JP6115996B2 - 鋼管杭の被覆防食構造体 - Google Patents
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Description
特に近年では、腐食に強く、耐候性にすぐれ、かつ、高い強度を有するチタン合金やステンレス鋼等の耐食性金属薄板が保護カバーとして用いられることが多くなっている。
(1)被覆防食構造体の重ね合わせ部分の接合構造として、防水性を接合部に配設したシール部材で確保するとともに、接合強度は外周面から巻回した締付部材で確保するという構造を採用することにより、締付部材で締め付け強度を増すにつれて接合強度が向上するとともに、重ね合わせ部分に挟入させたシール部材の厚みが押縮し面積方向に拡張することによりシール面積が増加し防水性が向上するという相乗効果が得られる。
(2)前述の構成によれば、水中での溶接作業が不要となるため作業負担が著しく改善されるのみならず、溶接時の熱によって生じがちな被覆防食構造体のひずみや変形の発生および金属材料の変質を回避でき、防水性および耐久性が向上する。
(3)特殊な加工や材料などを必要しないため、製造コストの上昇を招くことなく、防水性能、耐久性および加工性を向上させることができる。
「(1) 鋼管杭の外周面上に防食層、樹脂緩衝層、金属保護層の順で巻き付けられ重ね合わせられてなる鋼管杭の被覆防食構造体であって、前記金属保護層は樹脂緩衝層外周面に両端で垂直重ね合わせ部分を形成するように巻回された耐食性金属保護カバーを有し、前記耐食性金属保護カバーは上下方向に互いに水平重ね合わせ部分を形成するように配設された上側保護カバーおよび下側保護カバーを少なくとも有し、前記上側保護カバーの下端部または下側保護カバーの上端部は前記水平重ね合わせ部分の幅を規制する段差を有し、前記金属保護層は外周面から締め付ける耐食性金属保護カバーと同材質の複数の締付具を有し、当該被覆防食構造体は下端に配設された外周面が前記樹脂緩衝層で覆われる立ち上がり部と前記下側保護カバーが着座するフランジ部とで構成される断面略L字形の電気絶縁体を有することを特徴とする鋼管杭の被覆防食構造体。
(2) 前記締付具が、一端が耐食性金属保護カバー外面に溶接された帯体と該帯体を固定する留め金具とにより構成されることを特徴とする(1)記載の鋼管杭の被覆防食構造体。
(3) 前記締付具が、少なくとも上側保護カバーの下端部と下側保護カバーの上端部との水平重ね合わせ部の外周面および前記電気絶縁体の立ち上がり部の外側の下側保護カバーの外周面とに配設されることを特徴とする(1)または(2)記載の鋼管杭の被覆防食構造体。
(4) 前記金属保護層と、前記上側保護カバーの裏面および前記水平重ね合わせ部分の範囲を除く下側保護カバーの裏面にあらかじめ貼着された樹脂緩衝材とが一体となって防食層上に重ね合わされていることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の鋼管杭の被覆防食構造体。」
また、保護カバーの端部に薄肉加工を施す必要がないので保護カバーにひずみが生じるおそれがなく、保護カバーの加工が容易となる。また、保護カバーを必要最小限の厚さにすることができ、軽量化および省資源化ならびに材料費の低減が達成できる。
さらに、被覆防食構造体の下端に、外周面が樹脂緩衝層で覆われる立ち上がり部と、下側保護カバーが着座するフランジ部とで構成される断面略L字形の電気絶縁体が設置されているので、保護カバーがベルトで外周面から締付けられる際に、電気絶縁体の立ち上がり部と樹脂緩衝層とが密着し、海水が被覆防食構造体の内部に浸入することを防ぐことができる。
ここで、図2は本発明の被覆防食構造体の全体斜視図であり、図3は図2のA部における垂直断面図であり、図4は図2のB部における水平断面図であり、図5は図2のC部における垂直断面図である。
まず、本発明の被覆防食構造体(200)が防食対象とする鋼管杭(P)の表面に汚土や浮いたミルスケール、さび、塗膜、異物などの付着物がない状態にする、いわゆる素地調整を行う。この素地調整の具体的方法は、ケレン棒、ハンマ、スクレパー、ワイヤブラシ、パワーブラシ、グラインダーなどを用いて、鋼管杭(P)表面の付着物を除去する。素地調整のグレードとしては、IS0 8501−1規格のSt2以上とすることが好ましい。
次に、素地調整された鋼管杭(P)の表面にペトロラタム系防食材(Q)を巻きつける。
被覆防食構造体(200)は、垂直重ね合わせ部分(218)に沿って、保護カバー(210)両端外面に、所定の間隔で溶接された保護カバー(210)と同材質の帯体(222、224)を有している。ここで、保護カバー(210)の材質としては、腐食に強く、耐候性にすぐれ、かつ、高い強度を有するチタン合金やステンレス鋼等の耐食金属を用いる。
そして、上側保護カバー(212)の下端部には、下側保護カバー(214)との重ね合わせ部分(216)の幅を規制する段差(213)が形成されている。このような構造を有する上側保護カバー(212)を、鋼管杭(P)の表面に巻回したペトロラタム系防食材(Q)の周囲に緩く巻き付ける(図3、図4参照)。
