JP6065922B2 - 熱伝導性フィラー、その製造方法、これを用いる樹脂組成物、その成形体及び高熱伝導材料 - Google Patents

熱伝導性フィラー、その製造方法、これを用いる樹脂組成物、その成形体及び高熱伝導材料 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性と耐湿熱性とを兼ね備えた熱伝導性フィラー、及び該熱伝導性フィラーを含有する樹脂組成物およびその成形体、そしてそれを利用した高熱伝導材料に関する。
プラスチック材料は、高耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックの普及に伴い、加えて生産性及び形状の自由度から、金属材料に代わる材料として電気、電子機器や自動車用等の部材として幅広く使用されている。近年、機器の高性能化・小型軽量化が一層求められ、半導体デバイスの高集積化・大容量化が進み、それに伴い部材より発生する発熱量も増大したことから、実装部品・周囲部品の熱伝導性向上は重要な課題となっている。又、電気自動車の電費向上として、リチウムイオン電池、モーター、インバータに使用される絶縁部材の熱伝導性向上が強く求められている。
プラスチック材料の絶縁性を保持し、熱伝導性を付与する方法としては、無機フィラーを添加する技術が知られており、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。窒化ホウ素は高熱伝導性をもつフィラーであるが、コスト面で実用性が低く、又、六方晶の薄片状結晶構造であることより、樹脂組成物中で窒化ホウ素からなるフィラーが配向し、成形体の熱伝導性に異方性が生じてしまう問題がある。窒化アルミは、熱伝導性に異方性はないが、窒化ホウ素と同様にコスト面での実用性が低く、更に容易に加水分解してアンモニアを発生するという問題がある。アルミナはモース硬度が9と高く、押出工程時のスクリュウやペレット化工程時のカッターの刃、及び、射出成形機のスクリュウや金型を摩耗させる問題がある。
酸化マグネシウムは、熱伝導性が比較的高く、異方性も生じないフィラーであり、かつ低コストいう利点もあり、熱可塑性樹脂へ熱伝導性を付与するフィラーとして有望である。しかしながら、酸化マグネシウムは耐湿熱性に劣る。即ち、酸化マグネシウムをフィラーとして含む成形品を高温高湿下に曝露した際、酸化マグネシウムのフィラーの表面から加水分解を起こし、水酸化マグネシウムと変化することで膨張し、成形品の寸法が増大するという問題が起こる。
耐湿熱性を改善する手法として、酸化マグネシウムをアルキルアルコキシシランで乾式表面処理被覆する手法(例えば、特許文献1参照)や、リン酸マグネシウム系化合物で被覆する手法が挙げられている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これら他の化合物で表面処理された酸化マグネシウムからなるフィラーを熱可塑性樹脂に配合し成形品としたものにおいても耐湿熱性の改善効果は不十分であり、例えば、温度121℃/湿度100%/圧力2atmのプレッシャークッカーテストでの結果は、前述の用途等における要求レベルには達していない。
一方、炭酸マグネシウムは熱伝導率が良好な上、熱伝導率の異方性も少なく、モース高度は3.5と低く、かつ低コストで耐湿性も良好であることより、熱伝導フィラーとして有用と考えられる。
一般的に炭酸マグネシウムは天然品と合成品があり、天然品はマグネサイト鉱を粉砕することで得られるが、可溶性塩、酸不溶物、カルシウム塩等の不純物が合成品と比較し多く含まれ、結晶性も低い為、熱伝導性に劣るという問題がある。一方、合成品としては、水酸化マグネシウムを出発原料とし、水酸化マグネシウムスラリーに二酸化炭素ガスを供給し炭酸化させる方法や、可溶性マグネシウム塩と可溶性炭酸塩を水中で混合し、マグネシウム塩を炭酸化する方法等が挙げられる。生成されるマグネシウム炭酸塩は、中性炭酸マグネシウム(MgCO・3HO)であり、熟成により比較的安定な塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO・Mg(OH)・nHO)へと転化する。塩基性炭酸マグネシウムは酸化マグネシウムやアルミナと比較し熱伝導率が低い上、エンジニアリングプラスチック中に高充填した場合、250℃以上の高温での加工域において含有する結晶水が放たれ、発泡や吐出不安定等の加工性に悪影響を及ぼす懸念がある。そこで、エンジニアリングプラスチック用熱伝導性フィラーとして、塩基性炭酸マグネシウム、中性炭酸マグネシウムを出発原料とし、オートクレーブ中で水熱処理した後に乾燥して得られる、無水炭酸マグネシウムが提供されている(例えば、特許文献3参照)が、依然として熱伝導性フィラーとしての実用レベルには到達しておらず、さらなる改良が求められている。
特開2011−068757号公報 特開2006−151778号公報 特開2005−272752号公報
上記実情に鑑み、本発明の課題は、熱伝導性と耐湿熱性とに優れた高熱伝導材料を与えうる樹脂組成物、成形体、さらに当該高熱伝導材料におけるフィラーとして好適に用いることができる熱伝導性フィラー及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムによって被覆されてなる粒子が、高い熱伝導性を保ちつつ、樹脂へ配合し加工する場合での加工性が良好で、得られる成形体の耐湿熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムによって被覆されてなる粒子であることを特徴とする熱伝導性フィラー、これを樹脂に配合してなる樹脂組成物及びその成形体、並びに高熱伝導材料を提供するものである。
本発明により、高熱伝導性と熱伝導の低異方性を併せ持ち、かつ硬度も低く、耐湿熱性も良好な成形体を与える熱伝導性フィラーを得ることができる。また、該熱伝導フィラーを含有する樹脂組成物は、流動性を損なうことなく容易に成形加工が可能であり、高い熱伝導性と耐湿熱性を併せ持ち、高温高湿下に長期曝露した場合おいても、良好な外観の維持が可能な成形体を得ることができる。従って、本発明の樹脂組成物及びその成形体は、より薄肉化、複雑形状化が望まれている高熱伝導材料に適しており、例えば、電気電子部品、自動車部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途などに好適に用いることができる。
[熱伝導性フィラー]
本発明の熱伝導性フィラーは、酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムによって被覆されてなる粒子であることを特徴とするものである。
