JP6063585B2 - 改良された特性を有するアシル−acpレダクターゼ - Google Patents

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Description

本出願は、2013年1月16日に提出された米国仮出願第61/753,273号の恩典を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
配列表
本出願は、ASCII書式で電子的に提出される配列表を含み、それはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。2014年1月13日に作成された前記ASCIIコピーの名称はLS00046PCT_SL.txtであり、サイズは155,731バイトである。
分野
本開示は、組換え宿主細胞において発現された時に脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールの産生の改善をもたらすアシル-ACPレダクターゼ(AAR)酵素バリアントに関する。本開示はさらに、特定の特徴を有する脂肪アルコール組成物の生産のために、そのようなAARバリアントを作製および使用する方法にも関する。
背景
脂肪アルコールは、産業用生化学品の重要なカテゴリーとなっている。例えば、脂肪アルコールおよびそれらの誘導体の全世界での年間売上高は10億米ドルを超える。これらの分子およびそれらの誘導体には、界面活性剤、潤滑剤、可塑剤、溶媒、乳化剤、軟化剤、増粘剤、香味剤、芳香剤および燃料としての使用を含む、数多くの用途がある。脂肪アルコールは、その両親媒性ゆえに、パーソナルケア用品および家事用品、例えば洗剤において有用な非イオン性界面活性剤として挙動する。比較的短鎖の脂肪アルコールは、化粧品産業および食品産業において、乳化剤、軟化剤および増粘剤として用いられる。
自然界では、脂肪アルコールは、さまざまなアシル-ACP分子またはアシル-CoA分子を対応する第一級アルコールに還元することのできる酵素によって作られる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,323,924号(特許文献1);第8,268,599号(特許文献2)および第8,097,439号(特許文献3);ならびに米国特許出願公開第20120282663号(特許文献4)および第20100105963号(特許文献5)を参照)。しかし、現行の技術は、脂肪酸の、対応する第一級アルコールへの、ほとんど無機触媒を介した還元を必要とする。これらの脂肪アルコールは、ココナッツ油、ヤシ油、パーム核油、獣脂およびラードなどの天然源から生成される脂肪酸の接触水素添加を介して、または石油化学原料から生成されるα-オレフィンの化学的水和によって生産される。天然源に由来する脂肪アルコールの鎖長はさまざまであり、それは個々の用途にとって妥当かつ特異的である。脂肪アルコールのα-オレフィンへの脱水を化学触媒作用によって実現することもできる。
また、脂肪アルデヒドを、産業用の特殊化学品を生産するために用いることもできる。例えば、アルデヒドは、ポリマー、樹脂、染料、香味剤、可塑剤、香料および医薬品を生産するためによく用いられる。アルデヒドはまた、溶媒、保存料および消毒剤として用いることもできる。ビタミンおよびホルモンといった、ある種の天然化合物および合成化合物はアルデヒドであり、多くの糖はアルデヒド基を含有する。脂肪アルデヒドは、化学的または酵素的な還元によって脂肪アルコールに変換させることができる。
脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールの生産のための、環境により優しく、環境負荷のより少ない代替的な選択肢は、発酵性糖および/またはバイオマスを介するものである。しかし、発酵性糖またはバイオマスからの脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールの生産が商業的に実現可能であるためには、最終生産物の効率的な変換および回収を目指して産業工程を最適化しなければならない。本開示は、遺伝子操作された宿主細胞を生体触媒として用いることによる、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールの改良生産のための組成物および方法を提供することによって、この需要に応える。
米国特許第8,323,924号 米国特許第8,268,599号 米国特許第8,097,439号 米国特許出願公開第20120282663号 米国特許出願公開第20100105963号
概要
本開示は、精製脂肪酸の触媒変換が不要となるように特定鎖長の脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールを直接的に産生する、光合成性かつ従属栄養性の宿主細胞を提供する。この生物学的経路により、より品質の高い生産物、大きなコスト削減、および環境への影響の軽減がもたらされる。より詳細には、本開示は、脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールならびにそれらの組成物を産生する新規アシル-ACPレダクターゼ(AAR)酵素バリアントを提供する。また、特定のAARバリアントの核酸配列およびタンパク質配列、ならびにそのような遺伝子操作されたAAR酵素バリアントを含む新規組換え宿主細胞および細胞培養物も提供される。本開示はまた、特定の特徴を備える脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物を製造する目的で、組換えAARバリアントを発現する宿主細胞を用いる方法も提供する。
本開示の1つの局面は、アシル-ACPから脂肪アルデヒドへの変換を触媒するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:42またはSEQ ID NO:44として提示される対応する野生型AARポリペプチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するAARポリペプチド、ならびに、組換え宿主細胞においてバリアントAARポリペプチドを発現させて、対応する宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物をもたらすための方法を提供する。1つの態様において、遺伝的に操作されたバリアントAARポリペプチドは、SEQ ID NO:28として提示される対応する野生型AARポリペプチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現は、対応する宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物および/もしくは脂肪アルコール組成物、またはより高い力価のC12、C14もしくはC16脂肪アルコールをもたらす。
1つの局面において、バリアントAARポリペプチドは、SEQ ID NO:28のアミノ酸18、24、31、34、35、43、50、63、86、112、113、116、118、120、135、148、153、155、157、159、168、172、187、188、191、209、210、211、236、277、283、285、291、324、328、335、337および338のうち1つまたは複数のアミノ酸位置に突然変異を有する。1つの好ましい態様において、遺伝的に操作されたバリアントAARポリペプチドはS18W突然変異を有する。もう1つの好ましい態様において、遺伝的に操作されたバリアントAARポリペプチドはS18W突然変異を有し、M21L、D24E、D24Y、L31V、W34F、W35F、D43E、A50Q、C63A、C63G、C63Y、S86G、A112R、S113K、Q116G、R118Q、T120S、A135S、T148C、T148E、T148V、I153P、Q155C、Q155L、T157V、A159V、I168V、C172L、T187V、T188H、T188V、Q191A、L209R、E210Y、A211W、T236C、Q277V、E283G、E283S、A285V、M291V、A324T、A328S、Q335N、L337Vおよび/またはL338Wなどの突然変異をさらに含む。
もう1つの局面において、バリアントAARポリペプチドは、SEQ ID NO:34として提示される対応する野生型AARポリペプチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現は、対応する宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒドおよび/もしくは脂肪アルコール、またはより高い力価のC12脂肪アルコールをもたらす。バリアントAARポリペプチドは、SEQ ID NO:34のアミノ酸40、52、58、61、273、303、339、340、344、345、346および588を含むアミノ酸位置に突然変異を有する。1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、アミノ酸位置Q40V、G52V、S58V、D61E、G273E、K303G、K339L、H340P、L344A、L344D、L344S、L344T、L345R、V346P、V346G、および/またはS588Vに突然変異を有する。
本開示のもう1つの局面は、上記のような1つまたは複数の突然変異を有する組換え宿主細胞であって、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:34のバリアントAARポリペプチドを発現するように遺伝子操作されている宿主細胞を提供する。この組換え宿主細胞は、炭素源を含有する培地中で、バリアントAARポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養した時に、対応する野生型AARポリペプチドを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも10%上回る、少なくとも15%上回る、少なくとも20%上回る、少なくとも25%上回る、または少なくとも30%上回る力価で脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物を産生する。1つの態様において、脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物は、30g/L〜250g/Lの力価、例えば少なくとも100mg/Lの力価で産生される。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は細胞外に産生される。
本開示はさらに、脂肪アルコール組成物がC6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アルコール、例えば、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、またはC18:1不飽和脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む、上記のような組換え宿主細胞を含む細胞培養物を範囲に含む。さらにもう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は飽和脂肪アルコールを含む。
本開示のもう1つの局面は、SEQ ID NO:57に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、アシル-ACPから脂肪アルデヒドへの変換を触媒するAARポリペプチドを提供する。1つの態様において、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現は、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物をもたらす。もう1つの態様において、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現は、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物、またはC12、C14および/もしくはC16脂肪アルコール組成物である脂肪アルコール組成物をもたらす。もう1つの態様において、バリアントAARポリペプチドはアミノ酸位置18に突然変異を有し、ここで突然変異はS18Wである。
本開示のもう1つの局面は、SEQ ID NO:57に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、アミノ酸8、16、21、24、31、34、35、43、50、63、86、112、113、116、118、120、135、148、153、154、155、157、159、168、172、187、188、191、209、210、211、236、277、281、283、285、291、324、328、335、337および/または338のアミノ酸位置にもう1つの突然変異を有するバリアントAARポリペプチドを提供する。1つの態様において、突然変異は、L8A、D16L、M21L、D24E、D24Y、D24V、D24P、L31V、L31M、W34F、W35F、D43E、A50Q、C63A、C63G、C63Y、S86G、A112R、S113K、Q116G、R118Q、T120S、A135S、T148C、T148E、T148V、I153P、T154A、Q155C、Q155L、T157V、A159V、I168V、C172L、T187V、T188H、T188V、Q191A、L209R、E210Y、A211W、T236C、Q277V、A281L、E283G、E283S、A285V、M291V、A324T、A328S、Q335N、L337Vおよび/またはL338Wから選択される。1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:58)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、L8A突然変異、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:59)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、D16L突然変異、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:60)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、L8A突然変異、D24V突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、Q155L突然変異、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:61)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、D24P突然変異、L31M突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:62)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、L8A突然変異、D16L突然変異、D24V突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:63)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、D24E突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異を有する(SEQ ID NO:64)。
本開示のもう1つの局面は、上記のようなバリアントAARポリペプチド(前記)を発現する組換え宿主細胞を提供する。1つの態様において、組換え宿主細胞は、炭素源を含有する培地中で、バリアントAARポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養した時に、対応する野生型AARポリペプチドを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも10%上回る、少なくとも15%上回る、少なくとも20%上回る、少なくとも25%上回る、または少なくとも30%上回る力価で、脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物を産生する。1つの態様において、組換え宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物は、約30g/L〜約250g/Lの力価で産生される。もう1つの態様において、脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物は細胞外に産生される。
本開示はさらに、上記のようなバリアントAARポリペプチド(前記)を発現する組換え宿主細胞を含む細胞培養物も想定している。1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、飽和および/または不飽和脂肪アルコールを含む。1つの態様において、細胞培養物は、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む脂肪アルコール組成物を含む。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1およびC18:1不飽和脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む。さらにもう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、脂肪アルコールの還元末端からC7〜C8の間の炭素鎖の位置7に二重結合を有する脂肪アルコールを含む。
本開示はさらに、力価の増大した脂肪アルコール組成物を生産する方法であって、バリアントAARを発現する宿主細胞(上記のような)を炭素源とともに培養する段階;および脂肪アルコール組成物を採取する段階を含む方法を範囲に含む。1つの態様において、脂肪アルコールの力価は、野生型AARを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも20%〜30%上回る。
本開示のもう1つの局面は、SEQ ID NO:65に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、アシル-ACPから脂肪アルデヒドへの変換を触媒するポリペプチドを提供する。1つの態様において、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現は、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物をもたらす。もう1つの態様において、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現は、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価のC12、C14および/またはC16脂肪アルコール組成物をもたらす。1つの特定の局面において、本開示は、SEQ ID NO:65に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、アミノ酸位置61に突然変異を有するポリペプチドを提供する。1つの好ましい態様において、突然変異はD61Eである。
本開示はさらに、SEQ ID NO:34に対して少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現が、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物もしくは脂肪アルコール組成物、またはより高い力価のC12、C14および/もしくはC16脂肪アルコール組成物をもたらし、アミノ酸位置40、52、273、303、340、344、345または346に突然変異を有する、AARポリペプチドを範囲に含む。1つの態様において、バリアントAARポリペプチドは、Q40V、G52V、G273E、K303G、H340P、L344A、L344D、L344S、L344T、L345R、V346PおよびV346Gから選択される突然変異を有する。1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドは、V346Pに突然変異を有する(SEQ ID NO:66)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはQ40Vに突然変異を有する(SEQ ID NO:67)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはA345Rに突然変異を有する(SEQ ID NO:68)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはL344Sに突然変異を有する(SEQ ID NO:69)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはV346Gに突然変異を有する(SEQ ID NO:70)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはL344Dに突然変異を有する(SEQ ID NO:71)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはG52Vに突然変異を有する(SEQ ID NO:72)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはL344Tに突然変異を有する(SEQ ID NO:73)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはK303Gに突然変異を有する(SEQ ID NO:74)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはL344Aに突然変異を有する(SEQ ID NO:75)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはH340Pに突然変異を有する(SEQ ID NO:76)。もう1つの好ましい態様において、バリアントAARポリペプチドはG273Eに突然変異を有する(SEQ ID NO:77)。
本開示のさらにもう1つの局面は、上記のようなバリアントAARポリペプチド(前記)を発現する組換え宿主細胞を提供する。1つの態様において、組換え宿主細胞は、炭素源を含有する培地中で、バリアントAARポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養した時に、対応する野生型AARポリペプチドを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物またはアルコール組成物の力価を少なくとも10%上回る、少なくとも15%上回る、少なくとも20%上回る、少なくとも25%上回る、または少なくとも30%上回る力価で、脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物を産生する。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は約30g/L〜約250g/Lの力価で産生される。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は細胞外に産生される。
本開示はさらに、上記のようなバリアントAARポリペプチド(前記)を発現する組換え宿主細胞を有する細胞培養物を想定している。1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、不飽和または飽和脂肪アルコールを含む。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、およびC18:1不飽和脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む。もう1つの態様において、脂肪アルコール組成物は、脂肪アルコールの還元末端からC7〜C8の間の炭素鎖の位置7に二重結合を有する脂肪アルコールを含む。
本開示のもう1つの局面は、力価の増大した脂肪アルコール組成物を生産する方法であって、AARを発現する宿主細胞(上記のような)を炭素源とともに培養する段階;および脂肪アルコール組成物を採取する段階、を含む方法を提供する。1つの態様において、脂肪アルコールは、野生型AARを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも20%〜30%上回る。
[本発明1001]
アシル-ACPから脂肪アルデヒドへの変換を触媒する、SEQ ID NO:57に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチド。
[本発明1002]
組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現が、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物をもたらす、本発明1001のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1003]
脂肪アルコール組成物が、C12、C14、もしくはC16脂肪アルコール組成物またはそれらの組合せである、本発明1002のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1004]
アミノ酸位置18に突然変異を含む、本発明1001のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1005]
突然変異がS18Wである、本発明1004のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1006]
アミノ酸8、16、21、24、31、34、35、43、50、63、86、112、113、116、118、120、135、148、153、154、155、157、159、168、172、187、188、191、209、210、211、236、277、281、283、285、291、324、328、335、337および338からなる群より選択されるアミノ酸位置に突然変異をさらに含む、本発明1004のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1007]
突然変異が、L8A、D16L、M21L、D24E、D24Y、D24V、D24P、L31V、L31M、W34F、W35F、D43E、A50Q、C63A、C63G、C63Y、S86G、A112R、S113K、Q116G、R118Q、T120S、A135S、T148C、T148E、T148V、I153P、T154A、Q155C、Q155L、T157V、A159V、I168V、C172L、T187V、T188H、T188V、Q191A、L209R、E210Y、A211W、T236C、Q277V、A281L、E283G、E283S、A285V、M291V、A324T、A328S、Q335N、L337VおよびL338Wからなる群より選択される、本発明1006のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1008]
M21L突然変異を含む、本発明1007のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1009]
C63GA突然変異を含む、本発明1007のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1010]
S113K突然変異を含む、本発明1007のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1011]
T154A突然変異を含む、本発明1007のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1012]
A281L突然変異を含む、本発明1007のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1013]
L8A突然変異を含む、本発明1007のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1014]
M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1015]
SEQ ID NO:58を含む、本発明1014のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1016]
L8A突然変異、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1017]
SEQ ID NO:59を含む、本発明1016のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1018]
