以下、本発明による回転電機の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る回転電機を示す片側断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子を示す斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子鉄心を構成する鉄心ブロックを示す斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す斜視図、図5はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す端面図、図6はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す正面図、図7はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における巻線体を電機子鉄心に装着した状態を第2コイルエンド側から見た模式図である。なお、図7では、コイルエンド部を直線的に示している。また、図7中、説明の便宜上、周方向に連続するスロット13を周方向の並び順にスロット131、スロット132・・・スロット138とした。
図1において、回転電機100は、有底円筒状のフレーム2およびフレーム2の開口を塞口する端板3を有するハウジング1と、フレーム2の円筒部に挿入、固着された電機子10と、フレーム2の底部および端板3にベアリング4を介して回転可能に支持された回転軸6に固着されて、電機子10の内周側に回転可能に配設された回転子5と、を備えている。
回転子5は、軸心位置を貫通するように挿入された回転軸6に固着された回転子鉄心7と、回転子鉄心7の外周面側に埋め込まれて周方向に等ピッチで配列され、磁極を構成する永久磁石8と、を備えた永久磁石型回転子である。なお、回転子5は、永久磁石式回転子に限定されず、絶縁しない回転子導体を、回転子鉄心のスロットに収納して、両側を短絡環で短絡したかご形回転子や、絶縁した導体線を回転子鉄心のスロットに装着した巻線形回転子を用いてもよい。
つぎに、電機子10の構成について具体的に図2乃至図7を参照しつつ説明する。
電機子10は、図2に示されるように、円環状の電機子鉄心11と、電機子鉄心11に装着された電機子巻線20と、を備えている。ここで、説明の便宜上、回転子5の極数を8極、電機子鉄心11のスロット数を48個、電機子巻線20を三相巻線とする。すなわち、スロットは、毎極毎相当たり2個の割合で電機子鉄心11に形成されている。
鉄心ブロック12は、図3に示されるように、電磁鋼板を積層一体化して作製され、断面円弧形のコアバック部12aと、コアバック部12aの内周壁面から径方向内方に突出する2本のティース12bと、を備えている。そして、電機子鉄心11は、ティース12bを径方向内方に向けて、コアバック部12aの周方向の側面同士を突き合わせて、24個の鉄心ブロック12を周方向に配列、一体化して、円環状に構成されている。つまり、鉄心ブロック12は、円環状の電機子鉄心11を周方向に24等分割したものである。コアバック部12aと周方向に隣り合うティース12bとにより構成されるスロット13が、内周側に開口するように、周方向に等角ピッチで配列されている。ティース12bは周方向幅が径方向内方に向って漸次狭くなる先細り形状に形成されており、スロット13の電機子鉄心11の軸方向と直交する断面は長方形となっている。
巻線体22は、例えば、エナメル樹脂で絶縁被覆された、かつ接続部のない連続した銅線やアルミニウム線などからなる、短辺幅dの長方形断面形状の導体線19を、エッジワイズ巻きに螺旋状に4ターン巻いて筒状のコイル体を作製し、その後コイル体をコイル成形機により略六角形に成形して作製される。また、巻線体22は、折り曲げ加工により、導体線19を略六角形に曲げつつ、螺旋状に作製してもよい。このように作製された巻線体22は、いわゆる亀甲形コイルである。
巻線体22は、図4から図6に示されるように、電機子鉄心11のスロット13に挿入される第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8直線部221,222,223,224,225,226,227,228、第1および第2直線部221,222の一端部間を接続する第1コイルエンド部231、第2および第3直線部222,223の他端部間を接続する第2コイルエンド部232、第3および第4直線部223,224の一端部間を接続する第3コイルエンド部233、第4および第5直線部224,225の他端部間を接続する第4コイルエンド部234、第5および第6直線部225,226の一端部間を接続する第5コイルエンド部235、第6および第7直線部226,227の他端部間を接続する第6コイルエンド部236、第7および第8直線部227,228の一端部間を接続する第7コイルエンド部237を備えている。
