JP6079740B2 - エンジンの燃料制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、排気浄化装置と、排気通路のうち排気浄化装置よりも下流側の部分と吸気通路とを接続して吸気通路に排気を還流させる低圧EGR装置と、排気通路のうち排気浄化装置よりも上流側の部分と吸気通路のうち低圧EGR装置との接続部分よりも下流側の部分とを接続して吸気通路に排気を還流させる高圧EGR装置とを備えたエンジンの燃料制御装置に関する。
従来から、エンジンにおいて、排気性能等のエンジン性能を高めるべく、エンジンから排出された排気を吸気通路に還流させるいわゆるEGR装置が用いられている。
また、運転条件に応じて排気性能等をより細かく適正に制御できるように、例えば特許文献1に開示されているように、上記EGR装置として、排気通路のうち排気浄化装置よりも下流側の部分と吸気通路とを接続して吸気通路に排気を還流させる低圧EGR装置と、排気通路のうち排気浄化装置よりも上流側の部分と吸気通路のうち低圧EGR装置との接続部分よりも下流側の部分とを接続して吸気通路に排気を還流させる高圧EGR装置とを設けることが知られている。
特許第4380754号公報
ここで、排気通路のうち排気浄化装置よりも下流側の部分における排気の温度は比較的低いため、上記低圧EGR装置を用いてこの低温の排気の一部を吸気通路に還流させた場合には、気筒内の温度が低下する結果気筒内の混合気(燃料と空気の混合気)の着火性が悪化する場合がある。特に、上記低圧EGR装置による排気の還流開始時では、低温の排気が急に気筒内に流入するために一時的に着火性が悪化しやすくなる。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、低圧EGR装置を用いる場合において、気筒内の混合気の着火性を良好に維持することができるエンジンの燃料制御装置を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために、本発明は、排気通路に設けられた排気を浄化するための排気浄化装置と、上記排気通路のうち排気浄化装置よりも下流側の部分と吸気通路とを接続して当該吸気通路に排気を還流させる低圧EGR装置と、上記排気通路のうち上記排気浄化装置よりも上流側の部分と上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置との接続部分よりも下流側の部分とを接続して当該吸気通路に排気を還流させる高圧EGR装置とを備えたエンジンの燃料制御装置において、エンジンの気筒内に燃料を噴射可能な噴射装置と、上記噴射装置を制御する噴射制御手段と、上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置の接続部分と上記高圧EGR装置の接続部分との間の特定部分の酸素濃度を特定する合流後酸素濃度特定手段と、上記低圧EGR装置によって上記吸気通路に還流される排ガスである低圧EGRガスが上記特定部分に流入しているか否かを判定する低圧EGRガス流入状態判定手段とを備え、上記低圧EGRガス流入状態判定手段は、上記合流後酸素濃度特定手段により特定された酸素濃度が所定値以下に低下すると上記低圧EGRガスが上記特定部分に流入したと判定し、上記噴射制御手段は、少なくとも一部の運転領域において、主噴射と、当該主噴射よりも前に当該主噴射の噴射量よりも少ない量の燃料を気筒内に噴射する前段噴射とを上記噴射装置に実施させ、上記低圧EGRガス流入状態判定手段の判定結果に基づいて上記前段噴射の噴射量を制御するとともに、上記低圧EGRガス流入状態判定手段によって上記低圧EGRガスの上記特定部分への流入が開始したと判定されると、上記前段噴射の噴射量を増大させることを特徴とするエンジンの燃料制御装置を提供する(請求項1)。
本発明によれば、低圧EGR装置により低温の低圧EGRガスが吸気通路ひいては気筒に流入したことを簡単に、かつ精度よく判定することができるとともに、この判定結果に基づいて、前段噴射の噴射量を制御している、低圧EGRガスの流入状態に応じてこの噴射量を適正にすることができる。特に、低圧EGRガスが流入したと判定されると前段噴射の噴射量を増大させているため、主噴射の実施前の気筒内の温度圧力を高めて、この低温の低圧EGRガスの流入により主噴射された燃料の着火性が悪化するのを抑制して、当該燃料の着火性を良好に維持することができる。
具体的には、吸気通路のうち低圧EGR装置との接続部分よりも下流側かつ高圧EGR装置との接続部分よりも上流側の部分には、高圧EGR装置により還流された排気は導入されず、外部から吸気通路に流入した空気に対して低圧EGR装置により還流された排気のみが導入される。そのため、高圧EGR装置の駆動状態によらず、低圧EGR装置から排気の還流があると、この部分の酸素濃度が低下する。これに対して、本発明では、上記のように、この部分の酸素濃度を特定してこの酸素濃度が所定値以下に低下した場合に上記噴射量の増大制御を実施している。そのため、低圧EGR装置によって低温の排気が吸気通路ひいては気筒内に導入されたか否かを簡単にかつ精度よく推定することができ、この推定結果に基づいて前段噴射の噴射量を制御することで、この噴射量を適正量確保して主噴射された燃料の着火性を確保することができる。
本発明において、上記所定値は、23パーセントに設定されているのが好ましい(請求項2)。
上記のように、吸気通路のうち低圧EGR装置との接続部分よりも下流側かつ高圧EGR装置との接続部分よりも上流側の部分では、エンジン外部から吸気通路に流入した空気に低圧EGR装置により還流された排気が導入される。そのため、この部分の酸素濃度が空気の酸素濃度以下となれば、排気が還流されたとみなすことができる。従って、上記所定値を、空気の酸素濃度である23%(重量%)に設定すれば、低圧EGR装置により排気が還流されたことをより早期に推定して、より確実に上記主噴射された燃料の着火性を確保することができる。
上記特定部分としては、例えば、上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置の接続部分と上記高圧EGR装置の接続部分との間の部分に設けられて当該吸気通路を開閉可能なスロットルバルブ近傍の部分であるが挙げられる(請求項3)。
また、本発明において、上記吸気通路に流入する新気の量を検出する新気量検出手段と、上記検出された新気量と、上記噴射装置から噴射された噴射量とに基づいて上記排気通路中の酸素濃度である排気酸素濃度を算出する排気酸素濃度算出手段と、上記特定された排気酸素濃度と、気筒から上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置の接続部分まで排気が移動する時間とに基づいて、この接続部分において上記低圧EGR装置から上記吸気通路に流入するガスの酸素濃度である低圧EGR側酸素濃度を算出する低圧EGR側酸素濃度算出手段と、上記低圧EGR装置により上記吸気通路に還流されるガスの量である低圧EGRガス流量を算出する低圧EGRガス流量算出手段とを備え、上記合流後酸素濃度特定手段は、上記検出された新気量と、上記特定された低圧EGR側酸素濃度と、上記算出された低圧EGRガス流量とに基づいて、上記接続部分における上記低圧EGRガスと新気の混合気の酸素濃度を算出し、この算出した混合気の酸素濃度に基づいて、上記特定部分の酸素濃度を算出するのが好ましい(請求項4)。
このようにすれば、酸素濃度を検出するためのセンサを設けることなく、上記特定部分を通過するガスの酸素濃度を特定することができるため、構造を簡素化することができるとともにコスト面で有利となる。
