JP6136674B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、具体的には、ポリカーボネートとポリエステルとを含む熱可塑性樹脂組成物、および当該熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
現在、ポリエステルやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂およびその樹脂組成物は、優れた成形加工性、機械的物性、耐熱性、耐候性、外観性、衛生性および経済性などの観点から、容器、包装用フィルム、家電機器、OA機器、AV機器、電気部品、電子部品および自動車部品などの成形材料として幅広い分野で使用されている。そのため、このような熱可塑性樹脂およびその樹脂組成物の成形加工品の使用量は多く、年々増加の一途を辿っている。したがって、使用済みとなって廃棄される成形加工品の量も益々増加し、深刻な社会問題となっている。
近年、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)」や「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」などの法律が相次いで施行されたことにより、このような熱可塑性樹脂およびその樹脂組成物の成形加工品のマテリアルリサイクル技術に対する関心が高まってきている。特に、使用量が急速に増加しているポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)を材料とするPETボトルのマテリアルリサイクル技術の確立は急務とされている。また、CD、CD−R、DVDおよびMDのようなポリカーボネート(以下、「PC」ともいう)を材料とする光学記録媒体製品(光ディスク)の普及に伴い、これらの成形加工時に排出される端材の再利用方法や、廃棄物となった光ディスクから反射層、記録層などを剥離した後に得られるPCを再利用する方法、などの検討がなされている。
これらの樹脂の再利用の形態には、両者の混合による再利用が挙げられる。しかしながら、ポリカーボネートは、ポリエステルとは相溶しにくいため、これらを混合してなる樹脂組成物がその特長を発現しにくい場合がある。そこで、ポリカーボネートとポリエステルとの樹脂組成物に、適切な相溶化剤を配合することが提案されている(特許文献1および2を参照)。また、ポリエステルやポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂およびその樹脂組成物が家電機器やOA機器などの構成部材に使用される場合においては、十分な難燃性および衝撃強度を有することが要求されている。熱可塑性樹脂組成物に難燃性を付与する技術には、ホウ酸亜鉛粒子を単独で、または難燃剤と併せて熱可塑性樹脂組成物に配合すること、が知られている(例えば、特許文献3参照)。また、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度を高める技術には、結晶性ポリエステルまたは結晶性ポリアミドに、反応性官能基を有するブロック共重合体を混合すること、が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開昭60−130645号公報 特開2006−299061号公報 特開2001−192567号公報 国際公開第2002/092696号
しかしながら、ポリカーボネートとポリエステルとの樹脂組成物において、ホウ酸亜鉛粒子と難燃剤を併用しても、十分な難燃性が得られない場合がある。難燃性を高めるために、ホウ酸亜鉛粒子または難燃剤の含有量を増やすと、衝撃強度が大幅に低下することがある。
本発明は、ポリカーボネートおよびポリエステルを含有し、かつ難燃性と衝撃強度の両方を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート、ポリエステル、相溶化剤、増靭剤、難燃剤および表面処理ホウ酸化合物粒子を含有する。上記表面処理ホウ酸化合物粒子は、下記式(1)で表されるホウ酸化合物の粒子と、当該ホウ酸化合物の粒子の表面に形成される有機層とを有する。上記ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径は、5〜10μmであり、上記相溶化剤は、SAN−g−GMAまたはGMA−MA−PEである。なお、式(1)中、Xは、ZnまたはCaを表し、nは、0〜5の数を表す。
2XO・3B・nHO (1)
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、ポリカーボネート、ポリエステル、相溶化剤、増靭剤、難燃剤および表面処理ホウ酸化合物粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。上記表面処理ホウ酸化合物粒子は、上記式(1)で表されるホウ酸化合物の粒子と、当該ホウ酸化合物の粒子の表面に形成される有機層とを有する。上記ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径は、5〜10μmであり、上記相溶化剤は、SAN−g−GMAまたはGMA−MA−PEである。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物には、難燃剤と表面処理ホウ酸化合物粒子との両方が均一に分散する。このため、所期の難燃性を実現するための両材料の含有量を最小限に抑えることが可能である。したがって、両材料による衝撃強度の低減も最小限に抑えられる。よって、本発明によれば、ポリカーボネートおよびポリエステルを含有し、かつ難燃性と衝撃強度の両方を有する熱可塑性樹脂組成物が提供される。
図1Aは、本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂組成物の内部構造を模式的に示す図であり、図1Bは、着火当初の当該熱可塑性樹脂組成物の内部構造を模式的に示す図であり、図1Cは、延焼途中の当該熱可塑性樹脂組成物の内部構造を模式的に示す図であり、図1Dは、延焼後自然鎮火した当該熱可塑性樹脂組成物の内部構造を模式的に示す図である。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート、ポリエステル、相溶化剤、増靭剤、難燃剤および表面処理ホウ酸化合物粒子を含有する。
[ポリカーボネート]
ポリカーボネートは、一種でもそれ以上でもよい。ポリカーボネートは、例えば、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる。または、ポリカーボネートは、市販品であってもよいし、再生材であってもよい。ここで言う「再生材」とは、ポリカーボネートを含む製品の一部または全部から回収されたポリカーボネートを言う。再生材は、本発明の効果が得られる範囲において、不純物などの他の成分を含有していてもよい。ポリカーボネートの粘度平均分子量は、1×10〜1×10であることが好ましい。ポリカーボネートの粘度平均分子量は、ポリカーボネートの溶液を毛細管粘度計で測定したときの測定値から求められる。
