以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リールの形式で除給材される布帛(原反)に、専用に染料インクを用いインクジェット方式で文様等を印刷する(捺染)するものである。なお、以下の説明では、布帛である記録媒体の正逆送り方向をX軸方向と、X軸方向に直交する方向をY軸方向と、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向と、規定する。
図1は、インクジェット記録装置の断面構造図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置1は、ロール状に巻回された記録媒体Wを繰り出して送る繰出部2と、繰り出された記録媒体Wを送り経路3に沿って印刷のために送る装置本体4と、装置本体4の上側に配設され、装置本体4と協働して記録媒体Wにインクジェット方式で印刷を行う印刷部5と、印刷部5により印刷された記録媒体Wを、装置本体4の送り方向下流側において巻き取って回収する巻取部6と、これら構成装置を統括制御する制御部7と、を備えている。
装置本体4は、鋼材を組んで構成した本体用機台11と、本体用機台11に支持され、記録媒体Wをベルト搬送によりX軸方向に間欠送りする媒体送り機構12と、を有している。印刷部5は、インクジェットヘッド15を有するキャリッジユニット14と、キャリッジユニット14をY軸方向に往復動させるヘッド移動機構16と、を有している。一方、繰出部2は、記録媒体Wを繰り出す繰出しユニット18と、繰り出され記録媒体Wの弛みを取る弛取りユニット19と、を有している。また、巻取部6は、記録媒体Wを巻き取る巻取りユニット21と、巻取りユニット21に間紙Pを供給する間紙ユニット22と、記録媒体Wを巻き取る前に記録媒体Wに浸み込んだ染料インクの溶剤(水分)を気化させるヒーターユニット23とを有し、これらを巻取部用機台24に搭載して構成されている。
繰出しユニット18から繰り出されて記録媒体W(布帛)は、弛取りユニット19により張られるようにして弛みが取られ、媒体送り機構12に送り込まれる。媒体送り機構12に送り込まれた記録媒体Wは、表面に粘着されるようにしてベルト搬送される。このベルト搬送では、記録媒体WがX軸方向に間欠送りされる(副走査)一方、これに同期してキャリッジユニット14がY軸方向に往復動し、インクジェットヘッド15からインク吐出が行われる(主走査)。
このようにして、印刷が行われた後、記録媒体Wの印刷済み部分(捺染済み部分)は、媒体送り機構12から巻取部6に送り出される。巻取部6では、媒体送り機構12から送り出された記録媒体Wに、間紙ユニット22から間紙Pが連続的に供給され、記録媒体Wと間紙Pとが重なってヒーターユニット23に送られる。ヒーターユニット23では、間紙Pと共に記録媒体Wが加熱され、染料インクの溶剤(水分)が気化される。このようにして、乾燥処理された捺染済みの記録媒体Wは、間紙Pと共に巻取りユニット21に巻き取られる。
繰出しユニット18は、上記の本体用機台11に固定された左右(Y軸方向)一対のT字状フレーム32、および一対のT字状フレーム32間に渡した複数本の棒状フレーム33から成る繰出しフレーム31と、一対のT字状フレーム32に両持ちで支持され、Y軸方向に延在する2本の繰出し側ロッドベース34と、2本の繰出し側ロッドベース34にスライド自在に支持された一対の繰出し軸突起35と、を有している。各繰出し軸突起35の先端部は円錐台形状に形成されており、一対の繰出し軸突起35は、記録媒体Wの幅に対応させた相互の幅寄せにより、それぞれの先端部をロール状の記録媒体Wのコアに嵌入させて、記録媒体Wを水平に支持している。
一対の繰出し軸突起35には、それぞれモーター駆動の幅移動ユニット36が組み込まれており、記録媒体Wに軸方向の巻ズレが生じている場合(検出)に、一対の繰出し軸突起35を2本の繰出し側ロッドベース34上において微小移動させ、記録媒体Wの媒体送り機構12に対する幅方向の位置ズレ、すなわち媒体送り機構12において記録媒体Wが蛇行(斜行)するのを防止している。
また、一対の繰出し軸突起35の一方には、モーター駆動の回転ユニット37が組み込まれており、この回転ユニット37により、一対の繰出し軸突起35を繰出し回転させて記録媒体Wを繰り出すようにしている。本実施形態では、記録媒体Wに一定のテンションを与えつつ繰り出すテンションモードと、可能な限りテンションを少なくして繰り出す弛みモードとがあり、記録媒体W別にモード切替えを行うようにしている。
テンションモードは、伸縮性の低い通常の布帛(記録媒体W)を対象とするものであり、この場合には、回転ユニット37の制御系において、負荷(テンション)を取得し、この負荷が所定の値になるように回転ユニット37を制御するようにしている。
