従来から、自動車には、制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステムや、発進時の車輪のスリップを防止するトラクションコントロールシステム等が搭載されており、かかるシステムの一部として、車輪の回転速度を正確に計測する車輪速センサが広く用いられている。
このような車輪速センサは、例えば、特開2007−101231号公報(特許文献1)に記載の如く、車輪と共に回転する被検出体であるロータの回転による磁界変動を検出して電気信号に変換する回転検出素子を備えており、かかる回転検出素子が取り付けられたホルダーと、回転検出素子の一対のリード部と、一対のリード部に接続された出力電線の一部とが、合成樹脂製のカバー部に埋設して覆われた構造を有している。そして、カバー部に設けられた固定部を介して車両側に固定されるようになっている。
ところで、車輪速センサのカバー部の成形は、カバー部の成形用金型内に、ホルダーを位置決め支持した状態でカバー部を射出成型することで行われる。その際、ホルダーに予め設けた支持ピン挿入穴に金型側に設けた支持ピンを挿入することで、ホルダーの位置決めが実現されるようになっている。そして、ホルダーに設ける支持ピン挿入穴の形成部位は、カバー部の形状等に応じて種々設定されるものであり、特許文献1の図2や図3に図示されているように、ホルダー部材の側面に形成される場合もある。
ところが、ホルダー部材の側面に支持ピン挿入穴が形成される場合には、ホルダーの上下面に支持ピン挿入穴が形成される場合に比して、支持ピン挿入穴の設定箇所が限られており、ホルダーの支持ピンによる安定支持が難しくなるという問題があった。それ故、特許文献1に記載のようにホルダーの両側面にそれぞれ1つの支持ピン挿入穴を設け上下から挟持した場合には、カバー部の射出成型時の樹脂注入圧によりホルダー部材が変位してしまい、製品精度を確保することが難しくなるという問題を内在していた。
また、特許文献1に示されるように、ホルダーの幅寸法は、回転検出素子が取り付けられる一方の端部から出力電線が引き出される他方の端部に向かって先細状になっている場合が多い。それ故、仮にホルダーの側面に複数の支持ピン挿入穴を設けてホルダー支持安定性の向上を図った場合、ホルダーを金型にセットする際に複数の支持ピン挿入穴へ支持ピンが挿入されるタイミングがずれ、一方の支持ピン挿入穴に支持ピンが挿入された際にホルダーが位置ずれして、他方の支持ピン挿入穴に支持ピンが挿入し難くなるという新たな問題を招来することになるのである。
これに対して、ホルダーの幅寸法を全長に亘って同一にすることも考えられるが、ホルダーを形成するための樹脂量が増大して望ましくなく、ホルダーに取り付けられたリード端子に出力電線を半田付け等する際に、半田鏝等の設備とホルダーとの干渉が問題となっていた。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、カバー部の成形金型内でのホルダーの位置ずれを防止して製品精度の向上を図ると共に、回転検出素子のリード部と出力電線の良好な接続作業性をも確保することができる、新規な構造の車輪速センサを提供することにある。
本発明の第一の態様は、ホルダーに取り付けられた回転検出素子の一対のリード端子に対して、一対の出力電線が接続されていると共に、前記ホルダーと、前記回転検出素子と、前記リード端子と、前記出力電線の一部とを埋設して覆う樹脂製のカバー部を備えてなる車輪速センサであって、前記ホルダーが、前記一対のリード端子を並列状態で保持する一対のリード端子保持部と、前記リード端子保持部の延出方向における一方の側に位置する前記ホルダーの両側面に開口形成され前記リード端子の並列方向で対向する一対の第1支持ピン挿入穴と、前記リード端子保持部の延出方向における他方の側に位置する前記ホルダーの両側面に開口形成され前記リード端子の並列方向で対向する一対の第2支持ピン挿入穴とを有している一方、前記第1支持ピン挿入穴と前記第2支持ピン挿入穴の形成部位における前記ホルダーの幅寸法が同じに設定されている一方、前記第1支持ピン挿入穴と前記第2支持ピン挿入穴の間に位置する前記リード端子保持部の形成部位における前記ホルダーの幅寸法が、前記第1および第2支持ピン挿入穴の形成部位における前記ホルダーの前記幅寸法よりも小さくされることで前記ホルダーの前記一対のリード端子保持部の幅方向両側に一対の凹所が形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、ホルダーに一対のリード端子保持部が設けられており、その延出方向の両側に、樹脂製のカバー部をモールド成形する際に、ホルダーを位置決め支持する支持ピン挿入穴が、第1支持ピン挿入穴および第2支持ピン挿入穴としてホルダー側面に開口形成されている。それ故、回転検出素子等が取り付けられたホルダーをインサート品としてカバー部をモールド成形する際に、ホルダーを安定して保持することができ、カバー部のモールド成形時における注入樹脂圧によるホルダーの変位等を確実に阻止して、車輪速センサの製品精度の向上を安定して図ることができる。
