JP2009047130A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】低圧ループEGR装置のEGRガスの還流遅れによる吸気ガスの成分変化を、高圧ループEGR装置で的確に補償することが可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の制御装置は、高圧ループEGR装置と低圧ループEGR装置と、算出手段と、制御手段と、を備える。算出手段は、低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の所定の成分の変化量を算出する。制御手段は、変化量に応じて、吸気ガスの所定の成分の濃度変化を抑制するように高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する。これにより、低圧ループEGR装置のEGRガスの還流遅れによる吸気ガスの成分変化を、高圧ループEGR装置で的確に補償することができ、NOxやスモークの発生を抑えて、エミッションの悪化を防ぐことができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、EGR装置を備える内燃機関の制御装置に関する。
従来から、ディーゼルエンジンなどの内燃機関において、排気通路から排気ガスの一部を吸気通路へ戻し、機関内での燃焼温度を下げることにより、NOxの発生を抑制する排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置が知られている。EGR装置としては、ターボチャージャのタービンの上流側から排気ガスの一部(EGRガス)を取り出す「高圧ループ(HPL)EGR装置」と、ターボチャージャのタービンの下流側からEGRガスを取り出す「低圧ループ(LPL)EGR装置」とが知られている。
以下の特許文献1には、高圧ループEGR装置と低圧ループEGR装置とを備えた内燃機関において、エンジン回転数及び/又は負荷に応じて、低圧ループEGR装置を使用するか、高圧ループEGR装置を使用するか、又は、低圧ループEGR装置と高圧ループEGR装置との両方を使用するか、の何れかを決定する旨が記載されている。また、以下の特許文献2には、EGRガスの還流遅れに対し、気筒内酸素濃度・機関回転数を推定して噴射量を制御する内燃機関の制御装置が記載されている。
特開2004−150319号公報 特開2006−029171号公報
しかしながら、高圧ループEGR装置と低圧ループEGR装置とを備えた内燃機関において、高圧ループEGR装置から低圧ループEGR装置へと切り換える際には、低圧ループEGR装置のEGRガスの還流遅れにより吸気ガスの成分変化が生じる。そのため、吸気ガスの成分変化を、低圧ループEGR装置よりも還流の早い高圧ループEGR装置で補償する必要がある。この点について、特許文献1又は2には、何ら記載されていない。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、低圧ループEGR装置のEGRガスの還流遅れによる吸気ガスの成分変化を、高圧ループEGR装置で的確に補償することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
本発明の1つの観点では、内燃機関の制御装置は、ターボチャージャのタービンより上流の排気通路と前記ターボチャージャのコンプレッサより下流の吸気通路とを接続することによりEGRガスを還流させる高圧ループEGR装置と、前記タービンより下流の排気通路と前記コンプレッサより上流の吸気通路とを接続することによりEGRガスを還流させる低圧ループEGR装置とを有する内燃機関の制御装置は、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の所定の成分の変化量を算出する算出手段と、前記変化量に応じて、吸気ガス中の前記所定の成分の濃度変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する制御手段と、を備える。
本発明の1つの観点では、内燃機関の制御装置は、高圧ループEGR装置と低圧ループEGR装置と、算出手段と、制御手段と、を備える。前記高圧ループEGR装置は、ターボチャージャのタービンより上流の排気通路と前記ターボチャージャのコンプレッサより下流の吸気通路とを接続することによりEGRガスを還流させる。前記低圧ループEGR装置は、前記タービンより下流の排気通路と前記コンプレッサより上流の吸気通路とを接続することによりEGRガスを還流させる。前記算出手段は、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の所定の成分の変化量を算出する。ここでいう「所定の成分」とは、例えば酸素である。「所定の成分」としては、その他にも、二酸化炭素や水や窒素といった、不活性ガスの還流遅れにより変化しうる成分を用いることができる。前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の前記所定の成分の濃度変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する。前記算出手段、前記制御手段は、例えばECU(Electronic Control Unit)により実現される。
本発明の内燃機関の制御装置によれば、低圧ループEGR装置のEGRガスの還流遅れによる吸気ガスの成分変化を、高圧ループEGR装置で的確に補償することができ、NOxや黒煙(スモーク)の発生を抑えて、エミッションの悪化を防ぐことができる。
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する検出手段を備え、前記算出手段は、前記検出手段により検出されたEGRガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出し、前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する。検出手段は、例えば酸素濃度センサである。この内燃機関の制御装置では、低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素の変化量が、吸気ガス中の酸素の変化量に等しいと想定している。この内燃機関の制御装置によれば、低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素の変化量に応じて、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御するので、高圧ループEGR装置のEGR弁の制御遅れが大きい場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を確実に抑制することができる。
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様では、前記高圧ループEGR装置との接続位置よりも上流で、且つ、前記低圧ループEGR装置との接続位置よりも下流の吸気通路における吸気ガス中の酸素濃度を検出する検出手段を備え、前記算出手段は、前記検出手段により検出された吸気ガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する。検出手段は、例えば酸素濃度センサである。この内燃機関の制御装置によれば、高圧ループEGR装置との接続位置よりも上流で、且つ、低圧ループEGR装置との接続位置よりも下流の吸気通路における吸気ガス中の酸素濃度を基に、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御するので、吸気ガス中の酸素濃度の変化を精密に抑制することができる。
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する第1の検出手段と、前記高圧ループEGR装置との接続位置よりも上流で、且つ、前記低圧ループEGR装置との接続位置よりも下流の吸気通路における吸気ガス中の酸素濃度を検出する第2の検出手段と、前記高圧ループEGR装置の制御遅れの時間の間に移動する吸気ガスの体積が、前記低圧ループEGR装置との接続位置から前記高圧ループEGR装置との接続位置までの前記吸気通路の容積である吸気系容積よりも大きいか否かを判定する判定手段と、を備え、前記算出手段は、前記移動する吸気ガスの体積が前記吸気系容積よりも大きい場合には、前記第1の検出手段により検出されたEGRガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を前記変化量として算出し、前記移動する吸気ガスの体積が前記吸気系容積以下の場合には、前記第2の手段により検出された吸気ガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の前記酸素の変化量を前記変化量として算出し、前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する。第1の検出手段、第2の検出手段は、例えば酸素濃度センサである。これにより、高圧ループEGR装置のEGR弁の制御遅れの大きさに合わせた、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する最適な制御を行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図1、図2は、本発明の第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100の概略構成を示すブロック図である。図2は、説明のために、図1におけるEGR装置を取り出して簡略化して示したものである。なお、図1、図2において、実線の矢印は吸気及び排気の流れを示し、破線の矢印は制御信号を示す。
