以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下に述べるように、本実施形態では、計測器の配置に基づく誤差と収集周期に基づく誤差の両方を考慮して、計測器の配置と収集周期を決定するための情報を生成する。ここで、計測器とは、電圧、電流、有効電力、無効電力といった電力系統上の電気量を測る装置である。
本実施形態では、後述のように、収集周期と計測器の数との組合せの候補を算出するための構成17と、計測器数に依存する第1の電圧誤差を計算する構成18と、収集周期に依存する第2の電圧誤差を計算する構成19と、電圧誤差の合計が最小となる計測器の配置および収集周期を決定する構成20を有する。
これにより本実施形態によれば、計測器の配置と収集周期の設定に関する決定を効果的に支援することができる。さらに、後述する実施例では、電力の安定供給を可能とする電力系統を、総コスト(導入コストと運用コストの和)が最小となるように設計支援することができる。本実施形態では配電に適用する場合を述べるが、これに限らず、送電に適用することもできる。
図1は、電力系統設備計画支援装置1を含むシステム全体を示す。電力系統について簡単に説明すると、変電所2から延びる線路3は、所定位置に設けられた複数の電柱4を介して需要家5に接続されている。需要家5は、電気的負荷51と、分散型電源52と、通信機能付き電力計53とを有する。電気的負荷51とは、例えば、冷蔵庫、空調機、電動モータなどの各種電気機器である。分散型電源52とは、例えば太陽光発電装置、風力発電装置、蓄電池などである。
複数の電柱4のうち選択された所定の電柱4には、電気的状態を計測して出力するための計測器6が設けられる。電力事業者などが運用する電力管理システム7は、通信ネットワークCN1を介して、計測器6から計測情報を取得する。さらに、電力管理システム7は、通信ネットワークCN2を介して、通信機能付き電力計53から、負荷51の電気的負荷量(以下、負荷)と分散型電源52の発電量の合算値を取得する。
電力系統設備計画支援装置1から出力する情報には、計測器6の配置と収集周期に関する情報が含まれている。ユーザは、電力系統設備計画支援装置1から出力される情報に基づいて、適切な場所に計測器6を配置する。図1に示す例では、電力系統設備計画支援装置1と電力管理システム7とは直接的には接続されていないが、後述する他の実施例では電力管理システム7から負荷・発電量に関する情報を取得できるようになっている。なお、ここでのユーザとは、電力系統設備計画支援装置1を使用するユーザであり、例えば電力管理システム7の管理者などが含まれる。
電力系統設備計画支援装置1の論理的構成を説明する。電力系統設備計画支援装置1は、例えば、潮流計算部16と、計測器数・収集周期組合せ計算部17と、計測器配置依存誤差計算部18と、収集周期依存誤差計算部19と、最適解計算部20とを含んで構成することができる。以下、電力系統設備計画支援装置1を計画支援装置1と略記する場合がある。計画支援装置1は、電力網の構成と、負荷・発電量と、通信設備条件と、計測器条件とを入力として、計測器の配置と収集周期とを出力する。
通信設備条件は、計測器6が利用する通信設備についての条件である。通信設備条件は、通信可能なエリアや通信容量等を規定する。通信設備条件の詳細は後述する。
計測器条件は、計測器6から取得する計測情報のデータサイズや、計測器6の配置先を探索する際に考慮すべき制約を含む。制約には、設置する計測器の下限値および上限値がある。計測器条件の詳細は後述する。
潮流計算部16は、電力網の構成と、負荷・発電量と、を入力として、各時刻における電力網の各地点での電気的状態を計算する機能である。電気的状態とは、例えば電圧、電流、有効電力、無効電力などの電気量である。潮流計算部16は、例えば特許文献2に示す方法で、潮流を計算することができる。
計測器数・収集周期組合せ計算部17は、通信設備条件と、計測器条件と、を入力として、電力網上に配置する計測器の数と、計測器の情報を収集する周期(収集周期)と、の組合せを計算する機能である。計測器数・収集周期組合せ計算部17は、「組合せパターン計算部」の一例である。計測器数・収集周期組合せ計算部17が実施する処理は、図16で後述する。
計測器配置依存誤差計算部18は、潮流計算部16が計算した結果と、計測器数・収集周期組合せ計算部17が計算した結果と、に基づいて、計測器の配置に依存して変わる誤差を計算する機能である。計測器配置依存誤差計算部18は、「第1誤差計算部」の一例であり、計測器数ごとに誤差が最小となる計測器の配置と、そのときの誤差とを計算する。計測器配置依存誤差計算部18が実施する処理は、図17で後述する。
収集周期依存誤差計算部19は、潮流計算部16が計算した結果と、計測器数・収集周期組合せ計算部17が計算した結果と、に基づいて、収集周期に依存して変わる誤差を計算する機能である。収集周期依存誤差計算部19は、「第2誤差計算部」の一例であり、収集周期ごとに誤差を計算する。
誤差は、図13に示すように、収集サーバである電力管理システム7がこの計測器から次に計測値を取得する時刻までに発生しうる電圧変化量、つまり、各収集周期における電圧変動幅を指す。図13は、短い収集周期T1と、長い収集周期T2とで、それぞれの電圧変動量が異なる様子を示している。管理者は、例えば1分周期や30分周期のように離散的な時間間隔で計測値を取得する。電力管理システム7は、収集間隔の間における電圧変動は検出できない。そこで、未検出幅の最大値を誤差として扱う。収集周期依存誤差計算部19が実施する処理は、図18で後述する。
最適解計算部20は、計測器配置依存誤差計算部18の計算結果と、収集周期依存誤差計算部19の計算結果とに基づいて、誤差の合計値(合計誤差)が最小となる、計測器の配置と収集周期とを決定する機能である。最適解計算部20は、「提案情報出力部」の例であり、誤差の合計値が最小となる計測器の配置および収集周期を含む情報をユーザに提示する。最適解計算部20が実施する処理は、図19で後述する。
図2は、計画支援装置1のハードウェア構成の例を示す。計画支援装置1は、例えば、マイクロプロセッサ(図中、CPU:Central Processing Unit)11と、メモリ12と、記憶装置13と、出力装置14と、入力装置15とを含む。
入力装置15は、ユーザが計画支援装置1に情報や指示などを入力するために用いる装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力装置、通信インタフェースなどから構成される。電力網の構成と、負荷・発電量と、通信設備条件と、計測器条件などは、入力装置15を介して計画支援装置1に入力される。電力網の構成などの情報は、ユーザが手動で入力することもできるし、着脱可能なメモリ装置から読み込むこともできるし、外部のデータベースから読み込むこともできる。
出力装置14は、計画支援装置1から情報を出力するための装置であり、例えば、ディスプレイ装置、表示用ライト、音声合成装置、プリンタ、通信インタフェースなどから構成される。出力装置14は、例えば、入力装置15で入力した情報、各コンピュータプログラムの出力する情報、各データベースのデータなどを画面に表示する。
出力装置14は、例えば、図20の画面を出力することで、計測器の配置先と収集周期とについてユーザに提案することができる。さらに、出力装置14は、図14および図15のグラフを画面に出力することで、計測器の配置先および収集周期を決定した根拠をユーザに示すことができる。