このように、巻線体22は、第1から第8直線部221〜228を第1から第7コイルエンド部231〜237により一続きに連結して構成される。
第1から第7コイルエンド部231〜237は、それぞれ、長さ方向の中央部(頭頂部)に、径方向にdだけ変位するクランク部240を有している。これにより、例えば、第2直線部222が第1直線部221に対して径方向内方にdだけ変位する。また、第1、第2、第3、第5、第6および第7コイルエンド部231,232,233,235,236,237の周方向長さは6スロットピッチであり、第4コイルエンド部234の周方向長さは5スロットピッチである。なお、6スロットピッチは、周方向に連続する6本のティース12bの両側に位置するスロット13のスロット中心間の間隔であり、1磁極ピッチに相当する。また、5スロットピッチは、周方向に連続する5本のティース12bの両側に位置するスロット13のスロット中心間の間隔である。
このように構成された巻線体22は、図7に示されるように、第1直線部221がスロット131の第1層に挿入され、第2直線部222がスロット131から周方向一側に6スロットピッチ離れたスロット137の第2層に挿入され、第3直線部223がスロット131の第3層に挿入され、第4直線部224がスロット137の第4層に挿入され、第5直線部225がスロット137から周方向他側に5スロットピッチ離れたスロット132の第5層に挿入され、第6直線部226がスロット132から周方向一側に6スロットピッチ離れたスロット138の第6層に挿入され、第7直線部227がスロット132の第7層に挿入され、第8直線部228がスロット138の第8層に挿入されて、電機子鉄心11に装着される。
このように、第2、第4、第6および第8直線部222,224,226,228が、第1、第3、第5および第7直線部221,223,225,227に対して、周方向一側に位置している。また、スロットセル14がスロット13内に装着され、巻線体22と電機子鉄心11との電気的絶縁が確保される。なお、直線部のスロット13内の挿入位置を、スロット13の底部側から開口側に向かって第1層、第2層・・・第8層とした。
つぎに、電機子10の組立方法について図8から図12を参照しつつ説明する。図8および図9はそれぞれこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子巻線の組立方法を説明する模式図、図10はこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子巻線を示す斜視図、図11および図12はそれぞれこの発明の実施の形態1に係る回転電機における電機子の組立方法を説明する図である。なお、便宜上、図9では、コイルエンド部を直線的に示し、図11および図12では、電機子巻線を直線部のみで示している。また、48個の巻線体22を組立順に、1番目の巻線体221、2番目の巻線体222、3番目の巻線体223・・・48番目の巻線体2248とする。また、第1から第8直線部221〜228の長さ方向、短辺方向および長辺方向を軸方向、径方向および周方向とする。
まず、図8の(a)に示されるように、2番目の巻線体222を、1番目の巻線体221の軸方向位置と同じ軸方向位置として、1番目の巻線体221の周方向一側に配置する。ついで、図8の(b)に示されるように、2番目の巻線体222をその軸方向位置を変えずに周方向他側に移動させる。そして、図8の(c)に示されるように、2番目の巻線体222を1番目の巻線体221に組み付ける。ついで、同様にして、3番目の巻線体223を、2番目の巻線体222に装着する。この手順を繰り返し、1番目の巻線体221から47番目の巻線体2247を組み付けてC字状の中間組立体23を作製する。
ついで、中間組立体23の1番目の巻線体221と47番目の巻線体2247との間を、48番目の巻線体2248の周方向幅より広くする。そして、図9の(a)に示されるように、48番目の巻線体2248を中間組立体23の広げられた開口内に配置する。ついで、図9の(b)に示されるように、48番目の巻線体2248を47番目の巻線体2247に組み付ける。その後、図8の(c)に示されるように、中間組立体23の開口を閉じ、1番目の巻線体221と48番目の巻線体2248を組み付けて、円環状に形成された電機子巻線20が組み立てられる。
