JP6301648B2 - 耐候性鋼材の表面処理方法 - Google Patents

耐候性鋼材の表面処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐候性鋼材の表面処理方法に係り、特に、防食性に優れた保護性さびを簡易な方法で形成することの可能な耐候性鋼材の表面処理方法に関する。
耐候性鋼材は、無塗装で使用する場合、一定の年月に渡って適度な乾湿が繰り返されることで表面に緻密なさび(保護性さび)が生成し、鋼材自身の防食性能が発現される設計がされている。そのため、均一でムラのない保護性さびを早期に生成させることが重要であり、これを目的とした施工上の工夫や「剥離さび」・「流れさび」の発生を防止する技術が知られている。
そのような技術として、酸性溶液により鋼材表面にリン酸塩被膜や特定のイオンを含む被膜を形成し、大気中に暴露する方法(例えば、特許文献1及び2参照)、鋼材表面に特定のイオンを含む水溶液を散布し(被膜は形成されない)、大気中に暴露する方法(例えば、特許文献3及び4参照)、及び溶液量、pH及びイオン量を制御しつつ、鋼材表面を特定のイオンを含む水溶液で湿潤させ、乾燥及び洗浄を繰り返す方法(例えば、特許文献5参照)が挙げられる。
しかしながら、特許文献1及び2に記載された方法では、最初に形成された被膜が高い防食性を示すため、保護性さびが形成されるまでに長期間を要し、その間に被膜の劣化により変色や剥離が生じ、景観を著しく損なってしまうという問題がある。また、特許文献3及び4に記載された方法では、鋼材表面に特定のイオンを含む水溶液を単に散布するだけなので、橋梁等の屋外に設置された構造物の場合には、降雨によりイオンが流されてしまい、充分な効果を得ることができず、またイオンが流されることにより、土壌・水質汚染等の環境問題が発生する恐れがある。
また、特許文献5に記載された方法では、溶液量、pH及びイオン量を制御するための大掛かりな設備を必要とするので、構造物の架設現場で処理を行うことが困難であり、更に、場合に応じて必要な量の処理を迅速に行うことができないという問題がある。
特開平1−142088号公報 特許第2666673号公報 特許第2699733号公報 特許第2765425号公報 特開2001−303281号公報
以上説明した従来の鋼材の防食方法は、いずれも積極的に保護性さびの形成を促進するさび促進剤を用いるものであるが、それによると予想以上に急速に「さび」形成が進行し、制御することができず、また、鋼材の形状によりさび促進剤が偏在して、「さび」形成の進行が不均一になるという問題があった。例えば、防食処理された鋼材により橋梁を作った場合、場所により保護性さびの発生・進行状態が異なるので、橋梁全体にわたり保護性さびが形成されればよいが、それまでには数年かかることも多く、それまでの間、保護性さびが形成された箇所と形成されていない箇所とが混在し、保護性さびの状態が不均一になり、非常に見栄えが悪いという問題があった。
そこで、本発明は、以上の事情を考慮してなされ、さび形成の進行を制御し、耐候性鋼材表面に防食性を有する保護性さびを均一にムラなく形成することを可能とする耐候性鋼材の表面処理方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明の一態様は、耐候性鋼材の表面を、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤で処理することを特徴とする耐候性鋼材の処理方法を提供する。
以上のように構成される耐候性鋼材の処理方法において、前記さび抑制剤として、ナトリウム、カリウム、又はカルシウムの炭酸塩、あるいはこれらの2種以上の混合物を含むものを用いることができる。この場合、前記さび抑制剤は、前記塩を0.1〜30重量%(水温20℃の飽和炭酸ナトリウム水溶液は22重量%)を含む水溶液とすることができる。
また、上述した耐候性鋼材の処理方法において、前記さび抑制剤で処理する前に、水溶液が中性を示す塩を含むさび促進剤で処理することができる。前記さび促進剤は、硫酸ナトリウム及び/又は塩化ナトリウムを含むことができる。この場合、前記さび促進剤は、前記硫酸ナトリウム及び/又は塩化ナトリウムを0.1〜10重量%を含む水溶液とすることができる。
更に、上述した耐候性鋼材の処理方法において、前記さび促進剤で処理する前に、初期さび促進剤で処理することができる。前記初期さび促進剤は、リン酸、塩化ナトリウム(前記さび促進剤が塩化ナトリウムである場合を除く)、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことができる。この場合、前記初期さび促進剤は、前記化合物を0.1〜10重量%を含む水溶液とすることができる。
