[第1実施形態]
図1において、医療施設内には、X線撮影を行うための第1撮影室2A、第2撮影室2Bの2つの撮影室が隣接して配置されている。第1撮影室2Aには、被写体である患者Pが待合室5から入室または待合室5に退室するための第1出入口6Aと、第1使用者RAが通路7を介して各撮影室2A、2Bを行き来するための第1通用口8Aとが設けられている。第1使用者RAは、第1撮影室2Aに常駐している医師や放射線技師等である。
第1撮影室2Aには、患者Pに向けてX線を照射する第1X線源10A、患者Pを立位姿勢で撮影するための第1立位撮影台11A、患者Pを臥位姿勢で撮影するための第1臥位撮影台12A、第1使用者RAにより操作される第1コンソール13A、および第1ラック14Aが設置されている。なお、第2撮影室2Bに関わる構造物や機器類等は、第1撮影室2Aの第1出入口6A等の構造物や、第1撮影室2Aに設置される第1X線源10A等の機器類と同じであるため、説明を省略する。以下の説明では、必要に応じて第2撮影室2Bに関わる構造物や機器類を表す単語の前に「第2」を付して番号の後ろに「B」を付し、「第1」と「A」が付された第1撮影室2Aに関わる構造物や機器類等と区別する。また、特に区別が必要ない場合は「第1」、「第2」および「A」、「B」をとって、「X線源10」等と表現する。第1使用者RA、第2使用者RBについても同様である。
医療施設は、電子カセッテ15A、15B、15C、15Dの4台の電子カセッテを所有している。各電子カセッテ15A〜15Dは、X線源10から照射されて患者Pを透過したX線を受けてX線画像を検出する。医療施設では、各撮影室2A、2B間で各電子カセッテ15A〜15Dを行き来させて使い回す運用がなされる。各電子カセッテ15A〜15Dは、例えば、電子カセッテ15A、15Bが同じタイプで、電子カセッテ15Aは主に第1撮影室2Aで使用され、電子カセッテ15Bは主に第2撮影室2Bで使用される。また、電子カセッテ15C、15Dは異なるタイプである。
同じタイプとは、外形サイズおよび性能が同じということであり、異なるタイプとは、外形サイズまたは性能あるいはその両方が異なるということである。例えば、電子カセッテ15A、15Bは外形サイズが14×17インチと同じで性能も同じであり、電子カセッテ15Cは外形サイズが17×17インチ、電子カセッテ15Dは外形サイズが10×12インチとそれぞれ異なる。
電子カセッテ15A、15Bは、各撮影室2A、2Bの立位撮影台11A、11Bにそれぞれセットされた状態である。そして、第1撮影室2Aでは、患者PのX線撮影が行われている。また、電子カセッテ15Cは第1撮影室2Aの第1ラック14Aに収容され、電子カセッテ15Dは第2撮影室2Bの第2ラック14Bに収容されている。なお、各電子カセッテ15A〜15Dは、外形サイズや性能は異なるものの、基本的な構成は同じであるので、特に区別する必要がない場合はこれらをまとめて「電子カセッテ15」と表現する。
電子カセッテ15は、前面45(図4参照)がX線源10と対向する姿勢で各撮影台11、12に保持される。患者Pは、撮影部位がX線源10と電子カセッテ15との間に位置するよう、使用者Rによりポジショニングされる。X線源10は、線源移動装置(図示せず)により所望の方向および位置にセット可能であり、X線源10は各撮影台11、12で共用される。なお、電子カセッテ15は、各撮影台11、12にセットされる他に、患者Pが仰臥するベッド上に置いたり患者P自身にもたせたりして単体で使用されることもある。
撮影室2には使用領域20が予め設定されている。使用領域20は、電子カセッテ15の使用が許可された領域である。待合室5および通路7は、使用領域20外である。
コンソール13には、無線受信部に相当する無線タグリーダ21が接続されている。無線タグリーダ21は、撮影室2の壁面や天井等に取り付けられる。無線タグリーダ21は、コンソール13とは別電源で駆動し、定期的に探査信号を無線送信している。無線タグリーダ21は、電子カセッテ15に取り付けられた無線タグ50(無線送信部に相当、図4参照)から、探査信号に対する応答信号を受信することで、使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りを検知する。すなわち無線タグリーダ21は検知部として機能する。
コンソール13と無線タグリーダ21とで本発明の電子カセッテ管理装置を構成する。第1コンソール13Aと第1無線タグリーダ(第1検知部)21Aは、第1撮影室2Aに設定された第1使用領域20Aに対する電子カセッテ15の出入りを管轄する。第2コンソール13Bと第2無線タグリーダ(第2検知部)21Bは、第2撮影室2Bに設定された第2使用領域20Bに対する電子カセッテ15の出入りを管轄する。これら第1コンソール13A、第2コンソール13Bと第1無線タグリーダ21A、第2無線タグリーダ21Bとで本発明の電子カセッテ管理システムを構成する。
無線タグリーダ21は、無線タグ50からの応答信号を受信している間は、電子カセッテ15が使用領域20内に存在する旨の検知結果を出力する。一方、応答信号が途絶えた場合、無線タグリーダ21は、電子カセッテ15が使用領域20内に存在しない(使用領域20外に持ち出された)旨の検知結果を出力する。電子カセッテ15が使用領域20内に存在する旨の検知結果は、無線タグリーダ21のIDと無線タグ50からの応答信号に付されたカセッテIDとを含む。一方、電子カセッテ15が使用領域20内に存在しない旨の検知結果は、無線タグリーダ21のIDのみでカセッテIDは付されない。
使用領域20は、探査信号および応答信号の送受信可能範囲に応じて決まる。探査信号および応答信号の周波数帯には、送受信可能範囲が2m〜5m程度である900MHz近辺(例えば868MHz)のいわゆるUHF(Ultra High Frequency)帯が使用される。なお、探査信号および応答信号は、各電子カセッテ15A〜15Dを区別するために、電子カセッテ15A〜15D毎に異なるチャンネルが使用される。
第1使用領域20Aと第2使用領域20Bは、第1撮影室2Aと第2撮影室2Bのそれぞれの空間全体をカバーするよう設定されており、これらは重複していない。このため、各撮影室2A、2B間で探査信号および応答信号が混信することはない。このように第1使用領域20Aと第2使用領域20Bを、第1撮影室2Aと第2撮影室2Bのそれぞれの空間全体をカバーするよう設定し、かつ重複しないようにする方法としては、各撮影室2A、2Bに電磁シールドを施す方法を採用することができる。なお、無線タグリーダ21の取り付け箇所は、出入口6や通用口8のドア、あるいはコンソール13が設置される台等でもよい。また、無線タグリーダ21はコンソール13に内蔵されていてもよい。
X線源10は、周知のように、X線を発生するX線管と、X線管から発生されたX線の患者Pへの照射野を限定する照射野限定器(コリメータともいう)とを有する。X線源10には、線源制御装置22が接続され、線源制御装置22には照射スイッチ23が接続されている。線源制御装置22は、X線管に与える管電圧、管電流、およびX線の照射時間を制御する。線源制御装置22には、管電圧、管電流、およびX線の照射時間からなるX線撮影の撮影条件が、胸部、腹部等の撮影部位に応じて予め複数種類記憶されており、その中から所望の撮影条件が使用者Rにより選択入力される。
照射スイッチ23は、X線の照射を開始する際に使用者Rにより操作される。照射スイッチ23は2段押下型であり、照射スイッチ23が1段目まで押された(半押しされた)とき、線源制御装置22はX線源10にX線を照射する前の準備動作を開始させる。照射スイッチ23が2段目まで押された(全押しされた)とき、線源制御装置22はX線源10によるX線の照射を開始させる。線源制御装置22はX線の照射が開始されたときに計時を開始するタイマーを有し、タイマーで計時した時間が撮影条件で設定された照射時間となったとき、X線源10によるX線の照射を停止させる。
コンソール13は、ディスプレイ25、入力デバイス26、スピーカー27、ストレージデバイス28等を有し、撮影室2に据え置かれる。ディスプレイ25は、キーボードやマウスといった入力デバイス26の操作に応じた各種操作画面を表示する。操作画面にはGUI(Graphical User Interface)が配され、コンソール13はこのGUIを通じて入力デバイス26からの操作指示の入力を受け付ける。
ディスプレイ25は、電子カセッテ15で検出したX線画像を表示する他、撮影条件の入力画面といった各種操作画面を表示する。スピーカー27は、使用領域20から電子カセッテ15が出たことを音声で報知する。ストレージデバイス28は例えばハードディスクドライブであり、X線画像やX線撮影に必要な各種情報を記憶する。
