以下、本発明による燃料電池システムの実施形態の一つである実施例について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、発電ユニット10および貯湯ユニット20を備えている。
発電ユニット10は、直流電力を発電する発電機11、電力変換装置12、電源基板13および燃料電池制御装置19(以下、制御装置19という。)を備えている。図2に示すように、発電機11は、燃料電池モジュール40を含んで構成されている。
燃料電池モジュール40は、ケーシング41、蒸発部42、改質部43および燃料電池44を備えている。ケーシング41は、断熱性材料で箱状に形成されている。ケーシング41内には、蒸発部42、改質部43、燃料電池44および第1燃焼部46である燃焼空間R3が配設されている。
蒸発部42は、後述する燃焼ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部42は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料を混合して混合ガスを改質部43に供給するものである。改質用原料としては天然ガス、LPGなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料がある。
この蒸発部42には、一端(下端)が水タンク61内に配設された給水管51の他端が接続されている。給水管51には、改質水ポンプ51aが設けられている。改質水ポンプ51aは、蒸発部42に改質水を供給するとともにその改質水供給量(供給流量(単位時間あたりの流量))を調整するものである。
また、蒸発部42には、改質用原料の供給源(以下、供給源という。)Gsからの改質用原料が改質用原料供給管52を介して供給されている。供給源Gsは、例えば都市ガスのガス供給管、LPガスのガスボンベである。改質用原料供給管52には、原料ポンプ52aが設けられている。
原料ポンプ52aは、燃料電池44に燃料を供給する供給装置(すなわち燃料電池システムに燃料の原料となる原燃料(改質用原料)を供給する原燃料供給装置)であり、制御装置19からの制御指令値にしたがって供給源Gsからの燃料供給量(供給流量(単位時間あたりの流量))を調整するものである。この原料ポンプ52aは、改質用原料を吸入し改質部43に圧送する圧送装置である。
改質部43は、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部42から供給された混合ガス(改質用原料および水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。混合ガスが触媒によって反応し、改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水素が反応して水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)は燃料電池44の燃料極に導出されるようになっている。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。このように、改質部43は改質用原料と改質水とから燃料である改質ガスを生成して燃料電池44に供給する。
燃料電池44は、燃料と酸化剤ガスとにより発電するものである。燃料電池44は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数のセル44aが図2の左右方向に積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池44は、固体酸化物燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池44の燃料極には、燃料としての水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。セル44aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路44bが形成されている。セル44aの空気極側には、燃焼用酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路44cが形成されている。空気流路44cには、カソードエアがカソードエアブロワ54a(またはカソードエアポンプ)によって供給されている。燃料電池44内は、その内部の温度を検出する温度センサ44dが設けられており、その検出結果が制御装置19に出力されるようになっている。
