JP5803308B2 - 水圧転写フィルム及びこれを用いた加飾成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、凹凸による立体面や曲面を有する成型体の表面に転写層を形成するのに好適な水圧転写フィルム及びその製造方法、ならびにこれを用いた加飾成形品の製造方法に関する。
自動車内装品、家電製品又はOA機器等には表面に木目調や金属調(金属光沢)などの装飾が施された成型品が利用されている。これらの成型品は複雑な三次元形状を有するものが多く、従来、その複雑な形状からなる成型品に意匠性の高い装飾を簡便に施す方法が検討されている。
こうした装飾方法として、水圧を利用した水圧転写法が知られている。この水圧転写法は、水溶性あるいは水膨潤性の水溶性フィルムに、所望の装飾層を印刷した転写フィルムを用意し、該転写フィルムの装飾層に、有機溶剤からなる活性剤組成物を塗布して、該装飾層を膨潤、粘着化させる(これを活性化という)。その前又は後に、前記転写フィルムを転写用の装飾層(印刷層)面を上面にして、水面上に浮遊させ、次いで、該転写フィルム上に被転写体となる物品を押圧して、水圧によって転写フィルムを被転写体の装飾処理をすべき被転写面に密着させた後、水溶性フィルムを除去して装飾層を転写する(例えば、特許文献1参照)。
かかる、水圧転写法は、クリア塗装感等の「深み」や、立体面への適応性及び高品質な柄表現が出来る等の点で、優れた曲面加飾法であるが、これに更に「照り」等の光輝性も加えて、より優れた高級感を付与しようとする試みがなされている。例えば、特許文献2においては、パール感を呈する印刷模様層を形成するため、被転写体である合成樹脂成形体に予めガラス繊維を添加し、その合成樹脂成形体の表面に水圧転写法により印刷模様層を転写することが提案されている。しかし、この方法では、合成樹脂成形体の材質が制限され、合成樹脂成形体作製が煩雑であった。
上記の問題を解決するため、特許文献3は水圧転写シートにおける改良を試み、水溶性フィルム上の硝化綿・アルキッド系の透明樹脂層と、該透明樹脂層上の蒸着金属層とからなり、該蒸着金属層と前記透明樹脂層との間で該透明樹脂層にエンボスが施されている水圧転写シートが提案されている。
しかしながら、蒸着金属層は光輝性が高いという優れた性質を有するが、水圧転写シートの透明樹脂層を膨潤させる際に、透明樹脂層と同じように延びないため、不均一な割れ(クラック)が生じ、かえって美感を損ねるという問題があった。
特開昭54−33115号公報 特開平4−107182号公報 特開2001−328398号公報
本発明は、このような状況下で、水圧転写時に不均一な割れ(クラック)が生じにくく、転写性が良好で、被転写体に優れた光輝性を付与する水圧転写フィルム、及び該フィルムを用いた加飾成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、転写調整層に特定の樹脂を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。そして、該金属薄膜層とその隣接層との間にエンボス等の凹凸を設けないことにより、さらに転写性が改良されることも見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有する水圧転写フィルムであって、該転写調整層がポリビニルピロリドン樹脂を含むことを特徴とする水圧転写フィルム、
(2)前記転写調整層と前記金属薄膜層との界面が平滑である上記(1)の水圧転写フィルム、及び
(3)下記の工程(a)〜(c)を順に有する加飾成形品の製造方法、
工程(a):水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有し、該転写調整層がポリビニルピロリドン樹脂を含むことを特徴とする水圧転写フィルムを該水溶性フィルム側が水面側に向くように水面に浮遊させる前又は後に、該金属薄膜層に活性剤組成物を塗布する活性剤塗布工程
工程(b):該工程(a)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって該金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程
工程(c)該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルム及び転写調整層を除去する脱膜工程
を提供するものである。
本発明の水圧転写フィルムを用いると、水圧転写時において、金属薄膜層に微細な割れ(クラック)が均一に発生するので、不均一な割れ(クラック)が生じにくく、水圧転写を行なうことができ、高い光輝性を有する加飾成形品を提供することができる。
