JP6090306B2 - 全固体二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、全固体リチウムイオン二次電池等の全固体二次電池に関する。
近年、リチウム電池等の二次電池は、携帯情報端末や携帯電子機器などの携帯端末に加えて、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車など、様々な用途での需要が増加している。
二次電池の用途が広がるに伴い、二次電池に対して更なる安全性の向上が要求されている。安全性を確保するために、液漏れの危険があり、引火性が高く漏洩時の発火危険性が非常に高い有機溶媒電解質に代えて、無機固体電解質を用いたいわゆる全固体二次電池が検討されている。
特許文献1には、硫化物系無機固体電解質の表面をフッ素含有シラン化合物でコーティングした固体電解質を用いた全固体二次電池が開示されている。このような固体電解質を用いることで、電池の耐湿性が向上する旨が記載されている。
特開2010−33732号公報
しかしながら、特許文献1に代表されるような従来提案されている全固体二次電池では、電極活物質層と集電体との密着性が十分ではなく、高温で充放電を繰り返す間に、電極活物質層と集電体との間で剥離が起り、高温容量維持率等の高温保持特性が低下するおそれがあることがわかった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、高温サイクル後であっても電極活物質層と集電体との密着性が高く、高温保持特性に優れる全固体二次電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意検討した結果、全固体二次電池の高温保持特性等の電池特性が低下する原因が、高温サイクル時、またはその後の電極活物質層と集電体との間の密着性低下にあることを見出した。電極活物質層と集電体とは、電極活物質層に含まれるバインダーの粘着性により密着しているが、高温条件下で充放電サイクルを繰り返すことで、バインダーの粘着性が低下し、電池特性が低下すると考えられる。そこで、電極活物質層に含まれるバインダー(重合体)と集電体との間に化学結合を形成して、電極活物質層と集電体とをより強固に密着させることを着想した。
また、高温保持特性等の劣化の要因のひとつが、バインダー中の炭素−炭素不飽和結合が酸化還元に対して不安定であることをつきとめた。そこで、さらに検討を進めた結果、バインダーとして、ヨウ素価が20mg/100mg以下であり、炭素−炭素不飽和結合量の少ない重合体を用いることにより、高温保持特性が向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)集電体と正極活物質層とを有する正極と、集電体と負極活物質層とを有する負極と、固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも一層に、集電体表面と結合する官能基を含有し、ヨウ素価が20mg/100mg以下である重合体が含まれる、全固体二次電池。
(2)前記集電体表面と結合する官能基が、アルコキシシリル基である(1)に記載の全固体二次電池。
(3)前記重合体における、前記集電体表面と結合する官能基の含有割合が、0.01〜10質量%である(1)または(2)に記載の全固体二次電池。
(4)前記重合体が、脂環式構造単位を含有する重合体に該官能基を導入してなる重合体である(1)〜(3)のいずれかに記載の全固体二次電池。
(5)前記脂環式構造単位における脂環式構造が、芳香環を水素化した構造である(4)に記載の全固体二次電池。
(6)前記脂環式構造単位を含有する重合体が、ビニル芳香族系単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を水素化して得られるビニル脂環式炭化水素系重合体であって、前記共重合体における全ての炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化した共重合体である(4)または(5)に記載の全固体二次電池。
(7)前記脂環式構造単位を含有する重合体が、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した単位を主成分とする重合体ブロック(A)と、鎖状共役ジエン化合物の炭素−炭素不飽和結合を水素化した繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体である(4)〜(6)のいずれかに記載の全固体二次電池。
(8)重合体ブロック(A)のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が、20:80〜60:40である(7)に記載の全固体二次電池。
(9)前記脂環式構造単位を含有する重合体の重量平均分子量が、30,000〜200,000である(4)〜(8)のいずれかに記載の全固体二次電池。
(10)正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層の少なくとも一層に無機固体電解質が含まれ、該無機固体電解質が、LiSとPとからなる、硫化物ガラスおよび/または硫化物ガラスセラミックスである(1)〜(9)のいずれかに記載の全固体二次電池。
本発明によれば、電極活物質層に配合されるバインダー成分として、集電体表面と結合する官能基(以下、単に「官能基」と記載することがある)を含有し、ヨウ素価が20mg/100mg以下である重合体を用いることで、電極活物質層と集電体との間に化学的結合が形成され、電極活物質層と集電体とが強固に密着し、高温サイクル後でも密着性が保たれ、酸化還元に対して安定性が高く、高温保持特性等の電池特性の低下が起らない全固体二次電池を提供できる。また、特に、集電体表面と結合する官能基を含有する重合体の母体として、脂環式構造単位を含有してなる重合体を用いることで、無機固体電解質の分散性が向上する。その結果、スラリー組成物の塗工性が良好になり、優れた柔軟性や強度を有する電極活物質層や固体電解質層を得ることができ、全固体二次電池の高温保持特性がさらに向上する。
本発明の全固体二次電池は、集電体と正極活物質層とを有する正極と、集電体と負極活物質層とを有する負極と、固体電解質層とを有し、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも一層に、好ましくは正極活物質層及び負極活物質層に、集電体表面と結合する官能基を含有し、ヨウ素価が20mg/100mg以下である重合体を含む。
(集電体表面と結合する官能基を含有する重合体)
本発明においてバインダーの主成分として用いられる重合体は、集電体表面と結合する官能基を含有し、ヨウ素価が20mg/100mg以下の重合体(以下、単に「官能基含有重合体」と記載することがある)である。
集電体となる金属箔の表面は、一般に、僅かに酸化された状態であったり、または僅かに金属水酸化物が形成された状態にあると考えられる。したがって、集電体表面と結合する官能基は、これらの金属自体や、金属酸化物あるいは金属水酸化物と結合しうる官能基を意味する。このような集電体表面と結合する官能基は、集電体の材質や表面状態により適宜に選定されるが、汎用性の高い官能基として、アルコキシシリル基が好ましく用いられる。
アルコキシシリル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基を有する、モノアルコキシシル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。これらの中でも、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、トリプロポキシリル等のトリアルコキシシリル基が好ましく、トリメトキシシリル、トリエトキシシリルがより好ましい。
これらのアルコキシシリル基などの集電体表面と結合する官能基は、1種のみであってもよく、また2種以上が重合体中に含まれていてもよい。重合体における該官能基の含有割合は特に限定はされないが、電極活物質層と集電体表面との密着性を向上させるため、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜8質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%である。重合体における該官能基の含有割合が過少であると、電極活物質層と集電体表面との間で十分な結合が形成されず、目的とする密着性が得られないことがある。一方、官能基量が過多であると、集電体表面と結合しない官能基が残留し、集電体表面と電極活物質層との密着を阻害することがある。
また、官能基含有重合体のヨウ素価は、20mg/100mg以下であり、好ましくは15mg/100mg以下、より好ましくは10mg/100mg以下の範囲にある。ヨウ素価が20mg/100mgを超えると、官能基含有重合体に含まれる不飽和結合により酸化電位での安定性が低く電池の高温サイクル特性に劣る。また、ヨウ素価の下限は0mg/100mg以上である。官能基含有重合体のヨウ素価が上記範囲に含まれることにより、優れた高温サイクル特性を示す。なお、ヨウ素価はJIS K 6235;2006に従って求められる。
前記官能基含有重合体は、バインダーとして使用可能な各種の重合体を母体とし、母体となる重合体に、集電体表面と結合する官能基を導入して得られる。母体となる重合体(以下、「母体重合体」と記載することがある)中に、官能基を導入するには、官能基を含有する化合物と母体重合体とを反応させることが簡便である。官能基がアルコキシシリル基である場合、官能基含有化合物としてシランカップリング剤が、入手および取扱いにおいて容易であるため、好ましく用いられる。
アルコキシシリル基を含有するシランカップリング剤と、母体重合体とを反応させることで、母体重合体中にアルコキシシリル基を導入できる。この反応はシランカップリング剤および母体重合体の種類により様々であるが、例えばシランカップリング剤として、ビニル基やアリル基を含むシランカップリング剤を用いる場合には、過酸化物を用いた反応により、母体重合体中にアルコキシシリル基を導入することができる。好ましいシランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリプロポキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−ノルボルネン−5−イルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物から選択される少なくとも1種類のものを用いることができる。本発明においては、中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好適に用いられる。
母体重合体は、前記官能基を導入でき、バインダーとして使用可能な各種の重合体が特に限定はされることなく用いられる。使用可能な重合体としては、例えばジエン系重合体、アクリル系重合体、シリコーン系重合体、ウレタン系重合体、および炭素−炭素不飽和結合量が少なく、脂環式構造単位を含有してなる重合体(以下において、「脂環式構造含有重合体」と記載することがある。)が挙げられ、なかでも脂環式構造含有重合体が母体重合体として好ましく用いられる。
