JP6075718B2 - 親水性塗料組成物、親水性塗膜、水回り物品及び親水性塗膜の製造方法 - Google Patents

親水性塗料組成物、親水性塗膜、水回り物品及び親水性塗膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、防曇性、防汚性に優れた親水性塗料組成物、親水性塗膜、水回り物品及び親水性塗膜の形成方法に関する発明である。
従来のアニオン性親水性基を含んだ親水性塗料組成物として、2−スルホニルエチルアクリレートNaと、二官能以上のアクリレート化合物を共重合させたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、親水性のスルホン酸またはスルホン酸塩基を有したアクリレート化合物と二官能以上のアクリレート化合物を含んだ塗料を塗膜表面のスルホ基(Sa)と塗膜中央部のスルホ基(Da)の比がSa/Da≧1.1となるように形成することで耐擦傷性を有しながら親水性、防汚性、防曇性、帯電防止性を付与している。
WO2007/064003号公報
しかしながら、アニオン性親水性基を含んだ親水性塗料組成物を用いて塗膜を形成する際、製造環境の湿度が上昇してしまうことで、塗膜として親水性を発現しづらくなるという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高湿度環境においても安定に親水性が発現することが可能な塗膜を形成することができる親水性塗料組成物、この親水性塗料組成物を含む親水性塗膜、この塗膜が形成された水回り物品及び塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明は、分子内に少なくとも一つのアニオン性親水性基と少なくとも一つのエチレン性不飽和基とを有し、以下の化学式1で表される化合物(a)と、分子内にエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物(b)と、前記化合物(a)よりも分子量が小さく分子内に一つのエチレン性不飽和基と親水性基とを有する揮発性の化合物(c)と、を含有しており、化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)の物質量の総和に対する化合物(c)の物質量の比が0.5より大きく0.99未満の範囲であることを特徴とする。

(式中Aはアニオン性親水性基であり−COO、−PO 2−、−HPO 、−SO のいずれかを表す。BはH、CHのいずれかを表す。Rは炭素数2〜の脂肪族炭化水素基を表し、なお且つフェニレン基、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基のいずれかを含んでいても良い。Mは水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンのいずれかを表す。)
本発明によれば、湿度が高い現場においても、塗膜の表層に化合物(a)を偏析させることが可能となり、この化合物(a)のアニオン性親水性基が塗膜表面に存在することにより親水性を示す塗膜を形成することが可能となる。この理由としては以下のように考えているが、本発明はこれに何ら限定されるものではない。親水性塗料組成物を基材に塗布し乾燥させると塗膜の表層には主に化合物(a)と化合物(c)が存在すると考えられる。この際、湿度が高い環境においては、環境中に存在する水が塗膜中の親水性成分と水和することが考えられるが、化合物(a)よりも化合物(c)の方が水との親和性が高く水和しやすい。このため、水と化合物(a)との間での水和を抑えることができ、塗膜の白濁を防ぐことができる。また、塗膜を硬化させると塗膜表層に含まれていた化合物(c)は揮発するため、塗膜の表層には化合物(a)が偏析していると考えられる。これにより親水性を示す塗膜を形成することができると考えられる。
また、本発明では、化合物(a),化合物(b)及び化合物(c)が有するエチレン性不飽和基は、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかであることが好ましい。
本発明によれば、アニオン性親水性基を−COO、−PO 2−、−HPO 、−SO のいずれかとするので、水道水中のシリカやNa、Kなど水垢を構成する成分が塗膜の表面に強固に固着しないので、これらの成分が付着しても容易に取り除くことができ親水性を長期に維持することができる。
また、本発明では、化合物(a)のアニオン性親水性基は−SO またはその塩であることが好ましい。
本発明によれば、アニオン性親水性基の中でもスルホン酸基またはその塩は酸解離定数が高く、多価の金属イオンと塩を形成しにくいので、水道水に含まれるCa、Mg等の多価金属イオンを含んだ水道水に曝露されても水垢をさらに形成しにくくすることができる。
また、本発明では、化合物(c)は、以下の化学式3又は化学式4であることが好ましい。
(式中A’は、水酸基、モルホリノ基、フルフリル基、アミド基のいずれかの親水性基を表す。BはH、CHのいずれかを表す。R’は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素であり、フェニレン基、エステル基、エーテル基のいずれかを含んでいても良い。)