図1において、内燃機関の制御装置100は、内燃機関(エンジン)10として直列4気筒のディーゼルエンジンを備える。エンジン10の各気筒は、吸気マニホールド11及び排気マニホールド12に接続されている。エンジン10は、各気筒に設けられた燃料噴射弁15と、各燃料噴射弁15に対して高圧の燃料を供給するコモンレール14とを備え、コモンレールには不図示の燃料ポンプにより燃料が高圧状態で供給される。
吸気マニホールド11に接続された吸気通路20には、エンジン10への流入空気量(新気量)を計測するエアフローメータ21と、スロットル弁22と、ターボチャージャ23のコンプレッサ23aと、吸気を冷却するインタークーラ24とが設けられている。排気マニホールド12に接続された排気通路25には、ターボチャージャ23のタービン23bと、触媒30が設けられている。触媒30は、例えば、NOxを処理するNOx吸蔵還元型触媒である。
内燃機関の制御装置100には、排気通路25のタービン23bの上流位置と、吸気通路20のコンプレッサ23aの下流位置、具体的には、インタークーラ24の下流位置とを接続するEGR通路31が設けられている。そのため、排気ガスの一部(EGRガス)は、排気通路25のタービン23bの上流位置から、EGR通路31を介して、吸気通路20のインタークーラ24の下流位置へと還流する。EGRガスは、エンジン10の燃焼室で燃焼済みの不活性ガス(HO、N、CO等)であるため、吸気通路20の流入空気とEGRガスとが混合されることにより、エンジン10における燃焼温度は低下し、NOxの発生が低減される。このように、排気通路25のタービン23bの上流位置からEGRガスを取り出すEGR装置を「高圧ループ(HPL)EGR装置」と呼ぶ。従って、以下において、EGR通路31を高圧ループEGR装置31と称することもある。高圧ループEGR装置31には、EGRガスの量(EGRガス量)を制御するためのEGR弁33が設けられている。高圧ループEGR装置31は、ECU7によってEGR弁33が開制御されることで動作する。
また、内燃機関の制御装置100には、排気通路25のタービン23bの下流位置と、吸気通路20のコンプレッサ23aの上流位置とを接続するEGR通路35が設けられている。そのため、EGRガスは、排気通路25のタービン23bの下流位置から、EGR通路35を介して、吸気通路20のコンプレッサ23aの上流位置へも還流する。このように、ターボチャージャの下流側からEGRガスを取り出すEGR装置を「低圧ループ(LPL)EGR装置」と呼ぶ。従って、以下において、EGR通路35を低圧ループEGR装置35と称することもある。EGR通路35には、EGRガスを冷却するEGRクーラ36と、EGRガス量を制御するためのEGR弁37と、吸気通路20との接続位置付近に酸素濃度センサ41と、が設けられている。低圧ループEGR装置35は、ECU7によってEGR弁37が開制御されることで動作する。また、酸素濃度センサ41は、低圧ループEGR装置35により還流されたEGRガス中の酸素濃度を検出し、検出された酸素濃度に対応する検出信号S7をECU7に送信する。
内燃機関の制御装置100の各要素は、ECU7により制御されている。具体的には、ECU7は、スロットル弁22に制御信号S1を送りスロットル弁22の開度を制御すると共に、燃料噴射弁15に制御信号S2を送って燃料噴射量を制御する。
また、ECU7は、運転者のアクセル開度を検出するアクセル開度センサ18からの検出信号S5を基に、要求トルクを求め、エンジン10のクランク角を検出するクランク角センサ19からの検出信号S6を基に、エンジン回転数を求める。ECU7は、エンジン回転数及び要求トルクに基づいて、EGR弁33に制御信号S3を送ってEGR弁33の開度を制御し、EGR弁37に制御信号S4を送ってEGR弁37の開度を制御する。更に、ECU7は、酸素濃度センサ41からの検出信号S7を基に酸素濃度を求め、当該酸素濃度に基づいて、EGR弁33に制御信号S3を送ってEGR弁33の開度を制御する。なお、ECU7は内燃機関の制御装置100の他の構成要素の制御も行うが、本発明の実施形態と特に関係の無い部分については説明を省略する。
(内燃機関の制御方法)
ここで、本発明の内燃機関の制御方法について説明する。上述したように、内燃機関の制御装置100は、高圧ループEGR装置31と低圧ループEGR装置35とを備えている。
高圧ループEGR装置31は、排気通路25のタービン23bの上流位置から吸気通路20のインタークーラ24の下流位置へとEGRガスを還流させる。つまり、高圧ループEGR装置31は、エンジン10からの排気ガスを直接還流させるため、低圧ループEGR装置35と比較して、EGRガスは高温となる。また、高圧ループEGR装置31を動作させる場合には、排気通路25のタービン23bに流入する排気ガスの量は、排気マニホールド12より排気通路25へ流入する排気ガスの量と比較して、高圧ループEGR装置31によって還流されるEGRガスの量の分だけ減る。
低圧ループEGR装置35は、排気通路25のタービン23bの下流位置から吸気通路20のコンプレッサ23aの上流位置へとEGRガスを還流させる。従って、高圧ループEGR装置31を使用せずに、低圧ループEGR装置35のみを動作させる場合には、排気通路25のタービン23bに流入する排気ガスの量は、排気マニホールド12より排気通路25へ流入する排気ガスの量と比較して、減少することはない。
つまり、高圧ループEGR装置31を動作させた場合には、低圧ループEGR装置35を動作させた場合と比較して、排気通路25のタービン23bに流入する排気ガスの量が減るため、排気ガスによるタービン23bを回転させる力が弱くなり、過給圧が低下する。
そのため、一般的な内燃機関の制御装置では、エンジン回転数が低く、要求負荷が小さい領域では、ECU7は、エンジン10を温めるために、EGRガスが高温となる高圧ループEGR装置31のみを動作させる。このときのEGRモードをHPLモードと称する。また、ECU7は、エンジン回転数が高く、要求負荷も高い領域では、低圧ループEGR装置35のみを動作させる。このときのEGRモードをLPLモードと称する。更に、ECU7は、エンジン回転数及び要求負荷が、高圧ループEGR装置31の動作領域と低圧ループEGR装置35の動作領域の間にある場合には、高圧ループEGR装置31と低圧ループEGR装置35との両方を動作させる。このときのEGRモードをMPLモードと称する。
しかしながら、高圧ループEGR装置31は、排気通路25のタービン23bの上流位置から吸気通路20のインタークーラ24の下流位置へとEGRガスを還流させるのに対し、低圧ループEGR装置35は、排気通路25のタービン23bの下流位置から吸気通路20のコンプレッサ23aの上流位置へとEGRガスを還流させるため、低圧ループEGR装置35の長さは、高圧ループEGR装置31の長さと比較して長くなる。そのため、低圧ループEGR装置35を動作させる場合には、高圧ループEGR装置31を動作させる場合と比較して、EGRガスが還流するときの不活性ガスの還流遅れが大きくなる。
一例として、EGRモードをHPLモードからMPLモードへと切り換えた場合の吸気ガス中における燃料量、EGR率、酸素濃度の夫々の時間に対する変化、排気ガス中のNOx量の時間に対する変化について図3(a)〜(d)を用いて述べる。図3(a)のグラフ50は、燃料量の時間に対する変化を示すグラフであり、図3(b)のグラフ51は、EGR率の時間に対する変化を示すグラフであり、図3(c)のグラフ52は、吸気ガス中の酸素濃度の時間に対する変化を示すグラフであり、図3(d)のグラフ53は、排気ガス中のNOx量の時間に対する変化を示すグラフである。また、図3(b)において、「HPL不活性ガスの割合」とは、高圧ループEGR装置により還流される不活性ガスの割合を示し、「LPL不活性ガスの割合」とは、低圧ループEGR装置により還流される不活性ガスの割合を示している。
