JP5392418B2 - 内燃機関の着火遅れ期間推定装置及び着火時期制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンに代表される圧縮自着火式の内燃機関の着火遅れ期間を推定する装置、及び、その着火遅れ期間の適正化を図ることにより着火時期を制御する装置に係る。特に、本発明は、着火遅れ期間の推定精度を高めるための対策に関する。
自動車等に搭載されるディーゼルエンジンの燃焼は、主として予混合燃焼及び拡散燃焼により成り立つことが知られている。具体的には、インジェクタから燃焼室内への燃料噴射が開始されると、先ず、燃料の気化拡散により可燃混合気が生成される(着火遅れ期間)。次に、この可燃混合気が燃焼室の数ヶ所でほぼ同時に自己着火し、急速に燃焼が進む(予混合燃焼)。そして、この予混合燃焼によって十分に温度上昇した燃焼室内に対し、燃料噴射が継続され、または、所定のインターバル(燃料噴射停止期間)を経て燃料噴射が開始されることで拡散燃焼が行われる。その後、燃料噴射が終了した後にも未燃燃料が存在するため、しばらくの間、熱発生が続けられる(後燃え期間)。
ところで、近年、自動車の排気エミッション規制の強化(Euro6等)に伴い、環境変化や運転過渡等に起因して、筒内の圧力、温度、ガス(空気)量、酸素濃度等といった混合気の着火時期に影響を与えるパラメータ(燃焼状態量とも呼ばれる)が変化する状況になっても、混合気の着火時期を適正化し、これによって排気エミッションを改善すると共に、燃焼変動や失火を防止することが要求されている。
尚、ディーゼルエンジンにおける着火遅れの発生原因としては、混合気の着火時期を左右する各種条件(環境条件等)が一般的な標準状態とは異なる状況となった場合が掲げられる。具体的には、標高が高い高地での走行時、燃料性状(例えばセタン価)が標準的なものよりも劣悪な場合(低セタン価燃料を使用した場合)、低外気温時、エンジン負荷の急速な変化時(運転過渡時)などといった条件下では混合気の着火遅れが大きくなってしまう可能性がある。
また、ディーゼルエンジンにおける混合気の着火遅れとしては、物理的着火遅れと化学的着火遅れとがある。物理的着火遅れは、燃料液滴の蒸発・混合に要する時間である。一方、化学的着火遅れは、燃料蒸気の化学的結合・分解かつ酸化発熱に要する時間である。
上記混合気の着火時期を適正化するための手法として、混合気の着火遅れ期間を推定し、この着火遅れ期間が所定の適正期間に一致するように燃料噴射形態等を制御することが考えられる。この点に鑑みられたものとして下記の特許文献1〜3が提案されている。
特許文献1には、筒内の圧縮端温度や圧縮端圧力(ピストンが圧縮上死点に達した時点での燃焼室内温度及び燃焼室内圧力)に基づいて着火遅れ期間を推定し、この着火遅れ期間に応じて燃料噴射期間を制御することが開示されている。
また、特許文献2には、極低温時にあってはパイロット噴射された燃料の着火遅れ期間が長くなると推定し、パイロット噴射の噴射時期を進角させることで、パイロット噴射された燃料の燃焼タイミングを最適化することが開示されている。
更に、特許文献3には、熱発生率最大値が基準セタン価燃料のものより低い場合には、メイン噴射の着火遅れ期間が長くなると推定し、パイロット噴射量を増加させて、パイロット噴射燃料及びメイン噴射燃料の着火性を向上させ、メイン噴射の着火遅れ期間を短縮化することが開示されている。
特開平11−148412号公報 特開平11−93735号公報 特開2006−183466号公報
しかしながら、従来技術においては、混合気の着火遅れ期間の推定精度を十分に高く得ることが可能な技術については未だ提案されておらず、特に、物理的着火遅れの推定精度を高める技術については殆ど開発されていなかったのが現状である。
つまり、上記各特許文献に開示されている技術では、筒内温度、筒内圧力、外気温度等といった燃焼場周辺の環境条件(燃焼場に対して間接的に影響を与えるパラメータ)を認識して着火遅れ期間を推定しているに過ぎなかったため、実際の燃焼場内での噴霧状態(燃焼場内で着火可能な条件が成立しているか否か)を直接的に推定するものではなく、その着火遅れ期間の推定の信頼性が十分に得られているとは言えなかった。例えば、筒内温度や筒内圧力を高い精度で認識しても、吸入空気量、スワール速度、ガス組成等が異なれば物理的着火遅れ期間が変化することになるため、信頼性の高い着火遅れ期間を推定することは困難であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、混合気の着火遅れ期間を高い精度で推定し、この着火遅れ期間の適正化に寄与できる内燃機関の着火遅れ期間推定装置、及び、この着火遅れ期間推定装置によって推定された着火遅れ期間を適正に制御する着火時期制御装置を提供することにある。
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、燃料噴霧内における当量比に基づいて混合気の着火遅れ期間を推定することで、この混合気の燃焼場内での着火の有無を左右する条件を直接的に認識して着火遅れ期間を推定し、その着火遅れ期間の推定の信頼性を高めている。また、この信頼性の高い着火遅れ期間に対し、目標とする着火時期との偏差を認識し、着火遅れ期間の適正化によって混合気の着火時期を目標着火時期に一致させるようにしている。
−解決手段−
具体的に、本発明は、燃料噴射弁から燃焼室内に向けて噴射された燃料の着火遅れ期間を推定する内燃機関の着火遅れ期間推定装置を前提とする。この内燃機関の着火遅れ期間推定装置に対し、物理的着火遅れ期間算出手段、化学的着火遅れ期間算出手段、総着火遅れ期間算出手段を備えさせている。上記物理的着火遅れ期間算出手段は、上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比に基づいて物理的着火遅れ期間を算出する。上記化学的着火遅れ期間算出手段は、上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比が所定当量比に達した時点での燃焼室内の環境条件に基づいて化学的着火遅れ期間を算出する。上記総着火遅れ期間算出手段は、上記算出された物理的着火遅れ期間と化学的着火遅れ期間とに基づいて燃料の総着火遅れ期間を算出する。
この特定事項により、上記物理的着火遅れ期間及び化学的着火遅れ期間は、共に燃料の噴霧中における当量比に基づいて、または、この噴霧中における当量比を基準として算出されたものとなる。つまり、燃焼場に対して間接的に影響を与えるパラメータを認識して着火遅れ期間を推定するのではなく、実際の燃焼場内での噴霧状態(着火のし易さを現す指標)を直接的に認識することで着火遅れ期間を推定するようにしている。このため、環境変化や運転過渡等が生じている場合であっても物理的着火遅れ期間及び化学的着火遅れ期間を高い精度で推定することができ、その結果、総着火遅れ期間も高い精度で推定することが可能である。
上記物理的着火遅れ期間算出手段による物理的着火遅れ期間の算出動作として具体的には、上記燃料噴射弁から燃料が噴射された時を基点とし、この燃料の噴霧中における当量比が、着火可能な噴霧内可燃当量比を超えた後、この噴霧内可燃当量比を下回った時点までの期間を物理的着火遅れ期間として算出するようにしている。
一方、上記化学的着火遅れ期間算出手段による化学的着火遅れ期間の算出動作として具体的には、上記燃料噴射弁から燃料が噴射され、その燃料の噴霧中における当量比が着火可能な噴霧内可燃当量比に達した時点での燃焼室内の温度及び圧力に基づいて化学的着火遅れ期間を算出するようにしている。
このようにして物理的着火遅れ期間及び化学的着火遅れ期間を算出することにより、総着火遅れ期間を高い精度で推定することができ、着火遅れ期間の適正化に役立てることが可能になる。
また、上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比が上記噴霧内可燃当量比に達して燃料が着火したか否かを判定し、上記噴霧内可燃当量比に達しておらず燃料が着火していない場合には、その噴霧中における当量比が上記噴霧内可燃当量比に達するように燃料噴射量の増量補正を行った上で上記物理的着火遅れ期間算出手段による物理的着火遅れ期間の算出を行う構成としている。
同様に、上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比が上記噴霧内可燃当量比に達している領域の燃料蒸気量が所定の必要最少可燃蒸気量に達しているか否かを判定し、この必要最少可燃蒸気量に達していない場合には、その燃料蒸気量が必要最少可燃蒸気量に達するように燃料噴射量の増量補正を行った上で上記物理的着火遅れ期間算出手段による物理的着火遅れ期間の算出を行う構成としている。
このように燃料噴射量の増量補正を行うことによって燃料の噴霧の着火を確実に行えるようにした上で物理的着火遅れ期間の算出及び化学的着火遅れ期間の算出を行うことになる。これにより、本発明に係る物理的着火遅れ期間の推定動作及び化学的着火遅れ期間の推定動作を実行可能な状況を確実に得ることが可能になる。
本発明が適用される燃料噴射形態としては主噴射に先立って行われる副噴射が挙げられる。つまり、燃料噴射弁から燃焼室内に向けての燃料噴射として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とが実行可能とされた内燃機関に対し、上記総着火遅れ期間算出手段が、この副噴射の実行に対して燃料の総着火遅れ期間を算出する構成としている。
