JP2020115425A - 硫化物固体電解質粒子、及び、全固体電池 - Google Patents
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Abstract
Description
このような全固体電池の電池構成群は、正極、負極、および電解質が全て固体であるため、例えば有機電解液を用いたリチウム二次電池と比較して、電気抵抗が大きくなり、出力電流が小さなものとなる傾向にある。
特許文献2で開示されている硫化物固体電解質粒子でも、十分なイオン伝導度を有し、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制するには、未だ不十分であり、向上が望まれる。
前記正極層、前記負極層および前記固体電解質層の少なくともいずれか一つが、前記硫化物固体電解質粒子を含有することを特徴とする。
本開示の硫化物固体電解質粒子は、構成元素としてLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質を含有し、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が0.79以上1.25以下であり、表面より30nm(SiO2スパッタレート換算)の位置の酸素/硫黄元素比率が0.58以下であることを特徴とする。
本開示の硫化物固体電解質粒子の一例について図面を参照しながら説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1に示すように、本開示の硫化物固体電解質粒子1は、構成元素としてLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質3の表面が酸化された酸化物層2によって覆われているものが挙げられる。
本開示の硫化物固体電解質粒子に用いられる構成元素としてLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質は、ハロゲンを含むことによって、Li、P、及びSを含み且つハロゲンを含まない硫化物固体電解質に比べて、高イオン伝導度を達成することができる。硫化物固体電解質の表面を酸化するとイオン伝導度が低下していくが、本開示では、高イオン伝導度のLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質の表面を、従来よりも少なく適切に酸化させることにより、イオン伝導度の低下を抑制できるため、十分なイオン伝導度を有することができると考えられる。また、高イオン伝導度のLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質の表面を、従来よりも少なく適切に酸化させることにより、全固体電池に用いられた充放電時に、当該硫化物固体電解質粒子と酸化物活物質との界面での反応が抑制され、各々の化学劣化が抑制されるため、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制することができる。
本開示の硫化物固体電解質粒子は、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が0.79以上1.25以下である。
前記特定の硫化物固体電解質を含有し、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が0.79未満であると、硫化物固体電解質粒子と酸化物活物質との界面の反応を抑制する作用を得難くなるため、充放電サイクル後の抵抗増加率を十分に抑制できなくなる恐れがある。
一方、前記特定の硫化物固体電解質を含有し、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が1.25超過であると、当該硫化物固体電解質粒子のイオン伝導度が急激に低下する恐れがある。優れたイオン伝導度を得る点からは、本開示の硫化物固体電解質粒子は、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が1.00以下であることが好ましい。
前記XPS装置では、XPSとスパッタとの組み合わせによる深さ方向の分析も可能である。具体的には、一定のスパッタレートでスパッタしながら、XPS測定を行い、スパッタ時間とXPS強度の関係をグラフ化したデプスプロファイルを予め作成し、測定により得られたスパッタレートの値から、表面からの厚さを換算し、その位置での酸素/硫黄元素比率を測定することができる。
本開示の硫化物固体電解質粒子には、構成元素としてLi(リチウム)、P(リン)、S(硫黄)、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質が用いられる。本開示の硫化物固体電解質粒子には、Li2S、P2S5、及びLiX(ここで、Xはハロゲンからなる群から選択される1種以上の原子)から得られる、Li2S−P2S5−LiX系硫化物固体電解質が用いられることが挙げられる。
ハロゲンは、F(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、及びI(ヨウ素)からなる群から選択される1種以上の原子であればよい。ハロゲンとしては、イオン伝導度の点から、I、Br、及び、Clからなる群から選択される1種以上が好ましい。
aとしては、高イオン伝導性が得られる組成範囲の点から、0.1以上0.3以下であることが挙げられ、更に、0.15以上0.25以下であることが挙げられる。
また、bとしては、高イオン伝導性結晶が析出する組成範囲の点から、0.72以上0.78以下であることが挙げられ、更に、0.74以上0.76以下であることが挙げられる。
