JP6059647B2 - 有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED:Organic Light Emitting Device)及びその製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の有機エレクトロルミネッセンスデバイスの作製においては、耐湿性等の耐環境性が低いことから、外気等の周辺環境から保護することが重要となる。周辺環境から保護する方法としては、中空封止、充填封止、固体封止などで有機エレクトロルミネッセンスデバイスの有機層を被覆したり、さらに、乾燥剤、接着剤の化学成分や、きわめて長時間における水分の浸入から有機層を保護するために、封止前に有機層上にパッシベーション膜を形成したりすることがある。
例えば、特許文献1には、カソードセパレーターのオーバーハング部にパッシベーション膜が形成された構造の有機エレクトロルミネッセンスデバイスが開示され、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタのような回り込み性の良い成膜方法でパッシベーション膜を形成している。しかし、特許文献1の方法では、オーバーハング部の下部鋭角部などに緻密なパッシベーション膜を形成することは実際には困難である。特許文献2において記載されているようにオーバーハング部の下部のパッシベーション膜にはクラックなどの欠陥が発生しやすいからである。
パッシベーション膜の被覆性を改善する方法として、特許文献2では、有機層を成膜後にオーバーハング部を樹脂により平滑化する方法が開示されている。
特開平8−315981号公報 特開2013−97917号公報
しかしながら、特許文献2の方法では、有機層を成膜後にオーバーハング部を樹脂により平滑にしているので、有機層への影響を考慮すると使用する材料、製造工程、製造温度などに制約があり、汎用性に欠けるという問題がある。また、使用する材料等の制約により、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供することが困難な場合がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、汎用性を有する有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、
基板上に、陽極、有機発光層を含む有機層、及び、陰極を有する、少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子と、
前記基板上に設けられ、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より膜厚が厚く、隣接する電極を分離するオーバーハング構造を有する一条の構造体と、
前記構造体の段差底部に設けられ、当該段差底部における断面形状を、その曲率半径が0.3μm〜前記構造体の厚さ未満となるように形成する被覆部と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子、前記構造体、及び、前記被覆部を被覆するパッシベーション膜と、を備え、
前記陰極は前記構造体により分離されており、
前記構造体は、カソードセパレーターであり、オーバーハング部を有し、
前記被覆部は、ポジ型フォトレジスト材料である、ことを特徴とする。
本発明の第2の観点に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、
基板上に、陽極と、有機発光層を含む有機層、及び、陰極を有する、少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子を備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法であって、
前記基板上の所定位置に陽極を形成する陽極形成工程と、
前記基板上の所定位置に前記有機エレクトロルミネッセンス素子より膜厚が厚く、隣接する電極を分離するオーバーハング構造を有する一条の構造体を形成する構造体形成工程と、
前記構造体の段差底部に当該段差底部における断面形状を、その曲率半径が0.3μm〜前記構造体の厚さ未満となるように被覆部を形成する被覆部形成工程と、
前記陽極上に有機層、及び、陰極を成膜することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子、前記構造体、及び、前記被覆部を被覆するパッシベーション膜を形成するパッシベーション膜形成工程と、を備え、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程では、前記陰極が前記構造体により分離されており、