本発明において、脂環式構造含有重合体とは、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造単位を含有する重合体である。重合体の主鎖及び側鎖のいずれに脂環式構造単位を有していてもよいが、重合体の強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造単位を含有するものがより好ましい。したがって、好ましい官能基含有重合体は、集電体表面と反応する官能基と脂環式構造単位とを含有する。
脂環式構造としては、芳香環を水素化した構造であることが好ましく、具体的には、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられ、重合体の熱安定性等の観点からシクロアルカン構造がより好ましい。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲にある。炭素原子数がこの範囲にあると、得られる重合体の耐熱性に優れる。
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、重合体の種類に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは25〜55質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、得られる重合体の耐熱性に優れる。なお、脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、耐熱性を低下させるものでなければ特に制限されない。
脂環式構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、得られる重合体の耐熱性、強度等の点から、ノルボルネン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体及びこれらの水素化物が好ましく、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体及びこれらの水素化物がより好ましく、ビニル脂環式炭化水素系重合体及びその水素化物が特に好ましい。
(1)ノルボルネン系重合体 ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
開環重合によって得られるノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体及び、ノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の付加重合体及び、ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、重合体の耐熱性、強度等の観点から好ましい。
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。水素化触媒としては、重合体鎖の切断を防止し、低温・低圧で水素化可能であることから、ニッケルを含む触媒が好ましい。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
(2)単環の環状オレフィン系重合体 単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体 環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体 ビニル脂環式炭化水素系重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;ビニル脂環式炭化水素系単量体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体の水素化物;などが挙げられる。これらの中でも、ビニル芳香族系単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体の水素化物が好ましく、ビニル芳香族系単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体とのブロック共重合体の水素化物がより好ましい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
また、脂環式構造含有重合体が、ビニル芳香族系単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を水素化して得られるビニル脂環式炭化水素重合体である場合には、前記共重合体における全ての炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化した共重合体であることが好ましく、全ての炭素−炭素不飽和結合の93%以上を水素化した共重合体であることがより好ましく、全ての炭素−炭素不飽和結合の95%以上を水素化した共重合体であることが特に好ましい。このような重合体を用いることで、本発明の全固体二次電池の高温保持特性を向上させることができる。なお、本発明において、全ての炭素−炭素不飽和結合には、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合と、芳香環の炭素−炭素不飽和結合とが含まれる。
上記のブロック共重合体の水素化物(以下、「ブロック共重合体水素化物」と記載することがある。)は、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した単位を主成分とする重合体ブロック(A)と、鎖状共役ジエン化合物の炭素−炭素不飽和結合を水素化した繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体であることが好ましい。このような重合体を用いることで、スラリー組成物の分散性を向上させることができる。
また、ブロック共重合体水素化物は、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化していない単位(水素化されていない芳香環単位)を、好ましくは5質量%未満、より好ましくは3〜0質量%含む。このような重合体を用いることで、本発明の全固体二次電池の高温保持特性を向上させることができる。
本発明において鎖状共役ジエン化合物とは、ビニル芳香族系単量体と共重合可能な他の単量体であり、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましい。鎖状共役ジエン化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合体ブロック(A)のブロック共重合体水素化物全体に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)のブロック共重合体水素化物全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、好ましくは20:80〜60:40、より好ましくは25:75〜55:45、特に好ましくは30:70〜50:50である。このような重合体を用いることで、柔軟性に優れ、強度の高い塗膜(例えば、正極活物質層、負極活物質層や固体電解質層)を得ることができる。
上記の単量体を用いて、重合体ブロック(A)の前駆体及び重合体ブロック(B)を得る方法は特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などが挙げられる。ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を、リビング重合により行う方法、特にリビングアニオン重合により行う方法を用いた場合に、重合操作及び後工程での水素化反応が容易になる。
重合は、重合開始剤の存在下、通常0〜150℃、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜80℃の温度範囲において行う。リビングアニオン重合の場合は、重合開始剤として、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物等が使用可能である。
重合反応形態は、溶液重合、スラリー重合等のいずれでも構わないが、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。この場合、重合体ブロック(A)の製造工程とブロック共重合体水素化物の製造工程で得られる重合体が溶解する不活性溶媒を用いる。使用する不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、トリシクロ[4.3.0.12,5 ]デカン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。中でも脂環式炭化水素類を用いると、後述する水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、ブロック共重合体水素化物の溶解性も良好であるため好ましい。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒使用量は、全使用単量体100質量部に対して、通常200〜2000質量部である。
重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を得る際に、用いる単量体が2種以上である場合には、或る1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、ランダマイザー等を使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物等をランダマイザーとして使用するのが好ましい。ルイス塩基化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;等が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
ブロック共重合体水素化物は、重合体ブロック(A)、及び重合体ブロック(B)を有し、重合体ブロック(A)における芳香環の炭素−炭素不飽和結合と、好ましくは重合体ブロック(B)における炭素−炭素不飽和結合とを水素化して得られる。
ブロック共重合体の態様は、特に限定されず、[(A)−(B)]型のジブロック共重合体、[(A)−(B)−(A)]型のトリブロック共重合体、ブロック数がそれ以上のブロック共重合体などが挙げられる。
ブロック共重合体水素化物の製造法は特に限定されない。例えば、上述の重合体ブロック(A)の前駆体及び重合体ブロック(B)を得る方法により、ビニル芳香族系単量体を付加重合し重合体ブロック(A)の前駆体を得、次いで鎖状共役ジエン化合物を付加重合し、重合体ブロック(A)の前駆体と重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を得る。その後、ブロック共重合体の芳香環等の炭素−炭素不飽和結合を水素化し、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体水素化物を製造する方法が挙げられる。
