JP6067645B2 - 硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法 - Google Patents

硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法に関する。
難燃性の固体電解質を用いた固体電解質層を有する金属イオン二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池等。以下において、固体電解質層を有するリチウムイオン二次電池を「全固体電池」と称することがある。)は、安全性を確保するためのシステムを簡素化しやすい等の長所を有している。
このような全固体電池に関する技術として、電極活物質の表面に被覆層を形成することにより、全固体電池の性能向上を図る試みがなされている。例えば特許文献1には、電解質としてリチウムイオン伝導性固体電解質を用いた全固体リチウム電池において、リチウムイオン伝導性固体電解質が硫化物を主体としたものであり、かつ正極活物質の表面がリチウムイオン伝導性酸化物で被覆されていることを特徴とする全固体リチウム電池が開示されている。この特許文献1には、正極活物質としてスピネル型構造を有するLiMn等が開示され、リチウムイオン伝導性酸化物としてLiNbO等が開示されている。また、特許文献2には、活物質と、硫化物固体電解質を含有する被覆層とを備える被覆活物質の製造方法が開示されており、被覆活物質を硫化物全固体電池(硫化物の固体電解質を用いた全固体電池。以下において同じ)の正極層及び負極層の少なくとも一方に含有させることが開示されている。この特許文献2には、正極活物質としてスピネル型構造を有するLiMn、LiNi0.5Mn1.5等が開示され、被覆層を構成するリチウムイオン伝導性酸化物としてLiNbO等が開示されている。
なお、特願2014−162251号明細書には、Mn元素を含み、酸化物である正極活物質と、正極活物質の表面に形成された被覆部とを有し、被覆部は、Li元素、P元素、O元素及び正極活物質由来のMn元素を含み、正極活物質及び被覆部の界面において、P元素に対するMn元素の割合(Mn/P)が1以上であることを特徴とするリチウム電池用正極活物質が記載されており、被覆部の形成に用いられる被覆材としてLiPOが例示されている。また、特願2014−41720号明細書には、層状構造のLiNi0.5Mn0.5正極活物質と、該正極活物質の表面を被覆するLiO−P−Nb−B−GeOガラスと、を有する正極複合材、及び、該正極複合材を含む正極層と、負極層と、これらの間に配設された硫化物固体電解質層と、を有する硫化物全固体電池が記載されている。
国際公開第2007/004590号公報 特開2014−022074号公報
特許文献1及び2に開示されている硫化物全固体電池においては、リチウムイオン伝導性酸化物としてLiNbOを用いた場合、サイクル経過後に放電容量が低下しやすい(サイクル特性が低い)という問題があった。
そこで本発明は、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めることが可能な正極複合材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質に、LiO−P−Nb−B−GeOガラスを被覆し、所定の温度で焼成することにより得られる正極複合材を硫化物全固体電池の正極層に用いることにより、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めることが可能になることを知見した。本発明は、当該知見に基づいて完成させた。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明は、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質に、LiO−P−Nb−B−GeOガラスを被覆することにより被覆材料を作製する被覆工程と、被覆材料をLiO−P−Nb−B−GeOガラスの軟化点以上、650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有する、硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法である。
本発明において、「LiO−P−Nb−B−GeOガラスの軟化点」とはJIS R 3103に規定のファイバーエロンゲーション法により測定した粘度が107.6dPa・sとなる温度を意味する。
本発明の焼成工程において、被覆材料を600℃以上、650℃以下の温度で焼成することが好ましい。
本発明によれば、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めることが可能な正極複合材の製造方法を提供することができる。
本発明の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。 本発明の製造方法により製造される正極複合材の断面図である。 実施例1で得られた正極複合材の正極活物質と被覆層との界面のSEM画像である。 実施例1で得られた正極複合材の正極活物質と被覆層との界面における組成分析結果を示す図である。 実施例1で得られた正極複合材のNb成分(図5(a))及びP成分(図5(b))のSEM−EDX画像である。 実施例1及び2の充放電試験の結果を示す図である。 実施例1、2及び比較例1〜3のサイクル試験の結果を示す図である。 参考例1及び2のXRD測定の結果を示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