D16L突然変異、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1019]
SEQ ID NO:60を含む、本発明1018のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1020]
L8A突然変異、D24V突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、Q155L突然変異、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1021]
SEQ ID NO:61を含む、本発明1020のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1022]
D24P突然変異、L31M突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1023]
SEQ ID NO:62を含む、本発明1022のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1024]
L8A突然変異、D16L突然変異、D24V突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1025]
SEQ ID NO:63を含む、本発明1024のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1026]
D24E突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異をさらに含む、本発明1005のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1027]
SEQ ID NO:64を含む、本発明1026のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1028]
本発明1001〜1027のいずれかのバリアントAARポリペプチドを発現する組換え宿主細胞。
[本発明1029]
炭素源を含有する培地中で、バリアントAARポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養した時に、対応する野生型AARポリペプチドを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも10%上回る、少なくとも15%上回る、少なくとも20%上回る、少なくとも25%上回る、または少なくとも30%上回る力価で脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物を産生する、本発明1028の組換え宿主細胞。
[本発明1030]
脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物が約30g/L〜約250g/Lの力価で産生される、本発明1029の組換え宿主細胞。
[本発明1031]
脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物が細胞外に産生される、本発明1029の組換え宿主細胞。
[本発明1032]
本発明1028〜1031のいずれかの組換え宿主細胞を含む細胞培養物。
[本発明1033]
脂肪アルコール組成物が、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む、本発明1032の細胞培養物。
[本発明1034]
脂肪アルコール組成物が、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、およびC18:1不飽和脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む、本発明1033の細胞培養物。
[本発明1035]
脂肪アルコール組成物が不飽和脂肪アルコールを含む、本発明1033の細胞培養物。
[本発明1036]
脂肪アルコール組成物が、脂肪アルコールの還元末端からC 7 〜C 8 の間の炭素鎖の位置7に二重結合を有する脂肪アルコールを含む、本発明1033の細胞培養物。
[本発明1037]
脂肪アルコール組成物が飽和脂肪アルコールを含む、本発明1033の細胞培養物。
[本発明1038]
力価の増大した脂肪アルコール組成物を生産する方法であって、
i.本発明1027の宿主細胞を炭素源とともに培養する段階;および
ii.脂肪アルコール組成物を採取する段階
を含む方法。
[本発明1039]
脂肪アルコールの力価が、野生型AARを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも20%〜30%上回る、本発明1038の方法。
[本発明1040]
アシル-ACPから脂肪アルデヒドへの変換を触媒する、SEQ ID NO:65に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチド。
[本発明1041]
組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現が、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物をもたらす、本発明1040のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1042]
脂肪アルコール組成物が、C12、C14、もしくはC16脂肪アルコール組成物またはそれらの組合せである、本発明1041のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1043]
アミノ酸位置61に突然変異を含む、本発明1040のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1044]
突然変異がD61Eである、本発明1043のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1045]
SEQ ID NO:34に対して少なくとも90%の配列同一性を含むバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現が、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される脂肪アルコール組成物の力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物もしくは脂肪アルコール組成物、またはより高い力価のC12、C14もしくはC16脂肪アルコール組成物をもたらし、かつ、アミノ酸40、52、61、273、303、340、344、345および346からなる群より選択されるアミノ酸位置に突然変異を含む、バリアントAARポリペプチド。
[本発明1046]
Q40V、G52V、D61E、G273E、K303G、H340P、L344A、L344D、L344S、L344T、L345R、V346P、V346G、およびA345*からなる群より選択される突然変異を含む、本発明1045のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1047]
V346Pに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1048]
SEQ ID NO:66を含む、本発明1047のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1049]
Q40Vに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1050]
SEQ ID NO:67を含む、本発明1049のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1051]
A345Rに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1052]
SEQ ID NO:68を含む、本発明1051のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1053]
L344Sに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1054]
SEQ ID NO:69を含む、本発明1053のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1055]
V346Gに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1056]
SEQ ID NO:70を含む、本発明1055のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1057]
L344Dに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1058]
SEQ ID NO:71を含む、本発明1057のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1059]
G52Vに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1060]
SEQ ID NO:72を含む、本発明1059のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1061]
L344Tに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1062]
SEQ ID NO:73を含む、本発明1061のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1063]
K303Gに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1064]
SEQ ID NO:74を含む、本発明1063のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1065]
L344Aに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1066]
SEQ ID NO:75を含む、本発明1065のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1067]
H340Pに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1068]
SEQ ID NO:76を含む、本発明1067のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1069]
G273Eに突然変異を含む、本発明1046のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1070]
SEQ ID NO:77を含む、本発明1069のバリアントAARポリペプチド。
[本発明1071]
本発明1042〜1070のいずれかのバリアントAARポリペプチドを発現する組換え宿主細胞。
[本発明1072]
炭素源を含有する培地中で、バリアントAARポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養した時に、対応する野生型AARポリペプチドを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも10%上回る、少なくとも15%上回る、少なくとも20%上回る、少なくとも25%上回る、または少なくとも30%上回る力価で脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物を産生する、本発明1071の組換え宿主細胞。
[本発明1073]
脂肪アルコール組成物が約30g/L〜約250g/Lの力価で産生される、本発明1072の組換え宿主細胞。
[本発明1074]
脂肪アルコール組成物が細胞外に産生される、本発明1073の組換え宿主細胞。
[本発明1075]
本発明1073〜1074のいずれかの組換え宿主細胞を含む細胞培養物。
[本発明1076]
脂肪アルコール組成物が、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む、本発明1075の細胞培養物。
[本発明1077]
脂肪アルコール組成物が、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、およびC18:1不飽和脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む、本発明1076の細胞培養物。
[本発明1078]
脂肪アルコール組成物が不飽和脂肪アルコールを含む、本発明1076の細胞培養物。
[本発明1079]
脂肪アルコール組成物が、脂肪アルコールの還元末端からC 7 〜C 8 の間の炭素鎖の位置7に二重結合を有する脂肪アルコールを含む、本発明1076の細胞培養物。
[本発明1080]
脂肪アルコール組成物が飽和脂肪アルコールを含む、本発明1076の細胞培養物。
[本発明1081]
力価の増大した脂肪アルコール組成物を生産する方法であって、
i.本発明1073の宿主細胞を炭素源とともに培養する段階;および
ii.脂肪アルコール組成物を採取する段階
を含む方法。
[本発明1082]
脂肪アルコールの力価が、野生型AARを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも20%〜30%上回る、本発明1081の方法。
本開示は、好ましい態様を例示するのに役立つ添付の図面と併せて読むと、最も良く理解される。しかし、本開示が、添付の図面中に開示された具体的な態様に限定されないことが理解される。
組換え宿主細胞における脂肪酸誘導体の前駆体としてのアシル-CoAの産生に用いるための、例示的な生合成経路の図式的概観である。このサイクルは、マロニル-ACPとアセチル-CoAとの縮合によって惹起される。 例示的な脂肪酸生合成サイクルの図式的概観であり、ここで伸長サイクルは、β-ケトアシル-ACPシンターゼI(fabB)およびβ-ケトアシル-ACPシンターゼII(fabF)によって触媒される、β-ケト-アシル-ACPを生成するためのマロニル-ACPとアシル-ACPとの縮合から始まり、続いてβ-ケト-アシル-ACPがNADPH依存性β-ケトアシル-ACPレダクターゼ(fabG)によって還元されてβ-ヒドロキシ-アシル-ACPが生成され、これがβ-ヒドロキシアシル-ACPデヒドラターゼ(fabAまたはfabZ)によって脱水されてtrans-2-エノイル-アシル-ACPとなる。FabAはまた、trans-2-エノイル-アシル-ACPをcis-3-エノイル-アシル-ACPに異性化することもでき、これは、fabIを迂回してfabBによって用いられ(典型的には最長C16の長さの脂肪族鎖の場合)、β-ケト-アシル-ACPを生成することができる。各サイクルにおける最終段階は、trans-2-エノイル-アシル-ACPをアシル-ACPに変換するNADHまたはNADHPH依存性エノイル-ACPレダクターゼ(fabI)によって触媒される。本明細書に記載の方法において、脂肪酸合成の終結は、アシル-ACPからのアシル基のチオエステラーゼ除去によって起こり、遊離脂肪酸(FFA)が放出される。チオエステラーゼ(例えば、tesA)は、スルフヒドリル結合を介してアシル鎖とACPとの間に存在するチオエステル結合を加水分解する。 アセチル-CoAカルボキシラーゼ(accABCD)酵素複合体の構造および機能を図示している。ビオチンカルボキシラーゼはaccC遺伝子によってコードされ、一方、ビオチンカルボキシルキャリアータンパク質(BCCP)はaccB遺伝子によってコードされる。カルボキシルトランスフェラーゼ活性に関与する2つのサブユニットは、accA遺伝子およびaccD遺伝子によってコードされる。BCCPに共有結合したビオチンは、カルボン酸部分を保有している。birA遺伝子は、ホロ-accBをビオチン化する。 アシル-ACPから出発する脂肪アルコールの生成のための例示的な生合成経路の図式的概観を提示しており、ここで脂肪アルデヒドの生成は、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)、またはチオエステラーゼとカルボン酸レダクターゼ(Car)との酵素活性によって触媒される。脂肪アルデヒドはアルデヒドレダクターゼ(アルコールデヒドロゲナーゼとも称される)によって脂肪アルコールに変換される。この経路は脂肪アシル-CoAシンテターゼ(fadD)を含まない。 シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)アシル-ACPレダクターゼ(AAR_7942)を発現し、かつ、さまざまなシアノバクテリアアシルキャリアータンパク質(ACP)を共発現する大腸菌(E. coli)DV2における脂肪アルコール産生を示している。 シネココッカス・エロンガタスアシル-ACPレダクターゼ(AAR_7942)を発現する大腸菌DV2(pLS9-185)、およびコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)由来のアセチルカルボキシラーゼ複合体を共発現する大腸菌DV2(pSL9-185-D+)(3種の独立した菌株を示している。D+1、D+2およびD+3を参照)における脂肪アルコール産生を示している。 ifabおよびifadRの過剰発現によって媒介される、AARに依拠する組換え宿主細胞の脂肪アルコール産生の改善を例証する結果を提示している。 菌株Shu2において、組合せライブラリーに由来するAAR_7942バリアント(AAR_Com 2a〜d)を発現させ、かつACP、AlrA(アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH))および合成accオペロンを共発現させた組換え宿主細胞における脂肪アルコールレベルの上昇を示す結果を提示している。いくつかのアルコールデヒドロゲナーゼポリペプチドが本開示によれば有用であり、これには、アシネトバクター属(Acinetobacter sp.)M-1のAlrA(SEQ ID NO:52)およびAlrAホモログ、例えばAlrAadp1(SEQ ID NO:53)などが非限定的に含まれる。 図9Aおよび9Bは、AAR_7942バリアントS18Wの発現が活性および鎖長分布の改変をもたらすことを示す、FALC力価(9A)およびグルコースの収量(9B)を例証するAAR_7942バリアントS18Wのタンク発酵による結果を提示している。 MED4_AARのD61Eバリアントを組換え宿主細胞において発現させた場合の、FALCに関するC16からC14への鎖長分布の推移を例証する結果を提示している。
詳細な説明
全体的概観
石油化学品に対する我々の依存をなくす方策の1つは、小型の生産宿主として役立つ環境負荷の少ない微生物を通じて、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体を産生させることである。そのような細胞宿主(すなわち、組換え宿主細胞または生産菌株)は、再生可能な供給源、例えば再生可能な原料(例えば、発酵性糖、糖質、バイオマス、セルロース、グリセロール、CO、CO2、その他)などから脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールを産生するように遺伝子操作されている。これらの脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールは、洗剤および燃料を含む、多くの工業製品の原材料である。
本開示は、組換え宿主細胞において発現された時に、脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物の力価、収量および/または生産性の改善をもたらすアシル-ACPレダクターゼ(AAR)酵素バリアントに関する。本明細書において、脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールの生合成の強化は、宿主細胞を、それらがアシル-ACPの脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールへの反応を触媒するバリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)タンパク質を発現するように形質転換させることによって、実現される。本開示はさらに、AAR酵素バリアントを発現する組換え宿主細胞または生産菌株にも関する。
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈によって明らかに別様に規定されている場合を除き、複数形の指示物も含む。したがって、例えば、「1つの宿主細胞」への言及は2つまたはそれを上回るそのような宿主細胞を含み、「1つの脂肪エステル」への言及は1つもしくは複数の脂肪エステル、またはエステルの混合物への言及を含み、「1つの核酸配列」への言及は1つまたは複数の核酸配列を含み、「1つの酵素」への言及は1つまたは複数の酵素を含み、他についても同様である。
アクセッション番号は、本記載を通じて、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health, U.S.A.)によって管理されているNCBI(National Center for Biotechnology Information)によって提供されるデータベースから(これらは本明細書では「NCBIアクセッション番号」として、または代替的には「GenBankアクセッション番号」として識別される)、ならびにSwiss Institute of Bioinformaticsによって提供されるUniProt Knowledgebase(UniProtKB)およびSwiss-Protデータベースから(これらは本明細書では「UniProtKBアクセッション番号」として識別される)入手した。
酵素分類(EC)番号は、国際生化学分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(IUBMB)の命名委員会(Nomenclature Committee)によって確立されており、その記述はWorld Wide WebのIUBMB Enzyme Nomenclatureウェブサイトで入手可能である。EC番号は、それらが触媒する反応に応じて酵素を分類する。例えば、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)酵素活性は、E.C. 1.2.1.80(長鎖アシル-[アシルキャリアータンパク質]レダクターゼとしても知られる)またはEC 1.2.1.42に分類される。AARの官能性は、1つの種から別の種へと大多数の原核生物において保存されている。したがって、異なる微生物種が、E.C. 1.2.1.80またはEC 1.2.1.42に分類される同じAAR酵素活性を有している可能性がある。
本明細書で用いる場合、「ヌクレオチド」という用語は、複素環塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基からなるポリヌクレオチドのモノマー単位を指す。天然の塩基(グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U))は、典型的にはプリンまたはピリミジンの誘導体であるが、天然および非天然の塩基類似体も含まれることが理解されるべきである。天然の糖は、ペントース(五炭糖)デオキシリボース(DNAを形成する)またはリボース(RNAを形成する)であるが、天然および非天然の糖類似体も含まれることが理解されるべきである。核酸は、典型的にはリン酸結合を介して連結して核酸またはポリヌクレオチドを形成するが、多くの他の結合も当技術分野において公知である(例えば、ホスホロチオエート、ボラのホスフェートなど)。
「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)の重合体を指し、それらは一本鎖でも二本鎖でもよく、非天然または改変ヌクレオチドを含むこともできる。「ポリヌクレオチド」、「核酸配列」および「ヌクレオチド配列」という用語は、本明細書において、RNAまたはDNAのいずれかである任意の長さの重合型のヌクレオチドを指す目的で互換的に用いられる。これらの用語は分子の一次構造を指しており、それ故、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。これらの用語は、同等のものとして、メチル化および/またはキャッピングされたポリヌクレオチドなどの、ただしそれらに限定はされないヌクレオチド類似体および修飾ポリヌクレオチドでできたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含む。ポリヌクレオチドは、プラスミド、ウイルス、染色体、EST、cDNA、mRNA、およびrRNAを非限定的に含む、任意の形態にあってよい。
本明細書で用いる場合、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体を指す目的で互換的に用いられる。「組換えポリペプチド」という用語は、組換え手法によって産生されるポリペプチドを指し、ここでは概して、発現させるタンパク質をコードするDNAまたはRNAを適した発現ベクター中に挿入し、続いてそれを、該ポリペプチドを産生させる目的で宿主細胞を形質転換するために用いる。同様に、「組換えポリヌクレオチド」または「組換え核酸」または「組換えDNA」という用語は、当業者に公知の組換え手法によって産生される。
本明細書で用いる場合、「ホモログ」および「相同な」という用語は、対応するポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列に対して少なくとも約50パーセント(%)同一である配列を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。好ましくは、相同なポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、対応するアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%の相同性を有するポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を有する。本明細書で用いる場合、配列「相同性」および配列「同一性」という用語は、互換的に用いられる。当業者は、2つまたはそれ以上の配列の間の相同性を決定するための方法を熟知しているであろう。手短に述べると、2つの配列間の「相同性」の計算は、以下のように行うことができる。配列を、最適な比較のために整列させる(例えば、最適なアラインメントのために第1および第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)。1つの好ましい態様において、比較のために整列させる第1の配列の長さは、第2の配列の長さの少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約100%である。続いて、第1および第2の配列の対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められている場合には、その分子はその位置で同一である。2つの配列間の%相同性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列が共通に持つ同一な位置の数の関数である。2つの配列間での配列の比較および%相同性の決定は、BLAST(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol, 215(3): 403-410)などの数学的アルゴリズムを用いて実現することができる。2つのアミノ酸配列間の%相同性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunschのアルゴリズムを用い、Blossum 62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて決定することもできる(Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol., 48: 444-453)。また、2つのヌクレオチド配列間の%相同性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いNWSgapdna.CMP行列、ならびに40、50、60、70または80のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を用いて決定することもできる。当業者は、初期の相同性計算を行い、それに応じてアルゴリズムパラメーターを調整することができる。好ましいパラメーターのセット(および、分子が添付の特許請求の範囲の相同性の限度内にあるか否かを判定するためにどのパラメーターを適用すべきかを実施者が分かっていない場合に用いるべきセット)では、Blossum 62スコアリング行列を、ギャップペナルティ12、ギャップ延長ペナルティ4およびフレームシフトギャップペナルティ5で用いる。配列アラインメントのそのほかの方法は、バイオテクノロジーの技術分野で公知である(例えば、Rosenberg (2005) BMC Bioinformatics, 6: 278;Altschul, et al. (2005) FEBS J., 272(20): 5101-5109を参照されたい)。
