図1(a)は、建築板1の実施形態の一例を示している。この建築板1は、化粧塗装2が表面に施されたものである。そして、建築物6に取り付けられるときの建築板1の割付に応じて切断するための切断線3が、化粧塗装2の一部として塗装されている。それにより、現場において建築板1の採寸及びケガキを行わなくてもよく、切断線3に沿って建築板1を切断するだけで、建築物6に応じた形状の建築板1を得ることができ、切断が容易な建築板1を得ることができる。
建築板1は建築物6の外壁を構成するための外装材となるものである(図3参照)。建築板1としては、窯業系建築板が好ましい。窯業系の建築材により外装材を形成することにより、住居用家屋などの建物の外観を自然な感じに仕上げることができ、意匠性の高い建築物6を得ることができる。また、窯業系建築板では、略同形状の建築板1を精度よく形成することが可能であり、また、現場において切断するのが容易である。窯業系材料としてはセメント系の成形材料を好ましく用いることができる。建築板1は、例えば、セメント系の成形材料に、補強繊維、充填剤、分散剤、添加剤、着色剤などが適宜に混合され、押出し成形されたものを用いることができる。
建築板1の表面には凹凸模様が設けられていてもよい。それにより、建築物6の意匠性を高めることができる。凹凸模様は、縦横の目地模様などの比較的大きな溝状の凹凸模様であってもよい。建築板1に目地模様を設けた場合、レンガ調や石調の外壁を形成することができる。あるいは、凹凸模様は、質感を表現する微細でランダムな凹凸模様であってもよい。微細な凹凸模様を設けた場合、より自然な外観の壁面を形成することができる。もちろん、目地模様が設けられるとともに、目地模様の溝によって形成された凸部に微細な凹凸模様が設けられるものであってもよい。それにより、意匠性をさらに高めることができる。
建築板1は矩形状に形成されていることが好ましい。それにより、建築板1を建築物6の壁に敷き詰めて取り付けやすくすることができる。建築板1の形状としては、特に限定されるものではないが、長手方向に略同一幅で伸びる短冊状の建築板1を用いることができる。例えば、短辺30〜60cm、長辺2〜4mの建築板1を挙げることができ、具体的には、縦45cm×横3m30cmの建築板1を用いることができる。短冊状の建築板1を用いることにより、建築物6に容易に建築板1を取り付けることができる。建築板1の厚みは、特に限定されるものではないが、1〜10cmの範囲であってよい。なお、建築板1の縦方向は建築板1が建築物6に取り付けられたときの上下方向に対応し、建築板1の横方向は建築板1が建築物6に取り付けられたときの水平方向(地面と略水平な方向)に対応する。
建築板1の端部には、隣り合う他の建築板と接合するための接合構造が設けられていてもよい。例えば、建築板1の縦方向の一端部(上端部)に表面が凹んだ凹み部を設けるとともに、建築板1の縦方向の他端部(下端部)に裏面が凹んで表面部分が下方に延伸する覆い部を設けることができる。これにより、縦方向の端部である長手辺同士を接合する接合構造を形成することができる。凹み部及び覆い部によって接合構造を設けた場合、凹み部を覆い部で覆って建築板1を取り付けることができ、ビスや取付金具などの固着具が外部に露出することを抑制して、建築板1を取り付けることができる。接合構造は、建築板1の横方向の端部(短手辺)に設けられていてもよい。それにより、水平方向(左右)に隣り合う建築板1を接合させることができる。また、横方向の端部の端面を建築板1の表面と略垂直な面に形成し、左右に建築板1を突き合せて配設する突合せ構造を用いることも好ましい。その場合、端部の構造が簡単になり、縦方向(幅方向)に切断して一部を切り落とした場合でも、切り落としてできた端部を他の建築板1の端部に突き合せて簡単に建築板1を取り付けることができる。