燃料電池44は、図2に示すように、マニホールド45上に設けられている。マニホールド45には、改質部43からの改質ガスが改質ガス供給管53を介して供給される。燃料流路44bは、その下端(一端)がマニホールド45の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。空気流路44cの下端には、一端がカソードエアブロワ54aに接続されたカソードエア供給流路54が連通されており、カソードエアが空気流路44cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。
燃料電池44においては、燃料極に供給された燃料と空気極に供給された酸化剤ガスによって発電が行われる。すなわち、燃料極では、下記化1および化2に示す反応が生じ、空気極では、下記化3に示す反応が生じている。すなわち、空気極で生成した酸化物イオン(O2−)が電解質を通過し、燃料極で水素と反応することにより電気エネルギーを発生させている。したがって、燃料流路44bおよび空気流路44cからは、発電に使用されなかった改質ガスおよび酸化剤ガス(空気)が導出する。
(化1)
H2+O2−→H2O+2e−
(化2)
CO+O2−→CO2+2e−
(化3)
1/2O2+2e−→O2−
そして、燃料流路44bおよび空気流路44cから導出した、発電に使用されなかった改質ガス(アノードオフガス:燃料オフガス)は、燃料電池44と蒸発部42(改質部43)の間の燃焼空間R3にて、発電に使用されなかった酸化剤ガス(カソードオフガス:酸化剤オフガス)によって燃焼され、その燃焼ガス(火炎47)によって蒸発部42および改質部43が加熱される。さらには、燃料電池モジュール40内を動作温度に加熱している。
このように、燃焼空間R3が、燃料電池44からのアノードオフガスと燃料電池44からのカソードオフガスとが燃焼されて改質部43を加熱する第1燃焼部46である。すなわち、第1燃焼部46は、燃料電池44からの未使用の燃料を含む可燃性ガスを導入し酸化剤ガスで燃焼して燃焼ガスを導出する燃焼部である。
第1燃焼部46(燃焼空間R3)では、アノードオフガスが燃焼されて火炎47が発生している。燃焼空間R3で生じた燃焼ガスは、その後は導出口41aから燃料電池モジュール40の外に排気される。
第1燃焼部46には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火ヒータ46a1,46a2が設けられている。この着火ヒータ46a1,46a2は交流電源の負荷装置である。着火ヒータ46a1,46a2の総消費電力は、合わせて100Wである。
排熱回収システムは、燃料電池モジュール40の排熱と貯湯水との間で熱交換することで排熱を貯湯水に回収して蓄える排熱回収系である。排熱回収システムは、貯湯水を貯湯する貯湯槽21と、貯湯水が循環する貯湯水循環回路24と、燃料電池モジュール40からの燃焼排ガスと貯湯水との間で熱交換が行われる凝縮器25と、が備えられている。
貯湯槽21は、1つの柱状容器を備えており、その内部に温水が層状に、すなわち上部の温度が最も高温であり下部にいくにしたがって低温となり下部の温度が最も低温であるように貯留されるようになっている。貯湯槽21の柱状容器の下部には水道水などの水(低温の水)が補給され、貯湯槽21に貯留された高温の温水が貯湯槽21の柱状容器の上部から導出されるようになっている。
貯湯水循環回路24の一端は貯湯槽21の下部に、他端は貯湯槽21の上部に接続されている。貯湯水循環回路24上には、一端から他端に向かって順番にラジエータ24a、貯湯水循環手段である貯湯水循環ポンプ24b、凝縮器25、温度センサ24cおよび排水装置24dが配設されている。
ラジエータ24aは、貯湯水循環回路24を流れる貯湯水と空気との間で熱交換を行うことにより、貯湯水を冷却するもの(空冷式ラジエータ)である。ラジエータ24aは送風装置(例えばファン)を有するように構成するのが好ましい。
