〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。インクジェット式記録ヘッドは液体噴射ヘッドの一例であり、単に記録ヘッドとも言う。
まず、本実施形態に係る記録ヘッドに設けられるヘッドチップの一例について説明する。図1は本実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図であり、図2はヘッドチップの平面図であり、図3はヘッドチップの断面図である。
図示するように、ヘッドチップ2は、ヘッド本体11、ヘッド本体11の一方面側に固定されたケース部材40等の複数の部材を備える。また、ヘッド本体11は、流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面側に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたノズルプレート20と、流路形成基板10の連通板15とは反対側に設けられた保護基板30と、連通板15のノズルプレート20が設けられた面側に設けられたコンプライアンス基板45とを具備する。
ヘッド本体11を構成する流路形成基板10は、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。この流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル21が並設される方向に沿って並設されている。
以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力発生室12の列が複数列設された方向を、以降、第2の方向Yと称する。さらに、第1の方向X及び第2の方向Yに直交する方向を、インク滴(液滴)の吐出方向、又は第3の方向Zと称する。ちなみに、流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20は、第3の方向Zに積層されている。
また、流路形成基板10には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部側に、当該圧力発生室12よりも開口面積が狭く、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
また、流路形成基板10の一方面側には、連通板15と、ノズルプレート20とが順次積層されている。すなわち、流路形成基板10の一方面に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたノズル21を有するノズルプレート20とを具備する。
連通板15には、圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このように連通板15を設けることによってノズルプレート20のノズル21と圧力発生室12とを離せるため、圧力発生室12の中にあるインクは、ノズル21付近のインクで生じるインク中の水分の蒸発による増粘の影響を受け難くなる。また、ノズルプレート20は圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16の開口を覆うだけでよいので、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、コストの削減を図ることができる。なお、本実施形態では、ノズルプレート20のノズル21が開口されて、インク滴が吐出される面を液体噴射面20aと称する。
また、連通板15には、マニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18と、が設けられている。
第1マニホールド部17は、連通板15を厚さ方向(連通板15と流路形成基板10との積層方向(第3の方向Z))に貫通して設けられている。第2マニホールド部18は、連通板15を厚さ方向に貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。
さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。すなわち、本実施形態では、ノズル21と第2マニホールド部18と連通する個別流路として、供給連通路19と、圧力発生室12と、ノズル連通路16と、が設けられている。
このような連通板15としては、ステンレス鋼やニッケル(Ni)などの金属、またはジルコニウム(Zr)などのセラミックス等を用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料が好ましい。すなわち、連通板15として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱や冷却されることで、流路形成基板10と連通板15との線膨張係数の違いにより反りが生じてしまう。本実施形態では、連通板15として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることで、熱による反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
ノズルプレート20には、各圧力発生室12とノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。具体的には、ノズル21は、同じ種類の液体(インク)を噴射するものが第1の方向Xに並設され、この第1の方向Xに並設されたノズル21の列が第2の方向Yに2列形成されている。
なお、ノズル21の列(ノズル群)は、第1の方向Xに直線状に並設されたものに限定されず、例えば、第1の方向Xに並んだノズル21が交互に第2の方向Yにずれた位置に配置されたもの、いわゆる千鳥状に配置されたもので構成されていてもよい。また、ノズル群は、第1の方向Xに並んだノズル21が複数個毎に第2の方向Yにずれて配置されたもので構成されていてもよい。すなわち、ノズル群は、液体噴射面20aに設けられた複数のノズル21で構成されたものであればよく、その配置は特に限定されるものではない。
ただし、一般的にノズル21を高密度に複数配置(多ノズル化)しようとすると、ノズル21を並設した方向(第1の方向X)に長尺化してしまう。つまり、ヘッドチップ2において、第1の方向Xが長手方向となり、第2の方向Yが短手方向となるのが常である。
このようなノズルプレート20としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等を用いることができる。なお、ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いることで、ノズルプレート20と連通板15との線膨張係数を同等として、加熱や冷却されることによる反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
そして、ノズル21に対応して圧力発生室12を配置すると共に、圧力発生室12に対応してインクに圧力変化を生じさせる圧力発生手段を設けるため、第1の方向Xに複数の圧力発生室12及び複数の圧力発生手段である圧電アクチュエーター130が並設されることになる。詳しくは後述するが、複数の高い密度で形成された圧電アクチュエーター130に電気信号を供給する配線部材121は、基板上の圧電アクチュエーター130の並設方向、すなわち、第1の方向X(長手方向)のスペースを生かして圧電アクチュエーター130に接続される。したがって、配線部材121の幅は、圧電アクチュエーター130の並設方向に沿って配置されることになる。つまり、シート状の配線部材121の幅方向を圧電アクチュエーター130の並設方向とすることで、圧電アクチュエーター130を高密度に多数配置しても、圧電アクチュエーター130と配線部材121との接続を良好に行うことができる。
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けるようにした。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(ノズルプレート20が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって画成されている。
また、振動板50の絶縁体膜52上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて圧電アクチュエーター130を構成している。ここで、圧電アクチュエーター130は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電アクチュエーター130の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター130の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター130の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、第1電極60が、複数の圧力発生室12に亘って連続して設けられているため、第1電極60が振動板の一部として機能するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、上述の弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター130自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。つまり、本実施形態では、基板(流路形成基板10)上に振動板50を介して第1電極60を設けた構成を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、振動板50を設けずに第1電極60を直接基板上に設けるようにしてもよい。すなわち、第1電極60が振動板として作用するようにしてもよい。つまり、基板上とは、基板の直上も、間に他の部材が介在した状態(上方)も含むものである。
さらに、このような圧電アクチュエーター130の個別電極である各第2電極80には、供給連通路19とは反対側の端部近傍から引き出され、振動板50上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90の一端部がそれぞれ接続されている。また、リード電極90の他端部には、後述する圧力発生手段である圧電アクチュエーター130を駆動するための駆動回路120が設けられた配線部材121が接続されている。配線部材121は、可撓性(フレキシブル)なシート状のもの、例えば、COF基板等を用いることができる。なお、配線部材121には、駆動回路120を設けなくてもよい。つまり、配線部材121は、COF基板に限定されず、FFC、FPC等であってもよい。