このように組み立てられた電機子巻線20は、図10に示されるように、48個の巻線体22を1スロットピッチで周方向に配列して構成される。そして、8本の第1から第8直線部221〜228が径方向に1列に並んで、周方向に1スロットピッチで48列配列されている。第1、第3、第5および第7コイルエンド部231,233,235,237が周方向に配列されて第1コイルエンドを構成し、第2、第4および第6コイルエンド部232,234,236が周方向に配列されて第2コイルエンドを構成する。巻線体22の巻き始め端241が、それぞれ第1直線部221から軸方向に第2コイルエンド側に延び出て、第2コイルエンドの外径側に1スロットピッチで周方向に配列される。また、巻線体22の巻き終わり端242が、それぞれ第8直線部228から軸方向に第2コイルエンド側に延び出て、第2コイルエンドの内径側に1スロットピッチで周方向に配列される。
ついで、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などからなる絶縁性シートを曲げ成形して作製されたU字状のスロットセル14が、電機子巻線20の第1から第8直線部221〜228の各列に径方向外方から装着される。そして、図11に示されるように、ティース12bが第1から第8直線部221〜228の列間の径方向外方に位置するように、24個の鉄心ブロック12を電機子巻線20の外径側に配置する。ついで、各鉄心ブロック12を径方向内方に移動させ、ティース12bを第1から第8直線部221〜228の列間に挿入する。そして、図12に示されるように、周方向に隣り合う鉄心ブロック12のコアバック部12aの側面同士が突き合わされ、円環状の電機子鉄心11が組み立てられる。同時に、電機子巻線20が電機子鉄心11に装着される。ついで、電機子巻線20に交流結線が施されて、電機子10が組み立てられる。
ここで、電機子巻線20の結線方法の一例を説明する。まず、電気角で180°離れた巻線体22の巻き始め端241と巻き終わり端242を結線して、それぞれ、8本の巻線体22が直列に接続されたU1,U2,V1,V2,W1,W2相巻線を作製する。ついで、U1、U2相巻線を直列に接続してU相巻線を作製する。V1、V2相巻線を直列に接続してV相巻線を作製する。W1、W2相巻線を直列に接続してW相巻線を作製する。ついで、U相巻線、V相巻線およびW相巻線をY結線して、3相交流巻線が構成される。
この実施の形態1によれば、巻線体22を構成する第1から第8直線部221〜228が、それぞれ、6スロットピッチ離れたスロット13の対と、5スロットピッチ離れたスロット13の対とに挿入されている。そこで、巻線体22は、第4コイルエンド部234を境に挿入されるスロット13が1スロットずれ、短節巻きの分布巻き巻線となる。そこで、この巻線体22により構成される電機子巻線20は、電機子起磁力の高調波成分を減少でき、電機子巻線20の誘起電圧が正弦波状に近くなり、トルク脈動や鉄損を抑制できる。これにより、電機子巻線20を搭載した回転電機100は、精密な動きが求められるサーボモータや静音性が求められる電気自動車用の回転電機に適用できる。
第1から第7コイルエンド部231〜237の頭頂部に形成されたクランク部240の変形量が導体線19の厚みdである。そこで、特許文献1に比べて、クランク部240を曲げ成形する際の曲げ半径が小さくなり、コイルエンドの径方向寸法および軸方向寸法を小さくでき、小型化が図られる。さらに、導体線19の長さも短くなり、巻線抵抗を低減できる。
巻線体22は、例えば、導体線19をエッジワイズ巻きに螺旋状に4ターン巻いて筒状のコイル体を作製し、その後コイル体をコイル成形機により略六角形に成形して作製できるので、生産性が高められる。
第1から第8直線部221〜228の径方向位置が第1から第7コイルエンド部231〜237により径方向内方に順次dづつ変位されている。そこで、巻線体22同士が干渉することなく、48個の巻線体22を一つずつ周方向の一側から組み付けて円環状の電機子巻線20を作製できるので、特許文献2のように波巻きコイルを編み込む煩雑な工程が不要となり、生産性が高められる。
なお、上記実施の形態1では、鉄心ブロックが2本のティースをコアバック部の内周壁面から径方向内方に突出して作製されているが、鉄心ブロックは1本のティースをコアバック部の内周壁面から径方向内方に突出して作製されてもよい。この場合、鉄心ブロックは電機子鉄心を周方向に48等分割したものとなる。
