JP6119881B1 - カプロン酸エチルの産生能が高い酵母、及び当該酵母を利用した発酵物の製造方法 - Google Patents

カプロン酸エチルの産生能が高い酵母、及び当該酵母を利用した発酵物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、低精米した原料米を使用してもカプロン酸エチルを高産生できる酵母を提供することである。【解決手段】、酢酸イソアミルを高生産するサッカロマイセス・セレビシエに対して変異処理した後に、セルレニン耐性を示す株を選択することによって、精米歩合70%という低精米した原料米を使用しても、カプロン酸エチルを高産生できる株が得られる。【選択図】なし

Description

本発明は、カプロン酸エチルの産生能が高い酵母に関する。更に、本発明は、当該酵母を使用した発酵物、及びその製造方法に関する。
近年、食生活の水準の高まりを受けて、消費者の嗜好性の多様化や高級志向が進んでおり、清酒、焼酎、ビール、みそ、醤油、パン等の発酵飲食品の分野でも、豊かな香気を有する製品に対する要望が高まっている。このような消費者の要望に追従するために、発酵飲食品の香気を高める技術が検討されている。
清酒では、カプロン酸エチルが吟醸香の主成分になっており、清酒の香気を左右する重要な成分であることが知られている。そのため、豊かな吟醸香を有する清酒を製造する上で、カプロン酸エチルの含有量を高めることが重要になっている。
従来、カプロン酸エチルの含有量が高い清酒は、精米歩合60%以下に高精白した原料米を使用して低温で発酵することによって製造できることが知られている。しかしながら、このように高精白した原料米を使用する場合には、コストや製造時間が増大するという問題点がある。
そこで、近年、カプロン酸エチルを高産生する酵母の育種が精力的に検討されている。例えば、特許文献1には、サッカロミセス属に属する酵母の同一起源由来の一倍体同士の細胞の交雑を行うことによって、カプロン酸エチル高生産株が得られることを開示している。また、特許文献2には、酒もろみ中で自然突然変異したサッカロマイセス・セレビシエ15BY16−9株(FERM AP−21235)が、カプロン酸エチルを高産生することを開示している。しかしながら、従来、精米歩合が70%という低精米した原料米を使用してカプロン酸エチルを高生産する酵母を育種する技術については見出されていないのが現状である。
国際公開第96/20272号 特開2008−228588号公報
本発明の目的は、低精白した原料米を使用してもカプロン酸エチルを高産生できる酵母を提供することである。更に、本発明の他の目的は、当該酵母を使用して、清酒を初めとする発酵物の製造方法を提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、酢酸イソアミルを高生産するサッカロマイセス・セレビシエに対して変異処理した後に、セルレニン耐性を示す株を選択することによって、精米歩合70%という低精白した原料米を使用しても、カプロン酸エチルを高産生できる株が得られることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. カプロン酸エチルを高産生できるサッカロマイセス・セレビシエであって、
表1に示す条件1で清酒の三段小仕込試験に供した際に、留添15日に上槽して得られる清酒中のカプロン酸エチル濃度が4mg/L以上になる、サッカロマイセス・セレビシエ。
項2. 下記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、菌体中のカプロン酸含量が0.01mg/g−dry cells以上になる、項1に記載のサッカロマイセス・セレビシエ。
項3. セルレニン耐性を示す、項1又は2に記載のサッカロマイセス・セレビシエ。
項4. FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異体を有する、項1〜3のいずれかに記載のサッカロマイセス・セレビシエ。
項5. hec2株(NITE P−02179)である、項1〜4のいずれかに記載のサッカロマイセス・セレビシエ。
項6. 酢酸イソアミルの産生能が高いサッカロマイセス・セレビシエに、に対して変異処理を施した後に、セルレニン耐性株を選択する工程を含む、カプロン酸エチル高産生酵母の育種方法。
項7. 項1〜5のいずれかに記載のサッカロマイセス・セレビシエを用いて発酵物を製造する工程を含む、発酵物の製造方法。
項8. 前記発酵物が清酒である、項7に記載の発酵物の製造方法。
項9. 精米歩合が40〜90%の米を使用する、項8に記載の発酵物の製造方法。
項10. 項1〜5のいずれかに記載のサッカロマイセス・セレビシエを用いて得られた清酒であって、カプロン酸エチル濃度が6mg/l以上である、清酒。
項11. 原料となる米の精米歩合が70〜90%である、項10に記載の清酒。
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母によれば、低精白した原料米を使用しても、カプロン酸エチルを高産生できるので、カプロン酸エチルの含有量が高く豊かな吟醸香を有する発酵物を効率的に製造することが可能になる。