また、本発明の他の態様は、耐候性鋼材の表面を、水溶液が中性を示す塩を含むさび促進剤で処理した後、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤で処理することを特徴とする耐候性鋼材の処理方法であって、前記さび促進剤が硫酸ナトリウムを0.1〜10重量%を含む水溶液であり、前記さび抑制剤がナトリウムの炭酸塩を0.1〜30重量%を含む水溶液である耐候性鋼材の処理方法を提供する。
本発明によれば、さびの進行を制御し、耐候性鋼材の表面に防食性を有する保護性さびを均一にムラなく形成することを可能とする耐候性鋼材の表面処理方法が提供される。
実験例で用いた試料のさび厚測定箇所を示す図。 試料1の6ヶ所の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 試料2の6ヶ所の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 試料3の6ヶ所の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 実験例3において処理された試料の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 実験例4において処理された試料の暴露日数とイオン透過抵抗の関係を示す図。 実施例2において処理された試料の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 実施例3において処理された試料の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 実施例3において処理された試料の暴露日数とイオン透過抵抗の関係を示す図。 実施例4において処理された試料の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図。 実施例4において処理された試料の暴露日数とイオン透過抵抗の関係を示す図。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明者らは、保護性さびを形成することによる耐候性鋼材の防食について鋭意検討した結果、耐候性鋼材の表面を、アルカリ性を示す塩の水溶液で処理することにより、保護性さびの進行を効果的に制御し得ることを見出した。即ち、さびの進行を抑制するとともに、さび層の厚さやイオン透過抵抗値を制御して、均一なムラのない保護性さびを形成し得ることがわかった。
本発明の第1の実施形態は、以上のような知見に基づくものである。
本発明の第1の実施形態に係る耐候性鋼材の処理方法は、耐候性鋼材の表面を、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤で処理することを特徴とする。
本実施形態に用いるさび抑制剤としては、水溶液が塩基性を示す塩、例えば、ナトリウム、カリウム、又はカルシウムの炭酸塩、あるいはこれらの2種以上の混合物を含む水溶液が挙げられる。これらの中では、炭酸ナトリウム又は炭酸カルシウムの水溶液を好ましく用いることができる。その濃度は、例えば、0.1〜30重量%である。
被処理体である耐候性鋼材としては、例えば、JIS3114、3125の規格のものを挙げることができる。その形状、大きさ等については、特に限定されない。例えば、I形鋼、H形鋼、山形鋼等の形状の耐候性鋼材であってもよく、これらの耐候性鋼材を組み立てた橋梁等の構造体であってもよい。
さび抑制剤による処理方法としては、耐候性鋼材表面への噴霧、はけ塗り、さび抑制剤中への耐候性鋼材の浸漬等を用いることができるが、簡単でかつ均一な処理を行うことが可能な噴霧による処理が好ましい。さび抑制剤による処理は、繰り返し、複数回行うことが望ましい。なお、1回の処理ごとに、自然乾燥またはブロアによる余分な(水滴状)溶液の除去を行うことが望ましい。
処理の間隔及び回数は、特に限定されないが、たとえば、1日に1回、3日〜30日間行うことができる。
本実施形態に係る耐候性鋼材の処理方法によると、さびの進行を抑制するとともに、さび層の厚さやイオン透過抵抗値を制御して、均一なムラのない保護性さびを形成することができる。
