以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リールの形式で除給材される布帛(原反)に、専用に染料インクを用いインクジェット方式で文様等を印刷する(捺染)するものである。なお、以下の説明では、布帛である記録媒体の正逆送り方向をX軸方向と、X軸方向に直交する方向をY軸方向と、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向と、規定する。
図1は、インクジェット記録装置の断面構造図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置1は、ロール状に巻回された記録媒体Wを繰り出して送る繰出部2と、繰り出された記録媒体Wを送り経路3に沿って印刷のために送る装置本体4と、装置本体4の上側に配設され、装置本体4と協働して記録媒体Wにインクジェット方式で印刷を行う印刷部5と、印刷部5により印刷された記録媒体Wを、装置本体4の送り方向下流側において巻き取って回収する巻取部6と、これら構成装置を統括制御する制御部7と、を備えている。
装置本体4は、鋼材を組んで構成した本体用機台11と、本体用機台11に支持され、記録媒体Wをベルト搬送によりX軸方向に間欠送りする媒体送り機構12と、を有している。印刷部5は、インクジェットヘッド15を有するキャリッジユニット14と、キャリッジユニット14をY軸方向に往復動させるヘッド移動機構16と、を有している。一方、繰出部2は、記録媒体Wを繰り出す繰出しユニット18と、繰り出され記録媒体Wの弛みを取る弛取りユニット19と、を有している。また、巻取部6は、記録媒体Wを巻き取る巻取りユニット21と、巻取りユニット21に間紙Pを供給する間紙ユニット22と、記録媒体Wを巻き取る前に記録媒体Wに浸み込んだ染料インクの溶剤(水分)を気化させるヒーターユニット23とを有し、これらを巻取部用機台24に搭載して構成されている。
繰出しユニット18から繰り出されて記録媒体W(布帛)は、弛取りユニット19により張られるようにして弛みが取られ、媒体送り機構12に送り込まれる。媒体送り機構12に送り込まれた記録媒体Wは、表面に粘着されるようにしてベルト搬送される。このベルト搬送では、記録媒体WがX軸方向に間欠送りされる(副走査)一方、これに同期してキャリッジユニット14がY軸方向に往復動し、インクジェットヘッド15からインク吐出が行われる(主走査)。
このようにして、印刷が行われた後、記録媒体Wの印刷済み部分(捺染済み部分)は、媒体送り機構12から巻取部6に送り出される。巻取部6では、媒体送り機構12から送り出された記録媒体Wに、間紙ユニット22から間紙Pが連続的に供給され、記録媒体Wと間紙Pとが重なってヒーターユニット23に送られる。ヒーターユニット23では、間紙Pと共に記録媒体Wが加熱され、染料インクの溶剤(水分)が気化される。このようにして、乾燥処理された捺染済みの記録媒体Wは、間紙Pと共に巻取りユニット21に巻き取られる。
繰出しユニット18は、上記の本体用機台11に固定された左右(Y軸方向)一対のT字状フレーム32、および一対のT字状フレーム32間に渡した複数本の棒状フレーム33から成る繰出しフレーム31と、一対のT字状フレーム32に両持ちで支持され、Y軸方向に延在する2本の繰出し側ロッドベース34と、2本の繰出し側ロッドベース34にスライド自在に支持された一対の繰出し軸突起35と、を有している。各繰出し軸突起35の先端部は円錐台形状に形成されており、一対の繰出し軸突起35は、記録媒体Wの幅に対応させた相互の幅寄せにより、それぞれの先端部をロール状の記録媒体Wのコアに嵌入させて、記録媒体Wを水平に支持している。
一対の繰出し軸突起35には、それぞれモーター駆動の幅移動ユニット36が組み込まれており、記録媒体Wに軸方向の巻ズレが生じている場合(検出)に、一対の繰出し軸突起35を2本の繰出し側ロッドベース34上において微小移動させ、記録媒体Wの媒体送り機構12に対する幅方向の位置ズレ、すなわち媒体送り機構12において記録媒体Wが蛇行(斜行)するのを防止している。
