以下、図1〜図10を参照して、この発明を鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、前側上部(図1では左側上部)が開放された横長(図1では紙面の表裏面方向に長い横長)のほぼ箱形状の形成されている。
すなわち、この楽器ケース1は、図1および図2に示すように、底板2と、この底板2の前端部(図1では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図1では右端部)に起立して設けられた後板4と、底板2の左右両側部(図1では紙面の表裏面方向の両側部)に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板5の上部および後板4の上部に設けられた天板6とを備えている。
この場合、前板3は、図1および図2に示すように、後板4の高さのほぼ半分程度の高さで形成されている。また、一対の側板5は、その前端部が前板3よりも少し高く形成され、前後方向(図1では左右方向)におけるほぼ中間部から後部側の高さが後板4と同じ高さに形成され、前端部から中間部に位置する箇所の上辺部が後部上がり(図1では右上がり)に傾斜する傾斜部5aに形成されている。
天板6は、図1および図2に示すように、一対の側板5におけるほぼ中間部から後部側(図1では右側部)に位置する上部と後板4の上部とに跨った状態で設けられている。これにより、楽器ケース1は、一対の側板5における傾斜部5aに対応する前側上部(図1では左側上部)が開放された横長のほぼ箱形状の形成されている。
この楽器ケース1内には、図1および図2に示すように、鍵盤部10が設けられている。この鍵盤部10は、楽器ケース1の底部2上に配置された鍵盤シャーシ11と、この鍵盤シャーシ11上に上下方向に回転可能な状態で並列に配列された複数の鍵12とを備えている。この鍵盤部10は、図2に示すように、複数の鍵12が楽器ケース1の前部側から上方に露呈し、この状態で押鍵操作されるように構成されている。また、この楽器ケース1内には、コンソールパネル13が鍵盤部10の後部に位置する上側から天板6の前部の下側に向けて傾斜して設けられている。
また、この楽器ケース1内には、図1および図2に示すように、鍵盤部10の上側を開閉可能に覆う鍵盤蓋14の蓋開閉装置15が設けられている。この場合、鍵盤蓋14は、前蓋16と後蓋17とを有し、この前蓋16と後蓋17とが蝶番などの連結部18によって折り曲げ可能に連結された構成になっている。また、この鍵盤蓋14は、後蓋17の前後方向(図1では左右方向)の長さが、前蓋16の前後方向の長さよりも少し長く形成されている。
この鍵盤蓋14の蓋開閉装置15は、図1および図2に示すように、鍵盤蓋14を開閉可能にガイドするガイド溝20と、鍵盤蓋14の後端部を上下方向にガイドするガイド機構部21とを備えている。この場合、鍵盤蓋14の前蓋16の前端下部には、前ガイド軸23が側板5の内面に向けて突出した状態で、支持部23aによって設けられている。後蓋17の前端下部には、後ガイド軸24が側板5の内面に向けて突出した状態で、支持部24aによって設けられている。
ガイド溝20は、図1および図2に示すように、前蓋16の前ガイド軸23と後蓋17の後ガイド軸24とが移動可能に挿入する溝であり、側板5に埋め込まれた金属板(図示せず)に形成されている。このガイド溝20は、楽器ケース1の前板3の上部からコンソールパネル13の上側に向けて斜め上方に傾斜した上、楽器ケース1の後板4に向けてほぼ水平に連続して形成されている。
この場合、後蓋17の後ガイド軸24は、図1および図2に示すように、その側方に突出する突出長さ、つまり側板5の内面に向けて後蓋17の側面から突出する突出長さが、前蓋16の前ガイド軸23の突出長さよりも短く形成されている。このため、ガイド溝20は、その側方の深さ、つまり側板5の内面から外面に向かう厚み方向の深さが、前蓋16の前ガイド軸23の突出長さとほぼ同じ深さで形成されている。
また、このガイド溝20の傾斜部分における中間部には、図1に示すように、鍵盤蓋14が鍵盤部10を覆って閉じた際に、後蓋17の後ガイド軸24のみが落ち込むガイド凹部25が設けられている。このガイド凹部25は、その側方の深さ、つまり側板5の内面から外面に向かう厚み方向の長さが、後蓋17の後ガイド軸24の突出長さとほぼ同じ深さで、ガイド溝20よりも浅く形成されている。
この場合、ガイド凹部25は、図1に示すように、後蓋17の後ガイド軸24が落ち込んだ際に、前蓋16の上面と後蓋17の上面とが同一平面になるように、ガイド凹部25の深さが設定されている。これにより、このガイド凹部25は、前蓋16と後蓋17とが鍵盤部10を覆って閉じた際に、後蓋17の後ガイド軸24が落ち込んで配置されることにより、前蓋16と後蓋17とが前下りに傾斜した状態で、同一平面上に配置されて全体がほぼ平板状をなすように構成されている。
また、この楽器ケース1内における前部には、図1および図2に示すように、前蓋16と後蓋17とが鍵盤部10を覆って閉じる際に、前蓋16の前ガイド軸23を押し上げる方向に弾力的に付勢する付勢部材26が設けられている。この付勢部材26は、ねじりコイルばねであり、そのコイル部が楽器ケース1の側板5に設けられた取付軸27に取り付けられている。
