JP6094351B2 - チタンの製造方法及びチタンの防食方法 - Google Patents

チタンの製造方法及びチタンの防食方法 Download PDF

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Description

本発明は、チタンの製造方法及びチタンの防食方法に関する。
耐食性に優れるチタンは、化学プラントや、海浜地区の屋根や壁のような建材用途に用いられることが多い。建材に用いられるチタンを製造する際には、チタン表面に生じたスケールを除去する処理によって、表面が変色したり、光沢化したりする場合がある。そこで、チタンを所定濃度・所定温度の硝酸溶液により処理することで、脱スケール後のチタン表面の美麗化を図る方法が提案されている(例えば、以下の特許文献1を参照。)。
また、チタンを屋根材に適用する場合、酸性雨によって表面が変色して、意匠性が低下する場合がある。そのため、特許文献1と同様にチタンを所定濃度・所定温度の硝酸溶液により処理することで、大気環境中において変色の生じにくいチタンを製造することが可能なチタンの製造方法が提案されている(例えば、以下の特許文献2及び特許文献3を参照。)。
更に、チタンをデジタル家庭用電化製品等に使用する際、即ち、屋内環境で使用する際にも、変色が生じる場合があった。これは、脱スケール処理等に起因する現象であり、特許文献1〜特許文献3と同様の方法を用いることで、屋内環境で使用される製品の部材に用いられるチタン表面の白色度及び耐変色性を向上させる方法が提案されている(例えば、以下の特許文献4を参照。)。
ところで、チタンは塩化物イオンに対する優れた耐食性を有するものの、高温高濃度といった腐食性の厳しい条件下では、すきま腐食の可能性が生じることが知られている(例えば、以下の非特許文献1を参照)。従来、高温高濃度の塩化物イオンによって発生するチタンの耐すきま腐食性に対して、すきま充填剤の使用や、貴金属であるパラジウム(Pd)の添加など様々な検討がなされている(例えば、以下の非特許文献2及び非特許文献3を参照。)。
特開平8−284000号公報 特開2003−328144号公報 特開2005−154882号公報 特開2006−249487号公報
社団法人チタニウム協会編、「チタンの加工技術」、日刊工業新聞社、1992年11月27日、初版1刷発行、p.223 佐藤広士、上窪文生、下郡一利、福塚敏夫、「工業用純チタンの隙間腐食に及ぼす隙間充填材の影響」、防食技術、32、69−75(1983)。 上窪文生、佐藤広士、下郡一利、「耐すきま腐食性チタン材料の性能と利用技術」、鉄と鋼、72、701−705(1986)。
上記特許文献1〜特許文献4は、大気中や屋内など、チタンが腐食しない環境における、酸化皮膜の成長を抑制する方法を提案するものである。一方、上記非特許文献1及び非特許文献2は、極めて厳しい環境で発生する耐すきま腐食を抑制する方法を提案するものである。しかしながら、従来、高温高濃度の塩化物イオンによるすきま腐食に対して、チタンの不動態被膜がどのように作用するかについては、検討された例はなかった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、チタン(純チタン及びチタン合金)の耐すきま腐食性を向上させることが可能な、チタンの製造方法及びチタンの防食方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、純チタン又はチタン合金の表面を、濃度10%〜60%、温度40℃〜120℃の硝酸溶液を用いて、30秒〜180分間、浸漬処理又は塗布処理を行い、当該浸漬処理又は塗布処理の後に、処理後の前記純チタン又はチタン合金を洗浄し、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又は硫酸イオンの少なくとも何れかが存在する環境下において、前記純チタン又はチタン合金に対して耐すきま腐食性を付与する、チタンの製造方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、純チタン又はチタン合金の表面を、濃度10%〜60%、温度40℃〜120℃の硝酸溶液を用いて、30秒〜180分間、浸漬処理又は塗布処理を行い、当該浸漬処理又は塗布処理の後に、処理後の前記純チタン又はチタン合金を洗浄するものであり、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又は硫酸イオンの少なくとも何れかが存在する環境下において、前記純チタン又はチタン合金に対して耐すきま腐食性を付与する、チタンの防食方法が提供される。
前記硝酸溶液の温度は、90℃〜120℃であってもよい。
