JP6070367B2 - 白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤 - Google Patents

白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤 Download PDF

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本発明は、非常に簡便な方法かつ食品でも応用可能な合成方法によって得られるヒドロキシスチルベン類の環化反応生成物を含有する白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤に関するものである。
化合物の誘導体化技術は、化合物の高機能化を目的に医薬品の開発などで広く使われている。たとえば、抗インフルエンザ薬として広く用いられているタミフル(登録商標)は、生薬である八角に含まれるシキミ酸を誘導体化して得られている。他にも、インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンはクロフィブラートをリード化合物とする誘導体合成の研究により得られたものである。
しかし、医薬品などで使用される誘導体化技術は、その合成方法の煩雑さや生成コストの高さから医薬品としての用途には耐えるが、たとえば機能性の高い食品原材料、もしくは添加物としての用途としては、コスト、安全性の法規面からそれらの用途には耐えないものが多い。
一方、高齢化社会が到来した先進国においてその医療費の増大は社会問題化しており、病気を事前に予防する予防医学の発達が求められている。医薬品や特別な医療行為による対処療法的なこれまでの医学とは異なり、予防医学では日常生活から健康に良いものを摂取することで病気を未然に防ぐことを目的としている。そのような現状から予防医学と食品は深い関わりがある。
哺乳動物の脂肪組織を構成する脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の二種類が存在する。白色脂肪細胞は主にトリグリセリドの形で摂取したエネルギーを蓄積する役割を持ち、一方、褐色脂肪細胞は蓄積されたエネルギーを熱へと変換する役割がある。褐色脂肪細胞は筋芽細胞を起源に発生し、細胞内部に多数のミトコンドリアを含むことで褐色に色づいている脂肪細胞であるが、ミトコンドリア中に発現する脱共役タンパク質(Uncoupling protein 1;UCP1)の働きにより熱産生を行う(非特許文献1)。
褐色脂肪細胞により構成される褐色脂肪組織は、幼児期に多数見受けられ、成長するに従いその組織量は減少する。由来幹細胞が異なることから白色脂肪細胞より褐色脂肪細胞は発現しないと考えられてきたが、近年、白色脂肪組織中に褐色脂肪細胞と同様の応答を示す「褐色様脂肪細胞」の存在が明らかとなってきた(非特許文献2)。褐色様脂肪細胞は白色脂肪細胞由来ながらミトコンドリアの存在量が白色脂肪細胞と比較して格段に多く、蓄積された脂質エネルギーを効率よく熱エネルギーへと変換することから、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導は肥満症や糖尿病の根本治療方法として注目されている。
しかしながら、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化を誘導することは難しく、確認されている方法は、長期間の寒冷刺激や、アドレナリンによる刺激(非特許文献1)、ペルオキソーム増殖剤応答性受容体(PPARγ)アゴニストの添加(非特許文献3)などのみであり、加えて、すべて、皮下脂肪細胞のみに分化誘導効果が限定される。また、特許文献1にてヒト内臓脂肪細胞に対しUCP1遺伝子の発現増幅効果のある化合物が報告されているが、作用濃度が非常に高く、生体内での有効濃度の達成が難しく、且つ、白色脂肪細胞の褐色化に対する言及も無い。
一方、いわゆる「フレンチパラドックス」と言われる赤ワインの有用な生理効果は、レスベラトロールの抗酸化能を始めとして各種の生理活性機能が一因であるとされている。レスベラトロールはブドウ果皮やピーナッツ赤皮に多く含まれるヒドロキシスチルベン類の一種で、サーチュインを介したカロリー制限効果をはじめ、抗真菌、抗細菌、抗炎症などさまざまな活性を有する植物由来化合物として知られている(非特許文献4)。さらに、レスベラトロールには、サーチュインの発現促進を介した脂肪細胞への分化及び脂肪の蓄積を抑える働きが報告されている(非特許文献5)。しかし、アカゲザルに対する実験の結果、カロリー制限という行為自体が延命に有用な効果があるか疑問がもたれている中(非特許文献6)、レスベラトロールが持ち合わせるサーチュインを介したカロリー制限効果もヒトに対する効果は定かではない。さらに、レスベラトロールには、白色脂肪細胞に特異的に発現する脱共役タンパク質UCP2の遺伝子発現亢進効果について報告があるものの(特許文献2)、これまで、レスベラトロールについて、白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化効果について言及されたものは一切無い。