また、一対の繰出し軸突起35の一方には、モーター駆動の回転ユニット37が組み込まれており、この回転ユニット37により、一対の繰出し軸突起35を繰出し回転させて記録媒体Wを繰り出すようにしている。本実施形態では、記録媒体Wに一定のテンションを与えつつ繰り出すテンションモードと、可能な限りテンションを少なくして繰り出す弛みモードとがあり、記録媒体W別にモード切替えを行うようにしている。
テンションモードは、伸縮性の低い通常の布帛(記録媒体W)を対象とするものであり、この場合に制御部7は、回転ユニット37の制御系において、負荷(テンション)を取得し、この負荷が所定の値になるように回転ユニット37を制御するようにしている。
一方、弛みモードは、例えばストッキング地のように伸縮性の高い布帛(記録媒体W)を対象とするものであり、この場合には、繰り出した記録媒体Wがいったん下方に弛んでから(図1では破線で示す)、弛取りユニット19に送り込まれるように制御する。具体的には、弛ませた記録媒体Wの下端位置を検出するようにし、下端位置が所定の位置を越え弛みが大きくなったところで、回転ユニット37による記録媒体Wの繰出し動作を停止させるようにしている。
弛取りユニット19は、後述する媒体送り機構12のサイドフレーム62に固定された左右(Y軸方向)一対のL字状フレーム42、および一対のL字状フレーム42間に渡したロッドフレーム43から成る弛取りフレーム41と、一対のL字状フレーム42に両持ちで回転自在に支持されたローラー群44と、を有している。ローラー群44は、繰出しユニット18から送り込まれた記録媒体Wの送り経路3を複数個所で屈曲させるべく、送り方向の上流側から第1ローラー45、第2ローラー46、第3ローラー47および第4ローラー48の順で配設されている。
第1ローラー45は、摩擦係数の高いローラーで構成されており、その両端部を各L字状フレーム42の内側に取り付けた一対の傾斜ブロック49に載置されている。上流側が弛んだ状態の記録媒体Wは、この第1ローラー45の部分で第2ローラー46に向かって斜め外方に経路変更される。媒体送り機構12の間欠送りにより記録媒体Wが引かれる(送り)と、記録媒体Wと第1ローラー45との間の摩擦力により、第1ローラー45は、一対の傾斜ブロック49を上るように移動する。また、記録媒体Wの送りが停止すると、第1ローラー45は自重により一対の傾斜ブロック49を下って元の位置に戻る。これにより、送られてゆく記録媒体Wに適度なテンションが付与されると共に、間欠送りのショックが吸収される。
第1ローラー45を通過した記録媒体Wは、第2ローラー46でUターンするようにして第3ローラー47および第4ローラー48に達する。第3ローラー47および第4ローラー48は、上下に近接して配設されており、両端部を一体に形成した一対の軸受部51に回転自在に支持されている。また、各軸受部51は、L字状フレーム42に回動自在に支持され、一方の軸受部51には、第3ローラー47および第4ローラー48の上下の配置角度を調整する角度調整ユニット52が組み込まれている。
第3ローラー47および第4ローラー48を通過する記録媒体Wは、「S」字状に経路変更されるが、記録媒体Wの種別に応じてこの「S」字カーブを変形調整し、記録媒体W別に適度なテンションを付与できるようにしている。これにより、記録媒体Wは、部分的な弛みや皺が解消されて、媒体送り機構12に送り込まれる。なお、これらのローラー45,46,47,48は、記録媒体Wに中心から外側に向かう分力が作用するよう、中高の形状とすることが好ましい。
媒体送り機構12は、上記の本体用機台11上に載置固定した左右(Y軸方向)一対のサイドフレーム62を有する本体フレーム61と、一対のサイドフレーム62に支持され、無端の搬送ベルト64を有するベルト搬送ユニット63と、ベルト搬送ユニット63の下側に配設したベルト洗浄ユニット65と、を備えている。また、媒体送り機構12は、上流側においてベルト搬送ユニット63に上側から臨む押圧ローラー66と、下流側においてベルト搬送ユニット63に対し斜め上方に配設された分離ローラー67と、を備えている。
本体フレーム61は、厚手の板材で構成された一対のサイドフレーム62と、一対のサイドフレーム62を連結する前後(X軸方向)一対の連結フレーム71と、を有しており、一対のサイドフレーム62の部分で本体用機台11に載置固定されている。また、本体フレーム61は、一対の連結フレーム71間に位置して、一対のサイドフレーム62を連結すると共に、上記のベルト洗浄ユニット65を支持する支持フレーム72を有している。各サイドフレーム62には、ベルト搬送ユニット63を取り付けるための切欠き部や、印刷部5を取り付けるための切欠き部が適宜設けられ、またベルト洗浄ユニット65を点検するための開口部が形成されている。