建築板1の表面には化粧塗装2が施されている。化粧塗装2は、建築物6の壁面の外観を形成するための塗装である。化粧塗装2は、建築板1の表面に塗装されて形成される模様や着色であってよい。化粧塗装2が施されることにより、建築物6に自然な外観を与えたり、外壁に模様を付与したりして、建築物6の意匠性を高めることができる。化粧塗装2は、例えば、レンガ調の塗装や石調の塗装や木目調の塗装などであってよい。それにより、建築物6を落ち着いた自然な外観にすることができる。化粧塗装2の切断線3を除く部分は、単一の色で構成されてもよいし、複数の色で構成されていてもよい。例えば、表面凹凸で構成される細かい凹凸模様の表面に単一の色を塗装して化粧塗装2を形成することにより、凹凸模様と着色とが組み合わされた意匠性の優れた建築板1を簡単に得ることができる。また、例えば、複数の色を用いて模様を塗装して化粧塗装2を形成することにより、着色模様が付与された意匠性の優れた建築板1を簡単に得ることができる。
図3は、複数の建築板1の建築物6に対する割付を示す施工図の一例である。図3に示すように、施工図においては、建築物6の施工情報(形状、構造、大きさ、屋根勾配、窓の位置等)に基づき、複数の建築板1が壁面に割付けられている。このように建築板1が割付けられた施工図から、建築物6を形成するために必要な建築板1の個数及び建築板1の切断箇所などが設定される。設定された切断箇所(切断線3)で建築板1を切断することにより、建築物6の形状に合せて建築板1を敷き詰めて壁に取り付けることができる。そして、図1(a)に示すように、本形態の建築板1では、施工図に基づいて設定された切断線3が、化粧塗装2の一部として塗装されている。
切断線3は、化粧塗装2の切断線3以外の部分とは異なる色で形成されるものである。それにより、切断線3を容易に視認することができ、建築板1を切断しやすくすることができる。図1(a)では、切断線3は破線で描かれているが、もちろん、切断線3は、実線、破線、点線など適宜の線であってよい。切断線3の幅は、特に限定されるものではないが、0.1〜5mm程度の幅であってよい。切断線3の幅が細すぎると視認しにくくなるおそれがあり、切断線3の幅が太すぎると切断箇所を特定しにくくなったり切断後に切断線3が残ってしまったりするおそれがある。そのため、切断線3の幅は、目視で確認することができるとともに、切断線3の幅中央に沿って建築板1を切断した際に、切断線3が消えてなくなる程度の幅であることが好ましい。切断線3は、切断する一方の端部から他方の端部まで連続して設けられていることが好ましい。それにより、不連続で設けられる場合よりも切断線3を視認しやすくなり、切断がより容易になる。
切断線3の色は、黒色、赤色、黄色、白色などの目立つ色であってよい。それにより、切断箇所を容易に確認することができる。また、切断線3の色として、化粧塗装2の色の同系等の色で濃さが異なる色を用いることも好ましい。例えば、化粧塗装2の色が茶色系の場合、切断線3の色として濃い茶色を用いることができる。また、化粧塗装2の色が灰色系の場合、切断線3の色として濃い灰色を用いることができる。切断線3と化粧塗装2とが同系等の色の場合、切断後に切断線3の一部が残ったとしても、切断線3の色を目立ちにくくすることができ、切断線3を除去する作業などが不要になって、建築物6に建築板1を取り付けやすくすることができる。また、塗装の際に、塗装装置の状態や塗装環境により切断線3の色が飛んで化粧塗装2の表面に付着したとしても、付着した色を目立ちにくくすることができ、建築板1の塗装不良を低減することができる。また、切断線3として蛍光色を用いてもよい。その場合、切断線3の視認がさらに容易になる。切断線3の色が目立つためには、例えば、切断線3と切断線3以外の化粧塗装2の色との色差ΔEは、3以上、5以上又は8以上に設定することが好ましい。この色差ΔEはLab系の色度で算出されるものであってよい。色差ΔEの上限は特に限定されないが、例えば20であってもよい。なお、切断線3の色度、及び、切断線3以外の化粧塗装2の色度は、平均値であってよい。