すなわち、この付勢部材26は、図1および図2に示すように、取付軸27に取り付けられたコイル部の一端部が側板5に対して固定され、他端部である先端部26aが前板3の上方に向けて延出された構成になっている。これにより、付勢部材26は、その先端部26aが前ガイド軸23に下側から弾接することにより、前ガイド軸23を弾力的に押し上げて、前蓋16を開く方向に向けて付勢するように構成されている。
ところで、ガイド機構部21は、図1および図2に示すように、鍵盤蓋14が開閉する際に、前蓋16に対して連結部18で折れ曲がりながら移動する後蓋17の後端部を上下方向にガイドするように構成されている。この場合、後蓋17の後端部には、連結部材22が設けられている。この連結部材22は、後蓋17の後端部に設けられた取付板28aと、この取付板28aに回転可能に取り付けられた取付軸28bとを備えている。
また、このガイド機構部21は、図1〜図5に示すように、鍵盤部10の後端部の上部付近に位置する箇所の側板5の内面に固定部29によって取り付けられた支持軸30と、この支持軸30に一端部が回転自在に取り付けられ、且つ他端部が連結部材22の取付軸28bに取り付けられたアーム部材31と、このアーム部材31に回転自在に取り付けられた回転軸34と、この回転軸34に取り付けられたピニオンギア32と、このピニオンギア32が噛み合って回転移動する円弧状のラックギア35とを備えている。
この場合、ピニオンギア32は、図1〜図3に示すように、ラックギア35に噛み合って回転移動する際に、側板5の内面に設けられたギアガイド溝33内に回転移動可能に配置されてガイドされるように構成されている。このギアガイド溝33は、側板5に埋め込まれた金属板(図示せず)に形成されている。すなわち、このギアガイド溝33は、支持軸30を中心とする半円弧状に形成され、その溝幅がピニオンギア32の外径よりも少し広い溝幅で形成されている。
また、回転軸34は、図1〜図3に示すように、側板5のギアガイド溝33内に向けて突出し、この突出した先端部がギアガイド溝33の底部に形成された円弧状の軸ガイド溝37内に挿入してガイドされるように構成されている。この軸ガイド溝37は、ギアガイド溝33の溝幅よりも小さい溝幅で、支持軸30を中心とする半円弧状に形成されている。ラックギア35は、軸ガイド溝37と同様、支持軸30を中心として軸ガイド溝37の半径よりも短い半径で、側板5のギアガイド溝33の内面に沿って形成されている。
この場合、回転軸34は、図3、図5および図8に示すように、アーム部材31側に段差部34aが設けられ、この段差部34aの反対側の先端部が軸ガイド溝37内に挿入した際に、段差部34aがアーム部材31の側面に当接することにより、軸ガイド溝37とアーム部材31との間に挟まれた状態で、取り付けられるように構成されている。また、ピニオンギア32は、ラックギア35に噛み合った状態でギアガイド溝33内に回転移動可能に配置された状態で、回転軸34に固定されて回転軸34と共に回転するように構成されている。また、アーム部材31によってピニオンギア32は、ギアガイド溝33とアーム部材31によって挟み込まれるようになっている。このため、ピニオンギア31はアーム部材があることにより後述するダンパー部材38がなくても、ラックギア35とかみ合ったまま回転するようになっている。
これにより、ガイド機構部21は、図1に示すように、鍵盤蓋14が鍵盤部10を覆って閉じた状態のときに、ピニオンギア32がラックギア35の上端部に噛み合って位置すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37の上端部に位置することにより、連結部材22を介して後蓋17の後端部を押し上げ、この後蓋17の後ガイド軸24をガイド溝20のガイド凹部25に落とし込んで、前蓋16と後蓋17とを連続する同一面上に配置するように構成されている。
また、このガイド機構部21は、図2に示すように、鍵盤蓋14が楽器ケース1内の後部側に向けて移動して鍵盤部10を上側に開放する際に、後蓋17が前蓋16に対して連結部18で徐々に折れ曲がりながら、ピニオンギア32がラックギア35に噛み合って上端部から下端部に移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って上端部から下端部に移動することにより、後蓋17の後端部を連結部材22と共に鍵盤シャーシ11の後端下部に移動させ、後蓋17の後ガイド軸24をガイド溝20の後端部に移動させて、後蓋17を前蓋16に対しほぼ直角に折り曲げるように構成されている。
一方、このガイド機構部21は、図1および図2に示すように、鍵盤蓋14を開閉する際に、後蓋17の後端部における上下方向への移動を制動する制動部材36を備えている。この制動部材36は、ねじりコイルばねであり、コイル部が支持軸30の外周に配置され、このコイル部の一端部がアーム部材31に取り付けられ、他端部が側板5に設けられて支持軸30を固定する固定部29に取り付けられている。