実施例1において、オーレオバシジンA耐性株(hia1〜6)を清酒の三段小仕込試験に供し、香気成分(酢酸イソアミル、イソアミルアルコール)、日本酒度(Be’)、総酸度、及びアミノ酸度を測定した結果を示す。 実施例1において、セルレニン耐性株(hec1〜7)を清酒の三段小仕込試験に供し、香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)、日本酒度(Be’)、総酸度、及びアミノ酸度を測定した結果を示す。 実施例3において、hia1改変体(FAS2遺伝子:ホモ型変異)、hec2株(FAS2遺伝子:ホモ型変異)、hia1株(FAS2遺伝子:野生型)、及びK1801株(FAS2遺伝子:ヘテロ型変異)を清酒の三段小仕込試験に供し、香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)を測定した結果を示す。 実施例3において、hia1改変体(FAS2遺伝子:ホモ型変異)、hec2株(FAS2遺伝子:ホモ型変異)、hia1株(FAS2遺伝子:野生型)、及びK1801株(FAS2遺伝子:ヘテロ型変異)を清酒の一段小仕込試験に供し、菌体内のカプロン酸量を測定した結果を示す。 実施例4において、Km97株、hia1株、hec2株、及びK1801株におけるFAS1遺伝子及びFAS2遺伝子の発現量を測定した結果を示す。 実施例4において、Km97株、hia1株、hec2株、及びK1801株におけるEEB1遺伝子及びEHT1遺伝子の発現量を測定した結果を示す。 実施例4において、Km97株、hia1株、hec2株、及びK1801株におけるATF1遺伝子、ATF2遺伝子、及びIAH1遺伝子の発現量を測定した結果を示す。 実施例5において、Km97株、hia1株、hec2株、及びK1801株におけるアルコールアセチルトランスフェラーゼ活性(AAT活性)を測定した結果を示す。 実施例6において、hec2株を用いて、精米歩合70%の白米を使用して純米酒の実生産試験を行った際に、醪の上清に含まれる香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)を経時的に測定した結果を示す。 実施例7において、hec2株を使用して得られた清酒と市販の清酒(製品A〜H)における香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)を測定した結果を示す。
1.カプロン酸エチル高産生酵母
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母は、カプロン酸エチルを高産生できるサッカロマイセス・セレビシエであって、後述する条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供した際に、留添15日に上槽して得られる清酒中のカプロン酸エチル濃度が4mg/L以上になるサッカロマイセス・セレビシエである。以下、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母について詳述する。
[カプロン酸エチル高産生酵母の種類]
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の種類については、サッカロマイセス・セレビシエに属することを限度として特に制限されないが、例えば、清酒、ビール、焼酎、ワイン、ウイスキー、醤油、味噌等の製造に使用される醸造酵母、製パンに使用されるパン酵母等されるパン酵母等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは醸造酵母、更に好ましくは清酒酵母が挙げられる。
[カプロン酸エチル高産生酵母のカプロン酸エチル産生能]
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母は、カプロン酸エチルの産生能が高いという特徴がある。具体的には、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母は、下記条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供した際に得られる清酒中のカプロン酸エチル濃度が4mg/L以上にできる特性を有している。
従来の酵母では、精米歩合70%という低精白した原料米を使用すると、カプロン酸エチルの産生量が低下する傾向を示すが、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母では、このような低精白の原料米を使用してもカプロン酸エチルを高産生できるという特筆すべき特徴を有している。本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の好適な例として、前記条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供した際に得られる清酒中のカプロン酸エチル濃度が、好ましくは6〜30mg/L、更に好ましくは9〜30mg/Lにできる特性を有しているものが挙げられる。
[カプロン酸エチル高産生酵母の菌体内カプロン酸量]
