JP6094124B2 - 水圧転写フィルム及びこれを用いた加飾成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、立体面や曲面を有する成型体の表面に転写層を形成するのに好適な水圧転写フィルム及びこれを用いた加飾成形品の製造方法に関する。
自動車内装品、家電製品又はOA機器等には表面に木目調や金属調(金属光沢)などの装飾が施された成型品が利用されている。これらの成型品は複雑な三次元形状を有するものが多く、従来、その複雑な形状からなる成型品に意匠性の高い装飾を簡便に施す方法が検討されている。
こうした装飾方法として、水圧を利用した水圧転写法が知られている。この水圧転写法は、水溶性あるいは水膨潤性の水溶性フィルムに、所望の装飾層を印刷した転写フィルムを用意し、該転写フィルムの装飾層に、有機溶剤からなる活性剤組成物を塗布して、該装飾層を膨潤、粘着化させる(これを活性化という)。その前又は後に、前記転写フィルムを転写用の装飾層(印刷層)面を上面にして、水面上に浮遊させ、次いで、該転写フィルム上に被転写体となる物品を押圧して、水圧によって転写フィルムを被転写体の装飾処理をすべき被転写面に密着させた後、水溶性フィルムを除去して装飾層を転写する(例えば、特許文献1及び2参照)。
かかる水圧転写法においては、上述のように活性化工程で装飾層に直接有機溶剤が接触し、装飾層を膨潤、粘着化させるため、装飾層の輝度が損なわれる場合があり、特に装飾層が金属顔料を含む場合に顕著であった。
特開昭61−66685号公報 特開昭60−165300号公報
本発明はこのような状況下で、絵柄層(装飾層)を保護し、絵柄層の輝度を担保し得る水圧転写フィルム及びこれを用いた加飾成形品の製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水溶性フィルム上に意匠層を有する水圧転写フィルムであって、該意匠層が水溶性フィルム側から少なくとも絵柄層及び保護層をこの順に有し、かつ該保護層としてアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物を用いることで上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]水溶性フィルム上に意匠層を有する水圧転写フィルムであって、該意匠層が水溶性フィルム側から少なくとも絵柄層及び保護層をこの順に有し、かつ該保護層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる水圧転写フィルム、及び
[2]上記[1]に記載の水圧転写フィルムを用い、かつ、下記の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする加飾成形品の製造方法、
工程(a):水圧転写フィルムを水溶性フィルム側が水面側に向くように水面に浮遊させる工程。
工程(b):水圧転写フィルムの意匠層側に活性剤組成物を塗布する工程。
工程(c):該工程(a)及び(b)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって意匠層を被転写体の被転写面に密着させる工程。
工程(d):該被転写体の被転写面上より水溶性フィルムを除去する脱膜工程。
を提供するものである。
本発明の水圧転写フィルムを用いることで、輝度の高い絵柄層を有する、意匠性の優れた加飾成形品を製造することができる。
本発明の水圧転写フィルム構成の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の水圧転写フィルムについて説明する。図1は、本発明の水圧転写フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
本発明の水圧転写フィルム10は、水溶性フィルム1上に、意匠層5を有する。該意匠層5は、水溶性フィルム1側から、少なくとも絵柄層2及び保護層3をこの順に有する。そして、該保護層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなることが本発明の特徴である。このような保護層3を有する水圧転写フィルムを用いることで、輝度の高い絵柄層を有する、意匠性の優れた加飾成形品を製造することが可能となる。
また、本発明の水圧転写フィルム10は、意匠層5中にさらにプライマー層4を有していてもよく、さらに高い輝度を得ることができる。該プライマー層4は、水溶性フィルム1と絵柄層2の間に位置することが好ましい。
[水溶性フィルム]
本発明における水溶性フィルム1としては、水溶性又は水膨潤性を有するものであれば良く、従来水圧転写フィルムにおいて一般に使用されている水溶性フィルムの中から、適宜選択して用いることができる。
水溶性フィルム1を構成する樹脂としては、例えばポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の各種水溶性ポリマーが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。なお、水溶性フィルム1には、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