また、水圧転写フィルムの転写調整層と金属薄膜層との界面が平滑で、水溶性フィルムの特性が変化しない状態であれば、金属薄膜層に、より安定して、より均一な微細な割れ(クラック)が発生し、転写性がさらに向上して、さらに高い光輝性を享受することができる。
本発明の水圧転写フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の水圧転写フィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
本発明の水圧転写フィルム1は、水溶性フィルム2と、水溶性フィルム2上の転写調整層3と、転写調整層3上の金属薄膜層4とを有する水圧転写フィルム1であって、転写調整層3がポリビニルピロリドン樹脂を含むことを特徴とする。
[水溶性フィルム]
本発明に係る水溶性フィルムとしては、水溶性又は水膨潤性を有するものであれば良く、従来水圧転写フィルムとして一般に使用されている水溶性フィルムの中から、適宜選択して用いることができる。
水溶性フィルムを構成する樹脂としては、例えばポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の各種水溶性ポリマーが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合されて用いられてもよい。なお、水溶性フィルムには、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。
上記の水溶性フィルムのうち、特に生産安定性と水に対する溶解性及び経済性の点から、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムが好ましい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、PVA以外に、澱粉やゴム等の添加剤を含有していてもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコールの重合度、ケン化度、及び澱粉やゴム等の添加剤の配合量等を変えることにより、水溶性フィルムに対して転写用の印刷層を形成する際に必要な機械的強度、取り扱い中の耐湿性、水面に浮かべてからの吸水による柔軟化の速度、水中での延展又は拡散に要する時間、転写工程での変形のし易さ等を適宜調節することができる。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる水溶性フィルムとして好適なものは、特開昭54−92406号公報に説明されているようなものであり、例えば、PVA樹脂80質量%、高分子水溶性樹脂15質量%、澱粉5質量%の混合組成からなり、平衡水分3%程度のものが好適である。
また、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは水溶性ではあるが、水に溶解する前段階では水に膨潤して軟化しつつもフィルムとして存続することが好ましい。フィルムとして存続している状態にあるときに水圧転写を行なうことにより、水圧転写時の転写用の印刷層の過度の流動、変形を防止することができるからである。
水溶性フィルム2の厚さとしては、10〜100μmが好ましい。10μm以上であると、膜の均一性が良好で、かつ生産安定性が高い。一方、100μm以下であると、水に対する溶解性が適度であり、かつ印刷適性に優れる。以上の観点から、水溶性フィルムの厚さは、20〜60μmの範囲がより好ましい。
なお、上記の水溶性フィルムは、例えば紙、不織布、布等の水浸透性を有する基材と積層して使用することもできるが、このような水浸透性を有する基材と水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムとを積層したときには、水圧転写フィルムを水面に浮かべる前に前記水浸透性を有する基材を水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムから分離させるか、又は水面に浮かべた後の水の作用によって水溶性又は水膨潤性を有する水溶性フィルムから前記水浸透性を有する基材が分離するように構成しておくことが好ましい。
[転写調整層]
本発明に係る転写調整層3は、ポリビニルピロリドン樹脂を含むことを要する。転写調整層3は、ポリビニルピロリドン樹脂単独からなるものであっても良いし、ポリビニルピロリドン樹脂を含む樹脂組成物であっても良い。
ポリビニルピロリドン樹脂は、N−ビニル−2−ピロリドンの重合した高分子化合物であり、水に溶解し、良好な水膨潤性を有する。このポリビニルピロリドン樹脂を用いることにより、水圧転写時に転写調整層3が適度な速度で膨潤するので、金属薄膜層4は不均一に割れ(クラック)が生じにくく、均一な微細な割れ(クラック)を生じることとなる。これにより、被転写体である加飾成形品は優れた光輝性を奏することができる。