また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の好適な例として、下記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、菌体中のカプロン酸含量が0.01mg/g−dry cells以上、好ましくは0.01〜0.08mg/g−dry cells、更に好ましくは0.06〜0.08mg/g−dry cellsとなる特性を有しているものが挙げられる。
[カプロン酸エチル高産生酵母の生育特性]
また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の好適な一特性として、セルレニン耐性を備えるもの、具体的には5.0μg/mlのセルレニンを含むSD培地で生育可能な特性を備えているものが挙げられる。
[カプロン酸エチル高産生酵母の遺伝的特徴]
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異体を有するものが挙げられる。FAS2とは脂肪酸合成酵素(FAS、fatty acid synthase)のサブユニットの1つであり、酵母のFAS2遺伝子は配列番号1に示す塩基配列からなることが知られている。即ち、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様では、配列番号1に示す塩基配列において3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異遺伝子を有し、これによって配列番号2に示すアミノ酸配列(FAS2の野生型のアミノ酸配列)における1250番目のグリシンがセリンに変異したFAS2を産生する。このようなFAS2遺伝子の変異体を有することによって、カプロン酸エチルの前駆体であるカプロン酸の生成量が増大し、より一層効率的にカプロン酸エチルの産生能の向上を図ることが可能になると考えられる。
[カプロン酸エチル高産生酵母の遺伝子発現特性]
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、FAS2遺伝子の発現量が高いことが挙げられる。具体的には、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、FAS2 mRNA量が、清酒酵母きょうかい1801号の場合に比して、1.5倍以上、好ましくは1.5〜2.0倍、更に好ましくは1.7〜2.0倍になるものが挙げられる。
更に、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、FAS1遺伝子の発現量が高いことが挙げられる。FAS1はFASのサブユニットの一つである。具体的には、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、FAS1 mRNA量が、清酒酵母きょうかい1801号の場合に比して、1.3倍以上、好ましくは1.3〜2.0倍、更に好ましくは1.5〜2.0倍になるものが挙げられる。
また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、EEB1遺伝子の発現量が高いことが挙げられる。EEB1は、エタノールO−アシルトランスフェラーゼであり、菌体内でカプロイル−CoAからカプロン酸エチルを生成する反応を触媒する酵素である。具体的には、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、EEB1 mRNA量が、清酒酵母きょうかい1801号の場合に比して、1.8倍以上、好ましくは1.8〜2.2倍、更に好ましくは2.0〜2.2倍になるものが挙げられる。
また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、ATF1遺伝子の発現量が高いことが挙げられる。ATF1は、アルコールアセチルトランスフェラーゼであり、菌体内でアセチル−CoAとイソアミルアルコールから酢酸イソアミルを生成する反応を触媒する酵素である。具体的には、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の一態様として、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、ATF1 mRNA量が、清酒酵母きょうかい1801号の場合に比して、1.5倍以上、好ましくは1.5〜2.2倍、更に好ましくは1.8〜2.2倍になるものが挙げられる。
[カプロン酸エチル高産生酵母の育種方法]
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母の育種方法については、前述するカプロン酸エチル産生能を有するものを取得できることを限度として、特に制限されないが、好適な一例として、酢酸イソアミルの産生能が高い酵母(以下、酢酸イソアミル高産生酵母を表記することもある)に対して変異処理を施し、セルレニン耐性株を選択する方法が挙げられる。以下、当該育種方法について、詳述する。
・酢酸イソアミル高産生酵母
酢酸イソアミル高産生酵母とは、通常の酵母(清酒酵母きょうかい1801号等)に比して酢酸イソアミルの産生能が高い酵母である。酢酸イソアミル高産生酵母として、具体的には、下記条件3に示す清酒の三段小仕込試験に供した際に得られる上清中の酢酸イソアミル濃度が35mg/L以上、好ましくは35〜45mg/L、更に好ましくは40〜45mg/Lにできる特性を有しているものが挙げられる。