これにより、この制動部材36は、アーム部材31が支持軸30を中心に回転して、ほぼ水平方向に位置する状態のときに、アーム部材31に対して負荷をほとんど付与しないニュートラル状態になり、このニュートラル状態よりもアーム部材31が上側に移動する際に、アーム部材31に対して後蓋17が開く方向の負荷を付与し、ニュートラル状態よりもアーム部材31が下側に移動する際に、アーム部材31に対して後蓋17が閉じる方向の負荷を付与するように構成されている。
すなわち、この制動部材36は、アーム部材31が支持軸30を中心に回転して、ニュートラル状態よりも上側に向けて移動する状態のときに、アーム部材31を押し下げる方向の負荷が徐々に増加して、後蓋17の閉じる方向への移動力を徐々に重くし、図1に示すように、アーム部材31の先端部が最も上側に移動した際に、アーム部材31を押し下げる方向の負荷が最大になり、後蓋17の閉じる方向への移動力を最も重くするように構成されている。
また、この制動部材36は、アーム部材31が支持軸30を中心に回転して、ニュートラル状態よりも下側に向けて移動する状態のときに、アーム部材31を押し上げる方向の負荷が徐々に増加して、後蓋17の開く方向への移動力を徐々に重くし、図2に示すように、アーム部材31の先端部が最も下側に移動した際に、アーム部材31を押し上げる方向の負荷が最大になり、後蓋17の開く方向への移動力を最も重くするように構成されている。
ところで、アーム部材31には、図4〜図8に示すように、ダンパー部材38が伝達部39を介して取り付けられている。このダンパー部材38は、ピニオンギア32に一定の負荷を付与して鍵盤蓋14の開閉動作を制動するためのものであり、外筒部40aと内筒部40bを有して一定の負荷を発生するロータリーダンパー部40と、外筒部40aを係止してアーム部材31に対して固定するためのダンパーカバー部41と、内筒部40b内に挿入して係止された状態で内筒部40bと共に回転する伝達軸42とを備えている。
この場合、ロータリーダンパー部40は、図6および図7に示すように、外筒部40a内に内筒部40bが回転可能な状態で配置され、外筒部40aに対して内筒部40bが一定の負荷をもって回転するように構成されている。内筒部40bは、その中心に伝達軸42が挿入する軸孔43が設けられており、この軸孔43の内面には、係合溝43aが軸方向に沿って形成されている。外筒部40aは、その内部に内筒部40bが挿入する筒状に形成されている。この外筒部40aの外端部には外壁部44が設けられており、この外壁部44の外面には係合突起部44aが設けられている。
ダンパーカバー部41は、図4〜図7に示すように、外筒部40aが挿入する筒状に形成され、その外端部にカバー壁45が設けられ、このカバー壁45に外筒部40aの係合突起部44aが挿入する係止溝45aが設けられた構成になっている。また、このダンパーカバー部41は、その内端部の外周部に鍔部46が側方に突出して設けられ、この鍔部46がビス47によってアーム部材31に取り付けられるように構成されている。これにより、ダンパーカバー部41は、ロータリーダンパー部40の外筒部40aをアーム部材31に対して固定するように構成されている。
また、伝達軸42は、図4〜図8に示すように、その一端部側がロータリーダンパー部40の内筒部40bの軸孔43に挿入し、この挿入する部分の外周面に係合突起42aが設けられ、この係合突起42aが内筒部40bの軸孔43の内周面に設けられた係合溝43aに係合し、これにより内筒部40bと共に回転するように構成されている。この場合、係合突起42aは、伝達軸42の一端部側にその軸方向と直交する方向に設けられた貫通孔にピン部材(いずれも図示せず)を挿入させて突出させた構成になっている。
一方、伝達部39は、図4〜図8に示すように、ピニオンギア32の回転軸34にその軸方向に沿って設けられてダンパー部材38の伝達軸42の一端部側が挿入する取付穴48と、この取付穴48の内面に突出して設けられた内側キー突起部48aと、回転軸34の取付穴48に挿入する箇所における伝達軸42の外周面に設けられて内側キー突起部48aが挿入して係合する外側キー溝部42bとを備えている。
これにより、伝達部39は、図4〜図8に示すように、ピニオンギア32の回転と共に回転軸34が回転すると、その回転軸34と共に伝達軸42が回転し、この伝達軸42の回転がロータリーダンパー部40の内筒部40bに伝達されて、内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転することにより、ピニオンギア32の回転をダンパー部材38のロータリーダンパー部40に伝達するように構成されている。
この場合、ダンパー部材38は、図4〜図8に示すように、回転軸42の回転に伴ってロータリーダンパー部40の内筒部40bが回転すると、この内筒部40bと外筒部40aとの間で一定の負荷が生じ、この負荷が伝達部39によってピニオンギア32に伝達されることにより、ピニオンギア32の回転を制動するように構成されている。すなわち、このダンパー部材38は、鍵盤蓋14が開閉動作する際に、ピニオンギア32に負荷を付与して鍵盤蓋14の自重による重さを緩和するように構成されている。
次に、この鍵盤楽器における鍵盤蓋14の蓋開閉装置15の作用について説明する。
