以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
<実施例1>
(画像形成装置)
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写ベルト5に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部13a、13b、13c、13dを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
画像形成部13aでは、感光ドラム1aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト5に転写される。画像形成部13bでは、感光ドラム1bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト5に転写される。画像形成部13c、13dでは、それぞれ感光ドラム1c、1dにシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて中間転写ベルト5に転写される。
記録材カセット120から引き出された記録材Pは、分離ローラ121によって1枚ずつに分離されて、レジストローラ122へ給送される。レジストローラ122は、中間転写ベルト5上のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ送り込む。二次転写ローラ12は、記録材Pが二次転写部T2を搬送される過程で電圧を印加されて、中間転写ベルト5上のトナー像を記録材Pへ二次転写させる。トナー像が二次転写された記録材Pは、定着装置123へ搬送され、定着装置123で加熱加圧を受けてトナー像を定着された後に、機体外へ排出される。
中間転写ベルト5は、テンションローラ11、ベルト駆動ローラ10、及び対向ローラ124に張架され、テンションローラ11によって所定の張力が与えられる。ベルト駆動ローラ10は、不図示の駆動モータによって回転駆動されて、中間転写ベルト5を矢印R2方向に所定のプロセススピ−ドで回転させる。ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト5にクリーニングブレードを摺擦させて、二次転写部T2を通過した中間転写ベルト5から転写残トナーを回収する。
(画像形成部)
画像形成部13a、13b、13c、13dは、現像装置8a、8b、8c、8dで用いるトナーの色が異なる以外は、同一に構成される。以下では、画像形成部13aについて説明し、画像形成部13b、13c、13dについては、画像形成部13aの構成部材に付した符号末尾のaをb、c、dに読み替えて説明されるものとする。
画像形成部13aは、感光ドラム1aの周囲に、帯電ローラ2a、露光装置4a、現像装置8a、一次転写ローラ3a、ドラムクリーニング装置19aを配置している。感光ドラム1aは、アルミニウムシリンダの外周面に、膜厚が30μmで、帯電極性が負極性であるOPC感光体の感光層を有する。感光ドラム1aは、不図示のドラム駆動モータから駆動力を伝達されて、300mm/secのプロセススピ−ドで矢印R1方向に回転する。感光ドラム1aには不図示のロータリーエンコーダが連結されている。感光ドラム1aは、ロータリーエンコーダの出力パルスが一定周波数となるようにドラム駆動モータが制御されることによって、等角速度回転する。
帯電ローラ2aは、−600V程度の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されて、感光ドラム1aの表面を一様な−600Vの暗部電位VDに帯電させる。
露光装置4aは、レーザービームを回転ミラーで走査露光して、感光ドラム1aの暗部電位VDを明部電位VLに低下させて画像の静電像を書き込む。露光装置4aは、画像信号に従って感光ドラム1aの表面のレーザー光照射部分の表面電位を−100V程度に変化させて静電像を形成する。
現像装置8aは、トナーとキャリアを含む二成分現像剤を用いて静電像を現像して、感光ドラム1aの表面に画像のトナー像を形成する。露光装置4aによって露光されて表面電位が−100V程度に変化した明部電位VLの領域にイエロートナーが付着して、イエロートナー像が反転現像される。
一次転写ローラ3aは、直径16mm程度で、表面が導電性のスポンジで形成され、中間転写ベルト5の内側面を押圧して、感光ドラム1aと中間転写ベルト5との間に一次転写部を形成する。一次転写ローラ3aに+1000V程度の直流電圧を印加することで、感光ドラム1a上のトナー像が中間転写ベルト5へ一次転写される。ドラムクリーニング装置19aは、感光ドラム1aにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト5へ転写されないで感光ドラム1aに残った転写残トナーを回収する。
タンデム型の画像形成装置の問題点としては、機械精度等の原因により、複数の感光ドラムや中間転写ベルトの速度変動や、中間転写ベルトの蛇行が生じる。このため、各画像形成部の転写位置での感光ドラム外周面と中間転写ベルトの移動量の相違等が各色毎にバラバラに発生し、画像を重ね合わせたときに一致せず、100〜150μmの色ずれ(位置ずれ)を生じることが挙げられる。
そこで、画像形成装置100では、各色の画像形成部において、画像形成を行わないときに位置検出用マークを静電像で形成し、中間転写ベルト5上に転写して位置検出用マークとし、ベルト目盛り読み取りセンサを配置して位置検出用マークを検知する。
ベルト目盛り読み取りセンサから出力された検出信号に基づいて転写画像ズレを補正すべく各画像形成部を制御するように構成している。
(静電像目盛り)
図2は色ずれ補正に係る構成の説明図である。画像形成部13c、13dにおける色ずれ補正は、補正するトナー像の色が異なるだけで、画像形成部13bと同様に実行されるため、画像形成部13c、13dに関して重複する説明を省略する。
図2に示すように、画像形成装置100では、画像形成部13aで形成されて中間転写ベルト5に転写されたイエロー画像のトナー像に重ね合せて、画像形成部13bで形成されたマゼンタ画像のトナー像が中間転写ベルト5に一次転写される。このとき、感光ドラム1a、1bの速度変動、露光装置4a、4bの露光開始時期の誤差、中間転写ベルト5の速度変動、中間転写ベルト5の蛇行等に起因して、イエロー画像のトナー像とマゼンタ画像のトナー像とが中間転写ベルト5上で位置ズレする。これにより、イエロー画像とマゼンタ画像のいわゆる色ずれが発生する。
そのため、画像形成装置100では、感光ドラム1aに形成した静電像目盛り6aと感光ドラム1bに形成した静電像目盛り6bとを用いて、イエロー画像のトナー像とマゼンタ画像のトナー像の中間転写ベルト5上での位置ズレを減少させている。
画像形成部13aでは、感光ドラム1aの画像の露光位置を主走査方向に延長した両端部に非現像領域を設けて、画像の静電像を書き込む前後のレーザー光の照射により静電像目盛り6aを書き込む。静電像目盛り6aは、感光ドラム1aの主走査方向の長さが3mmである。静電像目盛り6aは、感光ドラム1aのトナー像の静電像と同様に形成されるため、正確にイエロー画像のトナー像の主走査方向及び副走査方向の位置情報を有している。
画像形成部13bでは、感光ドラム1bの画像の露光位置を主走査方向に延長した両端部に非現像領域を設けて、画像の静電像を書き込む前後のレーザー光の照射により静電像目盛り6bを書き込む。静電像目盛り6bは、感光ドラム1aの主走査方向の長さが3mmである。静電像目盛り6bは、感光ドラム1bのトナー像の静電像と同様に形成されるため、正確にマゼンタ画像のトナー像の主走査方向及び副走査方向の位置情報を有している。
現像装置8a、8bの現像領域は、有効画像領域と一致するので、感光ドラム1a、1bの両端部に形成された静電像目盛り6aは、現像装置8a、8bによる現像を受けない。静電像目盛り6a、6bは、画像の静電像を感光ドラム1a、1bに書き込む前の感光ドラム1a、1bが回転駆動を開始した直後から形成され、感光ドラム1a、1bでの画像の静電像の書き込みが終了するまで形成され続ける。静電像目盛り6a、6bは、画像の静電像の走査線上にレーザー光で書き込むので、静電像が現像されたトナー像の副走査方向の各位置は、静電像目盛り6a、6bの位置に一致する。
実施例1では、感光ドラム1aに形成される画像の副走査方向の解像度が600dpiである。走査線1ラインの幅は、25.4[mm]÷600=0.0423333・・・[mm]、すなわち42.3μmである。実施例1では、静電像目盛り6a、6bは、4ライン/4スペースで形成したので、目盛りピッチは、42.3μmの8倍に相当する0.338mmである。
静電像目盛り6a、6bは、互いに交差して重なるように中間転写ベルト5に転写される。中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6a、6bは、中間転写ベルト5の下流側に配置されたベルト目盛り検出センサ7によって検知されて、それぞれの位置情報を測定される。静電像目盛り6a、6bから測定された位置情報をもとに、露光装置4bにおける感光ドラム1b上の主走査開始位置と主走査開始タイミングとを補正することで、中間転写ベルト5上のイエロー画像の位置にマゼンタ画像の転写位置を合わせ込む。
このように、画像形成部13a、13bで形成された静電像目盛り6a、6bを中間転写ベルト5上に重ねて転写することで、色ずれの検知精度を損なうことなく、中間転写ベルト5の幅方向の別々の位置に転写するよりも、スペースを節約できる。
また、中間転写ベルト上の静電像目盛り6a、6bは、画像形成部13bの下流に配置されたベルト目盛り検出センサ7によって、ほぼ同時刻に同位置で検知される。このため、位置検出精度が中間転写ベルト5の速度変動やベルト目盛り検出センサ7の振動等の影響を受けにく、静電像目盛り6a、6bの位置関係、すなわち色ずれを正確に測定できる。
(静電像記録層)