一方、弛みモードは、例えばストッキング地のように伸縮性の高い布帛(記録媒体W)を対象とするものであり、この場合には、繰り出した記録媒体Wがいったん下方に弛んでから(図1では破線で示す)、弛取りユニット19に送り込まれるように制御する。具体的には、弛ませた記録媒体Wの下端位置を検出するようにし、下端位置が所定の位置を越え弛みが大きくなったところで、回転ユニット37による記録媒体Wの繰出し動作を停止させるようにしている。
弛取りユニット19は、後述する媒体送り機構12のサイドフレーム62に固定された左右(Y軸方向)一対のL字状フレーム42、および一対のL字状フレーム42間に渡したロッドフレーム43から成る弛取りフレーム41と、一対のL字状フレーム42に両持ちで回転自在に支持されたローラー群44と、を有している。ローラー群44は、繰出しユニット18から送り込まれた記録媒体Wの送り経路3を複数個所で屈曲させるべく、送り方向の上流側から第1ローラー45、第2ローラー46、第3ローラー47および第4ローラー48の順で配設されている。
第1ローラー45は、摩擦係数の高いローラーで構成されており、その両端部を各L字状フレーム42の内側に取り付けた一対の傾斜ブロック49に載置されている。上流側が弛んだ状態の記録媒体Wは、この第1ローラー45の部分で第2ローラー46に向かって斜め外方に経路変更される。媒体送り機構12の間欠送りにより記録媒体Wが引かれる(送り)と、記録媒体Wと第1ローラー45との間の摩擦力により、第1ローラー45は、一対の傾斜ブロック49を上るように移動する。また、記録媒体Wの送りが停止すると、第1ローラー45は自重により一対の傾斜ブロック49を下って元の位置に戻る。これにより、送られてゆく記録媒体Wに適度なテンションが付与されると共に、間欠送りのショックが吸収される。
第1ローラー45を通過した記録媒体Wは、第2ローラー46でUターンするようにして第3ローラー47および第4ローラー48に達する。第3ローラー47および第4ローラー48は、上下に近接して配設されており、両端部を一体に形成した一対の軸受部51に回転自在に支持されている。また、各軸受部51は、L字状フレーム42に回動自在に支持され、一方の軸受部51には、第3ローラー47および第4ローラー48の上下の配置角度を調整する角度調整ユニット52が組み込まれている。
第3ローラー47および第4ローラー48を通過する記録媒体Wは、「S」字状に経路変更されるが、記録媒体Wの種別に応じてこの「S」字カーブを変形調整し、記録媒体W別に適度なテンションを付与できるようにしている。これにより、記録媒体Wは、部分的な弛みや皺が解消されて、媒体送り機構12に送り込まれる。なお、これらのローラー45,46,47,48は、記録媒体Wに中心から外側に向かう分力が作用するよう、中高の形状とすることが好ましい。
媒体送り機構12は、上記の本体用機台11上に載置固定した左右(Y軸方向)一対のサイドフレーム62を有する本体フレーム61と、一対のサイドフレーム62に支持され、無端の搬送ベルト64を有するベルト搬送ユニット63と、ベルト搬送ユニット63の下側に配設したベルト洗浄ユニット65と、を備えている。また、媒体送り機構12は、上流側においてベルト搬送ユニット63に上側から臨む押圧ローラー66と、下流側においてベルト搬送ユニット63に対し斜め上方に配設された分離ローラー67と、を備えている。
本体フレーム61は、厚手の板材で構成された一対のサイドフレーム62と、一対のサイドフレーム62を連結する前後(X軸方向)一対の連結フレーム71と、を有しており、一対のサイドフレーム62の部分で本体用機台11に載置固定されている。また、本体フレーム61は、一対の連結フレーム71間に位置して、一対のサイドフレーム62を連結すると共に、上記のベルト洗浄ユニット65を支持する支持フレーム72を有している。各サイドフレーム62には、ベルト搬送ユニット63を取り付けるための切欠き部や、印刷部5を取り付けるための切欠き部が適宜設けられ、またベルト洗浄ユニット65を点検するための開口部が形成されている。
ベルト搬送ユニット63は、送り方向の下流側に位置する駆動プーリー81と、送り方向の上流側に位置する従動プーリー82と、駆動プーリー81および従動プーリー82間に架け渡した無端の搬送ベルト64と、を有している。また、ベルト搬送ユニット63は、従動プーリー82の近傍に位置して、搬送ベルト64の走行をガイドする第1ガイドプレート83と、印刷部5の直下に位置して、搬送ベルト64の走行をガイドする第2ガイドプレート84と、上記の支持フレーム72の直上に位置して、裏側に回り込んだ搬送ベルト64の走行をガイドする第3ガイドプレート85と、を有している。