本発明は、硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法であって、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質に、LiO−P−Nb−B−GeOガラスを被覆することにより被覆材料を作製する被覆工程と、被覆材料をLiO−P−Nb−B−GeOガラスの軟化点以上、650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有する。
本発明の製造方法により製造される正極複合材は、硫化物全固体電池の正極層に用いることにより、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めることが可能である。本発明らはその理由を次のように推測する。すなわち、本発明によれば、LiO−P−Nb−B−GeOガラス(以下において、「Li−P−Nb−B−Geガラス」と称することがある。)を正極活物質に被覆した後、軟化させることにより、Li−P−Nb−B−Geガラスを正極活物質の表面に一様に結着させることができる。さらに、本発明では、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面にLiMnPOが形成されるものと考えられる。
これらの条件により、本発明の製造方法により製造される正極複合材は、正極活物質の表面を強固な被覆層により被覆することが可能となる。
特許文献2に記載されているLiNi0.5Mn1.5等のLi及びMnを含むスピネル構造を有する正極活物質は、従来の正極活物質よりも高電位で動作するため、活物質と接する固体電解質や被覆層にも高電位がかかる。これに対し、LiNbO等の従来の被覆材では耐酸化性が不足しており、高電位ですると酸素脱離等の酸化分解反応が起こり、サイクル経過後に放電容量が低下するものと考えられている。
これに対し、本発明の製造方法により製造される正極複合材では、上記のように、正極活物質の表面にLi−P−Nb−B−Geガラスを一様に結着させることができ、また、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面にLiMnPOが形成される。LiMnPOにおけるPO間の結合は強固なものであるため、充放電に伴う酸素脱離等の酸化分解反応が抑制され、サイクル特性が高まると推測される。
図1は、本発明の硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。図1に示される製造方法は、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質(図1において、「Li,Mn含有スピネル構造正極活物質」と表す。)に、Li−P−Nb−B−Geガラスを被覆することにより被覆材料を作製する被覆工程と、該被覆材料をLi−P−Nb−B−Geガラスの軟化点以上、かつ650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有するものである。
以下、本発明の製造方法について、構成ごとに説明する。
1.被覆工程
まず、本発明における被覆工程について説明する。本発明における被覆工程は、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質に、Li−P−Nb−B−Geガラスを被覆することにより被覆材料を作製する工程である。
(1)正極活物質
本発明における正極活物質は、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質である。Li及びMn含むスピネル構造の正極活物質を用いることにより、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面にLiMnPOを形成され、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めることが可能となる。このような正極活物質としては、例えば一般式LiMn2−x−yNi(0<x<2、0≦y<2、MはCo、Fe、Cr、Cu、Ti、Ruの少なくとも一種である。)で表される活物質を挙げることができる。このような正極活物質としては、具体的には、LiNi0.5Mn1.5、Li(Ni0.25Mn0.75、LiCoMnO、LiMn、LiFe0.5Mn1.5、LiCu0.5Mn1.5、LiCr0.5Mn1.5、LiCr0.1Ni0.4Mn1.5等が挙げられる。
正極活物質の形状は、特に限定されるものではないが、例えば粒子状であることが好ましい。その場合、正極活物質の平均粒径(D50)は、特に限定されるものではないが、例えば1nm〜100μmの範囲内であり、10nm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
(2)Li−P−Nb−B−Geガラス
本発明におけるLi−P−Nb−B−Geガラスは、LiO成分、P成分、Nb成分、B成分、及びGeO成分を含有し、リチウムイオン伝導性を有するガラス電解質である。
