以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る印刷装置100の構成を示す図である。図1において、X,Y,Z方向の各々は、互いに直交する。以下の図に示されるX,Y,Z方向の各々も、互いに直交する。
以下においては、X方向と、当該X方向の反対の方向(−X方向)とを含む方向をX軸方向ともいう。また、以下においては、Z方向と、当該Z方向の反対の方向(−Z方向)とを含む方向をZ軸方向ともいう。
印刷装置100は、例えば、昇華型カラープリンタである。すなわち、印刷装置100は、熱転写方式のカラープリンタである。つまり、印刷装置100は、画像を形成する画像形成装置である。
印刷装置100は、インクリボン19の取り付けおよび取り外しが可能に構成される。インクリボン19は、印刷に使用されるインクシート9により構成される。具体的には、インクリボン19は、長尺状のインクシート9と、筒状のボビン(図示せず)とにより構成される。インクリボン19は、インクシート9の一部が、ボビンに巻かれることにより構成される。
インクシート9には、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の色領域(染料層)とオーバーコート層(OP)とから構成される転写領域が、当該インクシート9の長手方向に沿って複数組形成される。当該転写領域は、イエロー、マゼンダ、シアンの色領域およびオーバーコート層が、当該インクシート9の長手方向に沿って順に配列されている領域である。
なお、印刷装置100は、記録紙8により構成されるロール紙18が用いられる。ロール紙18は、ロール状の記録紙8により構成される。
図1は、インクリボン19およびロール紙18(記録紙8)が、印刷装置100に取り付けられている状態を示す。図1を参照して、印刷装置100は、制御部20と、記録紙搬送部7と、転写部30と、搬送部10と、切断部11とを備える。
制御部20は、図示しないプログラムを実行し、当該プログラムに基づいて、印刷装置100内の各部に対する各種処理や、演算処理等を行なう。制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。なお、制御部20は、CPUに限定されることなく、演算機能を有するその他の回路であってもよい。
図2は、本発明の実施の形態1に係る印刷装置100の制御部20の構成の一例を示すブロック図である。なお、図2は、主に、制御部20と、制御部20に関連する構成要素とを示しており、印刷装置100の構成の全ては示していない。また、図2には、説明のために、印刷装置100に含まれない、記憶部40、PC(Personal Computer)200が示される。
図2を参照して、印刷装置100は、さらに、モータドライバ12dを備える。モータドライバ12dは、制御部20の制御に従いモータ12を駆動させる。モータ12は、例えば、DC(Direct Current)モータである。モータ12は、回転軸(図示せず)を有する。
記憶部40は、メモリである。記憶部40は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグである。記憶部40は、インクシート情報を記憶する。当該インクシート情報は、インクシート9の種類を特定する情報である。当該インクシート9の種類とは、例えば、インクシート9の量産過程における、インクシート9の製造ロットである。インクシート9の製造ロットとは、例えば、同一条件で製造された各インクシート9の集まりである。インクシート情報は、例えば、インクシート9の製造ロットを特定する製造ロット番号を示す。製造ロット番号が同じ各インクシート9は、例えば、品質がほぼ等しい。
なお、インクシート9の種類は、製造ロットに限定されない。インクシート9の種類は、例えば、インクシート9の品質にばらつきを生じさせる要因となる、製造ロット以外の要素であってもよい。
記憶部40は、インクリボン19のうち、インクシート9の巻き取り、インクシート9の送り出し等の動作に影響をうけない位置に張り付けられている。記憶部40は、例えば、インクリボン19の側面に張り付けられている。すなわち、印刷装置100に取り付けられているインクリボン19には、記憶部40が張り付けられている。
また、PC200は、例えば、通信ケーブルにより、印刷装置100と通信可能なように接続されている。PC200には、図示しない操作インタフェースおよびモニタが接続される。当該操作インタフェースは、キーボード、マウス等である。モニタは、映像を表示する装置である。
制御部20は、取得部21と、記憶部22と、モータ制御部23とを含む。
