JP6105427B2 - 炭素繊維 - Google Patents

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Description

本発明は炭素繊維に関するものである。更に詳しくは、太繊度であっても内部欠陥の少ない炭素繊維に関する。
炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れ、軽量であるため、熱硬化性及び熱可塑性樹脂の強化繊維として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など、幅広い用途に利用されている。
近年、炭素繊維複合材料の優位性はますます高まり、特に自動車、航空・宇宙用途において、炭素繊維複合材料の性能および生産性の向上に対する要求が高い。複合材料としての特性は炭素繊維そのものの特性に起因するところが大きく、炭素繊維自身への強度向上に対する要求が強まると同時に、炭素繊維自身の生産性の向上も望まれている。
高強度の炭素繊維を製造するためには、特に破断の開始点となるような欠陥の生成を抑制することが必要である。しかし、一般的に繊維状の前駆体を、耐炎化および炭素化して得られる炭素繊維では、前駆体繊維の製造工程および耐炎化及び炭素化工程において繊維内部に生じる構造ムラが、内部欠陥として炭素繊維の強度向上を阻害する一因となってきた。
炭素繊維の内部欠陥を低減するために、例えば前駆体繊維を緻密化することにより内部欠陥を低減する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、前駆体繊維の延伸条件を最適化することにより、繊維長手方向の結晶構造のムラの低減する方法が開示されている。しかし、このような前駆体繊維の緻密性を向上させる技術は、耐炎化工程における繊維への酸素透過性を低下せしめる傾向にあるため、得られる炭素繊維のストランド引張強度の向上を阻害する方向にある。そのため、この技術による炭素繊維のストランド引張強度の向上が期待出来るのは、せいぜい炭素繊維の単繊維直径が、6μm未満という細繊度の範囲にある場合のみで、生産性の高い単繊維直径が6μm以上の太繊度の炭素繊維には、この技術によるストランド引張強度の向上効果は、得られにくいという問題があった。
一方、前駆体繊維の耐炎化工程における繊維の昇温速度を小さくすることにより、単繊維の中心部と外周部との構造ムラの低減を図る技術が提案されている。(例えば、特許文献2)しかし、昇温速度の低減は、焼成速度の低下あるいは装置の大型化、生産コストの上昇を意味し、強度向上にも限界があった。
そのため、太繊度であっても内部欠陥の少ない炭素繊維が求められている。
特開2009−001921号公報 特開2006−274518号公報
本発明の目的は、太繊度であっても内部欠陥の少ない炭素繊維を提供することにある。
本発明の炭素繊維は、単繊維直径が6μm以上の炭素繊維であって、炭素繊維を体積平均粒子径0.5μmに粉砕して測定するヘリウム充填法による炭素繊維密度が1.85g/cm以上の炭素繊維である。
本発明によれば、太繊度であっても、内部欠陥の少ない炭素繊維を得ることができる。本発明の炭素繊維は、太繊度であり、高い物性を有するので、本発明の炭素繊維を用いると、生産性の良い優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維は、単繊維直径が6μm以上の炭素繊維であって、炭素繊維を体積平均粒子径0.5μmに粉砕して測定するヘリウム充填法による炭素繊維密度が1.85g/cm以上の炭素繊維である。本発明の炭素繊維は、単繊維直径が6μm以上であるため、生産性が高い。単繊維直径は、6〜10μmが好ましく、6.5〜9μmが生産性の点からより好ましい。単繊維直径が大きすぎる場合は、炭素繊維の強度が低下しやすい傾向がある。
さらに、本発明の炭素繊維は、炭素繊維を体積平均粒子径0.5μmに粉砕して測定するヘリウム充填法による炭素繊維密度が1.85g/cm以上であるため、炭素繊維内部の構造が緻密であり、内部欠陥の少ない炭素繊維である。本発明において、ヘリウム充填法による炭素繊維密度の上限は特に制限されないが、2.1g/cm以下であると、かかる炭素繊維を用いて得られる複合材料の耐衝撃性にも優れるため好ましい。ヘリウム充填法による炭素繊維密度は1.9〜2.0g/cmであることがより好ましい。炭素繊維密度が高すぎると、炭素繊維の内部構造が緻密になりすぎ、得られる複合材料の耐衝撃性が低下しやすい傾向がある。
