JP6072324B1 - エレベータの調速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】調速機ロープの取り外しを容易にできるエレベータの調速機を提供する。【解決手段】実施形態のエレベータの調速機は、乗りかごの昇降動作に連動して移動する調速機ロープが巻き掛けられ、調速機ロープの移動速度が所定値を超えた場合に調速機ロープを把持する把持機構を有する調速機本体と、調速機本体を支持するとともに、調速機ロープを乗りかごの昇降方向に貫通させる貫通孔が形成されたベース部材と、を備える。ベース部材は、一端が貫通孔に連通し他端がベース部材の外縁部に開口し調速機ロープを外縁部から導出させるロープ通路を有する。【選択図】図3

Description

本発明の実施形態は、エレベータの調速機に関する。
従来、エレベータにおいては、安全装置として、非常停止装置を設けることが法令で義務づけられている。この非常停止装置を動作させる構造として、調速機(ガバナ)が知られている。調速機の綱車には、エレベータの乗りかごの昇降動作に連動して移動する調速機ロープが巻き掛けられている。また、調速機は、乗りかごの下降速度が規定された値を超えたときに調速機ロープを把持する把持機構を備える。調速機ロープが把持機構によって把持されると、乗りかごとの間に速度差が生じて、調速機ロープと乗りかごとを連結するリンクが動作して、乗りかご側に設けられた非常停止装置を動作させて、乗りかごを機械的に停止させる。
特開2015−48234号公報
ところで、調速機も機械部品であるため定期的なメンテナンスや部品交換が必要になる。この場合、調速機を設置場所から取り外す必要が生じる場合がある。調速機は、上述したように非常停止時には調速機ロープを把持する構造になっているため、調速機ロープは、例えば把持機構の部分で調速機本体を貫通する構造になっている。したがって、調速機を取り外す場合、まず、調速機ロープに作用しているテンションを解放し(錘を外し)、調速機ロープと乗りかごとの連結を解除する。そして、調速機(把持機構)を貫通する調速機ロープを調速機から抜き取ることで、調速機の取り外し(移動)が可能となる。このように、調速機の交換作業は、大掛かりであり作業負担が大きかった。そこで、調速機から調速機ロープの取り外しを容易にできる構造が提供できれば有意義である。
実施形態のエレベータの調速機は、調速機本体と、ベース部材と、を備える。調速機本体は、乗りかごの昇降動作に連動して移動する調速機ロープが巻き掛けられている。そして、調速機本体は、調速機ロープの移動速度が所定値を超えた場合に調速機ロープを把持する把持機構を有する。ベース部材は、調速機本体を支持する。また、ベース部材には、調速機ロープを乗りかごの昇降方向に貫通させる貫通孔が形成されている。このベース部材は、一端が貫通孔に連通し他端がベース部材の外縁部に開口し調速機ロープを外縁部から導出させるロープ通路を有する。
図1は、実施形態の調速機を備えるエレベータの一例を示す概略図である。 図2は、実施形態の調速機の一例を示す斜視図である。 図3は、実施形態の調速機の内部構造を説明するために図2に示す調速機のフレームプレート(支持壁、側壁)の一方を外した状態を示す正面図である。 図4は、実施形態の調速機の把持機構の一例を示す図であり、非把持状態を示す斜視図である。 図5は、実施形態の調速機の把持機構の一例を示す図であり、把持状態を示す斜視図である。 図6は、実施形態の調速機のベース部材に形成されるロープ通路の一例を示す平面図である。 図7は、実施形態の調速機の固定側ロープ掴み(第一の把持プレート)のベース部材に対する固定位置の調整を可能にする調整機構の一例を示す図であり、一部断面図を含む上面図である。 図8は、図7に示す調整機構を有する固定側ロープ掴みを設置するフレームプレートの一例を示す斜視図である。 図9は、調整機構を有する固定側ロープ掴みを設置するフレームプレートの変形例を示す斜視図である。 図10は、実施形態の調速機の固定側ロープ掴みのベース部材に対する固定位置の調整を可能にする調整機構の変形例を示す斜視図である。 図11は、実施形態の調速機のベース部材に形成されるロープ通路の変形例を示す平面図である。