酢酸イソアミル高産生酵母の好適な一態様として、産生するイソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比率(重量比、E/A比)が高いものが挙げられる。具体的には、酢酸イソアミル高産生酵母の好適な一態様として、前記条件3に示す清酒の三段小仕込試験に供した際に得られる上清のE/A比が、20以上、好ましくは20〜30、更に好ましくは25〜30になる特性を有しているものが挙げられる。
また、酢酸イソアミル高産生酵母の好適な一特性として、オーレオバシジンA耐性を備えるもの、具体的には1.0μg/mlのオーレオバシジンAを含むSD培地で生育可能な特性を備えているものが挙げられる。
更に、酢酸イソアミル高産生酵母の好適な一例として、ATF1遺伝子の発現量及びATF1産生量が高い酵母が挙げられる。具体的には、酢酸イソアミル高産生酵母の一態様として、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、菌体内のATF1 mRNA量が、清酒酵母きょうかい1801号の場合に比して、1.5倍以上、好ましくは1.5〜2.2倍、更に好ましくは2.0〜2.2倍になるものが挙げられる。また、酢酸イソアミル高産生酵母の他の一態様として、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供した際に、菌体内のATF1量が、清酒酵母きょうかい1801号の場合に比して、2.0倍以上、好ましくは2.0〜3.0倍、更に好ましくは2.5〜3.0倍になるものが挙げられる。
また、酢酸イソアミル高産生酵母の好適な一例として、MGA2遺伝子の2117位のCがAに変異したホモ接合型のMGA2変異体を有するものが挙げられる。MGA2とはATF1の転写活性因子であり、配列番号3に示す塩基配列からなることが知られている。MGA2遺伝子の2117位のCがAに変異したホモ接合型のMGA2変異体では、当該変異によってストップコドンを生じ、C末端側の1/3程度が欠失した不完全なMGA2が翻訳される。MGA2遺伝子の2117位のCがAに変異したホモ接合型のMGA2変異体を有する酵母は、MGA2が核内に移行し易くなり、不飽和脂肪酸の影響を受け難くなってATF1の発現が抑制されず、その結果、酢酸イソアミル高産生能を獲得できると考えられる。
酢酸イソアミル高産生酵母は、製造する発酵物の風味を良好にするために、必要に応じて尿素を産生しないように改変されているものであってもよい。尿素非生産株への改変は、エチルメタンスルホン酸、亜硝酸、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、アクリジン系色素等を用いた化学処理;紫外線、放射線等の光線照射処理;自然変異などによって行うことができる。また、尿素非生産株は、通常はアルギナーゼ非資化性を示すので、アルギニンの類似化合物であるカナバニンを含むCAO培地での生育を指標に選択することができる。
酢酸イソアミル高産生酵母は、公知の酵母から前述する特性を備えるものを選択して使用してもよく、また通常の酵母を育種することにより得たものを使用してもよい。
・酢酸イソアミル高産生酵母の育種法
酢酸イソアミル高産生酵母を育種により得る方法としては、母株となる酵母に対して、変異処理を行った後に、オーレオバシジンA耐性株を選択する方法が挙げられる。変異処理としては、具体的には、エチルメタンスルホン酸、亜硝酸、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、アクリジン系色素等を用いた化学処理;紫外線、放射線等の光線照射処理等が挙げられる。これらの変異処理の中でも、好ましくはエチルメタンスルホン酸を用いた化学処理が挙げられる。
また、前記変異処理を施した酵母からオーレオバシジンA耐性株を選択するには、オーレオバシジンAを含有する培地で培養し、生育した株を単離すればよい。
オーレオバシジンAを含有する培地におけるオーレオバシジンAの濃度については、オーレオバシジンA非耐性株が生育できない濃度範囲で適宜設定すればよいが、例えば、0.2〜1.0μg/ml、好ましくは0.3〜1.0μg/ml、更に好ましくは0.5〜1.0μg/mlが挙げられる。
また、オーレオバシジンAを含有する培地は、寒天培地又は液体培地のいずれであってもよいが、目的の株の選択のし易さの観点から、寒天培地が好ましい。
オーレオバシジンAを含有する培地を用いて培養する際の条件については、酵母の生育特性に応じて適宜設定すればよいが、例えば、培養温度が20〜30℃、好ましくは25〜30℃、更に好ましくは28〜30℃で、培養時間が24〜96時間、好ましくは24〜72時間、更に好ましくは24〜48時間が挙げられる。
斯くして得られたオーレオバシジンA耐性株には、酢酸イソアミルの産生能が高い変異株が高頻度で含まれており、オーレオバシジンA耐性株の中から、酢酸イソアミルの産生能が高い株を選定すればよい。酢酸イソアミルの産生能については、具体的には、前記条件3に示す清酒の三段小仕込試験に供し、上清中の酢酸イソアミル濃度を測定すればよい。
・酢酸イソアミル高産生酵母の変異処理