「低ストリンジェントな、中ストリンジェントな、高ストリンジェントなまたは超高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する条件を述べている。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1 - 6.3.6.に見ることができる。該参考文献には水性および非水性の方法が記載されており、いずれの方法を用いてもよい。本明細書において言及する具体的なハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである:(1)低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件--6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃の後に、0.2×SSC、0.1% SDS中、少なくとも50℃で2回洗浄(低ストリンジェントな条件の場合、洗浄の温度は55℃まで上げることができる);(2)中ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件--6×SSC、約45℃の後に、0.2×SSC、0.1% SDS中、60℃での1回または複数回の洗浄;(3)高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件--6×SSC、約45℃の後に、0.2.X SSC、0.1% SDS中、65℃での1回または複数回の洗浄;および (4)超高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件--0.5Mリン酸ナトリウム、7% SDS、65℃の後に、0.2×SSC、1% SDS、65℃での1回または複数回の洗浄。別に指定する場合を除き、超高ストリンジェントな条件(4)が好ましい条件である。
「内因性」ポリペプチドとは、親細胞(または宿主細胞)のゲノムによってコードされるポリペプチドを指す。「外因性」ポリペプチドとは、親細胞のゲノムによってはコードされないポリペプチドを指す。バリアントまたは突然変異体ポリペプチドは、外因性ポリペプチドの一例である。したがって、非天然の核酸分子は、細胞に導入されると、該細胞にとって外因性であるとみなされる。天然に存在する核酸分子も、特定の細胞にとっては外因性である場合がある。例えば、細胞Xから単離されたあるコード配列の全体は、そのコード配列が細胞Yに導入されると、たとえXとYが同じ細胞型であったとしても、細胞Yに対しては外因性核酸である。
「過剰発現された」という用語は、ある遺伝子が、その遺伝子の内因性転写速度と比較して高い速度で転写されるようになっていることを意味する。いくつかの例では、過剰発現は、遺伝子の翻訳の速度が、その遺伝子の内因性翻訳速度と比較して上昇していることをさらに含む。過剰発現を検査するための方法は当技術分野において周知であり、例えば、転写されたRNAのレベルをrtPCRを用いて評価すること、およびタンパク質レベルをSDS pageゲル分析を用いて評価することができる。
「異種」という用語は、異なる生物、異なる細胞型、または異なる種に由来することを意味する。本明細書で用いる場合、これは、ある所与の生物に天然では存在しないヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列を指す。例えば、シアノバクテリアにとって生来のものであるポリヌクレオチド配列を大腸菌の宿主細胞に組換え法によって導入することができ、そうするとシアノバクテリア由来のそのポリヌクレオチドはその大腸菌細胞(例えば、組換え細胞)にとって異種となる。また、「異種」という用語を、非生来状態にある組換え宿主細胞に存在するヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列に関連して用いることもできる。例えば、「異種」ヌクレオチド配列、ポリヌクレオチド配列、ポリペプチド配列またはタンパク質配列は、例えば、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルまたは配列の改変というように、対応する野生型宿主細胞に天然に存在する野生型配列と対比して改変されていてよい。
本明細書で用いる場合、ポリペプチドの「断片」という用語は、完全長ポリペプチドまたはタンパク質のより短い部分を指し、そのサイズは、2アミノ酸残基から、アミノ酸配列全体から1アミノ酸残基を差し引いたものまでの範囲にわたる。本開示のある態様において、断片とは、ポリペプチドまたはタンパク質のあるドメイン(例えば、基質結合ドメインまたは触媒ドメイン)のアミノ酸配列全体のことを指す。
「突然変異誘発」という用語は、生物の遺伝情報を安定的な様式で変化させる工程を指す。タンパク質をコードする核酸配列の突然変異誘発により、突然変異体タンパク質が生じる。また、突然変異誘発とは、タンパク質活性の改変をもたらす非コード性核酸配列の変化のことも指す。
「突然変異」とは、本明細書で用いる場合、遺伝子のある核酸位置、またはポリペプチドもしくはタンパク質のあるアミノ酸位置における永続的変化のことを指す。突然変異には置換、付加、挿入および欠失が含まれる。例えば、アミノ酸位置における突然変異とは、1つの種類のアミノ酸が、別の種類のアミノ酸によって置換されることでありうる(例えば、セリン(S)はアラニン(A)によって置換されてよい;リジン(L)はT(トレオニン)によって置換されてよい;など)。そのため、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つのアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている1つまたは複数の突然変異を有しうる。
「アシル-ACPレダクターゼ(AAR)バリアント」および「バリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、そのアミノ酸配列に1つまたは複数の突然変異を有するAAR関連ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。AARとは、アシル-ACPの脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールへの還元を触媒する酵素を指す。AARバリアントは、そのポリペプチド配列の1つまたは複数のアミノ酸における突然変異を範囲に含みうる。細胞がAARバリアントによって形質転換されている場合、それはAARバリアントを発現する細胞(例えば、組換え細胞)である。1つの態様において、AARバリアントを発現する細胞によって産生される脂肪アルコールの力価および/または収量は、対応する野生型細胞(すなわち、AARバリアントを発現しない対応する細胞)のそれの少なくとも2倍である。大腸菌などの異種宿主において、脂肪アルデヒドは内因性アルコールデヒドロゲナーゼによって脂肪アルコールに変換されてよい。もう1つの態様において、AARバリアントを発現する細胞によって産生される脂肪アルコールの力価および/または収量は、対応する野生型細胞のそれの少なくとも約1倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、または少なくとも約10倍である。1つの態様において、AARバリアントを発現する細胞によって産生される脂肪アルコールの力価および/または収量は、対応する野生型細胞のそれを少なくとも約1パーセント、少なくとも約2パーセント、少なくとも約3パーセント、少なくとも約4パーセント、少なくとも約5パーセント、少なくとも約6パーセント、少なくとも約7パーセント、少なくとも約8パーセント、少なくとも約9パーセント、または約10パーセント上回る。もう1つの態様において、AARバリアントの発現に起因して組換え細胞において産生される脂肪アルコールの力価および/または収量は、野生型細胞のそれを少なくとも約20パーセント〜少なくとも約100パーセント上回る。1つの特定の態様において、細胞によって産生される脂肪アルコールの力価および/または収量は、対応する野生型細胞のそれを少なくとも約20パーセント、少なくとも約25パーセント、少なくとも約30パーセント、少なくとも約35パーセント、少なくとも約40パーセント、少なくとも約45パーセント少なくとも約50パーセント、少なくとも約55パーセント、少なくとも約60パーセント、少なくとも約65パーセント、少なくとも約70パーセント、少なくとも約75パーセント、少なくとも約80パーセント、少なくとも約85パーセント、少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセント、少なくとも約97パーセント、少なくとも約98パーセント、または少なくとも約100パーセント上回る。
本明細書で用いる場合、「遺伝子」という用語は、RNA産物またはタンパク質産物のいずれかをコードする核酸配列、ならびに、そのRNAもしくはタンパク質の発現に影響を及ぼす機能的に連結された核酸配列(例えば、そのような配列には、プロモーター配列またはエンハンサー配列が非限定的に含まれる)またはそのRNAもしくはタンパク質に影響を及ぼす配列をコードする機能的に連結された核酸配列(例えば、そのような配列には、リボソーム結合部位または翻訳制御配列が非限定的に含まれる)を指す。
発現制御配列は当技術分野において公知であり、これには例えば、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写終結因子、配列内リボソーム進入部位(IRES)などが含まれる。発現制御配列は、転写に関与する細胞タンパク質と特異的に相互作用する(Maniatis et al. (1987) Science, 236: 1237-1245)。例示的な発現制御配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。本開示の方法において、発現制御配列は、ポリヌクレオチド配列と機能的に連結されている。「機能的に連結された」という用語は、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が発現制御配列に結合した時に遺伝子発現を可能にするような様式で、ポリヌクレオチド配列と該発現制御配列が接続されていることを意味する。機能的に連結されたプロモーターは、転写および翻訳の方向の観点では、選択されたポリヌクレオチド配列の上流に位置する。機能的に連結されたエンハンサーは、選択されたポリヌクレオチドの上流、内部または下流に位置することができる。
本明細書で用いる場合、「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸、すなわちポリヌクレオチド配列を輸送しうる核酸分子を指す。有用なベクターの一種は、エピソーム(すなわち、染色体外での複製が可能な核酸)である。有用なベクターは、それに連結された核酸の自律複製および/または発現を可能にするものである。機能的に連結された遺伝子の発現を導くことができるベクターを、本明細書では「発現ベクター」と称する。一般に、組換えDNA手法において有用な発現ベクターは、ベクター形態では染色体に結合していない環状二本鎖DNAループ全般を指す「プラスミド」の形態にあることが多い。他の有用な発現ベクターは、直鎖形態で提供される。同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、および当技術分野において今後公知となる他の形態の発現ベクターも同じく含まれる。いくつかの態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチド配列に機能的に連結されたプロモーターをさらに含む。いくつかの態様において、プロモーターは、発生段階調節性(developmentally-regulated)プロモーター、オルガネラ特異的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、構成性プロモーター、または細胞特異的プロモーターである。組換えベクターは典型的に、ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた発現制御配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた選択マーカー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたマーカー配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた精製部分;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた分泌配列;およびポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたターゲティング配列より選択される、少なくとも1つの配列を含む。ある態様において、ヌクレオチド配列は宿主細胞のゲノムDNAに安定的に組み込まれており、ヌクレオチド配列の発現は、調節プロモーター領域の制御下にある。本明細書で使用される発現ベクターは、本明細書に記載の特定のポリヌクレオチド配列を、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現に適した形態で含む。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換させようとする宿主細胞の選択、所望のポリペプチドの発現レベルなどの要因に依存しうることが理解されるであろう。本明細書に記載の発現ベクターは、本明細書に述べるようなポリヌクレオチド配列によってコードされる、融合ポリペプチドを含むポリペプチドを産生させるために宿主細胞に導入することができる。原核生物、例えば大腸菌(E. coli)におけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く構成性または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中にコードされているポリペプチド、通常は組換えポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは、典型的には、組換えポリペプチドの発現を増大させること;組換えポリペプチドの溶解性を高めること;およびアフィニティー精製におけるリガンドとして作用することによって、組換えポリペプチドの精製を助けることを含む3つの目的のうちの1つまたは複数に役立つ。多くの場合、融合発現ベクターでは、融合部分と組換えポリペプチドの接合部にタンパク質分解切断部位が導入されている。これにより、融合ポリペプチドの精製後に、融合部分からの組換えポリペプチドの分離が可能になる。ある態様において、本開示のポリヌクレオチド配列は、バクテリオファージT5由来のプロモーターと機能的に連結されている。
ある態様において、宿主細胞は酵母細胞であり、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母S.セレビシエ(S. cerevisiae)における発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari et al. (1987) EMBO J., 6: 229-234), pMFa(Kurjan et al. (1982) Cell, 30: 933-943)、pJRY88(Schultz et al. (1987) Gene, 54: 113-123)、pYES2(Invitrogen Corp., San Diego, CA)、およびpicZ(Invitrogen Corp., San Diego, CA)が含まれる。他の態様において、宿主細胞は昆虫細胞であり、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用しうるバキュロウイルスベクターには、例えば、pAc系列(Smith et al. (1983) Mol. Cell. Biol., 3: 2156-2165)およびpVL系列(Lucklow et al. (1989) Virology, 170: 31-39)が含まれる。さらにもう1つの態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列を、哺乳動物発現ベクターを用いて哺乳動物細胞において発現させることもできる。原核細胞および真核細胞のいずれについても他の適した発現系が当技術分野において周知である;例えば、Sambrook et al., "Molecular Cloning: A Laboratory Manual," second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)を参照されたい。
本明細書で用いる場合、「CoA」または「アシル-CoA」という用語は、アルキル鎖のカルボニル炭素と補酵素A(CoA)の4'-ホスホパンテチオニル部分のスルフヒドリル基との間に形成され、式R-C(O)S-CoAを有するアシルチオエステルを指し、式中、Rは少なくとも4個の炭素原子を有する任意のアルキル基である。
「ACP」という用語はアシルキャリアータンパク質を意味する。ACPは脂肪酸生合成におけるアシル中間体の高度に保存された担体であり、この場合には、成長中の鎖が合成中にチオールエステルとして、4'-ホスホパンテテイン部分の遠位チオールと結合する。このタンパク質は、2種類の形態、すなわち、アポ-ACP(脂肪酸生合成においては不活性)およびACPまたはホロ-ACP(脂肪酸生合成において活性がある)として存在する。「ACP」および「ホロ-ACP」という用語は本明細書において互換的に用いられ、活性型のタンパク質のことを指す。ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素は、不活性アポ-ACPから活性ホロ-ACPへの変換に関与する。より詳細には、ACPは不活性なアポ-ACP形態として発現され、ホロ-ACPが生成されるためには、4'-ホスホパンテテイン部分が、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼの1つであるホロ-アシルキャリアータンパク質シンターゼ(ACPS)の作用によって、ACP上の保存されたセリン残基と翻訳後に結びつかなければならない。
本明細書で用いる場合、「アシル-ACP」という用語は、アルキル鎖のカルボニル炭素とアシルキャリアータンパク質(ACP)のホスホパンテテイニル部分のスルフヒドリル基との間に形成されるアシルチオエステルを指す。いくつかの態様において、ACPは完全飽和アシル-ACPの合成における中間体である。他の態様において、ACPは不飽和アシル-ACPの合成における中間体である。いくつかの態様において、炭素鎖は約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26個の炭素を有すると考えられる。
本明細書で用いる場合、「脂肪酸誘導体」という用語は、「脂肪酸」または「脂肪酸誘導体」を意味し、これは「脂肪酸またはその誘導体」とも呼ばれ得る。「脂肪酸」という用語は、式RCOOHを有するカルボン酸を意味する。Rは脂肪族基、好ましくはアルキル基を表す。Rは約4〜約22個の炭素原子を含むことができる。脂肪酸は飽和、一不飽和または多不飽和であってよい。「脂肪酸誘導体」とは、産生宿主生物の脂肪酸生合成経路から部分的に作られた生成物である。「脂肪酸誘導体」には、ACP、アシル-ACPまたはアシル-ACP誘導体から部分的に作られた生成物が含まれる。例示的な脂肪酸誘導体には、例えば、アシル-CoA、脂肪酸、脂肪アルデヒド、短鎖および長鎖アルコール、脂肪酸アルコール、炭化水素、エステル(例えば、蝋、脂肪酸エステルまたは脂肪エステル)、末端オレフィン、内部オレフィン、およびケトンが含まれる。
本明細書で用いる場合、「脂肪酸生合成経路」という用語は、脂肪酸およびその誘導体を生成する生合成経路を意味する。脂肪酸生合成経路は、所望の特性を有する脂肪酸誘導体を産生するためのさらなる酵素を含みうる。
本明細書で用いる場合、「脂肪アルデヒド」とは、カルボニル基(C=O)を特徴とする式RCHOを有するアルデヒドを意味する。いくつかの態様において、脂肪アルデヒドは、脂肪アルコールから作られる任意のアルデヒドである。ある態様において、R基は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または少なくとも19炭素長である。代替的または追加的に、R基は、20もしくはそれ未満、19もしくはそれ未満、18もしくはそれ未満、17もしくはそれ未満、16もしくはそれ未満、15もしくはそれ未満、14もしくはそれ未満、13もしくはそれ未満、12もしくはそれ未満、11もしくはそれ未満、10もしくはそれ未満、9もしくはそれ未満、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、または6もしくはそれ未満の炭素長である。したがって、R基は、上記の終点の任意の2つを境界とするR基を有しうる。例えば、R基は、6〜16炭素長、10〜14炭素長、または12〜18炭素長でありうる。いくつかの態様において、脂肪アルデヒドはC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、またはC26脂肪アルデヒドである。ある態様において、脂肪アルデヒドは、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18脂肪アルデヒドである。
本明細書で用いる場合、「脂肪アルコール」は、式ROHを有するアルコールを意味する。いくつかの態様において、R基は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、または少なくとも19炭素長である。代替的または追加的に、R基は、20もしくはそれ未満、19もしくはそれ未満、18もしくはそれ未満、17もしくはそれ未満、16もしくはそれ未満、15もしくはそれ未満、14もしくはそれ未満、13もしくはそれ未満、12もしくはそれ未満、11もしくはそれ未満、10もしくはそれ未満、9もしくはそれ未満、8もしくはそれ未満、7もしくはそれ未満、または6もしくはそれ未満の炭素長である。したがって、R基は、上記の終点の任意の2つを境界とするR基を有しうる。例えば、R基は、6〜16炭素長、10〜14炭素長、または12〜18炭素長でありうる。いくつかの態様において、脂肪アルコールは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、またはC26脂肪アルコールである。ある態様において、脂肪アルコールは、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18脂肪アルコールである。
本明細書で言及される「脂肪アルコール組成物」は、組換え宿主細胞によって産生され、典型的には脂肪アルコールの混合物を含む。場合によっては、混合物は、複数の種類の生成物(例えば、脂肪アルコールおよび脂肪酸)を含む。他の場合には、脂肪酸誘導体組成物は、例えば、さまざまな鎖長と飽和特性または分枝特性とを有する脂肪アルコールの混合物を含みうる。さらに別の場合には、脂肪アルコール組成物は、複数の種類の生成物と、さまざまな鎖長と飽和特性または分枝特性とを有する生成物との両方の混合物を含む。
脂肪アルデヒドを産生するように遺伝子操作された宿主細胞は、典型的には、脂肪アルデヒドのいくつかを脂肪アルコールに変換する。1つの例示的な態様において、アシル-ACPは、AARの作用を介して脂肪アルデヒドに変換される。脂肪アルデヒドから脂肪アルコールへの変換は、例えば、脂肪アルコール生合成ポリペプチドを介してさらに促進させることができる。いくつかの態様においては、脂肪アルコール生合成ポリペプチドをコードする遺伝子を、宿主細胞において発現または過剰発現させる。ある態様において、脂肪アルコール生合成ポリペプチドは、アルデヒドレダクターゼ活性またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する。
本開示に従って有用なアルコールデヒドロゲナーゼポリペプチドの例には、アシネトバクター属種M-1(Acinetobacter sp. M-1)のAlrA(SEQ ID NO:52)またはAlrAホモログ、例えばAlrAadp1(SEQ ID NO:53)など、および内因性大腸菌アルコールデヒドロゲナーゼ、例えばYjgB(AAC77226)、DkgA(NP_417485)、DkgB(NP_414743)、YdjL(AAC74846)、YdjJ(NP_416288)、AdhP(NP_415995)、YhdH(NP_417719)、YahK(NP_414859)、YphC(AAC75598)、YqhD(446856)およびYbbO[AAC73595.1]などが非限定的に含まれる。そのほかの例は、国際特許出願公開WO2007/136762、WO2008/119082およびWO2010/062480に記載されている。ある態様において、脂肪アルコール生合成ポリペプチドはアルデヒドレダクターゼ活性またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する(EC 1.1.1.1)。
脂肪酸、脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールのR基は直鎖であっても分枝鎖であってもよい。分枝鎖は複数の分枝点を有してもよく、環状分枝を含んでもよい。いくつかの態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、またはC26分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールである。特定の態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールは、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17またはC18分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールである。ある態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールのヒドロキシル基は、第一級(C1)位置にある。
ある態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールは、イソ-脂肪酸、イソ-脂肪アルデヒドもしくはイソ-脂肪アルコール、またはアンテイソ(antesio)-脂肪酸、アンテイソ-脂肪アルデヒドまたはアンテイソ-脂肪アルコールである。例示的な態様において、分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールは、イソ-C7:0、イソ-C8:0、イソ-C9:0、イソ-C10:0、イソ-C11:0、イソ-C12:0、イソ-C13:0、イソ-C14:0、イソ-C15:0、イソ-C16:0、イソ-C17:0、イソ-C18:0、イソ-C19:0、アンテイソ-C7:0、アンテイソ-C8:0、アンテイソ-C9:0、アンテイソ-C10:0、アンテイソ-C11:0、アンテイソ-C12:0、アンテイソ-C13:0、アンテイソ-C14:0、アンテイソ-C15:0、アンテイソ-C16:0、アンテイソ-C17:0、アンテイソ-C18:0、アンテイソ-C19:0分枝脂肪酸、分枝脂肪アルデヒドまたは分枝脂肪アルコールから選択される。
分枝もしくは非分枝脂肪酸、分枝もしくは非分枝脂肪アルデヒド、または分枝もしくは非分枝脂肪アルコールのR基は、飽和性でも不飽和性でもよい。不飽和性である場合には、R基は1つまたは複数の不飽和点を有しうる。いくつかの態様において、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルデヒドまたは不飽和脂肪アルコールは、一不飽和脂肪酸、一不飽和脂肪アルデヒドまたは一不飽和脂肪アルコールである。ある態様において、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルデヒドまたは不飽和脂肪アルコールは、C6:1、C7:1、C8:1、C9:1、C10:1、C11:1、C12:1、C13:1、C14:1、C15:1、C16:1、C17:1、C18:1、C19:1、C20:1、C21:1、C22:1、C23:1、C24:1、C25:1、またはC26:1不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルデヒドまたは不飽和脂肪アルコールである。ある好ましい態様において、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルデヒドまたは不飽和脂肪アルコールは、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1またはC18:1である。さらに他の態様において、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルデヒドまたは不飽和脂肪アルコールは、ω-7位置で不飽和である。ある態様において、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪アルデヒドまたは不飽和脂肪アルコールは、シス二重結合を含む。
