JP6059061B2 - Iii族窒化物基板の製造方法およびiii族窒化物基板の転位密度低減方法 - Google Patents

Iii族窒化物基板の製造方法およびiii族窒化物基板の転位密度低減方法 Download PDF

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本発明は、III族窒化物基板の製造方法に関し、特に、低転位密度のIII族窒化物基板を製造する方法に関する。
GaN(窒化ガリウム)に代表されるIII族窒化物結晶(単結晶)は、LED(発光ダイオード)を初めとする発光素子や受光素子などの光デバイス、さらには、HEMT(高電子移動度トランジスタ)などの電子デバイスの基板材料として用いられる。
III族窒化物結晶からなる基板(III族窒化物基板)は、III族窒化物結晶を、同じ組成及び異なる組成のIII族窒化物結晶からなる下地基板やサファイアやシリコンなどの異種材料の下地基板の上に成長させることによって得られる。なお、係る場合に用いられる下地基板を種結晶と称する場合もある。また、III族窒化物結晶を成長させた後、下地基板を除去する場合もある。
ただし、係る手法にてIII族窒化物基板を得る場合、その形成過程において、下地基板に存在する格子欠陥を起点とする転位がその上に形成したIII族窒化物結晶に伝播してしまうことがある。係る転位の存在は、デバイスの特性を劣化させる要因となる。例えば、LEDの場合であれば、発光効率を低下させる要因となる。それゆえ、III族窒化物基板を得るにあたっては、下地基板から伝播する転位をできるだけ抑制することが求められる。
このような転位の伝播を抑制する技術として、液相中または気相中で下地基板に存在する格子欠陥を含む部分を他の部分よりも速く侵食させることによって下地基板の表面にピットを形成しておいたうえで、III族窒化物結晶を成長させることで、下地基板から伝播する貫通転位を低減するというものが、すでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、下地基板の表面に機械的加工もしくはエッチング(気相エッチングおよび液相エッチング)を施して凹凸を形成したうえでIII族窒化物結晶を成長させることにより、下地基板からの転位の伝播を抑制するという技術もすでに公知である(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−124128号公報 特開2005−281067号公報
特許文献2に開示されている、機械的な加工によって下地基板の表面に凹凸を形成するという態様は、下地基板の表面にダメージを与えることになり、必ずしも良好に転位密度を低減させるとは限らず、場合によっては、転位密度を増大させてしまうことがあり、好ましくない。あるいは、ダメージを受けた箇所においてIII族窒化物結晶が異常成長してしまい、デバイス作製用の基板として良好に使用可能なIII族窒化物結晶が得られないこともある。
また、液相や気相での処理の場合、用いる溶液やガスの種類によっては、下地基板の表面を汚染してしまい、汚染物が異常成長を生じさせる要因となるため、好ましくない。特に、特許文献1や特許文献2で例示されているような、塩素原子を含んだガスを用いた処理の場合、下地基板の表面に塩化物が残留しやすく、係る塩化物の存在が原因となってIII族窒化物結晶が異常成長することが、本願の発明者によって確認されている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、容易かつ確実に低転位密度のIII族窒化物基板を得る方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、III族窒化物基板の製造方法であって、表面が平坦でありかつ少なくとも前記表面がIII族窒化物から構成される下地基板を900℃以上1150℃以下の還元雰囲気でアニールすることにより、前記下地基板の前記表面に、原子間力顕微鏡にて測定されるRMS値が50nm〜300nmとなるように凹凸を形成するアニール工程と、前記アニール工程を経た前記下地基板の上に、III族窒化物層を形成する形成工程と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のIII族窒化物基板の製造方法であって、前記アニール工程においては、水素ガスが主成分ガスであり、残余が不活性ガスである雰囲気で前記下地基板をアニールする、ことを特徴とする。