このように副噴射で噴射された燃料の総着火遅れ期間を算出することにより、この副噴射の着火時期の適正化に役立てることができ、この副噴射の着火時期の適正化に伴って、その後に行われる主噴射の着火時期の適正化も図ることが可能になる。その結果、主噴射で噴射された燃料の燃焼時における排気エミッションの改善、燃焼変動や失火の防止を図ることができる。
上述の如く推定された総着火遅れ期間に基づいて着火時期を制御する着火時期制御装置も本発明の技術的思想の範疇である。つまり、上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど、燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータの制御により燃焼室内の温度を高く設定する燃焼室内温度補正手段を備えさせた構成とするものである。
上記燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータとしては、排気系から吸気系へ還流される排気ガスの温度が挙げられ、上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど排気系から吸気系へ還流される排気ガスの温度を高く設定する構成としている。
また、上記燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータとしては、吸気バルブの閉弁タイミングも挙げられ、上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど吸気バルブの閉弁タイミングをピストンの下死点側に移行させて実圧縮比を高くする構成としている。
また、上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど燃焼室内の酸素濃度を調整可能な制御パラメータの制御により燃焼室内の酸素濃度を高く設定する燃焼室内酸素濃度補正手段を備えさせた構成とする。
この場合、上記燃焼室内の酸素濃度を調整可能な制御パラメータとしては、排気系から吸気系へ還流される排気ガスの還流量が挙げられ、上記推定される総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど排気系から吸気系へ還流される排気ガスの還流量を少なく設定する構成としている。
本発明では、燃料噴霧内における当量比に基づいて混合気の着火遅れ期間を推定することで、この混合気の燃焼場内での着火の有無を左右する条件を直接的に認識して着火遅れ期間を推定し、その着火遅れ期間の推定の信頼性を高めることが可能である。また、この信頼性の高い着火遅れ期間の推定結果に基づいて着火時期を制御することにより、着火時期の適正化が図れ、排気エミッションの改善等を図ることが可能である。
図1は、実施形態に係るエンジン及びその制御系統の概略構成を示す図である。 図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室及びその周辺部を示す断面図である。 図3は、ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。 図4は、EGRモードマップを示す図である。 図5は、燃焼室内での燃焼形態の概略を説明するための吸排気系及び燃焼室の模式図である。 図6は、燃料噴射時における燃焼室及びその周辺部を示す断面図である。 図7は、燃料噴射時における燃焼室の平面図である。 図8は、物理的着火遅れ期間推定動作の手順を示すフローチャート図である。 図9は、パイロット噴射開始後における噴霧内当量比の変化を示す図である。 図10は、必要最少可燃蒸気量を求めるための必要最少可燃蒸気量マップを示す図である。 図11は、パイロット噴射開始後における可燃当量比が確保されている期間及び燃料蒸発量を説明するための図である。 図12は、パイロット噴射開始後における噴霧内当量比の変化を示し、パイロット噴射量の増量前の噴霧内当量比の変化と、パイロット噴射量の増量後の噴霧内当量比の変化とを示す図である。 図13は、化学的着火遅れ期間推定動作を含む着火時期制御の手順を示すフローチャート図である。 図14は、パイロット噴射実行後における物理的着火遅れ期間及び化学的着火遅れ期間を説明するための図である。 図15は、エンジン回転数及び燃料噴射量により基準目標着火遅れ期間を求めるための基準目標着火遅れ期間マップを示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒(例えば直列4気筒)ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1及びその制御系統の概略構成図である。また、図2は、ディーゼルエンジンの燃焼室3及びその周辺部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、燃料供給系2、燃焼室3、吸気系6、排気系7等を主要部とするディーゼルエンジンシステムとして構成されている。
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁26、機関燃料通路27、添加燃料通路28等を備えて構成されている。
上記サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路27を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は、その内部に圧電素子(ピエゾ素子)を備え、適宜開弁して燃焼室3内に燃料を噴射供給するピエゾインジェクタにより構成されている。このインジェクタ23からの燃料噴射制御の詳細については後述する。
また、上記サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路28を介して燃料添加弁26に供給する。添加燃料通路28には、緊急時において添加燃料通路28を遮断して燃料添加を停止するための上記遮断弁24が備えられている。
また、上記燃料添加弁26は、ECU100による添加制御動作によって排気系7への燃料添加量が目標添加量(排気A/Fが目標A/Fとなるような添加量)となるように、また、燃料添加タイミングが所定タイミングとなるように開弁時期が制御される電子制御式の開閉弁により構成されている。つまり、この燃料添加弁26から所望の燃料が適宜のタイミングで排気系7(排気ポート71から排気マニホールド72)に噴射供給される構成となっている。
吸気系6は、シリンダヘッド15(図2参照)に形成された吸気ポート15aに接続される吸気マニホールド63を備え、この吸気マニホールド63に、吸気通路を構成する吸気管64が接続されている。また、この吸気通路には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ43、スロットルバルブ(吸気絞り弁)62が配設されている。上記エアフローメータ43は、エアクリーナ65を介して吸気通路に流入される空気量に応じた電気信号を出力するようになっている。
また、この吸気系6には、燃焼室3内でのスワール流(水平方向の旋回流)を可変とするためのスワールコントロールバルブ(スワール速度可変機構)66が備えられている(図2参照)。具体的に、上記吸気ポート15aとしては、ノーマルポート及びスワールポートの2系統が各気筒毎に備えられており、そのうち図2に示されているノーマルポート15aに、開度調整可能なバタフライバルブで成るスワールコントロールバルブ66が配置されている。このスワールコントロールバルブ66には図示しないアクチュエータが連繋されており、このアクチュエータの駆動によって調整されるスワールコントロールバルブ66の開度に応じてノーマルポート15aを通過する空気の流量が変更できるようになっている。そして、スワールコントロールバルブ66の開度が大きいほど、ノーマルポート15aから気筒内に吸入される空気量が増加する。このため、スワールポート(図2では図示省略)により発生したスワールは相対的に弱まり、気筒内は低スワール(スワール速度が低い状態)となる。逆に、スワールコントロールバルブ66の開度が小さいほど、ノーマルポート15aから気筒内に吸入される空気量が減少する。このため、スワールポートにより発生したスワールは相対的に強められ、気筒内は高スワール(スワール速度が高い状態)となる。
排気系7は、シリンダヘッド15に形成された上記排気ポート71に接続される排気マニホールド72を備え、この排気マニホールド72に対して、排気通路を構成する排気管73,74が接続されている。また、この排気通路には、NOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)75及びDPNR触媒(Diesel Paticulate−NOx Reduction触媒)76を備えたマニバータ(排気浄化装置)77が配設されている。以下、これらNSR触媒75及びDPNR触媒76について説明する。
NSR触媒75は、吸蔵還元型NOx触媒であって、例えばアルミナ(Al23)を担体とし、この担体上に例えばカリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類、ランタン(La)、イットリウム(Y)のような希土類と、白金(Pt)のような貴金属とが担持された構成となっている。