本発明によれば、化合物(c)の構造を上記のようにすることで、化合物(a)と十分に相溶することができる。よって、塗膜を加熱乾燥させる際、化合物(a)とともに塗膜の表層に偏析し、化合物(a)を塗膜表面に均一に分布させることができる。また、塗膜中に残存した化合物(c)は、塗膜を硬化させる際化合物(a)及び化合物(b)と容易に重合することができるので、塗膜中に未反応の化合物(c)が残存することはなく、塗膜から化合物(c)の溶出等による親水性が低下することを防ぐことができる。
また、本発明では、化合物(b)は、水酸基、カルボキシル基又はエチレンオキサイド鎖を含まないことが好ましい。
また、本発明では、化合物(b)は、水酸基を含まないことが好ましい。
本発明によれば、化合物(b)が水酸基を備えていないので、化合物(a)と化合物(b)の相溶性を低くすることができる。これにより、親水性塗布組成物を乾燥する際、溶媒や化合物(c)が揮発させながら化合物(a)を塗膜の表面に偏析させることができる。このことにより、塗膜の基材側に含まれる化合物(a)の濃度を低く抑えることができ、塗膜の耐水性を向上させることが可能となる。
また、本発明では、化合物(b)のエチレン性不飽和基の官能基当量(g/eq)が、200以下であることが好ましい。
化合物(b)のエチレン性不飽和基の官能基当量を200g/eq以下とすることで、化合物(a)と塗膜中に残存する化合物(c)の分子量が小さい化合物や官能基数の少ない化合物を用いても、形成する塗膜を強固にすることができるので耐久性の高い塗膜とすることができる。
また、本発明では、親水性塗料組成物を用いてなる親水性塗膜を形成することができる。
本発明によれば、湿度が高い現場においても、塗膜の表層に化合物(a)を偏析させることが可能となり、この化合物(a)のアニオン性親水性基が塗膜表面に存在することにより親水性を示す塗膜を形成することが可能となる。
また、本発明の親水性塗膜は、水回り物品の表面に好適に使用することができる。ここで、水回り物品とはトイレや浴室、キッチン、洗面化粧台等に使われる部材を指し、例えば浴室壁材、浴室床材、浴室窓材、浴室扉材、シャワーブース壁材、洗面鏡、洗面化粧台及びボウル、浴槽やキッチンカウンター及びキッチンシンク等の人工大理石、レンジフード材、便器、便座、温水洗浄便座及びその洗浄ノズル、排水口、水栓金具等のいずれかが挙げられるが特にこれらに限定されない。
水回り製品は、定期的に水や油汚れ、屎尿に曝露されるため、アニオン性親水性基を有した本発明の親水性塗料組成物を塗布することで、汚れや水垢の固着を防ぎ、鏡においては曇りの発生を抑制することができる。
また、本発明に係る親水性塗膜の製造方法は、親水性塗料組成物を基材に塗布する塗布工程と、化合物(c)の少なくとも一部を揮発させる加熱乾燥工程と、化合物(a)、化合物(b)及び残存した化合物(c)を活性エネルギー線又は熱を与えることにより共重合させる硬化工程からなることとすることができる。
本発明によれば、製造時の湿度が高い環境でも、安定して親水性を示す塗膜を形成することができる。また、防汚性や防曇性に優れた塗膜とすることができる。
本発明の実施例1、2及び比較例1,2,3の製造環境湿度ごとの塗膜の水接触角の値の変化を示した図である。 本発明の実施例及び比較例の化合物(c)のモル比を変化させて作成した塗膜の水接触角の値の図である。 本発明の実施例の耐薬品性試験後に測定した水接触角の値を化合物(a)、化合物(b)、化合物(c)の総和に対する化合物(c)のモル比の値を変化させてプロットした図である。 本発明の実施例の耐薬品性試験後に測定した水接触角の値を化合物(c)の化合物(b)に対するモル比でプロットした図である。 水はけ試験の実施及び評価方法を示した図である。
以下に本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(親水性塗料組成物)
本発明の親水性塗料組成物は、次に示す化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)の混合物である。
(化合物(a))
本発明の化合物(a)は、分子内にアニオン性親水性基と少なくとも一つのエチレン性不飽和基とを有する化合物である。
化合物(a)としては、前述の化学式1で表される。式中Aはアニオン性親水性基であり、−COO−、−PO42−、−HPO4−、−SO3−のいずれかを表す。BはH、CH3のいずれかを表す。Rは炭素数2〜の脂肪族炭化水素基を表し、なお且つフェニレン基、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基を含んでいても良い。Mは水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンのいずれかを表す。Mは、1価のアルカリ金属が好ましく、ナトリウム、カリウム塩が特に好ましい。


化合物(a)の分子量は化合物(c)の分子量よりも大きければ、親水性を阻害しない範囲で適宜使用することができるが、好ましくは200〜1000である。また、化合物(a)の分子量が小さいほど加熱乾燥過程で化合物(a)を塗膜表層に偏析させやすく、化合物(a)のモル比を少なくしても十分な親水性を有した塗膜とすることができ、この場合化合物(a)の分子量は200〜500が好ましい。