前記有機層は、正孔注入層と正孔輸送層との少なくとも一方を含み、
前記被覆部形成工程では、正孔注入材料と正孔輸送材料との少なくとも一方を成膜し加熱、流動させることにより、前記構造体の段差底部に前記被覆部を形成するとともに、正孔注入層と正孔輸送層との少なくとも一方を形成する、ことを特徴とする。
本発明の第3の観点に係る有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法は、
基板上に、陽極と、有機発光層を含む有機層、及び、陰極を有する、少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子を備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法であって、
前記基板上の所定位置に陽極を形成する陽極形成工程と、
前記基板上の所定位置に前記有機エレクトロルミネッセンス素子より膜厚が厚く、隣接する電極を分離するオーバーハング構造を有する一条の構造体を形成する構造体形成工程と、
前記構造体の段差底部に当該段差底部における断面形状を、その曲率半径が0.3μm〜前記構造体の厚さ未満となるように被覆部を形成する被覆部形成工程と、
前記陽極上に有機層、及び、陰極を成膜することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子、前記構造体、及び、前記被覆部を被覆するパッシベーション膜を形成するパッシベーション膜形成工程と、を備え、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程では、前記陰極が前記構造体により分離されており、
前記被覆部形成工程では、ポジレジストを塗布し、全面露光することにより、前記構造体の段差底部に被覆部を形成する、ことを特徴とする
本発明によれば、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンスデバイス及びその製造方法を提供することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイスのカソードセパレーター近傍部の一例を示す図である。 被覆部が形成されていない段差底部を説明するための図である。 被覆部が形成された段差底部を説明するための図である。 実施例1の被覆部が形成されていない段差底部の断面SEM写真を示す図である。 実施例1の被覆部が形成された段差底部の断面SEM写真を示す図である。 実施例3の被覆部が形成されていない段差底部の断面SEM写真を示す図である。 実施例3の被覆部が形成された段差底部の断面SEM写真を示す図である。 実施例3の被覆部が形成された段差底部の断面SEM写真を示す図である。 実施例3の被覆部が形成された段差底部の断面SEM写真を示す図である。
以下、本発明の有機エレクトロルミネッセンスデバイス(有機ELデバイス)及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、有機ELデバイス1としてパッシブマトリクス型有機ELディスプレイ(PMOLED)を作製した場合を例に説明する。図1は、本発明の有機ELデバイスの一例を示す図である。
図1に示すように、有機ELデバイス1は、基板2と、少なくとも1つの有機EL素子3と、絶縁膜4と、構造体5と、被覆部6と、パッシベーション膜7と、を備えている。
基板2は、透明または半透明の材料から形成されていることが好ましく、例えば、ガラス板、透明プラスチックシート、半透明プラスチックシート、石英、透明セラミックスあるいはこれらを組み合わせた複合シートから形成されている。
有機EL素子3は、通常の有機EL素子の製造工程において形成される所望の構造、形状の有機EL素子が用いられ、陽極31と、少なくとも一つの有機層32と、陰極33と、を含んでいる。
陽極(下部電極)31は、図示しない外部電源に接続されて有機層32に正孔を提供する機能を有する。陽極31は、透明な材料から形成されており、比較的仕事関数の大きい金属、合金または電気電導性化合物を電極物質として使用することが好ましい。陽極31に使用する電極物質としては、例えば、金、白金、銀、銅、コバルト、ニッケル、パラジウム、バナジウム、タングステン、酸化錫、酸化亜鉛、ITO(インジウム・ティン・オキサイド)、IZO(インジウム・ジンク・オキサイド)などが挙げられる。