図3は画像形成部における静電像目盛りの転写の説明図である。画像形成部13b、13c、13dにおける静電像目盛りの形成と転写は、画像形成部13aと同様に実行されるため、画像形成部13b、13c、13dに関して重複する説明を省略する。
図3に示すように、中間転写ベルト5は、転写性能を維持するために、体積抵抗率を109〜1010[Ω・cm]に調整したポリイミド樹脂である。中間転写ベルト5に静電像目盛り6a、6bを直接に転写した場合、一旦電荷は保持されるものの、体積抵抗率が低いため、電荷が速やかに拡散して、ベルト目盛り検出センサ7に届く以前に静電像目盛り6aが消えてしまう。
そこで、感光ドラム1aの両端部の静電像目盛り6aが形成される領域に対応させて、中間転写ベルト5の表面側の両端部に静電像記録層14が配置される。静電像記録層14は、中間転写ベルト5とは異なる体積抵抗値を有するシート材料を中間転写ベルト5に貼付している。静電像記録層14は、幅5mmのテープ状に形成された厚さ50μmのPETフィルムであって、体積抵抗率が1014[Ω・cm]である。そのため、静電像記録層14に転写された静電像目盛り6aの電荷は移動することなく保持されて、中間転写ベルト5上の静電像目盛り6aとして機能する。
なお、静電像記録層14は、PETフィルムには限定されない。静電像記録層14は、体積抵抗率1010[Ω・cm]以上の高抵抗の材料が好ましい。体積抵抗率が1010[Ω・cm]以上の高抵抗の材料であれば、静電像目盛り6aの電荷はベルト目盛り検出センサ7まで保持され、静電像目盛り6aとして用いることが可能であった。静電像記録層14は、PTFEなどのフッ素樹脂材料、ポリイミドなどの樹脂材料でもよい。静電像記録層14は、フィルムを貼付する代わりに、樹脂材料をスプレーなどで塗装、あるいはコーティングして、硬化させることにより形成してもよい。
(静電像転写ローラ)
図3に示すように、中間転写ベルト5の両端部の静電像記録層14に対応させて、一次転写ローラ3aの両端に静電像転写ローラ15を連結して配置した。静電像転写ローラ15は、一次転写ローラ3aとは体積抵抗が異なる材料のスポンジローラで構成される。
中間転写ベルト5の静電像記録層14が配置された部分は、静電像記録層14の厚みだけ、他の部分に比較して厚くなっているので、静電像転写ローラ15の直径は、一次転写ローラ3aの直径よりも50μm小さくしてある。静電像転写ローラ15の直径が静電像記録層14の厚みを吸収して中間転写ベルト5の搬送に影響を与えない。
静電像目盛り6a、6eに静電像記録層14をそれぞれ接触させた状態で、静電像転写ローラ15に+800V程度の直流電圧を印加する。これにより、静電像記録層14に静電像目盛り6a、6eの電荷パターンがそれぞれ転写されて、中間転写ベルト5の静電像目盛り6a、6eが形成される。静電像目盛り6aと静電像目盛り6eとは主走査方向に対する傾き方向が反対であることを除いて等しく形成されている。以下では静電像目盛り6aについて説明して静電像目盛り6eに関する重複した説明を省略する。
このとき、感光ドラム1aの静電像目盛り6aの露光部分と静電像転写ローラ15との電位差は、900Vであるのに対し、感光ドラム1aの静電像目盛り6aの非露光部と静電像転写ローラ15との電位差は1400V程度である。このため、静電像目盛り6aの非露光部と静電像記録層14の間では、静電像目盛り6aの露光部分と静電像記録層14の間よりも大きな放電が発生して大きな電荷量が転写される。これにより、静電像目盛り6aの非露光部に接触した静電像記録層14の表面と静電像目盛り6aの露光部分に接触した静電像記録層14の表面との間に電荷分布の差が発生して、静電像記録層14に静電像目盛り6aが転写される。
静電像目盛り6aの最適な転写条件は、トナー像の転写の場合と同様に、環境変動などによって変化する。
実施例1では、中間転写ベルト5の体積抵抗率が1010[Ω・cm]、静電像記録層14の体積抵抗率が1014[Ω・cm]である。中間転写ベルト5の厚みが50μmである。静電像目盛り6aの転写後の感光ドラム1aの表面電位は、レーザー光が照射された露光部が0V程度、レーザー光が照射されていない未露光部が−200V程度になることが実験により確認された。感光ドラム1a上の−600Vと−100Vの表面電位の違いによる静電像目盛り6aが、静電像記録層14では、−200Vと0Vの表面電位の違いによる静電像目盛り6aとして写し取られていることが実験により確認された。
実施例1では、導電性のスポンジローラで構成された静電像転写ローラ15を用いた。しかし、静電像目盛り6aを転写する際に電荷を与える手段として、ワイヤーを用いたコロナ帯電器や、除電器などに用いられる除電芯を用いた帯電器や、ブレード帯電器などを用いてもよい。
(ベルト目盛り検出センサ)
図4はベルト目盛り検出センサの配置の説明図である。図1に示すように、ベルト目盛り検出センサ7は、最も下流の画像形成部13dの下流で、共通の静電像記録層14に画像形成部13a、13b、13c、13dからそれぞれ転写された静電像目盛り6a、6b、6c、6dを検出する。図2に示すように、ベルト目盛り検出センサ7は、画像形成部13aから転写された静電像目盛り6aに対する画像形成部13b(13c、13d)から転写された静電像目盛り6b(6c、6d)の相対位置ずれを検出する。
図4に示すように、中間転写ベルト5の両側に配置された静電像記録層14に対してそれぞれ接触させて一対のベルト目盛り検出センサ7が配置される。静電像目盛り6a、6bを中間転写ベルト5の両側で検知することで、特許文献1に示されるように、副走査方向の位置ずれと主走査方向の位置ずれと、を検出する。また、図2に示すように、画像形成部13aで転写される走査線と画像形成部13bで転写される走査線の傾き角度を検知して、トナー像の傾きを含んだ高精度な色ずれを補正できる。
なお、実施例1では、ベルト目盛り検出センサ7は、最も下流の画像形成部13dの下流のみに配置したが、ベルト目盛り検出センサ7を画像形成部13b、13c、13dの下流の直近位置にそれぞれ配置してもよい。画像形成部13b、13c、13dの画像位置ずれを露光装置8b、8c、8dへフィードバックする時間が短くなって、高精度に色ずれを補正できるからである。しかし、ベルト目盛り検出センサ7の個数が増えるとコストアップになるので、実施例1では、補正精度とコストのバランスを鑑みて1台のみを配置する構成を選択した。
(誘導電流センサの構成)
図5は誘導電流センサの構成の説明図である。図6は静電像目盛りの検出の説明図である。ベルト目盛り検出センサ7は、静電像目盛り6a、6bを同じ原理に基づいて検出するので、ここでは、静電像目盛り6aの検出について説明し、静電像目盛り6bの検出に関する重複した説明を省略する。
図5の(a)に示すように、ベルト目盛り検出センサ7は、特許文献2に記載されるように、電位の変化を検出する誘導電流センサ330である。誘導電流センサ330は、ベースフィルム332の上に電極層を形成し、ウェットエッチングによりL字型の電極パターンを形成している。ベースフィルム332には、幅20μmの金属線を安定的に形成するために、一般に電気製品の内部配線に使われているポリイミド製フレキシブルプリント基板を採用した。
誘導電流センサ330は、幅4mm、高さ15mm、厚さ25μmのベースフィルム332の上に、幅20μmの金属線からなるL字型の導線331を配置している。導線331の先端側の長さ約2mmの直線部分が検出部334である。検出部334は、出力部335に接続されている。L字型の導線331の検出部334の反対側の端部が信号の出力部335である。
図5の(b)に示すように、L字型の導線331の上からベースフィルム332と同等な大きさと厚さを有するポリイミドのフィルムからなる保護フィルム333を接着している。接着剤は、主にベースフィルム332と保護フィルム333との間に存在する。接着剤が導線331とベースフィルム332の間に存在しないため、静電像に接するベースフィルム332の表面と導線331の表面との間の距離は等しく25μmに規定される。
図6の(a)に示すように、静電像記録層14に転写された静電像目盛り6aは、電位が相対的に高い高電位部341の領域を黒であらわし、電位が相対的に低い低電位部342の領域を白であらわしている。ベルト目盛り読み取りセンサ33bとして用いられる誘導電流センサ330は、検出部334と静電像目盛り6aとが平行になるように、根元側の端部を画像形成部13bの筐体に固定される。誘導電流センサ330は、検出部334と静電像目盛り線31bとが平行になるように、根元側の端部を画像形成部13bの筐体に固定される。画像形成部13c、13dでも同様に誘導電流センサ330が固定される。
図6の(b)に示すように、誘導電流センサ330は、根本側を図示しない支持部に保持させて、全体を湾曲させてベースフィルム332を静電像記録層14に摺擦させている。誘導電流センサ330の曲げ弾性に付勢されて、ベースフィルム332側が静電像転写層14と接触するため、摺擦に伴って検出部334となる導線と静電像記録層14の間隔が常に一定に規定される。なお、保護フィルム333の上から、不図示のバネで押して、誘導電流センサ330のベースフィルム332側を静電像記録層14に押し付けてもよい。
(誘導電流センサの出力)
図7は8ライン/8スペース静電像目盛りにおける誘導電流センサの検知信号の説明図である。図8は4ライン/4スペース静電像目盛りにおける誘導電流センサの検知信号の説明図である。
図7の(a)に示すように、静電像目盛り6aは、600dpi(0.04233mm)の画像解像度で、8ライン分の露光と8ライン分の非露光を繰り返した8ライン/8スペース(ピッチ0.6773mm)のインクリメンタルパターンである。静電像転写層14に転写された静電像目盛り6aは、高電位部341と低電位部342が交互に現れる電荷分布を有する。実施例1では、低電位部342は、感光ドラム1aの露光部が転写されて、表面電位が0V程度である。高電位部341は、感光ドラム1aの非露光部が転写されて、表面電位が−200V程度である。