請求項の発明は、請求項1または請求項に記載のIII族窒化物基板の製造方法であって、前記形成工程においては、フラックス法によって前記III族窒化物層を形成する、ことを特徴とする。
請求項の発明は、III族窒化物基板の転位密度を低減する方法であって、表面が平坦でありかつ少なくとも前記表面がIII族窒化物から構成される下地基板を900℃以上1150℃以下の還元雰囲気でアニールすることにより、前記下地基板の前記表面に、原子間力顕微鏡にて測定されるRMS値が50nm〜300nmとなるように凹凸を形成するアニール工程と、前記アニール工程を経た前記下地基板の上に、III族窒化物層を形成する形成工程と、を備えることを特徴とする。
請求項1ないし請求項の発明によれば、III族窒化物層の結晶成長に先立ち、900℃以上1150℃以下という高温還元雰囲気でのアニールという簡単な処理を行って下地基板のIII族窒化物から構成される表面に凹凸構造を形成することで、低転位密度でかつ均質なIII族窒化物基板を容易かつ確実に得ることできる。

III族窒化物基板10の製造手順を示す図である。 III族窒化物基板10の製造途中の様子を模式的に示す図である。 III族窒化物基板10の製造途中に撮像された偏光顕微鏡像を示す図である。 カソードルミネッセンス像を例示する図である。
図1は、本実施の形態に係るIII族窒化物基板10の製造手順を示す図である。図2は、III族窒化物基板10の製造途中の様子を模式的に示す図である。図3は、III族窒化物基板10の製造途中に撮像された偏光顕微鏡像を示す図である。
本実施の形態においてIII族窒化物基板10を得るにあたっては、まず、下地基板1を用意する(ステップS1)。下地基板1は、例えばGaNに代表されるIII族窒化物結晶(単結晶)からなる、表面が原子レベルで平坦な自立基板である。図3(a)は、下地基板1の表面の偏光顕微鏡像である。なお、下地基板1は、GaNのほか、AlN、InN、BNなどからなるものであってもよいし、それらの混晶からなるものであってもよい。あるいは、サファイアやシリコンなどの異種材料からなる基板を下地基板1として用いる態様であってもよい。あるいはさらに、サファイアやシリコンなどの基板上に上述したIII族窒化物の結晶層がエピタキシャル形成されてなる、いわゆるテンプレート基板であってもよい。下地基板1の厚みは、数百μm〜数mm程度であるのが好適である。
ただし、下地基板1の内部には、図2(a)に示すように、厚み方向に転位d(d0)が存在する。例えば、GaNからなる下地基板1の場合には、1×10/cm〜1×10/cm程度の転位密度で転位が存在する。なお、本実施の形態においては、転位密度をカソードルミネッセンス像に基づいて評価するものとする。
下地基板1が用意できると、これを高温還元雰囲気下でアニールする(ステップS2)。アニールは、使用する雰囲気ガスを供給可能な加熱炉内に下地基板1を載置することで行う。
還元雰囲気ガスとしては、水素ガスを主成分とするものを用いるのが好適である。たとえば、水素ガスを体積比で50%以上含み、残余を不活性ガス(例えば窒素ガス)とした混合ガスなどを用いるのが好適である。また、アンモニアガスなどを用いる態様であってもよいし、これらのガスを混合させて用いてもよい。また、アニール温度は、900℃〜1150℃とするのが好適である。なお、アニール時間は、適宜選択できるが5分〜60分とするのが好適な一例である。
係るアニールを行うと、原子レベルで平坦であった下地基板1の表面1aは、図2(b)に示すように凹凸面Cとなる。なお、図2(b)においては図示の便宜上、凹凸面Cが規則的もしくは周期的な凹凸を有するものとなっているが、実際の凹凸面Cは必ずしも規則的もしくは周期的な凹凸を有するものではなく、図3(b)に示すように、ランダムに大小の突起が存在する不規則な構造を有するものとなっている。また、凹凸面Cの二乗平均粗さRMSは、50nm〜300nm程度であればよい。なお、本実施の形態において、凹凸面Cの二乗平均粗さRMSは、原子間力顕微鏡(AFM)にて25μm□の領域を測定し、その測定結果を解析することで評価をしている。
なお、このような凹凸が形成されることから、本実施の形態においては、上述の高温還元雰囲気下でのアニールのことを、凹凸加工とも称することがある。
そして、このように表面1aが凹凸面Cとなった下地基板1の上に、フラックス法(Naフラックス法)によって、III族窒化物層2を10μm〜1000μmの厚みに成長させる(ステップS3)。
具体的には、底部に下地基板1を配置したうえで所定量の金属ガリウムと金属ナトリウムとをそれぞれ充填してなるアルミナるつぼを、加熱炉内に配置し、800℃〜900℃の加熱温度および3MPa〜5MPaの圧力にて1時間〜100時間加熱保持し、その後徐冷するようにする。