酸化マグネシウムは一般的に常温・常圧下、大気中の水蒸気に接する事で序々に加水分解し、水酸化マグネシウムMg(OH)へ変化することが知られている。また、この最表層のMg(OH)は、大気中の二酸化炭素と反応し、炭酸マグネシウムへと変化する。これらの反応は常温常圧下においては、極めて長い期間をかけての変化である。又、水酸化マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムを出発原料として、600℃程度の低温で焼成して得た酸化マグネシウムは比較的これらの反応が容易に起こり得るのに対し、1000℃以上の高温で加熱されたものはより密度が高く、安定となりこれらの反応が進行しにくい。即ち、酸化マグネシウムの焼成条件によっても反応性が異なり、かつ酸化マグネシウムが容器に充填されている場合、外気に接触している箇所と、最内部の粒子同士が接触した箇所を比較した場合においても反応性が異なってくる。従って、酸化マグネシウムからの水酸化マグネシウム、更には炭酸マグネシウムへの変化量の調整は極めて難しい。一方で、本発明では、工業的に短時間で酸化マグネシウムの形状を維持しながら、定量的に炭酸マグネシウムへと改質するものである。
即ち、本発明では、酸化マグネシウムの表面を炭酸マグネシウムで被覆することで、熱伝導性フィラーとしての保存安定性や、これをフィラーとして含有する成形体の耐湿熱性を向上させることを目的としてなされたものである。
本発明の熱伝導性フィラーは、前述のように酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムで被覆されてなる粒子であるが、その粒子径としては、特に限定されるものではないが、フィラーとしての取り扱いが良好である点、成形体の熱伝導性と耐湿熱性とに優れる観点より、平均粒子径が20〜100μmのものであることが好ましく、特に30〜90μmの範囲であることが好ましい。なお、本発明における粒子径の測定方法は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、水を溶媒とし前処理として超音波分散を5分実施後測定した値である。
一般的にフィラーの平均粒子径が大きい程、樹脂と混合した場合の樹脂/フィラー界面の面積が低減する事による高熱伝導化が期待できる。又、本発明のような、熱伝導率の異方性が低く球状の形態をしたフィラーは、熱伝導率の高い繊維状の高結晶性フィラーとの併用の際、球状フィラーと繊維状の高結晶フィラーが接する事による熱伝導パスを形成し得るが、この際に球状フィラーの粒子径が大きい程、効率的な熱伝導パス形成が期待できる。この様な観点より、球状の熱伝導性フィラーを高充填した際に発現する熱伝導率より、より高い熱伝導率を有する成形体を得ようとする場合には、大粒子径のフィラーであることが求められる。
このような観点から、本発明のフィラーにおいても、その平均粒子径が20μm以上であることが好ましい。前記特許文献3では、水への溶解性のある塩基性炭酸マグネシウムや中性炭酸マグネシウムを出発原料として水熱処理を行っていることから、比較的大きな粒子径を有する炭酸マグネシウムを得ることが困難である。
又、平均粒子径が100μmを超えるようなフィラーを樹脂に混合して成形体を得ようとする場合、熱伝導性は良好となるが、その配合割合によっては、耐衝撃性や曲げ強度等の機械的な物性が十分で発揮されなくなったり、特に薄膜の成形体における表面で突起状として外観を不良とすることがあったりすることがある。これらの観点から、目的とする成形体の形状、性能によって、粒子径を選択することが好ましい。
なお、後述するように酸化マグネシウムの水熱処理によって本発明の熱伝導性フィラーを製造する場合においては、原料として用いる酸化マグネシウム粒子の粒径が得られる熱伝導性フィラーの粒径に維持される。従って、用途に応じて熱伝導性フィラーとして粒子径を選択する場合、同様の粒子径を有する酸化マグネシウム粒子を原料として用いれば容易である。
熱伝導性フィラーとしての低異方性の観点や、得られる成形体の物性の均質性の観点から、本発明の熱伝導性フィラーの粒子径分布幅は、変動係数が0.5以下であることが好ましく、特に0.4以下であることが好ましい。なお、粒子径分布幅の評価として用いた変動係数は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、水を溶媒とし測定した粒度分布において、(d84%−d16%)/2で求めた標準偏差を平均粒子径で割ることで求められる値である。
本発明の熱伝導性フィラーを上記範囲のものとする方法としては、後述する水熱処理において原料として用いる酸化マグネシウム粒子の粒径分布幅を調節することや、水熱処理後の乾燥・粉砕工程において、分級工程を組み入れる方法等が挙げられる。また、原料として用いる酸化マグネシウム粒子は、粒度分布幅の変動係数が0.5以下のものを用いることが好ましい。
また、本発明の熱伝導性フィラーである粒子のBET比表面積としては10m/g以下であることが好ましく、特に0.1〜5m/gの範囲であることが好ましい。BET比表面積がこの範囲であると、樹脂との混練の際に、均一に分散させることが容易となる。
本発明の熱伝導性フィラーは、酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムで被覆されてなる粒子であるが、被覆している炭酸マグネシウムの割合は、目的に応じて設定することが可能であり、具体的には、粒子中の炭酸マグネシウムの含有率を1〜99.9質量%でコントロールすることができる。
特に熱伝導性と耐湿熱性とをバランスよく兼備させた成形体を容易に得ることができる観点より、前記炭酸マグネシウムの含有率としては、5〜50質量%の範囲のものを用いることが好ましい。
後述する、酸化マグネシウム粒子の水熱処理で本発明の熱伝導性フィラーを製造する場合、最初、酸化マグネシウム粒子の表層が加水分解し水酸化マグネシウムとなる。水酸化マグネシウムは水中でマグネシウムイオンと水酸化物イオンへと分解するが、系内に二酸化炭素が存在することから、瞬時に中和され、酸化マグネシウムの粒子の表面に炭酸マグネシウムとして析出する。その結果として酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムで被覆されることになる。このようにして得られる熱伝導性フィラーは、完全な球形でないものも含み、表面に凹凸をもつ場合もある。
被覆している炭酸マグネシウムとしては、熱伝導性フィラーとして好適に用いられる観点より、無水炭酸マグネシウムを含むものであることが好ましい。後述する水熱処理で製造する場合、当初加水分解されたマグネシウムイオンと水酸化物イオンは、二酸化炭素の存在によって、4水和物の塩基性炭酸マグネシウム(4MgCO・Mg(OH)・4HO)として析出する。この塩基性炭酸マグネシウムは、250℃付近で結晶水を放出する。即ち、例えば、10℃/minの昇温速度条件にてTG分析を行った場合、250℃付近より減量開始のピークが認められる。この結晶水を放出する温度は、主要なエンジニアリングプラスチックの加工温度(300℃以上)よりも低い為、押出加工する際に水が脱離し、発泡やサージング等、加工性に悪影響を及ぼす可能性があり得る為、より少ないことが望ましい。
水熱処理をさらに継続すると、この塩基性炭酸マグネシウムは、無水炭酸マグネシウムに変化させることができる。
上記のように、塩基性炭酸マグネシウムは、特にエンジニアリングプラスチックに用いる熱伝導性フィラーとしてはあまりふさわしくない観点より、本発明の熱伝導性フィラーである粒子を被覆している炭酸マグネシウム中、無水炭酸マグネシウムの含有率は30質量%以上であることが好ましく、特に50質量%以上であることが好ましい。