記憶部22は、メモリである。記憶部22は、PC200によりアクセス可能なように構成される。なお、記憶部22は、制御部20に含まれる構成に限定されず、記憶部22は、制御部20の外部に設けられる構成とてもよい。この構成の場合、印刷装置100は、制御部20と、記憶部22とを独立して備える。
取得部21およびモータ制御部23の全てまたは一部は、ハードウエアで構成されてもよい。また、取得部21およびモータ制御部23の全てまたは一部は、制御部20により実行されるプログラムのモジュールであってもよい。
取得部21は、無線通信を行う機能を有する。取得部21は、印刷装置100に取り付けられているインクリボン19に張り付けられている記憶部40から、インクシートの種類を示すインクシート情報を読み出す機能を有する。すなわち、取得部21を含む制御部20は、インクシートの種類を検出する機能を有する。
モータ制御部23は、モータドライバ12dがモータ12を駆動させるように、モータドライバ12dを制御する。具体的には、モータ制御部23は、モータドライバ12dを介して、モータ12のトルクを、PWM(Pulse Width Modulation)信号(パルス信号)を用いて制御する。すなわち、モータ12は、PWM信号により駆動する。つまり、モータ制御部23により、モータ12に対し、パルスのデューティ比に従ったデューティ制御が行われる。
再び、図1を参照して、記録紙搬送部7は、グリップローラ7aとピンチローラ7bとから構成される。グリップローラ7aおよびピンチローラ7bの各々は、回転自在に構成される。
転写部30は、サーマルヘッド2と、ヒートシンク4と、冷却ファン5と、プラテンローラ6とを含む。
サーマルヘッド2は、制御部20の制御に従い、熱を発生する。サーマルヘッド2には、サーミスタ3が設けられる。サーミスタ3は、転写のための発熱抵抗体への通電制御に用いられる。サーマルヘッド2には、ヒートシンク4が取り付けられている。ヒートシンク4は、サーマルヘッド2を冷却するための冷却機構である。冷却ファン5は、ヒートシンク4に風をおくるように設けられる。
搬送部10は、インクシート9を搬送する。搬送部10は、リール10a,10bと、モータ12と、トルクリミッタ13とを含む。リール10a,10bの各々は、回転自在に構成される。リール10a,10bの各々には、ボビンを介して、インクリボン19が取り付けられる。
以下においては、リール10aに取り付けられるインクリボン19を、インクリボン19aともいう。また、以下においては、リール10bに取り付けられるインクリボン19を、インクリボン19bともいう。また、以下においては、インクリボン19aのボビンを、ボビンAともいう。また、以下においては、インクリボン19bのボビンを、ボビンBともいう。
なお、初期状態において、インクリボン19aのボビンAには、インクシート9が巻かれていない。当該初期状態とは、インクリボン19のインクシート9が一度も使用されていない状態である。また、当該初期状態において、インクリボン19bのボビンBには、インクシート9が巻かれている。インクリボン19bの直径は、当該初期状態のときが最大である。
モータドライバ12dの制御により駆動しているモータ12は、インクリボン19aのリール10aを回転させる。なお、モータ12の回転軸と、リール10aとは、モータ12の回転軸の回転に従って、リール10a(ボビンA)が回転するように構成される。例えば、モータ12の回転軸と、リール10aとは、歯車等を介して接続される。
リール10a(ボビンA)の回転により、インクシート9に張力P1が加わった状態で、当該インクシート9がリール10aに巻き取られる。当該張力P1は、インクシート9に不具合が発生しない力である。張力P1は、インクシート9の種類毎に異なる値が設定される。インクシート9の種類は、例えば、前述した、インクシート9の製造ロットである。
以下においては、インクシート9に関わる不具合を、シート不具合ともいう。シート不具合は、例えば、インクシート9がたるみを有するという不具合である。たるみを有するインクシート9は、記録紙8に張り付きやすくなる。この場合、紙詰まりが発生しやすくなる。
また、シート不具合は、例えば、インクシート9が破断するという不具合である。また、シート不具合は、例えば、インクシート9に過剰な張力が加わることにより、インクシート9が伸びるという不具合である。伸びたインクシート9には、当該インクシート9の長手方向または短手方向に沿ったシワ(折り目)が発生する。すなわち、シート不具合は、インクシート9にシワが発生するという不具合である。