また、ポリビニルピロリドン樹脂は、水膨潤速度が早過ぎないので、水圧転写フィルムを水面上に浮遊させた後、活性剤塗布工程(a)の適度な時間を確保して被転写体に転写することができる。
上記のポリビニルピロリドン樹脂を含む樹脂組成物には、ポリビニルピロリドン樹脂に、所望により、上記の水溶性ポリマーが添加されても良いし、マンナン、キサンタンガム、グアーガム等のゴム成分が添加されていてもよい。これらの添加により、水膨潤速度を所望する水圧転写工程に最適になるように調整することができる。
転写調整層3の厚さとしては、0.5〜20μmが好ましい。この範囲であれば、金属薄膜層4に微細な割れ(クラック)がさらに均一に生じ、活性剤塗布工程(a)のさらに好適な時間を確保して、より好適に被転写体に転写することができる。これらの観点から、1〜6μmがより好ましい。
本発明の水圧転写フィルム1の転写調整層3と金属薄膜層4との界面は平滑であることが好ましい。
ここで、「平滑である」とは、転写調整層3と金属薄膜層4との界面の表面粗さRzが1.8μm以下であることをいう。1.8μm以下であれば、割れ(クラック)を均一に生じさせる観点から好ましい。
ここで、表面粗さRzとは、JIS B 0601:2001の附属書1(参考)に規定された「十点平均粗さRz」をいい、旧JIS規格 JIS B 0601:1994に基づき測定される。
[金属薄膜層]
本発明に係る金属薄膜層4の材料としては、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、銅、金、銀、スズ、亜鉛、黄銅、ステンレス等の金属、合金、金属酸化物等を使用することができる。金属酸化物としては酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が挙げられる。これらのうち、アルミニウムが割れ(クラック)を均一に生じさせる観点から好ましい。金属薄膜層4の厚さは通常100〜800Åであることが好ましく、200〜600Åであることがさらに好ましい。金属薄膜層4の厚さが上記範囲内であると、割れ(クラック)幅として1〜120μmという微細な割れ(クラック)を均一に生じさせることができる。
[絵柄印刷層]
本発明においては、所望により、絵柄印刷層(図示しない)を転写調整層3と金属薄膜層4との間に設けることができる。絵柄印刷層のバインダー樹脂は転写調整層3と同じ樹脂を用いることが好ましい。着色剤は、従来から通常使用されているものが用いられる。
[水圧転写フィルムの製造方法]
本発明の水圧転写フィルム1の製造方法は、水溶性フィルム2の上にポリビニルピロリドン樹脂を含む転写調整層3を積層する工程(A)と、該転写調整層3表面に金属薄膜層4を形成する工程(B)とを有する。
工程(A)において、転写調整層3は、公知の塗布方法又は印刷方法、水溶性フィルムとの共押出法、あるいは樹脂フィルムを水溶性フィルム2にラミネートすることにより水溶性フィルム2の上に積層される。
公知の塗布方法としては、グラビアコート、リバースコート等が挙げられ、公知の印刷方法としては、グラビア印刷等が挙げられる。
工程(B)において、金属薄膜層4は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の金属蒸着方法、あるいは上記の金属薄膜層4を形成する金属種の金属粉末とバインダー樹脂とを含む金属ペーストを塗布し、乾燥させることにより形成することができる。本発明においては、金属蒸着方法により形成することが好ましい。
なお、所望により、工程(A)と工程(B)との間に絵柄印刷層を設ける工程(C)を設けても良い。但し、工程(C)を設けた場合は、工程(C)の後、絵柄印刷層表面を熱プレス処理する、平滑ロールに通過させる等により、絵柄印刷層表面を平滑にする平滑化処理をすることが望ましい。
[加飾成形品の製造方法]
本発明の加飾成形品の製造方法は、水溶性フィルム2、転写調整層3、及び金属薄膜層4を有する本発明の水圧転写フィルム1を該水溶性フィルム2側が水面側に向くように水面に浮遊させて該金属薄膜層4を被転写体に転写する製造方法であって、該水圧転写フィルム1を水面に浮遊させる前又は後に、該金属薄膜層4に活性剤組成物を塗布する活性剤塗布工程(a)、該工程(a)を経た水圧転写フィルム1上に被転写体を押圧し、水圧によって該金属薄膜層4を被転写体の被転写面に密着させる工程(工程(b))、及び該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルム2及び転写調整層3を除去する脱膜工程(c)を有することを特徴とするものである。
<活性剤塗布工程(a)>