第1ガイドプレート83および第2ガイドプレート84は、相互の表面が面一(同一水平面)となるように配設した状態で、一対のサイドフレーム62間に架け渡されており、本体フレーム61の一部としても機能している。また、第1ガイドプレート83は、従動プーリー82から離れた直後の搬送ベルト64(の上側)が水平に走行するようにガイドし、第2ガイドプレート84は、印刷領域に位置する搬送ベルト64(の上側)に、弛みが生じないようにガイドしている。したがって、従って、第2ガイドプレート84の直上に位置する搬送ベルト64は、プラテンとして機能する。さらに、第3ガイドプレート85は、ベルト洗浄ユニット65により突き上げ力を受ける搬送ベルト64を、押さえるようにガイドしている(詳細は後述する)。
駆動プーリー81および従動プーリー82は、専用の軸受を介して、一対のサイドフレーム62に回転自在に支持されており、駆動プーリー81の一方の軸端には、搬送ベルト64を間欠で走行させる搬送モーター86が連結されている。搬送ベルト64は、外周面(表面)に粘着性を有する(粘着処理)幅広の特殊なベルトで構成され、記録媒体Wを貼着してこれをX軸方向に送る。これにより、記録媒体Wは、印刷部5の直下において、捲れ等を生ずることなく印刷送り(間欠送り)される。
従動プーリー82の上側には、弛取りユニット19から送り込まれた記録媒体Wを、搬送ベルト64に貼着する押圧ローラー66が配設されている。押圧ローラー66は、サイドフレーム62に回動自在に支持された一対の支持アーム87の先端部に、回転自在に支持されている。また、押圧ローラー66は、所定の弾力性と自重を有しており、その自重により、従動プーリー82の直上において記録媒体Wを搬送ベルト64に押し付ける。すなわち、押圧ローラー66と従動プーリー82とは、搬送ベルト64を挟んでニップローラーとして機能し、走行する搬送ベルト64に記録媒体Wを連続的に貼着する。なお、各支持アーム87の中間位置には、支持アーム87を回動させるためのエアーシリンダー88が連結されており、一対のエアーシリンダー88を同期駆動させることにより、押圧ローラー66が搬送ベルト64から引き離される。
一方、駆動プーリー81の斜め上方には、印刷後の記録媒体Wを搬送ベルト64から引き剥がして、巻取部6に送り込む分離ローラー67が配設されている。分離ローラー67は、サイドフレーム62から延びる一対のサブフレーム89に回動自在に支持されている。この場合、分離ローラー67は、駆動プーリー81を周回して裏側に回り込む搬送ベルト64から記録媒体Wを相対的に引き剥がすものであるが、実際の動作では、搬送ベルト64からの引き剥がし力は、記録媒体Wの種別で異なるものとなる。このため、記録媒体Wにより、搬送ベルト64が周回を開始する位置で剥がれ始めるものと、ある程度周回が進んだ位置で剥がれ始めるものとがある。但し、引き剥がしのポイントが裏側に回り込むと、記録媒体Wが搬送ベルト64に巻き込まれるおそれが生ずる。
そこで、本実施形態では、搬送ベルト64から分離ローラー67に送られてゆく記録媒体Wの角度を位置検出し、この位置検出の検出結果に基づいて巻取りユニット21を巻取り駆動し、引き剥がしのポイントが搬送ベルト64の裏側に回り込むのを防止している。
ベルト洗浄ユニット65は、搬送ベルト64の下側において上記の支持フレーム72に支持され、搬送ベルト64を横断するようにY軸方向に延在している。ベルト洗浄ユニット65は、支持フレーム72に載置されるユニットベース91と、ユニットベース91に立設するように設けた昇降シリンダー92と、昇降シリンダー92により昇降される洗浄ユニット本体93と、洗浄ユニット本体93の昇降をガイドする一対の昇降ガイド94と、を備えている。
また、洗浄ユニット本体93は、Y軸方向に延在すると共に洗浄液を貯留する箱状の洗浄容器96と、洗浄容器96に収容した回転ブラシ97と、回転ブラシ97を回転させる洗浄モーター98と、搬送ベルト64に付着した洗浄液を相対的に掻き取るワイパー99と、を有している。ワイパー99は、洗浄容器96の内側に取り付けられ、「V」字状に配設した2枚のワイピングブレード99aで構成され、走行する搬送ベルト64に接触して洗浄液を掻き取るようにしている。なお、最終的に搬送ベルト64に残った洗浄液は、ウエスで拭き取るようにしている。また、洗浄液は、外部タンクとの間でフィルタリングしながら循環させることが好ましい。
粘着性を有する搬送ベルト64には、継時的に糸くずや塵埃が付着するため、ベルト洗浄ユニット65により、搬送ベルト64を定期的に洗浄する。この洗浄作業では、回転ブラシ97およびワイパー99が搬送ベルト64に接触する位置まで洗浄ユニット本体93を上昇させた後、搬送ベルト64を走行させると共に走行に対し逆方向となるよう回転ブラシ97を回転させる。このとき、搬送ベルト64は、上記の第3ガイドプレート85により押さえられ、水平姿勢を維持したまま回転ブラシ97と接触する。これにより、搬送ベルト64(の粘着面)は、連続的にブラッシング洗浄される。なお、洗浄後の搬送ベルト64には、粘着力を回復させるべく粘着処理を行うことが好ましい。