しかも、第1支持ピン挿入穴と第2支持ピン挿入穴がホルダーの両側面に開口するそれら挿入穴の形成部位では、ホルダーの幅寸法(両側面の対向方向)が同じに設定されている。それ故、カバー部の成形金型にホルダーをセットする際に、第1/第2支持ピン挿入穴へ同時に金型の支持ピンが挿入されることとなる。その結果、一方の支持ピン挿入穴にのみ先に金型の支持ピンが挿入されることで、ホルダーが位置ずれして他方の支持ピン挿入穴に支持ピンが嵌合し難くなるといった従来構造の不具合が発生することも未然に防止される。また、従来構造ではリード端子保持部の出力電線側でホルダーの幅寸法が小さくなるが、本発明では第1/第2支持ピン挿入穴の両方でホルダーが同じ幅寸法とされている。従って、ホルダーの幅寸法の減少により、リード端子と出力電線の接続部分の近傍にホルダーの支持ピン挿入穴が設けられることが回避されており、リード端子と出力電線の接続部分と支持ピン挿入穴との距離を確保して、支持ピン挿入穴に起因する外部からの水浸入に対する耐性を高めることができる。
さらに、第1支持ピン挿入穴と第2支持ピン挿入穴の形成部位の間のリード端子保持部の形成部位では、ホルダーの幅寸法が支持ピン挿入穴形成部位よりも小さくされることでリード端子保持部の幅方向両側に一対の凹所が形成されている。それ故、リード端子保持部の延出方向(長手方向)両側においてホルダーの幅寸法を大きくしても、かかる凹所によりリード端子保持部に保持されたリード端子に出力電線を半田付けや溶接により接続する作業スペースを有利に確保することができる。これにより、ホルダーの支持安定性の向上とリード端子および出力電線の接続作業性の向上の両立を巧く図ることができるのである。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記ホルダーの前記第1支持ピン挿入穴の形成部位では、前記ホルダーの前記両側面が前記リード端子の載置面を超えて上方に突出する拡張部を含んで構成されており、各前記側面において少なくとも2つの前記第1支持ピン挿入穴が形成されているものである。
本態様によれば、第1支持ピン挿入穴の形成部位の両側面が拡張部により大きくされていることから、ホルダーの各側面において、リード端子保持部の一方の側で少なくとも2つの第1支持ピン挿入穴を設ける一方、リード端子保持部の他方の側で少なくとも1つの第2支持ピン挿入穴を設けることができ、ホルダーの各側面を少なくとも3点で支持することができる。これにより、カバー部の成形用金型内におけるホルダーの保持安定性を一層有利に実現でき、ホルダーの位置ずれがない又は制御された高精度の車輪速センサを提供できる。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記リード端子保持部の前記他方の側の端部には、側面視円柱状の出力電線載置部が形成されており、前記出力電線載置部の外周面上に前記出力電線が載置されている一方、前記出力電線載置部の両側面には、軸方向内方に延出する前記第2支持ピン挿入穴が開口しているものである。
本態様によれば、リード端子保持部の他方の側の端部に出力電線載置部が設けられており、出力電線が載置されるようになっている。この出力電線載置部が側面視円柱状を為していることから、外周面に角部等の屈曲点がなく、出力電線に局部的なストレスを加えることなく支持することができる。また、円柱状の電線載置部の内部領域を利用して、省スペースで第2支持ピン挿入穴を形成することができる。