また、上記実施の形態1では、巻線体22は、図7に示されるように、第1直線部221がスロット131の第1層に挿入され、第2直線部222がスロット137の第2層に挿入され、第3直線部223がスロット131の第3層に挿入され、第4直線部224がスロット137の第4層に挿入され、第5直線部225がスロット132の第5層に挿入され、第6直線部226がスロット138の第6層に挿入され、第7直線部227がスロット132の第7層に挿入され、第8直線部228がスロット138の第8層に挿入されるように構成されているが、巻線体22は、図7において、第1直線部221がスロット138の第1層に挿入され、第2直線部222がスロット132の第2層に挿入され、第3直線部223がスロット138の第3層に挿入され、第4直線部224がスロット132の第4層に挿入され、第5直線部225がスロット137の第5層に挿入され、第6直線部226がスロット131の第6層に挿入され、第7直線部227がスロット137の第7層に挿入され、第8直線部228がスロット131の第8層に挿入されるように構成されてもよい。
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2に係る回転電機における巻線体を電機子鉄心に装着した状態を第2コイルエンド側から見た模式図である。なお、図13では、コイルエンド部を直線的に示している。また、図13中、説明の便宜上、周方向に連続するスロット13を周方向の並び順にスロット131、スロット132・・・スロット139とした。
図13において、巻線体22Aは、第1直線部221がスロット131の第1層に挿入され、第2直線部222がスロット131から周方向一側に7スロットピッチ離れたスロット138の第2層に挿入され、第3直線部223がスロット131の第3層に挿入され、第4直線部224がスロット138の第4層に挿入され、第5直線部225がスロット138から周方向他側に6スロットピッチ離れたスロット132の第5層に挿入され、第6直線部226がスロット132から周方向一側に7スロットピッチ離れたスロット139の第6層に挿入され、第7直線部227がスロット132の第7層に挿入され、第8直線部228がスロット139の第8層に挿入されて、電機子鉄心11に装着されている。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
この実施の形態2では、第1、第2、第3、第5、第6および第7コイルエンド部231,232,233,235,236,237の周方向長さは7スロットピッチであり、第4コイルエンド部234の周方向長さは6スロットピッチである。そして、第1から第8直線部221〜228が、それぞれ、6スロットピッチ離れたスロット13の対と、7スロットピッチ離れたスロット13の対とに挿入されている。そこで、巻線体22Aは、第4コイルエンド部234を境に挿入されるスロット13が1スロットずれ、長節巻きの分布巻き巻線となる。そこで、この巻線体22Aにより構成される電機子巻線は、電機子起磁力の高調波成分を減少でき、電機子巻線の誘起電圧が正弦波状に近くなり、トルク脈動や鉄損を抑制できる。
実施の形態3.
図14はこの発明の実施の形態3に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す斜視図、図15はこの発明の実施の形態3に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す端面図、図16はこの発明の実施の形態3に係る回転電機における巻線体を電機子鉄心に装着した状態を第2コイルエンド側から見た模式図、図17はこの発明の実施の形態3に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す正面図、図18はこの発明の実施の形態3に係る回転電機における電機子を示す斜視図である。なお、図16では、コイルエンド部を直線的に示している。また、図16中、説明の便宜上、周方向に連続するスロット13を周方向の並び順にスロット131、スロット132・・・スロット139とした。
図14および図15において、巻線体22Bは、第1、第3、第5および第7コイルエンド部231,233,235,237の周方向長さは5スロットピッチであり、第2、第4、第6コイルエンド部232,234,236の周方向長さは6スロットピッチである。
このように構成された巻線体22Bは、図16に示されるように、第1直線部221がスロット134の第1層に挿入され、第2直線部222がスロット134から周方向一側に5スロットピッチ離れたスロット139の第2層に挿入され、第3直線部223がスロット139から周方向他側に6スロットピッチ離れたスロット133の第3層に挿入され、第4直線部224がスロット133から周方向一側に5スロットピッチ離れたスロット138の第4層に挿入され、第5直線部225がスロット138から周方向他側に6スロットピッチ離れたスロット132の第5層に挿入され、第6直線部226がスロット132から周方向一側に5スロットピッチ離れたスロット137の第6層に挿入され、第7直線部227がスロット137から周方向他側に6スロットピッチ離れたスロット131の第7層に挿入され、第8直線部228がスロット131から周方向一側に5スロットピッチ離れたスロット136の第8層に挿入されて、電機子鉄心11に装着される。
