JP6105427B2 - 炭素繊維 - Google Patents
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そのため、太繊度であっても内部欠陥の少ない炭素繊維が求められている。
上記のような本発明の炭素繊維は、太繊度であり、高い物性を有するため、生産性の良い優れた炭素繊維複合材料を得ることができる。
このような本発明の炭素繊維の製造方法を用いると、繊維内部の結晶構造が緻密になるため、例え太繊度の前駆体繊維を用いても繊維に含まれる内部欠陥が少ない炭素繊維が得られる。また、結晶配向度が高く、引張強度の高い炭素繊維が得られる。
以下、本発明の炭素繊維の製造方法について、より詳細に説明する。
本発明に用いる前駆体繊維は、アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上、より好ましくは95〜99質量%含有し、その他の単量体を10質量%以下、より好ましくは1〜10質量%含有する単量体を単独又は共重合した紡糸溶液を紡糸することにより製造できる。その他の単量体としてはイタコン酸、(メタ)アクリル酸エステル等が例示される。紡糸後の原料繊維を、水洗、乾燥、延伸、オイリング処理することにより、前駆体繊維が得られる。このとき、トータル延伸倍率が5〜15倍になるようスチーム延伸することが好ましい。前駆体繊維のフィラメント数は、製造効率の面では1000フィラメント以上が好ましく、12000〜100000フィラメントがより好ましい。また、前駆体繊維の単繊維繊度は、生産性の観点から1.15dtex以上が好ましい。前駆体繊維の単繊維繊度が1.15dtex以上であれば、単繊維直径が6μm以上の炭素繊維が得られやすい。前駆体繊維の単繊維繊度は、得られる炭素繊維の強度の観点から、1.18〜1.4dtexであることがより好ましく、1.20〜1.35dtexであることが更に好ましい。
得られた前駆体繊維は、加熱空気中200〜260℃で10〜100分間耐炎化処理することで、耐炎化繊維とすることができる。耐炎化処理は、延伸倍率0.85〜1.15の範囲で処理することが好ましく、高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、0.95〜1.10の延伸倍率で処理することがより好ましい。耐炎化処理に先立って、200〜260℃、延伸比0.90〜1.00で予備熱処理してもよい。
高強度・高弾性率の炭素繊維を得るためには、かかる耐炎化処理により得られる耐炎化繊維の繊維密度を1.34〜1.40g/cm3とすることが好ましい。耐炎化繊維の繊維密度は、耐炎化温度及び/または、耐炎化時間を適宜調節することで制御できる。
このようにして得られた耐炎化繊維を上述の350〜550℃の処理温度で、1.00倍より高い延伸倍率で第1炭素化処理し第1炭素化繊維を得、第1炭素化繊維を650〜850℃の処理温度で1.00倍より高い延伸倍率で第2炭素化処理する方法により、第1及び第2炭素化処理を行う。第1及び第2炭素化工程においては、処理温度を、好ましくは50℃以内、より好ましくは30℃以内の温度幅に温度変動率を保った一定の温度で処理を行うことが、得られる中間繊維の構造を安定させるために好ましい。
第2炭素化処理により得られた第2炭素化繊維は、よりグラファイト化(炭素の高結晶化)を進める為に、窒素等の不活性ガス雰囲気下1000以上、好ましくは1000〜1600℃の第3炭素化炉で第3炭素化処理される。第3炭素化における延伸倍率は0.90〜1.10であることが好ましい。より高い弾性率が求められる場合は、さらに2000〜3000℃の高温で黒鉛化処理を行ってもよい。
炭素繊維に対して、複合材料のマトリクス樹脂との接着性を高めるために、表面処理を行うことが好ましい。本発明において、表面処理の方法は特に限定されないが、処理効率の観点から、表面処理電解液中で表面酸化処理を施す電解表面処理が好ましい。電解表面処理において、炭素繊維にかかる電気量は、目的の表面官能基量になるよう適時調節すればよいが、炭素繊維1gに対して50〜500クーロンになる範囲とすることが好ましい。炭素繊維1gにかかる電気量をこの範囲で調節すると、繊維としての力学的特性に優れ、かつ、樹脂との接着性の向上した炭素繊維を得やすい。一方、炭素繊維1gにかかる電気量が低すぎる場合は、樹脂との接着性が低下しやすい傾向にあり、電気量が高すぎる場合には、繊維強度が低下しやすい傾向にある。
電解液の電解質濃度は0.1規定以上が好ましく、0.1〜1規定がより好ましい。電解質濃度が低くすぎる場合には、電解液の電気伝導度が低いために、電解処理に適さない傾向があり、一方で、電解質濃度が高すぎる場合は、電解質が析出し、濃度の安定性が低くなる傾向がある。