なお、図2の記憶部22には、インクシート9の種類を示すインクシート情報と、当該インクシート情報に対応する、インクシート9に加える張力P1とが関連付けて記憶される。記憶部22には、インクシート9の種類の数と同じ数のインクシート情報および張力P1が記憶される。すなわち、記憶部22は、インクシート9の種類毎に、異なる値を示す張力P1を記憶する。すなわち、記憶部22により、インクシート9の種類毎に張力が設定される。
なお、記憶部22にインクシート情報および張力P1を記憶させる処理は、例えば、ユーザーにより操作されるPC200が行う。すなわち、記憶部22に記憶されている張力P1は、外部(PC200)からの指示により設定される。
以下においては、記憶部22に予め記憶されている張力P1を、初期張力ともいう。後述のシート張力は、通常、初期張力になるように設定される。
再び、図1を参照して、リール10bには、リール10bのトルクを制限するためのトルクリミッタ13が設けられる。切断部11は、記録紙8の一部を切断するためのカッタ11aを有する。
なお、印刷装置100には、図示しない紙詰まり検出部が設けられる。紙詰まり検出部は、紙詰まりが発生した場合、紙詰まりの種類を特定する。紙詰まりの種類の一例は、例えば、インクシート9が記録紙8に張り付くことにより発生した紙詰まりである。以下においては、インクシート9が記録紙8に張り付くことにより発生した紙詰まりを、張り付き紙詰まりともいう。なお、紙詰まり検出部は、紙詰まりの種類を示す紙詰まり情報を、制御部20へ送信する。
次に、印刷装置100における印画動作について説明する。
まず、印刷装置100は、印刷対象となる画像データを外部(例えば、PC)から受信する。制御部20は、受信した画像データを、印刷用の印画データに変換し、当該印画データを利用して印画動作を開始する。
印画動作におけるインクの転写動作は、以下のようにして行われる。まず、サーマルヘッド2がプラテンローラ6に圧着される。そして、サーマルヘッド2は、印画データに応じた熱量の熱を発生させる。これにより、インクシート9の染料(インク)が昇華し、当該染料が記録紙8に定着する(転写される)。
画像形成のために、上記の転写動作が、Y、MおよびCの色領域と、OPとに対し、同一の印画面に対し繰り返し行われる。このとき、記録紙8は、グリップローラ7aとピンチローラ7bとにより圧着され、ステッピングモータ(図示せず)により、一定の速度で搬送される。なお、記録紙8の搬送とともに、インクシート9も搬送される。以下においては、インクシート9が搬送される期間を、搬送期間Tiともいう。
また、制御部20は、モータドライバ12dを利用して、転写動作における搬送期間Tiにおいてインクシート9に加わる張力を制御する処理を行う。以下においては、インクシート9に加わる張力を制御する処理を、張力制御処理ともいう。
具体的には、制御部20は、モータドライバ12dを利用して、搬送期間Tiにおいて該インクシート9に加わる張力が張力P1となるように、モータ12のトルクを制御する。当該張力P1は、使用中のインクシート9の種類を示す、記憶部22に記憶されているインクシート情報に関連付けられた張力P1(初期張力)である。
これにより、転写動作において、インクシート9は、モータ12の駆動により回転するリール10aにより、当該インクシート9に張力P1が加わった状態で、巻き取られる。すなわち、転写動作において、インクシート9は、搬送される。
なお、インクシート9が巻き取られる際、リール10bに取り付けられているインクリボン19のインクシート9にも張力P1が加わった状態で、当該インクシート9が送り出される。
なお、画像が形成された記録紙8は、切断部11のカッタ11aにより切断される。これにより、画像が形成された記録紙8は、印刷物として、印刷装置100の外部へ排出される。これにより、印画動作は終了する。
なお、印画動作が行われることにより、インクリボン19におけるインクシート9の残量が減少する。印画動作が終了する毎に、記憶部40には、制御部20により、インクシート9の最新の残量が記録される。
次に、モータ12を使用した転写動作における張力の設定について説明する。
以下においては、記憶部40に記憶されている、インクシート9の最新の残量を、シート残量ともいう。また、以下においては、1回の画像形成のために行われる転写動作により使用されるインクシート9の距離を、使用距離D1とも表記する。また、以下においては、インクリボン19a,19bの各々のボビンの直径を、直径D2とも表記する。また、以下においては、インクリボン19bの直径を、リボン直径ともいう。