コンソール13は、検査オーダの入力を受け付けて、検査オーダをディスプレイ25に表示する。検査オーダには、患者Pの性別、年齢といった患者情報、頭部、胸部、腹部、手、指といった撮影部位、立位、臥位といった姿勢、正面、背面、側面といった向き等の情報が含まれる。検査オーダは、病院情報システム(HIS;Hospital Information System)や放射線情報システム(RIS;Radiology Information System)等の、患者情報や放射線検査に係る検査情報を管理する外部システム(図示せず)から入力される。
ストレージデバイス28には、患者情報、撮影部位、姿勢、および向きに対応する撮影条件が例えばデータテーブル形式で複数種類記憶されている。撮影条件は、上述の通りX線管に与える管電圧、管電流、およびX線の照射時間であり、患者情報、撮影部位、姿勢、および向きを考慮して設定される。使用者Rは、検査オーダの内容をディスプレイ25で確認し、その内容に応じた撮影条件を設定する。設定された撮影条件は、コンソール13から電子カセッテ15に転送される。線源制御装置22には、コンソール13に入力したものと同じ撮影条件が使用者Rにより設定される。なお、撮影条件としては、管電流と照射時間の代わりに、管電流と照射時間の積である管電流照射時間積(mAs値)を設定してもよい。
図2において、ストレージデバイス28には、各電子カセッテ15A〜15Dを識別するためのカセッテIDと名称の組を登録したカセッテ登録テーブル30が記憶されている。カセッテ登録テーブル30には、例えば最大5台の電子カセッテ15を登録可能である。カセッテIDは、各電子カセッテ15A〜15Dの登録時に、各電子カセッテ15A〜15Dに取り付けられた無線タグ50を無線タグリーダ21で読み取ることにより入力される。名称は、各電子カセッテ15A〜15Dに対して使用者Rが付けたものである。本例では、電子カセッテ15Aには「Aカセッテ」、電子カセッテ15Bには「Bカセッテ」、電子カセッテ15Cには「Cカセッテ」、電子カセッテ15Dには「Dカセッテ」の名称がそれぞれ付けられている。
コンソール13は、このカセッテ登録テーブル30のカセッテIDによって、入力デバイス26で撮影に使用すると選択された電子カセッテ15が、各電子カセッテ15A〜15Dのいずれかを判断する。また、このカセッテ登録テーブル30に登録された各電子カセッテ15A〜15Dが、無線タグリーダ21による検知の対象となる。
図3において、ディスプレイ25は、各電子カセッテ15A〜15Dのうち、撮影に使用する1台の電子カセッテ15を選択するためのカセッテ選択ウィンドウ31を表示する。カセッテ選択ウィンドウ31には、カセッテ登録テーブル30に登録された各電子カセッテ15A〜15Dの名称が羅列され、その横にラジオボタン32が設けられている。ラジオボタン32は、1つを選択すると他の選択が解除されるGUIであり、各電子カセッテ15A〜15Dのうちの1台が択一的に選択される。図では電子カセッテ15AであるAカセッテが選択された状態を示している。ラジオボタン32により所望の電子カセッテ15を選択してOKボタン33を選択すると、撮影に使用する電子カセッテ15の選択が済まされる。
コンソール13は、各電子カセッテ15A〜15Dのうち、カセッテ選択ウィンドウ31で撮影に使用すると選択された電子カセッテ15に対して、撮影に使用すると選択されたことを示す選択信号を送信する(図6参照)。
図4において、電子カセッテ15は、センサパネル40と、制御基板41と、バッテリ42と、通信部43と、これらを収納する扁平な箱型をした可搬型の筐体44とを有する。X線が入射する筐体44の前面45には矩形状の開口が形成されており、開口には天板としてX線透過板46が取り付けられている。
バッテリ42は、電源回路(図示せず)を通じて電子カセッテ15の各部に電力を供給する。バッテリ42は、筐体44内から外部に取り出し可能で、専用の充電器(図示せず)にセットして充電することが可能である。通信部43は、コンソール13と無線または有線接続され、コンソール13との間で、X線撮影の撮影条件、X線画像等の各種データを送受信する。また、通信部43は、X線撮影に使用すると選択されたときにコンソール13から送信される選択信号を受信する。
センサパネル40は、シンチレータ47と、光検出基板48とで構成される。シンチレータ47と光検出基板48は、X線の入射側からみてシンチレータ47、光検出基板48の順に積層されている。シンチレータ47は、CsI:Tl(タリウム賦活ヨウ化セシウム)やGOS(Gd2O2S:Tb、テルビウム賦活ガドリウムオキシサルファイド)等の蛍光体を有し、X線透過板46を介して入射したX線を可視光に変換して放出する。なお、シンチレータ47を光検出基板48のX線入射側とは反対側に配置したセンサパネルを用いてもよい。また、アモルファスセレン等の光導電膜によりX線を直接信号電荷に変換する直接変換型のセンサパネルを用いてもよい。
光検出基板48は、シンチレータ47から放出された可視光を検出して電気信号に変換する。制御基板41は、光検出基板48の駆動を制御するとともに、光検出基板48から出力された電気信号に基づきX線画像を生成する。
筐体44の一側面には、電源スイッチ49が配されている。電源スイッチ49は、電子カセッテ15の電源をオン/オフする際に使用者Rにより操作される。
また、筐体44の一側面には、無線タグ50が取り付けられている。無線タグ50にはカセッテID等の情報が記憶されている。無線タグ50は、無線タグリーダ21からの探査信号を受信して起動するパッシブタグであり、探査信号に応じて、カセッテID等の情報を乗せた応答信号を送信する。探査信号は定期的に送信されるので、電子カセッテ15が使用領域20内にある間、無線タグ50は、探査信号の受信と応答信号の送信を繰り返す。なお、無線タグ50は筐体44内に組み込まれていてもよい。
図5において、光検出基板48は、ガラス基板(図示せず)上に、N行×M列の2次元マトリクスに配列された画素55と、N本の走査線56と、M本の信号線57とが設けられたものである。走査線56は、画素55の行方向に沿うX方向に延伸し、かつ画素55の列方向に沿うY方向に所定のピッチで配置されている。信号線57は、Y方向に延伸し、かつX方向に所定のピッチで配置されている。走査線56と信号線57とは直交しており、走査線56と信号線57の交差点に対応して画素55が設けられている。N、Mは2以上の整数であり、例えばN、M≒2000である。なお、画素55の配列は、本例のように正方配列でなくともよく、ハニカム配列でもよい。
各画素55は、周知のように、可視光の入射によって電荷(電子−正孔対)を発生してこれを蓄積する光電変換部58、およびスイッチング素子であるTFT(Thin-Film Transistor)59を備える。光電変換部58は、電荷を発生する半導体層とその上下に上部電極および下部電極を配した構造を有している。半導体層は例えばPIN(p-intrinsic-n)型であり、上部電極側にN型層、下部電極側にP型層が形成されている。TFT59は、ゲート電極が走査線56に、ソース電極が信号線57に、ドレイン電極が光電変換部58の下部電極にそれぞれ接続されている。なお、TFT型ではなく、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のセンサパネルを用いてもよい。
光電変換部58の上部電極にはバイアス線(図示せず)が接続されている。バイアス線は画素55の行数分(N行分)設けられて1本の母線に接続されている。母線はバイアス電源に繋がれている。母線とバイアス線を通じて、バイアス電源から光電変換部58の上部電極に正のバイアス電圧が印加される。正のバイアス電圧の印加により半導体層内に電界が生じる。光電変換部58は逆バイアスの状態で使用される。光電変換により半導体層内で発生した電子−正孔対のうちの電子は、上部電極に移動してバイアス線に吸収され、正孔は、下部電極に移動して信号電荷として収集される。
制御基板41には、ゲートドライバ60と、信号処理部61と、メモリ62と、判定部63と、これらを制御する制御部64とが設けられている。ゲートドライバ60は、各走査線56の端部に接続され、TFT59を駆動するためのゲートパルスG(K)(K=1〜N)を発する。制御部64は、ゲートドライバ60を通じてTFT59を駆動することにより、X線の照射前に、画素55から信号電荷を読み出す照射前読み出し動作と、X線の到達線量に応じた信号電荷を画素55に蓄積させる蓄積動作と、X線の照射終了後に、画素55から信号電荷を読み出す画像読み出し動作とをセンサパネル40に行わせる。
蓄積動作では、ゲートドライバ60はいずれの走査線56にもゲートパルスG(K)を与えない。したがって蓄積動作時は、TFT59はオフ状態となる。その間に画素55にX線の入射量に応じた信号電荷が蓄積される。照射前読み出し動作および画像読み出し動作では、ゲートドライバ60は、先頭行である1行目から最終行であるN行目までの各走査線56に、順に所定の間隔でゲートパルスG(K)を与え、各走査線56に接続されたTFT59を1行ずつ順次オン状態とする。