なお、リード電極90の配線部材121に接続される他端部は、第1の方向Xに並設されて設けられている。ちなみに、リード電極90の他端部を、流路形成基板10の第1の方向Xの一端部側まで延設し、リード電極90の他端部を第2の方向Yに並設することも考えられるが、リード電極90を引き回すスペースが必要になって記録ヘッドが大型化して高コストになってしまう。また、圧電アクチュエーター130を高い密度で、且つ多数設けて多ノズル化を行うと、リード電極90の幅が狭くなり、電気抵抗が高くなる。このため、リード電極90を引き回すことで、さらに電気抵抗が高くなって圧電アクチュエーター130を正常に駆動できなくなってしまう虞がある。本実施形態では、リード電極90の他端部側を、第1の方向Xに並設された圧電アクチュエーター130の2列の間に延設し、リード電極90の他端部を第1の方向Xに並設することで、記録ヘッド1が大型化することなく小型化及び低コスト化を図ることができると共に、リード電極90の電気抵抗が高くなるのを抑制して圧電アクチュエーター130を高い密度で且つ多数設けた多ノズル化を行うことができる。
また、本実施形態では、第2の方向Yにおいて、圧電アクチュエーター130の列の間にリード電極90の他端部を設けて、圧電アクチュエーター130の列の間でリード電極90と配線部材121とを接続するようにしたため、1つの配線部材121が2列の圧電アクチュエーター130にリード電極90を介して接続されている。もちろん、配線部材121の数はこれに限定されず、圧電アクチュエーター130の列毎に配線部材121を設けるようにしてもよい。本実施形態のように、2つの圧電アクチュエーター130の列に1つの配線部材121を設けることで、配線部材121とリード電極90とを接続するスペースを小さくすることができ、記録ヘッド1の小型化を図ることができる。ちなみに、圧電アクチュエーター130の列ごとに配線部材121を設ける場合、リード電極90を圧電アクチュエーター130の列とは反対側に延設することも考えられるものの、このような構成では、リード電極と配線部材とを接続するスペースが余計に必要になると共にケース部材等に配線部材121を引き出す領域も2箇所となるため、記録ヘッド1が大型化してしまう。つまり、本実施形態のように、リード電極90を2つの圧電アクチュエーター130の列の間に設けることで、1つの配線部材121で2列の圧電アクチュエーター130に同時に接続することが可能である。このようにリード電極90に接続されるシート状の配線部材121は、その幅方向が第1の方向Xに沿って配置されることになる。
また、流路形成基板10の圧力発生手段である圧電アクチュエーター130側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター130を保護するための空間である保持部31を有する。保持部31は、第1の方向Xに並設された圧電アクチュエーター130で構成される列毎に独立して設けられており、2つの保持部31の間(第2の方向Y)には、厚さ方向に貫通した貫通孔32が設けられている。リード電極90の他端部は、この貫通孔32内に露出するように延設され、リード電極90と配線部材121とが貫通孔32内で電気的に接続されている。
また、このような構成のヘッド本体11には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド100をヘッド本体11と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、ケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40とヘッド本体11とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40とヘッド本体11とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。すなわち、マニホールド100は、第1マニホールド部17、第2マニホールド部18及び第3マニホールド部42を具備する。また、本実施形態のマニホールド100は、第2の方向Yにおいて、2列の圧力発生室12の両外側に配置されており、2列の圧力発生室12の両外側に設けられた2つのマニホールド100は、ヘッドチップ2内では連通しないようにそれぞれ独立して設けられている。すなわち、本実施形態の圧力発生室12の列(第1の方向Xに並設された列)毎に1つのマニホールド100が連通して設けられている。言い換えると、ノズル21群毎にマニホールド100が設けられている。もちろん、2つのマニホールド100は、連通していてもよい。
また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための連結部の一例である導入口44が設けられている。連結部は、ヘッドチップに供給されるインクの入口又はヘッドチップで使用されなかったインクの出口となる部分である。本実施形態では、インクはヘッドチップ2に供給されるのみであり、ヘッドチップ2から循環してインクが排出されないので、ヘッドチップ2には連結部として導入口44のみが形成されている。
ケース部材40の上面はほぼ平坦に形成され、当該上面に導入口44が開口している。すなわち、ケース部材40には、導入口44よりも下流流路部材220側に突出している部分がない。詳細は後述するが、ケース部材40をこのような構成とすることで、ヘッドチップ2を収容部226に固定する作業を行い易くすることができる。
また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線部材121が挿通される接続口43が設けられている。そして、配線部材121の他端部は、貫通孔32及び接続口43の貫通方向、すなわち、第3の方向Zであって、インク滴の吐出方向とは反対側に延設されている。
なお、このようなケース部材40の材料としては、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。ちなみに、ケース部材40として、樹脂材料を成形することにより、低コストで量産することができる。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45は、平面視において上述した連通板15と略同じ大きさを有し、ノズルプレート20を露出する第1露出開口部45aが設けられている。そして、このコンプライアンス基板45が第1露出開口部45aによってノズルプレート20を露出した状態で、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。
すなわち、コンプライアンス基板45がマニホールド100の一部を画成している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、封止膜46と、固定基板47と、を具備する。封止膜46は、可撓性を有するフィルム状の薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等により形成された厚さが20μm以下の薄膜)からなり、固定基板47は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質の材料で形成される。この固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。本実施形態では、1つのマニホールド100に対応して1つのコンプライアンス部49が設けられている。すなわち、本実施形態では、マニホールド100が2つ設けられているため、ノズルプレート20を挟んで第2の方向Yの両側に2つのコンプライアンス部49が設けられている。
このような構成のヘッドチップでは、インクを噴射する際に、導入口44を介してインクを取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動回路120からの信号に従い、圧力発生室12に対応する各圧電アクチュエーター130に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター130と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力発生室12内の圧力が高まり所定のノズル21からインク滴が噴射される。
このようなヘッドチップ2を有する本実施形態の記録ヘッド1について詳細に説明する。図4は本実施形態に係る記録ヘッドの分解斜視図であり、図5は記録ヘッドの断面図であり、図6は要部を拡大した断面図であり、図7は下流流路部材の配線基板側の上面図である。
図4〜図6に示すように、記録ヘッド1は、ノズルからインク(液体)をインク滴(液滴)として吐出する2つのヘッドチップ2と、2つのヘッドチップ2を保持すると共にヘッドチップ2にインク(液体)を供給する流路部材200と、流路部材200に保持された配線基板300と、ヘッドチップ2の液体噴射面20a側に設けられた固定部材の一例であるカバーヘッド400とを具備する。
流路部材200は、第1流路部材の一例である上流流路部材210と、第2流路部材の一例である下流流路部材220と、上流流路部材210と下流流路部材220との間に配置されるシール部材230とを具備する。
上流流路部材210は、インクの流路となる第1流路の一例である上流流路500を有している。本実施形態では、上流流路部材210は、第1上流流路部材211と、第2上流流路部材212と、第3上流流路部材213とがインク滴を吐出する方向である第3の方向Zに積層されて構成されている。そして、これらの各部材には、第1上流流路501、第2上流流路502、第3上流流路503が設けられ、これらが連結することで上流流路500が構成されている。
なお、上流流路部材210はこのような態様に限定されるものではなく、単一の部材であっても、2以上の複数の部材で構成されていてもよい。また、上流流路部材210を構成する複数の部材の積層方向も特に限定されず、第1の方向X、第2の方向Yであってもよい。