化学式1で表されるアニオン性化合物(a)の例としては、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸のナトリウムまたはカリウム塩などが挙げられる。
化学式2で表される化合物(a)の例としては、メタリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸のナトリウムまたはカリウム塩、アルキルスルホコハク酸アルケニルエーテル塩、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸アルケニルエステル塩、グリセロール‐1‐アリル‐3‐アルキルフェニル‐2‐ポリオキシエチレン硫酸塩などが挙げられる。
化合物(a)として、特に好ましいのは(メタ)アクリロイルオキシ基を有した直鎖アルキルスルホン酸及びその塩である2−((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸である。これにより、化合物(b)、化合物(c)と十分な反応性を有し耐久性の高い塗膜とすることができる。
(化合物(b))
本発明の化合物(b)は、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも二つ以上有する化合物である。
化合物(b)のエチレン性不飽和基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましい。
化合物(b)の分子量は、200〜5000が好ましい。また、化合物(b)は複数種類を混合して用いても良い。
化合物(b)として好ましい化合物としては、(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)や、そのウレタン変性物であるウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)、エポキシ変性物であるエポキシ(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)が挙げられる。
(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシー3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリスー(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアククリレート、ジトリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2,2ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、グリセリントリアクリレートエトキシレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレンジメタクリレート、等が挙げられる。
また、エチレン性不飽和基を二つ以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリマー)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、オリゴウレタンアクリレート、カルボン酸含有ウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
また、エチレン性不飽和基を二つ以上有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリマー)としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシアクリレートなどが挙げられる。
この中で、特に水酸基、カルボキシル基、エチレンオキサイド鎖の親水性官能基を有さないものは化合物(a)との相溶性が低く化合物(a)を表面に偏析させる上で有効なため特に好ましい。このような化合物(b)としてはプロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリスー(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアククリレート、ジトリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2,2ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、ネオペンチルグリコールメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、グリセリントリアクリレートエトキシレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレンジメタクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーが挙げられる。