インクリボン19bの直径は、シート残量と、インクシート9の厚みと、使用距離D1と、直径D2とにより算出される。インクリボン19bのリボン直径は、インクシート9の巻かれている位置に相当する。
前述の張力P1は、転写動作を複数回行って得られる実験値により決定される。以下においては、インクシート9が搬送される際に当該インクシート9に加わる張力を、シート張力ともいう。前述したように、張力P1は、インクシート9に不具合が発生しない力である。
一般的に、シート張力が、インクシート9に対応する張力P1よりも小さい場合、当該インクシート9は、記録紙に張り付く。これにより、紙詰まりが発生する。
また、シート張力が、インクシート9に対応する張力P1より大きい場合、例えば、当該インクシート9が伸びてしまい、インクシート9にシワが発生する。また、シート張力が、インクシート9に対応する張力P1より大きい場合、例えば、伸びたインクシート9にさらに過剰な張力が加わった場合、インクシート9が破断する。
そのため、本実施の形態では、インクリボン19bのリボン直径(巻き位置)に関わらず、シート張力が一定となるように、モータ12のトルクが制御される。以下においては、モータ12のトルクを、モータトルクともいう。
図3は、本発明の実施の形態1における、モータ12のトルクの制御を説明するための概念図である。すなわち、図3は、リボン直径に関わらず、シート張力を一定とするためのモータ12のトルクを示す概念図である。
図3において、縦軸は、モータ12の回転軸の回転数である。以下においては、モータ12の回転軸の回転数を、モータ回転数ともいう。
横軸は、モータ12のトルク(モータトルク)である。なお、特性線L1は、PWM信号のパルスのデューティ比が100%である場合における、モータ回転数およびモータトルクの特性を示す。
特性線L2は、本実施の形態における、モータ12のトルクの制御に従ったモータ回転数およびモータトルクの特性を示す。なお、特性線L2は、以下の手順で算出される。なお、転写動作が行われる際には、記録紙8の搬送速度と、インクシート9の搬送速度は等しい。
まず、各リボン直径(巻き位置)におけるボビンの回転数が算出される。そして、算出されたボビンの回転数に基づき、モータ回転数が算出される。そして、算出されたモータ回転数で、モータ12の回転軸を回転させる場合において、シート張力が張力P1となるような、モータトルクが算出される。
算出された各モータ回転数に対応するモータトルクから、特性線L2が得られる。特性線L2は、例えば、モータ回転数がK1である場合において、シート張力が張力P1となるためのモータトルクTR1を示す。
次に、印刷装置100においてシート不具合が発生した場合における、本実施の形態における処理(以下、張力設定処理ともいう)について説明する。
まず、シート張力が、初期張力を示す張力P1より小さい状態においてシート不具合が発生した場合における張力設定処理について説明する。当該シート不具合は、インクシート9が記録紙8に張り付くことにより発生する紙詰まりである。以下においては、紙詰まりが発生した場合において行われる張力設定処理を、張力設定処理Kともいう。
図4は、張力設定処理Kのフローチャートである。
ここで、搬送期間Tiにおいて張力P1(初期張力)でインクシート9が搬送されている場合に、紙詰まりが発生したとする。この場合、前述の紙詰まり検出部は、紙詰まりの種類を示す紙詰まり情報を、制御部20へ送信する。
これにより、ステップS110では、制御部20が、紙詰まり検出部から、紙詰まり情報を取得する。
なお、紙詰まりの種類の特定は、紙詰まり検出部が行うことに限定されない。紙詰まりの種類の特定は、ユーザーが行う構成(以下、変形構成Aという)としもよい。
変形構成Aでは、紙詰まりが発生した場合、例えば、ユーザーが、印刷装置100の内部を確認し、紙詰まりの種類を特定する。そして、ユーザーは、操作インタフェースを利用して、特定した紙詰まりの種類を、PC200に対して入力する。PC200は、入力された紙詰まりの種類を示す紙詰まり情報を、制御部20へ送信する。
ステップS120では、受信した紙詰まり情報が示す紙詰まりの種類が、張り付きによる紙詰まりであるか否かが判定される。具体的には、制御部20が、紙詰まり情報が示す紙詰まりの種類が、前述の張り付き紙詰まりであるか否かを判定する。ステップS120においてYESならば処理はステップS130へ移行する。一方、ステップS120においてNOならば、この張力設定処理Kは終了する。
ステップS130では、取得部21が、印刷装置100に取り付けられているインクリボン19に張り付けられている記憶部40から、インクシート情報を読み出す。これにより、取得部21は、インクシート情報を取得する。
