[一実施の形態]
以下に、本発明の一実施の形態に係るスライドスイッチについて図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るスライドスイッチ100の分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100の外観を示す斜視図である。図3は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100の上面図である。なお、以下の説明において、説明の便宜上、図1に示す上方向(Z1方向)を、スライドスイッチ100の「上方向」あるいは、「上方」と呼び、下方向(Z2方向)を、スライドスイッチ100の「下方向」あるいは、「下方」と呼ぶものとする。また、図4は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100が有するケース2の上面図であり、図5は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100のハウジング(ケース2とカバー部材7)を除いた各構成部材を下方側から示す分解斜視図である。図6は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100が有するスライド部材の底面図である。なお、図6においては、便宜上、操作部38の位置を仮想線(破線)で示している。
図1に示すように、スライドスイッチ100は、固定接点1が設けられたケース2と、スライド移動可能にケース2に収容されるスライド部材3と、このスライド部材3に固定される可動接点4と、スライド部材3の移動に伴ってスライド部材3と係脱するクリック板ばね5と、このクリック板ばね5を裏面側(他面側)から付勢する補助板ばね6と、ケース2に一体化されるカバー部材7と、を有して構成される。なお、ケース2とカバー部材7とにより、図2及び図3に示すように、略矩形形状のハウジング90が構成される。
ケース2は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形することにより、図1に示すように、上方が開放された略長方形の箱形状に形成されている。ケース2には、内底面21を有する略平板状の底壁部22と、この底壁部22を囲むように形成された環状の側壁部23とが設けられている。側壁部23は、ケース2の長手方向であるスライド部材3のスライド方向(X1−X2方向)に沿って延びる互いに対向した一対の第1側壁部23aと、一対の第1側壁部23aを連結するように設けられた互いに対向する一対の第2側壁部23bとにより構成されている。
側壁部23(第1側壁部23a、第2側壁部23b)で囲まれた空間は、収容部20となっている。また、図4に示すように、ケース2の短手方向(Y1―Y2方向)における中央部には、スライド部材3のスライド移動を案内する案内壁部24が、第2側壁部23b同士を連結するように、底壁部22から上方(Z1方向)に突出して形成されている。収容部20は、この案内壁部24を挟んで、固定接点1が配設される第1収容部20aと、クリック板ばね5及び補助板ばね6が収容される第2収容部20bとに大別される。なお、底壁部22は、第1収容部20aと第2収容部20bとでその厚さが異なっている(図8参照)。
固定接点1は、導電性を有する金属板からなり、その表面(上面)がケース2の内底面21と面一状態となるように、底壁部22に埋設されている。図4に便宜上、異なるハッチングを施して示すように、固定接点1は、所定間隔を有して絶縁状態で配設された第1固定接点11と第2固定接点12とで構成されている。第1固定接点11及び第2固定接点12は、それぞれ一部がケース2から外部に露出した第1端子部11a及び第2端子部12aを有している。一対の第2側壁部23bには、それぞれ、案内壁部24の両端部と離間して対向するように、一対の支持突部25が第2収容部20b内に突出して設けられている。この支持突部25の上下方向(Z1−Z2方向)における高さ寸法は、収容部20(第2収容部20b)の深さ寸法よりも僅かに小さいものとなっている。これに対し、案内壁部24の上下方向における高さ寸法は、支持突部25よりもさらに低く設定されている。