酢酸イソアミル高産生酵母に対して行われる変異処理の種類については、特に制限されないが、例えば、エチルメタンスルホン酸、亜硝酸、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン、アクリジン系色素等を用いた化学処理;紫外線、放射線等の光線照射処理等が挙げられる。これらの変異処理の中でも、好ましくはエチルメタンスルホン酸を用いた化学処理が挙げられる。
・変異処理を施した酢酸イソアミル高産生酵母からセルレニン耐性株の選択
変異処理を施した酢酸イソアミル高産生酵母からセルレニン耐性株を選択するには、セルレニンを含有する培地で培養し、生育した株を単離すればよい。
セルレニンを含有する培地におけるセルレニンの濃度については、セルレニン非耐性株が生育できない濃度範囲で適宜設定すればよいが、例えば、1〜20μg/ml、好ましくは2〜10μg/ml、更に好ましくは3〜10μg/mlが挙げられる。
また、セルレニンを含有する培地は、寒天培地又は液体培地のいずれであってもよいが、目的の株の選択のし易さの観点から、寒天培地が好ましい。
セルレニンを含有する培地を用いて培養する際の条件については、酵母の生育特性に応じて適宜設定すればよいが、例えば、培養温度が20〜30℃、好ましくは25〜30℃、更に好ましくは28〜30℃で、培養時間が24〜96時間、好ましくは24〜72時間、更に好ましくは24〜48時間が挙げられる。
斯くして得られたセルレニン耐性株には、カプロン酸エチルの産生能が高い変異株が高頻度で含まれており、セルレニン耐性株の中から、カプロン酸エチルの産生能が高い株を選定すればよい。カプロン酸エチルの産生能については、具体的には、前記条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供し、上清中のカプロン酸エチル濃度を測定すればよい。また、得られたセルレニン耐性株は、必要に応じて、前述するその他の特性の有無についても確認しておいてもよい。
[カプロン酸エチル高産生酵母の具体例]
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母は、前述する育種法によって得ることができるが、好適な菌株として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターにhec2株(NITE P−02179)として受託されており、当該受託菌を使用することもできる。
2.カプロン酸エチル高産生酵母の利用
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母は、カプロン酸エチルの含有量が高く、豊かな香りがする発酵物の製造に使用することができる。本発明のカプロン酸エチル高産生酵母を使用した発酵物の製造は、目的の発酵物の種類に応じて、原料及び製造条件を適宜設定すればよい。
本発明のカプロン酸エチル高産生酵母を使用して製造される発酵物の種類については、特に制限されないが、例えば、清酒、焼酎、ビール、ワイン等の酒類;みそ、醤油、パン、食酢、パン等の発酵飲食品が挙げられる。これらの発酵物の中でも、酒類、とりわけ清酒は、カプロン酸エチルによる吟醸香が風味の向上に大きく寄与するため、好適な製造対象である。
また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母を使用して清酒を製造する場合、原料として使用する米の精米歩合については、特に制限されないが、例えば、40〜90%が挙げられる。また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母では、低精白の原料米であって、カプロン酸エチルを高産生できるという特有の性質がある。かかる本発明の効果を鑑みれば、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母を使用して清酒を製造する場合に使用する原料米の精米歩合として、好ましくは70〜90%、更に好ましくは70〜80%、特に好ましくは70〜73%が挙げられる。
また、本発明のカプロン酸エチル高産生酵母を使用して製造される清酒の特性としては、カプロン酸エチルの含有量が高いこと、具体的には、カプロン酸エチル濃度が6mg/l以上、好ましくは6〜30mg/l、更に好ましくは9〜30mg/lが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例において仕込みに使用した原料米及び麹米の品種は、日本晴である。
香気成分の測定条件
以下の実施例において香気成分(酢酸イソアミル、カプロン酸エチル等)の測定は、ガスクロマトグラフ/水素イオン化検出器(GC/FID)を用いて、ヘッドスペース法により検出した。具体的には、各香気成分を規定濃度含む標準液5mlに内部標準液を1ml加えて、検量線を作成した。そして、各サンプル5mlに内部標準液を1ml加えて測定し、サンプル中の香気成分量を前記で得られた検量線を使用して求めた。なお、内部標準液として、ヘキサン酸メチルを用いた。また、GC/FIDによる分析条件は以下の通りである。
(GC/FIDによる分析条件)
GC−FID:GC2010 Plus(島津製作所)
カラム :DB−WAX(60m×0.32mm、0.5μm、Agilent)
昇温条件 :40℃、5分→5℃/分→100℃→20℃/分→230℃、5分