化粧塗装2が施された建築板1は、複数個を用いて、建築物6に取り付けることができるものである。このとき、切断線3が塗装により形成された建築板1は、切断して取り付けに用いることができる。建築物6に取り付けられる建築板1においては、同じ形状や大きさで、切断線3が設けられたこと以外は同様の化粧塗装2が施された複数個の建築板1が準備される。複数の建築板1のうちの一部は、切断線3が塗装されていないものであってよい。また、切断線3が塗装された建築板1は、一個であってもよいし、複数個であってもよいが、通常、建築物6に取り付けるためには、複数個を要することになる。切断線3が塗装された複数の建築板1は、切断線3の位置が異なるものであってよい。そして、切断線3を有する建築板1を含んだ複数の建築板1は、建築板1のセットとして、建築物6の外装材などとして使用することができる。
建築板1の切断及び取り付けにあたっては、まず、切断線3が塗装された建築板1を含む複数の建築板1(建築板セット)を現場に搬入する。次に、図1(b)に示すように、切断線3が設けられた建築板1を切断線3の位置で切断する。切断は電動ノコギリなど適宜の切断具を用いて行うことができる。建築板1の切断により、一つの建築板1から、一又は複数の切断建築板5が得られる。次に、建築板1を順次に建築物6の壁下地に取り付ける。建築板1は、例えば、建築物6の下側の列から順に取り付けることができる。このとき、切断された建築板1(切断建築板5)は、施工図に従って、割付けられた所定の配置で建築物6に取り付けることができる。これにより、建築物6の外壁を形成することができる。なお、建築板1を現場に運ぶ前にあらかじめ切断しておいてもよい。ただし、切断すると部品数が増えて運搬性や取扱い性が低下するおそれがある。そのため、切断は現場又は現場付近で行うことが好ましい。また、あらかじめ主要な切断箇所のみを切断しておき、現場でその他の切断箇所を切断するといった段階的な切断を行ってもよい。
図1(a)では、切断線3が描かれた建築板1の具体例として、建築板1a、1b、1c、1dの4つの建築板1が示されている。建築板1aでは、建築板1aの短手方向(縦方向)に沿って延伸する切断線3及び建築板1aの長手方向(横方向)に沿って延伸する切断線3が設けられている。短手方向に延伸する切断線3は、建築板1の幅全長に亘って設けられているものが含まれている。この建築板1aでは、幅方向の切断線3は、建築板1の長手方向と略垂直に設けられている。建築板1b及び建築板1cでは、建築板1b、1cの短手方向(縦方向)に沿って延伸した幅方向の切断線3が複数設けられている。幅方向に跨る切断線3は複数本であってよく、建築板1bでは3本、建築板1cでは2本の切断線3が設けられている。また、幅方向に跨る切断線3は、長手方向と垂直なものであってもよいが、そうでなくてもよい。建築板1dでは、長手方向に対して斜めに傾斜しながら建築板1の一方の長手辺から他方の長手辺に跨る切断線3が設けられている。この建築板1dでは、傾斜方向が異なって傾斜した切断線3が複数設けられている。
図1(b)は、図1(a)に示す建築板1a〜1dを切断した後の切断建築板5の具体例を示している。図1(b)では、建築物6に取り付けて使用する切断建築板5を記載しており、切断後に廃棄される部分(端材)は省略している。
建築板1aからは、元の建築板1よりも幅が小さい矩形状(短冊状)の切断建築板5が2個、元の建築板1と幅が同じで長さの短い矩形状の切断建築板5が1個、形成されている。建築板1bからは、元の建築板1と幅が同じで長さの短い矩形状の切断建築板5が3個形成されている。建築板1cからは、元の建築板1と幅が同じで長さの短い矩形状の切断建築板5が2個形成されている。建築板1dからは、横方向の端部が傾斜した四角形(台形)の切断建築板5が2個形成されている。
図3に示すように、切断建築板5は、建築板1をそのままの大きさや形状で配設することができない建築物6の適宜の箇所に用いることができる。矩形状の切断建築板5は、例えば、建築物6の開口部8の外周部や、建築物6の横方向(水平方向)の途切れ部7に設置することができる。開口部8は窓などの開口が設置される部分である。途切れ部7は、複数の建築板1を割付けたときに、建築物6の端部などにおいて建築板1が途中で途切れる部分である。また、端部が斜めに傾斜した切断建築板5は、例えば、建築物6の屋根部9の下方に設置することができる。家屋の屋根部9は傾斜していることが多いため、屋根の傾斜角度に合せた傾斜角度の切断建築板5を得ることができる。このように、建築板1を建築物6への割付けに合せて切断することによって、建築板1を建築物6に容易に設置することができる。