このように、今日に至るまで、食欲の抑制や脂肪吸収抑制ではない、脂肪細胞そのものの性質を変化させ、代謝を変化させることでメタボリックシンドロームを予防・治療する根本的な治療・予防剤、及びそれらを含む機能性食品の開発が望まれてきたが、これまでのところすべての白色脂肪細胞に対して十分な効果が認められるような物質は見つかっておらず、早期の開発が望まれていた。
特開2011−241195号公報 特開2010−24208号公報
Cell Biosci. 2011 Oct 28;1:35 Cell.2012 Jul 20;150(2):366−769 Cell Metab.2012 Mar 7;15(3):395−404 レスベラトロールの基礎と応用、シーエムシー出版 Nature.2004 June 17;429(6993):771 Nature.2012 Sep 13;489(7415):318
本発明者らは、前記の状況を鑑みて、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を示す化合物の探索と、その製造方法を確立すべく鋭意検討した結果、ヒドロキシスチルベン類をアルカリ条件下で加熱処理するという簡便且つ安全な方法により、意外にも、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を示す新たな化合物を製造することに成功し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明の課題は、これまでヒドロキシスチルベン類には見られなかった、優れた白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有する新規化合物を含有する白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤を提供することにある。
即ち、本発明の要旨は、ヒドロキシスチルベン類の環化反応生成物であって、式(1):
Figure 0006070367
(但し、式(1)中、R1〜R8は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、あるいは炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含有することを特徴とする白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤に関する。
本発明で用いる前記式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩は、前駆物質であるヒドロキシスチルベン類よりも顕著に優れた白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有しており、新規なメタボリックシンドローム治療及び予防物質として有用である。
また、本発明の白色脂肪細胞から褐色様脂肪細胞への分化誘導剤を食品、医薬品又は医薬部外品に配合することで、新規なメタボリックシンドローム予防又は改善用の食品、医薬品又は医薬部外品を提供することができる。
図1は、実施例2で実施した分化誘導後の脂肪細胞中のUCP1遺伝子、褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子である細胞死誘導DFFA様エフェクターa(Cidea)、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるシトクロムcオキシダーゼポリペプチド7A1(Cox7a1)の各遺伝子の相対発現量を示すグラフである。 図2は、実施例3で実施した正常皮下脂肪分化誘導後の脂肪細胞中のUCP1遺伝子、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるシトクロムcオキシダーゼポリペプチド7A1(COX7a1)、褐色様脂肪細胞マーカー遺伝子であるCITED1の各遺伝子の相対発現量を示すグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いる、ヒドロキシスチルベン類の環化反応生成物は、
式(1):
Figure 0006070367
(但し、式(1)中、R1〜R8は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、あるいは炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
前記式(1)において、R1〜R8で表される炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
また、R1〜R8で表される炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。
中でも、前記R1〜R8のうち1つ以上が水素原子であることが好ましく、R1〜R8が全て水素原子であることがより好ましい。
前記式(1)で表される化合物において、炭素−炭素2重結合は、トランスまたはシスであってよい。また、前記式(1)で表される化合物として、シス体とトランス体との混合物であってもよい。