以下、Li−P−Nb−B−Geガラスの組成成分について説明する。以下の説明において、各成分の含有量は、酸化物基準のモル%で示す。ここで、「酸化物基準のモル%」とは、Li−P−Nb−B−Geガラスの構成成分の原料として使用される酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、フッ化物、塩化物、アンモニウム塩、メタリン酸化合物等が溶融時にすべて分解されて酸化物の状態へと変化すると仮定して、Li−P−Nb−B−Geガラス中に含有される各成分の組成を表記する方法である。この生成酸化物の物質の総和を100mol%として、Li−P−Nb−B−Geガラス中に含有される各成分の物質量の割合を表記する。
以下、本明細書においては、特に明示しない限り、Li−P−Nb−B−Geガラスの構成成分の含有量を、酸化物基準のモル%で表記する。
LiO成分は、キャリアを提供しリチウムイオン伝導性の付与に必須の成分である。LiO成分の含有量が30%未満であると、リチウムイオン伝導性が発現しない、又はリチウムイオン伝導度が著しく小さくなる。そのため、LiO成分の含有量の下限は30%が好ましく、40%がより好ましく、45%が特に好ましい。また、LiO成分の含有量が65%を超えると、結晶化してリチウムイオン伝導性の低いLiPOが析出する等の結果、リチウムイオン伝導性の高いLi−P−Nb−B−Geガラスが得られにくくなる。そのため、LiO成分の含有量の上限は65%が好ましく、63%がより好ましく、59%が特に好ましい。
成分は、電気陰性度の差が大きく、リチウムイオンを可動イオンとする高イオン伝導体を得るのに好適なガラス形成成分であり、Li−P−Nb−B−Geガラスの形成に必須の成分である。P成分の含有量が5%未満であるとガラス化しにくくなる。そのため、P成分の含有量の下限は5%が好ましく、6%がより好ましく、7%が特に好ましい。また、P成分の含有量が40%を超えると、化学的安定性が減少し、且つ、さらに溶融温度が上昇する結果、所望の特性が得られにくくなる。そのため、P成分の含有量の上限は40%が好ましく、38.5%がより好ましく、35%が特に好ましい。 正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面に形成されるLiMnPOのP成分は、該P成分に由来するものである。
Nb成分は、ガラス形成に寄与し、ガラスの熱的安定性を増大させ、溶融温度を下げ、網目修飾酸化物の働きをもってガラスを形成しやすくし、さらにリチウムイオン伝導度を高めるために必要な成分である。Nb成分を含有させることにより、Li−P−Nb−B−Geガラス中にリチウム−酸素の結合の無いNbO6/2八面体構造が形成され、結果としてリチウム−酸素結合が低減するため、このような効果が得られると考えられる。また、Li−P−Nb−B−Geガラス中において、Nb成分は、網目形成酸化物であるPによる網目構造中にリチウムイオンがトラップされるのを防ぐことで、リチウムイオンの伝導パスを確保する効果を発揮する。これらの効果を十分に得るために、Nb成分の含有量の下限は1%であることが好ましく、2.5%であることがより好ましい。一方、Nb成分の含有量が20%を超えると、ガラスの安定性が低下して結晶化が促される。そのため、Nb成分の含有量の上限は20%とすることが好ましく、18%とすることがより好ましく、17.5%とすることが特に好ましい。
成分は、ガラスの形成に有用な成分であり、ガラスの溶融温度を下げ、化学的安定性を増大させ、粘性を下げる成分である。これらの効果を十分に得るために、B成分の含有量の下限は3%であることが好ましく、5%であることがより好ましい。一方、B成分の含有量が25%を超えると、結晶化が促され、且つ、リチウムイオンを高濃度に含むLi−P−Nb−B−Geガラスが得られにくくなり、リチウムイオン伝導度が低下する。そのため、B成分の含有量の上限は25%であることが好ましく、24.5%であることがより好ましく、24%であることが特に好ましい。
GeO成分は、ガラス化を容易にする成分であり、その含有量が0.2%未満であると、熱的安定性が低下する結果、ガラスが得られにくくなる。そのため、GeO成分の含有量の下限は0.2%であることが好ましく、0.3%であることがより好ましく、0.4%であることが特に好ましい。一方、GeO成分の含有量が7%を超えると、溶融温度の上昇を招き、且つ、リチウムイオンを高濃度に含むLi−P−Nb−B−Geガラスが得られにくくなる結果、リチウムイオン伝導度が低下する。そのため、GeO成分の含有量の上限は7%であることが好ましく、6%とすることがより好ましく、5%とすることが特に好ましい。
Li−P−Nb−B−Geガラスでは、Nb成分及びGeO成分の含有量の合計に対するLiO成分の含有量の比LiO/(Nb+GeO)が、2.0以上であることが好ましい。この比を2.0以上にすることにより、リチウムが高濃度に含まれ、且つ、Nb成分及びGeO成分の効果を最大限に利用できるため、リチウムイオン伝導度の高いLi−P−Nb−B−Geガラスを得ることができる。したがって、上記比LiO/(Nb+GeO)は、2.0以上であることが好ましく、2.3以上であることがより好ましく、2.5以上であることが特に好ましい。一方、上記比LiO/(Nb+GeO)が15よりも大きくなると、Nb成分の含有量が極端に低下し、Nb成分による効果が十分に得られなくなるため、リチウムイオン伝導度が極端に低下する。そのため、上記比LiO/(Nb+GeO)は、15以下であることが好ましく、14.5以下であることがより好ましく、14以下であることが特に好ましい。