有機層32は、有機発光層を含んでいる。有機発光層は、正孔(ホール)および電子の注入機能、それらの輸送機能、正孔と電子の再結合により励起子を生成させる機能(発光機能)を有する化合物を含有する層である。有機発光層に用いられる材料としては、クマリン誘導体、キナクリドン、ルブレン、スチリル系色素、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等のキノリノール環を持つ有機材料、もしくはキノリノール環を持つ有機材料が配位した有機金属錯体などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体、フェニルアントラセン誘導体、テトラアリールエテン誘導体、フルオランテン誘導体、アセナフトフルオランテン誘導体、テトラフェニルジアミノビフェニル誘導体(TPD)、トリアリールアミン誘導体などの芳香族アミン化合物などが挙げられる。
有機層32は、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、及び、電子注入層を含んでいてもよい。正孔注入層は、陽極31からの正孔(ホール)の注入を容易にする機能を有する化合物を含有する層である。正孔注入層には、例えば、芳香族アミン化合物などが用いられる。正孔輸送層は、注入された正孔を輸送する機能化合物を含有する層である。正孔輸送層には、例えば、テトラフェニルジアミノビフェニル誘導体(TPD)などが用いられる。また、電子輸送層は、電子の注入を容易にする機能を有する化合物を含有し、電子輸送層は、注入された電子を輸送する機能化合物を含有する。
陰極(上部電極)33は、図示しない外部電源に接続されて有機層32に電子を提供する。陰極33は、比較的仕事関数の小さい金属、合金または電気電導性化合物を電極物質として使用することが好ましい。陰極33に使用する電極物質としては、例えば、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−カルシウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金、グラファイト薄膜等が挙げられる。これらの電極物質は、単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
絶縁膜4は、基板2上に形成され、陽極31のパターン段差や露出させたくない配線膜、例えば、Mo(モリブデン)合金/Al(アルミニウム)合金/Mo合金の積層膜からなるMAM配線膜を被覆する。絶縁膜4は、感光性ポリイミド樹脂、ノボラック系フォトレジスト、感光性アクリル樹脂、感光性シクロオレフィン樹脂など感光性の材料を用いることが好ましい。また、絶縁膜4は、非感光性ポリイミド樹脂、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化ケイ素を成膜した後にフォトレジストを用いてパターン加工してもよい。
構造体5は、絶縁膜4の上に形成されている。構造体5は、基板2から突出するように有機EL素子3の間に設けられ、カソードセパレーター、スペーサー、リブ等として機能する。構造体5は、例えば、その断面が上底の方が下底よりも大きい略台形構造を有し、感光性樹脂のような有機樹脂により形成されている。有機ELデバイス1がパッシブマトリクス型有機ELディスプレイの場合、構造体5は、隣接する素子のカソード電極を分離する素子分離構造体、カソードセパレーターとしての役割を有する。
被覆部6は、構造体5の段差とその直下の薄膜とが接する部分(段差底部)51に設けられている。ここで、図2に示すように、被覆部6が設けられていない状態での構造体5の段差底部51の曲率半径は、約0.2μmと非常に小さな曲率半径となっている。この状態で、有機層32、陰極33、及びパッシベーション膜7を成膜すると、構造体5の段差底部51において非常に脆くなってしまう。このまま全面に接着剤を塗布した封止板や、封止板周囲に接着剤を塗布し、中央に液状乾燥剤を充填した封止板を貼り付けると、段差底部51にクラックなどの欠陥が発生し、接着剤や液状乾燥剤が有機EL素子3へ染み込む場合がある。このため、図3に示すように、段差底部51における断面形状を曲率半径が大きくなるように、被覆部6を形成する。被覆部6は、構造体5の段差底部51における断面形状を曲率半径が少なくとも0.3μm(0.3μm以上)となるように形成する。被覆部6を曲率半径が0.3μm以上となるように形成すると、パッシベーション膜7の被覆性が向上するとともに、段差底部51にクラックなどの欠陥が発生しにくくなるためである。
被覆部6は、一般的に用いられている感光性樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。
