JP6068815B2 - 位相差フィルム及び位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

位相差フィルム及び位相差フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、位相差フィルム及び位相差フィルムの製造方法に関する。
セルローストリアセテート(TAC)は、その優れた耐熱性、光透過率や、低ヘイズ、低光弾性係数、偏光フィルム素材であるポリビニルアルコール(PVA)との接着性に優れるという特徴から液晶デバイス等に用いられる位相差フィルムの材料に使用されている。
また、液晶表示装置等の画像表示装置に使用される位相差フィルムには、可視光領域において、長波長ほど高いリタデーションを有するものが要求されている。
このような位相差フィルムは、ポリカーボネート等の通常の樹脂を用いた一枚からなる光学フィルムの波長分散と逆の傾向を示すことから、逆波長分散フィルムと呼ばれている。この逆波長分散フィルムは、例えば、反射型液晶表示装置等において、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換するために使用することができる。
ところで、位相差フィルムは、液晶表示装置等の画像表示装置が様々な環境下で使用されるようになってきたことから、環境変化、特に湿度変化に対してリタデーション等の光学的性能の安定性が求められる。しかしながら、TACは、吸水性の大きな材料であるため、従来のTACからなる位相差フィルムは、環境変化、特に湿度変化に対してリタデーション値が大きく変化し、また、湿度変化が繰り返されたときにリタデーション値が可逆的に変化し、光学的性能の安定性に劣るという問題があった。
TAC以外の材料を用いた位相差フィルムとして、例えば、特許文献1には、溶液キャスト法で製造されたセルロースアセテートを含有する単一の逆波長分散フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の逆波長分散フィルムでは、環境変化、特に湿度変化に対するリタデーション値の変化の問題は解決できず、更に、位相差フィルムは、その製造時に延伸処理が必須であるため、溶液キャスト法を採用した場合、製造する位相差フィルムを厚くすることが困難となり、上述したリタデーション特性を有する位相差フィルムを製造することは困難であった。また、特許文献1に記載の発明では、セルロースアセテートの溶媒への溶解性が低いため選択できる溶媒が限られるという問題もあった。また、通常セルロースアセテートフィルムは、加工性やハンドリング性に劣るため過剰の可塑剤を用いる場合が多いが、過剰の可塑剤を用いると、逆波長分散性が小さくなるという問題もあった。
また、例えば、特許文献2には、セルロースアセテートプロピオネートの逆波長分散フィルムが提案されているが、環境変化、特に湿度変化に対するリタデーション値の変化の問題は解決できないものであった。
更に、例えば、特許文献3には、温度変化に対して耐久性に優れた位相差フィルムとして、アセチル置換度と炭素数3又は4のアシル基による置換度を限定したセルロースアシレート(A)と、該セルロースアシレート(A)と粘度平均重合度の異なるセルロースアシレート(B)とを含む位相差フィルムが開示されている。
しかしながら、引用文献3に記載の位相差フィルムであっても、湿度変化に対するリタデーション値の変化の問題は充分に解決できず、更に、引用文献3に記載の位相差フィルムは、溶液キャスト法により製造されるものであり、上述したようにリタデーション性能を充分に得ることは困難であるという問題もあった。
特開2000−137116号 特開2003−315538号 特開2007−298889号
本発明は、上記現状に鑑みて、環境変化、特に湿度変化に対して可逆的なリタデーション値の変化が小さく、光学的性能の安定性に優れる位相差フィルム、該位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、セルロースアシレート(A)と、上記セルロースアシレート(A)と水酸基残度の異なるセルロースアシレート(B)と、可塑剤とを含有する位相差フィルムの製造方法であって、上記セルロースアシレート(A)と上記セルロースアシレート(B)と上記可塑剤とを含有する混合物を、フラットダイを用いて溶融押し出してフィルムを形成する工程と、上記混合物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg〜Tg+30℃の環境下で、上記フィルムを1.01〜4.0倍に延伸する工程とを有し、上記可塑剤は、フタル酸系ポリエステル可塑剤であり、上記セルロースアシレート(A)は、アセチル置換度DSac(A)と、炭素数3又は4のアシル基による置換度の合計DSay(A)とが、下記式(2)及び式(3)を満たし、上記セルロースアシレート(B)の水酸基残度が0.30〜2.00であることを特徴とする位相差フィルムの製造方法である。
DSac(A)>DSay(A) (2)
2.50≦DSac(A)+DSay(A)≦3.00 (3)
上記位相差フィルムは、下記環境Aと環境Bとに放置した後、25℃50%RH環境下にて、波長590nmに対する面内位相差Reを測定した結果が、下記式(1)を満たすことが好ましい。
1.00≦Re(環境A)/Re(環境B)<1.40 (1)
環境A:100℃のオーブンに5分間放置
環境B:25℃の水中に24時間放置
測定環境:環境A、環境Bにそれぞれ放置した位相差フィルムを取出し後、60秒後に測定が終了するように、25℃50%RH環境下にて、波長590nmに対する面内位相差を測定
た、上記セルロースアシレート(B)の水酸基残度が、セルロースアシレート(A)の水酸基残度よりも0.10以上大きいことが好ましい。