第2収容部20bを画成する一方の第1側壁部23aは、その延在方向(X1−X2方向)における中央部が、その両端部よりも案内壁部24からの距離が大きくなるように形成されている。これは、スライド部材3がクリック板ばね5と係合した際に、クリック板ばね5及び補助板ばね6の弾性変形を妨げないようにするためである。この一方の第1側壁部23aの両端部近傍には、補助板ばね6を保持するための凹溝26が上下方向に延びるように形成されている。なお、第2側壁部23bの中央部には、後述するカバー部材7を位置決めするための凹部27が設けられると共に、側壁部23の四隅部(第2側壁部23bの両端部)には、カバー部材7を取り付けるための突状の取付部28が設けられている。
スライド部材3は、例えば、絶縁性の樹脂材料を成形することにより、図1等に示すように、上面視略長方形に形成されている。スライド部材3は、ケース2の収容部20に収容される本体部30と、この本体部30から上方に突出し、後述するカバー部材7の開口部71に挿通される操作部38とを有する。スライド部材3を上方側(Z1方向側)から上面視した場合において、この操作部38は、全周が本体部30の上面に囲まれるように設けられている。図5に示すように、本体部30には、案内壁部24を挿入可能な凹溝部33がスライド方向(X1−X2方向)に沿って形成されており、スライド部材3がスライド移動する際に、凹溝部33がケース2の案内壁部24によって案内されるものとなっている。
本体部30には、凹溝部33を挟んで一方側(Y1方向側)に、第1収容部20aに配置される第1部分31が設けられ、他方側(Y2方向側)に、第2収容部20bに配置される第2部分32が設けられている。第1部分31には、可動接点4が配設される凹状の配置部31aが、凹溝部33と連通して形成されている。第2部分32は、ケース2の内底面21と交差するように設けられた壁部32aと、この壁部32aからクリック板ばね5及び補助板ばね6側であるY2方向側に突出したカム山部32bと、このカム山部32bを上方側から覆うように設けられた、ひさし状の張出部32cとを有している。張出部32cは、スライド部材3のスライド方向に延在して形成されており、その両端部には、後述するクリック板ばね5の一端部5cまたは他端部5dを受け入れ可能な一対の逃げ部32dが形成されている。
なお、図6において、操作部38を仮想線(破線)で示すように、スライド部材3を下方側から透視した場合に、操作部38とカム山部32bとがオーバーラップするように配置されている。したがって、張出部32cをスライド部材3に設けない場合には、カバー部材7の開口部71からカム山部32b及び後述するクリック板ばね5の膨出部5bが露出するものとなるが、張出部32cを設けることで、カム山部32b及び膨出部5b(頂部5f)の開口部71からの露出を防止している。これにより、開口部71から異物が侵入しても、クリック感触を得るカム山部32b及び膨出部5bに異物が付着しにくくなり、クリック感触が悪化するのを防ぐことが可能となる。
可動接点4は、ばね性を有する導電性の金属板材によって形成されている。図1及び図5に示すように、可動接点4は、平板状の基部4aと、この基部4aの両端部からU字状に折り返された第1接点部4b及び第2接点部4cとを有する。第1接点部4bは、第1固定接点11と常時接触する一方、第2接点部4cは、スライド部材3のスライド移動に伴って、第2固定接点12と接離するものとなっている。なお、基部4aには、互いに逆方向へ延出する一対の延出部4dが設けられている。この延出部4dは、可動接点4がスライド部材3の配置部31aに収容された状態において、圧入や熱カシメ等の適宜の手段によって配置部31a内に固定される。
クリック板ばね5は、ばね性を有する金属板材にプレス加工等を施すことによって、図1及び図5に示すように、スライド部材3のスライド方向(X1−X2方向)に延在する板状に形成されている。クリック板ばね5は、その延在方向(X1−X2方向)における中央部に形成された膨出部5bと、この膨出部5bの両側に位置する略平板状の板状部5aとを有する。膨出部5bは、クリック板ばね5の中央部における一面(Y1側の面)に、スライド部材3側(Y1方向側)へ突出するように形成されている。この膨出部5bは、スライド部材3のスライド移動に伴って、カム山部32bと係脱し、クリック感触を生起するものである。