また、本発明において、炭素繊維の結晶配向度は80%以上であるとより引張強度の高い炭素繊維となるため好ましい。より好ましくは80〜90%である。炭素繊維の結晶配向度は炭素化時の延伸倍率を制御することにより調整でき、特に650〜850℃の温度領域での延伸倍率を高くすることにより向上させることができる。
本発明の炭素繊維は、炭素繊維引張強度の平均強度が、4500〜10000MPaであることが好ましく、単繊維引張強度の平均強度のバラツキ(CV値)が1〜20%であることが好ましい。単繊維引張強度の平均強度のバラツキは、炭素繊維を構成する単繊維間のムラの指標である。炭素繊維の内部構造が緻密になることで、炭素繊維内部の欠陥が減少し、欠陥への応力集中により低荷重で破断する強度の低い単繊維が低減しするため、単繊維引張強度の平均強度のバラツキの低い、品質の揃った単繊維の集合体である炭素繊維を得ることができる。
炭素繊維を構成する単繊維間のムラは、単繊維引張強度のワイブル係数によっても評価することができる。単繊維引張強度のワイブル係数は、5以上であることが好ましく、5〜20であることがより好ましく、5.5〜10であることが特に好ましい。
また、炭素繊維をストランドの状態で測定するストランド引張強度については、炭素繊維強化複合材料の性能を高めるために、5000〜10000MPaであることが好ましい。また、ストランド引張弾性率は200〜500GPaであることが好ましく、230〜400GPaであることが好ましい。
上記のような本発明の炭素繊維は、太繊度であり、高い物性を有するため、生産性の良い優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維を用い、マトリックス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング成形など、公知の手段・方法により、炭素繊維複合材料を得ることができる。本発明の炭素繊維を用いて得られる複合材料は、優れた強度を有するため、例えば自動車部材、航空機部材、圧力容器、スポーツ部材などに好適に用いられる。
本発明の炭素繊維は、本発明の炭素繊維の製造方法により得ることができる。本発明の炭素繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化処理し得られた耐炎化繊維を炭素化処理する炭素繊維の製造方法である。炭素繊維の前駆体繊維としてポリアクリロニトリル系前駆体繊維を用いることで、高強度の炭素繊維を得ることができる。
本発明では、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を耐炎化処理し得られた耐炎化繊維を、350〜550℃の処理温度で、1.00倍より高い延伸倍率で第1炭素化処理し第1炭素化繊維を得、前記第1炭素化繊維を、650〜850℃の処理温度で1.00倍より高い延伸倍率で第2炭素化処理した後、さらに1000℃以上の処理温度で第3炭素化することを必須とする。
本発明では、延伸処理を350〜550℃と650〜850℃の2段階の温度領域で行う。350〜550℃の温度領域は、耐炎化繊維の酸化安定化構造から分子が再配置し、炭素化初期の微結晶を形成する温度領域にあたる。この温度領域で延伸処理を行う、すなわち、1.00倍より高い延伸倍率、好ましくは1.01〜1.10倍、より好ましくは1.02〜1.05倍で延伸処理することで、結晶配向度の向上のみならず、繊維構造を形成する結晶部の発達した緻密な中間繊維(第1炭素化繊維)が得られる。かかる温度領域では、延伸処理による繊維欠陥が生じにくく、高い延伸倍率で延伸処理することにより、繊維内部の分子間の炭素化初期構造の形成反応を促し、太繊度であっても緻密な繊維構造を形成できる。