芳香族二価フェノール系化合物の例には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、および、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、が含まれる。
[ポリエステル]
ポリエステルは、一種でもそれ以上でもよい。ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジオールや脂環族ジオールなどのジオール成分とのエステル反応により得られる。
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸および2,5−ピリジンジカルボン酸が含まれる。
脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールが含まれる。脂環族ジオールの例には、1,4−シクロヘキサンジメタノールが含まれる。
または、ポリエステルは、市販品であってもよいし、再生材であってもよい。ここで言う「再生材」とは、ポリエステルを含む製品の一部または全部から回収されたポリエステルを言う。再生材は、本発明の効果が得られる範囲において、不純物などの他の成分を含有していてもよい。ポリエステルの再生材の例には、ポリエチレンテレフタレートボトル(ペットボトル)の再生材、および、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ペットフィルム)の再生材、が含まれる。
ポリエステルの固有粘度は、成形性に優れ、物性バランスが良好な熱可塑性樹脂組成物を得る観点から、0.70〜1.9であることが好ましく、1.0〜1.7であることがより好ましい。上記固有粘度は、例えば、0.5質量%のポリエステルのo−クロロフェノール溶液を25℃で毛細管粘度計によって測定したときの測定値から求められる。
ポリエステルの例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、および、共重合ポリエステルが含まれる。共重合ポリエステルの例には、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、および、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートが含まれる。これらの中でも、相溶性の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートが好ましい。
[相溶化剤]
相溶化剤は、ポリカーボネートに対するポリエステルの相溶性を高める。相溶化剤は、例えば、ポリカーボネートおよびポリエステルの一方または両方の官能基と反応する反応性官能基を有する化合物である。相溶化剤は、相溶性の向上の観点から、上記反応性官能基を有する樹脂であることが好ましい。
上記反応性官能基は、例えば、ポリカーボネートまたはポリエステルのエステル基や、その加水分解によるカルボン酸基などと反応する官能基である。反応性官能基の例には、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基およびスルホン酸基が含まれる。反応性官能基は、一種でもそれ以上でもよい。この中でも、エポキシ基、酸無水物基およびオキサゾリン基は、反応性が高く、しかも分解や架橋などの副反応が少ないことから、より好ましい。反応性官能基がポリカーボネートおよびポリエステルの一方または両方と反応することにより、ポリカーボネートとポリエステルの界面が補強され、両樹脂の相溶性が向上する。
相溶化剤の一分子中における反応性官能基の分布は、均一であってもよいし均一でなくてもよい。例えば、反応性官能基を有する樹脂における、一分子鎖当たりの反応性官能基の数は、特に限定されないが、1〜10個であることが好ましく、架橋などの副反応を少なくする観点から1〜5個であることが好ましい。
反応性官能基を有する樹脂の一分子の大きさは、特に制限されないが、小さすぎると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、大きすぎると、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下することがある。このような観点から、反応性官能基を有する樹脂の重量平均分子量は、例えば3000〜80000であることが好ましい。反応性官能基を有する樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどの公知の方法を用いて求められる。
反応性官能基を有する樹脂は、通常、反応性官能基を有するモノマーと、反応性官能基を有さないモノマーとの共重合によって構成される。たとえば、反応性官能基を有する樹脂は、反応性官能基を有さないベース樹脂に、反応性官能基を有する変性剤をグラフト重合させることによって構成される。
上記ベース樹脂は、例えば、炭素間二重結合を有するモノマーの重合体である。このようなモノマーの例には、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル系化合物、不飽和カルボン酸またはそのエステル、および、他のビニル化合物が含まれる。
芳香族ビニル化合物の例には、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレンおよびo,p−ジクロロスチレンが含まれる。中でも、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物の例には、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルおよびエタアクリロニトリルが含まれる。中でも、アクリロニトリルが好ましい。
不飽和カルボン酸またはそのエステルの例には、(メタ)アクリル酸およびそのエステルが含まれる。(メタ)アクリル酸エステルは、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチルおよび(メタ)アクリル酸2−クロロエチルが含まれる。中でも、メタクリル酸メチルが好ましい。
その他のビニル化合物の例には、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド化合物、マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物、および、アクリルアミドなどの不飽和アミド、が含まれる。中でも、N−フェニルマレイミドおよび無水マレイン酸が好ましい。