中でも、イオン伝導度の点から、構成元素としてLi、P、S、I、及びBrを含む硫化物固体電解質であることが好ましく、Li2S、P2S5、LiI、及びLiBrから得られる、Li2S−P2S5−LiI−LiBr系硫化物固体電解質が用いられることが挙げられる。
ハロゲンが2種以上含まれる場合、2種以上の混合比率は限定されるものではない。前記と同様にLi、P、S、及びハロゲン(X)を、Li2S、P2S5、及びLiXで換算して、例えばLiI及びLiBrを混合して用いる場合、cLiI・(1−c)LiBrにおいて、cとしては、高イオン伝導性が得られる組成範囲の点から、0.0以上1.0以下であることが挙げられ、更に、0.25以上0.67以下であることが挙げられる。
本開示の硫化物固体電解質粒子に用いられる硫化物固体電解質は、イオン伝導度の点から、少なくとも一部に結晶構造を含むことが好ましく、例えば、CuKα線を使用した粉末X線回折において、2θ=20.2±0.5deg、及び2θ=23.6±0.5degに回折ピークを有することが好ましい。
本開示の硫化物固体電解質粒子に用いられる硫化物固体電解質は、酸素を除いて、Li、P、S、及びハロゲンで、構成元素の100モル%を占めるものであっても良い。
硫化物固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調製することにより制御できる。また、硫化物固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
本開示における硫化物固体電解質粒子の形状としては、例えば真球状または楕円球状を挙げることができる。また硫化物固体電解質粒子が粒子形状である場合、その平均粒径は例えば0.1μm〜100μmの範囲内であることが挙げられる。平均粒径は、0.5μm〜20μmの範囲内であっても良く、0.5μm〜10μmの範囲内であっても良い。
硫化物固体電解質粒子の平均粒径は、例えば、SEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。
本開示における硫化物固体電解質粒子は、例えば、以下のように製造することができる。
本開示における硫化物固体電解質粒子の製造方法は、本開示の課題を解決する点から、硫化物固体電解質材料を準備する工程と、当該硫化物固体電解質材料の表面を酸化させる工程を有することが好ましい。
本開示における硫化物固体電解質粒子に用いられる硫化物固体電解質材料は、本開示の課題を解決する点から、Li2S、P2S5、及びLiX(ここで、Xはハロゲンからなる群から選択される1種以上の原子)を含む原料組成物から製造されることが好ましい。前記原料組成物を、非晶質化して硫化物固体電解質ガラスとすることが好ましく、更に当該硫化物固体電解質ガラスを、結晶化しても良い。
また、溶融急冷法は、反応雰囲気や反応容器に制限がある。一方、メカニカルミリングは、目的とする組成の硫化物固体電解質ガラスを簡便に合成できるという利点がある。
メカニカルミリングは、乾式メカニカルミリングであっても良く、湿式メカニカルミリングであっても良いが、後者が好ましい。容器等の壁面に原料組成物が固着することを防止でき、より非晶質性の高い硫化物固体電解質ガラスを得ることができるからである。
遊星型ボールミルを行う際の台盤回転数としては、例えば200rpm〜500rpmの範囲内、中でも250rpm〜400rpmの範囲内であることが好ましい。
遊星型ボールミルを行う際の処理時間は、例えば1時間〜100時間の範囲内、中でも1時間〜50時間の範囲内であることが好ましい。
ボールミルに用いられる容器および粉砕用ボールの材料としては、例えばZrO2およびAl2O3等を挙げることができる。
粉砕用ボールの径は、例えば1mm〜20mmの範囲内である。
極性の非プロトン性液体としては、特に限定されるものではないが、例えばアセトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類等を挙げることができる。
また、無極性の非プロトン性液体としては、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等の鎖状エーテル類;テトロヒドロフラン等の環状エーテル類;クロロホルム、塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル類;酢酸エチル等のエステル類;フッ化ベンゼン、フッ化ヘプタン、2,3−ジハイドロパーフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン等のフッ素系化合物を挙げることができる。なお、上記液体の添加量は、特に限定されるものではなく、所望の硫化物固体電解質を得ることができる程度の量であれば良い。
小粒径ガラスにする場合、前記メカニカルミリングの場合と同様に、容器に得られた硫化物固体電解質ガラスと粉砕用ボールとを加え、所定の回転数および時間で処理を行う。
小粒径ガラスとする場合の粉砕用ボールの径は、例えば0.3mm〜1.0mmの範囲内である。
小粒径ガラスにする場合も、湿式メカニカルミリングとなるように、前記湿式メカニカルミリングに用いられる液体の存在下で、粉砕することが挙げられる。当該液体の中に、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等の鎖状エーテル類等の酸素原子を含む化合物を用いる場合、後述する当該硫化物固体電解質材料の表面を酸化させる工程の酸化剤となり得る。