ステップS140では、張力再設定処理が行われる。張力再設定処理では、制御部20が、記憶部22に記憶されている複数のインクシート情報のうち、取得されたインクシート情報が示すインクシートの種類と同じ種類を示すインクシート情報を特定する。以下においては、制御部20により特定されたインクシート情報を、特定インクシート情報ともいう。
そして、制御部20は、搬送期間Tiにおいてインクシート9に加わるシート張力を、シート不具合が発生しないように変更する。具体的には、制御部20は、シート張力が、シート不具合が発生しない張力となるように、特定インクシート情報に関連付けられている張力P1が示す張力を大きくする。すなわち、制御部20は、シート張力を、初期張力より大きくするための処理を行う。
例えば、制御部20は、記憶部22において、特定インクシート情報に関連付けられている張力P1の値の1.1〜1.2倍の値を、当該張力P1の値に設定する。
なお、張力P1に設定される値は、例えば、以下の実験により得られた値に予め設定される。当該実験では、ユーザーが、例えば、紙詰まりというシート不具合を、意図的に発生させる。そして、ユーザーは、シート張力を所定値(例えば、初期張力の1%)ずつ大きくして、シート不具合が発生しなくなったときのシート張力を求める。ユーザーは、以上の実験を複数回行い、シート不具合が発生しなくなったときの各シート張力の平均値を、張力再設定処理により張力P1の値に設定される値とするための操作を行う。
そして、制御部20は、特定インクシート情報と変更された張力P1とを関連付けて記憶部22に記憶させる。すなわち、制御部20は、記憶部22を使用した処理を行う。そして、この張力設定処理Kは終了する。
次に、シート張力が、初期張力を示す張力P1より大きい状態においてシート不具合が発生した場合における張力設定処理について説明する。当該シート不具合は、インクシート9に過剰な張力が加わることにより、インクシート9が伸びるという不具合である。すなわち、当該シート不具合は、インクシート9にシワが発生するという不具合である。以下においては、インクシート9にシワが発生した場合において行われる張力設定処理を、張力設定処理Sともいう。
図5は、張力設定処理Sのフローチャートである。図5において、図4のステップ番号と同じステップ番号の処理は、前述した処理と同様な処理が行われるので詳細な説明は繰り返さない。以下、図4の処理と異なる点を中心に説明する。
インクシート9にシワが発生している状態で、印刷装置100により前述の印画動作が行われたとする。この場合、印画動作により印刷装置100から排出された印刷物に、すじ(色抜け)等が生じている。
ユーザーは、印刷物にすじ(色抜け)等が生じていることを確認することにより、インクシート9にシワが発生していると判断する。この場合、ユーザーは、操作インタフェースを利用して、シワが発生した旨を示すシワ情報を、PC200に対して入力する。
シワ情報の入力は、例えば、PC200のモニタに表示される情報入力画像に対して行われる。情報入力画像は、PC200に予めインストールされている印刷プログラムが制御部20により実行されることにより表示される。なお、前述の印画動作も、制御部20が実行する印刷プログラムに基づいて行われる。
情報入力画像は、例えば、シワが発生したか否かを示すチェックボックスを示す。当該チェックボックスには、チェックマークを付加すること可能である。チェックボックスにチェックマークが付加されている場合は、シワが発生したことが示される。一方、チェックボックスにチェックマークが付加されていない場合は、シワが発生していないことが示される。
ユーザーは、印刷物を参照して、インクシート9にシワが発生していると判断した場合、操作インタフェースを利用して、PC200のモニタに表示される情報入力画像のチェックボックスにチェックマークを付加するための操作を行う。これにより、シワが発生した旨を示すシワ情報を、PC200に対して入力する。
情報入力画像のチェックボックスにチェックマークが付加された場合、PC200は、シワ情報を、制御部20へ送信する。
これにより、ステップS110Aでは、制御部20が、PC200から、シワ情報を取得する。シワ情報が取得されると、ステップS130の処理が行われる。
ステップS130では、図4の処理と同様な処理が行われるので詳細な説明は繰り返さない。すなわち、取得部21が、インクリボン19に張り付けられている記憶部40から、インクシート情報を読み出す。これにより、取得部21は、インクシート情報を取得する。
