JP6109481B2 - 伝統構法の建物用の耐震補強制震構造、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を実現した耐震補強構造物、及び伝統構法の建物用の耐震補強制震構造実現のための施工方法 - Google Patents

伝統構法の建物用の耐震補強制震構造、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を実現した耐震補強構造物、及び伝統構法の建物用の耐震補強制震構造実現のための施工方法 Download PDF

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Description

本発明は、伝統的な木造軸組である伝統構法の建物の柱、梁、貫、桁等の構造部材同士の接合部に取り付けて、地震等による大きな震動が負荷された場合に、構造材の弾性的な変形を許容しつつ、弾性的に復元させることにより制震を行うようにした、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を実現した耐震補強構造物、及び伝統構法の建物用の耐震補強制震構造実現のための施工方法に関する。
木造軸組の建物には、大きく「在来工法」と「伝統構法」の2つがある。
ここでは、フレーム状に組まれた木材に構造用合板を打ち付けた壁や床(面材)で支える構造を、「工法」、主に柱や梁といった軸組(線材)で支える構造を、「構法」と使い分けることとする。
「在来工法」の建物とは、構造壁、筋交い、構造用合板、接合金物等で剛性、強度を確保する、いわゆる「剛構造」の建物をいう。在来工法の建物の耐震性能が不足していると診断された場合は、構造壁、筋交い、構造用合板等の耐震部材を増設することで、耐震補強を行う。
これに対して、「伝統構法」の建物とは、構造壁や筋交い、金物等をあまり使用しないで、柱、梁、貫、桁等の構造部材同士を接合するようにし、弾性的な変形性と復元力を備えた、いわゆる「柔構造」の建物をいう。特に、横方向及びねじり方向の力に対しては変形しやすい性質を備える。
伝統構法の構造部材同士の接合は、木材の特性を生かし、2つの柱と梁等の構造部材同士を重ねて組合せて加工する等、接合部分の重なりを大きくすることにより、木材の表面の摩擦による接合強度が大きくなるように工夫されている。また、柱、梁等の構造部材が交差する接合部は、一方が他方に嵌合するようになっており、構造部材が大きく変形するような力がかかったとしても、木材特有の弾性的な変形性により、外れてしまったり、また、相互の接合部分がめり込むことで接合部が破壊されてしまうようなこともない。このため、大きな地震等の震動が負荷されても、構造部材同士の接合部の変形に対して、粘り強く壊れないような、しなやかな弾性的な変形性と復元性を備える。
ところで、伝統構法の建築として、代表的なものに、寺社建築等の文化財や町屋風建築等の古民家、全国各地の地方部の民家等がある。大地震に対する対策として、これらの長期的な保存のために、大きな震動が負荷されても、破壊されないような技術が望まれていた。
上述したように、伝統構法の建物の耐震性能を向上させようと、構造壁や筋交い等の剛的な構造部材を補強のために増設しようとすると、却って、建物の変形を抑制するように作用するため、柱や梁等の構造部材の破壊につながるおそれがある。また、建物の美観である意匠性や機能性を損ねてしまうため、採用することができない。
従来、一般的な木造建築用の耐震補強金具には、例えば、図9(特許文献1参照)に示すものがある。図9に示す耐震補強金具11は、両片部12a,2bの中間部に内側に湾曲させた湾曲張出部15a,5bを形成したL形基材12と、L形基材12の折曲部に当接される補強部材13と、L形基材12の複数ヶ所に係止される緩衝部材14とから構成される。L形基材12と補強部材13は、いずれも板材を折曲することによって形成される。また、緩衝部材14は、弾性特性、耐水性が良好なゴム材料から形成される。そして、補強部材13をL形基材12に当接させた時、補強部材13の折曲角部13cとL形基材12の折曲角部12cとの間に空隙10が生じるようになっている。
また、この他、図10(特許文献2参照)に示すような耐震補強金具がある。略L字状に成形すると共に挿通孔113を穿設してなる硬質ゴム製の弾性基材111の内面側と外面側に、挿通孔113に符合する位置に締着孔123を穿設してなる補強板材112を一体に固着している。
特開2000−64424号公報 特開2003−74118号公報