Li−P−Nb−B−Geガラスには、上記成分に加えて、Ta成分やV成分を含有させることができる。これらの成分を含有させることにより、Nb成分と同様に、ガラスの熱的安定性を増大させ、網目修飾酸化物の働きをもってガラスを形成しやすくし、さらにリチウムイオン伝導度を高めることが可能になる。また、これらの成分は、網目形成酸化物であるPによる網目構造中にリチウムイオンがトラップされるのを防ぐことで、リチウムイオンの伝導パスを確保する効果を発揮する。しかしながら、これらの成分の含有量(何れか一方の成分のみが含有される場合には当該一方の成分の含有量。両方の成分が含有される場合には両方の成分の合計の含有量。以下において同じ。)とNb成分の含有量との合計が20%を超えると、ガラスの安定性が低下して結晶化が促され、且つ、溶融温度が上昇する。そのため、これらの成分の含有量の上限は、Nb成分の含有量をX%とするとき、20−X%とすることが好ましく、18.5−X%とすることがより好ましく、17.5−X%とすることが特に好ましい。
Li−P−Nb−B−Geガラスには、これらの成分以外にも、SiO、KO、CsO、MgO、CaO、BaO、ZnO、SnO、Y、Bi、TeO、Sb、Co、CuO、Fe等の成分を添加することができる。これらの成分の合計の添加量が5%を超えると、リチウムイオンを高濃度に含んだ高いリチウムイオン伝導度を有するLi−P−Nb−B−Geガラスが得られ難くなる。そのため、これらの成分の合計の添加量は5%以下にすべきである。また、Alも添加することができるが、同様の理由により、添加量は10%以下にすべきである。
Li−P−Nb−B−Geガラスの組成には、NaO成分は可能な限り含まないことが好ましい。この成分がガラス中に存在すると、アルカリイオンの混合効果によって、リチウムイオンの伝導が阻害されて伝導度が下がりやすくなる。また、Li−P−Nb−B−Geガラスの組成に硫黄や塩素が含まれると、リチウムイオン伝導性は少し向上するものの、化学的耐久性や安定性が悪くなるため、可能な限り含まないことが好ましい。Li−P−Nb−B−Geガラスの組成には、環境や人体に対して害を与える可能性のあるPb、As、Cd、Hg等の成分も可能な限り含まないことが好ましい。さらに、希少金であるLaに代表されるランタノイド、Acに代表されるアクチノイド、Ru、Co、Ir、In、Se、Hf等の成分は、コスト高を招く可能性があるため、この観点を考慮して、含有の有無や含有量を決めることが好ましい。Li−P−Nb−B−Geガラスにおいては、その性質から結晶化が促進されるため、Sr、Mn、Ni、Zr等の成分も可能な限り含まないことが好ましい。
Li−P−Nb−B−Geガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有率の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を、石英坩堝、アルミナ坩堝、又は、白金坩堝に入れる。その後、1000〜1450℃の温度範囲で0.5〜4時間に亘って溶融して撹拌均質化を行う。次いで、成形型にキャストして徐冷、又は、金型にてプレス成型、又は、5〜25℃の水中にキャストする等の方法により、作製することができる。
Li−P−Nb−B−Geガラスのリチウムイオン伝導度は、好ましくは5.00×10−8(S/cm)、より好ましくは6.40×10−8(S/cm)、特に好ましくは7.00×10−8(S/cm)を下限とする。これにより、全固体電池に好適に利用することができる。Li−P−Nb−B−Geガラスのリチウムイオン伝導度を高めることにより、全固体電池の性能を向上させることが可能になる。
Li−P−Nb−B−Geガラスの溶融温度は1350℃以下であり、より好ましい態様では1325℃以下、特に好ましい態様では1300℃以下である。Li−P−Nb−B−Geガラスの溶融温度は、950℃まで得ることが可能である。ここで、「ガラスの溶融温度」とは、ガラスの原料粉体を加熱した時に、原料粉体が融液となり、融液面及び融液内部に、未溶融の原料粉体及び原料粉体から生成された固形物(融け残り)が無くなる温度である。融液面より上部の坩堝の内壁に固形物が付着していても、それらは無視する。ただし、ガラスの溶融温度の直接的な測定は困難な場合には、原料粉体を昇温しながら加熱し、50℃又は25℃刻みで観察し、目視で融液面及び融液内部に融け残りが観察されなくなった温度を、ガラスの溶融温度とすることができる。
Li−P−Nb−B−Geガラスは、リチウムを高濃度に含有し、高いリチウムイオン伝導度を有しながらも、化学的、熱的に安定であり、大気中及び水中において、目視で著しいガラスの変質は見られない。
(3)被覆処理