結晶化する工程としては、前記得られた硫化物固体電解質ガラス乃至小粒径ガラスを、当該ガラスの結晶化温度以上で加熱することにより結晶化する工程が挙げられる。
当該結晶化する工程は、後述する当該硫化物固体電解質材料の表面を酸化させる工程と同時に行っても良い。
硫化物固体電解質材料の表面を酸化させる工程(表面酸化工程)は、前記硫化物固体電解質材料を酸化剤と接触させ、硫化物固体電解質材料表面を酸化し、酸化物層を形成する工程である。
硫化物固体電解質ガラス乃至小粒径ガラスの結晶化温度(Tc)は、熱分析測定(DTA)により測定することができる。
加熱温度は、前記硫化物固体電解質ガラス乃至小粒径ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上であり、200℃以上が挙げられる。一方、加熱温度の上限は特に限定されないが、結晶化温度(Tc)+20℃までであってよい。
加熱時間は、所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間〜24時間の範囲内であり、中でも、1分間〜10時間の範囲内が挙げられる。
また、加熱は、酸化剤として酸素ガスを微量含む以外は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。酸化剤として酸素ガスを微量含むガスとしては、例えば、酸素ガスを0.1体積%以上2.0体積%以下含有する不活性ガスが挙げられる。
加熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
加熱工程を経て得られる硫化物固体電解質は、加熱処理によって、ガラスが完全に結晶化していてもよく、完全に結晶化されずにガラスが残留して含まれていてもよい。
その他の工程としては、例えば、更に乾燥工程を有していても良い。
当該乾燥工程は、前記表面酸化工程の後に行われるもので、前記表面酸化工程により酸化され、硫化物固体電解質材料表面に形成した酸化物層から水分を除去し、水分を含有しない酸化物層を有する硫化物固体電解質粒子とする工程である。
例えば、予備的な実験として、上述した表面酸化工程、および乾燥工程を行い、所望の量の上記酸化物層が形成される、雰囲気、温度および時間等の乾燥条件を決定することができる。
本開示の硫化物固体電解質粒子の用途としては、例えば、全固体電池に用いることが挙げられる。全固体電池の種類としては、全固体リチウム電池、全固体リチウムイオン電池、全固体マグネシウム電池、全固体ナトリウム電池および全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも全固体リチウム電池、全固体リチウムイオン電池、および全固体ナトリウム電池が好ましく、特に全固体リチウム電池、および全固体リチウムイオン電池が好ましい。
本開示の全固体電池は、正極層と、負極層と、前記正極層および前記負極層の間に配置された固体電解質層とを備える全固体電池であって、
前記正極層、前記負極層および前記固体電解質層の少なくともいずれか一つが、前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有することを特徴とするものである。
図2においては、硫化物固体電解質粒子1の表面が酸化されていることにより、正極活物質20と上記硫化物固体電解質粒子との界面での反応が抑制され、各々の化学劣化が抑制されるため、本開示の全固体電池は、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制することができる。
例えば、固体電解質層13が硫化物固体電解質粒子1を含有する場合には、硫化物固体電解質粒子1の表面が酸化されていることにより、正極層11または負極層12内に含有される活物質および上記硫化物固体電解質粒子1の界面での反応が抑制され、各々の化学劣化が抑制されるため、本開示の全固体電池は、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制することができる。
また、負極層12が負極活物質と前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有する場合には、硫化物固体電解質粒子1の表面が酸化されていることにより、負極活物質および上記硫化物固体電解質粒子の界面での反応が抑制され、各々の化学劣化が抑制されるため、本開示の全固体電池は、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制することができる。
本開示の全固体電池においては、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制する点から、前記正極層、前記負極層および前記固体電解質層のいずれにも、前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有する態様であってもよい。
以下、本開示の全固体電池について各構成に分けて説明する。
正極層は少なくとも正極活物質及び固体電解質を含有し、必要に応じ、導電材、及び、結着剤を含有する。
正極層の固体電解質として、前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有する場合、正極活物質としては、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制する点から、酸化物正極活物質が用いられることが好ましい。