図3(a)のグラフ51に示すように、本例では、時刻t1で燃料噴射弁15から噴射される燃料量を増加することとする。つまり、時刻t1までは、エンジン10は、例えばアイドリング状態などの、エンジン回転数が低く、要求負荷が小さい状態にあるとし、時刻t1で燃料噴射弁15から噴射される燃料量が増加されることで、エンジン10は、例えば加速状態などの、エンジン回転数が高く、要求負荷が大きい状態に移行したとする。
本例では、時刻t1において、EGRモードは、HPLモードからMPLモードへと切り換えられるとする。つまり、時刻t1までは、EGRモードはHPLモードとされ、高圧ループEGR装置31のみが動作して、吸気ガス中のEGRガスは高圧ループEGR装置31により還流され、EGRガス中の不活性ガスも高圧ループEGR装置31によって還流される。ここで、吸気ガスとは、流入空気とEGRガスとが混合したものである。
時刻t1では、EGRモードはHPLモードからMPLモードへと切り換えられる。そのため、図3(b)に示すように、時刻t1以降では、吸気ガス中において、高圧ループEGR装置31によって還流されるEGRガスの割合は減少する一方で、低圧ループEGR装置35によって還流されるEGRガスの割合が増加する。つまり、時刻t1以降における吸気ガス中のEGRガスは、高圧ループEGR装置31によって還流されるEGRガスと、低圧ループEGR装置35によって還流されるEGRガスとが混合されたものとなる。また、時刻t1以降では、吸気ガス中において、高圧ループEGR装置31によって還流されるEGRガスの割合が減少するので、高圧ループEGR装置31によって還流される不活性ガスの割合も減少する。
しかしながら、低圧ループEGR装置35の長さは、高圧ループEGR装置31の長さと比較して長いため、低圧ループEGR装置35を動作させた場合には、EGRガス中の不活性ガスの還流遅れが発生する。低圧ループEGR装置35により還流された不活性ガスが吸気通路20に到達するときの時刻を時刻t2とすると、時刻t2までは、低圧ループEGR装置35によって還流されるEGRガスの成分は、不活性ガスが殆ど含まれない空気に近い成分となる。そのため、図3(b)に示すように、時刻t1から時刻t2の間における吸気ガス中のEGRガスにおける不活性ガスの割合は、時刻t1以前と時刻t2以後における吸気ガス中のEGRガスにおける不活性ガスの割合と比較して、大きく低下する。それに伴い、図3(c)のグラフ52に示すように、時刻t1から時刻t2の間、吸気ガス中における酸素濃度は上昇する。そして、酸素濃度の上昇に伴い、燃焼温度も上昇するので、図3(d)のグラフ53に示すように、時刻t1から時刻t2の間、排気ガス中のNOx量も増加してしまう。
そこで、本発明に係る内燃機関の制御装置では、ECU7は、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の所定の成分の変化量を算出し、当該変化量に応じて、吸気ガス中の当該所定の成分の濃度変化を抑制するように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御することとする。このようにすることで、低圧ループEGR装置35のEGRガスの還流遅れによる吸気ガスの成分変化を、高圧ループEGR装置31で的確に補償することができ、NOxや黒煙(スモーク)の発生を抑えて、エミッションの悪化を防ぐことができる。
第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、変化量を算出する所定の成分の一例として、酸素(O)を用いることとする。即ち、ECU7は、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れによる、当該EGRガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御することとする。第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量が、吸気ガス中の酸素の変化量に等しいと想定している。
具体的には、まず、ECU7は、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度と、還流遅れがなかったと想定した場合の低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、不活性ガスの還流遅れによる、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出する。ここで、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度は、酸素濃度センサ41からの検出信号S7を基に求められる。また、還流遅れがなかったと想定した場合の低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度は、エンジン回転数と負荷とのマップを基に求められる。ここで、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量が、吸気ガス中の酸素の変化量に等しいと想定しているので、酸素濃度センサ41の低圧ループEGR装置35に取り付けられる位置としては、図2に示すように、吸気通路との接続位置に近い位置が好適である。
次に、ECU7は、算出された酸素の変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御することとする。具体的には、ECU7は、算出された酸素の変化量が基準値よりも大きい場合には、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を増加することにより、吸気ガス中の酸素濃度を減少させる調整を行うこととする。これにより、NOxの発生を抑えることができる。また、ECU7は、算出された酸素の変化量が基準値以下となる場合には、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を減少することにより、吸気ガス中の酸素濃度を増加させる調整を行う。これにより、スモークの発生を抑えることができる。なお、ここでいう基準値とは、予め実験などにより決められた値であり、ECU7に記録されている。
図4(a)〜(d)は、EGRモードをHPLモードからMPLモードへと切り換えた場合において、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整した場合の、吸気ガス中における燃料量、EGR率、酸素濃度の夫々の時間に対する変化、排気ガス中のNOx量の時間に対する変化について示したものである。
図4(b)のグラフ51aは、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整した場合における、EGR率の時間に対する変化を示すグラフであり、図4(c)のグラフ52aは、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整した場合における、吸気ガス中の酸素濃度の時間に対する変化を示すグラフであり、図4(d)のグラフ53aは、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整した場合における、排気ガス中のNOx量の時間に対する変化を示すグラフである。
時刻t1において、EGRモードがHPLモードからMPLモードへと切り換えられると、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れにより、酸素量が増加すると考えられる。従って、ECU7は、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を増加することにより、吸気ガス中の酸素濃度の上昇を抑制する制御を行う。図4(b)では、この高圧ループEGR装置31によるEGRガス量の増加分を補償HPL量として示している。
図4(c)に示すように、EGRモードがHPLモードからMPLモードへと切り換えられた場合において、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を増加した場合(グラフ52a)には、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を増加しない場合(グラフ52)と比較して、吸気ガス中の酸素濃度の上昇を抑えることができる。そのため、図4(d)に示すように、EGRモードがHPLモードからMPLモードへと切り換えられた場合において、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を増加した場合(グラフ53a)には、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を増加しない場合(グラフ53)と比較して、燃焼温度の上昇を抑えて、NOx量を減少させることができる。
