以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置1について説明する。このインクジェット記録装置1は、いわゆるリール・ツー・リールの形式で除給材される布帛(原反)に、専用に染料インクを用いインクジェット方式で文様等を印刷する(捺染)するものである。なお、以下の説明では、布帛である記録媒体Wの正逆送り方向をX軸方向と、X軸方向に直交する方向をY軸方向と、X軸方向およびY軸方向に直交する方向をZ軸方向と、規定する。
図1は、インクジェット記録装置1の断面構造図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置1は、ロール状に巻回された記録媒体Wを繰り出して送る繰出部2と、繰り出された記録媒体Wを送り経路3に沿って印刷のために送る装置本体4と、装置本体4の上側に配設され、装置本体4と協働して記録媒体Wにインクジェット方式で印刷を行う印刷部5と、印刷部5により印刷された記録媒体Wを、装置本体4の送り方向下流側において巻き取って回収する巻取部6と、これら構成装置を統括制御する制御部7と、を備えている。
装置本体4は、鋼材を組んで構成した本体用機台11と、本体用機台11に支持され、記録媒体Wをベルト搬送によりX軸方向に間欠送りする媒体送り機構12と、を有している。印刷部5は、インクジェットヘッド15を有するキャリッジユニット14と、キャリッジユニット14をY軸方向に往復動させるヘッド移動機構16と、を有している。一方、繰出部2は、記録媒体Wを繰り出す繰出しユニット18と、繰り出された記録媒体Wの弛みを取る弛取りユニット19と、を有している。また、巻取部6は、記録媒体Wを巻き取る巻取りユニット21と、巻取りユニット21に間紙Pを供給する間紙ユニット22と、記録媒体Wを巻き取る前に記録媒体Wに浸み込んだ染料インクの溶剤(水分)を気化させるヒーターユニット23とを有し、これらを巻取部用機台24に搭載して構成されている。
繰出しユニット18から繰り出されて記録媒体W(布帛)は、弛取りユニット19により張られるようにして弛みが取られ、媒体送り機構12に送り込まれる。媒体送り機構12に送り込まれた記録媒体Wは、表面に粘着されるようにしてベルト搬送される。このベルト搬送では、記録媒体WがX軸方向に間欠送りされる(副走査)一方、これに同期してキャリッジユニット14がY軸方向に往復動し、インクジェットヘッド15からインク吐出が行われる(主走査)。
このようにして、印刷が行われた後、記録媒体Wの印刷済み部分(捺染済み部分)は、媒体送り機構12から巻取部6に送り出される。巻取部6では、媒体送り機構12から送り出された記録媒体Wに、間紙ユニット22から間紙Pが連続的に供給され、記録媒体Wと間紙Pとが重なってヒーターユニット23に送られる。ヒーターユニット23では、間紙Pと共に記録媒体Wが加熱され、染料インクの溶剤(水分)が気化される。このようにして、乾燥処理された捺染済みの記録媒体Wは、間紙Pと共に巻取りユニット21に巻き取られる。
繰出しユニット18は、上記の本体用機台11に固定された左右(Y軸方向)一対のT字状フレーム32、および一対のT字状フレーム32間に渡した複数本の棒状フレーム33から成る繰出しフレーム31と、一対のT字状フレーム32にY軸方向にスライド自在に支持され、Y軸方向に延在する2本の繰出し側ロッドベース34と、2本の繰出し側ロッドベース34にスライド自在に支持された一対の繰出し軸突起35と、を有している。各繰出し軸突起35の先端部は円錐台形状に形成されており、一対の繰出し軸突起35は、記録媒体Wの幅に対応させた相互の幅寄せにより、それぞれの先端部をロール状の記録媒体Wの繰出しコア141(図2参照)に嵌入させて、記録媒体Wを水平に支持している。
一対の繰出し軸突起35は、モーター駆動の幅移動ユニット36により、2本の繰出し側ロッドベース34を介して左右(記録媒体Wの幅方向)に一体に移動するようになっている。後述する蛇行検出センサー48により、記録媒体Wの幅方向にける位置ズレが検出されると、一対の繰出し軸突起35を左右に微小移動させる。これにより、巻回された記録媒体Wの耳部(幅端)が竹の子状となり、記録媒体Wに軸方向の巻ズレが生じている場合に、記録媒体Wの媒体送り機構12に対する幅方向の位置ズレ、すなわち媒体送り機構12において記録媒体Wが蛇行(斜行)するのを防止している。