上記の水溶性フィルム1のうち、特に生産安定性と水に対する溶解性及び経済性の点から、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムが好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、PVA以外に、澱粉やゴム等の添加剤を含有していてもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、及び澱粉やゴム等の添加剤の配合量等を変えることにより、水溶性フィルムに対して転写用の印刷層を形成する際に必要な機械的強度、取り扱い中の耐湿性、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化の速度、水中での延展又は拡散に要する時間、転写工程での変形のし易さ等を適宜調節することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる水溶性フィルムとして好適なものは、特開昭54−92406号公報に説明されているようなものであり、例えば、PVA樹脂80質量%、高分子水溶性樹脂15質量%、澱粉5質量%の混合組成からなり、平衡水分3%程度のものが好適である。
また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは水溶性ではあるが、水に溶解する前段階では水に膨潤して軟化しつつもフィルムとして存続することが好ましい。フィルムとして存続している状態にあるときに水圧転写を行なうことにより、水圧転写時に転写用の各層での過度の流動、変形を防止することができるからである。
水溶性フィルム1の厚さとしては、10〜100μmが好ましい。10μm以上であると、膜の均一性が良好で、かつ生産安定性が高い。一方、100μm以下であると、水に対する溶解性が適度であり、かつ印刷適性に優れる。以上の観点から、水溶性フィルム1の厚さは、30〜50μmの範囲がより好ましい。
なお、上記の水溶性フィルム1は、例えば紙、不織布、布等の水浸透性を有する基材と積層して使用することもできるが、このような水浸透性を有する基材と水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムとを積層したときには、水圧転写フィルムを水面に浮かべる前に前記水浸透性を有する基材を水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムから分離させるか、又は水面に浮かべた後の水の作用によって水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムから前記水浸透性を有する基材が分離するように構成しておくことが好ましい。
[意匠層]
本発明の水圧転写フィルム10は、水溶性フィルム1上に、意匠層5を有し、該意匠層5は、水溶性フィルム1側から、少なくとも絵柄層2及び保護層3をこの順に有する。さらに、意匠層5はプライマー層4を有していてもよく、該プライマー層4は、水溶性フィルム1と絵柄層2の間に位置することが好ましい。
[絵柄層]
本発明の水圧転写フィルムにおける絵柄層2はパターン状であってもよいし、ベタ印刷層であってもよい。
絵柄層2は、通常、バインダー樹脂と着色剤とを含有する。絵柄層2のバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体例としては、アクリルポリマーポリオール以外のアクリル樹脂、アルキッドなどのポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂(例えばポリエステルウレタン系樹脂)、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール(ブチラール系樹脂)、硝化綿などのニトロセルロース系樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、絵柄層2のバインダー樹脂として、アクリルポリマーポリオールを多量に用いると転写加工性が悪化する場合がある。したがって、アクリルポリマーポリオールは本発明の効果を阻害しない範囲で用いることはできるが、その含有量は5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくはアクリルポリマーポリオールを含有しないことである。
上記バインダー樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
本発明では、着色剤として光輝性顔料、すなわち上述のアルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料を用いた際にその効果が顕著である。
[保護層]
本発明の水圧転写フィルム10は、絵柄層2の上に保護層3が配された意匠層5を有することが特徴である。保護層3は図1に示すように、絵柄層2と接触していてもよいし、絵柄層2と保護層3の間に他の層が存在していてもよい。
本発明では、保護層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる。当該樹脂組成物及び/又はその硬化物を用いることで、活性剤組成物に含まれる溶剤から絵柄層2を保護することができる。したがって、高い光輝性を維持することが可能となり、加飾成形品に優れた意匠を付与することができる。
上記アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物の硬化物は完全硬化されたものであってもよいが、転写加工性等を考慮すると半硬化状態であることが好ましい。また、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物と該樹脂組成物の硬化物が混合された状態のものも好ましい態様である。
また、保護層3を形成する樹脂組成物には、アクリルポリマーポリオールに加えて、さらにイソシアネートを含有させることもできる。イソシアネートはアクリルポリマーポリオールの硬化剤であって、イソシアネートを含有させることで、当該樹脂組成物の少なくとも一部を硬化状態又は半硬化状態とする。このことにより、さらに活性剤組成物に含まれる溶剤からの耐性を高めることができる。