なお、ここで、図2に示すように、吸気通路20において、低圧ループEGR装置35との接続位置と高圧ループEGR装置31との接続位置との間は、一定の距離Lだけ離れている。従って、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素量の変化による影響を抑えるためには、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガスが、酸素量の変化が検出されてから、吸気通路20における高圧ループEGR装置31との接続位置に到達するまでの間、即ち、距離Lを進む間に、ECU7は、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行えばよい。従って、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れが比較的大きい場合であっても、低圧ループEGR装置35のEGRガスの還流遅れによる吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を確実に行うことができる。
以上のことから分かるように、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、ECU7は、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度と、還流遅れがなかったと想定した場合の低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、不活性ガスの還流遅れによる、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出する。そして、ECU7は、当該変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う。これにより、NOxやスモークの発生を抑えることができる。また、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量に応じて、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御するので、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れが比較的大きい場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を確実に行うことができる。
(第1実施形態に係る補償HPL率の算出方法)
ここで、第1実施形態に係る補償HPL率の算出方法について述べる。図4(b)のグラフ51aで示すEGR率(高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整した場合におけるEGR率)を目標EGR率とすると、目標EGR率は、以下の式(1)で示すように、基本目標EGR率と補償HPL_EGR率との和で求められる。
Figure 2009047130
ここで、図4(b)に示すように、基本目標EGR率とは、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整しなかった場合におけるEGR率である。補償HPL_EGR率とは、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガスの増加分のEGR率である。
また、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス量をLPL量とし、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中における目標となる酸素濃度を目標LPL_O濃度とする。ここで、「目標となる酸素濃度」とは、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の酸素濃度である。LPL量及び目標LPL_O濃度は夫々、エンジン回転数と要求負荷に対するマップとして求められる。また、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度を観測LPL_O濃度とする。観測LPL_O濃度は、酸素濃度センサ41により検出される値である。このとき、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガスにおける目標となる酸素量である目標LPL_O量と、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素量である観測LPL_O量とは夫々、以下の式(2)、(3)で示される。なお、ここで「目標となる酸素量」とは、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の酸素量である。
Figure 2009047130
従って、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中における過剰となる酸素量であるLPL過剰O量は、観測LPL_O量と目標LPL_O量との差分として以下の式(4)で示される。
Figure 2009047130
このLPL過剰O量が、不活性ガスの還流遅れによる、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量である。
ここで、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス中の目標となる酸素濃度を目標HPL_O濃度とする。また、LPL過剰O量が高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガスの増加分(補償HPL量)における酸素量と等しくなると仮定すると、補償HPL量と目標HPL_O濃度とLPL過剰O量との間の関係は、以下の式(5)で示される。
Figure 2009047130
上記の式(5)は、式(4)を用いて、以下の式(6)で示すことができる。吸気量はエンジン回転数と要求負荷に対するマップとして求められる。
Figure 2009047130
吸気量に対する補償HPL量の割合を補償HPL率とし、吸気量に対するLPL量の割合をLPL率とすると、上記の式(6)は以下の式(7)で示すことができる。
Figure 2009047130
ここで、高圧ループEGR装置31と低圧ループEGR装置35とは夫々、排気通路25に接続されているので、目標LPL_O濃度及び目標HPL_O濃度の夫々は、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の排気ガス中の酸素濃度である目標排気O濃度と等しいと考えられる。従って、目標LPL_O濃度及び目標HPL_O濃度の夫々は、以下の式(8)で示すことができる。
Figure 2009047130
ここで、目標排気O濃度は、エンジン回転数と要求負荷とのマップに基づいて求められる。従って、式(7)は、式(8)を代入することにより、以下の式(9)で示すことができる。
Figure 2009047130
ECU7は、LPL率と観測LPL_O濃度と目標排気O濃度とを、式(9)に代入することにより、補償HPL率を求めることができ、求められた補償HPL率を式(1)に代入することにより、目標EGR率を求めることができる。ECU7は、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の開度を制御して、吸気ガス中のEGR率が目標EGR率となるように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御する。ECU7は、この制御を、EGR弁33の開度と目標EGR率とのマップに基づいて行う。このようにすることで、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑え、NOxやスモークの発生を抑えることができる。
(第1実施形態に係る制御処理)
次に、第1実施形態に係る内燃機関の制御処理の方法について、図5に示すフローチャートを用いて説明することとする。
ステップS101において、ECU7は、エンジン回転数と要求トルクとに基づいて、適切なEGRモードを求める。ステップS102において、ECU7は、求めたEGRモードがMPLモード又はLPLモードになっているか否かを判定し、求めたEGRモードがMPLモード又はLPLモードになっていないと判定した場合には(ステップS102:No)、本処理を終了する。一方、ECU7は、求めたEGRモードがMPLモード又はLPLモードになっていると判定した場合には(ステップS102:Yes)、処理をステップS103に進める。