このNSR触媒75は、排気中に多量の酸素が存在している状態においてはNOxを吸蔵し、排気中の酸素濃度が低く、かつ還元成分(例えば燃料の未燃成分(HC))が多量に存在している状態においてはNOxをNO2若しくはNOに還元して放出する。NO2やNOとして放出されたNOxは、排気中のHCやCOと速やかに反応することによってさらに還元されてN2となる。また、HCやCOは、NO2やNOを還元することで、自身は酸化されてH2OやCO2となる。即ち、NSR触媒75に導入される排気中の酸素濃度やHC成分を適宜調整することにより、排気中のHC、CO、NOxを浄化することができるようになっている。本実施形態のものでは、この排気中の酸素濃度やHC成分の調整を上記燃料添加弁26からの燃料添加動作によって行うことが可能となっている。
一方、DPNR触媒76は、例えば多孔質セラミック構造体にNOx吸蔵還元型触媒を担持させたものであり、排気ガス中のPMは多孔質の壁を通過する際に捕集される。また、排気ガスの空燃比がリーンの場合、排気ガス中のNOxはNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵され、空燃比がリッチになると、吸蔵したNOxは還元・放出される。さらに、DPNR触媒76には、捕集したPMを酸化・燃焼する触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とする酸化触媒)が担持されている。
ここで、ディーゼルエンジンの燃焼室3及びその周辺部の構成について、図2を用いて説明する。この図2に示すように、エンジン本体の一部を構成するシリンダブロック11には、各気筒(4気筒)毎に円筒状のシリンダボア12が形成されており、各シリンダボア12の内部にはピストン13が上下方向に摺動可能に収容されている。
ピストン13の頂面13aの上側には上記燃焼室3が形成されている。つまり、この燃焼室3は、シリンダブロック11の上部にガスケット14を介して取り付けられたシリンダヘッド15の下面と、シリンダボア12の内壁面と、ピストン13の頂面13aとにより区画形成されている。そして、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ(凹陥部)13bが凹設されており、このキャビティ13bも燃焼室3の一部を構成している。
尚、このキャビティ13bの形状としては、その中央部分(シリンダ中心線P上)では凹陥寸法が小さく、外周側に向かうに従って凹陥寸法が大きくなっている。つまり、図2に示すようにピストン13が圧縮上死点付近にある際、このキャビティ13bによって形成される燃焼室3としては、中央部分では比較的容積の小さい狭小空間とされ、外周側に向かって次第に空間が拡大される(拡大空間とされる)構成となっている。
上記ピストン13は、コネクティングロッド18の小端部18aがピストンピン13cにより連結されており、このコネクティングロッド18の大端部はエンジン出力軸であるクランクシャフトに連結されている。これにより、シリンダボア12内でのピストン13の往復移動がコネクティングロッド18を介してクランクシャフトに伝達され、このクランクシャフトが回転することでエンジン出力が得られるようになっている。また、燃焼室3に向けてグロープラグ19が配設されている。このグロープラグ19は、エンジン1の始動直前に電流が流されることにより赤熱し、これに燃料噴霧の一部が吹きつけられることで着火・燃焼が促進される始動補助装置として機能する。
上記シリンダヘッド15には、燃焼室3へ空気を導入する上記吸気ポート15aと、燃焼室3から排気ガスを排出する上記排気ポート71とがそれぞれ形成されていると共に、吸気ポート15aを開閉する吸気バルブ16及び排気ポート71を開閉する排気バルブ17が配設されている。これら吸気バルブ16及び排気バルブ17はシリンダ中心線Pを挟んで対向配置されている。つまり、本エンジン1はクロスフロータイプとして構成されている。また、シリンダヘッド15には、燃焼室3の内部へ直接的に燃料を噴射する上記インジェクタ23が取り付けられている。このインジェクタ23は、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室3の略中央上部に配設されており、上記コモンレール22から導入される燃料を燃焼室3に向けて所定のタイミングで噴射するようになっている。
更に、図1に示す如く、このエンジン1には、過給機(ターボチャージャ)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト51を介して連結されたタービンホイール52及びコンプレッサホイール53を備えている。コンプレッサホイール53は吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール52は排気管73内部に臨んで配置されている。このためターボチャージャ5は、タービンホイール52が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサホイール53を回転させ、吸気圧を高めるといった所謂過給動作を行うようになっている。本実施形態におけるターボチャージャ5は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール52側に可変ノズルベーン機構(図示省略)が設けられており、この可変ノズルベーン機構の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。
吸気系6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。
このインタークーラ61よりも更に下流側に設けられた上記スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することができる電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
また、エンジン1には、吸気系6と排気系7とを接続して排気系7から排気ガスの一部を吸気系6に還流させることにより、燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるための排気還流装置8が備えられている。この排気還流装置8は、マニバータ77より下流、すなわちタービンホイール52より下流の排気管74とコンプレッサホイール53より上流の吸気管64とを接続する低圧EGR通路81と、タービンホイール52より上流の排気通路(例えば排気マニホールド72)とインタークーラ61より下流、即ちコンプレッサホイール53より下流の吸気管64とを接続する高圧EGR通路82とを備えている。上記低圧EGR通路81には、排気ガスを冷却するためのEGRクーラ83と、低圧EGR通路81を介して吸気管64に還流される排気ガス(以下、低圧EGRガスと呼ぶ場合もある)の流量を調整するための低圧EGRバルブ84とが設けられている。一方、高圧EGR通路82には、高圧EGR通路82を介して吸気管64に還流される排気ガス(以下、高圧EGRガスと呼ぶ場合もある)の流量を調整するための高圧EGRバルブ85が設けられている。なお、以下では低圧EGRガスと高圧EGRガスを特に区別する必要がない場合は、単にEGRガスと呼ぶ。
また、エンジン1の動弁系にはVVT(Variable Valve Timing)機構が備えられており、吸気バルブ16の開閉タイミングの調整が可能となっている。このVVT機構の構成については周知であるため(例えば特開2010−116816号公報や特開2010−180748号公報を参照)、ここでの説明は省略する。
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
例えば、上記エアフローメータ43は、吸気系6内のスロットルバルブ62上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ49は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ48は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/F(空燃比)センサ44は、排気系7のマニバータ77の下流において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。排気温センサ45は、同じく排気系7のマニバータ77の下流において排気ガスの温度(排気温度)に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ41はコモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ42はスロットルバルブ62の開度を検出する。
−ECU−
ECU100は、図3に示すように、CPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104などを備えている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリである。バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