鍵盤蓋14を開いて鍵盤部10を上方に開放する場合には、図1に示すように、鍵盤蓋14の前蓋16の前端部を持ち上げながら、鍵盤蓋14を楽器ケース1の後部に向けて移動させる。このときには、付勢部材26の付勢力によって前蓋16の前ガイド軸23が弾力的に最も強く押し上げられていると共に、制動部材36によってアーム部材31が押し下げられる方向の負荷が最も高く付与されているので、軽い力で鍵盤蓋14が楽器ケース1の後部側に向けて移動を開始する。
このように、鍵盤蓋14が楽器ケース1の後部側に向けて移動を開始すると、図9に示すように、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20に沿って前端部から後部側に向けて移動すると共に、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20のガイド凹部25内からガイド溝20内に向けて移動する。このように、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20に沿って移動すると、前蓋16の前ガイド軸23に対する付勢部材26の付勢力が徐々に低下する。
また、このときには、図9に示すように、後蓋17のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って上端部から下側に向けて移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って上端部から下側に向けて移動し、このピニオンギア32および回転軸34の移動に伴って、アーム部材31が支持軸30を中心に時計回りに回転する。このため、制動部材36は、図9に示すように、アーム部材31を押し下げる方向の負荷が徐々に低下する。これにより、鍵盤蓋14を開く方向に移動させる移動力が徐々に重くなる。
さらに、このときには、図5に示すように、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転が伝達部39によってダンパー部材38の伝達軸42に伝達され、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。これによっても、鍵盤蓋14を開く方向に移動させる移動力が重くなる。
この後、鍵盤蓋14が更に楽器ケース1の後部側に向けて移動すると、前蓋16と後蓋17とが連結部18で折れ曲がりながら、前蓋16がガイド溝20に沿って斜め上方に向けて移動すると共に、後蓋17が後部下がりに傾斜しながら斜め下側に移動する。そして、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20の中間部付近に到達した際には、図10に示すように、前蓋16の前ガイド軸23が後蓋17の後ガイド軸24よりも長いので、前ガイド軸23がガイド溝20のガイド凹部25に落ち込むことがなく、ガイド溝20内を移動する。
また、このときには、図10に示すように、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20に沿って後部側に向けて移動すると共に、後蓋17のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って上下方向の中間部付近に移動し、これに伴って回転軸34が軸ガイド溝37に沿って上下方向の中間部付近に移動する。このときには、アーム部材31も上下方向の中間部付近に位置してほぼ水平な状態になる。このため、制動部材36は、アーム部材31に負荷をほとんど付与しないニュートラル状態になる。
このときにも、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転が伝達部39によってダンパー部材38の伝達軸42に伝達され、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。
この状態で、鍵盤蓋14が更に楽器ケース1の後部側に向けて移動すると、図2に示すように、前蓋16と後蓋17とが連結部18でほぼ直角になるように折り曲げながら、前蓋16が天板6の下側に移動し、この前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20における天板6の前端部に対応する箇所に移動すると共に、後蓋17が後板4に向けて斜めに垂れ下がるように移動して、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20の後端部に移動する。
このときには、図2に示すように、ガイド機構部21のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って下端部に移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って下端部に移動し、これに伴って後蓋17の後端部が連結部材22と共に鍵盤シャーシ11の後端下部に向けて移動する。これにより、アーム部材31は上下方向の中間部付近から下側に向けて移動する。このため、制動部材36はニュートラル状態を通過してアーム部材31を押し上げる方向に付与する負荷が徐々に増大し、アーム部材31の先端部が下端部に到達した際に、アーム部材31を押し上げる制御部材36の負荷が最大となる。