た、上記位相差フィルムにおいて、上記セルロースアシレート(A)と上記セルロースアシレート(B)の質量比が、セルロースアシレート(A)/セルロースアシレート(B)=90/10〜30/70であることが好ましい。
また、上記位相差フィルムは、波長450nmにおけるリタデーション値Re(450)と、波長550nmにおけるリタデーション値Re(550)とが下記式(4)を満たすことが好ましい。
Re(450)/Re(550)=0.78〜0.98 (4)
下に、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、水酸基残度の異なる2種類のセルロースアシレートを含有するものとし、環境変化、特に湿度の異なる所定の環境下に放置された後におけるリタデーション値の比が、特定の値の範囲内に制御された位相差フィルムは、環境変化、特に湿度変化に対して可逆的なリタデーション値の変化が小さく、光学的性能の安定性に優れたものであることを見出し、更に、このような位相差フィルムは、上記2種類のセルロースアシレートを含む原料を押し出し成型した後、特定の条件で延伸処理することで製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の位相差フィルムは、セルロースアシレート(A)と、上記セルロースアシレート(A)と水酸基残度の異なるセルロースアシレート(B)とを含有し、下記環境Aと環境Bとに放置した後、25℃50%RH環境下にて、波長590nmに対する面内位相差Reを測定した結果が、下記式(1)を満たす。
1.00≦Re(環境A)/Re(環境B)<1.40 (1)
環境A:100℃のオーブンに5分間放置
環境B:25℃の水中に24時間放置
測定環境:環境A、環境Bにそれぞれ放置した位相差フィルムを取出し後、60秒後に測定が終了するように、25℃50%RH環境下にて、波長590nmに対する面内位相差を測定
上記式(1)における「Re(環境A)/Re(環境B)」が、1.40以上であると、環境変化、特に湿度変化に対する可逆的なリタデーション値の変化が大きく、本発明の位相差フィルムの光学的性能の安定性に劣ることとなる。一方、セルロースアシレートの複屈折率は、湿度が低くなるにつれ、増加することがすでに知られている。このため、上記式(1)における「Re(環境A)/Re(環境B)」が1.00未満となることはない。
本発明の位相差フィルムにおいて、上記「Re(環境A)/Re(環境B)」は1.20未満であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムにおいて、上記セルロースアシレート(A)は、アセチル置換度DSac(A)と、炭素数3又は4のアシル基による置換度の合計DSay(A)とが、下記式(2)を満たすことが好ましい。
DSac(A)>DSay(A) (2)
上記式(2)を満たすセルロースアシレート(A)を含有することで、本発明の位相差フィルムのガラス転移温度が高くなり、耐熱性を優れたものとすることができ、本発明の位相差フィルムが使用されるときの環境温度によって位相差が低下することを好適に防止することができる。
なお、上記炭素数3又は4のアシル基としては、プロピオニル基又はブチリル基が好適に挙げられる。
ここで、上記アセチル置換度DSac(A)及び炭素数3又は4のアシル基による置換度の合計DSay(A)とは、セルロース骨格における2、3、6位の炭素についたOH基をアセチル基又は炭素数3又は4のアシル基で置換した数を示す。上記セルロース骨格における2、3、6位の炭素のどれかにアセチル基又は炭素数3又は4のアシル基が偏っていてもよく、また、平均的に存在していてもよい。更に、アセチル置換度又は炭素数3又は4のアシル基による置換度の異なるセルロースアセテートをブレンドさせたものでもよく、そのときはバルク平均として上記アセチル置換度又は炭素数3又は4のアシル基による置換度を満足していればよい。
また、上記セルロースアシレート(A)は、アセチル置換度DSac(A)と、炭素数3又は4のアシル基による置換度の合計DSay(A)とが、下記式(3)を満たすことが好ましい。
2.50≦DSac(A)+DSay(A)≦3.00 (3)
上記式(3)を満たすことで、本発明の位相差フィルムは、長波長ほど位相差が大きくなる特性が発現できるため好ましい。
ここで、上記DSac(A)+DSay(A)は、セルロース分子中の2、3、6位に存在する3個の水酸基が平均してどれだけアシル化されているかを表し、それぞれの位置の置換度は均等でもよいし、いずれかの位置に偏っていてもよい。また、アシル基の置換度はASTM−D817−96に記載の方法にて定量することができる。
また、上記セルロースアシレート(A)は、上述のように上記式(2)及び(3)を満たすことが好ましいが、このような式(2)及び(3)を満たすセルロースアシレート(A)は、本発明の位相差フィルムのリタデーション値を下げる傾向にあるため、当該セルロースアシレート(A)のみを含有する位相差フィルムは、リタデーション値が不充分となる。特に、DSacが多くなればなるほど、リタデーション値がでにくくなる。
これに対して、本発明の位相差フィルムは、上記セルロースアシレート(A)と水酸基残度の異なるセルロースアシレート(B)とを含有する。このセルロースアシレート(B)は、本発明の位相差フィルムのリタデーション値を高める役割を果たし、このようなセルロースアシレート(B)を上記セルロースアシレート(A)とともに含有することで、本発明の位相差フィルムは、位相差フィルムとして必要なリタデーション値を有するものとできる。