化合物(b)は(メタ)アクリル等のエチレン性不飽和基の官能基当量が200g/eq以下であることが好ましい。これにより耐久性の高い塗膜とすることができる。また、より耐久性の高い塗膜とするためには、好ましくは150g/eq以下であり、更に好ましくは、27g/eq以上150g/eq以下である。ここで官能基当量とは、官能基1個あたりの化合物の分子量をあらわす。本発明では、化合物(b)の分子量をエチレン性不飽和基の数で割った値である。例えば、化合物(b)として、(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)や、そのウレタン変性物であるウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)、エポキシ変性物であるエポキシ(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)の分子量をエチレン性不飽和基である(メタ)アクリロイル基の数で割った値である。このような官能基当量を満たす化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(88g/eq)ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(105g/eq)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(96g/eq)、トリメチロールプロパントリアクリレート(99g/eq)、トリメチロールプロパンテトラアクリレート(117g/eq)、1,3,5−トリス(2,2−ジアクリロイルオキシメチル−3−(2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエトキシ)プロピルヘキシルカルバメート)イソシアヌレート(153g/eq)(新中村化学U15HA)などが挙げられる。
この中でも、塗膜の耐久性を高めるために一分子中の官能基数が6個以上のものが特に好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)、1,3,5−トリス(2,2−ジアクリロイルオキシメチル−3−(2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエトキシ)プロピルヘキシルカルバメート)イソシアヌレート(15官能)がある。
(化合物(c))
本発明の化合物(c)は、化合物(a)よりも分子量が小さく分子内に一つのエチレン性不飽和基と親水性基を有する揮発性の化合物である。ここで、揮発性の化合物とは、沸点が280℃以下、より好ましくは260℃以下の化合物である。
化合物(c)としては、前述の化学式3又は化学式4で表される揮発性の化合物である。式中A’は、水酸基、モルホリノ基、フルフリル基、アミド基のいずれかの親水性基を表す。BはH、CHのいずれかを表す。R’は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素であり、フェニレン基、エステル基、エーテル基のいずれかを含んでいても良い。
化合物(c)として、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びその構造異性体、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びその構造異性体、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、N―ビニルホルムアミド等が挙げられる。
化合物(c)としては、化合物(a)との相溶性の観点からヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(c)の分子量は化合物(a)より小さければ特に限定されないが、500以下が好ましい。また、重合した際の強度を低下させずに揮発性を両立させるためには分子量が100〜200の範囲が好ましい。
化合物(c)は、分子量500以下の低分子量であるため、加熱乾燥する際、揮発させることができる。親水性塗料組成物を基材に塗布した後、溶媒成分とともに化合物(c)を揮発させていくと、化合物(c)を含むことで相溶化していた化合物(a)と化合物(b)の相分離が起こると考えられる。
化合物(c)は、化合物(a)と化合物(b)および化合物(c)の物質量の総和に対する化合物(c)の物質量の比(モル比)が、0.5より大きく0.99未満の範囲である。化合物(c)の物質量の比が0.5より大きいと耐湿効果を十分とすることができ、また、物質量の比が0.99未満であると、化合物(a)と化合物(c)との相溶性が増し、化合物(a)が塗膜表面に偏析することで十分な親水性を得ることができる。また、化合物(c)は0.5より大きく0.8以下の範囲で加えられるとより好ましい。これは、特に、親水性塗料中の化合物(b)に対して化合物(c)の存在比が増えすぎると塗膜の耐久性が低下するためである。
化合物(b)と化合物(c)の好ましい組成比としては、化合物(b)、化合物(c)の物質量比(モル比)として表され、湿度の高い環境で製造可能な化合物(c)/化合物(b)の物質量比としては、1.1以上100以下、さらに、耐久性の高い塗膜とするためには化合物(c)/化合物(b)の物質量比として1.1以上2.5以下の範囲であるのがよい。
(溶媒)
本発明の親水性塗料組成物は、基材への濡れ性向上や塗料の粘度を調整するために溶媒を使用することができる。溶媒としては化合物(a)、化合物(b)、化合物(c)との相溶性の観点から、例えば、メタノール、エタノール、IPA(イソプロパノール)、n―ブタノール等のアルコール類、メトキシエタノール、メトキシプロパノール等のセロソルブ類、アセトン等のケトン類、DMF(N,N’−ジメチルホルムアミド)や水が挙げられるが特にこれに限定されない。また、溶媒は必要に応じて複数種類を混合して用いても良い。