炭素−炭素不飽和結合の水素化方法、反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等から選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒としては、重合体鎖の切断を防止し、低温・低圧で水素化可能であることから、ニッケルを含む触媒を用いることが好ましい。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能であり、水素化反応は有機溶媒中で行うのが好ましい。
不均一系触媒は、金属又は金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウム等が挙げられる。触媒の担持量は、通常0.1〜60質量%、好ましくは1〜50質量%の範囲である。担持型触媒としては、例えば、比表面積が100〜500m/g、平均細孔径100〜1000Å、好ましくは200〜500Åを有するものが好ましい。上記の比表面積の値は窒素吸着量を測定し、BET式を用いて算出した値であり、平均細孔径の値は水銀圧入法により測定した値である。
均一系触媒としては、例えば、ニッケル、コバルト、チタン又は鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒(以下、「有機金属錯体触媒」ということがある。);ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の遷移金属錯体触媒等を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタン又は鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が挙げられる。
有機金属錯体触媒としては、例えば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等の遷移金属錯体が挙げられる。
これらの水素化触媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。水素化触媒の使用量は、重合体100質量部に対して、通常0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部、より好ましくは0.1〜30質量部である。
水素化反応温度は、通常10〜250℃、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃であるときに水素化率が高くなり、分子切断も減少する。また水素圧力はゲージ圧で、通常0.1〜30MPa、好ましくは1〜20MPa、より好ましくは2〜10MPaであると水素化率が高くなり、分子鎖切断も減少し、操作性にも優れる。
水素化反応の水素化率は、H−NMRによる測定において、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率、芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率のいずれもが、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上となるようにする。
なお、ブロック共重合体水素化物の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、水素化反応前後にH−NMRスペクトルを測定して水素化反応前後での主鎖及び側鎖部分の炭素−炭素不飽和結合及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合に対応するシグナルの積分値の減少量を元に算出することができる。
ブロック共重合体水素化物は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、ブロック共重合体水素化物を含む反応溶液から例えば濾過、遠心分離等の方法により除去した後、反応溶液から得られる。
反応溶液からブロック共重合体水素化物を得る方法は、特に限定はされないが、例えば、ブロック共重合体水素化物が溶解した溶液から、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、ブロック共重合体水素化物の貧溶媒中に溶液を注いで析出、凝固させる凝固法等の公知の方法で得ることができる。
また、母体重合体として好適に用いられる脂環式構造含有重合体のヨウ素価は、集電体表面と結合する官能基導入後の脂環式含有重合体のヨウ素価とほぼ等しく、20mg/100mg以下であり、好ましくは15mg/100mg以下、より好ましくは10mg/100mg以下の範囲にある。
また、脂環式構造含有重合体の重量平均分子量Mw(シクロヘキサンを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量)は、通常10,000以上であり、好ましくは30,000〜200,000、より好ましくは40,000〜150,000、特に好ましくは50,000〜100,000である。
母体重合体(脂環式構造含有重合体)および官能基含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は特に限定されないが、1〜1.9の範囲にあると好ましく、1〜1.6の範囲にあるとより好ましく、1〜1.4の範囲にあると特に好ましい。
本発明において、母体重合体(脂環式構造含有重合体)及び官能基含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、シクロヘキサンを溶媒にしてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)で前記の重量平均分子量(Mw)を割った値(Mw/Mn)である。
本発明の官能基含有重合体の分子量は、導入される官能基の量が少ないため、重合体主成分の分子量は母体重合体の分子量と実質的には変わらないが、過酸化物の存在下で官能基を導入する反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。シクロヘキサンを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜120,000、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下特に好ましくは2.0以下である。MwおよびMw/Mnがこの範囲であると、本発明の官能基含有重合体において、母体重合体が有する良好な機械強度や引張り伸びが維持される。
母体重合体(脂環式構造含有重合体)および官能基含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜200℃、好ましくは70〜180℃、特に好ましくは90〜150℃の範囲である。脂環式構造含有重合体および官能基含有重合体のTgが上記範囲であるときに、塗工性の良好なスラリー組成物を得ることができると共に重合体の耐熱性が高度にバランスされ、好適である。ガラス転移温度とは、JIS K 7121;1987に基づいて測定されたものである。
また、上記の脂環式構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のような脂環式構造含有重合体に代表されるような母体重合体に、集電体表面と結合する官能基を導入して、本発明においてバインダーの主成分として用いられる官能基重合体が得られる。母体重合体への官能基の導入は、過酸化物存在下で、母体重合体とシランカップリング剤とを反応させるなどの手段により行われる。
上記の母体重合体とシランカップリング剤とを過酸化物の存在下で反応させる方法は、加熱混練機や反応器を用いて行うことができる。例えば、母体重合体とシランカップリング剤と過酸化物との混合物を、二軸混練機にてブロック共重合体の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより母体重合体とシランカップリング剤とを反応させることができる。本発明に用いる官能基含有重合体では、その温度は、通常180〜240℃、好ましくは190〜230℃、より好ましくは200〜220℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜15分、好ましくは0.2〜10分、より好ましくは0.3〜5分程度である。二軸混練機、短軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
(無機固体電解質)
本発明の全固体二次電池において、正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層の少なくとも一層に無機固体電解質が含まれることが好ましく、すべての層に無機固体電解質が含まれることがより好ましい。無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有していれば特に限定されないが、結晶性の無機リチウムイオン伝導体、又は非晶性の無機リチウムイオン伝導体を含むことが好ましい。
結晶性の無機リチウムイオン伝導体は、LiN、LISICON(Li14Zn(GeO、ペロブスカイト型Li0.5La0.5TiO、LIPON(Li3+yPO4−x)、Thio−LISICON(Li3.25Ge0.250.75)などが挙げられ、非晶性の無機リチウムイオン伝導体は、ガラスLi−Si−S−O、Li−P−Sなどが挙げられる。その中でも、導電性の観点から、非晶性の無機リチウムイオン伝導体が好ましく、Li、P及びSを含む硫化物がより好ましい。Li、P及びSを含む硫化物はリチウムイオン伝導性が高いため、無機固体電解質としてLi、P及びSを含む硫化物を用いることで電池の内部抵抗を低下させることができると共に、出力特性を向上させることができる。
また、Li、P及びSを含む硫化物は、電池の内部抵抗低下及び出力特性向上という観点から、Li2SとP25とからなる硫化物ガラスであることがより好ましく、Li2S:P25のモル比65:35〜85:15のLi2SとP25との混合原料から製造された硫化物ガラスであることが特に好ましい。また、Li、P及びSを含む硫化物は、Li2S:P25のモル比65:35〜85:15のLi2SとP25との混合材料をメカノケミカル法によって合成して得られる硫化物ガラスセラミックスであることが好ましい。
無機固体電解質が、Li2S:P25=65:35〜85:15(モル比)のLi2SとP25との混合原料で製造されると、リチウムイオン伝導度を高い状態で維持することができる。以上の観点から、Li2S:P25=68:32〜80:20の範囲であることがより好ましい。
リチウムイオン伝導度として、具体的には、イオン伝導度は1×10−4S/cm以上であることが好ましく、1×10−3S/cm以上であることがより好ましい。
無機固体電解質は、Li、P及びSのみからなる硫化物ガラス、Li、P及びSのみからなる硫化物ガラスセラミックスだけではなく、後に説明するように、Li、P及びS以外のものを含んでいてもよい。
また、無機固体電解質の個数平均粒子径は、好ましくは0.1〜50μmの範囲である。無機固体電解質の平均粒子径を上記範囲とすることで、固体電解質の取扱いが容易となると共に、シート状にする際のスラリー組成物中における無機固体電解質の分散性が向上するため、シート状に形成することが容易になる。以上の観点から、無機固体電解質の平均粒子径は0.1〜20μmの範囲であることがより好ましい。平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