記憶装置13は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置であり、コンピュータプログラム131〜135とデータ136〜144などの情報を記憶する。
記憶装置13が格納するコンピュータプログラムには、潮流計算プログラム131と、計測器数・収集周期組合せ計算プログラム132と、計測器配置依存誤差計算プログラム133と、収集周期依存誤差計算プログラム134と、最適解計算プログラム135がある。各プログラムの詳細は後述する。CPU11が必要に応じて各プログラムをメモリ12に読み込んで実行することで、所定の機能が実現する。
記憶装置13が格納するデータには、電力網構成136と、負荷・発電量137と、通信設備条件138と、潮流計算結果139と、計測器数・収集周期組合せ140と、計測器配置依存誤差141と、収集周期依存誤差142と、合計誤差である誤差143と、計測器条件144とがある。各データの詳細は後述する。
潮流計算プログラム131は、上述した潮流計算部16を実現するためのコンピュータプログラムである。計測器数・収集周期組合せ計算プログラム132は、上述した計測器数・収集周期組合せ計算部17を実現するためのコンピュータプログラムである。計測器配置依存誤差計算プログラム133は、上述した計測器配置依存誤差計算部18を実現するためのコンピュータプログラムである。収集周期依存誤差計算プログラム134は、上述した収集周期依存誤差計算部19を実現するためのコンピュータプログラムである。最適解計算プログラム135は、上述した最適解計算部20を実現するためのコンピュータプログラムである。
図3は、電力系統としての電力網の構成例を示す。上述の通り、電力網は、変電所2と、電柱4と、図1に示した需要家5と、これら要素2、4、5を電気的に接続する線路3と含んでいる。需要家5は、負荷51と、分散型電源52と、電力計53を備える。
変電所2は、図示しない上位系統からの電圧を、図3に示す電力系統で使用する電圧に変換して、線路3に供給する。需要家5の負荷51は、分散型電源52で発電した電力を消費することもできるし、線路3から供給される電力を消費することもできる。
線路3には、需要家5の分散型電源52からの電力を供給することもできる。通常の電力の流れとは逆向きなので、分散型電源52から電力系統への電力供給は、逆潮流とも呼ばれる。分散型電源52で発電した電力のうち負荷51で消費しきれなかった電力を、電力系統に供給することができる。
図中、電柱4には、それぞれを識別するための電柱番号#nが付与されている。電柱番号から、電柱4の位置を特定できる。電柱4は、計測器6(図1参照)を取り付けるための支持部としても機能する。
計測器6で計測した情報は、有線または無線の通信設備を介して、電力系統設備計画支援装置1に送信される。無線式の通信設備として、例えば携帯電話通信網や無線LAN通信網のための無線通信局8を用いることができる。無線通信局8は、その通信可能エリアCN1Aに存在する計測器6と通信することができる。有線式の通信設備として、例えば光ファイバやメタルケーブルなどの通信網CN1Bを用いることができる。計画支援装置1は、無線通信網または有線通信網のいずれかまたは両方を用いて、電力系統に配置された各計測器6から計測情報を取得することができる。なお、無線通信網と有線通信網を特に区別しない場合、通信ネットワークCN1と呼ぶ。計測器6は、無線通信網または有線通信網のうち少なくともいずれか一方に接続されていればよい。
図4は、電力網構成136のテーブル構成例を示す。電力網構成136は、電力網の構成を管理するデータベースである。ユーザが電力網の構成情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1に入力することで、その構成情報が電力網構成テーブル136に格納される。
電力網構成136は、レコードのフィールドとして、例えば、親装置番号136aと、子装置番号136bと、線路抵抗136cと、線路インピーダンス136dと、を含んでいる。なお、以下のテーブル構成でも同様であるが、図示のテーブル構成は一例であり、図示したフィールド以外の他のフィールドを含んでもよい。
親装置番号136aには、電柱4同士の接続のうち、変電所2の側に存在する電柱4を一意に特定する番号が格納される。子装置番号136bには、電柱4同士の接続のうち、変電所2と反対側に存在する電柱4を一意に特定する番号が格納される。
線路抵抗136cには、親装置番号136aで特定される電柱4と子装置番号136bで特定される電柱4とを接続する電線の電気抵抗値が格納される。線路インピーダンス136dには、親装置番号136aで特定される電柱4と子装置番号136bで特定される電柱4とを接続する電線のインピーダンスが格納される。
図5は、負荷・発電量137のテーブル構成例を示す。負荷・発電量137は、各時刻における各電力需要家5の負荷51で消費する電力量(負荷量)と、各分散型電源52で発電する電力量(発電量)との合算値を管理するデータベースである。ユーザが負荷・発電量の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1に入力することで、その情報が負荷・発電量137に格納される。
負荷・発電量137は、レコードのフィールドとして、例えば時刻137aと、電柱番号137bと、有効電力137cと、無効電力137dと、を含む。
時刻137aには、時刻情報が格納される。電柱番号137bには、電柱4を一意に特定する番号が格納される。有効電力137cには、電柱番号137bで特定した電柱4に接続される需要家5の負荷量と発電量の合算値のうち、有効電力量が格納される。この有効電力の値は、時刻137aで特定される時刻における値である。以下の無効電力137dについても同様である。無効電力137dには、電柱番号137bで特定した電柱4に接続される需要家5の負荷量と発電量の合算値のうち、無効電力量が格納される。
図6は、通信設備条件138のテーブル構成例を示す。通信設備条件138は、通信可能エリアや通信容量等の、通信設備についての条件を管理するデータベースである。ユーザが通信設備条件の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1に入力することで、その情報が通信設備条件138に格納される。
通信設備条件138は、レコードのフィールドとして、例えば電柱番号138aと、通信容量138bとを含む。電柱番号138aには、電柱4を一意に特定する番号が格納される。通信容量138bには、電柱番号138aで特定される電柱4の位置で使用可能な通信設備の通信容量が格納される。
図7は、潮流計算結果139のテーブル構成例を示す。潮流計算結果139は、潮流計算部16が潮流計算した結果である電圧値を管理するデータベースである。潮流計算結果139は、レコードのフィールドとして、例えば時刻139aと、電柱番号139bと、電圧139cとを含む。
時刻139aには、時刻情報が格納される。電柱番号139bには、電柱4を一意に特定する番号が格納される。電圧139cには、時刻139aにおける、電柱番号139bで特定される電柱4の位置での電圧値が格納される。
図8は、計測器数・収集周期組合せ140のテーブル構成例を示す。計測器数・収集周期組合せ140は、計測器数・収集周期組合せ計算部17の計算結果を管理するデータベースである。計測器数・収集周期組合せ140は、レコードのフィールドとして、例えば計測器数140aと、収集周期140bとを含む。