ベルト搬送ユニット63は、送り方向の下流側に位置する駆動プーリー81と、送り方向の上流側に位置する従動プーリー82と、駆動プーリー81および従動プーリー82間に架け渡した無端の搬送ベルト64と、を有している。また、ベルト搬送ユニット63は、従動プーリー82の近傍に位置して、搬送ベルト64の走行をガイドする第1ガイドプレート83と、印刷部5の直下に位置して、搬送ベルト64の走行をガイドする第2ガイドプレート84と、上記の支持フレーム72の直上に位置して、裏側に回り込んだ搬送ベルト64の走行をガイドする第3ガイドプレート85と、を有している。
第1ガイドプレート83および第2ガイドプレート84は、相互の表面が面一(同一水平面)となるように配設した状態で、一対のサイドフレーム62間に架け渡されており、本体フレーム61の一部としても機能している。また、第1ガイドプレート83は、従動プーリー82から離れた直後の搬送ベルト64(の上側)が水平に走行するようにガイドし、第2ガイドプレート84は、印刷領域に位置する搬送ベルト64(の上側)に、弛みが生じないようにガイドしている。したがって、第2ガイドプレート84の直上に位置する搬送ベルト64は、プラテンとして機能する。さらに、第3ガイドプレート85は、ベルト洗浄ユニット65により突き上げ力を受ける搬送ベルト64を、押さえるようにガイドしている(詳細は後述する)。
駆動プーリー81および従動プーリー82は、専用の軸受を介して、一対のサイドフレーム62に回転自在に支持されており、駆動プーリー81の一方の軸端には、搬送ベルト64を間欠で走行させる搬送モーター86が連結されている。搬送ベルト64は、外周面(表面)に粘着性を有する(粘着処理)幅広の特殊なベルトで構成され、記録媒体Wを貼着してこれをX軸方向に送る。これにより、記録媒体Wは、印刷部5の直下において、捲れ等を生ずることなく印刷送り(間欠送り)される。なお、搬送ベルト64により、記録媒体Wを静電吸着して送るようにしてもよい。
従動プーリー82の上側には、弛取りユニット19から送り込まれた記録媒体Wを、搬送ベルト64に貼着する押圧ローラー66が配設されている。押圧ローラー66は、サイドフレーム62に回動自在に支持された一対の支持アーム87の先端部に、回転自在に支持されている。また、押圧ローラー66は、所定の弾力性と自重を有しており、その自重により、従動プーリー82の直上において記録媒体Wを搬送ベルト64に押し付ける。すなわち、押圧ローラー66と従動プーリー82とは、搬送ベルト64を挟んでニップローラーとして機能し、走行する搬送ベルト64に記録媒体Wを連続的に貼着する。なお、各支持アーム87の中間位置には、支持アーム87を回動させるためのエアーシリンダー88が連結されており、一対のエアーシリンダー88を同期駆動させることにより、押圧ローラー66が搬送ベルト64から引き離される。
一方、駆動プーリー81の斜め上方には、印刷後の記録媒体Wを搬送ベルト64から引き剥がして、巻取部6に送り込む分離ローラー67が配設されている。分離ローラー67は、Y軸方向に延在し、サイドフレーム62から延びる一対のサブフレーム89に回動自在に支持されている。この場合、分離ローラー67は、駆動プーリー81を周回して裏側に回り込む搬送ベルト64から記録媒体Wを相対的に引き剥がして、搬送ベルト64の表面から離間する方向に送り経路3を変更するものである。実際の動作では、搬送ベルト64からの引き剥がし力は、記録媒体Wの種別で異なるものとなる。このため、記録媒体Wの種別により、搬送ベルト64が周回を開始する位置で剥がれ始めるものと、ある程度周回が進んだ位置で剥がれ始めるものとがある。但し、引き剥がしポイントWp(図2参照)が裏側に回り込むと、記録媒体Wが搬送ベルト64に巻き込まれるおそれが生ずる。
そこで、本実施形態では、搬送ベルト64と分離ローラー67との間の送り経路3に設けられた光検出部141(図2参照)により、搬送ベルト64から分離ローラー67に送られてゆく記録媒体Wの有無を検出し、この検出結果に基づいて巻取りユニット21を巻取り駆動し、引き剥がしポイントWpが搬送ベルト64の裏側に回り込むのを防止している(詳細は後述する)。