次に、本発明者らは、保護性さびを形成することによる耐候性鋼材の防食について鋭意検討した結果、さび促進効果を有する処理剤(さび促進剤)とさび抑制効果を有する処理剤(さび抑制剤)とを組合せることにより、即ち、最初にさび促進剤で処理した後、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤により処理することにより、保護性さびを早期に形成するとともに、その進行を効果的に制御し得ることを見出した。さび促進剤により早期に形成されたさびの進行をさび抑制剤により抑制し、さび層の厚さやイオン透過抵抗値を制御して、均一なムラのない保護性さびを早期に形成し得ることがわかった。
本発明の第2の実施形態は、このような知見に基づくものである。
本発明の第2の実施形態に係る耐候性鋼材の処理方法は、耐候性鋼材表面をさび促進剤で処理する保護さび形成工程、及び前記保護さび形成工程で処理された耐候性鋼材表面を、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤で処理するさび抑制工程を具備することを特徴とする。この場合、さび抑制工程は、上述した本発明の第1の実施形態に係るさび抑制剤による処理である。
本実施形態に用いるさび促進剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の水溶液を用いることができる。その濃度は、例えば、0.1〜10重量%である。本実施形態において、水道水と比較して電気伝導性が高い硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム塩を含むさび促進剤で処理することが好ましい。
さび促進剤による処理方法としては、上述したさび抑制剤による処理方法と同様に、耐候性鋼材表面への噴霧、はけ塗り、さび促進剤中への鋼材の浸漬等を用いることができるが、簡単でかつ均一な処理を行うことが可能な噴霧による処理が好ましい。さび促進剤による処理は、繰り返し、複数回行うことが望ましい。なお、1回の処理ごとに、自然乾燥またはブロアによる余分な(水滴状)溶液の除去を行うことが望ましい。
処理の間隔及び回数は、特に限定されないが、たとえば、1日に1回、3日〜30日間行うことができる。
更に、本発明者らは、保護性さびを形成することによる耐候性鋼材の防食について鋭意検討した結果、上述したさび促進剤よりも更にさび促進効果の高い、酸又は塩の水溶液(初期さび促進剤)により耐候性鋼材の表面を処理し、次いで、上述したさび促進剤により処理し、最後に上述したさび抑制剤により処理することにより、更に早期に保護性さびを形成するとともに、その進行を制御し得ることを見出した。即ち、初期さび促進剤及びさび促進剤により早期に形成されたさびの進行をさび抑制剤により抑制し、さび層の厚さやイオン透過抵抗値を制御して、均一なムラのない保護性さびを早期に形成し得ることがわかった。
本発明の第3の実施形態は、このような知見に基づくものである。
本発明の第3の実施形態に係る耐候性鋼材の処理方法は、耐候性鋼材表面を初期さび促進剤で処理する初期さび形成工程、前記初期さび形成工程で処理された耐候性鋼材表面をさび促進剤で処理する保護性さび形成工程、及び前記保護性さび形成工程で処理された耐候性鋼材表面を、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤で処理するさび抑制工程を具備することを特徴とする。
本実施形態に用いる初期さび促進剤としては、リン酸(H3PO4)、塩化ナトリウム(上述したさび促進剤が塩化ナトリウムである場合を除く)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、これらの2種以上の混合物の水溶液を挙げることができる。その濃度は、例えば、0.1〜10重量%である。
初期さび促進剤による処理方法としては、上述したさび抑制剤及びさび促進剤による処理方法と同様に、耐候性鋼材表面への噴霧、はけ塗り、さび促進剤中への鋼材の浸漬等を用いることができるが、簡単でかつ均一な処理を行うことが可能な噴霧による処理が好ましい。初期さび促進剤による処理は、繰り返し、複数回行うことが望ましい。なお、1回の処理ごとに、自然乾燥またはブロアによる余分な(水滴状)溶液の除去を行うことが望ましい。
処理の間隔及び回数は、特に限定されないが、たとえば、1日に1回、3日〜30日間行うことができる。