計測器数140aには、電力網に配置する計測器6の数が格納される。収集周期140bには、計測器6から情報(計測情報)を収集する周期が格納される。
図9は、計測器配置依存誤差141のテーブル構成例を示す。計測器配置依存誤差141は、計測器配置依存誤差計算部18の計算結果を管理するデータベースである。計測器配置依存誤差141は、レコードのフィールドとして、例えば計測器数141aと、計測器配置141bと、誤差141cとを含む。
計測器数141aには、電力網に配置する計測器6の数が格納される。計測器配置141bには、計測器6の配置先である電柱4を一意に特定する番号が格納される。誤差141cには、計測器6を計測器配置141bに示すように配置した場合の、誤差の値が格納される。
図10は、収集周期依存誤差142のテーブル構成例を示す。収集周期依存誤差142は、収集周期依存誤差計算部19の計算した結果を管理するデータベースである。収集周期依存誤差142は、レコードのフィールドとして、例えば収集周期142aと、誤差142bとを含む。
収集周期142aには、計測器6から情報を収集する周期が格納される。誤差142bには、収集周期142aに設定した周期で計測器6から計測情報を収集したときの、誤差の値が格納される。
図11は、誤差143のテーブル構成例を示す。誤差143は、最適解計算部20の計算結果を管理するデータベースである。誤差143は、レコードのフィールドとして、例えば計測器数143aと、計測器配置143bと、収集周期143cと、誤差143dとを含む。
計測器数143aには、電力網に配置する計測器6の数が格納される。計測器配置143bには、計測器6を配置する電柱4を一意に特定する番号が格納される。収集周期143cには、計測器6の計測情報を収集する周期が格納される。誤差143dには、計測器配置143aに示す配置の場合の誤差の値と、収集周期143cの周期で計測器の情報を収集したときの誤差の値と、の合算値が格納される。計測器配置に基づく誤差を配置依存誤差または配置依存誤差と、収集周期に基づく誤差を収集周期依存誤差または収集周期依存誤差と呼ぶ。
図12は、計測器条件144のテーブル構成例を示す。計測器条件144は、計測器6から取得する計測情報のデータサイズ、配置先を探索する際の計測器数の下限値および上限値等の、計測器6に関する条件を管理するデータベースである。ユーザが計測器条件の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1に入力すると、その情報は計測器条件144に格納される。
計測器条件144は、レコードのフィールドとして、例えばデータサイズ144aと、下限数144bと、上限数144cとを含む。データサイズ144aには、計測器6から取得する計測情報のデータサイズが格納される。下限数144bには、計測器の配置を探索する際の、計測器数の下限値が格納される。すなわち、電力網には、下限値144bに示す値以上の数の計測器6を配置する必要がある。上限数144cには、計測器の配置を探索する際の計測器数の上限値が格納される。すなわち、電力網には、上限値144cに示す値以下の数の計測器6を配置する必要がある。
図13は、潮流計算結果の時系列の電圧値について、収集周期Tと電圧変動幅の関係を示した例である。グラフの横軸は時間を示し、縦軸は電圧値を示す。一般に、収集周期Tが長くなるほど電圧変動幅は大きくなる。
例えば、或る時刻t0を起点として、異なる長さの収集周期T1、T2について検討する(T2>T1)。短い収集周期T1では、ΔV1t0だけ電圧が変動する。長い収集周期T2では、ΔV2t0だけ電圧が変動する(ΔV2t0>ΔV1t0)。
図14は、計測器の配置に依存する誤差(a)と収集周期に依存する誤差(b)のグラフである。
図14(a)は、計測器配置依存誤差141の計測器数141aと誤差141cとの関係をグラフ化して示す。このグラフを出力装置14から画面表示することで、計測器数と誤差との関係をユーザに示すことができる。図に示すように、電力系統(電力網)に配置する計測器6の数を増やすほど、誤差は減少する傾向にある。
図14(b)は、収集周期依存誤差142の収集周期142aと、誤差142bと、の関係をグラフ化して示す。このグラフを出力装置14から画面表示することで、収集周期と誤差との関係をユーザに示すことができる。図に示すように、計測器6から計測情報を収集する周期を長くするほど、誤差は増大する傾向にある。
図15は、計測器配置依存誤差143の計測器数143aと収集周期143cと誤差143dとの関係をグラフ化して示す。このグラフを出力装置14から画面表示することで、計測器数と収集周期と誤差との関係をユーザに示すことができる。
図15のグラフを見ることで、ユーザは、計測器配置に依存する誤差と収集周期に依存する誤差との合計である合計誤差(図中、誤差(合計値)と示す)が最小となる、計測器数と収集周期とを容易に確認することができる。
図16は、計測器数・収集周期組合せ計算処理を示すフローチャートである。計測器数・収集周期組合せ計算部17は、CPU11が計測器数・収集周期組合せ計算プログラム132を実行することによって、具現化される。以下、動作の主体を組合せ計算部17とするが、組合せ計算プログラム132を動作の主体として説明することもできる。後述する他の実施例でも同様である。
組合せ計算部17は、処理開始の指示を受けると(S1700)、通信設備条件138から通信設備に関する条件を読み取り(S1701)、さらに計測器条件144から計測器に関する条件を読み取る(S1702)。
組合せ計算部17は、ステップS1701で取得した通信設備条件と、ステップS1702で取得した計測器条件とに基づいて、電力網上に配置する計測器の数と、計測器から計測情報を収集する周期と、の組合せを計算する(S1703)。
組合せ計算部17は、例えば下記の(式1)より、計測器数を下限数144bから上限数144cまで順番に変化させたときの、それぞれの収集周期の値を計算する。
収集周期=(計測器数)*(データサイズ)/(通信容量)・・・(式1)
例えば、ステップS1701で受信した各電柱番号の通信容量が100bpsであり、ステップS1702で受信した(データサイズ、下限数、上限数)の組合せが(500bit、1、5)である場合を計算する。この場合は、収集周期=5(=500/100)×(計測器数)となる。従って、(計測器数、収集周期)の組合せは、(1、5s)、(2、10s)、(3、15s)、(4、20s)、(5、25s)として計算される。
組合せ計算部17は、ステップS1703で計算した計測器数と収集周期の組合せを、計測器数・収集周期組合せ140に書き込んで保存する(S1704)。
組合せ計算部17は、計測器配置依存誤差計算部18と収集周期依存誤差計算部19へ、本処理が終了したことを送信する(S1705)。
図17は、計測器配置依存誤差計算処理を示すフローチャートである。計測器配置依存誤差計算部18は、CPU11が計測器配置依存誤差計算プログラム133を実行することによって、具現化される。
計測器配置依存誤差計算部18は、潮流計算部16と、計測器数・収集周期組合せ計算部17と、から処理完了を受信することを契機に、計測器配置依存誤差計算処理を開始する(S1800)。