前記式(1)で表される化合物の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;アルミニウムヒドロキシド塩等の金属ヒドロキシド塩;アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、アルキレンジアミン塩、シクロアルキルアミン塩、アリールアミン塩、アラルキルアミン塩、複素環式アミン塩等のアミン塩;α−アミノ酸塩、ω−アミノ酸塩等のアミノ酸塩;ペプチド塩又はそれらから誘導される第1級、第2級、第3級若しくは第4級アミン塩等が挙げられる。これらの薬学的に許容可能な塩は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩(以下、前記式(1)で表される化合物ともいう。)は、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化を誘導する作用を有する。この脂肪細胞分化誘導作用は、具体的には後述の実施例2、3に記載の方法によって測定することができる。
前記式(1)で表される化合物は、ヒドロキシスチルベン類を原料化合物としてアルカリ条件下で加熱処理することで得られる。
ヒドロキシスチルベン類とは、式(2):
Figure 0006070367
(但し、式(2)中、R1〜R4は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、あるいは炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、R1〜R4はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
で示されるヒドロキシスチルベン誘導体及びその薬学的に許容可能な塩である。
前記式(2)において、R1〜R4で表される炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基である。その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
また、R1〜R4で表される炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。中でも、前記R1〜R4のうち1つ以上が水素原子であることが好ましく、R1〜R4が全て水素原子であるレスベラトロールがより好ましい。
前記式(2)で表される化合物の薬学的に許容可能な塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;アルミニウムヒドロキシド塩等の金属ヒドロキシド塩;アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、アルキレンジアミン塩、シクロアルキルアミン塩、アリールアミン塩、アラルキルアミン塩、複素環式アミン塩等のアミン塩;α−アミノ酸塩、ω−アミノ酸塩等のアミノ酸塩;ペプチド塩又はそれらから誘導される第1級、第2級、第3級若しくは第4級アミン塩等が挙げられる。これらの薬学的に許容可能な塩は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記原料化合物として使用されるヒドロキシスチルベン類は、天然由来のものであっても、化学合成された純度の高い化成品であっても良い。天然由来の原料化合物としては、完全に精製されたものである必要はなく、他の化合物を含む混合物も使用できる。
ただし、前記式(1)で表される化合物の生成効率や回収率を高める観点からは、前記ヒドロキシスチルベン類としては、ヒドロキシスチルベン類換算で、合計5重量%以上含有されたものが原料として望ましい。このような原料としては、例えばブドウ果皮、ワイン、ワイン濃縮パウダー、メリンジョ、リンゴンベリー、ピーナッツ果皮、イタドリ等の原料からの抽出物や該抽出物の凍結乾燥品等を使用してもよい。
本発明では、ヒドロキシスチルベン類を適切な溶媒に溶解させる。この際、溶媒が水のみであると、ヒドロキシスチルベン類の水への溶解度がいずれも低いために、水と有機溶媒の混合液や、有機溶媒のみに溶解させることが好ましい。水と有機溶媒の配合比や、有機溶媒の種類については特に制限はなく、ヒドロキシスチルベン類が十分に溶解すれば良い。中でも、メタノールやエタノールのみの溶媒や、水とメタノール、水とエタノール等の混合液を使用することが、安全性やコスト面から好ましい。前記の生成反応後に得られる組成物に最終的な精製を十分に適用せず、その組成物を食品、医薬品、医薬部外品等に使用する場合には、安全性や法規面から溶媒としてエタノールや水、含水エタノールを使用することが望ましい。
前記のようにヒドロキシスチルベン類を溶媒に溶解して得られる混合溶液中のヒドロキシスチルベン類の濃度については、特に制限はないが、それぞれの濃度が高いほど、溶媒使用量が少ない等のメリットもあるため、ヒドロキシスチルベン類の濃度は各々の溶媒に対しヒドロキシスチルベン類がそれぞれ飽和する濃度近くに調整することが好ましい。