(重合開始剤)
本発明の親水性塗料組成物を重合させる際には、公知のラジカル重合開始剤、硬化触媒、重合促進剤等が親水性を阻害しない範囲で任意に加えられる。
本発明の親水性塗料組成物を放射線、例えば紫外線により共重合させる場合には公知の光重合開始剤が使用される。
好ましい光重合開始剤としては、例えばBASF社が提供するイルガキュアー651、イルガキュアー184、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー127、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1800、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、ダロキュアー1173、ダロキュアーTPO、ダロキュアー4265等が挙げられる。
(任意成分)
その他任意成分として、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤や塗料の意匠性を制御する染料、顔料、艶消し剤などの各種添加剤を塗料の親水性を阻害しない範囲で添加することができる。
(基材)
本発明の親水性塗料組成物を塗布する基材は、湿潤環境下における物理的耐久性が備えられていれば特に限定されない。例えば、アクリル等の樹脂部材には広く適用可能である。また、特に、水回りのような定期的に水に曝露される水回り部材に使用でき、浴室壁材、浴室床材、浴室窓材、浴室扉材、シャワーブース壁材、洗面鏡、洗面台、浴槽やキッチンカウンター及びキッチンシンク等の人工大理石、レンジフード材、便器、便座、温水洗浄便座及びその洗浄ノズル、排水口、水栓金具等に広く使用可能である。基材との密着性に問題がある場合は、プライマー層を設けることや、コロナ処理など公知の基材前処理方法を用いることができる。
(親水性塗膜)
本発明の親水性塗膜は、親水性塗料組成物を用いてなる塗膜である。
(親水性塗膜の製造方法)
本発明の親水性塗料組成物から親水性塗膜を形成する工程は、本発明の親水性塗料組成物を基材に塗布する塗布工程と、化合物(c)を揮発させる加熱乾燥工程と、活性エネルギー線又は熱を与えることにより、化合物(a)、化合物(b)、残存した化合物(c)を共重合させる硬化工程からなる。親水性塗料組成物には、重合開始剤を混合させることが好ましく、任意の希釈剤を混合させても良い。ここで各工程間には、基材をベルトコンベアー等で移動させる移動工程や各工程に移るために生じる待機工程があってもよい。
(塗布工程)
本発明の親水性塗料組成物を基材に塗布する方法は、例えば、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなど公知のものを用いることができる。塗膜の厚さは、十分な親水性と耐磨耗性を有し、かつクラックを発生させず、基材との良好な密着性を発現させるために、0.1μm〜300μmの範囲、好ましくは1〜100μmの範囲、さらに好ましくは1〜20μmの範囲であることが好ましい。
(加熱乾燥工程)
加熱乾燥方法は、赤外線または熱風等により乾燥する公知の方法を用いることができる。加熱温度は、通常、室温〜200℃の範囲、好ましくは35℃〜150℃、さらに好ましくは40℃〜100℃の範囲が好ましい。乾燥時間は、任意に設定できるが、乾燥時間が短すぎると希釈剤等の溶剤や化合物(c)の揮発が十分でなく親水性が十分に発現しない。また、化合物(c)は90wt%まで揮発させてもよい。これは、化合物(c)を揮発させないと親水性の発現が不十分である一方で、化合物(c)が90wt%以上揮発した場合は、塗膜の透明性が低下してしまうためである。また、加熱時間が長すぎると基材が熱可塑性樹脂などの場合、基材の変形等が発生する。さらに、量産性も低下するため好ましい乾燥時間としては10分以内、より好ましくは5分以内がよい。
(硬化工程)
基材に塗布された塗膜を硬化させる手段としては、熱硬化、活性エネルギー線硬化、またはその組み合わせ等エチレン性不飽和基を含んだ化合物を重合させる公知の方法を使用することができる。熱硬化により重合硬化を行なう場合は、重合開始剤が用いられる。加熱は乾燥工程と同様に赤外線または熱風等により加熱する公知の方法を用いることができる。なお、熱硬化の場合は、加熱乾燥工程と硬化工程とを一つの工程で同時に行うことができる。
また、活性エネルギー線硬化の場合、放射線としては、400〜800nmの可視光、400nm以下の紫外線及び電子線が挙げられるが、簡便、短時間に重合を行なうことができる紫外線硬化が好ましい。紫外線により硬化を行なう場合は、公知の光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤は、親水性塗料組成物中に含有される重合性化合物の質量の0.01〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の範囲で添加される。紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、紫外線レーザー、太陽光等の紫外線が挙げられる。照射雰囲気は大気中でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