信号処理部61は、各信号線57の端部に接続されている。信号処理部61は、照射前読み出し動作または画像読み出し動作で画素55から読み出された信号電荷をデジタルの電圧値(信号電圧)に変換し、メモリ62に出力する。メモリ62は、信号処理部61から出力されたデジタルの信号電圧を記憶する。以下では、照射前読み出し動作でメモリ62に記憶されるデジタルの信号電圧を線量信号(図6参照)、画像読み出し動作でメモリ62に記憶されるデジタルの信号電圧を画像信号(図6参照)という。
判定部63は、制御部64により駆動制御される。判定部63は、線量信号に基づき、X線源10によるX線の照射が開始されたか否かを判定する照射開始判定を行う。判定部63は、X線の照射が開始されたと判定した場合、制御部64に照射開始判定信号を出力する(図6参照)。
制御部64は、タイマー65を内蔵している。タイマー65にはコンソール13で設定された撮影条件のうちの照射時間がセットされる。タイマー65は、判定部63から照射開始判定信号を受け取ったときに計時を開始する。制御部64は、タイマー65の計時時間が撮影条件で設定された照射時間に達したときにX線の照射が停止したと判断する。
図6において、電子カセッテ15は、電源オフの状態、待機状態、スリープ状態、レディ状態、および画像取得状態の5つの動作状態を有する。
電子カセッテ15は、電源スイッチ49が操作されて電源オンしたときに、通信部43を介して電源オンした旨を示す電源オン信号をコンソール13に送信し、待機状態となる。電子カセッテ15は、待機状態から一定時間操作がないときにスリープ状態に移行する。スリープ状態において、X線撮影に使用すると選択されたことを示す選択信号をコンソール13から受信したとき、電子カセッテ15は再び待機状態に移行する。待機状態において、撮影条件をコンソール13から受信したとき、電子カセッテ15はレディ状態に移行する。そして、レディ状態において、判定部63でX線の照射が開始されたと判定され、判定部63から制御部64に照射開始判定信号が出力されたとき、電子カセッテ15は画像取得状態に移行する。
待機状態およびスリープ状態では、制御部64は、ゲートドライバ60および信号処理部61への電力供給を停止し、通信部43のみを駆動させている。したがって待機状態およびスリープ状態ではセンサパネル40は動作しない。レディ状態では、制御部64はセンサパネル40に照射前読み出し動作を行わせ、メモリ62に線量信号を出力させる。また、画像取得状態では、制御部64はセンサパネル40に蓄積動作を行わせる。制御部64は、判定部63から照射開始判定信号を受けたとき、照射前読み出し動作が画素55の途中の行であっても、照射前読み出し動作を直ちに停止させて蓄積動作を開始させる。これによりX線の照射開始タイミングと蓄積動作の開始タイミングとの同期がとられる。
制御部64は、タイマー65の計時時間が撮影条件で設定された照射時間に達し、X線の照射が停止したと判断したとき、センサパネル40に画像読み出し動作を行わせ、メモリ62に画像信号を出力させる。メモリ62に出力された画像信号は、通信部43を介してX線画像としてコンソール13に送信される。
画像読み出し動作終了後、電子カセッテ15は、再び待機状態に戻る。なお、電子カセッテ15は、電源スイッチ49が操作されて電源オフするときに、通信部43を介して電源オフする旨を示す電源オフ信号(図27参照)をコンソール13に送信する。
電源オフの状態、電源オン後の待機状態、並びにスリープ状態は、電子カセッテ15が撮影に使用すると選択されていない非選択状態であり、選択信号受信後の待機状態、レディ状態、および画像取得状態は、電子カセッテ15が撮影に使用すると選択された選択状態である。画像取得状態の後の待機状態は、カセッテ選択ウィンドウ31で他の電子カセッテ15が撮影に使用すると選択されるか、スリープ状態に移行するまで、選択状態である。
判定部63は、照射前読み出し動作でメモリ62に1行分の線量信号が出力される毎に、1行分の線量信号の代表値と、予め設定された判定閾値の大小を比較する。判定閾値と比較する線量信号の代表値としては、1行分の線量信号のうちの最大値が好ましい。なお、1行分の線量信号の平均値や合計値でもよい。線量信号は、X線の照射が開始されると増加し、線量信号の代表値はある時点で判定閾値を上回るレベルに達する。判定部63は、この線量信号の代表値が判定閾値を上回った時点でX線の照射が開始されたと判定する。
図7において、コンソール13を構成するコンピュータは、前述のディスプレイ25、入力デバイス26、スピーカー27、ストレージデバイス28の他、メモリ70、CPU(Central Processing Unit)71、および通信部72を備えている。これらはデータバス73を介して相互接続されている。
ストレージデバイス28には、前述のカセッテ登録テーブル30の他、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、電子カセッテ管理プログラム74を含む各種アプリケーションプログラムが記憶されている。電子カセッテ管理プログラム74は、コンソール13を構成するコンピュータを、無線タグリーダ21と併せて電子カセッテ管理装置として機能させるためのプログラムである。
メモリ70は、CPU71が処理を実行するためのワークメモリである。CPU71は、ストレージデバイス28に記憶されたプログラムをメモリ70へロードして、プログラムにしたがった処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
通信部72は、電子カセッテ15の通信部43と無線または有線接続される。また、通信部72には無線タグリーダ21が接続され、使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りの検知結果を無線タグリーダ21から受信する。さらに、通信部72は、医療施設内に敷設されたLAN(Local Area Network)等のネットワーク75を介して、他のコンソール13等の外部装置との各種情報の伝送を行うネットワークインターフェースの機能を有する。通信部72は、電子カセッテ15から電源オン/オフ信号やX線画像を受信し、電子カセッテ15に選択信号や撮影条件を送信する。また、通信部72は、無線タグリーダ21の検知結果を他のコンソール13から受信し、かつ自らに接続された無線タグリーダ21の検知結果を他のコンソール13に送信する。
図8において、CPU71は、電子カセッテ管理プログラム74を起動すると、メモリ70と協働して、取得部80および報知制御部81として機能する。
第1コンソール13Aの第1取得部80Aは、第1通信部72Aで受信した、第1無線タグリーダ21Aによる第1使用領域20Aに対する電子カセッテ15の出入りの検知結果(第1検知結果)を取得する。また、第1取得部80Aは、第2コンソール13Bからネットワーク75経由で送信されて第1通信部72Aで受信した、第2無線タグリーダ21Bによる第2使用領域20Bに対する電子カセッテ15の出入りの検知結果(第2検知結果)を取得する。第1取得部80Aは、取得した第1、第2検知結果を第1報知制御部81Aに受け渡す。
第1報知制御部81Aは、第1取得部80Aからの第1、第2検知結果に基づいて、第1スピーカー27Aの駆動を制御する。より具体的には図9(A)に示すように、第1報知制御部81Aは、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が持ち出され、第1検知結果に基づいて、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が出たと判定した場合に第1スピーカー27Aを駆動して報知を開始する。第1スピーカー27Aによる報知が開始された後、図9(B)に示すように、第1使用領域20Aに電子カセッテ15が戻され、第1検知結果に基づいて、第1使用領域20Aに電子カセッテ15が入ったと判定した場合、第1報知制御部81Aは、第1スピーカー27Aの駆動を停止して報知を停止する。また、図9(C)に示すように、第2使用領域20Bに電子カセッテ15が持ち込まれ、第2検知結果に基づいて、第2使用領域20Bに電子カセッテ15が入ったと判定した場合も、第1報知制御部81Aは、第1スピーカー27Aの駆動を停止して報知を停止する。一方、図9(D)に示すように、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が持ち出された後、第1、第2検知結果に基づいて、第1使用領域20A、第2使用領域20Bのいずれにも電子カセッテ15が入ったと判定しなかった場合、第1報知制御部81Aは、第1スピーカー27Aによる報知を継続させる。なお、図8、図9では、第1コンソール13Aを主体として説明したが、第2コンソール13Bについても同様である。例えば、第2コンソール13Bの第2報知制御部81Bは、第2検知結果に基づいて、第2使用領域20Bから電子カセッテ15が持ち出され、第2使用領域20Bから電子カセッテ15が出たと判定した場合に第2スピーカー27Bを駆動して報知を開始する。