クリック板ばね5の延在方向における一端部5cと他端部5dとの間に位置する板状部5a及び膨出部5bの上端部には、切欠き部5eが形成されている。すなわち、クリック板ばね5の上下方向(Z1−Z2方向)における高さ寸法は、板状部5a及び膨出部5bよりも、両端部(一端部5c、他端部5d)が大きく形成されている。したがって、一端部5c及び他端部5dは、板状部5aから上方へ突出するような形状をなしている。
補助板ばね6は、ばね性を有する金属板材にプレス加工等を施すことによって、図1及び図5に示すように、スライド部材3のスライド方向(X1−X2方向)に延在する板状(平板状)に形成されている。この補助板ばね6は、クリック板ばね5の他面側(Y2側の面側)に配設され、クリック板ばね5の他面側からこのクリック板ばね5を付勢するものであり、上下方向(Z1−Z2方向)における高さ寸法は、クリック板ばね5の一端部5c及び他端部5dと同等に形成されている。補助板ばね6は、その延在方向(X1−X2方向)に沿うと共に、互いに対向する第1外縁部6aと第2外縁部6bとを有する。
補助板ばね6の上端部で構成される第1外縁部6aには、第2外縁部6b側(Z2方向側)に向かって切り欠かれた複数(本実施の形態においては、3個)の第1凹部6cが、等間隔で離間して形成されている。また、補助板ばね6の下端部で構成される第2外縁部6bには、第1外縁部6a側(Z1方向側)に向かって切り欠かれた複数(本実施の形態においては、3個)の第2凹部6dが、等間隔で離間して形成されている。これら第1凹部6c及び第2凹部6dは、U字状に形成されており、第1凹部6cと第2凹部6dとが、補助板ばね6の延在方向において等間隔で互い違いとなるように配置されている。
また、隣り合う第1凹部6cの間に位置する第1凹部の非形成領域が、この領域に位置する第2凹部6dの幅寸法(X1−X2方向における寸法)よりも大きくなっている。同様に、隣り合う第2凹部6dの間に位置する第2凹部の非形成領域が、この領域に位置する第1凹部6cの幅寸法(X1−X2方向における寸法)よりも大きく形成されている。また、第1凹部6c及び第2凹部6dの深さ寸法(Z1−Z2方向における寸法)は、補助板ばね6の高さ寸法の1/3以上で1/2未満となるように設定されている。なお、本実施の形態では、補助板ばね6は、Y2側から見た正面視において、点対称に形成されており、この補助板ばね6をケース2に組み込む際に、向きの自由度を高めている。
カバー部材7は、例えば、金属板材にプレス加工や折り曲げ加工を施すことによって、図3に示すように、上面視略長方形に形成されている。カバー部材7は、ケース2に取り付けられ、ケース2と共にハウジング90を構成する。カバー部材7は、スライド部材3のスライド方向(X1−X2方向)に長い平板状の天板部7aを有し、この天板部7aの中央部には、長方形状の長孔からなる開口部71が形成されている。この開口部71は、スライド部材3の操作部38が挿通されるもので、長手方向(X1−X2方向)における寸法は操作部38の操作に伴う移動量に対応する一方、短手方向(Y1−Y2方向)の寸法は、操作部38の同方向(Y1−Y2方向)における寸法よりも僅かに大きく形成されている。
天板部7aの延在方向である長手方向(X1−X2方向)における両端部には、ケース2の凹部27に位置決めされる位置決め片7bが下方側(Z2方向側)に折り曲げられて形成されている。また、天板部7aの四隅部近傍には、天板部7aの短手方向(Y1−Y2方向)において対向する長辺の両側縁部から下方側へ折り曲げられた略L字状の取付片7cが設けられている。この取付片7cは、カバー部材7をケース2に取り付けるためのものである。すなわち、天板部7aがケース2の収容部20を覆うように、カバー部材7がケース2に載置された状態において、取付片7cがケース2の取付部28の下方側へ折り曲げられることにより、ケース2にカバー部材7が取り付けられ、両者が一体化される。なお、図1においては、取付片7cが折り曲げられた状態について示している。