計測器配置依存誤差計算部18は、電力網構成136から電力網の構成情報を読み取り(S1801)、さらに計測器数・収集周期組合せ140から計測器数のリストを読み取る(S1802)。
計測器配置依存誤差計算部18は、ステップS1802で読み取った計測器数リストに記載されている計測器数から1つの計測器数に着目する。最初に着目する計測器数は、下限値(または上限値)である。処理対象として注目する計測器数を対象計測器数と呼ぶことができる。
計測器配置依存誤差計算部18は、ステップS1803で着目した計測器数分の計測器を電力網上に配置する組合せを全て作成する(S1804)。例えば、電力網上に電柱4がn個存在し、ステップS1803で着目した計測器数がaである場合、計測器配置依存誤差計算部18は、nCa通りの組合せを作成する。
計測器配置依存誤差計算部18は、潮流計算結果139から読み取った潮流計算結果を利用して、ステップS1804で作成した計測器配置の組合せの一つずつについて、誤差を計算し、誤差が最小となる配置を決定する(S1805)。
例えば、特許文献4に示すような方法を用いれば、誤差を計算できる。即ち、計測器6を配置しない箇所の電気量を推定し、その推定値と、その箇所における潮流計算結果139の電圧値との差分を計算する。
計測器配置依存誤差計算部18は、ステップS1805で決定した計測器の配置箇所と誤差とを、計測器数とともに計測器配置依存誤差141に書き込んで保存する(S1806)。
計測器配置依存誤差計算部18は、処理すべき全ての計測器数について本処理を実施したか判定する(S1807)。未処理の計測器数が残っている場合(S1807:NO)、ステップS1803に戻る。全ての計測器数について処理を完了した場合(S1807:YES)、計測器配置依存誤差計算部18は、最適解計算部20に処理が終了したことを送信する(S1808)。
図18は、収集周期依存誤差計算処理を示すフローチャートである。収集周期依存誤差計算部19は、CPU11が収集周期依存誤差計算プログラム134を実行することによって、具現化される。
収集周期依存誤差計算部19は、潮流計算部16と計測器数・収集周期組合せ計算部17とから処理完了を受信することを契機に、収集周期依存誤差計算処理を開始する(S1900)。
収集周期依存誤差計算部19は、潮流計算結果139から潮流計算の結果を読み取り(S1901)、さらに計測器数・収集周期組合せ140から収集周期のリストを読み取る(S1902)。
収集周期依存誤差計算部19は、ステップS1902で読み取った収集周期リストから1つの収集周期に着目する(S1903)。
収集周期依存誤差計算部19は、ステップS1901で読み取った潮流計算結果である電圧値から、ステップS1903で着目した収集周期のときの誤差を計算する(S1904)。
収集周期依存誤差計算部19は、ステップS1901で読み取った各電柱番号における時系列の電圧値に対して、電柱番号ごとに下記の(式2)、(式3)を計算することで、収集周期内での最大電圧変動幅(Max(ΔV))を計算する。この最大電圧変動幅が収集周期に依存する誤差となる。
ΔVt0=Max(Vt)−Min(Vt)(t=t0〜t0+T)・・・(式2)
Max(ΔV)=Max(ΔVt) (t=t1〜t2)・・・(式3)
ただし、
T:収集周期
ΔVt0:時刻t0からt0+Tまでの時間における電圧変動幅(図13参照)
Max(Vt):時刻t0からt0+Tまでの時間における電圧最大値
Min(Vt):時刻t0からt0+Tまでの時間における電圧最小値
Max(ΔV):時刻t1からt2の時間における、収集周期がTのときの最大電圧変動幅
t1:潮流計算結果139の時刻139aの開始時間
t2:潮流計算結果139の時刻139bの終了時間
収集周期依存誤差計算部19は、ステップS1904で計算した各電柱番号における誤差のうち、最も大きい値を収集周期と共に収集周期依存誤差142に書き込んで保存する(S1905)。
収集周期依存誤差計算部19は、ステップS1902で読み取った収集周期リストに記載された全ての収集周期に対して本処理を実施したか判定する(S1906)。実施した場合はステップS1907に移動し(S1906:YES)、実施していない収集周期が存在する場合はステップS1903に移動する(S1906:NO)。
最後に、収集周期依存誤差計算部19は、最適解計算部20に処理が終了したことを送信する(S1907)。
図19は、最適解計算処理を示すフローチャートである。最適解計算部20は、CPU11が最適解計算プログラム135を実行することによって、具現化される。
最適解計算部20は、計測器配置依存誤差計算部18と収集周期依存誤差計算部19とから処理完了を受信することを契機に、最適解計算処理を開始する(S2000)。
最適解計算部20は、計測器数・収集周期組合せ140から、計測器数と収集周期の組合せを読み取る(S2001)。最適解計算部20は、計測器配置依存誤差141から、計測器数と計測器配置と誤差の組合せを読み取る(S2002)。さらに、最適解計算部20は、収集周期依存誤差142から、収集周期と誤差の組合せを読み取る(S2003)。
最適解計算部20は、計測器数および収集周期の組合せ(S2001)と、計測器数と計測器配置および誤差の組合せ(S2002)と、収集周期および誤差の組合せ(S2003)とに基づき、計測器数と計測器配置と収集周期および誤差の組合せを求めて、その組合せを誤差143に書き込んで保存する(S2004)。
最適解計算部20は、ステップS2004において、ステップS2001で読み取った計測器数と収集周期の組合せをキーに、ステップS2002で読み取った計測器数と計測器配置と誤差の組合せと、ステップS2003で読み取った収集周期と誤差の組合せと、を結合する。このとき、計測器配置に依存する誤差と収集周期に依存する誤差とは合算し、合計誤差とする。
例えば、最適解計算部20がステップS2001で受信した(計測器数、収集周期)の組合せが(1、5s)である場合を検討する。この場合、最適解計算部20は、ステップS2002で受信した(計測器数、計測器配置、誤差)の組合せが(1、#1、100V)のレコードと、ステップS2003で受信した(収集周期、誤差)の組合せが(5s、5V)のレコードとから、合計の誤差を求める。この結果、合計誤差の値は105Vとなる。
最適解計算部20は、ステップS2004で計算した、計測器数と計測器配置と収集周期および誤差(合計誤差)の関係から、合計誤差が最小となるときの計測器配置および収集周期を決定する(S2005)。そして、最適解計算部20は、本処理を終了する(S2006)。最適解計算部20の計算結果である、合計誤差が最小となる計測器配置および収集周期は、出力装置14を介してユーザに提供される。
図20は、電力系統設備計画支援装置1がユーザに提供する画面の例である。計画作成を支援する画面G1は、例えば収集周期表示部GP11と、計測器配置表示部GP12と、メニューGP13とを含む。
収集周期表示部GP11は、合計誤差が最小となる収集周期の値を表示する。計測器配置表示部GP12は、合計誤差が最小となる計測器6の配置を表示する。選択された電柱4には、計測器6の配置先として推薦されたことをユーザに伝えるための配置先表示GP121が対応づけられて表示される。図20の画面G1では、電柱番号#1で特定される電柱4に計測器6を配置し、かつ収集周期をTに設定すると、合計誤差を最小にできることが示されている。
メニューGP13は、ユーザが選択可能なメニューを表示する。メニューとしては、例えば、「保存」、「印刷」、「メール」、「上長の承認を得る」など種々のものを必要に応じて設定することができる。