そして、48個の巻線体22Bが電機子鉄心11に装着され、図18に示される電機子鉄心11と電機子巻線20Bを備えた電機子10Bが組み立てられる。
なお、他の構成は上記実施の形態1と同様に構成されている。
この実施の形態3では、巻線体22Bは、第1から第7コイルエンド部231〜237が6スロットピッチのコイルエンド部と5スロットピッチのコイルエンド部により構成されている。そして、第1から第8直線部221〜228が、6スロットピッチ離れたスロット13の対と、5スロットピッチ離れたスロット13の対に挿入されている。したがって、この巻線体22Bは、短節巻きの分布巻き巻線となる。そこで、この巻線体22Bにより構成される電機子巻線は、電機子起磁力の高調波成分を減少でき、電機子巻線の誘起電圧が正弦波状に近くなり、トルク脈動や鉄損を抑制できる。
この実施の形態3では、図17に示されるように、第1コイルエンドが第1、第3、第5および第7コイルエンド部231,233,235,237で構成され、第2コイルエンドが第2、第4、第6コイルエンド部232,234,236で構成される。そして、周方向長さが5スロットピッチの第1、第3、第5および第7コイルエンド部231,233,235,237の頭頂部の電機子鉄心11の端面からの高さA’は、周方向長さが6スロットピッチの第2、第4および第6コイルエンド部232,234,236の頭頂部の電機子鉄心11の端面からの高さAより低い。そこで、第1コイルエンドの高さはA’となり、第2コイルエンドの高さはAとなる。このように、実施の形態3によれば、コイルエンドの軸方向寸法が小さくなり、小型化が図られる。
例えば、上記実施の形態1では、周方向長さが6スロットピッチのコイルエンド部と周方向長さが5スロットピッチのコイルエンド部が混在して第1および第2コイルエンドを構成している。そこで、第1および第2コイルエンドの軸方向高さは、高さの高い6スロットピッチの長さのコイルエンド部により決まり、Aとなる。このように、実施の形態3が、実施の形態1に比べて、コイルエンドの軸方向寸法を小さくできることがわかる。
実施の形態4.
図19はこの発明の実施の形態4に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す斜視図、図20はこの発明の実施の形態4に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す端面図、図21はこの発明の実施の形態4に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す正面図、図22はこの発明の実施の形態4に係る回転電機における巻線体を電機子鉄心に装着した状態を第2コイルエンド側から見た模式図、図23はこの発明の実施の形態4に係る回転電機における電機子巻線の組立方法を説明する模式図である。なお、図22および図23では、コイルエンド部を直線的に示している。また、図22中、説明の便宜上、周方向に連続するスロット13を周方向の並び順にスロット131、スロット132・・・スロット1312とした。また、図23中、巻線体32を組立順に、1番目の巻線体321、2番目の巻線体322とした。
図19から図21において、巻線体32は、電機子鉄心11のスロット13に挿入される第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8直線部321,322,323,324,325,326,327,328、第1および第2直線部321,322の一端部間を接続する第1コイルエンド部331、第2および第3直線部322,323の他端部間を接続する第2コイルエンド部332、第3および第4直線部323,324の一端部間を接続する第3コイルエンド部333、第4および第5直線部324,325の他端部間を接続する第4コイルエンド部334、第5および第6直線部325,326の一端部間を接続する第5コイルエンド部335、第6および第7直線部326,327の他端部間を接続する第6コイルエンド部336、第7および第8直線部327,328の一端部間を接続する第7コイルエンド部337を備えている。