炭素化初期の微結晶の形成反応は、第1炭素化繊維の炭素含有量が65質量%を超える時点でほぼ終結するため、炭素化初期の延伸処理は、第1炭素化繊維の炭素含有量を60〜65質量%に保って行うことが好ましい。本発明では第1炭素化処理を350〜550℃の処理温度に保っているため、第1炭素化繊維の炭素含有量を60〜65質量%に保って延伸処理を行うことができる。処理温度が350℃より低いと炭素化初期の微結晶の形成反応が起らず、一方、処理温度が550℃を超えると、第1炭素化繊維の炭素含有量が65質量%を超えるため、炭素化初期の微結晶の形成反応中に十分な延伸処理を行うことができない。処理温度は400〜500℃であることがより好ましい。
350〜550℃の温度領域での炭素化処理時間は、処理温度に応じて、得られる中間繊維の炭素含有量が65質量%以下となる範囲で適宜調節することが好ましいが、具体的には、10〜1000秒であることが好ましく、150〜800秒であることがより好ましく、200〜600秒であることが特に好ましい。また、350〜550℃の温度領域での炭素化処理時間と、続く650〜850℃の温度領域での炭素化処理時間の比が2〜10であると、得られる炭素繊維の結晶配向度が向上し、太繊度であっても緻密な繊維構造を有する炭素繊維がより得られやすくなるため好ましい。350〜550℃の温度領域での炭素化処理時間と、650〜850℃の温度領域での炭素化処理時間の比は、3〜5であることがより好ましい。
本発明においては、第1炭素化繊維を引き続いて、第2炭素化処理として650〜850℃の温度領域で、1.00倍より高い延伸倍率、好ましくは1.01〜1.10倍、より好ましくは1.02〜1.05倍で延伸処理して、中間繊維(第2炭素化繊維)を得る。650〜850℃の温度領域で延伸処理を行うことで、得られる炭素繊維の結晶配向度を大幅に向上させることができる。
第2炭素化処理での結晶構造の形成反応は、炭素含有量が80質量%以下の時点で顕著であるため、第2炭素化繊維の炭素含有量を70〜80質量%に保って行うことが好ましい。650〜850℃の温度領域であれば、第2炭素化繊維の炭素含有量を70〜80質量%に保って延伸処理を行うことができる。処理温度が650℃より低いと結晶構造の形成反応が起こらず、一方、処理温度が850℃を超えると、第2炭素化繊維の炭素含有量が80質量%を超えるため、結晶構造の形成反応中に十分な延伸処理を行うことができない。処理温度は700〜800℃であることがより好ましい。
650〜850℃の温度領域での炭素化処理時間は、処理温度に応じて、得られる中間繊維の炭素含有量が80質量%以下となる範囲で適宜調節することが好ましく、10〜1000秒であることが好ましく、60〜600秒であることがより好ましく、100〜300秒であることが特に好ましい。また、650〜850℃の温度領域での炭素化処理時間と、1000℃以上の温度領域での炭素化処理時間の比が1.5〜5であると、中間繊維の配向度が安定し、太繊度であっても緻密な繊維構造を有する炭素繊維がより得られやすくなるため好ましい。650〜850℃の温度領域での炭素化処理時間と、1000℃以上の温度領域での炭素化処理時間の比は、2〜3であることがより好ましい。
本発明においては、第2炭素化繊維を引き続いて1000℃以上、好ましくは1000〜1600℃の第3炭素化炉で第3炭素化処理する。第3炭素化における延伸倍率は0.90〜1.10であることが好ましい。1000℃以上の温度領域での炭素化処理時間は、10〜500秒であることが好ましく、20〜300秒であることがより好ましく、50〜150秒であることが特に好ましい。
本発明において用いる耐炎化繊維は、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るために、繊維密度が1.34〜1.40g/cmの耐炎化繊維であることが好ましい。
このような本発明の炭素繊維の製造方法を用いると、繊維内部の結晶構造が緻密になるため、例え太繊度の前駆体繊維を用いても繊維に含まれる内部欠陥が少ない炭素繊維が得られる。また、結晶配向度が高く、引張強度の高い炭素繊維が得られる。
以下、本発明の炭素繊維の製造方法について、より詳細に説明する。
<前駆体繊維>