本発明においては、ホルダーを位置決め支持する支持ピン挿入穴が、リード端子保持部の延出方向で相互に離隔した第1支持ピン挿入穴および第2支持ピン挿入穴としてホルダー側面に開口形成されている。それ故、ホルダーをインサート品としてカバー部をモールド成形する際に、ホルダーを安定して保持できる。しかも、支持ピン挿入穴の形成部位では、ホルダーの幅寸法が同じに設定されている。それ故、一方の支持ピン挿入穴にのみ先に金型の支持ピンが挿入されることで、ホルダーが位置ずれして他方の支持ピン挿入穴に支持ピンが嵌合し難くなるといった従来構造の不具合の発生が未然に防止される。また、リード端子と出力電線の接続部分と支持ピン挿入穴との距離を確保して、支持ピン挿入穴に起因する外部からの水浸入に対する耐性を高めることができる。さらに、リード端子保持部の幅方向両側に一対の凹所が形成されている。それ故、リード端子保持部の両側においてホルダーの幅寸法を大きくしても、リード端子に出力電線を半田付けや溶接により接続する作業スペースを有利に確保できる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜5に、本発明の一実施形態としての車輪速センサ10を示す。車輪速センサ10は、例えば、制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキシステムの一部として、車輪の回転速度を正確に計測するために広く用いられており、図1に示されているように、車輪速センサ本体12と、図示しない車両側に固定される固定部14と、を備えて構成されている。また、車輪速センサ本体12は、図2に示されているように、回転検出部材16と、回転検出部材16を埋設して覆うカバー部18と、を含んで構成されている。このうち、固定部14とカバー部18は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって形成されている。なお、以下の説明において、上方とは、図3中の上方、下方とは、図3中の下方、前方とは、図5中の左方、後方とは、図5中の右方を言うものとする。
回転検出部材16は、図2及び図3に示されているように、回転検出素子20と、回転検出素子20の後述する一対のリード端子28,28に接続された一対の出力電線22,22と、回転検出素子20と出力電線22の一部が取り付けられたホルダー24と、を含んで構成されている。回転検出素子20は、略矩形の板形状の磁電変換子26と、この磁電変換子26の一側面から外方(図3中、上方)に向かって略平行に突設された一対の短冊状の金属板を後方に向かって90度屈曲することにより形成された一対のリード端子28,28と、この一対のリード端子28,28に跨って接続された略台形断面形状のコンデンサ30とを有している。磁電変換子26は、磁界の変化を電気信号に変換して一対のリード端子28,28から出力する素子であり、図示しない車輪と共に回転する被検出体であるロータに磁電変換子26の上面32を対向配置させることにより、ロータの回転による磁界変動を検出して電気信号に変換し車輪の回転速度を正確に計測できるようになっている。
回転検出素子20の一対のリード端子28,28には、一対の出力電線22,22がそれぞれ半田付けや溶接等により接続されている。一対の出力電線22,22は、いずれも導体である銅やアルミニウムその他の金属線の複数を束ね合わせた芯線34がエチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する被覆部材36で覆われた構造とされており、先端部の被覆部材36を取り外して回転検出素子20の一対のリード端子28,28の突出端部に半田付けされる。また、一対の出力電線22,22は、回転検出素子20への接続前は、まとめられて1本の電線38とされている。
図2及び図3に示されているように、このような構成とされた回転検出素子20が、ホルダー24内に、磁電変換子26を前にして且つ磁電変換子26の上面32を前方に向けた状態で配設され保持されるようになっている。ここで、ホルダー24は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって形成されており、ベース部分40と蓋部分42の2つの部品から構成されている。