本明細書で用いる場合、「組換え宿主細胞」または「遺伝子操作された宿主細胞」とは、例えば、脂肪アルコールを産生するように改変された宿主細胞である。いくつかの態様において、組換え宿主細胞は1つまたは複数のポリヌクレオチドを含み、各ポリヌクレオチドは脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコール生合成酵素活性を有するポリペプチドをコードし、ここで該組換え宿主細胞は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するのに有効な条件下で培養された場合に、脂肪アルコール組成物を産生する。
本明細書で用いる場合、「クローン」という用語は、典型的には、単一の共通の祖先の子孫でありかつ該祖先と本質的に遺伝的に同一である、細胞または細胞群、例えば、単一の細菌細胞から生じたクローン化された細菌コロニーの細菌を指す。
本明細書で用いる場合、「培養物」という用語は、典型的には、生細胞を含む液体培地を指す。1つの態様において、培養物は、制御された条件下で所定の培養培地中で再生する細胞、例えば、選択された炭素源および/または窒素を含む液体培地中で増殖させた組換え宿主細胞の培養物が含まれる。
「培養する」または「培養」という用語は、細胞(例えば微生物細胞)の集団を、液体培地または固体培地中で、適した条件下で増殖させることを指す。特定の態様において、培養するとは、基質の最終産物への発酵性生物変換を指す。培養培地は周知であり、そのような培養培地の個々の構成成分は、例えば、DIFCO培地およびBBL培地として、販売元から入手可能である。1つの非限定的な例では、水性栄養培地は、窒素、塩および炭素の複合的な供給源を含む「富栄養培地」、例えば、そのような培地当たり10g/Lのペプトンおよび10g/Lの酵母エキスを含むYP培地などである。
宿主細胞は、例えば、米国特許第5,000,000号;第5,028,539号;第5,424,202号;第5,482,846号;第5,602,030号およびWO2010127318号に記載に記載された方法に従って、炭素を効率的に同化し、セルロース系材料を炭素源として用いるようにさらに遺伝子操作することができる。加えて、スクロースを炭素源として用いうるようなインベルターゼを発現するように宿主細胞を遺伝子操作することもできる。
本明細書で用いる場合、「前記異種ヌクレオチド配列を発現するのに有効な条件下」という用語は、宿主細胞が所望の脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールを産生することを可能にする任意の条件を意味する。適した条件には、例えば、発酵条件が含まれる。
本明細書で用いる場合、組換え宿主細胞におけるタンパク質、例えば酵素の「改変された」または「変更されたレベルの」活性とは、親または天然宿主細胞を基準として測定した、活性における1つまたは複数の特性の差異を指す。典型的には、活性の差異は、改変された活性を有する組換え宿主細胞と、対応する野生型宿主細胞との間で測定される(例えば、野生型宿主細胞に対する組換え宿主細胞の培養物の比較)。活性の改変は、例えば、組換え宿主細胞によって発現されるタンパク質の量の改変(例えば、タンパク質をコードするDNA配列のコピー数の増加もしくは減少、タンパク質をコードするmRNA転写物の数の増加もしくは減少、および/またはmRNAからのタンパク質のタンパク質翻訳の量の増加もしくは減少の結果として);タンパク質の構造の変化(例えば、一次構造に対する変化、例えば、基質特異性の変化、観察される速度論的パラメーターの変化をもたらすタンパク質のコード配列に対する変化など);および、タンパク質安定性の変化(例えば、タンパク質の分解の増加もしくは減少)の結果でありうる。いくつかの態様において、ポリペプチドは、本明細書に記載のいずれかのポリペプチドの突然変異体またはバリアントである。場合によっては、本明細書に記載のようなポリペプチドのコード配列は、特定の宿主細胞における発現のためにコドンが最適化される。例えば、大腸菌における発現のために、1つまたは複数のコドンを最適化することができる(Grosjean et al. (1982) Gene 18:199-209)。
「調節配列」という用語は、本明細書で用いる場合、典型的には、タンパク質をコードするDNA配列と機能的に連結された、該タンパク質の発現を最終的に制御するDNAの塩基の配列を指す。調節配列の例には、RNAプロモーター配列、転写因子結合配列、転写終結配列、転写のモジュレーター(エンハンサーエレメントなど)、RNA安定性に影響を及ぼすヌクレオチド配列、および翻訳調節配列(例えば、リボソーム結合部位(例えば、原核生物におけるShine-Dalgarno配列、または真核生物におけるKozak配列)、開始コドン、終止コドンなど)が非限定的に含まれる。
本明細書で用いる場合、「前記ヌクレオチド配列の発現が野生型ヌクレオチド配列に比して改変されている」という語句は、内因性ヌクレオチド配列の発現および/もしくは活性のレベル、または異種もしくは非生来のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現および/もしくは活性のレベルの、上昇または低下を意味する。
本明細書で用いる場合、ポリヌクレオチドに関して「発現する」という用語は、それが機能するようにさせることである。ポリペプチド(またはタンパク質)をコードするポリヌクレオチドは、発現されると、転写され、翻訳されて、そのポリペプチド(またはタンパク質)を産生すると考えられる。本明細書で用いる場合、「過剰発現する」という用語は、細胞においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、同じ条件下で対応する野生型細胞において通常発現されるよりも高い濃度で発現されること(または発現されるようにすること)を意味する。
「変更されたレベルの発現」および「改変されたレベルの発現」という用語は互換的に用いられ、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは炭化水素が、遺伝子操作された宿主細胞において、同じ条件下での対応する野生型細胞におけるその濃度と比較して異なる濃度で存在することを意味する。
本明細書で用いる場合、「力価」という用語は、宿主細胞培養物の単位容積当たりで産生される脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールの数量を指す。本明細書に記載の組成物および方法の任意の局面において、脂肪アルコールは、約25mg/L、約50mg/L、約75mg/L、約100mg/L、約125mg/L、約150mg/L、約175mg/L、約200mg/L、約225mg/L、約250mg/L、約275mg/L、約300mg/L、約325mg/L、約350mg/L、約375mg/L、約400mg/L、約425mg/L、約450mg/L、約475mg/L、約500mg/L、約525mg/L、約550mg/L、約575mg/L、約600mg/L、約625mg/L、約650mg/L、約675mg/L、約700mg/L、約725mg/L、約750mg/L、約775mg/L、約800mg/L、約825mg/L、約850mg/L、約875mg/L、約900mg/L、約925mg/L、約950mg/L、約975mg/L、約1000mg/L、約1050mg/L、約1075mg/L、約1 100mg/L、約1125mg/L、約1150mg/L、約1175mg/L、約1200mg/L、約1225mg/L、約1250mg/L、約1275mg/L、約1300mg/L、約1325mg/L、約1350mg/L、約1375mg/L、約1400mg/L、約1425mg/L、約1450mg/L、約1475mg/L、約1500mg/L、約1525mg/L、約1550mg/L、約1575mg/L、約1600mg/L、約1625mg/L、約1650mg/L、約1675mg/L、約1700mg/L、約1725mg/L、約1750mg/L、約1775mg/L、約1800mg/L、約1825mg/L、約1850mg/L、約1875mg/L、約1900mg/L、約1925mg/L、約1950mg/L、約1975mg/L、約2000mg/L(2g/L)、3g/L、5g/L、10g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の力価で産生される。他の態様において、脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールは、100g/Lを上回る、200g/Lを上回る、300g/Lを上回る、またはそれ以上、例えば500g/L、700g/L、1000g/L、1200g/L、1500g/Lまたは2000g/Lなどの力価で産生される。本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールの好ましい力価は、5g/L〜200g/L、10g/L〜150g/L、20g/L〜120g/L、および30g/L〜100g/Lである。
本明細書で用いる場合、「宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールの収量」という用語は、投入炭素源が宿主細胞において生成物(すなわち、脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒド)に変換される効率を指す。本開示の方法により脂肪アルコールおよび/または脂肪アルデヒドを産生するように遺伝子操作された宿主細胞は、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、または少なくとも30%、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の収量を有する。他の態様において、脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールは、30%を上回る、40%を上回る、50%を上回る、60%を上回る、70%を上回る、80%を上回る、90%を上回る、またはそれ以上の収量で産生される。代替的または追加的に、収量は、約30%もしくはそれ未満、約27%もしくはそれ未満、約25%もしくはそれ未満、または約22%もしくはそれ未満である。したがって、収量は上記の終点の任意の2つを境界とすることができる。例えば、本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される脂肪アルコールまたは脂肪アルデヒドの収量は、5%〜15%、10%〜25%、10%〜22%、15%〜27%、18%〜22%、20%〜28%、または20%〜30%でありうる。本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される脂肪アルコールの好ましい収量は、10%〜30%である。
本明細書で用いる場合、「産生能」という用語は、宿主細胞培養物の単位容積当たり・単位時間当たりに産生される脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールの数量を指す。本明細書に記載の組成物および方法の任意の局面において、組換え宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールの産生能は、少なくとも100mg/L/時、少なくとも200mg/L/時(hour0)、少なくとも300mg/L/時、少なくとも400mg/L/時、少なくとも500mg/L/時、少なくとも600mg/L/時、少なくとも700mg/L/時、少なくとも800mg/L/時、少なくとも900mg/L/時、少なくとも1000mg/L/時、少なくとも1100mg/L/時、少なくとも1200mg/L/時、少なくとも1300mg/L/時、少なくとも1400mg/L/時、少なくとも1500mg/L/時、少なくとも1600mg/L/時、少なくとも1700mg/L/時、少なくとも1800mg/L/時、少なくとも1900mg/L/時、少なくとも2000mg/L/時、少なくとも2100mg/L/時、少なくとも2200mg/L/時、少なくとも2300mg/L/時、少なくとも2400mg/L/時または少なくとも2500mg/L/時である。代替的または追加的に、産生能は、2500mg/L/時もしくはそれ未満、2000mg/L/OD600もしくはそれ未満、1500mg/L/OD600もしくはそれ未満、120mg/L/時もしくはそれ未満、1000mg/L/時もしくはそれ未満、800mg/L/時もしくはそれ未満、または600mg/L/時もしくはそれ未満である。したがって、産生能は上記の終点の任意の2つを境界とすることができる。例えば、産生能は3〜30mg/L/時、6〜20mg/L/時、または15〜30mg/L/時である。本開示の方法による組換え宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールの好ましい産生能は、500mg/L/時〜2500mg/L/時、または700mg/L/時〜2000mg/L/時から選択される。
「総脂肪種」および「総脂肪酸生成物」という用語は、国際特許出願公開WO2008/119082に記載されたようなGC-FIDによって評価される、試料中に存在する脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、遊離脂肪酸および脂肪エステルの総量を指して、本明細書において互換的に用いうる。試料は、状況に応じて、これらの化合物の1つ、2つ、3つまたは4つを含みうる。
本明細書で用いる場合、「グルコース利用率」という用語は、グラム数/リットル/時(g/L/hr)として報告される、培養物によって単位時間当たりに用いられるグルコースの量を指す。
本明細書で用いる場合、「炭素源」という用語は、原核細胞または単純な真核細胞の増殖のための炭素の供給源として用いるのに適した基質または化合物を指す。炭素源は、重合体、炭水化物、酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチドおよび気体(例えば、COおよびCO2)を非限定的に含む、さまざまな形態をとりうる。例示的な炭素源には、単糖類、例えばグルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロースおよびアラビノース;オリゴ糖類、例えばフルクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖;多糖類、例えばデンプン、セルロース、ペクチンおよびキシラン;二糖類、例えばスクロース、マルトース、セロビオースおよびツラノース;セルロース系材料および異形物、例えばヘミセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム;飽和または不飽和脂肪酸、コハク酸塩、乳酸塩および酢酸塩;アルコール、例えばエタノール、メタノールおよびグリセロール、またはそれらの混合物が非限定的に含まれる。また、炭素源が、光合成の生成物、例えばグルコースであってもよい。ある態様において、炭素源は、排ガス(flu gas)を元にした、COを含有するガス混合物である。もう1つの態様において、炭素源は、炭素含有材料、例えばバイオマス、石炭または天然ガスなどを再構成したものを元にした、COを含有するガス混合物である。他の態様において、炭素源は、合成ガス、メタンまたは天然ガスである。ある好ましい態様において、炭素源はバイオマスである。他の好ましい態様において、炭素源はグルコースである。他の好ましい態様において、炭素源はスクロースである。他の態様において、炭素源はグリセロールである。他の好ましい態様において、炭素源は、サトウキビ汁、サトウキビシロップ、またはコーンシロップである。他の好ましい態様において、炭素源は、再生可能な原料、例えば、CO2、CO、グルコース、スクロース、キシロース、アラビノース、グリセロール、マンノース、またはそれらの混合物に由来する。他の態様において、炭素源は、デンプン、セルロース性バイオマス、モラッセ、およびセルロース性バイオマスの加水分解に由来する糖質混合物を含む他の糖質源、または植物油もしくは天然油の処理に由来する廃棄材料を含む、再生可能な原料に由来する。
本明細書で用いる場合、「バイオマス」という用語は、炭素源の由来となる任意の生体物質を指す。いくつかの態様において、バイオマスは処理されて、生物変換に適した炭素源となる。他の態様において、バイオマスは炭素源にするためのさらなる処理を必要としない。例示的なバイオマス源は、植物体または草木、例えばトウモロコシ、サトウキビまたはアメリカクサキビである。もう1つの例示的なバイオマス源は、代謝廃棄産物、例えば動物性物質(例えば、牛糞肥料)である。さらに例示的なバイオマス源には、藻類および他の海洋植物が含まれる。バイオマスにはまた、グリセロール、発酵廃棄物、エンシレージ、わら、木材、廃水、ゴミ、セルロース系都市廃棄物、および残飯(例えば石けん、油、および脂肪酸)を非限定的に含む、工業、農業、林業および家庭からの廃棄物も含まれる。「バイオマス」という用語はまた、炭水化物(例えば、単糖類、二糖類または多糖類)などの炭素源も指し得る。
本明細書で用いる場合、生成物(脂肪酸およびその誘導体など)に関する「単離された」という用語は、細胞構成成分、細胞培養培地、または化学前駆体もしくは合成前駆体から単離された生成物を指す。本明細書に記載の方法によって産生される脂肪酸およびその誘導体は、発酵ブロス中、さらには細胞質中で比較的不混和性でありうる。このため、脂肪酸およびその誘導体は、細胞内または細胞外のいずれかで有機相に収集することができる。
本明細書で用いる場合、「精製する」、「精製された」、または「精製」という用語は、例えば単離または分離による、分子のその環境からの除去または単離を意味する。「実質的に精製された」分子は、それらに付随する他の構成成分を少なくとも約60%含まない(例えば、少なくとも約70%含まない、少なくとも約75%含まない、少なくとも約85%含まない、少なくとも約90%含まない、少なくとも約95%含まない、少なくとも約97%含まない、少なくとも約99%含まない)。本明細書で用いる場合、これらの用語はまた、試料からの混入物の除去も指す。例えば、混入物の除去は、試料中の脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体のパーセンテージの増加をもたらすことができる。例えば、脂肪酸誘導体が組換え宿主細胞において産生される場合、脂肪酸誘導体は、組換え宿主細胞タンパク質または他の宿主細胞物質の除去によって精製することができる。精製後に、試料中の脂肪酸誘導体のパーセンテージは増加する。「精製する」、「精製された」、および「精製」という用語は、完全に純粋であることを必要としない相対的な用語である。したがって、例えば、脂肪酸誘導体が組換え宿主細胞において産生される場合、精製された脂肪酸誘導体は、他の細胞構成成分(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、または他の炭化水素)から実質的に分離された脂肪酸誘導体である。
脂肪アルコール産生の増加
本開示は、宿主細胞におけるアシル-ACPレダクターゼ(AAR)遺伝子の発現改変の結果として強化される、脂肪アルコール組成物の生産を提供する。AARは、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールの生産のための生合成経路に関与する。バリアントAARは、単独で用いられるか、または脂肪アルデヒドを脂肪アルコールに変換する生合成経路に関与する別の遺伝子の発現改変と組合せて用いられる。本明細書において、本開示は、野生型AARまたはAARと同じ機能を有する他の脂肪アルコール生合成ポリペプチドを発現する遺伝子操作されていない宿主細胞または生来のもしくは野生型の宿主細胞に比して強化された脂肪アルコール生合成をもたらすためにバリアントAARを発現するように遺伝子操作された、組換え宿主細胞を提供する。本開示では、組換え宿主細胞において有用なAAR関連のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを特定している。しかし、AAR関連ポリヌクレオチドに対する絶対的な配列同一性は必要でないことは認識されるであろう。例えば、ある特定のポリヌクレオチド配列に変化を加えて、コードされるポリペプチドを活性に関してスクリーニングすることができる。そのような変化には、典型的には、例えばコドン最適化などを通じての保存的突然変異およびサイレント突然変異が含まれる。改変または突然変異を受けた(すなわち、突然変異体)ポリヌクレオチドおよびコードされるバリアントポリペプチドは、当技術分野において公知の方法を用いて、触媒活性の増大、安定性の増大、または阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)を非限定的に含む、親ポリペプチドと比較して改善された機能などの所望の機能に関してスクリーニングすることができる。本開示では、本明細書に記載の脂肪酸生合成経路のさまざまな段階(すなわち、反応)に関与する酵素活性を酵素分類(EC)番号に従って特定し、そのようなEC番号によって分類される例示的なポリペプチド(酵素)、およびそのようなポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチドを特定している。本明細書においてアクセッション番号および/または配列識別子番号(SEQ ID NO)によって特定されるそのような例示的なポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、本明細書に記載の組換え宿主細胞を得る目的で親宿主細胞における脂肪酸経路を遺伝子操作するために有用である。しかし、本明細書に記載のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは例示的であって、それ故に非限定的であることが理解される必要がある。本明細書に記載の例示的なポリペプチドの相同体の配列は、データベース、例えば、いずれもWorld Wide Web上で利用可能である、National Center for Biotechnology Information(NCBI)によって提供されているEntrezデータベース、Swiss Institute of Bioinformaticsによって提供されているExPasyデータベース、Technical University of Braunschweigによって提供されているBRENDAデータベース、ならびにBioinformatics Center of Kyoto UniversityおよびUniversity of Tokyoによって提供されているKEGGデータベースを用いて、当業者には入手可能である。種々の異なる宿主細胞を、本明細書に記載されたもののようなバリアントAAR脂肪アルコール生合成酵素を発現するように改変して、脂肪アルコール組成物の生産に適した組換え宿主細胞を生じさせることができる。種々の細胞が、本明細書に記載の組換え宿主細胞における使用に適したポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む遺伝物質の供給源となりうることは理解されよう。
アシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドおよびそれらのバリアント
1つの局面において、本開示は、生来または非生来のアシル-ACPレダクターゼ(AAR)タンパク質を発現するように宿主細胞を遺伝子操作することによる、脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体の改良生産に関する。AARタンパク質は、アシル-ACPの脂肪アルデヒドへの還元を触媒するほか、脂肪アルデヒドから脂肪アルコールへの変換も触媒しうる(米国特許出願公開第20120282663号参照、これは参照により本明細書に組み入れられる)。AARポリペプチド、またはAARポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、生来(例えば、内因性)のものであっても、または非生来(例えば、外因性、異種など)のものであってもよく、すなわち、それは対応する野生型宿主細胞に天然に存在する野生型配列およびその発現とは異なってもよい。その例には、バリアントAAR(例えば、突然変異体)をもたらすAARポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列の改変、および/またはその発現レベルの改変が含まれる。本開示は、AARポリペプチド、ホモログおよびバリアントを含む。
1つの態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:42またはSEQ ID NO:44の野生型AARポリペプチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、AARはシネココッカス属(Synechococcus)種またはプロクロロコッカス属(Prochlorococcus)種に由来する。他の態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:42またはSEQ ID NO:44の野生型AARポリペプチド配列に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも99%)の配列同一性を有し、さらに、本明細書に記載されたような有用な特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を含んでもよい。1つの態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:28またはSEQ ID NO:34の野生型AARポリペプチド配列に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも99%)の配列同一性を有する。他の態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:38、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:42またはSEQ ID NO:44に対して100%の配列同一性を有する。さらに他の態様において、改良されたまたはバリアントであるAARポリペプチド配列は、シネココッカス属種およびプロクロロコッカス属種以外の種に由来する。
1つの関連した態様において、本開示は、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41またはSEQ ID NO:43に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または/および少なくとも99%)の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を有するAARポリペプチドを含む。いくつかの態様において、核酸配列は、本明細書に記載されたような改良された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を有するAARバリアントをコードする。さらにもう1つの関連した態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41またはSEQ ID NO:43に対して100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。もう1つの局面において、本開示は、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:37、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:41またはSEQ ID NO:43に対応する核酸の実質的に全長に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むAARポリペプチドに関する。
1つの好ましい態様において、本開示は、SEQ ID NO:57からSEQ ID NO:78までのいずれか1つのバリアントAARポリペプチド配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドを提供する。いくつかの態様において、バリアントAARはシネココッカス属種およびプロクロロコッカス属種に由来する。他の態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:57からSEQ ID NO:78までのいずれか1つのバリアントAARポリペプチド配列に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも99%)の配列同一性を有する。バリアントAARポリペプチドは、本明細書に記載されたような有用な特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を含んでもよい。もう1つの好ましい態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59またはSEQ ID NO:65のバリアントAARポリペプチド配列に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも99%)の配列同一性を有する。他の態様において、本開示の実施に用いるためのAARポリペプチドは、SEQ ID NO:57からSEQ ID NO:78までのいずれか1つに対して100%の配列同一性を有する。さらに他の態様において、改良されたまたはバリアントであるAARポリペプチド配列は、シネココッカス属種およびプロクロロコッカス属種以外の種に由来する。