このように構成される本実施例によれば、以下の効果を奏する。本実施例では、計測器の配置に応じて変化する誤差と、収集周期の長短に応じて変化する誤差との両方を考慮し、各誤差の合計値が最小となる計測器配置および収集周期を決定し、ユーザに提案する。従って、ユーザは、提案内容を参考にして、電力系統への設備計画を作成することができ、計画作成作業の効率が向上する。設備計画の作成が容易になる結果、電力系統の運用管理の作業性も向上できる。
本実施例では、適切な計測器配置を提案できるため、必要以上の計測器6を電力系統に配置する可能性を低減できる。従って、計測器6の導入コストが無駄に増大するのを抑制することができる。
本実施例では、適切な計測器配置および収集周期を決定してユーザに提案できるため、電力系統に通信可能な計測器6を配置して電気量を所定周期で収集し、計測器6の配置されていない箇所の電気量を推定して補間するシステムを効率的に設計できる。
本実施例では、合計誤差を低減できるため、電力系統の電気的状態の安定を維持することができ、高品質の電力供給が可能となる。さらに、合計誤差を低減できるため、電力系統の状態を維持するための制御機器の動作頻度を少なくできる。制御機器の動作頻度を少なくすることで、制御機器の寿命を長くすることができ、電力系統の運用管理コストを低減できる。
図21〜図24を用いて第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、上述した第1実施例の変形例に該当するため、第1実施例との相違を中心に説明する。
第1実施例の電力系統設備計画支援装置1は、既設の計測器6が存在しない条件下で、計測器配置と収集周期を決定する。これに対して、図21のシステム全体図に示す本実施例の電力系統設備計画支援装置1Aは、既設の計測器6(1)が存在する条件下で、新たに追加する計測器6(2)の配置と収集周期とを決定する。
図21では、計測器6(1)が電柱4に既に設けられている。本実施例では、新しく追加する計測器6(2)の配置先と収集周期を決定するために使用する情報を作成して、ユーザに提供する。本実施例の計画支援装置1Aは、第1実施例の計画支援装置1に比べて、計測器数・収集周期組合せ計算部17Aと計測器配置依存誤差計算部18Aの点で、主に相違する。
図22は、本実施例における計測器条件144Aのテーブル構成例を示す。計測器条件144Aは、新設の計測器6だけでなく、既設の計測器6も含めて管理するデータベースである。ユーザが計測器条件の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1に入力すると、その情報が計測器条件144Aに格納される。
計測器条件144Aは、レコードのフィールドとして、第1実施例の計測器条件144で述べたデータサイズ144Aa、下限数144Ab、上限数144Acに加えて、既設計測器144Adを含む。既設計測器144Adには、既設の計測器6が設置されている電柱4を一意に特定する番号が格納される。
図23は、本実施例における計測器数・収集周期組合せ計算処理を示すフローチャートである。本処理は、追加配置する計測器の数と収集周期と、の組合せを計算する。本処理のうちステップS1700およびS1701は、図16に示す同一符号のステップと同様であるため説明を省略する。
本実施例の組合せ計算部17Aは、ステップS1701に続いて、計測器条件144Aから計測器の条件を読み取る(S1702A)。組合せ計算部17Aは、ステップS1701で取得した通信設備条件とステップS1702Aで取得した計測器条件とを用いて、電力網上に配置する計測器の数と、計測器の情報を収集する周期と、の組合せを計算する(S1703A)。
組合せ計算部17Aは、例えば下記(式4)より、計測器数をステップS1702Aで受信した下限数144bから上限数144cまで順番に変化させたときの、収集周期の値を計算する。
収集周期=((計測器数)*(データサイズ)/(通信容量))+((既設計測器の数)*(データサイズ)/(通信容量))・・・(式4)
例えば、ステップS1701で受信した各電柱番号の通信容量が100bpsであり、ステップS1702Aで受信した(データサイズ、下限数、上限数、既設計測器)の組合せが(500bit、1、5、#20,#30)の場合を検討する。この場合、収集周期=5*(計測器数)+10となるので、(追加する計測器数、収集周期)の組合せは、(1、15s)、(2、20s)、(3、25s)、(4、30s)、(5、35s)として計算される。
ステップS1704およびS1705は、図16に示す同一符号のステップと同様のため、説明を省略する。
図24は、計測器配置依存誤差計算処理を示すフローチャートである。本処理は、新たに追加する計測器の配置に依存して変わる誤差を計算する。本処理のうちステップS1800〜S1801の処理は、図17に示す同一符号のステップと同様のため、説明を省略する。
計測器配置依存誤差計算部18Aは、計測器数・収集周期組合せ140から追加する計測器数のリストを読み取ると共に、計測器条件144Aから既設の計測器のリストを読み取る(S1802A)。ステップS1803は、図17に示す同一符号のステップと同様のため説明を省略する。
計測器配置依存誤差計算部18Aは、ステップS1803で着目した計測器数を電力網上に配置する組合せを作成する(S1804A)。
例えば、電力網上に計測器を配置していない電柱がm個存在しており、ステップS1803で着目した計測器数がaである場合、計測器配置依存誤差計算部18Aは、mCa通りの組合せを作成する。
計測器配置依存誤差計算部18Aは、潮流計算結果139から読み取った潮流計算結果を用いて、ステップS1804Aで作成した配置組合せの一つずつについて、誤差を計算し、誤差が最小となる配置を決定する(S1805A)。計測器配置依存誤差計算部18Aは、既設の計測器が存在する条件下で、ステップS1804Aで作成した組合せに従って計測器を追加配置した場合の誤差を計算する。ステップS1806〜S1808は、図17に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、既に計測器6が幾つか設けられている場合において、新たな計測器6の配置先および収集周期を決定し、ユーザに提供することができる。従って、本実施例では、電力系統の構成変更にも追従することができ、いわゆるスマートシティの進展にも対応することができ、使い勝手が向上する。
図25〜図34を用いて第3実施例を説明する。第1実施例の電力系統設備計画支援装置1は、通信可能エリアや通信容量等の通信設備条件を入力条件として、計測器の配置および収集周期を決定する。これに対して、本実施例の電力系統設備計画支援装置1Bは、通信設備に制約のない条件下において、計測器の配置と収集周期、さらに通信設備に求められる条件を決定してユーザに提供する。すなわち、計測器6だけでなく通信設備も新たに設置する場合に、本実施例が用いられる。
図25は、電力系統設備計画支援装置1Bを含むシステム全体を示す説明図である。計画支援装置1Bは、潮流計算部16と、計測器配置依存誤差計算部18Bと、収集周期依存誤差計算部19Bと、最適解計算部20Bとを含んでいる。本実施例の計画支援装置1Bは、第1実施例の計画支援装置1に比べて、計測器数・収集周期組合せ計算部17を有していない。