貯湯水循環ポンプ24bは、貯湯槽21の下部の貯湯水を吸い込んで貯湯水循環回路24を図示矢印方向へ通水させて貯湯槽21の上部に吐出するものであり、その流量(送出量)が制御されるようになっている。貯湯水循環ポンプ24bは、図示しない温度センサの検出温度(貯湯水の貯湯槽21の入口温度)が所定の温度または温度範囲となるように、送出量が制御されるようになっている。
温度センサ24cは、貯湯水循環回路24上であって貯湯槽21の貯湯水の導出口と凝縮器25の貯湯水の導入口との間に配設されて貯湯水の温度を検出するものである。温度センサ24cは、その検出結果を制御装置19に送信するようになっている。
排水装置24dは、貯湯水循環回路24の貯湯水を外部に排出するものであり、例えば電磁バルブで構成されている。排水装置24dは、制御装置19からの指示によって貯湯水を排出する。
凝縮器25は、燃料電池モジュール40から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され燃焼排ガスと貯湯水が熱交換する熱交換器である。凝縮器25は、ケーシング25aを備えている。ケーシング25aの上部には、燃料電池モジュール40のケーシング41の下部に設けられ燃焼排ガスが導出される導出口41aに連通している。ケーシング25aの下部には、排気管55が接続されている。ケーシング25aの底部には、純水器62に接続されている凝縮水供給管56が接続されている。ケーシング25a内には、貯湯水循環回路24に接続されている熱交換部25bが配設されている。
このように構成された凝縮器25においては、燃料電池モジュール40からの燃焼排ガスは、導出口41aを通ってケーシング25a内に導入され、貯湯水が流通する熱交換部25bを通る際に貯湯水との間で熱交換が行われ凝縮されるとともに冷却される。凝縮後の燃焼排ガスは排気管55を通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管56を通って純水器62に供給される(自重で落水する)。すなわち、燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮されて改質水が生成される。一方、熱交換部25bに流入した貯湯水は、加熱されて流出される。
ケーシング41の導出口41aには、第2燃焼部48が設けられている。第2燃焼部48は、第1燃焼部46から排気されるガスである第1燃焼部オフガス、すなわち、第1燃焼部46から排気される未使用の可燃性ガス(例えば、水素、メタンガス、一酸化炭素など)を導入し燃焼して導出するものである。第2燃焼部48は、可燃性ガスを燃焼する触媒である燃焼触媒(例えばセラミックハニカムまたは、メタルハニカムと貴金属の触媒である。)で構成されている。
第2燃焼部48には、燃焼触媒を触媒の活性温度まで加熱して可燃性ガスを燃焼させるための燃焼触媒ヒータ48aが設けられている。この燃焼触媒ヒータ48aは交流電源の負荷装置である。燃焼触媒ヒータ48aは消費電力が可変に制御できるものであり、その最大消費電力は200Wである。燃焼触媒ヒータ48aは制御装置19の指示によって制御されるものである。
また、燃料電池システムは、水タンク61および純水器62を備えている。水タンク61は、純水器62から導出された純水(改質水)を貯水するものである。水タンク61内には、水タンク61内の改質水の残量を検出する水量センサ61aが設けられている。例えば、水量センサ61aはフロートスイッチが好ましく、半導体式水位センサでもよい。水量センサ61aの検出結果は制御装置19に出力されている。
純水器62は、活性炭とイオン交換樹脂を内蔵しており、例えばフレーク状の活性炭と粒状のイオン交換樹脂を充填している。また被処理水の状態によっては、中空糸フィルタを設置しても良い。純水器62は、凝縮器25からの凝縮水を活性炭とイオン交換樹脂によって純水化するものである。純水器62は、配管57を介して水タンク61に連通しており、純水器62内の純水は配管57を通って水タンク61に導出される。
電力変換装置12は、燃料電池44から供給された直流電流を交流電流に変換するものである。また、電力変換装置12は、変換した交流電流を出力する機能を備えている。電力変換装置12には、送電線14の一端が接続されており、電力変換装置12の交流電力が送電線14に出力されるようになっている。送電線14の他端には、第1負荷装置15が接続されている。電力変換装置12が出力する電力は、必要に応じて送電線14を介して第1負荷装置15に供給されるようになっている。第1負荷装置15は、電灯、アイロン、テレビ、洗濯機、電気コタツ、電気カーペット、エアコン、冷蔵庫などの電気器具である。