前記塗布処理又は浸漬処理を、5分超過180分以下実施してもよい。
前記硝酸溶液の濃度c[%]と、温度T[℃]と、浸漬処理又は塗布処理の時間t[s]とは、下記(式1)を満足することが好ましい。また、前記硝酸溶液の温度は、90℃〜110℃であり、下記(式1)の左辺の値は、65000以上であってもよい。
(c−8)×(T−20)×(log t)×10−4≧17000 ・・・(式1)
以上説明したように本発明によれば、純チタン及びチタン合金の耐すきま腐食性を向上させることが可能となる。
飽和食塩水中における各種チタン材のすきま腐食発生限界温度とpHとの関係を示したグラフ図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、純チタン及びチタン合金を総称して「チタン」とも記載することとする。また、純チタンは、工業用純チタンである。
<検討により得られた知見について>
本発明の実施形態に係るチタンの製造方法及びチタンの防食方法を説明するに先立ち、耐すきま腐食性の向上を実現するための本発明者による検討によって得られた知見について、簡単に説明する。
すきま腐食を含む様々な腐食は、材料と、その材料が存在する環境との組み合わせの結果生じるものである。換言すれば、腐食と環境及び材料との間の関係を模式的に表すとすると、「腐食=環境×材料」という関係が成立している。従って、同じ材料を用いた場合であっても、材料の置かれる環境が変わると様々な腐食が生じる可能性がある。逆にいえば、ある腐食に対して効果のある材料や防食方法であっても、材料の置かれる環境が変わると、十分な耐食性が発揮されないことが多い。そのため、本発明者は、純チタン及びチタン合金の耐すきま腐食性を向上させるための方法を求めて、様々な検討を行った。
本発明者は、検討を開始する前に、すきま腐食に関する従来の知見を整理した。図1は、純チタンやチタン合金の飽和食塩水中におけるすきま腐食発生限界温度とpHとの関係を示したグラフ図である(非特許文献1)。図1では、ASTM規格Grade2の純チタン、Grade12のチタン合金(Ti−0.8Ni−0.3Mo)、PdO/TiO表面処理(PdOとTiOとの複合酸化物によるコーティング)の施されたチタン、Grade7のチタン合金(Ti−0.15Pd)について、すきま腐食発生限界温度のpH依存性が図示されている。
純チタンやチタン合金の優れた耐食性は、化学的に安定した高い密着性を有する連続的な保護性の酸化皮膜が、純チタンやチタン合金の表面に生成され、不動態皮膜として機能することに起因する。この酸化皮膜(不動態皮膜)のために、例えば図1に示したように、ある程度の温度やpHであれば、純チタンやチタン合金は、飽和食塩水中であっても優れた耐すきま腐食性を示す。しかしながら、純チタンやチタン合金が存在するpHにおいて、環境の温度がすきま腐食発生限界温度を超えると、すきま腐食が発生することとなる。
純チタンやチタン合金が存在するpHにおいて、環境の温度がすきま腐食発生限界温度を超えると、純チタンやチタン合金の表面に存在する酸化皮膜の一部が溶解していく。ある時、酸化皮膜の一部が完全に消失してチタンやチタン合金が環境に露出すると、この露出点からすきま腐食が進行することとなる。このように、すきま腐食は、純チタンやチタン合金の表面に存在する酸化皮膜の溶解に伴って進行する現象である。
本発明者が、上記のようなすきま腐食の発生を抑制するために、純チタンやチタン合金に対する様々な防食方法を検討したところ、以下で詳述するように、純チタンやチタン合金を、所定濃度・所定温度の硝酸溶液を利用して、所定時間処理を行うことで、純チタンやチタン合金の耐すきま腐食性を向上させることが可能であることに想到した。
硝酸溶液を利用する方法は、上記特許文献1〜特許文献4に開示されているように、チタン表面に存在する酸化皮膜が成長することで発生するチタンの着色を防止するための技術である。すなわち、上記特許文献1〜特許文献4に開示されている方法は、意匠性の低下を防止するために、チタン表面に存在する酸化皮膜の成長を抑制し、非常に薄い状態で維持し、干渉による変色を防止する技術である。一方、すきま腐食を抑制するには、酸化皮膜が消失しないことが必要とされるので、酸化皮膜を厚くすることが好ましいと考えられる。したがって、従来の常識からすれば、チタンを硝酸溶液に浸漬し、酸化皮膜の成長を抑制する技術によって、すきま腐食を抑制できるとは予想できない。しかしながら、かかる硝酸処理を純チタンやチタン合金に対して実施すると、酸化皮膜の溶解(すなわち、酸化皮膜の減少)という、特許文献1〜特許文献4で想定していた現象と逆の現象に伴って生じるすきま腐食を抑制することが可能である旨に、初めて想到したのである。