以上の手順によって、全面にわたって均質なIII族窒化物層2を備えたIII族窒化物基板10が得られる。
より詳細にいえば、上述の手順で作製したIII族窒化物基板10においては、III族窒化物層2の表面における転位密度が、下地基板1の転位密度よりも小さい、1×10/cm〜5×10/cm程度にまで低減される。
係る低転位密度化は、次のメカニズムで実現される。図2(c)に示すように、まず、下地基板1において厚み方向に延在する転位d0は、III族窒化物層2に伝播しようとする際に、両者の界面である凹凸面Cにて屈曲される。それゆえ、III族窒化物層2内においては、転位d(d1)は厚み方向に対し傾斜した向きに伝播する。すると、III族窒化物層2内では、複数の転位d1が順次に合体消失することとなる。その結果、III族窒化物層2の表面にまで到達する転位d(d2)が低減される。
また、上述した条件でIII族窒化物基板10を得た場合には、結晶粒の異常成長が生じないことも、本発明の発明者によって確認されている。なお、結晶の異常成長の有無は、偏光顕微鏡によって確認することが出来る。
なお、アニール温度が900℃よりも低い場合は、転位密度低減の効果が十分に得られない。これは、その条件でのアニールでは、凹凸構造が十分に得られないためであると考えられる。また、1150℃よりも高い場合は、異常成長箇所が発現してしまう。これは、後工程であるフラックス法において良好なIII族窒化物層2が形成されない程度に大きな凹凸が形成されてしまうためであると考えられる。
ちなみに、下地基板1を塩素原子を含むガスでプラズマエッチング処理した後にIII族窒化物層2を成長させた場合、転位密度の値がせいぜい9×10/cm程度までしか低減されず、また、結晶粒の異常成長が生じ得る。係る場合と比較すると、本実施の形態に係るIII族窒化物基板の製造方法は、従来よりも容易かつ確実に低転位密度でかつ均質なIII族窒化物基板を得ることができる方法であるといえる。
すなわち、本実施の形態によれば、III族窒化物層の結晶成長に先立ち、高温還元雰囲気でのアニールという簡単な処理を行って下地基板の表面に凹凸構造を形成することで、低転位密度でかつ均質なIII族窒化物基板を容易かつ確実に得ることできる。
<変形例>
なお、III族窒化物層2の形成手法は、フラックス法に限られず、種々の結晶成長手法を適用可能である。例えば、アモノサーマル法やHVPE法などのほか、MOCVD法やMBE法などを適用する態様であってもよい。
III族窒化物層を形成した後、下地基板1を分離もしくは除去する態様であってもよい。係る分離もしくは除去には、切断などの機械的手法を初めとする種々の公知の手法を適用可能である。
下地基板1に対する処理条件を種々に違えることにより、13種類のIII族窒化物基板を作製した(試料No.1〜13)。
具体的には、下地基板1として、直径が2インチで厚みが400μmのGaN自立基板を複数枚用意した。試料No.1の下地基板1については、そのままその表面1aにIII族窒化物層2としてのGaN層を形成した。試料No.2〜No.10の下地基板1については、雰囲気を全て100%水素ガスとし、アニール温度を800℃、900℃、1020℃、1070℃、1120℃、1200℃の6水準に違え、アニール時間を10分、20分、40分の3水準に違え、かつ、アニール圧力を10kPaと100kPaの2水準に違えてアニール処理を行ったうえで、GaN層を形成した。また、試料No.11の下地基板1については、雰囲気を90%水素ガスと10%窒素ガスの混合ガスとしたほかは、試料No.6と同条件とした。また、試料No.12の下地基板1については、雰囲気を100%窒素ガスとしたほかは、試料No.6と同条件とした。さらに、試料No.13の下地基板1については、圧力1PaのClガスで2分間誘導結合プラズマ(ICP)エッチングしたうえで、GaN層を形成した。
なお、GaN層の形成に先立ち、AFMによりそれぞれの下地基板1の二乗平均粗さRMSを測定した。
GaN層の形成は、Naフラックス法を用いて、全ての試料において同じ条件で行った。具体的には、下地基板1を載置したアルミナるつぼに、金属ガリウム30gと金属ナトリウム44gとをそれぞれ充填して、該アルミナるつぼを、加熱炉内に載置し、炉内温度を900℃、圧力を4MPaとして、約30時間保持した。その後冷却し、アルミナるつぼを加熱炉から取り出したところ、その中において、下地基板1の表面にGaN層が均一に形成されていた。GaN層の厚みは約100μmであった。これにより、III族窒化物基板10が得られたことになる。