注入方法 :ヘッドスペースオートサンプラー(Turbo Matrix HS40, Perkin Elemer)
実施例1:カプロン酸エチル高産生酵母の取得
1.オーレオバシジンA耐性株の取得
サッカロマイセス・セレビシエKm97株を用いて、オーレオバシジンA耐性株の取得を行った。サッカロマイセス・セレビシエKm97株は、きょうかい9号泡なし酵母に対して、変異処理を行わずに、CAO培地において生育できるアルギナーゼ資化性を欠損した株を自然変異によって取得した尿酸非産生化株である。
先ず、YPD培地を用いてKm97株を30℃で1日振盪培養を行った後、50mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)で洗浄し、同バッファーに懸濁した。次いで、得られたKm97株の懸濁液にエチルメタンスルホン酸を4重量%となるように添加し、30℃で1時間振盪することにより変異処理を行った。その後、5重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液で中和してから、変異処理後の酵母を滅菌水に懸濁し、これを1.0μg/mlのオーレオバシジンAを含むSD培地に塗布し、30℃で培養し、475個のコロニーを単離した。
2.酢酸イソアミル高生産株の取得
表6に示す各原料を55℃で4時間撹拌して液化し、これを水で1.5倍に希釈した後に、乳酸を酸度4.0となるよう添加して米糖化液を作成した。得られた米糖化液を10mlずつ試験管に分注し、前記で得られたオーレオバシジンA耐性株475株を1白金耳ずつ植菌して15℃で11日間培養した。次いで、培養液から遠心分離にて上清を回収し、上清に含まれる酢酸イソアミル量をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定した。その結果、酢酸イソアミルの産生能が高い6株(hia1〜6)を選択した。
次いで、得られた6株(hia1〜6)について、前記条件3に示す清酒の三段小仕込試験に供し、上槽後に遠心分離して上清を回収し、上清に含まれる香気成分(酢酸イソアミル、イソアミルアルコール)をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定した。また、上清におけるエタノール含量、日本酒度(Be’)、総酸度(TA、0.1N NaOH ml)、及びアミノ酸度(AA、0.1N NaOH ml)を測定した。なお、日本酒度(Be’)は、振動式密度比重計(DA-510)を用いて測定した。また、総酸度(TA)は、BTB液を添加後、10mlの液量に対し赤色から緑色に変色する時のNaOHの滴下量によって求めた。更に、アミノ酸度(AA)は、10mlの液量にフェノールフタレインを添加後、うすい赤色になるまでNaOHを加えた後、ホルマリンを5ml添加し、無色になった液が前記うすい赤色になるまで滴下したNaOH量によって求めた。また、比較のため、Km97株についても、同様に前記条件3に示す清酒の三段小仕込試験に供し、同様に測定を行った。
得られた結果を図1に示す。図1中、E/A比とは、イソアミルアルコールに対する酢酸イソアミルの比率(重量比)である。この結果、hia1、hia2、hia4及びhia6の4株において、E/A比が高く、高い酢酸イソアミルの産生能を有していることが確認された。これらの4株の内、香気等の官能評価が最も高かったhia1株を選択した。
また、hia1株のMGA2遺伝子の塩基配列の解析を行ったところ、当該株は、MGA2遺伝子の2117位のCがAに変異したホモ接合型のMGA2変異遺伝子を有していることが確認された。
3.セルレニン耐性株の取得
先ず、YPD培地を用いてhia1株を30℃で1日振盪培養を行った後、50mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)で洗浄し、同バッファーに懸濁した。次いで、得られたhia1株懸濁液にエチルメタンスルホン酸を4重量%となるように添加し、30℃で1時間振盪することにより変異処理を行った。その後、5重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液で中和してから、変異処理後の酵母を滅菌水に懸濁し、これを5.0μg/mlのセルレニンを含むSD培地に塗布し、30℃で培養し、44個のコロニーを分離した。
4.カプロン酸エチル高生産株の取得
前記と同様の方法で米糖化液を作成した。得られた米糖化液を10mlずつ試験管に分注し、前記で得られたセルレニン耐性株44株を1白金ずつ植菌して15℃で11日間培養した。次いで、培養液から遠心分離にて上清を回耳収し、臭覚により香気の評価を行った。その結果、フルーティーな香気が高い7株(hec1〜7)を選択した。
次いで、得られた7株(hec1〜7)について、前記条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供し、上槽後に遠心分離して上清を回収し、上清に含まれる香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定した。また、上清におけるエタノール含量、日本酒度(Be’)、総酸度(TA、0.1N NaOH ml)、及びアミノ酸度(AA、0.1N NaOH ml)を測定した。また、比較のため、清酒酵母きょうかい1801号(以下、1801株)についても、同様に前記条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供し、同様に測定を行った。