また、本発明において、上記吸気通路のうち上記高圧EGR装置との接続部分よりも下流側の部分を通過するガスの温度を推定する吸気温度推定手段を備え、上記噴射制御手段は、エンジンを冷却する冷却水の温度であるエンジン水温が予め設定された基準温度以下の場合には、上記低圧EGRガス流入状態判定手段の判定結果に基づいて上記前段噴射の噴射量を制御する一方、上記エンジン水温が上記基準温度よりも高い場合には、上記判定結果によらず、上記吸気温度推定手段により推定された温度に基づいて上記前段噴射の噴射量を制御するのが好ましい(請求項5)。
このようにすれば、エンジン水温が高くこれに伴い低圧EGR装置により気筒内に導入される排気の温度が比較的高くなり高圧EGR装置により気筒に導入される排気の温度との差が小さくなって、これらの混合ガスひいては気筒に導入されるガスの温度を比較的推定しやすい場合には、この推定した温度に基づいて前段噴射の噴射量を決定することで主噴射された燃料の着火性を確保することができるとともに、エンジン水温が低く上記温度差が大きく、これに伴って、上記気筒に導入されるガスの温度の推定が困難な場合には、上述のように上記特定部分の酸素濃度に応じて前段噴射の噴射量を決定することで上記着火性を確保することができ、エンジン水温によらずより確実にこの着火性を確保することができる。
本発明の一実施形態にかかるディーゼルエンジンシステムの全体構成を示す図である。 エンジン本体の一部を拡大して示す断面図である。 ピストンの一部拡大断面図である。 ピストンの平面図である。 エンジンの制御系統を示すブロック図である。 モードの切り替え領域を示す図である。 (a)拡散燃焼モードの噴射パターンおよび熱発生率の例を示す図である。(b)拡散燃焼モードの噴射パターンおよび熱発生率の他の例を示す図である。(c)予混合燃焼モードの噴射パターンおよび熱発生率の例を示す図である。 パイロット噴射の様子を示した図である。 噴射系の制御手順の全体の流れを示したフローチャートである。 着火遅れの推定値と実測値とを比較したグラフである。 パイロット噴射量決定手順の流れを示したフローチャートである。 スロットル部酸素濃度の算出手順を示したフローチャートである。
(1)エンジンシステムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるディーゼルエンジンシステムの全体構成を示す図である。本図に示されるディーゼルエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのディーゼルエンジンである。具体的に、このディーゼルエンジンは、複数の気筒2を有し軽油を主成分とする燃料の供給を受けて駆動されるエンジン本体1と、エンジン本体1に燃焼用の空気を導入するための吸気通路30と、エンジン本体1で生成された排ガス(燃焼ガス)を排出するための排気通路40と、排気通路40を通過する排ガスの一部を吸気通路30に還流するためのEGR装置50と、排気通路40を通過する排ガスにより駆動されるターボ過給機60とを備えている。
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31と、ターボ過給機60のコンプレッサ61と、スロットルバルブ36と、インタークーラ35と、サージタンク37とが設けられている。サージタンク37よりも下流側には、各気筒2とそれぞれ個別に連通する独立通路が設けられており、サージタンク37内のガスはこれら独立通路を通ってそれぞれ気筒2に分配される。
排気通路40には、上流側から順に、ターボ過給機60のタービン62と、排気浄化装置41とが設けられている。
ターボ過給機60は、タービン62が、排気通路40を流れる排ガスのエネルギーを受けて回転し、これに連動してコンプレッサ61が回転することにより、吸気通路30を流通する空気を圧縮(過給)する。
インタークーラ35は、コンプレッサ61により圧縮された空気を冷却するためのものである。インタークーラ35には、エンジンを冷却するための冷却水が導入されており、この冷却水によって空気が冷却される。
スロットルバルブ36は、吸気通路30を開閉するものである。ただし、本実施形態では、エンジンの運転中は基本的に全開もしくはこれに近い高開度に維持されており、エンジンの停止時等の必要時にのみ閉弁されて吸気通路30を遮断する。
排気浄化装置41は、排ガス中の有害成分を浄化するためのものである。本実施形態では、この排気浄化装置41には、排気ガス中のCOおよびHCを酸化する酸化触媒41aと、排気ガス中のスート(煤)を捕集するDPF41bとが含まれる。
EGR装置50は、排ガスを吸気側に還流するためのものである。本実施形態では、EGR装置50として、高圧EGR装置(以下、HP_EGR装置という)51と、低圧EGR装置(以下、LP_EGR装置という)と52とを備えている。
HP_EGR装置51は、排気通路40におけるタービン62よりも上流側の部分と、吸気通路30のうちインタークーラ35よりも下流側の部分とを接続するHP_EGR通路51aと、このHP_EGR通路51aを開閉するHP_EGRバルブ51bとを備えており、排気通路40に排出された比較的高圧の排ガス(以下、高圧EGRガスという場合がある)を吸気側に還流させる。
一方、LP_EGR装置52は、排気通路40におけるDPF41bよりも下流側の部分と、吸気通路30のうちエアクリーナ31とコンプレッサ61との間の部分とを接続するLP_EGR通路52aと、このLP_EGR通路52aを開閉するLP_EGRバルブ52bとを備えており、排気通路40に排出された比較的低圧の排ガス(以下、低圧EGRガスという場合がある)を吸気側に還流させる。LP_EGR通路52aのうちLP_EGRバルブ52bよりも上流側(排気通路40側)には、この通路52aを通過する低圧EGRガスを冷却するためのEGRクーラ52cが設けられている。このように、LP_EGR装置52により還流される排気(低圧EGRガス)は、タービン62さらにはDPF41bを通過した後の排気であり、その温度圧力は比較的低温である。さらに、本実施形態では、上記のように、低圧EGRガスはEGRクーラ52cにより冷却されており、吸気通路30に流入する時点で低圧ERガスの温度は低くされている。
(2)エンジン本体の構成
図2は、エンジン本体1の一部を拡大して示す断面図である。この図2および先の図1に示すように、エンジン本体1は、上下方向に延びるシリンダ(気筒)2が内部に形成されたシリンダブロック3と、シリンダ2に往復動(上下動)可能に収容されたピストン4と、ピストン4の冠面4aと対向する側からシリンダ2の端面(上面)を覆うように設けられたシリンダヘッド5と、潤滑油を貯溜するためにシリンダブロック3の下側に配設されたオイルパン6とを有している。
ピストン4は、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7とコネクティングロッド8を介して連結されている。また、ピストン4の上方には燃焼室9が形成されており、この燃焼室9では、後述する燃料噴射弁20から噴射された燃料が空気と混合されつつ拡散燃焼する。そして、当該燃焼に伴う膨張エネルギーにより、ピストン4が往復運動するとともにクランク軸7が中心軸回りに回転するようになっている。
ここで、エンジン本体1の幾何学的圧縮比、つまり、ピストン4が下死点にあるときの燃焼室容積とピストン4が上死点にあるときの燃焼室容積との比は、12以上15以下(例えば14)に設定されている。この12以上15以下という幾何学的圧縮比は、ディーゼルエンジンとしてはかなり低い値である。これは、燃焼温度の抑制によるエミッション性能の向上や熱効率の向上を狙ってのことである。