以上のCPU101、ROM102、RAM103及びバックアップRAM104は、バス107を介して互いに接続されるとともに、入力インターフェース105及び出力インターフェース106と接続されている。
入力インターフェース105には、上記レール圧センサ41、スロットル開度センサ42、エアフローメータ43、A/Fセンサ44、排気温センサ45、吸気圧センサ48、吸気温センサ49が接続されている。さらに、この入力インターフェース105には、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する水温センサ46、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ47、及び、エンジン1の出力軸(クランクシャフト)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス)を出力するクランクポジションセンサ40などが接続されている。
一方、出力インターフェース106には、上記サプライポンプ21、インジェクタ23、燃料添加弁26、スロットルバルブ62、スワールコントロールバルブ66、低圧EGRバルブ84、高圧EGRバルブ85、及び、VVT機構67などが接続されている。また、出力インターフェース106には、その他に、上記ターボチャージャ5の可変ノズルベーン機構に備えられたアクチュエータ(図示省略)も接続されている。
そして、ECU100は、上記した各種センサからの出力、その出力値を利用する演算式により求められた演算値、または、上記ROM102に記憶された各種マップに基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。
例えば、ECU100は、インジェクタ23の燃料噴射制御として、パイロット噴射(副噴射)とメイン噴射(主噴射)とを実行する。
上記パイロット噴射は、インジェクタ23からのメイン噴射に先立ち、予め少量の燃料を噴射する動作である。また、このパイロット噴射は、メイン噴射による燃料の着火遅れを抑制し、安定した拡散燃焼に導くための噴射動作であって、副噴射とも呼ばれる。また、本実施形態におけるパイロット噴射は、上述したメイン噴射による初期燃焼速度を抑制する機能ばかりでなく、気筒内温度を高める予熱機能をも有するものとなっている。つまり、このパイロット噴射の実行後、燃料噴射を一旦中断し、メイン噴射が開始されるまでの間に圧縮ガス温度(気筒内温度)を十分に高めて燃料の自着火温度(例えば1000K)に到達させるようにし、これによってメイン噴射で噴射される燃料の着火性を良好に確保するようにしている。
上記メイン噴射は、エンジン1のトルク発生のための噴射動作(トルク発生用燃料の供給動作)である。このメイン噴射での噴射量は、基本的には、エンジン回転数、アクセル操作量、冷却水温度、吸気温度等の運転状態に応じ、要求トルクが得られるように決定される。例えば、エンジン回転数(クランクポジションセンサ40の検出値に基づいて算出されるエンジン回転数)が高いほど、また、アクセル操作量(アクセル開度センサ47により検出されるアクセルペダルの踏み込み量)が大きいほど(アクセル開度が大きいほど)エンジン1のトルク要求値としては高く得られ、それに応じてメイン噴射での燃料噴射量としても多く設定されることになる。
尚、上述したパイロット噴射及びメイン噴射の他に、アフタ噴射やポスト噴射が必要に応じて行われる。アフタ噴射は、排気ガス温度を上昇させるための噴射動作である。具体的には、供給された燃料の燃焼エネルギがエンジン1のトルクに変換されることなく、その大部分が排気の熱エネルギとして得られるタイミングでアフタ噴射は実行される。また、ポスト噴射は、排気系7に燃料を直接的に導入して上記マニバータ77の昇温を図るための噴射動作である。例えば、DPNR触媒76に捕集されているPMの堆積量が所定量を超えた場合(例えばマニバータ77の前後の差圧を検出することにより検知)、ポスト噴射が実行されるようになっている。
また、ECU100は、エンジン1の運転状態に応じて、排気還流装置8に備えられた各EGRバルブ84,85の開度を制御し、吸気系に向けての排気還流量(EGRガス量)を調整する。具体的に、本実施形態に係るエンジン1では、排気系から吸気系へ排気ガスを還流させるための複数種類のEGRモードがエンジン1の運転状態に対応して設定されている。EGRモードとしては、低圧EGR通路81のみを介して排気ガスを吸気管64に還流する低圧EGRモードとしてのロープレッシャーループ(LPL)モード、高圧EGR通路82のみを介して排気ガスを吸気管64に還流する高圧EGRモードとしてのハイプレッシャーループ(HPL)モード、及び、低圧EGR通路81及び高圧EGR通路82の両方のEGR通路を介して排気ガスを吸気管64に還流する混合EGRモードとしてのMPLモードが設定されている。
図4は、これら各EGRモードとエンジン1の運転状態との対応関係の一例を示すEGRモードマップである。ECU100は、吸気管64への排気ガスの還流を行う場合、このEGRモードマップを参照し、エンジン回転数及びエンジン負荷に応じてLPLモード、MPLモード、又はHPLモードのいずれかのEGRモードを選択する。また、エンジン1の運転状態の変化に応じてEGRモードを切り替える。尚、LPLモードは、高圧EGRバルブ85が全閉に維持されるとともに低圧EGRバルブ84が開度調整されることにより実行される。HPLモードは、低圧EGRバルブ84が全閉に維持されるとともに高圧EGRバルブ85が開度調整されることにより実行される。MPLモードは、低圧EGRバルブ84及び高圧EGRバルブ85の両方が開度調整されることにより実行される。これら各EGRモードにおける低圧EGRバルブ84及び高圧EGRバルブ85のそれぞれの開度は、エンジン1の運転状態に応じてECU100が適切な値に調整する。尚、上記EGRモードマップは、予め実験やシミュレーション等によって作成されたものである。
更に、ECU100は、上記スワールコントロールバルブ66の開度制御を実行する。このスワールコントロールバルブ66の開度制御としては、燃焼室3内に噴射された燃料の噴霧の単位時間当たり(または単位クランク回転角度当たり)における気筒内の周方向の移動量を変更するように行われる。
−燃料噴射圧−
燃料噴射を実行する際の燃料噴射圧は、コモンレール22の内圧により決定される。このコモンレール内圧として、一般に、コモンレール22からインジェクタ23へ供給される燃料圧力の目標値、即ち目標レール圧は、エンジン負荷(機関負荷)が高くなるほど、及び、エンジン回転数(機関回転数)が高くなるほど高いものとされる。即ち、エンジン負荷が高い場合には燃焼室3内に吸入される空気量が多いため、インジェクタ23から燃焼室3内に向けて多量の燃料を噴射しなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。また、エンジン回転数が高い場合には噴射可能な期間が短いため、単位時間当たりに噴射される燃料量を多くしなければならず、よってインジェクタ23からの噴射圧力を高いものとする必要がある。このように、目標レール圧は一般にエンジン負荷及びエンジン回転数に基づいて設定される。尚、この目標レール圧は例えば上記ROM102に記憶された燃圧設定マップに従って設定される。つまり、この燃圧設定マップに従って燃料圧力を決定することで、インジェクタ23の開弁期間(噴射率波形)が制御され、その開弁期間中における燃料噴射量を規定することが可能になる。
尚、本実施形態では、エンジン負荷等に応じて燃料圧力が30MPa〜200MPaの間で調整されるようになっている。
上記パイロット噴射やメイン噴射などの燃料噴射パラメータについて、その最適値はエンジン1や吸入空気等の温度条件によって異なるものとなる。
例えば、上記ECU100は、コモンレール圧がエンジン運転状態に基づいて設定される目標レール圧と等しくなるように、即ち燃料噴射圧が目標噴射圧と一致するように、サプライポンプ21の燃料吐出量を調量する。また、ECU100はエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量及び燃料噴射形態を決定する。具体的には、ECU100は、クランクポジションセンサ40の検出値に基づいてエンジン回転速度を算出するとともに、アクセル開度センサ47の検出値に基づいてアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を求め、このエンジン回転速度及びアクセル開度に基づいて総燃料噴射量(パイロット噴射での噴射量とメイン噴射での噴射量との和)を決定する。
−燃焼形態の概略説明−
次に、本実施形態に係るエンジン1における燃焼室3内での燃焼形態の概略について説明する。
図5は、エンジン1の一つの気筒に対して吸気マニホールド63及び吸気ポート15aを経てガス(空気)が吸入され、燃焼室3内へインジェクタ23からの燃料噴射によって燃焼が行われると共に、その燃焼後のガスが排気ポート71を経て排気マニホールド72へ排出される様子を模式的に示した図である。