ホルダー24のベース部分40は略ブロック形状とされており、ベース部分40の上面には一対のリード端子28,28を並列状態で保持する略短冊状の一対のリード端子保持部44,44が形成されている一方、ベース部分40の前面には略矩形状の磁電変換子収容凹部46が設けられている。そして、ベース部分40におけるリード端子保持部44の延出方向の一方の側48には、ベース部分40の両側面50,50に開口形成され一対のリード端子28,28の並列方向で対向する略円形状の一対の第1支持ピン挿入穴52,52が設けられている。かかる一対の第1支持ピン挿入穴52,52の形成部位において、ベース部分40の両側面50,50がリード端子28の載置面であるリード端子保持部44を超えて上方に突出することにより略矩形平板状の一対の拡張部54,54が形成されている。一対の拡張部54,54においても一対の第1支持ピン挿入穴52,52が設けられており、これによりベース部分40の各側面50において2つの第1支持ピン挿入穴52,52が形成されるようになっている。
また、ベース部分40におけるリード端子保持部44の延出方向の一方の側48には、一対のリード端子28,28の並列方向の両側において前方に向かって徐々に突出寸法が大きくされた略台形断面形状の一対のガイド部56,56が突設されており、一対のリード端子28,28を並列方向で安定して保持できるようにされている。さらに、一対のガイド部56,56の外方には、一対のガイド部56,56に並列して略三角断面形状で突出する一対の突条58,58が設けられている。また、ベース部分40の両側面50,50には、第1支持ピン挿入穴52の前方に位置して下方に向かって徐々に突出寸法が大きくされた略三角断面形状の一対の係合突部60,60が突設されている。
一方、ベース部分40におけるリード端子保持部44の延出方向の他方の側62の端部には、側面視円柱状の一対の出力電線載置部64,64が形成されており、かかる一対の出力電線載置部64,64の外周面66上に出力電線22が載置されている一方、一対の出力電線載置部64,64の両側面に開口形成され一対のリード端子28,28の並列方向で対向する一対の第2支持ピン挿入穴68,68が設けられている。
さらに、ベース部分40におけるリード端子保持部44の延出方向の他方の側62には、ベース部分40の上面において、一対のリード端子28,28の並列方向中央部から鉛直方向に向かって略矩形状に突出する隔壁70が、リード端子保持部44の延出方向に対して他方の側62の略全体に亘って設けられている。かかる隔壁70により、一対のリード端子28,28の一対の出力電線22,22との接続部分が確実に分離保持されるようになっている。
加えて、ベース部分40の一対のリード端子保持部44,44の幅方向両側には一対の凹所72,72が形成されている。より詳細には、第1支持ピン挿入穴52と第2支持ピン挿入穴68の間でベース部分40の両側面50,50が略矩形状に切り欠かれることにより、外方および上下方向に開口する凹所72が形成されているのである。図5に示されているように、このような構成とされたベース部分40において、第1支持ピン挿入穴52の形成部位におけるベース部分40の幅寸法:W1が、第2支持ピン挿入穴68の形成部位におけるベース部分40の幅寸法:W2が同じに設定されている一方、凹所72により、第1支持ピン挿入穴52と第2支持ピン挿入穴68の間に位置するリード端子保持部44の形成部位におけるベース部分40の幅寸法:W3が、上記幅寸法:W1,W2よりも小さくなるように設定されている。
ホルダー24の蓋部分42は、図3に示されているように、略矩形平板形状とされている。一方の側(図3中、前方側)の幅方向の両側面には下方に向かって延出する一対の係合枠74,74が形成されており、係合枠74の中央部分には係合孔76が貫設されている。また、一方の側(図3中、前方側)の底面の幅方向両側においてベース部分40の一対の突条58,58に対応する位置には、長手方向に延びる略三角断面形状の凹溝78が設けられている。さらに、他方の側(図3中、後方側)の端部の側面には、2箇所に後方および上下方向に開口する切欠部80,80が設けられている。
一方、固定部14は、図1に示されているように、略オーバル状の板形状とされており、長手方向の一方の側には略円形のボルト挿通孔82が形成されている一方、長手方向の他方の側にはボルト挿通孔82よりもやや大きな径寸法を有する貫通孔84が貫設されている。ボルト挿通孔82にはC字形状の金属製の保持リング86が嵌め込まれており、ボルト挿通孔82に図示しないボルトが挿入されて固定部14が車両側に固定される際に、ボルト挿通孔82の内周面がボルトのネジ山によって削られることなく、より安定してボルト締めができるようになっている。そして、固定部14の貫通孔84を車輪速センサ本体12の外周面に外挿装着することで、車輪速センサ10を構成できるようになっている。