また、このときにも、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転に伴ってダンパー部材38の伝達軸42が回転し、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。このように、制動部材36の制動力およびダンパー部材38の付勢力によって、後蓋17が急激に降下するのを防ぎ、鍵盤蓋14の急激な開き動作を制動して、安全に鍵盤蓋14を開くことができる。
一方、鍵盤蓋14を閉じて鍵盤部10を覆う際には、まず、図2に示すように、鍵盤蓋14の前蓋16の前端部を楽器ケース1の前側に向けて引き出す。このときには、後蓋17の後端部が連結部材22を介して制動部材36によって押し上げられているので、軽い力で鍵盤蓋14を楽器ケース1の前側に向けて移動させることができる。すなわち、制動部材36はアーム部材31を押し上げる負荷が最大になっているので、この制動部材36によるアーム部材31の押上げ力によって後蓋17がその自重よりも軽い力で移動する。
このように鍵盤蓋14が楽器ケース1の前側に向けて移動する際には、図10に示すように、前蓋16と後蓋17とが連結部18で徐々に広がる方向に折れ曲がりながら、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20に沿って楽器ケース1の前側に向けて移動すると共に、後蓋17が後板4に沿って斜めに上側に向けて移動しながら、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20に沿って楽器ケース1の前側に向けて移動する。
このときには、図10に示すように、ガイド機構部21のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って下端部から上側に向けて移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って下端部から上側に向けて移動し、これに伴って連結部材22が後蓋17の後端部を押し上げる。これにより、アーム部材31は反時計回りに回転し、制動部材36がニュートラル状態に向かい、アーム部材31を押し上げる負荷が徐々に低下する。このため、鍵盤蓋14を閉じる方向に移動させる移動力が徐々に重くなる。
このときにも、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転に伴ってダンパー部材38の伝達軸42が回転し、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。
このように、鍵盤蓋14が楽器ケース1の前側に向けて移動して、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20の中間部付近に移動すると、図10に示すように、前蓋16と後蓋17とが連結部18で更に広がる方向に折れ曲がり、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20に沿って楽器ケース1の前側に向けて移動し、後蓋17が天板6に向けて傾斜しながら引き上げられる。
このときには、図10に示すように、ガイド機構部21のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って下側から中間部付近に移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って下側から中間部付近に移動し、これに伴って連結部材22が後蓋17の後端部を更に押し上げる。これにより、アーム部材31は更に反時計回りに回転し、制動部材36がアーム部材31に負荷をほとんど付与しないニュートラル状態になる。
また、このときにも、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転に伴ってダンパー部材38の伝達軸42が回転し、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。
この後、鍵盤蓋14が更に楽器ケース1の前側に移動すると、図9に示すように、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20に沿って楽器ケース1の前側に向けて移動し、この前ガイド軸23がガイド溝20のガイド凹部25に到達しても、このガイド凹部25に落ち込むことなく、前ガイド軸23がガイド凹部25の上方をガイド溝20に沿って通過する。このときには、前蓋16と後蓋17とが連結部18で更に広がる方向に折れ曲がり、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20に沿って移動してガイド凹部25に接近し、後蓋17が天板6とほぼ平行な状態になるように引き上げられる。
また、このときには、ガイド機構部21のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って中間部付近から上側に向けて移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って中間部付近から上側に向けて移動し、これに伴って連結部材22が上側に移動して後蓋17の後端部を更に押し上げる。これにより、アーム部材31が更に反時計回りに回転し、制動部材36がニュートラル状態を通過し、アーム部材31を押し下げる方向に付与する負荷が徐々に増大する。