シリンダヘッド5には、吸気通路30から供給される空気を燃焼室9(気筒2)内に導入するための吸気ポート16と、燃焼室9で生成された排気ガスを排気通路40に導出するための排気ポート17と、吸気ポート16の燃焼室9側の開口を開閉する吸気弁18と、排気ポート17の燃焼室9側の開口を開閉する排気弁19とが設けられている。
また、シリンダヘッド5には、燃焼室9に燃料を噴射するインジェクタ(噴射装置)20が取り付けられている。このインジェクタ20は、そのピストン4側の先端部21aがキャビティ10の中心部を臨むような姿勢で取り付けられている。インジェクタ20は、燃料流路を介してコモンレール等の図外の蓄圧室と接続されている。蓄圧室内には、図外の燃料ポンプにより加圧された高圧の燃料が貯留されており、インジェクタ20は、この蓄圧室から燃料の供給を受けて、燃焼室9内に燃料を噴射する。燃料ポンプと蓄圧室との間には、蓄圧室内の圧力すなわちインジェクタ20から噴射される燃料の圧力である噴射圧を変更するための燃圧レギュレータ(不図示)が設けられている。
ピストン4の冠面4aには、その中心部を含む領域をシリンダヘッド5とは反対側(下方)に凹ませたキャビティ10が形成されている。このキャビティ10は、ピストン4が上死点まで上昇したときの燃焼室9の大部分を占める容積を有するように形成されている。
図3および図4は、燃焼室9周辺を拡大して示した拡大断面図および平面図である。これら図3および図4において、符号Fは、インジェクタ20の噴孔22から噴射された燃料の噴霧を示したものである。また、図4は、ピストン4が上死点にある状態を示したものである。
これら図に示すように、本実施形態では、インジェクタ20は、シリンダ2と同軸に(インジェクタ20の中心軸とシリンダ2の中心軸とが一致するように)取り付けられている。また、インジェクタ20として、先端部21aに複数の墳孔22が形成された多噴孔式のインジェクタが用いられている。各墳孔22は、周方向にほぼ等間隔に並ぶように配設されており、このような噴孔22を通過することにより、インジェクタ20からは燃焼室9内に燃料が平面視で放射状に噴射される。
また、図3および図4に示すように、キャビティ10は、いわゆるリエントラント型のキャビティとされている。すなわち、キャビティ10を形成する壁面は、ほぼ山型の中央隆起部11と、中央隆起部11よりもピストン4の径方向外側に形成された平面視円形の周辺凹部12と、周辺凹部12とピストン4の冠面4aとの間に形成された平面視円形のリップ部13とを有している。
中央隆起部11は、キャビティ10の中心側ほどインジェクタ20に近づくように隆起しており、その隆起の頂部が燃料噴射弁20の先端部21aの直下方に位置するように形成されている。周辺凹部12は、中央隆起部11と連続し、断面視でピストン4の径方向外側に凹入する円弧状をなすように形成されている。リップ部13は、周辺凹部12と連続し、断面視でピストン4の径方向内側に凸となる円弧状をなすように形成されている。
上記のような構成のキャビティ10は、全体として、ピストン4の冠面4aに近づくほど開口面積が小さくなる上窄まり状の断面形状を有する。このようなリエントラント型のキャビティ10は、特にエンジンの中負荷以上の運転領域において比較的多くの燃料が噴射されたときに、その燃料の噴霧Fを、主に周辺凹部12および中央隆起部11に沿って径方向外側から内側(キャビティ10の中心側)に反転させる機能を発揮するので、燃料のミキシングを促進するのに有利である。
(3)制御系統
(3−1)システム構成
図5は、エンジンの制御系統を示すブロック図である。本図に示すように、当実施形態のディーゼルエンジンは、PCM(パワートレイン・コントロール・モジュール)70によって統括的に制御される。PCM70は、周知のとおり、CPU、ROM、RAM等から構成されるマイクロプロセッサである。
PCM70は、エンジンの運転状態を検出するための各種センサと電気的に接続されている。
例えば、シリンダブロック3には、クランク軸15の回転角度(クランク角)および回転速度を検出するクランク角センサSN1が設けられている。このクランク角センサSN1は、クランク軸15と一体に回転する図略のクランクプレートの回転に応じてパルス信号を出力するものであり、このパルス信号に基づいて、クランク軸15の回転角度および回転速度すなわちエンジン回転数が特定されるようになっている。
吸気通路30のうちエアクリーナ31付近(エアクリーナ31とコンプレッサ61との間の部分)には、エアクリーナ31を通過して各気筒2に吸入される空気量を検出するエアフローセンサSN2(新気量検出手段)が設けられている。
吸気通路30のうちインタークーラ35よりも下流側の部分には、この部分を通過する空気ひいては気筒2に吸入される吸気の圧力を検出する吸気圧センサSN3が設けられている。
サージタンク37には、サージタンク37内のガスすなわち各気筒2に吸入されるガスの温度を検出するインマニ温度センサSN4が設けられている。
エンジン本体1には、エンジン本体を冷却する冷却水の温度を検出する水温センサSN5が設けられている。
排気通路40のうち、LP_EGR通路52aの接続部分よりも下流側の部分には、排ガス中の酸素濃度を検出するリニアO2センサSN6が設けられている。
インジェクタ20に燃料を供給する蓄圧室には、この蓄圧室内の圧力すなわちインジェクタ20の噴射圧を検出する燃圧センサSN7が設けられている。
排気通路40には、DPF41bの前後(上下流端)差圧を検出する差圧センサSN8が設けられている。
また、車両には、運転者により操作される図外のアクセルペダルの開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサSN9が設けられている。
PCM70は、上記各種センサからの入力信号に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつ、エンジンの各部を制御する。すなわち、PCM70は、インジェクタ20、燃圧レギュレータ、スロットルバルブ36、HP_EGRバルブ51b、LP_EGRバルブ51c等の各部と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいて、これらの機器にそれぞれ駆動用の制御信号を出力する。
(3−2)吸気系の制御
本実施形態におけるPCM70による吸気系の制御の流れを簡単に説明する。
PCM70は、アクセル開度(アクセル開度センサSN9の検出値)に基づいてエンジントルクの目標値である目標トルクを決定し、この目標トルクとエンジン回転数(クランク角センサSN1の検出値により特定される)とに基づいて燃焼室9(気筒2)内に噴射する燃料量の総量の基本値である要求トータル噴射量を決定する。例えば、PCM70は、予め設定され記憶しているアクセル開度と目標トルクとのマップ、また、目標トルクとエンジン回転数と要求トータル噴射量とのマップから、アクセル開度等に応じた値を抽出することで上記各値を決定する。
そして、PCM70は、要求トータル噴射量とエンジン回転数とに基づいて、気筒2に吸入されるガス中の酸素濃度の目標値である目標吸気酸素濃度、気筒2に吸入されるガス温度の目標値である目標吸気温度、EGR制御モード(LP_EGR51を作動させるか、HP_EGR52を作動させるか)を決定するとともに、これら決定した内容から、気筒2に吸入されるガスの圧力である過給圧、HP_EGR51によって吸気通路30に還流させる排ガス量である高圧EGRガス量、LP_EGR52によって吸気通路30に還流させる排ガス量である低圧EGRガス量、を決定し、この過給圧、各EGRガス量が実現されるように、スロットルバルブ36、HP_EGRバルブ51b、LP_EGRバルブ51cを制御する。