得られた結果を図2に示す。この結果、hec2、hec3及びhec6の3株において、高いカプロン酸エチルの産生能が認められた。これらの4株の内、香気等の官能評価が最も高かったhia1株を選択した。その中で最も官能評価の高かったhec2株については、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターにhec2株(NITE P−02179)に寄託した。
実施例2:カプロン酸エチル高産生酵母hec2株のFAS遺伝子の塩基配列の解析
次世代DNAシーケンサーを使用して、カプロン酸エチル高産生酵母hec2株のFAS遺伝子の塩基配列の解析を行った。
その結果、カプロン酸エチル高産生酵母hec2株は、FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異遺伝子を有していることが確認された。
実施例3:FAS2以外におけるhec2株とhia1株との表現型の異同の確認
前記実施例2において、hec2株は、FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異遺伝子を有していることが明らかとなった。一方、hia1株は野生型のFAS2遺伝子を有している。そこで、hec2株が有するカプロン酸エチル高産生能が、当該FAS2変異遺伝子のみに依拠しているか否かを確かめるために、以下の試験を行った。
以下の方法で、hia1株にホモ接合型のFAS2変異を導入した。先ず、hia1株を親株として、G3748Aを含むFAS2遺伝子のオープンリーディングフレームの3,733〜3,762bp領域の合成DNAと相補的な合成オリゴDNAをアニーリングした後、形質転換を行い、3748位のGがAに変異したFAS2変異をヘテロに持つセルレニン耐性株を取得した。
次いで、得られたセルレニン耐性株を親株とし、前記と同様のオリゴDNAを用いて形質転換を行った。得られた形質転換体を10μg/mlのセルレニンを含むSD培地に塗布し、30℃で培養することにより、FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異遺伝子を有するhia1株改変体を得た。なお、hia1株改変体において、FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したホモ接合型のFAS2変異遺伝子が存することについては、シーケンス解析により確認した。
次いで、得られたhia1株改変体について、前記条件1に示す清酒の三段小仕込試験に供し、上槽後に遠心分離して上清を回収し、上清に含まれる香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定した。また、比較のため、hec2株、hia1株(野生型)、及びK1801株についても、同様に段小仕込試験に供した。なお、K1801株は、FAS2遺伝子の3748位のGがAに変異したヘテロ型のFAS2変異遺伝子を有している。
また、得られたhia1株改変体について、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供し、上槽後に遠心分離して上清と酵母を回収し、上清に含まれる香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定し、酵母の菌体内に含まれるカプロン酸を脂肪酸メチル化・精製キット(ナカライテスク)を用いて測定した。
前記条件1に示す清酒の三段小仕込試験を行った結果を図3に示し、前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験を行った結果を図4に示す。ホモ接合型のFAS2変異遺伝子を有しているhia1株改変体では、hia1株(野生型)に比べて、カプロン酸エチルの産生能が高まっていたが、hec2株よりもカプロン酸エチルの産生能が低かった。また、hec2株における菌体内カプロン酸量は、hia1株(野生型)、hia1株改変体、及びK1801株に比べて有意に高い値を示していた。即ち、これらの結果から、hec2株は、FAS2遺伝子の変異以外の点でも、hia1株とは表現型が異なることが明らかとなった。
実施例4:hec2株の遺伝子発現解析
hec2株の遺伝子発現特性を解析するために以下の試験を行った。hec2株を前記条件2に示す清酒の一段小仕込試験に供し、上槽後に遠心分離して酵母を回収した。回収した酵母から、RNasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて菌体内の総RNAを抽出し、TFC1をリファレンス遺伝子としてRT−PCRによりFAS1、FAS2、EEB1、EHT1、ATF1、ATF2、及びIAH1の遺伝子の発現量を解析した。また、比較のため、hia1株(野生型)、Km97株、及びK1801株についても、同様に遺伝子発現の解析を行った。
