JP6107975B2 - 遠心振子式吸振装置およびその次数設定方法 - Google Patents

遠心振子式吸振装置およびその次数設定方法 Download PDF

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Description

本発明は、駆動装置からの動力により回転する回転要素に連結される支持部材と、当該支持部材に連結されて振子支点周りに揺動する質量体とを備える遠心振子式吸振装置およびその次数設定方法に関する。
従来、この種の遠心振子式吸振装置を備えた力伝達装置として、少なくとも1つの入力体と、出力体と、少なくとも部分的に運転媒体、特に油で充填可能な室内に配置された振動減衰装置と、当該振動減衰装置に連結された遠心振子式の回転数適応型動吸振器とを含み、駆動装置と被駆動装置との間で動力を伝達するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この力伝達装置において、回転数適応型動吸振器は、油影響に関連して、駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qFだけ大きい有効次数qeffに設計されている。そして、次数オフセット値qFは、励振の次数qに合致しないように、励振の次数qの変化に比例して変化するように定められる。
特表2011−504987号公報
上記特許文献1に記載された有効次数qeffの設定手法は、質量体と回転する油との間の相対運動による抵抗、すなわち粘性抵抗を考慮して有効次数qeffを設定するものであると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載された手法は、理論的な裏付けに乏しいものであり、本発明者らの研究によれば、作動油といった液体の存在下における質量体の揺動に対する粘性抵抗の影響は小さいことが判明している。従って、特許文献1に記載されたように遠心振子式吸振装置における質量体の振動次数を設定しても、遠心振子式吸振装置の吸振性能を向上させることができず、場合によっては吸振性能を低下させてしまうおそれもある。
そこで、本発明は、遠心振子式吸振装置における質量体の振動次数をより適正に設定して吸振性能を向上させることを主目的とする。
本発明による遠心振子式吸振装置は、駆動装置からの動力により回転する回転要素に連結される支持部材と、前記支持部材に連結されて振子支点周りに揺動する質量体とを備える遠心振子式吸振装置において、前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、前記質量体の振れ角φに依存する前記遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように設計されていることを特徴とする。
一般に、振子支点周りに揺動する質量体を含む遠心振子式吸振装置(質量体)の振動次数は、回転要素の回転中心から振子支点までの距離を“R”とし、振子支点から質量体の重心までの距離を“r”としたときに、q=√(R/r)と簡易的に表されることが知られている。ただし、このような振動次数を示す簡易式は、質量体の振れ角(振子支点周りの回転角度すなわち振幅)が極めて小さいとみなして得られるものである。そして、本発明者らが遠心振子式吸振装置について鋭意研究を行った結果、回転要素および支持部材が回転中心周りに回転する際の遠心振子式吸振装置の質量体の振れ角は無視し得ないほどに大きく、上述のように振れ角を極めて小さいものとして取り扱うことで振動次数を適正に設定し得なくなっていることが判明した。従って、質量体の振れ角を考慮して、駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、質量体の振れ角φに依存する遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように遠心振子式吸振装置を設計すれば、振動次数をより適正に設定して遠心振子式吸振装置の吸振性能をより向上させることが可能となる。
本発明の一実施形態に係る遠心振子式吸振装置を備えた発進装置を示す概略構成図である。 本発明の一実施形態に係る遠心振子式吸振装置を示す概略構成図である。 遠心振子式吸振装置を構成する質量体の振動次数の設定方法を説明するための説明図である。 遠心振子式吸振装置を構成する質量体の振動次数の設定方法を説明するための説明図である。 質量体の振れ角を考慮した場合および考慮しない場合における遠心振子式吸振装置の振動減衰性能を示す説明図である。 遠心振子式吸振装置を構成する質量体の振動次数の設定方法を説明するための説明図である。 遠心振子式吸振装置を構成する質量体の振動次数の設定方法を説明するための説明図である。 遠心振子式吸振装置を構成する質量体の振動次数の設定方法を説明するための説明図である。
次に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る遠心振子式吸振装置10を備えた発進装置1の概略構成図である。同図に示す発進装置1は、駆動装置としてのエンジン(内燃機関)を備えた車両に搭載され、当該エンジンからの動力を自動変速機(AT)あるいは無段変速機(CVT)である変速機に伝達するものである。発進装置1は、遠心振子式吸振装置10に加えて、エンジンのクランクシャフトに連結されるフロントカバー(入力部材)3と、フロントカバー3に固定されるポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4と、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5と、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6と、変速機の入力軸ISに固定されるダンパハブ(出力部材)7と、ダンパハブ7に接続されるダンパ機構8と、ダンパ機構8に連結される図示しないロックアップピストンを有する単板摩擦式のロックアップクラッチ9とを含む。