上記セルロースアシレート(B)は、水酸基残度が、上記セルロースアシレート(A)の水酸基残度よりも0.10以上大きいことが好ましい。上記セルロースアシレート(B)の水酸基残度が、上記セルロースアシレート(A)の水酸基残度の0.10未満であると、本発明の位相差フィルムのリタデーション値が不充分となることがある。
上記セルロースアシレート(B)の水酸基残度は、具体的には、0.30〜2.00であることが好ましい。0.30未満であると、本発明の位相差フィルムのリタデーション値が不充分となることがあり、一方、2.00を超えると、熱溶融性が劣るため、溶融押し出しによりフィルムの形成が実施できない恐れがある。
上記セルロースアシレート(B)の水酸基残度のより好ましい下限は0.50、より好ましい上限は1.50である。
また、上記セルロースアシレート(B)は、上述した水酸基残度となるように、セルロース骨格における2、3、6位の炭素が、アセチル基及び炭素数3又は炭素数4のアシル基により置換されていることが好ましい。
上記セルロースアシレート(B)は、アセチル置換度をDSac(B)、炭素数3又は炭素数4のアシル基による置換度の合計をDSay(B)としたとき、DSac(B)及びDSay(B)は、DSac(B)>DSay(B)を満たすことが本発明の位相差フィルムの耐熱性の点で好ましい。
上記セルロースアシレート(B)は、数平均分子量が好ましくは5,000〜150,000であり、より好ましくは10,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000である。数平均分子量が5,000未満であると、本発明の位相差フィルムの機械的強度が劣る恐れがあり、数平均分子量が150,000を超えると、後述する混合物の溶融押し出しや延伸処理が困難になる恐れがある。
更に、本発明の位相差フィルムでは、上記セルロースアシレート(A)の数平均分子量をMn(A)、上記セルロースアシレート(B)の数平均分子量をMn(B)としたとき、Mn(A)>Mn(B)なる関係を有することが好ましい。このような関係を有することで、後述する効果により、湿度変化に対する可逆的なリタデーション値の変化が小さい本発明の位相差フィルムを好適に得ることができる。
また、セルロースアシレート(A)は、数平均分子量が好ましくは30,000〜200,000であり、より好ましくは40,000〜150,000、さらに好ましくは50,000〜100,000である。セルロースアシレート(A)の数平均分子量が30,000未満であると、本発明の位相差フィルムの機械的強度が劣る恐れがあり、数平均分子量が200,000を超えると、後述する混合物の溶融押し出しや延伸処理が困難になる恐れがある。
なお、本発明の明細書において、上記「数平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatography)によりポリスチレン換算分子量として測定された値である。
本発明の位相差フィルムは、上記セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)の質量比が、セルロースアシレート(A)/セルロースアシレート(B)=90/10〜30/70であることが好ましい。上記セルロースアシレート(A)の割合が90/10よりも増えると、本発明の位相差フィルムのリタデーション値が不充分となる恐れがあることに加え、環境変化、特に湿度変化に対するリタデーション値の変化が大きくなり、湿度変化が繰り返された場合のリタデーション値の可逆的変化が大きくなり、光学的性能の安定性に劣ることがある。一方、上記セルロースアシレート(A)の割合が30/70よりも少ないと、逆波長分散性が小さくなる恐れがある。
上記セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)との質量比は、70/30〜40/60であることがより好ましい。
本発明の位相差フィルムは、波長450nmにおけるリタデーション値Re(450)と、波長550nmにおけるリタデーション値Re(550)とが下記式(4)を満たすことが好ましい。
Re(450)/Re(550)=0.78〜0.98 (4)
上記式(4)は、波長550nmにおけるリタデーション値が、波長450nmにおけるリタデーション値よりも大きいことを表しており、このような関係を有することで、本発明の位相差フィルムは逆波長分散フィルムとなる。上記式(4)を満たすことで、本発明の位相差フィルムにより高品位な画像表示装置が得られる。上記式(4)を満たさない場合、例えば、本発明の位相差フィルムをλ/4位相差板として使用する場合において、直線偏光が本発明の位相差フィルムに入射した際、得られる偏光状態は、ある特定の波長では、完全な円偏光が得られるものの、それ以外の波長では、大きく円偏光からずれてしまう。結果として、反射防止用の円偏光板として使用する際、反射光が生じ、その反射光は色味がついてしまう。
また、本発明の位相差フィルムは、波長650nmにおけるリタデーション値をRe(650)としたとき、Re(650)/Re(550)=1.02〜1.22を同時に満たすことが更に好ましい。上記Re(450)/Re(550)及びRe(650)/Re(550)は、本発明の位相差フィルムの波長分散性を表しており、上述のような分散性とすることで、可視光(380nm〜780nm)域において、λ/4位相差板として機能し、反射防止用の円偏光板として使用した際の反射光と色味とを低減することができる。