次に、前記ヒドロキシスチルベン類含有溶液のpHをアルカリ性となるように調整する。調整方法として、例えば、ヒドロキシスチルベン類含有溶液を調製した後にアルカリ化剤を添加しpHを調整しても良いし、前述のヒドロキシスチルベン類含有溶液の調製時に前もって溶媒のpHを調整しておいても良い。ヒドロキシスチルベン類含有溶液の反応開始時のpHは8.0以上であれば、効率的に後述の反応が進むので好ましく、pH13.0を越えると反応と同時に、他の反応や目的化合物の分解も一方で生じるために最終的なヒドロキシスチルベン類重合化合物群の回収量が低下する。したがって、反応開始時のpHは8.0〜13.0が望ましい。
前記アルカリ化剤としては、特に制限はないが、安全性、効率及びコスト面からは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムが望ましい。反応時のpH変化を極力抑える場合が生じた際には、緩衝溶液を用いても良いが、必ずしも必要な手法ではない。
次に、アルカリ性に調整されたヒドロキシスチルベン類含有溶液を加熱する。この加熱により、ヒドロキシスチルベン類どうしを環化反応させ、前記式(1)で表される化合物の生成を行う。本発明において環化反応とは、ヒドロキシスチルベン類どうしが重合反応することで6員環を形成する反応をいう。前記環化反応を効率的に進ませるために、ヒドロキシスチルベン類含有溶液の加熱温度は110℃以上に調整することが好ましい。また、使用する溶媒の沸点から考え、加圧加熱が望ましい。例えば、開放容器にヒドロキシスチルベン類含有溶液を入れ、溶媒の沸点を超える高温で前記容器を加熱する、密閉容器にヒドロキシスチルベン類含有溶液を入れ、前記容器を加熱する、レトルト装置やオートクレーブを用いて加圧加熱する等、少なくとも部分的に溶液温度が110℃以上に達するように加熱することが好ましい。回収効率面から、溶液温度が均一に120℃〜180℃になることが、さらに好ましい。加熱時間も加熱温度と同様に限られたものではなく、効率的に目的の反応が進行する時間条件とすればよい。特に、加熱時間は加熱温度との兼ね合いによるものであり、加熱温度に応じた加熱時間にすることが望ましい。例えば、130℃付近で加熱する場合は、5分〜60分の加熱時間が望ましい。また、加熱は、一度でも良いし、複数回に分けて繰り返し加熱しても良い。複数回に分けて加熱する場合、溶媒を新たに追加して行うことが好ましい。
前記加熱による前記式(1)で表される化合物の生成反応の終了は、例えば、HPLCによる成分分析により生成量を確認して判断すればよい。
また、安全な原料のみを用いた工程により前記式(1)で表される化合物を製造した場合には、前記式(1)で表される化合物を含む混合物の状態で後述のように食品、医薬品、医薬部外品等に使用することが可能である。例えば、天然由来のレスベラトロールを含水エタノール溶媒に溶解し、水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウムでアルカリ性となるようにpH調整を行い、加熱反応させた場合には、得られる液状の反応物を食品、医薬品、医薬部外品等の原料の一つとして使用することが可能である。
また、風味の改良やさらなる高機能化を望む場合は、前記反応物を濃縮して式(1)で表される化合物の濃度を高める、あるいは前記反応物を精製し、式(1)で表される化合物の純品を得ることができる。前記濃縮や精製は、公知の方法で実施可能である。例えば、クロロホルム、酢酸エチル、エタノール、メタノール等の溶媒抽出法や炭酸ガスによる超臨界抽出法等で抽出して式(1)で表される化合物を濃縮できる。また、カラムクロマトグラフィーを利用して濃縮や精製を施すことも可能である。また、前記濃縮や精製には、再結晶法や限外ろ過膜等の膜処理法も使用できる。
前記式(1)で表される化合物を前記反応物から分離して回収する場合には、カラムクロマトグラフィー、HPLC等を用いてもよい。
また、前記濃縮物や精製物を、必要に応じて、減圧乾燥や凍結乾燥して溶媒を除去することで、粉末状の固形物を得ることができる。
以上のようにして得られる式(1)で表される化合物は、原料であるヒドロキシスチルベン類に比べて、より強力な白色脂肪細胞からの褐色様脂肪細胞への分化を誘導する作用を有しており、この褐色様脂肪細胞分化誘導作用により、メタボリックシンドロームの予防、改善を図ることができることから、この式(1)で表される化合物を有効成分として含有する本発明の薬剤は、新規のメタボリックシンドローム予防剤及び/又は治療剤として有用である。なお、前記白色脂肪細胞からの褐色様脂肪細胞への分化を誘導する作用は、原料であるヒドロキシスチルベン類には見られない作用である。
本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤は、前記式(1)で表される化合物のみを含有していてもよいが、前記式(1)で表される化合物をエタノール又はエタノール含有水溶液等の溶媒に溶解した液剤としたり、公知の方法で乳剤、懸濁剤としたりしてもよい。本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤中の前記式(1)で表される化合物の含有量は、0.001重量%以上であればよい。