図7の(b)に示すように、静電像目盛り6aの実際の電位分布は、レーザーによる露光光量が分布をもち周辺部で減少するため、きれいな矩形波にはならず、サインカーブ状の分布となっている。このような電位分布が存在する領域で、誘導電流センサ330を電位の変化する方向に移動させると、誘導電流センサ330の検出部334に、近傍の電位が変化することで誘導電流が発生する。
図7の(c)に示すように、このとき、誘導電流センサ330の出力部335からは、静電像目盛り6aの電位分布を微分した波形の出力信号が出力される。潜像目盛りのピッチが粗いため、電位変化が生じてから次の電位変化が生じるまでに時間間隔がある程度あくので、誘導電流センサ330からの出力信号が正弦波とは異なる形状である。
図8の(a)に示すように、静電像目盛り6aは、600dpi(0.04233mm)の画像解像度で、4ライン分の露光と4ライン分の非露光を繰り返した4ライン/4スペース(ピッチ0.3387mm)のインクリメンタルパターンである。
図8の(c)に示すように、8ライン/8スペース(ピッチ0.6773mm)の半分の4ライン/4スペース(ピッチ0.3387mm)の場合、誘導電流センサ出力は正弦波になった。電位分布のピーク(傾き0)の点が目盛り線の中心であるため、出力電圧が0になる時刻を、目盛り線を検出した時刻と特定することができる。
(色ずれ補正システム)
図9は実施例1の色ずれ補正制御のブロック図である。図10は実施例1の色ずれ補正制御のフローチャートである。上述したように、画像形成部13c、13dの色ずれ補正制御は画像形成部13bと同一であるため、画像形成部13bについて説明し、画像形成部13c、13dに関する重複した説明を省略する。
図9を参照して図10に示すように、制御部17は、画像形成ジョブを受信すると(S1)、準備動作を開始する(S2)。感光ドラム1a、1b、帯電ローラ2a、2b、一次転写ローラ3a、3b、中間転写ベルト5、静電像目盛り消去ローラ9を駆動して、感光ドラム1a、1bの帯電動作を開始する(S2)。
制御部17は、画像形成部13aで感光ドラム1aに静電像目盛り6aを形成して中間転写ベルト5上の静電像記録層(14:図2)に転写させる。同時に、画像形成部13bで感光ドラム1bに静電像目盛り6bを形成して、中間転写ベルト5上の静電像記録層(14:図2)に転写させる(S3)。
制御部17は、ベルト目盛り検出センサ7によって、中間転写ベルト5上の静電像目盛り6a、6bの位置を検知して、静電像目盛り6aに対する静電像目盛り6bの位置ずれ量を検出する。制御部17は、ベルト目盛り検出センサ7の検知結果をもとに、感光ドラム1bに形成される画像の色ずれ量を求めて、露光装置4bに設定する位置ずれ補正量を演算する(S4)。
制御部17は、中間転写ベルト5の複数回転にわたって色ずれ量を測定した結果から、周期的な色ずれの振幅と位相を算出する。周期的な色ずれの補正量がメモリに格納されて(S4)、露光装置4bにおける周期的な色ずれ補正に用いられる。
制御部17は、続いて、補正量に従って補正を行なう(S5)。算出された色ずれ量に応じて露光装置4bに設定する主走査方向及び副走査方向の画像の先頭位置の補正量を算出して露光装置4bの露光タイミングを補正する。あるいは露光装置4bで露光する画像データを主走査方向及び副走査方向にシフトするように補正する。
制御部17は、補正後、感光ドラム1a、1bに再び静電像目盛り6a、6bを形成して中間転写ベルト5に転写して、ベルト目盛り検出センサ7による色ずれ量の測定を行う(S6)。色ずれ量が目標値を割り込むまで(S6のNo)、再測定と再調整を繰り返す(S4)。
制御部17は、色ずれ量が目標値未満に収まると(S6のYes)、画像形成を開始する(S7)。画像形成が開始された後も、感光ドラム1a、1bに静電像目盛り6a、6bを形成して中間転写ベルト5に転写して色ずれ量の測定を行って(S8)。補正を繰り返す(S9)。
制御部17は、画像形成が終了すると(S10のYes)、画像形成装置100の各動作を停止して(S11)、画像形成ジョブを終了する(S12)。
実施例1の色ずれ補正制御によれば、画像形成中も常に色ずれ量を測定して補正し続けるため、ユーザーに色ずれの少ない高画質な画像を提供できる。実施例1の色ずれ補正制御によれば、静電像目盛り6a、6bを用いるため、色ずれ補正制御においてトナーを消費せず、トナー消費量が節約される。実施例1の色ずれ補正制御によれば、色ずれの補正のために連続画像形成を中断する必要がないので、画像形成装置100のダウンタイムが少なくて生産性が落ちない。
(比較例)
図11は比較例1の静電像目盛りの説明図である。図12は比較例2の静電像目盛りの説明図である。図11、12中、(a)は配列、(b)は誘導電流センサの検出信号である。画像形成部13a、13bで形成された静電像目盛り6a、6bを共通の静電像記録層14に転写することで、中間転写ベルト5の主走査方向で静電像記録層14に割り当てるスペースを節約できる。上述したように、実施例1では、静電像目盛り6a、6bを静電像記録層14上で交差するように重ね合わせるが、静電像目盛り6a、6bを平行に形成して交互に配列することも考えられる。
図11の(a)に示すように、比較例1の静電像目盛り6a、6bは、互いに平行で等ピッチに形成される。静電像目盛り6aの一つの直線と、静電像目盛り6bの一つの直線は互いに平行である。静電像目盛り6a、6bは、最大限に位置ずれを生じたとしても、パターンが交互に繰り返して重複しないように形成してある。
例えば、静電像目盛り6a、6bのピッチP=0.3387mmを狙ってそれぞれ形成した場合、画像形成装置100の色ずれが副走査方向に100〜150μmに収まっていれば、静電像目盛り6a、6bは完全に重ならないで交互に配列する。しかし、このように構成すると、誘導電流センサ330の導線331は、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bとを交互に検知するため、誘導電流センサ330の出力パルスが静電像目盛り6aによる信号か静電像目盛り6bによる信号かを判別する必要がある。
信号を分離する1つ目の方法は、タイミングにより信号の分離を行なう方法である。図11の(b)に示すように、露光装置4a、4bによって静電像目盛り6a、6bを形成する前に、信号の待ち状態とする。そして、パルス信号を検出するためにスレッショルド(閾値)電圧を設けておき、スレッショルド電圧を初めて超えた信号を静電像目盛り6aとする。図11の(a)に示すように、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bが交互に繰り返すようにしておくことで、最初に検出した静電像目盛り6aから順に、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bが繰り返すように認識すれば、信号の分離が可能となる。
信号を分離する2つ目の方法は、出力信号強度により信号の分離を行なう方法である。後述するように、静電像目盛り6a、6bを静電像記録層14へ転写する際に静電像転写ローラ15に印加する直流電圧を異ならせることで、静電像目盛り6a、6bの電位を異ならせることが可能である。例えば、静電像転写ローラ15に印加する直流電圧が1000Vのとき、静電像目盛り6a、6bの高電位部の電位は−160Vとなる。しかし、この直流電圧が700Vのとき、静電像目盛り6a、6bの高電位部の電位は−100Vとなる(図18参照)。そして、静電像目盛り6a、6bの電位の違いは、誘導電流センサ330で検出した時に出力信号強度の違いとなって現れる。
図12の(a)に示すように、静電像目盛り6aの高電位部の電位よりも、静電像目盛り6bの高電位部の電位をマイナス方向に大きくすれば、静電像目盛り6aを検出した時の信号強度は、静電像目盛り6bを検出した時の信号強度よりも大きくなる。したがって、図12の(b)に示すように、スレッショルド電圧をth1とth2の二つ設けておき、th1とth2を超える信号を静電像目盛り6aと認識し、th2を超えかつth1を超えない信号を静電像目盛り6bと認識する。これにより、信号の分離が可能となる。
比較例2では、出力信号強度によって信号を分離するので、突発的な変動により静電像目盛り6aと静電像目盛り6bが大きくずれて、重複したり追い越したりした場合でも両者の信号の分離が可能となる。しかし、スレッショルド電圧を2つ設けてアナログ的な処理を行う必要があるため、信号処理回路がさらに複雑になり、応答速度が低下し、コストもかかる。
また、比較例1、2は、静電像目盛り6a、6bを交互に配置するので、静電像目盛り6aのみを同一ピッチで配置する場合に比較して、中間転写ベルト5の単位の長さから得られる位置情報が半分になる。そのため、色ずれ補正の時間当たり実施可能回数、および画像の位置合わせ精度が低下する問題もある。
そこで、実施例1では、静電像目盛り6a、6bを交差するように重ねて静電像記録層14に転写することで、静電像目盛り6a、6bを高密度に配列して、中間転写ベルト5の単位の長さから得られる位置情報を増やしている。
(実施例1の特徴部分)
図13は実施例1における静電像記録層の静電像目盛りの説明図である。図14は実施例1における誘導電流センサの配置の説明図である。図15は転写電圧と転写された静電像目盛りの電位の関係の説明図である。図16は交差した静電像目盛りの各部の電位状態の説明図である。図17は4色の色ずれ調整における静電像目盛りの配置の説明図である。
図1に示すように、搬送体の一例である中間転写ベルト5は、第一感光体の一例である感光ドラム1aから転写されたトナー像を第二感光体の一例である感光ドラム1bへ搬送可能である。中間転写ベルト5の移動方向に感光ドラム1b、1c、1dが複数配置される。感光ドラム1aから中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6aの列上の副走査方向の異なる位置に複数の感光ドラムのそれぞれから静電像目盛りが個別に転写される。図9に示すように、中間転写ベルト5の移動方向における感光ドラム1bの下流にベルト目盛り検出センサ7が配置される。