しかし、特許文献1記載の耐震補強金具では、L形基材12の他に、補強部材13と、L形基材12の複数ヶ所に係止される緩衝部材14から構成されている。このため、部品点数が多く、構造が複雑なため、高コストとなる傾向があり、外観的にも、文化財などの美観が重視される伝統構法の建築には不向きである。また、補強部材をL字基材に取り付けて弾性力を強化する構造となっているため、伝統構法の建築が必要とする弱いばね弾性力とはならず、また、ねじり方向の変形の復元性も弱く、伝統構法の建築には向いていない。
また、特許文献2記載の耐震補強金具は、略L字状に成形すると共に挿通孔を穿設してなる硬質ゴム製の弾性基材の内面側と外面側に、略L字状に成形すると共に挿通孔に符合する位置に締着孔を穿設してなる補強板材を一体に固着している。このため、特許文献2記載の耐震補強金具は、部品点数が多く、構造が複雑なため、高コストとなり、意匠性にも問題がある。したがって、伝統構法の建築に採用するには不適当である。さらに、弾性基材を補強材で挟持する構造となっているため、特許文献1記載の発明と同様、伝統構法の建築が必要とする弱いばね弾性力とはならず、また、ねじり方向の変形の復元性も弱い。
本発明の伝統構法の建物用の耐震補強制震構造は、かかる問題点を解決すべくなされたものであって、伝統構法の建築特有の震動に対する構造部の変形性を許容しつつも復元力を作用させることにより制震を行うものである。さらに、本発明は、低コストで、かつ美観を損ねない意匠性を備え、地震等により強い振動が負荷されても、伝統的な木造建築物が崩壊しないよう、同一平面内の直交する2方向及びねじり方向に対する変形性と復元力を備えた、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の伝統構法の建物用の耐震補強制震構造は、伝統構法の建物の柱、梁、桁、貫等の構造部材同士の接合部が緊結されていない、縦方向に比べて横方向耐力が小さく変形性能が大きい柔構造の建物の耐震改修に際して、構造部材同士の接合部に取付ける耐震補強のための伝統構法の建物用の耐震補強制震金具を用いた伝統構法の耐震補強制震構造である。
ここで用いられる耐震補強制震金具は、震動負荷時の構造物の変形に追従可能なばね弾性力を有するステンレスバネ材からなる鋼板を、角度を91°とした折曲部で円弧状かつL字形に成型し、伝統構法の建物において、同一平面内の直交する2方向の変形性能を、在来工法の建物の変形性能に比べ2倍程度の変形性能を備えた伝統構法の建物の変形を阻害しない変形性能まで許容範囲とし、構造部材同士の弾性的な変形を許容して、弾性力を増倍させることで、耐震補強制震を行うことを特徴とする。
本発明によれば、地震等の震動が負荷された場合にも、XY方向及びねじり方向の弾性力及び復元力にも優れ、意匠性、機能性及び経済性に優れた伝統構法建築用制震金具を提供することができる。
より詳細には、後述する本発明者による動的耐震性能評価方法により、伝統構法の建物の耐震性能が不足していると判断された場合、換言すると、震動により変形した場合の復元力が不十分な場合に、復元力特性を増強することで解決できると考えられる。
伝統構法の建物は、地震等により震動が負荷された場合、外力により大きく変形はするが、それに対応して必要な復元力特性を有していることが耐震の必要条件となる。このため、震動負荷時の構造部の変形に追従可能とするような弱いばね弾性力が必要になる。特に、弱い小さなばね部材を多数個使用することで、ばね剛性が働くため、XY方向及びねじり方向の変形を許容する弾性力と共に、その変形を元に戻そうとする大きな復元力が期待される。このため、建物の構造部が大きく変形したとしても、建物の構造部を傷めることは小さい。
また、伝統構法の建物は、意匠性、機能性の長期的な維持及び保存が強く求められるが、本発明の制震金具は、小型で強度があるため、目立たず、接合部に支障にならないように取り付けることができるので、伝統構法の耐震補強に必要な意匠性、機能性及び経済性を備えるだけでなく、ねじれ抵抗性も満足することができる
本発明の第1の実施の形態例にかかる、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造に 用いられる耐震補強制震金具の斜視図である。 図1に示す、本発明の第1の実施の形態例にかかる、伝統構法の建物用の耐震補 強制震構造に用いられる耐震補強制震金具の正面図(A)、上面図(B)及び側面図(C)である。 本発明の第1の実施の形態の変形例にかかる、伝統構法の建物用の耐震補強制震 構造に用いられる耐震補強制震金具の正面図(A)、上面図(B)及び側面図(C)である。 本発明の第2の実施の形態例にかかる、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造に 用いられる耐震補強制震金具の斜視図である。 本発明の第2の実施の形態例にかかる、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造に 用いられる耐震補強制震金具の正面図(A)、上面図(B)及び側面図(C)である。 本発明の伝統構法の建物用の耐震補強制震構造に用いられる耐震補強制震金具の施工例を説明するための斜視図(A)と側面図(B)である。 伝統構法の木造建築の固有周期をサンプリングした図である。 在来工法と伝統構法の建物の変形特性の違いを、耐力及び層間変形角の関係から比較した図である。 従来の耐震補強金具の斜視図である。 従来の他の耐震補強金具の斜視図である。