ベルト洗浄ユニット65は、搬送ベルト64の下側において上記の支持フレーム72に支持され、搬送ベルト64を横断するようにY軸方向に延在している。ベルト洗浄ユニット65は、支持フレーム72に載置されるユニットベース91と、ユニットベース91に立設するように設けた昇降シリンダー92と、昇降シリンダー92により昇降される洗浄ユニット本体93と、洗浄ユニット本体93の昇降をガイドする一対の昇降ガイド94と、を備えている。
また、洗浄ユニット本体93は、Y軸方向に延在すると共に洗浄液を貯留する箱状の洗浄容器96と、洗浄容器96に収容した回転ブラシ97と、回転ブラシ97を回転させる洗浄モーター98と、搬送ベルト64に付着した洗浄液を相対的に掻き取るワイパー99と、を有している。ワイパー99は、洗浄容器96の内側に取り付けられ、「V」字状に配設した2枚のワイピングブレード99aで構成され、走行する搬送ベルト64に接触して洗浄液を掻き取るようにしている。なお、最終的に搬送ベルト64に残った洗浄液は、ウエスで拭き取るようにしている。また、洗浄液は、外部タンクとの間でフィルタリングしながら循環させることが好ましい。
粘着性を有する搬送ベルト64には、経時的に糸くずや塵埃が付着するため、ベルト洗浄ユニット65により、搬送ベルト64の定期的な洗浄が実施される。この洗浄作業では、回転ブラシ97およびワイパー99が搬送ベルト64に接触する位置まで洗浄ユニット本体93を上昇させた後、搬送ベルト64を走行させると共に走行に対し逆方向となるよう回転ブラシ97を回転させる。このとき、搬送ベルト64は、上記の第3ガイドプレート85により押さえられ、水平姿勢を維持したまま回転ブラシ97と接触する。これにより、搬送ベルト64(の粘着面)は、連続的にブラッシング洗浄される。なお、洗浄後の搬送ベルト64には、粘着力を回復させるべく粘着処理を行うことが好ましい。
印刷部5は、送り経路3(ベルト搬送ユニット63)を跨ぐようにY軸方向に延在するプリンターフレーム101と、プリンターフレーム101に支持されたヘッド移動機構16と、ヘッド移動機構16に搭載されてY軸方向に往復動するキャリッジユニット14と、これらを覆うプリンターカバー102と、を備えている。また、特に図示しないが、印刷部5には、インクジェットヘッド15を保守するキャップユニットやクリーニングユニットが搭載されている。なお、印刷部5における、いわゆるペーパーギャップ(ワークギャップ)は、各種の記録媒体Wにおいてその厚みに幅があるため、装置本体4(媒体送り機構12)に対し、印刷部5全体を昇降させることにより調整される。
プリンターフレーム101は、Y軸方向に延在する板金製の梁状フレーム104と、梁状フレーム104を両端部で支持する板金製の一対の立設フレーム105とを有し、一対の立設フレーム105の部分で、上記のサイドフレーム62に支持されている。なお、プリンターカバー102は、このプリンターフレーム101に取り付けられている。
キャリッジユニット14は、カラープリント用の複数色のノズル列を有するインクジェットヘッド15と、ノズル面が下向きになるようにインクジェットヘッド15を保持するキャリッジ107と、を有している。なお、各ノズル列に供給される各色の染料インクは、いわゆるオフキャリッジのインクタンクから供給される。
ヘッド移動機構16は、キャリッジユニット14を片持ちでY軸方向にスライド自在に支持するキャリッジガイド111と、キャリッジガイド111を往復動させるベルト伝導機構112と、ベルト伝導機構112を駆動させるキャリッジモーター113と、を有している。キャリッジガイド111は、下側のメインガイド114と上側のサブガイド115とから成り、メインガイド114およびサブガイド115は、その両端部で上記一対の立設フレーム105に支持されている。ベルト伝導機構112は、タイミングベルト116を有し、タイミングベルト116の一部がキャリッジユニット14(キャリッジ107)に固定されている。
キャリッジモーター113によりタイミングベルト116を正逆走行させると、キャリッジユニット14が、キャリッジガイド111に案内されてY軸方向に往復動する。キャリッジガイド111の移動位置は、リニアエンコーダーにより検出され、この検出結果と印刷データに基づいて、インクジェットヘッド15から各色の染料インクが選択的に吐出される。これにより、記録媒体Wへの印刷(捺染)が行われる。