図9に示すように、第一露光手段の一例である露光装置4aは、主走査方向から第一角度傾いた線状の第一静電像指標の一例である静電像目盛り6aを感光ドラム1aに形成する。第二露光手段の一例である露光装置4bは、主走査方向から第一角度とは異なる第二角度傾いた線状の第二静電像指標の一例である静電像目盛り6bを感光ドラム1bに形成する。第一転写手段の一例である静電像目盛り転写ローラ15aは、感光ドラム1aに形成された静電像目盛り6aを中間転写ベルト5に転写する。第二転写手段の一例である静電像目盛り転写ローラ15bは、感光ドラム1bに形成された静電像目盛り6bを中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6aに重ねて転写する。
図14に示すように、ベルト目盛り検出センサ(7:図9)には、Ch1導線331a及びCh2導線331bが配置される。第一検知手段の一例であるCh1導線331aは、中間転写ベルト5の主走査方向から第一角度傾いた線状の導電体の一例である検出部334aを有して中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6aの誘導電流を検出する。第二検知手段の一例であるCh2導線331bは、中間転写ベルト5の主走査方向から第二角度傾いた線状の導電体の一例である検出部334bを有して中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6bの誘導電流を検出する。
図9に示すように、実行部の一例である制御部17は、非画像形成時に検出モードを実行可能である。検出モードでは、静電像目盛り6a及び静電像目盛り6bを形成して中間転写ベルト5に転写して、Ch1導線331a及びCh2導線331bにより検出する。調整手段の一例である制御部17は、検出モードの検出結果に基づいて感光ドラム1aと感光ドラム1bの少なくとも一方におけるトナー像の副走査方向の形成位置を調整する。
図13に示すように、感光ドラム(1a:図2)に形成されて静電像記録層14に転写された静電像目盛り6aは、長手方向が、主走査方向に対して角度θ傾いている。図13は、画像形成部13aで静電像目盛り6aを静電像記録層14に転写した後の静電像記録層14上の電位分布を示した図である。
図14に示すように、上述した比較例とは異なり、静電像記録層14に転写された静電像目盛り6aに交差するように特定の領域で重ねて、感光ドラム(1b:図2)に形成された静電像目盛り6bが静電像記録層14に転写される。静電像目盛り6bは、長手方向が、主走査方向に対して角度−θ傾いている。
静電像目盛り6a、6bを検出するために、2つの独立した検出部334a、334bを有する誘導電流センサ330を使用した。誘導電流センサ330は、静電像目盛り6aに平行な検出部334aを持つCh1導線331aと、静電像目盛り6bに平行な検出部334bを持つCh2導線331bとを共通のベースフィルム332上に形成している。Ch1導線331aとCh2導線331bとは、中間転写ベルト5の主走査方向において特定の領域を含む領域で発生する誘導電流を検出する。
実施例1では、比較例1、2のように、静電像目盛り6a、6bが分離していないため、Ch1導線331aの検出信号に静電像目盛り6bによって発生した誘導電流が混ざる可能性がある。静電像目盛り6aを検出するためのCh1導線331aに静電像目盛り6bの誘導電流が発生するとノイズとなり、静電像目盛り6aの位置を正しく検知できなくなる。Ch2導線331bにも同様のことが言える。つまり、Ch1導線331aは静電像目盛り6bを、Ch2導線331bは静電像目盛り6aをそれぞれ検知しないことが好ましい。
Ch1導線331aが静電像目盛り6bを検知しないためには、静電像目盛り6bが移動しても、Ch1導線331aの検出部334aの直下の静電像目盛り6bの面積が一定である必要がある。検出部334aを通過する静電像目盛り6bの面積が一定であれば、Ch1導線331aに静電像目盛り6bに起因する誘導電流が発生しない。検出部334aを通過する静電像目盛り6bの面積が一定の条件式は次式である。次式の条件は、Ch2導線331bが静電像目盛り6aを検知しないための条件でもある。
具体的な一例として、nP/2=W×tanθ (nは整数)の関係は、例えば、P=0.3387mm、θ=45°、n=12とすると、W=12×0.3387mm/2=2.0322mmとすれば満たされる。実施例1では、さらに、以下のように静電像目盛り6b(6a)を設計した。
(1)Ch1導線331aの検出部334aの長手方向は、静電像目盛り6aの長手方向であって、Ch1導線331aの長さの方が静電像目盛り6aよりも長い。
(2)静電像目盛り6bが静電像目盛り6aの片方の端部の鋭角頂点(点A)と他方の端部の鈍角頂点(点B)を結ぶように、静電像目盛り6a、6bの、幅W、角度θ、ピッチPを決める。
(3)静電像目盛り6a、6bは、同一のピッチP、同一の線幅Wを有する。
(4)静電像目盛り6aは、長手方向の端部が副走査方向と平行な直線で構成される平行四辺形の形状である。
(5)静電像目盛り6bは、長手方向の端部が副走査方向と平行な直線で構成され、底辺の長さと高さを静電像目盛り6aと同一にした平行四辺形である。
図3を参照して図15に示すように、静電像記録層14へ静電像目盛り6aを転写する際に静電像転写ローラ15aに印加する直流電圧を変化させて、静電像記録層14に転写された静電像目盛り6aの高電位部と低電位部の電位を測定した。
静電像目盛り6aの低電位部は、感光ドラム1aで露光された部分が静電像記録層14に転写されて形成されたもので、高電位部は感光ドラム1aで露光されていない部分が静電像記録層14に転写されて形成されたものである。
高電位部の電位は、静電像目盛り転写バイアスにほぼ比例してマイナス方向に大きくなる。一方、低電位部の電位は、静電像目盛り転写バイアスが+900V程度までほぼ横ばいで、さらに静電像目盛り転写バイアスを大きくするとそれに比例して、電位がマイナス方向に大きくなった。
例えば、直流電圧+1000Vで感光ドラム1aの静電像目盛り6aを静電像記録層14に転写した場合、高電位部が−160V、低電位部が−10Vとなり、高電位部と低電位部の電位差は150Vとなる。
次に、静電像目盛り6aが転写された静電像記録層14に、同一の転写直流電圧+1000Vを用いて、感光ドラム1bの静電像目盛り6bが静電像記録層14に転写される。このとき、常識的に考えると、先に転写されていた静電像目盛り6aが損なわれて、静電像目盛り6aの高電位部と低電位部の電位差は減少すると考えられる。しかし、実験の結果は、その逆であって、静電像目盛り6aの高電位部と低電位部の電位差は保存されることが判明した。この実験結果が、実施例1において、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bとを交差して形成する理由である。
静電像目盛り6bは、静電像転写ローラ15bに印加した直流電圧+1000Vと、静電像目盛り6aの電位を加えた電位で、放電が起こり形成される。静電像目盛り6aの低電位部(−10V)における、静電像目盛り6bの転写電位差は、1000V+(−10V)=+990Vに相当する。図15に示すように、転写電位差+990Vで静電像目盛り6bが転写されると、静電像目盛り6bの低電位部に接触した静電像記録層14では−10V、高電位部に接触した静電像記録層14では−150Vだけ電位が加算される。静電像目盛り6aの低電位部の電位は−10Vであるため、以下のように静電像目盛り6bの電位が形成される。
(E1):静電像目盛り6aの低電位部でかつ静電像目盛り6bの低電位部の電位は、−10V+(−10V)=−20Vである。
(E2):静電像目盛り6aの低電位部でかつ静電像目盛り6bの高電位部の電位は、−10V+(−150V)=−160Vである。
これに対して、静電像目盛り6aの高電位部(−160V)における、静電像目盛り6bの転写電位差は、1000V+(−160V)=+840Vに相当する。図15に示すように、転写電位差+840Vで静電像目盛り6bが転写されると、静電像目盛り6bの低電位部に接触した静電像記録層14では0V、高電位部に接触した静電像記録層14では−130Vだけ電位が加算される。静電像目盛り6aの高電位の電位は−160Vであるため、以下のように静電像目盛り6bの電位が形成される。
(E3):静電像目盛り6aの高電位部でかつ静電像目盛り6bの低電位部の電位は、−160V+0V=−160Vである。
(E4):静電像目盛り6aの高電位部でかつ静電像目盛り6bの高電位部(=目盛り重なり部分)の電位は、−160V+(−130V)=−290Vである。
図16の(a)に示すように、静電像目盛り6a、6bの重なりの各部分(E1〜E4)の電位が確認された。静電像目盛り6a、6bが重なった部分E4は、静電像目盛り6aの高電位部と、静電像目盛り6bの高電位部とが重なった場所である。部分E4は、電位が−290Vとなるため、隣接する部分E3との電位差は、静電像目盛り6bが転写されなかった場合の−150Vとほぼ等しい130Vである。
したがって、図14に示すように、検出部334aが静電像目盛り6aを通過する際に検出部334aに作用する電界の変化量は、静電像目盛り6bが転写されなかった場合とほぼ等しくなる。そのため、静電像記録層14に静電像目盛り6aのみが転写されている場合とほぼ等しいSN比の高い出力信号が出力される。
言い換えれば、部分E4の電位は周りの部分と比べて低くなるため、誘導電流センサ330の位置検出精度が向上する。上述したように、誘導電流センサ330は測定対象の電位変化により発生する誘導電流を検出して、静電像目盛り6a、6bの位置を特定する。したがって、静電像目盛り6a、6bの電位変化が大きければ、誘導電流センサ330の検出する誘導電流、すなわち出力信号が大きくなり感度が向上する。感度が向上すれば、一定の電磁ノイズによる検出誤差への影響が少なくなるので、位置検出精度が上がる。以上が、静電像記録層14の電位分布を誘導電流センサ330で検出する原理である。