被覆部6は、有機EL素子3を構成する材料であることが好ましく、有機EL素子3の正孔輸送層または正孔注入層を構成する材料であることが最も好ましい。また、被覆部6は、ポジ型フォトレジスト材料により形成されていてもよい。これらの材料を用いることにより、有機EL素子3の有機層32の成膜前、もしくは、成膜中に被覆部6を形成することができ、汎用性を有し、信頼性の高い有機ELデバイス1を形成することができるためである。
パッシベーション膜7は、構造体5、被覆部6、及び、有機EL素子3上に形成されている。パッシベーション膜7は、少なくとも無機膜を含む一層または複数の層からなる。無機膜としては、例えば、酸化ケイ素膜、窒化酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、アルミナ、酸化マグネシウム等を主原料とする無機材料が挙げられる。
なお、パッシベーション膜7上には、液体状、ゲル状または可撓性を有する固体状の乾燥機能を有する層を有し、さらにその上に、接着剤を塗布した封止板や、封止板周囲に接着剤を塗布し、中央に液状乾燥剤を充填した封止板を貼り付けることが好ましい。
次に、このように構成された有機ELデバイス1の製造方法について説明する。
まず、基板2を用意した。次に、用意した基板2上に、例えば、スパッタ法により、陽極材料としてITO(酸化インジウムスズ)膜を成膜し、その後、フォトリソグラフィー法(以下、フォトリソ法と略記)により陽極パターンを形成した。これにより、基板2上に陽極31を形成した。続いて、陽極31と外部回路とを接続するための配線パターン(図示せず)を形成した。なお、それぞれの形成は有機ELディスプレイや液晶ディスプレイで一般的に用いられている真空成膜法などの成膜方法やフォトリソ法などの加工方法を用いればよく、特別な工法は必要ない。
次に、陽極31のパターン段差や露出させたくない配線膜上に、例えば、感光性ポリイミド樹脂を被覆して、絶縁膜4を形成する。続いて、絶縁膜4上に、感光性樹脂を用いて、その断面形状が略台形の構造体5を形成した。
ここで、有機ELデバイス3の有機層32、陰極33は非常に水分に弱いため、これらを形成する膜を成膜後に保護無しで外気に暴露することはできない。つまり、陰極33のパターニングには、一般的なフォトリソ法が適用できないため、陰極33の成膜と同時に隣り合う素子間で電気的に分離されることが必須である。そのため、陰極33の成膜方法を、ステップカバレージ悪い成膜方法とし、構造体5をカバレージされにくい構造とすることで、陰極33成膜と同時に素子間で分離されるような手法を用いる。
構造体5を形成した後、さらにポジレジストを塗布、全面露光し現像する。ほとんどのレジストは現像時に除去されるが、構造体5のオーバーハング部の下はレジストへの露光が不十分でオーバーハング部の底面鋭角部にはレジストが残る。これにより、段差底部51に被覆部6が形成される。
被覆部6を形成するためには、構造体5を形成した後、正孔注入材料もしくは正孔輸送材料を成膜してから加熱してもよい。この場合、正孔注入材料もしくは正孔輸送材料は加熱により流動し、オーバーハング部の底面鋭角部に表面張力により這い上がる。これにより、段差底部51に被覆部6が形成される。なお、正孔注入材料もしくは正孔輸送材料は高分子系、低分子系ともに使用可能である。高分子系正孔注入材料/正孔輸送材料の場合には溶媒に溶解させた状態の材料を印刷法やインクジェット法などにより塗布することによって形成される。このときオーバーハング底面鋭角部にこれらの材料が到達するように塗布する必要がある。これは、一般的な高分子系材料の形成方法とは異なる方法である。一般的には高分子系材料は絶縁膜4の上面に到達しないように形成される。
有機層32の形成を完成させた後に、陰極33を形成し、さらに、構造体5、被覆部6、及び、有機EL素子3を覆うように、例えば、酸化ケイ素膜のような無機膜を形成し、パッシベーション膜7を形成する。なお、パッシベーション膜7上には、液体状、ゲル状または可撓性を有する固体状の乾燥機能を有する層を形成し、さらにその上に、接着剤を塗布した封止板や、封止板周囲に接着剤を塗布し、中央に液状乾燥剤を充填した封止板を貼り付けてもよい。
このように製造された有機ELデバイス1では、段差底部51における断面形状を曲率半径が大きくなるように、被覆部6を形成しているので、パッシベーション膜7の被覆性が向上するとともに、段差底部51にクラックなどの欠陥が発生しにくくなる。このため、信頼性の高い有機ELデバイス1を提供することができる。
また、有機EL素子3の有機層32の形成前、もしくは、形成中に被覆部6を形成することができるため汎用性を有し、信頼性の高い有機ELデバイス1を形成することができる。
