耐熱性を求められる場合もある。この場合の耐熱性ガラスとしては、例えば、モル%表示にて、SiOを50〜75%、Alを0〜6%、BaOを0〜2%、LiOを0〜3%、ZnOを0〜5%、NaOおよびKOを合計で3〜15%、MgO、CaO、SrOおよびBaOを合計で14〜35%、ZrO、TiO、La、Y、Yb、Ta、NbおよびHfOを合計で2〜9%、含み、モル比[(MgO+CaO)/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.85〜1の範囲であり、且つモル比[Al/(MgO+CaO)]が0〜0.30の範囲であるガラスを好ましく用いることができる。
また、SiOを56〜75モル%、Alを1〜11モル%、LiO、NaOおよびKOからなる群から選ばれるアルカリ金属酸化物を合計で6〜15モル%、MgO、CaOおよびSrOからなる群から選ばれるアルカリ土類金属酸化物を合計で10〜30モル%、ZrO、TiO、Y、La、Gd、NbおよびTaからなる群から選ばれる酸化物を合計で0%超かつ10モル%以下、含むガラスであってもよい。
本発明においては、上記鏡面研磨加工およびリンス後のガラス基板の表面は、算術平均表面粗さRaが0.20nm以下、特に0.15nm以下である鏡面とされることが好ましい。更に、最大粗さRmaxが2.0nm以下である鏡面とされることが好ましい。なお、本発明においてRa、Rmaxというときは、日本工業規格(JIS)B0601に準拠して算出される粗さのことである。
また、本発明において表面粗さ(例えば、最大粗さRmax、算術平均粗さRa)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲を512×256ピクセルの解像度で測定したときに得られる表面形状の表面粗さとすることが実用上好ましい。
また、本発明においては、材料強度の点から化学強化やエッチングにより強度を向上させる工程を付加してもよい。アモルファスガラスを化学強化する場合は上記第1研磨工程後あるいは上記第2研磨工程(最終研磨工程)後に施すことが可能である。エッチングによる強化の場合は、上記第1研磨工程後に行うことができる。
なお、化学強化工程後にリンス工程を含む第2研磨工程を行う場合は、低粗さ、低欠陥と強度との両立が図れるので特に好ましい。ここで「欠陥」とは、スクラッチやパーティクル等のことである。
なお、化学強化工程後に主表面の研磨工程を行う場合、圧縮応力層(後述)を残すように研磨する(例えば研磨取り代が0.1〜3μm程度)とより高い強度が得られるので好ましいが、主表面の圧縮応力層がなくなってもよい。少なくとも端部の圧縮応力層による効果は残るためである。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板は、より厳しい環境での使用にも耐えうるように、強度のよりいっそうの向上が求められており、例えば化学強化による強度向上を行うことが好ましい。化学強化処理の方法としては、例えば、ガラス転移点の温度を超えない温度領域、例えば摂氏300度以上500度以下の温度で、イオン交換を行う低温型イオン交換法などが好ましい。化学強化処理とは、溶融させた化学強化塩とガラス基板とを接触させることにより、化学強化塩中の相対的に大きな原子半径のアルカリ金属元素と、ガラス基板中の相対的に小さな原子半径のアルカリ金属元素とをイオン交換し、ガラス基板の表層に該イオン半径の大きなアルカリ金属元素を浸透させ、ガラス基板の表面に圧縮応力を生じさせる(圧縮応力層形成)処理のことである。化学強化処理されたガラス基板は耐衝撃性に優れているので、例えばモバイル用途のHDDに搭載するのに特に好ましい。化学強化塩としては、硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属硝酸塩を好ましく用いることができる。
また、本発明は、以上の磁気ディスク用ガラス基板を用いた磁気ディスクの製造方法についても提供する。本発明において磁気ディスクは、本発明による磁気ディスク用ガラス基板の上に少なくとも磁性層を形成して製造される。磁性層の材料としては、異方性磁界の大きな六方晶系であるCoCrPt系やCoPt系強磁性合金を用いることができる。磁性層の形成方法としてはスパッタリング法、例えばDCマグネトロンスパッタリング法によりガラス基板の上に磁性層を成膜する方法を用いることが好適である。またガラス基板と磁性層との間に、下地層を介挿することにより磁性層の磁性グレインの配向方向や磁性グレインの大きさを制御することができる。例えば、RuやTiを含む六方晶系下地層を用いることにより、磁性層の磁化容易方向を磁気ディスク面の法線に沿って配向させることができる。この場合、垂直磁気記録方式の磁気ディスクが製造される。下地層は磁性層同様にスパッタリング法により形成することができる。