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、ポンプインペラ4やタービンランナ5と同軸に回転するようにステータ6が配置される。ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ60により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、フロントカバー3とポンプインペラ4のポンプシェルとにより画成される流体伝動室(液体室)2の内部において作動油(流体)を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータとして機能する。なお、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ60を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
ダンパ機構8は、ロックアップクラッチ9のロックアップピストンに連結されて当該ロックアップピストンと一体回転可能な入力要素としてのドライブ部材81と、複数の第1コイルスプリング(第1弾性体)SP1と、第1コイルスプリングSP1を介してドライブ部材81に連結される中間部材(中間要素)82と、例えば第1コイルスプリングSP1よりも高い剛性(バネ定数)を有すると共に第1コイルスプリングSP1から発進装置1の径方向に離間して配置される複数の第2コイルスプリング(第2弾性体)SP2と、第2コイルスプリングSP2を介して中間部材82に連結されるドリブン部材(出力要素)83とを有する。
ドライブ部材81は、それぞれ対応する第1コイルスプリングSP1の一端と当接する複数の当接部を有する。ドライブ部材81の各当接部は、ダンパ機構8の取付状態において互いに隣り合う第1コイルスプリングSP1の間で両者と当接する。中間部材82は、それぞれ対応する第1コイルスプリングSP1の他端と当接する複数の第1当接部と、それぞれ対応する第2コイルスプリングSP2の端部と当接する複数の第2当接部とを有する。中間部材82の各第1当接部は、ダンパ機構8の取付状態において互いに隣り合う第1コイルスプリングSP1の間で両者と当接する。また、第2コイルスプリングSP2は、ダンパ機構8の取付状態において中間部材82の互いに隣り合う2つの第2当接部の間に配置され、当該2つの第2当接部の一方が第2コイルスプリングSP2の一端と当接し、他方が第2コイルスプリングSP2の他端と当接する。ドリブン部材83は、それぞれ対応する第2コイルスプリングSP2の端部と当接する複数の当接部を有し、ダンパハブ7に固定される。第2コイルスプリングSP2は、ダンパ機構8の取付状態においてドリブン部材83の互いに隣り合う2つの当接部の間に配置され、当該2つの当接部の一方が第2コイルスプリングSP2の一端と当接し、他方が第2コイルスプリングSP2の他端と当接する。
また、本実施形態の発進装置1では、ダンパ機構8の出力要素であるドリブン部材83に複数の第3コイルスプリング(第3弾性体)SP3を介してタービンランナ5が連結されており、これら複数の第3コイルスプリングSP3とタービンランナ5とは、ダイナミックダンパ20を構成する。これにより、ロックアップクラッチ9の係合時(ロックアップ時)には、遠心振子式吸振装置10とダイナミックダンパ20との双方によりダンパ機構8全体の振動を良好に吸収することが可能となる。
ロックアップクラッチ9は、図示しない油圧制御装置からの油圧により動作するものであり、ダンパ機構8を介してフロントカバー(入力部材)3とダンパハブ7すなわち変速機の入力軸ISとを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除することができる。ロックアップクラッチ9を構成する図示しないロックアップピストンは、例えばダンパハブ7により軸方向に移動自在かつ回転自在に支持される。また、ロックアップピストンの外周側かつフロントカバー3側の面には、環状の摩擦材が貼着され、上述のドライブ部材81は、ロックアップピストンの外周部に連結される。なお、発進装置1は、単板摩擦式のロックアップクラッチ9の代わりに、多板摩擦式のロックアップクラッチを含むものとして構成されてもよい。
遠心振子式吸振装置10は、図1に示すように、ダンパ機構8の回転要素であるドリブン部材83に対して同軸に連結される(固定される)支持部材(フランジ)11と、それぞれ支持部材11により揺動自在に支持されると共に周方向に隣り合う複数(例えば3〜4個)の質量体12とを含み、フロントカバー3とポンプインペラ4のポンプシェルとにより画成されて作動油を収容する流体伝動室2(液体室)の内部に配置される。そして、遠心振子式吸振装置10は、支持部材11の回転に伴って、作動油で満たされた流体伝動室2の内部で複数の質量体12が当該支持部材11に対して同方向に揺動することで、ダンパ機構8のドリブン部材83に対して当該ドリブン部材83の振動(共振)とは逆方向の位相を有する振動を付与する。これにより、フロントカバー3からダンパハブ7までの間で振動が遠心振子式吸振装置10により吸収(減衰)される。