なお、上記実施の形態では、パッシブマトリクス型有機ELディスプレイ(PMOLED)を作製した場合を例に説明したが、本発明の有機ELデバイス1はこれに限定されるものではなく、例えば、アクティブマトリクス型有機ELディスプレイ(AMOLED)や有機EL照明に適用することも可能である。この場合は、セパレーターは必要ないが、封止板との間隔を一定にする必要がある場合にはフォトレジストなどによる柱状のスペーサーを用いる場合がある。これは、有機EL素子3と封止板との直接の接触を避けるためであり、また、極微小のパーティクルが有機EL素子3と封止板の間に噛んだときにも不具合が発生するおそれを少なくするためでもある。また、封止板がカラーフィルターを兼ねている場合には有機EL素子3とカラーフィルターの間隔を一定にして発色がディスプレイパネルの面内で一定になるようにする効果もある。
カソードセパレーターと異なり、スペーサーの形状は順テーパーにすることが可能なので比較的不具合は発生しにくいが、順テーパーの角度はあまり小さくすることができない。これは、順テーパー角を小さくするとスペーサーの底部の面積が大きくなるので画素の開口率を大きくすることに支障が出るためである。スペーサー底部段差の曲率半径を大きくする材料として、高分子タイプの正孔注入材料は有効である。AMOLEDの場合には、その上に有機層31、透明或いは半透明電極、パッシベーション膜7を成膜し、例えばカラーフィルターを形成した封止板を接着剤で貼り付ける。封止板は、素子との間に液状乾燥剤を充填させながら周辺を接着剤で貼り付けることもできる。このとき、充分に封止板とアレイ基板を加圧して均一な間隔とするようにする。このようにして作られたAMOLEDは、非常に高い表示特性と、信頼性を示した。一方、段差底部の曲率半径を大きくする処理を行わなかった場合は、基板2と封止板の貼り合わせ時に段差底部に亀裂が入る場合があり、その部分で液状乾燥剤や接着剤の有機EL素子3への染み込みが発生し不具合になる場合がある。
以下、本発明の具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、有機ELデバイス1としてパッシブマトリクス型有機ELディスプレイ(PMOLED)を作製した場合を例に説明する。
まず、基板2としての無アルカリガラス基板を用意した。次に、用意した基板2上に、例えば、スパッタ法により、陽極材料としてITO膜を成膜し、その後、フォトリソ法により陽極パターンを形成した。続いて、配線金属としてMo(モリブデン)合金/Al(アルミニウム)合金/Mo合金の積層膜(MAM配線膜)をスパッタ法で真空を破らずに連続成膜し、さらに同様にフォトリソ法で陽極とドライバーICを繋ぐための配線パターンを加工した。
次に、陽極31のパターン段差や露出させたくないMAM配線膜上に、感光性ポリイミド樹脂を被覆して、絶縁膜4を形成した。続いて、絶縁膜4上に、感光性樹脂を用いて、その断面形状が略台形の構造体5を形成した。図4に被覆部6が形成されていない状態での段差底部51の断面SEM写真を示す。
構造体5を形成した後に、ポジレジストを塗布し、さらにレジスト表面を全面露光・現像した。構造体5のオーバーハング部の下のポジレジスト材料は、全面露光時に充分に光が当たりにくいため、露光/現像条件をうまく選ぶことで、オーバーハング部の奥にあたる段差底部51にポジレジストが残る。その後、ポジレジストをアニールして硬化することで、段差底部51に被覆部6が形成される。
続いて、構造体5、被覆部6、及び、有機EL素子3を覆うように、パッシベーション膜7を形成する。図5にパッシベーション膜7が形成された状態での段差底部51の断面SEM写真を示す。図5に示すように、構造体5には、段差底部51が緩やかな曲率半径を持つような被覆部6が形成され、パッシベーション膜7が構造体5を完全に覆っていることが確認できた。
最後に、封止板を貼り付け、基板2を個片に分断し、ICとフレキシブルプリント回路基板を実装することによりPMOLEDガラスパネル(有機ELデバイス1)は完成した。
実施例1の有機ELデバイス1は、構造体5の段差底部51に被覆部6が形成され、パッシベーション膜7が構造体5を完全に覆っており、接着剤や液状乾燥剤の有機EL素子3への染み込みは著しく改善し、実使用上全く問題ないレベルのものであることを確認した。
(実施例2)
実施例2では、基板2上に、陽極31、絶縁膜4、及び、構造体5を形成するまでは実施例1と同様の方法により製造した。