上記変性剤の例には、反応性官能基を有する前述したモノマーが含まれる。ベース樹脂を変性剤でグラフト重合させる方法の例には、ベース樹脂の存在下で変性剤を乳化重合、懸濁重合、塊状重合および溶液重合などの方法で重合させる方法が含まれる。
上記相溶化剤の例には、SAN−g−GMAおよびGMA−MA−PEが含まれる。「SAN−g−GMA」は、グリシジルメタクリレート(GMA)がグラフト重合された(g)スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)である。「GMA−MA−PE」は、グリシジルメタクリレート(GMA)とアクリル酸メチル(MA)とエチレン(PE)のコポリマーである。いずれも、GMA中のエポキシ基が上記反応性官能基である。SAN−g−GMA中のGMAの含有量は、1〜8質量%であることが、ポリカーボネートとポリエステルの相溶性を高める観点から好ましい。同様の観点から、GMA−MA−PE中のGMAの含有量は、4〜8質量%であることが好ましい。SAN−g−GMAの市販品の例には、モディパー A4400(日油株式会社製)が含まれる。GMA−MA−PEの市販品の例には、ボンドファースト 7L、7M(いずれも住友化学株式会社製)が含まれる。なお、「モディパー」は、日油株式会社の登録商標であり、「ボンドファーストは、住友化学株式会社の登録商標である。
[増靭剤]
増靭剤は、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性や加工性、耐衝撃性などを向上させる。増靭剤は、一種でもそれ以上でもよい。増靭剤は、例えば、ゴム弾性を有する樹脂である。増靭剤は、ブタジエンを含むモノマーの重合体で構成されるソフトセグメントと、スチレンのような芳香族基を有するモノマーの重合体で構成されるハードセグメントとを含む熱可塑性エラストマーであることが好ましい。上記熱可塑性エラストマーの分子のサイズは、例えば分子サイズが小さすぎると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、大きすぎると、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下することがある。この観点から適宜に決められる。このような観点から、例えば、熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、10000〜500000であることが好ましい。熱可塑性エラストマーの重量平均分子量も、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどの公知の方法を用いて求められる。
上記熱可塑性エラストマーの構造には、例えば、コアシェル構造、グラフト構造、直鎖構造および海島構造(いわゆる「ポリマーアロイ」)が知られている。熱可塑性エラストマーの構造は、そのいずれであってもよい。コアシェル構造は、例えば、架橋したゴム粒子のコアと、コアの存在下でビニル系単量体がグラフト重合してなるシェルとを含む。コアは、主にソフトセグメントで構成され、シェルは、主にハードセグメントで構成される。グラフト構造は、例えば、ソフトセグメントおよびハードセグメントの一方である幹ポリマーと、他方である枝ポリマーとから構成される。直鎖構造は、例えば、ソフトセグメントとハードセグメントとのブロック共重合体で構成される。海島構造は、例えば、主にソフトセグメントで構成される島(分散相)と、主にハードセグメントで構成される海(連続相)とによって構成される。
上記熱可塑性エラストマーの例には、メチルメタアクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、および、ブチルアクリレート−メチルメタアクリレート共重合体、が含まれる。中でも、増靭剤がMBS、ABSおよびSBSからなる群から選ばれる一以上であることは、熱可塑性樹脂組成物の相溶化性および難燃性や、熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性エラストマーの分散性の観点から好ましい。
また、MBSの構造がコアシェル構造であり、MBSのゴム量が50〜80質量%であることが、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や、熱可塑性樹脂組成物におけるMBSの分散性などの観点から好ましい。また、ABSの構造がグラフト構造であり、ABSのゴム量が10〜55質量%であることが、熱可塑性樹脂組成物の相溶化性および加工性の観点から好ましい。また、SBSの構造が直鎖構造であり、SBSのゴム量が50〜80質量%であることが、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性および耐衝撃性の観点から好ましい。上記「ゴム量」とは、上記熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量を意味する。
MBSの例には、EM500(LG Chemical, Ltd.)が含まれる。ABSの例には、TFX−610(三菱化学株式会社)が含まれる。SBSの例には、カリフレックス TRKX65S(シェル株式会社)が含まれる。
難燃剤は、熱可塑性樹脂組成物中の有機成分(主に樹脂成分)を燃えにくくする。難燃剤は、一種でもそれ以上でもよい。また、難燃剤は、有機系難燃剤であっても、無機系難燃剤であってもよい。有機系難燃剤の例には、ブロモ化合物およびリン化合物が含まれる。無機系難燃剤の例には、アンチモン化合物および金属水酸化物が含まれる。
難燃剤は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、有機系難燃剤であることが好ましく、環境への負荷を軽減する観点から、非ハロゲン化合物であるリン酸系化合物であることが好ましい。リン酸系化合物の例には、非ハロゲンリン酸エステルおよび非ハロゲン縮合リン酸エステルが含まれる。
非ハロゲンリン酸エステルの例には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−ナフチルジフェニルホスフェートおよびクレジルジ(2,6−キシレニル)ホスフェートが含まれる。非ハロゲン縮合リン酸エステルの例には、二リン酸のエステルが含まれる。
[表面処理ホウ酸化合物粒子]
表面処理ホウ酸化合物粒子は、下記式(1)で表されるホウ酸化合物の粒子と、このホウ酸化合物の粒子の表面に形成される有機層とを有する。表面処理ホウ酸化合物粒子は、一種でもそれ以上でもよい。
2XO・3B・nHO (1)
式(1)中、Xは、ZnまたはCaを表す。上記ホウ酸化合物の粒子におけるXは、Znのみであってもよいし、Caのみであってもよいし、これらの両方の含んでいてもよい。