巻取部6は、X軸方向において本体用機台11に着脱自在に連結した巻取部用機台24と、巻取部用機台24の上部に支持されたヒーターユニット23と、巻取部用機台24の下部に支持された巻取りユニット21および間紙ユニット22と、を備えている。捺染された記録媒体Wは、インクが裏移りしない厚手の記録媒体Wをそのまま巻き取る方式と、インクが裏移りしやすい薄手の記録媒体Wに間紙Pを重ねて巻き取る方式があり、実施形態の巻取部6は、いずれの方式にも対応可能な設計となっている。以下、後者の方式を採用した場合について説明する。
巻取部用機台24は、上水平フレーム部121と、下水平フレーム部122と、上水平フレーム部121および下水平フレーム部122を連結する鉛直フレーム部123とを有し、アルミニウムの押出し形材を縦横に組んで構成されている。そして、鉛直フレーム部123の部分で、本体用機台11に着脱自在に連結されている。
ヒーターユニット23は、円弧状の放熱面125aを有する放熱プレート125と、放熱プレート125に内貼りしたヒーター126と、を有している。また、ヒーターユニット23は、その上半部を上水平フレーム部121に載置した状態で、上水平フレーム部121に設けた左右の固定部材127により、上水平フレーム部121に取り付けられている。放熱プレート125の上端部は、上記の分離ローラー67に近接し且つ分離ローラー67より僅かに低い位置に配設されている。また、放熱プレート125の上端部は、この部分に下方から導入される間紙Pを経路変更するために、下向きの円弧状に折曲げ形成されている。
分離ローラー67を通過した記録媒体Wは、放熱プレート125の上端部で下方から送られてくる間紙Pと重なり、放熱プレート125の円弧状の外面(放熱面125a)に添って下方に送られる。放熱面125aに摺接しながら上下方向に送られてゆく記録媒体Wおよび間紙Pは、ヒーター126により連続的に加熱される。この加熱により、記録媒体Wに浸み込んだ染料インクの溶剤(水分)が気化し、布帛に染料が定着する。
間紙ユニット22は、ロール状の間紙Pを繰り出す間紙ローラー131と、繰り出された間紙Pを放熱プレート125の上端部に向かって経路変更するガイドバー132と、を有している。ガイドバー132は、下水平フレーム部122と鉛直フレーム部123とを連結する斜材の部分に固定されている。また、間紙ローラー131は、制動機構を組み込んだ一対の軸受ユニット133を介して、下水平フレーム部122の前部に支持されている。この一対の軸受ユニット133により、間紙Pは、弛みを生ずることなく繰り出される。
巻取りユニット21は、上記の繰出しユニット18と同様に、下水平フレーム部122の後部に支持され、Y軸方向に延在する2本の巻取り側ロッドベース135と、2本の巻取り側ロッドベース135にスライド自在に支持された一対の巻取り軸突起136と、を有している。また、巻取りユニット21は、放熱プレート125の下端部と一対の巻取り軸突起136との間の送り経路3に位置して、記録媒体Wおよび間紙Pに張りを与えるテンションローラー137を有している。
各巻取り軸突起136の先端部は円錐台形状に形成されており、一対の巻取り軸突起136は、記録媒体Wの幅に対応させた相互の幅寄せにより、それぞれの先端部を、記録媒体Wを巻き取る巻取りコアに嵌入させて、これを水平に支持している。一対の巻取り軸突起136の一方には、モーター駆動の回転ユニット138が組み込まれており、一対の巻取り軸突起136を巻取り回転させて、記録媒体Wおよび間紙Pを同時に巻き取るようにしている。そして、回転ユニット138は、上述のように、分離ローラー67の近傍において、分離ローラー67に送られてゆく記録媒体Wの角度検出に基いて、制御される。
テンションローラー137は、下水平フレーム部122の後部に回動自在に支持された一対の回動アーム139の先端部に、回転自在に支持されている。そして、テンションローラー137は、巻取りコアに巻き取られる記録媒体Wおよび間紙Pの間紙P側に転接し、その自重により記録媒体Wおよび間紙Pを下方に回動付勢している。これにより、記録媒体Wおよび間紙Pに適度なテンションが付与され、記録媒体Wおよび間紙Pは、巻き締めるようにして巻取りコアに巻き取られる。