このときにも、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転に伴ってダンパー部材38の伝達軸42が回転し、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。
そして、鍵盤蓋14が更に楽器ケース1の前側に向けて移動し、図9に示すように、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20に沿って移動して、前板3に接近すると、前ガイド軸23に付勢部材26による付勢力が付与され、この付勢部材26の付勢力によって鍵盤蓋14の移動力が徐々に重くなる。このときには、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20のガイド凹部25に落ち込みを開始し、前蓋16と後蓋17とが前下がりに傾斜した状態で、ほぼ同一平面に配置される。
この状態で、鍵盤蓋14が更に楽器ケース1の前側に向けて移動し、図1に示すように、前蓋16の前ガイド軸23がガイド溝20の前端部に移動して、前板3上に当接する際には、前ガイド軸23に対する付勢部材26の付勢力が最も重くなり、前蓋16がゆっくり閉じるので、鍵盤蓋14で手や指を挟むことなく、安全に鍵盤蓋14を閉じることができる。このときには、図1に示すように、後蓋17の後ガイド軸24がガイド溝20のガイド凹部25に落ち込み、前蓋16と後蓋17とが前下がりに傾斜した状態で、平板状になって同一平面に配置される。
また、このときには、図1に示すように、ガイド機構部21のピニオンギア32がラックギア35に噛み合って上端部に移動すると共に、回転軸34が軸ガイド溝37に沿って上端部に移動し、これに伴って連結部材22が上側に移動して後蓋17の後端部を最も高く押し上げる。これにより、アーム部材31は支持軸30を中心に反時計回りに回転してほぼ垂直に起立し、制動部材36がアーム部材31を押し下げる方向に付与する負荷が最大になり、支持軸30を中心に回転するアーム部材31の回転が最も重くなる。
また、このときにも、ピニオンギア32の回転に伴って回転軸34が回転し、この回転軸34の回転に伴ってダンパー部材38の伝達軸42が回転し、この伝達軸42の回転によってロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して一定の負荷をもって回転する。このため、ロータリーダンパー部40に発生した負荷がピニオンギア32に付与され、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和する。
これにより、制動部材36の制動力およびダンパー部材38の付勢力によっても、後蓋17が閉じる方向に向けて急激に移動するのを防ぎ、鍵盤蓋14の急激な閉じ動作を制動する。このように、付勢部材26による付勢力、制動部材36による制動力、およびとダンパー部材38による付勢力によって、鍵盤蓋14が急激に閉じて手や指を挟むことがなく、安全に鍵盤蓋14を閉じることができる。
このように、この鍵盤楽器における蓋開閉装置15によれば、楽器ケース1内に設けられた鍵盤部10を開閉自在に覆う鍵盤蓋14の開閉動作に応じて支点を中心に回転するアーム部材31と、このアーム部材31に回転軸34によって回転自在に取り付けられたピニオンギア32と、アーム部材31の回転に伴ってピニオンギア32が噛み合いながら回転移動する円弧状のラックギア35と、アーム部材31に対して取り付けられ、且つピニオンギア32に負荷を付与して鍵盤蓋14の開閉動作を制動するためのダンパー部材38と、このダンパー部材38をピニオンギア32の回転軸34に挿脱可能に連結して、ピニオンギア32の回転をダンパー部材38に伝達するための伝達部39と、を備えているので、ダンパー部材38が設置場所および設置スペースの制約を受けずに、簡単に且つ容易にダンパー部材38を設置することができる。
すなわち、この蓋開閉装置15では、ダンパー部材38をアーム部材31に対して取り付けることができるので、ダンパー部材38の設置場所が制約を受けずに、ダンパー部材38をアーム部材31に設置することができると共に、ダンパー部材38の設置スペースを確保することができ、また伝達部39によってダンパー部材38をピニオンギア32の回転軸34に挿脱可能に連結することができるので、簡単に且つ容易にダンパー部材38を設置することができると共に、ピニオンギア32の回転を確実にダンパー部材38に伝達することができ、これにより鍵盤蓋14の開閉動作を良好に制動することができる。
このため、この蓋開閉装置15では、楽器ケース1内に蓋開閉装置15を組み付ける際に、アーム部材31にピニオンギア32を回転軸34によって回転可能に取り付けた後の最終工程で、伝達部39によって回転軸34にダンパー部材38を連結させ、この状態でダンパー部材38をアーム部材31に組み付けることができるので、組立作業性が良く、簡単に且つ容易にダンパー部材38を設置することができる。