酸化物正極活物質としては、例えば、一般式LixMyOz(Mは遷移金属元素であり、x=0.02〜2.2、y=1〜2、z=1.4〜4)で表される正極活物質を挙げることができる。上記一般式において、Mは、Co、Mn、Ni、V、FeおよびSiからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられ、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。このような酸化物正極活物質としては、具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4等を挙げることができる。また、上記一般式LixMyOz以外の正極活物質としては、LiFePO4、LiMnPO4等のオリビン型正極活物質を挙げることができる。
正極層における正極活物質としては、酸化物正極活物質以外の従来公知の正極活物質を用いても良い。
正極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、板状等が挙げられる。
正極層における正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば10質量%〜99質量%の範囲内が挙げられ、20質量%〜90質量%の範囲内であってもよく、40質量%〜85質量%の範囲内であってもよい。
正極層に、前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有しない場合、固体電解質としては、後述の固体電解質層において例示した固体電解質を適宜選択して用いても良い。正極層に前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有しない場合の固体電解質の含有量は、前記硫化物固体電解質粒子の含有量と同様であって良い。
正極層における導電材の含有量は、特に限定されないが、例えば0質量%〜10質量%の範囲内、中でも1質量%〜5質量%の範囲内であってもよい。
正極層における結着剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0質量%〜20質量%の範囲内、中でも0.1質量%〜10質量%の範囲内であってもよい。
負極層は少なくとも負極活物質及び固体電解質を含有し、必要に応じ、導電材、及び、結着剤を含有する。
負極層の固体電解質として、前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有する場合、負極活物質としては、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制する点から、酸化物負極活物質が用いられることが好ましい。
酸化物負極活物質としては、例えば、スピネル構造を有する活物質が挙げられ、具体的には、Li4Ti5O12、Li4Mn2O4、Li4Mn5O12等を挙げることができる。
負極層における負極活物質としては、酸化物負極活物質以外の従来公知の負極活物質を用いても良い。従来公知の負極活物質としては、例えば、Li金属、グラファイト、Si金属、Si合金等が挙げられる。
負極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、板状等が挙げられる。
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有し、必要に応じて結着剤等を含有していても良い。
固体電解質層に用いられる固体電解質としては、酸化物系固体電解質材料、及び、硫化物系固体電解質材料等が挙げられるが、中でも硫化物固体電解質材料であることが、リチウムイオン伝導度が高い点から好ましい。
固体電解質層の固体電解質としては、前記本開示の硫化物固体電解質粒子を含有することが、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制する点から好ましい。この場合、正極層および負極層の少なくとも一方が、酸化物活物質を含有することが、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制する点から好ましい。
具体的には、Li7P3S11、Li3PS4、Li8P2S9、Li13GeP3S16、Li10GeP2S12、15LiBr・10LiI・75(0.75Li2S・0.25P2S5)、70(0.06Li2O・0.69Li2S・0.25P2S5)・30LiI等が挙げられる。なお、組成はモル表記である。
前記本開示の硫化物固体電解質粒子とは異なる硫化物系固体電解質材料としては、前記本開示の硫化物固体電解質粒子において、表面を酸化する工程を経ていない、表面の酸素濃度が前記本開示の硫化物固体電解質粒子の範囲を満たさないものを用いても良い。
固体電解質層における固体電解質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、100質量%であってもよいが、70質量%〜99.99質量%の範囲内であってもよく、90質量%〜99.9質量%の範囲内であってもよい。
固体電解質層における結着剤の含有量は、特に限定されないが、例えば0質量%〜20質量%の範囲内、中でも0.1質量%〜10質量%の範囲内であってもよい。
図2には示されていないが、本開示の全固体電池には、通常、正極集電体および負極集電体が用いられる。前記正極集電体とは、上記正極層の集電を行うものである。上記正極集電体としては、正極集電体としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。上記正極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばSUS(ステンレス鋼)、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、銅、およびカーボン等を挙げることができる。前記正極集電体は、緻密金属集電体であっても良く、多孔質金属集電体であっても良い。