本発明に用いられるセルロースアシレート(セルロースアシレート(A)及びセルロースアシレート(B))は、それ自体既知の方法で製造することができる。例えば、セルロースアセテートプロピオネートの場合は、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。得られたセルロースエステルは、置換度「DSac+DSpr」(但し、DSprは、得られたセルロースエステルのプロピオニル置換度を示す)がほぼ3であり、アシル基を部分的に加水分解することにより、目的の置換度を有するセルロースアセテートプロピオネートを製造することができる。また、アシル化の際に無水酢酸とプロピオン酸無水物の比率を変えることにより、目的のプロピオニル置換度を得ることができる。
また、分子中のエステル基の存在は、高分子の親水性を増大させるため、フィルム化時に水分が存在したままだと、得られるフィルム強度に好ましくない影響を及ぼすおそれがあるため、フィルム化に用いる樹脂やペレット、溶剤などは、事前に乾燥しておくことが好ましい。
このような本発明の位相差フィルムは、上記セルロースアシレート(A)と上記セルロースアシレート(B)とを含有する混合物を、フラットダイを用いて溶融押し出しによりフィルムを形成し、上記フィルムに延伸処理を施して形成されたものであることが好ましい。
このように押し出し成型によりフィルム形成することで、例えば、溶液キャスト法により形成した場合と比較して、より厚いフィルムを形成することができ、該フィルムを延伸して製造する位相差フィルムの厚みも充分に厚くすることができる。そのため、本発明のリタデーション値を所望の範囲に制御することが容易となる。
また、上記フィルムの延伸処理は、上記セルロースアシレート(A)と上記セルロースアシレート(B)とを含有する混合物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg〜Tg+30℃の環境下で行われることが好ましい。このような特定の条件下で延伸処理をすることで、上述した式(1)を満たす本発明の位相差フィルムを得ることができる。
ここで、上記セルロースアシレート(A)と上記セルロースアシレート(B)とを含有する混合物のガラス転移温度とは、JIS K7121に基づいて測定されたものである。
上記条件にてフィルムの延伸処理を行うことで、本発明の位相差フィルムが、上記式(1)を満たすものとすることができる理由は明確ではないが、以下の理由によると推測される。
(1)水酸基の効果
上記混合物には原料として水酸基の多いセルロースアシレートが混合されており、フィルム内の水素結合が増加するためと考えられる。
(2)分子量の効果
本発明の位相差フィルムでは、上述のようにセルロースアシレート(A)の数平均分子量よりも小さい数平均分子量のセルロースアシレート(B)が好適に用いられるが、このようなセルロースアシレート(A)及びセルロースアシレート(B)用いてなるフィルムに、上記延伸処理を行うと、位相差フィルム中の結晶化度が増加するためと考えられる。
これは、一般に、上記延伸処理が行われた時に形成される結晶は、セルロースアシレートの水酸基が多いほど強固なものとなり、数平均分子量が小さいセルロースアシレートほどポリマー分子鎖の運動性が高いという理由から延伸処理による結晶の形成が容易になることが知られている。本発明の位相差フィルムでは、上述のように、水酸基量及び数平均分子量がそれぞれ特定の範囲にあるセルロースアシレート(B)が好適に用いられるため、上記フィルムの延伸処理により位相差フィルム中の結晶化度が増加するものと考えられる。
上記(1)及び(2)の効果により、本発明の位相差フィルムは、水分を吸収したとしてもセルロースアシレート材料の構造変化が起こりにくくなる。その結果、環境変化、特に湿度変化に対してリタデーション値は殆ど変化せず、上述した式(1)を満たすものとなると推測される。
すなわち、上記セルロースアシレート(A)は、本発明の位相差フィルムの耐熱性に寄与する成分であり、上記セルロースアシレート(B)は、上記延伸処理で本発明の位相差フィルム中の結晶形成を有利にし、水分を吸収したとしてもセルロースアシレート材料の構造変化が起こりにくくすることに寄与する成分として作用するものと考えられる。
よって、セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)とを含有する混合物からなるフィルムは、該混合物の平均水酸基量と数平均分子量の平均値とを有する単一のセルロースアシレートからなるフィルムと比較すると、耐熱性と湿度変化に対するリタデーション値の安定性とに作用する成分を、それぞれ個々に含有することから、これらの効果が顕著に発揮され、その結果、耐熱性、湿度に対する安定性に優れたフィルムとなる。
上記延伸処理は、上記フィルムを1.01〜4.0倍に延伸することが好ましい。1.01倍未満であると、製造される本発明の位相差フィルムのリタデーション値が不充分となり、4.0倍を超えると、溶融押し出しにより形成したフィルムが脆くなり加工がしにくくなる。上記フィルムの延伸倍率のより好ましい下限は1.1倍、より好ましい上限は3.0倍である。
このような本発明の位相差フィルムは、更に可塑剤を含有することが好ましい。上記可塑剤を含有することで、本発明の位相差フィルムは、環境変化、特に湿度変化に対するリタデーション値の変化がより小さくなり、湿度変化が繰り返された場合であってもリタデーション値の可逆的変化が小さく、光学的性能の安定性が更に優れたものとなる。これは、上記可塑剤を含有することで、本発明の位相差フィルムが水分を吸収しづらくなるという効果を発揮すると考えられ、当該効果が、上述したセルロースアシレート材料の結晶化及び水素結合による効果と相乗的に作用するからであると考えられる。
上記可塑剤の含有量としては特に限定されないが、例えば、本発明の位相差フィルム中、1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満であると、可塑剤を含有させる効果を充分に得ることができず、20質量%を超えると、上記延伸時にリタデーションの発現を阻害し、また、耐熱性の低下やブリードアウトの原因となることがある。