次に、スライドスイッチ100が組み立てられた状態について説明する。図7は、本実施の形態におけるスライドスイッチ100の上面図であり、図7(a)は、図3からカバー部材7を除去して示す上面図、図7(b)は、図7(a)からスライド部材3を除去して示す上面図である。図8は、図3をA−A線で切断して示す断面図である。なお、便宜上、図7(a)、図7(b)に示す状態を、適宜、初期状態と呼ぶ。
図7(a)及び図7(b)に示すように、補助板ばね6は、延在方向にける両端部がケース2の凹溝26に挿入された状態で、ケース2の第2収容部20b内に保持される。ここで、補助板ばね6は、その板面が第2収容部20bの内底面21と略直交状態で交差するように、内底面21(底壁部22)上に配設される。また、クリック板ばね5は、補助板ばね6とケース2に設けられた一対の支持突部25との間に配置されて、第2収容部20b内に保持される。このとき、膨出部5bが突出していないクリック板ばね5の他面側が補助板ばね6と対向し、クリック板ばね5の一面側における両端部(一端部5c、他端部5d)が支持突部25と対向している。なお、クリック板ばね5(板状部5a)は、その板面が第2収容部20bの内底面21と略直交状態で交差するように、内底面21(底壁部22)上に配設されている。
スライド部材3は、図7(a)及び図8に示すように、可動接点4が固定された状態で、ケース2の収容部20に収容される。このとき、本体部30の第1部分31は、第1収容部20aに配置されると共に、カム山部32bを有する第2部分32は、第2収容部20bに配置される。また、第1部分31と第2部分32との間に位置し、凹溝部33が形成された部分における本体部30は、案内壁部24上に位置する収容部20に配置される。なお、案内壁部24は、凹溝部33に挿入されて、スライド部材3のスライド移動を案内可能となっている。
また、図7(a)に示す非操作状態(初期状態)においては、スライド部材3のカム山部32bは、クリック板ばね5の膨出部5bと係合していない。カム山部32bと膨出部5bの頂部5f(図7(b)参照)とが当接せず、両者が係合していない、この非係合状態において、カム山部32bはクリック板ばね5の板状部5aと対向した状態になっており、クリック板ばね5及び補助板ばね6は、弾性変形していない。このとき、一対の逃げ部32dの間に位置するスライド部材3の張出部32cは、クリック板ばね5の切欠き部5e内に配置される。すなわち、この張出部32cは、切欠き部5eが形成された部分におけるクリック板ばね5の端面上に位置している。より具体的には、板状部5a及び膨出部5bの上端面の上に張出部32cが位置している。したがって、スライド部材3とクリック板ばね5とが、上面視においてオーバーラップするものとなるため、このオーバーラップ分だけスライド部材3のスライド方向(X1−X2方向)と直交する幅方向(Y1−Y2方向)におけるスライドスイッチ100の寸法を小さくすることが可能となる。
また、図7(a)に示すように、頂部5fを含む膨出部5bは、図示左側の逃げ部32dの近傍に位置するスライド部材3の張出部32cに覆われている。このため、張出部32cによって、クリック板ばね5の膨出部5bやスライド部材3のカム山部32bを隠すことかできるので、カバー部材7の開口部71から異物が侵入した場合においても、膨出部5bやカム山部32bにこの異物が付着しにくいものとなり、良好なクリック感触を得ることができる。
図8に示すように、カバー部材7がケース2に取り付けられた状態において、スライド部材3の張出部32cの一部は、カバー部材7の天板部7aで覆われる。すなわち、スライド部材3は、操作部38を挟んでスライド方向(X1−X2方向)と直交する方向(Y1−Y2方向)における双方に位置する本体部30の上面が、天板部7aの下面と対向している。この場合、スライド部材3には、可動接点4の接点荷重により上方向(Z1方向)の力が作用しているので、本体部30の上面は、天板部7aと接触状態となっている。そして、スライド部材3がスライド移動する際には、カバー部材7(天板部7a)がそのスライド移動を案内すると共に、スライド部材3の上下方向の動きを規制する。したがって、スライド部材3の張出部32cは、膨出部5b及びカム山部32bの露出を避ける機能と、天板部7aによる良好なスライド移動を得る被案内部としての機能とを備えている。このように、張出部32c上に、カバー部材7が当接して配設されるので、張出部32cにおいてもスライド部材3の上下方向の動きが規制され、クリック板ばね5とスライド部材3とが係脱する際に、スライド部材3が上昇するような不所望な動きの発生を防止して、良好にスライド部材3を操作することができる。