本発明の熱伝導性フィラーにおいて、酸化マグネシウムを被覆している炭酸マグネシウムが、塩基性炭酸マグネシウムであるか、または無水炭酸マグネシウムであるかの判別方法としては、X線回折分析による回折角2θのピークを読み取る方法が挙げられる。被覆物が4水和物の塩基性炭酸マグネシウムである場合、2θが15°の位置にピークを読み取ることができる。一方、被覆物が無水炭酸マグネシウムである場合、2θが33°の位置にピークを読み取る事ができる。
被覆物が4水和物の塩基性炭酸マグネシウムである場合、100℃から300℃にかけて結晶水を放出し、無水炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウムへと分解する(4MgCO・Mg(OH)・4HO→4MgCO+Mg(OH)+4HO)。また、350℃から500℃にかけて水酸化マグネシウムが酸化マグネシウムと水へ分解する(Mg(OH)→MgO+HO)反応と、無水炭酸マグネシウムが熱分解し酸化マグネシウム、及び二酸化炭素となる(MgCO→MgO+CO)反応が起こる。10℃/minの昇温速度条件にてTG分析を行うと、250℃付近、450℃付近で減量のピークが認められる。
被覆物が塩基性炭酸マグネシウムである場合、粒子中の炭酸マグネシウム量(wt%)は、以下の式で求めることとする。
(TG分析により得られるX(℃)の減量値−150℃の減量値)×(466/72)
上記式中、Xは300℃から350℃の間で、250℃付近より始まる減量ピークの終点以降の温度とする。また、上記式中、466はMgの原子量を24、Cの原子量を12、Hの原子量を1、Oの原子量を16とした場合の、4水和物塩基性炭酸マグネシウム4MgCO・Mg(OH)・4HOの分子量、72は4HOの分子量である。
被覆物が無水炭酸マグネシウムである場合、被覆酸化マグネシウム粒子の炭酸マグネシウム量(wt%)は、以下の式で求めることとする。
(TG分析により得られる800℃の減量値−Y(℃)の減量値)×(84/44)
上記式中、Yは450℃から500℃の間で、250℃付近より始まる減量ピークの終点以降の温度とする。
また、上記式中、84はMgの原子量を24、Cの原子量を12、Hの原子量を1、Oの原子量を16とした場合の、無水炭酸マグネシウムMgCOの分子量、44は二酸化炭素の分子量、58は水酸化マグネシウムMg(OH)の分子量、18は水の分子量である。
また、被覆物が無水炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウムの混合物である場合、粒子の中の炭酸マグネシウム量(wt%)は、以下の式で求める。
(TG分析により得られる800℃の減量値−450℃の減量値)×(84/44)
上記式中、84はMgの原子量を24、Cの原子量を12、Hの原子量を1、Oの原子量を16とした場合の、無水炭酸マグネシウムMgCOの分子量、44は二酸化炭素の分子量、58は水酸化マグネシウムMg(OH)の分子量、18は水の分子量である。
また、水熱条件によっては、塩基性炭酸マグネシウムと無水炭酸マグネシウムが混在する場合があるが、この場合、塩基性炭酸マグネシウムのTGA分析で認められる、250℃付近、450℃付近の減量のピークの他に、無水炭酸マグネシウムの熱分解による550℃付近の減量ピークが認められることにより判別ができる。塩基性炭酸マグネシウムと無水炭酸マグネシウムが混在する場合の炭酸マグネシウム量(wt%)は以下の式で求めることとする。
塩基性炭酸マグネシウム量A=(TG分析により得られるX(℃)の減量値−150℃の減量値)×(466/72)
無水炭酸マグネシウム量B=(TG分析により得られる800℃の減量値−Y(℃)の減量値)×(84/44))
全炭酸マグネシウム量=(A+B)
[水熱処理]
本発明の熱伝導性フィラーを容易に得る方法としては、酸化マグネシウム粒子を水熱処理する方法が挙げられる。
本発明においての水熱処理とは、酸化マグネシウム粒子を水中に分散してなるスラリーを、二酸化炭素の存在下で100℃以上の温度下で改質処理を行うことをいうものである。
本発明で原料として用いる酸化マグネシウム粒子は、水酸化マグネシウムや炭酸マグネシウムを焼成して得たもの等が挙げられるが、いかなる製法で得られたものを使用しても構わない。又、平均粒子径、最大粒子径、アルミナ・酸化鉄等の不純物量に特に制限は無いが、好ましくは20〜100μm、より好ましくは30〜70μmの平均粒子径である酸化マグネシウムを用いることで、高熱伝導率のみならず、高流動性を与える樹脂組成物及び良機械物性を有する成形体を得る事ができる。即ち、原料として用いる酸化マグネシウム粒子の平均粒子径、及びその分布幅は、水熱処理中に維持されることになる。
水熱処理することで、前述のように酸化マグネシウム粒子の表層が加水分解し水酸化マグネシウムとなる。水酸化マグネシウムは水の存在によって、水中にマグネシウムイオンと水酸化物イオンとになるが、水中には二酸化炭素を存在させていることから、瞬時に中和され、酸化マグネシウム粒子の表面で炭酸マグネシウムとして析出する。したがって、炭酸マグネシウムへの変化量は水熱処理時間と、酸化マグネシウムに対する水の仕込み量、二酸化炭素の量で調整する事ができる。
水熱処理時間を長くする事で炭酸マグネシウムへの変化量は増大する。また、酸化マグネシウムに対する水の仕込み量を多くする事、二酸化炭素の量を増やすことで、炭酸マグネシウムへの変化速度は向上する。炭酸マグネシウムの熱伝導率が酸化マグネシウムに比較し小さい為、粒子中の、炭酸マグネシウム体積量が酸化マグネシウム体積量に占める割合が大きくなる程、熱伝導率はやや低下する傾向を示すが、一方でこれを熱伝導性フィラーとして用いて得られる成形体の耐湿熱性は良好となる。
例えば、酸化マグネシウムの耐湿性改善のために、質量換算で20%以上を炭酸マグネシウムとする方法としては、二酸化炭素を供給しながら水熱処理する時間を1時間以上とすることが好ましい。処理温度も炭酸マグネシウムへの変化量に影響を与えるものであり、同じく20%以上を変化させるには、100〜180℃の範囲で処理を行うことが好ましい。
粒子中の炭酸マグネシウム量を90質量%以上とするためには、例えば、第一ステップとして100℃以上180℃以下の温度下、二酸化炭素を供給しながら1時間以上水熱処理した後、更に第二ステップとして、100℃以上250℃の温度下で、二酸化炭素を供給しながら1時間以上水熱処理を行う事ことが望ましい。第一ステップにより酸化マグネシウムの表面が変化し、主に4水和物の塩基性炭酸マグネシウム(4MgCO・Mg(OH)・4HO)が生成する。このとき、処理温度によっても炭酸マグネシウム変化量は異なり、100℃〜180℃が望ましいが、より好ましくは120℃〜140℃である。100℃以下であると、水熱処理による炭酸マグネシウム変化速度が小さくなる。又、180℃以上となると水中へ溶解する二酸化炭素量が減少する為、炭酸マグネシウムへの変化速度が低減する。更に第二ステップとして、二酸化炭素を供給しながら100℃以上250℃の温度下で水熱処理を行うことで、未だ変化していない酸化マグネシウムを塩基性炭酸マグネシウムへと変化させるとともに、既に生成した4水和物の塩基性炭酸マグネシウムを無水炭酸マグネシウムへと変化させることができる。塩基性炭酸マグネシウムが無水炭酸マグネシウムへと変化する際に、水酸化マグネシウムも同時に生成するが、二酸化炭素を供給しながら水熱処理を行うことで、生成した水酸化マグネシウムも4水和物の塩基性炭酸マグネシウムへと変化した後、更に無水炭酸マグネシウムへと変化する。その結果、最終的な水酸化マグネシウム量を低減させることができ、炭酸マグネシウムの質量割合を増大させることができる。