次に、図2を参照して、光検出部141による記録媒体Wの有無の検出と、この検出結果に基づく巻取りユニット21の巻取り駆動制御について説明する。上記のように、搬送ベルト64と分離ローラー67との間の送り経路3には、記録媒体Wの有無を検出する光検出部141が設けられ、パーソナルコンピューター等で構成された制御部7が、光検出部141による記録媒体Wの「有」の検出に基づいて、巻取りユニット21を巻取り駆動するようになっている。すなわち、制御部7は、光検出部141が記録媒体Wの「有」を検出している間は、巻取りユニット21を巻取り駆動し、光検出部141が記録媒体Wの「無」を検出すると、巻取りユニット21の巻取り駆動を停止する。
また、上述したように、記録媒体Wは、分離ローラー67により搬送ベルト64から相対的に引き剥がされるが、搬送ベルト64が周回を開始する位置で剥がれ始める場合(以下「ケース1」ともいい、図2では一点鎖線で示す)と、ある程度周回が進んだ位置で剥がれ始める場合(以下「ケース2」ともいい、図2では二点鎖線で示す)とがある。ケース1では、分離ローラー67に送られていく記録媒体Wの送り角度(搬送ベルト64の上面に対する角度)がαであり、ケース2では、この送り角度がβ(α<β)となっている。引き剥がしポイントWpがケース2よりもさらに駆動プーリー81の裏側に回り込み、送り角度がβよりもさらに大きくなると、記録媒体Wが搬送ベルト64に巻き込まれるおそれが生ずる。このため、送り角度がβよりも大きくなる前に、巻取りユニット21により記録媒体Wを巻き取る必要がある。
一方、図2および図3に示すように、光検出部141は、搬送ベルト64と分離ローラー67との間の送り経路3の一方の側方(右側方)に設けられ、発光素子および受光素子を有する光センサー142と、当該送り経路の他方の側方(左側方)に設けられ、光センサー142(発光素子)から発光された検出光143を光センサー142(受光素子)に向けて反射する反射ミラー144とから構成されている。そして、図2(a)および図3(b)に示すように、光センサー142は、反射ミラー144よりも上方に設けられており、光センサー142の検出光143の光軸が、分離ローラー67の延在方向(Y軸方向)に対して斜めに延びている。すなわち、検出光143の光軸が、搬送ベルト64と分離ローラー67との間の送り経路3の面(搬送ベルト64の表面)に対して、斜めに傾いている。なお、搬送ベルト64と分離ローラー67との間の送り経路3の面(搬送ベルト64の表面)は、Y軸方向においては水平面と平行となっている。
一方、本実施形態とは異なり、図2(b)に示すように、光センサー142と反射ミラー144とを同じ高さ位置に設け、光センサー142の検出光143の光軸が、搬送ベルト64と分離ローラー67との間の送り経路3の面に対して平行にした場合には、検出角度範囲145が狭くなる。したがって、この場合は、送り角度がαであるケース1では検出角度範囲145に入っているが、送り角度がβであるケース2では検出角度範囲145から外れている。
したがって、この場合には、媒体送り機構12による記録媒体Wの間欠送りに伴って、記録媒体Wの送り角度が、検出角度範囲145に入ると(例えばケース1)、光検出部141が記録媒体Wの「有」を検出し、制御部7が巻取りユニット21を巻取り駆動するが、記録媒体Wが巻き取られる前に、記録媒体Wの送り角度がさらに大きくなると(例えばケース2)、記録媒体Wの送り角度が検出角度範囲145から外れるため、光検出部141が記録媒体Wの「無」を検出し、それ以上、巻取りユニット21により記録媒体Wが巻き取られないことになる。つまり、記録媒体Wが十分に巻き取られていないにもかかわらず、巻き取られたものと誤検出することになってしまう。
これに対し、本実施形態のインクジェット記録装置1では、記録媒体Wの送り角度のうち光検出部141によって「有」が検出される送り角度の範囲(検出角度範囲145)が広くなっている。したがって、この場合は、送り角度がαであるケース1も、送り角度がβであるケース2も、検出角度範囲145に入っている。なお、この検出角度範囲145は、記録媒体Wの幅によって変動する。