(環境湿度)
本発明の親水性塗料組成物は、塗布工程、移動工程や待機工程において、特に相対湿度が高い環境(例えば、RH80%)でも十分な親水性を保ったまま塗膜を製造することができるので、大気中の雰囲気で塗膜を製造する場合においても環境湿度は特に調整される必要が無い。
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
化学式1で表される化合物(a)として、3−スルホニルプロピルアクリレートカリウム塩(以後SPA−Kと略す。)0.08g(0.34mmol)を0.5gの水に溶解させた後、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(b)としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製NKエステルA−DPH)7g(12mmol)と、化合物(c)としてヒドロキシメチルメタアクリレート(HEMA)を2.4g(18mmol)、光重合開始剤としてイルガキュアー500(BASF社製)0.14gと、溶媒としてメトキシエタノール15gを加えた溶液をスターラーで60分攪拌することによって実施例1の親水性塗料組成物を調合した。
得られた親水性塗料組成物は、厚さ2mmのアクリル板の表面にバーコーター#2で塗布した。親水性塗料組成物を塗布したアクリル板は、製造環境湿度を調整するために恒温恒室槽(AmeFrec社製NO DOOR α)を用いて27℃で相対湿度がRH40%及びRH80%の環境下でそれぞれ2分間静置した後、熱風乾燥炉(YAMATO科学社製DKN402)により温度70℃、乾燥時間10分の条件で化合物(c)と溶媒を揮発させた。
熱風乾燥炉から取り出した後、積算光量1000mJ/cm2の紫外線を照射(パナソニック電工製ANUP4154)して、厚さが約5μmの塗膜を形成させた。製膜した塗膜は後述する各評価試験を実施した。
(実施例2〜11)
実施例2〜11は、表1に示すような配合比とした以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(実施例12、実施例19〜22)
実施例12、実施例19〜22は、化合物(a)を3−スルホニルプロピルメタクリレートカリウム塩(SPMA−K)とし、表1に示すような配合とした以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(実施例13)
実施例13は、化合物(b)をU−15HAに変更し、基材を厚さ190μmのPPフィルムに変更し、更に表1に示すような配合とした以外は実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(実施例14)
実施例14は、化合物(c)をヒドロキシエチルアクリレート(HEA)とし、表1に示すような配合とした以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(実施例15)
実施例15は、溶媒としてメタノールを用いた以外は実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(実施例16)
実施例16は、溶媒としてアセトンを用いた以外は実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(実施例17)
基材として、幅1.5mmの凹部に14mm×14mm×1mmの凸部とを有した軟質オレフィンシート100mm×100mm上に、熱硬化性アクリル系プライマーを塗布して、加熱重合した基材を用意した。次に、実施例1の親水性塗料組成物に、粒径中央値6〜7μmのポリカーボネート粒子をトルエンに溶解させた艶調整剤を4g加え、スターラーで攪拌させることにより艶消し意匠を付与した浴室床用塗料を調合した。この浴室用床用塗料をスプレーガン(明治機械製作所FinerII)で製膜後の膜厚が6〜7μm程度になるように浴室用床に塗布した後、実施例1と同様に、恒温恒室槽内で27℃の気温でRH40%、RH80%の各環境湿度条件で2分静置した後に、乾燥、紫外線照射を行って製膜した。
(実施例18)
実施例12の親水性塗料組成物を用いたこと以外は実施例17と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(比較例1、7)
比較例1及び7は、化合物(c)を加えないで、表1に示すような配合とした以外は実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(比較例2〜6、比較例8)
比較例2〜6及び比較例8は、表1に示すような配合とした以外は実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(比較例9)
比較例9は、WO2007/064003号公報の実施例67を、環境湿度RH80%の条件のみで静置させた以外は実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(比較例10)
比較例10は、化合物(c)を加えず、表1に示すような配合とした以外は、実施例1と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