ここで、本実施形態では、EGR制御モードを図6に示すように切り替える。具体的には、要求トータル噴射量(エンジン負荷)とエンジン回転数とが低く気筒2内の温度が比較的低い低回転低負荷領域B1では高温のEGRガスを還流させるHP_EGR51のみを実施し、要求トータル噴射量(エンジン負荷とエンジン回転数とがそれぞれ高く気筒2内の温度が比較的高い高回転および高負荷領域B3では低温のEGRガスを還流させるLP_EGR51のみを実施し、これらの間の中間領域B2では、HP_EGR51とLP_EGR51との両方を実施するとともに負荷が高いほどあるいはエンジン回転数が高いほどLP_EGR51の割合を増加させていく。
(3−3)噴射系の制御
本実施形態におけるPCM70による噴射系の制御について次に説明する。
(3−3−1)燃焼モードおよび噴射パターン
図6は、エンジンの運転状態に応じた燃焼モードを示す図である。この図6に示すように、本実施形態では、運転領域(主としてエンジン回転数とエンジン負荷すなわち要求トータル噴射量とで決定される運転領域)に応じて、燃焼モードを拡散燃焼モードと予混合燃焼モードとの2つのモードとを切り替える。
拡散燃焼モードは、圧縮上死点付近(ピストン4が圧縮上死点付近にあるとき)において、燃料を噴射しながら燃料と空気の混合気を着火させていく燃焼モードである。
予混合燃焼モードは、燃焼室9(気筒2)内で燃料と空気とを予め混合しておき、圧縮上死点付近において、この混合気を着火させる燃焼モードである。
予混合燃焼モードでは、燃料と空気とが予め混合された後に燃焼が開始するため燃料を効率よく燃焼させることができ、燃費性能の向上および煤の発生の抑制を図ることができる。ただし、この予混合燃焼モードでは、燃焼が開始するまでの比較的短時間の間に燃料と空気とを十分に混合させる必要があるため、噴射量が少ないすなわちエンジン負荷が比較的低い、また、エンジン回転数が比較的低い領域でのみ実現可能である。そこで、本実施形態では、エンジン回転数が低くエンジン負荷が小さい低負荷低回転数領域A1を、予混合燃焼モードを実施する予混合燃焼領域に設定し、残余の領域A2を、拡散燃焼モードを実施する拡散燃焼領域に設定している。
各燃焼モードを実現するための噴射パターンおよび各燃焼モードにおける熱発生率の例を図7(a)、(b)、(c)に示す。図7(a)、(b)は、それぞれ拡散燃焼モードの例を、図7(c)は、予混合燃焼モードの例を示したものである。
図7(a)に示すように、拡散燃焼モードでは、圧縮上死点付近において、エンジントルクを発生させるための主たる燃料が噴射され、この燃料の噴射とともに混合気が燃焼していく。
本実施形態では、拡散燃焼領域A2のうちエンジン回転数が高くエンジン負荷が高い高回転高負荷領域A2_c(図6参照)を除く領域すべてにおいて、空気利用率を向上させるため、および、上記主たる燃料の着火性を高めるために、この主たる燃料の噴射の前に燃焼室9内に燃料を噴射する。すなわち、本実施形態では、拡散燃焼領域A2のうち高回転高負荷領域A2_cを除く特定領域では、圧縮上死点付近においてエンジントルクを生成するための燃料を燃焼室9内に噴射するメイン噴射(主噴射)Qmと、この主噴射の前のタイミングで燃焼室9内にメイン噴射の噴射量よりも少ない量の燃料を噴射する前段噴射とを実施する。なお、高回転高負荷領域A2_cではメイン噴射のみを実施する。また、上記特定領域においては、メイン噴射Qmの後に、メイン噴射Qmよりも少ない量の燃料を噴射するアフター噴射を実施する場合がある。
また、本実施形態では、上記特定領域のうち比較的エンジン負荷の低い第1領域A2_a(図6参照)では、図7(a)に示すように、前段噴射として2回の噴射(パイロット噴射Qpi、プレ噴射Qpr)を実施する。具体的には、比較的早期にパイロット噴射Qpiを実施し、その後、メイン噴射のタイミングに比較的近いタイミングでプレ噴射Qprを実施する。この噴射パターンでは、最初の噴射であるパイロット噴射Qpiの実施によって燃料と空気との予混合性を高めて空気利用率を高めることができる。そして、このパイロット噴射Qpiと次の噴射であるプレ噴射Qprとの実施によって、メイン噴射Qmされた燃料が燃焼する直前すなわち主燃焼が生じる直前に、熱発生量の小さい燃焼であるプレ燃焼を生じさせて、メイン噴射された燃料が燃焼しやすい状態にすることができる。
一方、上記特定領域のうちエンジン負荷が比較的高く第2領域A2_b(図6参照)では、パイロット噴射Qpiを実施するとこのパイロット噴射Qpiされた燃料が早期に着火するおそれがあるため、図7(b)に示すように、メイン噴射Qmのタイミングに比較的近いタイミングで実施されるプレ噴射Qprのみを実施する。
ここで、本実施形態では、この前段噴射(パイロット噴射Qpi+プレ噴射Qpr、または、プレ噴射Qpr)を、図7(a)、(b)の熱発生率の図に示すように、前段噴射された燃料により生成される燃焼(以下、プレ燃焼という場合がある)と、メイン噴射された燃料により生成される燃焼(以下、メイン燃焼という場合がある)とが連続して生じ、前段噴射とメイン噴射とによって燃焼室9内に一連の燃焼が生じるように実施する。
一方、図7(c)に示すように、予混合燃焼モードでは、圧縮行程中の比較的早いタイミングで燃焼室9内に燃料が噴射され、噴射終了後に、混合気が燃焼を開始する。この図7(c)では、圧縮行程中に3回に分けて燃料を噴射する場合について示したが、噴射回数はこれに限らない。
以上のように、本実施形態では、運転領域によって燃焼モードが切り替えられるよう構成されており、PCM70は、運転領域に応じて噴射パターンを変更する。
(3−3−2)拡散燃焼モードにおける噴射系の制御手順
次に、図9を用いながら、拡散燃焼モード実施時における噴射系の制御手順について説明する。PCM70は、機能的に、噴射系の制御を実施する噴射制御部71を含んでおり、この噴射制御部71が、噴射系の制御を実施する。
ステップS1にて、噴射制御部71は、上記のように目標トルクとエンジン回転数とに基づいて決定された要求トータル噴射量と、エンジン回転数とに基づいて、噴射圧すなわち蓄圧室内の圧力の目標値である目標噴射圧を決定する。例えば、噴射制御部71は、予め設定記憶されている要求トータル噴射量とエンジン回転数と目標噴射圧のマップから、要求トータル噴射量等に対応する目標噴射圧を抽出する。
また、ステップS2にて、噴射制御部71は、要求トータル噴射量と、エンジン回転数とに基づいて、プレ噴射Qprの噴射量を決定する。例えば、噴射制御部71は、予め設定記憶されている要求トータル噴射量とエンジン回転数とプレ噴射Qprの噴射量のマップから、要求トータル噴射量等に対応する値を、プレ噴射Qprの噴射量として抽出する。
次に、噴射制御部71は、要求トータル噴射量とエンジン回転数とに基づいて、各噴射の噴射時期(噴射開始時期)を決定する。
具体的には、ステップS3にて、噴射制御部71は、要求トータル噴射量とエンジン回転数に応じて、メイン噴射の噴射時期を決定する。また、要求トータル噴射量とエンジン回転数に応じて、各噴射(パイロット、プレ、メイン噴射)の噴射時期(噴射開始時期)どうしの間の期間であるインターバルを決定する。
そして、ステップS4にて、噴射制御部71は、メイン噴射の噴射時期とこのインターバルとに基づいて、パイロット噴射とプレ噴射の噴射時期をそれぞれ決定する。
次に、ステップS5にて、噴射制御部71は、パイロット噴射量を決定する。このパイロット噴射量の決定手順については後述する。