初期さび促進剤とさび促進剤とは、いずれもさび促進効果を有することにおいて共通するが、リン酸水溶液等の初期さび促進剤は酸性であるため、さび形成速度は非常に速い。これに対し、硫酸ナトリウム水溶液等のさび促進剤は、中性ではあるが水道水よりも電気伝導度が高いため、リン酸水溶液等の初期さび促進剤に比べ、適度な速度でさびの進行を促進させることができる。
実験例1
本発明者らは、種々の物質のさび促進効果及びさび抑制効果を調べるために、以下の実験を行った。
まず、下記の3種の化合物をイオン交換水で希釈し、3種の処理溶液を作成した。
処理溶液1:飽和炭酸ナトリウム水溶液
処理溶液2:0.5%硫酸ナトリウム水溶液
処理溶液3:0.5%塩化ナトリウム水溶液
次に、試料としてブラスト処理を行った耐候性鋼材(JIS 3114)からなる模型桁(縦500mm、全長1000mm、上下に全長に沿ってフランジを有し、表面に水平補強材が取り付けられている)の全面(表面、裏面、フランジ面)に、前記処理溶液1〜3を、1日に1回、20日間散布した。
散布は噴霧器(ハイパー4L、マルハチ産業(株)製)を用い、1回につき散布量500mlを試料全体が処理溶液で濡れるように散布した。
散布及びその後の暴露は、降雨により試料が濡れ、処理溶液が洗い流されるのを防止するため、屋根を設け、屋根の下に設置して行った。
暴露後、10日後及び20日後に、図1に示す試料の6ヶ所(表面の中央部W−1、表面の下部フランジ上面LFU−1、裏面の上部フランジ下面UFL−2、裏面の中央部W−2、裏面の下部フランジ上面LFU−2、下部フランジ下面LFL)の平均さび厚を測定した。平均さび厚は、電磁膜厚計(LZ−990、(株)ケット科学研究所製)を用い、1ヶ所につき100mm×100mmの枠内で9点につき測定し、1番目と2番目に大きい値と1番目と2番目に小さい値を取り除いた5点のさび厚の測定値を平均した値とした。
その結果を図2〜図4に示す。図2は処理溶液1を散布した試料1の6ヶ所の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図、図3は処理溶液2を散布した試料2の6ヶ所の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図、図4は処理溶液3を散布した試料3の6ヶ所の暴露日数と平均さび厚の関係を示す図である。
図2〜図4に示すように、試料1(図2)では、平均さび厚は、暴露日数10日までは試料2及び3よりも急な増加を示しているが、暴露日数10日と20日の間では減少している。これは、処理溶液1(飽和炭酸ナトリウム水溶液)が、さび抑制剤として有効であることを示している。
また、試料2(図3)では、平均さび厚は、暴露日数10日までは試料1よりもややゆるやかで、試料3よりもやや急な増加であるが、暴露日数10日と20日の間では急激に、ただし試料3よりもややゆるやかに増加している。これは、処理溶液2(0.5%硫酸ナトリウム水溶液)が特にさび促進剤として有効であることを示している。
また、試料3(図4)では、平均さび厚は、暴露日数の増加とともに増加し、暴露日数10日までは比較的ゆるやかな増加であるが、暴露日数10日と20日の間では試料2よりも急激に増加している。これは、処理溶液3(0.5%塩化ナトリウム水溶液)が特に初期さび促進剤として有効であることを示している。
実験例2
試料1〜3について、処理溶液1〜3を用いて実験例1と同様にして処理し、暴露開始20日後のさびのイオン透過抵抗を、イオン透過抵抗測定装置RST(日鉄住金防蝕(株)社製)を用いて行った。測定箇所は、上述したさび厚の測定と同様の6ヶ所である。その結果を下記表1に示す。
Figure 0006301648
上記表1に示すように、試料1のさびのイオン透過抵抗はすべての測定箇所で0Ωであり、試料2のさびのイオン透過抵抗はすべての測定箇所で20Ω未満であるのに対し、試料3のさびのイオン透過抵抗はすべての測定箇所で60Ω以上であった。なお、イオン透過抵抗は、腐食因子を遮断する能力を示し、イオン透過抵抗が高いさびは、高い保護性を有するさびであることを意味している。
実験例3
実験例1及び2で用いた処理溶液2に加え、下記の処理溶液4及び5を準備した。
なお、処理溶液4は、リン酸をイオン交換水で希釈して作成した。
処理溶液4:0.5%リン酸水溶液
処理溶液5:水道水
次に、試料として、ブラスト処理を行ったJIS−SMA鋼材(縦150mm、横70mm、厚さ6mm)の表面に、前記処理溶液2、4、5を、小型の霧吹きにより、1日に1度の頻度で1度につき10回噴霧した。なお、処理溶液2は10日間、処理溶液4は3日間、処理溶液5は毎日噴霧した。なお、処理溶液5(水道水)は、比較のために用いた。