また、磁性層の上に、保護層、潤滑層をこの順に形成するとよい。保護層としてはアモルファスの水素化炭素系保護層が好適である。例えばプラズマCVD法により保護層を形成することができる。また、潤滑層としては、パーフルオロポリエーテル化合物の主鎖の末端に官能基を有する潤滑剤を用いることができる。取り分け、極性官能基として水酸基を末端に備えるパーフルオロポリエーテル化合物を主成分とすることが好ましい。潤滑層はディップ法により塗布形成することができる。
本発明によって得られる磁気ディスク用ガラス基板を利用することにより、信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、アモルファスガラス基板を用いる場合について説明する。
所定の寸法の円盤状に加工されたガラスディスク基板から製造する場合について、2.5インチ型(外径65mm、内径20mm、板厚0.8mm)の大きさの基板を例にとって説明する。
内外径加工を行った板厚1mmのガラス基板を元基板とする。まずラッピングにより板厚0.83mmまで研磨する。
ラッピングの加工条件は以下のとおりである。加工後、洗浄、乾燥する。このとき仕上げ面粗さはRa=0.3μmであった。なお、表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲を512×256ピクセルの解像度で測定した(以下、同様)。
<ラッピング条件>
・ラッピング加工機:スピードファム社製 両面9B研磨機
・定盤:鋳鉄製
・加工液:ラッピングサンド GC#1500 濃度10重量%(純水希釈)
・加工圧力:100gf/cm(9.8kPa)
次に、基板主表面の研磨工程を行った。研磨工程は第1研磨工程、第2研磨工程の2段階で行った。第1研磨工程の研磨条件は次の通りで仕上げ面粗さRa=0.6nmであった。
<第1研磨条件>
・研磨装置:スピードファム社製 両面9B研磨機
・研磨パッド:発泡ウレタン研磨用パッド
・スラリー:酸化セリウム砥粒 平均粒径1.5μm 濃度10重量%(純水希釈)
・加工圧力:100gf/cm(9.8kPa)
・研磨時間:4分
なお、本実施例に使用した上記両面研磨装置は、前述の図1に示すような一般的に知られている研磨装置と同様の構造のものである。
洗浄後、第2研磨工程を以下の条件で行った。
<第2研磨条件>
・研磨装置:スピードファム社製 両面9B研磨機
・研磨パッド:発泡ウレタン研磨用パッド
・発泡ポアの平均開口径:15μm
・スラリー:日産化学社製 コロイダルシリカST-ZL2 平均粒径80nm 砥粒濃度10重量%
・定盤へのスラリー供給量:0.05ml/分/cm
・加工圧力:9.8kPa
・研磨時間:5分
次に、上記第2研磨と同じ両面研磨装置を用いて、以下の条件でリンス工程を行った。なお、研磨工程からリンス工程へ移行する際は、加工圧力以外の研磨条件を維持しつつ、加工圧力を徐々に低下させて、リンス工程時の加工圧力へ変更するようにし、さらに、加工圧力が変更されてからリンス液の供給を開始した。
<リンス工程条件>
・スラリー中の砥粒濃度:2重量% (砥粒の種類は研磨工程と同一)
・加工圧力:4.9kPa
・定盤へのスラリー供給量:0.25ml/分/cm
・加工時間:1分
上記リンス工程終了後、pH9の水酸化ナトリウム溶液によるブラシ洗浄を行い、その後、精密洗浄工程(アルカリ洗剤と超音波を組み合わせた洗浄、超純水リンス、マランゴニー乾燥を有する洗浄工程)により洗浄、乾燥を行った。
こうして得られた1000枚のガラス基板のパーティクルとスクラッチを表面検査装置により測定した結果、パーティクルは78個/面で、スクラッチの発生率は0.7%であった。なお、数値はいずれも得られたガラス基板1000枚の平均値である(以下、同様)。また、表面検査装置はOSA(KLA-Tencor社)を使用した。
次に、上記実施例で得られた本発明の磁気ディスク用ガラス基板に以下の成膜工程を施して、垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。
すなわち、上記ガラス基板上に、Ti系合金薄膜からなる付着層、CoTaZr合金薄膜からなる軟磁性層、Ru薄膜からなる下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、カーボン保護層、潤滑層を順次成膜した。保護層は、磁気記録層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。また、潤滑層は、アルコール変性パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。
得られた磁気ディスクについて、DFHヘッドを用いたサーティファイテストを実施した。このテストによって、磁気ディスクのデータエリアにおいて、磁気信号の読み書きに関してエラーとなる場所の数を調査することができる。エラーの数は、基板表面に存在するスクラッチやパーティクル等の影響を受けると考えられる。