(比較例11)
比較例1の親水性塗料組成物を用いたこと以外は実施例17と同様に塗膜を形成し、各評価試験を実施した。
実施例及び比較例で使用した化合物(a)、化合物(b)及び化合物(c)の各構造を化5〜化10に示す。
(実施例1〜11、実施例13〜18における化合物(a))
(実施例12、実施例19〜22、比較例10における化合物(a))
(実施例1〜12、実施例14〜22、比較例1〜8、比較例10〜11における化合物(b))
(実施例13における化合物(b))
(比較例9における化合物(b)
(実施例1〜13、実施例15〜22、比較例1〜8、比較例10〜11における化合物(c))
(実施例14、比較例9における化合物(c))
各評価試験を以下の方法で行った。
(水接触角の測定)
水に対する静的接触角は、FACE接触角計CA−X150(協和界面科学製)を用いて、室温2μLの水滴を滴下後20秒後の静的接触角をθ/2法で測定した。測定は、製膜後に蒸留水で塗膜を水洗いし乾燥させた後と後述する耐薬品性試験のあとにそれぞれ3点測定し平均値を記載した。
(防汚性(セルフクリーニング)試験)
オレイン酸にカーボンブラック(三菱化学社製MA100)を1wt%となるように加えた疎水性の擬似汚物を作成し、この擬似汚物約2mlを試験体の上に滴下後、水道水で洗い流した後に目視で汚染状態を以下の要領で判定した。
○:試験体表面に汚染物質の付着がほとんどなくなっていた場合
△:僅かに付着して残っていた場合
×:明らかに付着して残っていた場合
(防曇性試験)
防曇性試験は、超音波式加湿器の湯気に対し、製膜した表面を垂直にあて、5秒間外観を観察し、目視にて以下の要領で判定した。
○:曇りが発生しない
×:曇りが発生する
(ヘイズ測定)
BYK社製ヘイズガードプラスを用いて塗膜の透過率(%)を3回測定し、その平均値を記載した。
表1に実施例1〜14、実施例19〜22、比較例1〜10の組成比及び評価試験結果を示す。また、図1に実施例1、実施例2、比較例1〜3の製造湿度ごとの水接触角の値の変化を示す。
表1及び図1をみると、製造環境の相対湿度がRH40%時は化合物(c)のモル分率が0.99を超える比較例4〜6以外は、いずれの塗膜も水接触角30°程度の良好な親水性と防汚、防曇性を示した。しかしながら、製造環境の相対湿度が上昇しRH80%になると比較例の組成である化合物(c)のモル分率が0.5以下の組成と0.99を越える組成では、親水性が低下し水接触角が40°以上となり、防汚性、防曇性も低下した。
図2に実施例1〜14、実施例19〜22、比較例1〜9の製造湿度RH80%における水接触角の値をプロットした結果を示す。
一方で、化合物(c)の化合物(a)と化合物(b)に対するモル比が0.5から0.99までの範囲で配合された本発明の実施例では、製造環境の相対湿度がRH80%においても水接触角が30°以下の良好な親水性を示し、防汚性、防曇性も備えていた。
また、表1や化5〜10に示している通り、化合物(a)〜化合物(c)の構造を変更しても製造環境の相対湿度RH80%において十分に親水化しており、防汚、防曇性も備えていることが分かった。
(耐アルカリ性試験)
実施例1〜14、実施例19〜22において以下の耐薬品性試験を行なった。
5wt%水酸化ナトリウム水溶液に48時間浸漬させた後に流水で十分にすすぎ洗いを行った。乾燥後に塗膜の水接触角、防汚性試験、防曇性試験をそれぞれ実施し性能の劣化を評価した。
表2に耐アルカリ性試験の結果を示す。また、図3、4に耐アルカリ性試験後に測定した水接触角の値を示す。
実施例の組成中、化合物(c)のモル比が0.5より大きく0.8以下の範囲の実施例1、3、実施例12〜14、実施例19〜22においては、耐アルカリ性試験後も水接触角が25°以下の親水性を維持した。上記の範囲をはずれると耐アルカリ性が著しく低下してしまうので、高い耐アルカリ性が要求される水回り分野等へ適用させるには化合物(c)のモル比が0.5より大きく0.8以下の範囲内が特に好ましい。化合物(c)と化合物(b)のモル比は1〜2.5の範囲であることが好ましい。
(各溶媒における評価試験)
表3に各希釈溶媒での評価結果を示す。溶媒として、メトキシエタノール、メタノール及びアセトンを用い、各評価試験を行った。
溶媒の相対蒸発速度は酢酸n−ブチルの蒸発速度を1としたときの各溶媒の相対的な蒸発速度を示しており文献値(塗膜の流動と塗膜形成pp107−pp109,中道敏彦,技報堂出版株式会社)を記載した。
表3より、いずれの溶媒においても製造時の相対湿度がRH80%において高い親水性、防汚性、防曇性を示すことが確認された。一方で、溶媒のなかでもアセトンのように相対蒸発速度が速い溶媒ほど水接触角、ヘイズともに低い値となり、透明で親水な塗膜となることが分かった。通常、親水成分であるアニオン性親水性基を表面偏析させる際に、相対蒸発速度の高い溶媒を用いると、溶媒の蒸発により塗膜表面の熱が奪われることにより塗膜表面温度が環境温度と比較して低くなってしまい、環境中の水が凝結するブラッシングを促進してしまうが、本発明の化合物(c)を加えた実施例では、相対蒸発速度が高い溶媒を使用しても高い透明性と親水性を維持した塗膜を形成することができる。
(浴室用床への適用時の評価試験)
次に、本発明の親水性塗料組成物を塗布する基材として、浴室用の床への塗布を行なった例を示す。