活性剤塗布工程(a)は、水圧転写フィルム1を水面に浮遊させる前又は後に、金属薄膜層4に活性剤組成物を塗布する工程である。この工程で、金属薄膜層4に活性剤を塗布することにより、該金属薄膜層4の表面が荒れ、被転写体と密着しやすくなる。水圧転写フィルム1の水溶性フィルム2側が水面側に向くように水面上に浮遊させる。水圧転写フィルム1を水面に浮遊させるには、枚葉の印刷物を1枚ずつ浮遊させてもよく、また水を一方向に流し、その水面上に連続帯状の水圧転写フィルムを、連続的に供給して浮遊させてもよい。
(活性剤組成物)
活性剤組成物は、水圧転写フィルム1における転写用の金属薄膜層4を荒らすことができ、かつ後述する被転写体の表面を溶解させる機能を有する組成物であれば特に制限はなく、また、被転写体の被転写面に金属薄膜層4を転写させるまで蒸発しないような性状を有することが好ましい。このような活性剤組成物としては、例えばエステル類、アセチレングリコール類、エーテル類、及び樹脂を含む組成物が好ましく挙げられる。
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、シュウ酸ジブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソオクチルなどが好ましく挙げられる。
アセチレングリコール類としては、メトキシブチルアセテート、エトキシブチルアセテート、エチルカルビトールアセテート、プロピルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどが好ましく挙げられる。
エーテル類としては、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、イソアミルセロソルブなどが好ましく挙げられる。
また、樹脂としては、アクリレート系単量体の単独又は共重合体などの熱可塑性樹脂や、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フタル酸アルキッド樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂などが好ましく挙げられ、なかでも熱硬化性樹脂が好ましい。
本発明で用いられる活性剤組成物の好ましい各組成の含有量は、エステル類は5〜40質量%、アセチレングリコール類は40〜80質量%、エーテル類は5〜30質量%、及び樹脂は1〜20質量%程度である。
活性剤組成物の塗布は、スプレーコート法などにより行えばよく、その塗布量は通常1〜50g/m2であり、好ましくは3〜30g/m2であり、さらに好ましくは10〜20g/m2である。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)を経た水圧転写フィルム1上に被転写体を押圧し、水圧によって該金属薄膜層4を被転写体の被転写面に密着させる工程である。
水圧転写フィルム1を浮かべ水圧を印加するための水は、該水圧転写フィルム1の水溶性フィルム2の種類などに応じ、適宣水温を調整するのがよく、好ましくは25〜50℃程度、より好ましくは25〜35℃である。
また、本発明の水圧転写フィルム1と被転写体との転写時間は、20〜120秒程度が好ましく、より好ましくは30〜60秒程度である。クラック幅を広くするには、塗布量を多めにすればよく、水温は高めにすればよく、また転写時間は長めとすればよい。ここで、転写時間とは、本発明の転写フィルム1を水に浮遊させてから、被転写体への転写が完了するまでの時間のことである。
(被転写体)
本発明で用いられる被転写体としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、繊維系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂、あるいはこれらを混合した樹脂のほか、鉄、アルミニウム、銅などの金属、陶磁器、ガラス、琺瑯などのセラミックス、木材などの材料からなる構造体を使用することができる。
また、被転写面の形状は、平面形状である二次元形状であってもよいし、凹凸形状や曲面形状などの三次元形状であってもよい。これらの中で、通常、樹脂製構造体が多用される。この樹脂製構造体は、成型時において離型剤が付着するとともに、ゴミや脂分なども付着することがあり、水圧転写フィルムの印刷層を密着性よく転写させるために、予め脱脂液により被転写面を清浄化しておくことが好ましい。
工程(b)において、金属薄膜層4上に塗布した活性剤組成物は被転写体と接し、該被転写体の表面を溶解させることで、本発明の転写フィルム1と被転写体との密着性は良好なものとなる。
<脱膜工程(c)>
脱膜工程(c)は、被転写体の被転写面に密着した印刷物の水溶性フィルム2及び転写調整層3を除去する工程である。