以下に、実施形態に係るエレベータの調速機を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態の調速機10を備えるエレベータ12の概略図である。エレベータ12は、複数階構造の建築物に階を跨いで上下方向に貫通した昇降路14内を乗りかご16が移動する。乗りかご16は、主ロープ18に吊られており、図示を省略した巻上機の動作によって、昇降路14に設けられたガイドレール20に案内されながら昇降路14内を昇降する。
昇降路14の例えば上部区域に設けられた機械室22には、図示を省略した巻上機や当該巻上機を含むエレベータ12全体の制御を行う制御装置が配置されている。また、機械室22には、調速機10が設置されている。調速機10は、乗りかご16の下降速度が所定値以上になったことを検知する機構と、乗りかご16の下降速度が所定値以上になると、乗りかご16の昇降動作に連動して移動する(一体的に走行する)調速機ロープ24を把持するロープ掴み機構(把持機構)と、を含む。
一方、乗りかご16には、当該乗りかご16を非常停止させる非常止め装置26が設けられている。非常止め装置26は、例えば、主ロープ18が破損したり巻上機の回転速度に異常が生じたりして、乗りかご16の下降速度が所定値(定格速度)以上になったときに、ガイドレール20を掴み、乗りかご16を機械的に非常停止させるための装置である。
調速機ロープ24は、調速機10に取り付けてある綱車28と、昇降路14の下部に配置されている滑車30とに無端状に巻き掛けられている。滑車30には錘32がつり下げられて、調速機ロープ24に所定のテンションを付与している。調速機ロープ24は、ロープ連結部34を介して、非常止め装置26を作動させるセフティーリンク36と連結されている。つまり、調速機ロープ24は乗りかご16の昇降する方向と同方向で且つ同速度で走行するようになっている。
このようなエレベータ12において、乗りかご16の下降過速度を調速機10が検知すると、ロープ掴み機構が調速機ロープ24を把持して、その走行を停止または減速させる。その結果、セフティーリンク36が非常止め装置26を作動させて、乗りかご16を非常停止させる。
図2〜図5を用いて、本実施形態の調速機10の詳細および調速機ロープ24の把持動作について説明する。図2は調速機10の斜視図、図3は調速機10の正面図、図4は把持機構38の非把持状態を示す斜視図、図5は把持機構38の把持状態を示す斜視図である。
図2、図3に示すように調速機10は、調速機本体40と当該調速機本体40を支持するベース部材42(基台、支持プレート)とを備える。ベース部材42には、2枚の板状のフレームプレート44a,44b(支持壁、側壁)が平行に所定間隔をおいて垂直に設けられている。一対のフレームプレート44a,44bは、当該フレームプレート44aとフレームプレート44bとで形成する対向空間を跨ぐように配置された回転軸46を支持している。回転軸46は、綱車28を回転自在に支持している。綱車28の溝48に、調速機ロープ24が巻き掛けられている。
綱車28には、回転錘50が設けられている。回転錘50は綱車28と連動して回転して遠心力によって広がるように構成されている。この回転錘50の広がる動作は、速度調整ばね52によって調整される。速度調整ばね52の調整によって回転錘50が開く動作をするときの綱車28の回転速度を設定することができる。
調速機10には、リミットスイッチ54が設けられている。リミットスイッチ54は、調速機ロープ24が所定の速度になって、回転錘50が検知レバー56に接触するまで開くと、当該リミットスイッチ54はオンになる。その信号は制御装置に提供され、エレベータ12の主電源が切断されるようになっている。
エレベータ12の主電源が切断されたにも拘わらず乗りかご16が下降を続けて、調速機ロープ24の走行とともに回転する綱車28の回転速度がさらに増加すると、回転錘50は遠心力によってさらに広がり、把持機構38による調速機ロープ24の把持動作が開始される。