噴霧後の暴露は、降雨により試料が濡れ、処理溶液が洗い流されるのを防止するため、及び海水飛沫に由来する飛来塩分の堆積による環境因子の影響を避けるために、密封箱内で行った。
暴露後、15日後、30日後、60日後、及び90日後に、試料表面の平均さび厚を測定した。平均さび厚は、電磁膜厚計(LE−370、(株)ケット科学研究所製)を用い、試料表面の10点につき測定し、10点のさび厚を平均した値とした。
その結果を下記表2及び図5に示す。下記表2及び図5に示すように、処理溶液2では、暴露日数60日までは平均さび厚の増加を示しているが、暴露日数60日を超えるとほぼ横ばいとなっている。これに対し、処理溶液4では、3日と少ない噴霧日数でありながら暴露日数60日まで、平均さび厚は急激な増加を続け、暴露日数60日を超えるとほぼ横ばいとなっている。処理溶液5では、毎日噴霧を続けたにもかかわらず、平均さび厚の増加は少ない。
これらの結果は、処理溶液2がさび促進剤として有効であり、また処理溶液4が初期さび促進剤として有効であることを示している。
Figure 0006301648
実験例4
実験例3と同様にして、処理溶液2、4、5を用いて試料表面を処理し、暴露後、15日後、30日後、60日後、及び90日後のさびのイオン透過抵抗を、イオン透過抵抗測定装置RST(日鉄住金防蝕(株)社製)を用いて測定した。測定箇所は、試料表面の並列する3ヶ所である。その結果を下記表3及び図6に示す。
下記表3及び図6に示すように、いずれの処理溶液で処理された試料もイオン透過抵抗は暴露後60日を超えると急激に増加しており、高い保護性を有するさびが形成されていることがわかる。
Figure 0006301648
以上の実験例1〜4の結果は、試料1に用いた処理溶液1(飽和炭酸ナトリウム水溶液)は、それ自体、高い保護性を有するさびを早期に形成する能力は低いが、既に存在するさびあるいは処理溶液2、3、4により形成されたさびの急速な進行を抑制し、結果として防食性に優れた保護性さびを形成し得ることを示している。また、試料2に用いた処理溶液2(0.5%硫酸ナトリウム水溶液)は、さび促進剤として有効であり、試料3に用いた処理溶液3(0.5%塩化ナトリウム水溶液)及び処理溶液4(0.5%リン酸水溶液)は、初期さび促進剤として有効であることを示している。
以上の実験結果から、耐候性鋼材を処理溶液1により処理することにより、当初は保護性さびの形成がある程度進行するが、その後、抑制され、防食性に優れた保護性さびを形成し得ることがわかる。
また、処理溶液1による処理の前に処理溶液2により処理することにより、より急速に保護性さびが形成されるとともに、その後の保護性さびの形成が抑制され、より早期に防食性に優れた保護性さびを形成し得ることがわかる。
また、処理溶液2による処理の前に処理溶液3または4により処理することにより、更に急速に保護性さびが形成されるとともに、その後の保護性さびの形成が抑制され、更に早期に防食性に優れた保護性さびを形成し得ることがわかる。
実施例1
本発明者らは、前記実験例1及び2と同様にして、試料としての模型桁の全面に、処理溶液1を1日に1回、20日間散布する処理を行った。その後、処理を施された試料を屋外で30日間、暴露した。
その結果、図2に示すように、保護性さびの急激な進行が抑制され、防食性の高い保護性さびをムラなく形成することができた。
実施例2
実験例3で用いた試料の表面に、実験例3と同様の手順で、処理溶液2を1日に1度の頻度で1度につき10回、10日間噴霧する処理を行った。その後、処理溶液2で処理された試料の表面に、同様にして、処理溶液1を1日に1度の頻度で1度につき10回、10日間噴霧する処理を行った。
噴霧後、実験例3と同様にして暴露を行い、暴露後15日後、30日後、60日後、及び90日後に、試料表面の平均さび厚及びイオン透過抵抗を測定した。平均さび厚は実験例3と同様の方法で、イオン透過抵抗は実験例4と同様の方法で測定を行った。
また、処理溶液2を20日間、処理溶液1を30日間噴霧することを除いて、上記と同様にして噴霧し、暴露し、試料表面の平均さび厚を測定した。
それらの結果を下記表4、図7に示す。なお、比較のために、処理溶液2をそれぞれ10日間及び20日間噴霧し、処理溶液1の噴霧を行わない場合、また処理溶液5(水道水)を毎日噴霧しただけの場合についての測定結果も併せて示す。