被覆物中における水酸化マグネシウムは、水熱処理の温度により結晶性が変わり、水と酸化マグネシウムへの分解温度も変わることが知られている。例えば、180℃以下で水熱処理を行った場合に含まれる水酸化マグネシウムは、結晶性が低く、分解開始温度が350℃付近となる。また、180℃以上で水熱処理を行った場合は結晶性が高く、分解開始温度が380℃付近となる。このような観点から、得られる粒子を熱伝導性フィラーとして好適に用いる場合、粒子中に含まれる水酸化マグネシウムの性質をコントロールする上で、水熱処理の温度条件は高い方が望ましく、特に第二ステップとして180℃以上で水熱処理することが望ましい。即ち、本発明の製造方法においては、温度が異なる2段階の工程を有していてもよい。
酸化マグネシウム粒子に対する水の仕込み量が少ない程、炭酸マグネシウムへの変化速度が小さくなる。これは酸化マグネシウムが加水分解し、水酸化マグネシウムとなり、水中へマグネシウムイオンと水酸化物イオンへと分解し水へ溶出する際、水の量によりマグネシウムが溶出する量が異なる為である。炭酸マグネシウムへの変化量が増すにつれ、酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムで被覆され、酸化マグネシウムが露出する面積が減少することで、マグネシウムイオンの溶出速度は徐々に減少し、その結果炭酸マグネシウムへの変化速度が小さくなる。
また、酸化マグネシウム粒子に対する水の量が少ない程、スラリーの粘度が上昇し、水熱処理後の濾過や洗浄工程の生産性が低下する。酸化マグネシウム粒子が水により加水分解する工程において、等モル量より過剰に水を加える事で、水熱反応時のスラリー流動性が向上し、作業性が大幅に向上する。ただし、水の量が多すぎると、熱伝導性フィラーの取れ高が小さくなり生産性が低下する。十分な炭酸マグネシウムへの改質量が得られ、かつ作業性、生産性が良好である条件としては、酸化マグネシウム粒子100質量部に対し50〜2000質量部の範囲が好ましく、さらに100〜1500質量部がより好ましく、150〜1000質量部が最も好ましい。
また、前記水熱処理において、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、その用途に応じて従来公知の各種熱伝導フィラー、充填剤を加えることができる。熱伝導フィラーとしては、例えば、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ベーマイト、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、結晶性酸化ケイ素、炭化ケイ素、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。また、充填剤としては、例えば、タルク、酸化ケイ素、珪藻土、ドロマイト、クレー、マイカ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。このような他の粒子を併用して水熱処理することで、得られる熱伝導性フィラーがあらかじめ混合されたものとして得ることができ、後の樹脂組成物を調製する際の煩雑性を軽減することが可能となる。
また、前記水熱処理において、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、分散性、疎水性の更なる向上等を目的として、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤、水溶性樹脂、及び従来公知の各種添加剤を加えることができる。これらは水熱処理時においては水溶性であることが望ましく、例えば信越シリコーン製のKBM−903、KBE−903、味の素ファインテクノ製のプレンアクトKR ETなどが好ましく用いられる。これらは第一ステップ加熱開始前に添加することも、第一ステップ加熱保持完了後に添加することも、また第二ステップ加熱保持完了後に添加することも可能である。
[樹脂組成物]
本発明の熱伝導性フィラーは、各種樹脂に配合して樹脂組成物とすることができる。配合する樹脂としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のどちらでもよく、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂及びその変性物、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレートやポリエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂、アクリロニトリル−エチレンゴム−スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン樹脂などのスチレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリルニトリル、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6T−PA、9T−PA、MXD6−ナイロンなどのポリアミド樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−アクリル酸樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂、ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、メチルペンテン樹脂、セルロース樹脂等、ならびにオレフィン系エラストマー、グリシジル変性オレフィン系エラストマー、マレイン酸変性オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。この中でも特に電気電子部材に用いられる、いわゆるエンジニアリングプラスチックと呼ばれる樹脂にも好適に配合することが可能である。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン9T、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物の主成分が熱可塑性樹脂の場合、熱可塑性樹脂の特性を損なわない範囲で少量の熱硬化性樹脂を添加することや、逆に主成分が熱硬化性樹脂の場合に熱硬化性樹脂の特性を損なわない範囲で少量の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。
前記熱伝導性フィラーの配合量としては、樹脂の種類、樹脂組成物中の他の成分、所望の熱伝導率の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、ポリフェニルサルフォン樹脂に配合する場合、ポリフェニレン樹脂100質量部中、30〜500質量部の範囲で配合することが好ましく、50〜450質量部の範囲で配合することがより好ましく、100〜400質量部の範囲で配合することがより好ましい。ポリフェニルサルフォン樹脂100質量部に対し、50質量部以下の配合であると十分な熱伝導率を得られず、500質量部以上であると、樹脂組成物の溶融時の粘度が上昇し、易成形加工性が低下する場合がある。