第1上流流路部材211は、下流流路部材220とは反対面側に、インク(液体)が保持されたインクタンクやインクカートリッジなどの液体保持手段に接続される接続部214を有する。本実施形態では、接続部214として針状に突出したものとした。なお、接続部214には、インクカートリッジなどの液体保持部が直接接続されてもよく、また、インクタンクなどの液体保持部がチューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。このような接続部214の内部には、液体保持部からのインクが供給される第1上流流路501が設けられている。また、第1上流流路部材211の接続部214の周囲には、液体保持部を位置決めするためのガイド壁215が設けられている。なお、第1上流流路501は、後述する第2上流流路502の位置に応じて、第3の方向Zに延びる流路や、第3の方向Zに直交する方向、すなわち第1の方向X及び第2の方向Yを含む面内に延びる流路等で構成されている。
第2上流流路部材212は、第1上流流路部材211の接続部214とは反対面側に固定されて、第1上流流路501に連通する第2上流流路502を有する。また、第2上流流路502の下流側(第3上流流路部材213側)には、第1上流流路501よりも内径が広く拡幅された第1液体溜まり部502aが設けられている。
第3上流流路部材213は、第2上流流路部材212の第1上流流路部材211とは反対側に設けられている。また、第3上流流路部材213には、第3上流流路503が設けられている。第3上流流路503の第2上流流路502側の開口部分は、第1液体溜まり部502aに応じて拡幅された第2液体溜まり部503aとなっており、第2液体溜まり部503aの開口部分(第1液体溜まり部502aと第2液体溜まり部503aとの間)には、インクに含まれる気泡や異物を除去するためのフィルター216が設けられている。これにより、第2上流流路502(第1液体溜まり部502a)から供給されたインクは、フィルター216を介して第3上流流路503(第2液体溜まり部503a)に供給される。
また、第3上流流路部材213の下流流路部材220側には、下流流路部材220側に向かって突出する第1突起部217が設けられている。第1突起部217は、第3上流流路503毎に設けられており、第1突起部217の先端面に排出口504が開口して設けられている。
このような上流流路500が設けられた第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213は、例えば、接着剤や、溶着等によって一体的に積層されている。なお、第1上流流路部材211、第2上流流路部材212及び第3上流流路部材213をネジやクランプ等で固定することもできるが、第1上流流路501から第3上流流路503に至るまでの接続部分からインク(液体)が漏出するのを抑制するためにも、接着剤や溶着等で接合するのが好ましい。
なお、本実施形態では、1つの上流流路部材210に4つの接続部214を設け、1つの上流流路部材210には4つの独立した上流流路500が設けられている。そして、各上流流路500に対応して合計4個の導入口44が設けられている。ちなみに、本実施形態では、一つの上流流路500からヘッドチップ2の一つの導入口44に接続されるが、このような態様に限定されない。例えば、上流流路500が途中で2以上に分岐し、分岐した流路がヘッドチップ2の導入口44に接続されてもよい。
下流流路部材220は、上流流路部材210に接合され、ヘッドチップ2が収容される収容部226を有する部材である。下流流路部材220の上流流路部材210側を上面側、上流流路部材210とは反対側を下面側と称する。なお、下流流路部材220が上流流路部材210に接合されるとは、上流流路部材210と下流流路部材220とが直接的に接触することの他に、上流流路部材210と下流流路部材220との間に他の部品が介在し、間接的に組み付けられる場合も含む。
下流流路部材220には、下面側、すなわち液体噴射面20a側に開口してヘッドチップ2が収容される凹部として収容部226が形成されている。本実施形態に係る収容部226は、2つのヘッドチップを収容可能であり、また、収容部226の深さ(第3の方向Zの深さ)は、ヘッドチップ2の高さよりも若干深くしてある。
また、下流流路部材220は、インクの流路となる第2流路の一例である下流流路600を有する。本実施形態に係る下流流路部材220は、第1下流流路部材222と、第2下流流路部材223とから構成され、これらの部材から下流流路600が形成されている。下流流路600としては、形状の異なる2種の下流流路600A及び下流流路600Bが構成されている。
第1下流流路部材222には、第1流路601が形成され、第1下流流路部材222と第2下流流路部材223との間に第2流路602が形成されている。また、第2下流流路部材223には第3流路603が形成されている。
下流流路600A及び下流流路600Bの双方に共通した構成として、下流流路部材220(第1下流流路部材222及び第2下流流路部材223のそれぞれ)には、上流流路部材210側に突出する第2突起部221が設けられている。第2突起部221は、上流流路500毎、すなわち、第1突起部217毎にそれぞれ設けられている。また、下流流路600の一端は第2突起部221の先端面に開口し、他端は上流流路部材210とは第3の方向Zにおいて反対側の面、すなわち、収容部226の底面部に開口して設けられている。
下流流路600Aは、第2下流流路部材223に第3の方向Zに沿って直線状に形成されている。また、下流流路600Bは、上流流路500(排出口504)に接続される第1流路601と、第1流路601に接続された第2流路602と、第2流路602と導入口44とを接続する第3流路603とを具備する。第1流路601及び第3流路603は、第2下流流路部材223の第3の方向Zに沿う貫通孔として形成されている。第2流路602は、第1下流流路部材222の一方面に形成された溝が第2下流流路部材223により封止されることで形成されている。このような第1下流流路部材222と第2下流流路部材223とを接合することで、第2流路602を下流流路部材220内に容易に形成することができる。
また、第2流路602は、第2の方向Yに向かって延設された延設流路の一例である。ここで、第2流路602が第2の方向Yに向かって延設されているとは、第2流路602の延設方向に、第2の方向Yに向かう成分(ベクトル)が存在することをいう。ちなみに、第2流路602の延設方向とは、第2流路602内のインク(液体)が流れる方向のことである。したがって、第2流路602は、水平方向(第3の方向Zに直交する方向)に設けられているものも、第3の方向Z及び水平方向(第1の方向X及び第2の方向Yの面内方向)に交差して設けられているものも含む。本実施形態では、第1流路601及び第3流路603を第3の方向Zに沿って設け、第2流路602を水平方向(第2の方向Y)に沿って設けるようにした。なお、第1流路601と第3流路603とは、第3の方向Zに交差する方向に設けられていてもよい。
もちろん、下流流路600Bは、これに限定されず、第1流路601、第2流路602、第3流路603以外の流路が存在してもよく、また、第1流路601又は第3流路603が設けられていなくてもよい。また、上述した例では、第2流路602のみが延設流路である構成を説明したが、特にこれに限定されず、第2の方向Yに成分を有する複数の流路を延設流路としてもよい。さらに、下流流路600B全体が延設流路となっていてもよい。
下流流路部材220の収容部226には、複数のヘッドチップ2、本実施形態では、2個のヘッドチップ2が収容されている。1つのヘッドチップ2には、ノズル列が第2の方向Yに並んで形成されており(図1、図2参照)、記録ヘッド1には2つのヘッドチップ2が第2の方向Yに並設されて設けられている。以降、ヘッドチップ2の第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zは、記録ヘッド1の第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zとそれぞれ同じ方向を示す。
2つのヘッドチップ2は、それぞれ導入口44が2個設けられている。下流流路部材220に設けられた下流流路600(下流流路600A及び下流流路600B)は、各導入口44の開口する位置に合わせて開口して設けられている。
ヘッドチップ2の各導入口44は、下流流路部材220の収容部226の底面部に開口した下流流路600に連通するように位置合わせされている。ヘッドチップ2は、各導入口44の周囲に設けられた接着剤227により収容部226に固定されている。このようにヘッドチップ2が収容部226に固定されることで、下流流路600と導入口44とが連通し、ヘッドチップ2にインクが供給されるようになっている。
ここで、上述したように、ヘッドチップ2において、各導入口44は他の部分よりも最も下流流路部材220側に位置している。すなわち、ヘッドチップ2の導入口44が収容部226の底面部に接触することを妨げる部位がヘッドチップ2に存在しない。したがって、このような構成のヘッドチップ2によれば、各導入口44を下流流路600に接続させ、ヘッドチップ2を下流流路部材220に接着剤227で固定する作業を行いやすくすることができる。
また、ヘッドチップ2に供給されるインクの導入口44をヘッドチップ2の液体噴射面20aとは反対側の接合面(下流流路部材220側の面)とし、下流流路部材220には、収容部226の底面部に下流流路600が開口した構成となっている。
ここで、組み付け作業は、ヘッドチップ2の導入口44を鉛直方向の上側に向け、収容部226を鉛直方向下側に向けた下流流路部材220をヘッドチップ2に上方から載せ、導入口44と下流流路600の開口との位置合わせをすることにより行う。
このとき、下流流路部材220は、水平方向に力が加わらないため、ヘッドチップ2に位置合わせされた状態を維持することができる。すなわち、これらの下流流路部材220及びヘッドチップ2を組み付ける作業において、導入口44と下流流路600の位置ずれを抑制することができる構成となっている。ちなみに、ヘッドチップ2の接合面が水平面から傾いていると、下流流路部材220はヘッドチップ2に対してずれてしまう虞があるし、そのずれの発生を抑制するための作業や器具が必要となってしまう。
また、下流流路部材220には、第2挿通孔224が設けられている。第2挿通孔224は、下流流路部材220の収容部226及び上流流路部材210側に開口して設けられている。第2挿通孔224は、ヘッドチップ2の接続口43に連通して、配線部材121をヘッドチップ2側から上流流路部材210側に挿通させるためのものである。第2挿通孔224は、ヘッドチップ2の第1の方向Xの幅と略同じ幅の開口で設けられている。
さらに、図4〜図6及び図7(a)に示すように、下流流路部材220に設けられた第2挿通孔224は、配線部材121を保持する工具が挿通可能に形成されている。
配線部材121を保持する工具は、配線部材121を保持することができる工具である。具体的にはピンセットのような配線部材121を挟持する工具などである。詳細は後述するが、工具は、配線部材121がヘッドチップ2から第3の方向Zに沿って起立した状態を保って保持するために用いられる。