計測器配置依存誤差計算部18Bは、潮流計算部16が計算した結果と、入力される計測器条件とに基づいて、計測器条件で設定された下限数から上限数までの各計測器数について、誤差を計算する。計測器配置依存誤差計算部18Bが実施する処理は、図29で後述する。
収集周期依存誤差計算部19Bは、潮流計算部16の計算結果と計測器条件とに基づいて、計測器条件で設定された下限周期から上限周期までの各収集周期について、誤差を計算する。収集周期依存誤差計算部19Bが実施する処理は、図30で後述する。
最適解計算部20Bは、計測器配置依存誤差計算部18Bの計算結果と、収集周期依存誤差計算部19Bの計算結果とに基づいて、誤差と計測器数と収集周期との関係をグラフ化して表示する。これにより、最適解計算部20Bは、ユーザによる通信設備の設置に関する決定(例えば通信容量の決定など)を支援する。ユーザに提供する画面の例については、図32、図33、図34で後述する。最適解計算部20Bが実施する処理は、図31で後述する。
図26は、電力系統設備計画支援装置1Bのハードウェア構成例を示す。記憶装置13は、プログラムとして例えば、潮流計算プログラム131と、計測器配置依存誤差計算プログラム133Bと、収集周期依存誤差計算プログラム134Bと、最適解計算プログラム135Bと、を格納する。第1実施例に比べて、本実施例の計画支援装置1Bは、計測器数・収集周期組合せ計算プログラム132を有していない。
記憶装置13は、データとして例えば、電力網構成136と、負荷・発電量137と、潮流計算結果139と、計測器配置依存誤差141と、収集周期依存誤差142と、計測器条件144Bと、通信容量条件145と、を格納する。第1実施例に比べて、本実施例の計画支援装置1Bは、通信設備条件138と、計測器数・収集周期組合せ140と、誤差143とを有していない。その代わり本実施例の計画支援装置1Bは、第1施例の計画支援装置1に比べて、通信容量条件145を有している。
本実施例の電力系統設備計画支援装置1Bは、計測器6から計測情報を収集するために使用可能な通信設備が存在しないことを前提とするため、通信設備の存在を前提する構成は有していない。
図27は、本実施例における計測器条件144Bのテーブル構成例を示す。
計測器条件144Bは、第1実施例の計測器条件144で述べたデータサイズ144Ba、下限数144Bb、上限数144Bcに加えて、収集周期の下限値および上限値を管理する。ユーザが計測器条件の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1Bに入力すると、その情報が計測器条件144Bに格納される。
図示のように、計測器条件144Bは、レコードのフィールドとして、下限周期144Bdおよび上限周期144Beを新たに含んでいる。下限周期144Bdには、収集周期に依存して変わる誤差を計算するために使用する、周期の下限値が格納される。上限周期144Beには、収集周期に依存して変わる誤差を計算するために使用する周期の上限値が格納される。
図28は、本実施例における通信容量条件145のテーブル構成例を示す。通信容量条件145は、通信容量を決定するために使用する、通信容量の下限値および上限値を管理する。ユーザが通信容量条件の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1Bに入力すると、その情報が通信容量条件145に格納される。
計測器条件145は、レコードのフィールドとして、下限容量145aと上限容量145bを含む。下限容量145aには、通信容量の下限値が格納される。上限容量145bには、通信容量の上限値が格納される。
図29は、計測器配置依存誤差計算処理を示すフローチャートである。本処理のうちステップS1800およびS1801は、図17に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
計測器配置依存誤差計算部18Bは、計測器条件144Bから計測器数の下限および上限値を読み取る(S1802B)。ステップS1803〜S1808は、図17に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
図30は、収集周期依存誤差計算処理を示すフローチャートである。本処理のうちステップS1900〜S1901は、図18に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
収集周期依存誤差計算部19Bは、計測器条件144Bから、収集周期の下限および上限値を読み取る(S1902B)。ステップS1903〜S1907は、図18に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
図31は、最適解計算処理を示すフローチャートである。ステップS2000〜S2003は、図19に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。本処理では、図19に示すステップS2004に代えて、以下に述べるステップS2004Ba、S2004Bb、S2004Bcを実行する。また、本処理では、図19に示すステップS2005を有していない。
最適解計算部20Bは、ステップS2001で読み取った計測器数と収集周期の組合せと、ステップS2002で読み取った計測器数と誤差の組合せとに基づいて、誤差と計測器数と収集周期との関係をグラフ化し、画面表示する(S2004Ba)。画面の例を図32および図33に示す。
図32は、誤差(電圧誤差)と計測器数および収集周期の関係を示すグラフである。計測器数と誤差との関係を太い点線で示す。計測器の数が増えるほど誤差は減少する。収集周期と誤差との関係を太い実線で示す。収集周期が長くなるほど誤差も増加する。
図33は、図32に示す関係を計測器数と収集周期を二次元平面にとった場合のグラフである。図33は、いわゆるヒートマップのように、誤差の大きさを複数のランクに分けて、ランクごとに異なる濃さで表示している。
図33では、例えば電圧誤差10〜50Vをランク1に(10≦ランク1<50)、50〜100Vをランク2に(50≦ランク2<100)、100〜150Vをランク3に(100≦ランク3<150)、150〜200Vをランク4(150≦ランク4<200)に分けている。これに限らず、合計誤差を5つ以上のランクに分けてもよいし、3つ以下のランクに分けてもよい。
図31に戻る。最適解計算部18Bは、計測器条件144Bからデータサイズ144Baを読み取り、下記(式5)に示すように、収集周期と計測器数と通信容量との関係式を作成する(S2004Bb)。
収集周期=(計測器数)*(データサイズ)/(通信容量)・・・(式5)
最適解計算部20Bは、通信容量条件145から下限容量145aおよび上限容量145bを読み取って、それらの値をステップS2004Bbで作成した関係式(式5)に代入して、直線群を得る。最適解計算部20Bは、図34に示すように、その直線群をステップS200Baで表示した図33上に表示する(S2004Bc)。
図34を参照する。通信周期が上限値の場合を直線で示し、通信周期が下限値の場合を仮想線で示す。図34から、通信周期を長くすると合計の電圧誤差は大きくなり、通信周期を短くすると合計の電圧誤差は小さくなることがわかる。図34では、通信周期を上限値に設定して算出した直線と、通信周期を下限値に設定して算出した直線との2つのみ示しているが、上限値と下限値の間に存在する他の通信周期に設定した場合の直線も表示することができる。