印刷部5は、送り経路3(ベルト搬送ユニット63)を跨ぐようにY軸方向に延在するプリンターフレーム101と、プリンターフレーム101に支持されたヘッド移動機構16と、ヘッド移動機構16に搭載されてY軸方向に往復動するキャリッジユニット14と、これらを覆うプリンターカバー102と、を備えている。また、特に図示しないが、印刷部5には、インクジェットヘッド15を保守するキャップユニットやクリーニングユニットが搭載されている。なお、印刷部5における、いわゆるペーパーギャップ(ワークギャップ)は、各種の記録媒体Wにおいてその厚みに幅があるため、装置本体4(媒体送り機構12)に対し、印刷部5全体を昇降させることにより調整される。
プリンターフレーム101は、Y軸方向に延在する板金製の梁状フレーム104と、梁状フレーム104を両端部で支持する板金製の一対の立設フレーム105とを有し、一対の立設フレーム105の部分で、上記のサイドフレーム62に支持されている。なお、プリンターカバー102は、このプリンターフレーム101に取り付けられている。
キャリッジユニット14は、カラープリント用の複数色のノズル列を有するインクジェットヘッド15と、ノズル面15a(図7参照)が下向きになるようにインクジェットヘッド15を保持するキャリッジ107と、を有している。なお、各ノズル列に供給される各色の染料インクは、いわゆるオフキャリッジのインクタンクから供給される。
ヘッド移動機構16は、キャリッジユニット14を片持ちでY軸方向にスライド自在に支持するキャリッジガイド111と、キャリッジガイド111を往復動させるベルト伝導機構112と、ベルト伝導機構112を駆動させるキャリッジモーター113と、を有している。キャリッジガイド111は、下側のメインガイド114と上側のサブガイド115とから成り、メインガイド114およびサブガイド115は、その両端部で上記一対の立設フレーム105(脚部)に支持(保持)されている。ベルト伝導機構112は、タイミングベルト116を有し、タイミングベルト116の一部がキャリッジユニット14(キャリッジ107)に固定されている。なお、特許請求の範囲における「ヘッド支持部材」は、キャリッジガイド111で構成されている。
キャリッジモーター113によりタイミングベルト116を正逆走行させると、キャリッジユニット14が、キャリッジガイド111に案内されてY軸方向に往復動する。キャリッジガイド111の移動位置は、リニアエンコーダーにより検出され、この検出結果と印刷データに基づいて、インクジェットヘッド15から各色の染料インクが選択的に吐出される。これにより、記録媒体Wへの印刷(捺染)が行われる。
巻取部6は、X軸方向において本体用機台11に着脱自在に連結した巻取部用機台24と、巻取部用機台24の上部に支持されたヒーターユニット23と、巻取部用機台24の下部に支持された巻取りユニット21および間紙ユニット22と、を備えている。捺染された記録媒体Wは、インクが裏移りしない厚手の記録媒体Wをそのまま巻き取る方式と、インクが裏移りしやすい薄手の記録媒体Wに間紙Pを重ねて巻き取る方式があり、実施形態の巻取部6は、いずれの方式にも対応可能な設計となっている。以下、後者の方式を採用した場合について説明する。
巻取部用機台24は、上水平フレーム部121と、下水平フレーム部122と、上水平フレーム部121および下水平フレーム部122を連結する鉛直フレーム部123とを有し、アルミニウムの押出し形材を縦横に組んで構成されている。そして、鉛直フレーム部123の部分で、本体用機台11に着脱自在に連結されている。
ヒーターユニット23は、円弧状の放熱面125aを有する放熱プレート125と、放熱プレート125に内貼りしたヒーター126と、を有している。また、ヒーターユニット23は、その上半部を上水平フレーム部121に載置した状態で、上水平フレーム部121に設けた左右の固定部材127により、上水平フレーム部121に取り付けられている。放熱プレート125の上端部は、上記の分離ローラー67に近接し且つ分離ローラー67より僅かに低い位置に配設されている。また、放熱プレート125の上端部は、この部分に下方から導入される間紙Pを経路変更するために、下向きの円弧状に折曲げ形成されている。
分離ローラー67を通過した記録媒体Wは、放熱プレート125の上端部で下方から送られてくる間紙Pと重なり、放熱プレート125の円弧状の外面(放熱面125a)に添って下方に送られる。放熱面125aに摺接しながら上下方向に送られてゆく記録媒体Wおよび間紙Pは、ヒーター126により連続的に加熱される。この加熱により、記録媒体Wに浸み込んだ染料インクの溶剤(水分)が気化し、布帛に染料が定着する。