さらに、該樹脂組成物には、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどを含有させることが好ましい。保護層3を柔軟にし、加飾成形品の製造時における転写加工性を向上させることができるためである。なお、ここで「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味する。
これらのうち、特にウレタン樹脂はアクリルポリマーポリオールとの相溶性が高く、好ましい。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内で着色剤を添加してもよい。着色剤としては、前述した絵柄層で用いられるものと同様のものを用いることができる。
(アクリルポリマーポリオール)
上記アクリルポリマーポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求められる、標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜80,000であることがより好ましく、20,000〜50,000であることが特に好ましい。アクリルポリマーポリオールの分子量が1,000以上であると、活性剤組成物に含まれる溶剤に対する耐溶剤性が著しく改善し、100,000以下であるとインキ化した際に粘度が低下したり、ゲル化しにくくなるため作業性が向上する。
また、アクリルポリマーポリオールとしては、水酸基価が30〜130mgKOH/gのものが好ましく、50〜130mgKOH/gのものがより好ましく、60〜120mgKOH/gのものがさらに好ましい。アクリルポリマーポリオールの水酸基価が30mgKOH/g以上であると、水圧転写フィルム全体の過度の展伸を抑制することができる点で好ましく、130mgKOH/g以下であると、保護層3の柔軟性が良好となり、ひび割れ等の不具合が生じない。尚、上記水酸基価は、無水酢酸を用いたアセチル化法によって測定することができる。
(イソシアネート)
イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートであればよく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートなどのポリイソシアネートが用いられる。
また、必要に応じて、イソシアネート基を適当なブロック剤により保護して不活性化し、加熱によりイソシアネート基が再生するブロックイソシアネートを使用してもよい。ブロック剤としては、例えばフェノール、アルコール、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン、オキシム等、公知のブロック剤を用いてもよい。
ブロックイソシアネートを使用することにより、水圧転写フィルムにより高い成形性を付与することができ、所望形状に成形した後に成形品を加熱処理し、イソシアネート基を再生、ポリオールと反応、硬化することにより、被転写体との良好な密着性を発現できる。
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂としては、非架橋型のもの、すなわち、3次元架橋して網目状の立体的分子構造を持ったものではなく、線状の分子構造を持った熱可塑性樹脂となったものを選択することが好ましい。このような非架橋型のウレタン樹脂としては、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオールを主剤とし、イソシアネートと反応させてなる非架橋型ウレタン樹脂を使用でき、成形性、耐熱性、耐候性、低艶部分2aとの密着性等の観点から、ポリエステルポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネートとの組合せにより合成されるものが特に好ましい。通常ポリオール1分子中の水酸基数及びイソシアネート1分子中のイソシアネート基はそれぞれ平均2である。
また、ウレタン樹脂としては、ポリオール成分、ポリアミン成分及びイソシアネートの組合せより合成されるウレタンウレア樹脂が好ましく用いられ、ポリオール成分やイソシアネートとしては、上述したものを用いることができる。
ウレタン樹脂としては、ガラス転移点が100℃以下のものが好ましく、20〜100℃のものがより好ましい。ウレタン樹脂のガラス転移点が100℃以下であると、保護層3の常温における柔軟性に優れ、20℃以上であると、加熱により凝集力が著しく低下したり、保護層3が水圧転写時に水に溶解することがなく、好ましい。
保護層3を構成する樹脂組成物におけるアクリルポリマーポリオール又はアクリルポリマーポリオールに必要に応じて添加されるイソシアネートの合計量とウレタン樹脂との比率は、通常質量比で99:1〜50:50であり、95:5〜50:50であると好ましく、90:10〜60:40であるとより好ましく、80:10〜65:35であることが特に好ましい。ウレタン樹脂の比率が高いと転写加工性が向上するが、該比率が高すぎると意匠性に劣る場合がある。
保護層3は、上述のアクリルポリマーポリオール、必要に応じて添加されるイソシアネート、ウレタン樹脂、及びその他の樹脂を溶媒に溶解した塗工液を、公知の方法で塗布し、必要に応じて乾燥し、硬化して形成することができる。保護層3の厚さについては、通常、1〜25μm程度であり、好ましくは1〜10μmの範囲である。