なお、もちろん、切断線3の形状は、図1に示すものに限られるものではなく、割付けによってはコ字状やU字状やV字状などの切断線3(切欠切断線)や、ロ字状(四角形状)やO字状(円形状)などの切断線3(くりぬき切断線)が形成されていてもよい。その場合、切断建築板5は切欠き部やくりぬき部(孔部)を有するものであってもよい。図3では、コ字状の切り欠き部が形成された切断建築板5が、開口部8の上下に配設された様子が示されている。
次に、切断線3を有する建築板1の製造方法について説明する。
建築板1の製造にあたっては、図3に示すように、まず、建築物6の施工情報に基づいて複数の建築板1の割付を行う(割付工程)。次に、複数の建築板の切断箇所を設定する(切断箇所設定工程)。そして、建築板1を作製するための基材4における切断箇所に対応する位置に、化粧塗装2の一部として切断線3を形成する(切断線形成工程)。これにより、切断線3が化粧塗装2の一部として形成された建築板1を得ることができる。
切断線3は、化粧塗装2の一部として、すなわち、建築板1の塗装膜内に設けられているものである。切断線3が化粧塗装2の一部として形成されているのであれば、切断線3の形成は、本体の化粧塗装2(切断線3以外の化粧塗装)の塗装と同時であってもよく、本体の化粧塗装2の塗装より後であってもよい。切断線3を本体の塗装の後に形成する場合には、本体の塗装の後に別工程で上塗り塗装することにより切断線3を形成することができる。また、コート層などの上塗り塗膜の形成が終わり、通常の建築板1の塗装が全て終了した後の基材表面に、切断線3の塗装を行ってもよい。要するに切断線3は、建築板1の塗装膜内に設けられていればよい。より好ましくは、切断線3を基材表面の化粧塗装2の塗装と同時に形成する方法である。それにより、化粧塗装2を形成した後に別工程で切断線3を塗装する場合よりも、効率よく簡単に切断線3を形成することができる。このとき、切断線3は、化粧塗装2を構成する塗装膜内に設けられる。したがって、切断線3が化粧塗装2に一体化して形成されるため、建築板1の表面が擦れるなどした場合でも、切断線3を消えにくくすることができる。
化粧塗装2の形成と同時に切断線3を形成するには、インクジェット塗装(インクジェット印刷)により化粧塗装2の塗装を行うことが好ましい。それにより、簡単に切断線3を化粧塗装2の一部として塗装することができる。インクジェット塗装では、印刷情報(データ)に基づき所定の位置で所定の色の塗装を行うことが容易であり、切断線3の設定及び塗装が簡単になるとともに、精度よく切断線3を形成することができる。また、インクジェット塗装では、化粧塗装2の色や模様を簡単に設定することができるので、化粧塗装2の塗装を容易に行うことができる。また、複数枚の建築板1において、切断箇所が建築板1ごとに異なる場合も、簡単に切断線3を含んだ印刷データを設定して、建築板1ごとに所定の塗装を行うことができる。また、インクジェット塗装では、印刷情報を基に、複数の基材4を搬送しながら連続して塗装することができるので、生産性よく建築板1を製造することができる。また、インクジェット塗装では、細かい色設定を容易に行うことができるので、多彩な表現の化粧塗装2を簡単に得ることができ、建築物6の壁面の意匠性を高めることができる。
図2は、建築板1の製造方法の一例である。本形態では、建築板1を作製するための基材4を搬送し、この基材4を送りながら基材4に塗装機により化粧塗装2を施している。基材4の搬送は、コンベアなど、適宜の搬送手段を用いて行うことができる。搬送しながら塗装することにより、生産性よく建築板1を製造することができる。基材4は、塗装前の板状の建材である。