[その他の熱伝導フィラー]
前記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、その用途に応じて従来公知の各種熱伝導フィラーを含有しても良く、例えば、窒化ホウ素、窒化アルニウム、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、結晶性酸化ケイ素、炭化ケイ素及びこれらの複合した化合物、金属シリコーン、黒鉛、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、金属繊維(ステンレス繊維等)、窒化ケイ素ウイスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカ-、ボロン繊維、テトラポット状酸化亜鉛ウイスカー、カーボンナノチューブ、オイルファーネスカーボンブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが挙げられる。
[その他の充填剤]
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、その用途に応じて従来公知の各種充填剤を含有しても良く、例えば、タルク、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、クレー、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、無水炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化鉄、アスベスト、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ワラストナイト、ムライト、コージェライト、ホルステナイト、石英粉、アルミ粉、ジルコニア粉、セルロース繊維、麻等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等の合成繊維、鉱物繊維(ロックウール等)などが挙げられる。
[その他の添加剤]
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、その用途に応じて従来公知の各種添加剤を含有しても良く、例えば、加水分解防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、ポリエチレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス、金属石鹸、スチレン系オリゴマー、ポリアミド系オリゴマー、重合開始剤、重合禁止剤、チタン系架橋剤、ジルコニア系架橋剤、その他の架橋剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン等)、結晶核剤、キレート剤、イオン交換剤、分散剤、酸化防止剤、無機顔料、有機顔料等をあげることができる。
また、前記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、疎水性を更に向上させる目的で、シランカップリング剤、またはチタネートカップリング剤などにより、表面処理を施してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロプルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロフォスフェート)チタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N,N−ジアミノエチル)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルフォスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルフォスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルフォスフェート)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)フォスフェートチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)エチレンチタネートなどが挙げられる。
本発明の熱伝導性フィラーを樹脂に配合するには、公知慣用の方法を用いればよく、例えば、プラネタリミキサー、ディスパー、遊星型ミキサー、三本ロール、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、加圧ニーダー、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。被覆酸化マグネシウム粒子、樹脂およびその他の添加剤の混練機への供給方法は特に制限されない。ドライブレンドによる一括供給でもよく、また個別の供給機を用い各添加剤を個別に供給しても良い。また、予め被覆酸化マグネシウム粒と樹脂のマスターバッチを作製した後、混練機で樹脂と混合希釈しても良いし、マスターバッチを用いず、全量を一括混合し混練してもよい。
[成形体]
本発明の樹脂組成物を成形することで、成形体を得ることができる。成形体を成形する方法については、特に限定されない。樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合、種々の重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤などを樹脂組成物に配合することができる。板状の製品を製造するのであれば、押出成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、異形押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。またフィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。また、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて成形体を製造する事ができる。
樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、射出成型(射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成型)はもとより、各種押出(コールドランナー方式、ホットランナー方式)、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、及び超高速射出成形などの射出成形法)による各種異形押出成形品、また種々の押出成形によるシート、フィルム、繊維などの形で用いることもできる。また、シート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