上記可塑剤としては、位相差フィルムに添加される従来公知のものが挙げられ、特に限定されないが、例えば、芳香族多塩基酸エステル、トリメリット酸系エステル、脂肪族多塩基酸エステル、脂環族多塩基酸エステル、芳香族一塩基酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂環族一塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系、アルコール類、安息香酸系、スルホン酸誘導体、炭化水素系、酢酸エステル系、エーテルエステル系、ベンジリデンソルビトール系化合物(例えば、新日本理化社製Gelall MD)、フタル酸等の芳香族ニ塩基酸のポリエステル、アジピン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル系等が挙げられ、なかでも、耐加水分解性、ブリードアウト性の点で、フタル酸系ポリエステル可塑剤が好適に用いられる。
このような可塑剤の市販品としては、例えば、DIC社製のポリサイザーW90、ポリサイザーW91、ポリサイザーW92等が挙げられる。
本発明の位相差フィルムは、厚みが10〜500μmであることが好ましく、より好ましくは30〜300μmである。このような厚みの本発明の位相差フィルムは、上述した原料である混合物を溶融押し出しすることで好適に製造することができる。
また、本発明の位相差フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは、90%以上である。
上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
また、本発明の位相差フィルムのヘイズは5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下である。
上記ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
また、本発明の位相差フィルムの要求特性として、位相差フィルムに入射する角度が正面から、斜め入射に変化しても位相差が変化しないことが要求される場合がある。この場合には、下記式で表されるNZ係数が、0.3〜1.5の間であることが好ましい。特に、NZ=0.5の時、位相差板に入射する角度が正面から変化しても、ほとんど位相差が変化しない。
NZ係数=Rth/Re+0.5
このような本発明の位相差フィルムは、セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)とを含有する混合物を、フラットダイを用いて溶融押し出してフィルムを形成する工程と、上記フィルムを混合物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg〜Tg+30℃の環境下で1.01〜4.0倍に延伸する工程とを有する方法により製造することができる。
上記本発明の位相差フィルムの製造方法もまた、本発明の一つである。
上記セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)とを含有する混合物は、例えば、バンバリーミキサーや加圧ニーダー等のインターナルミキサー、ロール混練機、単軸又は二軸押出機等の公知の装置を使用して調製することができる。この際の混合温度は、通常、150〜300℃であることが好ましく、より好ましい下限は170℃、より好ましい上限は260℃である。
上記混合物を調製する際には、セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)は、予め乾燥しておくことが好ましい。上記乾燥条件は特に限定されないが、例えば、30〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。
また、上記混合物を溶融押し出しする際にも、該混合物を予め乾燥しておくことが好ましく、その乾燥条件としては特に限定されないが、例えば、30〜90℃の温度にて30分〜3日間程度乾燥することが好ましい。
また、上記混合物には上述した可塑剤を含有することが好ましいが、その他、必要に応じて、フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤や光安定剤や耐候剤、ヒドラジン系、オキザミド系、酸アミド系、亜リン酸エステル系等の金属不活性化剤、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸、ハイドロタルサイト類、水酸化アルミニウム/炭酸リチウム包摂物、ゼオライト等の中和剤やイオントラップ剤、炭化水素類、アルコール類、高級脂肪酸、エステル系、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル、脂肪酸と芳香族アルコールとのエステル、脂肪酸と多価アルコールとのエステル(部分エステルを含む)、脂肪酸とポリグリコールとのエステル(部分エステルを含む)、エポキシエステル等のエステル類、高級脂肪酸金属塩、天然ワックス類、脂肪酸アミド等の滑剤やスリップ剤や離型剤、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等の帯電防止剤や防曇剤や防滴剤、カルボン酸塩類や有機リン酸塩等の造核剤、金属石鹸系、有機スズ系、亜リン酸エステル系等の熱安定剤、ハロゲン系、リン系、アンチモン系、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の無機系の難燃剤や難燃助剤、シリカ等のアンチブロッキング剤、炭酸カルシウムやタルク、マイカ等の無機物、防錆剤、防黴剤等を更に含んでいてもよい。