また、式(1)中、nは、0〜5の数を表す。nが5を超えると、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が十分に得られないことがある。これは、熱可塑性樹脂組成物の製造時に、ホウ酸化合物の結晶水がポリエステルに過剰に作用してポリエステルの加水分解を生じさせ、そのため、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が低下するため、と考えられる。一方で、ホウ酸化合物の結晶水は、熱可塑性樹脂組成物の燃焼時に表面処理ホウ酸化合物粒子の周辺の樹脂から熱を吸収し、燃焼を抑制する作用を呈する。nが0〜5であると、衝撃強度の低下の防止と燃焼抑制効果との両方を得ることが可能となる。
上記ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径は、5〜10μmである。ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径が5μm未満であると、後述する燃焼時における熱可塑性樹脂組成物の表面における熱遮断効果が十分に得られないことがある。ホウ酸化合物の粒子の一次粒子径が10μmを超えると、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が十分に得られないことがある。ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径は、例えばレーザ回折/散乱式粒度分布による測定によって求められる。ホウ酸化合物の粒子は、例えば、特許文献1に記載されている方法で製造されうる。または、ホウ酸化合物の粒子は、市販品として入手可能である。
有機層は、ホウ酸化合物の粒子の表面の一部または全部を覆う。有機層は、熱可塑性樹脂組成物の樹脂成分に対する親和性が高いため、表面処理ホウ酸化合物粒子の分散性を向上させる。この分散性の向上によって、難燃剤および表面処理ホウ酸化合物粒子の必要量が低減され、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度の低下が防止される。有機層は、ホウ酸化合物の粒子の表面に親油性の層を形成する化合物で構成されうる。このような有機層を形成する表面処理剤は、例えば、ホウ酸化合物に対して高い親和性を有するか、または反応性を有する極性基と、樹脂成分に対して高い親和性を有する親油基と、によって構成される。表面処理剤の例には、ステアリン酸などの高級脂肪酸、および、シランカップリング剤、が含まれる。シランカップリング剤は、グリシジル基やアクリロイル基などの前述した反応性官能基を上記親油基がさらに有することが、熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度を高める観点から好ましい。シランカップリング剤の例には、KBM402、KBM403、KBE402、KBE403およびKBM503(いずれも信越化学工業株式会社製)に含まれる。
上記有機層は、ホウ酸化合物の粒子に上記表面処理剤を直接混合する乾式法や、ホウ酸化合物の粒子に表面処理剤の溶液を塗布し乾燥する湿式法、混練される樹脂材料にホウ酸化合物の粒子と表面処理剤を直接添加し、混合するインテグラルブレンド法などの方法によって形成される。乾式法では、表面処理温度は、表面処理剤が液状などの適度な流動性を示す状態となる温度に適宜に選択されうる。たとえば、表面処理剤がステアリン酸であれば、表面処理温度は70℃以上である。表面処理剤がシランカップリング剤であれば、室温(例えば20℃)でよい。
表面処理における表面処理剤の適当な使用量は、例えば、実験的に求めることが可能であり、または、ホウ酸化合物の粒子の比表面積と表面処理剤の最小被覆面積とに基づく計算によって求めることが可能である。ホウ酸化合物の粒子の比表面積は、BET法によって求められる。最小被覆面積は、表面処理剤の単分子膜における表面処理剤の一分子が占有する面積である。たとえば、表面処理剤がシランカップリング剤である場合、表面処理時における表面処理剤の使用量は、100質量部のホウ酸化合物の粒子に対して3〜6質量部である。
[任意の添加剤]
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、任意の添加剤をさらに含有していてもよい。添加剤の例には、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド;前述以外の各種エラストマー類;ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系および含リン有機化合物系などの酸化防止剤;フェノール系およびアクリレート系などの熱安定剤;モノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートの混合物などのエステル交換抑制剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系およびサリシレート系などの紫外線吸収剤;有機ニッケル系およびヒンダードアミン系などの光安定剤;高級脂肪酸の金属塩類および高級脂肪酸アミド類などの滑剤;フタル酸エステル類およびリン酸エステル類などの可塑剤;カーボンブラックおよび酸化チタンなどの顔料;染料;および、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどの充填材;が含まれる。
中でも、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度を高める観点から、上記添加剤は、ガラス繊維、炭素繊維および金属繊維などの繊維状充填剤であることが好ましく、炭素繊維がより好ましい。繊維状充填材の種類の例には、長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、および、ミルドファイバー、が含まれる。
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート、ポリエステル、相溶化剤、増靭剤、難燃剤、表面処理ホウ酸化合物粒子および任意の添加剤を溶融混練することによって製造される。表面処理ホウ酸化合物粒子に代えて、ホウ酸化合物の粒子および表面処理剤を、または、ホウ酸化合物の粒子、表面処理剤および樹脂の混練物を用いてもよい。当該溶融混練は、バンバリーミキサー、ロール、および単軸または多軸押出機などで行うことができ、好ましくは二軸押出機にて行うことができる。溶融混練温度は、240〜300℃であることが好ましく、250〜280℃の範囲であることがより好ましい。混練圧力は特に限定されないが、1〜20MPaであることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の各成分の含有量は、ポリカーボネートの含有量が10〜90質量部であり、ポリエステルの含有量が10〜90質量部であり、相溶化剤の含有量が0.5〜20質量部であり、増靭剤の含有量が1〜20質量部であり、難燃剤の含有量が1〜40質量部であり、表面処理ホウ酸化合物粒子の含有量が0.1〜10質量部であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度および難燃性を高める観点から、ポリカーボネートの含有量は50〜90質量部であることが好ましく、ポリエステルの含有量は10〜20質量部であることが好ましい。増靭剤の含有量は、3〜10質量部であることがより好ましく、難燃剤の含有量は10〜20質量部であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の形態は、特に限定されない。たとえば、熱可塑性樹脂組成物は、吐出された溶融混練物を裁断して冷却(例えば水冷)することによって、ペレットとして得られうる。