以下本発明の実施の形態にかかる、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造に用いられる耐震補強制震金具(以下、単に、「制震金具」という)について、図1〜2を参照して説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施の形態
まず、図1〜図2を用いて、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる制震金具の構成について説明する。
図1は、本例の制震金具の斜視図である。
本例の制震金具は、古民家や文化財等の伝統構法の建築の柱、梁、貫、桁等の構造部材同士の接合部に用いられるものである。
図1に示すように、制震金具1は、弾性を有するステンレスバネ材からなる鋼板をL字形状に折曲げて形成され、鋼板の折曲部を円弧形状としたものである。具体的には、弾性を有する厚さ約3.0mmのステンレスバネ材の鋼板をL字形状に折り曲げて、その折曲部2cを円弧状とし、鋼板の両側の片部2a,2bに皿ビス締結用の挿通孔3aを複数穿設している。
皿ビスを使うようにしているのは、外見上、伝統構法の建築に装着しても、目立たず意匠的な外観を損ねないようにするためである。
本例では、大きさを、幅32.0mmで、長さ120.0mm、厚さ3.0mmのステンレスバネ材からなる鋼板(SUS304)を、R20の湾曲をもたせて91°の角度で成形するようにしている。なお、SUS304は、一般的に利用される、最も手に入れやすい材料であるが、他のバネ性及び耐久性、成形性を有する鋼板を使うことも可能である。
本例の制震金具1は、厚さを約3.0mmとしているが、必要な弾性復元力があればよく、2.0mm以上−3.0mm以下のステンレスバネ材としてもよい。
挿通孔3aは、本例では、図1に示すように、直径6.5mmの円形穴である挿通孔3aを片部2a,2bに各々6箇所穿孔している。なお、図3の第1の実施の形態の変形例に示すように、直径6.5mmの円形穴である挿通孔3aを5箇所に穿孔するような形状としてもよい。
なお、制震金具1の厚み、形状、挿通孔の大きさ及び個数はこれに限定するものではなく、使用する箇所や強度に応じて、適宜変更しても良いことはもちろんである。また、制震金具1の材質も、ステンレスバネ材に限定されるものではなく、同様のばね弾性力、意匠性、経済性を有する材質であれば使用可能である。
特に、本例のステンレスバネ材からなる制震金具1では、4.5°程度までの変形角度に対する弾性復元力及び耐性力があることが実験によりわかっている。
本例の制震金具1では、伝統構法建築の構造部材同士の接合部に取り付けることにより、地震等の強度の震動が負荷されて、構造部に大きな変形が生じた場合にも、制震金具1が有する弱いばね弾性復元力により、建築構造物の損壊を免れることができる。さらに、構造部のXY方向及びねじり方向の変形に追従可能な弾性力と、元の状態に戻すように作用する復元力も働き、建築構造物の損壊を極力抑えることができる。
特に、本例の制震金具1では、ステンレスバネ材を使用することにより、弾性により衝撃を吸収し復元させるという緩衝効果があると共に、へたり等の耐久性にも優れている。このため、長期に亘り使用しても有効に弾性復元力を保持維持することができ、ステンレスによる剛性と共に、柱、梁、貫、桁等の構造部との接合部をしなやかに補強し、伝統構法の建築を長期に亘り使用することができる。
本実施例では、挿通孔3aを5または6個としているが、これに限定するものではなく、4〜8個であればよい。これは、多すぎると(9個以上)、接合部に装着時の施工性が悪くなり、また、少なすぎると(3個以下)と、弱いばね弾性復元力の制震金具1に対して、外側に開く方向の力が負荷された場合にも、塑性的に伸びてしまい接合部から外れてしまうからである。すなわち、弱いばね弾性復元力の制震金具1に対して、外側に開く方向の力が負荷された場合に、塑性的に伸びてしまい接合部から外れてしまうことを防止するためにも、挿通孔3aは4〜8個とすることが適当である。また、この数は、施工性の観点からも好ましい。
2.第2の実施の形態