また、図8に示すように、カバー部材7がケース2に取り付けられた際には、クリック板ばね5及び補助板ばね6は、ケース2の内底面21(底壁部22)とカバー部材7の天板部7aとの間に、上下方向の動きが規制された状態で配設される。クリック板ばね5には、両端部(一端部5c、他端部5d)を除いた領域に切欠き部5eが形成されている。したがって、両端部(一端部5c、他端部5d)においては、高さ寸法を確保することができ、スライドスイッチ100が組み立てられた状態においては、両端部(一端部5c、他端部5d)の上端が、僅かな隙間を介してカバー部材7の天板部7aと対向している。
なお、クリック板ばね5の両端部(一端部5c、他端部5d)とスライド部材3とが干渉することはない。すなわち、スライド部材3が一方(X1方向)の移動末端までスライドした状態においては、図7(a)に示すように、一端部5cの上部が、スライド部材3の張出部32cに形成された一方(図示右側)の逃げ部32dに収められる。これとは反対に、スライド部材3が他方(X2方向)の移動末端までスライドした状態おいては、他端部5dの上部は、スライド部材3の他方(図示左側)の逃げ部32dに収められる(図10参照)。このように、クリック板ばね5の両端部(一端部5c、他端部5d)が、スライド部材3に干渉することなく、上下方向の動きが規制された状態で、ケース2とカバー部材7との間に配設されているので、クリック板ばね5(膨出部5b)がスライド部材3(カム山部32b)に係脱して変形する際に、クリック板ばね5が不所望に傾くのを防止でき、良好なクリック感触を確実に得ることができる。
図8に示すように、補助板ばね6の上下方向(Z1−Z2方向)における高さ寸法は、クリック板ばね5の両端部(一端部5c、他端部5d)と同等に形成され、その上端部が、僅かな隙間を介してカバー部材7の天板部7aと対向している。そして、補助板ばね6の上端部における一面(クリック板ばね5と対向する側の面)は、スライド部材3の張出部32cの端面と対向した状態となっている。このように、クリック板ばね5に重ねられる補助板ばね6には、クリック板ばね5のような切欠き部が設けられていないので、上下方向における高さ寸法を確保でき、クリック板ばね5を付勢する弾性力が弱くなるのを抑制できるものとなっている。
次に、スライドスイッチ100を操作した場合の動作について、説明する。図9は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100の操作の途中状態を示す上面図である。図10は、本実施の形態に係るスライドスイッチ100の操作後の状態を示す上面図である。なお、理解を容易にするために、図9、図10では、カバー部材7を省略している。
図7(a)に示す操作前の初期状態において、可動接点4の第1接点部4bは、第1固定接点11と当接している。一方、第2接点部4cは、ケース2の内底面21上に位置して、第2固定接点12とは接していない。したがって、第1端子部11aと第2端子部12aとは導通しておらず、スライドスイッチ100はオフ状態となっている。
このとき、スライド部材3のカム山部32bは、クリック板ばね5の膨出部5bの図7(a)における右側(X1方向側)に位置し、カム山部32bと膨出部5b(頂部5f)とが係合していない非係合状態となっている。この非係合状態において、クリック板ばね5の膨出部5b及びこの膨出部5bの図示右側に配置される板状部5aの一部は、スライド部材3の張出部32cの下方に位置している。すなわち、この非係合状態では、張出部32cの一部が、クリック板ばね5の切欠き部5e内に位置すると共に、クリック板ばね5の上端面とカバー部材7との間に配置されるものとなっている(図3及び図8参照)。