カバー部18は、図1及び図2に示されているように、車輪速センサ本体12において回転検出部材16を埋設して覆うように形成されている。カバー部18は全体として略筒状とされており、その外周面の軸方向略中央部分には軸方向に延びる4つの圧接リブ88が形成されている。そして、かかるカバー部18の圧接リブ88が固定部14の貫通孔84内に位置するように固定部14を車輪速センサ本体12に対して外挿装着することにより、車輪速センサ本体12が固定部14に対して強固に固定されて車輪速センサ10が完成されるようになっている。
次に、図1〜6を用いて、車輪速センサ10の製造方法に関する一実施形態について説明する。はじめに、図3〜5に示されているようなホルダー24を準備する。ホルダー24は、ベース部分40と蓋部分42の2つの部品から構成されている。より詳細には、ベース部分40と蓋部分42の2つの部品は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂により射出成形等によって形成されている。このような構成のホルダー24が、ホルダー準備工程において準備される。
続いて、図3〜5に示されているように、ホルダー24に対して、回転検出素子20を取り付ける回転検出素子取付工程が実行される。より詳細には、まずホルダー24のベース部分40を、リード端子保持部44を上に向けた状態で配置し、その上から回転検出素子20を、磁電変換子26が磁電変換子収容凹部46に収容され且つ一対のリード端子28,28が一対のリード端子保持部44,44に保持された状態になるように配設する。この際、磁電変換子26が磁電変換子収容凹部46に収容されると共に、一対のリード端子28,28の一方の側48が一対のガイド部56,56内に収容されることにより、幅方向で安定して保持されるようになっている。また、コンデンサ30が一対の拡張部54,54間に配設されて、図示しない他部材との干渉が防止されている。さらに、一対のリード端子28,28が他方の側62において隔壁70を挟んで配置されていることから、一対のリード端子28,28の一対の出力電線22,22との接続部分が確実に分離保持されるようになっている。そして、その上から蓋部分42を被せることにより、ホルダー24内に回転検出素子20が収容保持された状態で、ベース部分40と蓋部分42が係合される。この際、蓋部分42の係合枠74の係合孔76にベース部分40の係合突部60が係合されていると共に、ベース部分40の突条58が蓋部分42の凹溝78に嵌め込まれることにより安定して固定されるようになっている。このような一連の作業が、回転検出素子取付工程において実行されるのである。
回転検出素子取付工程の後、回転検出素子20の一対のリード端子28,28を一対の出力電線22,22にそれぞれ半田付けや溶接等により接続するリード端子/出力電線接続工程が実行される。この際、図5に示されているように、蓋部分42に設けられた切欠部80によりリード端子28の他方の側すなわちリード端子28と出力電線22の接続部分が広範囲に露呈されていると共に、ベース部分40に設けられた凹所72により一対のリード端子28,28の両側部分に他部材がないことから、半田付けや溶接等の作業を容易に行うことが可能となる。このような一連の作業が、リード端子/出力電線接続工程において実行されるのである。
さらにリード端子/出力電線接続工程の後、このような構成とされた回転検出部材16のホルダー24を金型90,92にセットするホルダーセット工程が実行される。より詳細には、図6に示されているように、回転検出部材16に対して、ホルダー24の第1及び第2支持ピン挿入穴52,68が上下方向を向くようにした後、略ブロック形状の下型90の支持ピン94に第1支持ピン挿入穴52及び第2支持ピン挿入穴68をそれぞれ挿入することにより所定位置に配設する。そして、その上から上型92を装着することにより、ブロック形状の上型92の支持ピン94に第1支持ピン挿入穴52及び第2支持ピン挿入穴68がそれぞれ挿入されるようになっている。下型90及び上型92の略T字断面形状のピン収容孔96には、ピン収容孔96と略同形状で僅かに小さい支持ピン94が挿入されており、ピン収容孔96の外方への開口部はベースプレート98により覆蓋されている。なお、図6の断面に仮想線で示すように、下型90及び上型92左側の支持ピン94の手前側には、もう1つの第1支持ピン挿入穴52に挿通される支持ピン94が配設されている。これにより、回転検出素子20が6本の支持ピン94によって支持された状態で金型内に収容されるようになっている。このような一連の作業が、ホルダーセット工程において実行される。