把持機構38は、ベース部材42に設けられた固定側ロープ掴み58(第一の把持プレート)と、調速機ロープ24を挟んで固定側ロープ掴み58と対向する位置に設けられた可動側ロープ掴み60(第二の把持プレート)とを備える。固定側ロープ掴み58は、調速機ロープ24と接触する固定側ロープ掴みシュー58aと、当該固定側ロープ掴みシュー58aを支持する固定側ホルダ58bとで構成されている。固定側ホルダ58bは、ベース部材42およびフレームプレート44a,44bに固定される。可動側ロープ掴み60は、調速機ロープ24と接触する可動側ロープ掴みシュー60aと、当該可動側ロープ掴みシュー60aを支持する可動側ホルダ60bとで構成されている。可動側ロープ掴み60は、可動シャフト62(腕部材)の一端側に固定されている。可動シャフト62の他端側は、フレームプレート44a,44bに回転自在に支持された回転軸64の軸方向に対して直角に当該回転軸64を貫通して、ロックナット66によって抜け止めされるとともに固定されている。可動シャフト62には、ばね受け68a,68bを介して掴みばね70(例えばコイルスプリング、圧縮ばね)が圧縮状態で巻回されている。したがって、掴みばね70は、その弾性力によって可動側ロープ掴み60を押し出す方向(回転軸64から離間する方向)に付勢して、可動側ロープ掴み60に所定の把持力を与えるように機能する。なお、固定側ロープ掴みシュー58aおよび可動側ロープ掴みシュー60aにおいて、調速機ロープ24に対向する接触面には、調速機ロープ24を安定的に挟み込むことができるように、例えばU溝が形成されている。なお、固定側ロープ掴みシュー58aと固定側ホルダ58bとが一体成形されたものを固定側ロープ掴み58としてもよい。同様に、可動側ロープ掴みシュー60aと可動側ホルダ60bとが一体成形されたものを可動側ロープ掴み60としてもよい。
このように構成される把持機構38では、エレベータ12の定常運転時、すなわち乗りかご16が所定速度以内で運行(移動)されている場合は、図4に示すように可動側ロープ掴み60が調速機ロープ24から離間するように起き上がった姿勢(非ロック姿勢)で保たれている。この場合、調速機ロープ24は、固定側ロープ掴みシュー58aおよび可動側ロープ掴みシュー60aに接触することなく、乗りかご16の昇降動作に連動して移動することになる。ロープ連結部34は、調速機ロープ24および乗りかご16とともに移動し、非常止め装置26を動作させることはない。なお、図4、図5の場合、把持部分の構造を分かり易くするために、固定側ホルダ58bは図示を省略している。
調速機10によって、乗りかご16の過剰な下降速度が検知されると、図3、図4に示されるように、可動側ロープ掴み60が矢印A方向(下方)に倒れ、可動側ロープ掴みシュー60aが調速機ロープ24に接触するようになる。
このとき、調速機ロープ24は矢印B方向に走行しているので、調速機ロープ24と接触した可動側ロープ掴みシュー60aは、摩擦力によってさらに下方(矢印A方向)に引き込まれ、図5に示されるように、調速機ロープ24は、最終的に、固定側ロープ掴みシュー58aと可動側ロープ掴みシュー60aとによって把持される。その結果、調速機ロープ24の走行は止められることになる。一方、乗りかご16は、移動を続けてしまうので、セフティーリンク36が移動する。その結果、非常止め装置26が動作して乗りかご16を安全停止させる。
調速機10の把持機構38の動作頻度は低いが、綱車28や回転軸46は、乗りかご16の昇降動作に伴い回転動作を行っているため、上述したように、調速機10は定期的なメンテナンスが必要になる。その場合、調速機ロープ24を設置位置から取り外す必要が生じたり、新たな調速機10と交換する必要が生じたりする場合がある。図1、図2に示されるように、調速機ロープ24の一方が調速機10(把持機構38およびベース部材42)を貫通している。そのため、従来は、錘32を外した状態で調速機ロープ24をセフティーリンク36から切り離し、さらにロープ連結部34の部分で調速機ロープ24を分離して、調速機10(ベース部材42)から抜き取る必要があり、作業が大掛かりであった。
そこで、本実施形態の調速機10は、調速機ロープ24の抜き取り作業を行わなくても、調速機10の取り外しや交換が可能な構造を有する。具体的には、ベース部材42は、図6に示すように、調速機ロープ24を貫通させるため貫通孔72を備えるが、この貫通孔72に対して、一端が当該貫通孔72に連通し他端がベース部材42の外縁部42aに開口するロープ通路74を備える。