[作用]
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の内部構造を図1Aに模式的に示す。熱可塑性樹脂組成物10は、ポリカーボネート11を連続相、ポリエステル12を分散相とする海島構造を有する。熱可塑性樹脂組成物10は、相溶化剤13、増靭剤14、難燃剤15および表面処理ホウ酸化合物粒子16をさらに含有する。相溶化剤13は、ポリエステル12の島の界面近傍に位置し、増靭剤14、難燃剤15および表面処理ホウ酸化合物粒子16は、熱可塑性樹脂組物10中に均一に分散している。これらの成分は、ポリカーボネート11内にもポリエステル12内にも存在しうる。熱可塑性樹脂組成物10には、このように材料が均一かつ適切に分散、存在しており、主に相溶化剤13および増靭剤14によって十分な衝撃強度がもたらされている。
図1Bは、熱可塑性樹脂組成物10の、着火当初の内部構造を模式的に示す。熱可塑性樹脂組成物10に着火すると、熱可塑性樹脂組成物10の着火した部分は、燃焼して酸化する。図1Bおよび1Cでは、着火の有無を炎の有無で表示し、炎の大きさで燃焼の勢いの強弱を表示している。図1Bは、熱可塑性樹脂組成物10の表面で燃焼が盛んに生じていることを示している。着火した炎により燃焼した部分を延焼部17とする(図1C参照)。熱可塑性樹脂組成物10では、延焼部17は拡大せず、延焼部17での燃焼は自然に収束し、ついには鎮火する。この鎮火のメカニズムは、以下のように考えられる。
図1Cは、熱可塑性樹脂組成物10の、延焼途中における内部構造を模式的に示す。熱可塑性樹脂組成物10に着火すると、熱可塑性樹脂組成物10の内部では、熱によって、相溶化剤13および増靭剤14は分解、溶解し、ポリエステル12は融解して集合する。一方、延焼部17における炎の近傍では、表面処理ホウ酸化合物粒子16が、熱によって結晶水を放出し、結晶水は蒸発する。この結晶水の蒸発によって、延焼部17の表面の熱が吸収される。また、延焼部17の表面の炎の周囲にある難燃剤15では、リン(P)が酸素のラジカル(O・)と反応する。図1Cは、延焼部17の表面において上記の反応をする難燃剤15が炎の周囲に存在することを模式的に表している。上記の反応によって、延焼部17の表面の炎の密度が徐々に小さくなり、延焼部17の拡大が防止される。
さらに、表面処理ホウ酸化合物粒子16は、熱可塑性樹脂組成物10内に均一に分散していることから、延焼部17の表面に十分な密度で露出する。そして、表面処理ホウ酸化合物粒子16は、燃焼による熱によってホウ酸がガラス質化し、図1Dに示されるように、延焼部17の表面にガラス層18を形成する。このガラス層18によって、熱硬化性樹脂組成物10の内部への伝熱が防止される。また、ガラス層18は、炎の窒息消火を促進する。このため、延焼部17での燃焼は、拡大もせず、継続もせず、自然に鎮火する。
以上に説明したように、熱可塑性樹脂組成物10において、難燃剤15と表面処理ホウ酸化合物粒子16は、均一に分散している。そして、難燃剤15は、炎の成長を阻害し、表面処理ホウ酸化合物粒子16は、炎への酸素の供給と炎からの熱の伝達を遮断する。このように異なる、そして効果的な組み合わせの消火作用によって熱可塑性樹脂組成物10の難燃性が実現されることから、熱可塑性樹脂組成物10では、難燃剤15および表面処理ホウ酸化合物粒子16の含有量を、所期の難燃性に応じて必要最低限まで抑えることが可能である。このため、相溶化剤13および増靭剤14によって高められている熱可塑性樹脂組成物10の衝撃強度の、難燃剤15および表面処理ホウ酸化合物粒子16の添加による低下も、必要最小限に抑えられる。よって、熱可塑性樹脂組成物10において、所期の難燃性と所期の衝撃強度の両立が可能となる。
[樹脂成形体]
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、任意の手法で樹脂成形体に成形することができる。この樹脂成形体を得るための成形方法は、特に限定されず、成形方法の例には、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、異形押出成形、圧縮成形およびガスアシスト成形が含まれる。
以上の説明から明らかなように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度と難燃性とを兼ね備えた上記樹脂成形体を構成する。よって、この樹脂成形体は、発熱する機械またはその周辺機器の外装部材に好適に用いられる。上記樹脂成形体の例には、電気部品、電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器および家電機器のハウジング部品が含まれる。OA機器のハウジング部品の例には、プリンター(電子写真方式の画像形成装置)の外装部材、当該プリンター用の各種カートリッジの外装部材、および当該プリンター中の加熱定着装置の外装部材、が含まれる。
本実施例で使用した材料を以下に示す。「タフロン」は出光興産株式会社の、「ダイヤナイト」は三菱レイヨン株式会社の、「トレコン」は東レ株式会社の、「ルナック」は花王株式会社の、登録商標である。また、ホウ酸化合物粒子A〜Fの平均一次粒径は、下記表面処理前の当該ホウ酸化合物粒子の平均一次粒径を、例えば、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−750、株式会社堀場製作所製)によって測定した値である。
[ポリカーボネート]
PC:タフロンA−1900(出光興産株式会社)
[ポリエステル]
PET:ダイヤナイトMA521H−D25(三菱レイヨン株式会社)
PBT:トレコン1100M(東レ株式会社)
[相溶化剤]
相溶化剤A(エチレングリシジルメタクリレート−メタクリレート共重合体(GMA−MA−PE)):ボンドファースト(住友化学株式会社)
相溶化剤B(スチレンアクリロニトリル−グリシジルメタクリレート共重合体(GMA−SAN)):arufon UG−4035(東亜合成株式会社)
[増靭剤]
増靭剤A(ABS樹脂):TFX−610(三菱化学株式会社)
増靭剤B(SBS樹脂):カリフレックス TRKX65S(シェル株式会社)
増靭剤C(MBS樹脂):EM500(LG Chemical, Ltd.)