本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤の投与量としては、患者の性別、年齢、生理的状態、病態(肥満の進み具合等)、製剤形態、投与経路、投与回数、薬剤における有効成分濃度等に応じて広い範囲から適宜選択できるが、例えば、成人1日当たり、式(1)で表される化合物の含有量が0.01〜500mg/kg程度、好ましくは0.1〜100mg/kg程度であればよい。投与は、例えば、1日当たり1回又は数回に分けてもよい。
本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤は、医薬品として製剤化してもよい。この製剤形態としては特に限定されず、例えば、注射剤、坐剤、点眼剤、軟膏剤、エアゾール剤等の非経口剤、錠剤、被覆錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、トローチ剤、チュアブル錠、シロップ剤等の経口剤等が挙げられる。製剤化の際には、薬学的に許容される担体、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、安定化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤等が用いられる。
担体や賦形剤としては、例えば、乳糖、ショ糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マルトース、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、イノシトール、デキストラン、ソルビトール、アルブミン、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム及びこれらの混合物等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール及びこれらの混合物等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、水、エタノール、リン酸カリウム及びこれらの混合物等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖及びこれらの混合物等が挙げられる。
希釈剤としては、例えば、水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類及びこれらの混合物等が挙げられる。
安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、チオ乳酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ホウ酸、ブドウ糖、グリセリン及びこれらの混合物等が挙げられる。
pH調整剤及び緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム及びこれらの混合物等が挙げられる。
さらに本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤は、増量剤、可溶化剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、抗酸化剤、細菌抑制剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を含んでいてもよい。
また、本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤を食品の形態に製剤化してもよい。食品としては特に限定されず、例えば、飲料、アルコール飲料、ゼリー、菓子、機能性食品、健康食品、健康志向食品等が挙げられる。保存性、携帯性、摂取の容易さ等を考慮すると、菓子類が好ましく、菓子類の中でも、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ、タブレット、チューイングガム等が好ましい。
本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤を食品の形態に製剤化する場合、式(1)で表される化合物の該食品における含有量は、通常0.001〜20重量%程度である。
また、本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤を医薬部外品の形態に製剤化してもよい。医薬部外品としては特に限定されないが、例えば、ドリンク剤等の栄養補助医薬部外品が好ましい。この場合、有効成分である式(1)で表される化合物の医薬部外品における含有量は、通常0.001〜30重量%程度である。
また、本発明の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導剤は、ヒトに対してだけでなく、非ヒト動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類等の治療剤又は飼料に配合してもよい。飼料としては、例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、イヌ、ネコ、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。ここでは、ヒドロキシスチルベン類としてトランス−レスベラトロールを用いているが他のヒドロキシスチルベン類でも同様の反応で化合物が得られる。