また、一対の繰出し軸突起35の一方には、モーター駆動の回転ユニット37が組み込まれており、この回転ユニット37により、一対の繰出し軸突起35を繰出し回転させて記録媒体Wを繰り出すようにしている。さらに、繰出しユニット18の下方には、繰出しユニット18から繰り出された記録媒体Wの有無を検出する反射型の光センサー142が設けられている。
本実施形態では、記録媒体Wに一定のテンションを与えつつ繰り出すテンションモードと、可能な限りテンションを少なくして繰り出す弛みモードとがあり、記録媒体W別にモード切替えを行うようにしている。このテンションモードと弛みモードとは、印刷部5に設けた操作画面(図示省略)において、GUI(Graphical User Interface)ボタンにより切替え可能となっている。
テンションモードは、伸縮性の低い通常の布帛(記録媒体W)を対象とするものであり、この場合には、例えばパーソナルコンピューターで構成された制御部7が、記録媒体Wに所要のテンションを付与して第1ローラー45に向けて繰り出すように、回転ユニット37を制御する。より具体的には、制御部7は、回転ユニット37のモーターのトルク制御により、媒体送り機構12による記録媒体Wの送り動作時には、記録媒体Wを繰り出すように回転ユニット37を駆動し、媒体送り機構12による記録媒体Wの送り停止時には、記録媒体Wを僅かに巻き戻すように回転ユニット37を駆動する。これにより、繰出しユニット18と弛取りユニット19との間の記録媒体Wにテンションが付与された状態で、記録媒体Wが送られる。
一方、弛みモードは、例えばストッキング地のように伸縮性の高い布帛(記録媒体W)を対象とするものであり、この場合には、制御部7が、繰り出した記録媒体Wがいったん下方に弛んでから、弛取りユニット19に送り込まれるように、回転ユニット37を制御する(図1では弛み部分の記録媒体Wを破線で示す)。すなわち、制御部7は、媒体送り機構12による記録媒体Wの送り動作に伴って、記録媒体Wの弛み量が少なくなり、繰出しユニット18の下方に設けられた光センサー142が記録媒体Wの「無」を検出すると、記録媒体Wを繰り出すように回転ユニット37を正回転駆動させ、これにより弛み量が増加し、光センサー142が記録媒体Wの「有」を検出すると、回転ユニット37の駆動を停止させる。この弛み量の制御により、繰出しユニット18と弛取りユニット19との間の記録媒体Wが適切に弛んだ状態で、記録媒体Wが送られる。
弛取りユニット19は、後述する媒体送り機構12のサイドフレーム62に固定された左右(Y軸方向)一対のL字状フレーム42、および一対のL字状フレーム42間に渡したロッドフレーム43から成る弛取りフレーム41と、一対のL字状フレーム42に両持ちで回転自在に支持されたローラー群44と、を有している。ローラー群44は、繰出しユニット18から送り込まれた記録媒体Wの送り経路3を複数個所で屈曲させるべく、送り方向の上流側から第1ローラー45、第2ローラー46および第3ローラー47の順で配設されており、それぞれ摩擦係数の高いローラーで構成されている。
繰出しユニット18から繰り出された記録媒体Wは、第1ローラー45でUターンするようにして第2ローラー46および第3ローラー47に達する。第2ローラー46および第3ローラー47は、上下に近接して配設されており、両端部を一体に形成した一対の軸受部51に回転自在に支持されている。また、各軸受部51は、L字状フレーム42に回動自在に支持され、一方の軸受部51には、第2ローラー46および第3ローラー47の上下の配置角度を調整する角度調整ユニット52が組み込まれている。
第2ローラー46および第3ローラー47を通過する記録媒体Wは、「S」字状に経路変更されるが、記録媒体Wの種別に応じてこの「S」字カーブを変形調整し、記録媒体W別に適度なテンションを付与できるようにしている。これにより、記録媒体Wは、部分的な弛みや皺が解消されて、媒体送り機構12に送り込まれる。なお、これらのローラー45,46,47は、記録媒体Wに中心から外側に向かう分力が作用するよう、中高の形状とすることが好ましい。また、第1ローラー45と第2ローラー46との間には、蛇行検出センサー48が設けられている。
媒体送り機構12は、上記の本体用機台11上に載置固定した左右(Y軸方向)一対のサイドフレーム62を有する本体フレーム61と、一対のサイドフレーム62に支持され、無端の搬送ベルト64を有するベルト搬送ユニット63と、ベルト搬送ユニット63の下側に配設したベルト洗浄ユニット65と、を備えている。また、媒体送り機構12は、上流側においてベルト搬送ユニット63に上側から臨む押圧ローラー66と、下流側においてベルト搬送ユニット63に対し斜め上方に配設された分離ローラー67と、を備えている。