以下、上記構成による作用について、図9、および第1コンソール13Aと第1無線タグリーダ21Aの作動手順を示す図10、図11のフローチャートを参照して説明する。まず、ステップS10に示すように、第1コンソール13Aと第1無線タグリーダ21Aが起動される。ステップS11に示すように、第1無線タグリーダ21Aは、定期的に探査信号を送信し、電子カセッテ15の無線タグ50からの応答信号を受信することで、第1使用領域20Aに対する電子カセッテ15の出入りを検知する作動を開始する。第1取得部80Aにより、第1通信部72Aを介した第1無線タグリーダ21Aの検知結果である第1検知結果の取得が開始される(ステップS12)。
第2無線タグリーダ21Bも第1無線タグリーダ21Aと同様に、第2使用領域20Bに対する電子カセッテ15の出入りを検知する作動を開始している。この第2無線タグリーダ21Bの検知結果である第2検知結果は、第2コンソール13Bの第2通信部72Bから、ネットワーク75、および第1通信部72Aを介して第1取得部80Aに入力される。これにより、第1取得部80Aによる第2検知結果の取得が開始される(ステップ13)。以上により第1コンソール13Aと第1無線タグリーダ21Aによる第1使用領域20Aに対する電子カセッテ15の出入りの管理が開始される(ステップS14)。
ステップS14の管理開始後、第1報知制御部81Aにより、第1使用領域20Aに電子カセッテ15が有ると判定された場合(ステップS15でYES)、ステップS16に移行する。一方、第1使用領域20Aに電子カセッテ15がないと判定された場合(ステップS15でNO)、図11のステップS30に移行する。
図9(A)に示すように、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が持ち出され、第1報知制御部81Aにより、第1検知結果に基づいて、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が出たと判定された場合(ステップS16でYES)、第1スピーカー27Aが駆動されて報知が開始される(ステップS17)。
このため、例えば、第2撮影室2Bの第2使用者RBが、第1撮影室2Aにある電子カセッテ15を第2撮影室2Bで使用するため、第1通用口8Aから通路7に電子カセッテ15を持ち出した場合や、使用者R以外の他者が、第1撮影室2Aにある電子カセッテ15を盗むために不正に持ち出した場合も、第1スピーカー27Aの報知が開始される。第1撮影室2Aにいる第1使用者RAが作業をしていて、第1撮影室2Aから電子カセッテ15を持ち出すところを見ていなくても、何者かが電子カセッテ15を持ち出したことを即座に第1使用者RAに報せることができる。
第1スピーカー27Aによる報知が開始された後、図9(D)に示すように、第1報知制御部81Aにより、第1使用領域20Aまたは第2使用領域20Aに電子カセッテ15が入ったと判定されない間(S18でNO)は、報知が継続される。このため、使用者R以外の他者が、第1撮影室2Aの電子カセッテ15を盗むために不正に持ち出した場合は報知が継続される。したがって、電子カセッテ15が盗み目的で持ち出されたことを第1使用者RAに気付かせることができ、医療施設の警備員に報せる等の対策をとることができる。
図9(B)に示すように、第1使用領域20Aに電子カセッテ15が戻されるか、図9(C)に示すように、第2使用領域20Bに電子カセッテ15が持ち込まれ、第1または第2検知結果に基づいて、第1報知制御部81Aにより、第1使用領域20Aまたは第2使用領域20Bに電子カセッテ15が入ったと判定された場合(ステップS18でYES)、第1スピーカー27Aの駆動が停止されて報知が停止される(ステップS19)。電子カセッテ15が各撮影室2A、2B間を行き来する適正な運用の範囲に収まっている場合は報知が停止されるので、電子カセッテ15を適正な運用の範囲で使用しているにも関わらず報知が停止しないという煩わしさがない。
ステップS19の報知停止後、第1コンソール13Aと第1無線タグリーダ21Aによる第1使用領域20Aに対する電子カセッテ15の出入りの管理が継続され(ステップS20でYES)、第1報知制御部81Aにより、第1検知結果に基づいて、第1使用領域20Aに電子カセッテ15が有ると判定された場合(ステップS21でYES)、ステップS16に移行する。一方、第1報知制御部81Aにより、第2検知結果に基づいて、第1使用領域20Aではなく第2使用領域20Bに電子カセッテ15が有ると判定された場合(ステップS21でNO)は、図11のステップS31に移行する。
図11において、第1報知制御部81Aにより、第2検知結果に基づいて、第2使用領域20Bに電子カセッテ15がないと判定された場合(ステップS30でNO)、図10のステップS17に移行し、第1スピーカー27Aが駆動されて報知が開始される。一方、第1報知制御部81Aにより、第2検知結果に基づいて、第2使用領域20Bに電子カセッテ15が有ると判定され(ステップS30でYES)、かつ第2検知結果に基づいて、第2使用領域20Bから電子カセッテ15が出たと判定された場合(ステップS31でYES)、第1スピーカー27Aによる報知は開始されない。しかし、第2報知制御部81Bにより、第2スピーカー27Bが駆動されて第2スピーカー27Bにより報知が開始される。
その後、第1または第2検知結果に基づいて、第1報知制御部81Aにより、第1使用領域20Aまたは第2使用領域20Bに電子カセッテ15が入ったと判定された場合(S32でYES)、第2報知制御部81Bでも同様に第1使用領域20Aまたは第2使用領域20Bに電子カセッテ15が入ったと判定され、第2スピーカー27Bの駆動が停止されて報知が停止される。
第1報知制御部81Aにより、第1検知結果に基づいて、第1使用領域20Aに電子カセッテ15が有ると判定された場合(ステップS33でYES)、図10のステップS16に移行する。一方、第1報知制御部81Aにより、第2検知結果に基づいて、第1使用領域20Aではなく第2使用領域20Bに電子カセッテ15が有ると判定された場合(ステップS33でNO)は、ステップS31に移行する。
なお、スピーカー27の音声による報知に加えて、あるいは代えて、ディスプレイ25を明滅させたり、コンソール13とは別体の警告ランプを点灯させたりしてもよい。また、上記第1実施形態では、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が出た場合のみ第1スピーカー27Aを駆動させて報知しているが、第2使用領域27Bも含めてとにかく使用領域20から電子カセッテ15が出た場合は全てのスピーカー27を駆動させて報知してもよい。さらに、電子カセッテ15にスピーカーやインジケータを設けて、電子カセッテ15のスピーカーやインジケータで報知してもよい。
コンソール13は使用領域20内に存在していなくてもよい。例えば撮影室2と、コンソール13が設置される操作室とが分かれている場合は、使用領域20の範囲は操作室に及ばなくてもよい。また、使用領域20は一部が重複していてもよい。1つの使用領域20を、少なくとも1台のコンソール13で管轄すればよい。
使用領域20が一部重複している場合、電子カセッテ15が使用領域20の重複部分に入ると、一部重複する2つの使用領域20を管轄するコンソール13の取得部80で、電子カセッテ15が使用領域20内に存在する旨の検知結果が取得され、一部重複する2つの使用領域20を管轄するコンソール13の報知制御部81で、自らの管轄する使用領域20内に電子カセッテ15が存在すると判定される。つまり、1台の電子カセッテ15が2つの使用領域20に存在すると判定される。この1台の電子カセッテ15が2つの使用領域20に存在すると判定された状態で、電子カセッテ15が使用領域20の重複部分から一方の使用領域20に移動した場合は、他方の使用領域20から出たと一旦判定されるが、すぐに一方の使用領域20に入ったと判定されるため、報知は開始されない。電子カセッテ15が使用領域20の重複部分から使用領域20外に移動した場合は、一部重複する2つの使用領域20を管轄するコンソール13のスピーカー27が駆動されて報知が開始される。
上記第1実施形態では、撮影室2に据え置かれる据え置き型のコンソール13を例示したが、コンソール13は、X線撮影時に使用者Rが手に持ちながら作業をすることが可能な携帯型コンソールでもよい。携帯型コンソールは、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パソコン等である。携帯型コンソールの場合は、据え置き型コンソール13のように管轄する使用領域20が固定ではなく、移動先の使用領域20が管轄する使用領域20となる。
上記第1実施形態では、説明を簡単化するため、第1、第2の2つの使用領域20A、20Bが設定された例を記載したが、使用領域は2つ以上設定されていてもよい。