下記表4及び図7に示すように、処理溶液2の単独処理ではさび厚の増加がみられるのに対し、処理溶液2の噴霧に引き続き処理溶液1の噴霧を行った場合には、いずれも暴露日数の増加によってさび厚は増加していない。このことは、さび促進剤(処理溶液2)による処理により早期に保護性さびが形成されるとともに、その後のさび抑制剤(処理溶液1)による処理により、保護性さびの急激な進行が抑制されたことを示している。
Figure 0006301648
実施例3
処理溶液2(硫酸ナトリウム)の代わりに処理溶液3(塩化ナトリウム)を用いたことを除いて実施例2と同様にして、試料表面を処理し、暴露し、試料表面の平均さび厚及びイオン透過抵抗を測定した。それらの結果を下記表5(平均さび厚)、表6(イオン透過抵抗)、図8(平均さび厚)及び図9(イオン透過抵抗)に示す。なお、比較のために、処理溶液3をそれぞれ10日間及び20日間噴霧し、処理溶液1の噴霧を行わない場合、また、処理溶液5(水道水)を毎日噴霧しただけの場合についても併せて示す。
下記表5及び図8に示すように、処理溶液3の単独処理では暴露日数の増加に伴いサビ厚の大幅な増加がみられるのに対し、処理溶液3の噴霧に引き続き処理溶液1の噴霧を行った場合には、処理溶液3を噴霧している期間はさび厚は増加し、その後処理溶液1を噴霧するとさび厚は減少している。また、下記表6及び図9に示すように、処理溶液3の単独処理ではイオン透過抵抗は単調に増加しているのに対し、処理溶液3の処理後に処理溶液1を噴霧した場合は増加が抑制されている。
これらの結果は、さび促進剤(処理溶液3)による処理により早期に保護性さびが形成されるとともに、その後のさび抑制剤(処理溶液1)による処理により、保護性さびの急激な進行が抑制され、防食性の高い保護性さびが早期にムラなく形成されたことを示している。
本実施例は、塩化ナトリウム水溶液もまた、硫酸ナトリウムと同様、さび促進剤として使用可能であることを示している。
Figure 0006301648
Figure 0006301648
実施例4
実験例3で用いた試料の表面に、実験例3と同様の手順で、処理溶液3を1日に1度の頻度で1度につき10回、10日間噴霧する処理を行った。その後、処理溶液3で処理された試料の表面に、実施例2と同様にして、処理溶液2及び処理溶液1により順次処理し、暴露し、試料表面の平均さび厚及びイオン透過抵抗を測定した。
また、処理溶液3を20日間、処理溶液2を20日間、処理溶液1を30日間噴霧することを除いて、上記と同様にして噴霧し、暴露し、試料表面の平均さび厚及びイオン透過抵抗を測定した。
それらの結果を下記表7(平均さび厚)、表8(イオン透過抵抗)、図10(平均さび厚)及び図11(イオン透過抵抗)に示す。なお、比較のために、処理溶液5(水道水)を毎日噴霧しただけの場合についても併せて示す。
下記表7及び図10に示すように、処理溶液3、処理溶液2、及び処理溶液1の噴霧を順次行った場合には、暴露後60日まではさび厚は増加し、その後減少している。即ち、暴露の当初は、処理溶液3(初期さび促進剤―塩化ナトリウム)及び処理溶液2(さび促進剤―硫酸ナトリウム)によるさび促進効果が働くが、その後、処理溶液1(さび抑制剤―炭酸ナトリウム)によるさび抑制効果が働いている。
一方、下記表8及び図11に示すように、暴露後30日まではイオン透過抵抗は増加し、その後、暴露後60日まで減少し、暴露後60日を超えると、処理日数の多い場合は減少し、少ない場合は増加している。
これら表7、表8、図10及び図11に示す結果は、処理溶液3(初期さび促進剤―塩化ナトリウム)及び処理溶液2(さび促進剤―硫酸ナトリウム)によるさび促進効果と、処理溶液1(さび抑制剤―炭酸ナトリウム)によるさび抑制効果の組み合わせにより、さび厚の減少によっても一定の高いイオン透過抵抗が得られ、保護性さびの急激な進行が抑制され、防食性の高い保護性さびが早期にムラなく形成されたことを示している。
Figure 0006301648
Figure 0006301648

Claims (1)

  1. 耐候性鋼材の表面を、水溶液が中性を示す塩を含むさび促進剤で処理した後、水溶液がアルカリ性を示す塩を含むさび抑制剤で処理することを特徴とする耐候性鋼材の処理方法であって、前記さび促進剤が硫酸ナトリウムを0.1〜10重量%を含む水溶液であり、前記さび抑制剤がナトリウムの炭酸塩を0.1〜30重量%を含む水溶液である耐候性鋼材の処理方法。
JP2013267320A 2012-12-26 2013-12-25 耐候性鋼材の表面処理方法 Expired - Fee Related JP6301648B2 (ja)

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