また、上記保護層3を構成する樹脂には、物性を向上させるために、必要に応じて、成形性を損なわない程度に、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又はその硬化剤(イソシアネート等)をさらに添加することができる。
[プライマー層]
本発明においては、意匠層5がさらにプライマー層4を有し、該プライマー層4が、水溶性フィルム1と絵柄層2との間に位置することが、さらに高い輝度を得ることができる点で好ましい。該プライマー層4は、被転写体の被転写面に対し、後述するトップコート層を形成しない場合には、被転写体の最表面に位置する層である。一方、後述するようなトップコート層を設ける態様においては、プライマー層4がトップコート層と絵柄層2の間に位置し、トップコート層を形成する塗料に含まれる溶剤から絵柄層2を保護するため、より高い輝度が得られるという、特に顕著な効果を示す。
プライマー層4を形成する樹脂組成物は、上記保護層3に記載されるものと同様のものを用いることが好ましい。すなわち、アクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物であることが好ましく、さらにウレタン樹脂を含むことが好ましい。
また、その塗工方法についても、保護層3と同様の方法を用いることができ、例えば、溶媒に溶解した塗工液を公知の方法で塗布するなどして形成することができる。
プライマー層の厚さとしては、通常、0.1〜10μm程度であり、好ましくは0.5〜2μmの範囲である。
[水圧転写フィルムの製造方法]
図1に示す本発明の水圧転写フィルム10は、例えば、水溶性フィルム1の上にプライマー層を形成する工程(A)と、その上に絵柄層を形成する工程(B)と、及び絵柄層2上に保護層3を形成する工程(C)により製造することができる。
工程(A)〜(C)において、各層は公知の塗布方法又は印刷方法によって形成したり、あるいは樹脂フィルムをラミネートすることにより形成することができる。当該塗布方法としては、グラビアコート、リバースコート等が挙げられ、印刷方法としては、グラビア印刷等が挙げられる。なお、絵柄層2はパターン状の柄印刷であっても、全面ベタ印刷であってもよい。
[加飾成形品の製造方法]
本発明の水圧転写フィルムを用いて、下記の工程(a)〜(d)により加飾成形品を製造することができる。
工程(a):水圧転写フィルム10を水溶性フィルム1側が水面側に向くように水面に浮遊させる工程。
工程(b):水圧転写フィルム10の意匠層5側に活性剤組成物を塗布する工程。
工程(c):該工程(a)及び(b)を経た水圧転写フィルム10上に被転写体を押圧し、水圧によって意匠層5を被転写体の被転写面に密着させる工程。
工程(d):該被転写体の被転写面上より水溶性フィルム1を除去する脱膜工程。
また、上記の工程(d)に次いで下記の工程(e)を備えていてもよい。
工程(e):被転写体の被転写面上にトップコート層を形成する工程。
<工程(a)>
工程(a)は、工程(b)の前又は後に行うことができる。水圧転写フィルム10は、水溶性フィルム1側が水面側に向くように水面上に浮遊させる。水圧転写フィルム10を水面に浮遊させるには、枚葉の印刷物を1枚ずつ浮遊させてもよく、また水を一方向に流し、その水面上に連続帯状の水圧転写フィルム10を、連続的に供給して浮遊させてもよい。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)の前又は後に行うことができ、意匠層5に活性剤組成物を塗布する工程である。この工程で活性剤組成物を塗布することにより、絵柄層2や保護層3の少なくとも一部が溶解乃至膨潤して軟化し(活性化し)、被転写体と密着しやすくなる。なお、保護層3によって、絵柄層2が過度に溶解乃至膨潤することはない。
(活性剤組成物)
活性剤組成物は、絵柄層2や保護層3を活性化して、被転写体の被転写面に転写させる機能を有する組成物であれば特に制限はなく、また、被転写体の被転写面に各層を転写させるまで蒸発しないような性状を有することが好ましい。このような活性剤組成物としては、例えばエステル類、アセチレングリコール類、エーテル類、及び樹脂を含む組成物が好ましく挙げられる。
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、シュウ酸ジブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチルなどが好ましく挙げられる。
アセチレングリコール類としては、メトキシブチルアセテート、エトキシブチルアセテート、エチルカルビトールアセテート、プロピルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどが好ましく挙げられる。
エーテル類としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブなどが好ましく挙げられる。
また、樹脂としては、アクリレート系単量体の単独又は共重合体などの熱可塑性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フタル酸アルキッド樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂などが好ましく挙げられ、なかでも熱硬化性樹脂が好ましい。
本発明で用いられる活性剤組成物の好ましい各組成の含有量は、エステル類では5〜40質量%、アセチレングリコール類では40〜80質量%、エーテル類では5〜30質量%、及び樹脂では1〜20質量%程度である。
活性剤組成物の塗布は、グラビア印刷やスプレーコート法などにより行えばよく、その塗布量は通常1〜50g/m2であり、好ましくは3〜30g/m2であり、さらに好ましくは10〜20g/m2である。
<工程(c)>