この図5に示すように、気筒内に吸入されるガスには、吸気管64からスロットルバルブ62を介して吸入された新気と、上記EGRバルブ(図5では高圧EGRバルブ85のみを示している)が開弁された場合にEGR通路(図5では高圧EGR通路82のみを示している)から吸入されるEGRガスとが含まれる。吸入される新気量(質量)と吸入されるEGRガス量(質量)との和に対するEGRガス量の割合(即ち、EGR率)は、運転状態に応じて上記ECU100により適宜制御されるEGRバルブ(例えば高圧EGRバルブ85)の開度に応じて変化する。
このようにして気筒内に吸入された新気及びEGRガスは、吸気行程において開弁している吸気バルブ16を介し、ピストン13(図5では図示省略)の下降に伴って気筒内に吸入されて筒内ガスとなる。この筒内ガスは、エンジン1の運転状態に応じて決定されるバルブ閉弁時にて吸気バルブ16が閉弁することにより筒内に密閉され(筒内ガスの閉じ込め状態)、その後の圧縮行程においてピストン13の上昇に伴って圧縮される。そして、ピストン13が上死点近傍に達すると、上述したECU100による噴射量制御によって所定時間だけインジェクタ23が開弁されることで燃料を燃焼室3内に直接噴射する。具体的には、ピストン13が上死点に達する前に上記パイロット噴射が実行され、燃料噴射が一旦停止された後、所定のインターバルを経て、ピストン13が上死点近傍に達した時点で上記メイン噴射が実行されることになる。
図6は、この燃料噴射時における燃焼室3及びその周辺部を示す断面図であり、図7は、この燃料噴射時における燃焼室3の平面図(ピストン13の上面を示す図)である。図7に示すように、本実施形態に係るエンジン1のインジェクタ23には、周方向に亘って等間隔に8個の噴孔が設けられており、これら噴孔からそれぞれ均等に燃料が噴射されるようになっている。尚、この噴孔数としては8個に限るものではない。
そして、この各噴孔から噴射された燃料の噴霧A,A,…は略円錐状に拡散していく。また、各噴孔からの燃料噴射(上記パイロット噴射やメイン噴射)は、ピストン13が圧縮上死点近傍に達した時点で行われるため、図6に示すように、各燃料の噴霧A,A,…は上記キャビティ13b内で拡散していくことになる。
このように、インジェクタ23に形成されている各噴孔から噴射された燃料の噴霧A,A,…は、時間の経過に伴って筒内ガスと混ざり合いながら混合気となって筒内においてそれぞれ円錐状に拡散していき、自己着火によって燃焼する。つまり、この各燃料の噴霧A,A,…は、それぞれ筒内ガスと共に略円錐状の燃焼場を形成し、その燃焼場(本実施形態では8箇所の燃焼場)でそれぞれ燃焼が開始されることになる。
そして、この燃焼により発生したエネルギは、ピストン13を下死点に向かって押し下げるための運動エネルギ(エンジン出力となるエネルギ)、燃焼室3内を温度上昇させる熱エネルギ、シリンダブロック11やシリンダヘッド15を経て外部(例えば冷却水)に放熱される熱エネルギとなる。
そして、燃焼後の筒内ガスは、排気行程において開弁する排気バルブ17を介し、ピストン13の上昇に伴って排気ポート71及び排気マニホールド72へ排出されて排ガスとなる。
−着火遅れ期間の推定及び着火時期の制御−
本実施形態の特徴は、上記パイロット噴射で噴射された燃料により生成される混合気の着火遅れ期間を推定する動作、及び、その推定された着火遅れ期間に基づき着火遅れ期間の適正化を図って着火時期を制御する動作にある。具体的に、混合気の着火遅れとしては、物理的着火遅れと化学的着火遅れとがある。物理的着火遅れは、燃料液滴の蒸発・混合に要する時間である。一方、化学的着火遅れは、燃料蒸気の化学的結合・分解かつ酸化発熱に要する時間である。本実施形態ではこれら物理的着火遅れ期間及び化学的着火遅れ期間をそれぞれ高い精度で算出し、これら着火遅れ期間に基づいて求められる「総着火遅れ期間」が適正な着火遅れ期間(以下、「目標着火遅れ期間」と呼ぶ場合もある)となるように、エンジン1の制御パラメータを制御するようにしている(この「目標着火遅れ期間」の設定手法については後述する)。
以下の説明では、物理的着火遅れ期間の推定動作、化学的着火遅れ期間の推定動作、総着火遅れ期間の算出動作、この総着火遅れ期間を目標着火遅れ期間に一致させるための制御パラメータの制御動作について順に説明する。
−物理的着火遅れ期間の推定動作−
先ず、物理的着火遅れ期間の推定動作の概略について説明する。この物理的着火遅れは、パイロット噴射が開始された時点から、そのパイロット噴射で噴射された燃料の噴霧中における当量比(以下、「噴霧内当量比」と呼ぶ)が着火可能な値(以下、「噴霧内可燃当量比」と呼ぶ)に達すると共に、その噴霧中の可燃蒸気量(以下、「噴霧内可燃蒸気量」と呼ぶ)が着火可能な値(以下、「必要最少可燃蒸気量」と呼ぶ)に達して着火が開始した後、上記噴霧内当量比が上記噴霧内可燃当量比以下に低下する時点までの期間生じている。つまり、パイロット噴射の開始時点から噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比以下に低下するまでの期間が物理的着火遅れ期間であるとして求めるようにしている(物理的着火遅れ期間算出手段による物理的着火遅れ期間の算出動作)。
尚、上記「噴霧内可燃蒸気量」とは、燃料の噴霧中に上記「噴霧内可燃当量比」を超える当量比が得られている領域の体積をいう。
以下、本実施形態における物理的着火遅れ期間の推定動作について具体的に説明する。図8は、この物理的着火遅れ期間の推定動作の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、エンジン1の始動後、所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
先ず、ステップST1において、前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比の抽出を行う。これは、今回燃焼行程を迎える気筒の直前に燃焼行程を迎えていた気筒のパイロット噴射実行後の所定期間(例えばパイロット噴射が開始されてからメイン噴射が開始されるまでの期間)においてクランク角度毎に算出されて上記RAM103に記憶されていた噴霧内当量比を抽出することにより行われる。尚、今回燃焼行程を迎える気筒の前回の燃焼行程時(同一気筒の前回燃焼行程時)におけるパイロット噴射実行後の所定期間でのクランク角度毎の噴霧内当量比を抽出するようにしてもよい。
この噴霧内当量比の具体的な算出動作としては、各噴霧中の燃料量をその噴霧の体積で除することにより求められるが、各噴霧の体積は以下の式(1)〜(4)によって所定のクランク回転角度毎(例えばクランク回転角度で1°CA毎)に算出される。この噴霧体積の算出間隔の値はこれに限定されるものではない。式(1)及び式(2)は、パイロット噴射で噴射された燃料の噴霧長さLspの算出式であり、「広安の式」と呼ばれる周知のものである。尚、式(1)は燃料噴射開始からの経過時間tが液滴分裂時間teに達するまでの噴霧長さLspの算出式であり、式(2)は燃料噴射開始からの経過時間tが液滴分裂時間teを経過した後における噴霧長さLspの算出式である。また、式(3)は、パイロット噴射で噴射された燃料の噴霧角度θspの算出式である。また、式(4)は、噴霧体積Vspの算出式である。
Figure 0005392418
Figure 0005392418
このようにしてクランク角度毎に算出された噴霧の体積Vsp(1つの噴孔から噴射された燃料の体積)によって噴霧中の燃料量(1つの噴孔から噴射された燃料量:総パイロット噴射量を噴孔数で除した値)を除することによりクランク角度毎の噴霧内当量比(噴霧内当量比が均一であると仮定した場合の当量比)が算出され、これら値が上記RAM103に記憶されており、ステップST1では、このクランク角度毎の噴霧内当量比のデータを抽出することになる。
このようにして前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比の抽出を行った後、ステップST2に移り、これら噴霧内当量比情報のうち、その値が上記噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在するか否かを判定する。この噴霧内可燃当量比φtrgは、パイロット噴射で噴射された燃料の噴霧中における当量比がこの噴霧内可燃当量比φtrgを超えた場合に、そのパイロット噴射で噴射された燃料の混合気の着火が可能となる値として設定され、例えば「0.7」となっている。この値はこれに限定されるものではなく、燃料性状(例えばセタン価)等に応じて実験的に設定される。
図9は、パイロット噴射開始後における噴霧内当量比の変化を示す図である。この図9に示すように、パイロット噴射の開始後、燃料の噴霧は燃焼室3内を拡散していき、且つその噴霧内部に存在する燃料液滴は次第に蒸発していく。燃料の噴射直後は、噴霧内当量比に寄与していなかった燃料液滴が蒸発していくことによって噴霧内当量比は急速に増加していく。その後、この噴霧内当量比は、燃料蒸発速度が減少していくと共に噴霧体積が拡大(噴霧の拡散)していくことに伴って減少していく。このため、この噴霧内当量比は、その値が増加から減少に転じるタイミングで最も高くなる。