電力変換装置12の交流電力の出力部には、センサ12aが設けられている。センサ12aは、電力変換装置12(燃料電池44)から出力される電流または電圧の少なくともいずれか一つを検出するものである。センサ12aが電圧と電流の両方を検出していれば、それらの値を乗じることにより、接続されている負荷装置、例えば着火ヒータ46a1,46a2、燃焼触媒ヒータ48a、排水装置24d、第2負荷装置18などの消費電力は算出される。また、センサ12aが電圧または電流のいずれか1つを検出している場合は、制御装置19はいずれか一つの検出値から上記負荷装置の消費電力を算出する。
また、電力変換装置12は、電源ライン31および送電線14を介して供給される系統電源30からの交流電力を直流電力に変換して出力する機能も備えている。電力変換装置12が出力する直流電力は、電源基板13に出力される。電源基板13は、供給された直流電力を所定の直流電力に変換して制御装置19、補機10bなどに供給している。補機10bは、改質水ポンプ51a、原料ポンプ52aや各部位の温度センサなどの発電ユニット10を作動させるのに必要であって直流電流で作動するものから構成されている。
送電線14上であって電力変換装置12と第1負荷装置15の間には、一端が系統電源30に接続された電源ライン31の他端が接続部14aで接続されている。また、電源ライン31上には、配電盤32が配設されている。発電ユニット10が発電する電力より第1負荷装置15の消費電力が上回った場合、その不足電力は、電源ライン31から配電盤32を介して系統電源30からの電力が供給されるようになっている。このように、第1負荷装置15は、系統電源30からの電力および電力変換装置12からの電力が供給されるようになっている。
また、電源ライン31上であって系統電源30と配電盤32の間には、電流センサ31aが配設されている。電流センサ31aは、系統電源30から電力変換装置12へ供給される電力の電流を検出するものである。なお、本実施形態においては、系統電源30の電流を検出するために電流センサ31aを配設しているが、系統電源30から電力変換装置12へ供給される電力を検出する電力センサを配設するようにしても良い。
また、送電線14上であって電力変換装置12と接続部14aの間には、ブレーカ14dが配設されている。系統電源30からの送電が行われている場合であって、何らかの原因により送電線14に異常な電流(例えば過電流)が流れたときに、ブレーカ14dは自動で送電線14を開路とするようになっている。
また、送電線14上であって電力変換装置12とブレーカ14dとの間に第1開閉器14cが設けられている。第1開閉器14cは、開路または閉路することにより電力変換装置12と系統電源30とを電気的に遮断または接続するものである。
また、送電線14上であって電力変換装置12と第1開閉器14cとの間の接続部14bにおいては、一端が自立用出力端子16に接続された送電線17の他端が接続されている。送電線17には、第2開閉器17aが設けられている。第2開閉器17aは、電力変換装置12と自立用出力端子16(ひいては第2負荷装置18)との間に配設され、開路または閉路することにより、電力変換装置12と第2負荷装置18とを電気的に遮断または接続する開閉装置である。
自立用出力端子16は、系統電源30からの電力供給が停止(以下、停電とする)された場合に燃料電池44を発電させて電力変換装置12からの電力のみを第2負荷装置18に供給する発電運転中のみに使用されるものである。系統電源30からの送電が停止された場合に、燃料電池44を発電させてその電力のみを第2負荷装置18に供給する発電運転を自立発電運転という。第2負荷装置18は、自立用出力端子16に着脱可能に接続されるものである。第2負荷装置18は、第1負荷装置15と同様の電気器具であるが、停電の場合における自立発電運転中のみに、使用者が使用したい電気器具について、自立用出力端子16に接続して使用されるものである。第2負荷装置18は、自立発電運転中にのみ燃料電池44からの出力電力が供給される。