本発明の成形体は、用途によってどのような形状であってもよく、三次元の立体形状でも、シート・フィルム・繊維状でも構わない。また、成形体の一部、又は数箇所を加熱処理する事により溶融させ、樹脂や金属基板に接着して用いても構わない。樹脂や金属基板に塗布する塗膜であってもよく、積層体を形成してもよい。また、シート・フィルム・繊維状の成形体につき、アニール処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理、シボ転写、切削、表面研磨などの二次加工を行っても構わない。
[高熱伝導材料]
上記樹脂組成物を高熱伝導材料とする場合、例えば、接着剤、封止材、塗料、インキ等に用いることができる。また、成形体を高熱伝導材料とする場合、目的とする用途、たとえば電子電機部材等の形状に合わせて加工を行えばよい。
本発明の高熱伝導材料は、熱伝導性と耐湿熱性に優れることから、様々な用途に好適に使用することが可能である。例えば、電気・電子部品、自動車部品、照明用部品、給湯機部品、航空機部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明はこの記述に限定されるものではないことは言うまでもない。
実施例1
〈熱伝導性フィラー1の製造〉
宇部マテリアル製酸化マグネシウム粒子RF−98(レーザー回折による平均粒子径 68μm)100g、水150g(水/酸化マグネシウム粒子比=1.5)を0.5Lオートクレーブに仕込み、攪拌しながら18分かけ175℃まで温度を昇温させた。このとき、二酸化炭素ガスを1MPaの圧力で連続的に供給させた。175℃まで到達後、二酸化炭素ガスを供給し続け、攪拌しながら2時間保持し、酸化マグネシウム粒子の表面に被覆層を形成させた。2時間保持が終了後、60℃まで冷却し、二酸化炭素ガスの供給を止め減圧した後、生成物のスラリーをオートクレーブより取り出した。これを濾過後150℃で2時間乾燥、粉砕して、白色粒子状の熱伝導性フィラー1を得た。
〈熱伝導性評価用試験片の作成〉
上記の製造例で得られた熱伝導性フィラー1を62.7質量%と、ポリフェニレンサルファイド樹脂(300℃の溶融粘度100poise)37.3質量%の配合(熱伝導性フィラーの体積%が40%となる様調整した)でハンドブレンドした後、東洋精機製作所製ラボプラストミルに60ccミキサーを装着した混合機を用い、ミキサー温度300℃、ローター回転数100rpm、混合時間5分の条件で溶融混練した。この際、加工性の評価として、発泡、発煙の発生等の不具合がないかを確認した。5分混練後、混練物を取り出し放冷し、固形塊状の樹脂組成物を得た。当該成形用樹脂組成物を140℃のギヤオーブンで2時間乾燥後、小型縦型射出成形機を用い、シリンダ設定温度320℃、金型温度250℃の条件で成形し、厚み1mm×直径10mmの円筒状の試験片を得た。
〈耐湿熱性評価用試験片の作成〉
上記の製造例で得られた熱伝導性フィラー1を62.7質量%と、ポリフェニレンサルファイド樹脂(300℃の溶融粘度100poise)37.3質量%の配合でハンドブレンドした後、東洋精機製作所製ラボプラストミルに60ccミキサーを装着した混合機を用い、ミキサー温度300℃、ローター回転数100rpm、混合時間5分の条件で溶融混練した。当該成形用樹脂組成物を140℃のギヤオーブンで2時間乾燥後、厚み1mm×長辺110mm×短辺70mmの金型に試料を乗せ、加熱プレス機にて2MPaの圧力をかけ300℃で5分余熱後、30MPaの圧力をかけ300℃で2分プレスを行い、その後冷却プレスにかけ室温まで冷却後試料を取り出し、厚み1mm×長辺110mm×短辺70mmの平板状の試験片を得た。
実施例2
〈熱伝導性フィラー2の製造〉
実施例1において、処理時間を2時間から4時間に変更した以外は同様にして、熱伝導性フィラー2を製造し、評価を行った。
実施例3
〈熱伝導性フィラー3の製造〉
実施例1において、処理時間を2時間から8時間に変更した以外は同様にして、熱伝導性フィラー3を製造し、評価を行った。
実施例4
〈熱伝導性フィラー4の製造〉
実施例2において、酸化マグネシウム粒子100g、水150gから、酸化マグネシウム粒子50g、水150g(水/酸化マグネシウム粒子比=3)に変更した以外は同様にして、熱伝導性フィラー4を製造し、評価を行った。
実施例5
〈熱伝導性フィラー5の製造〉
実施例2において、酸化マグネシウム粒子100g、水150gから、酸化マグネシウム粒子15g、水150g(水/酸化マグネシウム粒子比=10)に変更した以外は同様にして、熱伝導性フィラー5を製造し、評価を行った。
実施例6
〈熱伝導性フィラー6の製造〉
宇部マテリアル製酸化マグネシウムRF−98(レーザー回折による平均粒子径 68μm)100g、水150gを0.5Lオートクレーブに仕込み、攪拌しながら12分かけ120℃まで温度を昇温させた。このとき、二酸化炭素ガスを0.4MPaの圧力で連続的に供給させた。120℃まで到達後、二酸化炭素ガスを供給し続け、攪拌しながら5時間保持し、酸化マグネシウム粒子の表面に被覆層を形成させた。5時間保持が終了後、60℃まで冷却し、二酸化炭素ガスの供給を止め減圧した後、生成物スラリーをオートクレーブより取り出した。これを濾過し150℃2時間の条件で乾燥させ、白色粉状の中間体を得た。本中間体100g、水150gを再度0.5Lオートクレーブに仕込み、攪拌しながら18分かけ175℃まで温度を昇温させた。このとき、二酸化炭素ガスを1.0MPaの圧力で連続的に供給させた。175℃まで到達後、攪拌しながら更に8時間保持した。8時間保持が終了後、60℃まで冷却し、二酸化炭素ガスの供給を止め減圧した後、生成物のスラリーをオートクレーブより取り出した。これを濾過後150℃で2時間乾燥、粉砕して、白色粒子状の熱伝導性フィラー6を得た。
実施例7
〈熱伝導性フィラー7の製造〉
実施例6において、中間体100g、水150gの配合を、中間体15g、水150gに変更した以外は同様にして、熱伝導性フィラー7を製造し、評価を行った。
実施例8
〈熱伝導性フィラー8の製造〉
実施例2において、宇部マテリアル製酸化マグネシウムRF−98(レーザー回折による平均粒子径 68μm)を篩にかけ分級し、平均粒子径が23μmとなる様に調整したものを用いた以外は同様にして、熱伝導性フィラー8を製造し、評価を行った。
比較例1
実施例1において、熱伝導性フィラー1の代わりに、水熱処理工程を経ず、未処理の酸化マグネシウムRF−98を用いた。この粒子のBET比表面積を測定したところ、0.2m/g、平均粒子径を測定したところ68μmであった。また、TG−DTA測定(Air中、10℃/min昇温)を行ったところ、800℃から450℃の減量値は0.1%であった。これより、上述した被覆炭酸マグネシウムの量を求める式を用いて炭酸マグネシウム量を求めると、0.1×84/44=0.2質量%となる。実施例1と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、酸化マグネシウム65質量%と、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂35質量%の配合とし、実施例1と同様の条件で熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した