本発明に用いる前駆体繊維は、アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上、より好ましくは95〜99質量%含有し、その他の単量体を10質量%以下、より好ましくは1〜10質量%含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸することにより製造できる。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5〜15倍になるようスチーム延伸することが好ましい。前駆体繊維のフィラメント数は、製造効率の面では1000フィラメント以上が好ましく、12000〜100000フィラメントがより好ましい。また、前駆体繊維の単繊維繊度は、生産性の観点から1.15dtex以上が好ましい。前駆体繊維の単繊維繊度が1.15dtex以上であれば、単繊維直径が6μm以上の炭素繊維が得られやすい。前駆体繊維の単繊維繊度は、得られる炭素繊維の強度の観点から、1.18〜1.4dtexであることがより好ましく、1.20〜1.35dtexであることが更に好ましい。
<耐炎化処理>
得られた前駆体繊維は、加熱空気中200〜260℃で10〜100分間耐炎化処理することで、耐炎化繊維とすることができる。耐炎化処理は、延伸倍率0.85〜1.15の範囲で処理することが好ましく、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95〜1.10の延伸倍率で処理することがより好ましい。耐炎化処理に先立って、200〜260℃、延伸比0.90〜1.00で予備熱処理してもよい。
高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、かかる耐炎化処理により得られる耐炎化繊維の繊維密度を1.34〜1.40g/cmとすることが好ましい。耐炎化繊維の繊維密度は、耐炎化温度及び/または、耐炎化時間を適宜調節することで制御できる。
<炭素化処理>
このようにして得られた耐炎化繊維を上述の350〜550℃の処理温度で、1.00倍より高い延伸倍率で第1炭素化処理し第1炭素化繊維を得、第1炭素化繊維を650〜850℃の処理温度で1.00倍より高い延伸倍率で第2炭素化処理する方法により、第1及び第2炭素化処理を行う。第1及び第2炭素化工程においては、処理温度を、好ましくは50℃以内、より好ましくは30℃以内の温度幅に温度変動率を保った一定の温度で処理を行うことが、得られる中間繊維の構造を安定させるために好ましい。
第2炭素化処理により得られた第2炭素化繊維は、よりグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下1000以上、好ましくは1000〜1600℃の第3炭素化炉で第3炭素化処理される。第3炭素化における延伸倍率は0.90〜1.10であることが好ましい。より高い弾性率が求められる場合は、さらに2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
<表面酸化処理>
炭素繊維に対して、複合材料のマトリクス樹脂との接着性を高めるために、表面処理を行うことが好ましい。本発明において、表面処理の方法は特に限定されないが、処理効率の観点から、表面処理電解液中で表面酸化処理を施す電解表面処理が好ましい。電解表面処理において、炭素繊維にかかる電気量は、目的の表面官能基量になるよう適時調節すればよいが、炭素繊維1gに対して50〜500クーロンになる範囲とすることが好ましい。炭素繊維1gにかかる電気量をこの範囲で調節すると、繊維としての力学的特性に優れ、かつ、樹脂との接着性の向上した炭素繊維を得やすい。一方、炭素繊維1gにかかる電気量が低すぎる場合は、樹脂との接着性が低下しやすい傾向にあり、電気量が高すぎる場合には、繊維強度が低下しやすい傾向にある。
電解液としては、無機酸または無機塩基及び無機塩類の水溶液を用いることが好ましい。電解質として、例えば、硫酸、硝酸などの強酸を用いると表面処理の効率がよく好ましい。また、電解質として、例えば、硫酸アンモニウムや炭酸水素ナトリウムなどの無機塩類を用いると、無機酸や無機塩基を用いる場合と比較して、電解液の危険性が低いため好ましい。