ステップS140Aでは、張力再設定処理Aが行われる。張力再設定処理Aでは、制御部20が、記憶部22に記憶されている複数のインクシート情報のうち、取得されたインクシート情報が示すインクシートの種類と同じ種類を示すインクシート情報を特定する。以下においては、制御部20により特定された特定されたインクシート情報を、特定インクシート情報ともいう。
そして、制御部20は、搬送期間Tiにおいてインクシート9に加わるシート張力を、シート不具合が発生しないように変更する。具体的には、制御部20は、シート張力が、シート不具合が発生しない張力となるように、特定インクシート情報に関連付けられている張力P1が示す張力を小さくする。すなわち、制御部20は、シート張力を、初期張力より小さくするための処理を行う。
例えば、制御部20は、記憶部22において、特定インクシート情報に関連付けられている張力P1の値の0.8〜0.9倍の値を、当該張力P1の値に設定する。
なお、張力P1に設定される値は、例えば、以下の実験により得られた値に予め設定される。当該実験では、ユーザーが、インクシート9にシワが発生するというシート不具合を、意図的に発生させる。そして、ユーザーは、シート張力を所定値(例えば、初期張力の1%)ずつ小さくして、シート不具合が発生しなくなったときのシート張力を求める。ユーザーは、以上の実験を複数回行い、シート不具合が発生しなくなったときの各シート張力の平均値を、張力再設定処理Aにより張力P1の値に設定される値とするための操作を行う。
そして、制御部20は、特定インクシート情報と変更された張力P1とを関連付けて記憶部22に記憶させる。そして、この張力設定処理Sは終了する。
以下においては、印刷装置100に取り付けられているインクリボン19を、インクリボンNともいう。また、以下においては、インクリボンNを構成するインクシート9を、インクシートNともいう。また、以下においては、インクリボンNと異なるインクリボン19を、インクリボンAともいう。また、以下においては、インクリボンAを構成するインクシート9を、インクシートAともいう。
ここで、以下の条件Aにおいて前述の転写動作が行われるとする。条件Aでは、インクリボンNの種類と、インクリボンAの種類は同じであるとする。すなわち、インクシートNの種類と、インクシートAの種類は同じであるとする。例えば、インクリボンN(インクシートN)およびインクリボンA(インクシートA)は、同じ製造ロットの製品であるとする。この場合、インクシートAの種類と同じ種類を示すインクシート情報が記憶部22に記憶されている。
また、条件Aでは、インクリボンNが印刷装置100に取り付けられているときに、シート不具合が発生し、張力設定処理Kまたは張力設定処理Sが行われたとする。
また、条件Aでは、インクリボンNの代わりに、インクシートAにより構成されるインクリボンAが印刷装置100に取り付けられたとする。すなわち、条件Aでは、印刷装置100に取り付けられているインクリボンNが取り外されて、インクリボンAが印刷装置100に取り付けられたとする。
この場合、まず、張力取得処理Nが行われる。張力取得処理Nでは、制御部20が、インクリボンAに張り付けられている記憶部40からインクシート情報を取得し、該インクシート情報が示すインクシートAの種類を参照する。
そして、制御部20は、記憶部22において、インクシートAの種類と同じ種類を示すインクシート情報に関連付けられた張力P1を読み出す。読み出された当該張力P1は、張力設定処理Kまたは張力設定処理Sにより、シート不具合が発生しないように、値が変更された張力である。当該シート不具合は、紙詰まり、または、シワの発生である。以下においては、制御部20により読み出された当該張力P1を、変更張力P1ともいう。
そして、前述の転写動作が行われる場合、シート不具合が発生しない変更張力P1が適用される。具体的には、以下の転写処理Nが行われる。
転写処理Nでは、制御部20は、モータドライバ12dを利用して、搬送期間Tiにおいて該インクシート9に加わる張力が、読み出された変更張力P1となるように、モータ12のトルクを制御する。すなわち、制御部20は、モータドライバ12dを利用して、搬送期間Tiにおいて該インクシート9に加わる張力が、変更張力P1となるように、モータ12のトルクを制御する。
以上の処理により、制御部20は、インクシートAの種類と同じ種類を示すインクシート情報が記憶部22に記憶されている場合、該インクシート情報に関連付けられた変更張力P1がインクシートAに加わるよう、張力制御処理を行う。