被覆工程における、正極活物質のLi−P−Nb−B−Geガラスによる被覆(被覆材料の作製)は、例えば以下のように行われる。まず、公知の方法で作製する等により、正極活物質を準備する。その後、正極活物質の表面を、Li−P−Nb−B−Geガラスによって被覆する。正極活物質の表面を、Li−P−Nb−B−Geガラスによって被覆する際の具体的な方法としては、転動流動コーティング法、メカノフュージョン法、CVD法、及びPVD法等の方法を例示することができる。また、例えば転動流動コーティング法を用いて被覆する場合、具体的にはLi−P−Nb−B−Geガラスの各元素成分をエタノールもしくは水の溶剤に溶かし、または分散させて塗工液を調製し、正極活物質表面に塗布して乾燥させる。この際、吸気温度は例えば、50℃以上であることが好ましい。吸気温度が上記範囲を下回ると、塗工液中の溶媒の揮発速度が遅くなるからである。
本発明の被覆材料は、正極活物質の表面の少なくとも一部がLi−P−Nb−B−Geガラスによって被覆されていれば良い。ただし、後述する焼成工程の後に、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めやすい正極複合材を得る観点から、正極活物質の全表面に占める、Li−P−Nb−B−Geガラスによって被覆されている部分の割合は、高ければ高いほど好ましく、正極活物質の全表面がLi−P−Nb−B−Geガラスによって被覆されていることが特に好ましい。正極活物質の表面を被覆しているLi−P−Nb−B−Geガラスは、例えばX線光電子分光法(XPS分光装置)によって確認することができる。
2.焼成工程
次に、本発明における焼成工程について説明する。本発明における被覆工程は、上記被覆材料をLi−P−Nb−B−Geガラスの軟化点以上、かつ650℃以下の温度で焼成する工程である。
(1)焼成処理
本工程における焼成温度は、Li−P−Nb−B−Geガラスの軟化点以上、650℃以下の温度であれば、特に限定されるものではないが、サイクル特性を高めやすくする観点から、600℃以上、650℃以下であることが好ましい。Li−P−Nb−B−Geガラスの軟化点は、JIS R 3103に規定のファイバーエロンゲーション法により測定した粘度が107.6dPa・sとなる温度の実測値であり、Li−P−Nb−B−Geガラスの軟化点の組成により変動する温度である。例えば軟化点が511℃であるLi−P−Nb−B−Geガラスが知られている。Li−P−Nb−B−Geガラスの軟化点以上の温度で被覆材料を焼成することにより、Li−P−Nb−B−Geガラスが軟化した状態となり、Li−P−Nb−B−Geガラスを正極活物質に均一に結着させることができ、また、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面にLiMnPOを形成しやすくなる。これにより、強固な表面を有する正極複合材を作製することが可能となる。また、焼成温度を650℃以下とすることにより、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面にLiMnPOが形成される以外の反応が起こることを抑制することが可能となる。
本工程における焼成時間は、焼成温度や正極活物質及びLi−P−Nb−B−Geガラスの組成に応じて適宜設定することができるが、例えば、1時間〜20時間程度までの間の任意の時間とすることができる。焼成を1時間以上行うことにより、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの界面にLiMnPOを形成されやすく、また、Li−P−Nb−B−Geガラスに含まれる有機物、水等の異物を気化させて取り除くことができる。
焼成工程を行う雰囲気は、特に限定されるものではない。例えば、大気雰囲気等の酸化性雰囲気下で行えばよく、Ar雰囲気、N雰囲気等の不活性雰囲気下、還元性雰囲気下、又は真空下で行ってもよい。
(2)正極複合材
焼成工程により、被覆材料を焼成することにより正極複合材を得ることができる。
図2は、本発明の一の実施形態にかかる正極複合材10の断面図である。図2に示した正極複合材10は、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質1と、該正極活物質1を被覆するLi−P−Nb−B−Geガラス2aと、正極活物質1とLi−P−Nb−B−Geガラス2aとの界面に形成されるLiMnPO(2b)とを有している。なお、本実施形態においては、Li−P−Nb−B−Geガラス2aとLiMnPO(2b)とを併せて被覆層2と称する。
図2では、正極活物質1の全表面が被覆層2によって被覆されている正極複合材10を示したが、本発明の正極複合材は当該形態に限定されない。本発明の正極複合材は、正極活物質の表面の少なくとも一部が被覆層により被覆されていれば良い。ただし、硫化物全固体電池のサイクル特性を高めやすい正極複合材を得る観点から、正極活物質の全表面に占める、被覆層によって被覆されている部分の割合は、高ければ高いほど好ましく、正極活物質の全表面が被覆層によって被覆されていることが特に好ましい。正極活物質の表面を被覆している被覆層は、例えばX線光電子分光法(XPS分光装置)によって確認することができる。
本発明において、正極活物質1の表面を被覆している被覆層2の厚さは、特に限定されない。被覆層の厚さは、本発明の上記効果を奏しやすい形態にする観点からは、1nm以上とすることが好ましく、2nm以上とすることがより好ましく、5nm以上とすることが特に好ましい。一方、リチウムイオンの伝導経路の長さを短くすることによって硫化物全固体電池の性能を高めやすい形態にする等の観点からは、被覆層の厚さを薄くすることが好ましい。被覆層の厚さは、100nm以下とすることが好ましく、50nm以下とすることがより好ましく、20nm以下とすることが特に好ましい。