構造体5を形成した後、高分子タイプの正孔注入層を段差底部51まで塗布した。一般に、高分子タイプの正孔注入層は、バンクと呼ばれる絶縁膜を形成し、画素となる部分の絶縁膜を開口させて陽極を露出させ、その開口部分にのみインクジェット法などにより塗布するのが通常の工法である。バンクなどの樹脂表面をフッ素化するなどの処理をして正孔注入層材料をはじくようにし、陽極の表面のみに溜まりやすくするような工夫がなされている。
しかしながら、実施例2では、絶縁膜4と構造体5をプラズマ処理をするなどして、正孔注入層材料との親和性・濡れ性を向上させた後に、正孔注入層材料を塗布し、乾燥させた。これにより、正孔注入材料は構造体5の段差底部51にも留まり、段差底部51の曲率半径を大きくすることができた。
最後に、実施例1と同様に有機層32、陰極33、パッシベーション膜7を連続成膜し、封止板を貼り付けることにより、PMOLED(有機ELデバイス1)は完成した。
実施例2の有機ELデバイス1についても、構造体5の段差底部51に被覆部6が形成され、パッシベーション膜7が構造体5を完全に覆っていた。このため、実施例2の有機ELデバイス1は、接着剤や液状乾燥剤の有機EL素子3への染み込みは著しく改善し、実使用上全く問題ないレベルのものであることを確認した。
(実施例3)
まず、ガラス等の支持基板上に基板2としてPETフィルムを仮固定し、表面にハードコート層としてアクリル樹脂を塗布し、さらに透湿防止膜として窒化酸化シリコンをプラズマCVD法で成膜した。その上に実施例1と同様に、陽極材料としてITO(酸化インジウムスズ)をスパッタ法で成膜し、その後、陽極パターンをフォトリソ法により形成した。続いて、配線金属としてMo(モリブデン)合金/Al(アルミニウム)合金/Mo合金の積層膜(MAM配線膜)をスパッタ法で真空を破らずに連続成膜し、さらに、同様にフォトリソ法で陽極とドライバーICを繋ぐための配線パターンを加工した。
次に、陽極31のパターン段差や露出させたくないMAM配線膜を絶縁膜で被覆した。この絶縁膜にはノボラック系フォトレジストを使用した。続いて、絶縁膜4上に、感光性樹脂を用いて、その断面形状が略台形の構造体5を形成した。絶縁膜の上の構造体5はネガレジストで形成した。それぞれの加工は、PETフィルムにダメージを与えない範囲の温度であれば、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイで一般的に用いられている方法を用いればよい。
図6に段差底部51の断面SEM写真を示す。図6に示すように、絶縁膜4と構造体5が接する段差底部51は0.2μmと非常に小さな曲率半径となっていた。段差底部51の曲率半径を大きくし、緩やかな弧を描くようにする方法として、正孔注入材料或いは正孔輸送材料としてよく知られているα−NPD(N,N’−di(1−naphthyl)−N,N’−diphenyl−(1,1’−biphenyl)−4,4’−diamine)を成膜し、その後で加熱することにより基板表面を流動させた。
ここで、NPDの膜厚や加熱温度や加熱時間を適切に選択することでオーバーハング部(構造体5)の奥にあたる段差底部51にきれいにNPDが流動し、曲率半径も制御できる。図7では段差底部51の曲率半径が0,4μm、図8では段差底部51の曲率半径が0,8μm、図9では段差底部51の曲率半径が1.2μmとなるように、被覆部6を形成した。図7〜図9に示すように、NPDの膜厚や加熱温度を選択することで曲率半径が制御できることを確認した。また、加熱は、NPD成膜に引き続き真空を破らずに行っても、大気に取り出してから行っても、NPDが流動し、効果があることが分かった。
続いて、有機EL素子3の形成をし、さらに、構造体5、被覆部6、及び、有機EL素子3を覆うように、パッシベーション膜7を形成した。最後に、封止板を貼り付け、PMOLEDパネルの前工程を終了した。さらに、PETフィルムを支持基板から剥がして、パネル個片に分断し、IC付きフレキシブル回路基板を実装することによりフレキシブルPMOLED(有機ELデバイス1)は完成した。
実施例3の有機ELデバイス1についても、構造体5の段差底部51に被覆部6が形成され、パッシベーション膜7が構造体5を完全に覆っていた。このため、実施例3の有機ELデバイス1は、接着剤や液状乾燥剤の有機EL素子3への染み込みは発生しなくなり、高い信頼性を示した。また、パッシベーション膜7の膜厚を30nm〜300nmとしたとき、フレキシブルPMOLEDパネルを曲率10mmまで屈曲させても不具合は発生しなかった。
1 有機ELデバイス
2 基板
3 有機EL素子
31 陽極
32 有機層
33 陰極
4 絶縁膜
5 構造体
51 段差底部
6 被覆部
7 パッシベーション膜

Claims (3)