図7(a)に示す初期状態から、指などでスライド部材3の操作部38をX2方向へスライド操作すると、図9に示す操作途中の状態を経て、図10に示す状態となる。図9に示す操作の途中状態においては、スライド部材3のカム山部32bがクリック板ばね5の膨出部5bの頂部5fに乗り上げて、両者が接触して係合した係合状態となっている。このとき、膨出部5bは、カム山部32bによって、補助板ばね6側(Y2方向側)へ弾性変形すると共に、補助板ばね6もY2方向側へ湾曲するように変形する。したがって、この係合状態では、補助板ばね6は、クリック板ばね5をその他面側(Y2方向側の面側)からカム山部32b側へ付勢している。
ここで、補助板ばね6の上端部(第1外縁部6a)と下端部(第2外縁部6b)には、前述したように、第1凹部6cと第2凹部6dとが、互い違いとなるように形成されている。このため、補助板ばね6は、蛇行するような形状で弾性変形するので、補助板ばね6の変形できる長さ(ばねスパン)が蛇行する分、長くなり、補助板ばね6の弾性が高められる。なお、図9に示す状態においても、膨出部5bの頂部5fは、張出部32cによって覆われている。
図9に示す状態から、さらにスライド部材3(操作部38)をX2方向へスライド操作すると、カム山部32bと膨出部5b(頂部5f)とが、非係合状態である図10に示す状態となる。図10に示す操作後の状態おいても、可動接点4の第1接点部4bは、第1固定接点11と当接した状態を維持している。一方、第2接点部4cは、第2固定接点12と当接するものとなる。したがって、第1端子部11aと第2端子部12aとは導通し、スライドスイッチ100はオン状態に切り替わっている。
このとき、スライド部材3のカム山部32bは、クリック板ばね5の膨出部5bの図10における左側(X2方向側)に位置し、カム山部32bと膨出部5b(頂部5f)とが係合していない非係合状態となっている。この非係合状態において、クリック板ばね5の膨出部5b及びこの膨出部5bの図示左側に配置される板状部5aの一部は、スライド部材3の張出部32cの下方に位置している。すなわち、この非係合状態では、張出部32cの一部が、クリック板ばね5の切欠き部5e内に位置すると共に、クリック板ばね5の上端面とカバー部材7との間に配置されるものとなっているとなっている。また、図10に示すように、頂部5fを含む膨出部5bは、スライド部材3の張出部32cによって覆われている。
なお、図9の状態から図10の状態に移行し、カム山部32bと膨出部5bとが非係合状態となる際に、クリック感触が得られ、操作者はスライドスイッチ100がオフ状態からオン状態に切り替わったことを感じることができる。一方、スライドスイッチ100をオン状態からオフ状態に切り替える際には、図10に示す状態から図9の状態を経由して、再び図7(a)に示す状態となる。その際の動作は、前述の動作と逆であるので、その説明は省略する。なお、このスライド操作の際にも、クリック感触を得ることができる。
以上説明したように、本実施の形態においては、クリック板ばね5の膨出部5bが突出しない面側(他面側)に、クリック板ばね5を付勢可能な補助板ばね6が配設されている。そして、補助板ばね6の延在方向に沿った互いに対向する上端部である第1外縁部6aと下端部である第2外縁部6bには、それぞれ、複数の第1凹部6cと複数の第2凹部6dとが形成され、これら第1凹部6cと第2凹部6dとが、補助板ばね6の延在方向において、互い違いとなるように配置されている。このため、スライド操作に伴って、スライド部材3(カム山部32b)とクリック板ばね5の膨出部5bとが係合し、クリック板ばね5と共に補助板ばね6が変形してクリック板ばね5を付勢する際には、補助板ばね6は、蛇行するような形状で弾性変形するので、補助板ばね6の変形できる長さ(ばねスパン)が蛇行する分、長くなり、補助板ばね6の弾性が高められる。したがって、スライド部材3のスライド方向におけるスライドスイッチ100の寸法が小さくても、良好なクリック感触を得ることが可能となる。
また、本実施の形態においては、補助板ばね6の第1凹部6cと第2凹部6dは、U字状に形成されている。このため、凹部を矩形状やV字状に形成した場合に比べて、補助板ばね6の変形を円滑にできるので、変形時に応力が集中しにくくなり、長期に渡って良好なクリック感触を得ることが可能となる。