このように、巻線体32は、第1から第8直線部321〜328を第1から第7コイルエンド部331〜337により一続きに連結して構成される。巻線体32は、図21に示されるように、正面から見て、δ形状のコイルパターンを連続して2回繰り返したコイルパターンに構成されている。巻線体32は、導体線19をエッジワイズ巻きにδ形状のコイルパターンを2回繰り返したコイルパターンに巻いて作製される。そして、巻線体32は、折り曲げ加工により、作製してもよいし、金型を用いてコイルエンド部および直線部を成形して作製してもよい。
第1から第7コイルエンド部331〜337は、それぞれ、長さ方向の中央部(頭頂部)に、径方向にdだけ変位するクランク部340を有している。これにより、例えば、第2直線部322が第1直線部321に対して径方向内方にdだけ変位する。また、第1、第4および第5コイルエンド部331,334,335の周方向長さは6スロットピッチであり、第2、第3、第6および第7コイルエンド部332,333,336,337の周方向長さは5スロットピッチである。なお、6スロットピッチは、1磁極ピッチに相当する。
このように構成された巻線体32は、図22に示されるように、第1直線部321がスロット131の第1層に挿入され、第2直線部322がスロット131から周方向一側に6スロットピッチ離れたスロット137の第2層に挿入され、第3直線部323がスロット137から周方向一側に5スロットピッチ離れたスロット1312の第3層に挿入され、第4直線部324がスロット137の第4層に挿入され、第5直線部325がスロット131の第5層に挿入され、第6直線部326がスロット137の第6層に挿入され、第7直線部327がスロット1312の第7層に挿入され、第8直線部328がスロット137の第8層に挿入されて、電機子鉄心11に装着される。
このように、巻線体32は、第1、第2および第3直線部321〜323がこの順番で周方向一側に並び、第5、第6および第7直線部325〜327がこの順番で周方向一側に並び、第3直線部323が第2および第4直線部322,334の周方向一側に位置し、第7直線部327が第6および第8直線部326,328の周方向一側に位置するように、第1から第7コイルエンド部331〜337により一続きに連結されて構成されている。
電機子巻線を組み立てるには、まず、図23の(a)に示されるように、2番目の巻線体322を、1番目の巻線体321の軸方向位置と同じ軸方向位置として、1番目の巻線体321の周方向一側に配置する。ついで、図23の(b)に示されるように、2番目の巻線体322をその軸方向位置を変えずに周方向他側に移動させる。そして、図23の(c)に示されるように、2番目の巻線体322を1番目の巻線体321に組み付ける。このとき、第1から第8直線部321〜328の径方向位置がクランク部240により互いに導体線19の厚みdだけ径方向にずれているので、干渉されることなく、2番目の巻線体322を1番目の巻線体321に組み付けられる。なお、巻線体の軸方向および周方向は、第1から第8直線部の長さ方向および長辺方向である。
この操作を繰り返し、上記実施の形態1と同様に、1番目の巻線体321から47番目の巻線体3247(図示せず)を組み付けてC字状の中間組立体を作製する。ついで、中間組立体の1番目の巻線体321と47番目の巻線体3247との間を、48番目の巻線体3248の周方向幅より広くする。そして、48番目の巻線体3248を中間組立体の広げられた開口内に配置する。ついで、48番目の巻線体3248を47番目の巻線体3247に組み付ける。その後、中間組立体の開口を閉じ、1番目の巻線体321と48番目の巻線体3248を組み付けて、円環状に形成された電機子巻線が組み立てられる。
このように組み立てられた電機子巻線は、48個の巻線体32を1スロットピッチで周方向に配列して構成される。そして、8本の第1から第8直線部321〜328が径方向に1列に並んで、周方向に1スロットピッチで48列配列されている。第1、第3、第5および第7コイルエンド部331,333,335,337が周方向に配列されて第1コイルエンドを構成し、第2、第4および第6コイルエンド部332,334,336が周方向に配列されて第2コイルエンドを構成する。巻線体32の巻き始め端341が、それぞれ第1直線部321から軸方向に第2コイルエンド側に延び出て、第2コイルエンドの外径側に1スロットピッチで周方向に配列される。また、巻線体32の巻き終わり端342が、それぞれ第8直線部328から軸方向に第2コイルエンド側に延び出て、第2コイルエンドの内径側に1スロットピッチで周方向に配列される。
そして、上記実施の形態1と同様に、鉄心ブロックを電機子巻線に径方向外側から装着し、電機子が組み立てられる。