以下、この知見に基づいて、本発明者が想到したチタンの製造方法及びチタンの防食方法について、詳細に説明する。
<着目する環境について>
次に、本発明の実施形態に係るチタンの製造方法及びチタンの防食方法において着目する、環境条件について説明する。
上記のように、腐食は、材料と、その材料が存在する環境との組み合わせの結果生じるものである。そこで、本発明の実施形態で着目する、すきま腐食が発生しうる環境について、まず説明する。
本発明の実施形態に係る耐すきま腐食性を有するチタンの製造方法及びすきま腐食に対するチタンの防食方法では、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)又は硫酸イオン(SO 2−)の少なくとも何れかが存在する環境下での、純チタン及びチタン合金の耐すきま腐食性の向上に着目している。より詳細には、本発明の実施形態では、上記のようなアニオン類が、高温(例えば、70℃以上)で存在している環境に着目する。
このような環境下の具体例としては、以下の表1に示したような環境を挙げることができる。ただし、以下に記載した例は、本発明の実施形態で着目する環境のあくまでも一例であって、本発明の実施形態で着目する環境が下記の例に限定されるわけではない。
Figure 0006094351
なお、上記表1において、例3に示した海水は、場所によって成分が変動するものであるが、海水の主要成分としては、例えば以下の表2に示したようなものが存在する。
Figure 0006094351
上記の一例からも明らかなように、本発明の実施形態で着目する環境では、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又は硫酸イオンの少なくとも何れかが高温で存在していることがわかる。
<チタン又はチタン合金について>
まず、本発明の実施形態に係るチタンの製造方法及びチタンの防食方法で用いられるチタン(純チタン及びチタン合金)について、簡単に説明する。
本発明の実施形態で用いられる純チタン又はチタン合金は特に限定されるものではなく、公知の純チタンや各種のチタン合金を利用することが可能である。また、純チタンやチタン合金には、公知の表面処理が施されていても良い。このような純チタンやチタン合金として、以下のようなものを例示することが可能である。
Figure 0006094351
本発明の実施形態では、このような純チタン又はチタン合金に対して、以下で説明するような硝酸溶液を用いた処理を行うことで、上記のような環境下における純チタン又はチタン合金のすきま腐食に対する防食性能を向上させることが可能となり、耐すきま腐食性を有するチタンを製造することが可能となる。
<チタンの製造方法について>
続いて、本発明の実施形態に係るチタンの製造方法について、詳細に説明する。本発明の実施形態に係る製造方法では、常法で製造された純チタン又はチタン合金の表面を、所定濃度・所定温度の硝酸溶液を用いて、所定時間浸漬処理又は塗布処理を行い、浸漬処理又は塗布処理の後に、処理後の純チタン又はチタン合金を洗浄することが行われる。このような処理を行うことで、純チタン又はチタン合金の耐すきま腐食性を向上させることが可能となる。なお、純チタン又はチタン合金は、通常、熱間圧延後、硝フッ酸による脱スケールを行って製造される。更に、冷間圧延、焼鈍、脱スケールを行う場合もある。
すきま腐食は金属間に存在する僅かなすきまで発生するため、すきま腐食を実験的に発生させながら、上記処理によってどのような現象が生じているのかをその場観測により検証することは、極めて困難である。これは、チタンの不動態被膜が極めて薄く、構造解析を行うには、加速器によって発生する放射光を用いる必要があり、しかも、その場観察を行うには、特殊なセルを必要とするためである。しかしながら、本発明者は、上記のような硝酸処理を行うことで、以下のような現象の少なくとも何れかが生じているのではないかと推測している。
・不動態皮膜の欠陥部分が硝酸処理により修復された結果、耐すきま腐食性が向上する。
・不動態皮膜が緻密で連続性の高いものとなって、上記のような環境下であっても皮膜が溶解しにくくなり、耐すきま腐食性が向上する。
・不動態皮膜がアニオンを透過しにくい皮膜となったため、アニオン種に起因するすきま腐食を発生しにくくなった。
以上のような硝酸処理に用いられる硝酸溶液の濃度は、10質量%〜60質量%であることが必要である。硝酸溶液の濃度が10質量%未満である場合には、耐すきま腐食性の向上という効果を得ることができず、好ましくない。また、硝酸溶液の濃度が60質量%である場合には、硝酸の酸化力が強くなりすぎ、純チタンやチタン合金の溶出が促進されるため、好ましくない。なお、硝酸溶液の濃度は、好ましくは20質量%〜50質量%であり、更に好ましくは30質量%〜45質量%である。