次に、ステップS6にて、噴射制御部71は、要求トータル噴射量と、ステップS4で決定されたプレ噴射の噴射量およびステップS7で決定されたパイロット噴射の噴射量とに基づいて、メイン噴射Qmの噴射量を決定する。
ステップS6の後はステップS7に進み、噴射制御部71は、各噴射の噴射量、噴射時期が上記決定された各値となるようにインジェクタ20を制御する(インジェクタ20に指令を出す)とともに、噴射圧がステップS2で決定された値となるように、燃圧レギュレータを制御する。
(3−3−3)パイロット噴射量の決定手順
上記ステップS5のパイロット噴射量の決定手順について説明する。
本実施形態では、図5に示すように、パイロット噴射量を決定するための部分として、噴射制御部71に、機能的に、第1パイロット噴射量決定部72と、第2パイロット噴射量決定部73とを含む。
第1パイロット噴射量決定部72は、エンジン水温が基準温度(例えば70℃)以下のときにパイロット噴射量を決定する部分である。一方、第2パイロット噴射量決定部73は、エンジン水温が基準温度よりも高いときにパイロット噴射量を決定する部分である。
(i)第2パイロット噴射量決定部73の決定手順
第2パイロット噴射量決定部73は、メイン燃焼の着火遅れ(メイン噴射の噴射開始時期からメイン燃焼が開始するまですなわちメイン噴射された燃料が燃焼を開始するまでの時間)を推定し、この着火遅れが目標値となるようにパイロット噴射量を決定する。
具体的には、第2パイロット噴射量決定部73は、まず、メイン燃焼の着火遅れを推定する。本実施形態では、この着火遅れτ_mを次の式(1)により算出する。
τ_m=A×PTDC ×exp(1/TTDC×NE×CCLD・・・(1)
式(1)において、PTDCは圧縮上死点での非燃焼時の燃焼室9(気筒2)内の圧力、TTDCは圧縮上死点での非燃焼時の燃焼室9内の温度、NEはエンジン回転数、CCLDは燃焼室9内の酸素濃度(燃焼前の酸素濃度)である。また、A,B,C,D、Eはそれぞれ定数であり、これら定数のうち、A、C,Dは正の値、B、Eは負の値であって、圧力、温度、酸素濃度が高いほど着火遅れは短く、エンジン回転数が高いほど着火遅れは長く推定される。
上記式(1)は、以下の式(2)で示すいわゆるアレニウス型実験式を簡素化したものであり、本実施形態における拡散燃焼モードに適合されたものである。
τ=K1×φK2×PK3×exp(K4/T)・・・(2)
この式(2)において、φは、燃料が着火する直前の混合気の当量比であり、Pは、燃料が着火する直前の雰囲気圧力(燃焼室内の圧力)、詳細には、燃焼室内の酸素の分圧であり、Tは、燃料が着火する直前の雰囲気温度(燃焼室内の温度)であり、K1〜K4は、それぞれ定数である。
ここで、式(1)では、式(2)における当量比φの項は定数Aに含まれている。これは、本願発明者らが鋭意研究の結果突き止めた、拡散燃焼では、前段噴射の実施によりメイン燃焼前に燃焼室内に当量比が比較的大きい混合気が少なくとも局所的に生成された場合にはメイン燃焼の着火遅れが当量比によってあまり変化しないという知見に基づく。すなわち、本実施形態では、このように拡散燃焼モードにおいて、前段噴射の実施によりメイン燃焼前に燃焼室内に当量比が比較的大きい混合気を少なくとも局所的に生成できるため、当量比φを変数として用いずに着火遅れを精度よく算出することができる。
種々の運転条件において、上記式(1)を用いて推定した着火遅れと、実際に測定した着火遅れとを比較した結果を図10に示す。図10において、横軸は着火遅れの実測値、縦軸は、上記式(1)を用いて算出した着火遅れの推定値である。この図10から明らかなように、式(1)により算出した着火遅れの推定値と、実測値とはほぼ一致しており、式(1)によって着火遅れが精度よく算出されている。なお、図10では、着火遅れとして、噴射開始時期から燃焼開始までの時間に代えて、この時期と相関の高い、噴射開始時期から熱発生率がピークとなる時期までの時間を示している。
式(1)における非燃焼時の圧縮上死点圧力PTDCは、冷却損失を加味した上で、PVκ一定の式に、インマニ圧センサSN3の検出値と、吸気弁18が閉弁するときの燃焼室の容積と、圧縮上死点における燃焼室の容積を当てはめることで算出される。なお、比熱比κは、EGR率等に基づいて特定される燃焼室内の噴射前のガス成分に基づいて設定される。
上記冷却損失は、エンジン回転数とエンジン水温と気筒2に流入するガスの温度(吸気温度)の推定値に基づいて算出される。例えば、第2パイロット噴射量決定部73は、予め設定されて記憶している、これらエンジン回転数等と冷却損失のマップからエンジン回転数等に応じた値を抽出して冷却損失を決定する。
ここで、上記のように、本実施形態では、サージタンク37に温度を検出するためのインマニ温度センサSN4が設けられている。しかしながら、温度センサは、応答性が十分に高くない。そこで、本実施形態では、吸気温度を推定する。すなわち、PCM70には、機能的に、この吸気温度を推定する吸気温度推定部(吸気温度推定手段)が設けられており、この吸気温度推定部により推定された吸気温度を用いて、冷却損失、ひいては、着火遅れを推定する。なお、本実施形態では、このようにして吸気温度を推定するが、この推定値をインマニ温度センサSN4の検出値により適宜補正することで、推定精度を高めている。
本実施形態では、吸気温度推定部は、高圧EGRガス量(エンジン回転数とエンジン負荷とHP_EGRバルブ51bの開度等により推定される)と、低圧EGRガス量(エンジン回転数とエンジン負荷とLP_EGRバルブ52bの開度等により推定される)と、新気量(エアフロセンサSN2の検出値)等に基づいて、吸気温度を推定する。
非燃焼時の圧縮上死点温度TTDCは、気体の状態方程式に、算出された非燃焼時の圧縮上死点圧力PTDCを当てはめることで算出される。
燃焼室内の酸素濃度CCLDは、リニアO2センサSN6の検出値すなわち排気ガス中の酸素濃度と、吸気量センサSN2の検出値すなわち気筒2に吸入される新気(空気)量と、EGR率とに基づいて算出される。
また、本発明者らは、各種実験の結果、実際のエンジンの運転においては、上記のように温度、圧力の時間履歴を考慮せずに圧縮上死点の温度、圧力を代表温度として着火遅れを予測すると、エンジン回転数が高いほど着火遅れが実際の値よりも短く推定されてしまうことを突き止めた。これはエンジン回転数が高くなるほど単位時間あたりのクランク角度の変化が大きく、温度、圧力の時間あたりの上昇率が高いためと考えられる。そこで、本実施形態では、上記のように、エンジン回転数を加味して着火遅れを推定することで、温度履歴、圧力履歴を考慮することなく圧縮上死点温度、圧力を代表温度、圧力として用いつつ着火遅れの推定精度を高める。
なお、本実施形態では、運転領域によらず上記各定数A,B、C,D、Eを一定値としている。これら各定数の値は、それぞれエンジン(燃焼室形状やインジェクタの噴孔形状等)によって変化する。そのため、これら各定数は、エンジン毎にそれぞれ適宜設定されればよい。
また、これら定数は、EGR率によってもある程度変化するが、EGR率が所定の範囲内で変化する場合には、これらを同じ値としてもよいことが分かっている。そして、本実施形態では、第1領域A2_aおよび第2領域A2_bにおいて、EGR率の変化が所定の範囲内におさまっている。そこで、本実施形態では、上記のように、これら定数を一定として着火遅れを演算する。
以上のようにして着火遅れτ_mを算出した後は、第2パイロット噴射量決定部73は、この着火遅れτ_mと予め設定された着火遅れτ_mの目標値との差を求め、この差に応じて予め設定されたパイロット噴射量の基本値を補正する。