ロープ通路74は、ベース部材42の厚み方向に貫通した切欠き部(溝部、凹部)であり、貫通孔72に挿通されている調速機ロープ24をその挿通姿勢を維持したまま、つまり、ベース部材42の厚み方向に抜き取ることなく外縁部42aから導出させることができる。図6に示す例の場合、ロープ通路74は、貫通孔72の形成位置(固定側ロープ掴みシュー58aと可動側ロープ掴みシュー60aとの対向位置)から最も近い外縁部42aに向かってほぼ直線的に形成されている。なお、ロープ通路74は、調速機ロープ24を外縁部42aまで導くことができれば、直線以外の軌道で形成されてもよい。例えば、ロープ通路74は、他の構成部品を回避するように曲線軌道や屈曲軌道を含んでもよい。また、ロープ通路74の幅は、調速機ロープ24を移動させられればよく、調速機ロープ24の直径より大きければよい。
図6に示す例の場合、固定側ロープ掴み58(第一の把持プレート)は、ロープ通路74の少なくとも一部を覆うようにベース部材42に着脱自在に固定される。固定側ロープ掴み58は、フレームプレート44a,44bに例えばボルト76等の締結部材によって固定される。なお、固定側ロープ掴み58は、ベース部材42の裏面側(図6の紙面裏側)からボルト等により固定して、ベース部材42やフレームプレート44a,44bに対する固定強度を増加させてもよい。このように、調速機10の通常運行時には、ロープ通路74を固定側ロープ掴み58によって閉塞することにより、調速機ロープ24が正規の軌道から外れる、例えば調速機ロープ24が綱車28から脱落するようなことを抑制することができる。
上述のようなロープ通路74を備える調速機10の取り外し手順を図1〜図6を参照しながら説明する。調速機10の取り外しを行う場合、エレベータ12の運行(乗りかご16の移動)が停止している状態で、まず錘32(図1参照)を取り外し、調速機ロープ24に追加付与されているテンションを取り除く。続いて、ボルト76を抜き取り、固定側ロープ掴み58をベース部材42から取り外す。つまり、ロープ通路74を完全に露出させる(図6参照)。次に、調速機ロープ24を綱車28の溝48から取り外す。上述したように、錘32を外してあるので調速機ロープ24は、調速機10を貫通していない側の調速機ロープ24を容易に引き上げることができる。図1の場合、綱車28と滑車30とに巻き掛けられた調速機ロープ24の乗りかご16側から遠い側で昇降方向に延びる部分24aを引き上げることができる。この場合、乗りかご16側に近い側で昇降方向に延びる部分24bは昇降方向に移動させなくても部分24a側を引き上げることができる。その結果、停止した乗りかご16のセフティーリンク36に対するロープ連結部34の位置を変化させずに済む。したがって、調速機ロープ24を引き上げるときにロープ連結部34とセフティーリンク36との接続を解除したり、ロープ連結部34で調速機ロープ24を分離したりする作業が不要となる。
調速機ロープ24の引き上げ量は、綱車28の溝48から調速機ロープ24を外せる程度でよく、例えば数十mmでよい。なお、調速機ロープ24の引き上げ量を大きくすれば、後述する調速機10の取り外し作業がさらに容易になる。調速機ロープ24の引き上げ作業は、例えば、機械室22内に設けられたり、調速機10の取り外し作業のときに持ち込まれたウインチ等により行うことができる。引き上げた調速機ロープ24の姿勢は、ウインチで保持したり、機械室22に設けられたフック等の保持器具で保持することが望ましい。
最後に、調速機10を機械室22の床面や設置面に固定している締結部材(例えばボルト等)を外す。そして、調速機10を設置位置から移動させつつ、貫通孔72を貫通していた調速機ロープ24をロープ通路74を介してベース部材42の外縁部42aに向かって移動させる。調速機ロープ24が外縁部42aから出してしまうことで、調速機10を設置位置から取り外すことができる。