水溶性フィルム2及び転写調整層3の除去は、例えば、水を用いてシャワー洗浄することで行うことができる。この工程(c)により、被転写面に付着している水溶性フィルム2及び転写調整層3は除去される。なお、シャワー洗浄の条件は、水溶性フィルム2や転写調整層3を形成する材料などにより異なるが、通常は水温15〜60℃程度、洗浄時間10秒〜5分程度が好ましい。そして、工程(c)の後、被転写体を十分乾燥し水分を蒸発させれば、被転写体の被転写面に転写された金属薄膜層によって、所望の意匠が付与された樹脂成形品が得られる。
<工程(d)>
工程(d)は、所望により転写された金属薄膜層上に、保護膜を形成する工程である。
工程(d)においては、前記工程(c)にて被転写体の被転写面に転写された金属薄膜層に対し、表面強度向上、表面保護、表面艶調整などのために必要に応じ塗装を施し、保護膜を形成することができる。保護膜としては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など、具体的にはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂などを含む樹脂組成物により形成されるものが好ましく挙げられる。
保護膜は、これらの樹脂組成物を塗装し、硬化させて形成することができる。塗装方法としては、スプレー塗装、静電塗装、刷毛塗り、浸漬塗装など公知の方法を用いることができる。また、硬化させる方法としては、使用する樹脂組成物により適宜選定すればよく、熱可塑性樹脂を用いる場合は数日間養生すればよく、熱硬化性樹脂を用いる場合は熱処理を行えばよく、紫外線硬化性樹脂を用いる場合は適切な紫外線を照射して行えばよい。
このようにして得られた加飾成形品は、その表面、すなわち金属薄膜層上にクラック(割れ)幅として1〜120μmという微細なクラック(割れ)を有するため、優れた光輝性を有する。
転写の際にクラック(割れ)幅として1〜120μmという微細なクラック(割れ)を均一に生じさせ、かつクラック(割れ)幅を調整するには、転写調整層3を形成する樹脂の選定及びその厚さ、金属薄膜層4の厚さの選定などにより行うことができる。例えば、クラック幅を広めにしたい場合は、金属薄膜層4の厚さをより厚くすればよく、また転写調整層3の厚さを厚くすればよい。
また、クラック幅は、水圧転写方法の諸条件、例えば活性剤組成物の塗布量、水圧転写フィルム1を浮遊させる水の温度、該フィルム1と被転写体との転写時間などによっても調整することができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた水圧転写フィルムを使用した加飾成形品について以下に示す性能評価を行った。
(1)転写調整層と金属薄膜層との界面の十点平均粗さRz(μm)
JIS B 0601:2001の附属書1(参考)に規定された「十点平均粗さRz」をいい、旧JIS規格 JIS B 0601:1994に基づき、株式会社東京精密製、表面粗さ計「E−35A」を用い測定した。
(2)金属薄膜層の割れ(クラック)状態
水圧転写フィルムの金属薄膜層表面に、下記組成の活性剤組成物を3g/m2塗布し、スムージングロールで該活性剤組成物を均一にし、転写調整層3及び金属薄膜層4の活性剤塗布工程(a)を経た後、水圧転写フィルムに被転写体を押圧し、水圧によって金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程(b)を経て、脱膜工程(c)の後に得られた加飾成形品の表面状態を顕微鏡により倍率100倍に拡大して観察し下記の基準で評価した。
(活性剤組成物の組成)
フタル酸系アルキッド樹脂 6質量部
マイクロシリカ(顔料) 2質量部
フタル酸ジブチル 17質量部
溶剤(ブチルカルビトールアセテート) 60質量部
溶剤(ブチルセロソルブ) 15質量部
(評価基準)
◎: 非常に均一な微細クラックであった。
○: ほぼ均一な微細クラックであった。
△: 微細クラックであったが、大きさが不均一であった。
×: 大きなクラックが発生した。
(3)輝度感
脱膜工程(c)の後に得られた加飾成形品の表面状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
5: 金属特有の高い輝度感があった。
4: 金属特有の輝度感が認められたが、高い輝度感ではなかった。
3: 金属特有の輝度感が認められたが、低い輝度感であった。
2: 輝度感が低かった。
1: 輝度感が認められなかった。
(4)意匠性
脱膜工程(c)の後に得られた加飾成形品の表面状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎: 非常に良好であった。
○: 良好であった。
△: 若干悪かった。
×: 悪かった。
(5)転写性
上記脱膜工程(c)の後に得られた加飾成形品の表面状態を目視により観察し下記の基準で評価した。
○: 均一に凹凸模様が転写されており、模様の歪みがない。
△: 転写された凹凸模様の一部に模様歪みがあった。