(比較例1)
上記リンス工程を省いたこと以外は実施例1と同様にしてガラス基板を作製した。得られた1000枚のガラス基板のパーティクルとスクラッチを前述の表面検査装置により測定した結果、パーティクルは1100個/面で、スクラッチの発生率は4%であった。
また、このガラス基板を用いて実施例1と同様に垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。得られた磁気ディスクについて、実施例1と同様にDFHヘッドを用いたサーティファイテストを実施した。
その結果、実施例1の磁気ディスクは比較例1に比べてエラー数は平均12%少なく、本発明の効果が確認された。
(実施例2)
上記実施例1における第1研磨工程と第2研磨工程との間に、以下の化学強化工程を実施した。
[化学強化工程]
上記第1研磨後の洗浄・乾燥を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化液を380℃に加熱し、上記洗浄・乾燥済みのガラス基板を約4時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたガラス基板を硫酸、中性洗剤、純水、純水、IPA、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
第1研磨工程と第2研磨工程との間に上記化学強化工程を実施したこと以外は、実施例1と同様にしてガラス基板を作製した。なお、第2研磨工程後の主表面において、圧縮応力層は十分に残っていた。得られた1000枚のガラス基板のパーティクルとスクラッチを前述の表面検査装置により測定した結果、パーティクルは35個/面で、スクラッチの発生率は0.3%であった。特にスクラッチ発生率は実施例1よりもさらに低減できた。このように、化学強化と本発明のリンス工程の組み合わせによって、強度向上と、スクラッチ低減を達成できる。
また、このガラス基板を用いて実施例1と同様に垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。得られた磁気ディスクについて、実施例1と同様にDFHヘッドを用いたサーティファイテストを実施した。
その結果、実施例2の磁気ディスクは比較例1に比べてエラー数は平均20%少なく、本発明の効果が確認された。
(実施例3)
本実施例では、NiPメッキ基板について説明する。
所定の寸法の円盤状に加工された基板から製造する場合について、2.5インチ型(外径65mm、内径20mm、板厚0.8mm)を例にとって説明する。
5086系アルミ合金を所定の寸法に加工した後、洗浄し、リン濃度が19at%のNiP無電解メッキを15μm形成する。その後、以下の研磨条件で第1研磨工程を行う。研磨量として3μmの鏡面研磨加工を行った。
<第1研磨条件>
・研磨装置:スピードファム社製 両面9B研磨機
・研磨パッド:発泡ウレタン研磨用パッド
・スラリー:平均粒径8μmのアルミ(濃度10重量%)に過酸化水素(1重量%)と有機酸を添加し、pH2とした。
・加工圧力:9.8kPa
次に、洗浄、乾燥後、第2研磨工程を以下の条件で行った。
<第2研磨条件>
・研磨装置:スピードファム社製 両面9B研磨機
・研磨パッド:発泡ウレタン研磨用パッド
・スラリー:日産化学社製 コロイダルシリカST-ZL2(平均粒径80nm 砥粒濃度8重量%)に過酸化水素(1重量%)と有機酸を添加し、pH2とした。
・定盤へのスラリー供給量:0.05ml/分/cm
・加工圧力:8kPa
・研磨時間:5分
次に、上記第2研磨と同じ両面研磨装置を用いて、以下の条件でリンス工程を行った。
<リンス工程条件>
・スラリーの砥粒濃度:2重量%
・加工圧力:4.9kPa
・定盤へのスラリー供給量:0.25ml/分/cm
・加工時間:1分
上記リンス工程終了後、pH3の酸性洗剤によるブラシ洗浄を行い、その後、精密洗浄工程(アルカリ洗剤と超音波を組み合わせた洗浄、超純水リンス、マランゴニー乾燥を有する洗浄工程)により洗浄、乾燥を行った。
こうして得られた1000枚のNiP基板のパーティクルとスクラッチを前述の表面検査装置により測定した結果、パーティクルは235個/面で、スクラッチの発生率は2.7%であった。
また、このNiP基板を用いて実施例1と同様に垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。得られた磁気ディスクについて、実施例1と同様にDFHヘッドを用いたサーティファイテストを実施した。
(比較例2)
上記リンス工程を省いたこと以外は実施例3と同様にNiP基板を作製した。得られた1000枚のNiP基板のパーティクルとスクラッチを前述の表面検査装置により測定した結果、パーティクルは2100個/面で、スクラッチの発生率は5%であった。