間紙ユニット22は、ロール状の間紙Pを繰り出す間紙ローラー131と、繰り出された間紙Pを放熱プレート125の上端部に向かって経路変更するガイドバー132と、を有している。ガイドバー132は、下水平フレーム部122と鉛直フレーム部123とを連結する斜材の部分に固定されている。また、間紙ローラー131は、制動機構を組み込んだ一対の軸受ユニット133を介して、下水平フレーム部122の前部に支持されている。この一対の軸受ユニット133により、間紙Pは、弛みを生ずることなく繰り出される。
巻取りユニット21は、上記の繰出しユニット18と同様に、下水平フレーム部122の後部に支持され、Y軸方向に延在する2本の巻取り側ロッドベース135と、2本の巻取り側ロッドベース135にスライド自在に支持された一対の巻取り軸突起136と、を有している。また、巻取りユニット21は、放熱プレート125の下端部と一対の巻取り軸突起136との間の送り経路3に位置して、記録媒体Wおよび間紙Pに張りを与えるテンションローラー137を有している。
各巻取り軸突起136の先端部は円錐台形状に形成されており、一対の巻取り軸突起136は、記録媒体Wの幅に対応させた相互の幅寄せにより、それぞれの先端部を、記録媒体Wを巻き取る巻取りコアに嵌入させて、これを水平に支持している。一対の巻取り軸突起136の一方には、モーター駆動の回転ユニット138が組み込まれており、一対の巻取り軸突起136を巻取り回転させて、記録媒体Wおよび間紙Pを同時に巻き取るようにしている。そして、回転ユニット138は、上述のように、分離ローラー67の近傍において、分離ローラー67に送られてゆく記録媒体Wの角度検出に基いて、制御される。
テンションローラー137は、下水平フレーム部122の後部に回動自在に支持された一対の回動アーム139の先端部に、回転自在に支持されている。そして、テンションローラー137は、巻取りコアに巻き取られる記録媒体Wおよび間紙Pの間紙P側に転接し、その自重により記録媒体Wおよび間紙Pを下方に回動付勢している。これにより、記録媒体Wおよび間紙Pに適度なテンションが付与され、記録媒体Wおよび間紙Pは、巻き締めるようにして巻取りコアに巻き取られる。
次に、図2ないし図4を参照して、媒体送り機構12の左右一対のサイドフレーム62に設けられ、印刷部5を下方から支持する左支持部141および右支持部142と、左支持部141および右支持部142に対する印刷部5の取付位置を調整する機構について説明する。
左支持部141は、印刷部5の左下端部、すなわち左側の立設フレーム105のベースとなる左ベースプレート147が載置される左載置プレート148と、左載置プレート148を下側から支持する左ブラケット部151とを有している。左ブラケット部151は、左載置プレート148を支持する水平板152と、水平板152の一方の端部から下垂した垂直板153と、水平板152および垂直板153の内側に、X軸方向に離間して設けた一対の補強板154とで構成されている。
水平板152には、3箇所に、すなわち、垂直板153に近い方の端部であって、一対の補強板154の両外側でX軸方向に並ぶ2箇所(図3では1箇所のみ示す)と、垂直板153から遠い方の端部であって、一対の補強板154の中間部である1箇所とに、後述する高さ調整用ネジ185が遊挿される貫通孔155(バカ孔)がそれぞれ形成されている。さらに、左載置プレート148には、各貫通孔155に対応する3箇所に、高さ調整用ネジ185が貫通するように螺合する高さ調整孔156(図7参照)がそれぞれ形成されている。
右支持部142は、一部を除いて左支持部141と略同一の形態を有し、印刷部5の右下端部、すなわち右側の立設フレーム105のベースとなる右ベースプレート157が載置される右載置プレート158と、右載置プレート158を下側から支持する右ブラケット部161とを有している。右ブラケット部161は、右載置プレート158を支持する水平板162と、水平板162の一方の端部から下垂した垂直板163と、水平板162および垂直板163の内側に、X軸方向に離間して設けた一対の補強板164とで構成されている。
水平板162には、3箇所に、すなわち、垂直板163に近い方の端部であって、一対の補強板164の両外側でX軸方向に並ぶ2箇所(図4では1箇所のみ示す)と、垂直板163から遠い方の端部であって、一対の補強板164の中間部である1箇所とに、後述する高さ調整用ネジ187が遊挿される貫通孔165(バカ孔)がそれぞれ形成されている。さらに、右載置プレート158には、各貫通孔165に対応する3箇所に、高さ調整用ネジ187が貫通するように螺合する高さ調整孔166(図7参照)がそれぞれ形成されている。