なお、静電像目盛り6a、6bを転写する際に静電像転写ローラ15a、15bに印加する直流電圧は等しくする必要は無い。静電像転写ローラ15a、15bに印加する直流電圧を調整して、部分4Eの電位を任意に設定すればよい。例えば、静電像目盛り6aを転写する際の転写電圧を+1000Vとし、静電像目盛り6bを転写する際の転写電圧を+1160Vとする。このとき、静電像目盛り6aの部分E4における、静電像目盛り6bの転写電位差は、1160V+(−160V)=+1000Vとなる。
図15に示すように、転写電位差+1000Vでの静電像目盛り6bの転写によって、静電像目盛り6bの低電位部で−10V、高電位部で−160Vだけ電位が加算される。静電像目盛り6aの高電位部の電位は−160Vであるため、静電像目盛り6aの高電位部でかつ静電像目盛り6bの低電位部の電位は、−160V+(−10V)=−170Vである。静電像目盛り6aの高電位部でかつ静電像目盛り6bの高電位部(=目盛り重なり部分)の電位は、−160V+(−160V)=−320Vである。したがって、静電像転写ローラ15aに印加する直流電圧を+1000Vとし、静電像転写ローラ15bに印加する直流電圧を+1160Vとすることで、部分E4の電位を−320Vに制御できる。
図1を参照して図17に示すように、画像形成部13a、13b、13c、13dでそれぞれ形成された4色のトナー像の色ずれを補正する場合、画像形成部13aで転写された静電像目盛り6aを基準にすることが望ましい。1トラックの静電像記録層14で4色のトナー像の色ずれを補正する場合の1つの方法として、実施例1では、画像形成部13b、13c、13dの色ずれ補正を時分割式に実行している。画像形成部13aでは、静電像目盛り6aを形成して静電像記録層14へ転写し続ける。画像形成部13b、13c、13dでは順番にn回ずつ静電像目盛り6b、6c、6dを形成して、静電像目盛り6aに交差するように重ねて静電像記録層14へ転写する。
画像形成部13c、13dにおける静電像目盛り6c、6dの形成と静電像記録層14への転写は、画像形成部13bにおける静電像目盛り6bの形成と静電像記録層14への転写と同様に実行される。そして、ベルト目盛り検出センサ7の検出結果に基づく画像形成部13c、13dにおける露光装置4c、4dへのフィードバックは、ベルト目盛り検出センサ7の検出結果に基づく露光装置4bへのフィードバックと同様に実行される。
色ずれの検知周波数について説明する。静電像目盛り6aと静電像目盛り6b、6c、6dの平均距離をPとし、静電像記録層14の移動速度をVとし、静電像目盛り6b、6c、6dの形成の繰り返し回数をnとすると、色ずれの検知周波数fは、次式で与えられる。
静電像目盛り6aと静電像目盛り6bの平均的な間隔P=0.3387mmとし、静電像記録層14の移動速度を300mm/secとする。静電像目盛り6aと静電像目盛り6bのみ連続で形成した場合、色ずれの検知周波数fは、300/0.3387=885.7Hzとなる。
静電像目盛り6b、6c、6dの形成の繰り返し回数n=1のとき、画像形成部13b、画像形成部13c、画像形成部13d、画像形成部13b・・・と色ずれ検知が繰り返される。そして、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bの一組から一つの色ずれを算出する。この場合、色ずれの検知周波数fは885.7Hzの3分の1、すなわち885.7/3=295.2Hzとなる。
静電像目盛り6b、6c、6dの形成の繰り返し回数n=2のとき、静電像目盛り6b、6c、6dのそれぞれ2つで平均を出して色ずれ量を算出すると、色ずれの検知周波数は、295.2Hzの2分の1、295.2/2=147.6Hzとなる。静電像目盛り6b、6c、6dをn組連続で形成し(=繰り返し回数n)、n回の平均値を取ることでn組から一つの色ずれを算出する場合、色ずれの検知周波数は落ちる。しかし、高周波のノイズによる誤差が平均化されて小さくなり、精度良く色ずれを検知することができる。
実施例1の色ずれ補正制御によれば、静電像目盛り6aに対して静電像目盛り6b、6c、6dを交差するように重ね合わせて転写するので、誘導電流センサ330によるSN高い検出が実現して正確に色ずれ量を検知できる。また、色ずれの検知周波数fが向上するので、応答性の高い色ずれ補正を行える。中間転写ベルト5の主走査方向の省スペースが実現されるので、中間転写ベルト5の幅を狭く設計できる。
(実施例1の効果)
図16の(a)に示すように、実施例1では、副走査方向の色ずれを検知するために、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bとが、中間転写ベルト5の幅方向に対して、反対方向で絶対値が同じ角度で交わるように形成される。
図16の(b)に示すように、実施例1では、誘導電流センサ330は、静電像目盛り6aを、静電像目盛り6aと傾きの等しいCh1導線331aにより検知する。静電像目盛り6b、6c、6dを静電像目盛り6b、6c、6dと傾きの等しいCh2導線331bにより検知する。
実施例1では、画像形成部13a、13b、13c、13dで形成された、静電像目盛り6a〜6dは同一のピッチを有する。実施例1では、静電像目盛り6a〜6dを静電像記録層14上に重ねて転写し検出することで、トナーを無駄に消費することなく、色ずれを高精度に読み取る。
実施例1では、各色の位置検出用マークを検出する時刻差が短くて済むため、静電像記録層14の速度変動や、中間転写ベルト5の蛇行、あるいはベルト目盛り検出センサ7自身の振動の影響を受けにくく、画像ズレを正確に検知することができる。
実施例1では、各画像形成部で形成された、特に画像情報を記録する、静電像目盛りを静電像記録層14上に重ねて転写し検出することで、色ずれを高精度に読み取ることができる。
実施例1では、色ずれを検知するためにトナー像による位置検出用マークを形成する必要が無い。色ずれを低減するために頻繁に色ずれ補正をしても、トナーを多く消費しないで済む。ユーザーが予期していないところでのトナー消費により、コストが多くかかりユーザーが満足に印刷できないということが無い。
実施例1では、静電像記録層14の移動方向(副走査方向)の色ずれと、その直角方向(主走査方向)の色ずれを、ほぼ同時に検出するため、色ずれの検知周波数が向上するとともに、ダウンタイム(非印字時間)が減少する。色ずれ補正中の印字ができない時間、いわゆるダウンタイム(非印字時間)が短くて済むため、ユーザーに不快感を与えない。
実施例1では、各色の位置検出用マークが重なっていても、どの色の位置検出用マークか区別がつくので、一つのベルト目盛り読み取りセンサの検知範囲の中で各色の位置検出用マークを重ねて配置できる。各色の位置検出用マークを重ねて配置できるため、検出基準色の位置検出用マークを検出する時刻と、検出対象色の位置検出マークを検出する時刻とが近くなる。各色の位置検出用マークを検出する時刻が近いため、静電像記録層14の速度変動や、蛇行あるいはベルト目盛り読み取りセンサ自身の振動の影響を受けにくく、画像ズレを正確に検知できる。基準色位置検出用マークおよび非基準色位置検出用マークを重ねて同時に検知することで、静電像記録層14の速度変動や、蛇行あるいは光学式センサ自身の振動の影響を受けずに、高精度に色ずれを検知できる。
(実施例1の変形例)
実施例1では、電磁ノイズ等の外来ノイズの影響を受けずに高精度に静電像目盛りを読取るために、180°位相のずれた2つの検知手段を配置することもできる。すなわち4ライン/4スペースで構成した場合は、2つの検知手段を0.3387mm÷180/360=0.1694mmだけ離して配置することができる。これにより、180°位相のずれた信号を得ることができる。誘導電流センサの出力に重畳される電磁ノイズ等の外来ノイズは、互いに180°の位相差をもった2つの誘導電流センサの出力の差分を取ることでキャンセルされ、信号強度が倍になるため、SN比が2倍以上になり、高精度に静電像目盛りを検知できる。
実施例1では、高解像度で静電像目盛りを読取るために、90°位相のずれた2つの誘導電流センサ330を配置することができる。すなわち、4ライン/4スペースで構成した場合、2つの誘導電流センサ330を0.3387mm÷90/360=0.0847mmだけ離して配置する。2つの誘導電流センサ330から90°位相のずれた信号を得ることで、高解像度に静電像目盛りを読み取ることが可能となる。プロセス速度(感光ドラムと中間転写ベルトの表面速度)を300mm/sec、静電像目盛りピッチを0.3387mmで構成した場合、1つの誘導電流センサ330から出力される信号の周期は0.3387÷300=885.7Hzとなる。2つの誘導電流センサ330の出力電圧が0になる時刻の立ち上がりと立ち下がりを検知することで885.7×2=1771.5Hzの信号を得る。さらに、90°位相のずれた2つの信号を検知すると、1771.5Hz×2=3543Hz、距離に換算すると1/3543×300=0.0847mm周期の静電像目盛りの信号を得ることが可能となっている。
<実施例2>
図18は静電像目盛りの検出の遅れ時間の説明図である。図19は静電像目盛りの検出の遅れ時間を解消するセンサ配置の説明図である。図19に示すように、Ch1導線331aの導電体とCh2導線331bの導電体とは、中間転写ベルト5に摺擦するように配置された共通のシート上の独立した配線パターンである。Ch1導線331aの導電体とCh2導線331bの導電体とは、共通のシート上で交差するように配置されている。
図14に示すように、誘導電流センサ330は、静電像目盛り6aに平行な検出部334aを持つCh1導線331aと、静電像目盛り6bに平行な検出部334bを持つCh2導線331bとを共通のベースフィルム332上に形成している。図18は、図14からCh1導線331aとCh2導線331bと静電像目盛り6a、6bの関係を抜き出したものである。
