JP6041290B2 - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
従来、磁気ディスク用ガラス基板の主表面を酸化セリウム(CeO2)や酸化ジルコニウム(ZrO2)やコロイダルシリカ(SiO2)等のさまざまな砥粒を含む遊離砥粒で研磨することは知られている。
また、下記特許文献2には、酸化セリウムを用いた研磨工程の後、アスコルビン酸、無機酸、塩化アルミニウムの3成分を少なくとも含む洗浄液でガラス基板を洗浄することによって、基板表面をエッチングすることなくかつ酸化セリウムを選択的に溶解する技術が記載されている。
磁気ヘッドの浮上量(磁気ヘッドと媒体(磁気ディスク)表面との間隙)の大幅な低下(低浮上量化)が挙げられる。こうすることで、磁気ヘッドと媒体の磁性層との距離が近づくため、より小さい磁性粒子の信号も拾うことができるようになり、高記録密度化を達成することができる。近年、従来以上の低浮上量化を実現するために、DFH(Dynamic Flying Height)という機能が磁気ヘッドに搭載されている。これは、磁気ヘッドの記録再生素子部の近傍に極小のヒーター等の加熱部を設けて、記録再生素子部周辺のみを媒体表面方向に向けて突き出す機能である。今後、このDFH機能によって、磁気ヘッドの素子部と媒体表面との間隙は、2nm未満と極めて小さくなると見られている。このような状況下で、基板表面の平均粗さを極めて小さくしたところで、従来問題とならなかった極く小さな異物付着等による表面欠陥が存在すると、そのまま媒体表面においても表面欠陥となるので、磁気ヘッドの衝突の危険性が高まる。
本発明者は、ガラス基板(製品)の主表面上に酸化セリウム砥粒が残留しているものと推察して、最終洗浄後のガラス基板の主表面を詳細に調査したが、酸化セリウム砥粒は発見されなかった。
(構成1)
酸化セリウムを研磨剤として含む遊離砥粒を用いてガラス基板の端面又は主表面を研磨する研磨工程と、該研磨工程後のガラス基板をアルカリ金属イオンとリン酸イオンとを含む水溶液に接触させる接触工程と、該接触工程の後に前記ガラス基板を洗浄する洗浄工程と、を少なくとも有することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
前記リン酸イオンは、オルソリン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、テトラリン酸イオン、ヘキサメタリン酸イオンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする構成1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
(構成3)
前記アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオン又はカリウムイオンであることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
前記洗浄工程は、還元剤と無機酸とフッ素イオンとを少なくとも含む洗浄液を用いることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
(構成5)
前記洗浄工程は、最後にガラス基板を乾燥する工程を含むことを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
前記洗浄工程の後、ガラス基板の化学強化を行うことを特徴とする構成1乃至5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
(構成7)
コロイダルシリカを含む研磨砥粒を用いてガラス基板の主表面を研磨する研磨工程をさらに有することを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
構成1乃至7のいずれかに記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法である。
磁気ディスク用ガラス基板は、通常、粗研削工程(粗ラッピング工程)、形状加工工程、精研削工程(精ラッピング工程)、端面研磨工程、主表面研磨工程(第1研磨工程、第2研磨工程)、化学強化工程、等を経て製造される。