本発明においては、上述した正極複合材を用いた硫化物全固体電池の製造方法を提供することもできる。具体的には、正極層と、負極層と、正極層及び負極層との間に形成される硫化物固体電解質層と、を一体化させる硫化物全固体電池の製造方法であって、正極層が上記正極複合材を含有することを特徴とするものである。
上記硫化物全固体電池における正極層は、少なくとも正極複合材を含む層である。正極層には、正極複合材に加え、必要に応じて、硫化物固体電解質、導電材、バインダー等を適宜含有させることができる。
正極層に含有される正極複合材の形状は、例えば粒子状や薄膜状等にすることができる。正極複合材が粒子状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。また、正極層における正極複合材の含有量は、特に限定されないが、質量%で、例えば40%以上99%以下とすることが好ましい。
正極層に含有させることが可能な硫化物固体電解質としては、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P、LiPS等を例示することができる。
また、正極層に含有させることが可能な導電材としては、気相成長炭素繊維、アセ
チレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、カーボンナノチューブ(CNT
)、カーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料のほか、硫化物全固体電池の使用時
の環境に耐えることが可能な金属材料を例示することができる。
また、正極層に含有させることが可能なバインダーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。
上記正極複合材、硫化物固体電解質、及び、バインダー等を液体に分散して調整したスラリー状の正極組成物を用いて正極層を作製する場合、使用可能な液体としてはヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。また、正極層の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、硫化物全固体電池の性能を高めやすくするために、正極層はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。本発明において、正極層をプレスする際の圧力は、例えば100MPa程度とすることができる。
上記硫化物全固体電池における硫化物固体電解質層は、少なくとも硫化物固体電解質を含有する層であり、硫化物固体電解質に加えて、バインダーを適宜含有させることができる。硫化物固体電解質層に含有させることが可能な硫化物固体電解質としては、正極層に含有させることが可能な上記硫化物固体電解質を例示することができる。また、硫化物固体電解質層に含有させることが可能なバインダーとしては、正極層に含有させることが可能な上記バインダーを例示することができる。ただし、硫化物全固体電池の高出力化を図りやすくするために、硫化物固体電解質の過度の凝集を防止し且つ均一に分散された硫化物固体電解質を有する硫化物固体電解質層を形成可能にする等の観点から、硫化物固体電解質層にバインダーを含有させる場合、その含有率は5質量%以下とすることが好ましい。また、液体に上記硫化物固体電解質等を分散して調整したスラリー状の硫化物固体電解質組成物を正極層や負極層等の基材に塗布する過程を経て硫化物固体電解質層を作製する場合、硫化物固体電解質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。硫化物固体電解質層における硫化物固体電解質の含有量は、質量%で、例えば60%以上、中でも70%以上、特に80%以上であることが好ましい。硫化物固体電解質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるが、例えば、0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、硫化物全固体電池の性能を高めやすくするために、硫化物固体電解質層はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。本発明において、硫化物固体電解質層をプレスする際の圧力は、例えば100MPa程度とすることができる。
上記硫化物全固体電池における負極層は、少なくとも負極活物質を含む層である。負極層には、負極活物質に加え、必要に応じて、硫化物固体電解質、導電材、バインダー等を適宜含有させることができる。