図18に示すように、副走査方向の色ずれを検知する場合、中間転写ベルト5の移動方向に対して同じ位置にある静電像目盛り6aと静電像目盛り6bとの位置ずれ量を検知することが望ましい。しかし、Ch1導線331aは、Ch2導線331bからL2離れた位置に配置されているので、Ch2導線331bが静電像目盛り6bを検知してから、Ch1導線331aが静電像目盛り6aを検知するまで、Δtの時間差が発生する。
Ch1導線331aおよびCh2導線331bが次の式(1)の関係を満たしている時、静電像記録層14の移動速度をVとすると、Δtの最小値は、次の式(3)で与えられる。式中の各符号は上述したとおりである。
例えば、P=0.3387mm、n=12、V=300mm/secの場合、Δt=13.5msecとなる。Ch1導線331aが静電像目盛り6aを検知した時刻と、Ch2導線331bが静電像目盛り6bを検知した時刻との差Δtが13.5msecの場合、色ずれが0で、Δtが13.5msec以外の値となれば、その量に応じて色ずれが発生している。
しかし、実際には、Ch1導線331aが静電像目盛り6aを検知した時刻と、Ch2導線331bが静電像目盛り6bを検知した時刻との時間差には、Δtの間で起きる、誘導電流センサ330の振動分や静電像記録層14の速度変動量も含まれる。静電像目盛り6aと静電像目盛り6bの実際のずれに、Δtの間で起きる、誘導電流センサ330の振動分や静電像記録層14の速度変動量が加算されている。
つまり、このΔtの間で起きる、誘導電流センサ330の振動や静電像記録層14の速度変動は検知誤差となってしまう。振動や速度変動は、一般的に周波数が高いと振幅は小さくなるので、Δtは小さく設計すれば、振動や速度変動による検知誤差は小さくなる。
なお、Δt=13.5msecは、周波数に換算すると、1/0.0135=74Hzとなるので、この場合74Hz以上の振動や速度変動の影響を受け易いことになる。要求される検知精度によって、ΔtすなわちCh1導線331aとCh2導線331bの間隔を設計するのが良い。
そこで、実施例2では、Ch1導線331aとCh2導線331bとを中点で交差する位置に配置して、検出の時間差Δtをほぼ0にしている。図19に示すように、Ch1導線331aとCh2導線331bの斜め部分の中点の間隔は、0のため、検出の時間差Δtも0となる。実施例2では、Ch1導線331aとCh2導線331bとが交わらないように、Ch1導線331aをCh1導線331a1とCh1導線331a2とに分断している。Ch1導線331a1、331a2は、同一の静電像目盛り6aを同時に検知する。実施例2では、Ch1導線331a1とCh1導線331a2のそれぞれに出力部を設け、その2つの出力信号の和をとっている。
このように構成することで、同じ位置にある静電像目盛り6aと静電像目盛り6bとを、それぞれCh1導線331a1、331a2とCh2導線331bとによって、ほぼ同一タイミングで読み取れる。その結果、Ch1導線331a1、331a2とCh2導線331bの検出の時間差Δtがなくなる。したがって、誘導電流センサ330の振動や静電像記録層14の速度変動にほとんど影響されることなく、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bのずれ量を検出可能となる。
ところで、静電像目盛り6aを読み取るためのCh1導線331a1、331a2が静電像目盛り6bを読み取ると、検知誤差となってしまう。Ch1導線331a1、331a2が静電像目盛り6bを読み取らない条件は、Ch1導線331a1、331a2がそれぞれ式(1)を満たすことである。このため、静電像目盛り6bの端部から、Ch1導線1およびCh2導線2の端部までの長さをW1とすると、Ch1導線331a1、331a2が静電像目盛り6bを読み取らないための条件は、次式のように規定される。
また、Ch1導線331a1、331a2の間に、Ch2導線331bが入るための条件は、Ch2導線の幅をDとすると、次式のように規定される。
式(1)、式(3)、式(4)から、mの条件は、次式のように規定される。
式(6)から、P=0.3387mm、θ=45°、n=12、D=0.05mmのとき、m<5.98となる。式(4)からmが大きい方が、W1が大きくなり、Ch1導線331aの感度が増すことが分かる。したがって、m=5とするのが良い。このとき、式(4)および式(1)から、W1=W2とすると、W1=W2=0.8468mm、W=2.0322mmとなる。
実施例2では、各色の位置検出用マークを検出する時刻がほぼ等しくなるため、静電像記録層14の速度変動や、蛇行あるいは光学式センサ自身の振動の影響を受けにくく、画像ズレを正確に検知することができる。
<実施例3>
図20は副走査方向と主走査方向の色ずれを同時に検知する構成の説明図である。図9を参照して図20に示すように、露光装置4aは、主走査方向から第一角度と反対方向の第三角度傾いた線状の第三静電像指標の一例である静電像目盛り6cを、静電像目盛り6aの形成に伴って感光ドラム1aに形成する。露光装置4bは、主走査方向から第二角度と反対方向の第四角度傾いた線状の第四静電像指標の一例である静電像目盛り6dを、静電像目盛り6bの形成に伴って感光ドラム1bに形成する。
中間転写ベルト5の移動方向における感光ドラム1bの下流にCh3導線331c及びCh4導線331dが配置される。第三検知手段の一例であるCh3導線331cは、主走査方向から第三角度傾いた線状の導電体の一例である検出部334cを有して中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6cの誘導電流を検出する。第四検知手段の一例であるCh4導線331dは、主走査方向から第四角度傾いた線状の導電体の一例である検出部334dを有して中間転写ベルト5に転写された静電像目盛り6dの誘導電流を検出する。
制御部17は、非画像形成時に、静電像目盛り6a、静電像目盛り6b、静電像目盛り6c、及び静電像目盛り6dを中間転写ベルト5に転写して、Ch1導線331a、Ch2導線331b、Ch3導線331c、及びCh4導線331dにより検出する。制御部17は、静電像目盛り6a、静電像目盛り6b、静電像目盛り6c、及び静電像目盛り6dの検出結果に基づいて感光ドラム1aと感光ドラム1bの少なくとも一方におけるトナー像の主走査方向及び副走査方向の形成位置を調整する。
図20に示すように、副走査方向と主走査方向の色ずれを検知するために、静電像記録層14に中心線19を挟んでトラックTR1とトラックTR2とが隣接して配置される。中心線19より上部をトラックTR1、下部をトラックTR2とする。
トラックTR1には、図14に示すように、静電像目盛り6a、6bが特定の領域で重なるように交差して形成され、トラックTR2には、同様に、静電像目盛り6c、6dが特定の領域とは異なる第二の特定領域で重なるように交差して形成され、それぞれ上記の式(1)の関係を満たしている。しかし、トラックTR1の静電像目盛り6a、6bとトラックTR2の静電像目盛り6c、6dは、中心線19で線対称になるように形成されている。すなわち、Ch1導線331aおよびCh3導線331cは、それぞれ静電像目盛り6a、6cのみを、Ch2導線331bおよびCh4導線331dは、それぞれ静電像目盛り6b、6dのみを検知する。なお、上述した場合と同様に、Ch1導線331aとCh2導線331bとは、中間転写ベルト5の主走査方向において特定の領域を含む領域で発生する誘導電流を検出する。同様に、Ch3導線331cとCh4導線331dとは、中間転写ベルト5の主走査方向において第二の特定の領域を含む領域で発生する誘導電流を検出する。
このように、トラックTR1とトラックTR2に静電像目盛り6a、6b、6c、6dが配置されている場合、副走査方向の位置ずれと主走査方向の位置ずれとを同時に検出できる。Ch1導線331aおよびCh3導線331cが静電像目盛り6a、6cを検知した時刻をそれぞれt1、t3とする。Ch2導線331bおよびCh4導線331dが静電像目盛り6b、6dを検知した時刻をそれぞれt2、t4とする。
このとき、静電像目盛り6a、6cの副走査方向の位置は(t1+t3)/2となり、静電像目盛り6b、6dの副走査方向の位置は(t2+t4)/2となる。静電像目盛り6a、6cの主走査方向の位置は(t1−t3)となり、静電像目盛り6b、6dの主走査方向の位置は(t2−t4)となる。
図18を参照して説明したように、Ch2導線331bおよびCh4導線331dが静電像目盛り6b、6dを検出してから、Ch1導線331aおよびCh3導線(331d)が静電像目盛り6a、6cを検出するまでに、Δtだけ時間差がある。このため、副走査方向の色ずれを検出の時間差Δtで表すと、次式の関係が成立する。
また、主走査方向の色ずれを検出の時間差で表すと次式の関係が成立する。
式(7)および式(8)に、静電像記録層14の移動速度Vをかけると、副走査方向及び主走査方向の色ずれ量が算出される。
実施例3では、省スペースで、静電像記録層14の移動方向(副走査方向)の色ずれと、その直角方向(主走査方向)の色ずれを、ほぼ同時に検出するため、色ずれの検知周波数が向上するとともに、ダウンタイム(非印字時間)が減少する。実施例3では、副走査方向の色ずれと、主走査方向の色ずれを検知するのに、別々のパターンを形成する必要が無い。副走査方向及び主走査方向の色ずれ検出パターンを副走査方向に連続してずらし量を変えていく必要がない。このため、色ずれ検出パターンの副走査方向の長さが短くてすみ、色ずれの検知周波数を高くすることができる。
<実施例4>