図9に破線で示す波形Aは、前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比に噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在していない場合における噴霧内当量比の変化の一例を示している。また、図9に実線で示す波形Bは、前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比に噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在している場合における噴霧内当量比の変化の一例を示している。
前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比に噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在しており(図9における波形Bを参照)、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST4に移る。
一方、前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比の全てが噴霧内可燃当量比φtrg以下であり(図9における波形Aを参照)、ステップST2でNO判定された場合には、ステップST3に移り、今回サイクルでの燃料噴射においてパイロット噴射量の増量補正を行う。このパイロット噴射量の増量補正の具体的な動作としては、パイロット噴射期間の延長が行われる。この場合の増量補正量(パイロット噴射期間の延長期間)としては、上記前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比のうち最も高い噴霧内当量比の値(以下、「最高噴霧内当量比」と呼ぶ:図9におけるφmax)と上記噴霧内可燃当量比φtrgとを比較し、その偏差に応じて増量補正量が設定される。つまり、この偏差が大きいほど(噴霧内可燃当量比φtrgに対して最高噴霧内当量比φmaxが低いほど)増量補正量が大きな値として設定される。このようにしてパイロット噴射量の増量補正が行われると、クランク角度毎の噴霧内当量比に噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在することになり(例えば図9における波形Bに示す噴霧内当量比の変化となり)、ステップST2でYES判定されることになる。
ステップST4では、前回サイクルにおける燃料蒸発量(噴霧内可燃蒸気量)の抽出を行う。これは、今回燃焼行程を迎える気筒の直前に燃焼行程を迎えていた気筒のパイロット噴射実行後の所定期間(例えばパイロット噴射が開始されてからメイン噴射が開始されるまでの期間)において算出されて上記RAM103に記憶されていた燃料蒸発量を抽出することにより行われる。尚、今回燃焼行程を迎える気筒の前回の燃焼行程時(同一気筒の前回燃焼行程時)におけるパイロット噴射実行後の所定期間での燃料蒸発量を抽出するようにしてもよい。
この燃料蒸発量(燃料の蒸気量)の具体的な算出動作としては、以下の式(5)〜(8)によって算出される。
具体的には、エンジン1の性能実験装置での実験によって、燃焼行程においてエンジン1のクランク角度毎(例えばクランク角度が1°CA進む毎)に下記の式(5)〜式(7)によって燃料蒸発速度(dmv/dt)を算出する。
または、その算出された各クランク角度毎の燃料蒸発速度をマップ化することで燃料蒸発速度定常マップを作成し、この燃料蒸発速度定常マップに対して、エンジン1の環境条件や運転条件等に応じた補正係数(実測または推定された筒内圧力に応じた補正係数及び実測または推定された筒内温度に応じた補正係数)を乗算することでクランク角度毎の蒸発速度を算出するようにしてもよい。
Figure 0005392418
上記式(6)におけるスワール速度Vswやスキッシュ速度Vsqは、エンジン形状(特に燃焼室3の形状)及びエンジン回転数に応じて決定される値である。また、この場合のスワール速度Vswは、例えば燃焼室3内における外周縁部周辺でのスワール速度である。また、定数Aはエンジン1の種類毎に予め実験等によって決定された値である。更に、混合気の動粘性係数は温度に依存する値である。
そして、上記算出したクランク角度毎の蒸発速度に対し、上記クランク角度毎の噴霧内当量比が可燃当量比φtrgを超えている期間tb(図11に示す噴霧内当量比変化の波形を参照)を乗算すること(式(8))で燃料蒸発量が算出される。
Figure 0005392418
このようにして前回サイクルにおける燃料蒸発量の抽出を行った後、ステップST5に移り、この燃料蒸発量が上記必要最少可燃蒸気量Mを超えているか否かを判定する。この必要最少可燃蒸気量Mは、パイロット噴射で噴射された燃料の噴霧中における噴霧内可燃蒸気量がこの必要最少可燃蒸気量Mを超えている場合には混合気の着火が可能となる値として設定され、例えばマップによって設定される。図10は上記必要最少可燃蒸気量Mを設定する際に参照される必要最少可燃蒸気量マップであって、予め、実験やシミュレーションにより作成されて上記ROM102に記憶されている。この必要最少可燃蒸気量マップに、現在のエンジン回転数及び現在の燃料噴射量(燃焼行程を迎えている気筒に対するパイロット噴射での燃料噴射量)を当て嵌めることにより上記必要最少可燃蒸気量Mが取得される。この必要最少可燃蒸気量Mは、エンジン回転数が低いほど、また、燃料噴射量が少ないほど小さな値として設定される。
図11は、パイロット噴射開始後における噴霧内当量比の変化を示す図であって、斜線を付した領域が上記燃料の噴霧中における噴霧内可燃蒸気量に相当する。この噴霧内可燃蒸気量が上記必要最少可燃蒸気量Mを超えており、ステップST5でYES判定された場合には、ステップST7に移る。
一方、噴霧内可燃蒸気量が必要最少可燃蒸気量Mを超えておらず、ステップST5でNO判定された場合には、ステップST6に移り、今回サイクルでの燃料噴射においてパイロット噴射量の増量補正を行う。この場合のパイロット噴射量の増量補正の具体的な動作としてもパイロット噴射期間の延長が行われる。この場合の増量補正量(パイロット噴射期間の延長期間)としては、上記算出された噴霧内可燃蒸気量と必要最少可燃蒸気量Mとを比較し、その偏差に応じて増量補正量が設定される。つまり、この偏差が大きいほど(必要最少可燃蒸気量Mに対して実際の噴霧内可燃蒸気量が少ないほど)増量補正量が大きな値として設定される。このようにしてパイロット噴射量の増量補正が行われると、燃料蒸発量(噴霧内可燃蒸気量)が必要最少可燃蒸気量Mを超えることになり、ステップST5でYES判定されることになる。
以上の動作によって、前回サイクルにおけるクランク角度毎の噴霧内当量比に噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在し、且つ燃料蒸発量(噴霧内可燃蒸気量)が必要最少可燃蒸気量Mを超える状態とした後、ステップST7に移り、物理的着火遅れの算出を行う。
この物理的着火遅れの算出は、パイロット噴射が開始されてから上記噴霧内当量比が可燃当量比φtrgに達するまでの期間と、その後、噴霧内当量比が可燃当量比φtrgまで低下するまでの期間の和として算出される。例えば図11に示すような噴霧内当量比の変化の場合には、パイロット噴射が開始されてから上記噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達するまでの期間が図中のtaであり、その後に、噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgまで低下するまでの期間が図中のtbであって、これらの和(ta+tb)が物理的着火遅れ期間として算出されることになる。
より具体的に、上記ステップST3でのパイロット噴射量の増量補正(クランク角度毎の噴霧内当量比に噴霧内可燃当量比φtrgを超えたものが存在していないことに伴う増量補正)及びステップST6でのパイロット噴射量の増量補正(噴霧内可燃蒸気量が必要最少可燃蒸気量Mを超えていないことに伴う増量補正)が共に行われた場合の物理的着火遅れ期間について図12の噴霧内当量比の変化を用いて説明すると、先ず、ステップST3でのパイロット噴射量の増量補正によって図中破線で示すように噴霧内当量比が変化する。この場合、物理的着火遅れ期間としては図中の期間taと期間tb’との和(ta+tb’)となるが、噴霧内可燃蒸気量が必要最少可燃蒸気量Mを超えていないために実際には着火は行われない。その後、ステップST6でのパイロット噴射量の増量補正によって図中実線で示すように噴霧内当量比が変化する。この場合、パイロット噴射が開始されてから上記噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達するまでの期間が図中のtaであり、その後に、噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgまで低下するまでの期間が図中のtcであって、これらの和(ta+tc)が物理的着火遅れ期間として算出されることになる。つまり、ステップST6でのパイロット噴射量の増量補正によって遅角側に延長された期間として物理的着火遅れ期間が算出されることになる。
尚、ステップST3及びステップST6においてパイロット噴射量を増量補正することに伴って上昇した噴霧内当量比及び噴霧内可燃蒸気量には予め上限値が設定されている。例えば、筒内温度の上昇に伴って噴霧内当量比や噴霧内可燃蒸気量が上限値に達した場合には、パイロット噴射量を減量補正する(上記噴霧内可燃当量比φtrg及び必要最少可燃蒸気量Mを下限値として減量補正する)。これにより、必要以上に噴霧内当量比や噴霧内可燃蒸気量が上昇して燃焼変動が生じてしまうといったことを防止すると共に、燃料消費量の削減が図れるようにしている。