[難燃剤]
難燃剤A(縮合リン酸系化合物):PX−200(大八化学株式会社)
難燃剤B(縮合リン酸系化合物):CR−741(大八化学株式会社)
[ホウ酸化合物粒子]
(1)ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B・nHO)
ホウ酸化合物粒子A:ZB200(平均一次粒径:3.63μm、n=3.5、Zibo Wuwei Industrial Co.LTD)
ホウ酸化合物粒子B:ZB400(平均一次粒径:5.63μm、n=3.5、Zibo Wuwei Industrial Co.LTD)
ホウ酸化合物粒子C:ZB700(平均一次粒径:7.15μm、n=0、Zibo Wuwei Industrial Co.LTD)
ホウ酸化合物粒子D:ZB1500(平均一次粒径:13.6μm、n=3.5、Zibo Wuwei Industrial Co.LTD)
ホウ酸化合物粒子E:HT207(平均一次粒径:5.63μm、n=7、Jinan Taixing Fine Chemicals Co)
(2)ホウ酸カルシウム(2CaO・3B・nHO)
ホウ酸化合物粒子F:UBP(平均一次粒径:5.00μm、n=5、キンセイマテック株式会社)
[表面処理剤]
表面処理剤A:ステアリン酸(ルナック S−90V、花王株式会社)
表面処理剤B:シランカップリング剤(KBM403、信越化学工業株式会社)
[実施例1]
100質量部のホウ酸化合物粒子Bと、3質量部の表面処理剤Aとを、70℃で15分間、攪拌翼の周速度で25m/秒以上の攪拌速度で攪拌し、表面処理ホウ酸化合物粒子1を得た。
45質量部のPC、25質量部のPET、5質量部の相溶化剤A、4質量部の増靭剤A、4質量部の増靭剤B、12質量部の難燃剤A、および、3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1を、V型混合器を用いてドライブレンドし、真空乾燥機を用いて混合物を減圧下で100℃、4時間乾燥させた。
乾燥させた混合物を二軸混練押出機の原材料供給口から投入し、シリンダ温度を265℃とし、混練物の吐出量を30kg/時として溶融混練した。二軸混練押出機から吐出された混練物を30℃の水に浸漬することによって急冷し、ペレタイザーによりペレット状に粉砕して、樹脂組成物1を得た。
[実施例2]
「ホウ酸化合物粒子B」を「ホウ酸化合物粒子C」に代えた以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子2を得た。
そして、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子2」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物2を得た。
[実施例3]
「表面処理剤A」を「表面処理剤B」に代え、「室温」で攪拌した以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子3を得た。
そして、「3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「5質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子3」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物3を得た。
[実施例4]
「ホウ酸化合物粒子B」を「ホウ酸化合物粒子C」に代え、「表面処理剤A」を「表面処理剤B」に代え、「室温」で攪拌した以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子4を得た。
そして、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子4」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物4を得た。
[実施例5]
PCの添加量を「60質量部」に代え、PETの添加量を「10質量部」に代え、相溶化剤Aの添加量を「0.5質量部」に代え、「3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「5質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子3」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物5を得た。
[実施例6]
PCの添加量を「60質量部」に代え、PETの添加量を「10質量部」に代え、相溶化剤Aの添加量を「0.5質量部」に代え、表面処理ホウ酸化合物粒子1の添加量を「5質量部」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物6を得た。
[実施例7]
PCの添加量を「60質量部」に代え、PETの添加量を「10質量部」に代え、相溶化剤Aの添加量を「0.5質量部」に代え、「3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「5質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子4」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物7を得た。
[実施例8]
「相溶化剤A」を「相溶化剤B」に代え、「増靭剤A」を「増靭剤C」に代え、「難燃剤A」を「難燃剤B」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物8を得た。
[実施例9]
難燃剤Aの添加量を「16質量部」に代え、表面処理ホウ酸化合物粒子1の添加量を「5質量部」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物9を得た。
[実施例10]
PCの添加量を「60質量部」に代え、PETの添加量を「10質量部」に代え、「5質量部の相溶化剤A」を「0.5質量部の相溶化剤B」に代え、「4質量部の増靭剤A」を「2質量部の増靭剤C」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物10を得た。
[実施例11]
「ホウ酸化合物粒子B」を「ホウ酸化合物粒子F」に代えた以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子5を得た。
そして、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子5」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物11を得た。
[実施例12]
「3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「5質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子5」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物12を得た。
[実施例13]
表面処理ホウ酸化合物粒子1の添加量を「12質量部」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物13を得た。
[実施例14]
「PET」を「PBT」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物14を得た。
[実施例15]