本形態の建築板1の製造方法では、塗装機として、建築板1の塗装を行うインクジェット塗装装置10を用いている。このインクジェット塗装装置10は、施工情報記憶手段11と、建築板形状記憶手段12と、塗装情報記憶手段13と、切断箇所データ記憶手段14と、印刷情報記憶手段15とを備えている。施工情報記憶手段11は、建築物6の施工情報を記憶するものである。建築板形状記憶手段12は、建築板1の外観形状を記憶するものである。塗装情報記憶手段13は、建築板1の化粧塗装情報を記憶するものである。切断箇所データ記憶手段14は、施工情報記憶手段11及び建築板形状記憶手段12の情報に基づいて複数の建築板1を建築物6に割付けて切断箇所を設定して得られる切断箇所データを記憶するものである。印刷情報記憶手段15は、切断箇所データ及び化粧塗装情報に基づいて作成され、切断箇所の位置に切断線3が化粧塗装2の一部として形成される印刷情報を記憶するものである。そして、インクジェット塗装装置10は、切断線3が化粧塗装2の一部として形成された印刷情報に基づいて、建築物6に取り付けられるときの建築板1の割付に応じて切断するための切断線3を、化粧塗装2の一部として塗装する。このようなインクジェット塗装装置10を用いれば、化粧塗装2の一部として切断線3を有する建築板1を簡単に製造することができる。
施工情報記憶手段11、建築板形状記憶手段12、塗装情報記憶手段13、切断箇所データ記憶手段14、及び、印刷情報記憶手段15は、これらを格納する電子演算装置16の中に収容されている。電子演算装置16は、CPU、メモリ、記録ディスクなどを有するコンピュータなどで構成することができる。記録ディスクはハードディスクなどであってよい。施工情報記憶手段11、建築板形状記憶手段12、塗装情報記憶手段13、切断箇所データ記憶手段14、及び、印刷情報記憶手段15は、メモリや記録ディスクの一部に、各情報が記録されるものであってよい。
施工情報記憶手段11に記憶される施工情報は、建築物6に建築板1を割付ける際に必要な情報を含んでいる。施工情報は、建築物6の施工図面に基づくものである。施工情報には、建築物6の大きさ、壁の寸法や面積、窓などの開口部8の位置や寸法、屋根部9の勾配(傾斜角度)などが含まれている。これらの施工情報は、数値化して記憶することができる。施工情報を用いることにより、適切に建築板1を割付けることができる。この施工情報は、電子演算装置16の一部として組み込まれた施工情報記憶手段11に記憶される。施工情報は、キーボードやマウスなどの入力手段からの入力(インプット)により施工情報記憶手段11に収容されるものであってよい。また、施工図面をスキャニングして取り込み、このデータを加工して、施工情報を記憶してもよい。
建築板形状記憶手段12に記憶される建築板1の外観形状は、建築物6に建築板1を割付ける際に必要な情報である。建築板1の外観形状は、建築板1の仕様に基づき設定されているものである。建築物1の外観形状としては、例えば、建築板1の縦横の寸法、建築板1の重なり幅(又は働き幅)、などが含まれている。建築板1の外観形状は、数値化して記憶することができる。建築板1の外観形状を記憶させることにより、建築物6に適切に建築板1を割付けることができる。建築板1の外観形状は、電子演算装置16の一部として組み込まれた建築板形状記憶手段12に記憶される。建築板1の外観形状は、キーボードやマウスなどの入力手段からの入力(インプット)により建築板形状記憶手段12に収容されるものであってよい。また、建築板1の図面や写真をスキャニングして取り込み、このデータを加工して、建築板1の外観形状を記憶してもよい。
塗装情報記憶手段13に記憶される建築板1の化粧塗装情報は、建築板1に施される化粧塗装2の模様や着色の情報である。この化粧塗装情報には切断線3の情報は含まれていない。いわば、建築板1の化粧模様を構成する本体の化粧塗装2の情報である。化粧塗装情報は、建築板1ごとに異なるものであってもよいし、同じものであってもよい。同じ化粧塗装情報が用いられた場合は、建築板1に施される化粧塗装2が複数の建築板1において同じものとなり、建築物6に統一感のある意匠を与えることができる。また、異なる化粧塗装情報が用いられた場合は、建築板1に施される化粧塗装2が建築板1ごとに違うものとなる。