この際、図3、図4に図示したように、保護カバー(210)の垂直重ね合わせ部分(218)の隙間にパッキン等のシール部材(230)を挟み込み、または、シール材を塗布するか、或いは、垂直重ね合わせ部分(218)の淵の外側にシール材を塗布することによって垂直重ね合わせ部分(218)の隙間の水密性を高めることができる。さらに、図示はされていないが、垂直重ね合わせ部分(218)の隙間と淵の外側の両方をシールすることにより、水密性を一層高めることができる。
垂直重ね合わせ部分(218)に沿って、保護カバー両端外面に、所定の間隔で溶接された保護カバーと同材質の帯体(222)を有し、裏面に樹脂緩衝材(240)が貼り付けられた上側保護カバー(212)を、ペトロラタム系防食材(Q)の周囲に緩く巻き付ける。
上側保護カバー(212)の周囲に図7に示すようなラチェット式ベルト荷締機(R)を巻いた後、ラチェット(R1)でベルト(R2)を締付け、鋼管杭(P)の表面に巻き回したペトロラタム系防食材(Q)の周囲に上側保護カバー(212)を仮止めする。
なお、上側保護カバー(212)に、あらかじめ樹脂緩衝材(240)を取り付けず、ペトロラタム系防食材(Q)の周囲に樹脂緩衝材(240)を巻き付けた後、その外側に上側保護カバー(212)を巻き付けることも出来る。すなわち、樹脂緩衝材(240)と下側保護カバー(212)とを別々に設置しても構わない。
さらに、垂直方向の重なり部分(218)に沿って、下側保護カバー(214)両端外面に所定の間隔で溶接された下側保護カバー(214)と同材質の帯体(224)を有し裏面に樹脂緩衝材(260)が貼り付けられ下端に断面略L字形の電気絶縁体(250)が固設された下側保護カバー(214)を、上側保護カバー(212)の段差(213)に合わせて、ペトロラタム系防食材(Q)の周囲に緩く巻き付ける。
そして前述した上側保護カバー(212)の仮止めと同様、下側保護カバー(214)の周囲にラチェット式ベルト荷締機(R)を巻いた後、ラチェット(R1)でベルト(R2)を締め付け、鋼管杭(P)に下側保護カバーを仮止めする。
次いで、断面略L字形の電気絶縁体(250)の下部の鋼管杭(P)の周囲に、図5に示すように、下部固定金具(T)を固定する。下部固定金具(T)の材質としては、鋼材などが一般的に用いられる。
上下の保護カバー(210)の両端に溶接された締付具(220)の帯体(222、224)を引っ張りながら、保護カバー(210)と同材質の留め金具(228)に通した後、折り曲げて保護カバー(210)を締め付け固定する(図4参照)。保護カバー(210)の締め付け固定が終了したら、仮止め用のラチェット式ベルト荷締機(R)を解く。
なお、図2および図4には、短尺の帯体(222、224)が保護カバー(210)の垂直重ね合わせ部分(218)に沿って保護カバー(210)両端外面の縦方向に溶接されているが、保護カバー(210)の片端外面の縦方向にのみに長尺の帯体を溶接し、反対側には留め金具(228)のみを溶接するという態様も可能である。
110、210 ・・・ 保護カバー
112、212 ・・・ 上側保護カバー
213 ・・・ 段差
114、214 ・・・ 下側保護カバー
215 ・・・ 段差
116、216 ・・・ 水平重ね合わせ部分
118、218 ・・・ 垂直重ね合わせ部分
220 ・・・ 締付具
222、224 ・・・ 帯体
250 ・・・ 電気絶縁体
P ・・・ 鋼管杭
Q ・・・ 防食材
R ・・・ ラチェット式ベルト荷締機
R1 ・・・ ラチェット
R2 ・・・ ベルト
230 ・・・ シール材
240、260 ・・・ 樹脂緩衝材
228 ・・・ 留め金具
Claims (4)
- 鋼管杭の外周面上に防食層、樹脂緩衝層、金属保護層の順で巻き付けられ重ね合わせられてなる鋼管杭の被覆防食構造体であって、
前記金属保護層は樹脂緩衝層外周面に両端で垂直重ね合わせ部分を形成するように巻回された耐食性金属保護カバーを有し、
前記耐食性金属保護カバーは上下方向に互いに水平重ね合わせ部分を形成するように配設された上側保護カバーおよび下側保護カバーを少なくとも有し、
前記上側保護カバーの下端部または下側保護カバーの上端部は前記水平重ね合わせ部分の幅を規制する段差を有し、
前記金属保護層は外周面から締め付ける耐食性金属保護カバーと同材質の複数の締付具を有し、
当該被覆防食構造体は下端に配設された外周面が前記樹脂緩衝層で覆われる立ち上がり部と前記下側保護カバーが着座するフランジ部とで構成される断面略L字形の電気絶縁体を有すること
を特徴とする鋼管杭の被覆防食構造体。 - 前記締付具が、一端が耐食性金属保護カバー外面に溶接された帯体と該帯体を固定する留め金具とにより構成されること
を特徴とする請求項1記載の鋼管杭の被覆防食構造体。 - 前記締付具が、少なくとも上側保護カバーの下端部と下側保護カバーの上端部との水平重ね合わせ部の外周面および前記電気絶縁体の立ち上がり部の外側の下側保護カバーの外周面とに配設されること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の鋼管杭の被覆防食構造体。 - 前記金属保護層と、前記上側保護カバーの裏面および前記水平重ね合わせ部分の範囲を除く下側保護カバーの裏面にあらかじめ貼着された樹脂緩衝材とが一体となって防食層上に重ね合わされていること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鋼管杭の被覆防食構造体。
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