実施例17、18及び比較例11にて作成したものを浴室用床への適用した時として評価試験の結果を示す。評価試験としては、水接触角、防汚性試験及び水はけ試験を行なって評価した。なお、浴室用床での水接触角の測定は、凹凸を有したオレフィンシートの凸部に水滴を滴下して測定することによって行なった。ここで、水接触角が20°を下回る場合、凸部に滴下した水滴が、凹部へと流れてしまい定量が困難となるため、当該基材での定量限界を20°として評価を行なった。
(水はけ性試験)
図5(1)に示すように、製膜した浴室用床の四方をキムタオル(登録商標)で覆い、約25mlの水道水を浴室用床全体に行き渡るようにかけ流した(図5(2))。水道水をかけ流した後の浴室用床の水はけ性を以下の要領で評価した。
○:かけ流した水が速やかに均一に排水される(図5(1))
△:かけ流した水の一部が床上に残るが、最終的に排水される(図5(2)→(1))
×:かけ流した水の一部が床上に残って排水されない。(図5(3))
表4に実施例17、18及び比較例11の評価結果を示す。
表4の通り、実施例17、18の浴室用床は、十分な親水性を備え、防汚性、水はけ性も良好であるが、比較例11の浴室用床は、水接触角が高いことから水はけ性能が十分でなく、防汚性も低かった。特に、凹部にたまった擬似汚れが水では取り除けなかった。

Claims (12)

  1. 分子内に少なくとも一つのアニオン性親水性基と少なくとも一つのエチレン性不飽和基とを有し、以下の化学式1で表される化合物(a)と、
    分子内にエチレン性不飽和基を二つ以上有する化合物(b)と、
    前記化合物(a)よりも分子量が小さく分子内に一つのエチレン性不飽和基と親水性基とを有する揮発性の化合物(c)と、を含有しており、
    前記化合物(a)、前記化合物(b)及び前記化合物(c)の物質量の総和に対する化合物(c)の物質量の比が0.5より大きく0.99未満であることを特徴とする親水性塗料組成物。

    (式中Aはアニオン性親水性基であり−COO、−PO 2−、−HPO 、−SO のいずれかを表す。BはH、CHのいずれかを表す。Rは炭素数2〜4の脂肪族炭化水素基を表し、なお且つフェニレン基、脂肪族環状基、エーテル基、またはエステル基のいずれかを含んでいても良い。Mは水素イオン、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンのいずれかを表す。)
  2. 前記化学式1において、Rは炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基を表すことを特徴とする請求項1に記載の親水性塗料組成物。
  3. 前記化合物(a)、前記化合物(b)及び前記化合物(c)が有するエチレン性不飽和基は、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の親水性塗料組成物。
  4. 前記化合物(a)のアニオン性親水性基はスルホン酸またはその塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物。
  5. 前記化合物(c)は、以下の化学式3または化学式4で表されることを特徴とする請求項1から4のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物。


    (式中A’は、水酸基、モルホリノ基、フルフリル基、アミド基のいずれかの親水性基を表す。BはH、CH3のいずれかを表す。R’は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素であり、フェニレン基、エステル基、エーテル基のいずれかを含んでいても良い。)
  6. 前記化合物(a)、前記化合物(b)及び前記化合物(c)の物質量の総和に対する化合物(a)の物質量の比が0.3/21.2以下である、請求項1から5のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物。
  7. 前記化合物(b)は水酸基、カルボキシル基又はエチレンオキサイド鎖を含まないことを特徴とする請求項1から6のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物。
  8. 前記化合物(b)は、水酸基を含まないことを特徴とする請求項1から7のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物。
  9. 前記化合物(b)のエチレン性不飽和基の官能基当量(g/eq)が、200g/eq以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかひとつに記載の親水性塗料組成物を用いてなる親水性塗膜。
  11. 表材の表面に請求項10に記載の親水性塗膜が形成された水回り物品。
  12. 請求項1から9のいずれか1項に記載の親水性塗料組成物を基材に塗布する塗布工程と、
    前記化合物(c)の少なくとも一部を揮発させる加熱乾燥工程と、
    前記化合物(a)、前記化合物(b)及び残存した化合物(c)を活性エネルギー線又は熱を与えることにより共重合させる硬化工程からなることを特徴とする親水性塗膜の製造方法。
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