これにより、インクリボンNの代わりに、インクシートAにより構成されるインクリボンAが印刷装置100に取り付けられた場合においても、シート不具合が発生することなく、転写動作を行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、制御部20は、インクシートNに関わるシート不具合が発生した場合、(a)搬送期間TiにおいてインクシートNに加わる張力を、当該シート不具合が発生しないように変更し、(b)インクシートNの種類を示すインクシート情報と、変更された当該張力とを関連付けて記憶部22に記憶させる。当該インクシートNは、インクシート9である。
そして、制御部20は、インクリボンNの代わりに、インクシートAにより構成されるインクリボンAが印刷装置100に取り付けられ、かつ、インクシートAの種類と同じ種類を示すインクシート情報が記憶部22に記憶されている場合、当該インクシート情報に関連付けられた変更張力P1がインクシートAに加わるよう、張力制御処理を行う。
これにより、インクシートに関わる不具合が繰り返し発生することを抑制することができる。
また、本実施の形態に係る印刷装置100は、シート不具合が発生した場合、使用中のインクシート9の種類を示すインクシート情報と、シート不具合が発生しないように変更された張力とを関連付けて記憶部22に記憶させる。そして、印刷装置100は、例えば、次回、同一の製品ロットのインクシート9を使用して印画動作(転写動作)を行う場合、インクシート9に加わる張力が、変更された(再設定された)張力になるように制御される。
また、本実施の形態による上記構成によれば、インクシートの物性ばらつきによる大きな設計裕度を考慮することない。そのため、印刷装置100の小型化、コストダウンを実現できるとともに、シート不具合(シワ、張り付き)が多発することを防ぐことができる。その結果、信頼性の高い印刷装置を提供することができる。
なお、上記の関連技術Bでは、記録紙の搬送させるモータにDCモータを使用する。そのため、搬送位置の精度が低く、色ずれ等が発生する場合がある。色ずれを回避するためには、関連技術Bでは、搬送位置を制御するためにエンコーダーが別途必要となる。そのため、プリンタが高価になるという問題がある。
一方、本実施の形態では、上記構成により、上記問題を解決することができる。
なお、シート不具合が発生した場合、記憶部22に記憶されている張力P1は、PC200からの指示なしで、制御部20が変更するとしたがこれに限定されない。記憶部22に記憶されている張力P1は、ユーザーによって操作されるPC200からの指示に従って、制御部20が変更する構成としてもよい。すなわち、当該構成では、記憶部22は、記憶部22が記憶している張力に対し外部からアクセス可能に構成される。
<実施の形態2>
図6は、本発明の実施の形態2に係る印刷システム1000の構成を示す図である。図6を参照して、印刷システム1000は、複数の印刷装置100と、複数のPC200と、サーバー300とを含む。
印刷装置100の構成および機能は、実施の形態1の印刷装置100と同様なので詳細な説明は繰り返さない。また、PC200の構成および機能は、実施の形態1の印刷装置100と同様なので詳細な説明は繰り返さない。
サーバー300は、情報の処理、情報の記憶等が可能なPCである。サーバー300は、記憶部320を備える。記憶部320は、実施の形態1の記憶部22と同様に、インクシート9の種類毎に、異なる値を示す張力P1を記憶する。
複数の印刷装置100の各々は、PC200を介して、サーバー300と通信する。具体的には、複数の印刷装置100の各々は、PC200を介して、記憶部320にアクセス可能に構成される。言い換えれば、記憶部320は、当該記憶部320に記憶されている張力P1を各印刷装置100が使用するように構成されている。すなわち、記憶部320は、記憶部320が記憶している張力に対し外部からアクセス可能に構成される。
次に、印刷システム1000における処理について説明する。
ここで、各印刷装置100に同一の種類のインクリボン19が取り付けられている状態において、実施の形態1と同様に、シート不具合が発生したとする。同一の種類のインクリボン19とは、例えば、同一の製品ロットのインクリボン19である。
この場合、各印刷装置100において、張力設定処理KAまたは張力設定処理SAが行われる。張力設定処理KAは、シート不具合が、紙詰まりである場合に行われる。張力設定処理SAは、シート不具合が、インクシート9にシワが発生するという不具合である場合に行われる。