この磁気ディスク用ガラス基板の製造は、まず、溶融ガラスからダイレクトプレスにより円盤状のガラス基板(ガラスディスク)を成型する。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板(ガラスディスク)を得てもよい。次に、この成型したガラス基板(ガラスディスク)に寸法精度及び形状精度を向上させるための研削(ラッピング)を行う。この研削工程は、通常両面ラッピング装置を用い、ダイヤモンド等の硬質砥粒を用いてガラス基板主表面の研削を行う。こうしてガラス基板主表面を研削することにより、所定の板厚、平坦度に加工するとともに、所定の表面粗さを得る。
これらのアルカリ金属イオンは、ガラス表面に対する付着力が強く、ガラス基板表面に付着して覆うことによって、酸化セリウム砥粒のガラス表面への再付着を抑制することができる。
本発明において、リン酸イオンの含有量は、0.001〜1mol / Lであることが好ましく、アルカリ金属イオンの含有量は、0.001〜1mol / Lであることが好ましい。
また、上記水溶液のpHは、アルカリ金属イオンを基板表面に十分に吸着させること、及び基板表面粗さを悪化させないことの理由から、6〜12の範囲に調整されることが好適である。
また、この浸漬による方法に限らず、例えばシャワーやジェット洗浄により、上記水溶液を研磨工程後のガラス基板に接触させるようにすることもできる。例えば、上記端面研磨工程後に行う接触工程ではガラス基板に対してこのような洗浄方法を適用することも好適である。
上記接触工程の後に、ガラス基板に対して、還元剤と無機酸とフッ素イオンとを少なくとも含む洗浄液を用いた洗浄工程を実施することにより、上記接触工程においてガラス基板から前記水溶液(保管液)中に分散した残留酸化セリウム砥粒を洗浄溶解除去することが容易になり、ガラス基板への再付着を防止することができる。
なお、本発明において、上記平均粒径とは、光散乱法により測定された粒度分布における粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが50%となる点の粒径(以下、「累積平均粒子径(50%径)」と呼ぶ。)を言う。本発明において、累積平均粒子径(50%径)は、具体的には、粒子径・粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)を用いて測定して得られる値である。
例えば図3は、ガラス基板の鏡面研磨工程に用いることができる遊星歯車方式の両面研磨装置の概略構成を示す縦断面図である。図3に示す両面研磨装置は、太陽歯車2と、その外方に同心円状に配置される内歯歯車3と、太陽歯車2及び内歯歯車3に噛み合い、太陽歯車2や内歯歯車3の回転に応じて公転及び自転するキャリア4と、このキャリア4に保持された被研磨加工物1を挟持可能な研磨パッド7がそれぞれ貼着された上定盤5及び下定盤6と、上定盤5と下定盤6との間に研磨液を供給する研磨液供給部(図示せず)とを備えている。
また、本発明において表面粗さ(例えば、最大粗さRmax、算術平均粗さRa)は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの範囲を256×256ピクセルの解像度で測定したときに得られる表面形状の表面粗さとすることが実用上好ましい。
本発明によって得られる磁気ディスク用ガラス基板を利用することにより、ミッシングエラーの発生を低減させた信頼性の高い磁気ディスクを得ることができる。
(実施例1)
以下の(1)粗ラッピング工程(粗研削工程)、(2)形状加工工程、(3)精ラッピング工程(精研削工程)、(4)端面研磨工程、(5)主表面第1研磨工程、(6)化学強化工程、(7)主表面第2研磨工程、を経て本実施例の磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.0mmの円盤状のアルミノシリゲートガラスからなるガラス基板を得た。なお、このようなダイレクトプレス以外に、ダウンドロー法やフロート法で製造された板ガラスから所定の大きさに切り出してガラス基板を得てもよい。このアルミノシリケートガラスとしては、SiO2:58〜75重量%、Al2O3:5〜23重量%、Li2O:3〜10重量%、Na2O:4〜13重量%を含有する化学強化用ガラスを使用した。
次に、円筒状の砥石を用いてガラス基板の中央部分に孔を空けると共に、外周端面の研削をして直径を65mmφとした後、外周端面および内周端面に所定の面取り加工を施した。このときのガラス基板端面の表面粗さは、Rmaxで4μm程度であった。なお、一般に、2.5インチ型HDD(ハードディスクドライブ)では、外径が65mmの磁気ディスクを用いる。
この精ラッピング工程は両面ラッピング装置を用い、粒度#1000のダイヤモンド砥粒をアクリル樹脂で固定したペレットが貼り付けられた上下定盤の間にキャリアにより保持したガラス基板を密着させて行なった。