  1. 基板上に、陽極、有機発光層を含む有機層、及び、陰極を有する、少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子と、
    前記基板上に設けられ、前記有機エレクトロルミネッセンス素子より膜厚が厚く、隣接する電極を分離するオーバーハング構造を有する一条の構造体と、
    前記構造体の段差底部に設けられ、当該段差底部における断面形状を、その曲率半径が0.3μm〜前記構造体の厚さ未満となるように形成する被覆部と、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子、前記構造体、及び、前記被覆部を被覆するパッシベーション膜と、を備え、
    前記陰極は前記構造体により分離されており、
    前記構造体は、カソードセパレーターであり、オーバーハング部を有し、
    前記被覆部は、ポジ型フォトレジスト材料である、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
  2. 基板上に、陽極と、有機発光層を含む有機層、及び、陰極を有する、少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子を備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法であって、
    前記基板上の所定位置に陽極を形成する陽極形成工程と、
    前記基板上の所定位置に前記有機エレクトロルミネッセンス素子より膜厚が厚く、隣接する電極を分離するオーバーハング構造を有する一条の構造体を形成する構造体形成工程と、
    前記構造体の段差底部に当該段差底部における断面形状を、その曲率半径が0.3μm〜前記構造体の厚さ未満となるように被覆部を形成する被覆部形成工程と、
    前記陽極上に有機層、及び、陰極を成膜することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程と、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子、前記構造体、及び、前記被覆部を被覆するパッシベーション膜を形成するパッシベーション膜形成工程と、を備え、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程では、前記陰極が前記構造体により分離されており、
    前記有機層は、正孔注入層と正孔輸送層との少なくとも一方を含み、
    前記被覆部形成工程では、正孔注入材料と正孔輸送材料との少なくとも一方を成膜し加熱、流動させることにより、前記構造体の段差底部に前記被覆部を形成するとともに、正孔注入層と正孔輸送層との少なくとも一方を形成する、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
  3. 基板上に、陽極と、有機発光層を含む有機層、及び、陰極を有する、少なくとも一つの有機エレクトロルミネッセンス素子を備える有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法であって、
    前記基板上の所定位置に陽極を形成する陽極形成工程と、
    前記基板上の所定位置に前記有機エレクトロルミネッセンス素子より膜厚が厚く、隣接する電極を分離するオーバーハング構造を有する一条の構造体を形成する構造体形成工程と、
    前記構造体の段差底部に当該段差底部における断面形状を、その曲率半径が0.3μm〜前記構造体の厚さ未満となるように被覆部を形成する被覆部形成工程と、
    前記陽極上に有機層、及び、陰極を成膜することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程と、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子、前記構造体、及び、前記被覆部を被覆するパッシベーション膜を形成するパッシベーション膜形成工程と、を備え、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子形成工程では、前記陰極が前記構造体により分離されており、
    前記被覆部形成工程では、ポジレジストを塗布し、全面露光することにより、前記構造体の段差底部に被覆部を形成する、ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造方法。
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