得られたIII族窒化物基板10について、加速電圧15kVにてカソードルミネッセンス測定を行い、得られた像に基づいて、表面の転位密度を求めた。
また、偏光顕微鏡を用いて、それぞれのIII族窒化物基板10における結晶の異常成長の有無を確認した。
それぞれの試料のアニール条件(凹凸加工条件)と、下地基板1の表面粗さRMS、III族窒化物基板10の表面(GaN層の表面)の転位密度、およびGaN層の異常成長の有無とを表1に示す。また、図4に、カソードルミネッセンス像を例示する。図4(a)はNo.4の試料のカソードルミネッセンス像であり、図4(b)はNo.13の試料のカソードルミネッセンス像である。
まず、それぞれの試料について、転位密度を比較すると、水素含有雰囲気でのアニールを行ったNo.2〜No.11の試料では、アニール温度が800℃と低いNo.7の試料を除いて、下地基板の表面粗さRMSの値が、アニール処理を行っていないNo.1の試料に比して大幅に大きくなっていた。このことは、下地基板1の表面に大きな凹凸が形成されたことを意味している。一方、No.7の試料では、RMSがNo.2〜No.6やNo.8〜No.11の試料に比して小さいままであった。このことは、下地基板1の表面にさほど大きな凹凸が形成されなかったことを意味している。
一方で、これらの試料の転位密度についてみると、RMSの値が大きいNo.2〜No.6やNo.8〜No.11の試料については、No.1の試料の4割以下にまで転位密度が低減されていたのに対し、No.7の試料においては、十分な転位密度低減効果は得られなかった。
ただし、アニール温度を1200℃とした試料No.2では、転位密度は全試料中で最も小さくなったものの、異常成長をしている結晶が確認された。
また、100%窒素ガスでアニールしたNo.12の試料については、下地基板1のRMSおよび転位密度がNo.1とほとんど同じであった。
さらには、ClガスでICPエッチングしたNo.13の試料については、転位密度の低減はわずかであり、かつ、異常成長をしている結晶が確認された。なお、図4(a)、(b)を対比してみても、水素ガスによるアニールの場合と、転位低減効果に差異があることが確認される。
以上の結果は、還元雰囲気のもと、900℃〜1150℃のアニール温度で下地基板1をアニールし、その表面に凹凸を形成したうえでIII族窒化物層を形成することが、低転位密度でかつ均質な(結晶の異常成長のない)III族窒化物基板を得るうえで好適であることを示している。
1 下地基板
1a (下地基板の)表面
2 III族窒化物層
10 III族窒化物基板
C 凹凸面
d(d0、d1、d2) 転位

Claims (4)

  1. III族窒化物基板の製造方法であって、
    表面が平坦でありかつ少なくとも前記表面がIII族窒化物から構成される下地基板を900℃以上1150℃以下の還元雰囲気でアニールすることにより、前記下地基板の前記表面に、原子間力顕微鏡にて測定されるRMS値が50nm〜300nmとなるように凹凸を形成するアニール工程と、
    前記アニール工程を経た前記下地基板の上に、III族窒化物層を形成する形成工程と、
    を備えることを特徴とするIII族窒化物基板の製造方法。
  2. 請求項1に記載のIII族窒化物基板の製造方法であって、
    前記アニール工程においては、水素ガスが主成分ガスであり、残余が不活性ガスである雰囲気で前記下地基板をアニールする、
    ことを特徴とするIII族窒化物基板の製造方法。
  3. 請求項1または請求項に記載のIII族窒化物基板の製造方法であって、
    前記形成工程においては、フラックス法によって前記III族窒化物層を形成する、
    ことを特徴とするIII族窒化物基板の製造方法。
  4. III族窒化物基板の転位密度を低減する方法であって、
    表面が平坦でありかつ少なくとも前記表面がIII族窒化物から構成される下地基板を900℃以上1150℃以下の還元雰囲気でアニールすることにより、前記下地基板の前記表面に、原子間力顕微鏡にて測定されるRMS値が50nm〜300nmとなるように凹凸を形成するアニール工程と、
    前記アニール工程を経た前記下地基板の上に、III族窒化物層を形成する形成工程と、
    を備えることを特徴とするIII族窒化物基板の転位密度低減方法。
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