ステップS103において、ECU7は、目標排気O濃度、目標LPL_O濃度、LPL量、吸気量を求める。具体的には、目標排気O濃度、目標LPL_O濃度、LPL量、吸気量は夫々、エンジン回転数と要求負荷とのマップとして、予め、ECU7に記憶されており、ECU7は、エンジン回転数と要求負荷とに基づいて、目標排気O濃度、目標LPL_O濃度、LPL量、吸気量を求める。また、ステップS104において、ECU7は、酸素濃度センサ41からの検出信号S7に基づいて、観測LPL_O濃度を求める。
ステップS105において、ECU7は、求められたLPL量、観測LPL_O濃度、目標LPL_O濃度を、先に述べた式(4)に代入することにより、LPL過剰O量を求める。ステップS106において、ECU7は、求められたLPL過剰O量の絶対値が基準値よりも大きいか否かについて判定する。ここで、基準値とは、予め実験などにより決定された値であり、ECU7に記録されている。LPL過剰O量そのものの値ではなく、LPL過剰O量の絶対値が基準値よりも大きいか否かを判定するとした理由は、LPL過剰O量が負の値となるとき、即ち、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素量が基準値に対して不足する場合も想定しているからである。
つまり、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素量が基準値に対して過剰となるときには、NOxが発生して問題となるが、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素量が基準値に対して不足する場合にも、スモークが発生して問題となるからである。ECU7は、ステップS106において、LPL過剰O量の絶対値が基準値を超えていないと判定した場合には(ステップS106:No)、本処理を終了し、LPL過剰O量の絶対値が基準値を超えていると判定した場合には(ステップS106:Yes)、ステップS107へ進む。
ステップS107において、ECU7は、観測LPL_O濃度、目標LPL_O濃度、目標排気O濃度、LPL量、吸気量を先に述べた式(9)に代入することにより、補償HPL率を求める。このようにして求められた補償HPL率を式(1)に代入することにより、目標EGR率を求めることができる。
ステップS108において、ECU7は、EGRモードをMPLモードに変更して、吸気ガスのEGR率の制御を行う。即ち、ECU7は、吸気ガスのEGR率が目標EGR率となるように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御する。このようにすることで、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れが発生した場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行うことができ、NOxやスモークの発生を抑えることができる
以上に述べたように、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100では、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサを備え、ECU7は、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度と、還流遅れがなかったと想定した場合の低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、不活性ガスの還流遅れによる、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出する。そして、ECU7は、当該変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う。
この第1実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れが発生した場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制することにより、NOxやスモークの発生を抑えることができる。また、吸気通路20において、低圧ループEGR装置35との接続位置と高圧ループEGR装置31との接続位置との間は、一定距離離れているので、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量に応じて、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う第1実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れが比較的大きい場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行うことができ、NOxやスモークの発生を抑えることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aの概略構成を示すブロック図である。ここで、図6において、実線の矢印は吸気及び排気の流れを示し、破線の矢印は制御信号を示す。なお、図6に示す構成要素以外の構成要素については、図1に示した第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100の構成要素と同様である。
先に述べたように、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサを備え、ECU7は、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度と、還流遅れがなかったと想定した場合の低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、不活性ガスの還流遅れによる、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行うとしていた。
しかしながら、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量は、必ずしも吸気ガス中の酸素の変化量と等しくなるとは限らない。なぜならば、吸気通路20における、低圧ループEGR装置35との接続位置と高圧ループEGR装置31との接続位置との間(距離Lの間)にも、不活性ガスが存在している可能性があるからである。そのため、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量に応じて、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う第1実施形態に係る内燃機関の制御装置では、吸気ガス中の酸素濃度の変化を精密に抑制することができない恐れがある。
そこで、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aでは、酸素濃度センサ41の代わりに、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、低圧ループEGR装置35との接続位置よりも下流の吸気通路20における吸気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ41aを備えることとする。これにより、酸素濃度センサ41aは、吸気ガス中の酸素濃度を直接検出することができる。好適には、酸素濃度センサ41aは、吸気ガス中の酸素濃度を正確に検出するため、高圧ループEGR装置との接続位置になるべく近い吸気通路20上の位置に取り付けられる。例えば、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aでは、図6に示すように、酸素濃度センサ41aは、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、インタークーラ24よりも下流の吸気通路20に取り付けられる。
酸素濃度センサ41aは、吸気ガス中の酸素濃度を検出し、検出された酸素濃度に対応する検出信号S7aをECU7に送信する。また、エアフローメータ21は、検出された流入空気量(新気量)に対応する検出信号S9をECU7に送信する。なお、ECU7は、酸素濃度センサ41aからの検出信号を基に、吸気ガス中の酸素濃度を求める代わりに、エアフローメータ21からの検出信号S9を基に、吸気ガス中の酸素濃度を推定するとしても良い。
ECU7は、酸素濃度センサ41aからの検出信号S7aを基に、吸気ガス中の酸素濃度を求め、当該酸素濃度に基づいて、EGR弁33に制御信号S3を送ってEGR弁33の開度を制御する。具体的には、ECU7は、酸素濃度センサ41aにより検出された吸気ガス中の酸素濃度と、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行うこととする。