−着火時期制御動作−
次に、化学的着火遅れ期間推定動作及び総着火遅れ期間算出動作を含む着火時期制御について説明する。
この化学的着火遅れは、パイロット噴射が開始されてから、そのパイロット噴射で噴射された燃料の噴霧内当量比が上記噴霧内可燃当量比φtrgに達した時点における燃焼室3内の温度及び圧力に基づいて算出される(化学的着火遅れ期間算出手段による化学的着火遅れ期間の算出動作)。そして、この算出された化学的着火遅れと上述した物理的着火遅れとから総着火遅れ期間を算出し(総着火遅れ期間算出手段による総着火遅れ期間の算出動作)、この総着火遅れ期間が目標着火遅れ期間に一致するようにエンジン1の制御パラメータを制御するようにしている。
以下、具体的な動作について説明する。図13は、この化学的着火遅れ期間推定動作及び総着火遅れ期間算出動作を含む着火時期制御の手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、エンジン1の始動後、所定時間(例えば数msec)毎に繰り返して実行される。
先ず、ステップST11において、噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達した時点での燃焼室内温度及び燃焼室内圧力を算出する。具体的には、下記の式(9)〜(11)によって、噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrg(例えば、「0.7」)に達した時点での燃焼室内温度及び燃焼室内圧力を算出する。
Figure 0005392418
式(9)は噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達した時点での燃焼室内温度Tequの算出式であり、式(10)は噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達した時点での燃焼室内圧力Pequの算出式である。また、これら式の(9),(10)における「n」はポリトロープ指数であって式(11)により算出される。このポリトロープ指数nは「ガス組成」及び「温度」を変数とする関数である。また、この式(11)におけるQは燃料噴射量であり、Aは実験的に求めた補正係数である。
尚、噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達した時点での燃焼室内温度及び燃焼室内圧力を算出する手法としては、上述したものに限らず、周知の気体の状態方程式(PV=nRT)より求めることも可能である。
このようにして噴霧内当量比が噴霧内可燃当量比φtrgに達した時点での燃焼室内温度及び燃焼室内圧力が算出された後、ステップST12に移り、下記の式(12)によって、化学的着火遅れ期間τcが算出される。この式(12)は「アレニウスの式」と呼ばれるものである。
Figure 0005392418
以上のようにして化学的着火遅れ期間τcを算出した後、ステップST13に移り、総着火遅れ期間の算出を行う。この総着火遅れ期間の算出動作として具体的には、上述した物理的着火遅れ期間の推定動作により推定された物理的着火遅れ期間τpと上記化学的着火遅れ期間τcとの和から、これら物理的着火遅れ期間τpと上記化学的着火遅れ期間τcとが併存する期間τxを減算(τp+τc−τx)することで総着火遅れ期間が算出される。つまり、図14に示すように物理的着火遅れと化学的着火遅れとが同時並行している期間τxが存在しているため、上記物理的着火遅れ期間τpと上記化学的着火遅れ期間τcとの和から、この同時並行期間τxを減算することで総着火遅れ期間が算出されることになる。
このようにして総着火遅れ期間を算出した後、ステップST14に移り、エンジン1の制御パラメータの調整により総着火遅れ期間が目標着火遅れ期間に一致するように着火時期の制御を行う。具体的には、燃焼室3内の温度制御及び酸素濃度制御が行われる。
これら温度制御及び酸素濃度制御について説明する前に、目標着火遅れ期間の設定手法について説明する。
図15は、この目標着火遅れ期間の基準値である「基準目標着火遅れ期間」を設定するためのマップ(基準目標着火遅れ期間マップ)であって、予め、実験やシミュレーションにより作成されて上記ROM102に記憶されている。この基準目標着火遅れ期間マップに、現在のエンジン回転数及び現在の燃料噴射量(燃焼行程を迎えている気筒に対するパイロット噴射量)を当て嵌めることにより「基準目標着火遅れ期間」が取得される。この「基準目標着火遅れ期間」は、エンジン回転数が低いほど、また、燃料噴射量が少ないほど低く設定され、エンジン回転数が高いほど、また、燃料噴射量が多いほど
高く設定されるようになっている。
そして、この基準目標着火遅れ期間マップによって取得された基準目標着火遅れ期間に対し、エンジン1の運転状態や環境状態等の各種パラメータによる補正を行って目標着火遅れ期間が設定される。この補正を行うための各種パラメータとしては、吸気温度、吸気中の酸素濃度、冷却水温度、外気圧力、外気温度、過給圧、エンジンの過渡状態等が挙げられる。
以下、総着火遅れ期間を目標着火遅れ期間に一致させるために行われる燃焼室3内の温度制御及び酸素濃度制御について説明する。
燃焼室3内の温度制御としては、上記排気還流装置8の制御やVVT機構67の制御が挙げられる(燃焼室内温度補正手段による燃焼室内温度の補正動作)。
排気還流装置8による燃焼室3内の温度制御としては、EGRモードを、低圧EGR通路81及び高圧EGR通路82の両方のEGR通路を介して排気ガスを吸気管64に還流するMPLモードとし、低圧EGR通路81から還流される比較的低温度の排気ガスの流量と、高圧EGR通路82から還流される比較的高温度の排気ガスの流量とを各EGRバルブ84,85によって調整し、吸気系における吸入ガス温度を調整する。つまり、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が長い場合には吸入ガス温度を高くする(高圧EGR通路82から還流される排気ガスの流量を相対的に多くする:例えば総EGRガス量を一定にした状態で高圧EGR通路82から還流される排気ガスの流量の割合を多くする)。逆に、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が短い場合には吸入ガス温度を低くする(低圧EGR通路81から還流される排気ガスの流量を相対的に多くする:例えば総EGRガス量を一定にした状態で低圧EGR通路81から還流される排気ガスの流量の割合を多くする)。これによって総着火遅れ期間が目標着火遅れ期間に一致するように吸入ガス温度を調整する。
また、VVT機構67による燃焼室3内の温度制御としては、吸気バルブ16の閉弁タイミングを調整する。つまり、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が長い場合には、吸気バルブ16の閉弁タイミングを進角側(ピストン13の下死点側)に移行させ、実圧縮比を高めることで圧縮端温度を高くする。逆に、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が短い場合には、吸気バルブ16の閉弁タイミングを遅角側(ピストン13の上死点側)に移行させ、実圧縮比を低くすることで圧縮端温度を低くする。これによって総着火遅れ期間が目標着火遅れ期間に一致するように吸入ガス温度を調整する。
一方、燃焼室3内の酸素濃度制御としては、上記排気還流装置8の制御が挙げられる(燃焼室内酸素濃度補正手段による燃焼室内酸素濃度の補正動作)。つまり、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が長い場合には各EGRバルブ84,85の開度を小さくすることで燃焼室3内の酸素濃度を高め、逆に、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が短い場合には各EGRバルブ84,85の開度を大きくすることで燃焼室3内の酸素濃度を低くし、これによって総着火遅れ期間が目標着火遅れ期間に一致するように燃焼室3内の酸素濃度を制御する。
尚、上述した各制御パラメータの調整は、何れか一つのみを実行するようにしてもよいし、複数を組み合わせるようにしてもよい。
以上説明したように、本実施形態では、実際の燃焼場内での噴霧状態(燃焼場内で着火可能な条件が成立しているか否か)を直接的に推定することにより、環境変化や運転過渡等が生じている場合であっても物理的着火遅れ期間及び化学的着火遅れ期間を高い精度で推定することができる。このため、混合気の着火時期の適正化が図れ、排気エミッションの改善が図れると共に、燃焼変動や失火を防止することが可能である。
また、本実施形態によれば、燃焼室3内での噴霧の状態(当量比等)を演算やマップにより求めているため、燃焼室3内の圧力を直接的に検出する手段が必要ない。つまり、高価な筒内圧センサを不要とすることができ、低コストで高精度の着火遅れ期間の推定が可能である。