比較例2
比較例1において、酸化マグネシウムRF−98の代わりに市販の無水炭酸マグネシウムを用いた以外は同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。この無水炭酸マグネシウム粒子のBET比表面積を測定したところ、0.5m/g、平均粒子径を測定したところ25μmであった。また、TG−DTA測定(Air中、10℃/min昇温)を行ったところ、800℃から450℃までの減量値は51.9%であった。これより、上述した被覆炭酸マグネシウムの量を求める式を用いて炭酸マグネシウム量を求めると、51.9×84/44=99質量%となる。実施例1と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、無水炭酸マグネシウム60質量%と、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂40質量%の配合とし、同様の条件で熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例3
比較例1において、酸化マグネシウムRF−98の代わりに市販の塩基性炭酸マグネシウムを用いた。この粒子のBET比表面積を測定したところ、30m/g、平均粒子径を測定したところ23μmであった。また、TG−DTA測定(Air中、10℃/min昇温)を行ったところ、320℃から150℃までの減量値は15.0%であった。これより、上述した被覆炭酸マグネシウムの量を求める式を用いて炭酸マグネシウム量を求めると、15.0×466/72=97質量%となる。実施例1と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、塩基性炭酸マグネシウム52質量%と、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂48質量%の配合とした以外は実施例1と同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例4
比較例1において、酸化マグネシウムRF−98の代わりに市販の天然マグネサイトを粉砕したものを用いた。この粒子のBET比表面積を測定したところ、0.2m/g、平均粒子径を測定したところ60μmであった。また、TG−DTA測定(Air中、10℃/min昇温)を行ったところ、800から450℃の減量値は50.3%であった。これより、上述した被覆炭酸マグネシウムの量を求める式を用いて炭酸マグネシウム量を求めると、50.3×84/44=96質量%となる。実施例1と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、塩基性炭酸マグネシウム60質量%と、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂40質量%の配合とし、実施例1と同様の条件で熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例5
比較例1において、酸化マグネシウムRF98を32.1質量%、市販の塩基性炭酸マグネシウムを29.9質量%(体積比で酸化マグネシウム:塩基性炭酸マグネシウム=1:1)、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を38質量%とし、実施例1と同様の条件で熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例6
宇部マテリアル製酸化マグネシウムRF−98が100質量部に対し、デシルトリメトキシシラン2質量部を滴下し、ヘンシェルミキサーで100rpmで2分混合を行った。混合後、デシルトリメトキシシランで処理されたRF−98を64.1質量%、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を35.9質量%とし、実施例1と同様の条件で熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
実施例9
実施例7で得られた熱伝導性フィラー7を23質量%、板状の高熱伝導フィラーである窒化ホウ素(BN)(平均長径20μm)を27質量%、ガラスファイバー(GF)を19質量%、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を31質量%の配合に変更した以外は同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例7
実施例9において、熱伝導性フィラー7の代わりに酸化マグネシウムRF−98を用いた。実施例9と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、酸化マグネシウム26質量%、窒化ホウ素(BN)(平均長径20μm)を25質量%、ガラスファイバー(GF)を18質量%、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を31質量%の配合とした以外は実施例9と同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例8
実施例9において、熱伝導性フィラー7の代わりに市販の無水炭酸マグネシウムを用いた以外は同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。実施例9と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、無水炭酸マグネシウム23質量%と、窒化ホウ素(BN)(平均長径20μm)を27質量%、ガラスファイバー(GF)を19質量%、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を31質量%の配合とし、実施例9と同様の条件で熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例9
実施例9において、熱伝導性フィラー7の代わりに市販の塩基性炭酸マグネシウムを用いた。実施例9と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、塩基性炭酸マグネシウム18質量%、窒化ホウ素(BN)(平均長径20μm)を28質量%、ガラスファイバー(GF)を21質量%、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を33質量%の配合とした以外は実施例9と同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
比較例10
実施例9において、熱伝導性フィラー7の代わりに市販の天然マグネサイトを用いた。実施例9と熱伝導フィラーの体積分率が同等となる様、天然マグネサイト23質量%、窒化ホウ素(BN)(平均長径20μm)を27質量%、ガラスファイバー(GF)を19質量%、300℃の溶融粘度が100poiseのポリフェニレンサルファイド樹脂を31質量%の配合とした以外は実施例9と同様にして、熱伝導評価用試験片、耐湿熱性試験用試験片を作製した。