このようにすることで、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aでは、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100と同様に、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れが発生した場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制することにより、NOxやスモークの発生を抑えることができる。また、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aでは、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、低圧ループEGR装置35との接続位置よりも下流の吸気通路20における吸気ガス中の酸素濃度を基に、不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う。このようにすることで、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aでは、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100と比較して、吸気ガス中の酸素濃度の変化を精密に抑制することができる。
(第2実施形態に係る補償HPL率の算出方法)
ここで、第2実施形態に係る補償HPL率の算出方法について述べる。目標EGR率は、第1実施形態で述べた式(1)で示すように、基本目標EGR率と補償HPL_EGR率との和で求められる。
また、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス量をLPL量とし、吸気ガス中の目標となる酸素濃度を目標吸気系O濃度とする。LPL量及び目標吸気系O濃度は夫々、エンジン回転数と要求負荷に対するマップとして求められる。また、吸気ガス中の実際の酸素濃度を観測吸気系O濃度とする。観測吸気系O濃度は、酸素濃度センサ41aにより検出される値である。また、新気量は、エアフローメータ21により検出される値である。このとき、吸気ガス中における目標となる酸素量である目標吸気系O量と、吸気ガス中の実際の酸素量である観測吸気系O量とは夫々、以下の式(10)、(11)で示される。
Figure 2009047130
従って、吸気ガス中における過剰となる酸素量である吸気系過剰O量は、観測吸気系O量と目標吸気系O量との差分として以下の式(12)で示される。
Figure 2009047130
この吸気系過剰O量が、不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量である。
ここで、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス中における目標となる酸素濃度を目標HPL_O濃度とする。そして、吸気系過剰O量が高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガスの増加分(補償HPL量)における酸素量と等しくなると仮定すると、補償HPL量と目標HPL_O濃度と吸気系過剰O量との間の関係は、以下の式(13)で示される。
Figure 2009047130
上記の式(13)は、式(12)を用いて、以下の式(14)で示すことができる。
Figure 2009047130
ここで、新気量から補償HPL量を引いているのは、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量が増加すると、その分、新気量が減少するからである。
吸気量に対する補償HPL量の割合を補償HPL率とし、吸気量に対するLPL量の割合をLPL率とすると、上記の式(14)は以下の式(15)で示すことができる。吸気量は、エンジン回転数と要求負荷に対するマップとして求められる。
Figure 2009047130
ここで、高圧ループEGR装置31と低圧ループEGR装置35とは夫々、排気通路25に接続されているので、目標HPL_O濃度は、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の排気ガス中の酸素濃度である目標排気O濃度と等しいと考えられ、以下の式(16)で示すことができる。ここで、目標排気O濃度は、エンジン回転数と要求負荷とのマップに基づいて求められる。
Figure 2009047130
式(15)は、式(16)を代入することにより、以下の式(17)で示すことができる。
Figure 2009047130
ECU7は、式(17)より補償HPL率を求めることができ、求められた補償HPL率を式(1)に代入することにより、目標EGR率を求めることができる。ECU7は、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の開度を制御して、吸気ガスにおけるEGR率が目標EGR率となるように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御する。このようにすることで、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑え、NOxやスモークの発生を抑えることができる。
(第2実施形態に係る制御処理)
次に、第2実施形態に係る内燃機関の制御処理の方法について、図7に示すフローチャートを用いて説明することとする。
ステップS111〜ステップS112の処理は、第1実施形態に係る内燃機関の制御処理(図5)におけるステップS101〜ステップS102の処理と同様の処理なので、説明を省略する。
ステップS113において、ECU7は、目標排気O濃度、目標吸気系O濃度、LPL量、吸気量を求める。具体的には、目標排気O濃度、目標吸気系O濃度、LPL量、吸気量は夫々、エンジン回転数と要求負荷とのマップとして、予め、ECU7に記憶されているので、ECU7は、エンジン回転数と要求負荷とに基づいて、目標排気O濃度、目標吸気O濃度、LPL量、吸気量を求めることができる。また、ステップS114において、ECU7は、酸素濃度センサ41aからの検出信号S7aに基づいて、観測吸気系O濃度を求めると共に、エアフローメータ21からの検出信号S9に基づいて、新気量を求める。
ステップS115において、ECU7は、求められたLPL量、新気量、目標吸気系O濃度、観測吸気系O濃度を、先に述べた式(12)に代入することにより、吸気系過剰O量を求める。ステップS116において、ECU7は、求められた吸気系過剰O量の絶対値が基準値よりも大きいか否かについて判定する。ここで、基準値とは、予め実験などにより決定された値であり、ECU7に記録されている。吸気系過剰O量そのものの値ではなく、吸気系過剰O量の絶対値が基準値よりも大きいか否かを判定するとした理由は、第1実施形態で述べたのと同様の理由により、吸気系過剰O量が負の値となるとき、即ち、吸気系ガス中の酸素量が基準値に対して不足する場合も想定しているからである。ECU7は、ステップS116において、吸気系過剰O量の絶対値が基準値を超えていないと判定した場合には(ステップS116:No)、本処理を終了し、吸気系過剰O量の絶対値が基準値を超えていると判定した場合には(ステップS116:Yes)、ステップS117へ進む。
ステップS117において、ECU7は、目標吸気系O濃度、目標排気O濃度、観測吸気系O濃度、吸気量、LPL量、新気量を先に述べた式(17)に代入することにより、補償HPL率を求める。このようにして求められた補償HPL率を式(1)に代入することにより、目標EGR率を求めることができる。
ステップS118において、ECU7は、EGRモードをMPLモードに変更して、吸気ガスのEGR率の制御を行う。即ち、ECU7は、吸気ガスのEGR率が目標EGR率となるように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を制御する。このようにすることで、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れが発生した場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行うことができ、NOxやスモークの発生を抑えることができる。
以上に述べたように、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置では、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、低圧ループEGR装置35との接続位置よりも下流の吸気通路20における吸気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ41aを備え、ECU7は、酸素濃度センサ41aからの検出信号S7aを基に酸素濃度を求め、当該酸素濃度に基づいて、EGR弁33に制御信号S3を送ってEGR弁37の開度を制御する。具体的には、ECU7は、酸素濃度センサ41aにより検出された吸気ガス中の酸素濃度と、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う。