具体的には、荷重を100kg程度に設定して、上記ラッピング装置のサンギアとインターナルギアを回転させることによって、キャリア内に収納したガラス基板の両面を、表面粗さRmaxで2μm程度、Raで0.2μm程度にラッピングした。
上記ラッピング工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、水の各洗浄槽(超音波印加)に順次浸漬して、超音波洗浄を行なった。
次いで、ブラシ研磨により、ガラス基板を回転させながらガラス基板の端面(内周、外周)の表面の粗さを、Rmaxで1μm、Raで0.3μm程度に研磨した。そして、上記端面研磨を終えたガラス基板の表面を水洗浄した。
次に、上述したラッピング工程で残留した傷や歪みを除去するための第1研磨工程を前述の図3に示す両面研磨装置を用いて行なった。両面研磨装置においては、研磨パッド7が貼り付けられた上下研磨定盤5,6の間にキャリア4により保持したガラス基板を密着させ、このキャリア4を太陽歯車2と内歯歯車3とに噛合させ、上記ガラス基板を上下定盤5,6によって挟圧する。その後、研磨パッドとガラス基板の研磨面との間に研磨液を供給して回転させることによって、ガラス基板が定盤5,6上で自転しながら公転して両面を同時に研磨加工するものである。具体的には、ポリシャとして硬質ポリシャ(硬質発泡ウレタン)を用い、第1研磨工程を実施した。研磨液としては、酸化セリウム(平均粒径1μm)を研磨剤として10重量%分散したRO水中にさらにエタノール系の低分子量の界面活性剤を添加して中性に調整されたものを使用した。荷重は100g/cm2、研磨時間は15分とした。
次に、上記洗浄を終えたガラス基板に化学強化を施した。化学強化は硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合した化学強化液を用意し、この化学強化溶液を380℃に加熱し、上記洗浄・乾燥済みのガラス基板を約4時間浸漬して化学強化処理を行なった。化学強化を終えたガラス基板を硫酸、中性洗剤、純水、純水、の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄した。
次いで上記の第1研磨工程で使用したものと同じ両面研磨装置を用い、ポリシャを軟質ポリシャ(スウェード)の研磨パッド(アスカーC硬度で72の発泡ポリウレタン)に替えて第2研磨工程を実施した。この第2研磨工程は、上述した第1研磨工程で得られた平坦な表面を維持しつつ、例えばガラス基板主表面の表面粗さをRmaxで2nm程度以下の平滑な鏡面に仕上げるための鏡面研磨加工である。研磨液としては、コロイダルシリカ(平均粒径15nm)を研磨剤として15重量%分散したRO水中に、硫酸を添加して酸性(pH=2)に調整されたものを使用した。なお、荷重は100g/cm2、研磨時間は10分とした。
上記第2研磨工程を終えたガラス基板の超音波洗浄を行い、乾燥した。
また、得られた5枚のガラス基板に対して異物欠陥の評価を実施した。得られたガラス基板の端面および主表面をそれぞれ顕微鏡とOSA(Optical Surface Analyzer)にて観察し、検出された表面欠陥からそれぞれ10ポイントを選択して原子間力顕微鏡(AFM)及びSEM/EDXで分析した。本実施例により得られた5枚のガラス基板はいずれも、その主表面および端面のいずれからも酸化セリウムの粒子は発見されなかった。
すなわち、上記ガラス基板上に、Ti系合金薄膜からなる付着層、CoTaZr合金薄膜からなる軟磁性層、Ru薄膜からなる下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、カーボン保護層、潤滑層を順次成膜した。保護層は、磁気記録層が磁気ヘッドとの接触によって劣化することを防止するためのもので、水素化カーボンからなり、耐磨耗性が得られる。また、潤滑層は、アルコール変性パーフルオロポリエーテルの液体潤滑剤をディップ法により形成した。
[ミッシングエラー試験]
作成した磁気ディスクをDFHヘッドとともにHDDに組み込み、HDDを製造した。磁気ヘッド素子部と磁気ディスク表面との間隙が2nmとなるようにDFH制御した上で、主表面上に所定の周波数の信号を書き込んだ後、その信号を読み取り、信号強度に対して所定の閾値を設けることによってミッシングエラーとされる数を検出した。
その結果、本実施例では10個以下であった。