×: 転写された凹凸模様の大部分に模様歪みがあった。又は金属薄膜層が延びず、転写できなかった。
実施例1
水溶性フィルムとして、PVAフィルム(厚さ30μm)を用い、その片面にポリビニルピロリドン樹脂を塗布量3g/m2で、グラビアコートし、厚さ2μmの転写調整層を設けた。転写調整層表面の十点平均粗さRzは0.8μmであった。次いで、真空蒸着方法にて、転写調整層の上にアルミニウム金属を厚さ350Åの金属薄膜層を形成した。得られた水圧転写フィルムを上記の方法で性能評価した。結果を第1表に示す。
実施例2
水溶性フィルムとして、PVAフィルム(厚さ30μm)を用い、その片面にポリビニルピロリドン樹脂を塗布量3g/m2で、グラビアコートし、厚さ2μmの転写調整層を設けた。次に、エンボス加工装置を用いて、圧力50ton/m、温度110℃で転写調整層の表面側からエンボス加工して凹凸模様を形成した。このときの転写調整層表面の十点平均粗さRzは11.1μmであった。次いで、真空蒸着方法にて、転写調整層の凹凸模様の上にアルミニウム金属を厚さ350Åの金属薄膜層を形成した。得られた水圧転写フィルムを上記の方法で性能評価した。結果を第1表に示す。
比較例1
転写調整層を設けず、その代わりに下記のパールインキを塗布量3g/m2で、グラビアコートし、厚さ2μmのパールインキ層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして水圧転写フィルムを得た。得られた水圧転写フィルムの金属薄膜層の割れ(クラック)状態と転写性を上記の方法で性能評価した。結果を第1表に示す。
(パールインキの組成)
(1)着色剤(ジスアゾイエロー、モノアゾレッド、シアニンブルー、カーボンブラック及び炭酸カルシウムの混合物) 10質量部
(2)バインダー成分
硝化綿 10質量部
アルキッド樹脂 5質量部
(3)溶剤(トルエン) 75質量部
比較例2
パールインキを用いず、その代わりに下記のシルバーインキを塗布量3g/m2で、グラビアコートし、厚さ2μmのシルバーインキ層を設けたこと以外は、比較例1と同様にして水圧転写フィルムを得た。得られた水圧転写フィルムの金属薄膜層の割れ(クラック)状態と転写性を上記の方法で性能評価した。結果を第1表に示す。
(シルバーインキの組成)
(1)アルミニウム箔片 10質量部
(2)バインダー成分
硝化綿 10質量部
アルキッド樹脂 5質量部
(3)溶剤(トルエン) 75質量部
比較例3〜5
比較例3においては転写調整層の材料をウレタン樹脂に変更し、比較例4においては転写調整層の材料を硝化綿樹脂に変更し、比較例5においては転写調整層の材料を塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、「塩酢ビ樹脂」と略称する。)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3〜5の水圧転写フィルムを得た。得られた水圧転写フィルムを上記の方法で性能評価した。結果を第1表に示す。
Figure 0005803308
本発明の水圧転写フィルムは、高い光輝性を有し、意匠性に優れた加飾成形品を提供することができる。得られた加飾成形品は、自動車内装材、建材、家具類、電気製品のハウジング等として好適に利用することができる。
1 水圧転写フィルム
2 水溶性フィルム
3 転写調整層
4 金属薄膜層

Claims (4)

  1. 水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有する水圧転写フィルムであって、該転写調整層がポリビニルピロリドン樹脂を含むことを特徴とする水圧転写フィルム。
  2. 前記転写調整層と前記金属薄膜層との界面の表面粗さRzが1.8μm以下である請求項1に記載の水圧転写フィルム。
  3. 下記の工程(a)〜(c)を順に有する加飾成形品の製造方法。
    工程(a):水溶性フィルムと、該水溶性フィルム上の転写調整層と、該転写調整層上の金属薄膜層とを有し、該転写調整層がポリビニルピロリドン樹脂を含むことを特徴とする水圧転写フィルムを該水溶性フィルム側が下向きで水面側に向くように水面に浮遊させる前又は後に、該金属薄膜層に活性剤組成物を塗布する活性剤塗布工程
    工程(b):該工程(a)を経た水圧転写フィルム上に被転写体を押圧し、水圧によって該金属薄膜層を被転写体の被転写面に密着させる工程
    工程(c):該被転写体の被転写面に密着した水溶性フィルム及び転写調整層を除去する脱膜工程
  4. 工程(c)の後に、さらに下記の工程(d)を有する請求項3に記載の加飾成形品の製造方法。
    工程(d):金属薄膜層上に、保護膜を形成する工程
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