調速機10を戻す場合は、取り外した場合と逆の手順にしたがい作業すればよい。つまり、調速機ロープ24をロープ通路74から貫通孔72に向かって移動させつつ、調速機10を機械室22の所定の位置に移動して、ボルト等の締結部材で固定する。続いて、引き上げていた調速機ロープ24を降ろして綱車28の溝48に巻き掛ける。そして、固定側ロープ掴み58をボルト76によりフレームプレート44a,44bやベース部材42に固定する。最後に、滑車30に錘32を取り付け、調速機ロープ24に所定のテンションを付与して、調速機10の復帰作業が完了する。
このように、本実施形態の調速機10のベース部材42は、一端が貫通孔72に連通し他端がベース部材42の外縁部42aに開口して、調速機ロープ24を外縁部42aから導出させるロープ通路74を有する。そのため、錘32を外して調速機ロープ24を引き上げた後、ロープ通路74から調速機ロープ24を出すだけで、調速機ロープ24がベース部材42(調速機10)を貫通する状態を解消して、調速機10を設置位置から取り外すことができる。つまり、従来のようにロープ連結部34とセフティーリンク36との連結を解除したり、ロープ連結部34で調速機ロープ24を切り離したり、調速機ロープ24を貫通孔72から抜き取ったりする作業が省略され、全体作業の簡略化ができる。同様に、取り外した調速機10を元の位置に戻したり、新たな調速機10を設置する作業も簡略化することができる。
ところで、乗りかご16の下降速度が所定値を越えた場合、つまり、調速機ロープ24の移動速度が所定位置を越えた場合、固定側ロープ掴み58と可動側ロープ掴み60とは、調速機ロープ24を確実に把持する必要がある。そのため、上述したように、固定側ロープ掴みシュー58aと可動側ロープ掴みシュー60aとにはU溝が形成され、調速機ロープ24を把持するときにU溝に収まるようにすることで安定した把持を実現している。したがって、固定側ロープ掴みシュー58aのU溝と可動側ロープ掴みシュー60aのU溝は、把持完了時点で調速機ロープ24を挟んで正確に対面するように位置決めされている必要がある。つまり、上述したように調速機10の取り外しおよび取り付けのために固定側ロープ掴み58を着脱する場合、固定側ロープ掴み58の装着後は固定側ロープ掴みシュー58aが可動側ロープ掴みシュー60aに対して正確に位置決めされる必要がある。そこで、本実施形態の調速機10の場合、固定側ロープ掴み58は、当該固定側ロープ掴み58と可動側ロープ掴み60とで調速機ロープ24を把持する場合の把持位置の調整を行う調整機構を備える。この調整機構は、固定側ロープ掴み58を調速機ロープ24が巻き掛けられた綱車28の溝48の幅Wの方向である第一の方向M(図2参照)に、固定側ロープ掴み58(固定側ロープ掴みシュー58a)を移動させるような構造を有する。
図7は、調整機構78の一例を示す図である。この調整機構78において、固定側ロープ掴み58の幅P、すなわち第一の方向Mに沿う幅は、当該固定側ロープ掴み58を支持するためにベース部材42に第一の方向Mに隙間を空けて固定された一対のフレームプレート44a,44bの間隔Qより狭く形成されている。つまり、固定側ロープ掴み58を一対のフレームプレート44a,44bの間の空間に装着する場合、固定側ロープ掴み58の幅方向の一方に隙間S1が形成可能となり、他方に隙間S2が形成可能となる。この隙間S1および隙間S2を調整することにより、固定側ロープ掴み58を第一の方向Mに位置調整可能となり、可動側ロープ掴みシュー60aに対する固定側ロープ掴みシュー58aの位置調整ができる。
調整機構78は、図7において部分断面図で示すように、固定側ロープ掴み58の幅方向の両端には、雌ねじ部80(フレームプレート44a側のみ図示)が形成されている。そして、雌ねじ部80に螺合する雄ねじ部82を軸方向の一方に有する調整シャフト84がねじ込み可能になっている。調整シャフト84は、雄ねじ部82とは逆側に固定ナット86が螺合する雄ねじ部88が形成された例えば円柱シャフトで、固定側ロープ掴み58に螺合させた状態でフレームプレート44aの外面側から雄ねじ部88が突出するような長さを有する。なお、フレームプレート44aには、図8に示すように、調整シャフト84を装着した固定側ロープ掴み58のベース部材42に向き合う面が当該ベース部材42に密着した状態で、調整シャフト84が挿通できる位置に調整シャフト84の径より僅かに大径のシャフト受け孔90が形成されている。固定側ロープ掴み58のフレームプレート44b側の幅方向端部も同様な構成の調整機構78が形成されている。