上記混合物を、フラットダイを用いて溶融押し出してフィルムを形成する方法としては特に限定されず、単軸押出機、多軸押出機等の従来公知の押出機を用いた方法が挙げられる。
上記フィルムの厚みとしては特に限定されないが、溶融押し出しフィルムの厚みは、位相差フィルムとしたときのフィルム厚みや所望するリタデーションの値によって適宜選択され、通常、50〜700μmである。
上記混合物を溶融押し出しする際、上記押出機の中に原料が滞留する時間は5分以下とすることが好ましい。押出機内での原料の昇温による劣化を避けるためである。
上記溶融押し出し時の温度は、180〜260℃であることが好ましい。
なお、原料タンク、原料の投入部、押出機内といった原料の供給、溶融工程を、窒素ガスなどの不活性ガスで置換、あるいは減圧することが好ましい。
本発明の位相差フィルムの製造方法では、上記フィルムを混合物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg〜Tg+30℃の環境下で1.01〜4.0倍に延伸する工程を有する。
本工程において上記温度条件で上記フィルムの延伸をすることで、製造する位相差フィルムは、上述した式(1)を満たすものとすることができる。その理由については上述した通りであると推測される。
上記フィルムを延伸する際の温度は、上記混合物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg〜Tg+30℃である。
上記フィルムの延伸温度が上記Tg未満であると、上述した結晶化が促進されず、環境変化、特に湿度変化に対する可逆的なリタデーション変化が大きくなってしまう。また、上記フィルムの延伸温度がTg+30℃よりも高い温度であると、環境変化に対する効果はあるが、Δn発現性が低下し、所望の位相差値を得るために必要な膜厚が増加することに加え、NZ係数の増加、60℃90%の耐久試験での面内位相差変化率が増加するなど、その他の特性に与える影響がでてくる。上記フィルムの延伸温度のより好ましい下限は上記Tg+5℃、より好ましい上限はTg+25℃である。
なお、上記延伸温度は、上記フィルムを含む系の温度であればよく、通常、延伸装置の設定温度の調整で適宜制御できる。
上記フィルムを延伸する方法としては特に限定されず、縦一軸延伸でもよく、テンター延伸でもよく、また、同時2軸延伸、逐次二軸延伸、又は、45度などの光軸を0度及び90度以外に有するような延伸方法でもよい。
また、上記フィルムの延伸倍率が1.01倍未満であると、製造する位相差フィルムのリタデーション値が不充分となり、4.0倍を超えると、溶融押し出しにより形成したフィルムが脆くなり加工がしにくくなる。上記フィルムの延伸倍率の好ましい下限は1.1倍、好ましい上限は3.0倍である。
本発明の位相差フィルムは、種々の画像表示装置に用いることができる。
上記画像表示装置としては、例えば、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タブレットPC、タッチパネル、電子ペーパー等が挙げられ、なかでも、LCD及びELDに好適に用いることができる。
本発明の位相差フィルムは、上述した構成からなるものであるため、環境変化、特に湿度変化に対して可逆的なリタデーション値の変化が小さく、光学的性能の安定性に優れたものとなる。その結果、環境変化の大きな状況、例えば、屋外で使用される画像表示装置に好適に用いることができる。
このため、本発明の位相差フィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、電子ペーパー等に用いられ、特に屋外のような環境変化の大きな場所で用いられる画像表示装置に好適に適用することができる。
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。また、特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(樹脂組成物の調製)
表1に示した組成の配合物に、酸化防止剤としてアデカスタブAO60(ADEKA社製)0.1質量部、アデカスタブ2112(ADEKA社製)0.1質量部、中和剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成工業社製)0.05質量部を加えた配合物を、ヘンシェルミキサーで撹拌後、シリンダー温度とダイ温度とを230℃に設定した90mmφの同方向二軸押出機でペレット化して樹脂混合物(組成1〜7)を得た。
なお、表1に示した各組成の成分は下記の材料である。
A−1:CAB381−20(イーストマン社製セルロースアセテートブチレート樹脂、アセチル置換度=1.00、ブチリル置換度=1.66、水酸基置換度=0.34、数平均分子量70,000)
A−2:CAP482−20(イーストマン社製セルロースアセテートプロピオネート樹脂、アセチル置換度=0.18、プロピオニル置換度=2.49、水酸基置換度=0.33、数平均分子量75,000)
A−3:アセチル置換度=1.92、プロピオニル置換度=0.74、水酸基置換度=0.34、数平均分子量95,000のセルロースアセテートプロピオネート樹脂
B−1:CAB553−0.4(イーストマン社製セルロースアセテートブチレート樹脂、アセチル置換度=0.14、ブチリル置換度=1.99、水酸基置換度=0.87、数平均分子量20,000)
B−2:CAP504−0.2(イーストマン社製セルロースアセテートプロピオネート樹脂、アセチル置換度=0.04、プロピオニル置換度=2.12、水酸基置換度=0.84、数平均分子量15,000)