次に本発明の第2の実施の形態例にかかる耐震補強具について図4及び図5を参照して説明する。
なお、第1の実施の形態(図1〜3)と対応する部位については同符号を付し、重複を避けるものとする。図4は、本例の制震金具の斜視図である。
図4に示すように、第2の実施の形態では、特に、折曲部を、接合側と反対側に、突出するよう湾曲させた湾曲突出部2dを形成した点が第1の実施の形態と異なっている。
本例の制震金具1は、幅32.0mmで、長さ120.0mm、厚さ3.0mmの焼入れステンレス鋼板を、曲率半径R20の湾曲突出部2dをもたせて91°の角度に成形して作製される。また、図4に示す皿ビスの挿通孔3bは、直径6.5mmの円形穴である。これは、図3に示した挿通孔3aと同じものである。湾曲部2dの大きさは、曲率半径R10の湾曲をもたせて成形されている。図5に示すように、折曲部を91°としたのは、接合部との突合せ性をよくするためである。
なお、制震金具1の厚み、形状、挿通孔の大きさ及び個数はこれに限定するものではなく、使用する箇所や強度に応じて、適宜変更してもよい。
3.制震金具の施工方法
次に、本発明の実施の形態にかかる制震金具の施工方法について、図6を参照して説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
図6に示すように、水平方向の梁5に形成された開口部5aに、鉛直方向の柱6の突出部6aが嵌合されて、接合部が形成されている。梁5及び柱6の接合部に、本例の制震金具1の両片部2a,2bを各々梁5及び柱6の角部に当接するように突き合わせる。本例の制震金具1の角度が、91°(図5参照)となっているため、梁5及び柱6に突合せしやすくなっている。
このように、伝統構法の梁5及び柱6の接合部に多数の制震金具1が、皿ビス4を挿通孔3aに通して取り付けられ、固定される。これにより、弱いばね弾性力の制震金具1が多数使用されることになり、ばね剛性が働き、特に変形の大きな、横方向及びねじり方向の変形に対する大きな復元性を期待することができる。
また、弱いばね弾性力を有する制震金具1を多数設けることにより、変形に対するねばりの力が働く。
また、伝統構法の建物は、意匠性及び機能性が要求されるが、本例の制震金具1のように、ステンレスバネ材の鋼板を単にL字形状に折曲げた構造としているため、金色のすっきりとした形状となっている。このため、制震金具1を多数使用したとしても、機能性を備えつつ、意匠的にも、伝統構法の建物の美観を損ねることなく、耐震補強を行うことができる。
以上、本発明による制震金具1の実施の形態について説明した。本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、なお考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
4.制震金具の施工のための耐震評価
本発明の制震金具の施工使用や施工場所については、本出願の発明者の特許第3857680号の「動的耐震診断」を行うことにより、定量的な耐震性能評価指数を算出し、耐震性能を評価した上で、耐震補強具を施工するのが効果的である。なお、耐震評価方法については、本発明の趣旨から離れるので、下記に概要のみを説明する。
発明者の長年の実験により、伝統構法による木造建物は、通常の在来工法とは動的耐震性能が異なることがわかっており、変形特性に応じた対応が求められる。
以下、伝統構法の動的耐震性能を在来工法の動的耐震性能と比較して説明する。
本発明者は、長年、寺社建築、町屋風建築、古民家等の伝統構法の建物の振動を調査してきた。本発明者の動的耐震診断の調査(微動解析による調査)によると、伝統構法の動的耐震性能は、在来工法の建物の動的耐震性能と、かなり異なることがわかっている。
図7は、伝統構法建物の実測された固有周期の例である。ここで、系列1は、建物の短辺方向の固有周期を示し、系列2は、建物の長辺方向の固有周期を示す。なお、横軸のA〜Sは、発明者が調査した建物の数(19棟)である。図7から分かるように、伝統構法による建物の固有周期は、伝統構法の建物の固有周期は、最小値が約0.2秒程度であり、固有周期が、同様に最小値が約0.1秒である在来工法の建物の固有周期に比べて、全体的にかなり大きいことがわかる。これは、在来工法の建物が構造要素の壁を多く設けて強度を確保している剛構造の建物であるのに対し、伝統構法による建物は構造要素の壁がほとんどない柔構造の建物であるためである。
ところで、本出願の発明者の特許第3857680号の「動的耐震診断」による、建物の動的耐震性能評価指数Cは、式(1)で示される。
C=(T/T√(Q・R) …式(1)
ここで、T:非減衰振動の固有周期、T:建物の固有周期の基準値、Rは振動応答倍率、Qは、共振性能係数、Rは建物の最大振幅応答倍率、である。