電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜1規定がより好ましい。電解質濃度が低くすぎる場合には、電解液の電気伝導度が低いために、電解処理に適さない傾向があり、一方で、電解質濃度が高すぎる場合は、電解質が析出し、濃度の安定性が低くなる傾向がある。
電解液の温度は、高いほど電気伝導性を向上させるため、処理を促進させることができる。一方で、電解液の温度が高くなると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動なく均一な条件を提供するのが難しくなるため、15〜40℃の間が好ましい。
<サイジング処理>
表面処理された炭素繊維は、さらにマトリクス樹脂との接着性を高めるために、サイジング処理されることが好ましい。サイジング処理に用いるサイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25質量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.1〜10質量%が好ましい。炭素繊維に付与されるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイズ剤付与処理は、通常、乳化剤等を用いて得られる水系エマルジョン中に炭素繊維を浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
上記のような製造方法で得られる炭素繊維は、繊維内部の結晶構造が緻密になるため、内部欠陥が少ない炭素繊維となる。また、結晶配向度が高く、引張強度の高い炭素繊維が得られる。
本発明の製造方法により得られた炭素繊維を用い、マトリックス樹脂と組み合わせて得られる複合材料は、優れた強度を有するため、自動車部材、航空機部材、圧力容器、スポーツ部材などに好適に用いられる。
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における繊維の物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
<炭素含有量>
中間繊維の炭素含有量はFISONS社製の元素分析装置「EA1108」を用いて次の手順により元素分析を行い求めた。中間繊維を完全に燃焼させて、有機物であるCを二酸化炭素(CO)に、Nを窒素分子(N)に(Nは燃焼だけでは一部窒素酸化物にもなるため、還元部でNに変換する)、Hを水(HO)に変換し、ガスクロマトグラフ方式を用いて、CO、N、HO量を測定することで炭素含有量(質量%)を求めた。
<ストランド引張強度、弾性率>
JIS R−7608に準じてエポキシ樹脂含浸ストランドの引張強度および引張弾性率を測定した。
<粉砕後炭素繊維密度>
炭素繊維ストランドを、液体窒素中、ボールミル粉砕によって、体積平均粒子径が0.5μmとなるまで凍結粉砕した。得られた粉砕試料の密度をMicromeritics社製「AccuPyc 1330」を用い、ヘリウム充填法により測定した。測定には10ccの測定セルを用い、0.5gの測定試料を用いた。粉砕密度は、繊維構造に含まれるボイドの影響を除いた、純粋な結晶構造部の密度を示す。
<配向度>
株式会社リガク製 X線回折装置「RINT2000」を使用し、透過法により面指数(002)の回折ピーク角度(2θ)を円周方向にスキャンして得られる二つのピークの半値幅H1/2及びH’1/2(強度分布に由来)から下式(1)を用いて結晶配向度を算出した。
配向度(%)=100×[360−(H1/2−H’1/2)]/360 ・・・(1)
1/2及びH’1/2:半値幅
<単繊維引張強度>
株式会社オリエンテック製 テンシロン万能試材料験機「RTC−1150A」を使用し、JIS R−7606に準じて炭素繊維の単繊維引張強度を測定した。
単繊維の試験長10mm、試験速度1mm/minにて引張試験を行い、破断最大荷重と単繊維直径から、強度を算出した。炭素繊維ストランドを構成する単繊維のうち100本を抜き取り測定した単繊維引張強度について、標準偏差を平均で除し、CV値(%)を求めた。このCV値(%)を、単繊維間の物性のばらつきの尺度とした。