制御装置19は、燃料電池44の制御を少なくとも行うもの(燃料電池システムを制御するもの)である。具体的には、系統電源30から電力供給があるときは、第1負荷装置15の消費電力となるように燃料電池44の発電量の制御を行う。このとき、燃料電池44の発電する電力が第1負荷装置15の消費電力を下回る場合は、その不足電力を系統電源30から受電して補うようになっている。停電の場合は、燃料電池44の発電量が一定の出力電力(例えば定格の半分(350W))となるように制御している。なお、第2負荷装置18の消費電力となるように燃料電池44の発電量の制御を行ってもよい。
また、第1および第2開閉器14c,17aは、制御装置19からの指示に従って、開閉制御されるようになっている。
制御装置19は、センサ12aの検出信号が入力されるようになっている。制御装置19はセンサ12aの検出信号に基づいて、系統電源30の停電を検出することができる。また、制御装置19は、電流センサ31aの検出信号が入力されるようになっている。制御装置19は、入力された電流センサ31aの信号に基づいて、系統電源30の停電を検出するようにしてもよい。具体的には、センサ12a(または電流センサ31a)によって検出された系統電源30の電流が所定電流以下(例えば定格の1/10以下)である場合は、系統電源30は停電であると検出される。
貯湯ユニット20は、図1に示すように、上述した貯湯槽21、貯湯槽制御装置22および電源基板23を備えている。
貯湯槽21の内部には残湯量検出センサである温度センサ群21aが設けられている。この温度センサ群21aによる各位置での湯温の検出結果に基づいて貯湯槽21内の残湯量が、この温度センサ群21aの検出結果が送信される貯湯槽制御装置22によって導出されるようになっている。残湯量は、貯湯槽21内に蓄えられた熱量を表している。
貯湯槽21には、給湯管26が接続されている。給湯管26には、上流から順番に補助加熱装置であるガス湯沸かし器(図示省略)、温度センサ26aおよび流量センサ26bが配設されている。ガス湯沸かし器は、給湯管26を通過する貯湯槽21からの湯水を加熱して給湯するようになっている。温度センサ26aはガス湯沸かし器を通過した後の湯水の温度を検出するものであり、その検出信号は貯湯槽制御装置22に送信されるようになっている。また、流量センサ26bは、貯湯槽21から供給されている単位時間あたりの湯水消費量(給湯量)を検出するものである。
給湯管26には、貯湯槽21に貯留している湯水を給湯として利用する湯水使用場所A2に設置されている複数の湯利用機器A2aが接続されている。この湯利用機器としては、浴槽、シャワ、キッチン(キッチンの蛇口)、洗面所(洗面所の蛇口)などがある。また、給湯管26には、貯湯槽21の湯水を熱源として利用する湯水使用場所A2に設置されている熱利用機器A2bが接続されている。この熱利用機器としては、浴室暖房、床暖房、浴槽の湯の追い炊き機構などがある。
貯湯槽制御装置22は、制御装置19と互いに通信可能に接続されている。貯湯槽制御装置22は、温度センサ群21aの検出結果に基づいて、貯湯水循環ポンプ24bを作動させて湯水を循環させ加熱することにより貯湯槽21の残湯量の制御をする。電源基板23は、系統電源30からの交流電力を所定の直流電力に変換して貯湯槽制御装置22へ供給している。
さらに、貯湯ユニット20は、貯湯槽制御リモコン27を備えている。貯湯槽制御リモコン27は、貯湯ユニット20を遠隔から操作するものであり、発電ユニット10も操作できる。貯湯槽制御リモコン27は、貯湯槽制御装置22と互いに通信可能に接続されて、貯湯槽21内の湯水の残湯量、給湯温度および湯水消費量などの貯湯槽21の貯湯状況や、発電機11(発電ユニット10)の発電する電力や使用電力量などの発電ユニット10の運転状況が表示される。また、貯湯槽制御リモコン27は、前述した運転状況が音声で出力されるように構成されている。
次に、上述した燃料電池システムの系統電源30から送電がある場合の基本的動作の一例について説明する。制御装置19は、図示しないスタートスイッチが押されて運転が開始される場合、または計画運転にしたがって運転が開始される場合には、起動運転を開始する。ここで、系統電源30から電力の供給がある場合は、第1開閉器14cは閉路に、第2開閉器17aは開路となるように制御装置19によって制御されている。このように、系統電源30からの電力供給が正常である場合、すなわち発電機11が系統電源30と系統連系されている場合、発電機11が発電を行うことを系統連系発電という。