この場合、ダンパー部材38は、外筒部40aおよび内筒部40bを有して一定の負荷を発生するロータリーダンパー部40と、外筒部40aを係止してアーム部材31に対して固定するためのダンパーカバー部41と、内筒部40b内に挿入して係止された状態で内筒部40bと共に回転する伝達軸42とを備えていることにより、伝達軸42の回転と共にロータリーダンパー部40の内筒部40bが外筒部40aに対して回転する際に、外筒部40aと内筒部40bとの間で一定の負荷を発生させることができる。
すなわち、このダンパー部材38は、ロータリーダンパー部40の外筒部40aに設けられた係合突起部44aがダンパーカバー部41の係止溝45aに係合し、この状態でダンパーカバー部41がビス47によってアーム部材31に取り付けられていることにより、外筒部40aをアーム部材31に対して確実に且つ強固に固定することができる。このため、内筒部40bが外筒部40aに対して回転する際に、確実に内筒部40bに負荷を発生させることができる。
また、このダンパー部材38は、外筒部40a内に回転可能に配置された内筒部40bの軸孔43に伝達軸42の一端部側が挿入すると共に、軸孔43の内面に形成された係合溝43aに伝達軸42の係合突起42aが挿入して係合していることにより、伝達軸42の回転と共に内筒部40bが外筒部40aに対して回転すると、外筒部40aと内筒部40bとの間で一定の負荷を確実に発生させることができる。
また、伝達部39は、ピニオンギア32の回転軸34にその軸方向に沿って設けられてダンパー部材38の伝達軸42の一端部側が挿入する取付穴48と、この取付穴48の内面に設けられた内側キー突起部48aと、伝達軸42の一端部側の外周面に設けられて内側キー突起部48aに係合する外側キー溝部42bとを備えていることにより、伝達軸42の外側キー溝部42bに回転軸34の取付穴48の内側キー突起部48aを対応させた状態で、伝達軸42の一端部側を回転軸34の取付穴48に挿入するだけで、簡単に且つ容易にピニオンギア32とダンパー部材38とを連結することができる。
すなわち、この伝達部39では、伝達軸42の一端部側を回転軸34の取付穴48に挿入すると、伝達軸42の外側キー溝部42bに回転軸34の取付穴48の内側キー突起部48aが挿入して係合するので、回転軸34がピニオンギア32と共に回転した際に、回転軸34の回転を伝達軸42に確実に伝達することができ、これによりピニオンギア32の回転をロータリーダンパー部40に伝達することができると共に、このロータリーダンパー部40で発生した負荷をピニオンギア32に付与することができるので、ピニオンギア32の回転を重くして、鍵盤蓋14の自重による重さを緩和することができる。
このように、この伝達部39では、伝達軸42の一端部側を回転軸34の取付穴48に挿入するだけで、簡単に且つ容易にピニオンギア32とダンパー部材38とを連結することができる(すなわちアーム部材31に対して独立した形でダンパー部在38を着脱できる構造をもっている)ので、楽器ケース1内に蓋開閉装置15を組み付ける際に、最終工程でダンパー部材38をアーム部材31に簡単に組み付けることができ、これにより生産性に優れ、効率良く生産することができる。
この場合、回転軸34は、軸ガイド溝37とアーム部材31との間に挟まれた状態で、取り付けられているので、特殊な締結部材を用いずに、回転軸34をアーム部材31に対して簡単に且つ容易に取り付けることができ、この回転軸34にピニオンギア32を取り付けるだけで、回転軸34とピニオンギア32とを簡単に且つ容易にアーム部材31に対して取り付けることができ、これによっても組立作業性の向上を図ることができる。
さらに、上記構造により、ダンパー部材38は、アーム部材31に対して、ピニオンギア32は残したまま、容易に取り外すことができる。このため必要に応じてダンパー部材38をアーム部材31から取り外し、ピニオンギア32の制動効果は確保したまま、安価な機種として提供することも可能となる。
また、この蓋開閉装置15によれば、鍵盤蓋14の開閉動作に伴ってアーム部材31が回転する際に、その回転途中でアーム部材31に対して負荷をほとんど付与しないニュートラル状態を有し、このニュートラル状態を境にして逆向きの負荷をアーム部材31に付与して鍵盤蓋14の動作を制動する制動部材36を備えていることにより、ニュートラル状態よりもアーム部材31が上側に移動する際に、アーム部材31に対して後蓋17を開く方向の負荷を付与することができ、またニュートラル状態よりもアーム部材31が下側に移動する際に、アーム部材31に対して後蓋17を閉じる方向の負荷を付与することができる。
すなわち、この制動部材36は、鍵盤蓋14の開閉動作に伴ってアーム部材31が支持軸30を中心に回転して、ニュートラル状態よりも上側に向けて移動する状態のときに、アーム部材31を押し下げる方向の負荷が徐々に増加して、後蓋17の閉じる方向への移動力を徐々に重くし、アーム部材31の先端部が最も上側に移動した際に、アーム部材31を押し下げる方向の負荷が最大になり、後蓋17の閉じる方向への移動力を最も重くすることができ、これにより鍵盤蓋14を安全に閉じることができる。