本発明者らは、シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のアシル-ACPレダクターゼ(AAR_7942)のエラープローンライブラリーを、野生型AAR_7942を上回る改善を有するバリアントをスクリーニングする目的で構築した(下記の実施例3参照)。改善は、脂肪アルコール力価全体の改善、または力価に著しい影響を及ぼさないC10、C12、C14もしくはC16脂肪アルコールの比率の増加のいずれかとして分類される。エラープローンライブラリーにより、アミノ酸位置18を含むさまざまなアミノ酸位置が同定された。これらの位置をさらに検証するために飽和ライブラリーおよび組合せライブラリーを調製した。SEQ ID NO:57は、アミノ酸18に突然変異を有するAARバリアント(突然変異体)のアミノ酸配列をコードする。セリンがトリプトファンによって置き換えられる突然変異S18Wは、細胞において発現させた時に脂肪アルコール産生の有意な増加をもたらした(下記の実施例3および4を参照)。より詳細には、S18W突然変異は、対照として用いた野生型AARと比較して、総脂肪アルコール(FALC)産生の227パーセントの増加、およびC14脂肪アルコールの324パーセントの増加を導いた(下記の表4Aおよび4Bを参照)。
本発明者らは、全体的FALC力価またはC12脂肪アルコールの比率をさらに増加させるバリアント(突然変異体)を同定する目的で、S18W突然変異に基づく飽和ライブラリーを構築した(下記の実施例4および表5を参照)。S18W突然変異(SEQ ID NO:57)をテンプレートとして用いる組合せライブラリーにより、総FALC力価および/またはC12脂肪アルコール産生のさらに有意な増加を示す7種の組合せ突然変異体が生じた(下記の表6B参照)。この7種の組合せ突然変異体には、突然変異S18Wを有するAAR(SEQ ID NO:57);突然変異M21L、C63G、S113K、T154A、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:58);突然変異L8A、M21L、C63G、A77A(GCCのGCAへのサイレントコドン突然変異)、S113K、T154A、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:59);突然変異D16L、M21L、C63G、S113K、T154A、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:60);突然変異L8A、D24V、C63G、S113K、Q155L、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:61);突然変異D24P、L31M、C63G、S113K、T154A、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:62);突然変異L8A、D16L、D24V、C63G、S113K、T154A、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:63);および突然変異D24E、C63G、S113K、T154A、A281Lを有するAAR(SEQ ID NO:64)が含まれた。とりわけ、SEQ ID NO:58は最も高いC12脂肪アルコール比率を示し、一方、SEQ ID NO:59は最も高い組合せ突然変異体力価を示した(下記の表6B参照)。
本発明者らはまた、プロクロロコッカス・マリヌス(Prochlorococcus marinus)MED4_AAR由来のアシル-ACPレダクターゼの完全飽和ライブラリーも、野生型MED4_AARを上回る改善を示すバリアントをスクリーニングする目的で構築した(下記の実施例7参照)。AARバリアントを、野生型AAR酵素よりも多くの脂肪アルコールの産生、または例えばC12、C14、もしくはC16脂肪アルコールの比率の増加といった、改変された鎖長プロフィールを有する脂肪アルコールを産生する能力に基づいて選択した。表8(下記の実施例7参照)は、野生型MED4 AARを1.4倍〜2.2倍の範囲で上回る最も高いFALC力価を生じた16種のAARバリアントからの代表的なデータを示している。本発明者らはまた、C16よりも短い鎖長を有するFALC種の割合が高いものを関心対象とする、改変された鎖長プロフィールを有するAARバリアントについてもスクリーニングした。FALCの数量の2〜3倍の増加を導いた2つのバリアントクローンを図10に示している。これらのAARバリアントの1つ、すなわちD61E突然変異体(SEQ ID NO:65)の組換え宿主細胞における発現は、脂肪アルコール種の鎖長分布をより短い炭素鎖の方向に推移させた。いずれのバリアントもそれらが力価を増大させる際にFALCの数量の増加を導いたが、C14の比率の増加(およびより高い力価)を有していたのはSEQ ID NO:65のみであった。表9(下記の実施例7参照)は、MED4_AARのD61Eバリアントを発現する組換え宿主細胞によって産生されたFALCの鎖長分布を、野生型(WT)MED4_AAR、および鎖長の改変された産物を産生しないMED4_AARのV346Pバリアントと比較して例証している。
アシルキャリアータンパク質(ACP)
大腸菌(E. Coli)などの宿主細胞における脂肪酸生合成を律しうる因子に関して、文献における報告は見解が対立している。アシルキャリアータンパク質(ACP)はあらゆる生物においてある程度は保存されているものの、それらの一次配列は大きく異なる場合がある。脂肪アシル-ACPを産物に変換させる目的で、大腸菌以外の供給源からの末端経路酵素を大腸菌において発現させる場合には、組換え経路酵素の脂肪アシル-ACPに対する認識、親和性および/または代謝回転などに制約が存在する可能性があることが示唆されている(Suh et al. (1999) The Plant Journal 17(6):679-688;Salas et al. (2002) Archives of Biochemistry and Biophysics 403:25-34を参照)。示唆されることの1つは、脂肪酸生合成のための主な前駆体、例えば、アセチル-CoAおよびマロニル-CoAが限られることにより、脂肪酸誘導体の合成の減少が生じうるというものである。脂肪酸生合成を経由する流れを増大させる1つのアプローチは、経路内のさまざまな酵素を操作することである(図1〜3を参照)。アセチル-CoAカルボキシラーゼ(acc)複合体および脂肪酸生合成(fab)経路を介してのアセチル-CoAからのアシル-ACPの供給は、脂肪酸誘導体産生の速度に影響を及ぼす可能性がある(図2参照)。実施例(下記)に詳述するように、脂肪アルコールの産生に対するACPの過剰発現の影響を、例証を目的として評価した。
ACPを発現するように遺伝子操作された宿主細胞は、脂肪アルデヒド組成物および/もしくは脂肪アルコール組成物または特定の脂肪アルデヒド組成物および/もしくは脂肪アルコール組成物の力価の増大を示すことができ、ここで該増大は、同じ条件下で培養した時に、ACPを発現しない対応する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物の力価を、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、または少なくとも30%上回る。1つの局面において、本開示は、生来(例えば、内因性)または非生来(例えば、外因性、異種)のACPタンパク質を発現するように宿主細胞を遺伝子操作することによる、脂肪アルデヒド組成物および/または脂肪アルコール組成物の改良生産に関する。ACPポリペプチド、またはACPポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は非生来のものであってよく、すなわち、対応する野生型宿主細胞に天然に存在する野生型配列とは異なってもよい。その例には、ヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルまたは配列の改変が含まれる。本開示は、ACPポリペプチドおよびそのホモログを含む。
1つの態様において、本開示の実施に用いるためのACPポリペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも70%の配列同一性を有する。いくつかの態様において、ACPはマリノバクター・ハイドロカーボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)または大腸菌に由来する。他の態様において、本開示の実施に用いるためのACPポリペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:10の野生型ACPポリペプチド配列に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または少なくとも99%)の配列同一性を有し、さらに、本明細書に記載されたような有用な特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を含んでもよい。1つの局面において、本開示の実施に用いるためのACPポリペプチドは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:10に対して100%の配列同一性を有する。他の態様において、改良されたまたはバリアントであるACPポリペプチド配列は、M.ハイドロカーボノクラスティカスおよび大腸菌以外の種に由来する。1つの関連した局面において、本開示の実施に用いるためのACPポリペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:9に対して100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。もう1つの関連した局面において、本開示は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:9に対して、少なくとも75%(例えば、少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または/および少なくとも99%)の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むACPポリペプチドに関する。いくつかの態様において、核酸配列は、本明細書に記載されたような改良された特徴および/または特性をもたらす1つまたは複数の置換を有するACPバリアントをコードする。他の態様において、改良されたまたはバリアントであるACP核酸配列は、マリノバクター属種および大腸菌以外の種に由来する。もう1つの局面において、本開示は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:9に対応する核酸の実質的に全長に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸によってコードされるアミノ酸配列を含むACPポリペプチドに関する。
変異および突然変異
いくつかの態様において、AARまたはACPポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドのいずれかの突然変異体またはバリアントである。バリアントまたは突然変異体ポリペプチドという用語は、本明細書で用いる場合、野生型ポリペプチドとは少なくとも1つのアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。例えば、突然変異体は、以下の保存的アミノ酸置換、例えば、これらに限定されるわけではないが、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの脂肪族アミノ酸の、別の脂肪族アミノ酸による置き換え;セリンのトレオニンによる置き換え;トレオニンのセリンによる置き換え;例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性残基の、別の酸性残基による置き換え;アスパラギンおよびグルタミンなどのアミド基を保有する残基の、アミド基を保有する別の残基による置き換え;リジンおよびアルギニンなどの塩基性残基の、別の塩基性残基との交換;ならびに、フェニルアラニンおよびチロシンなどの芳香族残基の、別の芳香族残基による置き換えのうちの、1つまたは複数を有しうる。いくつかの態様において、バリアントまたは突然変異体ポリペプチドは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100個、またはそれ以上のアミノ酸置換、付加、挿入または欠失を有する。バリアントまたは突然変異体として機能するポリペプチドの好ましい断片のいくつかは、対応する野生型ポリペプチドの生物学的機能(例えば、酵素活性)の一部またはすべてを保っている。いくつかの態様において、断片は、対応する野生型ポリペプチドの生物学的機能の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%、またはそれ以上を保っている。他の態様において、断片または突然変異体は、対応する野生型ポリペプチドの生物学的機能の約100%を保っている。生物活性に影響を及ぼさずにどのアミノ酸残基を置換し、挿入し、または欠失させることができるかを判定する上での手引きは、当技術分野において周知のコンピュータプログラム、例えば、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, WI)を用いて見いだすことができる。さらに他の態様において、断片は、対応する野生型ポリペプチドと比較して増大した生物学的機能を示す。例えば、断片は、対応する野生型ポリペプチドと比較して、酵素活性の点で少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%または少なくとも90%の改善を呈しうる。他の態様において、断片は、対応する野生型ポリペプチドと比較して、酵素活性の点で少なくとも100%、少なくとも200%、または少なくとも500%の改善を呈する。
本明細書に記載のポリペプチドが、ポリペプチドの機能に実質的な影響を及ぼさないさらなる保存的または非必須のアミノ酸置換を有してもよいことは理解されよう。当技術分野において公知のように、ある特定の置換が許容される(すなわち、アシル-ACPレダクターゼ活性などの所望の生物学的機能に有害な影響を及ぼさない)か否かを判定することができる(Bowie et al. (1990) Science, 247: 1306-1310を参照されたい)。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基によって置き換えられたもののことである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
バリアントは天然に存在してもよく、またはインビトロで作製してもよい。特に、そのようなバリアントは、部位指定突然変異誘発、ランダム化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIII削除手順、または標準的なクローニング手法といった遺伝子工学の手法を用いて作製することができる。または、そのようなバリアント、突然変異体、断片、類似体または誘導体を、化学的な合成または修飾の手順を用いて作製することもできる。バリアントの作製方法は当技術分野において周知である。例えば、バリアントは、ランダム突然変異誘発および部位指定突然変異誘発を用いることによって調製することができる。ランダム突然変異誘発および部位指定突然変異誘発は、当技術分野において広く知られている(例えば、Arnold (1993) Ciirr. Opin. Biotech. 4: 450-455を参照されたい)。ランダム突然変異誘発は、エラープローンPCR(例えば、Leung et al. (1989), Technique, 1: 11-15;およびCaldwell et al. (1992) PCR Methods Applic, 2: 28-33を参照されたい)。エラープローンPCRでは、PCR産物の全長にわたって高い点突然変異率が得られるように、DNAポリメラーゼのコピー忠実度(copying fidelity)が低くなる条件下で実際のPCRを行う。手短に述べると、そのような手法では、突然変異誘発させる核酸(例えば、AAR酵素をコードするポリヌクレオチド配列)を、PCRプライマー、反応緩衝液、MgCl2、MnCl2、Taqポリメラーゼ、およびPCR産物の全長にわたって高い点突然変異率を得るのに適した濃度のdNTPと混合する。例えば、反応は、20fmolの突然変異誘発させる核酸、30pmolの各PCRプライマー、50mM KCl、10mM Tris HCl(pH 8.3)、0.01%ゼラチン、7mM MgCl2、0.5mM MnCl2、5単位のTaqポリメラーゼ、0.2mM dGTP、0.2mM dATP、1mM dCTP、および1mM dTTPを含む反応緩衝液を用いて行うことができる。PCRは、94℃で1分、45℃で1分、および72℃で1分を30サイクルとして行うことができる。しかし、これらのパラメーターを適宜変更しうることは当業者に理解されるであろう。続いて、突然変異誘発された核酸を適切なベクター中にクローニングし、突然変異誘発された核酸によってコードされるポリペプチドの活性を評価する。部位指定突然変異誘発は、クローニングされた関心対象の任意のDNA中に部位特異的突然変異を生じさせるためにオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発を用いて達成することができる。オリゴヌクレオチド突然変異誘発は当技術分野において記載されている(例えば、Reidhaar-Olson et al. (1988) Science, 241 : 53-57を参照されたい)。手短に述べると、そのような手順では、クローニングされたDNA中に導入しようとする1つまたは複数の突然変異を保有する複数の二本鎖オリゴヌクレオチドを合成し、突然変異誘発させるクローニングされたDNA(例えば、AARポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)中に挿入する。突然変異誘発されたDNAを含有するクローンを回収し、それらがコードするポリペプチドの活性を評価する。
バリアントを作製するためのもう1つの方法は、アセンブリPCRである。アセンブリPCRでは、小さなDNA断片の混合物からのPCR産物のアセンブリが行われる。同一のバイアル内で多数の異なるPCR反応が並行して起こり、ある反応の産物が別の反応の産物をプライミングする(米国特許第5,965,408号を参照されたい)。バリアントを作製するさらにもう1つの方法は、セクシャル(sexual)PCR突然変異誘発である。セクシャルPCR突然変異誘発では、DNA分子のランダム断片化の結果として、異なってはいるが類縁性の高いDNA配列のDNA分子間で、配列相同性に基づき、強制的な相同組換えがインビトロで起こる。これに続いて、PCR反応におけるプライマー伸長により、交差組換え(crossover)の固定が行われる。セクシャルPCR突然変異誘発は、当技術分野で公知の刊行物に記載されている(例えば、Stemmer, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 91: 10747-10751を参照されたい)。バリアントを、インビボ突然変異誘発によって作製することもできる。いくつかの態様においては、DNA修復経路の1つまたは複数に突然変異を保持する大腸菌株などの細菌株において配列を増幅させることにより、核酸配列中にランダム突然変異を生じさせる。そのようなミューテーター(mutator)菌株は、野生型菌株よりも高いランダム突然変異率を有する。これらの菌株の1つでDNA配列(例えばAARポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)を増幅させることにより、最終的には、DNA内にランダム突然変異が生じることになる。インビボ突然変異誘発における使用に適したミューテーター菌株は、当技術分野の刊行物に記載されている(例えば、国際特許出願公開WO 91/16427を参照されたい)。また、バリアントを、カセット突然変異誘発を用いて作製することもできる。カセット突然変異誘発では、二本鎖DNA分子の小さな領域を、生来の配列とは異なる合成オリゴヌクレオチドカセットで置き換える。オリゴヌクレオチドは、多くの場合、完全および/または部分的にランダム化された生来の配列を含有する。また、リカーシブ・アンサンブル(recursive ensemble)突然変異誘発を、バリアントを作製するために用いることもできる。リカーシブ・アンサンブル突然変異誘発は、表現型が関連している突然変異体の多様な集団(メンバーのアミノ酸配列が異なっている)を作製するために開発されたタンパク質工学(すなわち、タンパク質突然変異誘発)のためのアルゴリズムである。この方法では、フィードバック機構を用いて、連続した複数回のコンビナトリアルカセット突然変異誘発を制御する(例えば、Arkin et al, (1992) Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 89: 7811-7815を参照されたい)。いくつかの態様においては、エクスポネンシャル・アンサンブル(exponential ensemble)突然変異誘発を用いてバリアントが作製される。エクスポネンシャル・アンサンブル突然変異誘発は、ユニークかつ機能的な突然変異体のパーセンテージが高いコンビナトリアルライブラリーを作製するための工程であり、この工程では、少数の残基群を並行してランダム化することにより、変更された各位置で機能的タンパク質をもたらすアミノ酸を同定する(例えば、Delegrave et al. (1993) Biotech. Res, 11: 1548-1552を参照されたい)。いくつかの態様においては、シャフリング(shuffling)手順を用いてバリアントが作製され、この手順では、別個のポリペプチドをコードする複数の核酸の部分を融合させて、キメラポリペプチドをコードするキメラ核酸配列を作製する(例えば、米国特許第5,965,408号および第5,939,250号に記載されている)。
脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールの産生
生来の宿主細胞または組換え宿主細胞は、脂肪アルデヒド生合成活性を有する酵素(本明細書では、脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドもしくは脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドまたは酵素とも称される)をコードするポリヌクレオチドを含みうる。脂肪アルデヒドは、脂肪アルデヒド生合成酵素が宿主細胞において発現または過剰発現された時に産生される。組換え宿主細胞におけるアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドの発現または過剰発現は、組換え宿主細胞による脂肪アルデヒドの産生をもたらしうる。1つの態様において、組換え宿主細胞は脂肪アルデヒドを産生する。いくつかの態様において、組換え宿主細胞によって産生された脂肪アルデヒドは脂肪アルコールに変換される。いくつかの態様においては、生来(内因性)の脂肪アルデヒド生合成ポリペプチド、例えばアルデヒドレダクターゼなどが宿主細胞(例えば、大腸菌)に存在し、脂肪アルデヒドを脂肪アルコールに変換させるのに有効である。他の態様においては、生来(内因性)の脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドを過剰発現させる。さらなる他の態様においては、外因性脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドを組換え宿主細胞に導入して、発現または過剰発現させる。脂肪アルデヒドは、脂肪アルデヒド生合成ポリペプチド、例えばアシル-ACPレダクターゼ(AAR)活性を有するポリペプチドなどをコードするポリヌクレオチドを、組換え宿主細胞において発現または過剰発現させることによって産生されうる。組換え宿主細胞におけるAARの発現により、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールの産生がもたらされる(図4)。例示的なAARポリペプチドは、本明細書、ならびにPCT公開第WO2009/140695号および第WO/2009/140696号に記載されており、これらはいずれも参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
脂肪アルデヒドを含む組成物(脂肪アルデヒド組成物)は、宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アルデヒド生合成酵素、例えばAARを発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生される。脂肪アルデヒドを産生するように遺伝子操作された組換え宿主細胞は、典型的には、脂肪アルデヒドのいくつかを脂肪アルコールに変換すると考えられる。いくつかの態様において、脂肪アルデヒド組成物は脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールを含む。典型的には、脂肪アルデヒド組成物は、組換え宿主細胞の細胞外環境、すなわち細胞培養培地から回収される。いくつかの態様において、組換え宿主細胞は、脂肪アルコール生合成活性を有するポリペプチド(酵素)(本明細書では脂肪アルコール生合成ポリペプチドまたは脂肪アルコール生合成酵素とも称される)をコードするポリヌクレオチドを含み、脂肪アルコールが組換え宿主細胞によって産生される。脂肪アルコールを含む組成物(すなわち、脂肪アルコール組成物)は、組換え宿主細胞を、炭素源の存在下で、脂肪アルコール生合成酵素を発現させるのに有効な条件下で培養することによって産生されうる。組換え宿主細胞(例えば、大腸菌)に存在する生来(例えば、内因性)のアルデヒドレダクターゼは、脂肪アルデヒドを脂肪アルコールに変換すると考えられる。いくつかの態様において、宿主細胞に存在する生来(例えば、内因性)の脂肪アルデヒド生合成ポリペプチド、例えばアルデヒドレダクターゼなどは、脂肪アルデヒドを脂肪アルコールに変換するのに十分である。しかし、他の態様において、脂肪アルコールは、脂肪アルデヒドを脂肪アルコールに変換する脂肪アルコール生合成活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、組換え宿主細胞において発現または過剰発現させることによって産生される。例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ(本明細書ではアルデヒドレダクターゼ、例えば、EC 1.1.1.1とも称される)は、本開示の実施において有用な可能性がある。本明細書で用いる場合、アルコールデヒドロゲナーゼという用語は、脂肪アルデヒドから脂肪アルコールへの変換を触媒しうるポリペプチドを指す。当業者は、ある種のアルコールデヒドロゲナーゼは他の反応も触媒しうることを理解していると考えられ、これらの非特異的アルコールデヒドロゲナーゼもアルコールデヒドロゲナーゼという用語の範囲に含まれる。本開示に従って有用なアルコールデヒドロゲナーゼポリペプチドの例には、アシネトバクター属種M-1のAlrA(SEQ ID NO:52)またはAlrAホモログ、例えばAlrAadp1(SEQ ID NO:53)など、および内因性大腸菌アルコールデヒドロゲナーゼ、例えばYjgB(AAC77226)(SEQ ID NO:5)、DkgA(NP_417485)、DkgB(NP_414743)、YdjL(AAC74846)、YdjJ(NP_416288)、AdhP(NP_415995)、YhdH(NP_417719)、YahK(NP_414859)、YphC(AAC75598)、YqhD(446856)およびYbbO[AAC73595.1]などが非限定的に含まれる。そのほかの例は、国際特許出願公開第WO2007/136762号、WO2008/119082号およびWO2010/062480号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。ある態様において、脂肪アルコール生合成ポリペプチドはアルデヒドレダクターゼ活性またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性を有する(EC 1.1.1.1)。いくつかの態様においては、生来(例えば、内因性)の脂肪アルコール生合成ポリペプチドを過剰発現させ、他の態様においては、外因性脂肪アルコール生合成ポリペプチドを組換え宿主細胞に導入して、発現または過剰発現させる。