図21は副走査方向の色ずれの分類の説明図である。図22は主走査方向の色ずれの分類の説明図である。図21に示すように、静電像目盛り6a、静電像目盛り6b、静電像目盛り6c、及び静電像目盛り6dは、中間転写ベルト5の主走査方向の一方の端部と他方の端部とにそれぞれ転写される。Ch1導線331a、Ch2導線331b、Ch3導線331c、及びCh4導線331dは、中間転写ベルト5の主走査方向の一方の端部と他方の端部とにそれぞれ配置される。図22に示すように、制御部17は、静電像目盛り6a、静電像目盛り6b、静電像目盛り6c、及び静電像目盛り6dの検出結果に基づいて感光ドラム1aと感光ドラム1bの少なくとも一方におけるトナー像の主走査倍率及び主走査方向の傾きを調整する。
図1に示すように、画像形成装置100は、奥行き方向の各断面で同一の構成を持つ。そして、露光装置4a、4bが感光ドラム1a、1bに形成した走査線が現像装置8a、8bにより可視化されて、中間転写ベルト5に転写されて、図21および図22に示すように、中間転写ベルト5上で直線状に観察される。
図21に示すように、副走査方向の色ずれは、副走査方向の書き出し位置ずれと主走査方向の傾きずれとに分類される。副走査方向の書き出し位置ずれは、走査線の副走査方向の平均位置が、理想的な走査線20の副走査位置に対してずれている状態である。副走査方向の書き出し位置ずれの値は、図21中のΔX1に相当する。一方、主走査方向の傾きずれは、走査線の副走査方向の位置が主走査位置に応じて直線的に変化していることであり、その値は図21のΔX2に相当する。実際の走査線は、副走査書き出し位置ずれと傾きずれが混ざっているので、走査線21のようになる。
図20に示すように、実施例4では、トラックTR1とトラックTR2とが中間転写ベルト5の幅方向の両端にそれぞれ配置される。
図21に示すように、トラックTR1を検知するベルト目盛り検出センサ7aは、図20に示すように、Ch1導線331a〜Ch4導線331dを配置している。ベルト目盛り検出センサ7aのCh1導線331a〜Ch4導線331dの検知時刻を、順にta1、ta2、ta3、ta4とする。
図21に示すように、トラックTR2を検知するベルト目盛り検出センサ7bは、図20に示すように、Ch1導線331a〜Ch4導線331dを配置している。ベルト目盛り検出センサ7bのCh1導線331a〜Ch4導線331dの検知時刻を、順にtb1、tb2、tb3、tb4とする。
このとき、副走査書き出し位置ずれに相当するΔX1、あるいは傾きずれに相当するΔX2は、次式で与えられる。
図22に示すように、主走査方向の色ずれは、主走査方向の書き出し位置ずれと主走査方向の倍率ずれに分類される。主走査方向の書き出し位置ずれは、走査線の主走査方向の平均位置が、理想的な走査線20の主走査方向の平均位置からずれている距離を言う。主走査方向の書き出し位置ずれ量は、図22のΔY1に相当する。一方、主走査方向の倍率ずれは、走査線の主走査方向の全長と、理想的な走査線20の全長との差分で定義される。主走査方向の倍率ずれの値ΔY2は、(実際の走査線23の長さ)−(理想的な走査線20の長さ)として定義される。
主走査書き出し位置ずれに相当するΔY1、あるいは主走査倍率ずれに相当するΔY2は、次式で与えられる。
以上をまとめると、色ずれを分類して検出するには、表1の演算式を用いればよい。
実施例4では、副走査方向の色ずれと、主走査方向の色ずれを検知するのに、別々のパターンを形成しないで済む。副走査方向と主走査方向の色ずれ検出パターンを、副走査方向に連続してずらし量を変えていく必要が無いため、パターンの副走査方向の長さが短くて済む。これらの理由により、色ずれの検知周波数を高くすることができる。
<実施例5>
図23は実施例5の静電像目盛りの検出原理の説明図である。図24は4種類の傾き角度の静電像目盛りの配置の説明図である。図25は4種類の傾き角度の検出部の配置の説明図である。図20に示すように、実施例3では、副走査方向と主走査方向の色ずれを同時に検知するためにトラックTR1とトラックTR2とを使用する。実施例3では、トラックTR1、TR2に形成される静電像目盛り6aと静電像目盛り6bとが、中間転写ベルト5の幅方向に対する傾きが反対方向で絶対値が同じである。そして、トラックTR2に形成される静電像目盛り6cはトラックTR1に形成される静電像目盛り6aと傾きが同一であり、トラックTR2に形成される静電像目盛り6dは、トラックTR1に形成される静電像目盛り6bと傾きが同一である。
図20に示す2つの傾き角度の静電像目盛り6aと2つの傾き角度の静電像目盛り6bとを仮に1トラックに形成した場合、傾き角度の等しい静電像目盛りは副走査方向の位置を異ならせる必要がある。そして、Ch1導線331aで検知される静電像目盛り6a、6bの信号と、Ch2導線331bで検知される静電像目盛り6a、6bの信号とをソフトウェアで分離する必要がある。そのため、基本的には、1トラック上に2種類の傾き角度を有する4種類の静電像目盛り6a、6bを重ねて配置することはできない。
実施例5は、静電像目盛り6a、6bをそれぞれ異なる4種類の角度で形成することにより、1トラックで副走査方向と主走査方向の色ずれを検知するのに、ソフトウェアを用いた信号の分離を不要にしている。静電像目盛り6a、6bの傾き角度及びCh1導線331a、Ch2導線331bの傾き角度以外は実施例1、3で説明したとおりであるため、図18、図19中、実施例1と共通する構成には図11〜16と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
実施例5では、静電像記録層14上に絶対値の異なる二種類の傾き角度で静電像目盛り6a、6bを配置することで、4種類の静電像目盛り6a、6bを重ねて配置して、副走査方向の色ずれを検知することができる。
図23に示すように、画像形成部13aでは、中間転写ベルト5の静電像記録層14上に、ベルト幅方向の線18に対してθ1だけ傾けて静電像目盛り6aを形成し、ベルト幅方向の線18に対してθ2だけ傾けて静電像目盛り6bを形成する。静電像記録層14上の静電像目盛り6aは、ベルト幅方向の線18に対してθ1傾いたCh1導線331aによって独立して検知され、静電像目盛り6bは、ベルト幅方向の線18に対してθ2傾いたCh2導線331bによって独立して検知される。
図24に示すように、画像形成部13bでは、静電像目盛り6a、6bが形成された静電像記録層14の上に、一部分を重ねるように静電像目盛り6c、6dを転写する。中間転写ベルト5の静電像記録層14上に、ベルト幅方向の線18に対して−θ1だけ傾けて静電像目盛り6cを形成し、ベルト幅方向の線18に対して−θ2だけ傾けて静電像目盛り6dを形成する。静電像記録層14上の静電像目盛り6cは、ベルト幅方向の線18に対して−θ1傾いたCh3導線331cによって独立して検知され、静電像目盛り6dは、ベルト幅方向の線18に対して−θ2傾いたCh2導線331dによって独立して検知される。画像形成部13bを通過した中間転写ベルト5の静電像記録層14上には、±θ1、±θ2傾いた傾き角度がそれぞれ異なる4種類の静電像目盛りが形成され、±θ1、±θ2傾いた傾き角度がそれぞれ異なる4種類の導線によって独立して検知される。
図23に示すように、静電像目盛り6aの形状は、その長手方向の端部が静電像記録層14の移動方向と平行な二辺を有する平行四辺形にした。静電像目盛り6bの長手方向の端部が静電像記録層14の移動方向と平行である。実施例5においても、静電像目盛り6a、6bは同一のピッチ(大きさP)、同一の幅(大きさW)である。
誘導電流センサ330は、静電像目盛り6aに平行な検出部334aを持つCh1導線331aと、静電像目盛り6bに平行な検出部334bを持つCh2導線331bとで構成される。このとき、Ch1導線331aの検出信号に静電像目盛り6bによって発生した誘導電流が混ざってしまうと、Ch1導線331aにとってこの誘導電流はノイズとなり、静電像目盛り6aの位置を正しく検知できなくなってしまう。Ch2導線331bにも同様のことが言える。つまり、Ch1導線331aは、静電像目盛り6bを、Ch2導線331bは静電像目盛り6aをそれぞれ検知しないことが必要である。
まず、Ch2導線331bが静電像目盛り6aを検知しないための条件について説明する。Ch2導線331bの検出部334bの長手方向は、静電像目盛り6aの長手方向で、かつCh2導線331bの長さの方が静電像目盛り6aよりも長くなっている。また、静電像目盛り6bが静電像目盛り6aの片方の端部の鈍角頂点(図23の点A)と他方の端部の鋭角頂点(図23の点B)を結ぶように、第一静電像目盛り6a、6bの、幅W、角度θ、ピッチPを決める。このようにすれば、静電像目盛り6aが移動しても、Ch2導線331bの検出部334bの直下の静電像目盛り6aの面積が一定となり、Ch2導線331bに静電像目盛り6aに起因する誘導電流が発生しない。すなわち、Ch2導線331bが静電像目盛り6aを検知しない。このときの条件式は、次式のように規定される。なお、以下の数式においては、数式を見易くするために、θ1、θ2、θ3、θ4を、それぞれθ1、θ2、θ3、θ4と表記している。
例えば、P=0.3387mm、θ1=60°、θ2=30°、l=7とすると、W=7×0.3387mm/(tan60°−tan30°)=2.0533mmとすれば良い。また、式(13)の条件は、Ch1導線331aが静電像目盛り6bを検知しないための条件でもある。
図24に示すように、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bと静電像目盛り6cと静電像目盛り6dとがそれぞれ主走査方向に対する傾き角度を異ならせて搬送体上の一例である中間転写ベルト5上に重ねて転写される。図24に示すように、画像形成部(13b:図1)の副走査方向と主走査方向の色ずれを検知するために、静電像目盛り6cと静電像目盛り6dはそれぞれ、二つの角度の直線部を有する。ベルト幅方向の線18に対して、静電像目盛り6a、6cはθ1とθ3からなる直線でなっており、静電像目盛り6b、6dはθ2とθ4からなる直線でなっている。