具体的には、第2パイロット噴射量決定部73は、要求トータル噴射量とエンジン回転数等に基づいて着火遅れτ_mの目標値およびパイロット噴射量の基本値を決定する。そして、着火遅れτ_mの目標値よりも着火遅れτ_mの推定値の方が短い場合には、着火遅れを長くするために、プレ燃焼による発熱量を小さく抑えてこれによりメイン燃焼前の雰囲気温度圧力を低下させるべく、最終的なパイロット噴射量をその基本値よりも小さくする。一方、着火遅れτ_mの目標値よりも着火遅れτ_mの推定値の方が長い場合には、着火遅れを短くするために、プレ燃焼による発熱量を大きくしてメイン燃焼前の雰囲気温度圧力を上昇させるべく最終的なパイロット噴射量をその基本値よりも大きくする。
上記の第2パイロット噴射量決定部73の手順によれば、メイン燃焼の着火遅れを適正にして、メイン燃焼が生じる時期、メイン燃焼の速度(熱発生率の立ち上がり具合)等を適正にして、エンジントルク、燃焼騒音、煤の発生量等のエンジン性能を良好にすることができる。
しかしながら、エンジン水温が低い場合には、吸気温度ひいては着火遅れを精度よく推定するのが困難となり、着火遅れに基づく制御ではエンジン性能を確保できなくなるおそれがある。
具体的には、エンジン水温が低くエンジン本体および排気通路40等が十分に温められていない状態では、排気通路40の下流側において吸気通路30に還流する低圧EGRガスの温度は低くなり、高圧EGRガスとの温度差が大きくなってしまう。特に、本実施形態では、低圧EGRガスは、エンジン冷却水が導入されるインタークーラ35を通過した後気筒2に流入されるため、エンジン水温が低い運転条件下では、上記温度差はより大きくなる。そのため、この状態において上記吸気温度を精度よく推定するためには、これら高圧EGRガスと低圧EGRガスとが気筒2に流入する割合を精度よく推定する必要がある。しかしながら、この割合すなわちこれら高圧EGRガスと低圧EGRガスの混合具合を推定するのは困難であり、吸気温度を精度よく推定できなくなる。
そこで、本実施形態では、エンジン水温が低い場合には、第1パイロット噴射量決定部71による手順とは異なる手順で、第2パイロット噴射量決定部73によりパイロット噴射量を決定する。
ここで、上記のように、低圧EGRガスの温度は比較的低い。特に、エンジン水温が低い場合にはこの温度はより低くなる。そのため、低圧EGRガスが気筒2に流入した場合には、気筒2内の温度が低下してメイン燃焼の着火性が悪化する。そこで、低圧EGRガスが気筒2に流入した場合には、メイン燃焼をより適正に着火させるべく、低圧EGRガスが気筒2に流入していない場合よりも、パイロット噴射の噴射量を増大させてメイン燃焼前の温度圧力を高める必要がある。
第2パイロット噴射量決定部73は、この観点から、パイロット噴射の噴射量を決定するものであり、低圧EGRガスが気筒2に流入しているか否かに応じて、パイロット噴射の噴射量を切り替える。第2パイロット噴射量決定部73によるパイロット噴射の噴射量の決定手順の詳細を次に説明する。
(ii)第1パイロット噴射量決定部71の決定手順
PCM70は、機能的に、排気酸素濃度算出部(排気酸素濃度算出手段)74aと、低圧EGR側酸素濃度算出部(低圧EGR側酸素濃度算出手段)74bと、低圧EGRガス流量算出部(低圧EGRガス流量算出手段)74cと、合流後酸素濃度算出部(合流後酸素濃度特定手段)74dと、低圧EGRガス流入状態判定部(低圧EGRガス流入状態判定手段)74eとを含む。
排気酸素濃度算出部74aは、排気通路40中の酸素濃度であって気筒2から排出された排気の酸素濃度である排気酸素濃度(重量%)を特定する部分である。排気酸素濃度算出部74aは、エアフローセンサSN2で検出された新気量と、インジェクタ20から噴射された噴射量とに基づいて、この排気酸素濃度を算出する。本実施形態では、簡易的に、上記噴射量の所定の割合量が酸素と反応したとして、気筒内のガス中の酸素量からこの反応した酸素量を差し引いた残りの酸素量をガス量でわった値を排気酸素濃度として算出する。
低圧EGR側酸素濃度算出部74bは、吸気通路30と低圧EGR通路52aとの接続部分(以下、低圧側接続部という場合がある)52d(図1参照)において、低圧EGR通路52aから吸気通路20に流入するガスの酸素濃度である低圧EGR側酸素濃度を特定する部分である。低圧EGR側酸素濃度算出部74bは、排気酸素濃度特定部74aにより算出された排気酸素濃度と、排気が気筒2から低圧側接続部52dまで移動する時間すなわち輸送遅れ時間とに基づいて、低圧EGR側酸素濃度を特定する。具体的には、低圧EGR側酸素濃度算出部74bは、気筒2から低圧側接続部52dまでの経路長と、エンジン回転数とに基づいて、上記輸送遅れ時間を算出し、この輸送遅れ時間前の排気酸素濃度を、現在の低圧EGR側酸素濃度として特定する。
低圧EGRガス流量算出部74cは、低圧EGRガス流量(低圧EGR通路52bを通過して吸気通路30に還流されるガスの量)を算出する部分である。低圧EGRガス流量算出部74cは、低圧EGR通路52bの入口(排気通路40との接続部分)の圧力と、出口(吸気通路30との接続部分)の圧力との差に基づいて、上記流量を算出する。低圧EGR通路52bの入口の圧力は、上記差圧センサSN9の検出値等に基づいて特定される。また、低圧EGR通路52bの出口の圧力は、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じて、予め設定されたこれらと圧力とのマップから抽出される。
合流後酸素濃度算出部74dは、吸気通路30のうち低圧側接続部52dと高圧EGR通路51aの接続部分51d(図1参照)との間に位置するスロットルバルブ36近傍(特定部分)の酸素濃度(重量%)を特定する部分である。本実施形態では、スロットルバルブ36のすぐ上流側の部分の酸素濃度(以下、この酸素濃度をスロットル部酸素濃度という場合がある)を特定する。
合流後酸素濃度算出部74dは、まず、エアフローセンサSN2で検出された新気量と、低圧EGR側酸素濃度算出部74bにより算出された低圧EGR側酸素濃度と、低圧EGRガス流量算出部74cにより算出された低圧EGRガス流量とに基づいて、低圧側接続部52dの酸素濃度を算出する。そして、この低圧側接続部52dの酸素濃度と、ガスが低圧側接続部52dからスロットルバルブ36近傍まで移動する時間すなわち輸送遅れ時間とに基づいて、スロットルバルブ部酸素濃度を算出する。
すなわち、合流後酸素濃度算出部74dは、酸素濃度23%の空気と、低圧EGR側酸素濃度の低圧EGRガスが、それぞれ新気量、低圧EGRガス流量分混合したことにより生じる混合気の酸素濃度を、これらの値に基づいて算出する。そして、この酸素濃度のガスが低圧側接続部52dからスロットルバルブ36近傍まで移動した後の酸素濃度を、現在のスロットル部酸素濃度とする。具体的には、合流後酸素濃度算出部74dは、低圧側接続部52dからスロットルバルブ36までの経路長と、エンジン回転数とに基づいて、上記輸送遅れ時間を算出し、この輸送遅れ時間前の低圧側接続部52dの酸素濃度を、現在のスロットル部酸素濃度として特定する。
低圧EGRガス流入状態判定部74eは、低圧EGRガスがスロットルバルブ36近傍に流入したか否かを判定する部分である。低圧EGRガスは、燃焼後の排ガスであり、その酸素濃度は空気の酸素濃度よりも低い。そこで、本実施形態では、低圧EGRガス流入状態判定部74eは、上記特定されたスロットル部酸素濃度が空気の酸素濃度である23重量%以下であると、低圧EGRガスがスロットルバルブ36近傍に流入したと判定する。一方、低圧EGRガス流入状態判定部74eは、上記特定されたスロットル部酸素濃度が空気の酸素濃度である23%よりも大きい場合には、低圧EGRガスが上記スロットルバルブ36近傍に流入していないと判定する。