さらに、右支持部142の水平板162には、一対の補強板164の間に、矩形状の下調整開口162aが形成されている。下調整開口162aは、その四辺が、X軸方向またはY軸方向に延在している。また、右載置プレート158には、下調整開口162aに合致する上調整開口158aが形成されている。この下調整開口162aおよび上調整開口158aから、右ベースプレート157の下面に突設された6個の調整ブロックが、下方に覗いている。6個の調整ブロックは、相互に対向するようにY軸方向に離間して設けた一対の矯正用ブロック168と、相互に対向するようにX軸方向に離間して設けた一対のものが、Y軸方向に並設された2組のθ調整用ブロック169(図4では各組の片方のみ示す)と、で構成されている。後述するように、この6個の調整ブロックが、後述する脚移動部182およびθ調整部184を構成している。
なお、左支持部141の垂直板153には、左側のサイドフレーム62の外面に固定した一対のスライドガイド171と、スライドガイド171に係合する一対のスライダ172が設けられている。同様に、右支持部142の垂直板163には、右側のサイドフレーム62の外面に固定した一対のスライドガイド173と、スライドガイド173に係合する一対のスライダ174が設けられている。そして、左支持部141に設けられた操作ハンドル175を正逆回転することで、左支持部141が左側のサイドフレーム62に対して昇降すると共に、連動機構176により、この左支持部141の昇降に同期して、右支持部142が右側のサイドフレーム62に対して昇降する。これにより、サイドフレーム62(媒体送り機構12)に対し、印刷部5全体を昇降させることができ、印刷部5におけるペーパーギャップ(ワークギャップ)が調整されるようになっている。
印刷部5の取付位置を調整する機構としては、一対の矯正用ブロック168および各矯正用ブロック168に対してY軸方向に貫通するように螺合する矯正用ネジ181で構成された脚移動部182と、2組のθ調整用ブロック169および各θ調整用ブロック169に対してX軸方向に貫通するように螺合するθ調整用ネジ183とで構成されたθ調整部184と、左載置プレート148の3箇所に形成した高さ調整孔156に螺合する3本の高さ調整用ネジ185で構成された左平行度調整部186と、右載置プレート158の3箇所に形成した高さ調整孔166に螺合する3本の高さ調整用ネジ187で構成された右平行度調整部188とを備えている。
脚移動部182では、各矯正用ネジ181が、摘み用の頭部を有すると共に、胴部の先端が、上調整開口158aの縁部内面(X軸方向に延在する辺部内面)に突き当てられる。そして、左側(垂直板163に近い側)の矯正用ネジ181を左側の矯正用ブロック168から相対的に緩めると共に、右側(垂直板163から遠い側)の矯正用ネジ181を右側の矯正用ブロック168に対して相対的にねじ込むことで、矯正用ブロック168を取り付けた右ベースプレート157が、右ブラケット部161、スライダ174およびスライドガイド173を介してサイドフレーム62に固定された右載置プレート158に対して左側に微小移動する。これにより、右ベースプレート157を左ベースプレート147に向けて微小移動させることができる。逆に、左側の矯正用ネジ181を左側の矯正用ブロック168に対して相対的にねじ込むと共に、右側の矯正用ネジ181を右側の矯正用ブロック168から相対的に緩めることで、矯正用ブロック168を取り付けた右ベースプレート157が、右載置プレート158に対して右側に微小移動する。これにより、右ベースプレート157を左ベースプレート147から離間する方向に微小移動させることができる。
θ調整部184では、各θ調整用ネジ183が、矯正用ネジ181と同様に構成されており、摘み用の頭部を有すると共に、胴部の先端が、上調整開口158aの縁部内面(Y軸方向に延在する辺部内面)に突き当てられる。そして、各組の送り方向上流側のθ調整用ネジ183を上流側のθ調整用ブロック169から相対的に緩めると共に、各組の下流側のθ調整用ネジ183を下流側のθ調整用ブロック169に相対的にねじ込むことで、θ調整用ブロック169を取り付けた右ベースプレート157が、右載置プレート158に対して上流側に移動する。逆に、各組の送り方向上流側のθ調整用ネジ183を上流側のθ調整用ブロック169に対して相対的にねじ込むと共に、各組の下流側のθ調整用ネジ183を下流側のθ調整用ブロック169から相対的に緩めることで、θ調整用ブロック169を取り付けた右ベースプレート157が、右載置プレート158に対して下流側に移動する。これにより、右ベースプレート157を左ベースプレート147に対してX軸方向に微小移動させることができる。
なお、本実施形態では、θ調整用ブロック169を2組設けたが、1組だけであってもよい。