このような構成の調整機構78による調整手順を示す。まず、一対のフレームプレート44a,44bの間に、フレームプレート44a,44bのシャフト受け孔90と、固定側ロープ掴み58の雌ねじ部80とが向き合うように、固定側ロープ掴み58を仮置きする。続いて、フレームプレート44aおよびフレームプレート44bの外面側から調整シャフト84をシャフト受け孔90に挿入し、さらに雄ねじ部82と雌ねじ部80とを螺合させる。この場合、調整シャフト84の雄ねじ部88の端部に工具装着部(例えば、六角レンチの装着孔)を形成しておけば、雄ねじ部82と雌ねじ部80との螺合を容易かつ強固に行うことができる。続いて、フレームプレート44aおよびフレームプレート44bに対して固定側ロープ掴み58の第一の方向Mに対する位置を調整しながらフレームプレート44aおよびフレームプレート44bの外面から突出した状態の雄ねじ部88に固定ナット86を螺合させる。固定側ロープ掴み58の固定側ロープ掴みシュー58aの位置が可動側ロープ掴みシュー60aと正確に向き合う位置に調整できたら、左右の固定ナット86の締め込み位置を確定し、固定側ロープ掴み58の位置調整および固定が完了する。
このように、調速機10の固定側ロープ掴み58が調整機構78を備えることで、調速機10の取り外し作業時に固定側ロープ掴み58を取り外しても、固定側ロープ掴み58の再装着時には固定側ロープ掴みシュー58aのU溝を可動側ロープ掴みシュー60aのU溝に正確に向き合わせて、把持機構38が良好に機能する状態に容易に復帰させることができる。
図9には、第一の方向M(固定側ロープ掴み58の幅方向)の位置調整が可能な固定側ロープ掴み58を支持するフレームプレート44aの変形例が示されている。なお、フレームプレート44bも同様の形状である。フレームプレート44aは、図8に示す円形のシャフト受け孔90に代えてフレームプレート44aの上面44cに開口した装着溝部92を有する。装着溝部92は、例えば、略「J」形状であり、上面44cから第一の方向Mに直行する第二の方向N(調速機ロープ24の移動方向)に延びる直線溝部92aと、この直線溝部92aから端面44d(可動側ロープ掴み60による付勢方向の端面)に向かい湾曲する湾曲溝部92bを備える。上面44cから直線溝部92aに進入して湾曲溝部92bを経由した調整シャフト84は、支持面92cに当接して停止する。支持面92cは、固定側ロープ掴み58が可動側ロープ掴み60によって押圧されたとき、つまり固定側ロープ掴み58と可動側ロープ掴み60とが、調速機ロープ24を把持して当該調速機ロープ24を停止させる場合の付勢力の受け面となる。つまり、装着溝部92の支持面92cの位置は、調整シャフト84を有する固定側ロープ掴み58の底面が装着姿勢でベース部材42に密着させるように決められている。
このように構成されるフレームプレート44aおよびフレームプレート44bを備える調速機10の場合、調速機ロープ24をロープ通路74に沿って移動させる場合、その準備として、固定側ロープ掴み58は、固定ナット86(図7参照)を緩めて調整シャフト84を当該固定側ロープ掴み58に装着したままの状態でよい。そして、固定側ロープ掴み58に固定された調整シャフト84を装着溝部92(湾曲溝部92b、直線溝部92a)を介して上面44cから抜く(外す)ことができる。同様に、固定側ロープ掴み58を取り付ける場合は、調整シャフト84および固定ナット86を固定側ロープ掴み58に付けた状態のままで、フレームプレート44aおよびフレームプレート44bに仮装着できる。そして、図7で説明したように固定側ロープ掴み58の装着位置の微調整を行いつつ、固定ナット86を締め込めば固定側ロープ掴み58の装着固定が完了できる。その結果、調速機10の取り外しおよび取り付け作業をより簡略化できる。また、調整シャフト84および固定ナット86を固定側ロープ掴み58に付けた状態のままで作業できるので、作業中の部品の紛失が抑制され、作業性の改善に寄与できる。