そして、媒体送り機構12による記録媒体Wの間欠送りに伴って、記録媒体Wの送り角度が、検出角度範囲145に入ると(例えばケース1)、光検出部141が記録媒体Wの「有」を検出し、制御部7が巻取りユニット21を巻取り駆動する。このとき、記録媒体Wが巻き取られる前に、記録媒体Wの送り角度がさらに大きくなった(例えばケース2)としても、記録媒体Wの送り角度が検出角度範囲145に入るため、光検出部141が記録媒体Wの「有」を検出することになり、制御部7が巻取りユニット21を巻取り駆動する。これにより、記録媒体Wが十分に巻き取られていないにもかかわらず、巻き取られたものと誤検出することがない。
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、分離ローラー67の延在方向に対して検出光143の光軸を斜めにするだけ、記録媒体Wが搬送ベルト64(駆動プーリー81)の裏側に巻き込まれる前に、記録媒体Wを確実に巻き取ることができる。なお、本実施形態では、光センサー142と反射ミラー144とを上下に配設し、光センサー142の検出光143の光軸を、X軸方向に垂直な面内(YZ平面)において、分離ローラー67の延在方向に対して斜めに傾けたが、これに限定されるものではない。例えば、光センサー142と反射ミラー144とをX軸方向において前後に配設し、光センサー142の検出光143の光軸を、Z軸方向に垂直な面内(XY平面)において、分離ローラー67の延在方向に対して斜めに傾けてもよい。もちろん、光センサー142の検出光143の光軸を、X軸方向に垂直な面内やZ軸方向に垂直な面内以外において、分離ローラー67の延在方向に対して斜めに傾けてもよい。
さらに、分離ローラー67を設けずに、Y軸方向に延在するヒーターユニット23の上端部により、搬送ベルト64の表面から記録媒体Wを相対的に引き剥がし、搬送ベルト64の表面から離間する方向に送り経路3を変更するようにしてもよい。
続いて、図4を参照して、本実施形態の変形例について説明する。この変形例では、光検出部141による記録媒体Wの「有」の検出後、万が一、記録媒体Wが巻き取られる前に、記録媒体Wの送り角度が、検出角度範囲145よりも大きくなった場合(検出角度範囲145を通過した場合)にも、記録媒体Wを確実に巻き取るようにしたものである。
光検出部141による記録媒体Wの「有」(ON)の検出時間は、記録媒体Wが正常に巻き取られる場合の検出時間(図4(a)のt1)に比べ、記録媒体Wが完全に巻き取られず、記録媒体Wの送り角度が検出角度範囲145よりも大きくなった場合の検出時間(図4(a)のt2)の方が短くなる。
そこで、この変形例では、図4(a)に示すように、記録媒体Wの「有」の検出時間(t1)が、所定の時間(t3)よりも長い場合は、先の実施形態と同様に、制御部7が、光検出部141が記録媒体Wの「無」を検出するまで、巻取りユニット21を巻取り駆動するが、図4(b)に示すように、記録媒体Wの「有」の検出時間(t2)が、所定の時間(t3)よりも短い場合は、制御部7が、記録媒体Wの「無」の検出後も、さらに巻取りユニット21を巻取り駆動する。この追加の巻取り駆動により、記録媒体Wが巻き取られ、記録媒体Wの送り角度が検出角度範囲145内に戻り、光検出部141が記録媒体Wの「有」を再び検出したら、引き続き巻取り駆動を行う。これにより、光検出部141による記録媒体Wの「有」の検出後、万が一、記録媒体Wが巻き取られる前に、記録媒体Wの送り角度が、検出角度範囲145よりも大きくなって光検出部141が記録媒体Wの「無」を検出する場合にも、記録媒体Wを確実に巻き取ることができる。
なお、追加の巻取り駆動を含めた駆動時間(t4)は、記録媒体Wが正常に巻き取られる場合の「有」検出時間(t1)、すなわち、記録媒体Wが正常に巻き取られる場合の駆動時間と等しいことが好ましい。これにより、記録媒体Wが過度に巻き取られることを防止できる。すなわち、記録媒体Wが過度に巻き取られると、引き剥がしポイントWpが印刷部5側に移動し、記録媒体Wがインクジェットヘッド15のノズル面と接触するおそれがあるが、これを防止できる。
また、追加の巻取り駆動を行っても、所定の時間までに記録媒体W「有」が検出されない場合には、何らかの異常が発生している可能性があるため、装置の駆動をいったん停止し、その旨を報知することが好ましい。さらに、この所定の時間(t3)は、媒体送り機構12の送り速度や巻取りユニット21の巻取り速度等により、適宜変更してもよい。