(実施例1:ヒドロキシスチルベン類誘導体UHA4003の生成及び単離・精製)
特開2013−28560号公報の実施例1に記載の方法に従って、ヒドロキシスチルベン類誘導体UHA4003の生成、単離、精製を行った。すなわち、トランス−レスベラトロール(東京化成工業(株)製)700mgをエタノール14mLに溶解し、2.5%炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)社製)水溶液を14mL加えて、レスベラトロール含有溶液(pH9.9)を得た。このレスベラトロール含有溶液をオートクレーブ(三洋電機製、「SANYO LABO AUTOCLAVE」、以下同じ)にて130℃、20分間加熱した。次いで、1回目のオートクレーブ処理にて得られた反応溶液に、エタノール14mLと5.0%炭酸水素ナトリウム水溶液を14mL加え、再度、オートクレーブにて130℃、20分間加熱した。得られた反応溶液をHPLCで分析したところ、いくつかのピークで示される化合物が確認できた。
なお、前記HPLCは以下条件にて行った。
カラム:逆相用カラム「Develosil(登録商標)C−30−UG−5」(4.6mmi.d.×250mm)
移動相:A・・・H2O(0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)), B・・・アセトニトリル(0.1%TFA)
流速:1mL/min
注入:10μL
検出:254nm
勾配(容量%):80%A/20%Bから20%A/80%Bまで30分間、20%A/80%Bから100%Bまで5分間、100%Bで10分間(全て直線)
次いで、複数のピーク化合物を分取して、HPLC、高分解能FAB−MS(Fast Atom Bombardment−Mass Spectrometry)、核磁気共鳴測定より純度、構造を確認したところ、上記HPLC分析条件において溶出時間16分付近に見られるピークから式(3)で示すヒドロキシスチルベン類誘導体(以下UHA4003)を得た。
Figure 0006070367
なお、前記UHA4003を核磁気共鳴(NMR)測定に供したところ、1H−NMR、13C−NMRおよび各種2次元NMRデータの解析から、前記UHA4003が前記式(3)で表される構造を有することを確認した。
また、UHA4003について、本発明者らは、これまでに抗癌作用(特開2011−251914号公報)、レプチン抵抗性改善作用(特開2013−28560)、成熟脂肪細胞肥大化抑制作用(特願2011−239359)、抗炎症作用(特願2012−041755)、成熟脂肪細胞のUCP−2発現促進作用(特願2012−218619)等を有することを確認しているが、白色脂肪細胞より褐色様脂肪細胞への分化誘導に対する効果については確認しておらず、一般的にも未だ知られていない。
(実施例2:UHA4003の白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用指標遺伝子発現の検証)
白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用を評価するために、3T3−L1細胞(マウス由来前駆脂肪細胞)を用いて評価を行った。3T3−L1前駆脂肪細胞は通常、分化誘導過程を経て、白色脂肪細胞へと分化、成熟する。しかし、褐色様脂肪細胞へと分化誘導されることで白色脂肪細胞ではほとんど観察されないCidea遺伝子の発現や、ミトコンドリアに発現するCox7a1遺伝子の発現量の増加、及びミトコンドリア特異的に発現するシトクロムcオキシダーゼタンパク質の発現量の増大、UCP1遺伝子の発現亢進が観察されるようになる。そこで、Cidea、Cox7a1及びUCP1の各遺伝子の発現量を指標に、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導を確認した。
試料にはPPARγの合成アゴニストであるロシグリタゾン(Rosiglitazone)及びUHA4003の2種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)社製)に0.2mM、2mMの濃度で溶解させて試験に使用した。
培養は、10%ウシ胎児血清(Foetal Bovine Serum:FBS Biological industries社製)、1%アンチバイオティック−アンチマイコティック(「Antibiotic−Antimycotic」、ギブコ(GIBCO)社製)を含む「Dulbecco’s modified Eagle medium」(DMEM、商品名、Sigma社製)を用いていった。試験に使用する脂肪細胞は定法に従って調製した。