張力設定処理KAは、図4の張力設定処理Kの説明において、記憶部22を記憶部320と置き換えた説明と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。また、張力設定処理SAは、図5の張力設定処理Sの説明において、記憶部22を記憶部320と置き換えた説明と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
張力設定処理KAまたは張力設定処理SAが行われることにより、記憶部320には、変更された張力P1が記憶される。なお、サーバー300の記憶部320に記憶されている各張力P1は、各印刷装置100に共有して使用される。
そして、実施の形態1と同様に、条件Aにおいて転写動作が各印刷装置100により行われるとする。この場合、まず、張力取得処理NAが行われる。張力取得処理NAは、実施の形態1の張力取得処理Nの説明において、記憶部22を記憶部320と置き換えた説明と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。張力取得処理NAが行われることにより、各印刷装置100の制御部20は、変更張力P1を取得する。
そして、各印刷装置100において転写動作が行われる場合、実施の形態1と同様、シート不具合が発生しない変更張力P1が適用される。具体的には、転写処理NAが行われる。転写処理NAは、実施の形態1の転写処理Nの説明において、記憶部22を記憶部320と置き換えた説明と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
各印刷装置100において転写処理NAが行われることにより、シート不具合が発生することなく、転写動作を行うことができる。すなわち、印刷システム1000に含まれる各印刷装置100において、シート不具合の発生を防ぐことができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、各印刷装置100により、サーバー300の記憶部320に記憶された張力を、各印刷装置100で共有する構成においても、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。すなわち、印刷システム1000に含まれる各印刷装置100において、インクシートに関わるシート不具合が繰り返し発生することを抑制することができる。すなわち、各印刷装置100において、シート不具合の発生を防ぐことができる。
(その他の変形例)
以上、本発明に係る印刷装置および印刷システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これら実施の形態に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で、当業者が思いつく変形を本実施の形態に施したものも、本発明に含まれる。つまり、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
また、印刷装置100は、図1または図2に示される全ての構成要素を含まなくてもよい。すなわち、印刷装置100は、本発明の効果を実現できる最小限の構成要素のみを含めばよい。
また、本発明は、印刷装置100が備える特徴的な構成部の動作をステップとする張力制御方法として実現してもよい。また、本発明は、当該張力制御方法に含まれる各ステップをコンピュータが実行してもよい。また、本発明は、そのような張力制御方法に含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現してもよい。また、本発明は、そのようなプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現されてもよい。また、当該プログラムは、インターネット等の伝送媒体を介して配信されてもよい。
上記実施の形態で用いた全ての数値は、本発明を具体的に説明するための一例の数値である。すなわち、本発明は、上記実施の形態で用いた各数値に制限されない。
また、本発明に係る張力制御方法の一部または全ては、図4または図5のフローチャートの一部または全てに相当する。本発明に係る張力制御方法は、図4または図5における、対応する全てのステップを必ずしも含む必要はない。すなわち、本発明に係る張力制御方法は、本発明の効果を実現できる最小限のステップのみを含めばよい。
また、張力制御方法における各ステップの実行される順序は、本発明を具体的に説明するための一例であり、上記以外の順序であってもよい。また、張力制御方法におけるステップの一部と、他のステップとは、互いに独立して並列に実行されてもよい。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。