例えば図12に示すように、第1撮影室2A、第2撮影室2B、第3撮影室2C、および回診車85に対して、それぞれ第1使用領域20A、第2使用領域20B、第3使用領域20C、第4使用領域20Dを設定する。第1〜第3撮影室2A〜2Cには、第1コンソール13A、第2コンソール13B、第3コンソール13Cと、電子カセッテ15A、15B、15Cがそれぞれ配されている。回診車85は、X線源10、第4コンソール13D、および収納ボックス86を、移動可能な台車87に一体的に搭載した構成である。収納ボックス86には電子カセッテ15Dが収納されている。
各コンソール13A〜13Dは、ネットワーク75(図7参照)を介して相互接続されている。また、第1〜第3撮影室2A〜2C、および回診車85には、第1無線タグリーダ21A、第2無線タグリーダ21B、第3無線タグリーダ21C、第4無線タグリーダ21Dがそれぞれ配されている。なお、出入口6や通路7、X線源10や各撮影台11、12等の図示は省略している。
回診車85に設定された第4使用領域20Dは、例えば、UHF帯の送受信可能範囲である、回診車85を中心とした直径2m〜5m程度の範囲である。各電子カセッテ15A〜15Dは、上記第1実施形態と同じものであり、電子カセッテ15A、15Bは同じタイプ、電子カセッテ15C、15Dは異なるタイプである。
この場合も上記第1実施形態と同様に、各使用領域20A〜20Dのいずれかから電子カセッテ15が出たと判定した場合にスピーカー27による報知を開始する。その後、各使用領域20A〜20Dのいずれかに電子カセッテ15が入ったと判定した場合は報知を停止する。
回診車85のような移動可能な対象に使用領域20を設定すれば、回診車85から電子カセッテ15を持ち出した場合だけでなく、回診した病室に電子カセッテ15を置き忘れて回診車85を移動させた場合も報知が行われるので、電子カセッテ15の病室への置き忘れも防止することができる。
以下の第2〜第5実施形態では、この図12に示す、4台の電子カセッテ15A〜15Dを4つの使用領域20A〜20Dで行き来させて使い回す運用をする構成を前提に説明する。
[第2実施形態]
検知結果は使用領域20毎に設けられた無線タグリーダ21のIDを含むので、検知結果によれば、使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りだけでなく、電子カセッテ15が今いる使用領域20、つまり電子カセッテ15の現在位置も分かる。例えば第4使用領域20Dに電子カセッテ15が入ったことを示す検知結果は、第4使用領域20D内に電子カセッテ15が存在し、電子カセッテ15の現在位置が回診車であることを示している。そこで、本実施形態では、図13に示すように、コンソール13のCPU71を、電子カセッテ15の現在位置をストレージデバイス28に記録する記録制御部90と、現在位置をディスプレイ25に表示する表示制御部91として機能させる。
この場合、取得部80は、通信部72から取得した検知結果を報知制御部81および記録制御部90に受け渡す。また、図14に示すように、図2のカセッテ登録テーブル30に現在位置の項目を追加したカセッテ登録テーブル92をストレージデバイス28に記憶する。記録制御部90は、取得部80からの検知結果により判明する、電子カセッテ15の現在位置を、カセッテ登録テーブル92の現在位置の項目に記録する。記録制御部90は、現在位置が変わる度にカセッテ登録テーブル92の現在位置の項目を更新する。本例では、電子カセッテ15Aは第1撮影室2A(第1使用領域20A)、電子カセッテ15Bは第2撮影室2B(第2使用領域20B)、電子カセッテ15Cは第3撮影室2C(第3使用領域20C)、電子カセッテ15Dは回診車85(第4使用領域20D)がそれぞれ現在位置として記録されている。
表示制御部91は、入力デバイス26を介した使用者Rの操作指示に応じて、記録制御部90が記録した現在位置をカセッテ登録テーブル92から読み出し、読み出した現在位置に基づいて、図15に示す現在位置確認ウィンドウ93をディスプレイ25に表示させる。現在位置確認ウィンドウ93は、各電子カセッテ15A〜15Dの名称と、その現在位置を羅列したものである。この現在位置確認ウィンドウ93により、使用者Rは電子カセッテ15の現在位置を確認することができる。
このように電子カセッテ15の現在位置を使用者Rに報せることができれば、複数の使用領域で電子カセッテ15を行き来させて使い回す運用をする場合、使用したい電子カセッテ15を使用者Rが自ら歩き回って探す手間が省かれる。また、電子カセッテ15の現在位置がすぐに分かるので、使用者Rは、電子カセッテ15を持ち出すときに一々断ったり、持ち出した後に報せたりする等の気遣いをすることなく、電子カセッテ15を自由に持ち出すことができる。したがって、電子カセッテ15の機動性を最大限に活用することができる。
なお、図13に示す「検知結果」は、当該コンソール13が管轄する使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りの検知結果を示し、「他の検知結果」は、当該コンソール13以外のコンソール13から送信される、当該コンソール13以外のコンソール13が管轄する使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りの検知結果を示す(図19、図23も同様)。例えば当該コンソール13が第1コンソール13Aであった場合、「検知結果」は、第1無線タグリーダ21Aから送信される第1検知結果、「他の検知結果」は、第2〜第4コンソール13B〜13Dから送信される第2〜第4検知結果である。また、当該コンソール13が第2コンソール13Bであった場合、「検知結果」は、第2無線タグリーダ21Bから送信される第2検知結果、「他の検知結果」は、第1コンソール13A、第3コンソール13C、第4コンソール13Dから送信される第1、第3、第4検知結果である。
[第3実施形態]
第2実施形態では、電子カセッテ15の現在位置を記録し表示しているが、本実施形態では、現在位置だけでなく電子カセッテ15の過去の現在位置の履歴である電子カセッテ15の移動履歴も記録し、これらを表示する。検知結果を継続して記録していけば、電子カセッテ15の移動履歴も分かる。例えば、第1使用領域20Aにある電子カセッテ15Aが、第3使用領域20Cに移動したことを示す検知結果は、電子カセッテ15Aの現在位置が第1使用領域20Aから第3使用領域20Cに移動したことを示している。なお、本実施形態のコンソール13のCPU71の機能部は第2実施形態の図13に示すものと同じであるため説明を省略する。
この場合、図16に示すように、図14のカセッテ登録テーブル92にさらに移動履歴の項目を追加したカセッテ登録テーブル95(電子カセッテ15C、15Dについては図示省略)をストレージデバイス28に記憶する。移動履歴の項目は、過去の4つの現在位置と、当該現在位置から移動した日時(報知制御部81が使用領域20から電子カセッテ15が出たと判定した日時)とを含む。記録制御部90は、取得部80からの検知結果により判明する、電子カセッテ15の現在位置を、カセッテ登録テーブル95の現在位置の項目に記録し、かつそれまで記録されていた現在位置と、報知制御部81が使用領域20から電子カセッテ15が出たと判定した日時とで移動履歴の項目を更新する。
電子カセッテ15Aを例に説明すると、現在位置が第1撮影室2Aとなっている図示の状態から、例えば検知結果によって現在位置が回診車85に変わった場合は、現在位置の項目に回診車85を記録する。そして、最も古い過去の現在位置である回診車85およびその日時(2014.3.12 11:06)を消去し、2番目に古い現在位置である第1撮影室2Aおよびその日時(2014.3.12 14:20)を最も古い過去の現在位置の項目に移す。これを各々の過去の現在位置の項目に対して順繰りに実行し、最後にそれまで現在位置の項目に記録されていた第1撮影室2Aとその日時を1番新しい過去の現在位置の項目に記録する。
表示制御部91は、入力デバイス26を介した使用者Rの操作指示に応じて、記録制御部90が記録した現在位置および移動履歴をカセッテ登録テーブル95から読み出し、読み出した現在位置および移動履歴に基づいて、図17に示す現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96をディスプレイ25に表示させる。現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96は、電子カセッテ15の名称(ここでは電子カセッテ15AであるAカセッテを例示)と、その現在位置および移動履歴を表示したものである。現在位置の横には現在の日時、移動履歴の過去の4つの現在位置の横には移動履歴の項目に記録された日時が記される。この現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96により、使用者Rは電子カセッテ15の現在位置および移動履歴を確認することができる。