ホルダーセット工程の後、図示しない吐出口から樹脂材料を射出することにより、カバー部18がモールド成形されるカバー部成形工程が実行されるようになっている。そして、カバー部成形工程の後、カバー部成形工程で形成された車輪速センサ本体12に対して、前方から固定部14を外挿装着する固定部取付工程が実行される。これにより、本実施形態の製造方法に従う車輪速センサ10の製造が完了する。
このような構造とされた本実施形態の車輪速センサ10によれば、ホルダー24の幅方向の両側面50,50には、リード端子保持部44,44の延出方向で相互に離隔配置された一対の第1支持ピン挿入穴52,52と一対の第2支持ピン挿入穴68,68が開口形成されている。それ故、回転検出素子20等が取り付けられたホルダー24すなわち回転検出部材16をインサート品としてカバー部18をモールド成形する際に、支持ピン挿入穴52,68に支持ピン94を挿入することにより、回転検出部材16を安定して位置決め支持することができ、カバー部18のモールド成形時における注入樹脂圧による回転検出部材16の変位等を確実に阻止して、車輪速センサ10の製品精度の向上を安定して図ることができる。さらに、拡張部54を設けたことによりホルダー24の側面50に2つの第1支持ピン挿入穴52,52を形成することができ、カバー部18をモールド成形する際に、ホルダー24の各側面50を少なくとも3点すなわち2つの第1支持ピン挿入穴52,52と1つの第2支持ピン挿入穴68で支持することができる。これにより、カバー部18の成形用金型90,92内におけるホルダー24すなわち回転検出部材16の保持安定性を一層有利に実現でき、回転検出部材16の位置ずれがない又は制御された高精度の車輪速センサ10を提供できるのである。
しかも、第1支持ピン挿入穴52の形成部位におけるホルダー24の幅寸法:W1が、第2支持ピン挿入穴68の形成部位におけるホルダー24の幅寸法:W2が同じに設定されていることから、カバー部18をモールド成形する際に、第1/第2支持ピン挿入穴52,68へ同時に支持ピン94,94が挿入されることとなる。これにより、一方の支持ピン挿入穴にのみ先に支持ピンが挿入されることで、ホルダーが位置ずれして他方の支持ピン挿入穴に支持ピンが嵌合し難くなるといった従来構造の不具合の発生を未然に防止できる。また、従来構造の如きリード端子保持部の出力電線側でホルダーの幅寸法が小さくされていることによるリード端子と支持ピン挿入穴との近接配置が回避されており、リード端子と出力電線の接続部分と支持ピン挿入穴との距離を確保して、支持ピン挿入穴に起因する外部からの水浸入に対する耐性を高めることができるようになっている。
また、第1支持ピン挿入穴52と第2支持ピン挿入穴68の間に位置するリード端子保持部44の形成部位においてホルダー24の幅寸法:W3を支持ピン挿入穴52,68の形成部位よりも小さくすることにより、凹所72が形成されている。それ故、支持ピン挿入穴52,68の形成部位においてホルダー24の幅寸法:W1,W2を大きくしても、かかる凹所72によりリード端子保持部44に保持されたリード端子28に出力電線22を半田付けや溶接により接続する作業スペースを有利に確保することができる。これにより、ホルダー24の支持安定性の向上とリード端子28および出力電線22の接続作業性の向上の両立を巧く図ることができるのである。
加えて、リード端子保持部44の延出方向の他方の側62の端部には、出力電線22が載置される出力電線載置部64が設けられている。この出力電線載置部64が側面視円柱状を為しているすなわち出力電線載置部64の外周面66上は角部等の屈曲点がなく滑らかとされていることから、出力電線22に局部的なストレスを加えることなく支持することができる。また、出力電線載置部64の内部領域を利用することにより省スペースで第2支持ピン挿入穴68を形成することができるようになっている。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、本実施形態では、ホルダー24の側面50に2つの第1支持ピン挿入穴52,52が形成されていたが、その個数は任意に設定可能である。また、本実施形態では、固定部14とカバー部18は別体成形とされていたが、カバー部18の成形時に固定部14を一体的に成形してもよい。