全固体電池は、必要に応じ、正極、負極、及び、固体電解質層を収容する外装体を備える。
外装体の形状としては、特に限定されないが、ラミネート型等を挙げることができる。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
(1)硫化物固体電解質粒子の製造
Li2S(フルウチ化学株式会社)0.5503gとP2S5(アルドリッチ)0.8874gとLiI(株式会社高純度化学研究所)0.2850gとLiBr(株式会社高純度化学研究所)0.2773gとを、5mm径のジルコニアボールの入ったジルコニアポット(45ml)に投入し、その後脱水ヘプタン(関東化学株式会社)を4g入れ蓋をした。これを遊星型ボールミル装置(Fritsch製 P−7)にセットし、20時間メカニカルミリングすることで硫化物固体電解質ガラスを得た。
前記硫化物固体電解質ガラス2gを0.3mm径のジルコニアボールの入ったジルコニアポットに再度投入し、ジブチルエーテル(キシダ化学株式会社)を2g、脱水ヘプタン6gを入れ20時間撹拌させることで小粒径ガラスを作製した。
得られた小粒径ガラスを100体積%Arでフローさせながら、結晶化温度以上の温度
(200℃)で3時間加熱させることによって焼成を行い、実施例1の硫化物固体電解質粒子1を得た。当該実施例では、小粒径ガラスを作製する際のジブチルエーテルが、焼成時の酸化剤となっている。
得られた硫化物固体電解質粒子1の表面及び表面より30nmの位置の酸素/硫黄元素比率は、後述のXPS測定により行った。結果を表1に示す。
なお、得られた硫化物固体電解質粒子1について、後述の粉末X線回折測定を行ったところ、2θ=20.1deg、及び2θ=23.7degに回折ピークを有していた。
(2−1)正極の製造
正極活物質にLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(日亜化学工業株式会社)を使用した。当該正極活物質にはLiNbO3の表面処理を施した。この正極活物質を1.862g、導電材カーボンのVGCF(昭和電工株式会社)を0.028g、固体電解質として前記硫化物固体電解質粒子1を0.295g、PVDF(株式会社クレハ)を0.279g、酪酸ブチル(ナカライテスク株式会社)を0.999g、それぞれ秤量し、超音波ホモジナイザー(SMT社製、UH−50)を用いて混合したものを正極合材とした。この正極合材をAl箔(正極集電体)上に塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることで正極シートを作製し、1cm2の打ち抜き機にて打ち抜いたシートを正極層とした。
負極活物質としてシリコン金属(エルケム)を0.800g、固体電解質として前記硫化物固体電解質粒子1を0.621g、PVDF(株式会社クレハ)を0.320g、酪酸ブチル(ナカライテスク株式会社)を1.643g、それぞれ秤量し、超音波ホモジナイザー(SMT社製、UH−50)を用いて混合したものを負極合材とした。この負極合材をCu箔(負極集電体)上に塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることによって負極シートを作製し、1cm2の打ち抜き機にて打ち抜いたシートを負極層とした。
固体電解質として前記硫化物固体電解質粒子1を0.400g、アミノ変性水素添加ブタジエンゴム(JSR製)を0.032g、脱水ヘプタンを0.715g、酪酸ブチルを0.050g、それぞれ秤量し、超音波ホモジナイザーを用いて混合したものをAl箔上に塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させることで固体電解質シートを作製した。これを1cm2の打ち抜き機にて打ち抜いたシートであってAl箔を剥離したシートを固体電解質層として使用した。当該固体電解質層を3つ作製した。
1cm2のマコールセラミックス製の型に、前記正極層1つと前記固体電解質層を3つと前記負極層1つとを貼り合わせていき、SUSピンではさんだ状態で6t/cm2(≒588MPa)の圧力でプレスすることにより実施例1の全固体リチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1の硫化物固体電解質粒子の製造において、小粒径ガラスの焼成雰囲気を、99.5体積%Ar、0.5体積%O2ガスとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の硫化物固体電解質粒子2を製造した。
実施例1の全固体リチウムイオン二次電池の製造において、実施例1の硫化物固体電解質粒子1を用いる代わりに、実施例2の硫化物固体電解質粒子2を用いた以外は、実施例1と同様にして全固体リチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1の硫化物固体電解質粒子の製造において、小粒径ガラスの焼成雰囲気を、99体積%Ar、1体積%O2ガスとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の硫化物固体電解質粒子3を製造した。
実施例1の全固体リチウムイオン二次電池の製造において、実施例1の硫化物固体電解質粒子1を用いる代わりに、実施例3の硫化物固体電解質粒子3を用いた以外は、実施例1と同様にして全固体リチウムイオン二次電池を製造した。