起動運転が開始されるときは、制御装置19は、モータ駆動のポンプなどの補機10bを作動させ、発電機11の蒸発部42に燃料および改質水の供給を開始する。上述したように、蒸発部42では混合ガスが生成されて、混合ガスは改質部43に供給される。改質部43では、供給された混合ガスから改質ガスが生成されて、改質ガスが燃料電池44に供給される。改質部43が所定温度以上となれば、起動運転は終了し、定常運転(通常発電運転)が開始される。
通常発電運転中では、制御装置19は、発電機11の発電する電力が、センサ12aからの検出信号に基づいて算出される第1負荷装置15の電力となるように補機10bを制御して、改質ガスおよびカソードエアを発電機11に供給する。すなわち、制御装置19は、改質水ポンプ51aの駆動を制御して改質水の供給量(単位時間あたり)を調整し、原料ポンプ52aの駆動を制御して原燃料ひいては燃料の供給量(単位時間あたり)を調整し、カソードエアブロワ54aの駆動を制御してカソードエアの供給量(単位時間あたり)を調整する。
このような発電運転中に、図示しないストップスイッチが押されて発電運転が停止される場合、または運転計画にしたがって運転が停止される場合には、制御装置19は、燃料電池システムの停止運転(停止処理)を実施する。
制御装置19は、燃料電池44から電力を引くのを停止し、蒸発部42へ供給する原燃料および水(改質用蒸気)、ならびに空気極へ供給する空気(反応用空気)の量を燃料電池モジュール40の温度に合わせて変更し、燃料電池モジュール40の温度が一定温度以下まで下がると停止する。
このような停止運転が終了すると、燃料電池システムは待機状態(待機時)となる。待機時は、燃料電池システムの発電停止状態(すなわち、起動運転、発電運転、停止運転のいずれの運転中でない状態である。)のことであり、発電指示(スタートスイッチのオンなど)を待っている状態のことである。すなわち、停止運転状態終了時点の状態が維持される。
次に、系統電源30が停電した場合の燃料電池システムの基本的動作の一例について説明する。
系統電源30からの電力供給が正常である場合に、すなわち第1開閉器14cが閉路され第2開閉器17aが開路されて発電機11(燃料電池44)が系統電源30と系統連系されている場合に、系統電源30が停電すると、制御装置19は、第1開閉器14cが開路されて燃料電池44が系統電源30と解列し、運転に必要な補機の電力分のみの発電を行う。
なお、系統電源30の停電判定は、上述したように、センサ12a(または電流センサ31a)によって検出された系統電源30の電流が所定電流以下(例えば定格の1/10以下)である場合は、系統電源30は停電であると判定される。また、出力電力は、内部負荷装置である着火ヒータ46a1,46a2や燃焼触媒ヒータ48aで消費するようにすればよい。
制御装置19は、停電判定時点から所定時間(例えば5分)が経過すると、第2開閉器17aが閉路されて、自立発電運転を開始する。自立発電運転中においては、制御装置19は、燃料電池44の出力電力が一定(例えば350W)となるように制御する。制御装置19は、その出力電力(350W)相当の出力電流となるように原燃料、改質水およびカソードエアの投入量を調整する。
制御装置19は、自立発電運転中において、系統電源30の復電を検出すると、自立発電運転を終了し、第1開閉器14cを閉路し第2開閉器17aを開路して系統連系した上で上述した通常発電運転を開始する。なお、系統電源30の電圧が所定電圧以上(例えば定格の9/10以上)である場合は、系統電源30は復電したと判定される。
さらに、系統電源30が停電した場合の燃料電池システムの動作の一例について、図3に示すフローチャートに沿って説明する。制御装置19は、そのフローチャートに沿ったプログラムを所定の短時間毎に繰り返し実行する。
制御装置19は、ステップS102において、自立発電運転中であるか否かを判定する。上述したように、第1開閉器14cが開路され第2開閉器17aが閉路されて燃料電池44と自立用出力端子16とが接続され、燃料電池44の出力電力が第2負荷装置18に供給されている場合には、自立発電運転中であると判定される。