無機固体電解質では、イオン伝導性を低下させない範囲で、上記P25、Li2Sの他に出発原料として、Al23、B23及びSiS2からなる群より選ばれる少なくとも1種の硫化物を含ませることが好ましい。かかる硫化物を加えると、無機固体電解質中のガラス成分を安定化させることができる。
同様に、Li2S及びP25に加え、Li3PO4、Li4SiO4、Li4GeO4、Li3BO3及びLi3AlO3からなる群より選ばれる少なくとも1種のオルトオキソ酸リチウムを含ませることが好ましい。かかるオルトオキソ酸リチウムを含ませると、無機固体電解質中のガラス成分を安定化させることができる。
(固体電解質層)
固体電解質層は、電池の作動環境で固体状態の電解質を含み、好ましくは上記の無機固体電解質及びバインダーとなる重合体を含む。固体電解質層は、これらの無機固体電解質及びバインダーとなる重合体を含む固体電解質層用スラリー組成物を、後述する正極活物質層または負極活物質層の上に塗布し、乾燥することにより形成される。
固体電解質層用スラリー組成物は、無機固体電解質、バインダーとなる重合体、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。
(バインダーとなる重合体)
固体電解質層のバインダーとなる重合体としては、上述した脂環式構造含有重合体を用いてもよく、また官能基含有重合体を用いてもよく、その他の重合体を使用してもよいが、本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層、負極活物質層の少なくとも一層にバインダーとして官能基含有重合体が用いられ、好ましくは正極活物質層および負極活物質層の両方に官能基含有重合体が用いられ、より好ましくは固体電解質層にも官能基含有重合体が用いられる。
脂環式構造含有重合体および官能基含有重合体以外に、固体電解質層に用いてもよいその他の重合体としては、例えば、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリル系重合体、シリコーン系重合体等の高分子化合物が挙げられ、フッ素系重合体、ジエン系重合体又はアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体が、耐電圧を高くでき、かつ全固体二次電池のエネルギー密度を高くすることができる点でより好ましい。
フッ素系重合体としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が挙げられる。
ジエン系重合体は、共役ジエンから導かれるモノマー単位と芳香族ビニルから導かれるモノマー単位とを含む重合体であり、共役ジエン及び芳香族ビニルとしては、後述の負極活物質層におけるその他の重合体において例示したものと同様のものが挙げられる。
アクリル系重合体は、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルから導かれるモノマー単位を含む重合体であり、具体的には、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルの単独重合体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルの共重合体、並びにα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルと該α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エトキシエチル、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、アクリル酸2−(パーフルオロペンチル)エチルなどのアクリル酸2−(パーフルオロアルキル)エチル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、およびメタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、メタクリル酸2−(パーフルオロペンチル)エチルなどのメタクリル酸2−(パーフルオロアルキル)エチル;が挙げられる。
アクリル系重合体におけるα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルから導かれるモノマー単位の含有割合は、通常40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。なお、アクリル系重合体におけるα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルから導かれるモノマー単位の含有割合の上限は、通常100質量%以下、好ましくは95質量%以下である。
また、アクリル系重合体としては、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルと該α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体との共重合体が好ましい。前記共重合可能な単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類; N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。その中でも、有機溶媒への溶解性の観点から、スチレン系単量体、アミド系単量体、α,β−不飽和ニトリル化合物が好ましい。アクリル系重合体における、前記共重合可能な単量体単位の含有割合は、通常60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは25質量%以上45質量%以下である。
シリコーン系重合体としては、シリコーンゴム、フルオロシリコーンラバー、ポリイミドシリコーンが挙げられる。
また、固体電解質層のバインダーとなる重合体は、官能基含有重合体と、脂環式構造含有重合体などのその他の重合体との混合物であってもよい。その場合、バインダーとなる重合体中のその他の重合体の割合は、通常、50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
固体電解質層用スラリー組成物中の、バインダーとなる重合体の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。前記重合体の含有量を上記範囲とすることにより、無機固体電解質粒子同士の結着性を維持しながらも、リチウムの移動を阻害しない。このため、固体電解質層の抵抗が増大することを抑制できる。
(リチウム塩)
また、固体電解質層は、リチウム塩を含んでもよい。リチウム塩はLiカチオンと、Cl、Br、BF 、PF 、AsF 、ClO 、CFSO 、SCN等のアニオンとからなり、例えば過塩素酸リチウムテトラフロロホウ酸リチウム、ヘキサフロロリン酸リチウム、トリフロロ酢酸リチウム、トリフロロメタンスルホン酸リチウム等を挙げることが出来る。バインダーとなる重合体とリチウム塩との重量比は、好ましくは該重合体100質量部に対してリチウム塩0.5〜30質量部、より好ましくは3〜25質量部である。バインダーとなる重合体とリチウム塩との重量比を上記範囲とすることにより、イオン伝導度を向上させることができる。固体電解質層にリチウム塩を含有させる方法は特に限定されず、例えば、重合体とリチウム塩をキシレン等の溶媒に溶解もしくは分散させ均一溶液とする方法が挙げられる。
(有機溶媒)
有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの溶媒は、単独または2種以上を混合して、乾燥速度や環境上の観点から適宜選択して用いることができ、中でも、本発明においては無機固体電解質との反応性の観点から芳香族炭化水素類から選ばれる非極性溶媒を用いることが好ましい。
固体電解質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量は、無機固体電解質100質量部に対して、好ましくは10〜700質量部、より好ましくは30〜500質量部である。有機溶媒の含有量を上記範囲とすることにより、固体電解質層用スラリー組成物中の無機固体電解質の分散性を保持しながら、良好な塗料特性を得ることができる。
固体電解質層用スラリー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて添加される他の成分として、分散剤、レベリング剤及び消泡剤の機能を有する成分を含んでいてもよい。これらの成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば、特に制限されない。
(分散剤)
分散剤としてはアニオン性化合物、カチオン性化合物、非イオン性化合物、高分子化合物が例示される。分散剤は、用いる無機固体電解質に応じて選択される。固体電解質層用スラリー組成物中の分散剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、無機固体電解質100質量部に対して10質量部以下である。
(レベリング剤)
レベリング剤としてはアルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤を混合することにより、固体電解質層用スラリー組成物を後述する正極活物質層又は負極活物質層の表面に塗工する際に発生するはじきを防止でき、正負極の平滑性を向上させることができる。固体電解質層用スラリー組成物中のレベリング剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、無機固体電解質100質量部に対して10質量部以下である。
(消泡剤)
消泡剤としてはミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤、ポリマー系消泡剤が例示される。消泡剤は、用いる無機固体電解質に応じて選択される。固体電解質層用スラリー組成物中の消泡剤の含有量は、電池特性に影響が及ばない範囲が好ましく、具体的には、無機固体電解質100質量部に対して10質量部以下である。
本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層、負極活物質層の少なくとも一層にバインダーとして上述の官能基含有重合体が用いられ、好ましくは正極活物質層および負極活物質層の両層に官能基含有重合体が用いられる。
(正極活物質層)
正極活物質層は、好ましくは後述する正極活物質及び上記のバインダーとなる重合体、より好ましくは官能基含有重合体を用いて形成する。バインダーとして、官能基含有重合体を用いることで、正極活物質層と集電体との密着性が向上する。かかる正極活物質層は、正極活物質及び上記のバインダーとなる重合体を含む正極活物質層用スラリー組成物を、後述する集電体表面に塗布し、乾燥することにより形成される。正極活物質層用スラリー組成物は、バインダーとなる重合体、正極活物質、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。また、正極活物質層は、さらに上記無機固体電解質を含むこと好ましい。