得られた結果を図5〜7に示す。この結果から、hec2株は、FAS1、FAS2、EEB1、及びATF1の各遺伝子の発現量が向上していることが明らかとなった。とりわけ、hec2株は、カプロン酸エチルの生成に大きく寄与しているEEB1遺伝子の発現量がhia1株に比して格段に高く、hia1株には認められない特性を備えていることが確認された。
実施例5:hec2株におけるアルコールアセチルトランスフェラーゼ活性の測定
hec2株におけるアルコールアセチルトランスフェラーゼ活性(AAT活性)を測定するために以下の試験を行った。グルコース濃度10%のSD培地を用いて、30℃で24時間静置培養した。培養後の酵母菌体を回収し、BufferA(25mMイミダゾールHCl pH7.5、0.1MNaCl、20%グリセロール、1mM DTT,46mMイソアミルアルコール、0.1%トリトンX―100)で洗浄後、酵母菌体をBufferA 3mlに溶解し、菌体液1ml当たりガラスビーズ0.8gを加えて酵母を破砕(30秒ON/OFF 10分)した。上清を回収後、ガラスビーズをBufferA 0.6mlで洗浄し、上清をまとめた。遠心分離後(15,000g×10分)、上清を回収し、無細胞抽出液を得た。なお、以上の無細胞抽出液の調製は、4℃の温度条件下で行った。
次いで、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo)により、菌体濃度を揃えた後、無細胞抽出液1mに1.6mMアセチルCoAを含むBufferA 1mlを加え、25℃で60分間ゆっくりと浸透させながら反応させた。そして、生成した酢酸イソアミル量をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定し、得られた無細胞抽出液におけるアルコールアセチルトランスフェラーゼ活性を算出した。また、比較のため、hia1株(野生型)、Km97株、及びK1801株についても、同様に遺伝子発現の解析を行った。
得られた結果を図8に示す。この結果から、hec2株におけるアルコールアセチルトランスフェラーゼは、hia1株(野生型)と同程度に高いことが確認された。
実施例6:hec2株を用いた純米酒の実生産
hec2株を用いて、精米歩合70%の白米を使用して純米酒の実生産を行った。具体的には、表7に示す条件で仕込を行い、上槽後、炭ろ過、火入れ、貯蔵(4カ月)、滓下げ・ろ過、瓶詰め・火入れを順次実施することにより、純米酒を得た。なお、留添4日目〜14日目まで経時的に醪をサンプリングし、上清に含まれる香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)をGC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定した。また、得られた純米酒中の香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)についても、GC/FIDを用いてヘッドスペース法により測定した。また、比較のために、市販されている8種の清酒[市販品A(純米酒、精米歩合70%)、市販品B(純米酒、精米歩合70%)、市販品C(純米酒、精米歩合70%)、市販品D(純米酒、精米歩合65%)、市販品E(純米酒、精米歩合65%)、市販品F(大吟醸、精米歩合50%)、市販品G(大吟醸、精米歩合50%)、及び市販品H(純米大吟醸、精米歩合39%)]についても、香気成分(カプロン酸エチル、酢酸イソアミル)の測定を行った。
醪の上清に含まれる香気成分を経時的に測定した結果を図9に示し、清酒中に含まれる香気成分を測定した結果を図10に示す。この結果から、hec2株を使用することにより総米6tの実製造においても、カプロン酸エチル含有量が高い純米酒が得られることが明らかとなった。また、hec2株を使用して得られた純米酒は、精米歩合70%の白米を使用していているにも拘らず、精米歩合39%を使用した純米大吟醸(市販品H)よりも、カプロン酸エチル含有量が高い値を示していた。また、hec2株を使用して得られた純米酒は、豊かな吟醸香が知覚され、優れた風味を備えていた。
NITE P−02179

Claims (5)

  1. カプロン酸エチルを高産生できるサッカロマイセス・セレビシエであって、hec2株(NITE P−02179)である、サッカロマイセス・セレビシエ。
  2. カプロン酸エチル高産生酵母の育種方法であって、
    前記カプロン酸エチル高産生酵母が、表1に示す条件1で清酒の三段小仕込試験に供した際に、留添15日に上槽して得られる清酒中のカプロン酸エチル濃度が4mg/L以上になり、且つ表2に示す条件2で清酒の一段仕込試験に供した際に、ATF1 mRNA量が、清酒きょうかい1801株号よりも1.5倍以上高い、サッカロマイセス・セレビシエであり、
    酢酸イソアミルの産生能が高いサッカロマイセス・セレビシエに対して変異処理を施した後に、セルレニン耐性株を選択する工程を含む、カプロン酸エチル高産生酵母の育種方法。
  3. 請求項に記載のサッカロマイセス・セレビシエを用いて発酵物を製造する工程を含む、発酵物の製造方法。
  4. 前記発酵物が清酒である、請求項に記載の発酵物の製造方法。
  5. 精米歩合が40〜90%の米を使用する、請求項に記載の発酵物の製造方法。
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