本体フレーム61は、厚手の板材で構成された一対のサイドフレーム62と、一対のサイドフレーム62を連結する前後(X軸方向)一対の連結フレーム71と、を有しており、一対のサイドフレーム62の部分で本体用機台11に載置固定されている。また、本体フレーム61は、一対の連結フレーム71間に位置して、一対のサイドフレーム62を連結すると共に、上記のベルト洗浄ユニット65を支持する支持フレーム72を有している。各サイドフレーム62には、ベルト搬送ユニット63を取り付けるための切欠き部や、印刷部5を取り付けるための切欠き部が適宜設けられ、またベルト洗浄ユニット65を点検するための開口部が形成されている。
ベルト搬送ユニット63は、送り方向の下流側に位置する駆動プーリー81と、送り方向の上流側に位置する従動プーリー82と、駆動プーリー81および従動プーリー82間に架け渡した無端の搬送ベルト64と、を有している。また、ベルト搬送ユニット63は、従動プーリー82の近傍に位置して、搬送ベルト64の走行をガイドする第1ガイドプレート83と、印刷部5の直下に位置して、搬送ベルト64の走行をガイドする第2ガイドプレート84と、上記の支持フレーム72の直上に位置して、裏側に回り込んだ搬送ベルト64の走行をガイドする第3ガイドプレート85と、を有している。
第1ガイドプレート83および第2ガイドプレート84は、相互の表面が面一(同一水平面)となるように配設した状態で、一対のサイドフレーム62間に架け渡されており、本体フレーム61の一部としても機能している。また、第1ガイドプレート83は、従動プーリー82から離れた直後の搬送ベルト64(の上側)が水平に走行するようにガイドし、第2ガイドプレート84は、印刷領域に位置する搬送ベルト64(の上側)に、弛みが生じないようにガイドしている。したがって、第2ガイドプレート84の直上に位置する搬送ベルト64は、プラテンとして機能する。さらに、第3ガイドプレート85は、ベルト洗浄ユニット65により突き上げ力を受ける搬送ベルト64を、押さえるようにガイドしている(詳細は後述する)。
駆動プーリー81および従動プーリー82は、専用の軸受を介して、一対のサイドフレーム62に回転自在に支持されており、駆動プーリー81の一方の軸端には、搬送ベルト64を間欠で走行させる搬送モーター86が連結されている。搬送ベルト64は、外周面(表面)に粘着性を有する(粘着処理)幅広の特殊なベルトで構成され、記録媒体Wを貼着してこれをX軸方向に送る。これにより、記録媒体Wは、印刷部5の直下において、捲れ等を生ずることなく印刷送り(間欠送り)される。
従動プーリー82の上側には、弛取りユニット19から送り込まれた記録媒体Wを、搬送ベルト64に貼着する押圧ローラー66が配設されている。押圧ローラー66は、サイドフレーム62に回動自在に支持された一対の支持アーム87の先端部に、回転自在に支持されている。また、押圧ローラー66は、所定の弾力性と自重を有しており、その自重により、従動プーリー82の直上において記録媒体Wを搬送ベルト64に押し付ける。すなわち、押圧ローラー66と従動プーリー82とは、搬送ベルト64を挟んでニップローラーとして機能し、走行する搬送ベルト64に記録媒体Wを連続的に貼着する。なお、各支持アーム87の中間位置には、支持アーム87を回動させるためのエアーシリンダー88が連結されており、一対のエアーシリンダー88を同期駆動させることにより、押圧ローラー66が搬送ベルト64から引き離される。
一方、駆動プーリー81の斜め上方には、印刷後の記録媒体Wを搬送ベルト64から引き剥がして、巻取部6に送り込む分離ローラー67が配設されている。分離ローラー67は、サイドフレーム62から延びる一対のサブフレーム89に回動自在に支持されている。この場合、分離ローラー67は、駆動プーリー81を周回して裏側に回り込む搬送ベルト64から記録媒体Wを相対的に引き剥がすものであるが、実際の動作では、搬送ベルト64からの引き剥がし力は、記録媒体Wの種別で異なるものとなる。このため、記録媒体Wの種別により、搬送ベルト64が周回を開始する位置で剥がれ始めるものと、ある程度周回が進んだ位置で剥がれ始めるものとがある。但し、引き剥がしのポイントが裏側に回り込むと、記録媒体Wが搬送ベルト64に巻き込まれるおそれが生ずる。