工程(c)は、工程(a)及び工程(b)を経た水圧転写フィルム10上に被転写体を押圧し、水圧によって意匠層5(少なくとも絵柄層2及び保護層3)を被転写体の被転写面に密着させる工程である。意匠層5がさらにプライマー層4を含む場合には、絵柄層2、保護層3と共に、プライマー層4も同時に転写される。
水圧転写フィルム10を浮かべ水圧を印加するための水は、該水圧転写フィルム10の水溶性フィルム1の種類などに応じ、適宣水温を調整するのがよく、好ましくは25〜50℃程度、より好ましくは25〜35℃である。
また、本発明の水圧転写フィルム10と被転写体との転写時間は、20〜120秒程度が好ましく、より好ましくは30〜60秒程度である。
(被転写体)
被転写体としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、繊維系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂、あるいはこれらを混合した樹脂のほか、鉄、アルミニウム、銅などの金属、陶磁器、ガラス、琺瑯などのセラミックス、木材などの材料からなる構造体を使用することができる。
また、被転写面の形状は、平面形状である二次元形状であってもよいし、凹凸形状や曲面形状などの三次元形状であってもよい。これらの中で、通常、樹脂製構造体が多用される。この樹脂製構造体は、成型時において離型剤が付着するとともに、ゴミや脂分なども付着することがあり、水圧転写フィルムの各層を密着性よく転写させるために、予め脱脂液により被転写面を清浄化しておくことが好ましい。
工程(c)において、意匠層5側に塗布した活性剤組成物は被転写体と接し、該被転写体の表面を溶解させることで、本発明の水圧転写フィルム10と被転写体との密着性をさらに良好なものとすることができる。
<脱膜工程(d)>
脱膜工程(d)は、工程(c)の後に行われ、被転写体の被転写面上より水溶性フィルム1を除去する工程である。
被転写体の被転写面上に付着している水溶性フィルム1の除去は、例えば、水を用いてシャワー洗浄することで行うことができる。なお、シャワー洗浄の条件は、水溶性フィルム1を形成する材料などにより異なるが、通常は水温15〜60℃程度、洗浄時間10秒〜5分程度が好ましい。そして、工程(d)の後、被転写体を十分乾燥し水分を蒸発させれば、被転写体の被転写面に転写された低艶部分2aと高艶部分2bとの艶差によって、グロスマット意匠が付与された樹脂成形品が得られる。
<工程(e)>
工程(e)は、被転写体の被転写面上に、必要に応じトップコート層を形成する工程である。
当該工程(e)においては、前記工程(d)にて被転写体の被転写面に転写された意匠層に対し、表面強度向上、表面保護、表面艶調整などのために必要に応じ塗装を施し、透明ないし半透明のトップコート層を形成する。このトップコート層を形成する材料としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂)など、具体的にはウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ケイ素系樹脂などが用いられる。トップコート層の形成は、上記の樹脂を公知の有機溶剤に溶解して得た塗料を用いて、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り、浸漬塗装、など公知の塗装方法により行うことができる。トップコート層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは1〜25μmであり、より好ましくは1〜10μmである。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(意匠性の評価)
各例で得られた水圧転写フィルムを使用した加飾成形品について、転写表面のグロス値を、マイクログロス60度(BYKガードナー社製)を用いて測定した。数値が高いほど輝度が高く、優れた意匠である。
実施例1
(水圧転写フィルムの製造)
水溶性フィルムとして、PVAフィルム(厚さ40μm)を用い、その片面に着色剤組成物を塗工し、厚さ1μmの絵柄層(ベタ印刷層)を作成した。絵柄層を構成する着色剤組成物としては、硝化綿とアルキッドの混合物からなるバインダー100質量部に対して、平均粒径11μmのアルミニウム粉からなる光輝性顔料を35質量部含有するもの(DICグラフィックス社製「GTカラーSMシルバー)」)を用いた。
次に、該絵柄層上に、アクリルポリマーポリオール(重量平均分子量:30,000、水酸基価:80mgKOH/g、第1表中では主樹脂と記載)を含むインキを塗工し、厚さ1μmの保護層を形成した。
(加飾成形品の製造)
上述のようにして得た水圧転写フィルムの保護層表面に、下記組成の活性剤組成物を10g/m2塗布し、水溶性フィルム側が水面側を向くように水面に浮遊させた後、水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって意匠層(絵柄層及び保護層)を被転写体の被転写面に密着させる転写工程を経て、該被転写体の被転写面上より水溶性フィルムを除去する脱膜工程を行った。さらに被転写面上に2液硬化型のウレタン樹脂をスプレー塗装することにより、厚さ10μmのトップコート層を形成した。
得られた加飾成形品の意匠性を上記の方法で評価した。結果を第1表に示す。
(活性剤組成物の組成)
フタル酸系アルキッド樹脂 6質量部
マイクロシリカ(顔料) 2質量部
フタル酸ジブチル 17質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート) 60質量部
溶剤(ブチルセロソルブ) 15質量部
実施例2