また、硝酸溶液の温度は、40℃〜120℃であることが必要である。硝酸溶液の温度が40℃未満の場合には、硝酸処理による上記のような効果を得ることができない。また、硝酸溶液の温度が120℃超過である場合には、硝酸の酸化力が強くなりすぎ、純チタンやチタン合金の溶出が促進されるため、好ましくない。なお、硝酸溶液の温度は、好ましくは90℃〜120℃であり、更に好ましくは、90℃〜110℃である。
更に、硝酸溶液による処理時間は、30秒〜180分であることが必要である。処理時間が30秒未満である場合には、硝酸処理による上記のような効果を得ることができない。また、処理時間を180分超過とした場合であっても、硝酸処理による上記のような効果はほぼ飽和してしまう。硝酸溶液による処理時間は、好ましくは5分超過180分以下であり、更に好ましくは10分〜30分である。
なお、処理時間については、処理に用いる硝酸溶液の濃度や温度に相関があることが考えられるが、本発明の実施形態における硝酸濃度や温度の範囲内では、濃度や温度によらず、処理時間は、30秒〜180分間であればよい。
更に、硝酸溶液の濃度c[質量%]と、温度T[℃]と、浸漬処理又は塗布処理の時間t[s]とは、下記(式1)を満足することが好ましい。下記の(式1)は、「本発明の処理方法が化学的処理であることから、処理温度が最も影響の強い因子であり、次いで硝酸濃度の影響が強く、効果は処理時間の経過とともに増加するが次第に飽和する」という考えに基づいて関数化し、硝酸処理によるすきま腐食の発生率の変化に関する複数の実験結果から実験的に係数を決定することで求めたものである。なお、下記(式1)において、log tは、底を10とする常用対数である。
(c−8)×(T−20)×(log t)×10−4≧17000 ・・・(式1)
上記(式1)は、硝酸処理とすきま腐食の発生率との相関の度合いを表した式であり、上記(式1)を満足するような硝酸処理を実施した場合、処理対象とした純チタン又はチタン合金は、すきま腐食の発生率が例えば20%以下となるような、優れた耐すきま腐食性を示す。上記(式1)の左辺の数値が高いほど、すきま腐食の発生が抑制されるので、(式1)の左辺の数値は、好ましくは25000以上、より好ましくは40000以上、更に好ましくは65000以上とする。なお、(式1)の左辺の数値の上限は、特に規定するものではないが、前述した硝酸処理に用いられる硝酸溶液の濃度及び温度の上限と、浸漬処理又は塗布処理の時間の上限と、を上記(式1)に代入した値が、(式1)の左辺の数値の上限を与えることとなる。
ここで、純チタン又はチタン合金に対して上記のような硝酸処理を行う場合、純チタン又はチタン合金を連続的に通板しながら処理を行っても良いし、純チタン又はチタン合金に対してバッチ処理により硝酸処理を行っても良い。
また、純チタン又はチタン合金に対して、公知の浸漬方法を利用して硝酸処理を行っても良いし、公知の塗布方法を利用して硝酸処理を行っても良い。ここで、塗布処理により純チタン又はチタン合金に対して硝酸処理を行う場合には、硝酸溶液の温度管理や蒸発の防止に注意を払うことが求められる。すなわち、上記のような濃度及び温度の硝酸溶液が純チタン又はチタン合金の表面に塗布されている状態を上記の処理時間保持できるように、硝酸溶液の噴霧を適切に行うことが求められる。
以上のような硝酸溶液による処理を行った後、純チタン又はチタン合金の表面に硝酸溶液が残存しないように、純水や弱アルカリ水のような適切な水溶液を用いて、純チタン又はチタン合金の表面を十分に洗浄する。また、必要に応じて、洗浄後の純チタン又はチタン合金の表面を乾燥させる乾燥処理を行っても良い。
以上のような処理を行うことで、耐すきま腐食性を有する純チタン又はチタン合金を製造することが可能となる。図1に例示したような、純チタン又はチタン合金のすきま腐食発生限界温度曲線に着目すると、製造された純チタン又はチタン合金の限界温度曲線は、傾向として図中の右下方向に向かってシフトすることとなる。その結果、本実施形態に係る製造方法によれば、例えば図1において点線で囲んだ領域に対応する環境下であっても使用可能な純チタンを提供することが可能となる。
<チタンの防食方法について>
以上説明したようなチタンの製造方法は、別の観点から見ると、すきま腐食に対するチタンの防食方法としても捉えることができる。純チタン又はチタン合金に対して、上記のような硝酸溶液を用いて上記の処理時間で処理を行うことで、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又は硫酸イオンの少なくとも何れかが存在する環境下において、純チタン又はチタン合金に対して耐すきま腐食性を付与することができる。