この実施の形態4では、第1、第4および第5コイルエンド部331,334,335の周方向長さは6スロットピッチであり、第2、第3、第6および第7コイルエンド部332,333,336,337の周方向長さは5スロットピッチである。そして、第1から第8直線部321〜328が、6スロットピッチ離れたスロット13の対と、5スロットピッチ離れたスロット13の対に挿入されている。そこで、巻線体32は、第2、第4、第6および第8直線部322,324,326,328を境に挿入されるスロット13が1スロットずれ、短節巻きの分布巻き巻線となる。
したがって、この実施の形態4においても、電機子起磁力の高調波成分を減少でき、電機子巻線の誘起電圧が正弦波状に近くなり、トルク脈動や鉄損を抑制できる。
第1から第7コイルエンド部331〜337の頭頂部に形成されたクランク部340の変形量が導体線19の厚みdである。そこで、クランク部340を曲げ成形する際の曲げ半径が小さくなり、コイルエンドの径方向寸法および軸方向寸法を小さくできる。さらに、導体線19の長さも短くなり、巻線抵抗を低減できる。
巻線体32は、δ形状のコイルパターンを2回繰り返したコイルパターンに構成されているので、巻線体32は、折り曲げ加工や、金型を用いてコイルエンド部および直線部を成形して作製でき、生産性が高められる。
第1から第8直線部321〜328の径方向位置が第1から第7コイルエンド部331〜337により径方向内方に順次dづつ変位している。そこで、巻線体32同士が干渉することなく、48個の巻線体32を一つずつ周方向の一側から組み付けて円環状の電機子巻線を作製できるので、特許文献2のように波巻きコイルを編み込む煩雑な工程が不要となり、生産性が高められる。
なお、上記実施の形態4では、巻線体32は、図22に示されるように、第1直線部321がスロット131の第1層に挿入され、第2直線部322がスロット137の第2層に挿入され、第3直線部323がスロット1312の第3層に挿入され、第4直線部324がスロット137の第4層に挿入され、第5直線部325がスロット131の第5層に挿入され、第6直線部326がスロット137の第6層に挿入され、第7直線部327がスロット1312の第7層に挿入され、第8直線部328がスロット137の第8層に挿入されるように構成されているが、巻線体32は、図22において、第1直線部321がスロット137の第1層に挿入され、第2直線部322がスロット1312の第2層に挿入され、第3直線部323がスロット137の第3層に挿入され、第4直線部324がスロット131の第4層に挿入され、第5直線部325がスロット137の第5層に挿入され、第6直線部326がスロット1312の第6層に挿入され、第7直線部327がスロット137の第7層に挿入され、第8直線部328がスロット131の第8層に挿入されるように構成されてもよい。
実施の形態5.
図24はこの発明の実施の形態5に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す斜視図、図25はこの発明の実施の形態5に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す端面図、図26はこの発明の実施の形態5に係る回転電機における巻線体を電機子鉄心に装着した状態を第2コイルエンド側から見た模式図、図27はこの発明の実施の形態5に係る回転電機における電機子巻線を構成する巻線体を示す正面図である。なお、図26では、コイルエンド部を直線的に示している。また、図26中、説明の便宜上、周方向に連続するスロット13を周方向の並び順にスロット131、スロット132・・・スロット1312とした。
図24および図25において、巻線体32Aは、電機子鉄心11のスロット13に挿入される第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8直線部321,322,323,324,325,326,327,328、第1および第2直線部321,322の一端部間を接続する第1コイルエンド部331、第2および第3直線部322,323の他端部間を接続する第2コイルエンド部332、第3および第4直線部323,324の一端部間を接続する第3コイルエンド部333、第4および第5直線部324,325の他端部間を接続する第4コイルエンド部334、第5および第6直線部325,326の一端部間を接続する第5コイルエンド部335、第6および第7直線部326,327の他端部間を接続する第6コイルエンド部336、第7および第8直線部327,328の一端部間を接続する第7コイルエンド部337を備えている。