そこで、本実施形態では、搬送ベルト64から分離ローラー67に送られてゆく記録媒体Wの角度を位置検出し、この位置検出の検出結果に基づいて巻取りユニット21を巻取り駆動し、引き剥がしのポイントが搬送ベルト64の裏側に回り込むのを防止している。
ベルト洗浄ユニット65は、搬送ベルト64の下側において上記の支持フレーム72に支持され、搬送ベルト64を横断するようにY軸方向に延在している。ベルト洗浄ユニット65は、支持フレーム72に載置されるユニットベース91と、ユニットベース91に立設するように設けた昇降シリンダー92と、昇降シリンダー92により昇降される洗浄ユニット本体93と、洗浄ユニット本体93の昇降をガイドする一対の昇降ガイド94と、を備えている。
また、洗浄ユニット本体93は、Y軸方向に延在すると共に洗浄液を貯留する箱状の洗浄容器96と、洗浄容器96に収容した回転ブラシ97と、回転ブラシ97を回転させる洗浄モーター98と、搬送ベルト64に付着した洗浄液を相対的に掻き取るワイパー99と、を有している。ワイパー99は、洗浄容器96の内側に取り付けられ、「V」字状に配設した2枚のワイピングブレード99aで構成され、走行する搬送ベルト64に接触して洗浄液を掻き取るようにしている。なお、最終的に搬送ベルト64に残った洗浄液は、ウエスで拭き取るようにしている。また、洗浄液は、外部タンクとの間でフィルタリングしながら循環させることが好ましい。
粘着性を有する搬送ベルト64には、経時的に糸くずや塵埃が付着するため、ベルト洗浄ユニット65により、搬送ベルト64の定期的な洗浄を実施する。この洗浄作業では、回転ブラシ97およびワイパー99が搬送ベルト64に接触する位置まで洗浄ユニット本体93を上昇させた後、搬送ベルト64を走行させると共に走行に対し逆方向となるよう回転ブラシ97を回転させる。このとき、搬送ベルト64は、上記の第3ガイドプレート85により押さえられ、水平姿勢を維持したまま回転ブラシ97と接触する。これにより、搬送ベルト64(の粘着面)は、連続的にブラッシング洗浄される。なお、洗浄後の搬送ベルト64には、粘着力を回復させるべく粘着処理を行うことが好ましい。
印刷部5は、送り経路3(ベルト搬送ユニット63)を跨ぐようにY軸方向に延在するプリンターフレーム101と、プリンターフレーム101に支持されたヘッド移動機構16と、ヘッド移動機構16に搭載されてY軸方向に往復動するキャリッジユニット14と、これらを覆うプリンターカバー102と、を備えている。また、特に図示しないが、印刷部5には、インクジェットヘッド15を保守するキャップユニットやクリーニングユニットが搭載されている。なお、印刷部5における、いわゆるペーパーギャップ(ワークギャップ)は、各種の記録媒体Wにおいてその厚みに幅があるため、装置本体4(媒体送り機構12)に対し、印刷部5全体を昇降させることにより調整される。
プリンターフレーム101は、Y軸方向に延在する板金製の梁状フレーム104と、梁状フレーム104を両端部で支持する板金製の一対の立設フレーム105とを有し、一対の立設フレーム105の部分で、上記のサイドフレーム62に支持されている。なお、プリンターカバー102は、このプリンターフレーム101に取り付けられている。
キャリッジユニット14は、カラープリント用の複数色のノズル列を有するインクジェットヘッド15と、ノズル面が下向きになるようにインクジェットヘッド15を保持するキャリッジ107と、を有している。なお、各ノズル列に供給される各色の染料インクは、いわゆるオフキャリッジのインクタンクから供給される。
ヘッド移動機構16は、キャリッジユニット14を片持ちでY軸方向にスライド自在に支持するキャリッジガイド111と、キャリッジガイド111を往復動させるベルト伝導機構112と、ベルト伝導機構112を駆動させるキャリッジモーター113と、を有している。キャリッジガイド111は、下側のメインガイド114と上側のサブガイド115とから成り、メインガイド114およびサブガイド115は、その両端部で上記一対の立設フレーム105に支持されている。ベルト伝導機構112は、タイミングベルト116を有し、タイミングベルト116の一部がキャリッジユニット14(キャリッジ107)に固定されている。