制御装置19は、自立発電運転中である場合には、ステップS102にて「YES」と判定し、プログラムをステップS104に進め、自立発電運転中でない場合には、ステップS102にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了する。
制御装置19は、ステップS104において、温度センサ44dによって取得した燃料電池温度が所定温度より高いか否かを判定する。なお、所定温度は、例えば700度である。
自立発電運転中においては、一定出力電力(350W)となるように燃料が供給されるが、350Wにて通常発電運転する場合と比較して多い供給量にて燃料が供給される。この場合、燃料が比較的過多に投入されるため、燃料電池温度が上昇する。この燃料電池温度の上昇を抑制するために、カソードエアの供給量が増大される。これにより、燃料電池44においては、カソードエアの通過によって降温される。
このように、燃料電池温度が所定温度より高い場合には、制御装置19は、ステップS104にて「YES」と判定し、ステップS106において、カソードエアブロワ54aを制御してカソードエアの供給量を増大する(供給量増大部)。一方、燃料電池温度が所定温度以下である場合には、制御装置19は、ステップS104にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了する。制御装置19は、カソードエアの供給量の増大制御を中止する。
制御装置19は、ステップS108において、水量センサ61aによって検出された改質水の残量が所定量以下であるか否かを判定する。なお、所定量は、燃料電池システムの停止運転(上述した通常の停止運転)に際して、その停止運転中に必要となる改質水の水量に設定されている。
改質水の残量が所定量以下である場合には、制御装置19は、ステップS108にて「YES」と判定し、ステップS110において、貯湯水の使用をユーザに対して勧告する(改質水生成部、通知部)。具体的には、制御装置19は、貯湯槽制御リモコン27の表示部に「貯湯水の使用を勧告する」旨を表示する。この表示を見たユーザは、湯利用機器A2aである浴槽、シャワ、キッチン、洗面所でお湯を使用する。お湯の使用に伴って、貯湯槽21の上部に接続された給湯管26から貯湯水が導出されるとともに、貯湯槽21の下部に接続されている水道水供給管から水道水が貯湯槽21の下部に導入される。
このとき、貯湯槽21の上部から給湯管26へ貯湯水の導出にあわせて、制御装置19は、貯湯水循環ポンプ24bを駆動させて、貯湯槽21の下部の貯湯水を貯湯水循環回路24に導出する。貯湯槽21の下部に導入された比較的低温である水道水は、貯湯槽21の下部の貯湯水と混ざりながら貯湯槽21から貯湯水循環回路24に導出される。これにより、凝縮器25においては、比較的低温の貯湯水が供給されることで、生成される凝縮水の量を増大させることができる。この結果最終的に、改質水の残量が所定量より多くなった場合には、制御装置19は、ステップS108にて「NO」と判定し、ステップS112において、ユーザに対する貯湯水の使用の勧告を中止する。
ステップS106にて、カソードエアの供給量を増大させると、凝縮器25において、燃焼排ガスの通過する量も増大されるため、凝縮水の生成能力が減少する。そこで、カソードエアの供給量を増大させても、凝縮水の生成能力を高く維持するために、お湯を使用させることで凝縮用冷媒である貯湯水の温度を低く抑制するようにした。
本実施形態によれば、系統電源30からの送電が停止したことによる燃料電池システムの自立発電運転中において、制御装置19(供給量増大部:ステップS106)によって燃料電池44の温度が所定温度より高い場合には、燃焼用酸化剤ガス(カソードエア)の供給量を増大する。これにより、従来のように別な装置を設けることなくすなわちコストアップを招くことなく、燃料電池44の急激な温度上昇を抑制することができる。さらに、制御装置19(供給量増大部:ステップS106)によって燃焼用酸化剤ガスの供給量を増大させているときに、水タンク61内の改質水の残量が所定量以下である場合には、制御装置19(改質水生成部:ステップS110,202)によって凝縮器25に貯湯水を通水することで改質水を生成する。これにより、燃焼用酸化剤ガス(カソードエア)の供給量を増大させることに伴う凝縮器25における改質水の生成し難さを抑制することができる。このように、改質水を自給する燃料電池システムにおいて、改質水(改質用水蒸気)の不足およびコストアップを招くことなく、自立発電運転中において燃料電池44の急激な温度上昇を抑制することができる。