また、この制動部材36は、鍵盤蓋14の開閉動作に伴ってアーム部材31が支持軸30を中心に回転して、ニュートラル状態よりも下側に向けて移動する状態のときに、アーム部材31を押し上げる方向の負荷が徐々に増加して、後蓋17の開く方向への移動力を徐々に重くし、アーム部材31の先端部が最も下側に移動した際に、アーム部材31を押し上げる方向の負荷が最大になり、後蓋17の開く方向への移動力を最も重くすることができ、これによっても鍵盤蓋14を安全に開くことができる。
さらに、この蓋開閉装置15によれば、鍵盤蓋14が前蓋16と後蓋17とを蝶番などの連結部18で折り曲げ可能に連結した構成であることにより、鍵盤蓋14を閉じて鍵盤部10を覆う際に、前蓋16と後蓋17とを同一面上に配置させて鍵盤部10を確実に且つ良好に覆うことができ、また鍵盤蓋14を開いて鍵盤部10を露出させる際に、前蓋16と後蓋17とを連結部18によってほぼ直角に折り曲げて楽器ケース1内にコンパクトに収納することがきるので、楽器ケース1全体をコンパクトに構成することができる。
この場合、鍵盤蓋14の前蓋16は、楽器ケース1の前後方向の長さが後蓋17の前後方向の長さよりも短く形成されていることにより、鍵盤蓋14を開いて鍵盤部10を上側に開放した際に、前蓋16の上方に位置する楽器ケース1の天板6の前後方向の長さを短くすることができ、且つこの前蓋16に対して後蓋17がほぼ直角に折り曲げられた状態で楽器ケース1の後板4に沿って配置されるので、これによっても楽器ケース1全体をコンパクトに構成することができる。
すなわち、前蓋16が後蓋17よりも短いことにより、楽器ケース1の前後方向の長さを短くすることができる共に、この前蓋16に対して後蓋17をほぼ直角に折り曲げて鍵盤部10の後部に接近させることができるので、後蓋17の前後方向の長さが前蓋16の前後方向の長さよりも長くても、楽器ケース1の前後方向の長さを短くすることができ、これにより楽器ケース1全体をコンパクトに構成することができる。
なお、上述した実施形態では、伝達部39における回転軸34の取付穴48の内面に内側キー突起部48aを設け、伝達軸42の一端部側の外周面に外側キー溝部42bを設けた場合につて述べたが、これに限らず、例えば回転軸34の取付穴48の内面に内側キー溝部を設け、伝達軸42の一端部側の外周面に、内側キー溝部に係合する外側キー突起部を設けた構成であっても良い。
また、上述した実施形態では、鍵盤蓋14が前蓋16と後蓋17とを蝶番などの連結部18で折り曲げ可能に連結した構成である場合について述べたが、これに限らず、例えば3つ以上の蓋部に分割し、これらの蓋部を蝶番などの連結部によって順次折り曲が可能に連結した構成であっても良い。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
請求項1に記載の発明は、 楽器ケース内に設けられた鍵盤部を鍵盤蓋が開閉自在に覆う蓋開閉装置において、
前記鍵盤蓋の開閉動作に応じて支点を中心に回転するアーム部材と、
このアーム部材に回転軸によって回転自在に取り付けられたピニオンギアと、
前記アーム部材の回転に伴って前記ピニオンギアが噛み合いながら回転移動する円弧状のガイドギアと、
前記アーム部材に形成され、前記鍵盤蓋の開閉動作の際に前記ピニオンギアに負荷を付与するためのダンパー部材が前記アームに対して独立した形で取り付け可能なダンパー取り付け部と、
を備えていることを特徴とする蓋開閉装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蓋開閉装置において、さらに前記ダンパー部材を前記ピニオンギアの前記回転軸に挿脱可能に連結することにより、前記ピニオンギアの回転を前記ダンパー部材に伝達する伝達部を備えていることを特徴とする蓋開閉装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の蓋開閉装置において、前記ダンパー部材は、外筒部および内筒部を有して一定の負荷を発生するロータリーダンパー部と、前記外筒部を係止して前記アーム部材に対して固定するためのダンパーカバー部と、前記内筒部内に挿入して係止された状態で前記内筒部と共に回転する伝達軸とを備えていることを特徴とする蓋開閉装置である。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の蓋開閉装置において、前記伝達部は、前記ピニオンギアの前記回転軸にその軸方向に沿って設けられて前記ダンパー部材の前記伝達軸の一端部側が挿入する取付穴と、この取付穴の内面に設けられた内側キー部と、前記伝達軸の前記一端部側の外周面に設けられて前記内側キー部に係合する外側キー部とを備えていることを特徴とする蓋開閉装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蓋開閉装置において、前記鍵盤蓋の開閉動作に伴って前記アーム部材が回転する際に、その回転途中でニュートラル状態を有し、このニュートラル状態を境にして逆向きの負荷を前記アーム部材に付与して前記鍵盤蓋の動作を制動する制動部材を備えていることを特徴とする蓋開閉装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の蓋開閉装置において、前記鍵盤蓋は、複数の蓋部が折り曲げ可能に連結されていることを特徴とする蓋開閉装置である。