脂肪アルコールを、脂肪アシル-ACPおよび脂肪アシル-CoA中間体を利用するアシル-CoA依存性経路、ならびに脂肪アシル-ACP中間体を利用するが脂肪アシル-CoA中間体は利用しないアシル-CoA非依存性経路を介して産生させることもできる。特定の態様において、過剰発現される遺伝子によってコードされる酵素は、脂肪酸シンターゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪アシル-CoAシンターゼおよびアセチル-CoAカルボキシラーゼから選択される。脂肪アルコールはまた、さまざまなアシル-ACP分子またはアシル-CoA分子を対応する第一級アルコールに還元することのできる酵素により、天然にも作られる(参照により本明細書に明示的に組み入れられる、米国特許公開第20100105963号および第20110206630号、ならびに米国特許第8097439号も参照されたい)。脂肪アルコール組成物はしばしば、脂肪アルコールを、他の脂肪酸誘導体、例えば脂肪アルデヒドおよび/または脂肪酸とともに含む。典型的には、脂肪アルコール組成物は、組換え宿主細胞の細胞外環境、すなわち細胞培養培地から回収される。ある態様においては、あるポリペプチド、例えば、脂肪酸生合成に直接的または間接的に関与する酵素の発現が調節され(例えば、発現される、過剰発現される、または減弱される)、そのような調節により、関心対象の脂肪酸誘導体、例えば脂肪アルコールなどのより多くの収量、より高い力価、またはより高い生産性がもたらされる。酵素は、外因性のもしくは異種である脂肪酸生合成ポリヌクレオチド(例えば、親宿主細胞以外の生物から生じたポリペプチド、もしくは親微生物細胞にとって生来のものであるポリペプチドのバリアント)または内因性ポリペプチド(例えば、親宿主細胞にとって生来のものであるポリペプチド)によってコードされてよく、ここで内因性ポリペプチドは組換え宿主細胞において過剰発現される。表1は、特定の脂肪アルコール組成物の産生を促すために組換え宿主細胞において発現させることのできる例示的なタンパク質のリストを提示している。
(表1)遺伝子の名称
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組換え宿主細胞および細胞培養物
組換え宿主細胞による脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコール組成物の産生を増加させるための戦略には、産生宿主における、生来の脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコール生合成遺伝子の過剰発現ならびに異なる生物由来の外因性脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコール生合成遺伝子の発現による、脂肪酸生合成経路を経由する流れの増大が含まれる。本明細書で用いる場合、組換え宿主細胞または遺伝子操作された宿主細胞という用語は、例えば、新たな遺伝因子の人為的導入、および/または宿主細胞内に天然に存在する遺伝因子の人為的改変によって、対応する野生型宿主細胞に比して遺伝子構造が変更された宿主細胞を指す。そのような組換え宿主細胞の子孫も、これらの新たな、および/または改変された遺伝因子を含有する。本明細書に記載の本開示の諸局面の任意のものにおいて、宿主細胞は、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞(例えば、カンジダ属種(Candida sp.)などの糸状菌、またはサッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)などの出芽酵母)、藻類細胞および細菌細胞より選択されうる。1つの好ましい態様において、組換え宿主細胞は組換え微生物である。微生物細胞である宿主細胞の例には、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ザイモモナス属(Zymomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)、フザリウム属(Fusarium)、ヒューミコーラ属(Humicola)、リゾムコール属(Rhizomucor)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophtora)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、プレウロタス属(Pleurotus)、トラメテス属(Trametes)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ステノトロホモナス属(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、またはストレプトミセス属(Streptomyces)に由来する細胞が非限定的に含まれる。いくつかの態様において、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞である。他の態様において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌細胞である。他の態様において、宿主細胞は、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus lichenoformis)細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミルス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)細胞、またはバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。他の態様において、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニディランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)細胞、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞、またはムコール・ミエヘイ(Mucor michei)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞は、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞はアクチノミセス(Actinomycetes)細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。
他の態様において、宿主細胞は、真核植物細胞、藻類細胞、ラン色細菌細胞、緑色硫黄細菌細胞、緑色非硫黄細菌細胞、紅色硫黄細菌細胞、紅色非硫黄細菌細胞、好極限性細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、本明細書に記載された任意の種の遺伝子操作された細胞、または合成生物に由来する細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は、光依存性であるかまたは炭素を固定する。いくつかの態様において、いくつかの態様において、宿主細胞は独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の存在下などにおいて光独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の非存在下において従属栄養性または混合栄養性である。ある態様において、宿主細胞は、アラビドプシス・タリアナ、パニカム・ウィルガツム(Panicum virgatum)、ミスカンサス・ギガンテス(Miscanthus giganteus)、トウモロコシ(Zea mays)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcuse braunii)、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)、ドナリエナ・サリナ(Dunaliela salina)、シネココッカス属種PCC7002、シネココッカス属種PCC7942、シネコシスティス(Synechocystis)属種PCC 6803、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongates)BP-1、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・オウランティアカス(Chlorojlexus auranticus)、クロマチウム・ビノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリラム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palusris)、クロストリジウム・リュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridiumthermocellum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来する細胞である。
宿主細胞の遺伝子操作
いくつかの態様においては、ポリヌクレオチド(または遺伝子)配列が、ポリヌクレオチド配列と機能的に連結したプロモーターを含む組換えベクターにより、宿主細胞に与えられる。ある態様において、プロモーターは、発生段階調節性の、オルガネラ特異的な、組織特異的な、誘導性の、構成性の、または細胞特異的なプロモーターである。いくつかの態様において、組換えベクターは、ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた発現制御配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた選択マーカー;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたマーカー配列;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた精製部分;ポリヌクレオチド配列と機能的に結びついた分泌配列;およびポリヌクレオチド配列と機能的に結びついたターゲティング配列より選択される、少なくとも1つの配列を含む。本明細書に記載の発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列を、宿主細胞における該ポリヌクレオチド配列の発現に適した形態で含む。当業者には、発現ベクターの設計が、形質転換させようとする宿主細胞の選択、および所望のポリペプチドの発現レベルなどの要因に依存しうることが理解されるであろう。上述のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド、例えば融合ポリペプチドを産生させるために、本明細書に記載の発現ベクターは宿主細胞に導入することができる(前記)。原核生物、例えば大腸菌(E. coli)におけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、融合または非融合ポリペプチドのいずれかの発現を導く構成性または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中にコードされているポリペプチド、通常は組換えポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは、典型的には、組換えポリペプチドの発現を増大させること;組換えポリペプチドの溶解性を高めること;および、アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することによって組換えポリペプチドの精製を助けることを含む3つの目的の、1つまたは複数に役立つ。多くの場合、融合発現ベクターでは、融合部分と組換えポリペプチドの接合部にタンパク質分解切断部位が導入されている。これにより、融合ポリペプチドの精製後に、融合部分からの組換えポリペプチドの分離が可能になる。そのような酵素およびそれらのコグネイト認識配列の例には、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。例示的な融合発現ベクターには、pGEXベクター(Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, NJ;Smith et al. (1988) Gene 67: 31-40)、pMALベクター(New England Biolabs, Beverly, MA)、およびpRITSベクター(Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, N. J.)が含まれ、これらはそれぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えポリペプチドと融合させるものである。
誘導性の非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrcベクター(Amann et al. (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11dベクター(Studier et al., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990) 60-89)が含まれる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依拠する。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、共発現させたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依拠する。このウイルスポリメラーゼは、BL21(DE3)またはHMS174(DE3)などの宿主菌株により、lacUV 5プロモーターの転写制御下にあるT7 gn1遺伝子を保有する常在性λプロファージから供給される。原核細胞および真核細胞の両者に適した発現系は、当技術分野において周知である(例えば、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratoryを参照されたい)。誘導性の非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrcベクター(Amann et al. (1988) Gene, 69: 301-315)およびPET 11dベクター(Studier et al. (1990) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA, pp. 60-89)が含まれる。ある態様において、本開示のポリヌクレオチド配列は、バクテリオファージT5に由来するプロモーターと機能的に連結されている。1つの態様において、宿主細胞は酵母細胞である。この態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。ベクターは、外来性核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための、当技術分野で認知された種々の手法を介して原核細胞または真核細胞に導入することができる。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのために適した方法は、例えば、Sambrook et al.(前記)に見いだすことができる。細菌細胞の安定的な形質転換に関しては、(用いる発現ベクターおよび形質転換手法に応じて)特定の割合の細胞が発現ベクターを取り込んで複製することが知られている。これらの形質転換体の同定および選択のために、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を、関心対象の遺伝子とともに宿主細胞に導入することができる。選択マーカーには、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなど、ただしこれらには限定されない薬物に対する耐性を付与するものが含まれる。選択マーカーをコードする核酸は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするベクターと同一ベクター上で宿主細胞中に導入することができ、または別個のベクター上で導入することもできる。導入された核酸によって安定的に形質転換された細胞は、適切な選択薬の存在下における増殖によって同定することができる。本明細書に記載の、遺伝子操作された宿主細胞または組換え宿主細胞(前記)とは、脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体組成物を産生させるために用いられる細胞である。本明細書に記載の本開示の任意の局面において、宿主細胞は、真核植物、細菌、藻類、ラン色細菌、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、好極限性細菌、酵母、真菌、それらの遺伝子操作された生物、または合成生物より選択することができる。いくつかの態様において、宿主細胞は光依存性であるかまたは炭素を固定する。宿主細胞は独立栄養活性を有する。本明細書に述べるように、さまざまな宿主細胞を、脂肪酸誘導体を産生させるために用いることができる。
本開示の宿主細胞または微生物には、酵素活性に対する特定の突然変異の効率を検討するための変更を含むように遺伝子操作されたまたは改変された宿主菌株または宿主細胞(すなわち、組換え細胞または微生物)が含まれる。どの生来の酵素経路が元の宿主細胞に存在しているかに応じて、さまざまな任意選択的な遺伝的操作および変更を、1つの宿主細胞から別のものまでに互換的に用いることができる。1つの態様において、宿主菌株は、他の生合成ポリペプチド(例えば、酵素)と組合せてAARポリペプチドの発現を検討するために用いることができる。宿主菌株は、発酵の構成成分、炭素源(例えば、原料)、温度、圧力、培養物混入低減条件(reduced culture contamination condition)および酸素レベルを含む培養条件を非限定的に含む、具体的な変数を検討するためのいくつかの遺伝的変更を含みうる。
1つの態様において、宿主菌株は、任意でfadEおよびfhuAの欠失を含む。アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(FadE)は、脂肪酸を代謝するために重要な酵素である。これは、脂肪酸(アシル-CoA)の長鎖を分解してアセチル-CoA分子にする過程である、脂肪酸利用における第2の段階(β-酸化)を触媒する。より詳細には、細菌における脂肪酸分解のβ-酸化サイクルの第2の段階はアシル-CoAの2-エノイル-CoAへの酸化であり、これはFadEによって触媒される。大腸菌がFadEを欠いていると、それは脂肪酸を炭素源として増殖することができないが、酢酸塩によって増殖することはできる。あらゆる鎖長の脂肪酸を利用できないことは、fadE菌株について報告されている表現型、すなわち、FadE機能が破壊されているfadE突然変異体株とも合致している。すべてのアシル-CoAが脂肪酸誘導体へと効率的に変換されうるように、脂肪酸誘導体経路の中間体と考えられるアシル-CoAが細胞内に蓄積できることを確かめるために、fadE遺伝子を任意選択的にノックアウトまたは減弱させることができる。しかし、糖が炭素源として用いられる場合にはfadEの減弱化は任意選択的であり、これは、そのような条件下ではFadEの発現が抑制される可能性が高く、そのためFadEが少量でしか存在せず、エステルシンターゼまたはアシル-CoAを基質とする他の酵素と効率的に競合しないと考えられるためである。FadEは異化代謝産物抑制が原因となって抑制される。大腸菌および他の多くの微生物は脂肪酸よりも糖を消費することを選好するため、両方の供給源が利用可能である場合には、fadレギュロンを抑制することによって糖がまず消費される(D. Clark, J Bacteriol. (1981) 148(2):521-6)を参照)。その上で、糖の欠如および脂肪酸の存在によってFadE発現が誘導される。fadレギュロン(FadEを含む)によって発現されるタンパク質がアップレギュレートされ、アシル-CoAと効率的に競合すると考えられるため、β酸化経路に向かうアシル-CoA中間体は失われる可能性がある。したがって、fadE遺伝子をノックアウトまたは減弱させることが有益となりうる。ほとんどの炭素源は主として糖を基にしているため、FadEを減弱させることは任意選択的である。遺伝子fhuAは、大腸菌の外膜にあるエネルギー共役輸送体・受容体であるTonAタンパク質をコードする(V. Braun (2009) J Bacteriol. 191(11):3431-3436)。その欠失は任意選択的である。fhuA欠失により、細胞をファージ攻撃に対してより抵抗性にすることができ、これはある特定の発酵条件では有益となる可能性がある。したがって、発酵ラン中に混入が起こる可能性が低い宿主細胞では、fhuAを欠失させることが望ましいと考えられる。
もう1つの態様において、宿主菌株(前記)はまた、fadR、fabA、fabD、fabG、fabH、fabVおよび/またはfabFを含む、以下の遺伝子のうち1つまたは複数の任意選択的な過剰発現も含む。そのような遺伝子の例には、大腸菌由来のfadR、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)由来のfabA(NP_460041)、ネズミチフス菌由来のfabD(NP_460164)、ネズミチフス菌由来のfabG(NP_460165)、ネズミチフス菌由来のfabH(NP_460163)、コレラ菌(Vibrio cholera)由来のfabV(YP_001217283)、およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のfabF(NP_350156)がある。脂肪酸生合成における酵素および調節因子をコードするこれらの遺伝子のうち1つまたは複数の過剰発現を、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールを含む脂肪酸誘導体化合物の力価をさまざまな培養条件下で増大させるために役立てることができる。
もう1つの態様においては、脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体の生産のための宿主細胞として大腸菌株が用いられる。同様に、これらの宿主細胞も、fadR、fabA、fabD、fabG、fabH、fabVおよび/またはfabFを非限定的に含む、脂肪酸誘導体(例えば、脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、その他)などの脂肪酸誘導体化合物の力価をさまざまな培養条件下でさらに増大させるかまたは強化することのできる、1つまたは複数の生合成遺伝子(すなわち、脂肪酸生合成の酵素および調節因子をコードする遺伝子)の任意選択的な過剰発現を提供する。遺伝的変更の例には、大腸菌由来のfadR、ネズミチフス菌由来のfabA(NP_460041)、ネズミチフス菌由来のfabD(NP_460164)、ネズミチフス菌由来のfabG(NP_460165)、ネズミチフス菌由来のfabH(NP_460163)、コレラ菌由来のfabV(YP_001217283)、およびクロストリジウム・アセトブチリカム由来のfabF(NP_350156)が含まれる。いくつかの態様においては、さまざまな培養条件下での脂肪アルデヒドおよび/もしくは脂肪アルコールの過剰発現を検討する目的ならびに/または脂肪アルデヒドおよび/もしくは脂肪アルコールの産生をさらに強化する目的で、これらの生合成遺伝子を保有する合成オペロンを遺伝子操作により作製して、細胞において発現させることができる。そのような合成オペロンは、1つまたは複数の生合成遺伝子を含む。例えば、ifab138オペロンは、特定の培養条件について検討する目的で脂肪酸誘導体の過剰発現を促進するために用いることのできる、コレラ菌由来のfabV、ネズミチフス菌由来のfabH、ネズミチフス菌由来のfabD、ネズミチフス菌由来のfabG、ネズミチフス菌由来のfabAおよび/またはクロストリジウム・アセトブチリカム由来のfabFを含む任意選択的な脂肪酸生合成遺伝子を含む、遺伝子操作により作製されたオペロンである。そのような合成オペロンの1つの利点は、脂肪酸誘導体産生の速度をさらに高めることができるかまたは増強できることである。
いくつかの態様において、ACPおよび生合成酵素(例えば、TE、ES、CAR、AAR、ADC、その他)を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、脂肪アルコール、脂肪アルデヒド、脂肪エステル、脂肪アミン、二官能性脂肪酸誘導体、二酸(diacid)などの1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体の産生を増加させることのできる、ある特定の酵素活性を含む遺伝子をさらに発現すると考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる、脂肪酸の生産のためのチオエステラーゼ活性(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪エステルの生産のためのエステルシンターゼ活性(E.C. 2.3.1.75)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のための、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ活性(E.C. 1.1.1.1.)および/または脂肪アルコールアシル-CoAレダクターゼ(FAR)(E.C. 1.1.1.*)活性および/またはカルボン酸レダクターゼ(CAR)(EC 1.2.99.6)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルデヒドの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、アルカンおよびアルケンの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性およびデカルボニラーゼ(ADC)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のための、アシル-CoAレダクターゼ(E.C. 1.2.1.50)活性、アシル-CoAシンターゼ(FadD)(E.C. 2.3.1.86)活性およびチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪エステルの生産のための、エステルシンターゼ活性(E.C. 2.3.1.75)、アシル-CoAシンターゼ(FadD)(E.C. 2.3.1.86)活性およびチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞はケトンの生産のためのOleA活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、内部オレフィンの生産のためのOleBCD活性を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、脂肪アルコールの生産のためのアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(E.C. 1.2.1.80)活性およびアルコールデヒドロゲナーゼ活性(E.C. 1.1.1.1.)を有する。もう1つの態様において、宿主細胞は、末端オレフィンの生成のためのチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性およびデカルボキシラーゼ活性を有する。微生物および微生物細胞における酵素活性の発現は、米国特許第8,097,439号;第8,110,093号;第8,110,670号;第8,183,028号;第8,268,599号;第8,283,143号;第8,232,924号;第8,372,610号;および第8,530,221号に教示されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。他の態様において、ACPおよび他の生合成酵素を発現させるために用いられる宿主細胞または微生物は、脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールなどの1つまたは複数の特定の脂肪酸誘導体を生産する目的でアップレギュレートまたは過剰発現される、ある特定の生来の酵素活性を含むと考えられる。1つの態様において、宿主細胞は、チオエステラーゼ遺伝子を過剰発現させることによって増加させることのできる脂肪酸の生産のための生来のチオエステラーゼ(E.C. 3.1.2.*またはE.C. 3.1. 2.14またはE.C. 3.1.1.5)活性を有する。