その場合、建築板1にコントラストを付けるなどすれば変化に富んだ意匠を建築物6に与えることができる。また、建築板1ごとに微妙に模様を異ならせるようにすれば、自然な印象をかもし出す意匠を建築物6に与えることができる。化粧塗装情報は、ある位置における色データとして構成することができる。例えば、xy座標系を用いたインクジェット噴射される各点の色データであってよい。この色データは、数値化が可能である。建築板1の化粧塗装情報は、キーボードやマウスなどの入力手段からの入力(インプット)により塗装情報記憶手段13に収容されるものであってよい。また、化粧塗装2の基礎となる図面や写真をスキャニングして取り込み、このデータを加工して、建築板1の化粧塗装情報を記憶してもよい。なお、化粧塗装情報を建築板1の形状にリンクさせてもよい。それにより、建築板1の形状に合せた塗装を行うことができる。また、化粧塗装情報を施工情報(建築物6の壁面)とリンクさせてもよい。それにより、建築物6の壁面に合せた塗装を行うことができる。
切断箇所データ記憶手段14に記憶される切断箇所データは、切断線3を設ける位置に関する情報である。この切断箇所データは、施工情報記憶手段11及び建築板形状記憶手段12の情報に基づいて、複数の建築板1を建築物6に割付けて切断箇所を設定して得られる。例えば、図3に示すように、建築物6にあっては、適宜に建築板1の割付を行い、切断する建築板1の個数、及び、切断される建築板1の切断箇所を設定する。そして、切断箇所が設定されて切断線3を形成するための情報で構成される切断箇所データが記憶される。切断箇所データには、切断線3を設ける位置(切断線3の長さ、延伸方向、傾斜角度など)の情報が含まれている。また、切断箇所データは、切断を行わない建築板1の個数情報が含まれていてもよい。建築板1の割付及び切断箇所の設定情報は、入力手段により外部から入力されてもよいが、施工情報記憶手段11及び建築板形状記憶手段12の情報に基づき、電子演算装置16が演算して得られるようにしてもよい。電子演算装置16の演算により切断箇所データを得る場合は、自動化して建築板1の割付及び切断箇所の設定を行うことができ、容易に切断箇所を設定することができる。そのため、電子演算装置16には、複数の建築板1を建築物6に割付ける割付手段が設けられていることが好ましい。また、電子演算装置16には、割付手段により割付けられた情報(割付情報)に基づいて切断箇所を設定する切断箇所設定手段が設けられていることが好ましい。
印刷情報記憶手段15に記憶される印刷情報は、インクジェット印刷を行うための基本データとなる色データの情報である。インクジェット塗装装置10は、印刷情報に基づいてインクを噴射し印刷を行う。この印刷情報は、切断箇所データ及び化粧塗装情報に基づいて作成される。すなわち、化粧塗装情報においては、建築板1の模様を構成する情報が含まれており、切断箇所の情報は含まれていないが、これに切断箇所データを適用し、切断箇所の位置において化粧塗装情報の色データを切断線3の色データに変換する。色データが変換された新たな化粧塗装情報は、切断線3の情報を含むものであり印刷情報となるものである。こうして、切断線3が化粧塗装2の一部として形成される印刷情報が記憶される。印刷情報は、入力手段により外部から入力されてもよいが、切断箇所データ及び化粧塗装情報に基づき、電子演算装置16が演算して得られるようにしてもよい。電子演算装置16の演算により印刷情報を得る場合は、自動化して建築板1の印刷情報を取得することができ、容易に印刷情報を設定することができる。そのため、電子演算装置16には、化粧塗装情報及び切断箇所データに基づいて印刷情報を設定する印刷情報設定手段が設けられていることが好ましい。なお、印刷情報は、切断線3を形成する建築板1においては、色データが変換されて切断線3の色情報が含まれているものであってよく、切断線3を形成しない建築板1においては、色データが変換されず、化粧塗装情報のそのままのデータであってよい。