この第2実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置と同様に、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れが発生した場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行うことにより、NOxやスモークの発生を抑えることができる。また、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置100aでは、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100と異なり、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、低圧ループEGR装置35との接続位置よりも下流の吸気通路20における吸気ガス中の酸素濃度を基に、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、当該変化量に応じて、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行うので、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100よりも、吸気ガス中の酸素濃度の変化を精密に抑制することができる。
なお、上述の実施形態では、酸素濃度センサ41aは、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、インタークーラ24よりも下流の吸気通路20に取り付けられるとしているが、これに限られるものではない。代わりに、例えば、吸気通路20の距離Lの間において、一定間隔毎に吸気ガス中の酸素濃度を検出する検出手段(例えば、吸気通路20の距離Lの間において、一定間隔毎に備えられた酸素濃度センサ)を設け、当該検出手段が設けられた吸気通路20上の複数の位置の中から、エンジン回転数と、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れの大きさとに基づいて、吸気ガス中の酸素濃度を検出する検出位置を決めるとしても良い。言い換えると、エンジン回転数は吸気ガスの流速に比例するので、吸気ガスの流速と、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れの大きさとに対し、高圧ループEGR装置31との接続位置からなるべく近く、且つ、高圧ループEGR装置31により補償可能な検出位置を決めるとしても良い。このようにすることで、吸気ガス中の酸素濃度の変化をより精密に抑制することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置について説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の制御装置100bの概略構成を示すブロック図である。ここで、図8において、実線の矢印は吸気及び排気の流れを示し、破線の矢印は制御信号を示す。なお、図8に示す構成要素以外の構成要素については、図1に示した第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100の構成要素と同様である。
図8より分かるように、第3実施形態に係る内燃機関の制御装置100bでは、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ41と、高圧ループEGR装置31との接続位置よりも上流で、且つ、低圧ループEGR装置35との接続位置よりも下流の吸気通路20における吸気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ41aと、を備える。なお、これらの酸素濃度は、酸素濃度センサを用いる代わりに、エアフローメータ21からの検出信号S9を基に推定するとしても良い。
先に述べたように、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置と比較して、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れが比較的大きくなった場合であっても、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行うことができるという利点がある。
一方、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置100と比較して、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御をより精密に行うことができるという利点がある。
しかし、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置における酸素濃度センサ41が取り付けられている位置と比較して、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置における酸素濃度センサ41aが取り付けられている位置は、吸気通路20における高圧ループEGR装置31との接続位置と近い位置にある。そのため、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置では、第1実施形態に係る内燃機関の制御装置と比較して、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れが小さくないと、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行うのは難しい、即ち、制御タイミングが遅れて補償効果が得られなくなる。
そこで、第3実施形態に係る内燃機関の制御装置100bでは、まず、ECU7は、高圧ループEGR装置31の制御遅れの時間の間に移動する吸気ガスの体積(以下では、「HPL遅れ制御遅れ相当容積」と称する)を求める。ここで、HPL遅れ制御遅れ相当容積は、高圧ループEGR装置31の制御遅れの時間をThdとし、単位時間当たりのストローク数をSTとし、シリンダ当たりの排気量をVcylとし、高圧ループEGR装置31の容積をVHPLとすると、以下の式(18)で求めることができる。
Figure 2009047130
ここで、高圧ループEGR装置31の制御遅れの時間Thd、シリンダ当たりの排気量Vcyl、高圧ループEGR装置31の容積VHPLは、予め決まられた値であり、ECU7に記録されている。単位時間当たりのストローク数は、エンジン回転数とのマップより求められる。
そして、ECU7は、HPL遅れ制御遅れ相当容積が、低圧ループEGR装置35との接続位置から高圧ループEGR装置31との接続位置までの吸気通路20の容積である吸気系容積20xよりも大きいか否かについて判定する。吸気系容積20xの値は、予め決まられた値であり、ECU7に記録されている。
ECU7は、HPL遅れ制御遅れ相当容積が吸気系容積20xよりも大きいと判定した場合には、第1実施形態に係る制御方法により高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行うこととする。即ち、ECU7は、酸素濃度センサ41からの検出信号S7を基に、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の実際の酸素濃度を求め、求められたEGRガス中の実際の酸素濃度と、不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、低圧ループEGR装置35により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出する。
一方、ECU7は、HPL遅れ制御遅れ相当容積が吸気系容積20x以下であると判定した場合には、第2実施形態に係る制御方法により高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行うこととする。即ち、ECU7は、酸素濃度センサ41aからの検出信号S7aを基に、吸気ガス中の実際の酸素濃度を求め、求められた吸気ガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、吸気ガス中の酸素の変化量を算出する。