キャリッジモーター113によりタイミングベルト116を正逆走行させると、キャリッジユニット14が、キャリッジガイド111に案内されてY軸方向に往復動する。キャリッジガイド111の移動位置は、リニアエンコーダーにより検出され、この検出結果と印刷データに基づいて、インクジェットヘッド15から各色の染料インクが選択的に吐出される。これにより、記録媒体Wへの印刷(捺染)が行われる。
巻取部6は、X軸方向において本体用機台11に着脱自在に連結した巻取部用機台24と、巻取部用機台24の上部に支持されたヒーターユニット23と、巻取部用機台24の下部に支持された巻取りユニット21および間紙ユニット22と、を備えている。捺染された記録媒体Wは、インクが裏移りしない厚手の記録媒体Wをそのまま巻き取る方式と、インクが裏移りしやすい薄手の記録媒体Wに間紙Pを重ねて巻き取る方式があり、実施形態の巻取部6は、いずれの方式にも対応可能な設計となっている。以下、後者の方式を採用した場合について説明する。
巻取部用機台24は、上水平フレーム部121と、下水平フレーム部122と、上水平フレーム部121および下水平フレーム部122を連結する鉛直フレーム部123とを有し、アルミニウムの押出し形材を縦横に組んで構成されている。そして、鉛直フレーム部123の部分で、本体用機台11に着脱自在に連結されている。
ヒーターユニット23は、円弧状の放熱面125aを有する放熱プレート125と、放熱プレート125に内貼りしたヒーター126と、を有している。また、ヒーターユニット23は、その上半部を上水平フレーム部121に載置した状態で、上水平フレーム部121に設けた左右の固定部材127により、上水平フレーム部121に取り付けられている。放熱プレート125の上端部は、上記の分離ローラー67に近接し且つ分離ローラー67より僅かに低い位置に配設されている。また、放熱プレート125の上端部は、この部分に下方から導入される間紙Pを経路変更するために、下向きの円弧状に折曲げ形成されている。
分離ローラー67を通過した記録媒体Wは、放熱プレート125の上端部で下方から送られてくる間紙Pと重なり、放熱プレート125の円弧状の外面(放熱面125a)に添って下方に送られる。放熱面125aに摺接しながら上下方向に送られてゆく記録媒体Wおよび間紙Pは、ヒーター126により連続的に加熱される。この加熱により、記録媒体Wに浸み込んだ染料インクの溶剤(水分)が気化し、布帛に染料が定着する。
間紙ユニット22は、ロール状の間紙Pを繰り出す間紙ローラー131と、繰り出された間紙Pを放熱プレート125の上端部に向かって経路変更するガイドバー132と、を有している。ガイドバー132は、下水平フレーム部122と鉛直フレーム部123とを連結する斜材の部分に固定されている。また、間紙ローラー131は、制動機構を組み込んだ一対の軸受ユニット133を介して、下水平フレーム部122の前部に支持されている。この一対の軸受ユニット133により、間紙Pは、弛みを生ずることなく繰り出される。
巻取りユニット21は、上記の繰出しユニット18と同様に、下水平フレーム部122の後部に支持され、Y軸方向に延在する2本の巻取り側ロッドベース135と、2本の巻取り側ロッドベース135にスライド自在に支持された一対の巻取り軸突起136と、を有している。また、巻取りユニット21は、放熱プレート125の下端部と一対の巻取り軸突起136との間の送り経路3に位置して、記録媒体Wおよび間紙Pに張りを与えるテンションローラー137を有している。
各巻取り軸突起136の先端部は円錐台形状に形成されており、一対の巻取り軸突起136は、記録媒体Wの幅に対応させた相互の幅寄せにより、それぞれの先端部を、記録媒体Wを巻き取る巻取りコアに嵌入させて、これを水平に支持している。一対の巻取り軸突起136の一方には、モーター駆動の回転ユニット138が組み込まれており、一対の巻取り軸突起136を巻取り回転させて、記録媒体Wおよび間紙Pを同時に巻き取るようにしている。そして、回転ユニット138は、上述のように、分離ローラー67の近傍において、分離ローラー67に送られてゆく記録媒体Wの角度検出に基づいて、制御される。
テンションローラー137は、下水平フレーム部122の後部に回動自在に支持された一対の回動アーム139の先端部に、回転自在に支持されている。そして、テンションローラー137は、巻取りコアに巻き取られる記録媒体Wおよび間紙Pの間紙P側に転接し、その自重により記録媒体Wおよび間紙Pを下方に回動付勢している。これにより、記録媒体Wおよび間紙Pに適度なテンションが付与され、記録媒体Wおよび間紙Pは、巻き締めるようにして巻取りコアに巻き取られる。