なお、この場合、調整シャフト84は別部品として、図7で示したように雄ねじ部82を用いて固定側ロープ掴み58に後付けする構成でもよいし、調整シャフト84を固定側ロープ掴み58に一体形成したものでもよい。また、装着溝部92の形状は、一例であり、図9に示す「J」形状以外でもよい。例えば、固定側ロープ掴み58が把持動作のときに支持面92cが受ける力の方向と異なる方向に装着溝部92の溝が開口していればよい。例えば、L形状でもよいし、溝の方向転換を何回か行う形状でもよい。また、調整シャフト84を支持面92cに当接させた後に、カバー部材で装着溝部92を覆ったり、封止部材を直線溝部92aや湾曲溝部92bに詰め込んでもよい。この場合、装着溝部92に異物や塵が入り込むことを抑制できる。その結果、調整シャフト84の着脱作業の妨げや、調整シャフト84と支持面92cとの密着性の妨げを抑制できる。また、調整シャフト84に、スパナ掛け加工部84a(平面部)を形成してもよい。スパナ掛け加工部84aにスパナを掛けて固定することによりボルト76を締め込む際に固定側ホルダ58bや調整シャフト84が回転したり移動したりすることを抑制して、固定側ロープ掴み58の位置決め精度を向上することができる。なお、スパナ掛け加工部84aは、図7に示す調整シャフト84に設けてもよく、同様に効果を得ることができる。
図10は、固定側ロープ掴み58の変形例として、位置調整可能な固定側ロープ掴み94を示す。固定側ロープ掴み94は、固定側ロープ掴みシュー94aと固定側ホルダ94bとで構成される。固定側ロープ掴みシュー94aは、上述した固定側ロープ掴みシュー58aと同様にU溝を有し、可動側ロープ掴みシュー60aと協働して調速機ロープ24を把持する。固定側ホルダ94bの第一の方向Mの幅は、フレームプレート44aとフレームプレート44bとの間隔Qと実質的同じ幅Pを有する。したがって、固定側ホルダ94bは、フレームプレート44a,44bの間にボルト96等の締結部材によって固定される。固定側ロープ掴み94は、固定側ロープ掴みシュー94aを固定するためのボルト96を挿通する長孔部98を備える。長孔部98は、第一の方向Mに延設されている。図10に示す固定側ホルダ94bの場合、2つの長孔部98が形成されているが、形成数は適宜選択できる。例えば、固定側ロープ掴みシュー94aが装着姿勢で固定側ホルダ94bに対して回転しないように回り止め構造を有する場合、長孔部98は1つ、つまり、1本のボルト96で固定側ロープ掴みシュー94aを固定する構造としてもよい。また、長孔部98は3つ以上設けてもよい。固定側ロープ掴みシュー94aには、長孔部98に挿通されたボルト96が螺合する雌ねじ部94cが形成されている。
固定側ロープ掴み94の場合、フレームプレート44aおよびフレームプレート44bに対する着脱は、ボルト96の締め付け動作、弛緩動作のみで完了する。また、固定側ロープ掴みシュー94aの第一の方向Mに関する位置決めの微調整は、固定側ロープ掴みシュー94aをボルト96で固定する際に長孔部98内で行えばよい。このように、固定側ロープ掴み94の場合、フレームプレート44aおよびフレームプレート44b(調速機10)に対する固定および固定位置の微調整をボルト96の締め込み作業のみで実現することができる。その結果、調速機10の取り外し、取り付け作業が図7や図9で示した構造のものより容易となり、作業性の向上に寄与できる。また、調整機構の構造が簡略化され、部品点数の削減や加工コストの低減に寄与することができる。
図11は、ロープ通路74の他の形成例を示す図である。図11に示す例の場合、ロープ通路74は、固定側ロープ掴み58(第一の把持プレート)および可動側ロープ掴み60(第二の把持プレート)と交わらない方向に延設されている。図11に示す例の場合、一端が貫通孔72に連通したロープ通路74は、固定側ロープ掴みシュー58aと可動側ロープ掴みシュー60aとの間を第一の方向Mに向かって延設され、ベース部材42のフレームプレート44bが固定された側の外縁部42bに開口している。なお、フレームプレート44bは、ロープ通路74が外縁部42bに達する位置でロープ掴み支持部44e、回転軸支持部44fに分離され、ロープ通路74を移動させる調速機ロープ24と干渉しないようになっている。