実施例1において、保護層を形成する樹脂としてアクリルポリマーポリオールとウレタンウレア樹脂(ガラス転移点:40℃、水酸基価:1mgKOH/g未満、第1表では他の樹脂と記載)との質量比80:20の混合樹脂を含むインキを用いたこと以外は実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の意匠性の評価結果を第1表に示す。
実施例3
実施例2において、絵柄層2を作成する前に厚さ1μmのプライマー層を形成したこと以外は実施例2と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。プライマー層を構成する樹脂組成物は実施例2の保護層の形成に用いたものと同様のものを用いた。得られた加飾成形品の意匠性の評価結果を第1表に示す。
実施例4
実施例2において、アクリルポリマーポリオールとウレタンウレア樹脂との質量比を65:35としたこと以外は実施例2と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の意匠性の評価結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、保護層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の意匠性の評価結果を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、保護層を形成する樹脂としてウレタンウレア樹脂(ガラス転移点:40℃、水酸基価:1mgKOH/g未満)を含むインキを用いたこと以外は、実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の意匠性の評価結果を第1表に示す。
比較例3
実施例1において、保護層を形成する樹脂として硝化綿とアルキッドとの混合樹脂(硝化綿とアルキッドとの質量比5:2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水圧転写フィルム及び加飾成形品を得た。得られた加飾成形品の意匠性の評価結果を第1表に示す。
Figure 0006094124
*1 アクリルポリマーポリオール;重量平均分子量30,000、水酸基価80mgKOH/g
*2 ウレタンウレア樹脂;ガラス転移点:40℃、水酸基価:1mgKOH/g未満
*3 硝化綿・アルキッド;硝化綿とアルキッドとの質量比5:2の混合樹脂
上述のように、実施例1〜4で得られた加飾成形品は高い輝度を有し、優れた意匠性を示した。
一方、比較例1〜3で得られた加飾成形品はグロス値が低い、意匠性に劣るものであった。
本発明の水圧転写フィルムは、高い輝度を有する、意匠性に優れた加飾成形品を提供することができる。得られた加飾成形品は、自動車内装材、建材、家具類、電気製品のハウジング等として好適に利用することができる。
1 水溶性フィルム
2 絵柄層
3 保護層
4 プライマー層
5 意匠層
10 水圧転写フィルム

Claims (10)

  1. 水溶性フィルム上に意匠層を有し、該意匠層側に活性剤組成物を塗布して水圧転写法に用いる水圧転写フィルムであって、該意匠層が水溶性フィルム側から少なくとも絵柄層及び保護層をこの順に有し、かつ該保護層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる水圧転写フィルム。
  2. 前記絵柄層が光輝性顔料を含有する請求項1に記載の水圧転写フィルム。
  3. 前記保護層を構成する樹脂組成物が、さらにウレタン樹脂を含む請求項1又は2に記載の水圧転写フィルム。
  4. 前記保護層を構成する樹脂組成物中のアクリルポリマーポリオールとウレタン樹脂の質量比が95:5〜50:50である請求項3に記載の水圧転写フィルム。
  5. 前記意匠層がさらにプライマー層を有し、該プライマー層が、前記水溶性フィルムと前記絵柄層の間に位置する請求項1〜4のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
  6. 前記プライマー層がアクリルポリマーポリオールを含む樹脂組成物及び/又はその硬化物からなる請求項5に記載の水圧転写フィルム。
  7. 前記プライマー層を構成する樹脂組成物が、さらにウレタン樹脂を含む請求項6に記載の水圧転写フィルム。
  8. 前記絵柄層を構成する樹脂がアクリルポリマーポリオール以外の樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の水圧転写フィルム。
  9. 前記絵柄層を構成する樹脂が、アクリルポリマーポリオール以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、及び硝化綿から選択される1種以上を含む請求項8に記載の水圧転写フィルム。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の水圧転写フィルムを用い、かつ、下記の工程(a)〜(d)を含むことを特徴とする加飾成形品の製造方法。
    工程(a):水圧転写フィルムを水溶性フィルム側が水面側に向くように水面に浮遊させる工程。
    工程(b):水圧転写フィルムの意匠層側に活性剤組成物を塗布する工程。
    工程(c):該工程(a)及び(b)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって意匠層を被転写体の被転写面に密着させる工程。
    工程(d):該被転写体の被転写面上より水溶性フィルムを除去する脱膜工程。
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