上述した工具が第2挿通孔224に挿通可能であるとは、当該工具が配線部材121を保持したまま、配線部材121とともに挿通可能であることをいう。
本実施形態では、第2挿通孔224は、主として配線部材121が挿通する配線部材挿通部224aと、主として工具が挿通する工具挿通部260とから構成されている。配線部材挿通部224a及び工具挿通部260は、何れも下流流路部材220の収容部226及び配線基板300側にそれぞれ開口して第3の方向Zに沿って直線状に形成された貫通孔である。
配線部材挿通部224aは、第1の方向X及び第2の方向Yにおいて配線部材121の幅よりも若干大きく形成されている。また、工具挿通部260は、第1の方向X及び第2の方向Yにおいて後述する工具の幅よりも若干大きく形成されている。
このような配線部材挿通部224a及び工具挿通部260は、平面視で長方形状の開口形状を有しており、それぞれの長辺を共有するように一体的に形成されることで、一つの貫通孔として第2挿通孔224を構成している。
このように第2挿通孔224が工具を挿通可能に形成されていることで、記録ヘッド1の組立時において、予め工具挿通部260に工具を挿通させておくことができる。そして、収容部226側でヘッドチップ2に接続された配線部材121を保持し、配線部材121を工具で保持した状態で、当該工具を下流流路部材220から離すように移動させることで、第2挿通孔224(配線部材挿通部224a)に配線部材121を挿通させることができる。
このように、第3の方向Zに沿って工具を工具挿通部260に挿入し、配線部材121を保持した状態の工具を下流流路部材220から離すように移動させるだけで、第2挿通孔224(配線部材挿通部224a)に配線部材121を挿通させることができ、組み立て作業を容易に行うことができる。
ここで、第2挿通孔224の開口形状を大きくすることで、第2挿通孔224に配線部材121を挿通しやすくすることも考えられる。しかし、第2挿通孔224を単に大きくすると、第1の方向X及び第2の方向Yがなす平面において第2挿通孔224が占める面積が多くなるため、記録ヘッド1の小型化を図りにくくなってしまう。
上述したように、配線部材挿通部224aは配線部材121が挿通するために必要な大きさであり、工具挿通部260はを工具が挿通するために必要な大きさとなっている。このように、配線部材121及び工具のそれぞれの大きさに対応した必要な形状の配線部材挿通部224a及び工具挿通部260が一体的に形成されている。これにより、第2挿通孔224としては、工具を用いて配線部材121を挿通させるために必要十分な大きさとすることができ、記録ヘッド1の小型化を図ることができる。
図7(b)に、第2挿通孔224の別態様を示す。2つの各工具挿通部260は、第2の方向Yにおいて重なるように並設されている。すなわち、工具挿通部260の第2の方向Yにおける幅をそれぞれAとし、2つの工具挿通部260が第2の方向Yに占める幅をBとすると、幅Bは、幅Aを二つ合わせたものよりも短い。
このように工具挿通部260が第2の方向Y(一方向)において重なるように第2挿通孔224を構成することで、第2挿通孔224が第2の方向Yに占める幅を短くすることが可能となり、記録ヘッド1の小型化を図ることができる。
また、下流流路部材220には、後述する配線基板300が載置される支持部240が形成されている。支持部240は、下流流路部材220の上流流路部材210側に突出して設けられ、第2の方向Yにおいて第2挿通孔224を挟んで2つ配置されている。また、下流流路部材220には、上流流路部材210に突出し、上流流路部材210側の面における外周を囲う側壁部241が形成されている。各支持部240は、側壁部241の対向する2辺を接続するように設けられている。これにより、支持部240及び側壁部241により、第2挿通孔224を囲う空間Aが形成されている。支持部240に配線基板300が載置され、さらに配線基板300上にシール部材230が配置されることで当該空間Aは封止されている。
このような上流流路部材210と下流流路部材220との間には、上流流路500と下流流路600とを接続する(継ぐ)、継手であるシール部材230が設けられている。シール部材230の材料としては、記録ヘッド1に用いられるインク等の液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料(弾性材料)、例えば、ゴムやエラストマー等を用いることができる。
シール部材230は、板状のベース部235を備え、該ベース部235に連通路232及び第3突起部231が形成されたものである。本実施形態では、連通路232及び第3突起部231は、各上流流路500及び下流流路600に対応して4つ形成されている。
ベース部235の上流流路部材210側には、第1突起部217が挿入される環状の第1凹部233が設けられている。第1凹部233は、第3突起部231に対向する位置に設けられている。
第3突起部231は、下流流路部材220側に突出しており、下流流路部材220の第2突起部221に対向する位置に設けられている。第3突起部231の頂面(下流流路部材220に対向する面)には、第2突起部221が挿入される第2凹部234が設けられている。
連通路232は、ベース部235の厚さ方向(第3の方向Z)に貫通し、一端が第1凹部233に開口し、他端が第2凹部234に開口している。そして、第1凹部233に挿入された第1突起部217の先端面と、第2凹部234に挿入された第2突起部221の先端面との間で第3突起部231は第3の方向Zに所定の圧力が印加された状態で保持されている。このように上流流路500と連通路232とはシール部材230に第3の方向Zに圧力が印加された状態で接続され、連通路232と下流流路600とはシール部材230に第3の方向Zに圧力が印加された状態で接続される。したがって、上流流路500と下流流路600とは連通路232を介して密封された状態で連通されている。
なお、連通路232の中に第1突起部217や第2突起部221を入れ込んでこれらを連通させる態様も考えられる。すなわち、第3突起部231の連通路232の内面と、第1突起部217及び第2突起部221の少なくとも一方の外周面とを密着させて、つまり、径方向である第1の方向X及び第2の方向Yの面方向に圧力を印加して流路を接続することも考えられる。
この場合、径方向に圧力を印加するためには、記録ヘッド1を構成する各部位が障害となりうる。例えば、連通路232の内面と第2突起部221とに径方向の圧力を印加する場合では、配線部材121などが挿通された第1挿通孔301内で径方向に圧力を印加しなければならず、作業は困難である。
しかしながら、詳細は後述するが、下流流路部材220上に配線基板300を配置し、当該配線基板300上にシール部材230を配置した状態では、シール部材230の第3の方向Zにおける上方には、上流流路部材210はまだ存在していない。よって、シール部材230を第3の方向Zに圧力を印加して、連通路232と下流流路600を連通させる作業を容易に行うことができる。シール部材230上に上流流路部材210を配置して第3の方向Zに圧力を印加することで上流流路500と連通路232を連通させる作業についても同様である。
また、シール部材230には、ベース部235の外周を囲うように形成され、上流流路部材210側に突出した壁部236が形成されている。本実施形態では、略四角形のベース部235に合わせて、壁部236も平面視で四角形となるように形成されている。さらに、ベース部235の上流流路部材210側には、対向する壁部236を連結する梁部237が形成されている。
壁部236や梁部237は、ベース部235をねじる力に対する抵抗となるので、ベース部235のねじれを抑制することができる。このようにシール部材230は、板状のベース部235に壁部236及び梁部237が設けられることで、ベース部235にねじれが生じにくい構成となっている。これにより、シール部材230の取り扱いが容易となり、シール部材230を上流流路部材210及び下流流路部材220との間に配置する作業を行いやすくすることができる。ちなみに、シール部材が環状であり、壁部236や梁部237に相当する部分が設けられていないと、シール部材がねじれてしまい、このシール部材の修正に手間を要してしまう。
また、壁部236は、上流流路部材210及び配線基板300に挟持されている。すなわち、壁部236の上面(上流流路部材210側の面)は上流流路部材210に押圧され、壁部236の下面(配線基板300側の面)は配線基板300に押圧されている。これにより、壁部236の内側である上流流路部材210とベース部235との境界部分が気密に保たれ、流路(上流流路500、連通路232、下流流路600)からインク中の水分が蒸発することが抑制されている。
ここで、上流流路部材210及び配線基板300に挟持される圧力で壁部236が傾斜したり崩壊することで気密が保てなくなることを抑制するために、上流流路部材210には、溝部219が形成されている。
図8は、記録ヘッドの壁部を拡大した断面図である。図8(a)に示すように、第3上流流路部材213には、壁部236がはめ込まれる溝部219が形成されている。
具体的には、第3上流流路部材213は、ベース部235に接触する平坦部213a、平坦部213aよりも外側において該平坦部213aよりも第2上流流路部材212側に窪んだ凹部213b、及び凹部213bよりも外側において平坦部213aよりもシール部材230側に突出した脚部213cを有している。
これらの平坦部213aと脚部213cとの間に凹部213bが形成されることで溝部219が形成されている。この溝部219は、平面視で環状に形成された壁部236に合わせて、第3上流流路部材213のシール部材230側の面に形成されている。また、溝部219の開口部218、すなわち平坦部213aと凹部213bとの境界部分は面取りされている。さらに、脚部213cの配線基板300との対向面においてシール部材230側は面取りされている。
このような溝部219には、壁部236がはめ込まれる。これにより、壁部236は、上流流路部材210及び配線基板300による第3の方向Zの圧力を受けて側方に傾斜したり崩れることが溝部219により規制される。
このように壁部236の傾斜や崩壊が規制されるので、壁部236の上面と第3上流流路部材213との間に隙間ができることを抑制することができ、壁部236の内側の気密を保つことができる。