図2を参照して、繰出しユニット18について詳細に説明する。繰出しユニット18は、上述したように、左右一対のT字状フレーム32および複数本の棒状フレーム33(図2では図示省略)から成る繰出しフレーム31と、一対のT字状フレーム32にY軸方向にスライド自在に支持され、Y軸方向に延在する2本(図2では1本のみ図示)の繰出し側ロッドベース34と、後述する一対の軸突起支持部151を介して2本の繰出し側ロッドベース34にスライド自在に支持された一対の繰出し軸突起35と、2本の繰出し側ロッドベース34を介して一対の繰出し軸突起35を左右(記録媒体Wの幅方向)に移動させる幅移動ユニット36と、を有している。
さらに、繰出しユニット18は、2本の繰出し側ロッドベース34にY軸方向にスライド自在に支持され、一対の繰出し軸突起35を回転自在に軸支する左右一対の軸突起支持部151と、各軸突起支持部151を繰出し側ロッドベース34上の任意の位置にロック・アンロックするためのロック・アンロックハンドル152とを有している。
幅移動ユニット36は、2本の繰出し側ロッドベース34の右端側に設けられ、2本の繰出し側ロッドベース34をY軸方向にスライド自在に支持する右スライダー153と、右スライダー153を移動させるためのボールネジ154と、右スライダー153の移動をガイドする右リニアガイド155と、ボールネジ154を正逆回転させる幅移動モーター156と、を有している。さらに、幅移動ユニット36は、2本の繰出し側ロッドベース34の左端側に設けられ、2本の繰出し側ロッドベース34をY軸方向にスライド自在に支持する左スライダー157と、左スライダー157の移動をガイドする左リニアガイド158とを有している。そして、幅移動モーター156が駆動すると、ボールネジ154が正逆回転し、右スライダー153を介して2本の繰出し側ロッドベース34がY軸方向に移動する。
このように構成された繰出しユニット18では、まず、作業者がロック・アンロックハンドル152を操作してアンロック状態にする。これにより、一対の軸突起支持部151が2本の繰出し側ロッドベース34に対してスライド可能となる。そして、一対の軸突起支持部151を、記録媒体Wを巻回した繰出しコア141の長さに対応させて相互に幅寄せすると共に、一対の繰出し軸突起35のそれぞれの先端部を繰出しコア141に嵌入させる。これにより、繰出しコア141に巻回された記録媒体W(媒体ロールWr、図3参照)が、一対の繰出し軸突起35を介して一対の軸突起支持部151に水平に支持される。続いて、ロック・アンロックハンドル152を操作してロック状態とする。これにより、一対の軸突起支持部151が2本の繰出し側ロッドベース34上に固定される。この状態で、記録媒体Wの繰出しが可能となる。
そして、後述する蛇行検出センサー48の検出結果に基づいて、幅移動ユニット36(幅移動モーター156)が駆動すると、一対の軸突起支持部151が、2本の繰出し側ロッドベース34を介して、右リニアガイド155および左リニアガイド158に沿って左右に一体に移動する。これにより、一対の軸突起支持部151に支持された記録媒体Wが、その幅方向(左右)に移動する。この幅移動ユニット36による一対の軸突起支持部151(媒体ロールWr)の可動範囲は、例えば左右に±100mmとなっている。
図3ないし図4を参照して、インクジェット記録装置1における記録媒体Wの蛇行制御について説明する。上述したように、弛取りユニット19の第1ローラー45と第2ローラー46との間には、送られていく記録媒体Wの左幅端に位置して、記録媒体Wの幅方向の位置ズレ(蛇行)を検出する蛇行検出センサー48が設けられている。なお、記録媒体Wの幅に応じて、Y軸方向における蛇行検出センサー48の位置を変更できるようになっている。
図3に示すように、蛇行検出センサー48は、それぞれ反射型のフォトセンサーで構成された左蛇行センサー48aおよび右蛇行センサー48bを有している。そして、左蛇行センサー48aおよび右蛇行センサー48bのそれぞれの検出結果が、制御部7に出力される。記録媒体Wの左幅端が、左蛇行センサー48aおよび右蛇行センサー48bの間にある場合(正常時)は、左蛇行センサー48aがOFFで右蛇行センサー48bがON(以下「左/右:OFF/ON」とも表す。)となる。この場合、制御部7は、幅移動ユニット36を駆動せず、記録媒体Wは移動しない。一方、記録媒体Wの左幅端が、左蛇行センサー48a側に位置ズレしている場合は、左/右:ON/ONとなる。この場合、制御部7は、記録媒体Wが右側に移動するように、幅移動ユニット36を駆動する。また、記録媒体Wの左幅端が、右蛇行センサー48b側に位置ズレしている場合は、左/右:OFF/OFFとなる。この場合、制御部7は、記録媒体Wが左側に移動するように、幅移動ユニット36を駆動する。なお、左蛇行センサー48aと右蛇行センサー48bとの間隔(蛇行許容範囲)は、必要とされる印刷精度等に応じて適宜設定可能であるが、例えば1mm程度とすることが好ましい。