左平行度調整部186と右平行度調整部188とは、同様に構成されているため、以下、左平行度調整部186について代表して説明する。左平行度調整部186は、水平板152の3箇所に形成した貫通孔155のうち、一対の補強板154の両外側でX軸方向に並ぶ2箇所に形成した貫通孔155およびこれに対応する高さ調整孔156を貫通する2本の高さ調整用ネジ185(以下、それぞれ「第1高さ調整用ネジ185a」、「第2高さ調整用ネジ185b」ともいう。)と、一対の補強板154の中間部である1箇所に形成した貫通孔155およびこれに対応する高さ調整孔156を貫通する1本の高さ調整用ネジ185(以下、「第3高さ調整用ネジ185c」ともいう。)とで構成されている。各高さ調整用ネジ185は、矯正用ネジ181やθ調整用ネジ183と同様に構成されており、摘み用の頭部を有すると共に、胴部の先端が、左ベースプレート147の下面に突き当てられる。そして、3本の高さ調整用ネジ185を、左載置プレート148に対してねじ込むことで、左ベースプレート147が左載置プレート148に対して上昇し、逆に、3本の矯正用ネジ181を、左載置プレート148から緩めることで、左ベースプレート147が左載置プレート148に対して下降する。
さらに、左ベースプレート147に対し、第3高さ調整用ネジ185cは、X軸方向の略中間部に突き当たるのに対し、第1高さ調整用ネジ185aおよび第2高さ調整用ネジ185bは、X軸方向の両端部(送り方向上流側端部および下流側端部)に突き当たる。このため、第1高さ調整用ネジ185aおよび第2高さ調整用ネジ185bの一方を左載置プレート148にねじ込むと共に、他方を左載置プレート148から緩めることで、X軸方向において、左載置プレート148に対する左ベースプレート147の角度を調整することができる。
ここで、図5を参照して、脚移動部182によるキャリッジガイド111の撓み矯正について説明する。なお、メインガイド114およびサブガイド115をまとめてキャリッジガイド111として説明する。図5(a)は、印刷部5を左支持部141および右支持部142に載置した状態、すなわち、印刷部5の左ベースプレート147および右ベースプレート157の下面に左載置プレート148および右載置プレート158を取り付け、これを左ブラケット部151の水平板152および右ブラケット部161の水平板162にそれぞれ載置し、左載置プレート148を左ブラケット部151の水平板152に位置合わせした上でボルト固定した状態を示している。一方、右載置プレート158は、右ブラケット部161の水平板162に対して固定されておらず、微小移動可能となっている。
そして、図5(a)では、印刷部5は、上述したように、梁状フレーム104およびこれを支持する一対の立設フレーム105から成るプリンターフレーム101を有しているが、一対の立設フレーム105の下端部は連結されていないため、印刷部5全体の剛性が低くなっている。このため、印刷部5が左支持部141および右支持部142に載置されると、一対の立設フレーム105が下端部が広がった「ハ」の字形状になると共に、キャリッジガイド111が下方に撓んだ状態となる。すなわち、キャリッジガイド111は、立設フレーム105に保持された両端部において、角度α分撓み、各立設フレーム105も、角度α分傾いている。
この状態で、図5(b)に示すように、脚移動部182の矯正用ネジ181を正逆回転させ、右ベースプレート157を、左ベースプレート147に向けて微小移動させる。これにより、立設フレーム105の角度α分の傾きを解消することができ、キャリッジガイド111の角度α分の撓みも矯正することができる。換言すれば、脚移動部182により、右ベースプレート157を、左ベースプレート147に向けて微小移動させることで、下方に撓んだキャリッジガイド111の撓みを矯正するように、右ベースプレート157を介して、キャリッジガイド111に曲げモーメントが作用する。つまり、キャリッジガイド111に、上方に引張応力が生じ且つ下方に圧縮応力が生じる曲げモーメントが作用する。このように、印刷部5の剛性が低い場合にも、キャリッジガイド111の撓みを矯正することで、Y軸方向(主走査方向)において、ペーパーギャップを一定にすることができる。なお、脚移動部182を、左ベースプレート147に対しても設け、左右いずれの側でも、撓み矯正のための操作を行えるようにしてもよい。
次に、図6を参照して、θ調整部184による、θ方向におけるキャリッジガイド111の延在方向の調整(θ調整)について説明する。図6(a)は、図5(a)と同様に、印刷部5を左支持部141および右支持部142に載置し、左載置プレート148を左ブラケット部151の水平板152に固定した状態を示している。そして、図6(a)では、キャリッジガイド111が、θ方向において、Y軸方向に対して角度β分傾いている。