「PET」を「PBT」に代え、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子2」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物15を得た。
[実施例16]
「PET」を「PBT」に代え、「3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「5質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子3」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物16を得た。
[実施例17]
「PET」を「PBT」に代え、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子4」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物17を得た。
[実施例18]
PCの添加量を「60質量部」に代え、「25質量部のPET」を「10質量部のPBT」に代え、相溶化剤Aの添加量を「0.5質量部」に代え、「3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「5質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子3」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物18を得た。
[実施例19]
PCの添加量を「60質量部」に代え、「25質量部のPET」を「10質量部のPBT」に代え、相溶化剤Aの添加量を「0.5質量部」に代え、表面処理ホウ酸化合物粒子1の添加量を「5質量部」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物19を得た。
[比較例1]
「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C1を得た。
[比較例2]
「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「ホウ酸化合物粒子B」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C2を得た。
[比較例3]
「ホウ酸化合物粒子B」を「ホウ酸化合物粒子D」に代えた以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子6を得た。
そして、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子6」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C3を得た。
[比較例4]
「ホウ酸化合物粒子B」を「ホウ酸化合物粒子A」に代えた以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子7を得た。
そして、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子7」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C4を得た。
[比較例5]
「ホウ酸化合物粒子B」を「ホウ酸化合物粒子E」に代えた以外は実施例1と同様にして、表面処理ホウ酸化合物粒子8を得た。
そして、「表面処理ホウ酸化合物粒子1」を「表面処理ホウ酸化合物粒子8」に代えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C5を得た。
[比較例6]
「相溶化剤A」を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C6を得た。
[比較例7]
「増靭剤A」および「増靭剤B」を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C7を得た。
[比較例8]
「難燃剤A」を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物C8を得た。
樹脂組成物1〜19およびC1〜C8の組成を表1および表2に示す。
Figure 0006136674
Figure 0006136674
[評価]
ペレット状の樹脂組成物1〜19およびC1〜C8のそれぞれを100℃で4時間乾燥させた後、状の樹脂組成物1〜19およびC1〜C8のそれぞれを、射出成形機(株式会社日本製鋼所製、J55ELII)によって、シリンダ設定温度280℃、金型温度40℃で成形し、100mm×10mm×4mmの短冊型の試験片A、および、100mm×10mm×3.2mmの短冊型の試験片B、をそれぞれ得た。
(1)シャルピー衝撃強度
試験片Aを用いて、「JIS−K7111」に準拠してシャルピー衝撃試験(Uノッチ、R=1mm)を行い、衝撃強度を測定し、下記評価基準により評価した。「C」であれば、電子写真方式の画像形成装置の外装部材として実用上問題ないが、「D」は、この用途では実用上問題が生じることを意味する。
A:42kJ/m以上
B:32kJ/m以上42kJ/m未満
C:6kJ/m以上32kJ/m未満
D:6kJ/m未満
(2)難燃性
試験片Bを、UL−94に準拠した手法によって評価した。判定基準は、難燃性が高い順に、5VA、5VB、V−0、V−1、V−2およびHB、である。なお、HBにも該当しない程難燃性が低かった場合を、「規格外」と評価した。「規格外」は、上記の用途では実用上問題が生じることを意味する。
(3)荷重たわみ温度の評価(HDT)
試験片Aを、株式会社東洋精機製作所製、HDTテスターS3−MHに供し、23℃、50%RHの条件で48時間調湿した。調湿した試験片Aについて、ISO75−1,2に従い荷重たわみ温度(荷重0.45MPa)を測定した。
(4)溶融流れ指数(MFI)
樹脂組成物1〜19およびC1〜C8のそれぞれを100℃で4時間乾燥させた後、メルトインデックサ F−F01(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、シリンダ設定温度265℃、荷重2.16kgで、JIS K7210−A法に準拠してマスフローレート(MFR)を測定した。
(5)総合評価
「耐衝撃性」および「難燃性」のいずれも実用上問題のない樹脂組成物を「OK」、いずれか一方でも実用上の問題が生じる樹脂組成物を「NG」、と判定した。
樹脂組成物1〜19およびC1〜C8の評価結果を表3に示す。
Figure 0006136674
表3から明らかなように、3質量部の表面処理ホウ酸化合物粒子、または、12質量部の難燃剤、のみを含有する場合では、衝撃強度は60〜70kJ/m程度と高いが、難燃性は不十分である(樹脂組成物C1およびC8参照)。これに対して、上記含有量で表面ホウ酸化合物粒子と難燃剤を併用すると、難燃性は十分であり、衝撃強度は、10〜20kJ/m程度となる。この程度の難燃性および衝撃強度であれば、電子写真方式の画像形成装置の外装部材としては、十分に実用可能である。
樹脂組成物1〜19は、電子写真方式の画像形成装置の外装部材としては、十分に実用可能であった。そして、ポリエステルの含有量に対してポリカーボネートの含有量を相対的に高めると、衝撃強度および難燃性が向上する傾向が見られた。特に、ポリカーボネートの含有量を増やすことによって、表面処理ホウ酸化合物粒子の含有量を3質量部から5質量部に増やしても、相当に高い衝撃強度が得られた(例えば、樹脂組成物5〜7、18および19参照)。