以上のようにして、本実施形態では、スロットルバルブ36近傍に低圧EGRガスの流入状態が判定される。
第1パイロット噴射量決定部72は、上記判定結果に応じて、パイロット噴射の噴射量を、低圧EGRあり用となし用とに切り替える。すなわち、上記スロットルバルブ36近傍に低圧EGRガスが流入していると判定された場合には、第1パイロット噴射量決定部71は、パイロット噴射の噴射量を低圧EGRガスあり用に予め設定された値とし、低圧EGRガスが流入していないと判定された場合には、パイロット噴射の噴射量を低圧EGRガスなし用に予め設定された値とする。本実施形態では、第1パイロット噴射量決定部71に、予め設定された低圧EGRガスあり用となし用のパイロット噴射の噴射量のマップがそれぞれ記憶されており、第1パイロット噴射量決定部71は、各場合に応じて、噴射量を抽出するマップを切り替える。これらマップは、例えば、エンジン回転数とエンジン負荷と噴射量とのマップであり、第1パイロット噴射量決定部72は、エンジン回転数とエンジン負荷とに応じて値を抽出する。
ここで、上記のように、低圧EGRガスが気筒2に流入した場合には、メイン燃焼をより適正に着火させるべく、低圧EGRガスが気筒2に流入していない場合よりも、パイロット噴射の噴射量を増大させてメイン燃焼前の温度圧力を高める必要がある。これに対して、上記マップは、同じ運転条件(エンジン回転数とエンジン負荷)において、低圧EGRガスありの場合の方がなしの場合よりも、パイロット噴射の噴射量が多くなるように設定されている。従って、少なくとも同じ運転条件では、低圧EGRガスが流入していると判定された場合の方が、パイロット噴射の噴射量は多くされる。また、所定の運転条件下において、低圧EGRガスが気筒2に流入していないと判定されている状態から流入したと判定されると、パイロット噴射の噴射量は増量される。
なお、本実施形態では、上記パイロット噴射の噴射量の切替は、上記判定結果が変化してから所定サイクル数経過後に実施する。すなわち、上記判定は、スロットルバルブ36近傍において、低圧EGRガスが流入しているか否かを判定したものであり、スロットルバルブ36近傍に存在する低圧EGRガスが気筒2に到達するまでには、所定サイクルが経過する。そこで、本実施形態では、上記判定結果が変化してから所定サイクル数後に上記パイロット噴射の噴射量の切替を実施する。言い換えると、所定サイクル数前の上記判定結果に基づいてパイロット噴射の噴射量の切替を実施する。この所定サイクル数は、スロットルバルブ36から気筒2までにガスが移動する時間によって決定され、吸気通路30のうちスロットルバルブ36から気筒2までの経路長とエンジン回転数とに基づいて決定される。
(iii)パイロット噴射量決定手順の全体の流れ
以上のパイロット噴射の噴射量の決定手順を簡単にまとめると図11のようになる。
まず、ステップS11にて、エンジン水温が基準温度以下か否かが判定される。
ステップS11の判定がYESの場合は、ステップS12に進む。ステップS12では、着火遅れが推定され、この着火遅れに基づいてパイロット噴射量が決定される。
一方、ステップS12の判定がNOの場合は、ステップS13に進む。ステップS13では、スロットル部酸素濃度が推定される。
スロットル部酸素濃度は、図12に示す手順に沿って推定される。具体的には、ステップS21にて、トータル噴射量と新気量とに基づいて排気酸素濃度が推定される。次に、ステップS22にて、輸送遅れを考慮して上記推定された排気酸素濃度に基づきLP_EGR通路52a出口の酸素濃度が推定される。次に、ステップS23にて、低圧EGRガス流量が推定される。次に、ステップS24にて、LP_EGR通路出口の酸素濃度と低圧EGRガス流量と新気量とに基づき、低圧側接続部52dの酸素濃度を推定する。その後、ステップS25にて、輸送遅れを考慮して上記推定された低圧側接続部52dの酸素濃度に基づきスロットル部酸素濃度を推定する。
このようにして、スロットル部酸素濃度が推定された後は、図11のステップS14に戻り、所定サイクル数前のスロットル部酸素濃度が23%以下か否かが判定される。
このステップS14の判定がNOの場合は、ステップS15に進む。ステップS15では、低圧EGRガスが気筒2に流入していないとして、LP_EGRなし用のマップからパイロット噴射量が決定される。
一方、ステップS14の判定がYESの場合は、ステップS16に進む。ステップS16では、低圧EGRガスが気筒2に流入しているとして、LP_EGRあり用のマップからパイロット噴射量が決定される。
(4)作用等
以上のように、本実施形態によれば、上記スロット部酸素濃度、すなわち、吸気通路30のうち低圧EGR装置の接続部分52dよりも下流側かつ高圧EGR装置の接続部分51dよりも上流側の部分の酸素濃度であって新気に対して低圧EGRガスのみが混入する部分の酸素濃度を推定し、この酸素濃度が新気の酸素濃度である23%以下に低下したか否かによって吸気通路30ひいては気筒2に低圧EGRガスが流入したか否かを判定しており、この判定をより容易に、かつ、精度よく行うことができる。
具体的には、吸気通路30のうち低圧EGR装置の接続部分51dよりも下流側の部分の酸素濃度では、吸気中に低圧EGRガスに加えて高圧EGRガスが含まれるため、低圧EGRガスが流入したか否かを判定するのは困難である。また、LP_EGRバルブ52bの開度に応じて低圧EGRガスが流入したか否かを判定することも考えられるが、このバルブには応答遅れがあるため、このバルブの開度に基づく判定では判定精度を十分に高めることが困難である。これに対して、上記本実施形態の手順によれば、簡単に、かつ、確実に低圧EGRガスの流入状態を判定することができる。
そして、本実施形態によれば、この判定結果に基づいてパイロット噴射(前段噴射)の噴射量を低圧EGRガスあり用となし用とで切り替えており、このありなしに応じてパイロット噴射の噴射量ひいてはメイン噴射の着火性および燃焼状態を適正にし、良好なエンジン性能を確保することができる。特に、同じ運転条件(エンジン回転数とエンジン負荷)において低圧EGRガスありの場合の方がパイロット噴射の噴射量が多く設定されており、これにより、低圧EGRガスが流入しておらず気筒2内の温度が比較的高く維持されている状態から低圧EGRガスが流入し、この低圧EGRガスの流入に伴って気筒内の温度が急激に低下した場合において、パイロット噴射の噴射量が増量される。そのため、メイン噴射前の雰囲気温度圧力を高めて、上記温度(圧縮開始前の温度)の低下によるメイン燃焼の着火性の悪化を抑制することができ、適正な燃焼ひいてはエンジン性能を確保することができる。
また、本実施形態では、酸素濃度が新気の酸素濃度である23%以下に低下したか否かによって低圧EGRガスの流入状態を判定しているため、低圧EGRガスが吸気通路30側に流入したことをより早期に特定することができ、より確実にメイン噴射の着火性および燃焼状態を適正にすることができる。
(5)変形例
ここで、上記実施形態では、上記スロットル部酸素濃度(重量%)が空気の酸素濃度である23重量%以下となると低圧EGRガスがスロットルバルブ36近傍に流入したと判定した場合について説明したが、この判定値は23重量%に限らない。例えば、低圧EGRガスの流入量が少ない場合にはこの低圧EGRガスの流入による影響が小さいと考えられる場合等には、23よりも低い値としてもよい。