本実施形態において、支持部材11には、1つの質量体12に2つ(一対)ずつ対応するように図示しない複数の第1ガイド切欠部が形成されており、各質量体12には、2つ(一対)の図示しない第2ガイド切欠部が形成されている。支持部材11と各質量体12とは、例えば、支持部材11の第1ガイド切欠部の内周面を転動する第1ローラ(コロ)と各質量体12の第2ガイド切欠部の内周面を転動する第2ローラ(コロ)とを一体化したガイドローラ(何れも図示省略)を介して互いに連結される。また、1つの質量体12に対応した支持部材11の一対の第1ガイド切欠部は、例えば、それぞれ支持部材11の径方向外側に向けて凸となる曲線を軸線とする左右非対称あるいは左右対称の長穴として形成され、質量体12の揺動中心線(ドリブン部材83(支持部材11)の回転中心(軸心)と振子支点とを含む直線)に関して対称に配置される。これに対して、各質量体12の一対の第2ガイド切欠部は、例えば、支持部材11の中心に向けて凸となる曲線を軸線とする左右非対称あるいは左右対称の長穴として形成され、質量体12の揺動中心線に関して対称に配置される。
これにより、本実施形態の遠心振子式吸振装置10では、上記ガイドローラが支持部材11の第1ガイド切欠部と当該質量体12の第2ガイド切欠部との双方によりガイドされることにより、支持部材11の回転に伴い、各質量体12を振子支点の周りに回動させると共に、揺動範囲内で振れるのに伴って当該質量体12の重心の周りに回転させることができる。この結果、遠心振子式吸振装置10によれば、質量体12の振子支点周りの揺動のみならず、質量体12の重心周りの回転モーメントをも利用して支持部材11に伝達される振動を減衰することが可能となる。なお、第1ガイド切欠部は、1つの質量体12に1つずつ対応するように支持部材11に形成されてもよく、第2ガイド切欠部は、各質量体12に1つずつ形成されてもよい。また、遠心振子式吸振装置は、支持部材11として、1個の質量体を揺動自在に支持する2本のアーム部材を備えた、いわゆるバイファイラ(bifilar)式の装置として構成されてもよい。
次に、図2から図8を参照しながら、遠心振子式吸振装置10における質量体12の振動次数の設定方法について説明する。
図2に示すように、例えばエンジンからの動力により回転する上述のドリブン部材83といった回転要素に連結(一体化)された支持部材11と、支持部材11に連結されて振子支点PF周りに揺動する質量体12とを備える遠心振子式吸振装置10の運動方程式は、一般に次式(1)のように表される。ただし、式(1)において、“m”は、質量体12xの質量であり、“R”は、回転要素および支持部材11の回転中心RCから振子支点PFまでの距離であり、“r”は、振子支点PFから質量体12xの重心Gまでの距離であり、“ω”は、回転要素および支持部材11の回転角速度であり、“θ”は、回転要素および支持部材11の回転中心RC周りの回転角度であり、“φ”は、支持部材11の回転に伴って振子支点PFの周りに揺動する際の質量体12(質量体12の重心)の振れ角、すなわち振子支点PF周りの回転角度であり、“c”は、定数である。
Figure 0006107975
上記式(1)は、質量体12の振れ角φが微小(φ<<1)であると仮定した場合、次式(2)の線型方程式に変形可能であり、式(2)より、質量体12の揺動の周波数fを次式(3)のように表すことができる。そして、式(3)から質量体12の振動次数qを次式(4)のように得ることができる。従って、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数を“qtag”とすれば、上記距離Rおよびrを、例えばqtag≒√(R/r)を満たすように定めることで、遠心振子式吸振装置10によりエンジンで発生する振動を減衰することができると考えられる。
Figure 0006107975
質量体12の振動次数qを示す式(4)は、上述のように、質量体12の振れ角φ(振幅)が極めて小さいとみなして得られるものであるが、本発明者らは、遠心振子式吸振装置における当該質量体の振動次数の設定について鋭意研究を行った結果、回転要素および支持部材が回転中心周りに回転する際の遠心振子式吸振装置の質量体の振れ角は、無視し得ないほどに大きく、上述のように振れ角を極めて小さいものとして取り扱うことで質量体の振動次数を適正に設定し得なくなっていることが判明した。すなわち、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagと、上記式(4)から得られる質量体12の振動次数qとに基づいて遠心振子式吸振装置10の諸元を定めた場合、質量体12の振れ角φが大きくなった際に、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagと質量体12の振動次数qとにズレを生じてしまい、遠心振子式吸振装置10によりエンジンで発生する振動を良好に減衰することができなくなってしまうおそれがある。これを踏まえて、本発明では、質量体12の振動次数qを設定するに際して、当該質量体12の振れ角φをも考慮することとした。
質量体12が無視し得ない程度に振れると仮定した場合、上記式(1)は、微小項を無視すれば、次式(5)の非線形方程式に変形可能であり、式(5)より、質量体12の揺動の周波数fを次式(6)のように表すことができる。更に、式(6)を次式(7)のように変形すれば、式(7)から質量体12の振動次数qを次式(8)のように得ることができる。すなわち、式(8)の第2項における√(R/r)以外の要素を次式(9)のように“k”と置けば、振動次数qをq=k・√(R/r)と表すことができる。ただし、式(6)〜(9)において、“φmax”は、実験・解析により得られる質量体12(質量体12の重心)の最大振れ角(最大振幅時の振れ角)を示す。
Figure 0006107975