また、本実施の形態においては、カム山部32bを覆うように設けたスライド部材3の張出部32cによって、クリック板ばね5の膨出部5bの少なくとも頂部5fが覆われている。したがって、上方に突出する操作部38がカバー部材7の開口部71に挿通される形態のスライドスイッチにおいて、スライド部材3のカム山部32bと係脱するクリック板ばね5の膨出部5bがカバー部材7の開口部71内に位置していても、この膨出部5bの少なくとも頂部5fが開口部71から露出するのを防ぐことができる。このため、仮に開口部71から異物が侵入した場合でも、この異物が膨出部5bやカム山部32bに付着しにくいものとなり、異物によるクリック感触の悪化を防止することができる。また、クリック板ばね5の一端部5cと他端部5dには、切欠き部5eが設けられていないことから、この一端部5cと他端部5dとを、ケース2とカバー部材7との間で上下方向の動きを規制することができるので、クリック板ばね5がスライド部材3に係脱して変形する際に、不所望に傾くのを防止でき、良好なクリック感触を確実に得ることができる。
また、本実施の形態においては、膨出部5bの頂部5fがカム山部32bと係合していない非係合状態、すなわち、非操作状態において、クリック板ばね5の一端部5cまたは他端部5dを受け入れ可能な一対の逃げ部32dの間に位置するスライド部材3の張出部32cを、切欠き部5eが形成された部分におけるクリック板ばね5の上端面とカバー部材7との間に配設している。このため、スライド部材3の張出部32cは、クリック板ばね5の端面上に位置して、スライド部材3とクリック板ばね5とがオーバーラップするものとなるので、スライドスイッチ100のスライド方向と直交する幅方向(Y1−Y2方向)の寸法を小さくすることが可能となる。また、張出部32cの少なくとも一部は、カバー部材7で覆われているため、張出部32cにおいてもスライド部材3の上下方向の動きを規制できるので、クリック板ばね5とスライド部材3とが係脱する際に、スライド部材3が上昇するような不所望な動きの発生を防止して、良好にスライド部材3を操作することができる。
また、本実施の形態においては、補助板ばね6の高さ寸法を切欠き部5eが設けられていないクリック板ばね5の両端部(一端部5c及び他端部5d)と同等にしているので、補助板ばね6の上下方向における寸法が確保されるため、クリック板ばね5を付勢する弾性力が弱くなるのを抑制できる。
なお、本発明は、上述した本実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。例えば、以下のように変形して実施することができ、これらの実施の形態も本発明の技術的範囲に属する。
本実施の形態においては、補助板ばね6に形成した第1凹部6cと第2凹部6dは、何れも3個としたが、複数個であれば3個に限られない。また、第1凹部6cと第2凹部6dの数は、同数でなくとも構わない。例えば、第1凹部6cを4個とし、第2凹部6dを3個としても良い。
また、本実施の形態においては、補助板ばね6に応力が集中しにくいものとするために、第1凹部6cと第2凹部6dの形状を、U字状としたが、V字状や矩形状等の他の形状を除外するものではない。
また、本実施の形態では、クリック板ばね5及び補助板ばね6の板面が、収容部20の内底面21と交差するように収容部20内に保持されるものとしたが、クリック板ばね5及び補助板ばね6の板面が、収容部20の内底面21と平行に配置されたものでも良い。
さらに、本実施の形態においては、カバー部材7に開口部71を設けて、スライド部材3の操作部38が開口部71から上方に突出するものとしたが、カバー部材7に開口部を設けずに、スライド部材3の操作部38が、ハウジングの側方へ突出するスライドスイッチとすることも可能である。この場合には、ケース2に切欠き部を設け、この切欠き部を介して操作部を側方へ突出させる構成を採用することができる。
また、本実施の形態においては、スライド部材3に、カム山部32bを覆う張出部32cを設けて、この張出部32cの一部をクリック板ばね5の切欠き部5e内に配置したものとしたが、スライド部材3に張出部32cを設けない構成であっても構わない。この場合には、クリック板ばね5に切欠き部を形成する必要はない。