負極層に含有させることが可能な負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な公知の負極活物質を適宜用いることができる。そのような負極活物質としては、例えば、カーボン活物質、酸化物活物質、及び、金属活物質等を挙げることができる。カーボン活物質は、炭素を含有していれば特に限定されず、例えばグラファイト、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。酸化物活物質としては、例えばNb、LiTi12、SiO等を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、Si、及び、Sn等を挙げることができる。また、負極活物質として、リチウム含有金属活物質を用いても良い。リチウム含有金属活物質としては、少なくともLiを含有する活物質であれば特に限定されず、Li金属であっても良く、Li合金であっても良い。Li合金としては、例えば、Liと、In、Al、Si、及び、Snの少なくとも一種とを含有する合金を挙げることができる。負極活物質の形状は、例えば粒子状、薄膜状等にすることができる。負極活物質が粒子状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。また、負極層における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、質量%で、例えば40%以上99%以下とすることが好ましい。
負極層に含有させることが可能な硫化物固体電解質としては、正極層に含有させることが可能な上記硫化物固体電解質を例示することができる。また、負極層に含有させることが可能なバインダーとしては、正極層に含有させることが可能な上記バインダーを例示することができる。
また、液体に上記負極活物質等を分散して調整したスラリー状の負極組成物を用いて負極層を作製する場合、負極活物質等を分散させる液体としては、ヘプタン等を例示することができ、無極性溶媒を好ましく用いることができる。また、負極層の厚さは、例えば0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、硫化物全固体電池の性能を高めやすくするために、負極層はプレスする過程を経て作製されることが好ましい。本発明において、負極層をプレスする際の圧力は、例えば100MPa程度とすることができる。
また上記硫化物全固体電池の製造方法は、正極層の集電を行う正極集電体を形成する正極集電体形成工程を有していても良く、負極層の集電を行う負極集電体を形成する負極集電体形成工程を有していても良い。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。また、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケル、およびカーボン等を挙げることができる。正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、上記硫化物全固体電池の製造方法としては、上述した正極層、固体電解質層および負極層から構成される発電要素を電池ケースに封止する封止工程を有していても良い。電池ケースには、一般的な電池ケースを用いることができる。また、上記固体電池の製造方法としては、例えば、発電要素を絶縁リングの内部に形成しても良い。
上記硫化物全固体電池の製造方法において、正極層、負極層、及び硫化物固体電解質層とを一体化する方法としては、正極層と負極層との間に硫化物固体電解質層が配置されるように、これらを積層した後、プレスする方法を挙げることができる。
硫化物全固体電池は、例えば、ラミネートフィルム等の外装材に包まれた状態で、使用される。このラミネートフィルムとしては、硫化物全固体電池で使用可能な公知のラミネートフィルムを用いることができる。そのようなラミネートフィルムとしては、樹脂製のラミネートフィルムや、樹脂製のラミネートフィルムに金属を蒸着させたフィルム等を例示することができる。
以下、実施例を参照しつつ、本発明について、さらに説明を続ける。
<実施例1>
転動流動コーティング装置(パウレック社製)を用いて、Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質であるLiNi0.5Mn1.5の表面に、コート材としてLi−P−Nb−B−Geガラス(LiO−P−Nb−B−GeO系ガラス電解質;軟化点511℃)を、厚さ約10nmとなるように被覆することにより、被覆材料を作製した。その後、作製した被覆材料を、大気中、550℃で20時間焼成することにより、正極複合材を作製した。
次に、焼成後の正極複合材と、LiS−P系硫化物固体電解質と、導電助剤のカーボンとを、体積比率で、正極複合材:硫化物固体電解質:導電助剤=10:10:1となるように秤量し、これらを混合することにより、正極合材を作製した。このようにして作製した正極合材を用いて、正極層を作製した。さらに、LiS−P系硫化物固体電解質を用いて硫化物固体電解質層を作製し、グラファイトを用いて負極層を作製し、これらを用いて硫化物全固体電池を作製した。そして、作製した硫化物全固体電池に対し、最初に充放電試験を行い、初期放電容量及び平均放電電圧を測定した。充放電試験は、25℃で4.9V−3.5Vの範囲で測定し、1/10Cレートで定電流試験をした後、1/100Cレートとなる電流値を終止条件とした。その後、サイクル試験を行い、サイクル特性を評価した。サイクル試験は、60℃の恒温槽に硫化物全固体電池を保管し、充電後に1Cレートでの定電流試験を行うサイクルを20回繰り返した。
<実施例2>
熱処理を行う温度を600℃に変更したことを除き、実施例1と同じ条件で硫化物全固体電池を作製し、試験を行った。
<比較例1>
コート材を被覆しない正極活物質を用いたことを除き、実施例1と同じ条件で試験を行った。
<比較例2>
コート材にLiNbOを用い、350℃で熱処理したことを除き、実施例1と同じ条件で試験を行った。
<比較例3>