上述のような式(8)に従って、遠心振子式吸振装置10の質量体12の振動次数qを、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagと、回転要素および支持部材11の回転中心RCから振子支点PFまでの距離Rと、振子支点PFから質量体12xの重心Gまでの距離rとを基に、上述の係数kを用いて質量体12の振れ角φを考慮して定めれば、質量体12の振動次数qをより適正に設定して遠心振子式吸振装置10の吸振性能をより向上させることが可能となる。すなわち、式(8)に従って、質量体12の最大振れ角φmaxに応じて値R/rを定めることで、遠心振子式吸振装置10における質量体12の振動次数qを、回転要素および支持部材11が回転中心周りに回転する際の遠心振子式吸振装置10の質量体12の振れ角φを考慮したより適正なものとすることが可能となる。
また、回転要素および支持部材11の回転中心RCから振子支点PFまでの距離Rと、振子支点PFから質量体12xの重心Gまでの距離rとをそれぞれ一定の値とした場合、上記式(8)から得られる振動次数qは、図3に示すように、質量体12の最大振れ角φmaxが大きくなるにつれて非線形に小さくなる(漸減する)。すなわち、式(8)における係数kは、質量体12の最大振れ角φmaxが大きいほど、小さくなる。従って、質量体12の最大振れ角φmaxが大きいほど値R/rを大きくすることで、質量体12の振動次数qを振れ角φを考慮したより適正なものとすることができる。
そして、遠心振子式吸振装置10は、上記式(8)から得られる振動次数qが、
tag−0.2≦q≦qtag+0.2 …(10)
より好ましくは、
tag−0.1≦q≦qtag+0.1 …(11)
なる関係式を満たすように設計されるとよい。すなわち、上記距離R,rといったパラメータを上記式(10)または(11)を満たすように定めることで、製造公差等の影響をも考慮して質量体12の振動次数qをより適正に設定することが可能となる。ただし、遠心振子式吸振装置10は、式(8)から得られる振動次数qがエンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagと完全に一致するように設計されてもよく、振動次数qが次数qtagを中心とした狭い範囲(例えば、qtag±0.05の範囲)内に含まれるように設計されてもよい。
ここで、上記式(8)に、質量体12の理論上の最大振れ角φmaxを代入した上で、k・√(R/r)=qtagを満たすように、距離R,rを定めた場合、振動レベルが低下することで、質量体12の実際の振れ角φが最大振れ角φmaxよりも小さくなると想定される。従って、式(8)を用いて遠心振子式吸振装置10を設定する場合には、エンジンの回転数が振動レベルを最も低下させるべき回転数であるときの質量体12の振れ角であるターゲット振れ角φtag(<φmax)を解析(パラメータスタディ)等により予め定めた上で、次式(8′)に示すように、最大振れ角φmaxを当該ターゲット振れ角φtagで置き換え、k・√(R/r)=qtagを満たすように、距離R,rを定めるとよい。これにより、質量体12の振れ角φがターゲット振れ角φtagであるときに質量体12(遠心振子式吸振装置10)の振動次数qがエンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagになるようにして、ターゲット振れ角φtagに対応したエンジン回転数での振動レベルを極めて良好に低下させることが可能となる。更に、ターゲット振れ角φtagは、30°以上かつ70°以下の範囲に含まれるように定められるとよい。
Figure 0006107975
また、質量体12の振れ角φがターゲット振れ角φtagであるときに振動次数qがエンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagになる場合、式(8′)に示す振れ角φを変数とした振動次数qの曲線は、図4に示すように、φ=φtagであるときにq=qtagとなるように全体に正側にオフセットされることになる。この場合、振れ角φがゼロ(φ=0°)であるときの質量体12(遠心振子式吸振装置10)の振動次数を「有効次数qeff」とすれば、図4からわかるように、
eff=qtag+{qtag−k・√(R/r)}
という関係式が得られ、かかる関係式では、“qtag−k・√(R/r)”を次数qtagに対する補正量Δq(正の値)とみなすことができる。すなわち、質量体12の振れ角φがターゲット振れ角φtagであるときに振動次数qが次数qtagになるように設計された遠心振子式吸振装置10は、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、質量体12の振れ角φに依存する図3および図4に示すような振動次数qの非線形性に少なくとも関連した補正量Δqだけ大きい有効次数qeffを有することになる。そして、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも補正量Δqだけ大きい有効次数qeffを有する遠心振子式吸振装置10では、図5において実線で示すように、質量体12の振れ角φを考慮しないもの(φ=0でq=qtagとなるもの。図5における破線参照)に比べて、エンジンの回転数が低い領域における吸振性能を極めて良好に向上させることが可能となる。なお、有効次数qeffは、振れ角φがゼロ(φ=0°)であるときの質量体12(遠心振子式吸振装置10)の振動次数を示すものであるので、式(4)よりqeff=√(R/r)であることとして遠心振子式吸振装置10を設定してもよい。