さらに、第3上流流路部材213には、溝部219の開口部218は面取りされ、脚部213cの配線基板300との対向面においても面取りされている。これにより、配線基板300上に配置されたシール部材230に対して第3上流流路部材213(上流流路部材210)を第3の方向Zの上方から接合する際に、壁部236を溝部219内に誘導することができる。
ここで、第3上流流路部材213の組み付け作業は、配線基板300上にシール部材230を配置し、壁部236が溝部219にはめ込まれるように、該シール部材230上に第3上流流路部材213(上流流路部材210)を配置することにより行う。
このとき、シール部材230は、水平方向に力が加わらないため、シール部材230の各連通路232が下流流路600に位置合わせされた状態を維持することができる。すなわち、これらの第3上流流路部材213及びシール部材230を組み付ける作業において、連通路232と下流流路600の位置ずれを抑制することができる構成となっている。ちなみに、シール部材230の第3上流流路部材213との接合面が水平面から傾いていると、シール部材230が位置ずれしてしまう虞があり、そのずれを抑制するためには、別途シール部材230を保持する作業や器具が必要となってしまう。
このようにシール部材230に壁部236、第3上流流路部材213に溝部219を設けることで、第3上流流路部材213(上流流路部材210)をシール部材230上に配置する作業を行いやすくすることができる。
なお、壁部236の傾斜や崩壊を抑制する構成としては、図8(a)に示した態様に限定されない。例えば、図8(b)のように、第3上流流路部材213には、壁部236の外側に接触する脚部213cを設ける態様であってもよい。当該態様によれば、壁部236が外側(脚部213c側)に傾斜したり崩壊することを脚部213cにより抑制することができる。
また、図8(c)に示すように、第3上流流路部材213には、シール部材230の傾斜や崩壊を抑制するために脚部213cとは別途にリブ213dを設けてもよい。
具体的には、第3上流流路部材213のシール部材230側において脚部213cよりも内側に、配線基板300側に突出したリブ213dを形成する。このリブ213dは、平面視において、環状に形成され、その内側にシール部材230が収容される程度の大きさとなっている。また、リブ213dの内側には、リブ213dに連続したリブ213eが形成されている。リブ213eは、壁部236の上面が当接する部位であり、リブ213dよりも第2上流流路部材212側に窪んでいる。
壁部236は、壁部236の上面がリブ213eに当接し、外側の側面がリブ213dに当接している。
このような態様の第3上流流路部材213であっても、壁部236が外側(脚部213c側)に傾斜したり崩壊することをリブ213dにより抑制することができる。
図4〜図6に示すように、シール部材230と下流流路部材220との間には、配線部材121が接続される配線基板300が設けられている。本実施形態に係る配線基板300の第1挿通孔301は、配線部材121が挿通されるとともに、シール部材230の第3突起部231も挿通される。また、配線基板300には、シール部材230の第3突起部231のみが挿通する貫通孔302が設けられている。
すなわち、本実施形態では、4個の第3突起部231のうちの2個及び配線部材121が挿通する開口部である第1挿通孔301と、残り2個の第3突起部231のそれぞれが挿通する開口部である貫通孔302とが設けられている。
また、第1挿通孔301は、第2挿通孔224と同様に、配線部材121を保持する工具が挿通可能に形成されている。本実施形態の第1挿通孔301は、ほぼ四角形状であり、2つの配線部材121が挿通する大きさであり、かつ配線部材121を保持した工具が挿通可能となっている。また、平面視において、第1挿通孔301内に、下流流路部材220に形成された2つの第2挿通孔224が収まるように配線基板300が配置されている。なお、2つの配線部材121の間には、2つのヘッドチップ2の下流流路600が2個設けられているため、この下流流路600に対応するシール部材230の第3突起部231は、配線部材121と共に第1挿通孔301に挿通される。
また、貫通孔302は、4つのうち2個の下流流路600に対応して設けられた第3突起部231毎に設けられている。
なお、本実施形態では、2つのヘッドチップ2に共通する1つの配線基板300を設けるようにした。もちろん、配線基板300は、これに限定されず、1つのヘッドチップ2毎に分割して設けるようにしてもよい。
なお、本実施形態のように、2つのヘッドチップ2に共通する1枚の配線基板300を用いることで、部品点数を減少させて組立作業を簡略化することができる。
また、配線基板300の1つの開口部である第1挿通孔301に2つの配線部材121と、2つの第3突起部231とを挿通することで、開口部を複数設ける場合に比べて、広い開口面積で第1挿通孔301を設けることができる。これにより、第1挿通孔301から配線部材121を引き出し易くして、組立性を向上することができる。ちなみに、配線部材121は、配線基板300のヘッドチップ2側から上流流路部材210側に引き出して配線部材121と配線基板300とを接続しなくてはならないが、可撓性を有する配線基板300を狭い開口に挿通させるのは困難である。
また、配線基板300の開口部である1つの第1挿通孔301に挿通される配線部材121を第3の方向Zに起立した状態とすると共に、第1挿通孔301に対向する2つの第2突起部221を第3の方向Zに沿って直線状に設けるようにしたため、第1挿通孔301の開口面積をできるだけ小さくすることができる。
また、配線基板300には、上流流路部材210側の面であって、第1挿通孔301の第2の方向Yの両側の開口縁部に、配線部材121が接続される端子部310が設けられている。端子部310は、第1の方向Xに配線部材121の幅と略同じ幅に亘って形成されている。このような端子部310は、第3突起部231が挿通される貫通孔302を超えることなく形成されている。すなわち、端子部310は、第1挿通孔301と貫通孔302との間に設けられている。
そして、配線部材121の他端部は、配線基板300の第1挿通孔301に下流流路部材220側から挿通される。このように第1挿通孔301に挿通された配線部材121の他端部は、配線基板300の表面(上流流路部材210側の表面)において第2の方向Yに沿って屈曲され、配線基板300の上流流路部材210側の表面上で端子部310に接続されている。つまり、配線部材121と配線基板300(端子部310)との接続面は、第1の方向X及び第2の方向Yの面内方向となる。
このように、配線部材121の他端部を屈曲することで、配線部材121を低背化でき、記録ヘッド1の第3の方向Zを小型化することができる。
また、本実施形態では、配線部材121と配線基板300とを配線基板300の上流流路部材210側の表面上で、配線部材121が配線基板300の表面に沿って端子部310と接続されている。つまり、配線部材121と配線基板300の端子部310とは第3の方向Zで重なるように接続されている。
このように、配線部材121と配線基板300の端子部310とを第3の方向Zで重なる位置で接続することで、一方面(上流流路部材210)側から配線部材121と配線基板300との接続を容易に行うことができ、組立性を向上することができる。つまり、ヘッドチップ2を下流流路部材220に固定すると共に配線部材121を第2挿通孔224に挿通し、配線基板300の第1挿通孔301に挿通した後、第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通された配線部材121の端部を配線基板300に接続するようにすれば、容易に組み立てられると共に配線部材121と配線基板300とを容易に接続することができる。ちなみに、例えば、配線基板300の下流流路部材220側の面で配線部材121と配線基板300とを接続するには、先に配線部材121と配線基板300とを接続した後、ヘッドチップ2を下流流路部材220に固定する必要がある。このような工程で組み立てを行う場合、ヘッドチップ2と下流流路部材220とが固定されていない状態でも配線部材121と配線基板300とが接続された状態が維持できるように配線部材121を長くしなければならず、高コストになってしまう。また、ヘッドチップ2と下流流路部材220とを固定した際には、長くした配線部材121に撓みが生じ、配線部材121上の配線が他の部材に接触することにより破損し、断線や短絡等の不具合が生じる虞がある。本実施形態では、配線部材121と配線基板300とを配線基板300の上流流路部材210側の表面上で、配線部材121と配線基板300の端子部310とが第3の方向Zで重なるように接続することで、配線部材121に組み立て後の撓みが生じ難く、且つ配線部材121をヘッドチップ2と配線基板300とを結ぶ最も短い距離(長さ)で設けることができるためコストを低減することができる。
また、下流流路部材220には、配線基板300側にかしめピン228が立設されている。かしめピン228は、加熱により変形可能な樹脂等から形成されており、本実施形態では、下流流路部材220と一体的に6つ形成されている。
一方、配線基板300には、かしめピン228が挿通されるかしめ穴303が6つ形成されている。
かしめピン228は、かしめ穴303を挿通しており、かしめピン228の頂部228aが熱変形により、かしめピン228の開口径よりも大きくなっている。これにより下流流路部材220上に載置された配線基板300は、かしめピン228により下流流路部材220に固定されている。
また、かしめピン228及びかしめ穴303は、配線基板300を所定位置に位置決めするためにも用いられる。ここでいう配線基板300の所定位置とは、下流流路部材220の第2突起部221が配線基板300の第1挿通孔301及び貫通孔302に対向した位置である。つまり、平面視において各第2突起部221が第1挿通孔301及び貫通孔302の内部に現れた位置である。
かしめ穴303にかしめピン228を挿通した状態において配線基板300が上述した所定位置にとなるように、各かしめ穴303及びかしめピン228が形成されている。
したがって、かしめピン228にかしめ穴303を挿入するように配線基板300を移動させれば、上述したような所定位置に配線基板300を配置することができる。このように、かしめピン228及びかしめ穴303は、配線基板300を所定位置に配置するように誘導するので、配線基板300を下流流路部材220に容易に位置決め及び固定させることができる。
また、詳細は後述するが、下流流路部材220上に配線基板300を配置し、かしめ穴303にかしめピン228を挿通した状態では、かしめピン228の第3の方向Zにおける上方には、シール部材230や上流流路部材210はまだ存在していない。よって、かしめピン228の上方からヒートツール等の工具を用いて熱かしめする作業を容易に行うことができる。