正極活物質層に用いてもよい官能基含有重合体以外の重合体(その他の重合体)としては、例えば、前記した脂環式構造含有重合体(母体重合体)、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリル系重合体、シリコーン系重合体等の高分子化合物が挙げられ、フッ素系重合体、ジエン系重合体又はアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体が、耐電圧を高くでき、かつ全固体二次電池のエネルギー密度を高くすることができる点でより好ましい。
アクリル系重合体は、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルから導かれるモノマー単位を含む重合体である。α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルとしては、上述の固体電解質層におけるその他の重合体において例示したものと同様のものが挙げられる。また、その他の重合体として好適なアクリル系重合体におけるα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルから導かれるモノマー単位の含有割合は、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは65〜90質量%である。
また、アクリル系重合体としては、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルと、該α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステルと共重合可能な単量体との共重合体が好ましい。前記共重合可能な単量体は、上述の固体電解質層におけるその他の重合体において例示したものと同様である。
また、正極活物質層のバインダーとなる重合体は、官能基含有重合体と、その他の重合体との混合物であってもよい。その場合、バインダーとなる重合体中のその他の重合体の含有量は、前記固体電解質層の場合と同様である。
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な化合物である。正極活物質は、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoS等の遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物が挙げられる。これらの化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。
有機化合物からなる正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。なお、正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
正極活物質の平均粒子径は、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常0.1〜50μm、好ましくは1〜20μmである。平均粒子径が上記範囲であると、充放電容量が大きい全固体二次電池を得ることができ、かつ正極活物質層用スラリー組成物の取扱い、および正極を製造する際の取扱いが容易である。平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
正極活物質層に無機固体電解質が含まれる場合、正極活物質と無機固体電解質の重量比率は、正極活物質:無機固体電解質で好ましくは90:10〜30:70、好ましくは80:20〜40:60である。上記範囲よりも正極活物質の重量比率が少ない場合、電池内の正極活物質量が低減し、電池としての容量低下につながる。また、上記範囲よりも無機固体電解質の重量比率が少ない場合、導電性が十分に得られず、正極活物質を有効に利用することができない為、電池としての容量低下につながる。
正極活物質層用スラリー組成物中のバインダーとなる重合体の含有量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜7質量部である。重合体の含有量が上記範囲にあることで、電池反応を阻害せずに、正極活物質層から正極活物質が脱落するのを防ぐことができる。
正極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分は、上記の固体電解質層で例示するものと同様のものを用いることができる。正極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは20〜300質量部、より好ましくは30〜200質量部である。正極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量が上記範囲にあることで、正極活物質や、必要に応じて用いられる無機固体電解質の分散性を保持しながら、良好な塗料特性を得ることができる。
正極活物質層用スラリー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて添加される他の成分として、上述したリチウム塩、分散剤、レベリング剤、消泡剤の他、導電剤、補強材などの各種の機能を発現する添加剤を含んでいてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
(導電剤)
導電剤は、導電性を付与できるものであれば特に制限されないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。
導電剤の含有量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。導電剤の含有量を上記範囲とすることで、電池の容量を高く保持した上で、正極活物質層に十分な電子伝導性を付与することができる。
(補強材)
補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
補強材の含有量は、正極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。補強材の含有量を上記範囲とすることで、電池の容量を高く保持した上で、正極活物質層に十分な強度を付与することができる。
(負極活物質層)
負極活物質層は、好ましくは負極活物質及び上記のバインダーとなる重合体、より好ましくは官能基含有重合体を用いて形成する。バインダーとして、官能基含有重合体を用いることで、負極活物質層と集電体との密着性が向上する。かかる負極活物質層は、負極活物質及び上記のバインダーとなる重合体を含む負極活物質層用スラリー組成物を、後述する集電体表面に塗布し、乾燥することにより形成される。負極活物質層用スラリー組成物は、バインダーとなる重合体、負極活物質、有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分を混合することにより製造される。また、負極活物質層は、さらに上記無機固体電解質を含むこと好ましい。
負極活物質層に用いてもよいその他重合体としては、例えば、前記した脂環式構造含有重合体(母体重合体)、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリル系重合体、シリコーン系重合体等の高分子化合物等が挙げられる。中でも共役ジエンから導かれるモノマー単位と芳香族ビニルから導かれるモノマー単位とを含むジエン系重合体が、負極活物質同士を結着でき、負極活物質層と集電体との結着力も高い点でより好ましい。また、負極活物質層のバインダーとなる重合体は、官能基含有重合体と、その他重合体との混合物であってもよい。その場合、バインダーとなる重合体中のその他の重合体の含有量は、前記固体電解質層の場合と同様である。
ジエン系重合体における共役ジエンから導かれるモノマー単位の含有割合が、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%であり、芳香族ビニルから導かれるモノマー単位の含有割合が、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%である。ジエン系重合体に含まれる共役ジエンから導かれるモノマー単位の含有割合及び芳香族ビニルから導かれるモノマー単位の含有割合を上記範囲とすることで、負極活物質同士、無機固体電解質の粒子同士、負極活物質と無機固体電解質の粒子の粒子間及び負極活物質層と集電体との結着性が高い負極を得ることができる。
共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。これらの中でもブタジエンが好ましい。
芳香族ビニルとしては、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でもスチレン、α―メチルスチレン、ジビニルベンゼンが好ましい。
また、ジエン系重合体は、共役ジエンと、芳香族ビニルと、これらと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。前記共重合可能な単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。ジエン系重合体における、前記共重合可能な単量体単位の含有割合は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
(負極活物質)
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素の同素体が挙げられる。前記炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコーン等を使用できる。
負極活物質の平均粒子径は、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmである。平均粒子径が上記範囲であると、充放電容量が大きい全固体二次電池を得ることができ、かつ負極活物質層用スラリー組成物の取扱い、および負極を製造する際の取扱いが容易である。平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求めることができる。
負極活物質層が無機固体電解質を含む場合、負極活物質と無機固体電解質の重量比率は、負極活物質:無機固体電解質で90:10〜30:70、好ましくは80:20〜40:60である。上記範囲よりも負極活物質の重量比率が少ない場合、電池内の負極活物質量が低減し、電池としての容量低下につながる。また、上記範囲よりも無機固体電解質の重量比率が少ない場合、導電性が十分に得られず、負極活物質を有効に利用することができない為、電池としての容量低下につながる。
負極活物質層用スラリー組成物中のバインダーとなる重合体の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.2〜7質量部である。重合体の含有量が上記範囲にあることで、電池反応を阻害せずに、負極活物質層から負極活物質が脱落するのを防ぐことができる。