実施例1の硫化物固体電解質粒子の製造において、小粒径ガラスの焼成雰囲気を、98体積%Ar、2体積%O2ガスとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の比較硫化物固体電解質粒子1を製造した。
実施例1の全固体リチウムイオン二次電池の製造において、実施例1の硫化物固体電解質粒子1を用いる代わりに、比較例1の比較硫化物固体電解質粒子1を用いた以外は、実施例1と同様にして全固体リチウムイオン二次電池を製造した。
(1)酸素/硫黄元素比率測定
実施例および比較例で得られた各硫化物固体電解質粒子の表面の酸素/硫黄元素比率と、表面より30nm(SiO2スパッタレート換算)の位置の酸素/硫黄元素比率をそれぞれXPSにより測定した。
XPS測定の条件は、以下のとおりである。
XPS測定装置:ULVAC製、ULVAC−PHI
<XPSの測定条件>
測定光源:Al(モノクロメータ)
分析エリア:200μmφ
パスエネルギー:(wide scan)187eV、(narrow scan)46eV
エネルギーStep:(wide scan)0.8eV、(narrow scan)0.1eV
<スパッタ条件>
加速電圧・電流:3.0kV、20mA
AMPL:(3mm×3mm)
スパッタレート:3.9nm/min(SiO2換算)
深さ方向に各元素分布をとり、最表層のO/S元素比と30nmエッチングした時の内部のO/S元素比を求めた。30nm深さについてはSiエッチング速度が3.8nm/minであるところから算出した。
実施例および比較例で得られた各硫化物固体電解質粒子のXRDスペクトルは、粉末X線回折装置(商品名:RINT−UltimaIII、株式会社リガク製)によるCuKα線を用いた粉末X線回折測定によって得た。なお、スキャンレートは1°/分、回折角は2θ=10〜40°の範囲で測定した。
実施例および比較例で得られた各硫化物固体電解質粒子100mgを秤量し、ペレット成型機にて7MPaの圧力で仮プレスを行って、固体電解質ペレットを作製した。次に、当該固体電解質ペレットの両面に厚さ21μmのカーボンコート箔を設置した。当該カーボンコート箔で挟まれた固体電解質ペレットの両面を、更にステンレス(SUS)製のピンで挟んだ状態で、40Mpaの圧力でコールド本プレスし、6Nのトルクでボルト締めして、イオン伝導度測定用セルとした。
イオン伝導度測定用セルを、交流インピーダンス測定装置(商品名:Solatron1260、ソーラトロン社製)にセットし、印加電圧10mV、測定周波数域0.01〜1MHzの条件で、交流インピーダンス測定(25℃)を行った。
イオン伝導度は、交流インピーダンス測定によって得られた抵抗とペレット厚みから算出した。
実施例および比較例で得られた各全固体電池について、25℃、1/3Cにて、4.55V−3Vで定電流−定電圧で1サイクル充放電した後、1/3Cにて、4.37V−3Vで5サイクル充放電を行った。この後の電池の抵抗を求め、これを初期抵抗とした。その後、60℃、2Cにて、4.37V−3Vで300サイクルまでサイクル試験を行い、その後の電池抵抗をサイクル後の電池抵抗とした。初期抵抗を100%としたときのサイクル後の電池抵抗の百分率を算出し、抵抗増加率とした。
サイクル後抵抗増加率(%)=(サイクル後の電池抵抗)/(初期抵抗)×100
下記表1は、実施例1〜3及び比較例1のイオン伝導度及び充放電サイクル後の抵抗増加率を、硫化物固体電解質粒子の表面及び表面より30nm(SiO2スパッタレート換算)の位置の酸素/硫黄元素比率と併せて比較した表である。
それに対して、構成元素としてLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質を含有し、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が0.79以上1.25以下であり、表面より30nmの位置の酸素/硫黄元素比率が0.58以下である、硫化物固体電解質粒子を用いた実施例1〜3では、イオン伝導度の低下が抑制され、十分なイオン伝導度を有することが実証された。
また、構成元素としてLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質を含有し、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が0.79以上1.25以下であり、表面より30nmの位置の酸素/硫黄元素比率が0.58以下である、硫化物固体電解質粒子を固体電解質として用いた実施例1〜3の全固体リチウムイオン二次電池では、充放電サイクル後の抵抗増加率を抑制できることが実証された。
2 酸化物層
3 硫化物固体電解質
11 正極層
12 負極層
13 固体電解質層
20 正極活物質
100 発電要素
Claims (3)
- 構成元素としてLi、P、S、及びハロゲンを含む硫化物固体電解質を含有し、XPSにより測定した表面の酸素/硫黄元素比率が0.79以上1.25以下であり、表面より30nm(SiO2スパッタレート換算)の位置の酸素/硫黄元素比率が0.58以下である、硫化物固体電解質粒子。
- 前記硫化物固体電解質粒子が、構成元素としてLi、P、S、I、及びBrを含む硫化物固体電解質を含有する、請求項1に記載の硫化物固体電解質粒子。
- 正極層と、負極層と、前記正極層および前記負極層の間に配置された固体電解質層とを備える全固体電池であって、
前記正極層、前記負極層および前記固体電解質層の少なくともいずれか一つが、請求項1または2に記載の硫化物固体電解質粒子を含有する、全固体電池。
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