図4に示すように、作業者により、操作画面において「印刷開始」が指令されると、インクジェット記録装置1は、印刷動作を開始する。ここでは、印刷動作開始時に、記録媒体Wの左幅端が、左蛇行センサー48aおよび右蛇行センサー48bの間にあり、左/右:OFF/ONとなっている。そして、この「印刷開始」の指令を受け、制御部7が、媒体送り機構12を制御して記録媒体Wの間欠送りを開始すると共に、幅移動ユニット36の制御を開始する。なお、この間欠送りの各送り時の時間は、副走査の距離(印刷改行幅)にもよるが、本実施形態では0.2秒間である。また、間欠送りの各送り停止時の時間は、主走査の距離(画像の幅)にもよるが、2秒間程度である。
間欠送りの送り停止時には、記録媒体Wと第1ローラー45との摩擦抵抗が大きいため、第1ローラー45よりも下流側の記録媒体Wは幅方向に動きにくくなっている。したがって、間欠送りの送り停止時に、幅移動ユニット36を駆動しても、第1ローラー45よりも下流側の記録媒体Wを少量しか幅方向に移動させることができない。このため、間欠送りの送り停止時に、幅移動ユニット36の駆動を継続すると、記録媒体Wの蛇行が修正されないまま、媒体ロールWrが幅移動ユニット36による可動限界位置に到達するおそれがある。この場合、蛇行検出センサー48が蛇行を検知したままであることから、幅移動ユニット36が、媒体ロールWrを、可動限界位置を超えて移動させようとするため、幅移動ユニット36が制御不能となってしまったり、記録媒体Wにしわが発生したりする。そこで、本実施形態では、以下のような蛇行制御を行っている。
図4に示すように、制御部7は、間欠送りの送り時は、その間中、蛇行検出センサー48の検出結果に基づいて、幅移動ユニット36の駆動を制御するが、間欠送りの送り停止時には、所定の制御有効時間tの間のみ、蛇行検出センサー48の検出結果に基づいて、幅移動ユニット36の駆動を制御し、制御有効時間tの間以外は、幅移動ユニット36の駆動を停止する。換言すれば、間欠送りの送り停止時には、制御有効時間tの間は、蛇行制御が有効であるが、制御有効時間tの間以外は、蛇行制御が無効となる。
具体的には、媒体送り機構12による記録媒体Wの送り開始に伴って、記録媒体Wが左側に位置ズレし、左蛇行センサー48aがOFFからON(左/右:ON/ON)になると、制御部7は、記録媒体Wが右側に移動するように、幅移動ユニット36を駆動する。そして、制御部7は、間欠送りの送り停止時には、制御有効時間tの間のみ、蛇行検出センサー48の検出結果(左/右:ON/ON)に基づいて、記録媒体Wが右側に移動するように幅移動ユニット36を駆動する。そして、制御部7は、制御有効時間tが終了すると、蛇行検出センサー48の検出結果に拘らず、幅移動ユニット36の駆動を停止する。間欠送りの送り時に戻ると、制御部7は、再び、蛇行検出センサー48の検出結果に基づいて、幅移動ユニット36の駆動を制御し、左蛇行センサー48aがONからOFF(左/右:OFF/ON)に戻った時点で、幅移動ユニット36の駆動を停止する。
以上のように、本実施形態によれば、間欠送りの送り停止時には、制御有効時間tの間のみ、蛇行検出センサー48による検出結果に基づく幅移動ユニット36の駆動制御を行い、制御有効時間tの間以外は、幅移動ユニット36の駆動を停止するため、幅移動ユニット36が、媒体ロールWrを可動限界位置を超えて移動させようとすることがない。これにより、幅移動ユニット36が制御不能に陥ることを防止することができると共に、記録媒体Wにしわが発生することも防止することができる。
また、本実施形態では間欠送りの送り停止時に、制御部7が、制御有効時間tの間は、蛇行検出センサー48の検出結果に基づいて、幅移動ユニット36を駆動する。これにより、間欠送りの送り時に幅移動ユニット36を駆動するだけでは、蛇行修正量が足りない場合に、蛇行修正量を補うことができる。したがって、間欠送りの送り停止時に、幅移動ユニット36が制御不能となることなく、確実に蛇行を修正することができる。