図8は、日本建築学会と京都大学防災研究所が示している、在来工法と伝統構法の建物の変形特性の違いを比較した図である。図8に示されるように、在来工法の建物では、1/30ラジアンの層間変形角(傾斜角約2度)が破壊の目安になっているのに対して、伝統構法の建物の場合は、1/15ラジアンの層間変形角(傾斜角約4度)が破壊の目安となっている。すなわち、伝統構法の建物は在来工法の建物に比較して2倍の大きさの変形まで、破壊の許容範囲が広いことがわかる。
このため、伝統構法の建物の動的耐震性能評価指数Cを算定する場合には、伝統構法の建物の最大応答倍率Rと在来工法の建物の最大振幅応答倍率Rとは、図8からR=R/2と評価するのが妥当である。これは1/15ラジアンと1/30ラジアンの比から定まるものである。
したがって、伝統構法の建物の動的耐震性能評価指数Cは、上記(1)式に、伝統構法の建物の固有周期の基準値Tb=0.2、R=R/2を代入することにより、下記の(2)式のように表される。
=(T/0.2)√(Q・R/2)
=25・√(1/2)T ・√(Q・R) ・・・式(2)
他方、在来工法の建物の固有周期の基準値Tは、0.1秒であり、
b=0.1を代入することにより、
C=(T/0.1)√(Q・R)
=100・T ・√(Q・R) ・・・式(3)
となる。
式(2)と式(3)の比をとることにより、
C/C=100・T ・√(Q・R)/25・√(1/2)T ・√(Q・R
=4√(R)/√2/2√(R)・・・式(4)
=8/√2・√(R/R
と式(4)のようになる。
よって、伝統構法の建物の動的耐震性能評価指数Cは、在来工法に対して、√2/8・C、すなわち、約C/5.7に相当することがわかる。
このように、在来工法の建物の動的耐震性能評価指数Cを、建物の振動特性値である建物の固有周期T、共振性能を示すQ値、及び最大応答倍率Rの相乗積の大きさで表すことにするとき、在来工法の場合と同様な考え方で、伝統構法の建物の動的耐震性能の評価指数Cを求めることができる。
このように、動的耐震性能評価指数Cを伝統構法の建物に応用することにより、動的耐震評価を行った上で、制震金具の使用箇所及び個数を決定すると効果的である。
具体的には、制震金具1のばね弾性力は、約0.5KNなので、東西、南北方向の動的耐震指数を実験により求めた上で、必要な制震金具1の個数を決定するようにするとよい。
1 耐震補強具
2a,2b 片部
2c 湾曲折曲部
2d 湾曲突出部
3a,3b 挿通孔
4 皿ビス
5 梁
6 柱

Claims (4)

  1. 伝統構法の建物の柱、梁、桁、貫等の構造部材同士の接合部が緊結されていない、縦方向に比べて横方向耐力が小さく変形性能が大きい柔構造の建物の耐震改修に際して、前記構造部材同士の接合部に取付ける耐震補強のための伝統構法の建物用の耐震補強制震金具を用いた伝統構法の耐震補強制震構造であって、
    前記耐震補強制震金具は、震動負荷時の構造物の変形に追従可能なばね弾性力を有するステンレスバネ材からなる鋼板を、角度を91°とした折曲部で円弧状かつL字形に成型し、伝統構法の建物において、同一平面内の直交する2方向の変形性能を、在来工法の建物の変形性能に比べ2倍程度の変形性能を備えた伝統構法の建物の変形を阻害しない変形性能まで許容範囲とし、
    前記構造部材同士の弾性的な変形を許容して、弾性力を増倍させることで、耐震補強制震を行うことを特徴とした伝統構法の建物用の耐震補強制震構造
  2. 前記鋼板の両側の片部に、皿ビスを挿通するための挿通孔を複数形成した、
    請求項1に記載の伝統構法の建物用の耐震補強制震構造
  3. 請求項1または2に記載の伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を実現するため、伝統構法の建築の柱、梁、桁、貫等の構造部材同士の接合部の隅角部に、震動負荷時の構造物の変形に追従可能なばね弾性力を有するステンレスバネ材からなるばねを多数取り付けることにより、ばね剛性が働き、横方向とねじりの変形に対する復元力を実現する、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を実現した耐震補強構造物。
  4. 請求項1または2に記載の伝統構法の建物用の耐震補強制震構造を実現するため、伝統構法の建築の柱、梁、桁、貫等の接合部に施工するに際して、
    多数の前記伝統構法の建物用の耐震補強制震金具を、対応する前記接合部に、挿通孔に皿ビス挿通して取り付けるようにした、伝統構法の建物用の耐震補強制震構造実現のための施工方法。
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