得られた熱伝導性フィラーや各種試験片の評価は以下の方法で行った。
〔平均粒子径とその分布幅〕
レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、水を溶媒とし前処理として超音波分散を5分実施後、粒度分布を測定した。また粒子径分布幅の評価として、変動係数は(d84%−d16%)/2で求めた標準偏差を平均粒子径で割ること得られた変動係数を用いた。
〔BET比表面積〕
島津製作所製FlowSorb II 2300を用い、窒素を吸着ガスとし、脱ガス条件として100℃30分の前処理を行い測定した。
〔TG−DTA分析〕
TG分析による減量値、分解温度等の値は全て、エスアイアイ・ナノテクノロジー製EXSTAR−6300を用い、空気中下(200ml/min)、試料量5mg、昇温条件を10℃/minにて測定した場合の値を用いた。
〔プレッシャークッカーテスト(PCT)〕
得られた試験片をエスペック製加速寿命測地装置(プレシャークッカー)を用い、設定温度121℃、湿度100RH%、圧力2atmの条件にて200時間曝露した。曝露後の試験片の質量を測定し、曝露前に対する質量増加率を求め吸水率(%)とした。また、プレート表面の外観を観察し、クラックが発生していない場合は○、クラックが発生し表面荒れが起こっている場合は×とした。
〔熱伝導率〕
小型縦型射出成形機を用いて得た、厚み1mm×直径10mmの円筒状の試験片を、測定開始温度25℃で、キセノンフラッシュ熱伝導率計(Bruker AXS社製 LFA447)を用い、熱伝導率を求めた。
〔炭酸マグネシウム中の無水炭酸マグネシウム含有率(%)〕
TG−DTA分析にて得られた減量曲線を用い、下記の式より求めることとする。
塩基性炭酸マグネシウム量A=(TG分析により得られるX(℃)の減量値−150℃の減量値)×(466/72)
無水炭酸マグネシウム量B=(TG分析により得られる800℃の減量値−Y(℃)の減量値)×(84/44))
無水炭酸マグネシウム含有率(%)=(B/(A+B))×100
X:300℃から350℃の間で、250℃付近より始まる減量ピークの終点以降の温度
Y:450℃から500℃の間で、250℃付近より始まる減量ピークの終点以降の温度
以上の評価結果を表1〜4に示す。
Figure 0006065922
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Figure 0006065922
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実施例1で得た試験片は熱伝導率が1.4と比較的高く、耐湿性評価についても吸水率、外観ともに良好な結果を示した。これに対し、比較例1で得た試験片(酸化マグネシウム未処理のものを用いた場合)は耐湿性評価でプレート外観の表面荒れが起こり、実施例1と比較し著しく劣る結果を得た。
また、比較例3(塩基性炭酸マグネシウムを用いた場合)は熱伝導性及び吸水率が実施例1と比較し劣り、更に樹脂組成物を得る為の押出加工の際、発泡現象が起こり加工性を著しく低下する問題が発生した。
更に、比較例5(塩基性炭酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1ブレンドを用いた場合)、比較例6(酸化マグネシウムにシランカップリング処理を施したものを用いた場合)は耐湿性評価でプレート外観の表面荒れが起こり、実施例1と比較し著しく劣る結果となった。
実施例7で得た試験片は熱伝導率が1.3と合成品で平均粒度分布が50μm以下、及び天然品で粒度分布が50μm以上である他のフィラーよりも比較的高く、耐湿性評価についても吸水率、外観ともに良好な結果を示した。比較例1(酸化マグネシウムを用いた場合)は、酸化マグネシウム粒子の熱伝導率が、無水炭酸マグネシウムの熱伝導率よりやや高いことより、熱伝導率は1.9W/mKと実施例1より高い値が認められたが、耐湿性が劣る結果が得られた。比較例2(市販の無水炭酸マグネシウムを用いた場合)耐湿性評価では実施例7と比較し同等であるものの、熱伝導率が劣る結果を得た。また、比較例3(塩基性炭酸マグネシウムを用いた場合)は熱伝導性及び耐湿性が実施例7と比較し劣り、更に成形用樹脂組成物を得る為の押出加工の際、発泡現象が起こり加工性を著しく低下する問題が発生した。比較例4(天然マグネサイトを用いた場合)耐湿性は実施例7と同等であるが、熱伝導率が劣る結果となった。粒度分布幅が変動係数0.6と実施例7の0.39と比較し高い値であり、熱伝導パス形成の面からも熱伝導率が劣る結果が推測される。
また、実施例9の通り、本発明の熱伝導性フィラーを用いた場合は、窒化ホウ素とガラスファイバーとの併用についても他と比較し高い熱伝導率を示した。これは熱伝導性フィラーの平均粒子径が大きいことより、成形品内に窒化ホウ素間の効率的な熱伝導パスとして効果を及ぼすとともに、フィラーのモース硬度が無水炭酸マグネシウムと同様3.5である為、窒化ホウ素の破壊による小径化を抑え、高い熱伝導率を保持し得る為と推察される。比較例10の酸化マグネシウムを用いた場合も、実施例9より熱伝導率が低い結果となり、酸化マグネシウムが窒化ホウ素の破壊に寄与していることが示唆される。
本発明により、耐湿熱性が改善された熱伝導フィラー得ることができる。また、該熱伝導フィラーを含有する樹脂組成物は、流動性を損なうことなく容易に成形加工が可能であり、高い熱伝導性と耐湿熱性を併せ持ち、高温高湿下に長期曝露した場合おいても、良好な外観の維持が可能な成形体を得ることができる。したがって、本発明の樹脂組物はより薄肉化、複雑形状化が望まれている高熱伝導材料に適しており、例えば、電気電子部品、自動車部品、照明用部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途などに好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 酸化マグネシウム粒子を水中に分散してなるスラリーを、二酸化炭素の存在下で水熱処理を行う工程を含むことを特徴とする熱伝導性フィラーの製造方法。
  2. 前記酸化マグネシウム粒子の平均粒子径が20〜100μmの範囲である請求項記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
  3. 前記スラリーにおける酸化マグネシウム粒子と水との使用割合が、酸化マグネシウム粒子100質量部に対し、水が50〜2000質量部の範囲である請求項1又は2記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
  4. 前記水熱処理が、二酸化炭素の存在下で100℃以上270℃以下の温度下で保持する工程を有する請求項1〜3の何れか1項記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
  5. 前記水熱処理が、温度が異なる2段階の工程を有する請求項1〜4の何れか1項記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
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