また、このNiP基板を用いて実施例1と同様に垂直磁気記録用磁気ディスクを得た。得られた磁気ディスクについて、実施例1と同様にDFHヘッドを用いたサーティファイテストを実施した。
その結果、実施例3の磁気ディスクは比較例2に比べてエラー数は平均8%少なく、本発明の効果が確認された。
以上のような製造条件により、清浄で、欠陥の少ない、低コストの基板を提供することが可能になる。
1 下定盤
2 研磨パッド
3 上定盤
4 太陽歯車
5 内歯歯車
6 キャリア
7 基板
8 スラリー溜め
9 スラリー
10 純水
11 スラリー供給バルブ
12 純水供給バルブ

Claims (11)

  1. 研磨砥粒を含むスラリーと、一対の研磨パッドが配備された定盤とを用いて、前記スラリーを前記研磨パッドと基板の間へ供給しつつ、前記一対の研磨パッドで前記基板の主表面を挟んで研磨する研磨処理と、該研磨処理の後に実施され、加工圧力が2kPa〜6kPa、且つ、スラリー中の砥粒濃度が0(零)超、5重量%以下、且つ、定盤の単位面積当りに供給されるスラリー流量が0.25ml/分/cm〜5ml/分/cmで、基板の主表面を処理するリンス処理を含み、
    前記リンス処理のスラリー中の砥粒濃度を前記研磨処理のスラリー中の砥粒濃度に対する濃度比として、前記リンス処理のスラリー中の砥粒濃度を前記研磨処理のスラリー中の砥粒濃度で除した比で表したとき、この濃度比が0.5以下である
    ことを特徴とする基板の製造方法。
  2. 前記リンス処理時の加工圧力は、前記研磨処理時の加工圧力の60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
  3. 前記研磨砥粒としてコロイダルシリカを用い、前記リンス処理後の基板主表面粗さがRaで0.2nm以下となるように前記研磨処理および前記リンス処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
  4. 前記基板の製造方法は、さらに基板の化学強化処理を含み、該化学強化処理後に前記研磨処理と前記リンス処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板の製造方法。
  5. 前記研磨処理におけるスラリー中の砥粒濃度は、少なくとも前記リンス処理時よりも高く、40重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板の製造方法。
  6. 前記基板は、磁気ディスク用ガラス基板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板の製造方法。
  7. 前記磁気ディスク用ガラス基板は、化学強化可能なアモルファスのアルミノシリケートガラスからなることを特徴とする請求項6に記載の基板の製造方法。
  8. 前記基板は、NiPメッキ基板であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の基板の製造方法。
  9. 一対の研磨パッドが配備された定盤を備えた研磨装置を用い、研磨砥粒を含むスラリーを前記研磨パッドとガラス基板の間へ供給しつつ、前記一対の研磨パッドで前記ガラス基板の主表面を挟んで研磨する研磨処理と、
    該研磨処理の後に、前記研磨装置を用い、前記研磨処理時のスラリーよりも低い濃度の研磨砥粒を含むスラリーを前記研磨パッドと前記ガラス基板の間へ供給しつつ、前記一対の研磨パッドで前記ガラス基板の主表面を挟んで摺動することによって前記ガラス基板の主表面に付着した前記研磨砥粒を除去するリンス処理を有し、
    前記リンス処理における加工圧力は、前記研磨処理における加工圧力の60%以下であり、
    前記リンス処理のスラリー中の砥粒濃度を前記研磨処理のスラリー中の砥粒濃度に対する濃度比として、前記リンス処理のスラリー中の砥粒濃度を前記研磨処理のスラリー中の砥粒濃度で除した比で表したとき、この濃度比が0.5以下である
    ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  10. 前記リンス処理時における定盤の単位面積当りのスラリー供給量は、前記研磨処理時における定盤の単位面積当りのスラリー供給量の5倍以上であることを特徴とする請求項9に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  11. 請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法によって得られた基板上、もしくは請求項9又は10に記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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