試験は以下のように行った。細胞培養用12wellディッシュ(コーニング社製)に3T3−L1細胞を5×104cells/mLの濃度で1mL播種して37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。24時間後、DMEM培地をUHA4003が終濃度20μM、又はロシグリタゾンが終濃度1μMとなるように調整したDMEM培地に交換し培養を続け、100%コンフルエントとし、さらに48時間培養した。次に、培地を「AdipoInducer Reagent」(商品名、タカラバイオ(株)社製)付属のインスリン、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチンをそれぞれ1%、0.5%、0.1%添加した分化用DMEM1mLに、各試料を終濃度20μM、1μMとなるように添加、交換し、37℃、5%CO2条件下で48時間分化誘導した。48時間の分化誘導後、インスリンを1%添加した維持培養用DMEM2mLに交換し、さらに1週間培養を行い、脂肪細胞の成熟化を行った。なお、溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものをコントロールとした。
培養終了後、細胞よりRNA抽出キット(商品名:NucleoSpin(登録商標)RNA II、タカラバイオ(株)製)を用いて全量RNAを抽出・精製した。得られたRNAを2ステップリアルタイムRT−PCR用逆転写試薬(商品名:PrimeScript(登録商標)RTMaster Mix、タカラバイオ(株)製)の取扱説明書に準じて逆転写反応を行った。
つまり5×(Primescript RT Master Mix)2μL及び全量RNA 500ngを混合し、RNase Free dH2Oで全量を10μLにした。PCR用サーマルサイクラー(商品名:GeneAmp(登録商標)PCR System 9700、Applied Biosystem社製)を使用して1サイクルが「37℃×15分→85℃×5秒」であるプログラムにて逆転写反応を行った。逆転写反応液をリアルタイムRT−PCR用希釈試薬(商品名:EASY Dilution、タカラバイオ(株)製)にて5倍希釈した希釈液をリアルタイムRT−PCR解析に使用した。
リアルタイムRT−PCR解析は定法に従って行った。解析には、「ECO Realtime RT―PCR system」(商品名、イルミナ(株)製)を使用した。プライマーには、Cideaフォワードプライマー(プライマーID:MA104629−F)、Cideaリバースプライマー(プライマーID:MA104629−R)、Cox7a1フォワードプライマー(プライマーID:MA106801−F)及びCox7a1リバースプライマー(プライマーID:MA106801−R)、UCP1フォワードプライマー(プライマーID:MA027561−F)及びUCP1リバースプライマー(プライマーID:MA027561−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー(プライマーID:MA050368−F)及びACTBリバースプライマー(プライマーID:MA050368−R)(前記8種のプライマーはいずれもタカラバイオ(株)製)を使用した。
反応にはリアルタイムRT−PCR試薬(商品名:SYBR(登録商標)Premix EX taqII(Tli RNaseH Plus)、タカラバイオ(株)製)を使用した。反応液は48ウェルPCRプレート(イルミナ(株)製)中に、2×(SYBR Premix EX taq II(Tli RNaseH Plus))5μL、フォワードプライマー(50μM)0.08μL、リバースプライマー(50μM)0.08μL、逆転写反応液2μL及びdH2O 2.84μL(総量10μL)を混合して『95℃×30秒→「95℃×15秒→60℃×1分」×40サイクル→95℃×15秒→55℃×15秒→95℃×15秒』のプログラムにてPCR反応を行った。
得られた各細胞中のβ−アクチンとCidea、Cox7a1及びUCP1のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からCidea及びCox7a1、UCP1の各遺伝子発現量の相対値を算出した。結果を図1に示した。
その結果、ロシグリタゾン添加時と同様に、褐色様脂肪細胞のマーカー遺伝子であるCidea遺伝子発現量がUHA4003添加時に有意に増大していることが見いだされ、さらに、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるCox7a1の発現量が有意に増大していることが明らかになった。また、UCP1遺伝子の発現量も有意に増加していることが明らかになった。ロシグリタゾンは合成アゴニストであり、その効果はUHA4003と比較すると強いが、UHA4003は遥かに簡便な方法で得られるメリットのある化合物であり、且つ、ロシグリタゾン同様極めて強い白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有する可能性が高いことが示された。
(実施例3:UHA4003の正常ヒト皮下脂肪に対する褐色様脂肪細胞分化誘導作用指標遺伝子発現の検証)
3T3−L1細胞を用いて見られた、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞分化誘導作用を評価するために、ヒト皮下脂肪由来正常前駆脂肪細胞(ロンザ・ジャパン社)を用いて評価を行った。正常前駆脂肪細胞は通常白色脂肪細胞へと分化するが、褐色様脂肪細胞へと分化誘導されることで白色脂肪細胞ではほとんど観察されないUCP−1遺伝子の発現や、ミトコンドリアに発現するCox7a1遺伝子の発現量の増加、及び褐色様脂肪細胞特異的に発現するCBP/p300‐interacting transactivator(CITED1)遺伝子の発現亢進が観察されるようになる。そこで、CITED1、Cox7a1及びUCP1の各遺伝子の発現量を指標に、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導を確認した。