また、制御装置19(供給量増大部:ステップS106)によって燃焼用酸化剤ガス(カソードエア)の供給量が増大しているときに、水タンク61内の改質水の残量が所定量以下である場合には、制御装置19(通知部:ステップS110)によって貯湯水を使用する旨の通知が行なわれる。これにより、その通知によってユーザが貯湯水を使用するので、凝縮器25に貯湯水を通水することで改質水を生成することを的確に行うことができる。
次に、系統電源30が停電した場合の燃料電池システムの動作の他の一例について、図4に示すフローチャートに沿って説明する。図3に示すフローチャートと同一内容については同一符号を付してその説明を省略する。図3に示すフローチャートと異なる点は、貯湯水の使用の勧告を中止する条件である。
制御装置19は、改質水の残量が所定量より多い場合には、ステップS108にて「NO」と判定し、プログラムを一旦終了する。一方、制御装置19は、改質水の残量が所定量以下である場合には、ステップS110と同様に貯湯水の使用をユーザに対して勧告する。
この勧告によりユーザが、湯利用機器A2aである浴槽、シャワ、キッチン、洗面所でお湯を使用する。上述したように、貯湯槽21の上部から給湯管26へ貯湯水の導出にあわせて、制御装置19は、貯湯水循環ポンプ24bを駆動させて、貯湯槽21の下部の貯湯水を貯湯水循環回路24に導出する。貯湯槽21の下部に導入された比較的低温である水道水は、貯湯槽21の下部の貯湯水と混ざりながら貯湯槽21から貯湯水循環回路24に導出される。これにより、凝縮器25においては、比較的低温の貯湯水が供給される。
そして、制御装置19は、ステップS120において、温度センサ24cによって取得した貯湯水の凝縮器25の入口温度が所定温度以下であるか否かを判定する。所定温度は、例えば22℃に設定されている。この所定温度は、通常運転時において水収支が0である温度(例えば38℃:外気温度が33℃である)より低い温度に設定されるのが好ましい。所定温度は、出力電力が350Wでありかつカソードエアの供給量が80NL(ノルマルリットル)である場合、外気温度が22℃で水収支が0となるように設定されている。なお、このときのカソードエアの供給量は通常発電運転時(例えば25NL)に比べて増大されている。
したがって、貯湯水の凝縮器25の入口温度が所定温度以下となることで、生成される凝縮水(改質水)の量を増大させることができる。よって、制御装置19は、貯湯水の凝縮器25の入口温度が所定温度以下となった場合には、改質水の生成量を増大させることができるので、上述したステップS112と同様にステップS122にてユーザに対する貯湯水の使用の勧告を中止する。
前述した実施形態によれば、上述した実施形態の作用効果に加えて、貯湯水の使用の勧告を比較的早期に中止することができる。したがって、貯湯水を無駄に排出することなく、必要な改質水を得ることができる。
さらに、系統電源30が停電した場合の燃料電池システムの動作の他の一例について、図5に示すフローチャートに沿って説明する。図3に示すフローチャートと同一内容については同一符号を付してその説明を省略する。図3に示すフローチャートと異なる点は、貯湯水の使用の勧告するのではなく、自動的に貯湯水を排水することである。
制御装置19は、図3に示すステップS110の処理に代えて、図5に示すステップS202において排水装置24dを制御して貯湯水を自動的に排水する(改質水生成部、排水部)。一方、制御装置19は、図3に示すステップS112の処理に代えて、図5に示すステップS204において排水装置24dを制御して貯湯水の排水を自動的に停止する。また、制御装置19は、湯利用機器A2aの浴槽において自動湯張りをさせて貯湯水を自動的に排水したり排水停止したりするようにしてもよい。
前述した実施形態によれば、制御装置19(供給量増大部:ステップS106)によって燃焼用酸化剤ガス(カソードエア)の供給量が増大しているときに、水タンク61内の改質水の残量が所定量以下である場合には、制御装置19(排水部:ステップS202)によって貯湯水を自動的に排出する。これにより、凝縮器25に貯湯水を通水することで改質水を生成することを的確に行うことができる。