上述のように、遠心振子式吸振装置10では、ターゲット振れ角φtagから次式(9′)のように定められる係数kと、エンジンで発生する減衰すべき振動の次数qtagとに基づいて、質量体12の振れ角φがターゲット振れ角φtagであるときに振動次数qが次数qtagになるように補正量Δqが定められてもよい。この場合、式(8′)および(9′)における係数kは、質量体12の最大振れ角φmaxが大きいほど小さくなるので、補正量Δqは、ターゲット振れ角φtagが大きいほど大きく定められるとよい。更に、補正量は、0.05以上かつ0.20以下の範囲内に含まれるように定められるとよい。そして、有効次数qeffは、振れ角φがゼロ(φ=0°)であるときの質量体12(遠心振子式吸振装置10)の振動次数を示すものであって、式(4)からわかるように、回転中心RCから振子支点PFまでの距離Rと、振子支点PFから質量体12の重心Gまでの距離rとに応じて変化する。従って、qeff=√(R/r)が成立するとみなして、距離Rおよび距離rを有効次数qeffから定めてもよい。
Figure 0006107975
一方、上述のような作動油を収容する流体伝動室2といった液体室の内部に配置される遠心振子式吸振装置10において、作動油(液体)の存在下における質量体12の揺動は、エンジンからの動力により回転するドリブン部材83のような回転要素(および支持部材11)の回転に伴って流体伝動室2内で発生する遠心油圧(遠心液圧)による力の影響を大きく受けることが判明している。従って、質量体12の振動次数qの設定に際しては、以下に説明するように、支持部材11等の回転に伴って流体伝動室2(液体室)内で発生する遠心油圧(遠心液圧)により質量体12に作用する力を考慮するとよい。
ここで、ドリブン部材83といった回転要素の回転に伴って、図6に示すような円弧状の質量体12xが重心周りに回転することなく振子支点PFの周りに揺動する際に当該質量体12xに対して作用する遠心液圧による力を考える。図6に示す質量体12xは、回転要素(支持部材)の回転中心RCを中心とする円柱面状の外周面と、回転中心RCを中心とする凹円柱面状の内周面と、それぞれ揺動中心線(図中一点鎖線参照)と平行をなす2つの側面と、一様な厚みを有するものである。このような質量体12xに作用する遠心液圧による力Fpは、回転中心RCから質量体12xの外周面までの距離(曲率半径)を“Ro”とし、回転中心RCから質量体12xの内周面までの距離(曲率半径)を“Ri”とし、質量体12xの厚みを“t”とし、質量体12xの揺動中心線から左右の端部までの長さを“L”とし、回転要素の回転角速度を“ω”とし、作動油といった液体の密度を“ρ”としたときに、次式(12)のように表される。
Figure 0006107975
また、ドリブン部材83といった回転要素が回転すると、質量体12xには遠心力Fcが作用するから、当該回転要素の回転に伴って質量体12xが振子支点PFの周りに揺動する際に当該質量体12xに作用する力Fは、質量体12xの質量を“m”とし、回転中心RCから振子支点PFまでの距離を“R”とし、振子支点PFから質量体12xの重心Gまでの距離を“r”としたときに、次式(13)のように表される。そして、質量体12xに作用する遠心液圧による力Fpを回転角速度ωの二乗値で除すると共に更に質量mと距離rとの積で除して無次元化した値を次式(14)のように“α”とすれば、質量体12xに作用する力Fは、次式(15)のように表される。
Figure 0006107975
更に、支持部材11の回転に伴って振子支点PFの周りに揺動する際の質量体12x(質量体12xの重心G)の振れ角、すなわち振子支点PF周りの回転角度を“φ”とすれば、質量体12xを備える遠心振子式吸振装置の運動方程式は、次式(16)のように表される。ただし、式(16)の右辺の項は、質量体と回転する液体(作動油)との間の相対運動による粘性抵抗の影響を示す粘性項であり、“c”は定数である。また、式(16)の粘性項に適切なモデルを導入することで、当該粘性項を次式(17)のように表すことが可能であり、式(17)の関係を用いれば、式(16)を次式(18)のように変形することができる。ただし、式(17)において、“μ”は、粘性係数であり、“κ”は、液体の粘度と質量体の揺動の周波数とから定まる係数であり、“A”は、質量体12xの表面積である。
Figure 0006107975
そして、(18)式から得られる質量体12xの固有振動数に粘性項を示す無次元された値“β”を導入することにより、液体の存在下で重心周りに回転することなく振子支点PFの周りに揺動する質量体12xの振動次数qxを示す次式(19)を得ることができる。ただし、本発明者らの研究によれば、作動油といった液体の存在下における質量体の揺動に対する粘性抵抗の影響は極めて小さいことが判明している。従って、式(19)における“β”を無視することができることから、液体の存在下で重心周りに回転することなく振子支点PFの周りに揺動する質量体12xの振動次数qxは、次式(20)のように表すことができる。この結果、質量体12の振れ角φと、支持部材11等の回転に伴って流体伝動室2(液体室)内で発生する遠心油圧(遠心液圧)により質量体12に作用する力との双方を考慮した場合、質量体12の振動次数qを次式(21)のように得ることができる。ただし、式(21)における“k”は、上記式(9)または式(9′)に従って定められるものである。
Figure 0006107975
なお、質量体に作用する遠心液圧による力Fpを回転角速度ωの二乗値で除すると共に更に質量mと距離Rとの積で除して値αを得るに際して、質量体の形状が上述の質量体12xのように比較的単純なものである場合には、遠心液圧により質量体に作用する力Fpを、液体の密度ρと、質量体の外周面と内周面との面積差とを用いて定めることで、力Fpを容易かつ精度よく得ることが可能となる。また、質量体の形状が複雑なものである場合には、当該質量体の形状を考慮した数値計算を行って力Fpを求めればよい。