なお、配線基板300を下流流路部材220に固定する構成としては、上述したような、かしめピン228及びかしめ穴303に限定されない。接着剤による接着や、ネジなどによる固定であってもよい。他にも、下流流路部材220に爪部を設け、該爪部を配線基板300に係合させることで固定してもよい。
ここで、上述したように、配線基板300には、シール部材230に設けられた第3突起部231が挿通する第1挿通孔301及び貫通孔302が形成されている。
貫通孔302は、シール部材230を所定位置に位置決めするためにも用いられる。ここでいうシール部材230の所定位置とは、第3突起部231が下流流路部材220の第2突起部221に対向したときの位置である。
上述したように、かしめ穴303及びかしめピン228により配線基板300を下流流路部材220に固定した状態において、当該配線基板300の貫通孔302に第3突起部231を挿入するようにシール部材230を移動させれば、上述したような所定位置にシール部材230を配置することができる。このように、第1挿通孔301及び貫通孔302は、シール部材230を所定位置に配置するように誘導するので、シール部材230を下流流路部材220に容易に位置決め及び固定させることができる。
また、詳細は後述するが、配線基板300上にシール部材230を配置し、第1挿通孔301及び貫通孔302に第3突起部231を挿通した状態では、シール部材230の第3の方向Zにおける上方には、上流流路部材210はまだ存在していない。よって、シール部材230を配置する作業を容易に行うことができる。
なお、配線基板300には、図示しない配線や電子部品等が搭載されており、端子部310に接続された配線は、第2の方向Yの両端部側に設けられたコネクター320に接続されている。そして、コネクター320には、図示しない外部配線が接続される。なお、下流流路部材220には、コネクター320を露出するためのコネクター接続口225が設けられており、外部配線は、コネクター接続口225によって露出されたコネクター320に接続される。
また、下流流路部材220の収容部226側には、固定部材の一例であるカバーヘッド400が取り付けられている。
カバーヘッド400は、ヘッドチップ2が固定され、下流流路部材220に固定される部材であり、ノズル21を露出する第2露出開口部401が設けられている。本実施形態では、第2露出開口部401は、ノズルプレート20を露出する大きさ、つまり、コンプライアンス基板45の第1露出開口部45aと略同じ開口を有する。
カバーヘッド400は、コンプライアンス基板45の連通板15とは反対面側に接合されており、コンプライアンス部49の流路(マニホールド100)とは反対側の空間を封止する。このようにコンプライアンス部49をカバーヘッド400で覆うことにより、コンプライアンス部49が紙等の被記録媒体が接触しても破壊されるのを抑制することができる。また、コンプライアンス部49にインク(液体)が付着するのを抑制して、カバーヘッド400の表面に付着したインク(液体)を例えばワイパーブレード等で払拭することができ、被記録媒体をカバーヘッド400に付着したインク等で汚すのを抑制することができる。なお、特に図示していないが、カバーヘッド400とコンプライアンス部49との間の空間は、大気開放されている。もちろん、カバーヘッド400は、ヘッドチップ2毎に独立して設けられていてもよい。
このように2つのヘッドチップ2が固定されたカバーヘッド400は、下流流路部材220の下面側(液体噴射面20a側)に固定されている。
ヘッドチップ2は記録ヘッド1を構成する各部品と比較して小さい。このためヘッドチップ2を保持して他の部材に取り付ける作業を行いにくいものである。しかしながら、2つのヘッドチップ2をカバーヘッド400に固定した上で、該カバーヘッド400を下流流路部材220に固定することで、2つのヘッドチップ2をまとめて収容部226内に収容し、固定することができる。すなわち、取り扱いしにくいヘッドチップ2を個別に収容部226に収容する必要がない。
このようにヘッドチップ2が固定されるカバーヘッド400を採用することで、複数のヘッドチップ2をまとめて収容部226に収容することができるので、記録ヘッド1の組み付け作業を容易にすることができる。
ここで、上述したように、シール部材230、配線基板300、下流流路部材220とで形成された空間Aは、第2挿通孔224を介して収容部226に連通している。一方、カバーヘッド400が下流流路部材220に固定されることで、収容部226が封止されている(カバーヘッド400に設けられた第2露出開口部401は、ヘッドチップ2により封止されており、収容部226には連通していない)。
このように、シール部材230を下流流路部材220に配置し、収容部226をカバーヘッド400で封止することにより、シール部材230よりも第3の方向Zにおける下方に形成された空間Aを外部から遮断することができる。これにより、当該空間Aにおいて、例えばシール部材230の連通路232と第2突起部221との隙間を介してインク中の水分が蒸発することを抑制することができる。
また、下流流路部材220には、上流流路部材210とは反対側に開口した収容部226を設けた。このような構成の下流流路部材220は、上流流路部材210側の上面部220aが上方からの圧力を受け止める部位となり、収容部226を形成する脚部220bが上面部220aに剛性を持たせる構成となっている。
上述したように、シール部材230には、第3突起部231に形成された連通路232を上流流路500及び下流流路600に連通させるために、第3の方向Zの圧力が掛けられる。
仮に、収容部226を設けることなく、板状の下流流路部材の下面側に各ヘッドチップ2を取り付けた場合、シール部材230に掛けられる第3の方向Zの圧力によって上面部220aが撓み、ヘッドチップ2に応力が生じてしまい、ヘッドチップ2の破壊やヘッドチップ2と下流流路部材の接合部の剥離を引き起こす虞がある。
しかしながら、下流流路部材220に収容部226を設けることで、第3の方向Zの圧力が上面部220aを撓ませようとするのを脚部220bの剛性によって抑制できるため、収容部226に収容されたヘッドチップ2に応力が生じることを抑制することができる。
また、カバーヘッド400及び下流流路部材220には、これらの相対位置を規定する基準マークが形成されていてもよい。カバーヘッド400及び下流流路部材220の相対位置とは、カバーヘッド400に固定された各ヘッドチップ2が下流流路部材220の収容部226内に収容され、かつ各ヘッドチップ2の導入口44が下流流路600に接続されたときのカバーヘッド400及び下流流路部材220の位置である。
基準マークがカバーヘッド400及び下流流路部材220の相対位置を規定するとは、カバーヘッド400及び下流流路部材220のそれぞれに設けられた基準マークが所定の位置関係にあれば、カバーヘッド400及び下流流路部材220が上記相対位置に配置されることをいう。
基準マークの形成方法には特に限定はなく、例えば光学的に認識できるものであればよく、具体的にはインクなどで印刷したものや、カバーヘッド400及び下流流路部材220の表面を切削等して作製した模様であってもよい。
図9は、記録ヘッドの底面図である。同図に示すように、本実施形態では、下流流路部材220の第3の方向Zを向いた底面(第1の方向X及び第2の方向Yで規定される面)に、第1基準マーク229が設けられている。また、カバーヘッド400の底面(ヘッドチップ2とは反対側の面)に、第2基準マーク405が設けられている。
第1基準マーク229は、下流流路部材220の底面視において、収容部226に開口した下流流路600の開口から第1の方向X及び第2の方向Yにそれぞれ所定距離だけ離れて設けられている。
第2基準マーク405は、カバーヘッド400の底面視において、導入口44から第1の方向X及び第2の方向Yにそれぞれ所定距離だけ離れて設けられている。
このような第1基準マーク229は間接的に下流流路600の位置を示し、第2基準マーク405は間接的に導入口44の位置を示していることになる。したがって、第1基準マーク229と第2基準マーク405とが、第1の方向X及び第2の方向Yがなす平面において所定の配置となるようにカバーヘッド400及び下流流路部材220の位置を調整することで、導入口44が下流流路600に連通するような配置、すなわちカバーヘッド400及び下流流路部材220を上記相対位置に配置した状態にすることができる。そして、このような相対位置が維持された状態で、ヘッドチップ2が収容部226に収容され、カバーヘッド400が下流流路部材220に固定されている。
このように第1基準マーク229及び第2基準マーク405を設けることで、カバーヘッド400及び下流流路部材220を上記相対位置に容易に配置することができる。なお、第1基準マーク229及び第2基準マーク405とを所定の配置にする方法は特に限定はないが、例えば、カバーヘッド400及び下流流路部材220を底面側から撮像する撮像手段を用いることができる。この撮像手段により、第1基準マーク229及び第2基準マーク405を撮像し、それらの像が所定の配置となるように下流流路部材220の位置をマイクロメーターなどで調整することにより行うことができる。
また、詳細は後述するが、ヘッドチップ2、カバーヘッド400及び下流流路部材220をそれぞれ固定する方法は、ヘッドチップ2が固定されたカバーヘッド400を下流流路部材220に固定することにより行う。
具体的にはヘッドチップ2が固定されたカバーヘッド400を載置した状態で、カバーヘッド400と下流流路部材220とが上記相対位置を保った状態で、第3の方向Zの上方から下流流路部材220をヘッドチップ2側に押し付ける。
ヘッドチップ2の導入口44が設けられた上面には接着剤227が設けてあり、下流流路600が開口した収容部226の底面に接着される。収容部226の第3の方向Zにおける深さは、ヘッドチップ2の高さ(第3の方向Zにおける液体噴射面20aから導入口44まで高さ)よりも若干深く形成されている。
したがって、ヘッドチップ2の導入口44の開口縁部と、収容部226の底面に開口した下流流路600の開口縁部との間には若干の隙間が形成される。しかしながら、この隙間には、接着剤227が設けられているので、導入口44と下流流路600とは隙間なく連通される。
換言すれば、収容部226の深さと、ヘッドチップ2の高さとが厳密に一致しなくても、接着剤227がその差を埋めるので、ヘッドチップ2の導入口44と、収容部226の底面に開口した下流流路600とを隙間なく連通させることができる。