そして、ECU7は、算出された酸素の変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制ように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量を調整することにより、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する制御を行う。このようにすることで、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れの大きさに合わせて、NOxやスモークの発生を抑えるのに最適な制御を行うことができる。つまり、第3実施形態に係る内燃機関の制御装置100bでは、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れの大きさが比較的大きい場合には、第1実施形態に係る制御方法を用いることにより、高圧ループEGR装置31による補償を間に合わせることを優先することとし、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れの大きさが比較的小さい場合には、第2実施形態に係る制御方法を用いることにより、高圧ループEGR装置31で精密に補償することを優先することとする。
(第3実施形態に係る制御処理)
次に、第3実施形態に係る内燃機関の制御処理の方法について、図9に示すフローチャートを用いて説明することとする。
まず、ステップS121において、ECU7は、クランク角センサ19からの検出信号S6に基づいて、エンジン回転数を取得する。ECU7は、エンジン回転数を基に、単位時間当たりのストローク数STを求めることができる。
ステップS122において、ECU7は、高圧ループEGR装置31の制御遅れの時間Thd、単位時間当たりのストローク数ST、シリンダ当たりの排気量Vcyl、高圧ループEGR装置31の容積VHPLを式(18)に代入することによりHPL遅れ制御遅れ相当容積を求める。ここで、高圧ループEGR装置31の制御遅れの時間Thd、シリンダ当たりの排気量Vcyl、高圧ループEGR装置31の容積VHPLは、予め決まられた値であり、ECU7に記録されている。
ステップS123において、ECU7は、エンジン回転数と要求トルクとに基づいて、適切なEGRモードを求める。ステップS124において、ECU7は、求めたEGRモードがMPLモード又はLPLモードになっているか否かを判定し、求めたEGRモードがMPLモード又はLPLモードになっていないと判定した場合には(ステップS124:No)、本処理を終了する。一方、ECU7は、求めたEGRモードがMPLモード又はLPLモードになっていると判定した場合には(ステップS124:Yes)、処理をステップS125に進める。
ステップS125において、ECU7は、HPL遅れ制御遅れ相当容積が吸気系容積よりも大きいか否かについて判定し、HPL遅れ制御遅れ相当容積が吸気系容積よりも大きいと判定した場合には(ステップS125:Yes)、図5に示す第1実施形態に係る制御処理のフローチャートのステップS103へ進む。即ち、第1実施形態に係る制御方法により高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う。一方、ECU7は、HPL遅れ制御遅れ相当容積が吸気系容積以下であると判定した場合には(ステップS125:No)、図7に示す第2実施形態に係る制御処理のフローチャートのステップS113へ進む。即ち、第2実施形態に係る制御方法により高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行う。なお、吸気系容積20xの値は、予め決まられた値であり、ECU7に記録されている。
以上のようにすることで、第3実施形態に係る内燃機関の制御装置100bでは、高圧ループEGR装置31のEGR弁33の制御遅れの大きさに合わせて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制する最適な制御を行うことができる。
[変形例]
上述の各実施形態に係る内燃機関の制御装置では、変化量を算出する吸気ガスの成分として酸素を用いるとしているが、これに限られるものではない。代わりに、ECU7は、不活性ガスの還流遅れにより変化しうる吸気ガスの成分、例えば、二酸化炭素(CO)、水(H)、窒素(N)といった他の成分の変化量を算出し、当該変化量に応じて、吸気ガスの当該他の成分の濃度変化を抑制するように、高圧ループEGR装置31により還流されるEGRガス量の制御を行うとしてもよい。これによっても、上述の各実施形態で述べたのと同様の効果、即ち、低圧ループEGR装置のEGRガスの還流遅れによる吸気ガスの成分変化を、高圧ループEGR装置で的確に補償することができ、NOxやスモークの発生を抑えて、エミッションの悪化を防ぐことができる。
第1実施形態に係る内燃機関の制御装置の概略構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係る内燃機関の制御装置の概略構成を示すブロック図である。 燃料量、EGR率、NOx量の夫々の時間に対する変化を示すグラフである。 燃料量、EGR率、NOx量の夫々の時間に対する変化を示すグラフである。 第1実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る内燃機関の制御装置の概略構成を示すブロック図である。 第2実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。 第3実施形態に係る内燃機関の制御装置の概略構成を示すブロック図である。 第3実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。
符号の説明
7 ECU
10 内燃機関(エンジン)
17 燃料添加弁
20 吸気通路
23 ターボチャージャ
25 排気通路
30 DPF
31 高圧ループEGR装置
35 低圧ループEGR装置
33、37 EGR弁

Claims (4)

  1. ターボチャージャのタービンより上流の排気通路と前記ターボチャージャのコンプレッサより下流の吸気通路とを接続することによりEGRガスを還流させる高圧ループEGR装置と、前記タービンより下流の排気通路と前記コンプレッサより上流の吸気通路とを接続することによりEGRガスを還流させる低圧ループEGR装置とを有する内燃機関の制御装置であって、
    前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の所定の成分の変化量を算出する算出手段と、
    前記変化量に応じて、吸気ガス中の前記所定の成分の濃度変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する検出手段を備え、
    前記算出手段は、前記検出手段により検出されたEGRガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を算出し、
    前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記高圧ループEGR装置との接続位置よりも上流で、且つ、前記低圧ループEGR装置との接続位置よりも下流の吸気通路における吸気ガス中の酸素濃度を検出する検出手段を備え、
    前記算出手段は、前記検出手段により検出された吸気ガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量を算出し、
    前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度を検出する第1の検出手段と、
    前記高圧ループEGR装置との接続位置よりも上流で、且つ、前記低圧ループEGR装置との接続位置よりも下流の吸気通路における吸気ガス中の酸素濃度を検出する第2の検出手段と、
    前記高圧ループEGR装置の制御遅れの時間の間に移動する吸気ガスの体積が、前記低圧ループEGR装置との接続位置から前記高圧ループEGR装置との接続位置までの前記吸気通路の容積である吸気系容積よりも大きいか否かを判定する判定手段と、を備え、
    前記算出手段は、前記移動する吸気ガスの体積が前記吸気系容積よりも大きい場合には、前記第1の検出手段により検出されたEGRガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、前記低圧ループEGR装置により還流されるEGRガス中の酸素の変化量を前記変化量として算出し、前記移動する吸気ガスの体積が前記吸気系容積以下の場合には、前記第2の手段により検出された吸気ガス中の酸素濃度と、前記不活性ガスの還流遅れがなかったと想定した場合の吸気ガス中の酸素濃度とを基に、前記不活性ガスの還流遅れによる、吸気ガス中の酸素の変化量を前記変化量として算出し、
    前記制御手段は、前記変化量に応じて、吸気ガス中の酸素濃度の変化を抑制するように、前記高圧ループEGR装置により還流されるEGRガス量を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
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