このように電子カセッテ15の現在位置に加えて移動履歴も使用者Rに報せることができれば、電子カセッテ15がどういった使用経路を辿って現在位置にあるかが一目で分かる。撮影室2や回診車85に応じて電子カセッテ15の作動方式を手動で切り替える必要がある場合、移動履歴を確認することができれば、作動方式を切り替える必要があるか否かがすぐ分かり、作業をスムーズに行うことができる。
移動履歴として記録する過去の現在位置は、上記の4つに限らない。また、現在位置の数ではなく、例えば1か月分等の一定期間の過去の現在位置を移動履歴として記録してもよい。このようにある程度の数の移動履歴を記録しておけば、どの位置でどれだけその電子カセッテが使用されたかという電子カセッテ15の使用傾向が分かるため、電子カセッテ15の配置計画を立てる際に役立てることができる。
撮影室2や回診車85に応じて電子カセッテ15の作動方式を手動で切り替える必要がない場合等は、使用者Rにとっては、少なくとも使用したい電子カセッテ15の現在位置が分かればよい。そこで、現在位置のみを表示するか、現在位置に加えて移動履歴も表示するかを使用者Rが設定可能としてもよい。
なお、当該コンソール13が管轄する使用領域20から電子カセッテ15が出た場合と、当該コンソール13以外のコンソール13が管轄する使用領域20から電子カセッテ15が出た場合とで、移動履歴を区別して表示してもよい。第1使用領域20Aを管轄する第1コンソール13Aを例に説明すると、第1使用領域20Aから電子カセッテ15が出た場合と、第2〜第4使用領域20B〜20Dから電子カセッテ15が出た場合とで、移動履歴を区別して表示する。より具体的には、第1コンソール13Aの第1CPU71Aに構築される第1表示制御部91Aは、図18に示す現在位置・移動履歴確認ウィンドウ100を第1ディスプレイ25Aに表示させる。
図18において、現在位置・移動履歴確認ウィンドウ100には、図17の現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96の表示に加えて、移動履歴に「移動」、「持ち出し」の2種類の区別が付けられ、「持ち出し」の移動履歴には星印が付けられている。「移動」は、第2〜第4使用領域20B〜20D(第2撮影室2B、第3撮影室2C、および回診車85)から電子カセッテ15A(Aカセッテ)が出た場合、「持ち出し」は、第1使用領域20A(第1撮影室2A)から電子カセッテ15Aが出た場合をそれぞれ示している。また、星印は、第1使用領域20A(第1撮影室2A)から電子カセッテ15Aが出て、第1コンソール13Aの第1スピーカー27Aで報知を行ったことを示している。図18では、第1撮影室2Aから第2撮影室2Bに電子カセッテ15Aを持ち出した「3.第2撮影室」の移動履歴に「持ち出し」および星印が表示されている。
こうすることで、当該コンソール13が管轄する使用領域20から電子カセッテ15が出た場合の移動履歴の表示を目立たせることができる。なお、移動履歴を区別して表示する方法としては、移動履歴を示す文字の表示色やフォントを変えたり、太字、斜体にしたり、点滅させたりする方法を採用してもよい。
図17、図18では、Aカセッテの現在位置および移動履歴を表示させる例を挙げたが、表示制御部91は、カセッテ登録テーブル95に登録されている全ての電子カセッテ15の現在位置および移動履歴を表示させることが可能である。
現在位置や移動履歴の表示の仕方としては、図15の現在位置確認ウィンドウ93や図17、図18の現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96、100に限らない。例えば、図3に示すカセッテ選択ウィンドウ31の電子カセッテ15の名称を選択すると、その現在位置および移動履歴が別ウィンドウでポップアップ表示されるようにしてもよい。こうすれば、撮影に使用する電子カセッテ15を選択する際に、併せて現在位置および移動履歴も確認することができるので好適である。
上記第2、第3実施形態に携帯型コンソールを適用した場合、電子カセッテ15の現在位置や移動履歴を据え置き型のコンソールにアクセスすることなく手軽に確認することができるため、手元の携帯型コンソールで使用したい電子カセッテ15の現在位置や移動履歴を確認し、確認した現在位置に移動して使用したい電子カセッテ15を確保する等ができ、円滑に作業を進めることができる。
[第4実施形態]
上記第1実施形態の電子カセッテ15A、15Bの説明で述べたように、電子カセッテ15は、主に使用する撮影室や回診車が医療施設によって決まっている場合がある。そこで、本実施形態では、図19に示すように、コンソール13のCPU71を、電子カセッテ15を主に使用する撮影室の位置や回診車を示す定位置を設定する定位置設定部105として機能させる。なお、本実施形態では、上記第3実施形態と同じく、記録制御部90により現在位置および移動履歴を記録する。
この場合、図20に示すように、図16のカセッテ登録テーブル95にさらに定位置の項目を追加したカセッテ登録テーブル106をストレージデバイス28に記憶する。定位置の設定は、例えばカセッテ登録テーブル106に登録された各電子カセッテ15A〜15Dの定位置を、第1〜第3撮影室2A〜2Cおよび回診車85のうちから、入力デバイス26を介して使用者Rに選択させることによって行われる。定位置設定部105は、カセッテ登録テーブル106の定位置の項目に、入力デバイス26を介して設定された定位置を記録する。本例では、電子カセッテ15A〜15Cの定位置にはそれぞれ第1〜第3撮影室2A〜2C、電子カセッテ15Dの定位置には回診車85が設定されている。
記録制御部90は、定位置設定部105で設定した定位置以外の位置から定位置に現在位置が復帰した場合、移動履歴のうちの直前の現在位置を残して他を消去する。図20では、電子カセッテ15Aが、定位置である第1撮影室2Aに復帰しているので、直前の現在位置(回診車85)を残して他の移動履歴が記録制御部90により消去されている。一方、電子カセッテ15Bは、定位置である第2撮影室2Aに復帰していないため、4つの過去の現在位置が移動履歴として消去されずに記録されている。
使用したい電子カセッテ15が定位置に復帰している場合、定位置にいる使用者Rにとっては、そこに使用したい電子カセッテ15があるため、移動履歴はさほど重要な情報とはならない。したがって、上記のように移動履歴の一部を消去しても問題にならない。使用者Rにとってさほど重要ではない情報である移動履歴の一部を自動的に消去するので、ストレージデバイス28への容量負荷を軽減することができる。また、この場合、現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96、100には消去された移動履歴は表示されないので、移動履歴の表示をすっきりと見やすくすることができる。
なお、定位置設定部105で設定した定位置以外の位置から定位置に現在位置が復帰した場合に消去する移動履歴としては、上記の直前の現在位置以外の移動履歴に代えて、全移動履歴を消去してもよいし、直前と2つ前の現在位置以外の移動履歴や、当該コンソール13以外のコンソール13が管轄する使用領域20から電子カセッテ15が出た場合の移動履歴等、特定の移動履歴を選択的に消去してもよい。また、設定可能な定位置は1つに限らない。例えば、主に使用する撮影室や回診車が決まっておらず、各位置で偏りなく使用される電子カセッテ15の場合、全ての位置を定位置として設定してもよい。
[第5実施形態]
上記第4実施形態では、定位置の設定を、入力デバイス26を介して使用者Rに行わせると説明したが、移動履歴を参照し、移動履歴で存在する頻度が高い位置をその電子カセッテ15の定位置として設定してもよい。具体的には、本実施形態の定位置設定部105は、カセッテ登録テーブル106の移動履歴の項目を解析し、各電子カセッテ15A〜15Dが第1〜第3撮影室2A〜2C、および回診車85に存在した回数を集計して、図21に示す集計テーブル107(電子カセッテ15C、15Dについては図示省略)を作成する。そして、集計テーブル107で回数が最も多い位置を定位置に設定する。
具体的には、ハッチングで示すように、電子カセッテ15Aは、回診車85に存在する回数が最も多いので、定位置設定部105は、回診車85を電子カセッテ15の定位置として設定する。また、電子カセッテ15Bは、第2撮影室2Bに存在する回数が最も多いので、定位置設定部105は、第2撮影室2Bを電子カセッテ15の定位置として設定する。電子カセッテ15についても同様に、存在する回数が最も多い位置を定位置として設定する。こうすることで、より実際の運用に即した位置を定位置として設定することができる。
なお、上記第4実施形態と同じく、本実施形態においても設定可能な定位置は1つに限らない。例えば、存在する回数が最も多い位置と2番目に多い位置を定位置として設定してもよい。また、本実施形態では、各位置に存在した回数に基づき定位置を設定するため、設定のもっともらしさを担保するために、電子カセッテ15が現在位置に復帰しても移動履歴は消去せずに比較的長い期間を記録することが好ましい。さらに、定位置の設定が頻繁に変更されることを避けるため、定位置の設定は、1か月毎等の定期的な期間毎に行うことが好ましい。