図31に戻る。ユーザは、ステップS2004Bcで画面表示された結果から、誤差と通信周期との関係を容易に把握でき、その関係に基づいて通信設備の通信容量を決定することができる。そして、最適解計算部20Bは、ステップS2006において、本処理を終了する。
ユーザが通信容量を決定すると、第1実施例の最適解計算処理で述べたように、収集周期と計測器の配置とを決定できる。計測器の配置が決定すると、ユーザは、通信が必要なエリアを決定することができる。以上のように通信設備条件が決定する。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、通信設備に関する制約がない場合においても、計測器の配置および収集周期を決定してユーザに提供することができる。
図35〜図41を用いて第4実施例を説明する。第1実施例の電力系統設備計画支援装置1は、通信設備についての制約がある中で、誤差(合計誤差)を最小とする計測器の配置および収集周期を決定する。これに対して、本実施例の電力系統設備計画支援装置1Cは、通信設備の制約がある中で、電力を安定に供給できる電力系統を実現するための総コスト(導入コストと運用コストの和)が最小となる、計測器の配置および収集周期を決定する。
先に図38を参照する。図38は、コストと誤差の関係を示す。図38に示すように、誤差が大きくなるように電力系統の設備を設計すると、計測器数を減らすことができるため、点線で示す計測器コストは減少する。
ここで図40を参照する。図40は、電圧誤差と規定電圧値の関係を示す特性図である。縦軸は電圧値を示し、横軸は距離を示す。基準となる位置から離れる距離が長くなるほど、線路抵抗や線路インピーダンスにより、電圧は低下する。電力管理システム7の運用管理者は、予め設定された上限値と下限値の間に収まるように、各地点の電圧を規定範囲内に維持する。
図40(a)は、電圧誤差(合計誤差)が大きい場合を示し、図40(b)は、電圧誤差(合計誤差)が小さい場合を示す。図40(a)に示すように、大きな電圧誤差を許容する電力系統の場合、各地点での電圧値が規定範囲を逸脱する可能性が増大する。逸脱した電圧値を規定範囲に収めるためには、電圧調整器などの制御機器を操作する必要がある。制御機器の操作回数が増えるほど、制御機器の寿命は低下するため、制御機器に関するコストが増大する。
これに対し、図40(b)に示すように、電圧誤差を小さく抑える電力系統の場合、電力系統に配置する計測器の数を増やす必要があるが、各地点での電圧値が規定範囲を逸脱する可能性は小さくなる。従って、制御機器の操作回数が減って、制御機器の寿命が延びるため、制御機器のコストは低下する。その一方、計測器の数を増加するため、計測器のコストは増大する。
そこで、本実施例における電力系統設備計画支援装置1Cは、図38の関係を作成し、総コストが最小となる誤差を決定し、その誤差を実現するための計測器の配置および収集周期を決定する。
図35は、本実施例における電力系統設備計画支援装置1Cのハードウェア構成の例である。
記憶装置13は、プログラムとして、例えば潮流計算プログラム131と、計測器数・収集周期組合せ計算プログラム132と、計測器配置依存誤差計算プログラム133と、収集周期依存誤差計算プログラム134と、最適解計算プログラム135Cと、を格納している。
記憶装置13は、データとして、例えば電力網構成136と、負荷・発電量137と、通信設備条件138と、潮流計算結果139と、計測器数・収集周期組合せ140と、計測器配置依存誤差141と、収集周期依存誤差142と、誤差143と、計測器条件144と、製品別コスト146と、コスト評価147と、を格納している。
図36は、製品別コスト146のテーブル構成例を示す。製品別コスト146は、計測器および制御機器の1台あたりの導入コストと運用コストとを管理するためのデータベースである。ユーザが製品別コストの情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1Cに入力すると、その情報は製品別コスト146に格納される。
製品別コスト146は、レコードのフィールドとして、例えば製品名称146aと、導入コスト146bと、運用コスト146cとを含む。製品名称146aには、製品を一意に特定する名称が格納される。導入コスト146bには、製品名称146aで特定される製品の1台あたりの導入コストが格納される。運用コスト146cには、製品名称146aで特定される製品の1台あたりの運用コストが格納される。
図37は、コスト評価147のテーブル構成例を示す。コスト評価147は、最適解計算部20Cが計算した、誤差と計測器コストと制御機器コストと総コストとの関係を管理するデータベースである。
コスト評価147は、レコードのフィールドとして、例えば誤差147aと、計測器コスト147bと、制御機器コスト147cと、総コスト147dと、を含む。
誤差147aには、計測器の配置に依存して変わる誤差と、収集周期に依存して変わる誤差との合計値(合計誤差)が格納される。計測器コスト147bには、誤差147aに格納された値を実現するための計測器配置から導かれる、計測器に関するコストが格納される。制御機器コスト147cには、誤差147aに格納された値を実現する場合の、制御機器に関するコストが格納される。総コスト147dには、計測器コスト147bと制御機器コスト147cの合算値が格納される。
図38は、上述の通り、点線で示す計測器コスト147bと、一点鎖線で示す制御機器コスト147cと、太い実線で示す総コスト147dとの関係を示すグラフである。このグラフを出力装置14から画面表示することで、誤差とコストの関係をユーザに提示することができる。
図39は、最適解計算処理を示すフローチャートである。ステップS2000〜S2004は、図19に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
最適解計算部20Cは、製品別コスト146から取得した1台あたりの計測器のコスト情報に基づき、ステップS2004で計算した、計測器数と誤差との関係から、誤差ごとに計測器コストを計算する(S2005Ca)。
例えば、次のような計算により導入コストと運用コストを計算し、合算する。導入コストは、ステップS2004で計算した計測器数に、1台あたりの導入コスト146bの値をかけることで計算する。運用コストは、計測器数に1台あたりの運用コスト146cの値をかけることで計算する。
最適解計算部20Cは、製品別コスト146から取得した1台あたりの制御機器のコスト情報に基づき、誤差ごとに制御機器コストを計算する(S2005Cb)。例えば、次のような計算により導入コストと運用コストを計算し、合算する。
導入コストは、電力網に配置する制御機器の数に、1台あたりの導入コスト146bの値をかけることで計算する。制御機器の数は、例えば、特許文献3に示すような方法を用いて計算する。
運用コストは、図41に示すように、潮流計算結果139の電圧値に誤差を加えた合計値が事前に設定した規定範囲を逸脱した回数に、制御機器数と、1台あたりの運用コスト146cの値と、をかけることで計算する。
ここで図41を説明する。図41は、電力系統の或る地点において、潮流計算結果139(図中、実線)と、潮流計算結果139に誤差の半分の値を加算した場合(点線)と、潮流計算結果から誤差の半分の値を差し引いた場合(仮想線)との関係を比較して示す。或る地点における電圧値は、図41に示す点線と二点鎖線の範囲で変動すると予測できる。電圧の変動範囲が規定範囲を超えると、制御機器が作動する。