負極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒及び必要に応じて添加される他の成分は、上記の固体電解質層で例示するものと同様のものを用いることができる。負極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは20〜300質量部、より好ましくは30〜200質量部である。負極活物質層用スラリー組成物中の有機溶媒の含有量が上記範囲にあることで、負極活物質や必要に応じて用いられる無機固体電解質の分散性を保持しながら、良好な塗料特性を得ることができる。
負極活物質層用スラリー組成物は、上記成分の他に、必要に応じて添加される他の成分として、上述したリチウム塩、分散剤、レベリング剤、消泡剤、導電剤、補強材などの各種の機能を発現する添加剤を含んでいてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
(集電体)
集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するとの観点から、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料が好ましい。中でも、正極用としてはアルミニウムが特に好ましく、負極用としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、上述した正・負極活物質層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、集電体と正・負極活物質層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
(固体電解質層用スラリー組成物、正極活物質層用スラリー組成物及び負極活物質層用スラリー組成物の製造)
上記のスラリー組成物は、上述した各成分を混合して得られる。上記のスラリー組成物の各成分の混合法は特に限定はされないが、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、サンドミル、ロールミル、および遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられ、無機固体電解質の凝集を抑制できるという観点からプラネタリーミキサー、ボールミル又はビーズミルを使用した方法が好ましい。
上記により製造された固体電解質層用スラリー組成物の粘度は、好ましくは10〜500mPa・s、より好ましくは15〜400mPa・s、特に好ましくは20〜300mPa・sである。固体電解質層用スラリー組成物の粘度が上記範囲にあることで、該スラリー組成物の分散性及び塗工性が良好になる。該スラリー組成物の粘度が10mPa・s未満であると、固体電解質層用スラリー組成物が垂れる場合がある。また、該スラリー組成物の粘度が500mPa・sを超えると、固体電解質層の薄膜化が困難になる場合がある。
上記スラリー組成物の粘度は、JIS Z8803:2011に準じて、単一円筒形回転粘度計(東機産業社製 RB80L)(25℃、回転数:6rpm、ローター形状:No.1(粘度1,000mPa・s以下、No.2(粘度1,000〜5,000mPa・s)、No.3(粘度5,000〜20,000mPa・s)、No.4(粘度20,000〜100,000mPa・s))により測定し、測定開始後1分の粘度を測定し、これをスラリー組成物の粘度とした。
また、上記により製造された正極活物質層用スラリー組成物及び負極活物質層用スラリー組成物の粘度は、好ましくは3000〜50000mPa・s、より好ましくは4000〜30000mPa・s、特に好ましくは5000〜10000mPa・sである。正極活物質層用スラリー組成物及び負極活物質層用スラリー組成物の粘度が上記範囲にあることで、該スラリー組成物の分散性及び塗工性が良好になる。該スラリー組成物の粘度が3000mPa・s未満であると、該スラリー組成物中の活物質及び無機固体電解質が沈降する場合がある。また、該スラリー組成物の粘度が50000mPa・sを超えると、塗膜の均一性が失われる場合がある。
(全固体二次電池)
本発明の全固体二次電池は、集電体と正極活物質層とを有する正極と、集電体と負極活物質層とを有する負極と、これらの正負極活物質層間に固体電解質層とを有し、正極活物質層、負極活物質層の少なくとも一層にバインダーとして官能基含有重合体が用いられ、好ましくは正極活物質層および負極活物質層の両層に官能基含有重合体が用いられ、より好ましくは固体電解質層にも官能基含有重合体が用いられる。電極活物質層のバインダーとして、官能基含有重合体を用いることで、電極活物質層と集電体との密着性が向上する。
本発明の全固体二次電池における固体電解質層の厚さは、好ましくは1〜15μm、より好ましくは2〜13μm、特に好ましくは3〜10μmである。固体電解質層の厚さが上記範囲にあることで、全固体二次電池の内部抵抗を小さくすることができる。
本発明の全固体二次電池における正極は、上記の正極活物質層用スラリー組成物を集電体上に塗布、乾燥して正極活物質層を形成して製造される。また、本発明の全固体二次電池における負極は、上記の負極活物質層用スラリー組成物を、正極の集電体とは別の集電体上に塗布、乾燥して負極活物質層を形成して製造される。次いで、形成した正極活物質層または負極活物質層の上に、固体電解質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥して固体電解質層を形成する。なお、固体電解質層は、キャリアフィルム上に固体電解質層用スラリー組成物を塗布、乾燥後、正極活物質層または負極活物質層の上に転写することで形成することもできる。そして、固体電解質層を形成しなかった集電体と電極活物質を有する電極(以下、単に「電極」ということがある。)と、上記の固体電解質層を形成した電極とを、固体電解質層を介して貼り合わせることで、全固体二次電池素子を製造する。
正極活物質層用スラリー組成物及び負極活物質層用スラリー組成物の集電体への塗布方法は特に限定されず、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗りなどによって塗布される。塗布する量も特に制限されないが、有機溶媒を除去した後に形成される電極活物質層の厚さが通常5〜300μm、好ましくは10〜250μmになる程度の量である。乾燥方法も特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥が挙げられる。乾燥条件は、通常は応力集中が起こって電極活物質層に亀裂が入ったり、電極活物質層が集電体から剥離しない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く有機溶媒が揮発するように調整する。更に、乾燥後の電極をプレスすることにより電極を安定させてもよい。プレス方法は、金型プレスやカレンダープレスなどの方法が挙げられるが、限定されるものではない。
乾燥は、有機溶媒が十分に揮発する温度で行う。乾燥温度は、具体的には50〜250℃が好ましく、さらには80〜200℃が好ましい。上記範囲とすることにより、バインダーとなる重合体の熱分解がなく良好な電極活物質層を形成すること及び、重合体と集電体との間において、官能基含有重合体中に含まれる官能基と集電体の表面に存在する水酸基などの官能基とが化学結合を形成し、電極活物質層と集電体とをより強固に密着させることが可能となる。乾燥時間については、特に限定されることはないが、通常10〜60分の範囲で行われる。
固体電解質層用スラリー組成物を、正極活物質層、負極活物質層又はキャリアフィルムへ塗布する方法は特に限定されず、上述した正極活物質層用スラリー組成物及び負極活物質層用スラリー組成物の集電体への塗布方法と同様の方法により行われるが、薄膜の固体電解質層を形成できるという観点からグラビア法が好ましい。塗布する量も特に制限されないが、有機溶媒を除去した後に形成される固体電解質層の厚さが、好ましくは1〜15μm、より好ましくは3〜14μmになる程度の量である。乾燥方法、乾燥条件及び乾燥温度も、上述の正極活物質層用スラリー組成物及び負極活物質層用スラリー組成物と同様である。
更に、上記の固体電解質層を形成した電極と固体電解質層を形成しなかった電極とを、固体電解質層を介して貼り合わせた積層体を、加圧してもよい。加圧方法としては特に限定されず、例えば、平板プレス、ロールプレス、CIP(Cold Isostatic Press)などが挙げられる。加圧プレスする圧力としては、好ましくは5〜700MPa、より好ましくは7〜500MPaである。加圧プレスの圧力を上記範囲とすることにより、電極と固体電解質層との各界面における抵抗、更には各層内の粒子間の接触抵抗が低くなり良好な電池特性を示すからである。
正極活物質層または負極活物質層のどちらに固体電解質層用スラリー組成物を塗布するかは特に限定されないが、使用する電極活物質の粒子径が大きい方の電極活物質層に固体電解質層用スラリー組成物を塗布することが好ましい。電極活物質の粒子径が大きいと、電極活物質層表面に凹凸が形成されるため、固体電解質層用スラリー組成物を塗布することで、電極活物質層表面の凹凸を緩和することができる。そのため、固体電解質層を形成した電極と固体電解質層を形成しなかった電極とを、電極と固体電解質層を形成貼り合わせて積層する際に、固体電解質層と電極との接触面積が大きくなり、界面抵抗を抑制することができる。
得られた全固体二次電池素子を、電池形状に応じてそのままの状態又は巻く、折るなどして電池容器に入れ、封口して全固体二次電池が得られる。また、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを電池容器に入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。各特性は、以下の方法により評価する。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ、「質量部」および「質量%」である。
<重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)>
重合体の分子量は、シクロヘキサンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
<水素化率>
水素化率は、水素化反応前後にH−NMRスペクトルを測定して水素化反応前後での主鎖及び側鎖部分の不飽和結合及び芳香環の不飽和結合に対応するシグナルの積分値の減少量を元に算出した。
<ヨウ素価の測定>
重合体の水分散液100グラムをメタノール1リットルで凝固した後、60℃で一晩真空乾燥した。乾燥した重合体のヨウ素価をJIS K6235;2006に従って測定した。ヨウ素価が小さいほど、炭素−炭素不飽和結合が少ないことを示す。
<ピール強度測定>
正極活物質層を形成した正極を、幅1.0cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、正極活物質層面を上にして固定する。試験片の正極活物質層表面にセロハンテープを貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求めて、これをピール強度(N/m)とし、以下の基準で評価した。ピール強度が大きいほど正極活物質層の結着性に優れることを示す。
A:50N/m以上