コート材にLiNbOを用い、500℃で熱処理したことを除き、実施例1と同じ条件で試験を行った。
<比較例4>
熱処理を行う温度を200℃に変更したことを除き、実施例1と同じ条件で硫化物全固体電池を作製し、試験を行った。
<比較例5>
熱処理を行う温度を350℃に変更したことを除き、実施例1と同じ条件で硫化物全固体電池を作製し、試験を行った。
[結果]
(正極活物質と被覆層との界面観察)
実施例1の正極複合材の正極活物質と被覆層との界面のSEM画像を図3に示す。また、正極複合材の正極活物質と被覆層との界面のSTEM−EDX(JEOL)を用いた組成分析の結果を図4に示す。なお、図4中、「O K」「P K」「Mn K」「Ni K」及び「Nb L」は、O、P、Mn、Ni又はNbの各元素の組成をK殻又はL殻から求めたことを意味する。また、図5に正極活物質を被覆する被覆層のNb成分(図5(a))及びP成分(図5(b))のSEM−EDX画像を示す。
図3より被覆層が正極活物質の表面に扁平な形状で付着していることが確認された。また、図4及び図5よりLi−P−Nb−B−Geガラスに由来するNb及びPがいずれも正極活物質表面側に偏析し、表面に一様に存在していることが確認された。なお、図4には、活物質と被覆層との間に正極活物質に由来するMnとLi−P−Nb−B−Geガラスに由来するPとをいずれも含む領域があり、この部分にLiMnPOが形成されているものと考えられる。当該領域では元素同士が拡散し合い、原子間の結合を組み替えが起きているものと考えられ、正極活物質は被覆層により強固に保護されているといえる。
(サイクル特性評価)
実施例1、2及び比較例1〜5の、試験条件及び試験結果を表1に示す。また、実施例1及び2の充放電試験の結果を図6に示す。
実施例1、2及び比較例1〜3のサイクル試験結果を図7に示す。なお、図7に示した放電比容量(%)は、100×(各サイクルの放電容量)/(1サイクル目の放電容量)により算出した値である。
図7に示したように、本発明の製造方法により製造される正極複合材を用いた実施例1、2の硫化物全固体電池は、コート材としてLiNbOを用いた比較例2、3と比べてサイクル経過後の放電容量の低下が抑えられており、サイクル特性が高かった。また表1に示したように、実施例1、2の硫化物全固体電池はいずれの比較例よりも初期放電容量が大きく、0.1Cでの平均放電電圧が高かった。
以上のように、本発明の製造方法により製造される正極複合材を用いた硫化物全固体電池は、サイクル特性に加えて、初期放電容量及び0.1Cでの平均放電電圧にも優れるものであった。
[X線回折測定によるLiMnPOの同定]
<参考例1>
実施例1で用いた正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスの粉末とを重量比80:20の割合で混合し、実施例1と同様の条件で(大気中、550℃で20時間)焼成した粉末に対し、X線回折(XRD)測定を行った。結果を図8に示す。
<参考例2>
実施例2と同様の条件で(大気中、600℃で20時間)焼成を行った以外は、参考例1と同様にXRD測定を行った。結果を図8に示す。
図8より、参考例1、参考例2共にLiNi0.5Mn1.5のピークが確認され、LiNi0.5Mn1.5のスピネル構造が保持されることが確認された。また、25.4°、29.5°、35.4゜にピークが確認されたことから、LiMnPOが形成されたものと考えられる。LiNi0.5Mn1.5メインピーク(18.8°)強度IaとLiMnPOのメインピーク(35.4°)強度Ibとの比(Ia/Ib)は、参考例1で34.4、参考例2で35.1であった。
上記結果より、LiNi0.5Mn1.5とLi−P−Nb−B−Geガラスとを単に混合して焼成した場合でも、LiMnPOのピークが見られることが確認された。これより、実施例1、2の焼成後には、正極活物質とLi−P−Nb−B−Geガラスとの間にLiMnPOが生成されているものと考えられる。上述の通り、LiMnPOが形成されることにより、被覆層は酸素脱離等の酸化分解に強い層となる。実施例1、2では酸化分解といった副反応に電流が使われることがなくなり、充放電効率が上がることにより、初期放電容量が大きくなったものと考えられる。また、酸化分解された反応層によるイオン・電子の移動の阻害が起こりにくくなることで電池抵抗増加を防ぎ、過電圧が小さくなったことにより、平均放電電圧が高くなったものと考えられる。
1…Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質
2…被覆層
2a…LiO−P−Nb−B−GeOガラス
2b…LiMnPO
10…正極複合材

Claims (2)

  1. Li及びMnを含むスピネル構造の正極活物質に、LiO−P−Nb−B−GeOガラスを被覆することにより被覆材料を作製する被覆工程と、
    前記被覆材料を前記LiO−P−Nb−B−GeOガラスの軟化点以上、650℃以下の温度で焼成する焼成工程と、を有する、硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法。
  2. 前記焼成工程において、前記被覆材料を600℃以上、650℃以下の温度で焼成する、請求項1に記載の硫化物全固体電池用の正極複合材の製造方法。
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