また、下流流路部材220は、上流流路部材210とは反対側に開口した収容部226が設けられている。ヘッドチップ2が固定されたカバーヘッド400の上方から下流流路部材220をヘッドチップ2側に押し付けて固定する作業を容易に行うことができる。
なお、下流流路部材220とヘッドチップ2との固定方法は接着剤227による接着に限定されず、例えば、ネジ等による固定であってもよい。
ここで、上流流路部材210と下流流路部材220との接合部分について説明する。図10は、上流流路部材と下流流路部材との接合部分を拡大した要部断面図であり、図11は、図10のB−B’線断面図である。
図10及び図11並びに図4に示すように、上流流路部材210には、下流流路部材220側に突出する固定ピン251が形成され、下流流路部材220には、第3の方向Zに貫通して固定ピン251が挿入される固定穴253が形成されている。本実施形態では、固定ピン251は、上流流路部材210の角部に4つ設けられ、固定穴253は固定ピン251に対応して下流流路部材220の角部に4つ設けられている。
固定ピン251は、円柱状に形成されており、先端部にはネジ穴252が形成されている。
固定穴253は、固定ピン251の側面に接触する内面を有している。本実施形態では、固定穴253の開口形状は、固定ピン251の側面に外接する四角形状に形成されている。また、固定穴253の固定ピン251が挿入される側には、当該固定穴253よりも拡径した開口部254が設けられている。この開口部254は、固定ピン251の外径よりも大きく形成されている。
固定ピン251は、固定穴253に挿入され、固定ネジ255がネジ穴252に取り付けられている。この固定ネジ255の取り付けにより、上流流路部材210及び下流流路部材220とが固定されている。
このように固定穴253の開口部254が固定ピン251よりも大きく形成されていることで、固定ピン251を開口部254内に容易に挿入することができる。このことは、上流流路部材210を下流流路部材220に固定する際に、下流流路部材220に対する上流流路部材210の位置決めを大まかではあるが速やかに位置決めすることができる。
固定ピン251が開口部254に挿入された状態から上流流路部材210の位置を微調整することで固定ピン251を固定穴253に挿入することができる。固定ピン251は、固定穴253に外接するので、第1の方向X及び第2の方向Yにおける移動が規制される。
上流流路部材210が固定ピン251及び固定ネジ255で下流流路部材220に固定されると、上流流路500がシール部材230の連通路232に連通し(図5参照)、シール部材230の壁部236が脚部213cの内側に配置されるようになっている(図8参照)。
そして、ネジ穴252に固定ネジ255を取り付けることで、上流流路部材210と下流流路部材220とが固定される。
なお、固定ピン251が下流流路部材220に形成され、固定穴253が上流流路部材210に形成されていてもよい。また、必ずしも固定穴253は固定ピン251の外面が接触する内面を有していなくてもよい。すなわち固定穴253の内面と、固定ピン251の外面との間に隙間があってもよい。
以下、上述した構成の記録ヘッド1の製造方法について説明する。図12〜図14は、記録ヘッドの製造方法を示す断面図であり、図15は、記録ヘッドの製造方法を示す要部断面図である。
図12(a)に示すように、下流流路部材220に配線基板300を取り付ける。具体的には、配線基板300のかしめ穴303にかしめピン228を挿通させる。
上述したように、かしめピン228及びかしめ穴303は、配線基板300を下流流路部材220に対する所定位置に配置するためにも設けられている。すなわち、かしめピン228にかしめ穴303を挿入するように配線基板300を移動させれば、下流流路部材220の第2突起部221が配線基板300の第1挿通孔301及び貫通孔302に対向した位置に配線基板300を配置することができる。
このように、かしめピン228及びかしめ穴303は、配線基板300を所定位置に配置するように誘導するので、配線基板300を下流流路部材220に容易に位置決め及び固定させることができる。
次に、図12(b)に示すように、かしめピン228の頂部228aを熱かしめすることで、配線基板300を固定する。上述したように、下流流路部材220上に配線基板300を配置し、かしめ穴303にかしめピン228を挿通した状態では、かしめピン228の第3の方向Zにおける上方には、シール部材230や上流流路部材210はまだ存在していない。よって、かしめピン228の上方からヒートツール等の工具を用いて熱かしめする作業を容易に行うことができる。
このように配線基板300を下流流路部材220に取り付けた後は、下流流路部材220に形成された第2挿通孔224の工具挿通部260、及び第1挿通孔301に、第2挿通孔224の収容部226とは反対側から、配線部材121を保持することが可能な工具700を挿入する。ここでは、配線部材121を挟持するピンセットを工具700として用いている。そして、配線部材121が第3の方向Zに沿って起立した状態を保持したまま、工具700で配線部材121を挟持する。
また、上述した第1基準マーク229と第2基準マーク405とが所定の配置となるように、下流流路部材220及びカバーヘッド400の第1の方向X及び第2の方向Yにおける位置を調整する。これにより、下流流路部材220は、ヘッドチップ2が収容部226内に収容され、導入口44が下流流路600に連通され、配線部材121が第2挿通孔224に挿通されるような位置に配置される。
また、予め、ヘッドチップ2の導入口44側の上面に接着剤227を設け、カバーヘッド400の下流流路部材220側の面にも接着剤(図示せず)を設けておく。また、配線部材121は、第3の方向Zに平行となるように保持しておく。なお、カバーヘッド400には、各ヘッドチップ2の各ノズル21同士の相対位置が所定の配置となるように、ヘッドチップ2が固定されている。
次に、図13(a)に示すように、配線部材121を挟持した工具700が下流流路部材220及び配線基板300から離れるように工具700を下流流路部材220に対して相対移動させる。
具体的には、配線部材121を挟持した工具700を保持する一方で、第3の方向Zに沿って下流流路部材220をカバーヘッド400側に移動させる。すなわち、配線部材121を保持した工具700は下流流路部材220から離れ、工具700は配線部材121を挟持したまま第1挿通孔301及び第2挿通孔224から引き抜かれる。これにより、第1挿通孔301及び第2挿通孔224(配線部材挿通部224a)に配線部材121を挿通させることができる。
上述した例では、工具700を保持して、下流流路部材220を相対移動させたが、下流流路部材220を保持して工具700を相対移動させてもよい。例えば、配線部材121を挟持した工具700が第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通された状態で下流流路部材220及び配線基板300を保持する。次に、カバーヘッド400を下流流路部材220側に移動させる。このようなカバーヘッド400の移動にともない、工具700も第3の方向に沿って上方(上流流路部材210側)に押し上げる。すなわち、工具700は下流流路部材220及び配線基板300から離れる。このような態様によっても、工具700は配線部材121を挟持したまま第1挿通孔301及び第2挿通孔224から引き抜かれる。これにより、第1挿通孔301及び第2挿通孔224(配線部材挿通部224a)に配線部材121を挿通させることができる。
このように、工具700が挿通可能な第1挿通孔301及び工具挿通部260が設けられているので、予め工具700を第1挿通孔301及び工具挿通部260に挿通させる作業を容易に行うことができる。そして、工具挿通部260に挿通した工具700で配線部材121を挟持し、下流流路部材220をカバーヘッド400側に移動させるだけで、配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通させることができる。
可撓性を有する配線部材121を直接第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿入させる場合、第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿入する作業は容易ではない。当該作業は、特に、本実施形態のように第2挿通孔224が小型化のために開口形状が小さく形成される場合は困難である。
しかしながら、本製造方法によれば、予め第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通させた工具700に配線部材121を挟持させた状態で、当該工具700を下流流路部材220から離すように移動させる作業によって、配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通させることができる。すなわち、配線部材121を直接第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿入する際の困難な作業が要求されない。このように、本製造方法では、第1挿通孔301及び第2挿通孔224の開口形状によらず、可撓性を有する配線部材121を容易に挿通させることができる。
また、工具700を第1挿通孔301及び第2挿通孔224(工具挿通部260)に挿通する作業、及び配線部材121を挟持した工具700を下流流路部材220から離すように移動させることで配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224(配線部材挿通部224a)に挿入する作業は、いずれも第3の方向Zに沿った作業である。
このように、本製造方法では、液体噴射面20aに垂直な第3の方向Zに沿った作業のみで、配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通することができる。すなわち、第1の方向X又は第2の方向Yに沿って移動させる作業ではないため、配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通させる作業を簡略化、高速化することが可能となり、記録ヘッド1の製造に係る手間や時間を軽減して低コストの記録ヘッド1を提供することができる。
また、ヘッドチップ2がカバーヘッド400に固定されているので、ヘッドチップ2及びこれに接続された配線部材121がずれることが抑制されている。これにより、各ヘッドチップ2に接続された配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通させる作業をより確実に行うことができる。