電子演算装置16は、モニターやプリンターなどの外部出力手段と接続されていることが好ましい。それにより、塗装の設定を行う際に、各情報や各データを確認することが容易になる。また、形状のデータや割付のデータや色のデータをグラフィック(描画)により出力することにより、所望の塗装データを簡単に設定することができる。
インクジェット塗装装置10は、インク噴射部17を備えている。インク噴射部17は印刷情報記憶手段15に収納された印刷情報の色データに基づいてインクを噴射するものである。インク噴射部17は、インクを収納するインクタンク、インクを噴射する噴射ノズルなどを有して構成されている。インクジェット塗装装置10のインクとしては、3色系のものや、4色系のものを用いることができる。3色以上にすることにより、フルカラー印刷が可能になる。また、4色以上にすることにより、鮮明にフルカラー印刷をすることができる。4色系では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色インクを使用することができる。これらのインクは、印刷情報に基づき、印刷された色が所望の色となるように各インクの噴射が制御される。電子演算装置16の印刷情報記憶手段15とインク噴射部17とは接続ケーブル18で繋がっており、それにより、印刷情報に基づいてインクジェット塗装を行うことが可能になっている。
基材4をインクジェット塗装するにあたっては、まず、基材4をラインに投入し、インクジェット塗装装置10の上流側からインク噴射部17の位置に向けて基材4を搬送する。インクジェット塗装される前の基材4においては、表面に下塗り塗膜が形成されていることが好ましい。それにより、インクジェット塗装されたインクが定着しやすくなる。下塗り塗膜は、シーラー層、インク定着層などの複層で構成されるものであってよい。基材4は、連続して順次にラインに投入することができる。それにより、建築板1の生産効率を高めることができる。
そして、基材4をインクジェット塗装装置10のインク噴射部17の下方に移動させ、インクジェット塗装により化粧塗装2を基材4の表面に形成する。このとき、印刷情報に基づいてインクジェット塗装されるので、切断線3が本体の化粧塗装2(化粧模様を構成する塗装)と同時に塗装されて形成される。これにより、切断線3を有する化粧塗装2が施された基材4を得ることができる。複数の基材4を連続して順次に搬送して塗装を行う場合には、基材4ごとに異なる切断線3を化粧塗装2の一部として形成することができる。なお、切断が不要な建築板1においては、切断線3が塗装されずに化粧塗装2が施された基材4を形成することができる。こうして、切断線3を有するものと有さないものとを含む複数個の化粧塗装2が施された基材4を得ることができる。
インクジェット塗装後の基材4は、乾燥などの工程を経ることにより、化粧塗装2を定着して形成することができる。インクジェット塗装後には、化粧塗装2の表面に上塗り層を形成してもよい。上塗り層を形成することにより、化粧塗装2を保護することができ、化粧塗装2の剥がれや塗装色の経時変化などを抑制することができる。また、上塗り層により建築板1の耐候性を向上することができる。また、切断線3に上塗り塗装が施されると、切断線3がこすれたりして消えることを抑制することができる。上塗り層は、クリア層、コート層などを有して構成されるものであってよい。上塗り層は、化粧塗装2の表面に設けられるものであるため、透明であることが好ましい。こうして、化粧塗装2を構成する塗膜中に切断線3が設けられた建築板1を得ることができる。そして、切断線3を有する建築板1と切断線3を有さない建築板1とを含む複数の建築板1を製造することにより、建築物6の外壁を形成する建築板セットを得ることができる。
こうして得られた建築板1にあっては、建築物6に取り付けられるときの建築板1の割付に応じて切断するための切断線3が、化粧塗装2の一部として塗装されている。そのため、現場で建築板1の採寸や切断線3のケガキを行わなくてもよく、施工作業者は切断線3に沿った切断作業を行えばよく、建築板1の切断を容易に行うことができる。また、採寸や切断が現場の作業者の技能に左右されないため、切断位置の精度を高めることができ、安定して建築板1を切断することができる。