B:40N/m以上50N/m未満
C:30N/m以上40N/m未満
D:20N/m以上30N/m未満
E:20N/m未満
<電池特性:高温保持特性>
10セルの全固体二次電池を、常温環境下で、0.1Cの定電流法によって4.3Vまで充電し、その後0.1Cにて3.0Vまで放電し、0.1C放電容量aを求めた。その後、常温環境下で、0.1Cにて4.3Vまで充電し、その後80℃恒温槽内で7日間静置後、常温環境下で、0.1Cにて3.0Vまで放電し、放電容量bを求める。10セルの平均値を測定値とし、静置後の放電容量bと0.1C放電容量aの電気容量の比(b/a(%))で表される高温容量維持率を求め、これを高温保持特性の評価基準とし、以下の基準で評価する。この値が高いほど高温保持特性に優れていることを意味する。
SA:95%以上
A:90%以上95%未満
B:80%以上90%未満
C:70%以上80%未満
D:60%以上70%未満
E:60%未満
(実施例1)
(官能基含有重合体[A]の合成)
充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、n−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.68部を加えて重合を開始した。攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定したこの時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン50.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止した。得られた未水添のブロック共重合体(A1)の重量平均分子量(Mw)は61,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、ヨウ素価は180mg/100mgであった。ブロック共重合体(A1)における芳香族(スチレン)由来の重合体ブロック(重合体ブロック(A))と共役ジエン(イソプレン)由来の重合体ブロック(重合体ブロック(B))との重量比率は50:50であった。
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物(A2)の重量平均分子量(Mw)は65,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットしてブロック共重合体(A3)のペレット90部を得た。得られたブロック共重合体水素化物(A3)の重量平均分子量(Mw)は64,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.11であった。水素化率はほぼ100%であった。
得られたブロック共重合体水素化物(A3)(母体重合体)のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2部およびジ−t−ブチルパ−オキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度 210℃、滞留時間80〜90秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングしトリメトキシシリル基を含有するブロック共重合体水素化物[A](以下、「官能基含有重合体[A]」という。)のペレット97部を得た。官能基含有重合体[A]の重量平均分子量(Mw)は64,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であり、ヨウ素価は0mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は2%であった。
(正極活物質層用スラリー組成物の製造)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒子径:11.5μm)100部と、無機固体電解質としてLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)150部と、導電剤としてアセチレンブラック13部と、バインダーとなる重合体として官能基含有重合体[A]のシクロヘキサン溶液を固形分相当量で3部となる量とを混合し、さらに有機溶媒としてシクロヘキサンで固形分濃度78%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分混合した。さらにシクロヘキサンで固形分濃度74%に調整した後に10分間混合して正極活物質層用スラリー組成物を調製した。正極活物質層用スラリー組成物の粘度は、6100mPa・sであった。
(負極活物質層用スラリー組成物の製造)
負極活物質としてグラファイト(平均粒子径:20μm)100部と、無機固体電解質としてLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)50部と、バインダーとなる重合体として官能基含有重合体[A]のシクロヘキサン溶液を固形分相当量で3部となる量とを混合し、さらに有機溶媒としてシクロヘキサンを加えて固形分濃度60%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して負極活物質層用スラリー組成物を調製した。負極活物質層用スラリー組成物の粘度は、6100mPa・sであった。
(固体電解質層用スラリー組成物の製造)
無機固体電解質としてLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:1.2μm、累積90%の粒子径:2.1μm)100部と、バインダーとなる重合体として官能基含有重合体[A]のシクロヘキサン溶液を固形分相当量で3部となる量とを混合し、さらに有機溶媒としてシクロヘキサンを加えて固形分濃度30%に調整した後にプラネタリーミキサーで混合して固体電解質層用スラリー組成物を調製した。固体電解質層用スラリー組成物の粘度は、52mPa・sであった。
(全固体二次電池の製造)
集電体(アルミニウム、厚み15μm)の表面に上記正極活物質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、20分)させて厚さ50μmの正極活物質層を形成して正極を製造した。この正極を用いて正極活物質層のピール強度を評価した。結果を表1に示す。
前記負極活物質層用スラリーの粘度は正極活物質層用スラリーの粘度と比較して大差なく、集電体がアルミニウムから銅にかわっても変わったとしてもピール強度の評価に大きな影響を及ぼさない。
また、別の集電体(銅、厚み10μm)の表面に上記負極活物質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、20分)させて厚さ30μmの負極活物質層を形成して負極を製造した。
次いで、上記正極活物質層の表面に、上記固体電解質層用スラリー組成物を塗布し、乾燥(110℃、10分)させて厚さ11μmの固体電解質層を形成した。
正極活物質層の表面に積層された固体電解質層と、上記負極の負極活物質層とを貼り合わせ、プレスして全固体二次電池を得た。プレス後の全固体二次電池の固体電解質層の厚さは9μmであった。この電池を用いて高温容量維持率を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
(官能基含有重合体[B]の合成)
官能基含有重合体の合成に際し、ビニルトリメトキシシランの代わりにビニルトリエトキシシランを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてトリエトキシシリル基含有ブロック共重合体水素化物[B](以下、「官能基含有重合体[B]」という。)のペレット97部を得た。官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[B]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。官能基含有重合体[B]の重量平均分子量(Mw)は64,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であり、ヨウ素価は0mg/100mgであり、トリエトキシシリル基含有量は2%であった。
(実施例3)
(官能基含有重合体[C]の合成)
官能基含有重合体の合成に際し、ビニルトリメトキシシランの代わりにアリルトリメトキシシランを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてブロック共重合体水素化物[C](以下、「官能基含有重合体[C]」という。)のペレット97部を得た。官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[C]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。官能基含有重合体[C]の重量平均分子量(Mw)は64,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であり、ヨウ素価は0mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は2%であった。
(実施例4)
(官能基含有重合体[D]の合成)
官能基含有重合体の合成に際し、ビニルトリメトキシシランの量を2部から7部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトリメトキシシリル基含有ブロック共重合体水素化物[D](以下、「官能基含有重合体[D]」という。)のペレット97部を得た。官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[D]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。官能基含有重合体[D]の重量平均分子量(Mw)は65,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.07であり、ヨウ素価は0mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は7%であった。
(実施例5)
(官能基含有重合体[E]の合成)
官能基含有重合体の合成に際し、ビニルトリメトキシシランの量を2部から0.2部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトリメトキシシリル基含有ブロック共重合体水素化物[E](以下、「官能基含有重合体[E]」という。)のペレット97部を得た。官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[E]を用いたこと以外は実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。官能基含有重合体[E]の重量平均分子量(Mw)は64,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であり、ヨウ素価は0mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は0.2%であった。