このようにロープ通路74を形成することにより、調速機10に貫通する調速機ロープ24を貫通孔72から取り外す際に、固定側ロープ掴み58をフレームプレート44aおよびフレームプレート44bまたはベース部材42から取り外す必要がなくなる。その結果、調速機10の取り外し作業および調速機10の取り付け作業がロープ通路74をベース部材42の外縁部42aに開口させる場合に比べて容易になる。また、固定側ロープ掴み58の取り外し作業は不要になるので、固定側ロープ掴み58と可動側ロープ掴み60との取付位置は、当初の正確に対面した状態が維持されるので、固定側ロープ掴み58の微調整作業も不要になり、さらに作業が簡略化できる。
なお、図11の場合、ロープ通路74が直線形状で外縁部42bに向かう例を示したが、これに限定されず、固定側ロープ掴み58および可動側ロープ掴み60と干渉しない経路を辿れば、湾曲部や屈曲部を含んでもよい。湾曲部や屈曲部を含むことにより、ロープ通路74の開口部を固定側ホルダ58bが固定された位置から逆方向に離すことができる。つまり、ロープ掴み支持部44eをより大きく形成して、ロープ掴み支持部44eとベース部材42との接触面積(固定面積)を増大させるとともに、ボルト等の締結部材を増やして固定強度の増強を図ることができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10 調速機、12 エレベータ、16 乗りかご、24 調速機ロープ、28 綱車、34 ロープ連結部、36 セフティーリンク、38 把持機構、40 調速機本体、42 ベース部材、42a,42b 外縁部、44a,44b フレームプレート(支持壁)、48 溝、58,94 固定側ロープ掴み(第一の把持プレート)、60 可動側ロープ掴み(第二の把持プレート)、72 貫通孔、74 ロープ通路、78 調整機構、S1,S2 隙間、98 長孔部。

Claims (5)

  1. 乗りかごの昇降動作に連動して移動する調速機ロープが巻き掛けられ、前記調速機ロープの移動速度が所定値を超えた場合に前記調速機ロープを把持する把持機構を有する調速機本体と、
    前記調速機本体を支持するとともに、前記調速機ロープを前記乗りかごの昇降方向に貫通させる貫通孔が形成されたベース部材と、
    を備え、
    前記ベース部材は、一端が前記貫通孔に連通し他端が前記ベース部材の外縁部に開口し前記調速機ロープを前記外縁部から導出させるロープ通路を有するエレベータの調速機。
  2. 前記把持機構は、前記ベース部材に設けられた第一の把持プレートと、前記調速機ロープを挟んで前記第一の把持プレートと対向する位置に設けられた第二の把持プレートとを備え、
    前記第一の把持プレートは、前記ロープ通路の少なくとも一部を覆うように前記ベース部材に着脱自在である請求項1に記載のエレベータの調速機。
  3. 前記第一の把持プレートは、当該第一の把持プレートと前記第二の把持プレートとで前記調速機ロープを把持する場合の把持位置の調整を行うために、前記第一の把持プレートを前記調速機ロープが巻き掛けられた綱車の溝の幅方向である第一の方向に移動させる調整機構を有する請求項2に記載のエレベータの調速機。
  4. 前記第一の把持プレートの前記第一の方向の幅は、当該第一の把持プレートを支持するために前記ベース部材に前記第一の方向に隙間を空けて固定された一対の支持壁の間隔より狭く形成され、
    前記調整機構は、前記第一の把持プレートが前記一対の支持壁の間に配置された場合の前記支持壁と前記第一の把持プレートの前記支持壁に対向する端面との隙間を調整する請求項3に記載のエレベータの調速機。
  5. 前記把持機構は、前記ベース部材に設けられた第一の把持プレートと、前記調速機ロープを挟んで前記第一の把持プレートと対向するように設けられた第二の把持プレートを備え、
    前記ロープ通路は、前記第一の把持プレートおよび前記第二の把持プレートと交わらない方向に延設された請求項1に記載のエレベータの調速機。
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