C−1:可塑剤、ポリサイザーW92(DIC社製)
C−2:可塑剤、Gelall MD(新日本理化社製)
(フィルム成形)
上記の方法で得た樹脂混合物ペレットを40mm幅のフラットダイを備えた単層押出機(シリンダー温度、ダイ温度とも230℃に設定)で厚さ約100μmの樹脂混合物からなるフィルムを得た。
Figure 0006068815
実験例1)
上記の方法によって得られた組成1に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度140℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
実験例2)
上記の方法によって得られた組成2に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度140℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
実験例3)
上記の方法によって得られた組成3に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度140℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
実験例4)
上記の方法によって得られた組成4に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度130℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
実験例5)
上記の方法によって得られた組成5に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度170℃にて、1.5倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
実験例6)
上記の方法によって得られた組成4に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度130℃にて、テンター延伸機を用いて1.6倍に延伸し、位相差フィルムを得た。
(比較例1)
上記の方法によって得られた組成6に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度140℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
(比較例2)
実験例1にて使用したフィルムを、延伸温度120℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
(参考例1)
上記の方法によって得られた組成7に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度140℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
(参考例2)
実施例4にて使用したフィルムを、延伸温度130℃にて、縦1.6倍、横1.2倍の逐次二時延伸し、位相差フィルムを得た。
(参考例3)
実験例1にて使用したフィルムを、延伸温度160℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
(参考例4)
上記の方法によって得られた組成8に係る樹脂混合物のフィルムを、延伸温度140℃にて、1.9倍の一軸延伸し、位相差フィルムを得た。
実施例、比較例、実験例及び参考例で得られた位相差フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表2に示した。
<波長分散性>
25℃50%RH環境下に24時間放置した後、25℃50%RH環境下にて、RETS(大塚電子社製)を用い、波長450nm、550nm及び650nmにおける位相差値Re(450)、Re(550)及びRe(650)を測定し、下記式にて、波長分散性を算出した。
Re(450)/Re(550)
Re(650)/Re(550)
<NZ係数評価>
25℃50%RH環境下にて、波長550nmにおける面内位相差Reと、厚さ方向位相差Rthの値より、下記の式を用いて、NZ係数を算出した。この時、波長550nmにおけるフィルムの平均屈折率は、延伸前のフィルムを使用し、エリプソメーターにより測定した値を使用し、1.48とした。
NZ係数=Rth/Re+0.5
<ガラス転移温度>
TAインスツルメント社製DSCにて、ガラス転移温度を測定した。
<実装評価>
ドコモ社製スマートフォン「GALAXY SII」より、円偏光板を取り外し、円偏光板の無い、有機EL表示装置を準備した。
次に、ガラス基板上に、実施例、比較例及び参考例に係る位相差フィルムが、25℃50%RH環境下にて、Re=138nm(波長550nm)となるように、フィルム形成時の膜厚を調整し、λ/4位相差板を準備した。位相差フィルムの遅相軸と、直線偏光板の吸収軸のなす角度が45度となるように、粘着剤を用いて貼り合せ、円偏光板を作製した。
作製した円偏光板を、100℃のオーブンに5分間放置、25℃の水に24時間放置後のサンプルをそれぞれ、有機EL表示装置上に設置し、湿度変化により、リタデーション値の変化した円偏光板の外光反射防止効果の差を、正面と斜め方向から下記基準にて評価した。
また、同様に作製した円偏光板を、25℃50%RH環境下にて、有機EL表示装置上に設置し、正面反射光の色味を観察し、下記基準にて評価した。
(外光反射防止効果の評価)
◎:外光反射防止の差はほとんどなく、有機ELの表示が認識できる。
○:外光反射防止の差があり、表示品位が低下するが、実使用上、問題なく有機ELの表示が認識できる。