また、遠心振子式吸振装置10において、質量体12は、振子支点PFの周りに揺動すると共に重心Gの周りに回転するように支持部材11に連結されるが、この種の遠心振子式吸振装置10における質量体12の振動次数qは、当該質量体12の運動を、いわゆるコロ式の遠心振子式吸振装置における質量体の運動として取り扱うことにより、以下に説明するようにして設定することができる。
コロ式の遠心振子式吸振装置は、図7に示すように、上記遠心振子式吸振装置10の支持部材11に相当する部材に形成されたガイド切欠部110(図7の例では、円形の開口)と、ガイド切欠部110の内周面(図7の例では、凹円周面)であるガイド面111を転動するコロ(ローラ)120とを含むものである。図7に示すようなコロ式の遠心振子式吸振装置において、質量体としてのコロ120は、重心G(軸心)の周りに回転しながら曲面状のガイド面111を転動する。従って、コロ式の遠心振子式吸振装置におけるコロの運動は、当該コロの重心周りの回転を伴わないガイド面に沿った並進運動(滑動)と、コロの重心周りの回転運動とに分けられ、重心周りに回転せずに振子支点周りにのみ揺動するコロの運動に、コロの重心周りの回転運動を付加したものとして取り扱うことができる。
ここで、重心周りに回転することなく振子支点周りに揺動する質量体を備えた遠心振子式吸振装置における質量体の振動次数は、回転中心RCから振子支点PFまでの距離を“R”とし、振子支点PFから質量体の重心Gまでの距離を“r”としたときに、√(R/r)と簡易的に表されるのは上述のとおりである。これに対して、コロ式の遠心振子式吸振装置におけるコロ120の振動次数は、√[(2・R)/(3・r)]と簡易的に表されることが知られているが、本発明者らは、√[(2・R)/(3・r)]と√(R/r)との差(減少分)に着目した。
そして、本発明者らは、ガイド面111に沿ったコロ120の並進運動が振子支点PFの周りにおける質量体の揺動に相当するものであることを踏まえて、両者の差〔√[(2・R)/(3・r)−√(R/r)〕が、コロ120の重心G周りの回転運動、具体的には、コロ120の半径rrと振子支点PFからコロ120の重心Gまでの距離rとの比(r/rr)の二乗に比例するコロ120の重心G周りの回転による慣性モーメントに起因して生じると評価し、次式(22)を導出した。ただし、式(22)における“qr”は、コロ120の振動次数を示し、“mr”は、コロ120の質量を示し、“Ir”は、コロ120の慣性モーメントを示し、“m・r2”は、コロ120の並進による慣性モーメントを示し、“Ir・(r/rr2”は、コロ120の回転による慣性モーメントを示す。本発明者らは、解析等による検証を経て、上述のような評価が極めて妥当なものであり、振子支点周りに揺動すると共に重心周りに回転するように支持部材に連結される質量体を備えた遠心振子式吸振装置における当該質量体の運動は、形式(構造)に関わらず、重心周りに回転することなく振子支点周りに揺動する質量体の運動に、質量体の重心周りの回転運動を付加したものとして取り扱い得ることを確認した。
Figure 0006107975
一方、コロ120が揺動中心で静止していたときのガイド面111とコロ120との接線taから、コロ120が揺動範囲の片側へと振れたときのガイド面111とコロ120との接線tbまでのガイド面111に沿った距離d1は、振子支点PFからコロ120の重心Gまでの距離rと当該コロ120の半径rrとの和(r+rr)と、コロ120(重心G)の振子支点PF周りの回転角度φとから、d1=(r+rr)・φと表される。また、コロ120が揺動中心で静止していたときのガイド面111とコロ120との接線taから、コロ120が揺動範囲の片側へと振れたときのガイド面111とコロ120との接線tbまでのコロ120の外周面に沿った距離d2は、コロ120の並進および重心G周りの回転により、コロ120の振子支点PF周りの回転角度φと重心G周りの回転角度θとの和(φ+θ)と、コロの半径rrとから、d2=rr・(φ+θ)と表される。そして、コロ120がガイド面111を滑ることなく転動すれば、距離d1と距離d2とは一致し(d1=d2)、θ/φ=r/rrという関係が成立するから、この関係を利用すれば、コロ120の半径rrと振子支点PFからコロ120の重心Gまでの距離rとの比(r/rr)を、コロ120の振子支点PF周りの回転角度φと重心周りの回転角度θとの比(θ/φ)に置き換えることができる。これにより、コロ120の重心G周りの回転による慣性モーメント(Ir・(r/rr2)は、コロ120の振子支点PF周りの回転角度φと重心周りの回転角度θとの比(θ/φ)を用いて、Ir・(θ/φ)2と表すことができる。
従って、振子支点PF周りに揺動すると共に重心G周りに回転するように支持部材11に連結される質量体12を備えた遠心振子式吸振装置10における質量体12の振動次数qは、重心周りに回転することなく振子支点周りに揺動する質量体の振動次数を基に、質量体の重心周りの回転運動(回転による慣性モーメント)、すなわち質量体の振子支点周りの回転角度と重心周りの回転角度とを更に考慮して定めることができる。具体的には、遠心振子式吸振装置10が流体伝動室2のような液体を収容する液体室内に配置されない場合(乾式の場合)、振動次数を“qz”とし、質量体12の質量を“m”とし、回転中心RCから振子支点PFまでの距離を“R”とし、振子支点PFから質量体12の重心Gまでの距離を“r”とし、質量体12(質量体12の重心)の振れ角、すなわち振子支点PF周りの回転角度を“φ”とし、質量体12の重心G周りの回転角度を“θ”とし(図8参照)、質量体の慣性モーメントを“I”としたときに、次式(23)を用いて振動次数qzを定めることができる。この結果、流体伝動室2のような液体を収容する液体室内に配置されない遠心振子式吸振装置10では、質量体12の振れ角φを考慮した場合、当該質量体12の振動次数qを次式(24)のように得ることができる。ただし、式(24)における“k”も、上記式(9)または式(9′)に従って定められるものである。