図25に示すように、形成した各静電像目盛り6a、6b、6c、6dに平行となる成分を持った、Ch1〜Ch4導線331a、331b、331c、331dを配置して、各静電像目盛り6a、6b、6c、6dを検知する。
ここでも、各導線331a、331b、331c、331dは、それぞれに平行な静電像目盛り6a、6b、6c、6d以外を検知しないことが必要である。その条件について述べる。以下、ベルト幅方向の線18に対して、角度θ1で形成されている静電像目盛りをθ1目盛りと記す。θ2〜θ4についても同様に記す。Ch1導線331aが、θ1目盛り以外を検知しない条件は、θ1目盛りに対してθ2目盛り〜θ4目盛りが式(13)を満たすことである。すなわち、このときの条件は、以下の3式で与えられる。
式(13)〜式(15)は、二つの角度の正接の差がP/Wの整数倍になれば(=不干渉条件とする)、その二つの静電像目盛りに平行な導線は互いに信号が干渉せずに検知できることを示している。静電像目盛りが式(13)〜式(15)の条件を満たして形成されているときに、θ2目盛りに対してθ3目盛りおよびθ4目盛りが不干渉条件を満たすことを証明する。
式(13)、式(16)、式(17)から、θ2目盛りは他の静電像目盛りに対して、不干渉条件を満たすため、θ2目盛りに平行なCh2導線331bは、θ2目盛り以外を検知しない。
また、θ3目盛りとθ4目盛りが不干渉条件を満たすことを証明する。
このため、θ3目盛りとθ4目盛りも不干渉条件を満たす。したがって、Ch3導線331cはθ3目盛り以外を、Ch4導線331dはθ4目盛り以外を検知しないことが証明された。
以上から、θ1〜θ4目盛りを式(13)〜式(15)の条件を満たすように形成し、θ1〜θ4目盛りに平行な導線をそれぞれ配置しておけば、互いの信号が干渉せずそれぞれの導線に平行な静電像目盛りのみを検知することができる。したがって、実施例5によれば、図17に示すように静電像目盛りの位置をずらせて信号を分離する必要がなく、1トラックで副走査方向と主走査方向の色ずれを検知することが可能となる。
<実施例6>
実施例6では、実施例5の静電像目盛り6a、6b、6c、6dを中間転写ベルト5の幅方向の両端部に配置して、実施例4と同様に考えて色ずれの分類を行う。
図25に示すように、静電像目盛り6a、6cを検知するCh1導線331aおよびCh3導線331cの間に、静電像目盛り6b、6dを検知するCh2導線331bおよびCh4導線331dを配置すれば、簡単な演算式で色ずれの分類が可能となる。
ここで、色ずれを簡単に算出するために、θ3=−θ1、θ4=−θ2とする。また、Ch1導線331aおよびCh3導線331cが静電像目盛り6a、6cを検知した時刻をそれぞれt1、t3とし、Ch2導線331bおよびCh4導線331dが静電像目盛り6b、6dを検知した時刻をそれぞれt2、t4とする。このとき、副走査方向の色ずれと主走査方向の色ずれは、次式で与えられる。
図21、図22を参照して実施例4で説明したように、副走査方向の色ずれは、主に副走査書き出し位置ずれと傾きずれに分類され、主走査方向の色ずれは、主に主走査書き出し位置ずれと主走査倍率ずれに分類される。
実施例6においても、図21、図22に示すように、ベルト目盛り検出センサ7a、7bを中間転写ベルト5の幅方向の両端部に配置する。このとき、ベルト目盛り検出センサ7aのCh1導線331a〜Ch4導線331dの検知時刻を、順にta1、ta2、ta3、ta4とする。ベルト目盛り検出センサ7bのCh1導線331a〜Ch4導線331dの検知時刻を順にtb1、tb2、tb3、tb4とする。このとき、副走査書き出し位置ずれに相当するΔX1、あるいは傾きずれに相当するΔX2は、以下の式で与えられる。
また、主走査書き出し位置ずれに相当するΔY1、あるいは主走査倍率ずれに相当するΔY2は、以下の式で与えられる。
以上をまとめると、色ずれを分類して検出するには、表2の演算式を用いればよい。
<実施例7>
図26は実施例7における静電像目盛りの検出原理の説明図である。図27は実施例7における静電像目盛りとベルト目盛り検出センサの配置の説明図である。図27に示すように、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bと静電像目盛り6cと静電像目盛り6dとが中間転写ベルト5上に重ねて転写される。静電像目盛り6aと静電像目盛り6bと静電像目盛り6cと静電像目盛り6dのうち2つずつが主走査方向に対する傾き角度が同一でピッチが1:1/2の関係を有する。
実施例1では、部分的に重ねて形成される2つの静電像目盛りのピッチが等しい。これに対して、実施例7では、画像形成装置の構成やシステムに関しては実施例1と同様であるが、部分的に重ねて形成される2つの静電像目盛りのピッチが異なる。したがって、図26、図27中、実施例1と共通する構成には図14と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図26に示すように、実施例7では、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bのピッチを変えることにより、両者の検出信号を分離する。図27に示すように、実施例7では、実施例1〜6と同様に、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bは、ベルト幅方向の線18から±θ1傾いて形成されるが、図26では、便宜上、ベルト幅方向の線18と平行な静電像目盛り6a、6bを用いて説明する。
図26の(a)に示すように、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bは、互いに平行で、静電像記録層14の移動方向に対して、長手方向が垂直になるように配置している。静電像目盛り6aのピッチP1は、静電像目盛り6bのピッチP2の2倍である。
Ch1導線331aの検出部334aおよびCh2導線331bの検出部334bは、静電像目盛り6a、6bに平行である。Ch1導線331aの検出部334aとCh2導線331bの検出部334bの距離は、静電像目盛り6bのピッチP2と等しい。Ch1導線331aの出力信号をA、Ch2導線331bの出力信号をBとする。
図26の(b)に示すように、出力信号Aは静電像目盛り6a、6bのエッジ部で電位変化があるため、ピークが検出される。図14に示すように、目盛り重なり部分16の電位は、周囲の部分と比べて低いため、目盛り重なり部分16のエッジにおいてもピークが検出される。さらに、そのピーク値は、図3に示すように、静電像目盛り転写電圧を変化することで制御できるため、目盛り重なり部分16のエッジと、その他のエッジのピーク値はそろえることができる。また、出力信号Bは、出力信号Aよりも距離P2の分だけ遅れて信号が検出される。
この2つ出力信号A、Bから、以下のように、静電像目盛り6a、6bの位置を測定することができる。
(1)図26の(d)に示すように、出力信号AとBの差をとると、A−Bは、静電像目盛り6aのエッジ部分でピークが検出される。したがって、出力信号AとBの差をとることで、静電像目盛り6aの位置検出が可能となる。
(2)図26の(e)に示すように、出力信号AとBの和をとると、A+Bは、静電像目盛り6bのエッジ部分でピークが検出される。したがって、出力信号AとBの和をとることで、静電像目盛り6bの位置検出が可能となる。
このような原理を用いた静電像目盛り6a、6bを、実施例1のようにベルト幅方向の線18から±θ1傾けて形成することで、ベルト幅方向の線18から±θ1傾いた検出部を有するベルト目盛り読み取りセンサを用いて、4種類の信号を分離できる。
図27に示すように、静電像目盛り6a、6bは、それぞれ長手方向がベルト幅方向の線18に対してθ1とθ2で交わる二つの平行四辺形からなっており、長手方向の端部は、静電像記録層14の搬送方向と一致する。また、静電像目盛り6aの平行な2つのパターンの距離(ピッチ)をP1、静電像目盛り6bの平行な2つのパターンの距離(ピッチ)をP2とすると、P1=2×P2としている。
図27に示すように、Ch1導線331aとCh2導線331bは、ベルト幅方向の線18に対してθ1だけ傾いて、間隔はP2である。Ch1導線331aとCh2導線331bは、ベルト幅方向の線に対してθ2だけ傾いている静電像目盛りを読み取らないことが必要である。
Ch3導線331cとCh4導線331dは、ベルト幅方向の線18に対してθ2だけ傾いて、間隔はP2である。Ch3導線331cとCh4導線331dは、ベルト幅方向の線に対してθ1だけ傾いている静電像目盛りを読み取らないことが必要である。そのための条件は、静電像目盛り6aと静電像目盛り6bが式(13)を満たすことである。
Ch1導線331aの出力信号をA、Ch2導線331bの出力信号をB、Ch3導線(331c)の出力信号をC、Ch4導線(331d)の出力信号をDとすると、静電像目盛りは以下の表3の演算により求めることができる。
また、A−Bにより検出される静電像目盛りの検出時刻をt1、A+Bにより検出される静電像目盛りの検出時刻をt2、C−Dにより検出される静電像目盛りの検出時刻をt3、C+Dにより検出される静電像目盛りの検出時刻をt4とする。このとき、表1の演算により色ずれの分類が可能となる。
<実施例8>
本発明は、主走査方向の線から傾いた静電像目盛りを主走査方向の線から同じ角度だけ傾いた誘導電流センサを用いて検出する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
したがって、複数のトナー像を重ね合わせる画像形成装置であれば、1ドラム型/タンデム型、中間転写方式/記録材搬送体方式の区別なく実施できる。像担持体の数、像担持体の帯電方式、静電像の形成方式、現像剤及び現像方式、転写方式等の区別無く実施できる。
トナー像の重ね合わせ制御は、非画像形成時に行う露光開始タイミングの設定に限らず、画像形成中のリアルタイムの調整も含む。本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。