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、自動車に搭載される直列4気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるエンジンにも適用可能である。また、気筒数やエンジン形式(直列型エンジン、V型エンジン、水平対向型エンジン等の別)についても特に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、パイロット噴射で噴射された燃料の着火遅れ期間を推定し、このパイロット噴射で噴射された燃料の着火遅れ期間の適正化を図るに際して本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、メイン噴射で噴射された燃料の着火遅れ期間を推定し、このメイン噴射で噴射された燃料の着火遅れ期間の適正化を図る場合にも適用が可能である。
また、上記実施形態におけるエンジン1のVVT機構67は吸気バルブ16のみの開閉タイミングを調整可能とするものであったが、吸気バルブ16及び排気バルブ17の両方の開閉タイミングを調整可能とするものであってもよい。
また、上記実施形態では、総着火遅れ期間を目標着火遅れ期間に一致させるための制御として燃焼室3内の温度制御や酸素濃度制御を行っていた。本発明はこれに限らず、燃料噴射圧力(レール圧力)を補正するようにしてもよい。具体的には、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が長い場合には、燃料噴射圧力を高く設定してインジェクタ23から噴射される燃料の微粒化を促進して物理的着火遅れ期間を短くする。逆に、目標着火遅れ期間に対して総着火遅れ期間が短い場合には、燃料噴射圧力を低く設定してインジェクタ23から噴射される燃料の粒径を大きくして物理的着火遅れ期間を長くする。
また、上記実施形態では、通電期間においてのみ全開の開弁状態となることにより燃料噴射率を変更するピエゾインジェクタ23を適用したエンジン1について説明したが、本発明は、可変噴射率インジェクタを適用したエンジンへの適用も可能である。
加えて、上記実施形態では、マニバータ77として、NSR触媒75及びDPNR触媒76を備えたものとしたが、NSR触媒75及びDPF(Diesel Paticulate Filter)を備えたものとしてもよい。
本発明は、自動車に搭載されるコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジンにおいて、混合気の着火遅れ期間の適正化を図る燃焼制御に適用可能である。
1 エンジン(内燃機関)
23 インジェクタ(燃料噴射弁)
3 燃焼室
67 VVT機構(燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータ)
8 排気還流装置(燃焼室内の温度及び酸素濃度を調整可能な制御パラメータ)
81 低圧EGR通路
82 高圧EGR通路
84 低圧EGRバルブ
85 高圧EGRバルブ

Claims (11)

  1. 燃料噴射弁から燃焼室内に向けて噴射された燃料の着火遅れ期間を推定する内燃機関の着火遅れ期間推定装置であって、
    上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比に基づいて物理的着火遅れ期間を算出する物理的着火遅れ期間算出手段と、
    上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比が所定当量比に達した時点での燃焼室内の環境条件に基づいて化学的着火遅れ期間を算出する化学的着火遅れ期間算出手段と、
    上記算出された物理的着火遅れ期間と化学的着火遅れ期間とに基づいて燃料の総着火遅れ期間を算出する総着火遅れ期間算出手段とを備えていることを特徴とする内燃機関の着火遅れ期間推定装置。
  2. 請求項1記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置において、
    上記物理的着火遅れ期間算出手段は、上記燃料噴射弁から燃料が噴射された時を基点とし、この燃料の噴霧中における当量比が、着火可能な噴霧内可燃当量比を超えた後、この噴霧内可燃当量比を下回った時点までの期間を物理的着火遅れ期間として算出する構成とされていることを特徴とする内燃機関の着火遅れ期間推定装置。
  3. 請求項1記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置において、
    化学的着火遅れ期間算出手段は、上記燃料噴射弁から燃料が噴射され、その燃料の噴霧中における当量比が着火可能な噴霧内可燃当量比に達した時点での燃焼室内の温度及び圧力に基づいて化学的着火遅れ期間を算出する構成とされていることを特徴とする内燃機関の着火遅れ期間推定装置。
  4. 請求項2記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置において、
    上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比が上記噴霧内可燃当量比に達して燃料が着火したか否かを判定し、上記噴霧内可燃当量比に達しておらず燃料が着火していない場合には、その噴霧中における当量比が上記噴霧内可燃当量比に達するように燃料噴射量の増量補正を行った上で上記物理的着火遅れ期間算出手段による物理的着火遅れ期間の算出を行う構成とされていることを特徴とする内燃機関の着火遅れ期間推定装置。
  5. 請求項2記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置において、
    上記燃料噴射弁から噴射された燃料の噴霧中における当量比が上記噴霧内可燃当量比に達している領域の燃料蒸気量が所定の必要最少可燃蒸気量に達しているか否かを判定し、この必要最少可燃蒸気量に達していない場合には、その燃料蒸気量が必要最少可燃蒸気量に達するように燃料噴射量の増量補正を行った上で上記物理的着火遅れ期間算出手段による物理的着火遅れ期間の算出を行う構成とされていることを特徴とする内燃機関の着火遅れ期間推定装置。
  6. 請求項1記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置において、
    燃料噴射弁から燃焼室内に向けての燃料噴射として、少なくとも、主噴射と、この主噴射に先立って行われる副噴射とが実行可能とされ、上記総着火遅れ期間算出手段は、この副噴射の実行に対して燃料の総着火遅れ期間を算出するよう構成されていることを特徴とする内燃機関の着火遅れ期間推定装置。
  7. 請求項1〜6のうち何れか一つに記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置によって推定された総着火遅れ期間に基づいて着火時期を制御する着火時期制御装置であって、
    上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど、燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータの制御により燃焼室内の温度を高く設定する燃焼室内温度補正手段を備えていることを特徴とする内燃機関の着火時期制御装置。
  8. 請求項7記載の内燃機関の着火時期制御装置において、
    上記燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータは、排気系から吸気系へ還流される排気ガスの温度であって、上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど排気系から吸気系へ還流される排気ガスの温度を高く設定する構成となっていることを特徴とする内燃機関の着火時期制御装置。
  9. 請求項7記載の内燃機関の着火時期制御装置において、
    上記燃焼室内の温度を調整可能な制御パラメータは、吸気バルブの閉弁タイミングであって、上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど吸気バルブの閉弁タイミングをピストンの下死点側に移行させて実圧縮比を高くする構成となっていることを特徴とする内燃機関の着火時期制御装置。
  10. 請求項1〜6のうち何れか一つに記載の内燃機関の着火遅れ期間推定装置によって推定された総着火遅れ期間に基づいて着火時期を制御する着火時期制御装置であって、
    上記推定された総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど、燃焼室内の酸素濃度を調整可能な制御パラメータの制御により燃焼室内の酸素濃度を高く設定する燃焼室内酸素濃度補正手段を備えていることを特徴とする内燃機関の着火時期制御装置。
  11. 請求項10記載の内燃機関の着火時期制御装置において、
    上記燃焼室内の酸素濃度を調整可能な制御パラメータは、排気系から吸気系へ還流される排気ガスの還流量であって、上記推定される総着火遅れ期間が目標とする総着火遅れ期間よりも長いほど排気系から吸気系へ還流される排気ガスの還流量を少なく設定する構成となっていることを特徴とする内燃機関の着火時期制御装置。
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