電解液の温度は、高いほど電気伝導性を向上させるため、処理を促進させることができる。一方で、電解液の温度が高くなると、水分の蒸発による濃度の変動等により、時間変動なく均一な条件を提供するのが難しくなるため、15〜40℃の間が好ましい。
表面処理された炭素繊維は、さらにマトリクス樹脂との接着性を高めるために、サイジング処理されることが好ましい。サイジング処理に用いるサイジング液におけるサイズ剤の濃度は、10〜25質量%が好ましく、サイズ剤の付着量は、0.1〜10質量%が好ましい。炭素繊維に付与されるサイズ剤は、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂やその変性物が挙げられる。なお、複合材料のマトリックス樹脂に応じ、適したサイズ剤を適宜選択することができる。また、このサイズ剤は二種類以上を組み合わせて使用することも可能である。サイズ剤付与処理は、通常、乳化剤等を用いて得られる水系エマルジョン中に炭素繊維を浸漬するエマルジョン法が用いられる。また、炭素繊維の取扱性や、耐擦過性、耐毛羽性、含浸性を向上させるため、分散剤、界面活性剤等の補助成分をサイズ剤に添加しても良い。
本発明の製造方法により得られた炭素繊維を用い、マトリックス樹脂と組み合わせて得られる複合材料は、優れた強度を有するため、自動車部材、航空機部材、圧力容器、スポーツ部材などに好適に用いられる。
中間繊維の炭素含有量はFISONS社製の元素分析装置「EA1108」を用いて次の手順により元素分析を行い求めた。中間繊維を完全に燃焼させて、有機物であるCを二酸化炭素(CO2)に、Nを窒素分子(N2)に(Nは燃焼だけでは一部窒素酸化物にもなるため、還元部でN2に変換する)、Hを水(H2O)に変換し、ガスクロマトグラフ方式を用いて、CO2、N2、H2O量を測定することで炭素含有量(質量%)を求めた。
JIS R−7608に準じてエポキシ樹脂含浸ストランドの引張強度および引張弾性率を測定した。
炭素繊維ストランドを、液体窒素中、ボールミル粉砕によって、体積平均粒子径が0.5μmとなるまで凍結粉砕した。得られた粉砕試料の密度をMicromeritics社製「AccuPyc 1330」を用い、ヘリウム充填法により測定した。測定には10ccの測定セルを用い、0.5gの測定試料を用いた。粉砕密度は、繊維構造に含まれるボイドの影響を除いた、純粋な結晶構造部の密度を示す。
株式会社リガク製 X線回折装置「RINT2000」を使用し、透過法により面指数(002)の回折ピーク角度(2θ)を円周方向にスキャンして得られる二つのピークの半値幅H1/2及びH’1/2(強度分布に由来)から下式(1)を用いて結晶配向度を算出した。
配向度(%)=100×[360−(H1/2−H’1/2)]/360 ・・・(1)
H1/2及びH’1/2:半値幅
株式会社オリエンテック製 テンシロン万能試材料験機「RTC−1150A」を使用し、JIS R−7606に準じて炭素繊維の単繊維引張強度を測定した。
単繊維の試験長10mm、試験速度1mm/minにて引張試験を行い、破断最大荷重と単繊維直径から、強度を算出した。炭素繊維ストランドを構成する単繊維のうち100本を抜き取り測定した単繊維引張強度について、標準偏差を平均で除し、CV値(%)を求めた。このCV値(%)を、単繊維間の物性のばらつきの尺度とした。
ワイブル形状係数(m)は、次の式(2)で定義される。式(2)中、Fは、破壊確率であり、対称試料累積分布法により求め、σは単繊維引張強度(MPa)であり、mはFが0〜1全範囲のワイブル形状係数であり、Cは定数である。lnln{1/(1−F)}とlnσでワイブルプロットし、1次近似した傾きからmを求めた。
lnln{1/(1−F)}=mlnσ+C・・・(2)
前駆体繊維であるポリアクリロニトリル繊維(単繊維繊度1.2dtex、フィラメント数24000)を、空気中255℃で、繊維密度1.38になるまで耐炎化処理を行った。次いで窒素ガス雰囲気下、表1に記載の処理温度に保った第1炭素化炉において、表1に記載の延伸倍率で360秒間第1炭素化処理を行った。次いで、窒素雰囲気下、表1に記載の処理温度に保った第2炭素化炉において、表1に記載の延伸倍率で180秒間第2炭素化処理を行い得られた第2炭素化繊維を、窒素雰囲気下、最高温度1400℃の第3炭素化炉において、延伸倍率0.96で90秒間炭素化処理し、単繊維直径6.5μmの炭素繊維を得た。これを硫酸アンモニウム水液中で30C/gの電気量で電解酸化により表面処理した後、エポキシ系樹脂にてサイジング処理を施した。この炭素繊維の物性を表1に示した。
Claims (1)
- 単繊維直径が6μm以上の炭素繊維であって、炭素繊維を体積平均粒子径0.5μmに粉砕して測定するヘリウム充填法による炭素繊維密度が1.85g/cm3以上であることを特徴とする炭素繊維。
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