本開示は、AARおよび他の生合成酵素(前記)をコードする遺伝子を発現する宿主菌株または微生物を含む。組換え宿主細胞は、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体、ならびにそれらの組成物および配合物を産生する。脂肪酸誘導体は典型的には、培養培地から回収され、かつ/または宿主細胞から単離される。1つの態様において、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体は培養培地から回収される(細胞外)。もう1つの態様において、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体は宿主細胞から単離される(細胞内)。もう1つの態様において、脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体は培養培地から回収され、かつ宿主細胞から単離される。宿主細胞によって産生された脂肪酸誘導体組成物は、特定の脂肪酸誘導体の分布、ならびに脂肪アルデヒドおよび脂肪アルコール組成物などの脂肪酸誘導体組成物の構成成分の鎖長および飽和度を決定する目的で、当技術分野において公知の方法、例えばGC-FIDを用いて分析することができる。
微生物(例えば、微生物細胞)として機能する宿主細胞の例には、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ザイモモナス属(Zymomonas)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポラ属(Neurospora)、フザリウム属(Fusarium)、ヒューミコーラ属(Humicola)、リゾムコール属(Rhizomucor)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophtora)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、プレウロタス属(Pleurotus)、トラメテス属(Trametes)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ステノトロホモナス属(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、またはストレプトミセス属(Streptomyces)に由来する細胞が非限定的に含まれる。いくつかの態様において、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞である。他の態様において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は大腸菌B細胞、大腸菌C細胞、大腸菌K細胞、または大腸菌W細胞である。他の態様において、他の態様において、宿主細胞は、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus lichenoformis)細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミルス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)細胞、またはバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニディランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)細胞、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞、またはムコール・ミエヘイ(Mucor michei)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞は、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)細胞である。さらに他の態様において、宿主細胞はアクチノミセス(Actinomycetes)細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。他の態様において、宿主細胞は、真核植物、藻類、ラン色細菌、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、好極限性細菌、酵母、真菌、それらの遺伝子操作された生物、または合成生物に由来する細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は、光依存性であるかまたは炭素を固定する。いくつかの態様において、宿主細胞は独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の存在下などにおいて光独立栄養活性を有する。いくつかの態様において、宿主細胞は、光の非存在下において従属栄養性または混合栄養性である。ある態様において、宿主細胞は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、パニカム・ウィルガツム(Panicum virgatum)、ミスカンサス・ギガンテス(Miscanthus giganteus)、トウモロコシ(Zea mays)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcuse braunii)、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)、ドナリエナ・サリナ(Dunaliela salina)、シネココッカス(Synechococcus)属種PCC 7002、シネココッカス属種PCC 7942、シネコシスティス(Synechocystis)属種PCC 6803、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongates)BP-1、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・オウランティアカス(Chlorojlexus auranticus)、クロマチウム・ビノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリラム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palusris)、クロストリジウム・リュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)に由来する細胞である。1つの特定の態様において、微生物細胞は、プロクロロコッカス属(Prochlorococcus)、シネココッカス属、シネコシスティス属、シアノセイス属(Cyanothece)、およびノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)を非限定的に含むシアノバクテリアに由来する。もう1つの態様において、微生物細胞は、シネココッカス・エロンガタスPCC7942、シネコシスティス属種PCC6803、およびシネココッカス属種PCC7001を非限定的に含む、特定のシアノバクテリア種に由来する。
組換え宿主細胞の培養および発酵
本明細書で用いる場合、発酵という用語は、組換え宿主細胞の培養物を炭素源を含む培地中で繁殖させることによる、宿主細胞による有機材料から目的物質への変換、例えば、組換え宿主細胞による炭素源から脂肪酸またはその誘導体への変換を広く指す。産生を許容する条件とは、宿主細胞が所望の生成物、例えば脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールを産生することを可能にする、あらゆる条件を指す。同様に、ベクターのポリヌクレオチド配列が発現される1つまたは複数の条件とは、宿主細胞がポリペプチドを合成することを可能にする、あらゆる条件を意味する。適した条件には、例えば、発酵条件が含まれる。発酵条件は、温度範囲、通気レベル、供給速度および培地組成を非限定的に含む多くのパラメーターを含みうる。これらの条件のそれぞれは、個々に、または組合されて、宿主細胞が増殖することを可能にする。発酵は、好気性、嫌気性、またはそれらの変形物(微好気性など)であってよい。例示的な培養培地には、ブロスまたはゲルが含まれる。一般に、培地は、宿主細胞によって直接代謝されうる炭素源を含む。加えて、炭素源の動態化(例えば、デンプンまたはセルロースの発酵性糖への解重合)およびその後の代謝を促進するために、培地中に酵素を用いることもできる。
小規模産生のためには、遺伝子操作された宿主細胞を、例えば約100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、1mL、5 mL、10 mL、15 mL、25 mL、50 mL、75 mL、100mL、500mL、1L、2L、5Lまたは10Lバッチ中で増殖させ、発酵させて、所望のポリヌクレオチド配列、例えばACPおよび/または生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。大規模産生のためには、遺伝子操作された宿主細胞を、約10L、100L、1000L、10,000L、100,000L、および1,000,000Lまたはそれ以上のバッチ中で増殖させ、発酵させて、所望のポリヌクレオチド配列を発現するように誘導することができる。または、大規模流加発酵を実施することもできる。本明細書に記載の脂肪酸誘導体組成物は、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境で見出され、培養培地から容易に単離することができる。脂肪アルデヒドまたは脂肪アルコールなどの脂肪酸誘導体は組換え宿主細胞によって分泌されても、組換え宿主細胞培養物の細胞外環境に輸送されても、細胞外環境に受動的に移行してもよい。脂肪酸誘導体は、当技術分野において公知の慣行的な方法を用いて、組換え宿主細胞培養物から単離される。
組換え宿主細胞由来の生成物
本明細書で用いる場合、現代炭素分率すなわちfMという用語は、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology;NIST)標準物質(Standard Reference Material;SRM)4990Bおよび4990C、それぞれシュウ酸標準品HOxIおよびHOxIIとして知られるもの、によって定義されるものと同じ意味を有する。基本的定義はHOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に相当する(西暦1950年を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木とおおむね等しい。現在の生体生物圏(植物材料)については、fMはおよそ1.1である。バイオ生成物(bioproduct)(例えば、本開示に従って産生された脂肪アルデヒドおよび/または脂肪アルコールを含む脂肪酸誘導体)は、生物的に産生された有機化合物を含む。特に、本明細書における脂肪酸生合成経路を用いて産生された脂肪酸誘導体は、これまで再生可能資源から産生されたことはなく、したがって新規な組成物である。これらの新たなバイオ生成物は、石油化学炭素由来の有機化合物とは、二核種炭素同位体フィンガープリント法(dual carbon-isotopic fingerprinting)または14C年代測定法(14C dating)に基づいて区別することができる。さらに、生物起源炭素の具体的な供給源(例えば、グルコースとグリセロールとの対比)を、二核種炭素同位体フィンガープリント法によって決定することもできる(例えば、米国特許第7,169,588号を参照されたい)。バイオ生成物を石油ベースの有機化合物と区別しうることは、これらの材料の流通下でのトラッキングに有益である。例えば、生物学に基づく炭素同位体プロファイルと石油ベースの炭素同位体プロファイルの両方を含む有機化合物または化学物質は、石油ベースの材料だけでできた有機化合物および化学物質と区別することができる。それ故に、本明細書におけるバイオ生成物は、そのユニークな炭素同位体プロファイルに基づいて、流通下で追跡またはトラッキングすることができる。バイオ生成物は、各試料中の安定炭素同位体比(13C/12C)を比較することによって、石油ベースの有機化合物と区別することができる。所与のバイオ生成物における13C/12C比は、二酸化炭素が固定された時点の大気中の二酸化炭素における13C/12C比の結果である。それはまた、厳密な代謝経路も反映する。地域的変動も起こる。石油、C3植物(広葉植物)、C4植物(イネ科草本)、および海洋炭酸塩はすべて、13C/12Cおよび対応するδ13C値の点で有意差を示す。さらに、C3植物およびC4植物の脂質物質は、代謝経路の結果として、同じ植物の炭水化物成分から誘導される材料とは異なる分析結果を示す。測定精度内で、13Cは同位体分別効果に起因する大きな変動を示し、バイオ生成物に関して最も重要なのは光合成機構である。植物における炭素同位体比の違いの主因は、植物における光合成炭素代謝の経路の違い、特に一次カルボキシル化(すなわち、大気CO2の初期固定)時に起こる反応の違いと密接に関連している。草木の二大クラスは、C3(またはカルビン・ベンソン)光合成回路が組み込まれているものと、C4(またはハッチ・スラック)光合成回路が組み込まれているものである。C3植物では、一次CO2固定またはカルボキシル化反応にリブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ酵素が関与し、最初の安定生成物は3-炭素化合物である。広葉樹および針葉樹などのC3植物は、温帯気候帯において優勢である。C4植物では、もう1つの酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼが関与するさらなるカルボキシル化反応が、一次カルボキシル化反応である。最初の安定炭素化合物は4-炭素酸であり、それが後に脱炭酸される。そのようにして放出されたCO2は、C3回路によって再び固定される。C4植物の例には、暖地型牧草、トウモロコシ、およびサトウキビがある。C4植物およびC3植物はいずれも、ある範囲の13C/12C同位体比を示すが、典型的な値は、C4植物については約-7〜約-13パーミル、C3植物については約-19〜約-27パーミルである(例えば、Stuiver et al. (1977) Radiocarbon 19:355を参照されたい)。石炭および石油は一般に後者の範囲に含まれる。13C測定尺度は、元はピーディー(Pee Dee)ベレムナイト(PDB)石灰石によって設定されたゼロ点によって定義されたものであり、ここでの値は、この材料からの千分の一偏位(parts per thousand deviations)で与えられる。δ13C値は、千分率(パーミル)で表されて‰と略記され、以下のように計算される。
δ13C(‰)=[(13C/12C)試料-(13C/12C)標準物質]/(13C/12C)標準物質×1000
PDB標準物質(reference material;RM)が枯渇したことから、IAEA、USGS、NIST、および他の選ばれた国際的同位体研究所の協同で、一連の代替RMが開発されている。PDBからのパーミル偏位の表記がδ13Cである。測定は、CO2に対して、高精度安定同位体比質量分析(high precision stable ratio mass spectrometry)(IRMS)により、質量44、45および46の分子イオンに関して行われる。本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生されたバイオ生成物を含み、これには例えば、脂肪酸誘導体生成物が含まれる。具体的には、バイオ生成物は、約-28もしくはそれ以上、約-27もしくはそれ以上、-20もしくはそれ以上、-18もしくはそれ以上、-15もしくはそれ以上、-13もしくはそれ以上、-10もしくはそれ以上、または-8もしくはそれ以上のδ13Cを有することができる。例えば、バイオ生成物は、約-30〜約-15、約-27〜約-19、約-25〜約-21、約-15〜約-5、約-13〜約-7、または約-13〜約-10のδ13Cを有することができる。別の場合には、バイオ生成物は、約-10、-11、-12、または-12.3のδ13Cを有することができる。本明細書における本開示に従って産生されたバイオ生成物は、各化合物における14Cの量を比較することによって、石油ベースの有機化合物と区別することもできる。14Cは5730年という核半減期を有するので、古い(older)炭素を含有する石油ベース燃料を、新しい(newer)炭素を含有するバイオ生成物と区別することができる(例えば、Currie, Source Apportionment of Atmospheric Particles, Characterization of Environmental Particles, J. Buffle and H. P. van Leeuwen, Eds., 1 of Vol.I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series (Lewis Publishers, Inc.) 3-74, (1992)を参照されたい)。放射性炭素年代測定法における基本的仮定は、大気中の14C濃度の不変性が生体における14Cの不変性をもたらすというものである。しかし、1950年以降の大気圏内核実験および1850年以降の化石燃料の燃焼により、14Cはもう1つの地球化学的時間特性(geochemical time characteristic)を獲得した。大気CO2における(したがって生体生物圏(living biosphere)における)その濃度は、1960年代中頃の核実験のピーク時にはおよそ2倍になった。それ以後は、7〜10年というおよその緩和「半減期」で、約1.2×10-12という定常状態宇宙線起源(大気)ベースライン同位対比(14C/12C)へと徐々に戻りつつある。この後者の半減期は文字通りに解釈してはならない;そうではなくて、核時代の幕開け以降の大気および生物圏14Cの変動を追跡するには、詳細な大気核投入/減衰関数(atomospheric nuclear input/decay function)を用いなければならない。近年の生物圏炭素の年代測定(annual dating)に裏づけを与えるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。14Cは加速器質量分析(AMS)によって測定することができ、その結果は現代炭素分率(fM)という単位で与えられる。fMは、米国国立標準技術研究所(NIST)標準物質(SRM)4990Bおよび4990Cによって定義される。本明細書で用いる場合、現代炭素分率すなわちfMは、米国国立標準技術研究所(NIST)標準物質(SRM)4990Bおよび4990C、それぞれシュウ酸標準品HOxIおよびHOxIIとして知られるものによって定義されるのと同じ意味を有する。基本的定義はHOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に相当する(西暦1950年を基準とする)。これは、減衰補正された産業革命前の木にほぼ等しい。現在の生体生物圏(植物材料)については、fMはおよそ1.1である。本明細書に記載の組成物は、少なくとも約1のfM 14Cを有しうるバイオ生成物を含む。例えば、バイオ生成物は、少なくとも約1.01のfM 14C、約1〜約1.5のfM 14C、約1.04〜約1.18のfM 14C、または約1.111〜約1.124のfM 14Cを有しうる。
14Cのもう1つの測定値は、現代炭素パーセント(percent of modern carbon)(pMC)として知られている。14C年代値を用いる考古学者または地質学者にとっては、西暦1950年が0年前(zero years old)に相当する。これはまた、100pMCも表す。熱核兵器のピークであった1963年に、大気中の爆弾由来炭素(bomb carbon)は、正常レベルのほぼ2倍に達した。その出現以降、大気圏内でのその分布は概算されており、西暦1950年以降に生きる植物および動物については100pMCを上回る値を示す。これは時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5pMC付近である。これは、トウモロコシなどの新鮮なバイオマス材料が107.5pMCに近い14C特性を与えると考えられることを意味する。石油ベースの化合物はpMC値がゼロであると考えられる。化石炭素を現代炭素と混合すると、現代pMC含有量の希釈が起こることになる。107.5pMCが現代バイオマス材料の14C含有量を表し、0pMCが石油ベース生成物の14C含有量を表すと仮定すると、その材料について測定されるpMC値は、この2種類の構成成分の比率を反映することになる。例えば、現代の大豆に100%由来する材料は、107.5pMCに近い放射性炭素特性を与えると考えられる。この材料を石油ベース生成物で50%希釈したとすると、放射性炭素特性は約54pMCになると考えられる。生物学に基づく炭素含有量は、100%を107.5pMCに割り当て、0%を0pMCに割り当てることによって導き出される。例えば、99pMCと測定される試料は、93%の生物学に基づく炭素含有量換算値を与えることになる。この値は、生物学に基づく炭素結果平均値と呼ばれ、分析される材料内のすべての構成成分が現代生物材料または石油ベース材料のいずれかに由来すると仮定している。本明細書に述べたような1つまたは複数の脂肪酸誘導体を含むバイオ生成物は、少なくとも約50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100のpMCを有することができる。別の場合には、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、約50〜約100;約60〜約100;約70〜約100;約80〜約100;約85〜約100;約87〜約98;または約90〜約95のpMCを有することができる。さらに別の場合には、本明細書に記載の脂肪酸誘導体は、約90、91、92、93、94、または94.2のpMCを有することができる。
脂肪アルデヒド組成物および脂肪アルコール組成物およびその使用
アルデヒドは、多くの特殊化学物質を産生するために用いられる。例えば、アルデヒドは、ポリマー、樹脂(例えば、BAKELITE樹脂)、染料、香味剤、可塑剤、香料、医薬品および他の化学物質を産生するために用いられ、溶媒、保存料、または消毒薬として用いられるものもある。加えて、ビタミンおよびホルモンなどのある種の天然化合物および合成化合物はアルデヒドであり、多くの糖類はアルデヒド基を含有する。脂肪アルデヒドは、化学的または酵素的還元によって脂肪アルコールに変換することができる。脂肪アルコールもまた、数多くの商業用途を有する。全世界での脂肪アルコールおよびその誘導体の年間売上高は10億米ドルを超える。短鎖(shorter chain)脂肪アルコールは、化粧品産業および食品産業において、乳化剤、軟化剤、および増粘剤として用いられる。脂肪アルコールは、その両親媒性ゆえに、パーソナルケア用品および家事用品、例えば洗剤などに役立つ非イオン界面活性剤として作用する。また、脂肪アルコールは、蝋、ゴム、樹脂、医薬軟膏およびローション、潤滑油添加物、繊維用帯電防止剤および表面処理剤、可塑剤、化粧品、工業用溶媒、ならびに脂肪用の溶媒として使用される。
本開示はまた、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生された脂肪アルコールを含む界面活性剤組成物または洗剤組成物も提供する。当業者は、界面活性剤組成物または洗剤組成物の意図する目的に応じて、異なる脂肪アルコールを産生して用いることができることを理解するであろう。例えば、本明細書に記載の脂肪アルコールが、界面活性剤または洗剤の産生のための原料として用いられる場合、当業者は、脂肪アルコール原料の特性が、産生される界面活性剤または洗剤組成物の特性に影響を及ぼすことを理解するであろう。それ故に、原料として用いるための特定の脂肪アルコールを産生することにより、界面活性剤または洗剤組成物の特性を選択することができる。本明細書に記載の脂肪アルコールベースの界面活性剤および/または洗剤組成物は、当技術分野において周知の他の界面活性剤および/または洗剤と混合することができる。いくつかの態様において、混合物は、重量比で少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲の脂肪アルコールを含むことができる。他の例では、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22炭素長である炭素鎖を含む脂肪アルコールを、重量比で少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または前記の値の任意の2つを境界とする範囲で含む界面活性剤または洗剤組成物を製造することができる。そのような界面活性剤または洗剤組成物は、植物油または石油などの非微生物源由来のマイクロエマルションまたは界面活性剤または洗剤などの少なくとも1つの添加物も含むことができ、それらは脂肪アルコールとの重量比で少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または前記の値のいずれか2つを境界とする範囲の量で存在しうる。
以下の具体的な実施例は、本開示を例証することを意図しており、添付の特許請求の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
プロトコールおよび方法
ライブラリーのスクリーニング
本明細書に記載されたプロトコールはすべて、培養物を増殖させるための96ウェルプレート‐master block‐2mLシステム(Greiner Bio-One, Monroe, NCまたはCorning, Amsterdam, Netherlands)、および培養ブロスから脂肪酸種を抽出するためのプレート(Costar, Inc.)に依拠したものである。以下に提示するプロトコールは、発酵条件の例である。代替的なプロトコールを用いて脂肪酸種の産生を評価することもできる。
32℃培養プロトコール(4NBT)
(96ウェルプレート中で増殖させたLB培養物からの)20μLのLB培養物を用いて400μLの2NBT培地(表2)に接種し、続いてそれを32℃で振盪しながらおよそ16時間インキュベートした。一晩播種物(overnight seed)の20μLを用いて、1g/Lまたは2g/L窒素のいずれかを含む400μLの4NBT(NBT_1NまたはNBT_2N)に接種した。32℃で6時間増殖させた後に、培養物をIPTG(最終濃度1mM)によって誘導した(表2)。培養物を続いて32℃で振盪しながら18時間インキュベートし、その後にそれらを、以下に詳述する標準的な抽出プロトコールに従って抽出した。
(表2)培地の名称および配合
Figure 0006063585
脂肪酸種の標準的な抽出プロトコール
抽出しようとする各ウェルに対して、40μLの1M HClを添加し、続いて300μLの酢酸ブチル(内部標準物質としての500mg/LのC11-FAMEとともに)を添加した。続いて96ウェルプレートを、プレートシーラー(ALPS-300ヒーター;Abgene, ThermoScientific, Rockford, IL)を用いて熱溶着させて、MIXMATE混合機(Eppendorf, Hamburg, Germany)を用いて2000rpmで15分間振盪させた。振盪の後に、プレートを室温にて4500rpmで10分間遠心処理して(Allegra X-15R、ローターSX4750A、Beckman Coulter, Brea, CA)、水層と有機層を分離した。有機層の50μLを96ウェルプレートに移し(ポリプロピレン製、Corning, Amsterdam, Netherlands)、その後に熱溶着させた上で、FALC_Broth法を用いるGC-FIDによって評価するまで-20℃で保存した。FALC_Broth法は以下の通りに実施した:1μLの試料を、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたAgilent 7890A GC Ultraデバイス(Agilent, Santa Clara, CA)の中の分析用カラム(DB-1、10m×180μm×膜厚0.2μM、JW 121-101Aより入手可能)に注入した。機器はC6〜C18脂肪アルコールを検出および定量するように設定した。上記に詳述したプロトコールは標準的な条件を表しており、分析結果を最適化するために必要に応じて改変してもよい。
脂肪酸種‐標準的なナイルレッドアッセイプロトコール
24時間の発酵後に、Greiner MicrolonFluotrac 200プレート中にて、70μLの発酵ブロスを、1.54μg/mLナイルレッドを含む水84.6%およびアセトニトリル15.4%の溶液130μLに添加してナイルレッドの最終アッセイ濃度を1μg/mLとし、ピペッティングによって混合することにより、ナイルレッドアッセイを行った。SpectraMax M2ユニットを用いて、励起540nmおよび発光630nmで相対蛍光単位を測定した。
エラープローンライブラリーの構築
エラープローンライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。1つの例では、ベクター中に制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター骨格を調製し、DNAインサートにおける多様性の創出は、ミスマッチヌクレオチドの組み入れを促進する条件下でのDNAテンプレートからのPCR増幅によって行った。1つのアプローチでは、ベクター骨格および多様性を有するDNAインサートのクローニングを、INFUSION Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を製造元のプロトコールに従って用いて行った。
飽和ライブラリーの構築
飽和ライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。1つの例では、ベクター中に制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター骨格を調製し、DNAインサートにおける多様性の創出は縮重プライマーを用いて行った。1つのアプローチでは、ベクター骨格および多様性を有するDNAインサートのクローニングを、INFUSION Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を製造元のプロトコールに従って用いて行った。
組合せライブラリーの構築
脂肪アルコール種の生産に関してさらに改良されたAARバリアントを得るために、有益であると同定された突然変異を組合せた。組合せライブラリーの調製には、当業者に公知の標準的な手法を用いた。1つの例では、ベクター中に制限エンドヌクレアーゼを用いてベクター骨格を調製し、DNAインサートにおける多様性の創出は、所望の突然変異を導入するためのプライマーを用いて行った。上記のように、1つのアプローチでは、ベクター骨格および多様性を有するDNAインサートのクローニングを、INFUSION Cloning System(Clontech Laboratories, Inc., Mountain View, CA)を製造元のプロトコールに従って用いて行った。組合せライブラリーは、トランスファーPCR(tPCR)プロトコール(Erijman et al. (2011) J. Structural Bio.175:171-177)を用いて作製することもできる。
ライブラリーのスクリーニング
エラープローンライブラリー、飽和ライブラリーまたは組合せライブラリーにおいてライブラリーの多様性を生じさせたら、それを上記の方法の1つを用いてスクリーニングした。2種類のヒットが同定された:(1)脂肪アルコールの量の増加(FALC力価);および/または(2)ドデカノール(C12)もしくはテトラデカノール(C14)などの中鎖FALCの量の増加。ヘキサデカノール(C16)およびオクタデカノール(C18)も同定された。各ヒット中のAARバリアントにおける突然変異を、当業者によって慣行的に使用されている標準的な手法を用いるシークエンシングによって同定した。表4、5および6は、飽和ライブラリーおよび組合せライブラリーにおいて有益であると同定された突然変異(ヒット)を列記している。
実施例1:アシルキャリアータンパク質(ACP)によって媒介される、脂肪酸合成経路を経由する流れの増大による、AAR_7942を用いた脂肪アルコール産生の改善
脂肪アシル-ACPを産物に変換させる目的で、大腸菌以外の供給源からの末端経路酵素を大腸菌において発現させる場合には、組換え経路酵素の大腸菌脂肪アシル-ACPに対する認識、親和性および/または代謝回転などに制約が存在する可能性がある。ACPはあらゆる生物においてある程度は保存されているものの、それらの一次配列は、所与の種の内部においてさえ大きく異なる場合がある。この仮説を検証するために、いくつかのシアノバクテリア由来のacp遺伝子を、pCL1920誘導体であるpLS9-185に存在するシネココッカス・エロンガタスPCC7942アシル-ACPレダクターゼ(AAR_7942)の下流にクローニングした(3〜5コピー/細胞)。加えて、広い基質特異性を有するホスホパンテテイニルトランスフェラーゼをコードする枯草菌由来のsfp遺伝子(アクセッション番号X63158;SEQ ID NO:11)も、各々のacp遺伝子の下流にクローニングした。この酵素は、活性のないapo-ACPから、活性のあるholo-ACPへの変換に関与する。構築したプラスミドは表3に記載されている。
(表3)S.エロンガタスPCC7942 AARの下流で、枯草菌sfpを伴うかまたは伴わずにシアノバクテリアACPを共発現するプラスミド
Figure 0006063585
*NA=核酸配列;AA=アミノ酸配列/ポリペプチド配列
acp遺伝子はすべて、INFUSION技術を用いて、合成RBSとともに、pLS9-185中のaar遺伝子のすぐ下流にあるEcoRI部位にクローニングした。EcoRI部位はacp遺伝子の下流に再構成した。同様に、枯草菌sfp遺伝子も、このEcoRI部位に合成RBSとともにINFUSIONクローニングした。プラスミドのすべてを大腸菌MG1655 DV2に形質転換導入した。これらの実験に関する対照は、AARのみの発現とした(pLS9-185)。
標準的な振盪フラスコ発酵実験による結果を図5に示している。プラスミドpDS171S、pDS172S、pDS168およびpDS169を含有する菌株では脂肪アルコール力価の有意な改善が観察され、このことはACP過剰発現が脂肪アルコール産生のために有益となりうることを実証している。理論に拘束されることは望まないが、ACP過剰発現は、異種末端経路酵素によるアシル-ACPの認識、親和性および/または代謝回転を補助することによって、脂肪アルコールの産生のために有益となりうるとの仮説が立てられる(ACPの供給源およびsfpの有無については表3(前記)参照)。
実施例2:アセチル-CoA カルボキシラーゼ(ACC)によって媒介される、脂肪酸合成を経由する流れの増大による、AAR_7942を用いた脂肪アルコール産生の改善
脂肪酸生合成のための主な前駆体はマロニル-CoAおよびアセチル-CoAである。これらの前駆体は大腸菌における脂肪酸生合成の速度を律することが示唆されている。本実施例では、合成アセチル-CoAカルボキシラーゼ、accのオペロン[コリネバクテリウム・グルタミクムaccDCAB+birA;SEQ ID NO:45または46、48および50。D+とも称する]を、シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のアシル-ACPレダクターゼ(AAR)(AAR_7942)とともに過剰発現させた。accD+オペロンは、プラスミドpLS9-185中のAAR_7942遺伝子の下流にクローニングした。その結果得られたプラスミドおよびpLS9-185対照プラスミドを、大腸菌DV2に形質転換導入した。菌株を、標準的な振盪フラスコプロトコールにて脂肪アルコール産生に関して評価した。図6に示されているように、合成コリネバクテリウム・グルタミクムaccオペロンの共発現は、脂肪アルコール産生の増加を導いた。
実施例3:AAR_7942をテンプレートとして用いて調製したエラープローンライブラリー、組合せライブラリーおよび限定的飽和ライブラリー
A.エラープローンライブラリー
シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のアシル-ACPレダクターゼ(AAR_7942)のエラープローンライブラリーを構築して、野生型AAR_7942を上回る改善を示すバリアントに関してスクリーニングした。エラープローンライブラリーを作製するために用いたプラスミドは、「pDS171S」と名付けられた(表3参照)。エラープローンライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。改善は、力価を改善すること、または、力価に有意な影響を及ぼすことなく、産生されるC10〜C14脂肪アルコールの比率を増加させることのいずれかとして分類した(結果は提示せず)。
B.組合せライブラリーおよび限定的飽和ライブラリー
当業者に公知の標準的な手法を用いて、位置17、18および19に基づく組合せライブラリーおよび飽和ライブラリーを調製した。組合せライブラリーおよび飽和ライブラリーにおいて検討した突然変異(表4Aおよび4B)は、当初、上記のAAR_7942のエラープローンライブラリー中に同定された。用いたプラスミド、菌株およびスクリーニングプロトコールは、実施例1に記載されたものと同じとした。エラープローンライブラリーのスクリーニングによる結果は、表4Aおよび4Bに示されている。表4Aは脂肪アルコール力価の増大を導いたAAR_7942突然変異を示しており、表4Bは、全体的な脂肪アルコール力価に有意な影響を及ぼすことなく、C14脂肪アルコールの比率の増加を導いた突然変異を示している。
(表4A)脂肪アルコール力価の改善と相関した、AAR 7942の組合せライブラリーおよび限定的飽和ライブラリーからの突然変異
Figure 0006063585
Figure 0006063585
(表4B)C14脂肪アルコール比率の増加と相関した、AAR_7942の組合せライブラリーおよび限定的飽和ライブラリーからの突然変異
Figure 0006063585
Figure 0006063585
Figure 0006063585
Figure 0006063585
実施例4:AAR(S18W)をテンプレートとして用いて調製した飽和ライブラリー
シネココッカス・エロンガタスPCC7942由来のアシル-ACPレダクターゼバリアント(「AAR(S18W)_7942」)の完全飽和ライブラリーを構築して、1回目のスクリーニング(実施例2および3)において有意に改善されたAARバリアントとして同定されたAAR(S18W)を上回る改善を示すバリアントに関してスクリーニングした。選択基準は、FALC力価の増大またはC12のパーセント比率の増加とした。遺伝子操作の取り組みは、高い力価を得ることを目的として、ACP過剰発現に対するAARの依存性を取り除くことに目標を絞った。理論に拘束されることは望まないが、ACPを過剰発現する菌株において観察された利点は、AARによる切断を受ける脂肪酸生合成中間体の濃度がより高いことに起因するとの仮説を立てた。ACP過剰発現を欠く菌株(FAS中間体の濃度がより低い)においてAARに関して構築された飽和ライブラリーおよび組合せライブラリーのスクリーニングを行うことにより、FAS中間体に対する親和性がより高いバリアントを選択しうると考えられる。
完全飽和ライブラリーを作製するために用いたプラスミドをpAAR-1と名付けた。これは、(S18W)バリアントをコードするAAR遺伝子の後に、アシネトバクター・バイリイ(Acinetobacter baylyi)由来のアルデヒドレダクターゼ遺伝子AlrA(SEQ ID NO:54)を保有する、pLS9-185の誘導体である。AlrAは、AARによって生成されるが、大腸菌の内因性脂肪アルデヒドレダクターゼによっては完全に還元されない脂肪アルデヒド中間体を完全に還元させるために追加した。この完全飽和ライブラリーは菌株Shu.002においてスクリーニングした。菌株Shu.002は、DV2 PT5-ifab138 PT5_ifadRである(以下の表7)。ifab138については、表10のSEQ ID NO:55を参照されたい。ライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。改善は、力価を改善すること、または、力価に有意な影響を及ぼすことなく、アシル-ACPレダクターゼによって生成されるC12脂肪アルコールの比率を増加させることのいずれかとして分類した。飽和ライブラリーのスクリーニングによる結果は、以下の表5に示されている。
(表5)脂肪アルコール力価の増大および/またはC12脂肪アルコール比率の増加と相関した、AAR(S18W)7942完全飽和ライブラリーからの突然変異
Figure 0006063585
Figure 0006063585
*4回の反復試験による平均
**FIOC=AAR(S18W)対照に比しての増加倍数
実施例5:AAR(S18W)をテンプレートとして用いて調製した組合せライブラリー
当業者に公知の標準的な手法を用いて、組合せライブラリーを調製した。組合せライブラリーにおいて検討した突然変異(表6A、6Bおよび6C)は当初、完全飽和ライブラリーにおいて同定された(実施例4)。組合せライブラリーは、実施例3に記載されたものと同じプラスミドを用いて構築し、同じ菌株においてスクリーニングした。ライブラリーを、上記の標準的なプロトコールの1つを用いてスクリーニングした。改善は、力価を改善すること、または、力価に有意な影響を及ぼすことなく、アシル-ACPレダクターゼによって生成されるC12脂肪アルコールの比率を増加させることのいずれかとして分類した。AAR組合せライブラリーのスクリーニングによる結果は、以下の表6A、6Bおよび6Cに示されている。
(表6A)脂肪アルコール力価の増大と相関した、第1のAAR(S18W)_7942組合せライブラリーからの突然変異
Figure 0006063585
*4回の反復試験による平均
**FIOC=(S18W)対照に比しての増加倍数
(表6B)脂肪アルコール力価の増大と相関した、第2のAAR(S18W)_7942組合せライブラリーからの突然変異
Figure 0006063585
*4回の反復試験による平均
**FIOC=(S18W)対照に比しての増加倍数
***A77A突然変異はgccのgcaへのサイレントコドン突然変異である
(表6C)C12脂肪アルコール比率の増加と相関した、AAR(S18W)_7942組合せライブラリーからの突然変異
Figure 0006063585
*4回の反復試験による平均
**FIOC=(S18W)対照に比しての増加倍数
実施例6:脂肪酸合成経路を経由する流れの増大‐iFabおよびiFadRによって媒介される、AARを用いる脂肪アルコール産生
本実施例では、いくつかのFABタンパク質を含む合成オペロン(ifab138)の過剰発現および/または脂肪酸代謝の調節因子であるFadRタンパク質(ifad)の過剰発現によって媒介される脂肪酸生合成経路を経由する流れの増大により、AARを用いる脂肪アルコール産生の改善が示された。iFAB138(SEQ ID NO:55)は、以下の順序で、コレラ菌由来のfabV、ネズミチフス菌由来のFabH、fabD、fabGおよびfabA、ならびにクロストリジウム・アセトブチリカム由来のFabFという遺伝子を含み、PlacUV5またはPT5プロモーターのいずれかの制御下にある合成オペロンとして組み込まれる。iFadRは、T5プロモーターによって制御される大腸菌由来のfadR遺伝子(SEQ ID NO:56)を含む。本実施例において評価した大腸菌菌株に存在する構成要素は、以下の表7に示されている。
(表7)iFAB138またはfadRを有する大腸菌株
Figure 0006063585
AAR(S18W)を、AARのコドン18によってセリンの代わりにトリプトファンが指定され、アシネトバクター・バイリイ由来のアルデヒドレダクターゼ遺伝子alrA(SEQ ID NO:54)が枯草菌由来のsfp遺伝子の下流にクローニングされている(pCL-AAR(S18W)+ACP-sfp)、プラスミドpDS171SのバリアントであるプラスミドpDS311から発現させた。pDS311を、菌株DV2、BD061、BD064およびShu002に形質転換導入した。これらの菌株を4NBT_2Nプロトコールにおいて評価した(上記参照)。図7に示されているように、脂肪アルコール産生は、ifab138およびifadRの存在の結果として有意に増加し、菌株Shu002が最も高い脂肪アルコール力価を示した。
実施例7:脂肪酸合成経路を経由する流れの増大を伴う菌株におけるAARバリアントの改善
本実施例では、組合せライブラリー由来のAARバリアントによって形質転換された組換え宿主細胞における脂肪アルコール産生の改善が、ifab138の過剰発現およびFadRタンパク質の過剰発現によって媒介される脂肪酸生合成経路を経由する流れの増大を伴う大腸菌株であるShu2(前記)において実証された。第2の組合せライブラリー由来の4種のAARバリアント(表6B)を評価した。これらのバリアントは以下の突然変異を保有する:Com2a:S18W、D24P、L31M、C63G、S113K、T154A、A281L;Comb2b:S18W、D16L、M21L、C63G、S113K、T154A、A281L;Com2c:S18W、L8A、M21L、C63G、A77A、S113K、T154A、A281L;Com2d:D24E、C63G、S113K、T154A、A281L(図8も参照されたい)。これらのバリアントを、プラスミドpJL104の骨格中にクローニングした。pJL104は、C.グルタミクム由来の合成accD+オペロン(前記の実施例2に記載した通り)を、pDS311中のalrA遺伝子の下流にクローニングすることによって作り出した。この結果得られたプラスミドを菌株Shu002に形質転換導入して、菌株を4NBT_1Nプロトコール(前記)において評価した。図8に示されているように、すべての菌株において脂肪アルコール産生の増大が観察された。AAR_7942のS18Wバリアントを発現する、プラスミドpDS311を保有する菌株BD064も、タンク発酵において評価した。図9に示されているように、この菌株は、脂肪アルコールを42g/Lの最大力価、収量12.6%(グルコースに関して)および0.62g/L/時の生産性で産生した。脂肪アルコールの鎖長分布は以下の通りであった:C8 1.2%、C10 7.7%、C12 26.9%、C14 44.7%、C16 16.0%およびC18 1.9%。飽和脂肪アルコールおよび不飽和脂肪アルコールの比率はそれぞれ72.6%および27.4%であった。
実施例8:MED4アシルアルデヒドレダクターゼ(AAR)活性の増大、およびC14脂肪アルコール産生に関する鎖長選択性の再分布
AARはシアノバクテリアのアルカン生合成のために必須な構成要素の1つであり、もう1つの必須な構成要素はアルデヒドデカルボニラーゼ(ADC)である。本発明者らは、プロクロロコッカス・マリヌスMED4_AARがMED4_ADCの非存在下では触媒活性がないこと、すなわち、MED4_AARのみを大腸菌において発現させた場合には産物が全く検出されず、MED4_AARとADCとを大腸菌において共発現させた場合に検出される唯一の産物はアルカンであることを発見した。本発明者らはまた、MED4_AARを大腸菌において、ヒスチジン156がアルギニンによって置き換えられたMED4_ADCの見かけ上触媒活性のないバリアント(後にMED4_ADC(H165R)と称されることになった)と共発現させた場合には、脂肪アルコールが検出され、アルカンは全く検出されないことも発見した(図10参照)。このデータから、MED4_AARが触媒活性を有するためには、MED4_ADCとの物理的相互作用を必要とすることが結論づけられた。本発明者らはこの系を、FALC生産を目的とする、活性増大および/または改変された基質特異性を有するMED4_AARバリアントを同定するために用いた。
MED4_ADC(H156R)を、MED4_AARの完全飽和ライブラリーと一緒に発現させた。MED4_AAR飽和ライブラリーをプラスミドpCL1920誘導体(pLS9-195)中に調製し、プラスミドpGLAK-043(これはADC遺伝子にH156R突然変異を保有するプラスミドpACYC-Ptrc-MED4_ADCである)を担持する生産菌株に導入した。クローンの誘導を行い、AARバリアントを、野生型AAR酵素よりも多くの脂肪アルコールの産生、または改変された鎖長プロフィール、例えば、C14脂肪アルコールの比率の増加を伴う脂肪アルコールを産生する能力に基づいて選択した。選択したクローンを、続いて実証試験において再検査した。一次発酵および二次発酵を通じて一貫したFALC力価を示したすべてのバリアントを再増殖させ、プラスミドDNAを単離し、配列を決定した上で、さらなる検査のために親生産菌株に再導入した。これらの新たな形質転換体を、続いて別の確認用発酵および分析に供した。以下の表8は、最も高いFALC力価を生じた16種のAARバリアント(上から下に活性が高い順序とした)による代表的なデータを示している。バリアントは野生型に比して1.4倍〜2.2倍の範囲であった。これらのバリアントは定向進化手法を用いてMED4_AAR活性を増大させうる能力を示しており、その上、さらなる改良のための基盤ともなる。
(表8)野生型(WT)MED4に比してのMED4 AAR突然変異体のFALC生産性
Figure 0006063585
*最後の2つのアミノ酸が失われた短縮型バリアント
このデータセットを、改変された鎖長プロフィールを呈するAARバリアントに関してもスキャンした。野生型AARによって産生される最も頻度の高い種はC16の鎖長を有する。関心対象となるのは、C16よりも短い鎖長を有するFALC種の割合の増加である。C14 FALCの数量がおよそ3倍という増加を示した2つのバリアントクローンが同定された(図10)。これらのクローンのシークエンシングにより、それらは同じヌクレオチドコドン配列を有する同一のD61E突然変異体であることが明らかになった。このD61EバリアントのプラスミドDNAを、H156R ADCを含有する親菌株に再導入した。その結果、組換え宿主細胞におけるAARのD61Eバリアントの発現により、FALC種の鎖長分布はより短い炭素鎖の方向に推移することが示された。以下の表9は、MED4_AARのD61Eバリアントを発現する組換え宿主細胞によって産生されたFALC鎖長分布を、野生型(WT)MED4_AAR、および鎖長の改変された産物を産生しないMED4_AARのV346Pバリアントと比較して例証している。
(表9)AARバリアントおよび野生型AARに関する鎖長分布
Figure 0006063585
ND=検出されず
*平均化による偏差に起因する1%の分散
MED4_ADC(H156R)バックグラウンドにおいて、これらのバリアントをさらに再び組合せて、改善に関してスクリーニングすることができる。MED4_AAR(D61E)バリアントおよびさらに突然変異させた子孫は、脂肪アルコールおよびアルカンの両方の平均鎖長を短縮させるために有用な可能性がある。MED4_AAR(D61E)バリアントは、MED4_AARの鎖長特異性に順応性があることを実証しており、さらなるタンパク質工学の取り組みを通じてこの活性をさらに改善しうる可能性を提示するものである。記載されたすべてのバリアントについてpLS9-195の子孫からシークエンシングを行ったところ、列記したアミノ酸置換に対応するコドン突然変異を含んでいた。
(表10)配列表に関連する名称
Figure 0006063585
Figure 0006063585
当業者には明らかであろうが、上記の諸局面および諸態様のさまざまな改変物および変形物を、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく作製することができる。そのような改変物および変形物は本開示の範囲内にある。

Claims (17)

  1. SEQ ID NO:57のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を含む、バリアントアシル-ACPレダクターゼ(AAR)ポリペプチドであって、アミノ酸位置18にS18Wである突然変異を含み、且つアシル-ACPから脂肪アルデヒドへの変換を触媒する、AARポリペプチド。
  2. 組換え宿主細胞におけるバリアントAARポリペプチドの発現が、対応する野生型宿主細胞における野生型AARポリペプチドの発現によって産生される力価と比較して、より高い力価の脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物をもたらす、請求項1記載のバリアントAARポリペプチド。
  3. 脂肪アルコール組成物が、C12またはC14脂肪アルコール組成物である、請求項2記載のバリアントAARポリペプチド。
  4. アミノ酸8、16、21、24、31、34、35、43、50、63、86、112、113、116、118、120、135、148、153、154、155、157、159、168、172、187、188、191、209、210、211、236、277、281、283、285、291、324、328、335、337および338からなる群より選択されるアミノ酸位置に突然変異をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載のバリアントAARポリペプチド。
  5. 突然変異が、L8A、D16L、M21L、D24E、D24Y、D24V、D24P、L31V、L31M、W34F、W35F、D43E、A50Q、C63A、C63G、C63Y、S86G、A112R、S113K、Q116G、R118Q、T120S、A135S、T148C、T148E、T148V、I153P、T154A、Q155C、Q155L、T157V、A159V、I168V、C172L、T187V、T188H、T188V、Q191A、L209R、E210Y、A211W、T236C、Q277V、A281L、E283G、E283S、A285V、M291V、A324T、A328S、Q335N、L337VおよびL338Wからなる群より選択される、請求項4記載のバリアントAARポリペプチド。
  6. M21L突然変異、C63GA突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、A281L突然変異、またはL8A突然変異を含む、請求項5記載のバリアントAARポリペプチド。
  7. (a)M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異
    (b)L8A突然変異、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異
    (c)D16L突然変異、M21L突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異
    (d)L8A突然変異、D24V突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、Q155L突然変異、およびA281L突然変異
    (e)D24P突然変異、L31M突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異
    (f)L8A突然変異、D16L突然変異、D24V突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異または
    (g)D24E突然変異、C63G突然変異、S113K突然変異、T154A突然変異、およびA281L突然変異
    さらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載のバリアントAARポリペプチド。
  8. (a)SEQ ID NO:58のアミノ酸配列;
    (b)SEQ ID NO:59のアミノ酸配列;
    (c)SEQ ID NO:60のアミノ酸配列;
    (d)SEQ ID NO:61のアミノ酸配列;
    (e)SEQ ID NO:62のアミノ酸配列;
    (f)SEQ ID NO:63のアミノ酸配列;または
    (g)SEQ ID NO:64のアミノ酸配列
    を含む、請求項7記載のバリアントAARポリペプチド。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項記載のバリアントAARポリペプチドを発現する組換え宿主細胞。
  10. 炭素源を含有する培地中で、バリアントAARポリペプチドを発現させるのに有効な条件下で培養した時に、対応する野生型AARポリペプチドを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも10%上回る、少なくとも15%上回る、少なくとも20%上回る、少なくとも25%上回る、または少なくとも30%上回る力価の脂肪アルデヒド組成物または脂肪アルコール組成物を産生する、請求項9記載の組換え宿主細胞。
  11. 脂肪アルコール組成物が細胞から放出される、請求項10記載の組換え宿主細胞。
  12. 脂肪アルコール組成物が30g/L〜250g/Lの力価で産生される、請求項10または11記載の組換え宿主細胞。
  13. 請求項912のいずれか一項記載の組換え宿主細胞を含む細胞培養物。
  14. 脂肪アルコール組成物が、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、およびC18脂肪アルコールのうち1つまたは複数を含む、請求項13記載の細胞培養物。
  15. 脂肪アルコール組成物が、
    (a)C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、およびC18:1不飽和脂肪アルコールのうち1つまたは複数;
    (b)不飽和脂肪アルコール;
    (c)脂肪アルコールの還元末端からC7〜C8の間の炭素鎖の位置7に二重結合を有する脂肪アルコール;または
    (d)飽和脂肪アルコール
    を含む、請求項14記載の細胞培養物。
  16. 力価の増大した脂肪アルコール組成物を生産する方法であって、
    i.請求項9記載の宿主細胞を炭素源とともに培養する段階;および
    ii.脂肪アルコール組成物を採取する段階
    を含む方法。
  17. 脂肪アルコール組成物の力価が、野生型AARを発現する宿主細胞によって産生される脂肪アルコール組成物の力価を少なくとも20%〜30%上回る、請求項16記載の方法。
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