上記第4実施形態と本実施形態を組み合わせて、使用者Rによる定位置の設定と各位置に存在する回数に基づく定位置の設定とを複合して行ってもよい。この場合、最初は定位置を使用者Rによる設定とし、移動履歴がある程度記録されたら回数に基づく定位置の設定に切り替える。
上記各実施形態では、図22の第1使用領域20Aのように、1つの使用領域20を、1台のコンソール13(第1コンソール13A)で管轄しているが、図22の第2使用領域20Bのように、1つの使用領域20を、複数台のコンソール13(2台の第2コンソール13B−1、13B−2)で管轄してもよい。
この場合、各コンソール13B−1、13B−2は互いに接続されている。各コンソール13B−1、13B−2の取得部80B−1、80B−2は、第2無線タグリーダ21Bの第2検知結果を取得し、また、第1使用領域20Aの第1コンソール13Aからの第1検知結果も取得する。各コンソール13B−1、13B−2の報知制御部81B−1、81B−2は、上記第1実施形態と同様に作動する。このため、第2使用領域20Bから電子カセッテ15が出たときには、各コンソール13B−1、13B−2のスピーカー27B−1、27B−2から報知が行われる。また、各コンソール13B−1、13B−2の記録制御部90B−1、90B−2は、それぞれ現在位置や移動履歴を記録する。
[第6実施形態]
図22の第2使用領域20Bのように、1つの使用領域20を、複数台のコンソール13で管轄する場合、使用領域20から電子カセッテ15が出たときに、複数台のコンソール13のスピーカー27から報知が行われると煩わしい。複数台のコンソール13のうちの1台のスピーカー27で報知が行われれば十分である。また、現在位置や移動履歴も、複数台のコンソール13のうちの1台で記録すれば十分である。
そこで、本実施形態では、図23に示すように、コンソール13のCPU71を、1つの使用領域20を、複数台のコンソール13で管轄する場合、複数台のコンソール13のうち、報知制御部81および記録制御部90を作動させるコンソール(以下、マスターコンソールという)を設定する作動設定部110として機能させる。
この場合、複数台のコンソール13のうちのいずれをマスターコンソールとするかを、予めマスターコンソールとしたいコンソール13の入力デバイス26を介して使用者Rが設定する。そして、各コンソール13間の通信を確立した際に、マスターコンソールから他のコンソール(以下、スレイブコンソールという)に対して、報知制御部81および記録制御部90を作動させないよう指示するスレイブ設定信号(図24参照)を送信する。
スレイブコンソールの取得部80は、通信部72を介して受信したスレイブ設定信号を取得し、これを作動設定部110に受け渡す。作動設定部110は、スレイブ設定信号を受けて、報知制御部81および記録制御部90を作動させない設定とする。したがって、スレイブコンソールは、スピーカー27による報知、および記録制御部90による現在位置や移動履歴の記録は行わない。一方、マスターコンソールの作動設定部110は、報知制御部81および記録制御部90を作動させる設定とする。こうすることで、スピーカー27による報知、および現在位置や移動履歴の記録を1台のマスターコンソールに担わせることができ、各コンソール13のスピーカー27から報知が行われるといった煩わしさが解消される。
なお、複数台のコンソール13に携帯型コンソールが含まれている場合は、使用者Rの設定に関わらず携帯型コンソールを自動的にマスターコンソールに設定し、携帯型コンソールの報知制御部81および記録制御部90を作動させる設定としてもよい。
具体的には図24に示すように、1つの使用領域20を、1台の据え置き型コンソール13Xと、1台の携帯型コンソール13Yとで管轄する場合、据え置き型コンソール13Xと携帯型コンソール13Yの通信を確立した際に、携帯型コンソール13Yから据え置き型コンソール13Xにスレイブ設定信号を自動送信する。据え置き型コンソール13Xは、スレイブ設定信号を受信した旨の応答信号(図示せず)を携帯型コンソール13Yに返信する。
据え置き型コンソール13Xは、作動設定部110Xにより報知制御部81Xおよび記録制御部90Xが作動しない設定とされ、スレイブコンソールとして機能する。一方、携帯型コンソール13Yは、作動設定部110Yにより報知制御部81Yおよび記録制御部90Yが作動する設定とされ、マスターコンソールとして機能する。
携帯型コンソール13Yは、X線撮影時に使用者Rが手に持ちながら作業をするため、据え置き型コンソール13Xよりも使用者Rの身近にあり、使用者Rがより報知に気付きやすく、現在位置や移動履歴の参照も手軽に行える。このため、携帯型コンソール13Yを自動的にマスターコンソールとすれば、利便性を高めることができる。
[第7実施形態]
上記各実施形態では、使用領域20の範囲を固定しているが、本実施形態では、図25に示すように、コンソール13のCPU71を、電子カセッテ15の動作状態に応じて使用領域20の範囲を設定する範囲設定部115として機能させる。範囲設定部115は、無線タグリーダ21の探査信号の送信可能範囲(周波数帯または電波強度またはその両方)を変更することで、使用領域20の範囲を変更する。周波数帯を変更する場合は、無線タグ50を複数周波数に対応可能な構成とする。
範囲設定部115は、電子カセッテ15の動作状態に関わる各種信号や情報に基づき、電子カセッテ15の現在の動作状態を認識する。電子カセッテ15の動作状態に関わる信号としては、電源オン/オフ信号および選択信号がある。電子カセッテ15の動作状態に関わる情報としては、X線画像の受信有無がある。
範囲設定部115は、通信部72で電子カセッテ15からの電源オフ信号を受信してから、通信部72で電子カセッテ15からの電源オン信号を受信し、通信部72から電子カセッテ15に選択信号を送信するまでは、電子カセッテ15の現在の動作状態が非選択状態であると認識する。また、範囲設定部115は、通信部72から電子カセッテ15に選択信号を送信してから、他の電子カセッテ15に選択信号を送信するか、電子カセッテ15の動作状態がスリープ状態に移行したと認識するまでは、電子カセッテ15の現在の動作状態が選択状態であると認識する。電子カセッテ15の動作状態がスリープ状態に移行したかどうかは、通信部72から電子カセッテ15に選択信号を送信してからの経過時間、および通信部72で電子カセッテ15からのX線画像を受信してからの経過時間を計時することで行う。範囲設定部115は、計時した経過時間が所定時間となる間に電子カセッテ15に関わる新たなアクションがない場合に、電子カセッテ15の動作状態がスリープ状態であると認識する。
範囲設定部115は、図26に示す範囲設定テーブル116にしたがって使用領域20の範囲を設定する。範囲設定テーブル116は、電子カセッテ15の動作状態と使用領域20の範囲の関係を示すもので、ストレージデバイス28に記憶される。使用領域20の範囲は、非選択状態の場合は「5m」、選択状態の場合は「2m」がそれぞれ設定されている。
範囲設定部115により、使用領域20の範囲は、電子カセッテ15の動作状態に応じて例えば図27のように遷移する。すなわち、電子カセッテ15の動作状態が電源オフの状態、電源オン後の待機状態、並びにスリープ状態の非選択状態の場合は使用領域20の範囲は5m、選択信号送受信後の待機状態、レディ状態、画像取得状態、および画像取得状態の後の待機状態の選択状態の場合は使用領域20の範囲は2mに設定される。
動作状態が電源オフの状態の電子カセッテ15は、すぐに使用することはないので、使用者Rは、電源オフの状態の電子カセッテ15の持ち出しに特に目を配っていない。このため、主に使用者R以外の他者の盗み目的の不正な電子カセッテ15の持ち出しを使用者Rに気付かせるために、使用領域20の範囲を選択状態の場合よりも広く設定する。また、電源オン後の待機状態、並びにスリープ状態の電子カセッテ15も同様にすぐに使用することはないため、使用領域20の範囲を選択状態の場合よりも広く設定する。
一方、選択信号送受信後の待機状態では、使用者Rは、撮影に使用する電子カセッテ15を選択して患者Pのポジショニングおよび撮影条件の設定を行おうとしている最中であり、レディ状態では、患者Pのポジショニングおよび撮影条件の設定が済んで、まさに撮影を開始する直前であり、画像取得状態では撮影中であるため、電子カセッテ15は使用者Rの監視下にある。したがって待機状態、レディ状態、および画像取得状態では、電子カセッテ15が持ち出されることは普通考えられない。このため、使用領域20の範囲を非選択状態と比べて狭く設定する。
なお、待機状態、レディ状態、および画像取得状態では、電子カセッテ15は使用者Rの監視下にあって電子カセッテ15が持ち出されることは普通考えられないが、使用者Rが撮影条件の設定を行っていて電子カセッテ15から目を離している隙に持ち出されるといった万一の事態に備えて、使用領域20の範囲を2mに設定している。