また、上記実施形態では、合流後酸素濃度算出部74dが酸素濃度を推定する部分をスロットルバルブ36近傍とした場合について説明したが、推定部分は、低圧側接続部52dと高圧側接続部51dとの間の部分であればこれに限らない。ただし、スロットルバルブ36の開度によっては、スロットルバルブ36の上流側と下流側とでガス流速が変化して輸送遅れ量が異なる場合があるため、スロットルバルブ36近傍の酸素濃度を推定するのが好ましい。
また、上記実施形態では、スロットル部酸素濃度が23%以下に低下してから所定サイクル後にパイロット噴射(前段噴射)の噴射量を切り替える場合について説明したが、低下した時点で切替を行ってもよい。こすなわち、スロットル部酸素濃度が23%以下に低下した時点でパイロット噴射量を増量してもよい。この場合には、スロットルバルブ36近傍から気筒2までの間の輸送遅れに誤差あるいはばらつきが生じた場合であっても、低圧EGRガスの気筒2内への流入に伴うメイン燃焼の悪化をより確実に回避することができる。
また、上記実施形態では、エンジン水温が基準温度以上の場合には、第2パイロット噴射量決定部73によって、着火遅れの推定値に基づいてパイロット噴射の噴射量を決定する場合について説明したが、エンジン水温が基準温度以上の場合においても、第1パイロット噴射量決定部72によって、スロットル部酸素濃度に応じてパイロット噴射の噴射量を制御するように構成してもよい。また、エンジン水温が基準温度以上場合において、着火遅れ以外の指標に基づいてパイロット噴射の噴射量を制御してもよい。ただし、エンジン水温が基準温度以上の場合には、着火遅れを精度よく推定することができるためこの着火遅れによって噴射量を制御すれば、より直接的にメイン燃焼の燃焼状態を適正にすることができる。
また、EGR制御モード(LP_EGR51を作動させるか、HP_EGR52を作動させるか)の切り替えが行われる領域でのみ、スロットル部酸素濃度に基づいて、パイロット噴射の噴射量の切り替えを行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、スロットル部酸素濃度(スロットルバルブ36近傍の酸素濃度)を推定して特定した場合について説明したが、このスロットル部酸素濃度を、酸素濃度センサを用いて特定してもよい。ただし、上記のように、推定によりスロットル部酸素濃度を特定すれば、センサを設ける場合に比べてコスト面で有利になるとともに構造を簡素化することができる。
1 エンジン本体
2 気筒
9 燃焼室
20 インジェクタ(噴射装置)
30 吸気通路
40 排気通路
41 排気浄化装置
51 高圧EGR装置
52 低圧EGR装置
71 噴射制御部(噴射制御手段)
74a 排気酸素濃度算出部(排気酸素濃度算出手段)
74b 低圧EGR側酸素濃度算出部(低圧EGR側酸素濃度算出手段)
74c 低圧EGRガス流量算出部(低圧EGRガス流量算出手段)
74d 合流後酸素濃度特定手段(合流後酸素濃度算出部)
74e 低圧EGRガス流入状態判定部(低圧EGRガス流入状態判定手段)

Claims (5)

  1. 排気通路に設けられた排気を浄化するための排気浄化装置と、上記排気通路のうち排気浄化装置よりも下流側の部分と吸気通路とを接続して当該吸気通路に排気を還流させる低圧EGR装置と、上記排気通路のうち上記排気浄化装置よりも上流側の部分と上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置との接続部分よりも下流側の部分とを接続して当該吸気通路に排気を還流させる高圧EGR装置とを備えたエンジンの燃料制御装置において、
    エンジンの気筒内に燃料を噴射可能な噴射装置と、
    上記噴射装置を制御する噴射制御手段と、
    上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置の接続部分と上記高圧EGR装置の接続部分との間の特定部分の酸素濃度を特定する合流後酸素濃度特定手段と、
    上記低圧EGR装置によって上記吸気通路に還流される排ガスである低圧EGRガスが上記特定部分に流入しているか否かを判定する低圧EGRガス流入状態判定手段とを備え、
    上記低圧EGRガス流入状態判定手段は、上記合流後酸素濃度特定手段により特定された酸素濃度が所定値以下に低下すると上記低圧EGRガスが上記特定部分に流入したと判定し、
    上記噴射制御手段は、少なくとも一部の運転領域において、主噴射と、当該主噴射よりも前に当該主噴射の噴射量よりも少ない量の燃料を気筒内に噴射する前段噴射とを上記噴射装置に実施させ、上記低圧EGRガス流入状態判定手段の判定結果に基づいて上記前段噴射の噴射量を制御するとともに、上記低圧EGRガス流入状態判定手段によって上記低圧EGRガスの上記特定部分への流入が開始したと判定されると、上記前段噴射の噴射量を増大させることを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
  2. 請求項1に記載のエンジンの燃料制御装置において、
    上記所定値は、23パーセントに設定されていることを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のエンジンの燃料制御装置において、
    上記特定部分は、上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置の接続部分と上記高圧EGR装置の接続部分との間の部分に設けられて当該吸気通路を開閉可能なスロットルバルブ近傍の部分であることを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの燃料制御装置において、
    上記吸気通路に流入する新気の量を検出する新気量検出手段と、
    上記検出された新気量と、上記噴射装置から噴射された噴射量とに基づいて上記排気通路中の酸素濃度である排気酸素濃度を算出する排気酸素濃度算出手段と、
    上記特定された排気酸素濃度と、気筒から上記吸気通路のうち上記低圧EGR装置の接続部分まで排気が移動する時間とに基づいて、この接続部分において上記低圧EGR装置から上記吸気通路に流入するガスの酸素濃度である低圧EGR側酸素濃度を算出する低圧EGR側酸素濃度算出手段と、
    上記低圧EGR装置により上記吸気通路に還流されるガスの量である低圧EGRガス流量を算出する低圧EGRガス流量算出手段とを備え、
    上記合流後酸素濃度特定手段は、上記検出された新気量と、上記特定された低圧EGR側酸素濃度と、上記算出された低圧EGRガス流量とに基づいて、上記接続部分における上記低圧EGRガスと新気の混合気の酸素濃度を算出し、この算出した混合気の酸素濃度に基づいて、上記特定部分の酸素濃度を算出することを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のエンジンの燃料制御装置において、
    上記吸気通路のうち上記高圧EGR装置との接続部分よりも下流側の部分を通過するガスの温度を推定する吸気温度推定手段を備え、
    上記噴射制御手段は、
    エンジンを冷却する冷却水の温度であるエンジン水温が予め設定された基準温度以下の場合には、上記低圧EGRガス流入状態判定手段の判定結果に基づいて上記前段噴射の噴射量を制御する一方、
    上記エンジン水温が上記基準温度よりも高い場合には、上記判定結果によらず、上記吸気温度推定手段により推定された温度に基づいて上記前段噴射の噴射量を制御することを特徴とするエンジンの燃料制御装置。
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