このように、巻線体32Aは、第1から第8直線部321〜328を第1から第7コイルエンド部331〜337により一続きに連結して構成される。第1から第7コイルエンド部331〜337は、それぞれ、長さ方向の中央部(頭頂部)に、径方向にdだけ変位するクランク部340を有している。これにより、例えば、第2直線部322が第1直線部321に対して径方向内方にdだけ変位する。また、第1、第3、第5および第7コイルエンド部331,333,335,337の周方向長さは5スロットピッチであり、第2、第4および第6コイルエンド部332,334,336の周方向長さは5スロットピッチである。
なお、他の構成は上記実施の形態4と同様に構成されている。
このように構成された巻線体32Aは、図26に示されるように、第1直線部321がスロット131の第1層に挿入され、第2直線部322がスロット131から周方向一側に5スロットピッチ離れたスロット136の第2層に挿入され、第3直線部323がスロット136から周方向一側に6スロットピッチ離れたスロット1312の第3層に挿入され、第4直線部324がスロット1312から周方向他側に5スロットピッチ離れたスロット137の第4層に挿入され、第5直線部325がスロット137から周方向他側に6スロットピッチ離れたスロット131の第5層に挿入され、第6直線部326がスロット136の第6層に挿入され、第7直線部327がスロット1312の第7層に挿入され、第8直線部328がスロット137の第8層に挿入されて、電機子鉄心11に装着される。
この実施の形態5では、巻線体32Aは、第1から第7コイルエンド部331〜337が6スロットピッチのコイルエンド部と5スロットピッチのコイルエンド部により構成されている。そして、第1から第8直線部321〜328が、6スロットピッチ離れたスロット13の対と、5スロットピッチ離れたスロット13の対に挿入されている。したがって、巻線体32Aは、短節巻きの分布巻き巻線となる。そこで、この巻線体32Aにより構成される電機子巻線は、電機子起磁力の高調波成分を減少でき、電機子巻線の誘起電圧が正弦波状に近くなり、トルク脈動や鉄損を抑制できる。
この実施の形態5では、図27に示されるように、第1コイルエンドが5スロットピッチの第1、第3、第5および第7コイルエンド部331,333,335,337で構成され、第2コイルエンドが6スロットピッチの第2、第4、第6コイルエンド部332,334,336で構成される。したがって、実施の形態5によれば、第1コイルエンドの電機子鉄心の端面からの高さがA’となり、コイルエンドの軸方向寸法が小さくなり、小型化が図られる。
なお、上記各実施の形態では、巻線体は8本の直線部をコイルエンド部により一続きに連結して構成されているが、巻線体を構成する直線部の本数は8本に限定されず、2m本(但し、mは2以上の整数)以上であればよい。そして、各スロットには、2m本の直線部が径方向に1列に配列されて収納されている。
また、上記各実施の形態では、直線部が挿入されるスロットの対が、1磁極ピッチのスロットピッチ離れたスロットの対と、1磁極ピッチ未満、または1磁極ピッチより大きいスロットピッチ離れたスロットの対とで構成されているが、直線部が挿入されるスロットの対は、1磁極ピッチより小さいスロットピッチ離れたスロットの対と、1磁極ピッチより大きいスロットピッチ離れたスロットの対とで構成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、直線部が挿入されるスロットの対が、2つの異なるスロットピッチ離れたスロットの対により構成されているが、直線部が挿入されるスロットの対は、2つ以上の異なる2磁極ピッチ未満のスロットピッチ離れたスロットの対で構成されてもよい。
また、上記各実施の形態では、クランク部がコイルエンド部により接続される直線部を径方向に導体線の径方向厚みdだけ変位させるように形成されているが、クランク部はコイルエンド部により接続される直線部を径方向に(a×d)(但し、aは1以上、(m−1)以下の整数)だけ変位させるように形成されていればよい。
また、上記各実施の形態では、巻線体が長方形断面の平角導体線で作製されているものとしているが、巻線体を構成する導体線の断面形状は、長方形に限定されず、例えば円形断面の導体線を用いてもよい。
また、上記各実施の形態では、導体線をエッジワイズ巻きに巻いて巻線体を作製しているが、導体線をフラットワイズ巻きに巻いて巻線体を作製してもよい。
また、上記各実施の形態では、8極48スロットの回転電機について説明しているが、極数およびスロット数は、8極48スロットに限定されないことは言うまでもないことである。また、スロット数が毎極毎相当たり2の割合で形成されているものとしているが、毎極毎相当たりのスロット数は2に限定されず、1でもよく、3以上でもよい。