試料にはPPARγアゴニストであるロシグリタゾン及びUHA4003の2種類を用いた。各試料をジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業(株)社製)に適当な濃度で溶解させて試験に使用した。
皮下脂肪由来正常ヒト前駆脂肪細胞(ロンザ・ジャパン社製)を 10%のFBSと2mMグ ルタミン、及びGA−1000を前駆脂肪細胞基本培地(Preadipocyte Basal Medium−2;PMB−2培地 ロンザ・ジャパン社製)に添加した前駆脂肪細胞培養培地(PGM−2)で4日間前培養後、細胞をEDTA−トリプシン液で回収し、PGM−2培地に8x104cells/mlの 割合で懸濁し、細胞培養用12−wellプ レートに0.5mlづ つ植え込んだ。5%の CO2存 在下、37℃で24培養後、ロシグリタゾンを終濃度2μM、又はUHA4003を終濃度40μMとなるようにPGM−2培地に添加し、0.5mlづつ加えさらに48時間培養した。培養後、PGM−2本分化培地(PGM−2培地に、キット付属の各種添加因子(ヒトインスリン、IBMX、デキサメタゾン、インドメタシン)を添加したもの)に、さらにロシグリタゾンを終濃度1μM、又はUHA4003を終濃度20μMとなるように添加した分化用培地を1ml追添加し、脂肪細胞の分化、成熟化を行った。追添加後10日間培養を行ったものを試験に使用した。コントロールには溶媒であるDMSOのみを0.5%添加したものを使用した。
実施例2と同様の方法でRNAを抽出、精製し、逆転写反応、リアルタイムRT−PCRを行った。プライマーには、CITED1フォワードプライマー(プライマーID:HA204404−F)、CITED1リバースプライマー(プライマーID:HA204404−R)、COX7A1フォワードプライマー(プライマーID:HA133646−F)及びCOX7A1リバースプライマー(プライマーID:HA133646−R)、UCP1フォワードプライマー(プライマーID:HA158451−F)及びUCP1リバースプライマー(プライマーID:HA158451−R)を使用した。細胞内遺伝子の内部標準はβ−アクチンとし、そのプライマーとして、ACTBフォワードプライマー(プライマーID:HA067803−F)及びACTBリバースプライマー(プライマーID:HA067803−R)(前記8種のプライマーはいずれもタカラバイオ(株)製)を使用した。
得られた各細胞中のβ−アクチンとCITED1、COX7A1及びUCP1のCt値(Threshold Cycle:一定の増幅量(閾値)に達するサイクル数)からCITED1及びCOX7A1、UCP1の各遺伝子発現量の相対値を算出した。結果を図2に示した。
その結果、ロシグリタゾン添加時と同様に、褐色様脂肪細胞のマーカー遺伝子であるCITED1遺伝子発現量がUHA4003添加時に有意に増大していることが見いだされ、さらに、ミトコンドリアマーカー遺伝子であるCOX7A1の発現量が有意に増大していることが明らかになった。また、UCP1遺伝子の発現量も有意に増加していることが明らかになった。つまり、本来白色脂肪細胞へと分化するヒト皮下脂肪由来正常前駆脂肪細胞がUHA4003存在下で褐色様脂肪細胞へと分化したことを示す。即ち、UHA4003に極めて強い白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導作用を有することが示された。
以上の実施例2、3の結果から、UHA4003を添加することで、細胞内のミトコンドリア量が有意に増加し、白色脂肪細胞からの褐色様脂肪細胞への分化が顕著に誘導されていることから、UHA4003は、褐色様脂肪細胞への分化誘導効果が優れていることが示された。
また、UHA4003は、製造コストがかかる合成アゴニストであるロシグリタゾンと比べて、ワンステップで、食品成分から安価に調製することが可能である点でも優れていることがわかる。

Claims (1)

  1. ヒドロキシスチルベン類の環化反応生成物であって、式(1):
    Figure 0006070367
    (但し、式(1)中、R1〜R8は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、あるいは炭素数1〜10の飽和又は不飽和の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、R1〜R8はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
    で表される化合物又はその薬学的に許容可能な塩を含有することを特徴とする、白色脂肪細胞の褐色様脂肪細胞への分化誘導剤。
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