このように、電子カセッテ15を撮影に使用すると選択されていない非選択状態と比べて、電子カセッテ15を撮影に使用すると選択された選択状態の場合の使用領域20の範囲を狭めることで、使用者Rが電子カセッテ15の持ち出しに特に目を配っていない場合は、使用者Rの目に代わって電子カセッテ15の持ち出しを監視することができ、電子カセッテ15が使用者Rの監視下にある場合は、無線タグリーダ21による監視を必要最低限に止めることができる。また、選択状態の場合に使用領域20の範囲を狭めることによって、電子カセッテ15が使用者Rの目の届かない場所に持ち去られる前に報知を行うことができ、電子カセッテ15の持ち出しを使用者Rにいち早く気付かせることができる。
なお、図28に示す範囲設定テーブル117のように、非選択状態のうちでも、電源オフの状態の5mと比べてスリープ状態の場合の使用領域20の範囲を3mと狭めたり、選択状態のうちでも、選択信号送受信後の待機状態の2mと比べてレディ状態の場合の使用領域20の範囲を1mと狭める等、より細かく使用領域20の範囲を設定してもよい。
「使用領域20の範囲を狭める」とは、使用領域20の範囲を0mに設定する、すなわち当該使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りの検知を行わないことも含む。この場合、コンソール13で無線タグリーダ21の電源オン/オフを制御する構成とし、無線タグリーダ21の電源をオフすることで使用領域20の範囲を0mに設定する。あるいは、無線タグリーダ21からの検知結果を取得部80で破棄することによっても、実質的に使用領域20の範囲を0mに設定したことになる。特に選択状態では、電子カセッテ15は使用者Rの監視下にあって電子カセッテ15が持ち出されることは普通考えられないから、使用領域20の範囲を0mに設定してもよい。
使用領域20の範囲の設定の仕方としては、上記の無線タグリーダ21の探査信号の送信可能範囲を変更する代わりに、探査信号の送信可能範囲が異なる複数種類の無線タグリーダ21を用意し、範囲設定部115で使用する無線タグリーダ21を切り替えてもよい。
上記のように使用領域20の範囲を狭めた場合、撮影に使用する電子カセッテ15が1台だけ使用領域20に入っている場合は問題ないが、撮影に使用する電子カセッテ15以外に電子カセッテ15が使用領域20に入っている場合は、使用領域20の範囲を狭めたことで、撮影に使用する電子カセッテ15以外の電子カセッテ15が検知の対象から外れ、もし持ち出されても報知が行われないという問題が生じる。このため、撮影に使用する電子カセッテ15が1台だけ使用領域20に入っていた場合のみ範囲設定部115を作動させて使用領域20の範囲を狭め、撮影に使用する電子カセッテ15以外に電子カセッテ15が使用領域20に入っていた場合は使用領域20の範囲を狭めることを中止することが好ましい。
なお、1つの使用領域20に同じタイプの電子カセッテ15が複数台存在していて、そのうちの1台が選択状態であった場合は、使用者Rにとっては、選択状態の電子カセッテ15以外の電子カセッテ15が持ち出されても撮影に支障がないため気にはならない。このため、こうした状況下では、適正な運用の範囲での選択状態の電子カセッテ15以外の電子カセッテ15の持ち出しは許容しつつ、不正な持ち出しのみを監視するために、使用領域20の範囲を通常よりも広く設定してもよい。
上記各実施形態では、使用する電子カセッテ15を予めコンソール13に登録する例を挙げたが、本発明では、電子カセッテ15のコンソール13への事前登録は必須ではない。ただし、電子カセッテ15をコンソール13に事前登録しておけば、電子カセッテ15毎に検知の対象とするか否か等を設定できるため好ましい。
上記各実施形態では、使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りを検知する検知部を構成する無線受信部として、電子カセッテ15に取り付けられた無線タグ50からの無線信号を受信する無線タグリーダ21を例示しているが、無線受信部は無線LANアクセスポイントでもよい。この場合、無線LANアクセスポイントは電子カセッテ15に設けられた無線送信部である無線LANインターフェースと信号を遣り取りすることで使用領域20に対する電子カセッテ15の出入りを検知する。
また、検知部としては、無線受信部の他に、例えば監視カメラを用いてもよい。検知部として監視カメラを用いた場合は、監視カメラが撮影する映像を解析することで電子カセッテ15の出入りを検知する。この場合は監視カメラが撮影する映像の範囲が使用領域20となる。あるいは、無線受信部や監視カメラの代わりに、出入口6や通用口8のドアに電子カセッテ15の出入りを検知するセンサを設けてもよい。
また、検知部(無線受信部)、取得部、および報知制御部を電子カセッテ15に設けてもよい。この場合、例えば、出入口6や通用口8のドアに無線信号を発信する発信装置を設け、電子カセッテ15の検知部で無線信号を受信する。検知部で無線信号を受信しなくなったことを検知したときに、報知制御部が使用領域20から出たと判定して、電子カセッテ15のスピーカー等を制御して報知を行う。また、報知が開始された後、再度検知部で無線信号を受信するようになった場合は、報知制御部が使用領域20に入ったと判定して報知を停止する。検知部の検知結果は、検知部が無線信号を受信しなくなったり、受信するようになったことをきっかけとし、検知部とは別の通信方式で電子カセッテ15からその使用領域20を管轄するコンソール13に送信し、コンソール13経由で他の使用領域20を管轄するコンソール13および電子カセッテ15に送信すればよい。
上記各実施形態では、電子カセッテ管理装置の機能を、各使用領域20を管轄する各コンソール13に担わせているが、例えば図29に示すように、コンソール13とは別のコンピュータを電子カセッテ管理装置として機能させてもよい。
図29において、電子カセッテ管理システム120は、1台の電子カセッテ管理装置121と、第1使用領域20A、第2使用領域20B、・・・に対する電子カセッテ15の出入りを検知する第1無線タグリーダ21A、第2無線タグリーダ21B、・・・とで構成される。各無線タグリーダ21A、21B、・・・は、電子カセッテ管理装置121に接続されている。また、各使用領域20A、20B、・・・は第1コンソール13A、第2コンソール13B、・・・がそれぞれ管轄しており、各コンソール13A、13B、・・・と電子カセッテ管理装置121はネットワーク75を介して相互接続されている。
電子カセッテ管理装置121を構成するコンピュータのCPUは、各無線タグリーダ21A、21B、・・・からの第1、第2、・・・検知結果を取得する取得部と、各使用領域20A、20B、・・・のいずれかから電子カセッテ15が出たと判定した場合に、コンソール13にスピーカー27による報知を開始するための報知開始指令を発し、報知が開始された後、各使用領域20A、20B、・・・のいずれかに電子カセッテ15が入ったと判定した場合に、コンソール13にスピーカー27による報知を停止するための報知停止指令を発する報知制御部として機能する。
この場合、現在位置や移動履歴の記録制御部は、電子カセッテ管理装置121を構成するコンピュータのCPUに構築され、現在位置や移動履歴は電子カセッテ管理装置121のストレージデバイスに記録される。電子カセッテ管理装置121は、コンソール13からの現在位置や移動履歴の送信要求に応じて、ストレージデバイスの現在位置や移動履歴をコンソール13に送信する。コンソール13を構成するコンピュータのCPUは表示制御部として機能し、表示制御部は、電子カセッテ管理装置121からの現在位置や移動履歴に基づき、現在位置確認ウィンドウ93や現在位置・移動履歴確認ウィンドウ96等をディスプレイ25に表示させる。このように、本発明の電子カセッテ管理装置121は、複数台のコンピュータに各機能部が分散して配置されていてもよいし、1台のコンピュータに各機能部が集約して配置されていてもよい。
また、定位置設定部や作動設定部、範囲設定部も電子カセッテ管理装置121を構成するコンピュータのCPUのみに構築される。
電子カセッテ管理装置の機能を、各使用領域20を管轄する各コンソール13に担わせるのではなく、1台のコンピュータに集約して担わせれば、各コンソール13に電子カセッテ管理プログラム74をインストールするといった手間が省ける。
電子カセッテ15は1台でもよい。また、無線タグ50は、電源を内蔵し自ら無線信号を発するアクティブタグでもよい。さらに、無線タグリーダ21の代わりに、情報を書き込むライタ機能を有する無線タグリーダ/ライタを用いてもよい。無線タグリーダ/ライタを用いた場合は、無線タグ50に現在位置や移動履歴の情報を書き込むことができる。
なお、上記各実施形態で示したとおり、本発明は、プログラムの形態、さらにはプログラムを記憶する記憶媒体にも及ぶ。また、本発明は、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、上記各実施形態は、単独で実施してもよいし、複合して実施してもよい。