Figure 0006107975
更に、作動油(液体)を収容する流体伝動室2(液体室)内に配置される遠心振子式吸振装置10における質量体12の振動次数qを定める際には、上記式(21)と同様にして、回転要素としてのドリブン部材83の回転に伴って流体伝動室2で発生する遠心液圧により質量体12に作用する力を考慮すればよい。すなわち、式(24)に遠心液圧により質量体12に作用する力を示す値αを導入するには、重心周りに回転することなく振子支点周りに揺動する質量体を備えた遠心振子式吸振装置における質量体の振動次数を示す簡易式q=√(R/r)と上記(20)式との関係を考慮して、式(24)の最右辺における“R/r”を“(R/r−α)”で置き換えればよい。従って、作動油を収容する流体伝動室2内に配置される湿式の遠心振子式吸振装置10では、次式(25)から振動次数qを定めることができる。そして、遠心振子式吸振装置10は、上記式(21)、式(24)あるいは式(25)から得られる振動次数qが、上記式(10)または式(11)の関係式を満たすように設計されるとよい。
Figure 0006107975
なお、遠心振子式吸振装置10により減衰すべき振動の次数qtagは、基本的に、遠心振子式吸振装置10が連結されるエンジンの気筒数に応じたものとなり、例えば、3気筒エンジンの場合、qtag=1.5、4気筒エンジンの場合、qtag=2(図3参照)となる。ただし、減衰すべき振動の次数qtagは、エンジンの気筒数に応じたものに限られず、ダンパ機構やロックアップクラッチ等の使用態様や特性等を考慮して、エンジンの気筒数に応じた値を若干増減させた値とされてもよい。更に、遠心振子式吸振装置10等における振動次数の設定に際しては、式(8)、式(21)、式(24)あるいは式(25)から得られる値を仮の次数とした上で、当該仮の次数をシミュレーションや実験の結果等に基づいて増減する(オフセットする)ことにより最終的な振動次数を得てもよい。また、例えば乾式タイプの発進装置では、ポンプインペラ、タービンランナ、ステータ等を含む流体伝動装置が省略されてもよい。更に、ダイナミックダンパは、専用の質量体であってもよく、ダンパ機構の中間部材(中間要素)やドライブ部材(入力要素)に連結されてもよく、発進装置から省略されてもよい。また、遠心振子式吸振装置10が連結される回転要素は、ダンパ機構のドリブン部材(出力要素)に限られず、ダンパ機構の中間部材やドライブ部材(入力要素)であってもよく、駆動装置に機械的に連結されて回転する回転部材であれば、ダンパ機構を構成する回転要素以外の変速機内の回転部材(回転軸)等であってもよい。
以上説明したように、本発明による遠心振子式吸振装置は、駆動装置からの動力により回転する回転要素に連結される支持部材と、前記支持部材に連結されて振子支点周りに揺動する質量体とを備える遠心振子式吸振装置において、前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、前記質量体の振れ角φに依存する前記遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように設計されていることを特徴とする。
すなわち、振子支点周りに揺動する質量体を含む遠心振子式吸振装置(質量体)の振動次数は、一般に、回転要素の回転中心から振子支点までの距離を“R”とし、振子支点から質量体の重心までの距離を“r”としたときに、q=√(R/r)と簡易的に表されることが知られている。ただし、このような振動次数を示す簡易式は、質量体の振れ角(振子支点周りの回転角度すなわち振幅)が極めて小さいとみなして得られるものである。そして、本発明者らが遠心振子式吸振装置について鋭意研究を行った結果、回転要素および支持部材が回転中心周りに回転する際の遠心振子式吸振装置の質量体の振れ角は無視し得ないほどに大きく、上述のように振れ角を極めて小さいものとして取り扱うことで振動次数を適正に設定し得なくなっていることが判明した。従って、質量体の振れ角を考慮して、駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、質量体の振れ角φに依存する遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように遠心振子式吸振装置を設計すれば、振動次数をより適正に設定して遠心振子式吸振装置の吸振性能をより向上させることが可能となる。
また、前記遠心振子式吸振装置の前記次数は、前記質量体の前記振れ角φが大きくなるほど非線形に小さくなってもよく、前記補正量は、前記質量体の前記振れ角φが予め定められたターゲット振れ角φtagであるときに、前記遠心振子式吸振装置の前記次数が前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagになるように定められてもよい。これにより、ターゲット振れ角φtagに対応した回転数での振動レベルを極めて良好に低下させることが可能となる。
更に、前記補正量は、前記ターゲット振れ角φtagが大きいほど大きく定められてもよい。
また、前記補正量は、0.05以上かつ0.20以下の範囲内に含まれるように定められてもよい。