図39に戻る。最適解計算部20Cは、ステップS2005Caで計算した誤差ごとの計測器コストと、ステップS2005Cbで計算した誤差ごとの制御機器コストとの合算値と、をコスト評価147に書き込んで保存する(S2005Cc)。
最適解計算部20Cは、ステップS2005Ccで計算した、誤差と総コストの関係から、総コストが最小となるときの誤差を決定する(S2005Cd)。最適解計算部20Cは、ステップS2004で計算した、計測器数と計測器配置と収集周期と誤差との関係から、ステップS2005Cdで決定した誤差をキーに、計測器配置と収集周期を検索し取得する(S2005Ce)。
ステップS2005〜S2006は、図20に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。
このように構成される本実施例によれば、電力系統の総コストが最小となる、計測器配置および収集周期を決定してユーザに提示することができる。従って、低コストに電力系統を運用管理することができる。
図42を用いて第5実施例を説明する。本実施例では、電力系統設備計画支援装置1とユーザ端末10を通信ネットワークCN4を介して接続する。ユーザ端末10には、例えばCPU101、メモリ102、出力装置103、入力装置104、通信インタフェース105を備える。
ユーザは、例えば社内に設置されたユーザ端末10を用いて、電力系統設備計画支援装置1にアクセスする。これにより、ユーザは、電力網構成、負荷・発電量データ、通信設備条件、計測器条件といった各種情報を電力系統設備計画支援装置1に入力して登録することができる。また、ユーザは、電力系統設備計画支援装置1から、適切な計測器配置および収集周期に関する情報を得ることができる。
このように構成される本実施例によれば、通信ネットワークCN4上の電力系統設備計画支援装置1を、遠隔地の複数のユーザ端末10が利用することができる。
図43を用いて第6実施例を説明する。第1実施例の計画支援装置1は、ユーザの用意するデータ(電力網構成136、負荷・発電量137)に基づいて、ユーザの判断を支援するための情報を作成した。これに対し、本実施例では、少なくとも負荷・発電量137を、実際に稼働している電力管理システム7から取得して使用する。
本実施例の電力系統設備計画支援装置1Dは、通信ネットワークCN3を介して、電力管理システム7に接続されている。電力系統設備計画支援装置1Dは、電力管理システム7の管理下にある電力系統における負荷・発電量137を、通信ネットワークCN3を介して電力管理システム7から取得する。
なお、電力系統設備計画支援装置1Dは、電力網構成136についても電力管理システム7から取得してもよいし、別の手段で電力網構成136を取得してもよい。
このように構成される本実施例によれば、実際の負荷・発電量データに基づいて、計測器の配置および収集周期を決定することができる。従って、電力系統の最新状況に応じた提案情報をユーザに提供することができ、使い勝手が向上する。
図44〜図49に基づいて第7実施例を説明する。第1実施例では、計測器配置に依存する誤差と収集周期に依存する誤差の合計値が最小となる最適解を求める場合を説明した。これに代えて本実施例では、計測器配置に依存する誤差が所定の誤差目標値(第1誤差目標値)以下となり、かつ、収集周期に依存する誤差が他の所定の誤差目標値(第2誤差目標値)以下となる、最適解を検出してユーザに提供する。
図44に示すように、本実施例の電力系統設備計画支援装置1Eの最適解計算部20Eには、ユーザから2つの誤差目標値が入力される。一方の誤差目標値は計測器配置に依存する誤差についての目標値であり、他方の誤差目標値は収集周期に依存する誤差についての目標値である。ユーザが各誤差目標値の情報を入力装置15から電力系統設備計画支援装置1Eに入力すると、その情報は誤差目標値148に格納される。
図45に示すように、計画支援装置1Eの記憶部13は、各誤差目標値を管理するための誤差目標値148が記憶されている。図46に示すように、誤差目標値148は、計測器の配置に依存する誤差の目標値である配置依存誤差目標値148aと、収集周期に依存する誤差の目標値である収集周期依存誤差目標値148bとを管理する。
図47は、計測器数と収集周期と電圧誤差、および2つの誤差目標値を同時に満たす最適解との関係を示す説明図である。図47中、実線は計測器配置に依存する電圧誤差を示し、一点鎖線は収集周期に依存する電圧誤差を示す。本実施例では、上述の通り、2つの条件を満たす場合の計測器配置および収集周期を最適解として検出し、ユーザに提案する。もし2つの条件を同時に満たすことができない場合、計画支援装置1Eは、例えば「指定された誤差目標値を満たす計測器配置および収集周期は見つかりません。誤差目標値を変えて再度試して下さい」などのメッセージをユーザに提示する。
第1条件は、計測器配置に依存する電圧誤差が配置依存誤差目標値148a以下であることである。第2条件は、収集周期に依存する電圧誤差が収集周期依存誤差目標値148b以下であることである。これら2つの条件を同時に満たす範囲が、図47に示すように最適解として抽出される。
図48は、誤差を管理するテーブル143Eである。図示の例では、計測器数143Eaが「3」、その配置143Ebが「#1,#100,#50」、収集周期143Ecが「15」、配置依存誤差143Edが「65V」、収集周期依存誤差が「30V」である場合が、最適解であるとして検出されている。
図49は、最適解計算処理を示すフローチャートである。ステップS2000〜S2003およびS2006は、図19に示す同一符号のステップと同様であるため、説明を省略する。本処理では、図19に示すステップS2004に代えて、以下に述べるステップS2004Eを実行し、図19に示すステップS2005に代えて以下に述べるステップS2005Eを実行する。
最適解計算部20Eは、ステップS2001で読み取った計測器数と収集周期の組合せと、ステップS2002で読み取った計測器数と誤差の組合せと、ステップ2003で読み取った収集周期と誤差の組合せとに基づいて、誤差と計測器数と収集周期との関係をグラフ化し、画面表示する(S2004E)。
最適解計算部20Eは、計測器の配置に依存する誤差が配置依存誤差目標値148a以下であり、かつ、収集周期に依存する誤差が収集周期依存誤差目標値148b以下である範囲を最適解として検出し、その最適解を実現する計測器数および収集周期をユーザに提示する(S2005E)。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、計測器の配置に依存する誤差が配置依存誤差目標値148a以下であり、かつ、収集周期に依存する誤差が収集周期依存誤差目標値148b以下である最適解を求めることができる。これにより、ユーザは、2つの異なる種類の誤差についての条件を同時に満足できる計測器配置および収集周期の組合せを選択することができ、高精度の設備計画を作成することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
例えば、各実施例では、電圧の誤差を潮流計算結果の電圧値を用いて計算する場合を述べたが、これに代えて、潮流計算結果の別の電気量(電流、有効電力、無効電力)を用いて誤差を計算し、その誤差に基づいて計測機器配置および収集周期を決定してもよい。