以下では、本発明について、実施例及び比較例を示しながら具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明の実施可能性、適用性及び効果を明確に示すためのものであって、本発明の適用範囲が以下に示す例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の適用が可能である点に注意されたい。
厚さ1mmの純チタン1種の冷延焼鈍材を試験片として用いて、ASTM G78に準拠してマルチクレビス(試験片両面で40個のすきま形成)を用いたすきま腐食試験を実施した。試験溶液は、20質量%のNaCl溶液とし、塩酸を用いてpH2.0に調整した。試験温度は沸騰状態として、試験片を試験溶液に対して7日間浸漬した。浸漬試験後、40個のすきま部分のうち、何個ですきまが発生したかをすきま発生率として表記した。すきま腐食試験前の試験片の表面は、いずれも、乾式#600のエメリー紙で研磨し、その後、硝酸浸漬無しあるいは所定の硝酸濃度、温度、時間で処理後、すきま腐食試験を実施した。なお、硝酸処理条件については、以下の表4に示した通りであり、硝酸処理後に試験片を純水を用いて洗浄した。
得られた結果を、以下の表4に併せて示した。表4から明らかなように、本願発明に基づいて硝酸処理を施した場合に、著しい耐すきま腐食性の向上が発現したことが分かる。
Figure 0006094351

以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (10)

  1. 純チタン又はチタン合金の表面を、濃度10%〜60%、温度40℃〜120℃の硝酸溶液を用いて、30秒〜180分間、浸漬処理又は塗布処理を行い、当該浸漬処理又は塗布処理の後に、処理後の前記純チタン又はチタン合金を洗浄し、
    塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又は硫酸イオンの少なくとも何れかが存在する環境下において、前記純チタン又はチタン合金に対して耐すきま腐食性を付与する
    ことを特徴とする、チタンの製造方法。
  2. 前記硝酸溶液の温度は、90℃〜120℃である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のチタンの製造方法。
  3. 前記塗布処理又は浸漬処理を、5分超過180分以下実施する
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のチタンの製造方法。
  4. 前記硝酸溶液の濃度c[%]と、温度T[℃]と、前記浸漬処理又は塗布処理の時間t[s]とが、下記(式1)を満足する
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のチタンの製造方法。
    (c−8)×(T−20)×(log t)×10−4≧17000 ・・・(式1)
  5. 前記硝酸溶液の温度は、90℃〜110℃であり、
    前記(式1)の左辺の値は、65000以上である
    ことを特徴とする、請求項4に記載のチタンの製造方法。
  6. 純チタン又はチタン合金の表面を、濃度10%〜60%、温度40℃〜120℃の硝酸溶液を用いて、30秒〜180分間、浸漬処理又は塗布処理を行い、当該浸漬処理又は塗布処理の後に、処理後の前記純チタン又はチタン合金を洗浄するものであり、
    塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又は硫酸イオンの少なくとも何れかが存在する環境下において、前記純チタン又はチタン合金に対して耐すきま腐食性を付与する
    ことを特徴とする、チタンの防食方法。
  7. 前記硝酸溶液の温度は、90℃〜120℃である
    ことを特徴とする、請求項に記載のチタンの防食方法。
  8. 前記塗布処理又は浸漬処理を、5分超過180分以下実施する
    ことを特徴とする、請求項又はに記載のチタンの防食方法。
  9. 前記硝酸溶液の濃度c[%]と、温度T[℃]と、前記浸漬処理又は塗布処理の時間t[s]とが、下記(式1)を満足する
    ことを特徴とする、請求項の何れか1項に記載のチタンの防食方法。
    (c−8)×(T−20)×(log t)×10−4≧17000 ・・・(式1)
  10. 前記硝酸溶液の温度は、90℃〜110℃であり、
    前記(式1)の左辺の値は、65000以上である
    ことを特徴とする、請求項9に記載のチタンの防食方法。
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