ワイブル形状係数(m)は、次の式(2)で定義される。式(2)中、Fは、破壊確率であり、対称試料累積分布法により求め、σは単繊維引張強度(MPa)であり、mはFが0〜1全範囲のワイブル形状係数であり、Cは定数である。lnln{1/(1−F)}とlnσでワイブルプロットし、1次近似した傾きからmを求めた。
lnln{1/(1−F)}=mlnσ+C・・・(2)
[実施例1〜6、比較例1〜6]
前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維(単繊維繊度1.2dtex、フィラメント数24000)を、空気中255℃で、繊維密度1.38になるまで耐炎化処理を行った。次いで窒素ガス雰囲気下、表1に記載の処理温度に保った第1炭素化炉において、表1に記載の延伸倍率で360秒間第1炭素化処理を行った。次いで、窒素雰囲気下、表1に記載の処理温度に保った第2炭素化炉において、表1に記載の延伸倍率で180秒間第2炭素化処理を行い得られた第2炭素化繊維を、窒素雰囲気下、最高温度1400℃の第3炭素化炉において、延伸倍率0.96で90秒間炭素化処理し、単繊維直径6.5μmの炭素繊維を得た。これを硫酸アンモニウム水液中で30C/gの電気量で電解酸化により表面処理した後、エポキシ系樹脂にてサイジング処理を施した。この炭素繊維の物性を表1に示した。
本発明の製造方法を用いた実施例1〜6では、いずれも粉砕後炭素繊維密度が1.85g/cm以上の緻密な構造を有する炭素繊維が得られた。実施例1〜6で得られた炭素繊維は、ストランド引張強度が5000MPa以上、単繊維引張平均強度が4500MPa以上と強度が高く、また、単繊維引張強度のバラツキが低く、ワイブル係数が5を超える、緻密性が高く内部欠陥の少ない炭素繊維であった。
一方、350〜550℃の温度領域での延伸倍率を1.00倍以下にした比較例1〜3では、いずれも粉砕後炭素繊維密度が1.85g/cmよりも低く、緻密な構造を有する炭素繊維は得られなかった。比較例1〜3で得られた炭素繊維は、緻密性が低かったため、ストランド引張強度、単繊維引張平均強度ともに低く、単繊維引張強度のバラツキが高く、ワイブル係数が低い、内部欠陥の多い炭素繊維であった。特に、650〜850℃の温度領域での延伸倍率も1.00倍以下にした比較例2では、炭素繊維の結晶配向度も80%未満となってしまい得られた炭素繊維は特に強度の低い炭素繊維であった。
350〜550℃の温度領域での延伸倍率を1.00倍より高くしたものの、650〜850℃の温度領域での延伸倍率を1.00倍以下にした比較例4では結晶の成長が不十分となり、粉砕後炭素繊維密度が1.85g/cm以上の緻密性な構造の炭素繊維は得られなかった。比較例4で得られた炭素繊維は、緻密性が低かったため、ストランド引張強度、単繊維引張平均強度は不十分であり、単繊維引張強度のバラツキが高い内部欠陥の多い炭素繊維であった。
350〜550℃の温度領域での延伸倍率を1.00倍より高くしたものの、650〜850℃の温度領域での処理を行わず、第2炭素化の処理温度を1200℃とした比較例5では、処理温度が高すぎ結晶の成長過程での構造変化が不十分となり、粉砕後炭素繊維密度が1.85g/cm以上の緻密性な構造の炭素繊維は得られなかった。比較例5で得られた炭素繊維は、緻密性が低かったため、ストランド引張強度、単繊維引張平均強度は不十分であり、単繊維引張強度のバラツキが高い内部欠陥の多い炭素繊維であった。
350〜550℃の温度領域での処理を行わず、第1炭素化の処理温度を650℃とした比較例6では、処理温度が高すぎ炭素化初期の微結晶を形成する過程での構造変化が不十分となり、粉砕後炭素繊維密度が1.85g/cm以上の緻密性な構造の炭素繊維は得られなかった。比較例6で得られた炭素繊維は、緻密性が低かったため、ストランド引張強度、単繊維引張平均強度は不十分であり、単繊維引張強度のバラツキが高く、ワイブル係数の低い内部欠陥の多い炭素繊維であった。
Figure 0006105427

Claims (1)

  1. 単繊維直径が6μm以上の炭素繊維であって、炭素繊維を体積平均粒子径0.5μmに粉砕して測定するヘリウム充填法による炭素繊維密度が1.85g/cm以上であることを特徴とする炭素繊維。
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