配線部材121の挿通後は、下流流路部材220をカバーヘッド400に押圧し接着する。これにより、ヘッドチップ2が収容部226に収容され、導入口44が下流流路600に連通し、配線部材121が第1挿通孔301及び第2挿通孔224に挿通された状態で、下流流路部材220とカバーヘッド400とを固定することができる。
下流流路部材220には、上流流路部材210とは反対側に開口した収容部226が設けられている。このため、ヘッドチップ2が固定されたカバーヘッド400の上方から下流流路部材220をヘッドチップ2側に押し付けて固定する作業を容易に行うことができる。
ここで、カバーヘッド400を用いずに、各ヘッドチップ2を単に下流流路部材220の収容部226に収容して固定する場合では、ヘッドチップ2の導入口44側に設けられた接着剤227の厚みのばらつきによって、各液体噴射面20aを同一面に揃えることは難しい。
しかしながら、本実施形態に係る記録ヘッド1では、ヘッドチップ2をカバーヘッド400に固定しておくことで、予め各ヘッドチップ2の液体噴射面20aを同一面に精度よく配置しておくことができ、その状態を保ったまま、カバーヘッド400とともに各ヘッドチップ2を下流流路部材220に取り付けることができる。
また、上述したように第1挿通孔301は、2つの配線部材121のそれぞれに対応して個別の第1挿通孔301を複数設ける場合に比べて、広い開口面積で形成されているので、第1挿通孔301から配線部材121を引き出し易く、組立性を向上することができる。配線部材121は可撓性を有するので部材の姿勢を保つことが難しく、開口面積が小さいと位置合わせが難しいが、開口面積が広いので位置合わせが容易になる。また、上面側から補助的に姿勢を保たせる作業も容易になる。
さらに、収容部226の深さと、ヘッドチップ2の高さとが厳密に一致していなくても、接着剤227がその差を埋めるので、ヘッドチップ2の導入口44と、収容部226の底面に開口した下流流路600とを隙間なく連通させることができる。
次に、図13(b)に示すように、配線部材121の先端部を折り曲げ、配線基板300の端子部310に電気的に接合する。配線部材121を端子部310に電気的に接合する際には、配線基板300の第3の方向Zにおける上方には、シール部材230や上流流路部材210は存在していない。よって、配線基板300の上方から配線部材121を端子部310に電気的に接続する作業を容易に行うことができる。
次に、シール部材230を配線基板300上に載置し、シール部材230の連通路232を下流流路600に連通させる。上述したように、配線基板300の貫通孔302は、シール部材230の第3突起部231が挿通されることで、連通路232を下流流路600に誘導する機能を果たす。
すなわち、図14(a)に示すように、シール部材230を配線基板300上のおおよその位置に配置したとしても、第1の方向X及び第2の方向Yに若干移動させれば、図14(b)に示すように、第3突起部231が貫通孔302に挿入される。そして、第3突起部231が貫通孔302に挿入されると、各第3突起部231の連通路232を下流流路600に連通させることができる。詳細には、第3突起部231に形成された第2凹部234に第2突起部221を挿入することで連通路232と下流流路600とを連通させる。
このように、第3突起部231及び貫通孔302は、シール部材230を所定位置に配置するように誘導するので、シール部材230を下流流路部材220に容易に位置決め及び固定させることができる。
また、配線基板300上にシール部材230を配置する際には、シール部材230の第3の方向Zにおける上方には、上流流路部材210はまだ存在していない。よって、シール部材230を配置する作業を容易に行うことができる。
次に、特に図示しないが、上流流路部材210を、シール部材230及び配線基板300を間に挟んで下流流路部材220に固定する。
具体的には、図15(a)に示すように、上流流路部材210の固定ピン251を下流流路部材220の開口部254に挿入することで、上流流路部材210を下流流路部材220に対しておおよその位置決めを行う。そして、図15(b)に示すように、上流流路部材210の第1の方向及び第2の方向における位置を微調整することで、固定ピン251を固定穴253に挿入する。そして、固定ピン251を固定ネジ255で固定する(図10参照)。
このように、上流流路部材210を下流流路部材220に固定する際に、開口部254に固定ピン251を挿入することで、下流流路部材220に対する上流流路部材210の位置決めを大まかではあるが速やかに位置決めすることができる。そして、固定ピン251を固定穴253に挿入することで、上流流路500が連通路232に連通し、シール部材230及び配線基板300を挟持した状態で、上流流路部材210と下流流路部材220とを固定することができる。
また、上述したように、下流流路部材220に収容部226を形成したことで、第3の方向Zに圧力を掛けてもヘッドチップ2に応力が生じない構成とした。そして、シール部材230は、第1の方向X及び第2の方向Yには位置決めのために若干移動させるのみであり、第3の方向Zに圧力が掛けられることで上流流路500及び下流流路600を連通する。すなわち、実質的には第3の方向Zのみの移動や圧力付与のみでシール部材230を上流流路部材210及び下流流路部材220に組み付けることができる構造となっている。
このように、下流流路部材220に収容部を形成したことで、ヘッドチップ2に応力が掛かることを抑制し、シール部材230の組み付け作業を容易にすることができる。
以上に説明したように、記録ヘッド1は、第3の方向Zに沿って各部材を積層することで組み立てることができる。すなわち、第1の方向X又は第2の方向Yに沿って移動させる部材はない。また、各部材は、他の部材に組み付けられた後は、当該部材よりも第3の方向Zの下方に位置する部材で支持されるため、特別な器具で当該部材の姿勢や位置を保持する必要がない。
これにより、記録ヘッド1は、特に、機械による自動的な組み立てに適した構造を有しているため、組立に係るコストを大幅に削減することが可能である。
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
実施形態1では、配線部材121を第1挿通孔301及び第2挿通孔224に一度の作業で挿通させたが、配線部材121を各挿通孔に個別に挿通させてもよい。例えば、下流流路部材220の第2挿通孔224に工具700を挿通し、工具700で配線部材121を挟持し、当該工具700を下流流路部材220から離すように移動させることにより、第2挿通孔224に配線部材121を挿通させる。ここで配線部材121から工具700を離す。
次に、配線基板300の第1挿通孔301に工具700を挿通し、配線部材121を挟持する。工具700で配線部材121を挟持した状態で、配線基板300を下流流路部材220側に移動させるとともに、当該工具700を配線基板300から離すように移動させる。これにより、下流流路部材220に配線基板300を取り付けるとともに、配線部材121を第1挿通孔301に挿通させることができる。
また、第1挿通孔301は、2つの配線部材121及び工具700が挿通される形状としたが、このような態様に限定されない。下流流路部材220に形成した第2挿通孔224と同様に、配線基板300にも個別の配線部材121及び工具700が挿通可能な第1挿通孔を配線部材121の個数に応じて複数形成してもよい。
上述した実施形態1では、ヘッドチップ2が2つ設けられた記録ヘッド1について説明したが、ヘッドチップ2の数は、特にこれに限定されず、1個のヘッドチップを有する記録ヘッド1であっても、3個以上のヘッドチップ2を有する記録ヘッド1であってもよい。
また、上述した実施形態1では、第1挿通孔301に2つの配線部材121と2個の下流流路600に対応する第3突起部231とを挿通するようにしたが、特にこれに限定されず、配線部材121を挿通する第1挿通孔と第3突起部231を挿通する貫通孔を独立して設けるようにしてもよい。また、第3突起部231毎に貫通孔を独立して設けるようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態1では、上流流路500が設けられた上流流路部材210と下流流路600が設けられた下流流路部材220とを有する流路部材200を例示したが、例えば、インク(液体)を循環させる場合には、上流と下流とを逆転させればよい。すなわち、ヘッドチップ2に供給されたインクを下流流路600から上流流路500に流して液体保持部や排出されたインクが貯留される貯留部等に排出(循環)すればよい。
また、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電アクチュエーター130を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
また、実施形態1の記録ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図16は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図16に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数の記録ヘッド1を有するインクジェット式記録ヘッドユニットII(以下、ヘッドユニットIIとも言う)は、液体保持部を構成するカートリッジ1Aが着脱可能に設けられ、このヘッドユニットIIを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。このヘッドユニットIIは、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニットIIを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1(ヘッドユニットII)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した例では、インクジェット式記録装置Iは、液体保持部であるカートリッジ1Aがキャリッジ3に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、例えば、インクタンク等の液体保持部を装置本体4に固定して、液体保持部と記録ヘッド1とをチューブ等の供給管を介して接続してもよい。また、液体保持部がインクジェット式記録装置に搭載されていなくてもよい。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。