実施例1における上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、RO水中にトリポリリン酸ナトリウムを添加(添加量0.1mol /L)することによりトリポリリン酸イオンおよびナトリウムイオンを含むアルカリ性(pH=10)に調整された保管液に浸漬させたこと以外は実施例1と同様にして主表面研磨を行い、これ以外の工程については実施例1と同様にして実施し、5枚のガラス基板を作製した。
得られた5枚のガラス基板に対して実施例1と同様に異物欠陥の評価を実施した。本実施例により得られた5枚のガラス基板はいずれも、その主表面および端面のいずれからもCeO2粒子は発見されなかった。
また、本実施例により作製したガラス基板を用いて、実施例1と同様に垂直磁気記録用磁気ディスクを作製した。
得られた磁気ディスクについて、実施例1と同様のミッシングエラー試験を行った。その結果、本実施例では10個以下であった。
上記第1研磨工程を終えたガラス基板を、ヘキサメタリン酸イオンおよびナトリウムイオンを含む保管液に浸漬させる接触工程を省き、直ぐに、硫酸、アスコルビン酸およびフッ酸を含む洗浄液(水溶液)槽に浸漬し、さらに純水、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、超音波洗浄し、乾燥した。
これ以外は実施例1と同様にして磁気ディスク用ガラス基板を得た。
得られた5枚のガラス基板に対して実施例1と同様に異物欠陥の評価を実施した結果、本比較例により得られた5枚のガラス基板はいずれからも、CeO2が発見され、特に端面からは全てのディスクにおいてCeO2が発見された。
さらに、本比較例により作製したガラス基板を用いて、実施例1と同様に垂直磁気記録用磁気ディスクを作製した。
得られた磁気ディスクについて、実施例1と同様のミッシングエラー試験を行った。その結果、本比較例ではミッシングエラーの数が1つの面に対する平均で10個以上となり、不合格であった。
一方、比較例においては、酸化セリウム砥粒の残留による異物欠陥の発生が特に基板端面において顕著であり、本比較例のガラス基板を用いて作製した垂直磁気記録用磁気ディスクにおいては、ミッシングエラーの発生率が高く、信頼性が低い。
2 太陽歯車
3 内歯歯車
4 キャリア
5 上定盤
6 下定盤
7 研磨パッド
11 基板の主表面
12,13 基板の端面
Claims (9)
- 酸化セリウムを研磨剤として含む遊離砥粒を用いてガラス基板の端面又は主表面を研磨する研磨工程と、該研磨工程後のガラス基板をアルカリ金属イオンとリン酸イオンとを含むpH6以上10以下の水溶液に接触させる接触工程と、該接触工程の後に、酸化セリウムを溶解除去する洗浄液を用いて前記ガラス基板を洗浄する洗浄工程と、を少なくとも有することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記リン酸イオンは、オルソリン酸イオン、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン、テトラリン酸イオン、ヘキサメタリン酸イオンから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記リン酸イオンの含有量は、0.001〜1mol/Lであることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記アルカリ金属イオンは、ナトリウムイオン又はカリウムイオンであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記洗浄工程は、還元剤と無機酸とフッ素イオンとを少なくとも含む洗浄液を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記洗浄工程は、最後にガラス基板を乾燥させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 前記洗浄工程の後、ガラス基板の化学強化を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- コロイダルシリカを含む研磨砥粒を用いてガラス基板の主表面を研磨する研磨工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
- 請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法によって得られた磁気ディスク用ガラス基板上に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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