また、PETに代えてPBTを用いることによっても、衝撃強度が向上する傾向が見られた(樹脂組成物1〜4および14〜17参照)。さらに、表面処理ホウ酸化合物粒子の表面処理剤がシランカップリング剤であると、表面処理剤がステアリン酸である熱可塑性樹脂組成物に比べて、MFIが高くなり、加工性が向上する傾向が見られた。さらに、表面処理剤に、グリシジル基(反応性官能基)を有するシランカップリング剤を用いると、樹脂組成物の衝撃強度が向上する傾向が見られた(樹脂組成物2および4参照)。これは、表面処理ホウ酸化合物粒子の有機層が樹脂組成物の樹脂に上記グリシジル基を介して化学結合し、樹脂材料とホウ酸化合物粒子との結合力が向上したため、と考えられる。
その一方で、難燃剤の含有量のみを12質量部から16質量部に増やすと、または、表面処理ホウ酸化合物粒子の含有量を3または5質量部から12質量部に増やすと、衝撃強度が低下する傾向が見られた(樹脂組成物9および13参照)。
これに対して、樹脂組成物C1〜C8は、電子写真方式の画像形成装置の外装部材には使用できない樹脂組成物であった。表3から明らかなように、樹脂組成物C1、C2、C4およびC8では、いずれも難燃性が不十分であった。樹脂組成物C1は、表面処理ホウ酸化合物を含有していなかった。このことから、12質量部の難燃剤だけでは、十分な難燃性が得られないことがわかり、よって、樹脂組成物1〜19では、難燃剤と表面処理ホウ酸化合物粒子を併用することによって、難燃性を維持しつつ難燃剤の含有量を減らすことを可能にしていることがわかった。また、樹脂組成物C2では、ホウ酸化合物の粒子が有機層を有さないため、良好に分散せず、延焼部の表面において、ホウ酸化合物粒子が延焼防止に十分に作用しなかった、と考えられる。また、樹脂組成物C4では、ホウ酸化合物粒子の平均一次粒径が小さすぎ、ホウ酸化合物粒子の延焼防止作用が延焼部の表面全域に十分に行き渡らなかった、と考えられる。また、樹脂組成物C8は、難燃剤を含有していなかった。このことからも、十分な難燃性は、難燃剤と表面処理ホウ酸化合物粒子の併用によってもたされることがわかった。
また、樹脂組成物C3およびC5〜C7では、いずれも衝撃強度が不十分であった。樹脂組成物C3では、ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径が大きすぎ、表面処理ホウ酸化合物粒子が樹脂材料間の相溶性を低減させる作用を呈した、と考えられる。また、樹脂組成物C5では、ホウ酸化合物の粒子の結晶水が多すぎ、表面処理ホウ酸化合物粒子がポリエステルの加水分解などの樹脂材料の分解に作用した、と考えられる。また、樹脂組成物C6は、相溶化剤を含有していなかった。このため、樹脂組成物C6では、樹脂材料の偏りが生じ、樹脂材料による衝撃強度ですら十分に発現されなかった、考えられる。また、樹脂組成物C7は、増靭剤を含有していなかった。このため、樹脂組成物C7では、増靭剤による衝撃強度の向上作用が得られず、衝撃強度が十分に発現されなかった、と考えられる。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネートおよびポリエステルという汎用性の高い樹脂を主な材料とする。そして、延焼防止作用を呈する表面処理ホウ酸化合物粒子を含有するため、当該樹脂組成物中の難燃剤の含有量を低減させることが可能である。さらに、難燃剤には、非ハロゲン系の難燃剤が好適に用いられる。このように、本発明は、樹脂材料のリサイクル、難燃剤の使用量の低減、ハロゲン材料の使用の防止、など、熱可塑性樹脂組成物の提供に係る環境への負荷をより一層低減することが可能である。さらに、本発明には、マテリアルリサイクル技術のさらなる発展および当該技術による再生材のさらなる普及に寄与することが期待される。
10 熱可塑性樹脂組成物
11 ポリカーボネート
12 ポリエステル
13 相溶化剤
14 増靭剤
15 難燃剤
16 表面処理ホウ酸化合物粒子
17 延焼部
18 ガラス層

Claims (9)

  1. ポリカーボネート、ポリエステル、相溶化剤、増靭剤、難燃剤および表面処理ホウ酸化合物粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
    前記表面処理ホウ酸化合物粒子は、下記式(1)で表されるホウ酸化合物の粒子と、前記ホウ酸化合物の粒子の表面に形成される有機層とを有し、
    前記ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径は、5〜10μmであり、
    前記相溶化剤は、SAN−g−GMAまたはGMA−MA−PEである、熱可塑性樹脂組成物。
    2XO・3B・nHO (1)
    (式(1)中、Xは、ZnまたはCaを表し、nは、0〜5の数を表す。)
  2. 前記有機層は、前記ホウ酸化合物粒子を表面処理剤で処理することによって形成され、
    前記表面処理剤は、ステアリン酸またはグリシジル基含有シランカップリング剤である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記難燃剤は、非ハロゲンリン酸エステルまたは非ハロゲン縮合リン酸エステルである、請求項1または2のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリエステルは、PETまたはPBTである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記SAN−g−GMA中のGMAの含有量は、1〜8質量%であり、
    前記GMA−MA−PE中のGMAの含有量は、4〜8質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記増靭剤は、MBS、ABSおよびSBSからなる群から選ばれる一以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記MBSの構造は、コアシェル構造であり、前記MBSのゴム量は、50〜80質量%であり、
    前記ABSの構造は、グラフト構造であり、前記ABSのゴム量は、10〜55質量%であり、
    前記SBSの構造は、直鎖構造であり、前記SBSのゴム量は、50〜80質量%である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記ポリカーボネートの含有量は、10〜90質量部であり、
    前記ポリエステルの含有量は、10〜90質量部であり、
    前記相溶化剤の含有量は、0.5〜20質量部であり、
    前記増靭剤の含有量は、1〜20質量部であり、
    前記難燃剤の含有量は、1〜40質量部であり、
    前記表面処理ホウ酸化合物粒子の含有量は、0.1〜10質量部である、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. ポリカーボネート、ポリエステル、相溶化剤、増靭剤、難燃剤および表面処理ホウ酸化合物粒子を含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
    前記表面処理ホウ酸化合物粒子は、下記式で表されるホウ酸化合物の粒子と、前記ホウ酸化合物の粒子の表面に形成される有機層とを有し、
    前記ホウ酸化合物の粒子の平均一次粒径は、5〜10μmであり、
    前記相溶化剤は、SAN−g−GMAまたはGMA−MA−PEである、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
    2XO・3B・nHO (1)
    (式(1)中、Xは、ZnまたはCaを表し、nは、0〜5の数を表す。)
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