(実施例6)
(官能基含有重合体[F]の合成)
重合段階でモノマーとして、スチレン50.0部、イソプレン50.0部の混合モノマーを反応系に添加して重合を開始し、ランダム共重合体(F1)を得た。ランダム共重合体(A1)における芳香族(スチレン)由来の重合単位と共役ジエン(イソプレン)由来の重合単位との重量比率は50:50であった。
次いで、実施例1と同様にして、ランダム共重合体(F1)の水素化反応を行い、ランダム共重合体水素化物(F2)を得た。得られたランダム共重合体水素化物(F2)の重量平均分子量(Mw)は87,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であった。水素化率はほぼ100%であった。
得られたランダム共重合体水素化物(F2)のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2.0部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80〜90秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、トリメトキシシリル基含有ランダム共重合体水素化物[F](以下、「官能基含有重合体[F]」という。)のペレット97部を得た。
官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[F]を用いた以外は実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。官能基含有重合体[F]の重量平均分子量(Mw)は88,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.15であり、ヨウ素価は0mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は2%であった。
(実施例7)
(正極活物質層用スラリー組成物の製造)
正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒子径:11.5μm)100部と、無機固体電解質としてLiSとPとからなる硫化物ガラス(LiS/P=70mol%/30mol%、個数平均粒子径:0.4μm)150部と、導電剤としてアセチレンブラック13部と、バインダーとなる重合体として官能基含有重合体[A]のシクロヘキサン溶液を固形分相当量で6部となる量とを混合し、さらに有機溶媒としてシクロヘキサンで固形分濃度78%に調整した後にプラネタリーミキサーで60分混合した。さらにシクロヘキサンで固形分濃度68%に調整した後に10分間混合して正極活物質層用スラリー組成物を調製した。正極活物質層用スラリー組成物の粘度は、5800mPa・sであった。
正極活物質層層スラリー組成物として、上記組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、正極および全固体二次電池を作成し、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例8)
(官能基含有重合体[G]の合成)
実施例1において、ブロック共重合体水素化物(A3)(母体重合体)の代わりに、セプトン4055(クラレ製、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン、スチレン含有率30%、水素化率約95%以上)を用いて、ペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80〜90秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、トリメトキシシリル基含有ブロック共重合体水素化物[G](以下、「官能基含有重合体[G]」という。)のペレット97部を得た。
官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[G]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。官能基含有重合体[G]の重量平均分子量(Mw)は200、000、分子量分布(Mw/Mn)は1.07であり、ヨウ素価は13mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は2%であった。
(比較例1)
官能基含有重合体[A]の代わりに母体重合体であるブロック共重合体水素化物(A3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
(官能基含有重合体[H]の合成)
実施例1において、ブロック共重合体水素化物(A3)(母体重合体)の代わりに未水添のブロック共重合体(A1)のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80〜90秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、トリメトキシシリル基含有ブロック共重合体[H](以下、「官能基含有重合体[H]」という。)のペレット97部を得た。
官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[H]を用いた以外は実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。官能基含有重合体[H]の重量平均分子量(Mw)は61,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.1であり、ヨウ素価は170mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は2%であった。
(比較例3)
(官能基含有重合体[I]の合成)
実施例1において、ブロック共重合体水素化物(A3)(母体重合体)の代わりにスチレン−エチレンブチレン−スチレントリブロック共重合体(SEBS)(重量平均分子量(Mw)は66,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.03である)のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2部およびジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加した。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度210℃、滞留時間80〜90秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、トリメトキシシリル基含有SEBS[I](以下、「官能基含有重合体[I]」という。)のペレット97部を得た。
官能基含有重合体[A]に代えて官能基含有重合体[I]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、各スラリー組成物、全固体二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。官能基含有重合体[I]の重量平均分子量(Mw)は65,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であり、ヨウ素価は200mg/100mgであり、トリメトキシシリル基含有量は2%であった。
Figure 0006090306
表1から、実施例1〜8の、集電体と正極活物質層とを有する正極と、集電体と負極活物質層とを有する負極と、固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも一層に、集電体表面と結合する官能基を含有し、ヨウ素価が20mg/100mg以下である重合体が含まれる全固体二次電池は、比較例1〜3記載の重合体を用いた全固体二次電池よりも正極のピール強度が高く、高温保持特性に優れることがわかる。
一方、バインダーとして、集電体表面と結合する官能基を含有していない重合体を用いた場合(比較例1)は正極のピール強度が劣り、官能基含有重合体のヨウ素価が20mg/100mgを超えている重合体を用いた場合(比較例2および3)は正極ピール強度および高温保持特性に劣る。
今回、正極活物質層の結着性の評価しか記載していないが、負極活物質層の結着性の結果も正極活物質層の結着性の評価と同様の評価結果となることを確認している。

Claims (9)

  1. 集電体と正極活物質層とを有する正極と、集電体と負極活物質層とを有する負極と、固体電解質層とを有する全固体二次電池であって、正極活物質層または負極活物質層の少なくとも一層に、集電体表面と結合する官能基を含有し、ヨウ素価が20mg/100mg以下である重合体が含まれ、
    前記重合体が、脂環式構造単位を含有する重合体に該官能基を導入してなる重合体であり、
    前記脂環式構造単位を含有する重合体が、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化した単位を主成分とする重合体ブロック(A)と、鎖状共役ジエン化合物の炭素−炭素不飽和結合を水素化した繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体である、全固体二次電池。
  2. 前記集電体表面と結合する官能基が、アルコキシシリル基である請求項1に記載の全固体二次電池。
  3. 前記重合体における、前記集電体表面と結合する官能基の含有割合が、0.01〜10質量%である請求項1または2に記載の全固体二次電池。
  4. 前記重合体における、前記集電体表面と結合する官能基の含有割合が、0.5〜10質量%である請求項3に記載の全固体二次電池。
  5. 前記脂環式構造単位における脂環式構造が、芳香環を水素化した構造である請求項1〜4のいずれかに記載の全固体二次電池。
  6. 前記脂環式構造単位を含有する重合体が、ビニル芳香族系単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を水素化して得られるビニル脂環式炭化水素系重合体であって、前記共重合体における全ての炭素−炭素不飽和結合の90%以上を水素化した共重合体である請求項1〜5の何れかに記載の全固体二次電池。
  7. 重合体ブロック(A)のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、重合体ブロック(B)のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が、20:80〜60:40である請求項1〜6のいずれかに記載の全固体二次電池。
  8. 前記脂環式構造単位を含有する重合体の重量平均分子量が、30,000〜200,000である請求項1〜7のいずれかに記載の全固体二次電池。
  9. 正極活物質層、負極活物質層および固体電解質層の少なくとも一層に無機固体電解質が含まれ、該無機固体電解質が、LiSとPとからなる、硫化物ガラスおよび/または硫化物ガラスセラミックスである請求項1〜のいずれかに記載の全固体二次電池。
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