×:外光反射防止の差が有り、表示品位が低下し、実使用上、問題があり、使用できない。
(色味評価)
◎:反射光に色味がほとんどなく、良好。
○:反射光に色味はあるが、実使用上、問題ないレベル。
×:反射光に色味があり、実使用上、問題があり、使用できない。
<耐久評価>
各位相差フィルムを、80℃ドライ、60℃90%RHの耐久試験に72時間投入後の可逆性の無い位相差変化率((投入後のRe−投入前のRe)/投入前のRe×100)を評価した。投入前後の位相差値は、25℃50%RH環境下にて、自動複屈折率測定装置KOBRA(王子計測機器社製)を用いて、波長590nmの時の面内位相差を評価した。
これに加え、60℃90%RH500時間前後のヘイズ評価を行った。
Figure 0006068815
表1に示したように、実施例及び実験例に係る位相差フィルムは、実使用上、問題の無い環境変化以内にて、逆分散性を示す位相差フィルムであった。
一方、比較例1に係る位相差フィルムは、湿度変化によるリタデーション変化が大きく、視認性(反射防止性能)に影響がでる結果となった。
比較例2に係る位相差フィルムは、延伸温度以外は、実験例1に係る位相差フィルムと同様に作製したが、環境変化、耐久試験での位相差値変化が大きく、延伸温度の重要性がわかった。
参考例1に係る位相差フィルムは、色味評価が実施例4に係る位相差フィルムの色味評価よりかなり劣る結果となった。
実施例4、実験例6と参考例2の結果より、NZ係数は、1.5であれば、斜め方向からみた時の反射防止機能が、実使用上問題ないレベルであることがわかった。
参考例3に係る位相差フィルムは、湿度変化による可逆的なリタデーション変化は小さいが、Δn発現性、NZ係数、60℃90%RH72時間での位相差変化率が、実験例1に比べ劣る結果となった。
参考例4に係る位相差フィルムは、60℃90%RHの耐久試験500時間後のヘイズ評価にて、可塑剤がブリードアウトにより、白化していた。
また、各位相差フィルムの膜厚を、アンリツ社製の電子マイクロメータを用いて、25℃50%RH環境下に24時間放置後、100℃のオーブンに5分間放置後、25℃の水に24時間放置後のそれぞれで測定したところ、いずれにおいても膜厚変化はなかった。この結果より、湿度によるリタデーション変化は、膜厚変化ではなく、Δn変化であることがわかった。このことより、実装評価用に、膜厚を調整し、λ/4位相差板を作製しているが、環境変化の割合は変化せず、環境変化評価の値が、実装評価結果にそのまま反映していることがわかった。
本発明の位相差フィルムは、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等に用いられ、特に屋外のような環境変化の大きな場所で用いられる画像表示装置に好適に適用することができる。

Claims (5)

  1. セルロースアシレート(A)と、前記セルロースアシレート(A)と水酸基残度の異なるセルロースアシレート(B)と、可塑剤とを含有する位相差フィルムの製造方法であって、
    前記セルロースアシレート(A)と前記セルロースアシレート(B)と前記可塑剤とを含有する混合物を、フラットダイを用いて溶融押し出してフィルムを形成する工程と、
    前記混合物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg〜Tg+30℃の環境下で、前記フィルムを1.01〜4.0倍に延伸する工程とを有し、
    前記可塑剤は、フタル酸系ポリエステル可塑剤であり、
    前記セルロースアシレート(A)は、アセチル置換度DSac(A)と、炭素数3又は4のアシル基による置換度の合計DSay(A)とが、下記式(2)及び式(3)を満たし、
    前記セルロースアシレート(B)の水酸基残度が0.30〜2.00である
    ことを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
    DSac(A)>DSay(A) (2)
    2.50≦DSac(A)+DSay(A)≦3.00 (3)
  2. 位相差フィルムは、下記環境Aと環境Bとに放置した後、25℃50%RH環境下にて、波長590nmに対する面内位相差Reを測定した結果が、下記式(1)を満たす請求項1記載の位相差フィルムの製造方法。
    1.00≦Re(環境A)/Re(環境B)<1.40 (1)
    環境A:100℃のオーブンに5分間放置
    環境B:25℃の水中に24時間放置
    測定環境:環境A、環境Bにそれぞれ放置した位相差フィルムを取出し後、60秒後に測定が終了するように、25℃50%RH環境下にて、波長590nmに対する面内位相差を測定
  3. セルロースアシレート(B)の水酸基残度が、セルロースアシレート(A)の水酸基残度よりも0.10以上大きい請求項1又は2記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. セルロースアシレート(A)とセルロースアシレート(B)の質量比が、セルロースアシレート(A)/セルロースアシレート(B)=90/10〜30/70である請求項1、2又は3記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 波長450nmにおけるリタデーション値Re(450)と、波長550nmにおけるリタデーション値Re(550)とが下記式(4)を満たす請求項1、2、3又は4記載の位相差フィルムの製造方法。
    Re(450)/Re(550)=0.78〜0.98 (4)
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