さらに、記録媒体Wの種別(素材や前処理の有無等)や、それによる搬送方法の種別(テンションモードと弛みモード)により、第1ローラー45に対する摩擦抵抗が異なることから、幅移動ユニット36の駆動量が同じであっても記録媒体Wの種別により蛇行修正量が異なる。記録媒体Wの種別としては、シルク、ウール、ナイロン、ポリエステルといった衣服用途の素材や、紙、コート紙、壁紙、カーテン、ターポリン等の建材用途の素材など様々なものがある。また、同一の記録媒体Wであっても印刷モードの種別(高品質モード、高速モード)によっても、間欠送り時の記録媒体の搬送量や間欠送りの各送り時の時間が異なることから、幅移動ユニット36の駆動量つまり、印刷モードによって蛇行修正量が異なる。ことから、記録媒体Wの種別や搬送方法の種別、印刷モードの種別等、それぞれについて、評価によって最適な制御有効時間tを予め求めておくことが好ましい。そして、このような評価により求めた制御有効時間tを記録媒体Wの種別や搬送方法の種別、印刷モードの種別のそれぞれについて規定した制御テーブルを、制御部7の記憶部に記憶させておく。そして、作業者が、印刷開始前に、操作画面において、記録媒体Wの種別、搬送方法の種別、印刷モードの種別等を入力するようにする。制御部7は、その入力されたこれらの情報を取得し、記憶部に記憶された制御テーブルを参照して、制御有効時間tを決定する。このようにすることで、印刷時における最適な制御有効時間tが決定されるため、間欠送りの送り停止時における蛇行検出センサー48の検出結果に基づく制御を、適した制御有効時間tの間のみ、行うようにすることができる。
また、上述したように、本実施形態では、間欠送りの各送り時の時間が、0.2秒間であるが、ある画像とある画像の間にスペースを入れる場合や印刷モードによっては、送り時の時間が0.2秒間よりも長くなる場合がある。このように、各送り時の時間が、所定の基準時間(例えば0.5秒間)よりも長い場合には、その直後の送り停止時には、その間中、幅移動ユニット36の駆動を停止することが好ましい。各送り時の時間が、所定の基準時間よりも長い場合には、媒体ロールWrが可動限界位置の近くにまで移動している場合がある。このため、その直後の送り停止時には、その間中、幅移動ユニット36の駆動を停止することで、媒体ロールWrを可動限界位置を超えて移動させることを防止できる。また、送り時の時間が、所定の基準時間よりも長い場合には、送り時の間のみ、蛇行検出センサー48の検出結果に基づいて幅移動ユニット36を駆動するだけで、記録媒体Wの蛇行を十分修正することができるため、送り停止時に幅移動ユニット36を駆動させる必要もない。
なお、本実施形態では、制御有効時間tを、間欠送りの送り停止時の冒頭(送り時の直後)に設けたが、これに限定されるものではなく、送り停止時の最後(次の送り時の直前)に設けてもよく、送り停止時の中間部に設けてもよい。もっとも、本実施形態のように、制御有効時間tを、送り停止時の冒頭に設けた方が、送り停止時における蛇行修正量を大きくすることができる。媒体送り機構12の駆動が停止しても、記録媒体Wおよび第1ローラー45は慣性によって微小時間動き続けるため、その微小時間で蛇行修正の効果が期待できるからである。
さらには、間欠送りの送り時における幅移動ユニット36の駆動のみで記録媒体Wの蛇行を十分修正できる場合には、間欠送りの送り停止時には、制御有効時間tを全く設けず、送り停止時の間中、幅移動ユニット36の駆動を停止するようにしてもよい。
本実施形態においては、繰出しユニット18に設置された幅移動ユニット36により一対に繰出し軸突起35を左右に微小移動させることで、蛇行検出センサー48におくられる巻回された記録媒体Wを幅方向に移動させる構成としたが、これに限定されるものではなく、蛇行検出センサー48に送られる記録媒体を2本のローラーで挟み込んで、このローラーを幅方向に移動制御することにより蛇行検出センサー48におくられる記録媒体Wを幅方向に移動させる構成としてもよい。そしてこの場合には、記録媒体Wは巻回された状態で繰出しユニット18に支持されなくてもよく、たとえば折りたたまれた状態の布帛を繰り出す機構を用いてもよい。
本実施形態のおいては、記録媒体Wとしては布帛としたが、これに限定されるものではなく、紙、コート紙、フィルム等であっても同様の効果を奏する。