この状態で、図6(b)に示すように、θ調整部184のθ調整用ネジ183を正逆回転させ、右ベースプレート157を左ベースプレート147に対してX軸方向に微小移動させることで、キャリッジガイド111がθ方向に回転する。これにより、キャリッジガイド111の角度β分の傾きを解消することができ、θ方向におけるキャリッジガイド111の延在方向が、Y軸方向、すなわち、X軸方向(送り方向)に対して90度を為すように調整することができる。
また、このように、右ベースプレート157の下面において、適宜、矯正用ネジ181およびθ調整用ネジ183をそれぞれ正逆回転することで、キャリッジガイド111の撓み矯正とX軸方向に対するキャリッジガイド111の延在方向の調整(θ調整)とを行うことができる。このため、キャリッジガイド111の撓み矯正とθ調整とを、同様の操作で且つ一か所で行うことができ、操作性を向上させることができる。なお、θ調整部184についても、左ベースプレート147に対しても設け、左右いずれの側でも、θ調整のための操作を行えるようにしてもよい。
次に、図7を参照して、右平行度調整部188による、Y軸方向における搬送ベルト64の表面(送り経路3の面)に対するキャリッジガイド111の平行度の調整(Y軸平行度調整)について説明する。図7(a)は、図5(a)と同様に、印刷部5を左支持部141および右支持部142に載置し、左載置プレート148を左ブラケット部151の水平板152に固定した状態を示している。そして、図7(a)では、キャリッジガイド111は、左側が右側よりも高く、Y軸方向において、搬送ベルト64の表面に対し、角度γ分傾いている。
この状態で、図7(b)に示すように、右平行度調整部188の高さ調整用ネジ187をねじ込み、右ベースプレート157を左ベースプレート147に対して上昇させる。これにより、キャリッジガイド111の角度γ分の傾きを解消することができ、キャリッジガイド111を、搬送ベルト64の表面に対して平行にすることができる。したがって、Y軸方向(インクジェットヘッド15の主走査方向)において、ペーパーギャップが一定になるようにすることができる。また、Y軸方向において、搬送ベルト64の表面に対し、インクジェットヘッド15のノズル面15aが平行になるように調整することができる。
なお、このY軸平行度調整は、左平行度調整部186により行うことも可能である。もっとも、右平行度調整部188により行うことで、上記の撓み矯正やθ調整と同じ右支持部142側で行うことができる。
さらに、図8を参照して、左平行度調整部186および右平行度調整部188による、X軸方向における搬送ベルト64の表面(送り経路3の面)に対するノズル面15aの平行度の調整(X軸平行度調整)について説明する。図8(a)は、図5(a)と同様に、印刷部5を左支持部141および右支持部142に載置した状態を示すが、ここでは、左載置プレート148を左ブラケット部151の水平板152に固定しておらず、右載置プレート158と同様に、左ブラケット部151の水平板152に対して微小移動可能となっている。そして、図8(a)では、ノズル面15aは、送り方向上流側が、下流側に比べて、ペーパーギャップが大きくなっている。つまり、ノズル面15aが、X軸方向において、搬送ベルト64の表面に対して角度δ分傾いている。なお、図8では、左平行度調整部186および右平行度調整部188のうち、左平行度調整部186のみ示す。
この状態で、図8(b)に示すように、ノズル面15aが、X軸方向において、搬送ベルト64の表面に対して平行になるように、左平行度調整部186の高さ調整用ネジ185を正逆回転させ、左載置プレート148に対する左ベースプレート147の角度を調整すると共に、右平行度調整部188により、右載置プレート158に対する右ベースプレート157の角度を調整する。これにより、上記のY軸方向における調整だけでなく、X軸方向においても、ノズル面15aが、搬送ベルト64の表面に対して平行になるように調整することができる。
なお、ノズル面15aの傾き具合によっては、左平行度調整部186および右平行度調整部188の一方のみでX軸平行度調整を行ってもよい。
そして、これらの撓み矯正、θ調整、Y軸平行度調整およびX軸平行度調整が完了したら、右載置プレート158を右ブラケット部161の水平板162に固定する(X軸平行度調整を行った場合は左載置プレート148も左ブラケット部151の水平板152に固定する)。
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置1によれば、脚移動部182を備えたことで、印刷部5の剛性が低い場合にも、キャリッジガイド111の撓みを矯正することができるため、インクジェットヘッド15の主走査方向において、ペーパーギャップを一定にすることができる。なお、本発明は、いわゆるラインプリンターや、インクジェットヘッド15をXY方向(主走査方向および副走査方向)に移動させるタイプのプリンターにも、適用することが可能である。