更に、前記ターゲット振れ角φtagは、30°以上かつ70°以下の範囲に含まれるように定められてもよい。
また、前記遠心振子式吸振装置の前記次数は、前記回転要素の前記回転中心から前記振子支点までの距離Rと、前記振子支点から前記質量体の重心までの距離rとに応じて変化してもよく、前記遠心振子式吸振装置の前記距離Rおよび前記距離rは、前記有効次数qeffに基づいて定められてもよい。
更に、前記遠心振子式吸振装置の前記次数は、少なくとも、上記式(9′)に従って定められる係数kと、前記回転要素の回転中心から前記振子支点までの距離Rと、前記振子支点から前記質量体の重心までの距離rとから定められてもよい。
本発明による遠心振子式吸振装置の次数設定方法は、駆動装置からの動力により回転する回転要素に連結される支持部材と、前記支持部材に連結されて振子支点周りに揺動する質量体とを備える遠心振子式吸振装置の次数設定方法において、前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、前記質量体の振れ角φに依存する前記遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように該遠心振子式吸振装置を設計することを特徴とする。
この方法のように、質量体の振れ角を考慮して、駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、質量体の振れ角φに依存する遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように遠心振子式吸振装置を設計すれば、振動次数をより適正に設定して遠心振子式吸振装置の吸振性能をより向上させることが可能となる。
そして、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
本発明は、遠心振子式吸振装置の製造産業において利用可能である。

Claims (8)

  1. 駆動装置からの動力により回転する回転要素に連結される支持部材と、前記支持部材に連結されて振子支点周りに揺動する質量体とを備える遠心振子式吸振装置において、
    前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、前記質量体の振れ角φに依存する前記遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように設計されていることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
  2. 請求項1に記載の遠心振子式吸振装置において、
    前記遠心振子式吸振装置の前記次数は、前記質量体の前記振れ角φが大きくなるほど非線形に小さくなり、
    前記補正量は、前記質量体の前記振れ角φが予め定められたターゲット振れ角φtagであるときに、前記遠心振子式吸振装置の前記次数が前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagになるように定められることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
  3. 請求項1または2に記載の遠心振子式吸振装置において、
    前記補正量は、前記ターゲット振れ角φtagが大きいほど大きく定められることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
  4. 請求項1から3の何れか一項に記載の遠心振子式吸振装置において、
    前記補正量は、0.05以上かつ0.20以下の範囲内に含まれるように定められることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
  5. 請求項1から4の何れか一項に記載の遠心振子式吸振装置において、
    前記ターゲット振れ角φtagは、30°以上かつ70°以下の範囲に含まれるように定められることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
  6. 請求項1から5の何れか一項に記載の遠心振子式吸振装置において、
    前記遠心振子式吸振装置の前記次数は、前記回転要素の回転中心から前記振子支点までの距離Rと、前記振子支点から前記質量体の重心までの距離rとに応じて変化するものであり、
    前記遠心振子式吸振装置の前記距離Rおよび前記距離rは、前記有効次数qeffに基づいて定められることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
  7. 請求項1から6の何れか一項に記載の遠心振子式吸振装置において、
    前記遠心振子式吸振装置の前記次数は、少なくとも、次式に従って定められる係数kと、前記回転要素の回転中心から前記振子支点までの距離Rと、前記振子支点から前記質量体の重心までの距離rとから定まることを特徴とする遠心振子式吸振装置。
    Figure 0006107975
  8. 駆動装置からの動力により回転する回転要素に連結される支持部材と、前記支持部材に連結されて振子支点周りに揺動する質量体とを備える遠心振子式吸振装置の次数設定方法において、
    前記駆動装置で発生する減衰すべき振動の次数qtagよりも、前記質量体の振れ角φに依存する前記遠心振子式吸振装置の次数の非線形性に少なくとも関連した補正量だけ大きい有効次数qeffを有するように該遠心振子式吸振装置を設計することを特徴とする次数設定方法。
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